説明

はんだ印刷システム

【課題】 実用性の高い多レーン化はんだ印刷システムを提供する
【解決手段】 基板搬送方向に並べられてそれぞれが2つの搬送レーン36,38のうちの一方36においてはんだを印刷する2つの印刷機14a,14bと、それら2つの印刷機の間に配置されて基板を搬送するレーンをそれら2つの搬送レーンの間で切換える搬送レーン切換装置12bとを備えたはんだ印刷システムを、2つの印刷機のうちの一方による印刷を行う1レーン印刷モード(図3(b),(c))と、2つの印刷機の両方による印刷を行う2レーン並行印刷モード(図3(a))との両方において、印刷作業が可能に構成する。種々の電気回路製造態様を実現することができ、汎用性に富んだシステムとなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気回路を構成する回路基板の表面にクリーム状のはんだを印刷するためのシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電気回路製造の分野では、電気部品を回路基板(以下、単に「基板」と言う場合がある)に装着する部品装着機に対して、高速化が図られ、また、複数のレーンで並行に作業を行えるようにする多レーン化が図られている。その高速化,多レーン化に伴い、部品装着の前処理的作業であるはんだ印刷作業を行うはんだ印刷システムについても、多レーン化が検討されている。下記特許文献に記載のはんだ印刷システムは、2つのレーンの各々に、はんだ印刷装置を設置して、多レーン化を図っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−147288号公報(図2)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
多レーン化されたはんだ印刷システム(以下、「多レーン化はんだ印刷システム」と言う場合がある)は、開発途上にあり、未だ改善の余地が多分に残されている。したがって、多レーン化はんだ印刷システムに、何らかの改良を加えることで、当該システムの実用性を向上させることが可能である。本発明は、そのような実情に鑑みてなされたものであり、実用性の高い多レーン化はんだ印刷システムを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するため、本発明のはんだ印刷システムは、基板搬送方向に並べられてそれぞれが2つの搬送レーンのうちの一方においてはんだを印刷する2つの印刷機と、それら2つの印刷機の間に配置されて基板を搬送するレーンをそれら2つの搬送レーンの間で切換える搬送レーン切換装置とを備えたシステムであって、2つの印刷機のうちの一方による印刷を行う1レーン印刷モードと、2つの印刷機の両方による印刷を行う2レーン並行印刷モードとの両方において、印刷作業が可能とされたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明のはんだ印刷システムによれば、種々の電気回路製造態様を実現することができ、汎用性に富んだシステムとなる。例えば、基板種の異なる基板を用いた電気回路を並行して製造するような場合や、部品装着機の製造速度が大きい場合等には、2レーン並行印刷モードでの印刷作業を行い、一方、部品装着機の製造速度が小さい場合等には、1レーン印刷モードでの印刷作業を行うように構成することが可能である。
【発明の態様】
【0007】
以下に、本願において特許請求が可能と認識されている発明(以下、「請求可能発明」という場合がある)の態様をいくつか例示し、それらについて説明する。各態様は請求項と同様に、項に区分し、各項に番号を付し、必要に応じて他の項の番号を引用する形式で記載する。これは、あくまでも請求可能発明の理解を容易にするためであり、それらの発明を構成する構成要素の組み合わせを、以下の各項に記載されたものに限定する趣旨ではない。つまり、請求可能発明は、各項に付随する記載,実施例の記載等を参酌して解釈されるべきであり、その解釈に従う限りにおいて、各項の態様にさらに他の構成要素を付加した態様も、また、各項の態様から何某かの構成要素を削除した態様も、請求可能発明の一態様となり得るのである。
【0008】
なお、以下の各項において、(11)項が請求項1に、(12)項が請求項2に、(16)項が請求項3に、(18)項が請求項4に、(14)項が請求項5に、それぞれ相当する。
【0009】
(1)基板搬送方向に並んで配置され、それぞれが、(a)基板搬送方向と交差する方向に並んで設けられてそれぞれが回路基板を基板搬送方向に搬送する第1搬送レーンおよび第2搬送レーンと、(b)前記第1搬送レーンによって搬送される回路基板にクリーム状のはんだを印刷するはんだ印刷装置とを備えた上流側印刷機および下流側印刷機と、
前記上流側印刷機の前記第1搬送レーンによって搬送された回路基板を前記下流側印刷機の前記第2搬送レーンに搬入するとともに、前記上流側印刷機の前記第2搬送レーンによって搬送された回路基板を前記下流側印刷機の前記第1搬送レーンに搬入するために、前記上流側印刷機と前記下流側印刷機との間に配置された搬送レーン切換装置と
を備えたはんだ印刷システム。
【0010】
本項の態様のはんだ印刷システムを構成する2つ印刷機は、いずれも、簡単に言えば、2つの搬送レーンのうちの1つにはんだ印刷装置が設けられた印刷レーンであり、もう1つは、はんだ印刷装置が設けられずに単に基板が通過する通過レーンとされている。このような印刷機は、上記搬送レーン切換装置と組み合わせることで容易に2レーンのはんだ印刷システムを構築できるだけでなく、1レーンの電気回路製造ラインに配置することもでき、汎用性が高いものとなっている。したがって、汎用性の高い印刷機を2つ用いて構成された本項のはんだ印刷システムは、簡便なシステムとなっている。
【0011】
(2)前記基板搬送方向に交差する方向における前記第1搬送レーンと前記第2搬送レーンとの相対位置関係が、前記上流側印刷機と前記下流側印刷機とで同じくされた(1)項に記載のはんだ印刷システム。
【0012】
上記はんだ印刷装置に対して、オペレータは、マスクの交換,調整,クリーニング、はんだのマスク上への追加供給等の付随的な作業を行う。本項のシステムによれば、基板搬送方向に交差する方向(以下、「搬送幅方向」)における当該システムの同じ側に、2つの印刷機の各々のはんだ印刷装置が配設されるため、電気回路製造に従事するオペレータの動線を短くすることが可能となる。なお、当該システムが、部品装着機と共に電気回路製造ラインに配置される場合、搬送幅方向において、部品装着機に配備されるフィーダ等の部品供給装置が存在する側と同じ側に、2つ印刷機のばんだ印刷装置が配設されることが望ましい。
【0013】
(3)前記上流側印刷機と前記下流側印刷機とのいずれもが、自身の正面側の部分に前記第1搬送レーンを備え、かつ、背面側の部分に前記第2搬送レーンを備えた(1)項または(2)項に記載のはんだ印刷システム。
【0014】
印刷機は、一般に、正面側に、操作パネルが設けられる。本項のはんだ印刷システムは、上述したオペレータの動線を極めて短くすることが可能である。多くの電気回路製造ラインでは、背面側にオペレータが立てるスペースを設けることができないことがあり、そのような電気回路製造ラインに配置する場合に、本項のシステムは便利である。
【0015】
(4)前記上流側印刷機と前記下流側印刷機とのいずれもが、自身を制御するための制御装置を備え、前記上流側印刷機と前記下流側印刷機との一方の前記制御装置が、前記搬送レーン切換装置をも制御するように構成された(1)項ないし(3)項のいずれか1つに記載のはんだ印刷システム。
【0016】
上記搬送レーン切換装置は、上流側印刷機と下流側印刷機とを連動するように作動させられる。本項のシステムによれば、搬送レーン切換装置自体にそれを制御する制御装置を設けることなく、上流側印刷機と下流側印刷機との一方と搬送レーン切換装置とを容易に連動させることが可能である。
【0017】
(5)前記搬送レーン切換装置を印刷機間レーン切換装置とした場合において、
当該はんだ印刷システムが、
前記印刷機間レーン切換装置とは別の搬送レーン切換装置として、回路基板を前記上流側印刷機の前記第1搬送レーンと前記第2搬送レーンとの一方に選択的に搬入するために、前記上流側印刷機の上流側に配置された搬入側レーン切換装置を備えた(1)項ないし(4)項のいずれか1つに記載のはんだ印刷システム。
【0018】
本項の態様のシステムによれば、1個所から基板が供給される場合であっても、2つのレーンではんだ印刷を容易に行うことが可能である。
【0019】
(6)前記上流側印刷機が、自身を制御するための制御装置を備え、その制御装置が、前記搬入側レーン切換装置をも制御するように構成された(5)項に記載のはんだ印刷システム。
【0020】
本項の態様のシステムによれば、上記搬入側レーン切換装置自体に制御装置を設けずして、容易に搬入側レーン切換装置と上流側印刷機とを連動させることが可能となる。
【0021】
(7)前記搬送レーン切換装置を印刷機間レーン切換装置とした場合において、
当該はんだ印刷システムが、
前記印刷機間レーン切換装置とは別の搬送レーン切換装置として、前記下流側印刷機の前記第1搬送レーンと前記第2搬送レーンとのいずれによって搬送された回路基板であっても、その回路基板を、前記基板搬送方向と交差する方向における任意の1以上の搬出位置において搬出するために、前記下流側印刷機の下流側に配置された搬出側レーン切換装置を備えた(1)項ないし(6)項のいずれか1つに記載のはんだ印刷システム。
【0022】
本項の態様のシステムによれば、上記2つの搬送レーンの各々によって搬送された基板を、搬送幅方向において同じ位置で搬出できるため、電気回路製造ラインの当該システムの下流側に配置される装置,機器の構成の自由度を高めることが可能となる。逆に言えば、種々の構成の装置,機器を、容易に本システムの下流側に配置することが可能となる。
【0023】
(8)前記下流側印刷機が、自身を制御するための制御装置を備え、その制御装置が、前記搬出側レーン切換装置をも制御するように構成された(7)項に記載のはんだ印刷システム。
【0024】
本項の態様のシステムによれば、上記搬出側レーン切換装置自体に制御装置を設けずして、容易に搬出側レーン切換装置と下流側印刷機とを連動させることが可能となる。
【0025】
(9)前記搬送レーン切換装置が、前記基板搬送方向と交差する方向に移動可能な可動搬送レーンを有し、回路基板を載置させた状態でのその可動搬送レーンの前記基板搬送方向と交差する方向への移動によって、自身の機能が実現されるように構成された(1)項ないし(8)項のいずれか1つに記載のはんだ印刷システム。
【0026】
本項の態様のシステムの搬送レーン切換装置には、後述するシャトルコンベア装置のような装置が含まれる。そのような装置によれば、単純な構造で、レーン切換を行うことが可能となる。
【0027】
(11)当該はんだ印刷システムが、
(A)回路基板を前記上流側印刷機の第1搬送レーンによって搬送しつつその回路基板に対して前記はんだ印刷装置によるはんだ印刷を行い、その回路基板を前記下流側印刷機の第2搬送レーンによって搬送する第1印刷作業と、(B)回路基板を前記上流側印刷機の第2搬送レーンによって搬送し、その回路基板を前記下流側印刷機の第1搬送レーンによって搬送しつつその回路基板に対して前記はんだ印刷装置によるはんだ印刷を行う第2印刷作業との両方を実行可能とされ、
当該はんだ印刷システムによる印刷作業を、前記第1印刷作業と前記第2印刷作業とを並行して行う2レーン並行印刷モードと、前記第1印刷作業と前記第2印刷作業との一方のみを行う1レーン印刷モードとの両方にて行うことが可能に構成された(1)項ないし(9)項のいずれか1つに記載のはんだ印刷システム。
【0028】
本項の態様のシステムによれば、種々の電気回路製造態様を実現することができ、汎用性に富んだシステムとなる。例えば、当該システムの下流側に配置される部品装着機が2つの搬送レーンを有し、それら2つの搬送レーンが互いに異なる基板種(型番,品番,型式等を意味する)の基板に対して電気部品(以下、単に「部品」と言う場合がある)を装着するような場合には、上記第1印刷作業を行う基板の基板種と上記第2印刷作業を行う基板の基板種とが互いに異なる上記2レーン並行印刷モードでの印刷作業が好適である。また、例えば、部品装着機の製造速度(単位時間当たりに部品装着が完了する基板の数)が大きい場合には、上記第1印刷作業を行う基板の基板種と上記第2印刷作業を行う基板の基板種とが同じとなるような上記2レーン並行印刷モードでの印刷作業が好適である。一方、部品装着機の製造速度が小さい場合には、上記1レーン印刷モードでの印刷作業が好適である。このように、本項の態様のシステムは、種々の態様での電気回路の製造に、柔軟に対応することことが可能なのである。
【0029】
(12)前記上流側印刷機と前記下流側印刷機との少なくとも一方が、
前記1レーン印刷モードによる印刷作業において自身の前記第2搬送レーンのみの作動を許容するための第2搬送レーン作動スイッチを有する(11)項に記載のはんだ印刷システム。
【0030】
第2搬送レーンは、いわゆる通過レーンであり、はんだ印刷装置が配設されていない。第2搬送レーンのみを作動させて1レーン印刷モードで印刷作業を行う場合に、その印刷機のはんだ印刷装置は作動しないため、そのはんだ印刷装置に対して、調整,メンテナンス等の作業を行うことができる。その場合でも、搬送レーン切換装置は作動しており、はんだ印刷装置に対して不用意な作業が行われると、搬送レーン切換装置の円滑な作動を妨げることにもなりかねない。本項の態様のシステムでは、2つの印刷機の少なくとも一方に上記第2搬送レーン作動スイッチを設けることで、そのような事態を未然に防ぐことが可能である。また、上記第2搬送レーン作動スイッチを設けることで、本項の態様のシステムは、簡便に、1レーン印刷モードでの印刷作業を開始することが可能となる。さらに、例えば、第2搬送レーン作動スイッチを操作しても、第1搬送レーンとそれに設けられているはんだ印刷装置との少なくとも一方に関連する電力の供給がなされないようにされていれば、1レーン印刷モードでの印刷作業における待機電力を可及的に小さくできる。ちなみに、第2搬送レーン作動スイッチは、上流側印刷機と下流側印刷機との両者の各々に設けることが望ましい。
【0031】
なお、第2搬送レーン作動スイッチを始めとして後述の各種スイッチは、機械的接点を持つスイッチに限定されない。例えば、タッチパネルの画面の一部に触れることで、その部分がスイッチとして機能するようなものであってもよい。また、スイッチは、必ずしも1つの操作ボタン(「操作キー」と呼ぶこともできる)のみを有するものに限定されるものではなく、例えば、複数の操作ボタンが組み合わされて構成されるようなものであってもよい。簡単に言えば、2つ以上の操作ボタンを操作することによって機能するようなものであってもよいのである。
【0032】
(13)前記第2搬送レーン作動スイッチが、前記第2搬送レーンの作動の許容と禁止とを切換えるように構成された(12)項に記載のはんだ印刷システム。
【0033】
本項に記載の第2搬送レーン作動スイッチは、いわゆるトグルスイッチとして機能するスイッチであると考えることができる。このようなスイッチを採用することによって、本項の態様のシステムは、簡単なスイッチ操作で、作動させた第2搬送レーンを停止させることが可能となる。
【0034】
(14)前記上流側印刷機と前記下流側印刷機との少なくとも一方が、
前記1レーン印刷モードによる印刷作業において自身の前記第2搬送レーンのみの作動が許容されていることをオペレータに報知する報知器を備えた(11)項ないし(13)項のいずれか1つに記載のはんだ印刷システム。
【0035】
先に述べたように、第2搬送レーンにははんだ印刷装置が配設されていないため、オペレータは、そのレーンだけが作動していることを認識し難い。したがって、オペレータは、はんだ印刷装置等に対して前述の不用意な作業を行って、第2搬送レーンや搬送レーン切換装置の作動を阻害するといった事態を引き起こす可能性もある。本項の態様のシステムは、第2搬送レーンのみが作動している事実が報知器によってオペレータに報知されるため、1レーン印刷モードでの印刷作業において上記事態が発生することを、効果的に防止することが可能となる。なお、報知器は、音や光によって警告するようなものであればよい。例えば、パトライト(登録商標)や、ブザー等を採用することができる。第2搬送レーンのみが作動している事実を表わす文字,図形,記号等を表示可能なディスプレイも、報知器として採用可能である。
【0036】
(15)前記上流側印刷機と前記下流側印刷機とのいずれもが、表示画面を有する操作パネルを有し、その操作パネルの表示画面に前記自身の第2搬送レーンのみの作動が許容されていることが表示されることで、その操作パネルが前記報知器として機能するように構成された(14)項に記載のはんだ印刷システム。
【0037】
印刷機に限らず殆どの対基板作業機(以下、単に「作業機」と言う場合がある)は、通常、自身の制御装置の入出力端末として機能する操作パネルを有しており、その操作パネルは、多くの場合、汎用のディスプレイを有している。本項の態様には、そのディスプレイに第2搬送レーンのみが作動している事実を表わす文字,図形,記号等を表示させることによって、そのディスプレイを上記報知器として機能させる態様が含まれる。敢えて、専用の報知器を設けないため、本項の態様のシステムは、比較的安価なシステムとなる。
【0038】
(16)前記上流側印刷機と前記下流側印刷機との少なくとも一方が、
前記1レーン印刷モードによる印刷作業において自身の前記第1搬送レーンのみの作動を許容するための第1搬送レーン作動スイッチを有する(11)項ないし(15)項に記載のはんだ印刷システム。
【0039】
本項に記載の第1搬送レーン作動スイッチは、第2搬送レーンに対して有する前述の第2搬送レーン作動スイッチの機能と同等の機能を、第1搬送レーンに対して有するスイッチと考えることができる。第2搬送レーン作動スイッチを設けた場合と同様、上記第1搬送レーン作動スイッチを設けることで、本項の態様のシステムは、簡便に、1レーン印刷モードでの印刷作業を開始することが可能となる。さらに、例えば、第1搬送レーン作動スイッチを操作しても、第2搬送レーンに関連する電力の供給がなされないようにされていれば、1レーン印刷モードでの印刷作業における待機電力を可及的に小さくできる。ちなみに、第1搬送レーン作動スイッチも、第2搬送レーン作動スイッチと同様、上流側印刷機と下流側印刷機との両者の各々に設けることが望ましい。
【0040】
第1搬送レーン作動スイッチと、前述の第2搬送レーン作動スイッチとの両方を、1つの印刷機に併設する場合、それらスイッチの一部の操作を同じ操作ボタンで行うようにしてもよい。つまり。2つのスイッチの一部が共用されてもよいのである。例えば、第1搬送レーンと第2搬送レーンとの少なくとも一方を選択する操作ボタンを有し、その操作ボタンによって第1搬送レーンと第2搬送レーンとの一方が選択された状態において、別の操作ボタンによって、その選択された第1搬送レーンと第2搬送レーンとの一方の作動が許容されるような構成のスイッチとすることも可能である。
【0041】
(17)前記第1搬送レーン作動スイッチが、前記第1搬送レーンの作動の許容と禁止とを切換えるように構成された(16)項に記載のはんだ印刷システム。
【0042】
本項に記載の第1搬送レーン作動スイッチは、いわゆるトグルスイッチとして機能するスイッチであると考えることができる。このようなスイッチを採用することによって、本項の態様のシステムは、簡単なスイッチ操作で、作動させた第1搬送レーンを停止させることが可能となる。
【0043】
(18)前記上流側印刷機と前記下流側印刷機との少なくとも一方が、
前記2レーン並行印刷モードによる印刷作業において自身の前記第1搬送レーンと前記第2搬送レーンとの両方の作動を一度に許容するための両搬送レーン作動スイッチを有する(11)項に記載のはんだ印刷システム。
【0044】
上記両搬送レーン作動スイッチを有することで、本項の態様のシステムは、2レーン並行印刷モードでの印刷作業を、簡単に開始させることが可能となる。ちなみに、第1搬送レーン作動スイッチ,第2搬送レーン作動スイッチと同様、両搬送レーン作動スイッチは、上流側印刷機と下流側印刷機との両者に設けることが望ましい。
【0045】
第1搬送レーン作動スイッチと第2搬送レーン作動スイッチとの少なくとも一方と、両搬送レーン作動スイッチとを、1つの印刷機に併設する場合、それらスイッチの一部の操作を同じ操作ボタンで行うようにしてもよい。つまり。第1搬送レーン作動スイッチと第2搬送レーン作動スイッチとの少なくとも一方の一部と、両搬送レーン作動スイッチの一部が共用されてもよいのである。例えば、第1搬送レーンと第2搬送レーンとの少なくとも一方を選択する操作ボタンを有し、その操作ボタンによって第1搬送レーンと第2搬送レーンとの両方が選択された状態において、別の操作ボタンによって、それら選択された第1搬送レーンと第2搬送レーンとの両方の作動が許容されるような構成のスイッチとすることも可能である。
【0046】
(21)当該はんだ印刷システムが、
自身から搬出された回路基板が前記上流側印刷機と前記下流側印刷機とのいずれの前記はんだ印刷装置によってはんだが印刷されたものであるかを判別するための情報である実施装置判別情報を含む実施印刷情報を、自身から搬出された回路基板ごとに、搬出された順序に関連付けて記憶する情報記憶装置を備えた(1)項ないし(18)項のいずれか1つに記載のはんだ印刷システム。
【0047】
はんだ印刷システムは、電気回路製造ライン内に配置され、当該システムの下流側には、基板に対する作業を行う対基板作業機(以下、単に「作業機」と言う場合がある)が配置される。基板に対してどのような印刷作業が印刷が行われたかという情報である実施印刷情報は、当該電気回路製造ラインにとって有用な情報となる。しかし、搬出された基板(以下、「搬出基板」と言う場合がある)の実施印刷情報は、基板に何らかの印を付す等しない限り、何らかの管理をしなければ把握し得ず、本項の態様のシステムは、その有用な情報を、搬出された基板ごとに、搬出された順序に関連付けて記憶するといった管理手法を採用しており、搬出された基板(以下、「搬出基板」と言う場合がある)の管理に関して、利便性の高いシステムとなっている。
【0048】
実施印刷情報の中でも、基板に対して当該システムを構成する2つの印刷機のいずれによって印刷が行われたかを示す上記実施装置判別情報は、極めて有用である。例えば、1の基板種の基板に対して、上記2レーン並行印刷モードで印刷作業が行われてる場合に、当該システムから搬出された基板に対して、下流側の作業機のいずれかにおいて不良が発見されたときに、その基板に対する印刷が2つの印刷機のいずれで行われかを把握することは、その不良の原因を調べる上で、重要な情報となるのである。したがって、上記情報記憶装置の機能は、1の基板種の基板に対する2レーン並行印刷モードの印刷作業において、充分に発揮されることになる。
【0049】
本項のシステムは、情報記憶装置に記憶されている実施印刷情報が、他の装置,機器等によって利用されるべく、それら他の装置,機器等に送信されるように構成されてもよく、また、送信はされずに、当該システムにおいて表示する等、専ら当該システム内における処理に供されるものであってもよい。送信を行わないようにすれば、当該システムの簡素化が図れ、ひいては電気回路製造システムの簡素化,低コスト化が図れる。
【0050】
(22)当該はんだ印刷システムが、電気回路製造ライン内に配置され、
前記情報記憶装置が、
少なくとも、回路基板が当該はんだ印刷システムから搬出され、当該はんだ印刷システムの下流側に配置された特定の作業機によるその回路基板に対する作業が終了するまでの間、その回路基板についての実施印刷情報を記憶するように構成された(21)項に記載のはんだ印刷システム。
【0051】
本項に記載の「特定の作業機」は、本はんだ印刷システムによる印刷作業の結果を検査する印刷結果検査機や、本はんだ印刷システムによってはんだが印刷された基板に対して部品の装着を行う部品装着機等の作業機とすることができる。また、本はんだ印刷システムの下流側において、それらの作業機に基板を搬送したり、それらの作業機への搬入まで基板を待機させたりする装置とすることができる。その基板に関する不良、特に印刷作業についての不良を発見できる作業機であることが望ましく、その観点からすれば、印刷結果検査機が好適である。ある基板に対して少なくともその作業機よる作業が行われるまで、その基板の実施印刷情報を記憶しておくことで、情報記憶装置の機能が充分に発揮されることになる。
【0052】
(23)前記情報記憶装置が、少なくとも、当該はんだ印刷システムから最後に搬出された回路基板から設定枚数遡った回路基板までの各々についての実施印刷情報を記憶するように構成された(21)項または(22)項に記載のはんだ印刷システム。
【0053】
本項に記載の「設定枚数」は、実施印刷情報が充分に活用されるという観点から設定すればよく、その様な観点から設定することで、本項の態様のはんだ印刷システムにおいては、情報記憶装置の機能が充分に発揮されることとなる。
【0054】
(24)当該はんだ印刷システムが、電気回路製造ライン内に配置され、
前記設定枚数が、ある回路基板が当該はんだ印刷システムから搬出されてから、当該はんだ印刷システムの下流側に配置された特定の作業機によるその回路基板に対する作業が終了するまでに、当該はんだ印刷システムから搬出される回路基板の数に設定されている(23)項に記載のはんだ印刷システム。
【0055】
本項の態様は、先に説明した設定枚数の一例に関する態様である。はんだ印刷システムから搬出される基板は、順次搬送されて、上記特定の作業機に到達した後、その作業機による作業が完了する。したがって、当該システムから搬出されたある基板に対してその作業機による作業が終了するまでに、その基板の後に搬出された基板の数を、上記設定枚数に設定すれば、情報記憶装置は、上記特定の作業機による作業が終了するまで、すべての搬出基板についての実施印刷情報を記憶することになる。そのように設定枚数を設定することで、本項の態様のはんだ印刷システムは、情報記憶装置の機能を充分に発揮することのできるシステムとなる。
【0056】
(25)前記情報記憶装置が、前記設定枚数を変更可能に構成された(23)項または(24)項に記載のはんだ印刷システム。
【0057】
例えば、当該システムが配置される電気回路製造ラインの構成、例えば、特定の作業機と当該システムとの間の基板搬送に関する構成に応じて上記設定枚数を変更可能にすることにより、本項の態様のシステムは、種々の構成の電気回路製造ラインに広く対応可能なシステムとなるのである。
【0058】
(26)前記情報記憶装置が、当該はんだ印刷システムからの回路基板の搬出の都度、自身の記憶内容を更新するように構成された(21)項ないし(25)項のいずれか1つに記載のはんだ印刷システム。
【0059】
基板は、次から次へと当該システムから下流側に搬出される。したがって、搬出の都度、情報記憶装置による記憶の内容を更新することで、順次、搬出された基板についての実施印刷情報が記憶され、本項の態様のはんだ印刷システムでは、充分に、搬出基板の管理を行うことが可能である。
【0060】
(27)前記情報記憶装置が、前記下流側印刷機に設けられた(21)項ないし(26)項のいずれか1つに記載のはんだ印刷システム。
【0061】
印刷機が2つ配置されたはんだ印刷システムでは、下流側の印刷機による作業が開始される時点若しくは終了した時点で、実施印刷情報は確定することとなる。したがって、本項の態様のシステムでは、簡便な構成によって、つまり、装置,機器間の通信等を行うことなく、搬出基板について、充分な管理を行うことが可能となる。例えば、下流側印刷機の制御装置を上記情報記憶装置として機能させることにより、別途情報記憶装置を設ける必要がなく、比較的安価な電気回路製造ラインにおいて、充分な搬出基板の管理を行えることとなる。
【0062】
(28)当該はんだ印刷システムが、
前記情報記憶装置が記憶する実施印刷情報を、自身から搬出された回路基板ごとに、搬出された順序に関連付けて表示する情報表示装置を備えた(21)項ないし(27)項のいずれか1つに記載のはんだ印刷システム。
【0063】
上記実施印刷情報を記憶するだけでなく表示させることによって、さらに十分な搬出基板の管理が行えることとなる。したがって、本項の態様のシステムは、搬出基板の管理に関して、さらに利便性の高いシステムとなる。また、当該システムにおいて表示させることで、実施印刷情報を当該システムの外部に送信する必要がなく、比較的安価な電気回路製造ラインにおいて、充分な搬出基板の管理が行えることとなる。
【0064】
(29)当該はんだ印刷システムが、電気回路製造ライン内に配置され、
前記情報表示装置が、(A)当該はんだ印刷システムから搬出された回路基板が当該はんだ印刷システムの下流側に配置された特定の作業機に至るまでに待機させられる待機位置と(B)その特定の作業機における作業位置との少なくとも一方に対応付けられた1以上の表示領域が設定された表示画面を有しており、その1以上の表示領域の各々に、その各々に対応する位置に存在する回路基板についての実施印刷情報を表示するように構成された(28)項に記載のはんだ印刷システム。
【0065】
本項の態様のシステムによれば、電気回路製造システムを構成する機器,装置等の配置に合わせた画像と共に実施印刷情報が表示され、その情報の視認性が高まることとなる。言い換えれば、オペレータの感覚に訴えるようにして、その情報をオペレータに認識させることができるのである。なお、本項の態様では、上記待機位置と上記作業位置との両方に対応付けられた複数の表示領域が設定された表示画面を有するように、情報表示装置を構成することが望ましい。
【0066】
(30)前記1以上の表示領域が少なくとも前記待機位置に対応付けられており、
前記情報表示装置が、その1以上の表示領域の数を、その待機位置の数に応じて変更可能に構成された(29)項に記載のはんだ印刷システム。
【0067】
例えば、当該システムが配置される電気回路製造ラインの構成、例えば、特定の作業機と当該システムとの間の基板搬送に関する構成に応じて上記表示領域の数を変更可能にすることにより、本項の態様のシステムは、種々の構成の電気回路製造ラインに広く対応可能なシステムとなる。
【0068】
(31)前記情報表示装置が、当該はんだ印刷システムからの回路基板の搬出の都度、表示内容を更新するように構成された(28)項ないし(30)項のいずれか1つに記載のはんだ印刷システム。
【0069】
先に説明したように、基板は、次から次へと当該システムから下流側に搬出される。したがって、搬出の都度、情報表示装置の表示内容を更新することで、順次、搬出された基板についての実施印刷情報をオペレータに認識させることが可能となる。本項の態様のはんだ印刷システムでは、充分に、オペレータの視覚に訴えた搬出基板の管理を行うことが可能である。
【0070】
(32)前記情報表示装置が、前記下流側印刷機に設けられた(21)項ないし(31)項のいずれか1つに記載のはんだ印刷システム。
【0071】
一般に、印刷機は、操作パネルを有しており、その操作パネルを情報表示装置として機能させることが可能である。本項の態様のシステムでは、簡便な構成によって、つまり、別途情報表示装置を設けることなく、比較的安価な電気回路製造ラインにおいて、搬出基板について、充分な管理を行うことが可能となる。
【0072】
(33)前記上流側印刷機の前記はんだ印刷装置と前記下流側印刷機の前記はんだ印刷装置とのいずれもが、スキージを双方向のうちのいずれか一方向に移動させて印刷を行うように構成されており、
前記実施印刷情報が、いずれの方向に前記スキージを移動させて印刷が行われた回路基板であるかを判別するための印刷方向判別情報を含む(21)項ないし(32)項のいずれか1つに記載のはんだ印刷システム。
【0073】
本項の態様は、実施印刷情報に関する限定を加えた態様である。印刷方向判別情報は、印刷不良の原因を調べるために有用な情報であり、搬出される基板についてのそのような情報を記憶することで、本項の態様のシステムは、搬出基板の管理に関して、より利便性の高いシステムとなる。
【0074】
(34)前記上流側印刷機の前記はんだ印刷装置と前記下流側印刷機の前記はんだ印刷装置とのいずれもが、マスクを回路基板に押し付けた状態でスキージを移動させて印刷を行うように構成されるとともに、印刷前において任意に若しくは設定の清浄条件に基づいてそのマスクを清浄するためのクリーニング機構を有しており、
前記実施印刷情報が、前記クリーニング機構によって前記マスクの清浄が行われた後に最初に印刷が行われた回路基板であることを判別するためのクリーニング後印刷判別情報を含む(21)項ないし(33)項のいずれか1つに記載のはんだ印刷システム。
【0075】
本項の態様は、実施印刷情報に関する限定を加えた態様である。クリーニング後印刷判別情報は、印刷不良の原因を調べるために有用な情報であり、搬出される基板についてのそのような情報を記憶することで、本項の態様のシステムは、搬出基板の管理に関して、より利便性の高いシステムとなる。
【図面の簡単な説明】
【0076】
【図1】請求可能発明の実施例であるはんだ印刷システムを含んで構成された電気回路製造ラインの一部を示す斜視図である。
【図2】図1の電気回路製造ラインの一部の内部の構造を、その内部において回路基板が搬送される搬送レーンを中心に示した概念図である。
【図3】はんだ印刷システムが2レーン並行印刷モード若しくは1レーン印刷モードにて印刷作業を行っている状態において電気回路製造ラインを通過する基板の様子を示す概念図である。
【図4】はんだ印刷システムを構成する2つの印刷機の各々の操作パネルに表示されるレーン・基板種選択画面、および、上流側印刷機の操作パネルに表示される作業状態表示画面を示す図である。
【図5】はんだ印刷システムを構成する下流側印刷機の操作パネルに表示される作業状態表示画面を示す図である。
【図6】はんだ印刷システムを構成する下流側印刷機が有する制御装置の機能構成を示すブロック図である。
【図7】図6の制御装置が有するデータ格納部に設定されている搬出基板管理テーブルを概念的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0077】
以下、請求可能発明を実施するための形態として、実施例のはんだ印刷システムを、図を参照しつつ詳しく説明する。なお、請求可能発明は、下記実施例の他、前記〔発明の態様〕の項に記載された形態を始めとして、当業者の知識に基づいて種々の変更、改良を施した種々の形態で実施することができる。
【実施例】
【0078】
≪電気回路製造ラインの構成≫
i)全体構成
実施例のはんだ印刷システムは、例えば、図1に一部分を示す電気回路製造ライン内に配置される。その電気回路製造ラインは、基板搬送方向Dx(図における左上から右下に向かう方向)における上流側から下流側に向かって、基板供給装置10,第1シャトルコンベア装置12a,上流側印刷機14a,第2シャトルコンベア装置12b,下流側印刷機14b,第3シャトルコンベア装置12c,バッファコンベア装置16,印刷結果検査機18,第4シャトルコンベア装置12d,部品装着機20が、並べられている。図示を省略するが、部品装着機20の下流には、装着結果検査機,リフロー炉等が並べられており、それらの装置,機器によって、電気回路製造ラインが構成されている。ちなみに、以下の説明において、基板搬送方向Dxと交差する方向、つまり、ラインの幅方向(搬送における幅方向)を、搬送幅方向Dyと呼ぶ場合がある。また、基板搬送方向Dxにおける上流側を、単に「上流側」と、下流側を、単に「下流側」と呼ぶ場合あり、搬送幅方向Dyにおける電気回路製造ラインの手前側(図における左下側)を、各装置,機器の「正面側」と、奥側(図における右上側)を、「背面側」と呼ぶ場合がある。
【0079】
以下に、上記電気回路製造ラインの一部の内部構造を示す図2をも参照しつつ、上記装置,機器の各々について、詳しく説明する。ちなみに、図2は、回路基板(以下、単に「基板」と省略する場合がある)が搬送される搬送レーンを中心に示す概念図である。
【0080】
ii)基板供給装置
基板供給装置10は、積み重ねられた基板Sを、順次1枚ずつ供給するための装置である。当該基板供給装置10の上流側の部分に基板Sを積み重ねるための載置テーブル(図示を省略)が設けられており、その載置テーブルの下流側に、コンベア30が設けられている。載置テーブル上に積み重ねられた基板Sは、載置機構(図示を省略)によって一番上のものから順に、コンベア30に移され、移された基板Sは、コンベア30によって、第1シャトルコンベア装置12aに搬出される。載置テーブル,コンベア30,載置機構は、当該基板供給装置10の正面側の部分と背面側の部分とに、1つずつ設けられており、基板供給装置10は、正面側,背面側の2箇所において、基板Sを供給可能とされている。
【0081】
上記コンベア30を始めとして、電気回路製造ラインには、種々のコンベアが、上記装置,機器に配設されている。それらのコンベアは、いずれも、1対の支持板と、その1対の支持板にそれぞれ支持された1対のコンベアベルトと、それら1対のコンベアベルトを互いに同期して周回させるベルト周回機構とを含んで構成された一般的なものである。また、後に説明する部品装着機20に配設されているコンベアを除き、いずれも、1対の支持板のうちの正面側に位置するものが、搬送幅方向Dyに移動可能とされており、搬送する基板Sの搬送幅方向Dyにおける寸法(以下、「基板幅」と言う場合がある)に合せて、1対の支持板の間隔(以下、「コンベア幅」と言う場合がある)を調整可能とされている。また、それらのコンベアのうちの一部を除いて、コンベアの基板搬送方向Dxにおける長さ(以下、「コンベア長」と言う場合がある)は、当該電気回路製造ラインによって製造可能な最大の基板Sの基板搬送方向Dxにおける寸法(以下、「基板長」と言う場合がある)より長くされている。以下、他の装置,機器に配設されているコンベアについての説明は、特別な場合を除いて省略する。
【0082】
iii)第1シャトルコンベア装置
基板供給装置10と上流側印刷機14aとの間に配置された第1シャトルコンベア装置12aは、基板供給装置10から供給される基板Sを上流側印刷機14aに受け渡すための装置である。基板供給装置10は、上述のように、正面側の載置テーブルに積み重ねられた基板Sを、正面側の供給箇所において、背面側の載置テーブルに積み重ねられた基板Sを、背面側の供給箇所において、それぞれ供給する。一方、後に詳しく説明するが、上流側印刷機14aは、搬送幅方向Dyに並ぶ2つの搬送レーンを有しており、2箇所の各々において供給された基板Sを、その2つの搬送レーンのいずれかに振り分ける機能を有している。
【0083】
第1シャトルコンベア装置12aは、搬送幅方向Dyに移動可能な可動ベースであるシャトルベース32を有しており、そのシャトルベース32にコンベア34が支持されている。シャトルベース32の移動によって、そのコンベア34と、2つの供給箇所に対応して設けられた基板供給装置10の2つのコンベア30のいずれかとの搬送幅方向Dyにおける位置合わせが行われ、その後、そのコンベア34は、その位置合わせされた方のコンベア30から基板Sを受け取る。次いで、シャトルベース32の移動により、上流側印刷機14aに配設された2つの搬送レーンの一方のコンベアと、基板Sを受け取っているコンベア34との位置合わせが行われ、基板Sは、その2つの搬送レーンの一方のコンベアに送り渡される。なお、2つのコンベア間の基板Sの受渡は、それら2つのコンベアが同じ速度で同期して作動させられることによって行われる。ちなみに、電気回路製造ラインの各装置,機器に配設されたいずれのコンベア間の基板Sの受渡も同様に行われるため、以下の各装置,機器の説明では、基板Sの受渡におけるコンベアの作動についての説明は、省略する。
【0084】
本電気回路製造ラインには、第1シャトルコンベア装置14aの他に、3つのシャトルコンベア装置、詳しくは、第2,第3、第4シャトルコンベア装置12b,12c,12dが配置されている。いずれのシャトルコンベア装置12a〜12dも互いに同じ構造を有しているため、第2,第3、第4シャトルコンベア装置12b,12c,12dの構造,動作についての説明は、省略する。また、以下の説明において、第1〜第4シャトルコンベア装置12a〜12dの区別を要しない場合は、シャトルコンベア装置12と言うことがある。
【0085】
iv)印刷機
本電気回路製造システムには、略同じ構造を有する2つのはんだ印刷機、詳しくは、上流側印刷機14a,下流側印刷機14bが配置されている(以下それらを区別することなく扱う場合には、「印刷機14」と呼ぶことがある)。印刷機14は、搬送幅方向Dyに並んで配置されてそれぞれが基板Sを基板搬送方向Dxに搬送する2つの搬送レーン、詳しくは、正面側搬送レーン(第1搬送レーン)36,背面側搬送レーン(第2搬送レーン)38を有している。正面側搬送レーン36は、第1シャトルコンベア装置12aからの基板Sの搬入時に作動する搬入コンベア40,第2シャトルコンベア装置12bへの基板Sの搬出時に作動する搬出コンベア42,それら搬入コンベア40,搬出コンベア42の間に配設された中間コンベア44によって構成されている。はんだ印刷装置46は、正面側搬送レーン36に配設されている。詳しく言えば、中間コンベア44が、はんだ印刷装置46に組み込まれているのである。第1シャトルコンベア装置12aから搬入コンベア40を介して中間コンベア44まで搬入された基板Sは、その中間コンベア40によって所定の印刷作業位置に停止させられ、その印刷作業位置において、はんだ印刷装置46によってはんだが印刷される。はんだが印刷された基板Sは、搬出コンベア42を介して第2シャトルコンベア装置12bに搬出される。つまり、正面側搬送レーン36は、はんだ印刷が行われる搬送レーンである。一方、背面側搬送レーン38は、1つのコンベア48によって構成され、当該上流側印刷機14aを単に通過させるための搬送レーンである。
【0086】
はんだ印刷装置46は、いわゆるスクリーン印刷装置であり、基板Sの表面にクリーム状のはんだを任意のパターンで付着させることによって、複数のはんだパッド(「はんだランド」と呼ぶこともできる)を形成するための装置である。はんだ印刷装置46は、はんだパッドのパターンに対応して複数の開口が形成されたマスクを有しており、上記印刷作業位置に位置させられた基板Sがそのマスクの下面に押し付けられる。マスクの上面には、クリーム状のはんだが供給されており、基板Sがマスクの下面に押し付けられた状態でマスク上面に沿ってスキージを移動させることによって、マスクの開口を通って基板Sの表面にはんだが印刷される。本はんだ印刷装置46は、よく知られたものであるため、構造の図示,詳しい説明については省略する。
【0087】
v)第2シャトルコンベア装置
上流側印刷機14aと下流側印刷機14bとの間に配置された第2シャトルコンベア装置12bは、基板Sを上流側印刷機14aから下流側印刷機14bに受け渡すための装置である。より詳しく言えば、上流側印刷機14aの正面側レーン36を通過してはんだ印刷が行われた基板Sを、下流側印刷機14bの背面側レーン38に受け渡すとともに、上流側印刷機14aの背面側レーン38を通過した基板Sを、下流側印刷機14bによるはんだ印刷のために、下流側印刷機14bの正面側レーン36に受け渡す機能を有している。
【0088】
vi)第3シャトルコンベア装置
下流側印刷機14bとバッファコンベア装置16との間に配置された第3シャトルコンベア装置12cは、基板Sを下流側印刷機14bからバッファコンベア装置16に受け渡す装置である。後に説明するバッファコンベア装置16は、搬送レーンを1つしか有さず、下流側印刷機14bの2つの搬送レーンから搬出される基板Sを、1つの搬送レーンに集める機能を有している。
【0089】
vii)はんだ印刷システム
本電気回路製造ラインでは、上記2つの印刷機14と上記3つのシャトルコンベア装置12とによってはんだ印刷システムが構築されている。そのシステムにおいて、2つの印刷機14は、いずれも、自身の正面側の部分に、はんだ印刷装置46が設けられた搬送レーン、つまり、印刷レーンを有する一方で、背面側の部分に、はんだ印刷が行われずに単に基板Sが通過する搬送レーン、つまり、通過レーンを有している。つまり、2つの印刷機14は、搬送幅方向Dyにおいて、印刷レーンと通過レーンとの相対位置関係が同じくされているのである。なお、本電気回路製造ラインの各装置,機器の操作パネルは、いずれも、正面側に付設されており、オペレータは、当該ラインの正面側にて作業に従事することになる。したがって、いずれの印刷機14も、正面側の部分に印刷レーンが設けられていることから、はんだ印刷装置46による印刷作業を監視し易く、また、基板種の変更に伴う段取り換え,マスクの交換,クリーニング等の付随作業が行い易くなっているのである。
【0090】
当該はんだ印刷システムにおいて、3つのシャトルコンベア装置12は、印刷機14において基板Sが搬送される搬送レーンを変更したり、搬出する基板Sを受け取る搬送レーンを変更したりする機能を有している。つまり、3つのシャトルコンベア装置12は、いずれも、印刷機14の搬送レーンを切換える搬送レーン切換装置として機能している。具体的には、第1シャトルコンベア装置12aは、基板Sを上流側印刷機14aの正面側搬送レーン36と背面側搬送レーン38との一方に選択的に搬入する搬入側レーン切換装置として、第2シャトルコンベア12b装置は、上流側印刷機14aの正面側搬送レーン36によって搬送された基板Sを下流側印刷機14bの背面側搬送レーン38に搬入するともに、上流側印刷機14aの背面側搬送レーン38によって搬送された基板Sを下流側印刷機14bの正面側搬送レーン36に搬入する印刷機間レーン切換装置として、第3シャトルコンベア装置12cは、下流側印刷機14bの正面側搬送レーン36と背面側搬送レーン38とのいずれによって搬送された基板Sであっても、その基板Sを搬送幅方向Dyにおける任意の1以上の搬出位置において搬出を可能にする搬出側レーン切換装置として、それぞれ機能する。
【0091】
また、3つのシャトルコンベア装置12は、いずれも、コンベア34によって規定される比較的短い搬送レーンを有してると考えることができる。一方、そのコンベア34は、シャトルベース32の搬送幅方向Dyの移動によって、搬送幅方向Dyに移動する。したがって、3つのシャトルコンベア装置12の各々の搬送レーンは、搬送幅方向Dyに移動可能な可動搬送レーンと考えることができるのである。そして、3つのシャトルコンベア装置12の各々は、基板Sを載置させた状態でのその可動搬送レーンの移動によって、上記自身の機能、つまり、印刷機14の搬送レーンを切換えるという機能が実現されるように構成されるのである。
【0092】
viii)バッファコンベア装置
バッファコンベア装置16は、第3シャトルコンベア装置12c、つまり、上記はんだ印刷システムから搬出された基板Sを、印刷結果検査機18に受け渡すためのコンベア装置である。バッファコンベア装置16は、単一のコンベア50が配設されており、1つの搬送レーンしか有していない。ちなみに、コンベア50は、基板Sを2枚載置可能な長さとされている。
【0093】
バッファコンベア装置16は、後に説明するように、当該電気回路製造ラインが基板幅の互いに異なる2つの基板種の基板を並行して製造するような場合には、単に基板Sを停止させることなく通過させるためのコンベア装置となる。その場合、印刷検査結果検査機18による1の基板Sの検査が終了した後、その基板Sの搬出と同期して第3シャトルコンベア装置12cおよび当該バッファコンベア装置16が作動させられることで、第3シャトルコンベア装置12cに載置されている基板Sが、一気に、印刷結果検査機18にまで搬入される。一方、基板幅Sが同じ2つの基板種の基板を並行して製造する場合や、単一の基板種の基板Sを1レーン若しくは2レーンで製造する場合には、コンベア50には、図2で示すように、2枚の基板Sが待機させられる。その場合、印刷結果検査機18による1の基板Sの検査が終了した後、その基板Sの搬出と同期して、第3シャトルコンベア装置12cから1の基板の搬入および印刷結果検査機18への1の基板Sの搬出を行うべく、コンベア50は、基板Sの1枚分に相当するピッチだけ作動させられる。
【0094】
ix)印刷結果検査機
印刷検査検査機18は、印刷機14による印刷作業の結果を検査するための作業機である。印刷結果検査機18には、1つの搬送レーンが設けられ、その搬送レーンは、印刷機14と同様に、搬入コンベア52,搬出コンベア54,中間コンベア56によって構成されている。印刷結果検査装置58は、その中間コンベア56を組み込むようにして、配設されている。バッファコンベア装置16から搬入コンベア52を介して中間コンベア56まで搬入された基板Sは、その中間コンベア56によって所定の検査作業位置に停止させられ、その検査作業位置において、印刷結果検査装置58によって検査が行われる。検査が行われた基板Sは、搬出コンベア54を介して第4シャトルコンベア装置12dに搬出される。
【0095】
印刷結果検査装置58は、基板Sの表面を撮像するためのカメラを有する撮像ヘッドと、その撮像ヘッドを基板Sに沿って移動させるXYロボット型移動装置と、カメラによる撮像で得られた撮像データに基づく検査処理を行う処理装置とを含んで構成されている。その処理装置は、撮像データを画像処理することによって、基板Sに形成されたはんだパッドの位置,面積,厚み等を取得し、その取得された位置,面積,厚み等に基づいて、適正なはんだパッドが形成されているか否か、つまり、適正なはんだ印刷が行われたか否かを判断する。本印刷結果検査装置58は、よく知られたものであるため、構造の図示,詳しい説明については省略する。
【0096】
x)第4シャトルコンベア装置
印刷結果検査機18と部品装着機20との間に配置された第4シャトルコンベア装置12dは、検査が終了した基板Sを印刷結果検査機18から部品装着機20に受け渡す装置である。後に説明するように、部品装着機20は、2つの搬送レーンを有しており、基板Sを、その2つの搬送レーンの一方に振り分ける機能を有している。
【0097】
xi)部品装着機
部品装着機20は、はんだが印刷された基板Sに、電気回路を構成する電気部品(以下、単に「部品」と言う場合がある)を装着するための作業機であり、部品実装機とも呼ばれる。本部品装着機20は、1つのベース60と、そのベース60の上に基板搬送方向Dxに沿って並べられた4つの部品装着モジュール62とによって構成されている。4つの部品装着モジュール62の各々は、2つのコンベア64を有するコンベアユニットと、それぞれが部品供給装置として機能する部品フィーダ66と、部品フィーダ66から供給される部品を基板Sに装着する部品装着装置68とを含んで構成されている。
【0098】
各部品装着モジュール62が有するコンベアユニットは、2つのコンベア64が搬送幅方向Dyにぴったりと並べられたものであり、背面側のコンベア64のコンベア幅の調整は、正面側のコンベア64が搬送幅方向Dyに移動させられる。各部品装着モジュール62の正面側のコンベア64によって、正面側搬送レーンが構成され、背面側のコンベア64によって背面側搬送レーンが構成されている。つまり、部品装着機20は、2つの搬送レーンを有しているのである。各搬送レーンを構成する4つのコンベア64は、基板搬送方向Dxにおいて隣合うものが同期作動させられることにより、協調して1つの基板Sを搬送する。搬送される基板Sは、各部品装着モジュール62について設定されている装着作業位置に停止させられ、その位置で、各部品装着モジュール62の部品装着装置68による部品装着作業が行われる。1つの基板Sが各搬送レーンによって搬送されつつ、順次、4つの部品装着モジュール62における部品装着作業が行われ、1つの基板Sについての部品装着作業が完了する。
【0099】
部品装着装置68は、部品保持デバイスとしての吸着ノズルを有する装着ヘッドと、その装着ヘッドを部品フィーダ66と基板との間で移動させるXYロボット型移動装置とを含んで構成されている。部品フィーダ66の上方の位置に装着ヘッドが移動させられ、その位置で、吸着ノズルが下降させられて、その吸着ノズルは、その部品フィーダ66から供給される部品を吸着保持する。吸着ノズルが部品を保持した状態で装着ヘッドが基板Sの上方の位置まで移動させられ、その位置で、吸着ノズルが下降させられ、その保持されている部品が基板Sに載置される。この装着動作が繰り返されて部品装着作業が行われる。本部品装着装置68は、よく知られたものであるため、構造の図示,詳しい説明については省略する。
【0100】
xii)制御システム
本電気回路製造ラインでは、図2に模式的に示すように、基板供給装置10,上流側印刷機14a,下流側印刷機14b,印刷結果検査機18,部品装着機20の4つの部品装着モジュール62の各々が、それぞれ、自身の制御を司る制御装置80,82a,82b,84,86を有している。それらの制御装置80〜86は、コンピュータを主体として構成されている。一方、第1〜第4シャトルコンベア装置12a〜12d,バッファコンベア装置16は、自身で制御装置を有しておらず、第1シャトルコンベア装置12a,第2シャトルコンベア装置12bは、上流側印刷機14aの制御装置82aによって、第3シャトルコンベア装置12cは下流側印刷機14bの制御装置82bによって、バッファコンベア装置16,第4シャトルコンベア装置12dは、印刷結果検査機18の制御装置84によって、それぞれ、制御される。ちなみに、以下の説明において、上流側印刷機14aの制御装置82aおよび下流側印刷機14bの制御装置82bは、それらの区別を要しない場合に、制御装置82と呼ぶことがある。
【0101】
制御装置80〜86は、自身が制御する機器,装置,モジュールの行う作業、詳しくは、はんだ印刷装置46,印刷結果検査装置58,部品装着装置68による作業を制御する。制御装置80〜86は、自身が制御する装置が作業を行う基板種(型番,品番,品名等である)に対応したそれら装置の動作データ(作動プログラムの基となるデータであり、「レシピ」と呼ばれることもある)を記憶しており、各装置の制御は、その動作データに基づいて行われる。その動作データは、基板幅に関するデータも含まれており、各コンベアのコンベア幅はそのデータに基づいて調整される。
【0102】
互いに連続する2つのコンベア間の基板Sの受渡に関する制御は、先に説明したバッファコンベア装置16が関連する制御を除き、それら2つのコンベアの上流側のものに基板Sが載置されており、下流側のものが空になっている(基板Sが載置されていない)ことを条件に、それら2つのコンベアの動作を同期させることによって行われる。各コンベアに基板Sが載置されているか否かは、各コンベアに設けられたセンサによって検出される。制御装置80〜86の各々は、自身が制御する機器,装置,モジュールの有する2つのコンベア間の基板Sの受渡については、自身単独で行うが、自身が制御する機器,装置,モジュールの有するコンベアと、自身の上流側若しくは下流側の機器,装置,モジュールの有するコンベアとの間の基板Sの受渡については、自身の上流側若しくは下流側の機器,装置,モジュールを制御する制御装置80〜86と協働して行う。その2つの制御装置の協働にあたっては、それら2つの制御装置間で通信が行われる。上記はんだ印刷システムに関して具体的に言えば、第1シャトルコンベア装置12aのコンベア34と、上流側印刷機14aの正面側搬送レーン36のコンベア40若しくは背面側搬送レーン38のコンベア48との間の受渡、および、上流側印刷機14aの正面側搬送レーン36のコンベア42若しくは背面側搬送レーン38のコンベア48と、第2シャトルコンベア装置12bのコンベア34との間の受渡については、制御装置82aが単独で制御し、また、下流側印刷機14bの正面側搬送レーン36のコンベア42若しくは背面側搬送レーン38のコンベア48と、第3シャトルコンベア装置12cのコンベア34との間の受渡については、制御装置82bが単独で制御するが、第2シャトルコンベア装置12bのコンベア34と、下流側印刷機14bの正面側搬送レーン36のコンベア40若しくは背面側搬送レーン38のコンベア48との間の受渡については、制御装置82aと制御装置82bとが互いに通信しつつ協働して制御を行うのである。
【0103】
≪はんだ印刷システムの作動モード≫
本電気回路製造ラインでは、互いに異なる2つの基板種の基板Sに対して並行して製造作業を行うこともでき(2基板種並行製造作業)、また、1つの基板種の基板Sに対してのみ、製造作業を行うこともできる(1基板種製造作業)。この2種類の製造作業に関連して、上記はんだ印刷システムは、異なる2つの作動モード、詳しくは、2レーン並行印刷モード,1レーン印刷モードの2つのモードにて印刷作業を行うことが可能とされている。以下に、その2つの作動モードの各々と、はんだ印刷システムおける各作動モードでの印刷作業の開始,停止の方法について説明する。
【0104】
i)2レーン並行印刷モード
図3(a)に、はんだ印刷システムが2レーン並行印刷モードにて印刷作業を行っている状態において電気回路製造ラインを通過する基板の様子を示す。(A)基板Sを上流側印刷機14aの正面側搬送レーン36によって搬送しつつその基板Sに上流側印刷機14aのはんだ印刷装置46によるはんだ印刷を行い、その基板Sを下流側印刷機14bの背面側搬送レーン38によって搬送する作業を、「第1印刷作業」と、(B)基板Sを上流側印刷機14aの背面側搬送レーン38によって搬送し、その基板Sを下流側印刷機14bの正面側搬送レーン36によって搬送しつつその基板Sに対して下流側印刷機14bのはんだ印刷装置46によるはんだ印刷を行う作業を、「第2印刷作業」と、それぞれ、称した場合において、図3から解るように、2ライン並行印刷モードにて実行される印刷作業では、第1印刷作業と第2印刷作業との両者が、並行して行われる。ちなみに、はんだ印刷システムにおいて、基板Sが図の太実線で示された経路を通過して第1印刷作業が行われ、太破線で示された経路を通過して第2印刷作業が行われる。この2レーン印刷モードは、上記2基板種並行製造作業においても、また、上記1基板種製造作業においても採用される。
【0105】
なお、図3(a)では、基板供給装置10の正面側の載置テーブルに積み重ねられた基板Sが、第1印刷作業に供されるために、上流側印刷機14aの正面側搬送レーン36に供給され、かつ、背面側の載置テーブルに積み重ねられた基板Sが、第2印刷作業に供されるため、背面側搬送レーン38に供給されているが、1基板種製造作業の場合には、基板供給装置10の2つの載置テーブルのいずれかにのみ基板Sを積み重ね、その基板Sを、上流側印刷機14aの正面側搬送レーン36と背面側搬送レーン38とに交互に供給するようにしてもよい。また、図3(a)では、第1印刷作業が行われた基板Sは、部品装着機20の背面側搬送レーンにおいて、第2印刷作業が行われた基板Sは、正面側搬送レーンにおいて部品装着作業が行われるが、1基板種製造作業の場合は、基板Sが第1印刷作業と第2印刷作業とのいずれが行われたかものであるかに関係なく、部品装着機20の正面側搬送レーンと背面側搬送レーンとのいずれによっても部品装着作業を行い得るようにしてもよい。
【0106】
ii)1レーン印刷モード
図3(b),(c)に、はんだ印刷システムが1レーン印刷モードにて印刷作業を行っている状態において電気回路製造ラインを通過する基板の様子を示す。ちなみに、図3(b)は、第1印刷作業のみが行われる1レーン印刷モードであり、図3(b)は、第2印刷作業のみが行われる1レーン印刷モードである。1レーン印刷モードは、例えば、正面側搬送レーンと背面側搬送レーンとで部品装着を行った場合の部品装着機20の作業のタクト(当該部品装着機20から部品が装着された基板Sが搬出されるピッチ)よりも、1レーン印刷モードにおけるはんだ印刷システムの作業タクト(下流側印刷機14bから基板が搬出されるピッチ)が短い場合に、有効である。この場合は、2つの印刷機14の一方だけのはんだ印刷作業だけで、言い換えれば、敢えて2つの印刷機14の両者によるはんだ印刷作業を行うことなく、充分な生産性を確保できるからである。
【0107】
なお、図3(a),(b)では、基板供給装置10の2つの載置テーブルの一方に積み重ねられた基板Sが、上流側印刷機12aに供給されるが、この一方は、2つ載置テーブルのいずれであってもよい。また、2つの載置テーブルの各々に積み重ねられた基板Sを、例えば交互に供給するようにしてもよい。また、図では、印刷結果検査機18から搬出される基板Sは、部品装着機20の正面側搬送レーン,背面側搬送レーンの両者に振り分けられるが、いずれか一方の搬送レーンにのみ搬入してその搬送レーンにおいてのみ装着作業が行われるようにしてもよい。
【0108】
iii)各作動モードでの印刷作業の開始,停止の操作
上記2つの作動モードのいずれで印刷作業を行うかは、オペレータの選択に委ねられており、上流側印刷機14a,下流側印刷機14bの各々の操作パネル88(図1参照)の操作によって、任意の作動モードで、印刷作業を開始させ、その開始させた印刷作業を停止することができる。操作パネル88は、制御装置82の入出力デバイスとして機能する。なお、上流側印刷機14aについての操作と下流側印刷機14bについての操作は、同じようにして行われる。
【0109】
電源投入後、はんだ印刷システムによる印刷作業を開始させる際には、操作パネル88に、まず、図4(a)に示す画面を表示させる。この画面は、搬送レーン(正面側搬送レーン36,背面側搬送レーン38)の選択と選択した搬送レーンによって搬送される基板Sの基板種の選択を行うための画面、つまり、レーン・基板種選択画面である。この画面には、作業を行う基板Sの基板種のリストが表示されている基板種リスト表示領域100と、正面側搬送レーン36,背面側搬送レーン38の各々の作動の許容・禁止を選択するための正面側搬送レーン選択スイッチ102および背面側搬送レーン選択スイッチ104と、作動が許容された場合において作業が行われる正面側搬送レーン36,背面側搬送レーン38の各々によって搬送される基板Sの基板種が表示される正面側搬送基板種表示欄106,背面側搬送基板種表示欄108とが表示されている。
【0110】
操作パネル88は、いわゆるタッチパネルとされており、オペレータは、正面側搬送レーン選択スイッチ102と背面側搬送レーン選択スイッチ104との少なくとも一方をタッチ操作することによって、正面側搬送レーン36,背面側搬送レーン38の少なくとも一方の作動が許容され得る状態にする。具体的には、当該はんだ印刷システムを1レーン印刷モードにて作動させる場合は、正面側搬送レーン選択スイッチ102と背面側搬送レーン選択スイッチ104との一方のみをON状態とする。詳しく言えば、第1印刷作業のみを行う場合には、上流側印刷機14aについては正面側搬送レーン選択スイッチ102のみを、下流側印刷機14bについては背面側搬送レーン選択スイッチ104のみを、それぞれ、ON状態とし、第2印刷作業のみを行う場合には、上流側印刷機14aについては背面側搬送レーン選択スイッチ104のみを、下流側印刷機14bについては正面側搬送レーン選択スイッチ102のみを、それぞれ、ON状態とする。一方、2レーン印刷モードにて作動させる場合には、上流側印刷機14a,下流側印刷機14bともに、それら2つのスイッチ102,104の両方をON状態とする。両スイッチ102,104とも、ON状態では、明るく表示され、OFF状態では、暗く表示される。ちなみに、図4(a)では、背面側搬送レーン選択スイッチ104のみがON状態とされている。
【0111】
正面側搬送レーン選択スイッチ102,背面側搬送レーン選択スイッチ104の一方をON状態とした直後に、選択しようとする基板種が表示されている基板種リスト表示領域100の部分をタッチ操作することにより、そのON状態とされたスイッチ102,104に対応する搬送レーンによって搬送される基板Sの基板種が選択される。その選択により、制御装置82において、その基板種の基板Sについての印刷機14および自身が制御するシャトルコンベア装置12の動作データが、動作データ格納領域から、作動許容基板データ領域にコピーされて、その基板種の基板Sについての作動の準備が行われる。具体的には、ON状態とされた搬送レーンを構成するコンベア40,42,44,48のコンベア幅、その基板Sが載置される際のシャトルコンベア装置12のコンベア34のコンベア幅、はんだ印刷装置46による印刷条件等が確定される。選択された基板種は、正面側搬送基板種表示欄106,背面側搬送基板種表示欄108のうちの対応する方に、表示される。ちなみに、図4(a)は、背面側搬送レーン38よって基板種「○○○○」が搬送される状態でことを示している。なお、1レーン印刷モードであっても、2レーン並行印刷モードであっても、上流側印刷機14aの正面側搬送レーン36によって搬送される基板Sの基板種と、下流側印刷機14bの背面側搬送レーン38によって搬送される基板Sの基板種とは、同じものが選択され、また、上流側印刷機14aの背面側搬送レーン38によって搬送される基板Sの基板種と、下流側印刷機14bの正面側搬送レーン36によって搬送される基板Sの基板種とは、同じものが選択される。上述した2基板種並行製造作業の場合は、上流側印刷機14a,下流側印刷機14bの両方について、正面側搬送レーン36によって搬送される基板Sの基板種と、背面側搬送レーン38によって搬送される基板Sの基板種とは、互いに違うものが選択される。
【0112】
作動が許容される搬送レーンと、その搬送レーンによって搬送される基板Sの基板種とを確定させた後、画面に表示されている次画面移行スイッチ110をタッチ操作することにより、図4(b)の画面に移行する。この画面は、印刷機14およびその印刷機14の制御装置82によって制御されるシャトルコンベア装置12の作動状態(作動が禁止された状態をも含む概念である)を表示する作動状態表示画面である。この画面には、作動状態を文字情報によってオペレータに告知する告知領域112と、作動状態を画像情報によってオペレータに認識させるための状態画像表示領域114と、印刷機14およびその印刷機14の制御装置82によって制御されるシャトルコンベア装置12の作動の許容と禁止とを切換える作動許容・禁止スイッチ116とが表示されている。
【0113】
告知領域112には、正面側搬送レーン36,背面側搬送レーン38の作動状態に応じて、例えば、「正面側搬送レーン作動」,「背面側搬送レーン作動」,「両搬送レーン作動」等の文字が表示される。状態画像表示領域114には、印刷機14が有する正面側搬送レーン36,背面側搬送レーン38のそれぞれを表わす画像118,120の他、その印刷機14の制御装置82によって制御されるシャトルコンベア装置12を表す画像122が、正面側搬送レーン36,背面側搬送レーン38,シャトルコンベア装置12の配置に従って並べて表示されている。ちなみに、図4(b)に示す画面は、上流側印刷機14aの操作パネル88の画像であり、上流側印刷機14aの正面側搬送レーン36,背面側搬送レーン38,第1シャトルコンベア装置12a,第2シャトルコンベア装置12bのそれぞれを表わす画像118,120,122,122が表示されている。なお、下流側印刷機14bの操作パネル88の作動状態表示画面では、図5に示すように、状態画像表示領域114において、下流側印刷機14bの正面側搬送レーン36,背面側搬送レーン38を表わす画像118,120に加えて、第3シャトルコンベア装置12c,バッファコンベア装置16,印刷結果検査機18のそれぞれを表す画像122,124,126が表示されている。この図5の画面については、後に詳しく説明する。
【0114】
状態画像表示領域114の画像118〜126の各々は、その各々が表わす搬送レーン,装置,機器の作動が許容され得る場合には、明るく表示され、作動が許容され得ない場合には、暗く表示される。また、明るく表示されている場合、つまり、作動が許容され得る場合には、その画像118〜126の中に、基板Sの存在の有無を表す基板表示画像130が表示される。この基板表示画像130は、画像118〜126の各々が表わす搬送レーン,装置,機器に基板Sが存在している場合には、濃く表示され(図では実線で表示:図5参照のこと)、存在していない場合には、薄く表示される(図では、破線で表示)。ちなみに、図4(b)では、上流側印刷機14aの背面側搬送レーン38の作動が許容され得、正面側搬送レーン36の作動は許容され得ないことを示している。なお、図4(b)の告知領域112には、例えば、「背面側搬送レーン作動」の文字が表示される。
【0115】
図4(b)の状態表示画面の示す状態は、未だ、上流側印刷機14aの背面側搬送レーン38,第1シャトルコンベア装置12a,第2シャトルコンベア装置12bの作動が許容されていない状態であり、実際の許容は、作動許容・禁止スイッチ116の操作によって行う。作動許容・禁止スイッチ116は、開始ボタン132と停止ボタン134とによって構成されている。それらのボタン132,134は、操作可能な場合に明るく表示され、操作不能な場合に暗く表示される。図4(b)では、未だ作動が許容されていない状態であるため、作動を許容するための開始ボタン132が明るく表示され、作動を禁止するための停止ボタン134が暗く表示されている。逆に、作動が許容されている場合には、図5に示すように、開始ボタン132が暗く表示され、停止ボタン134が明るく表示される。図4(b)に示す状態から、開始ボタン132をタッチ操作することにより、上流側印刷機14aの背面側搬送レーン38,第1シャトルコンベア装置12a,第2シャトルコンベア装置12bの作動が許容される。つまり、それらの作動が開始されるのである。作動が開始された場合に、開始ボタン132は暗くなり、逆に、停止ボタン134は明るくなる。開始された作動を停止させる、つまり、その作動を禁止する場合は、明るくなっている停止ボタン134をタッチ操作すればよく、その、停止ボタン134は暗くなり、開始ボタン132は明るくなる。作動許容・禁止スイッチ116は、いわゆるトグルスイッチとされているのである。ちなみに、作動が許容された状態では、作動状態表示画面の告知領域112に表示された文字は点滅し、オペレータに、作動が許容されている状態であることを報知する(図5参照)。
【0116】
上述のような操作パネル88の操作を上流側印刷機14a,下流側印刷機14bの各々について行い、上流側印刷機14aの2つの搬送レーンのうちの背面側搬送レーン38のみの作動を許容し、かつ、下流側印刷機14bの2つの搬送レーンのうちの正面側搬送レーン36のみの作動を許容することで、はんだ印刷システムは、第2印刷作業のみ行う1レーン印刷モードで作動する。逆に、上流側印刷機14aの2つの搬送レーンのうちの正面側搬送レーン36のみの作動を許容し、かつ、下流側印刷機14bの2つの搬送レーンのうちの背面側搬送レーン38のみの作動を許容することで、はんだ印刷システムは、第1印刷作業のみ行う1レーン印刷モードで作動する。一方、上流側印刷機14aの正面側搬送レーン36および背面側搬送レーン38の両方の作動を許容し、かつ、下流側印刷機14bの正面側搬送レーン36および背面側搬送レーン38の両方の作動を許容することで、はんだ印刷システムは、第1印刷作業と第2印刷作業との両方を並行して行う2レーン並行印刷モードで作動する。
【0117】
上記の操作に鑑みれば、本はんだ印刷システムでは、上流側印刷機14aと下流側印刷機14bとのいずれもが、1レーン印刷モードによる印刷作業において自身の正面側搬送レーン36のみの作動を許容するための「正面側搬送レーン作動スイッチ(第1搬送レーン作動スイッチ)」を有していると考えることができ、そのスイッチは、レーン・基板種選択画面の正面側搬送レーン選択スイッチ102と、作動状態表示画面の作動許容・禁止スイッチ116とによって構成されていると考えることができる。また、上流側印刷機14aと下流側印刷機14bとのいずれもが、1レーン印刷モードによる印刷作業において自身の背面側搬送レーン38のみの作動を許容するための「背面側搬送レーン作動スイッチ(第2搬送レーン作動スイッチ)」を有していると考えることができ、そのスイッチは、レーン・基板種選択画面の背面側搬送レーン選択スイッチ104と、作動状態表示画面の作動許容・禁止スイッチ116とによって構成されていると考えることができる。さらに、上流側印刷機14aと下流側印刷機14bとのいずれもが、2レーン並行印刷モードによる印刷作業において自身の正面側搬送レーン36と背面側搬送レーン38との両方の作動を一度に許容するための「両搬送レーン作動スイッチ」を有していると考えることができ、そのスイッチは、レーン・基板種選択画面の正面側搬送レーン選択スイッチ102および背面側搬送レーン選択スイッチ104と、作動状態表示画面の作動許容・禁止スイッチ116とによって構成されていると考えることができる。そして、それら正面側搬送レーン作動スイッチ,背面側搬送レーン作動スイッチ,両搬送レーン作動スイッチは、作動許容・禁止スイッチ116の機能に鑑みれば、それぞれ、正面側搬送レーン36,背面側搬送レーン38,2つの搬送レーン36,38の作動の許容と禁止とを切換えるように構成されていると考えることができるのである。
【0118】
また、本はんだ印刷システムでは、上流側印刷機14aと下流側印刷機14bとのいずれもが、2つの搬送レーン36,38のうち背面側搬送レーン38のみの作動が許容された場合であっても、作動状態表示画面の告知領域112に表示された文字が点滅するように構成されている。つまり、上流側印刷機14aと下流側印刷機14bとのいずれにおいても、操作パネル88が、背面側搬送レーン38のみの作動が許容されたことをオペレータに報知する報知器として機能する。この報知器としての機能により、当該電気回路製造ラインの正面側において作業に従事するオペレータであっても、1レーン印刷モードでの作動においては視認し難い背面側搬送レーン38のみの作動を、充分に認識することが可能となるのである。
【0119】
さらに、上述のように、本はんだ印刷システムでは、上流側印刷機14aと下流側印刷機14bとのいずれもが、正面側搬送レーン36,背面側搬送レーン38を単独で操作可能とされている。そのことは、例えば、上流側印刷機14aのはんだ印刷装置46のみで印刷を行う1レーン印刷モードの印刷作業が終了した際に、上流側印刷機14aの背面側搬送レーン38に基板Sが取り残されるといった事態を防止するのにも役立っている。
【0120】
≪搬出基板の管理≫
本電気回路製造ラインでは、はんだ印刷システムの下流側に、印刷結果検査機18,部品装着機20等の対基板作業機(以下、単に「作業機」と言う場合がある)が配置されている。それら下流側の作業機において、製造される電気回路の品質に影響を及ぼす事象が発見された場合、その原因を知るために、はんだ印刷システムでどのような作業が行われたかを把握しておくことが望ましい。特に、当該システムが上記2レーン並行モードにて印刷作業を行いつつ上述の1基板種製造作業が行われる場合には、上流側印刷機14aと下流側印刷機14bとのいずれによって印刷を行ったかを把握しておくことが望ましいのである。そこで、本はんだ印刷システムでは、下流側印刷機14bの制御装置82bによって、当該システムから搬出された基板Sの管理が行われる。以下に、その管理について具体的に説明する。
【0121】
i)下流側印刷機の制御装置の機能構成
下流側印刷機14bの制御装置82bは、コンピュータを主体に構成された装置であり、図6のブロック図に示すような機能構成を有している。具体的に言えば、制御装置82bは、下流側印刷機14bの2つの搬送レーン36,38を構成する各コンベア40,42,44,48の作動およびはんだ印刷装置46の作動を制御する印刷機作動制御部140、第3シャトルコンベア装置12cのシャトルベース32およびコンベア34の作動を制御するシャトルコンベア装置作動制御部142、操作パネル88による入出力を制御するパネル入出力制御部144、上流側印刷機14aの制御装置82aおよび印刷結果検査機18の制御装置84との間で各種情報,信号の受渡を行う通信部146,上述した基板Sについての下流側印刷機14b,第3シャトルコンベアの動作データを始めとする各種データを記憶するデータ記憶部148といった機能部を有し、さらに、当該システムから搬出される基板Sを管理する機能部として、搬出基板管理部150を有している。それらの各機能部は、内部バス152で繋がっている。
【0122】
ii)搬出基板管理テーブル
データ記憶部148には、図7に示すような搬出基板管理テーブルが設定されており、この搬出基板管理テーブルに記憶されているデータに基づいて、搬出された基板Sの管理が行われる。搬出基板管理テーブルは、基板Sが存在し得る複数の位置(以下、「ステージ」と言う場合がある)のいずれかに基板Sが存在する場合に、その基板Sに対して実施された印刷作業の内容を示す情報(以下、「実施印刷情報」と言う場合がある)が、そのステージに関連付けられて記憶されるテーブルである。具体的に言えば、テーブルの行は、各ステージに対応しており、基板が存在しているステージに対応する行のセルに、そのステージに存在している基板Sの実施印刷情報が格納される。
【0123】
図に示すように、ステージは、正面側搬送レーン36,背面側搬送レーン38,第3シャトルコンベア12c,バッファコンベア装置16の上流側の部分および下流側の部分,印刷結果検査機18に対応して、6つ設定されている。この設定は、操作パネル88から、任意に変更できるようになっている。図では、印刷結果検査機18を特定の作業機として、その印刷結果検査機18における基板Sの作業位置を最終ステージに設定しているが、例えば、部品装着機20のいずれかの部品装着モジュール62を特定の作業機としてその部品装着モジュール62における基板Sの作業位置を最終ステージに設定してもよく、それ以外の機器,装置を特定の作業機としてそれらにおける基板Sの待機位置,作業位置を最終ステージに設定してもよい。また、本電気回路製造ラインでは、バッファコンベア装置16は、2つの待機位置を有するように構成されているため、検査結果検査機18と第3シャトルコンベア装置12cとの間に、2つのステージが設定されている。例えば、バッファコンベア装置16の長さ、つまり、待機位置の数に応じて、ステージ数を変更することも可能であり、バッファコンベア装置16が配置されていない場合には、それに対応するステージを無くすことも可能である。
【0124】
実施印刷情報は、図に示すように、「実施装置判別情報」,「印刷方向判別情報」,「クリーニング後印刷判別情報」の3つの情報を含んでいる。それらの情報は、テーブルの列に対応しており、基板Sの対応する行の各列に格納される。実施装置判別情報は、上流側印刷機14aのはんだ印刷装置46と下流側印刷機14bのはんだ印刷装置46とのいずれによって基板Sにクリームはんだが印刷されたかを判別するための情報であり、“U”は、上流側印刷機14aのはんだ印刷装置46によって印刷されたことを、“L”は、下流側印刷機14bのはんだ印刷装置46によって印刷されたことを、それぞれ示している。印刷方向判別情報は、はんだ印刷装置46のスキージがいずれの方向に動かされて基板Sに印刷が行われたかを判別するための情報である。はんだ印刷装置46は、スキージを搬送幅方向Dyにおける一方向にスキージを移動させて印刷を行うように構成されており、“F”は、背面側から正面側に向かって、つまり、前進方向にスキージが移動させられて印刷がおこなわれたことを、“B”は、正面側から背面側に向かって、つまり、後退方向にスキージが移動させられて印刷が行われたことを、それぞれ示している。はんだ印刷装置46は、印刷前に任意に若しくは設定の清浄条件に基づいてマスクの下面を清浄するためのクリーニング機構を備えており、クリーニング後印刷判別情報は、そのクリーニング機構によるマスクのクリーニングが行われた後に最初に印刷が行われた基板(以下、「クリーニング直後印刷基板」と言う場合がある)であることを判別するための情報である。“★”が、基板Sがクリーニング直後印刷基板であることを示している。図では、上記3つの実施印刷情報が設定されているが、それらのうちのいずれか1以上のもののみを設定することもでき、また、他の情報を、上記3つの実施印刷情報に加えて、また、それらのいずれかの代わりに、設定することも可能である。
【0125】
iii)搬出基板管理テーブルの操作
搬出基板管理部150は、搬出基板管理テーブルを操作することによって、当該システムから搬出された基板を管理する。先に説明したように、印刷結果検査機18に存在する基板Sに対する検査が終了した後、その基板Sの印刷結果検査機18からの搬出と同期して、バッファコンベア装置16に待機している2つの基板Sの搬送(下流側に待機している基板Sの印刷結果検査機18への搬入)、および、第3シャトルコンベア装置12cからバッファコンベア装置16への搬入が行われる。この動作が行われた時に、その動作に合せて、搬出基板管理テーブルの第3シャトルコンベア12c,バッファコンベア装置16の上流側の部分および下流側の部分,印刷結果検査機18に対応する行に格納されている3つの実施印刷情報の内容が変更される。具体的には、印刷結果検査機18に対応する行に格納されている情報の内容が削除され、第3シャトルコンベア12c,バッファコンベア装置16の上流側の部分および下流側の部分に対応する行に格納されている情報の内容が、それぞれ、バッファコンベア装置16の上流側の部分および下流側の部分,印刷結果作業機18に対応する行に移されるされる。つまり、基板Sが当該はんだ印刷システムから搬出される都度、データ記憶部148の搬出基板管理テーブルに記憶されている内容が更新されるのである。
【0126】
また、第3シャトルコンベア装置12cに、下流側印刷機14bの正面側搬送レーン36,背面側搬送レーン38のいずれかから、基板Sが移動させられた場合に、その移動に合せて、そのいずれかに対応する行に格納されている実施印刷情報の内容が、第3シャトルコンベア装置12cに対応する行に移される。第2シャトルコンベア装置12bから正面側搬送レーン36に基板Sが搬入された場合には、そのレーン36に対応する行の実施装置判別情報のセルに、“L”が格納され、次いで、その基板Sに、印刷が行われた際に、印刷方向判別情報のセルに、その印刷におけるスキージの移動方向によって、“F”または“B”が格納され、その基板Sがクリーニング直後印刷基板である場合には、クリーニング後印刷判別情報のセルに、“★”が格納される。一方、第2シャトルコンベア装置12bから背面側搬送レーン38に基板Sが搬入された場合には、そのレーン38に対応する行の実施装置判別情報のセルに、“U”が格納されるとともに、上流側印刷機14aの制御装置82aから送られてきた情報に基づき、印刷方向判別情報のセルに、その基板Sに対する印刷におけるスキージの移動方向に応じて“F”または“B”が、クリーニング後印刷判別情報のセルに、その基板Sがクリーニング直後印刷基板である場合に“★”が、格納される。
【0127】
iv)操作パネルへの表示
搬出基板管理テーブルの記憶内容は、パネル入出力制御部144を介して、下流側印刷機14bの操作パネル88に表示される。詳しく言えば、図5に示すように、作動状態表示画面の状態画像表示領域114には、下流側印刷機14bの正面側搬送レーン36,背面側搬送レーン38および第3シャトルコンベア装置の画像118,120,122に加え、バッファコンベア装置16,印刷結果検査機18の画像124,126も表示されており、それら搬送レーン,装置,機器に基板Sが存在する場合には、それらの画像118〜126の中の基板表示画像130が濃く表示され、その基板表示画像130の中に搬出基板管理テーブルの記憶内容が表示されるのである。より具体的に言えば、上記ステージに対応する基板表示画像130の中に、搬出基板管理テーブルのそのステージに対応する行のセルに格納されている実施装置判別情報,印刷方向判別情報,クリーニング後印刷判別情報の内容が、記号として、表示される。ちなみに、図5の作動状態表示画面の状態画像表示領域114には、図7の搬出基板管理テーブルの記憶内容が、表示されている。
【0128】
操作パネル88の作動状態表示画面の内容、詳しく言えば、基板表示画像130の濃淡および基板表示画像130の中に表示される実施印刷情報の記号は、上述した基板管理テーブルの更新に伴って、更新される。つまり、基板Sが当該はんだ印刷システムから搬出される都度、操作パネル88の作動状態表示画面の内容も、更新されるのである。なお、作動状態表示画面の状態画像表示領域114における第3シャトルコンベア装置12cの下流側の機器,装置の画像は、上述した搬出基板管理テーブルにおけるステージの設定に従ったものとされており、その設定の変更に伴って、それらの画像およびそれらの画像の中に表示される基板表示画像130の位置,数等も変更可能とされている。
【0129】
v)搬出基板の管理に関する制御装置および操作パネルの機能
下流側印刷機14bの制御装置82bは、搬出基板の管理に関して、上述のような処理を行う。そのことに鑑みれば、上記搬出基板管理テーブルを有するデータ記憶部148とそのテーブルを操作する搬出基板管理部150は、はんだ印刷システムから搬出された基板Sごとに、その基板Sについての実施印刷情報を、搬出された順序に関連付け記憶する情報記憶装置として機能するものとなっている。データ記憶部148および搬出基板管理部は、バッファコンベア装置16における基板Sの2つの待機位置および特定の作業機としての印刷結果検査機18における基板Sの作業位置に対応する3つのステージに存在する基板Sについての実施印刷情報を記憶するように構成されていることから、上記情報記憶装置は、印刷結果検査機18による検査が終了するまでの間、つまり、特定の作業機による作業が終了するまでの間、その基板Sの実施情報を記憶するように構成されており、かつ、はんだ印刷システムから最後に搬出された基板Sから設定枚数遡った基板Sまでの各々の実施印刷情報を記憶するように構成されているのである。ちなみに、設定枚数は、1の基板Sがはんだ印刷システムから搬出されてから特定の作業機による作業が終了するまでの間に当該システムによって搬出される基板Sの数、具体的に言えば、バッファコンベア装置16および印刷結果検査機18に対応して設定されたステージの数(上記設定では3である)に設定されている。
【0130】
また、下流側印刷機14bの操作パネル88は、搬出基板の管理に関して、上述のような表示を行う。そのことに鑑みれば、操作パネル88は、データ記憶部148に記憶されている搬出基板管理テーブルの内容、つまり、上記情報記憶装置が記憶する実施印刷情報を、はんだ印刷システムから搬出された基板Sごとに、搬出された順序に関連付けて表示する情報表示装置として機能するものとなっている。操作パネル88の作動状態表示画面には、状態画像表示領域114において複数の基板表示画像130が表示される。それら基板表示画像130の各々は、対応するステージに存在する基板Sの実施印刷情報を表示する実施印刷情報表示領域として機能しており、それら基板表示画像130のうちのいくつかのものは、特定の作業機である印刷結果検査機18における基板Sの作業位置と、印刷結果検査機18に至るまでに待機させられる待機位置とに対応付けられたものとなっている。なお、図5の画面では、バッファコンベア装置16において2つの待機位置が設定されており、バッファコンベア装置16の画像124の中には2つの基板表示画像130が表示されている。ちなみに、先に説明したように、基板表示画像130の数は待機位置の数に応じて変更可能である。
【符号の説明】
【0131】
10:基板供給装置 12:シャトルコンベア装置〔搬送レーン切換装置〕 12a:第1シャトルコンベア装置〔搬入側レーン切換装置〕 12b:第2シャトルコンベア装置〔印刷機間レーン切換装置〕 12c:第3シャトルコンベア装置〔搬出側レーン切換装置〕 12d:第4シャトルコンベア装置 14:印刷機 14a:上流側印刷機 14b:下流側印刷機 16:バッファコンベア装置 18:印刷結果検査機 20:部品装着機 36:印刷機の正面側搬送レーン〔第1搬送レーン〕 38:印刷機の背面側搬送レーン〔第2搬送レーン〕 46:はんだ印刷装置 58:印刷結果検査装置 62:部品装着モジュール 68:部品装着装置 82:印刷機の制御装置 82a:上流側印刷機の制御装置 82b:下流側印刷機の制御装置 88:印刷機の操作パネル〔情報表示装置〕 100:基板種リスト表示領域 102:正面側搬送レーン選択スイッチ〔第1搬送レーン作動スイッチ〕〔両搬送レーン作動スイッチ〕 104:背面側搬送レーン選択スイッチ〔第2搬送レーン作動スイッチ〕〔両搬送レーン作動スイッチ〕 112:告知領域 114:状態画像表示領域 116:作動許容・禁止スイッチ〔第1搬送レーン作動スイッチ〕〔第2搬送レーン作動スイッチ〕〔両搬送レーン作動スイッチ〕 130:基板表示画像 132:開始スイッチ 134:停止スイッチ 144:パネル入出力制御部 148:データ記憶部〔情報記憶装置〕 150:搬出基板管理部〔情報記憶装置〕


【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板搬送方向に並んで配置され、それぞれが、(a)基板搬送方向と交差する方向に並んで設けられてそれぞれが回路基板を基板搬送方向に搬送する第1搬送レーンおよび第2搬送レーンと、(b)前記第1搬送レーンによって搬送される回路基板にクリーム状のはんだを印刷するはんだ印刷装置とを備えた上流側印刷機および下流側印刷機と、
前記上流側印刷機の前記第1搬送レーンによって搬送された回路基板を前記下流側印刷機の前記第2搬送レーンに搬入するとともに、前記上流側印刷機の前記第2搬送レーンによって搬送された回路基板を前記下流側印刷機の前記第1搬送レーンに搬入するために、前記上流側印刷機と前記下流側印刷機との間に配置された搬送レーン切換装置と
を備えたはんだ印刷システムであって、
(A)回路基板を前記上流側印刷機の第1搬送レーンによって搬送しつつその回路基板に対して前記はんだ印刷装置によるはんだ印刷を行い、その回路基板を前記下流側印刷機の第2搬送レーンによって搬送する第1印刷作業と、(B)回路基板を前記上流側印刷機の第2搬送レーンによって搬送し、その回路基板を前記下流側印刷機の第1搬送レーンによって搬送しつつその回路基板に対して前記はんだ印刷装置によるはんだ印刷を行う第2印刷作業との両方を実行可能とされ、
当該はんだ印刷システムによる印刷作業を、前記第1印刷作業と前記第2印刷作業とを並行して行う2レーン並行印刷モードと、前記第1印刷作業と前記第2印刷作業との一方のみを行う1レーン印刷モードとの両方にて行うことが可能に構成されたはんだ印刷システム。
【請求項2】
前記上流側印刷機と前記下流側印刷機との少なくとも一方が、
前記1レーン印刷モードによる印刷作業において自身の前記第2搬送レーンのみの作動を許容するための第2搬送レーン作動スイッチを有する請求項1に記載のはんだ印刷システム。
【請求項3】
前記上流側印刷機と前記下流側印刷機との少なくとも一方が、
前記1レーン印刷モードによる印刷作業において自身の前記第1搬送レーンのみの作動を許容するための第1搬送レーン作動スイッチを有する請求項1または請求項2に記載のはんだ印刷システム。
【請求項4】
前記上流側印刷機と前記下流側印刷機との少なくとも一方が、
前記2レーン並行印刷モードによる印刷作業において自身の前記第1搬送レーンと前記第2搬送レーンとの両方の作動を一度に許容するための両搬送レーン作動スイッチを有する請求項1ないし請求項3のいずれか1つにに記載のはんだ印刷システム。
【請求項5】
前記上流側印刷機と前記下流側印刷機との少なくとも一方が、
前記1レーン印刷モードによる印刷作業において自身の前記第2搬送レーンのみの作動が許容されていることをオペレータに報知する報知器を備えた請求項1ないし請求項4のいずれか1つに記載のはんだ印刷システム。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−38294(P2013−38294A)
【公開日】平成25年2月21日(2013.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−174563(P2011−174563)
【出願日】平成23年8月10日(2011.8.10)
【出願人】(000237271)富士機械製造株式会社 (775)
【Fターム(参考)】