説明

はんだ付け装置

【課題】鉛フリーはんだを用いるはんだ付け装置において、プリント基板およびその搭載電子部品を均一に加熱でき、電子部品に温度的なダメージを与えることなく、はんだ付けの可能なはんだ付け装置を提供する。
【解決手段】ブロアファン122とヒーター140との間に、流体の圧力を均一にするとともに、複数の孔を有する多孔質体130を配置する。また、ヒーター140と被加熱物10の間に、ヒーター140によって加熱された流体を乱流として被加熱物10に吹き付ける輻射板150とを配置する。そして、加熱流体を被加熱物に吹き付けて被加熱物を加熱して、はんだを溶融する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、はんだ付け装置に係り、特に、鉛フリーはんだを用いるに好適なはんだ付け装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のはんだ付け装置においては、はんだを融点以上まで加熱するための熱源として、例えば、特開平6−253465号公報や特開平10−335047号公報に記載されているように、赤外線ヒーターを用いて直接被加熱物を加熱するものや、特開平11−54903号公報や特開平9−186448号公報に記載されているように、赤外線ヒーターによって加熱された流体を被加熱物に吹きつけるものが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平6−253465号公報
【特許文献2】特開平10−335047号公報
【特許文献3】特開平11−54903号公報
【特許文献4】特開平9−186448号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
最近、はんだ付け装置に用いるはんだとして、低公害化の観点から、従来の鉛含有はんだに代えて、鉛を含有しない鉛フリーはんだを用いることが試みられている。鉛フリーはんだとしては、錫銀系はんだ(SnAg)や、錫銅系はんだ(SnCu)や、錫銀系はんだ(SnAg)にビスマス(Bi)を添加したものなどが知られている。これらの鉛フリーはんだは、従来の鉛はんだの融点よりも高く、例えば、SnAg系はんだの融点は221℃であり、SnCu系はんだの融点は227℃であり、Bi含有SnAg系はんだの融点は205℃である。即ち、鉛フリーはんだの融点は、200〜230℃と、鉛はんだに比べて高融点である。
【0005】
一方、プリント基板上にはんだ付けされる電子部品としては、SOPタイプのICや、QFPタイプのICや、抵抗,コンデンサ等のチップ部品や、電解コンデンサ等がある。これらのはんだ付け部品の耐熱温度は、鉛フリーはんだの融点に近いものもある。例えば、アルミ電解コンデンサの耐熱温度は、250℃である。従って、融点が227℃のはんだを用いてはんだ付けする場合には、はんだを融点以上の、例えば,230℃に加熱する必要があり、プリント基板に搭載する電子部品の耐熱温度を考慮すると、例えば、240℃以下に制御する必要がある。即ち、加熱温度は、230〜240℃の範囲となるように制御する必要がある。
【0006】
しかしながら、特開平6−253465号公報や特開平10−335047号公報に記載されているように、赤外線ヒーターを用いて直接被加熱物を加熱するものでは、ヒーターの形状の影響によって、被加熱物の温度差が生じるため、はんだの融点以上に加熱した場合、部分的にプリント基板に搭載される電子部品の耐熱温度以上加熱される場合あり、このような場合、電子部品に温度的なダメージを与えることになる。また、特開平11−54903号公報や特開平9−186448号公報に記載されているように、赤外線ヒーターによって加熱された流体を被加熱物に吹きつけるものにおいては、赤外線ヒーターを用いて直接被加熱物を加熱するものに比べて、温度分布のバラツキは少ないものの、加熱温度を230〜240℃の範囲となるように被加熱部材であるプリント基板およびその搭載電子部品の全てについて均一に加熱するのが困難であり、電子部品に温度的なダメージを与えるという問題があった。
【0007】
本発明の目的は、鉛フリーはんだを用いるはんだ付け装置において、プリント基板およびその搭載電子部品を均一に加熱でき、電子部品に温度的なダメージを与えることなく、はんだ付けの可能なはんだ付け装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明は、送風機から送られる流体をヒーターで加熱し、当該加熱流体を吹き付けることで被加熱物を加熱する加熱炉ユニットを備えるはんだ付け装置において、前記送風機と前記ヒーターとの間に配置され、前記送風機から送られる流体の圧力を均一にするとともに、前記ヒーターに対して通風可能な複数の孔を有する多孔質体と、前記ヒーターと前記被加熱物の間に配置され、前記ヒーターによって加熱された流体を乱流として前記被加熱物に吹き付ける輻射板と、前記輻射板の前記被加熱物の側に設けられ、9±1μmの範囲の波長の赤外線を前記被加熱物に照射するセラミック溶射膜からなる表面処理部とを備え、前記送風機が流体を吸引して加圧することにより、ケーシングと前記多孔質体により仕切られた第1の空間内部の流体圧を上昇させ、前記第1の空間内部において流体圧が上昇した流体を、前記多孔質体に設けられた前記複数の孔から前記輻射板の方向に噴出させるようにしたものである。
かかる構成により、鉛フリーはんだを用いるはんだ付け装置において、プリント基板およびその搭載電子部品を均一に加熱でき、電子部品に温度的なダメージを与えることなく、はんだ付けを行い得るものとなる。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、鉛フリーはんだを用いるはんだ付け装置において、プリント基板およびその搭載電子部品を均一に加熱でき、電子部品に温度的なダメージを与えることなく、はんだ付けを行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の一実施形態によるはんだ付け装置の全体構成を示す正面図である。
【図2】本発明の一実施形態によるはんだ付け装置によってはんだ付けされる被加熱物の一例の構成を示す斜視図である。
【図3】本発明の一実施形態によるはんだ付け装置に用いる加熱炉ユニットの構成を示す断面図である。
【図4】本発明の一実施形態によるはんだ付け装置に用いる加熱炉ユニットに用いる輻射板の構成を示す平面図である。
【図5】本発明の一実施形態によるはんだ付け装置に用いる冷却ユニットの構成を示す断面図である。
【図6】本発明の一実施形態によるはんだ付け装置に用いる他の加熱炉ユニットの構成を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図1〜図6を用いて、本発明の一実施形態によるはんだ付け装置の構成について説明する。
最初に、図1を用いて、本実施形態によるはんだ付け装置の全体構成について説明する。図1は、本発明の一実施形態によるはんだ付け装置の全体構成を示す正面図である。
【0012】
はんだ付け装置は、連続加熱炉部100と、冷却部200と、不活性ガスチャンバ310,320と、搬送コンベア50とから構成されており、リフロー炉を構成している。連続加熱炉部100は、プリヒート部100Aと、はんだ付け部100Bとから構成されている。プリヒート部100A及びはんだ付け部100Bは、それぞれ、加熱炉ユニット110A,110B,110C,110D,110Eと、加熱炉ユニット110G,110Hとから構成されており、これらの加熱炉ユニット110A,…,110Hの構成は基本的に同じものである。加熱炉ユニット110A,…,110Hの詳細な構成については、図3及び図4用いて後述する。プリヒート部100Aは、被加熱物10を、例えば、160〜200℃まで加熱して、被加熱物10であるプリント基板や、このプリント基板の上に搭載されている電子部品の温度を上昇させる。はんだ付け部100Bは、被加熱物10を融点以上の,例えば、240℃まで加熱して半田を溶融し、プリント基板と電子部品をはんだ付けする。
【0013】
冷却部200は、冷却ユニット210A,210Bから構成されており、これらの冷却ユニット210A,210Bの構成は基本的に同じものである。加熱炉ユニット110A,…,110Hの詳細な構成については、図5を用いて後述する。冷却部200は、例えば、240℃まで加熱されている被加熱物10を常温まで急速冷却して、はんだを固着させ、はんだ付けを完了する。
【0014】
不活性ガスチャンバ310は、入口側に開閉部312を備えている。不活性ガスチャンバ320は、出口側に開閉部322を備えている。開閉部312,322は、開閉可能なカーテンやドアであり、搬送コンベア50によって搬送される被加熱物10を、不活性ガスチャンバ310内部に搬入する場合や、不活性ガスチャンバ320から搬出する場合に開いて、被加熱物10の搬入・搬出を可能にするとともに、それ以外のときは閉じていて、連続加熱炉部100や、冷却部200や、不活性ガスチャンバ310,320内の窒素ガスのような不活性ガスが外部に流出するのを低減するようにしている。連続加熱炉部100や、冷却部200や、不活性ガスチャンバ310,320内は、不活性ガスが導入されており、はんだが溶融した際の表面酸化を低減するようにしている。
【0015】
次に、本実施形態によるはんだ付け装置の動作について説明する。被加熱物10は、搬送コンベア50によって、不活性ガスチャンバ310内に搬入される。被加熱物10の搬入時に、開閉部312が開き、被加熱物10の搬入後開閉部312が閉じる。被加熱物10は、搬送コンベア50によって、連続加熱炉部100のプリヒート部100Aに搬送される。プリヒート部100Aの加熱炉ユニット110A,110B,110C,110D,110Eの内部雰囲気は、それぞれ、例えば、180℃に保たれている。搬送コンベア50によって搬送される被加熱物10は、加熱炉ユニット110A,110B,110C,110D,110Eによって徐々に加熱され、加熱炉ユニット110Eでは、最終的に内部の雰囲気温度(例えば、180℃)まで被加熱物10であるプリント基板及びその上に搭載された電子部品が加熱される。
【0016】
次に、被加熱物10は、搬送コンベア50によって、連続加熱炉部100のはんだ付け部100Bに搬送される。はんだ付け部100Bの加熱炉ユニット110G,110Hの内部雰囲気は、それぞれ、例えば、240℃に保たれている。搬送コンベア50によって搬送される被加熱物10は、加熱炉ユニット110G,110Hによってそれぞれ加熱され、加熱炉ユニット110Hでは、最終的に内部の雰囲気温度(例えば、240℃)まで被加熱物10であるプリント基板及びその上に搭載された電子部品が加熱され、はんだが溶融する。
【0017】
次に、被加熱物10は、搬送コンベア50によって、冷却部200に搬送される。冷却部200の冷却ユニット210A,210Bの内部には、例えば、30℃まで冷却した空気及び不活性ガスによって、低温状態に保たれている。搬送コンベア50によって搬送される被加熱物10は、冷却ユニット210Aによって例えば、60〜80℃まで冷却され、さらに、冷却ユニット210Bによって例えば30℃まで冷却される。
【0018】
常温まで冷却された被加熱物10は、搬送コンベア50によって、不活性ガスチャンバ320から搬出される。被加熱物10の搬出時に、開閉部322が開き、被加熱物10の搬出後開閉部322が閉じる。
【0019】
次に、図2を用いて、本実施形態によるはんだ付け装置によってはんだ付けされる被加熱物の一例について説明する。
図2は、本発明の一実施形態によるはんだ付け装置によってはんだ付けされる被加熱物の一例の構成を示す斜視図である。
【0020】
被加熱物10は、プリント基板12と、その上に搭載され、はんだ付けされる電子部品14とから構成されている。プリント基板12には、予め配線が形成されると共に、電子部品14の搭載位置には、はんだペーストが印刷されている。電子部品14としては、例えば、SOPタイプのIC14Aや、QFPタイプのIC14Bや、抵抗,コンデンサ等のチップ部品14Cや、電解コンデンサ14D等がある。ここで、アルミ電解コンデンサの耐熱温度は、例えば、250℃である。また、本発明者らの研究によると、黒色モールドのSOPタイプのIC14Aでは、照射する赤外線の波長によって、温度制御の容易性が異なることが判明した。例えば、1μm以下の波長の赤外線は、黒色モールドに吸収され易すいため、温度が上昇しやすく、所定温度になるようにする温度制御が困難である。また、20μm以上の波長の赤外線は、黒色モールドに吸収され難いため、温度が上昇し難く、所定温度になるようにする温度制御が困難である。
【0021】
次に、図3及び図4を用いて、本実施形態によるはんだ付け装置に用いる加熱炉ユニット110の構成について説明する。
図3は、本発明の一実施形態によるはんだ付け装置に用いる加熱炉ユニットの構成を示す断面図である。図3に示したX,Y,Z軸は、図1のX,Y,Z軸に等しいものであり、図3の加熱炉ユニット110は、図1の加熱炉ユニット110A,…,110HのX−Z面の断面図である。図4は、本発明の一実施形態によるはんだ付け装置に用いる加熱炉ユニットに用いる輻射板の構成を示す平面図である。
【0022】
本実施形態による加熱炉ユニット110は、流体を送風する機構として、モータ120とブロアファン122とを備えている。ブロアファン122は、シャフト124によってモータ120の回転軸に連結されている。シャフト124は、図示しない軸受によって支承されている。また、本実施形態による加熱炉ユニット110は、多孔質板130と、鋳込みヒータ140と、輻射板150とを備えている。鋳込みヒータ140と輻射板150の被加熱物10に面する側には、表面処理部142,152が形成されている。鋳込みヒータ140は、その内部に棒ヒータ144が鋳込まれて形成されている。また、鋳込みヒータ140は、複数のスリット146が形成されている。さらに、搬送コンベア50による被加熱物10の搬送方向(X方向)の前後には、それぞれ、ケーシング160A,160Bが設けられており、その内部には、流体通路162A,162Bが形成されている。
【0023】
なお、図3に示す状態は、搬送コンベア50の上半分の加熱炉ユニットの構成にについて示しており、搬送コンベア50の下側にも、モータ120と、ブロアファン122と、多孔質板130と、鋳込みヒータ140と、輻射板150とからなる加熱炉ユニットが備えられており、搬送コンベア50上の被加熱物10を上下方向から加熱する構成となっている。
【0024】
モータ120によって回転するブロアファン122は、背面側の流体(例えば、空気や不活性ガス)を吸引して加圧して、矢印B1方向に空間Cに送風する。空間Cは、ケーシングと多孔質板130によって仕切られた空間である。但し、多孔質板130には、多数の孔が形成されているため、鋳込みヒータ140や輻射板150の方に連通している。空間Cは、以上のように、多孔質板130を介してのみ他の空間と連通しているため、内部の流体圧が上昇する。内部圧の上昇した流体は、多孔質板130の多数の孔から輻射板150の方向に噴出する。多孔質板130から噴出した流体は、鋳込みヒータ140によって加熱され、スリット146から輻射板150の方向(矢印B2方向)に噴出する。
【0025】
このようにして、ブロアファン122によって加圧された流体は、空間Cにおいて所定圧まで加圧された後、多孔質板130から噴出するようにしているため、例えば、ブロアファン122から噴き出す流体の速度分布があっても、空間Cの内部圧が一定圧まで上昇するため、多孔質板130から噴出する流体の速度のばらつきを低減して、ほぼ一定速度の流体とすることができる。鋳込みヒータ140のスリット146から噴出する流体の速度は、例えば、20m/sと高速でかつ一定である。本実施形態では、高速で加熱された流体を、被加熱物10に吹きつけることにより、熱交換効率を向上して、被加熱物10の温度を速やかに上昇させるようにしている。
【0026】
また、多孔質板130の材料として、プラチナ(Pt)・銅(Cu)・マンガン(Mn)の合金を用いることにより、多孔質板130に、フラックスを分解する触媒作用を持たせることができる。後述するように、被加熱物10に吹きつけられた加熱流体は、流体通路162を介して、ブロアファン122より空間Cに環流される。被加熱物10のはんだが溶融するとフラックスが発生するが、このフラックスが空間Cに環流される。ここで、多孔質板130の表面に付着したフラックスは、ラチナ(Pt)・銅(Cu)・マンガン(Mn)の触媒作用を有する合金によって分解され、多孔質の目詰まりを防止することができる。多孔質板130は、加熱炉ユニット110から取り外すことが可能であり、取り外してフラックスを除去することも可能である。
【0027】
ここで、図4を用いて、輻射板150の構成について説明する。輻射板150には、複数の小孔154が形成されている。複数の小孔154は、互いに正三角形の頂点の位置に形成されており、燐列する小孔間の距離A1,A2,A3は、等しくなっている。小孔154の直径は、φ2〜φ5(mm)としており、例えば、φ3.5(mm)としている。このとき、燐列する小孔間の距離A1,A2,A3は、20(mm)としている。このような小孔154の寸法,配置とすることにより、輻射板150から矢印B3方向に噴出する流体をカルマン渦を有する乱流とすることができる。鋳込みヒーター140のスリット146から噴出する流体は、ほぼ層流であり、その速度は、前述したように、例えば、20m/sと高速流体である。この高速流体を層流状態のまま、被加熱物10に吹きつけると、その流速により、被加熱物10上の電子部品が飛ばされたり、位置ズレが発生する。プリント基板のはんだペーストの上に載置された電子部品は、単にはんだペースト上に載せられているだけであり、特に固定されていないため、高速流体によって容易に位置ズレが発生する。このような位置ズレを防止するため、小孔154の形成された輻射板150を用いることにより、被加熱物10に吹きつけられる高速流体を乱流として、電子部品の位置ズレ等を防止するようにしている。なお、小孔154の配置は、正三角形の頂点に配置する場合に限らず、2等辺三角形の頂点に配置することも可能である。即ち、小孔154間の距離A1=A2とし、A1>A3とすることもできる。
【0028】
輻射板150から吹き出す加熱流体の温度は、温度センサによって検出され、ヒーター140に対する通電量を制御することにより、加熱流体の温度を所定温度(例えば、プリヒータ部100Aでは180℃、はんだ付け部100Bでは240℃)に制御することができる。
【0029】
被加熱物10に吹きつけられた加熱流体は、ケーシング160A,160Bの中の流体通路162A,162Bからブロアファン122によって吸引され、環流される。ここで、流体通路162Aの幅W1は、流体通路162Bの幅W2よりも広くしている。即ち、搬送コンベア50による被加熱物10の搬送方向に形成された流体通路162Aの幅W1は、逆搬送方向に形成された流体通路162Bの幅W2よりも広くしている。幅W1は、例えば、10cmであり、幅W2は、例えば、20cmである。図1に示したように、加熱炉ユニット110A,…,110Hは、搬送方向に縦列に接続されている。従って、図3に示すように、加熱炉ユニット110の逆搬送方向には、縦列接続された他の加熱炉ユニット110’の流体通路162A’が並列に設けられている。流体通路162A’の幅W1は、流体通路162Bの幅W2よりも広いため、被加熱物10に吹きつけられた加熱流体は、矢印B4の流れとして、隣接する加熱炉ユニット110’側に吸引される量が、矢印B5の流れとして、自らの加熱炉ユニット110に吸引される量よりも多くすることができる。その結果、図1に示した加熱炉ユニット110A,…,110Hの内部には、加熱炉ユニット110Hから加熱炉ユニット110Aの方向に向かう流体の流れを形成することができる。加熱炉ユニット110A,…,110Eの内部温度は、加熱炉ユニット110G,110Hの内部温度よりも低いため、加熱炉ユニット110Eから加熱炉ユニット110Gの方向に向かう流体の流れが形成されると、加熱炉ユニット110Gの内部温度が低下することになるが、加熱炉ユニット110Gから加熱炉ユニット110H方向への加熱流体の流れを形成することにより、加熱炉ユニット110G,110Hの内部温度の低下を防止することができる。
【0030】
次に、表面処理部142,152の機能について説明する。表面処理部142は、鋳込みヒーター140の表面に形成されたセラミック溶射膜である。また、表面処理部152も、同様に、輻射板150の面に形成されたセラミック溶射膜である。前述したように、特に、黒色モールドのSOPタイプのIC14Aでは、照射する赤外線の波長によって、温度制御の容易性が異なるため、1μm以上で、20μm以下の波長の赤外線を、被加熱物10に照射するようにした方がより正確な温度制御が可能であることが判明している。表面処理部142,152は、1〜20μm以外の波長の赤外線を吸収して、1〜20μmの範囲の波長の赤外線を被加熱物10に照射するために用いられている。また、鋳込みヒーター140の棒ヒーターの外周材及び輻射板150の材料として、アルミニュウムを用いることにより、1μm以下の波長の赤外線の放射を抑制するようにしている。
【0031】
表面処理部142,152として、例えば、アルミナ(Al2O3)・チタニア(TiO2)を主成分とするセラミック溶射膜としたとき、この表面処理部142,152から放射される赤外線の放射波長を、9±1(μm)とすることができる。この放射波長の放射率は、0.98である。また、表面処理部142,152の耐用温度は、540℃であり、十分使用に耐えうるものである。このように、放射される赤外線の放射波長が、9±1(μm)であり、放射率が、0.98が赤外線を被加熱物に放射するようにしたところ、被加熱物の加熱温度ばらつき(ΔT)を、5℃とすることができ、230〜240℃の範囲に制御することが可能であった。
【0032】
なお、他のセラミック溶射膜としては、例えば、クロミア(Cr2O3)を主成分とするセラミック溶射膜(赤外線の放射波長:12±1(μm),放射率:0.97)を用いることもできる。さらには、アルミナ(Al2O3)を主成分とするセラミック溶射膜(赤外線の放射波長:9±1(μm),放射率:0.93)や、チタニア(TiO2)を主成分とするセラミック溶射膜(赤外線の放射波長:7±5(μm),放射率:0.85)や、アルミナ(Al2O3)・ジルコニア(ZrO2)を主成分とするセラミック溶射膜(赤外線の放射波長:9±1(μm),放射率:0.98)や、ジルコニア(ZrO2)・イットリア(Y2O3)を主成分とするセラミック溶射膜(赤外線の放射波長:11±2(μm),放射率:0.95)を用いることもできる。
【0033】
なお、上述した例では、2つの表面処理部142,152を用いるものとしたが、一方のみを用いるようにしてもよいものである。例えば、表面処理部152は、薄板状の輻射板150の表面に溶射により形成されるため、鋳込みヒーター140の表面に形成される表面処理部142に比べて溶射が容易であり、安価に製造することができる。
【0034】
次に、図5を用いて、本実施形態によるはんだ付け装置に用いる冷却ユニット210の構成について説明する。
図5は、本発明の一実施形態によるはんだ付け装置に用いる冷却ユニットの構成を示す断面図である。図5に示したX,Y,Z軸は、図1のX,Y,Z軸に等しいものであり、図5の冷却ユニット210は、図1R>1の冷却ユニット210A,210BのY−Z面の断面図である。
【0035】
本実施形態による冷却ユニット210は、流体を送風する機構として、モータ220とブロアファン222とを備えている。ブロアファン222は、シャフト224によってモータ220の回転軸に連結されている。シャフト224は、図示しない軸受によって支承されている。また、本実施形態による冷却ユニット210は、多孔質板230と、水冷式熱交換器240と、ヒートシンク250と、不活性ガスパイプ260とを備えている。さらに、搬送コンベア50による被加熱物10の搬送方向に直交する方向(Y方向)の左右には、それぞれ、ケーシング270C,270Dが設けられており、その内部には、流体通路272C,272Dが形成されている。
【0036】
モータ220によって回転するブロアファン222は、背面側の流体(例えば、空気や不活性ガス)を吸引して加圧して、矢印B11方向に空間Dに送風する。空間Dは、ケーシング270と多孔質板230によって仕切られた空間である。但し、多孔質板230には、多数の孔が形成されているため、搬送コンベア50の方に連通している。空間Dは、以上のように、多孔質板230を介してのみ他の空間と連通しているため、内部の流体圧が上昇する。内部圧の上昇した流体は、多孔質板230の多数の孔から搬送コンベア50の方向に噴出する。
【0037】
このようにして、ブロアファン222によって加圧された流体は、空間Dにおいて所定圧まで加圧された後、多孔質板230から噴出するようにしているため、例えば、ブロアファン222から噴き出す流体の速度分布があっても、空間Dの内部圧が一定圧まで上昇するため、多孔質板230から噴出する流体の速度のばらつきを低減して、ほぼ一定速度の流体とすることができる。本実施形態では、高速で冷却された流体を、被加熱物10に吹きつけることにより、熱交換効率を向上して、被加熱物10の温度を速やかに下降させるように,即ち、急速冷却している。また、不活性ガスパイプ260からは、窒素ガスのような不活性ガスが噴出して、被加熱物10に吹き付けられ、被加熱物10を冷却する。不活性ガスの温度は、例えば、20℃である。
【0038】
また、多孔質板240の材料として、プラチナ(Pt)・銅(Cu)・マンガン(Mn)の合金を用いることにより、多孔質板240に、フラックスを分解する触媒作用を持たせることができる。ここで、多孔質板240の表面に付着したフラックスは、プラチナ(Pt)・銅(Cu)・マンガン(Mn)の触媒作用を有する合金によって分解され、多孔質の目詰まりを防止することができる。多孔質板240は、冷却ユニット210から取り外すことが可能であり、取り外してフラックスを除去することも可能である。
【0039】
被加熱物10に吹きつけられた冷却用流体は、ケーシング270C,270Dの中の流体通路272C,272Dからブロアファン222によって吸引され、環流される。被加熱物10からブロアファン222に至る環流流路には、水冷式熱交換器240及びヒートシンク250が配置されており、被加熱物10の冷却によって昇温した冷却用流体を再冷却する。
【0040】
ここで、図1に示したように、冷却部200は、搬送コンベア50による搬送方向に縦列接続された2個の冷却ユニット210A,210Bから構成されている。図5に実線で示した冷却ユニット210を、図1R>1の冷却ユニット210B(搬送方向に接続されたもの)とし、流体通路272C,272Dの幅をW3とする。一方、図5に波線で示すように、冷却ユニット210Bの搬送方向とは逆方向に接続される冷却ユニット210Aの流体通路272C’,272D’の幅をW4としており、幅W4は、幅W3よりも広くしている。幅W4は、例えば、20cmであり、幅W3は、例えば、10cmである。従って、流体通路272C’,272D’の幅W4は、流体通路272C,272Dの幅W3よりも広いため、冷却ユニット210Bにおいて被加熱物10に吹きつけられた冷却用流体は、隣接する冷却ユニット210A側に吸引される量が、自らの冷却ユニット210Bに吸引される量よりも多くすることができる。その結果、図1に示した冷却ユニット210A,210Bの内部には、冷却ユニット210Bから冷却ユニット210Aの方向に向かう冷却用流体の流れを形成することができる。
【0041】
冷却ユニット210Bの搬送方向側には、出口側に開閉部322を備えている不活性ガスチャンバ320が配置されており、被加熱物10を搬出する際に、不活性ガスチャンバ320の開閉部322からの不活性ガスの流出が避けられないものである。しかしながら、本実施形態においては、冷却ユニット210Bから冷却ユニット210Aの方向に向かう冷却用流体の流れを形成することができることから、不活性ガスの流出量を低減することができる。従って、高価な不活性ガスの消費量を低減することができる。
【0042】
また、本実施形態では、高速の均一な流れ(流速)を冷却用流体を被加熱物に吹き付けることによって、冷却の熱交換効率を高くして、被加熱物を急速に冷却するようにしている。従って、はんだ内部組織を微細化することができる。また、はんだ中のAg3Sn針状結晶を抑制することができる。さらに、被加熱物の導体と電子部品のはんだ付け部から剥離するはんだ付け不良を抑制することもできる。
【0043】
次に、図6を用いて、本実施形態によるはんだ付け装置に用いる他の加熱炉ユニット110’の構成について説明する。
図6は、本発明の一実施形態によるはんだ付け装置に用いる他の加熱炉ユニットの構成を示す断面図である。図6に示したX,Y,Z軸は、図1のX,Y,Z軸に等しいものであり、図6の加熱炉ユニット110’は、図1の加熱炉ユニット110A,…,110HのX−Z面の断面図である。なお、図3と同一符号は同一部分を示している。
【0044】
本実施形態による加熱炉ユニット110’は、図3に示した加熱炉ユニット110と同様に、モータ120と、ブロアファン122、多孔質板130と、輻射板150とを備えている。本実施形態においては、ヒーター140Aの構成が異なっている。
【0045】
ヒーター140Aは、棒ヒーター144と、この棒ヒーター144に取り付けられた放熱フィン148とから構成されている。放熱フィン148は、図中のY方向に整列した複数枚フィンから構成され、棒ヒーター144からの赤外線放射を広く均一に行うようにしている。なお、放熱フィンとしては、棒ヒーター144の外周に、螺旋状に巻き付けるようにしたものを用いることもできる。
【0046】
以上説明したように、本実施形態によれば、多孔質板を用いて圧力を高め、多孔から均一な流速の高速加熱用流体をヒーターによって加熱して、高速な加熱用流体とするとともに、輻射板を用いて、カルマン渦の乱流を形成した後、被加熱物体に吹き付けることにより、被加熱物を高速で均一に加熱することができる。従って、被加熱物の温度差を低減することができる。特に、鉛フリーはんだにおいては、はんだの融点と電子部品の耐熱温度の差が少ないため、均一加熱を行えることにより、電子部品に温度的なダメージを与えることなく、鉛フリーはんだを溶融して、はんだ付けを行うことができる。また、表面処理部を備えることにより、遠赤外線波長1μmから20μmの波長を被加熱物に照射して、黒色モールドのIC等の温度も耐熱温度以下となるように、容易に制御することが可能となる。さらに、加熱部では、加熱流体を被加熱物の搬送方向とは逆方向に流すことにより、はんだ付け部の温度が低下することを防止できる。また、冷却部では、冷却用流体を被加熱物の搬送方向とは逆方向に流すことにより、不活性ガスの消費量を低減することができる。また、さらに、被加熱物を急冷化することによって、はんだ内部組織の微細化、はんだ中のAg3Sn針状結晶の抑制及び被加熱物の導体と電子部品のはんだ付け部から剥離するはんだ付け不良を抑制することができる。
【符号の説明】
【0047】
10…被加熱物
50…搬送コンベア
100…連続加熱炉部
100A…プリヒート部
100B…はんだ付け部
110…加熱炉ユニット
120,220…モータ
122,222…ブロアファン
130,230…多孔質板
140…鋳込みヒータ
142,152…表面処理部
150…輻射板
160,270…ケーシング
200…冷却部
210…冷却ユニット
240…水冷式熱交換器
250…ヒートシンク
260…不活性ガスパイプ
310,320…不活性ガスチャンバ
312,322…開閉部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
送風機から送られる流体をヒーターで加熱し、当該加熱流体を吹き付けることで被加熱物を加熱する加熱炉ユニットを備えるはんだ付け装置において、
前記送風機と前記ヒーターとの間に配置され、前記送風機から送られる流体の圧力を均一にするとともに、前記ヒーターに対して通風可能な複数の孔を有する多孔質体と、
前記ヒーターと前記被加熱物の間に配置され、前記ヒーターによって加熱された流体を乱流として前記被加熱物に吹き付ける輻射板と、
前記輻射板の前記被加熱物の側に設けられ、9±1μmの範囲の波長の赤外線を前記被加熱物に照射するセラミック溶射膜からなる表面処理部とを備え、
前記送風機が流体を吸引して加圧することにより、ケーシングと前記多孔質体により仕切られた第1の空間内部の流体圧を上昇させ、
前記第1の空間内部において流体圧が上昇した流体を、前記多孔質体に設けられた前記複数の孔から前記輻射板の方向に噴出させることを特徴とするはんだ付け装置。
【請求項2】
請求項1記載のはんだ付け装置において、
前記加熱炉ユニットを前記被加熱物の搬送方向に複数個接続するとともに、前記被加熱物の搬送方向と逆方向に流体の流れを形成することを特徴とするはんだ付け装置。
【請求項3】
請求項1記載のはんだ付け装置において、
前記加熱炉ユニットによって加熱された被加熱物を冷却する冷却ユニットを更に備え、
前記冷却ユニットは、冷却用流体を前記被加熱物に吹き付ける送風機と、被加熱物によって昇温した流体を冷却する冷却器と、前記送風機と前記被加熱物との間に配置され、前記送風機から送られる流体の圧力を均一にするとともに、前記被加熱物に対して通風可能な複数の孔を有する多孔質体とを備えることを特徴とするはんだ付け装置。
【請求項4】
請求項3記載のはんだ付け装置において、
前記冷却ユニットを前記被加熱物の搬送方向に複数個接続するとともに、前記被加熱物の搬送方向と逆方向に流体の流れを形成することを特徴とするはんだ付け装置。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかに記載のはんだ付け装置において、
前記輻射板はアルミニウムからなり、
前記セラミック溶射膜はアルミナを主成分とすることを特徴とするはんだ付け装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2010−135839(P2010−135839A)
【公開日】平成22年6月17日(2010.6.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−36991(P2010−36991)
【出願日】平成22年2月23日(2010.2.23)
【分割の表示】特願2005−375248(P2005−375248)の分割
【原出願日】平成11年12月10日(1999.12.10)
【出願人】(509186579)日立オートモティブシステムズ株式会社 (2,205)
【出願人】(390005223)株式会社タムラ製作所 (526)
【出願人】(596126867)株式会社タムラエフエーシステム (46)
【出願人】(000232999)株式会社日立カーエンジニアリング (141)
【Fターム(参考)】