説明

めっきパターンの形成方法および薄膜磁気ヘッドの製造方法

【課題】 レジストパターンを使用してめっきにより垂直磁気記録ヘッドの主磁極を形成するといった場合に、レジストパターンに親水処理を施してもパターン幅が広がったりする変形を生じさせることなく、パターンの狭幅化、微細化を達成することができるめっきパターンの形成方法を提供する。
【解決手段】 めっきシード層11の表面にレジストを被着し、該レジストを露光および現像して底面に前記めっきシード層11が露出する所定パターンの凹部30aが設けられたレジストパターン30を形成する工程と、レジストパターンに親水処理を施す工程と、レジストパターン30に親水処理を施した後、めっきにより前記凹部30a内にめっき32を被着させる工程と、めっき後に前記レジストパターン30を除去し、次いで前記めっきシード層11の露出する部位を除去する工程とを備えるめっきパターンの形成方法において、前記めっきシード層11として、前記親水処理の際に酸化され、酸化物が揮発性を有する金属からなる揮発性金属層を設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はめっきパターンの形成方法および薄膜磁気ヘッドの製造方法に関し、より詳細にはめっき方法を利用して薄膜磁気ヘッドの構成部分や配線基板の配線パターン等を形成する際に利用できるめっきパターンの形成方法およびこの方法を利用した薄膜磁気ヘッドの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、磁気記録装置の面記録密度の高密度化に伴い、薄膜磁気ヘッドの性能向上が求められ、記録ギャップや記録用の磁極の端面を狭小に、かつ高精度に形成することが求められている。
たとえば、垂直磁気記録ヘッドは、記録媒体に面して記録用の主磁極とリターンヨークとを備え、ABS面(Air Bearing Surface)側から見た主磁極の端面は、再生素子側が狭幅でリターンヨーク側が広幅の逆台形形状に形成される。この主磁極を形成する方法には、主磁極となる磁性膜を成膜した後、ドライプロセスによって磁性膜をエッチングして主磁極の形に整える方法と、めっきによって形成する方法がある。
【0003】
ドライプロセスによる場合は、FIB(Focused Ion Beam etching)やイオンミリングが利用されるが、FIBによる場合は量産性に劣るという問題があり、イオンミリングによる場合は磁極の形状を高精度に形成することが困難であるという問題がある。
これに対して、めっき方法による場合は、主磁極の形状や寸法がレジストパターンによって決まるから、レジストパターンを高精度に形成することによって、磁極の形状を高精度に制御できるという利点がある。
【特許文献1】特開2004−95006号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、めっきによって主磁極を形成する場合は、レジストを露光および現像して所定のレジストパターンを形成した後、めっきの前処理として親水処理を施す。なお、親水処理とは、レジストパターンによってめっき液がはじかれてしまうことを防止し、めっき液の液回り性を良好にして、細幅の溝内にもめっき液が十分に回り込むようにするための処理である。
【0005】
親水処理としては、たとえばO2プラズマ処理、UV処理等がなされる。しかしながら、O2プラズマ処理等の親水処理をレジストパターンに施すと、レジストの表面が揮発して、レジストパターンを形成した当初のパターン幅にくらべて、処理後のパターン幅が広がり狭幅化を妨げるという問題がある。また、垂直磁気記録ヘッドの場合は、主磁極の端面がABS面側から見て逆台形状に形成する必要があるが、親水処理を施すと、レジストパターンの凹部の底部側での広がり度合いが、開口側よりも大きくなり、レジストパターンの溝部分の断面形状が逆台形状にならなくなるといった問題もあった。
【0006】
本発明はこれらの課題を解決すべくなされたものであり、レジストパターンを使用してめっきにより垂直磁気記録ヘッドの主磁極を形成するといった場合に、レジストパターンに親水処理を施してもパターン幅が広がったりする変形を生じさせることがなく、パターンの狭幅化、微細化を的確に達成することができるめっきパターンの形成方法および薄膜磁気ヘッドの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明は以下の構成を備える。
すなわち、めっきシード層の表面にレジストを被着し、該レジストを露光および現像して底面に前記めっきシード層が露出する所定パターンの凹部が設けられたレジストパターンを形成する工程と、レジストパターンに親水処理を施す工程と、レジストパターンに親水処理を施した後、めっきにより前記凹部内にめっきを被着させる工程と、めっき後に前記レジストパターンを除去し、次いで前記めっきシード層の露出する部位を除去する工程とを備えるめっきパターンの形成方法において、前記めっきシード層として、前記親水処理の際に酸化され、酸化物が揮発性を有する金属からなる揮発性金属層を設けることを特徴とする。
また、前記揮発性金属層としては、ルテニウムからなるものが有効である。
【0008】
また、薄膜磁気ヘッドの構成部分をめっきにより形成する方法として、前記めっきパターンの形成方法を適用する薄膜磁気ヘッドの製造方法であって、前記レジストパターンを形成する工程においては、前記凹部を前記薄膜磁気ヘッドの構成部分のパターンに形成し、前記めっきにより前記凹部内にめっきを被着させる工程においては、前記凹部に磁性膜を形成することを特徴とする。
また、前記薄膜ヘッドの構成部分として、垂直磁気記録ヘッドの主磁極、あるいは水平磁気記録ヘッドの上部先端磁極を形成することができる。
また、前記めっきシード層として揮発性金属層を設ける際に、下部先端磁極と上部先端磁極のギャップ間隔に一致する厚さに揮発性金属層を設けることにより、揮発性金属層がめっきシード層およびライトギャップとして使用することができる。
また、前記揮発性金属層としては、ルテニウムからなるものが有効に利用できる。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係るめっきパターンの形成方法によれば、めっきシード層として揮発性金属層を設けることにより、レジストパターンに親水処理を施した際にレジストパターンに設けられた凹部の幅が広がったり、パターン形状が変形したりすることが防止され、これによって、きわめて高精度に微細なめっきパターンを形成することが可能になる。本発明に係るめっきパターンの形成方法は薄膜磁気ヘッドの主磁極等の構成部分をめっきによって形成するといった場合に、好適に利用することができ、薄膜磁気ヘッドの構成部分を高精度に形成することが可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明に係るめっきパターンの形成方法を、薄膜磁気ヘッドの構成部分を形成する方法に適用した例について説明する。
図1は、本発明方法を適用して形成した垂直磁気記録型の薄膜磁気ヘッドの構成を示す断面図である。
この薄膜磁気ヘッドは、記録ヘッドとして主磁極10、トレーリングシールド13、リターンヨーク14および記録用コイル16を備え、再生ヘッドとして、MR素子20、上部シールド22および下部シールド24を備える。
上部シールド22と主磁極10との間にはアルミナからなる絶縁層26が設けられ、主磁極10とコイル16との間、コイル16とリターンヨーク14との間、MR素子20と上部シールド22および下部シールド24との間もアルミナ等からなる絶縁層が設けられている。
【0011】
本実施形態の薄膜磁気ヘッドの構成において特徴的な点は、主磁極10の下地層として揮発性金属層11が形成されていることにある。
すなわち、薄膜磁気ヘッドは、Al2O3-TiC基板上に、シールド層22、24やMR素子20、主磁極10、コイル14、リターンヨーク16等を、順次、積層するように成膜し、所定のパターンにパターニングして形成される。
前述したように、垂直磁気記録型の薄膜磁気ヘッドでは、記録媒体に対向する主磁極10の端面は、再生素子側が幅狭で、リターンヨーク側が幅広となる逆台形状に形成される。揮発性金属層11はこの逆台形状に形成された主磁極10の底部に被着されている。
【0012】
図2は、薄膜磁気ヘッドの主磁極10を形成する工程を示す。図2は図1のA部分を端面方向から見た状態を示す。
図2(a)は、絶縁層26を成膜した後、絶縁層26の表面に密着層12を成膜し、次いで揮発性金属層11を成膜した状態を示す。密着層12は揮発性金属層11を絶縁層26の表面に密着させるためのものである。密着層12は、Ti、Ta、Cr、Nb等をスパッタリングあるいは蒸着して形成される。
【0013】
揮発性金属層11を形成する材料として、本実施形態ではRu(ルテニウム)を使用した。揮発性金属層11は、ルテニウム金属をスパッタリングあるいは蒸着して形成する。揮発性金属層11はめっきシード層として使用するものであり、所定の電気抵抗値が得られる厚さ、たとえば500オングストローム程度の厚さに形成すればよい。なお、揮発性金属層11を単層で形成するかわりに、所定の電気抵抗値が得られる厚さに他の金属層を形成し、その上に揮発性金属層11を形成して2層構造とすることもできる。ルテニウムをスパッタリングあるいは蒸着することによって、Al2O3-TiC基板からなるワークの表面が、ルテニウムからなる揮発性金属層11によって被覆される。
【0014】
図2(b)は、次に、揮発性金属層11の表面にレジストパターン30を形成した状態を示す。ワークの表面にレジストをコーティングし、主磁極10を形成するパターンにしたがってレジストを露光および現像し、主磁極10の先端部分については断面形状が逆台形状となるように凹部30aを形成する。凹部30aの内底面には、ルテニウムからなる揮発性金属層11が露出する。
【0015】
レジストパターン30を形成した後、レジストに親水処理を施す。図2(c)は、親水処理としてレジストにO2プラズマ処理を施している状態を示す。
レジストにO2プラズマ処理を施すと、レジストパターン30の表面が疎水性から親水性に変化するとともに、凹部30aが形成された部位については、凹部30aの底面に露出する揮発性金属層11のルテニウムが酸化されてRuO4となり、このRuO4が揮発して凹部30aの内壁面に揮発物11aとして付着する。
【0016】
本実施形態で揮発性金属層11として使用しているルテニウムは、酸化物(RuO4)が揮発性を有するものであり、親水処理の際に生じたRuO4は凹部30aの内壁面に付着するようになる。
こうして、親水処理によって凹部30aの内壁面に揮発物11aが付着するようになるが、凹部30aの内壁面に揮発物11aが付着するとレジストパターン30に親水処理を施しても、レジストパターン30に形成された凹部30a等のパターンが変形しなくなる。レジストパターン30に親水処理を施すと、通常は、レジストが揮発してレジストパターン30に所定のパターンに形成された凹部(凹溝)の幅が広がったりするが、揮発性金属層11から揮発物を揮発させると凹部の幅が広がったりする作用が抑制されるようになる。
【0017】
上記のようにして、レジストパターン30に親水処理を施した後、揮発性金属層11をめっき給電層として電解めっきを施し、凹部30a内に磁性膜(高飽和磁束密度膜)32を盛り上げるように形成する。図2(d)が、磁性膜32をめっきにより形成した状態を示す。
なお、親水処理を施した後、めっき前処理として希酸などにより揮発性金属層11の表面を活性化するようにしてもよい。また、凹部30aに磁性膜32を形成する方法としては、電解めっきに限らず、無電解めっきによることも可能である。電解めっきによる場合も、直流電流あるいはパルス電流等、電流の印加方法は適宜選択可能である。
また、磁性膜32としては、薄膜磁気ヘッドの構成部分についての所望の特性に応じて、FeCo、FeCoα(α=Pd、Pt、Rh、Mo、Zr)、CoNiFe、NiFe、NiFeα(α=Pd、Pt、Rh、Mo、Zr)などを選択して使用することができる。
【0018】
図2(e)は、磁性膜32を形成した後、レジストパターン30を除去した状態を示す。レジストパターン30は化学的に溶解して除去することができる。レジストパターン30を除去する際に、凹部30aの内側面に付着した揮発物(RuO4)もレジストパターン30とともに除去される。なお、仮に、揮発物が磁性膜32の側面に部分的に付着して残留したとしても、揮発物は非磁性であり、薄膜磁気ヘッドの特性に影響を及ぼすことはない。
【0019】
レジストパターン30を除去した後、イオンミリングにより、絶縁層26の表面に露出している部位の揮発性金属層11と密着層12とを除去する。図2(f)に揮発性金属層11と密着層12の不要部位を除去し、絶縁層26上に主磁極10が形成された状態を示す。イオンミリングによって揮発性金属層11と密着層12とを除去する際に、磁性膜32が被着されている部位は、磁性膜32によってその下地の揮発性金属層11と密着層12が遮蔽されており、揮発性金属層11と密着層12はきわめて薄く形成されているから、露出領域の揮発性金属層11と密着層12とは選択的に簡単に除去される。主磁極10の下面側に残留する揮発性金属層11についても、磁気ヘッドの特性に悪影響を与えることはない。
【0020】
本実施形態での主磁極10の形成方法によれば、揮発性金属層11の表面に形成したレジストパターン30に親水処理を施す際に、レジストパターン30に形成された凹部30aの幅が広がったり、逆台形状に形成された凹部30aの端面形状が変形したりすることが防止でき、これによって設計通りの形状に主磁極10を形成することが可能になる。
【0021】
上述した揮発性金属層11は、レジストパターン30に親水処理を施した際に、酸化物が揮発性を有するものとなる金属によって形成される。上記実施形態では、揮発性金属層11をRu(ルテニウム)によって形成したが、ルテニウム以外の金属を使用することも可能である。
また、上記実施形態では親水処理としてO2プラズマ処理を施したが、親水処理としては、この他にICP(Inductively Coupled Plasma 誘導結合高周波プラズマ)処理、UV(紫外線)処理、オゾン水処理などを適用することもできる。これらの親水処理を施す場合も、めっきシード層として揮発性金属層11を設けることによって、レジストパターンに形成されたパターンが変形することを防止することができる。
【0022】
上述した実施形態は、垂直磁気記録ヘッドの主磁極10を形成する際に本発明に係るめっきパターンの形成方法を適用した例であるが、本発明に係るめっきパターンの形成方法は、主磁極10を形成する場合に限らず、薄膜磁気ヘッドの他の構成部分を形成する際にも利用することができる。
たとえば、図1で主磁極10に対向して配置したトレーディングシールド13をめっきによって形成する方法として適用することもできる。
【0023】
図3は、主磁極10とトレーディングシールド13をABS面側から見た状態を示すもので、主磁極10に対向してトレーディングシールド13が配置されている状態を示す。このトレーディングシールド13をめっきによって形成する場合も、主磁極10を形成した方法と同様に、めっきシード層として揮発性金属層11を形成し、揮発性金属層11の表面にレジストパターンを形成することにより、レジストパターンに親水処理を施した際に、レジストパターンが変形せず、めっきを施すことによってトレーディングシールド13を所定形状に形成することができる。
【0024】
また、本発明に係るめっきパターンの形成方法は、図4に示すような、水平磁気記録ヘッドを製造する方法にも利用することができる。この薄膜磁気ヘッドでは、下部磁極40の下部先端磁極40aと上部磁極42の上部先端磁極42aのギャップ部に揮発性金属層11が形成されている。
図5は、下部先端磁極40aと上部先端磁極42aをABS面側から見た状態を示す。下部先端磁極40aと上部先端磁極42aによって揮発性金属層11が挟まれ、揮発性金属層11がライトギャップとして作用していることを示す。揮発性金属層11は非磁性材からなるから、下部先端磁極40aと上部先端磁極42aとの間に介在させる配置とすることで、ライトギャップとして何ら問題なく作用する。
【0025】
図6は、図5に示す下部先端磁極40aと上部先端磁極42aを形成する製造工程を示す。
図6(a)は、下部磁極22a上に下部磁極40と下部先端磁極40aを形成した後、揮発性金属層11をライトギャップの離間間隔に一致する厚さに、スパッタリング等によって成膜し、さらに、揮発性金属層11の表面にレジストパターン50を形成した状態を示す。レジストパターン50は、上部先端磁極42aの形状に合わせた凹部50aを形成するようにレジストを露光および現像して形成する。
【0026】
次いで、レジストパターン50にO2プラズマ処理等の親水処理を施す。図5(b)は、揮発性金属層11をめっき給電層として、めっきにより上部先端磁極42aを形成した状態を示す。上部先端磁極42aは、たとえば、FeCoをめっきして形成することができる。
上部先端磁極42aをめっきした後、レジストパターン50を除去し、絶縁層52上に残留している揮発性金属層11をイオンミリングによって除去する。図6(c)は、上部先端磁極42aによって遮蔽されている部位を除いて絶縁層52上の揮発性金属層11を除去した状態を示す。
図6(c)に示す状態から、上部磁極42をめっき等によって所定パターンに成膜することによって図4に示す水平磁気記録ヘッドが得られる。
【0027】
本実施形態の水平磁気記録ヘッドの製造方法においても、レジストパターン50の下地層として揮発性金属層11を形成することにより、レジストパターン50に親水処理を施した際に、レジストパターン50に形成したパターン幅が広がったり、変形したりすることを防止することができ、微細なパターンに形成する必要がある上部先端磁極42aを高精度に形成することが可能になる。
もちろん、水平磁気記録ヘッドにおいても、他の構成部分、たとえば下部先端磁極40aをめっきによって形成する場合に、下部先端磁極40aを形成するレジストパターンの下地層として揮発性金属層をあらかじめ形成するといったように利用することも可能である。
【0028】
上記各実施形態では、薄膜磁気ヘッドの製造工程において、本発明に係るめっきパターンの形成方法を適用した例について説明した。
本発明に係るめっきパターンの形成方法は、このような薄膜磁気ヘッドの製造工程において利用する場合に限られるものではない。図7は、多層配線基板の製造工程において、本発明に係るめっきパターンの形成方法を利用する例を示す。
図7(a)は、配線パターン72が形成された下地層70の表面にポリイミドフィルム等の絶縁層74を形成し、レーザ加工等によって絶縁層74にビア穴74aを形成した後、めっきシード層として揮発性金属層11を成膜した状態を示す。
【0029】
図7(b)は、揮発性金属層11を形成した後、揮発性金属層11の表面にレジストを被着し、レジストを露光および現像してレジストパターン76を形成した状態を示す。レジストパターン76は、絶縁層74上で配線パターンを形成する部位を露出させるようにパターニングする。
レジストパターン76については、めっき前処理として親水処理が施され、揮発性金属層11をめっきシード層としてレジストパターン76に形成された凹部であるパターン溝76aに導体層78がめっきにより盛り上げ形成される。
【0030】
図7(c)が、パターン溝76a内に導体層78をめっき盛り上げした状態を示す。導体層78は、たとえば電解銅めっき、あるいは無電解銅めっきにより所定の厚さに銅を成膜して形成する。
次いで、レジストパターン76を除去し、導体層78によって被覆されていない部位の揮発性金属層11(めっきシード層)を除去することによって、絶縁層74の表面に配線パターン80が形成される(図7(d))。揮発性金属層11は導体層78にくらべてはるかに薄厚に形成されているから、化学的エッチングあるいはイオンミリングによって揮発性金属層11の露出部分のみを、選択的に簡単に除去することができる。
【0031】
こうして、絶縁層74の表面に所定のパターンで配線パターン80が形成され、上層の配線パターン80と下層の配線パターン72とがビア80aを介して電気的に接続された多層の配線基板を得ることができる。
この配線基板の製造方法においても、揮発性金属層11によりめっきシード層を形成することによって、レジストパターン76に親水処理を施した際に、レジストパターン76に形成されているパターン溝76a等の幅が広がったり、変形したりすることが防止でき、高精度に配線パターン80を形成することが可能となる。
【0032】
本発明に係るめっきパターンの形成方法によれば、レジストパターンの変形を抑えて正確に配線パターンを形成することができること、レジストに親水処理を施すことによって微細なパターン内へのめっき液の液回りを向上させ、めっきの付き回りを向上させることができることから、きわめて微細で高密度に配線パターンが形成される配線基板を製造する場合であっても、レジストパターンが変形して配線パターンの断線や電気的短絡が生じることを防止し、信頼性の高い配線基板を製造することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明方法によって製造した薄膜磁気ヘッドの構成を示す断面図である。
【図2】薄膜磁気ヘッドの製造工程を示す説明図である。
【図3】主磁極とトレーディングシールドの構成を示す端面図である。
【図4】本発明方法によって製造した薄膜磁気ヘッドの構成を示す断面図である。
【図5】下部先端磁極と上部先端磁極の構成を示す端面図である。
【図6】上部先端磁極を形成する方法を示す説明図である。
【図7】本発明に係るめっきパターンの形成方法の適用例を示す説明図である。
【符号の説明】
【0034】
10 主磁極
11 揮発性金属層
11a 揮発物
12 密着層
13 トレーディングシールド
14 リターンヨーク
20 MR素子
22 上部シールド
22a 下部磁極
24 下部シールド
26 絶縁層
30 レジストパターン
30a 凹部
40 下部磁極
40a 下部先端磁極
42 上部磁極
42a 上部先端磁極
50 レジストパターン
50a 凹部
52 絶縁層
70 下地層
72 配線パターン
74 絶縁層
74a ビア穴
76 レジストパターン
76a パターン溝
78 導体層
80 配線パターン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
めっきシード層の表面にレジストを被着し、該レジストを露光および現像して底面に前記めっきシード層が露出する所定パターンの凹部が設けられたレジストパターンを形成する工程と、
レジストパターンに親水処理を施す工程と、
レジストパターンに親水処理を施した後、めっきにより前記凹部内にめっきを被着させる工程と、
めっき後に前記レジストパターンを除去し、次いで前記めっきシード層の露出する部位を除去する工程とを備えるめっきパターンの形成方法において、
前記めっきシード層として、前記親水処理の際に酸化され、酸化物が揮発性を有する金属からなる揮発性金属層を設けることを特徴とするめっきパターンの形成方法。
【請求項2】
前記揮発性金属層が、ルテニウムからなることを特徴とする請求項1記載のめっきパターンの形成方法。
【請求項3】
薄膜磁気ヘッドの構成部分をめっきにより形成する方法として、請求項1記載のめっきパターンの形成方法を適用する薄膜磁気ヘッドの製造方法であって、
前記レジストパターンを形成する工程においては、前記凹部を前記薄膜磁気ヘッドの構成部分のパターンに形成し、
前記めっきにより前記凹部内にめっきを被着させる工程においては、前記凹部に磁性膜を形成することを特徴とする薄膜磁気ヘッドの製造方法。
【請求項4】
前記薄膜ヘッドの構成部分が、垂直磁気記録ヘッドの主磁極であることを特徴とする請求項3記載の薄膜磁気ヘッドの製造方法。
【請求項5】
前記薄膜ヘッドの構成部分が、水平磁気記録ヘッドの上部先端磁極であることを特徴とする請求項3記載の薄膜磁気ヘッドの製造方法。
【請求項6】
前記めっきシード層として揮発性金属層を設ける際に、下部先端磁極と上部先端磁極のギャップ間隔に一致する厚さに揮発性金属層を設けることを特徴とする請求項5記載の薄膜磁気ヘッドの製造方法。
【請求項7】
前記揮発性金属層が、ルテニウムからなることを特徴とする請求項3〜6のいずれか一項記載の薄膜磁気ヘッドの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2006−322054(P2006−322054A)
【公開日】平成18年11月30日(2006.11.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−147688(P2005−147688)
【出願日】平成17年5月20日(2005.5.20)
【出願人】(000005223)富士通株式会社 (25,993)
【Fターム(参考)】