説明

はんだ分離装置

【課題】使用済みのクリームはんだからはんだを分離することができるはんだ分離装置を提供する。
【解決手段】溶剤を主成分とするフラックス、及び金属材料からなるはんだ粒を含有するクリームはんだを加熱手段によって加熱してクリームはんだの溶融液102を得ながら、溶融液102をフラックスとはんだとの比重差により、溶融フラックスからなる上層102aと、溶融はんだからなる下層102bとに分離する溶融槽10と、上層102a中の溶融フラックスを溶融槽10外へ移送するためにタンク11の所定の高さ位置に接続されたフラックス移送管60と、下層102b中の溶融はんだを溶融槽10外へ移送するためにタンク11の底に接続されたはんだ移送管70とを設けた。かかる構成を具備するはんだ分離装置により、クリームはんだ中からはんだを分離することができた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クリームはんだや糸はんだなどのはんだ材からはんだを分離するはんだ分離装置に関するものである。また、金属材料と非金属材料とが混合された混合物から金属材料を分離する金属分離装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、マスク版による印刷法(例えば特許文献1に記載のもの)を利用して電子部品を配線基板の表面上に実装する表面実装技術が知られている。かかる表面実装技術では、まず、マスク版を用いて配線基板上にクリームはんだのパターンを印刷し、そのパターンの上に各種の電子部品をマウントする。そして、配線基板を電子部品とともにリフロー炉に投入してクリームはんだ中のはんだを溶融させることで、配線基板の電極パッドと、電子部品の底面の電極パッドとを接合する。
【0003】
このような表面実装技術では、クリームはんだ中に含まれるフラックスの主成分である溶剤の揮発性が高いことから、印刷工程での使用に伴ってクリームはんだの粘性が徐々に高くなる。そして、その粘性の高まりとともに、マスク版の微小貫通孔からのはんだ抜け性が低下して印刷不良を引き起こし易くなっていく。このため、容器から取り出された後のクリームはんだは、数時間〜数十時間といったごく短時間で寿命となり、その間に使い切れなかった分は処理業者に引き取られて処分される。
【0004】
低コスト化の観点からすれば、クリームはんだを使い切れる量だけ容器から取り出して使用することが望ましいが、マスク版の表面に十分量のクリームはんだを載せておかないと印刷不良を引き起こしてしまう。このため、クリームはんだを無駄なく使い切ることは非常に困難であり、処分しなければならなくなるものがどうしても発生してしまう。少量多品種生産に対応したオンデマンド受注では、マスク版やクリームはんだの仕様(はんだ粒の粒径など)の切換が早くなることから、処分せざるを得ないクリームはんだの量が多くなり易い。
【0005】
一方、はんだ付けロボットに用いられる糸はんだは、糸状のはんだ材の中にフラックスを内包しており、このフラックスが劣化すると、はんだが基板両面で弾かれてはんだ付け不良を引き起こす。このため、糸はんだも、1〜3年程度で寿命を迎えることになり、その間に使用されなかった分は処分されることになる。更には、ロボットで使用可能な寸法未満の破棄短線が発生し、これはロボットに使用することができないため、たとえ寿命を迎えていなくても処分されることになる。
【0006】
工場から処理業者に引き取られた使用済みのクリームはんだや糸はんだは、焼却によって非金属成分が除去された後、電気分解等によって銀、銅、スズ、鉛などといった具合に金属の種類毎に分離精製されてリサイクルされるのが一般的である。
【0007】
【特許文献1】特開平12−79675号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところが、溶剤の揮発によって粘性を高めてしまったクリームはんだ、フラックスの劣化によって寿命を迎えてしまった糸はんだ、あるいは上述の破棄短線であっても、その中のはんだ成分については、フラックスから分離して所定の形状に固めることで、はんだ資源として有効利用することが可能である。にもかかわらず、はんだ資源として利用しないままに処理業者によるリサイクルに回してしまうと、地球全体の物質循環系におけるエネルギー消費量を増大させてしまう。
【0009】
また、上述のような表面実装技術又ははんだ付けロボットによる実装技術に加えて、フローはんだ装置を用いる電子部品の実装も並行して行う工場では、これら装置にセットするためのはんだ棒(はんだのインゴット)が、クリームはんだや糸はんだとは別に必要になる。そして、はんだ棒は、使用済みのクリームはんだや糸はんだに含まれるはんだを利用して製造することが可能である。しかしながら、前述のような工場においては、使用済みのクリームはんだや糸はんだを処理業者に引き取ってもらう一方で、はんだ棒を購入するという運用がなされていた。使用済みのクリームはんだや糸はんだからはんだ棒を得るためには、クリームはんだや糸はんだからはんだを分離する必要があるが、それを可能にする装置がないために、クリームはんだや糸はんだの状態で処分せざるを得なかったからである。
【0010】
これまで、使用済みのクリームはんだや糸はんだに含まれるはんだを有効利用しないままに処分してしまうことによる問題について説明してきた。しかし、金属材料と非金属材料とが混合された混合物中に含まれる金属材料を有効利用しないままに処分すれば、同様の問題が発生し得る。
【0011】
本発明は、以上の背景に鑑みなされたものであり、その目的とするところは、はんだ材からはんだを分離することができるはんだ分離装置を提供することである。また、金属材料と非金属材料との混合物から金属材料を分離することができる金属分離装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するために、請求項1の発明は、溶剤を主成分とするフラックスと、金属材料であるはんだとを含有するはんだ材を加熱手段によって加熱してはんだ材の溶融液を得ながら、該溶融液をフラックスとはんだとの比重差によって溶融フラックスからなる上層と溶融はんだからなる下層とに分離する溶融槽と、該上層中の溶融フラックス及び該下層中の溶融はんだの何れか一方を該溶融槽外へ移送する移送手段とを備えることを特徴とするものである。
また、請求項2の発明は、請求項1のはんだ分離装置において、上記溶融槽の鉛直方向における所定の高さに接続されたフラックス移送管を用いて上記上層中の溶融フラックスを該溶融槽外に移送する第1移送手段と、上記下層中の溶融はんだを該溶融槽外に移送するために該溶融槽の底に接続されたはんだ移送管、及び該はんだ移送管内における溶融はんだの流通を必要に応じて阻止する流通阻止手段を有する第2移送手段とを、上記移送手段として用いたことを特徴とするものである。
また、請求項3の発明は、請求項2のはんだ分離装置において、上記フラックス移送管を加熱する第1管加熱手段と、上記はんだ移送管を加熱する第2管加熱手段と、上記溶融槽の加熱手段、該第1管加熱手段、該第2管加熱手段による加熱温度をそれぞれ個別に制御する温度制御手段とを設けたことを特徴とするものである。
また、請求項4の発明は、請求項1乃至3の何れかのはんだ分離装置において、上記溶融液に沈められたり該溶融液から引き上げられたりすることで該溶融液の鉛直方向における液位を調整する液位調整部材と、該溶融液に対して該液位調整部材を上下移動させる移動機構とを設けたことを特徴とするものである。
また、請求項5の発明は、請求項1乃至3の何れかのはんだ分離装置において、上記溶融液に沈められたり該溶融液から引き上げられたりすることで該溶融液の鉛直方向における液位を調整する液位調整部材と、該溶融液中における上層と下層との界面を検知する界面検知手段とを設けたことを特徴とするものである。
また、請求項6の発明は、請求項1乃至3の何れかのはんだ分離装置において、上記溶融液に沈められたり該溶融液から引き上げられたりすることで該溶融液の鉛直方向における液位を調整する液位調整部材と、該溶融液中における上層と下層との界面を検知する界面検知手段と、駆動源からの駆動伝達によって該液位調整部材を上下移動させる移動機構と、該界面検知手段による検知結果に基づいて該駆動源による移動機構の駆動を制御する駆動制御手段とを設けたことを特徴とするものである。
また、請求項7の発明は、非金属材料と金属材料とが混合された混合物を加熱手段によって加熱して該混合物の溶融液を得ながら、該溶融液を非金属材料と金属材料との比重差によって溶融非金属材料からなる上層と溶融金属材料からなる下層とに分離する溶融槽と、該上層と下層との界面を検知する界面検知手段と、該溶融液に沈められたり該溶融液から引き上げられたりすることで該溶融液の鉛直方向における液位を調整する液位調整部材と、該上層中の溶融非金属材料を移送するために該溶融槽の鉛直方向における所定の高さに接続された移送管とを備えることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0013】
請求項1乃至6の発明においては、溶融槽内で溶融せしめたはんだ材中の成分を比重差によって溶融フラックスと溶融はんだとに分離した後、分離後の溶融フラックス及び溶融はんだのうちの少なくとも何れか一方を移送手段によって溶融槽外に移送することで、クリームはんだや糸はんだなどのはんだ材からはんだを分離することができる。
特に、請求項2の発明においては、流通阻止手段によって溶融槽内からはんだ移送管への液の流通を阻止した状態で、はんだ材を溶融槽内で溶融せしめて溶融液を得た後、比重差によって上層と下層とに分離する。そして、上層中の溶融フラックスについては、溶融槽の所定の高さに接続されたフラックス移送管内に流入させて溶融槽外に移送する。また、下層中の溶融はんだについては、溶融槽の底に接続されたはんだ移送管内に流入させて溶融槽外に移送する。かかる構成では、溶融槽の溶融液中に移送管を投入することなく、溶融フラックスや溶融はんだを溶融槽外に移送することができる。
また特に、請求項3の発明においては、フラックス移送管を第1管加熱手段によって加熱して、移送中の溶融フラックスからフラックス移送管への熱伝導を抑えることで、フラックス移送管内での溶融フラックスの放熱による凝固を回避することができる。更には、はんだ移送管を第2管加熱手段によって加熱することで、はんだ移送管内での溶融はんだの放熱による凝固を回避することもできる。
また特に、請求項4乃至6の発明においては、溶融液に液位調整部材を沈めることで、溶融液中における上層と下層との界面の高さに調整する。これにより、溶融槽に投入するはんだ材の量が一定でなくても、上層と下層との界面を所定の高さに調整することができる。
また特に、請求項4の発明においては、溶融液に対して液位調整部材を沈めたり引き上げたりという操作を手作業によらず、移送機構によって容易に行うことができる。
また特に、請求項5又は6の発明においては、液位調整部材の溶融液中への沈降に伴って徐々に上昇していく上層と下層との界面を、界面検知手段によって所定の高さ位置で検知することで、界面を所定の高さに容易に調整することができる。
また特に、請求項6の発明においては、界面検知手段による検知結果に基づいて移動機構の駆動源を停止する制御を行うことで、溶融液における下層と上層との界面の高さレベルを自動で調整することができる。
請求項7の発明においては、金属材料と非金属材料との混合物を溶融槽内で溶融せしめて溶融液を得ながら、溶融液中の成分を比重差によって溶融非金属からなる上層と溶融金属からなる下層とに分離した後、液位調整部材の沈降によって溶融液の液位を引き上げて両層の界面を移送管の高さ付近まで上昇させることで、溶融液中から溶融非金属を除去する。これにより、金属材料と非金属材料との混合物から金属材料を分離することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明を適用した金属分離装置として、使用済みのクリームはんだや糸はんだからはんだを分離するはんだ分離装置の一実施形態について説明する。
図1は、本実施形態に係るはんだ分離装置を示す斜視図である。同図において、はんだ分離装置は、4つの車輪1aを具備する架台1、溶融槽10、マニプレータ20、フラックスタンク30、はんだ受皿となるインゴットトレイ40、排気ブロワ50、複数の配管などを備えている。
【0015】
図示しない支持手段によって架台1の表面よりも高いレベルに位置するように支持される溶融槽10の直下には、架台1の表面上に載置されたインゴットトレイ40が位置している。溶融槽10の側方では、溶融フラックスを受け入れて貯留するためのフラックスタンク30が架台1の表面上に置かれている。
【0016】
また、溶融槽10の後方には、マニプレータ20が配設されている。このマニプレータ20は、架台1の表面上に立設せしめられた支柱21、この支柱21を軸にして水平方向に90[°]の角度で回動自在に支持されたアーム22などを有している。更には、このアーム22の回動軸とは反対側の端部において鉛直方向に延在するように保持された駆動棒23、これを上下移動せしめるか、あるいは下方に向けて伸縮せしめるかするための駆動機構24、これの駆動源たる駆動モータ25、駆動棒23の先端に固定された液位調整部材26なども有している。なお、駆動機構24は、産業ロボットのマニプレータに広く用いられている周知の技術により、駆動棒23を上下移動又は伸縮せしめるものである。
【0017】
マニプレータ20は、支柱21を中心にして液位調整部材25を溶融槽10の真上から90[°]ずらした座標に位置させるアーム22の回動位置を、ホームポジションとしている。また、液位調整部材25を溶解槽10の真上に位置させるアーム22の回動位置を駆動ポジションとしており、アーム22がこの駆動ポジションにセットされると、図示しない駆動ポジションセンサがそれを検知する。そして、駆動ポジションセンサによってアーム22が駆動ポジションにあることが検知されているときに駆動機構24を駆動することで、駆動棒23を上下移動又は伸縮させる。この上下移動又は伸縮により、駆動棒23の先端に固定された液位調整部材26が溶解槽10の真上において上下移動して、溶解槽10内に投入されたり、溶解槽10から引き出されたりする。なお、アーム22の回動は作業者によって手動で行われるが、自動で行うようにしてもよい。
【0018】
図2は、本実施形態に係るはんだ分離装置を示す概略構成図である。同図におて、溶解槽10は、ステンレス等の高融点金属からなる筒状のタンク11、これの外周に巻き付けられた加熱手段としての溶解用帯ヒータ、タンク11の内周面によって上下方向にスライド移動可能に保持される遮蔽板13などを有している。また、タンク11を溶解用帯ヒータとともに覆うように装着された図示しない断熱材も有している。溶融用帯ヒータは、タンク11の下部に巻き付けられた溶融用下部帯ヒータ12aと、タンク11の中部に巻き付けられた溶融用中部帯ヒータ12bと、タンク11の上部に巻き付けられた溶融用上部帯ヒータ12cとからなる。これら溶解用帯ヒータの熱を、タンク11を介してタンク11内の図示しないクリームはんだに伝達することで、クリームはんだを溶融加熱する仕組みになっている。なお、帯ヒータの巻き付け密度については、「溶解用下部帯ヒータ12a>溶解用中部帯ヒータ12b>溶解用上部ヒータ12c」という関係になるように、上部、中部、下部で巻き付け密度を異ならせている。
【0019】
断熱材とタンク11との間には、周知の技術によって温度を検知する図示しない温度センサが、タンク11の下部、中部、上部にそれぞれ配設されており、温度制御手段たる溶融温度制御回路14に検知結果を出力する。溶融温度制御回路14は、それら温度センサからの出力信号に基づいて溶解用下部帯ヒータ12a、溶融用中部帯ヒータ12b、溶融用上部帯ヒータ12cに対する電源供給をそれぞれ個別にオンオフ制御する。これにより、タンク11内における下部の温度を230[℃]程度に維持する。また、タンク11内における中部の温度を140[℃]程度に維持する。また、タンク11内における上部の温度を70[℃]程度に維持する。
【0020】
上述したように、溶融フラックス中には、溶剤の他に樹脂が含まれており、これは過剰に熱すると焦げとなってタンク11内面に固着したり、溶融はんだ中に混入したりする。はんだの融点は210[℃]程度であるが、この温度で長時間加熱してしまうと樹脂焦げを確実に発生させてしまう。この一方で、クリームはんだ中のはんだについては、210[℃]以上の温度で加熱し続ける必要がある。
【0021】
そこで、本実施形態に係るはんだ分離装置では、上述したように、加熱温度をタンク11の下部から上部に向けて230[℃]、140[℃]、70[℃]と段階的に低くするようになっている。これにより、クリームはんだ中のはんだを確実に溶融せしめながら、フラックスを過剰に加熱してしまうことによるフラックス樹脂成分の焦げの発生を抑えることができる。具体的には、本はんだ分離装置では、タンク11における上部、中部、下部の何れについても、フラックスの融点よりも高い温度に加熱する。このため、クリームはんだがタンク11内のどこに存在していても、その中のフラックスを溶融させることができる。フラックスが溶融すると、はんだは溶融しているか否かにかかわらず、比重差によって溶融フラックス中で沈降し始める。そして、加熱開始からしばらくすると、タンク11の下部まで沈降し、そこで融点よりも高い温度で加熱されて確実に溶融する。一方、タンクの上部では、加熱温度がフラックスの融点よりも若干高めという比較的低い値(70℃)に設定されているので、過剰な加熱によるフラックス樹脂成分の焦げの発生が回避される。但し、タンクの中部では、加熱温度をはんだの融点よりも遙かに低く設定してしまうと、中部と下部との境界付近ではんだの加熱不足を発生させるおそれがある。そこで、本はんだ分離装置では、中部における加熱温度を上部と下部との中間的な値に設定している。これにより、前述の境界付近におけるはんだの溶融不良を抑えつつ、フラックス樹脂成分の焦げの発生を抑えることができる。
【0022】
溶融用帯ヒータ(12a,b,c)による加熱温度を検知させるための温度センサに対しては、ヒータの温度ではなく、タンク11の温度を検知させるようになっている。
【0023】
タンク11の内部では、第1電極90、第2電極91及び第3電極92が、タンク11との絶縁状態を維持しつつ、タンク内周面に沿って所定のピッチで並ぶように固定されている。これら3つの電極は、図3に示すように、タンク11の円柱方向において、120[°]ずつ位相ずれした位置に固定されている。そして、前述した微調整により、それぞれ後述するオーバーフロー開口の下端レベルよりもほんの少しだけ低い位置で液面を検知するように固定されている。
【0024】
第1電極90、第2電極91、第3電極92には、それぞれ図示しない電線がタンク外部から接続されている。これら電線は、それぞれの電極と、後述する液位検知回路93とを電気接続するものである。そして、3つの電極や液位検知回路93は後述する界面検知手段たる界面検知センサの一部を構成している。
【0025】
先に示した図2において、溶融槽10のタンク11に対しては、鉛直方向における所定の高さ位置に金属製のフラックス移送管60が接続されており、その接続部の開口を上述のオーバーフロー開口としてタンク内側に向けている。フラックス移送管60の途中には、第1ボール弁61がユニオン接続されており、これの開閉動作によってフラックス移送管60内の液の流通が許容されたり阻止されたりする。また、フラックス移送管60や金属製の第1ボール弁61の外周面には、第1管加熱手段としての第1管用帯ヒータ62が巻かれており、フラックス移送管60や第1ボール弁61を加熱する。第1管用帯ヒータ62の上には、更に、図示しない断熱材が巻かれている。この断熱材と、フラックス移送管60との間には図示しない温度センサが配設されており、温度検知信号を第1管加熱温度制御回路67に出力する。第1管加熱温度制御回路67は、温度センサからの出力信号に基づいて第1管用帯ヒータ62に対する電源供給をオンオフ制御することで、フラックス移送管60に対する加熱温度を制御する。この加熱温度は例えば70[℃]程度である。
【0026】
フラックス移送管60のタンク11側とは反対側の端部には、耐熱性フレキシブルホースからなる移送ホース63が接続されており、これの先端側はフラックスタンク30に連結されている。フラックスタンク30には、移送ホース63の他、タンク内に空気を取り入れるためのベント管64や、後述するフラックス返送管65なども接続されている。
【0027】
溶融槽10のタンク11の底部にはテーパーが形成されており、その先端には金属製のはんだ移送管70がその開口をタンク内側に向けるように接続されている。はんだ移送管70の途中には、流通阻止手段としての第2ボール弁71がユニオン接続されており、その開閉動作によってはんだ移送管60内における液の流通を停止させたり、許容したりする。また、はんだ移送管70や第2ボール弁71の外周面には、第2管加熱手段としての第2管用帯ヒータ72が巻かれており、はんだ移送管70や第2ボール弁71を加熱する。第2管用帯ヒータ72の上には、更に、図示しない断熱材が巻かれている。この断熱材と、はんだ移送管70との間には図示しない温度センサが配設されており、温度検知信号を第2管加熱温度制御回路73に出力する。第2管加熱温度制御回路73は、温度センサからの出力信号に基づいて第2管用帯ヒータ72に対する電源供給をオンオフ制御することで、はんだ移送管70に対する加熱温度を制御する。この加熱温度は、溶融槽に対する加熱温度と同等で、例えば230[℃]である。
【0028】
一般的なボール弁は、液体流入口側や液体流出側に固定されたフランジによって管材とフランジ接続するタイプのものが主流である。しかしながら、本はんだ分離装置のようにボール弁を加熱する必要がある場合、フランジタイプのものでは、フランジが放熱板として機能してしまうため、管材との接続部における加熱温度の不足による溶融はんだや溶融フラックスの再凝固を起こすおそれがある。そこで、本はんだ分離装置では、第1ボール弁61や第2ボール弁71として、
管材から大きく羽根出すことのないユニオンによって管材と接続するユニオン接続タイプのものを用いている。これにより、移送管内における溶融はんだや溶融フラックスの過剰な加熱を防止しつつ、ボール弁と管材との接続部における溶融はんだや溶融フラックスの再凝固の発生を抑えることができる。
【0029】
溶融槽10のタンク11の上端付近には、排気管80が接続されており、これのタンク11とは反対側は、第1バタフライ弁81を介して排気ブロワ50に連結されている。
【0030】
タンク11内に配設された第1電極90、第2電極91、第3電極92は、それぞれ液位検知回路93に対して個別に電気接続されている。この液位検知回路93は、3つの電極とともに界面検知センサを構成するものであり、アドミタンスの変化に基づいてタンク11内における溶融液の上層と下層との界面を検知する。そして、界面検知信号をCPUやROM等から構成される制御部94に出力する。
【0031】
制御部94は、駆動ポジションセンサ27によってアーム22が上述の駆動ポジションにあることが検知されているときに、作業者によって図示しない降下開始ボタンが押下されると、駆動モータ25の駆動を開始する。これにより、溶解槽10の真上に位置している液位調整部材26を降下させて溶融槽10のタンク11内に進入させるのであるが、界面検知センサからの検知信号を受信した時点で駆動モータ25を停止させる。また、作業者によって図示しない上昇開始ボタンが押下されると、駆動棒23を所定の高さ位置まで上昇させるか、あるいは所定の長さまで収縮せしめるまで、駆動モータ25を逆回転駆動する。これにより、タンク11内に進入していた液位調整部材26が上昇してタンク11内から引き上げられる。
【0032】
タンク11は、使用済みのクリームはんだから5[kg]程度のはんだを分離するのに適した大きさになっており、例えば、直径100[mm]、高さ300[mm]程度のステンレス管からなる。
【0033】
本実施形態に係るはんだ分離装置によってクリームはんだからはんだを分離するには、まず、図4に示すように、ヘラ状のスクレーパー100を用いて、使用済みのクリームはんだ101をタンク11内に投入する。この際、液位調整部材(26)と干渉しないように液タンク11の開口を橋渡しするように設けられたすり切り棒16にスクレーパー100を擦り付けることで、スクレーパー100の表面に粘着しているクリームはんだ101を容易に掻き取ることができる。なお、使用済みのクリームはんだ101は、本実施形態に係るはんだ分離装置が設置されている工場内において、印刷用のマスク版の表面から回収されたものである。日々発生する使用済みのクリームはんだを回収容器内にストックしておき、ある程度まとまった量になった時点で、本実施形態に係るはんだ分離装置によって処理する。
【0034】
タンク11の内周面における上端付近には、庇部材15が図示しない液位調整部材(26)の移動軌跡に干渉しないように突設せしめられており、排気管80の開口を覆い隠している。これにより、タンク11に投入したクリームはんだ101を排気管80内に付着させるといった事態の発生が回避されている。
【0035】
タンク11の内周面にて、鉛直方向にスライド移動可能に保持される遮蔽板13が上方から下方に向けて押し込まれた状態のときには、図示のようにフラックス移送管60のオーバーフロー開口が遮蔽板13によって塞がれる。これにより、タンク11内に投入したクリームはんだ101をフラックス移送管60の内壁に付着させることによる分離後のフラックスへのはんだの混入を回避することができる。
【0036】
タンク11内へのクリームはんだ101の投入が終わったら、先に図2に示した溶融温度制御回路14による加熱温度制御を開始して、タンク11内のクリームはんだを加熱する。この加熱からしばらくすると、クリームはんだ101の全域に熱伝導が行き渡り、まず、クリームはんだ中のフラックスが溶融する。そして、溶融フラックス中にはんだの固まりが存在する状態になる。このはんだの固まりは、その後の更なる加熱によって昇温せしめられると、やがて溶融して溶融はんだとなる。
【0037】
クリームはんだは、周知のように、溶剤を主成分とするフラックスと、はんだ粒とが混合されたものであるが、常温ではフラックスがペースト状になっている。これは、フラックスが純粋な溶剤だけからなるものでなく、樹脂材料を含有しているからである。ある程度の温度まで加熱されると、ペースト状であったフラックスが液状になる。本明細書では、この液状のフラックスを溶融フラックスと称している。
【0038】
タンク11内では、溶融はんだが溶融フラックスとの比重差によって沈降して、タンク11の下部に集まっていく。これにより、図5に示すように、タンク内において、溶融フラックスからなる上層102aと、溶融はんだからなる下層102bとに分離した溶融液102が得られる。
【0039】
上層102aと下層102bとの分離が終わったら、図5に示したように、タンク11の内周面から遮蔽板13を引き上げて撤去するとともに、第1ボール弁61を開弁する。これにより、上層102aを構成する溶融フラックスのうち、フラックス移送管60のオーバーフロー開口以上のレベルに位置するものを、フラックス移動間60に通してフラックスタンク(30)に移送する。但し、このようにして上層102a中の溶融フラックスを移送しても、図6に示すように、オーバーフロー開口よりも下の領域に溶融フラックスからなる上層102aが残される。
【0040】
そこで、図示しない駆動機構を駆動制御して、窒化処理を施したステンレス等の金属からなる液位調整部材26をタンク11内に向けて降下させる。この際、上述した制御部(94)は、初めのうちは比較的高速で液位調整部材26を降下させていき、溶融液102に接触させるタイミングよりも前に、下降速度を落とす。
【0041】
液位調整部材16がタンク内11の溶融液102に沈み始めると、溶融液102の液位が上昇して、図7に示すように、溶融液102の上層102の上部がフラックス移送管60のオーバーフロー開口よりも上にくる。そして、上層102中の溶融フラックスがフラックス移送管60内に流れ込み、自然流下によって図示しないフラックスタンク30内に移送される。
【0042】
その後、液位調整部材16が溶融液102に沈降していくのに従って、図8に示すように、上層102a中の溶融フラックスが上側からフラックス移送管60内に順次飲み込まれていく。そして、やがて図上層102aが殆ど姿を消して、上層102aと下層102bとの界面がオーバーフロー開口の付近まで上昇してくる(図9)。すると、先に図2に示した第1電極90、第2電極91、第3電極92の下端がそれぞれ上層102aの溶融はんだに接触し初めて、それら電極間に電流が生じ始める。
【0043】
液位検知回路93は、第1電極90、第2電極91、第3電極92のうち、少なくとも何れか2つの間におけるアドミタンスが急激に変化したことを検知すると、界面検知信号を制御部94に出力する。この界面検知信号を受信した制御部94は駆動モータ25を速やかに停止させる。これにより、図9に示した上層102aと下層102bとの界面がオーバーフロー開口のレベルにほぼ達した時点で、液位調整部材26の下降が停止する。その後、作業者が上昇開始ボタンを押下すると、駆動モータ25の逆転によって液位調整部材26が溶融はんだからなる下層102bから引き上げられる。なお、少なくとも何れか2つの電極間でアドミタンスが急激に変化したことに基づいて駆動モータ25を停止させるOR回路に代えて、全ての電極間でアドミタンスが急激に変化したことに基づいて駆動モータ25を停止させるAND回路を採用してもよい。
【0044】
液位調整部材26に付着していた溶融はんだがタンク11内に十分に落ちきったことを見計らって、図10に示すように、はんだ移動管70の第2ボール弁71を開いて、タンク11内の溶融はんだをインゴットトレイ40内に自然流下させる。そして、インゴットトレイ40内に流し込んだ溶融はんだを自然放熱によって固化させた後、インゴットトレイ40内から取り出すことで、きれいに成型されたはんだ棒を得ることができる。これをそのままフローはんだ装置に投入するだけで、フローはんだ装置内でのはんだの噴流を得ることができる。
【0045】
以上、本実施形態に係るはんだ分離装置においては、使用済みのクリームはんだからはんだを分離して、はんだ棒に加工し直すことで、はんだ資源をはんだとして使用しないままリサイクルに回してしまうことによる地球全体の物質循環系におけるエネルギー消費量の増大を抑えることができる。また、使用済みのクリームはんだの処分費支出によるコストアップを回避したり、はんだ棒の購入量を低減して低コスト化を実現したりすることもできる。特に、地球環境保護の観点から、安価な「鉛含有はんだ」よりも、高価な「無鉛はんだ」が多く用いられるようになってきた近年においては、高価な無鉛のはんだ棒の購入量を減らすことで、コスト削減量を非常に大きくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】実施形態に係るはんだ分離装置を示す斜視図。
【図2】同はんだ分離装置を示す概略構成図。
【図3】同はんだ分離装置のタンクを上方から示す平面図。
【図4】使用済みのクリームはんだが投入されている溶融槽のタンクを示す模式図。
【図5】上層と下層とに分離した溶融液を収容する同タンクを示す模式図。
【図6】液位調整部材が投入され始めた状態の同タンクを示す模式図。
【図7】同溶融液に同液位調整部材が沈み始めた状態の同タンクを示す模式図。
【図8】下層中の溶融フラックスの移送がある程度まで進行した状態の同タンクを示す模式図。
【図9】溶融フラックスの移送が完了する直前の同タンクを示す模式図。
【図10】溶融はんだを移送している最中の同タンクを示す模式図。
【符号の説明】
【0047】
10:溶融槽
12:溶解用帯ヒータ(加熱手段)
14:溶融温度制御回路(温度制御手段)
24:駆動機構(移動機構)
25:駆動モータ(駆動源)
26:液位調整部材
60:フラックス移送管
61:第1管加熱温度制御回路(温度制御手段)
62:第1管用帯ヒータ(第1管加熱手段)
70:はんだ移送管
71:第2ボール弁(流通阻止手段)
72:第2管用帯ヒータ(第2管加熱手段)
73:第2管加熱温度制御回路(温度制御手段)
90:第1電極(界面検知手段の一部)
91:第2電極(界面検知手段の一部)
92:第3電極(界面検知手段の一部)
93:界面検知回路
94:制御部(駆動制御手段)
101:クリームはんだ
102:溶融液
102a:上層
102b:下層



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【特許請求の範囲】
【請求項1】
溶剤を主成分とするフラックスと、金属材料であるはんだとを含有するはんだ材を加熱手段によって加熱してはんだ材の溶融液を得ながら、該溶融液をフラックスとはんだとの比重差によって溶融フラックスからなる上層と溶融はんだからなる下層とに分離する溶融槽と、該上層中の溶融フラックス及び該下層中の溶融はんだの何れか一方を該溶融槽外へ移送する移送手段とを備えることを特徴とするはんだ分離装置。
【請求項2】
請求項1のはんだ分離装置において、
上記溶融槽の鉛直方向における所定の高さに接続されたフラックス移送管を用いて上記上層中の溶融フラックスを該溶融槽外に移送する第1移送手段と、
上記下層中の溶融はんだを該溶融槽外に移送するために該溶融槽の底に接続されたはんだ移送管、及び該はんだ移送管内における溶融はんだの流通を必要に応じて阻止する流通阻止手段を有する第2移送手段とを、
上記移送手段として用いたことを特徴とするはんだ分離装置。
【請求項3】
請求項2のはんだ分離装置において、
上記フラックス移送管を加熱する第1管加熱手段と、上記はんだ移送管を加熱する第2管加熱手段と、上記溶融槽の加熱手段、該第1管加熱手段、該第2管加熱手段による加熱温度をそれぞれ個別に制御する温度制御手段とを設けたことを特徴とするはんだ分離装置。
【請求項4】
請求項1乃至3の何れかのはんだ分離装置において、
上記溶融液に沈められたり該溶融液から引き上げられたりすることで該溶融液の鉛直方向における液位を調整する液位調整部材と、該溶融液に対して該液位調整部材を上下移動させる移動機構とを設けたことを特徴とするはんだ分離装置。
【請求項5】
請求項1乃至3の何れかのはんだ分離装置において、
上記溶融液に沈められたり該溶融液から引き上げられたりすることで該溶融液の鉛直方向における液位を調整する液位調整部材と、該溶融液中における上層と下層との界面を検知する界面検知手段とを設けたことを特徴とするはんだ分離装置。
【請求項6】
請求項1乃至3の何れかのはんだ分離装置において、
上記溶融液に沈められたり該溶融液から引き上げられたりすることで該溶融液の鉛直方向における液位を調整する液位調整部材と、該溶融液中における上層と下層との界面を検知する界面検知手段と、駆動源からの駆動伝達によって該液位調整部材を上下移動させる移動機構と、該界面検知手段による検知結果に基づいて該駆動源による移動機構の駆動を制御する駆動制御手段とを設けたことを特徴とするはんだ分離装置。
【請求項7】
非金属材料と金属材料とが混合された混合物を加熱手段によって加熱して該混合物の溶融液を得ながら、該溶融液を非金属材料と金属材料との比重差によって溶融非金属材料からなる上層と溶融金属材料からなる下層とに分離する溶融槽と、該上層と下層との界面を検知する界面検知手段と、該溶融液に沈められたり該溶融液から引き上げられたりすることで該溶融液の鉛直方向における液位を調整する液位調整部材と、該上層中の溶融非金属材料を移送するために該溶融槽の鉛直方向における所定の高さに接続された移送管とを備えることを特徴とする金属分離装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2008−280616(P2008−280616A)
【公開日】平成20年11月20日(2008.11.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−164052(P2008−164052)
【出願日】平成20年6月24日(2008.6.24)
【分割の表示】特願2006−45175(P2006−45175)の分割
【原出願日】平成18年2月22日(2006.2.22)
【出願人】(593128172)リコーマイクロエレクトロニクス株式会社 (52)
【Fターム(参考)】