説明

ばね型アクチュエータ及びその製造方法

【課題】 構造が簡単で小型に構成することができるばね型アクチュエータ、及びばね型アクチュエータを小型に製造し得るばね型アクチュエータの製造方法を得る。
【解決手段】 ばね型アクチュエータ10は、非磁性材の素線より成る圧縮コイルスプリング12と、該圧縮コイルスプリング12の軸線方向に離間して配置され、それぞれ圧縮コイルスプリング12の内側で素線に固定された複数の磁性体層14と、各自生態層14を通るように磁場を発生する磁場発生装置20とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コイルばねの復元力を利用して機械的な運動を生じさせるばね型アクチュエータに関する。
【背景技術】
【0002】
コイルばねは、変位を与えると復元力を生じる機械要素であるが、それ自体ではアクチュエータとして機能しない。このため、コイルばねに変位を与え得る別のアクチュエータを組み合わせることによって、復元力を利用するアクチュエータを構成することになる。このようなアクチュエータとして、磁歪素子に磁気を与えることで変位を生じた変位出力部を、変位規制が解除されたときに圧縮コイルばねの復元力で原位置に復帰させる磁歪式アクチュエータが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2005−33978号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上記のごとき従来のアクチュエータでは、コイルばね以外の要素の構造が複雑で、全体として大型化・高重量化してしまうという問題があった。
【0004】
本発明は上記事実を考慮して、構造が簡単で小型に構成することができるばね型アクチュエータ、及びばね型アクチュエータを小型に製造し得るばね型アクチュエータの製造方法を得ることが目的である。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するために請求項1記載の発明に係るばね型アクチュエータは、コイルばねと、前記コイルばねの軸線方向に離間して配置され、それぞれ前記コイルばねの内側で前記コイルばねの素線に固定された複数の磁性体層と、前記各磁性体層を磁束が通るように磁場を発生する磁場発生装置と、を備えている。
【0006】
請求項1記載のばね型アクチュエータでは、磁場発生装置が磁場を発生すると、各磁性体層を磁束が通るので、これら各磁性体層の両側が磁化されて磁性体層間に磁気吸引力が作用し、コイルばねが圧縮される。磁場を弱めると、コイルばねはその復元力によって伸張する。したがって、本ばね型アクチュエータは、印加する磁場の強さ(変化方向)に応じてコイルばねの変位を変化させ得る。
【0007】
ここで、本ばね型アクチュエータは、コイルばね内に複数の磁性体層を互いに離間して固定する構成であるため、構造が簡単で小型化が可能である。また、コイルばねは、各コイル円の変位(素線各部の捩じれ量)を重畳したものが全体としての変位になるため、複数の磁性体層を近接して配置することで磁束の漏れを抑制しつつ、全体として大きな変位を得ることが可能である。換言すれば、ばね要素としてコイルばねを用いることで、全体としての変位が磁性体層間の間隔に制約されず、簡単な構造でかつ小型でありながら印加磁場に対し大きな変位を得るばね型アクチュエータを実現することができる。
【0008】
このように、請求項1記載のばね型アクチュエータでは、構造が簡単で小型に構成することができる。なお、本ばね型アクチュエータを構成するコイルばねは、非磁性体にて構成することが望ましい。
【0009】
請求項2記載の発明に係るばね型アクチュエータは、請求項1記載のばね型アクチュエータにおいて、前記磁性体層は、接着剤に磁性粉を混合して構成されている。
【0010】
請求項2記載のばね型アクチュエータでは、接着剤に磁性粉を混合したものを、コイルばねの内側に接着により固定する簡単な構造で、複数の磁性体層を得ることができる。
【0011】
請求項3記載の発明に係るばね型アクチュエータは、請求項1又は請求項2記載のばね型アクチュエータにおいて、前記コイルばねの内側における前記磁性体層間に、該磁性体層の接離に伴って減衰力を生じる減衰部材を配置した。
【0012】
請求項3記載のばね型アクチュエータでは、磁場の印加や除去等によって複数の磁性体層が接離すると、磁性体層間に配置した減衰部材が減衰力を生じる。このため、本ばね型アクチュエータでは、振動的又は過渡的な動作をする場合に、コイルばねをばね要素とする振動系の自由振動や共振を抑制することができる。
【0013】
請求項4記載の発明に係るばね型アクチュエータは、請求項3記載のばね型アクチュエータにおいて、前記減衰部材は、前記磁性体層間に挟み込まれ、該磁性体層の接離に伴って変形しつつ空気を出入りさせることで減衰力を生じる多孔性物質にて構成されている。
【0014】
請求項4記載のばね型アクチュエータでは、磁場の印加や除去等によって複数の磁性体層が接離すると、多孔性物質より成り磁性体層間に挟まれた減衰部材は、変形しつつ各孔の空気を出入りさせることで減衰力を生じる。なお、減衰部材を構成する多孔性物質は、例えば、柔軟なスポンジや多孔性ゴム等を採用することができ、また、それ自体のばね定数はコイルばねのばね定数に対し十分に小さいことが望ましい。
【0015】
請求項5記載の発明に係るばね型アクチュエータは、請求項1乃至請求項4の何れか1項記載のばね型アクチュエータにおいて、前記磁場発生装置は、前記コイルばねの少なくとも軸線方向一端側に配置された永久磁石と、該永久磁石に接触して設けられ変動磁場を生じ得る電磁石とを含んで構成されている。
【0016】
請求項5記載のばね型アクチュエータでは、永久磁石によって磁性体層が磁化されて磁気吸引力が作用するため、コイルばねが圧縮して初期変位が与えられる。このため、本ばね型アクチュエータは、初期変位点を基準にして磁場の向き応じて圧縮又は伸張する。したがって、本ばね型アクチュエータは、電磁石に変動磁場を生じさせると、この変動磁場の大きさ及び向きに追従して変位する。これにより、例えば、電磁石によって周期的な変動磁場を印加した場合、本ばね型アクチュエータの変位の周期は、変動磁場の周期に一致する。
【0017】
請求項6記載の発明に係るばね型アクチュエータの製造方法は、コイルばねと、前記コイルばねの軸線方向に離間して配置され、それぞれ前記コイルばねの内側で前記コイルばねの素線に固定された複数の磁性体層と、を備えたばね型アクチュエータの製造方法であって、加熱によって固化する接着剤に磁性粉を混合した磁性粉入接着剤層と、加熱によって溶融又は蒸発する材料より成るスペーサ層とを、前記磁性粉入接着剤層が2つ以上形成されるように前記コイルばね内に該コイルばねの軸線方向に交互に積層する第1工程と、前記コイルばね内で交互に積層された前記磁性粉入接着剤層及びスペーサ層を加熱して、前記接着剤を固化させると共に前記スペーサ層を除去して、前記コイルばねの軸線方向に離間した複数の磁性体層を形成する第2工程と、を含む。
【0018】
請求項6記載のばね型アクチュエータの製造方法では、第1工程で、コイルばねの内側に磁性粉入接着剤層とスペーサ層とを交互に積層する。磁性粉入接着剤層は、少なくとも2層設ける。次いで第2工程で、交互に積層された磁性粉入接着剤層及びスペーサ層を加熱する。すると、磁性粉入接着剤層の接着剤が固化してコイルばねの内側に固定された磁性体層が構成されると共に、スペーサ層が溶融又は蒸発によって消失されて、複数の磁性体層間に空隙が形成される。これにより、コイルばね内に該コイルばねの軸線方向に離間して複数の磁性体層が固定されたばね型アクチュエータが構成される。本ばね型アクチュエータの製造方法では、接着剤を含む磁性体層をコイルばねの内側に直接的に固定するため、換言すれば、固定のための別部材が不要であるため、小型のばね型アクチュエータを製造することができる。また、スペーサ層を取り除く必要がないため、ばね型アクチュエータの製造が容易である。
【0019】
このように、請求項6記載のばね型アクチュエータの製造方法では、ばね型アクチュエータを小型に製造し得る。なお、本ばね型アクチュエータの製造方法で製造されるばね型アクチュエータのコイルばねは、非磁性体にて構成することが望ましい。
【発明の効果】
【0020】
以上説明したように本発明に係るばね型アクチュエータは、構造が簡単で小型に構成することができるという優れた効果を有する。また、本発明に係るばね型アクチュエータの製造方法は、ばね型アクチュエータを小型に製造し得るという優れた効果を有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
本発明の第1の実施形態に係るばね型アクチュエータ10について、図1乃至図5に基づいて説明する。
【0022】
図1には、ばね型アクチュエータ10の全体構成が断面図にて示されている。この図に示される如く、ばね型アクチュエータ10は、コイルばねとしての圧縮コイルスプリング12を備えている。圧縮コイルスプリング12は、非磁性材より成る素線を螺旋状に巻いて構成されている。この実施形態では、圧縮コイルスプリング12は、燐青銅の円形断面を有する素線を用いて構成されている。より具体的には、本実施形態に係る圧縮コイルスプリング12は、素線径1.2mm、コイル径17mm、自由長28mm、有効巻数8(図面とは異なる)の寸法形状を有し、そのばね定数が略1N/mmである構成とされている。
【0023】
また、ばね型アクチュエータ10は、圧縮コイルスプリング12内に配設された複数(この実施形態では5つ)の磁性体層14を備えている。複数の磁性体層14は、それぞれ
圧縮コイルスプリング12の軸線方向の端面が該軸線との直交面に沿う短円柱状に形成されており、それぞれ圧縮コイルスプリング12の軸線方向に互いに離間して該圧縮コイルスプリング12の素線に固定されている。また、隣り合う磁性体層14間は、それぞれ空隙Gとされており、隣り合う磁性体層14間の間隔(空隙Gの高さ)は略一定とされている。
【0024】
これら各磁性体層14は、シリコン系の接着剤に強磁性体であるフェライト粉を混合して練った磁性体入接着剤が、接着剤の固化によって圧縮コイルスプリング12の素線に固着されて構成されている。この実施形態では、磁性体入接着剤は、質量比でシリコン系の接着剤を2、フェライト粉を1の割合で混合して構成されている。以下、ばね型アクチュエータ10の製造方法を参照しつつばね型アクチュエータ10の構造を説明する。
【0025】
ばね型アクチュエータ10を製造するに当たっては、先ず図2(A)に示される如く、圧縮コイルスプリング12内に磁性粉入接着剤層16とスペーサ層18とを、圧縮コイルスプリング12の軸線方向に交互に積層する(第1工程)。ここで、シリコン系の接着剤は、加熱によって(例えば、180℃で)固化するものが選択されており、スペーサ層18は、加熱によって(例えば、150℃〜180℃で)溶融又は蒸発する発泡スチロール等の材料が選択されている。
【0026】
次いで、圧縮コイルスプリング12の内部に磁性粉入接着剤層16とスペーサ層18とを交互に積層したものを、図2(B)に示される如く加熱炉F内にセットし、この加熱炉Fを炉内が所定温度(例えば180℃)になるように作動する。この加熱炉F内で加熱されることで、磁性粉入接着剤層16のシリコン系の接着剤が固化すると共に、スペーサ層18が溶融又は蒸発によって消失される(第2工程)。これにより、図2(C)に示される如く、圧縮コイルスプリング12内で複数の磁性体層14(磁性粉入接着剤層16が固化したもの)が、空隙G(スペーサ層18が占めていた空間)を挟んで対向しつつ該圧縮コイルスプリング12に固定されたばね型アクチュエータ10が構成される(製造が完了する)。
【0027】
以上説明したばね型アクチュエータ10は、磁場発生装置としての磁場発生コイル20によって作動する。図3に示される如く、磁場発生コイル20は、ばね型アクチュエータ10を収容し得る略有底円筒状のアルミ製ボビン22の外周に銅線を巻回してコイル部24を形成することで構成されている。この実施形態では、ボビン22は、内径18mm、外径22mm、深さ27mmとされており、コイル部24は、線型0.75mmの銅線をボビン22に448回巻き回して構成されている。この磁場発生コイルの抵抗は、1.8Ωであった。
【0028】
次に、第1の実施形態の作用を説明する。
【0029】
ここでは、上記構成のばね型アクチュエータ10を磁場発生コイル20にて駆動する例を説明する。具体的には、ばね型アクチュエータ10を磁場発生コイル20のボビン22内に同軸的に収容し、ばね型アクチュエータ10下端10Aをボビン22の底面22Aに固定した場合の、ばね型アクチュエータ10の上端10Bの応答について説明する。
【0030】
ばね型アクチュエータ10は、磁場発生コイル20のコイル部24に電圧を印加して電流を流すと、ばね型アクチュエータ10の軸線方向に磁束が貫通するような磁場が生成される。この磁場によって、各磁性体層14は、上下両端がそれぞれ磁化してN極とS極とが生成される。隣り合う磁性体層14の対向面の極性は逆なので、各磁性体層14間には磁気吸引力が作用し、圧縮コイルスプリング12すなわちばね型アクチュエータ10が圧縮し、上端10Bは下降する。上端10Bは、静的には、上記した磁気吸引力と圧縮コイルスプリング12の復元力とが釣り合う位置まで変位する。
【0031】
図4には、ばね型アクチュエータ10のステップ応答が破線にて示されている。なお、実線は、第2の実施形態に係るばね型アクチュエータ30のステップ応答(後述)を示す。このステップ応答曲線は、磁場発生コイル20のコイル部に6Vのステップ電圧を印加した場合の上端10Bの変位応答である。この図から、ばね型アクチュエータ10は、応答性が良好(静定まで略0.15秒)で、オーバーシュートが小さくオーバーシュート後の振動も生じないこと、すなわち実用的であることが確かめられた。
【0032】
また、図5には、ばね型アクチュエータ10の周波数特性が示されている。具体的には、図5(A)は、磁場発生コイル20のコイル部24に周期的な電圧V(V=V0sinωt)を印加した場合の上端10Bの変位を示している。ばね型アクチュエータ10は、圧縮コイルスプリング12の自然長(変位0)からの圧縮、及び該圧縮状態から自然長への復帰の範囲で上端10Bを変位させるため、磁場発生コイル20が生じる磁場の方向に依存せず、磁場が印加されると圧縮して上端10Bを下降する。したがって、ばね型アクチュエータ10は、磁場発生コイル20への印加電圧(印加される磁場)の周期の1/2の周期で上端10Bを変位させる。
【0033】
一方、図5(B)には、磁場発生コイル20のコイル部24にバイアスをかけた周期的な電圧V(V=V0(1−sinωt))を印加した場合の上端10Bの変位を示している。この場合、磁場発生コイル20が発生する磁場は、向きが一定で大きさのみ変化するため、ばね型アクチュエータ10は、磁場発生コイル20への印加電圧(印加される磁場)の周期と同じ周期(逆位相)で上端10Bを変位させる。なお、ばね型アクチュエータ10は、バイアス電圧の有無にかかわらず、31Hz程度まではほぼ完全な周波数応答を奏することが確かめられている。
【0034】
ここで、ばね型アクチュエータ10は、単に圧縮コイルスプリング12内に複数の磁性体層14を互いに離間して固定する構成であるため、構造が簡単で小型化が可能である。また、圧縮コイルスプリング12は、各コイル円の変位(素線各部の捩じれ量)を重畳したものが全体としての変位になるため、複数の磁性体層14を近接して配置することで磁束の漏れを抑制しつつ、全体として大きな変位を得る構成が実現されている。すなわち、単に磁気吸引力で互いに離間する磁性体を引き付けるアクチュエータでは、磁性体層間の間隔を大きくすると漏れ磁束が大きくなり、逆に磁性体層間の間隔を小さくすると変位が制限されてしまうが、圧縮コイルスプリング12の内部に複数の磁性体層14を設けることで、小型でありながら磁束の漏れ量を抑えつつ変位を確保する構成が実現された。
【0035】
このように、第1の実施形態に係るばね型アクチュエータ10では、構造が簡単で小型に構成することができる。また、構造が簡単なばね型アクチュエータ10は、安価に構成することができる。
【0036】
また、ばね型アクチュエータ10では、フェライト粉を混合した接着剤を圧縮コイルスプリング12の内側に接着によって固定することで、圧縮コイルスプリング12にその内側で固定された複数の磁性体層14を容易に得ることができる。
【0037】
さらに、ばね型アクチュエータ10の製造方法では、フェライト粉を接着剤に混合した磁性体入接着剤層16を加熱によって固化することで、圧縮コイルスプリング12の内側に磁性体層14を直接的に固定するため、換言すれば、固定のための別部材が不要であるため、小型のばね型アクチュエータ10を製造することができる。また、加熱により消失するスペーサ層18を取り除く必要がないため、ばね型アクチュエータ10の製造が容易である。しかも、磁性体層14の固定と空隙Gの形成とが同一工程で行われるため、工程数が少なく、ばね型アクチュエータ10を安価に製造することができる。
【0038】
このように、本実施形態にかかるばね型アクチュエータの製造方法では、ばね型アクチュエータ10を小型に製造し得る。
【0039】
なお、上記実施形態では、ばね型アクチュエータ10の変位が比較的小さい例を示したが、本発明はこれに限定されず、例えば、磁場発生コイル20の発生する磁場を強くしたり(印加電圧を上げたり)、別途磁気回路を構成したり、圧縮コイルスプリング12のばね定数を小さくしたりすることで、ばね型アクチュエータ10の変位を大きくすることができる。
【0040】
次に、本発明の他の実施形態を説明する。なお、上記第1の実施形態と基本的の同一の部品・部分については、上記第1の実施形態と同一の符号を付して説明を省略する。
【0041】
図6には、本発明の第2の実施形態に係るばね型アクチュエータ30が断面図にて示されている。この図に示される如く、ばね型アクチュエータ30は、空隙Gを設けることに代えて、各磁性体層14間に減衰部材32を挟みこんで構成されている。減衰部材32は、例えば柔軟なスポンジや柔軟な多孔性ゴム等の多孔性物質より成り、孔内の空気を排出しつつ圧縮変形し、孔内に空気を導入しつつ圧縮状態から復元することで、該圧縮または復元に伴って減衰力を生じるようになっている。
【0042】
このばね型アクチュエータ30を製造する際には、磁性粉入接着剤層16と減衰部材32とを圧縮コイルスプリング12の内部で交互に積層する。減衰部材32が接着剤の固化温度程度の耐熱性を有する場合には、加熱炉F内にて加熱することで、接着剤を固化させて磁性体層14を形成する。一方、減衰部材32が熱に弱い物質である場合には、接着剤を自然(常温)固化させる。
【0043】
なお、減衰部材32は、それ自体弾性(復元性)を有するが、そのばね定数は圧縮コイルスプリング12のばね定数に対し十分に小さく、実質的にばね型アクチュエータ30の弾性(振動)特性に影響を与えない構成とされている。この実施形態では、ばね型アクチュエータ30のばね定数は、ばね型アクチュエータ10のばね定数と同等である。
【0044】
ばね型アクチュエータ30の他の構成は、ばね型アクチュエータ10と同じである。したがって、第2に実施形態に係るばね型アクチュエータ30によっても、基本的にばね型アクチュエータ10と同様の作用によって、ばね型アクチュエータ10と同様の効果を得ることができる。
【0045】
また、ばね型アクチュエータ30は、磁性体層14間に挟まれた減衰部材32を備えるため、伸縮に伴って減衰部材を変形して(空気を出入りさせて)減衰力を生じる。これにより、ばね型アクチュエータ30では、振動的又は過渡的な動作をする場合に、圧縮コイルスプリング12をばね要素とする振動系の自由振動や共振を抑制することができる。図4には、ばね型アクチュエータ30のステップ応答が実線にて示されている。このステップ応答曲線は、磁場発生コイル20のコイル部に6Vのステップ電圧を印加した場合の上端10Bの変位応答である。この図から、ばね型アクチュエータ30は、応答性はばね型アクチュエータ10と同等であり、オーバーシュートがばね型アクチュエータ10よりも小さく抑えられ、オーバーシュート後の振動も生じないことが確かめられた。すなわち、柔軟な多孔性物質より成る減衰部材32は、減衰効果を生じつつ、応答性に影響を与えないことが確かめられた。
【0046】
図7には、本発明の第3の実施形態に係るばね型アクチュエータ40が断面図にて示されている。この図に示される如く、ばね型アクチュエータ40は、ばね型アクチュエータ10(又はばね型アクチュエータ30)に、磁場発生42を付加して構成されている。磁場発生42は、初期変位設定手段としての永久磁石44、46と、変動磁場発生手段としての電磁石48とを備えて構成されている。
【0047】
永久磁石44は、ばね型アクチュエータ10の下端10Aに取り付けられており、永久磁石46は、ばね型アクチュエータの10の上端10Bに取り付けられている。永久磁石44の上面と、永久磁石46の下面とは極性が逆になっている。このため、ばね型アクチュエータ40では、各磁性体層14が永久磁石44、46によって磁化されて磁気吸引力が生じており、この磁気吸引力と圧縮コイルスプリング12の復元力とが釣り合うように初期変位が与えられている。
【0048】
永久磁石44の下面には、電磁石48が連結されている。電磁石48は、圧縮コイルスプリング12と同軸的に配置され永久磁石44に固定された鉄心50に、銅線を巻き回したコイル52を設けて構成されており、コイルを流れる電流すなわち印加電圧に応じて発生する磁場の強さを調整し得るようになっている。
【0049】
以上説明したばね型アクチュエータ40は、磁場発生コイル20を用いることなく、電磁石48のコイル52に電圧を印加することで駆動される。そして、ばね型アクチュエータ40は、ステップ応答においては、永久磁石44、46の磁力によって付与された初期変位を基準(変位0)としてみると、圧縮コイルスプリング12の自然長を基準としたばね型アクチュエータ10(単体)とほぼ同様の応答曲線を得ることができる。
【0050】
一方、ばね型アクチュエータ40は、電磁石48のコイル52に周期的な電圧V(V=V0sinωt)を印加した場合、電磁石48が発生する磁束の向きと永久磁石44、46の磁束の向きとが一致している期間は、初期変位を与える状態よりも磁気吸引力が大きくなるので初期変位を付与された状態に対し圧縮し、電磁石48が発生する磁束の向きと永久磁石44、46の磁束の向きとが逆である期間は、磁気吸引力が小さくなるので圧縮コイルスプリング12の復元力が勝って初期変位を付与された状態に対し伸張する。
【0051】
この周波数応答を図示すると図8の如くなる。この図から、ばね型アクチュエータ40では、印加電圧の周期と同じ周期(同位相又は逆位相)で上端10Bを変位させることがわかる。すなわち、ばね型アクチュエータ40では、永久磁石44、46によって磁気バイアスをかけて初期変位を与えることで、上端10Bの変位周期を印加電圧の周期に一致させるのみならず、印加電圧が0のときに初期変位となるため変位の基準(振動基線)を変位の大きさによらず一定とすることが実現された。
【0052】
なお、第3の実施形態では、ばね型アクチュエータ40を構成するばね型アクチュエータ10の両端に永久磁石44、46を設けた例を示したが、例えば、電磁石48に連結された永久磁石44のみを備えた構成としても良い。また、一方の永久磁石44にのみ電磁石48を連結する構成に代えて、一対の永久磁石44、46にそれぞれ電磁石48を連結して構成することも可能である。
【0053】
また、本発明は、上記各実施形態に限定されることはなく、各種変形して実施することが可能である。したがって例えば、本発明は、磁性体層14の数や形状等によって限定されることはなく、磁性体層14は2つ以上(好ましくは3つ以上)設けられていれば足り、また例えば、磁性体層14の端面を螺旋角方向に一致するように傾斜して形成しても良い。さらに、上記実施形態では、ばね型アクチュエータ10等の一端(下端)を固定して他端に変位を与える例を示したが、本発明はこれに限定されず、例えば、ばね型アクチュエータ10等の両端を自由端とし、該ばね型アクチュエータ10等自体を軸線方向に移動させるように構成しても良い。さらにまた、本発明におけるコイルばねは、圧縮コイルスプリング12に限定されることはなく、引張コイルスプリングであっても良い。また、コイルばねに機械的に初期変位を与える構成を採用しても良い。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】本発明の第1の実施形態に係るばね型アクチュエータを示す断面図である。
【図2】本発明の第1の実施形態に係るばね型アクチュエータの製造工程を示す図であって、(A)は第1工程を示す断面図、(B)は第2工程を示す断面図、(C)は完成状態を示す断面図である。
【図3】本発明の第1の実施形態に係るばね型アクチュエータを駆動するための磁場発生コイルを示す断面図である。
【図4】本発明の第1の実施形態に係るばね型アクチュエータのステップ応答を示す線図である。
【図5】本発明の第1の実施形態に係るばね型アクチュエータの周波数特性を示す図であって、(A)は周期的な磁場を付与した場合を示す線図、(B)はバイアスがかかった周期的磁場を付与した場合を示す線図である。
【図6】本発明の第2の実施形態に係るばね型アクチュエータを示す断面図である。
【図7】本発明の第3の実施形態に係るばね型アクチュエータを示す断面図である。
【図8】本発明の第3の実施形態に係るばね型アクチュエータの周波数特性を示す線図である。
【符号の説明】
【0055】
10 ばね型アクチュエータ
12 圧縮コイルスプリング(コイルばね)
14 磁性体層
16 磁性粉入接着剤層
18 スペーサ層
30・40 ばね型アクチュエータ
32 減衰部材
42 磁場発生
44・46 永久磁石
48 電磁石

【特許請求の範囲】
【請求項1】
コイルばねと、
前記コイルばねの軸線方向に離間して配置され、それぞれ前記コイルばねの内側で前記コイルばねの素線に固定された複数の磁性体層と、
前記各磁性体層を磁束が通るように磁場を発生する磁場発生装置と、
を備えたばね型アクチュエータ。
【請求項2】
前記磁性体層は、接着剤に磁性粉を混合して構成されている請求項1記載のばね型アクチュエータ。
【請求項3】
前記コイルばねの内側における前記磁性体層間に、該磁性体層の接離に伴って減衰力を生じる減衰部材を配置した請求項1又は請求項2記載のばね型アクチュエータ。
【請求項4】
前記減衰部材は、前記磁性体層間に挟み込まれ、該磁性体層の接離に伴って変形しつつ空気を出入りさせることで減衰力を生じる多孔性物質にて構成されている請求項3記載のばね型アクチュエータ。
【請求項5】
前記磁場発生装置は、前記コイルばねの少なくとも軸線方向一端側に配置された永久磁石と、該永久磁石に対し前記コイルばねとは反対側に設けられ変動磁場を生じ得る電磁石とを含んで構成されている請求項1乃至請求項4の何れか1項記載のばね型アクチュエータ。
【請求項6】
コイルばねと、
前記コイルばねの軸線方向に離間して配置され、それぞれ前記コイルばねの内側で前記コイルばねの素線に固定された複数の磁性体層と、
を備えたばね型アクチュエータの製造方法であって、
加熱によって固化する接着剤に磁性粉を混合した磁性粉入接着剤層と、加熱によって溶融又は蒸発する材料より成るスペーサ層とを、前記磁性粉入接着剤層が2つ以上形成されるように前記コイルばね内に該コイルばねの軸線方向に交互に積層する第1工程と、
前記コイルばね内で交互に積層された前記磁性粉入接着剤層及びスペーサ層を加熱して、前記接着剤を固化させると共に前記スペーサ層を除去して、前記コイルばねの軸線方向に離間した複数の磁性体層を形成する第2工程と、
を含むばね型アクチュエータの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2006−320059(P2006−320059A)
【公開日】平成18年11月24日(2006.11.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−138128(P2005−138128)
【出願日】平成17年5月11日(2005.5.11)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 2005年3月14日から15日 日本AEM学会主催の「第14回 MAGDAコンファレンスin岐阜 電磁現象及び電磁力に関するコンファレンス」において文書をもって発表
【出願人】(504145364)国立大学法人群馬大学 (352)
【Fターム(参考)】