説明

めっき方法、めっき処理液及び導電性パターンシート

【課題】経済性が高く、処理液安定性に優れ、かつ優れた導電性パーターンを形成することができるめっき方法と、それに用いるめっき処理液及びそれにより得られる導電性パターンシートを提供する。
【解決手段】可溶性銀錯体化合物Aを含有する処理液を被めっき基材上に付与して、該被めっき基材上に銀化合物を固定した後、該基材上に更に可溶性銀錯体化合物Bを含有する処理液を付与して銀核を形成させ、該形成された銀核上に無電解めっきにより金属皮膜を形成させることを特徴とするめっき方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、めっき方法、めっき処理液及び導電性パターンシートに関するものである。
【背景技術】
【0002】
不導体表面に導電性を付与する方法として、無電解めっき法を用いる方法が知られている。この無電解めっき法は、不導体表面に無電解めっき用触媒を付与した後、無電解めっきを行うのが一般的である。
【0003】
無電解めっき用触媒としてはパラジウムを用いる方法が知られているが、パラジウムは不導体表面等への付着性が強いため、目的とする領域以外の部分にも付着し、洗浄しても取れないことから、めっき皮膜を付着させる/させないのon/off比が小さい、パラジウム自体が高価であり、経済的な負荷が大きい等の課題を抱えている。
【0004】
また、銀パラジウム微粒子、銀微粒子を触媒核(例えば、特許文献1参照。)として、直接微粒子を被めっき基板に付着させる方法が知られているが、微粒子の溶液中での安定性が十分でなく、これを向上させるための方法として、微粒子表面を分散剤またはポリマーで被覆する方法が知られているが、この方法では微粒子表面の触媒活性を阻害することになり、触媒活性と微粒子分散液のポットライフがトレードオフの関係にある。また、銀イオンを含む水溶液を無電解めっき用の処理液として用いる方法が知られている(例えば特許文献2参照。)。しかしながら、特許文献2に記載の添加剤構成では、たとえ2液に分割していても、処理液の光、熱に対する安定性が十分とは言い難い。従って、これら各特許文献に記載の方法では、処理安定性に優れ、かつ良好なめっき皮膜が得られないという課題がある。
【特許文献1】特許第3890542号公報
【特許文献2】特開2006−16659号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記課題に鑑みなされたものであり、その目的は、経済性が高く、処理液安定性に優れ、かつ優れた導電性パーターンを形成することができるめっき方法と、それに用いるめっき処理液及びそれにより得られる導電性パターンシートを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の上記目的は、以下の構成により達成される。
【0007】
1.可溶性銀錯体化合物Aを含有する処理液を被めっき基材上に付与して、該被めっき基材上に銀化合物を固定した後、該基材上に更に可溶性銀錯体化合物Bを含有する処理液を付与して銀核を形成させ、該形成された銀核上に無電解めっきにより金属皮膜を形成させることを特徴とするめっき方法。
【0008】
2.前記可溶性銀錯体化合物Aまたは可溶性銀錯体化合物Bが、下記一般式(1)及び一般式(2)で表される化合物から選択される少なくとも1種から形成されていることを特徴とする前記1に記載のめっき方法。
【0009】
一般式(1)
1−SM
〔式中、R1はアルキル基、アリール基またはヘテロ環基を表す。Mは水素原子、金属原子またはアンモニウムを表す。〕
一般式(2)
2−S−R3
〔式中、R2、R3は各々置換または無置換の炭化水素基を表す。但し、S原子を含む環を形成する場合には、芳香族基をとることはない。〕
3.前記可溶性銀錯体化合物Aまたは可溶性銀錯体化合物Bが、前記一般式(1)で表される化合物と前記一般式(2)で表される化合物とから形成され、該一般式(1)で表される化合物及び一般式(2)で表される化合物の添加量比が、下記式(1)で規定する条件を満たすことを特徴とする前記2に記載のめっき方法。
【0010】
式(1)
0<〔一般式(1)で表される化合物のモル数/一般式(2)で表される化合物のモル数〕≦0.1
4.前記可溶性銀錯体化合物Aまたは可溶性銀錯体化合物Bを含有する処理液が、下記一般式(A)、一般式(B)及びp−フェニレンジアミン類から選ばれる少なくとも1種の銀還元剤を含有することを特徴とする前記1〜3のいずれか1項に記載のめっき方法。
【0011】
【化1】

【0012】
〔式中、R1は、−SO3M基、−COOM基、置換若しくは無置換のアミノ基、または置換若しくは無置換のアンモニオ基を表す。Mは、水素原子、アルカリ金属原子、または置換若しくは無置換のアンモニウムイオンを表す。nは1または2を表し、mは1、2または3を表す。〕
【0013】
【化2】

【0014】
〔式中、R2及びR3は各々、ヒドロキシル基、アミノ基、アシルアミノ基、アルキルスルホニルアミノ基、アリールスルホニルアミノ基、アルコキシカルボニルアミノ基、メルカプト基またはアルキルチオ基を表す。P及びQは各々、ヒドロキシル基、カルボキシル基、アルコキシ基、ヒドロキシアルキル基、カルボキシアルキル基、スルホ基、スルホアルキル基、アミノ基、アミノアルキル基、アルキル基またはアリール基を表すか、互いに結合してR2、R3が置換している二つのビニル炭素原子及びYが置換している炭素原子と共に5〜8員環を形成する非金属原子群を表す。Yは=Oまたは=NR4を表し、R4は水素原子、ヒドロキシル基、アルキル基、アシル基、ヒドロキシアルキル基、スルホアルキル基またはカルボキシアルキル基を表す。〕
5.前記可溶性銀錯体化合物Aまたは可溶性銀錯体化合物Bを含有する処理液が、下記一般式(C)で表される化合物を含むことを特徴とする前記1〜4のいずれか1項に記載のめっき方法。
【0015】
【化3】

【0016】
〔式中、R5、R6は各々アルキル基または水素原子を表す。ただし、R5及びR6が同時に水素原子であることはない。また、R5及びR6は環を形成してもよい。〕
6.前記可溶性銀錯体化合物Aまたは可溶性銀錯体化合物Bを含有する処理液が、実質的にハロゲンイオン、まはた硝酸イオンを含まないことを特徴とする前記1〜5のいずれか1項に記載のめっき方法。
【0017】
7.前記可溶性銀錯体化合物Aまたは可溶性銀錯体化合物Bを含有する処理液が、実質的に水を含まないことを特徴とする前記1〜6のいずれか1項に記載のめっき方法。
【0018】
8.前記可溶性銀錯体化合物Aを含有する処理液を被めっき基材上に付与する前に、該被めっき基材上にメルカプト基を含む化合物を固定化し、さらに、該メルカプト基に、該可溶性銀錯体化合物Aを含有する処理液に含まれる銀または銀イオンを固定することを特徴とする前記1〜7のいずれか1項に記載のめっき方法。
【0019】
9.前記可溶性銀錯体化合物Aまたは可溶性銀錯体化合物Bを含有する処理液を、インクジェット記録装置を用いて被めっき基材上に付与することを特徴とする前記1〜8のいずれか1項に記載のめっき方法。
【0020】
10.前記インクジェット記録装置のインクジェット記録手段が、圧力印加手段と電界印加手段とを用いた方法であることを特徴とする前記9に記載のめっき方法。
【0021】
11.前記1〜10のいずれか1項に記載のめっき方法に用いることを特徴とするめっき処理液。
【0022】
12.前記1〜10のいずれか1項に記載のめっき方法で形成されたことを特徴とする導電性パターンシート。
【発明の効果】
【0023】
本発明により、経済性が高く、処理液安定性に優れ、かつ優れた導電性パーターンを形成することができるめっき方法と、それに用いるめっき処理液及びそれにより得られる導電性パターンシートを提供することができた。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下、本発明を実施するための最良の形態について詳細に説明する。
【0025】
《可溶性銀錯体化合物》
本発明のめっき方法においては、可溶性銀錯体化合物Aを含有する処理液を被めっき基材上に付与して、該被めっき基材上に銀化合物を固定した後、該基材上に更に可溶性銀錯体化合物Bを含有する処理液を付与して銀核を形成させ、該形成された銀核上に無電解めっきにより金属皮膜を形成させることを特徴とする。
【0026】
本発明に係る可溶性銀錯体化合物A及び可溶性銀錯体化合物Bは、それぞれ同一化合物であっても、あるいはそれぞれ異なる構成からなる可溶性銀錯体化合物を用いて、異なる組成からなる処理液を形成してもよい。
【0027】
本発明に係る可溶性銀錯体化合物とは、めっき処理液の溶媒中に可溶な銀錯体化合物であれば、いかなる化合物であってもよい。この様な銀錯体化合物を形成しうる配位子としては、例えば、ヨウ素や臭素や塩素やフッ素等のハロゲン類、亜硫酸類やチオ硫酸類等の硫黄元素を含む無機塩類、アミノ基を有する化合物類、エチレンジアミン類、イミノジ酢酸類、窒素原子を含む複素環類または芳香環類、カルボキシル基を2個以上含む化合物類、メルカプト基を有する化合物類、チオエーテル基を有する化合物類等を挙げることができる。
【0028】
本発明に係る可溶性銀錯体化合物としては、その中でも前記一般式(1)または一般式(2)で表される化合物から形成されることが好ましい。
【0029】
はじめに、一般式(1)で表される化合物について説明する。
【0030】
一般式(1):R−SM
式中、Rはアルキル基、アリール基またはヘテロ環基を表す。Mは水素原子、金属原子またはアンモニウムを表す。
【0031】
ここで、アルキル基とは炭素数1〜30の直鎖、分岐もしくは環状のアルキル基を意味する。また、アリール基とはフェニル基やナフチル基のような、単環もしくは縮合環の、置換もしくは無置換の芳香族炭化水素環を意味する。また、ヘテロ環基とはヘテロ原子を少なくとも1つ含有する、芳香族もしくは非芳香族の、単環もしくは縮合環の、置換もしくは無置換のヘテロ環基を意味する。
【0032】
ここで置換基とは、例えば、メルカプト基、(アルキル、アリールまたはヘテロ環)チオ基、(アルキル、アリール、またはヘテロ環)ジチオ基、(アルキルまたはアリール)スルホニル基、(アルキルまたはアリール)スルフィニル基、スルホ基またはその塩、スルファモイル基、N−アシルスルファモイル基、N−スルホニルスルファモイル基またはその塩、ハロゲン原子(フッ素原子、塩素原子、臭素原子またはヨウ素原子)、アルキル基(直鎖、分岐、環状のアルキル基で、ビシクロアルキル基や活性メチン基を含む)、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、ヘテロ環基(置換する位置は問わない)、アシル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、ヘテロ環オキシカルボニル基、カルバモイル基、N−ヒドロキシカルバモイル基、N−アシルカルバモイル基、N−スルホニルカルバモイル基、N−カルバモイルカルバモイル基、チオカルバモイル基、N−スルファモイルカルバモイル基、カルバゾイル基、カルボキシ基またはその塩、オキサリル基、オキサモイル基、シアノ基、カルボンイミドイル基(Carbonimidoyl基)、ホルミル基、ヒドロキシ基、アルコキシ基(エチレンオキシ基もしくはプロピレンオキシ基単位を繰り返し含む基を含む)、アリールオキシ基、ヘテロ環オキシ基、アシルオキシ基、(アルコキシもしくはアリールオキシ)カルボニルオキシ基、カルバモイルオキシ基、スルホニルオキシ基、アミノ基、(アルキル、アリールまたはヘテロ環)アミノ基、アシルアミノ基、スルホンアミド基、ウレイド基、チオウレイド基、N−ヒドロキシウレイド基、イミド基、(アルコキシもしくはアリールオキシ)カルボニルアミノ基、スルファモイルアミノ基、セミカルバジド基、チオセミカルバジド基、ヒドラジノ基、アンモニオ基、オキサモイルアミノ基、N−(アルキルもしくはアリール)スルホニルウレイド基、N−アシルウレイド基、N−アシルスルファモイルアミノ基、ヒドロキシアミノ基、ニトロ基、4級化された窒素原子を含むヘテロ環基(例えば、ピリジニオ基、イミダゾリオ基、キノリニオ基、イソキノリニオ基)、イソシアノ基、イミノ基、ホスフィノ基、ホスフィニル基、ホスフィニルオキシ基、ホスフィニルアミノ基、シリル基、トリアルコキシシリル基等が挙げられる。
【0033】
なお、ここで活性メチン基とは、2つの電子求引性基で置換されたメチン基を意味し、ここに電子求引性基とはアシル基、アルコシキカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、カルバモイル基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、スルファモイル基、トリフルオロメチル基、シアノ基、ニトロ基、カルボンイミドイル基(Carbonimidoyl基)を意味する。ここで2つの電子求引性基は互いに結合して環状構造をとっていてもよい。また、塩とはアルカリ金属、アルカリ土類金属、重金属などの陽イオンや、アンモニウムイオン、ホスホニウムイオンなどの有機の陽イオンを意味する。
【0034】
これらの置換基は、これらの置換基で更に置換されていてもよい。
【0035】
好ましく用いられるメルカプト化合物としては、以下の化合物が挙げられる。
【0036】
【化4】

【0037】
【化5】

【0038】
【化6】

【0039】
【化7】

【0040】
【化8】

【0041】
上記例示した各化合物の中でも、本発明の目的効果をいかんなく発揮できる観点から、特に、例示化合物1−109、1−114、1−115が好ましい。
【0042】
次いで、一般式(2)で表される化合物について説明する。
【0043】
一般式(2):R2−S−R3
上記一般式(2)において、R2、R3は各々置換または無置換の炭化水素基を表し、これらには直鎖基または分岐基が含まれる。また、これらの炭化水素基では1個以上の窒素原子、酸素原子、リン原子、硫黄原子、ハロゲン原子を含んでもよい。但し、S原子を含む環を形成する場合には芳香族基をとることはない。また、S原子に隣接するそれぞれの元素は炭素原子であることが好ましい。
【0044】
炭化水素基に置換可能な基としては、例えば、アミノ基、グアニジノ基、4級アンモニウム基、ヒドロキシル基、ハロゲン化合物、カルボン酸基、カルボキシレート基、アミド基、スルフィン酸基、スルホン酸基、スルフェート基、ホスホン酸基、ホスフェート基、ニトロ基、シアノ基等を挙げることができる。
【0045】
一般に銀を処理液に溶解させるためには、溶媒中で銀を可溶化することが必要である。例えば、銀と配位結合を生じさたり、銀と弱い共有結合を生じさせるような銀と相互作用を示す化学構造種を含む化合物等と共存させて、銀または銀を含む化合物を可溶化物に変換する手段を用いるのが一般的である。前記化学構造種として、ハロゲン原子、メルカプト基、カルボキシル基、イミノ基等が知られているが、本発明においては、チオエーテル基も銀溶剤として有用に作用し、共存化合物への影響が少なく、溶媒への溶解度が高い特徴がある。
【0046】
以下、本発明に係る一般式(2)で表される化合物の具体例を示すが、本発明ではこれら例示する化合物にのみ限定されるものではない。
【0047】
2−1:CH3SCH2CH2OH
2−2:HOCH2CH2SCH2CH2OH
2−3:HOCH2CH2SCH2CH2SCH2CH2OH
2−4:HOCH2CH2SCH2CH2SCH2CH2SCH2CH2OH
2−5:HOCH2CH2SCH2CH2OCH2CH2OCH2CH2SCH2CH2OH
2−6:HOCH2CH2OCH2CH2SCH2CH2SCH2CH2OCH2CH2OH
2−7:H3CSCH2CH2COOH
2−8:HOOCCH2SCH2COOH
2−9:HOOCCH2CH2SCH2CH2COOH
2−10:HOOCCH2SCH2CH2SCH2COOH
2−11:HOOCCH2SCH2CH2SCH2CH2SCH2CH2SCH2COOH
2−12:HOOCCH2CH2SCH2CH2SCH2CH(OH)CH2SCH2CH2SCH2CH2COOH
2−13:HOOCCH2CH2SCH2CH2SCH2CH(OH)CH(OH)CH2SCH2CH2SCH2CH2COOH
2−14:H3CSCH2CH2CH2NH2
2−15:H2NCH2CH2SCH2CH2NH2
2−16:H2NCH2CH2SCH2CH2SCH2CH2NH2
2−17:H3CSCH2CH2CH(NH2)COOH
2−18:H2NCH2CH2OCH2CH2SCH2CH2SCH2CH2OCH2CH2NH2
2−19:H2NCH2CH2SCH2CH2OCH2CH2OCH2CH2SCH2CH2NH2
2−20:H2NCH2CH2SCH2CH2SCH2CH2SCH2CH2SCH2CH2NH2
2−21:HOOC(NH2)CHCH2CH2SCH2CH2SCH2CH2CH(NH2)COOH
2−22:HOOC(NH2)CHCH2SCH2CH2OCH2CH2OCH2CH2SCH2CH(NH2)COOH
2−23:HOOC(NH2)CHCH2OCH2CH2SCH2CH2SCH2CH2OCH2CH(NH2)COOH
2−24:H2N(O=)CCH2SCH2CH2OCH2CH2OCH2CH2SCH2C(=O)NH2
2−25:H2N(O=)CCH2SCH2CH2SCH2C(=O)NH2
2−26:H2NHN(O=)CCH2SCH2CH2SCH2C(=O)NHNH2
2−27:H3C(O=)CNHCH2CH2SCH2CH2SCH2CH2NHC(=O)CH3
2−28:H2NO2SCH2CH2SCH2CH2SCH2CH2SO2NH2
2−29:NaO3SCH2CH2CH2SCH2CH2SCH2CH2CH2SO3Na
2−30:H3CSO2NHCH2CH2SCH2CH2SCH2CH2NHO2SCH3
2−31:H2N(NH)CSCH2CH2SC(NH)NH2・2HBr
2−32:H2N(NH)CSCH2CH2OCH2CH2OCH2CH2SC(NH)NH2・2HCl
2−33:H2N(NH)CNHCH2CH2SCH2CH2SCH2CH2NHC(NH)NH2・2HBr
2−34:〔(CH33NCH2CH2SCH2CH2SCH2CH2N(CH332+・2Cl-
【0048】
【化9】

【0049】
【化10】

【0050】
上記例示した各化合物の中でも、本発明の目的効果をいかんなく発揮できる観点から、特に、例示化合物2−2が好ましい。
【0051】
本発明に係る請求項3においては、本発明に係る可溶性銀錯体化合物Aまたは可溶性銀錯体化合物Bが、上記一般式(1)で表される化合物と前記一般式(2)で表される化合物とから形成され、一般式(1)で表される化合物及び一般式(2)で表される化合物の添加量比が、下記式(1)で規定する条件を満たすことが好ましい。
【0052】
式(1)
0<〔一般式(1)で表される化合物のモル数/一般式(2)で表される化合物のモル数〕≦0.1
一般式(1)で表される化合物と銀との銀錯体化合物は、各種溶媒に可溶であり、錯安定度定数が大きく、これ自体でめっき処理液中で安定であるが、還元して金属銀を生成させるためには比較的大きなエネルギーを要する。一方、一般式(2)で表される化合物と銀との銀錯体化合物は、同じく各種溶媒に可溶であるが、錯安定度定数が大きくなく、還元して金属銀を生成しやすいが、光や熱に対して処理液中で不安定である。本発明の添加量比を用いることにより、処理液中での安定性と金属銀の生成のしやすさとを両立できる。
【0053】
《めっき処理液の溶媒》
本発明のめっき処理液に用いることのできる溶媒としては、例えば、水、アルコール類(例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、イソブタノール、セカンダリーブタノール、ターシャリーブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、シクロヘキサノール、ベンジルアルコール等)、多価アルコール類(例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、ブチレングリコール、ヘキサンジオール、ペンタンジオール、グリセリン、ヘキサントリオール、チオジグリコール等)、多価アルコールエーテル類(例えば、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノフェニルエーテル、プロピレングリコールモノフェニルエーテル等)、アミン類(例えば、エタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、N−メチルジエタノールアミン、N−エチルジエタノールアミン、モルホリン、N−エチルモルホリン、エチレンジアミン、ジエチレンジアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ポリエチレンイミン、ペンタメチルジエチレントリアミン、テトラメチルプロピレンジアミン等)、アミド類(例えば、ホルムアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド等)、複素環類(例えば、2−ピロリドン、N−メチル−2−ピロリドン、シクロヘキシルピロリドン、2−オキサゾリドン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン等)、スルホキシド類(例えば、ジメチルスルホキシド等)、スルホン類(例えば、スルホラン等)、炭酸エステル類(γ−ブチロラクトン、炭酸プロピレン、炭酸ジエチル等)、尿素、アセトニトリル、アセトン等が挙げられる。
【0054】
本発明に係る請求項7に記載のめっき方法においては、可溶性銀錯体化合物を含有する処理液が、実質的に水を含まないことが好ましい。非水系溶媒中で銀錯体化合物を存在させると、水系溶媒で起こりうる酸化銀や水酸化銀の生成が抑えられ、処理液の安定性がさらに向上する。また被めっき基材が樹脂製の場合、非水系溶媒の方が濡れ性が良く、μmオーダー以下の微量領域へのめっき膜均一性が向上する。
【0055】
本発明に係る請求項4に記載のめっき方法においては、本発明に係る可溶性銀錯体化合物Aまたは可溶性銀錯体化合物Bを含有する処理液が、前記一般式(A)、一般式(B)及びp−フェニレンジアミン類から選ばれる少なくとも1種の銀還元剤を含有することが好ましい態様の1つである。
【0056】
以下、一般式(A)、一般式(B)及びp−フェニレンジアミン類の詳細について説明する。
【0057】
前記一般式(A)において、R1は、−SO3M基、−COOM基、置換若しくは無置換のアミノ基、または置換若しくは無置換のアンモニオ基を表す。Mは、水素原子、アルカリ金属原子、または置換若しくは無置換のアンモニウムイオンを表す。nは1または2を表し、mは1、2または3を表す。
【0058】
以下、一般式(A)で表される化合物の具体例を下記に示すがこれらに限定されるものではない。
【0059】
【化11】

【0060】
本発明に係る一般式(A)で表される化合物は、公知の合成方法で容易に合成できる。
【0061】
上記例示した一般式(A)で表される化合物のうち、好ましい化合物は例示化合物(A−5)である。
【0062】
次いで、一般式(B)で表される化合物について説明する。
【0063】
前記一般式(B)において、R2及びR3は各々、ヒドロキシル基、アミノ基、アシルアミノ基、アルキルスルホニルアミノ基、アリールスルホニルアミノ基、アルコキシカルボニルアミノ基、メルカプト基またはアルキルチオ基を表す。P及びQは各々、ヒドロキシル基、カルボキシル基、アルコキシ基、ヒドロキシアルキル基、カルボキシアルキル基、スルホ基、スルホアルキル基、アミノ基、アミノアルキル基、アルキル基またはアリール基を表すか、互いに結合してR2、R3が置換している二つのビニル炭素原子及びYが置換している炭素原子と共に5〜8員環を形成する非金属原子群を表す。Yは=Oまたは=NR4を表し、R4は水素原子、ヒドロキシル基、アルキル基、アシル基、ヒドロキシアルキル基、スルホアルキル基またはカルボキシアルキル基を表す。
【0064】
一般式(B)において、R2及びR3は各々、ヒドロキシル基、アミノ基(置換基としてエチル、ブチル、ヒドロキシエチル等のアルキル基を有してもよい)、アシルアミノ基(アセチルアミノ、ベンゾイルアミノ等)、アルキルスルホニルアミノ基(メタンスルホニルアミノ、ブタンスルホニルアミノ等)、アリールスルホニルアミノ基(ベンゼンスルホニルアミノ、p−トルエンスルホニルアミノ等)、アルコキシカルボニルアミノ基(メトキシカルボニルアミノ等)、メルカプト基又はアルキルチオ基(メチルチオ、エチルチオ等)を表すが、R2及びR3として好ましくは、ヒドロキシル基、アミノ基、アルキルスルホニルアミノ基、アリールスルホニルアミノ基を挙げることができる。
【0065】
P及びQは各々、ヒドロキシル基、カルボキシル基、アルコキシ基(メトキシ、エトキシ、ブトキシ等)、ヒドロキシアルキル基(ヒドロキシメチル、ヒドロキシエチル等)、カルボキシアルキル基(カルボキシメチル、カルボキシエチル等)、スルホ基(塩を含む)、スルホアルキル基(スルホエチル、スルホプロピル等)、アミノ基(アルキル置換を含む)、アミノアルキル基(アミノエチル、アミノプロピル等)、アルキル基(メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル等)又はアリール基(フェニル、p−トリル、ナフチル等)を表すか、互いに結合してR2、R3が置換している二つのビニル炭素原子及びYが置換している炭素原子と共に5〜8員環を形成する非金属原子群を表す。この5〜8員環は飽和又は不飽和の縮合環を形成してもよい。
【0066】
この5〜8員環の例として、ジヒドロフラノン環、ジヒドロピロン環、ピラノン環、シクロペンテノン環、ピロリノン環、ピラゾリノン環、ピリドン環、アザシクロヘキセノン環、ウラシル環、シクロヘプテノン環、アゼピン環、シクロオクテノン環などが挙げられるが、5〜6員環が好ましい。中でも好ましい5〜6員環の例として、ジヒドロフラノン環、シクロペンテノン環、シクロヘキサノン環、ピラゾリノン環、アザシクロヘキセノン環、ウラシル環を挙げることができる。
【0067】
Yが=NR4を表す場合、R4は水素原子、ヒドロキシル基、アルキル基、アシル基、ヒドロキシアルキル基、スルホアルキル基又はカルボキシアルキル基を表すが、各置換基の具体例としては上記R2、R3、P及びQで挙げた基と同様な基を挙げることができる。
【0068】
以下に一般式(B)で表される化合物の具体例を示すが、これに限定されるものではない。
【0069】
【化12】

【0070】
【化13】

【0071】
【化14】

【0072】
これらの塩としては、リチウム、ナトリウム、カリウム、アンモニウムなどの各塩が挙げられる。これらの中で好ましいのは、アスコルビン酸或いはエリソルビン酸(立体異性)(例示化合物B−1)である。
【0073】
本発明に係るp−フェニレンジアミン類としては、芳香族一級アミン発色現像主薬が好ましく用いられ、例えばN,N−ジエチル−p−フェニレンジアミン、2−アミノ−5−ジエチルアミノトルエン、2−アミノ−5−(N−エチル−N−ラウリルアミノ)トルエン、4−(N−エチル−N−(βーヒドロキシエチル)アミノ)アニリン、2−メチル−4−(N−エチル−N−(β−ヒドロキシエチル)アミノ)アニリン、4−アミノ−3−メチル−N−エチル−N−(β−(メタンスルホンアミド)エチル)−アニリン、N−(2−アミノ−5−ジエチルアミノフェニルエチル)メタンスルホンアミド、N,N−ジメチル−p−フェニレンジアミン、4−アミノ−3−メチル−N−エチル−N−メトキシエチルアニリン、4−アミノ−3−メチル−N−エチル−N−(β−エトキシエチル)アニリン、4−アミノ−3−メチル−N−エチル−N−(γ−ヒドロキシプロピル)アニリン等が挙げられる。
【0074】
また、本発明においては、上記以外の銀還元剤を処理液に含有することもできる。例えば、欧州特許第565,165号、同第572,054号、同第593,110号、特開平8−202002号、同8−227131号、同8−234390号等に記載されてるスルホニルヒドラジド、カルボニルヒドラジド型発色現像主薬も好ましく用いることができる。
【0075】
具体的例示化合物としては、特開平4−86741号公報の7〜9頁に記載されている(C−1)〜(C−16)、特開昭61−289350号公報の29〜31頁に記載されている(1)〜(8)、及び特開平3−246543号公報の5〜9頁に記載されている(1)〜(62)、特開昭61−289350号公報に記載されている例示化合物(2)、及び特開平3−246543号公報に記載されている例示化合物(1)、特開2001−154325号公報の一般式(8)〜(12)に記載されているスルホンアミドフェノール系還元剤、スルホンアミドアニリン系啓還元剤、ヒドラジン系還元剤、等を挙げることができる。
【0076】
本発明に係る請求項5に記載のめっき方法においては、本発明に係る可溶性銀錯体化合物Aまたは可溶性銀錯体化合物Bを含有する処理液が、前記一般式(C)で表される化合物を含むことが好ましい。
【0077】
前記一般式(C)において、R5及びR6は各々アルキル基又は水素原子を表す。ただし、R5及びR6が同時に水素原子であることはない。また、R5及びR6は環を形成してもよい。
【0078】
前記一般式(C)において、R5及びR6は、各々が同時に水素原子ではないアルキル基または水素原子を表すが、R5及びR6で表されるアルキル基は、同一でも異なってもよく、各々炭素数1〜3のアルキル基が好ましい。R5及びR6のアルキル基は置換基を有するものも含み、また、R5及びR6は結合して環を構成してもよく、例えば、ピペリジンやモルホリンの如き複素環を構成してもよい。
【0079】
本発明においては、特に、置換基としてスルホン酸基またはアルコキシ基であることが好ましい。
【0080】
前記一般式(C)で表されるヒドロキシルアミン化合物の具体的化合物は、例えば、米国特許第3,287,125号、同第3,293,034号及び同第3,287,124号等に記載されているが、以下に特に好ましい具体的な化合物を示す。
【0081】
【化15】

【0082】
【化16】

【0083】
本発明に係る前記一般式(C)で表される化合物は、通常、遊離のアミン、塩酸塩、硫酸塩、p−トルエンスルホン酸塩、シュウ酸塩、リン酸塩、酢酸塩等の形で用いられる。
【0084】
本発明に係る一般式(C)で表される化合物の内、好ましい化合物は、例示化合物C−32またはこれらの反応物である。更に好ましい化合物は、メルカプト基を含有する化合物である。
【0085】
本発明に係る請求項6に記載のめっき方法においては、本発明に係る可溶性銀錯体化合物Aまたは可溶性銀錯体化合物Bを含有する処理液が、実質的にハロゲンイオン、まはた硝酸イオンを含まないことが好ましい。処理液にハロゲンイオンを含む場合、処理液中でハロゲンイオンの酸化還元平衡が銀塩の酸化還元平衡とクロスして存在することになり、また処理液中に硝酸イオンを含む場合、光に対して銀が還元されやすくなり、いずれの場合も処理液の安定性を低下させる要因となる。
【0086】
《基材》
本発明に用いることができる基材としては、例えば、ポリイミドフィルム、ポリアミドイミドフィルム、ポリアミドフィルム、ポリエステルフィルム等の樹脂フィルム、ガラス−エポキシ基板、シリコン基板、セラミックス基板、ガラス基板等が挙げられる。
【0087】
本発明で用いられる樹脂フィルムの材質としては、特に限定はないが、例えば、ポリエステル系フィルム(例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等)、ポリカーボネート系フィルム、ポリアリレート系フィルム、ポリスルホン(ポリエーテルスルホンも含む)系フィルム、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリ塩化ビニリデンフィルム、ポリビニルアルコールフィルム、エチレンビニルアルコールフィルム、シンジオタクティックポリスチレン系フィルム,ポリカーボネートフィルム、シクロオレフィンポリマーフィルム(例えば、アートン(JSR社製)、ゼオネックス、ゼオネア(以上、日本ゼオン社製)等)、ポリエーテルスルフォンフィルム、ポリスルホン系フィルム、ポリメチルペンテンフィルム、ポリエーテルケトンフィルム、ポリエーテルケトンイミドフィルム、ポリアミドフィルム、フッ素樹脂フィルム、ナイロンフィルム、ポリメチルメタクリレートフィルム、ポリアクリレート系フィルム、ポリアリレート系フィルム等を挙げることができる。これらの素材を主成分とする異なる材質のフィルムを積層したフィルムであってもよい。また、本発明においては、基材とその上に設ける構造物との密着性を高める観点から、基材表面に予め表面をコロナ放電処理、火炎処理、オゾン処理、プライマー処理、デスミア処理、紫外線処理、放射線処理、粗面化処理、シランカップリング剤や酸やアルカリや界面活性剤等を含む化学薬品処理を施すことが好ましい。密着性を高める機構としては、接着阻害となる表面付着の異物を取り除き表面をクリーンにする、部材界面の凹凸によるアンカー効果を用いる、両部材との界面に接着化合物を挿入する、等が挙げられる。また、また基材との密着性を向上させるため、基材上に下地層を設けてもよい。下地層に含有するバインダーは、予め基体とバインダーとの接着性が良い化合物を選択することが好ましい。例えば、ポリエステル系の基体にはポリウレタン系バインダー、ポリイミド系の基体やガラス繊維練りこみエポキシ系基板にはポリアクリル系バインダーやポリエポキシ系バインダー等が挙げられる。
【0088】
本発明に係る請求項8に記載のめっき方法においては、本発明に係る可溶性銀錯体化合物Aを含有する処理液を被めっき基材上に付与する前に、被めっき基材上にメルカプト基を含む化合物を固定化し、さらに、該メルカプト基に、該可溶性銀錯体化合物Aを含有する処理液に含まれる銀または銀イオンを固定することが好ましい。メルカプト基を含む化合物としては、前記一般式(1)で表される化合物を用いても良いし、あるいは下記一般式(I)で表される化合物で該メルカプト基と基材とをシロキサン結合を介して連結さえておいてもよい。
【0089】
一般式(I)
(R)n−Si(A)3-n−(B)
上記一般式(I)において、Rは炭素原子数8以下のアルキル基であり、好ましくは、炭素原子数1〜4の低級アルキル基であり、nは0〜2の整数を表す。Aは、アルコキシ基またはハロゲン原子であり、アルコキシ基は例えばメトキシ、エトキシ、プロポキシ、ブトキシ等の低級アルコキシ基(炭素原子数1〜4)であり、特に好ましいのはメトキシ、エトキシ基である。ハロゲン原子中好ましいのは塩素原子である。Bは、SH基を含む置換基を表す。Bは特に限定されず、メルカプト基をその構造中の何れかに少なくとも一つ、好ましくは2つ以上含有する、脂肪族或いは(ヘテロ)芳香族基であればよい。
【0090】
これらの例としては、以下のものが挙げられる。
【0091】
(I−1)トリエトキシシリル−プロピルアミノ−トリアジン−ジチオール
(I−2)γ−メルカプトプロピル−トリメトキシシラン
(I−3)3−メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン
(I−4)メルカプトプロピルトリエトキシシラン
(I−5)γ−メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン
(I−6)γ−メルカプトプロピル−トリクロルシラン
上記一般式(I)で表される化合物のうち、トリアジン環を有する化合物が特に好ましく、例えば、(I−1)トリエトキシシリル−プロピルアミノ−トリアジン−ジチオールは、γ−プロピルトリエトキシシランと対応するメルカプトアミン類、この場合1−アミノ−3,5−ジメルカプトトリアジン(特開2001−316872等に記載)を縮合反応させることで容易に得られる。
【0092】
《パターン形成方法》
本発明に係る可溶性銀錯体化合物を含有する処理液(以下、インクともいう)をバターン状に付与する方法としては、パターン状にインクを付与できる方法であれば特に制限はなく、公知のパターン形成方法を適用することができる。例えば、塗布方式、液噴霧方式、気相を介する噴霧方式として、圧電素子の振動を利用して液滴を飛翔させる方式、例えば、ピエゾ方式のインクジェットヘッドや、突沸を利用したサーマルヘッドを用いて液滴を飛翔させるバブルジェット(登録商標)方式のインクジェットヘッド、また空気圧や液圧により液を噴霧するスプレー方式等が挙げられる。
【0093】
また、印刷方式としては、スクリーン印刷、フレキソ印刷、凸版や凹版印刷を挙げることができる。塗布方式としては、公知の塗布方式より適宜選択することができ、例えば、エアードクターコーター、ブレードコーター、ロッドコーター、ナイフコーター、スクイズコーター、含浸コーター、リバースローラーコーター、トランスファーローラーコーター、カーテンコーター、ダブルローラーコーター、スライドホッパーコーター、グラビアコーター、キスロールコーター、ビードコーター、キャストコーター、スプレイコーター、カレンダーコーター、押し出しコーター等が挙げられる。
【0094】
これらの内、本発明においてはインクジェット方式を好ましく用いることができる。特に、インクジェット記録装置を用いたインクジェット方式を適用することが好ましく、更には電気回路等に使用される線幅が20μm以下の細線を高精度に形成できる観点から、インクジェット記録装置によるインクの吐出方法が、圧力印加手段と電界印加手段とを用いた方法であることが好ましい。
【0095】
以下、本発明に好ましく適用することができる圧力印加手段と電界印加手段とを用いたインクジェット記録方法について説明する。
【0096】
一般に、電子回路等で要求されている微細な線幅のパターンを高精細に描画するには、インクジェット記録装置から射出するインク液滴をより微細化する必要がある。
【0097】
しかしながら、電気−機械変換方式(例えば、シングルキャビティー型、ダブルキャビティー型、ベンダー型、ピストン型、シェアーモード型、シェアードウォール型等)や電気−熱変換方式(例えば、サーマルインクジェット型、バブルジェット(登録商標)型等)のみの出力手段を用いて、極微小インク液滴を吐出した場合、ノズルから吐出したインク液滴に付与される運動エネルギーは、インク液滴の半径の3乗に比例して小さくなるため、微小液滴は空気抵抗に耐えるほどの十分な運動エネルギーを確保できず、空気対流などによる擾乱を受け、正確な着弾が困難となる。
【0098】
更にインク液滴が微細になるほど表面張力の効果が増すために、液滴の蒸気圧が高くなり蒸発量が激しくなる。このため、微細液滴は飛翔中の著しい質量の消失を招き、着弾時に液滴の形態を保つことすら難しいという問題があった。このように着弾位置の高精度化は、インク液滴の微細化と相反する課題であり、これら2つを同時に実現することに対し、障害を抱えていた。
【0099】
本発明においては、上記課題を解決する方法として、圧力印加手段と電界印加手段とを用いた射出方法を適用することが好ましい。
【0100】
この射出方法は、0.1〜100μmの内径の吐出口を有するノズルを用い、導電性インクに任意波形の電圧を印加して、この導電性インクを帯電させることにより、そのインク液滴を吐出口から、樹脂層を有する基材に吐出する方法である。即ち、この射出方法はノズルの吐出口の内径が0.1〜100μmであり、電界強度分布が狭くなっているため、ノズル内に供給された導電性インクに任意波形の電圧を印加することにより電界を集中させることができる。
【0101】
その結果、形成されるインク液滴を微小で、且つ形状の安定化したものとすることができる。従って、従来よりも微細な、例えば、1pl(ピコリットル)未満の複数のインク液滴からなるインク液滴パターンを樹脂層表面に形成することができる。また、電界強度分布が狭くなっているため、ノズル内の導電性インクに印加する総印加電圧を低減することができる。また、インク液滴はノズルから吐出された直後、電界と電荷の間に働く静電力により加速されるが、ノズルから離れると電界は急激に低下するので、その後は空気抵抗により減速する。しかしながら、微小液滴で且つ電界が集中したインク液滴は、樹脂層に近づくにつれ鏡像力により加速される。この空気抵抗による減速と鏡像力による加速とのバランスをとることにより、微小液滴を安定に飛翔させ、着弾精度を向上させることが可能となる。
【0102】
図1は、本発明に好ましく適用できる圧力印加手段と電界印加手段とを用い導電性インク吐出装置の一例を示した概略断面図である。
【0103】
図1において、導電性インク吐出装置20は、帯電可能な導電性インクの液滴を先端部から樹脂層を有する基材Kに向かって吐出する超微細径のノズル21と、ノズル21の先端部に対向する面側に配置され、その対向面で基材Kを支持する対向電極23と、ノズル21内の流路22に導電性インクを供給する導電性インク供給手段と、ノズル21内の導電性インクに任意波形の吐出電圧を印加する吐出電圧印加手段(電圧印加手段)25とを備えている。なお、上記ノズル21と導電性インク供給手段の一部の構成と吐出電圧印加手段25の一部の構成とは、ノズルプレート26と一体的に形成されている。
【0104】
ノズル21はノズルプレート26の下面層26cから垂設され、この下面層26cと一体的に形成されている。ノズル21の先端部は対向電極23に指向している。ノズル21の内部には、その先端部からその中心線に沿って貫通するノズル内流路22が形成されている。
【0105】
ノズル21は、例えば、ガラスなどの電気絶縁体により、超微細径で形成されている。ノズル21の各部の寸法の具体例を挙げると、ノズル内流路22の内部直径は1μm、ノズル21の先端部における外部直径は2μm、ノズル21の根元、即ち、上端部の直径は5μm、ノズル21の高さは100μmに設定されている。また、ノズル21の形状は限りなく円錐形に近い円錐台形に形成されている。このようなノズル21は、その全体がノズルプレート26の下面層26cと共に絶縁性の樹脂材により形成されている。
【0106】
なお、ノズル21の各寸法は上記一例に限定されるものではない。特に吐出口の内径については、電界集中の効果により液滴の吐出を可能とする吐出電圧が1000V未満を実現する範囲であって、例えば、100μm以下であり、より望ましくは20μm以下であって、現行のノズル形成技術により溶液を通す貫通穴を形成することが実現可能な範囲である内径、例えば0.1μmをその下限値とする。
【0107】
導電性インク供給手段は、ノズルプレート26の内部であってノズル21の根元となる位置に設けられると共にノズル内流路22に連通する溶液室24と、図示しない外部の導電性インクタンクからインク室24に導電性インクを導く供給路27と、インク室24への溶液の供給圧力を付与する図示しない供給ポンプとを備えている。
【0108】
上記供給ポンプはノズル21の先端部まで導電性インクを供給し、当該先端部からこぼれ出さない範囲の供給圧力を維持して導電性インクの供給を行う。
【0109】
吐出電圧印加手段25は、ノズル21内の導電性インクに吐出電圧を印加してこの導電性インクを帯電させることにより、この導電性インクの液滴をノズル21の吐出口から基材Kに向かって吐出させるものである。この吐出電圧印加手段25は、ノズルプレート26の内部であってインク室24とノズル内流路22との境界位置に設けられた吐出電圧印加用の吐出電極28と、この吐出電極28に常時、直流のバイアス電圧を印加するバイアス電源30と、吐出電極28にバイアス電圧に重畳して吐出に要する電位とするパルス電圧を印加する吐出電圧電源29とを備えている。
【0110】
吐出電極28は、インク室24内部において導電性インクに直接接触し、導電性インクを帯電させると共に吐出電圧を印加する。
【0111】
バイアス電源30によるバイアス電圧は、導電性インクの吐出が行われない範囲で常時電圧印加を行うことにより、吐出時に印加すべき電圧の幅を予め低減し、これによる吐出時の反応性の向上を図っている。一例を挙げると、バイアス電圧はDC300Vで印加され、パルス電圧は100Vで印される。従って、吐出の際の重畳電圧は400Vとなる。
【0112】
ノズルプレート26は、最も上層に位置する上面層26aと、その下に位置する導電性インクの供給路を形成する流路層26bと、この流路層26bの更に下に形成される下面層26cとを備え、流路層26bと下面層26cとの間には、吐出電極28が介挿されている。
【0113】
対向電極23はノズル21に垂直な対向面を備えており、かかる対向面に沿うように基材Kの支持を行う。ノズル21の先端部から対向電極23の対向面までの距離は、例えば、100μm等一定に保持されている。
【0114】
また、対向電極23は接地されているため、常時、接地電位を維持している。従って、パルス電圧の印加時にはノズル21の先端部と対向面との間に生じる電界による静電力により吐出された液滴を対向電極23側に誘導する。
【0115】
なお、導電性インク吐出装置20は、ノズル21の超微細化による当該ノズル21の先端部での電界集中により電界強度を高めることで液滴の吐出を行うことから、対向電極23による誘導がなくとも液滴の吐出を行うことは可能ではあるが、ノズル21と対向電極23との間での静電力による誘導が行われた方が望ましい。この場合、ノズル21から吐出され空気抵抗により減速する液滴を、鏡像力により加速することができる。従って、これら空気抵抗による減速と鏡像力による加速とのバランスをとることにより、微小液滴を安定に飛翔させ、着弾精度を向上させることができる。またなお、帯電した液滴の電荷を、対向電極23の接地により逃がすことも可能である。
【0116】
以上のような導電性インク吐出装置20は、図示しない駆動機構により、基材Kの搬送方向に対して直交する方向に走査自在とされた走査型の導電性インク吐出装置としてもよい。この場合において、導電性インク吐出装置20に複数のノズル21を配列するようにしてもよい。また、導電性インク吐出装置20は、基材Kの搬送方向に対して直交する方向に多数のノズル21を配列してなるライン型の導電性インク吐出装置としてもよい。
【0117】
《めっき処理方法》
本発明においては、従来公知のめっき法を適用できるが、その中でも、低抵抗の導電性パターンを煩雑な工程なしに簡便、低コストでめっき処理することができる観点から、無電解めっき法を適用することが好ましい。
【0118】
無電解めっき法によるめっき処理は、上述の方法に従ってめっき触媒として作用する金属微粒子を含有する導電性パターンにめっき剤を接触させる方法である。これにより、めっき触媒である金属微粒子とめっき剤とが接触し、導電性パターン部に無電解めっきが施されて、より優れた導電性を得ることができる。
【0119】
本発明に係るめっき処理で使用できるめっき剤としては、例えば、めっき材料として析出させる金属イオンが均一溶解された溶液が用いられ、金属塩とともに還元剤が含有される。ここで、通常は溶液が用いられるが、無電解めっきを生じさせるものであればこれに限らず、ガス状や粉体のめっき剤を適用することも可能である。
【0120】
具体的に、この金属塩としては、Au、Ag、Cu、Ni、Co、Feから選択される少なくとも1種の金属のハロゲン化物、硝酸塩、硫酸塩、リン酸塩、ホウ酸塩、酢酸塩、酒石酸塩、クエン酸塩などが適用可能である。また、還元剤としては、ヒドラジン、ヒドラジン塩、ボロハライド塩、次亜リン酸塩、次亜硫酸塩、アルコール、アルデヒド、カルボン酸、カルボン酸塩などが適用可能である。なお、これらの還元剤に含有されるボロン、燐、窒素などの元素が析出する電極に含有されていても構わない。あるいは、これらの金属塩の混合物を用いて合金が形成されていても構わない。
【0121】
めっき剤は上記金属塩と還元剤とが混合されたものを適用するようにしてもよいし、あるいは金属塩と還元剤とを別個に適用するようにしてもよい。ここで、導電性パターンをより鮮明に形成するためには、金属塩と還元剤とが混合されたものを適用することが好ましい。また、金属塩と還元剤とを別個に適用する場合には、導電性パターン部にまず金属塩を配した後、還元剤を配することでより安定した電極パターンを形成することができる。
【0122】
めっき剤には、必要があればpH調整のための緩衝剤、界面活性剤などの添加物を含有させることができる。また、溶液に用いる溶媒としては、水以外にアルコール、ケトン、エステルなどの有機溶剤を添加するようにしても構わない。
【0123】
めっき剤の組成は、析出させる金属の金属塩、還元剤、及び必要に応じて添加物、有機溶媒を添加した組成で構成されるが、析出速度に応じて濃度や組成を調整することができる。また、めっき剤の温度を調節して析出速度を調整することもできる。この温度調整の方法としては、めっき剤の温度を調整する方法、また、例えば、めっき剤中に浸漬する場合、浸漬前に基材を加熱、冷却して温度調節する方法などが挙げられる。更にめっき剤に浸漬する時間で析出する金属薄膜の膜厚を調整することもできる。
【0124】
《可溶性銀錯体化合物を含有する処理液のその他の構成》
本発明に係る可溶性銀錯体化合物を含有する処理液は、前述の可溶性銀錯体化合物を含む溶液であればいかなる組成であってもよい。
【0125】
本発明に係る可溶性銀錯体化合物を含有する処理液がインクジェットインクの場合には、上記説明した他に必要に応じて各種添加剤を適用することができる。
【0126】
本発明に係る処理液においては、前述の溶媒の他には、吐出安定性、プリントヘッドやインクカートリッジ適合性、保存安定性、画像保存性、その他の諸性能向上の目的に応じて、公知の各種添加剤、例えば、粘度調整剤、表面張力調整剤、比抵抗調整剤、皮膜形成剤、分散剤、界面活性剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、退色防止剤、防ばい剤、防錆剤等を適宜選択して用いることができ、例えば、ポリスチレン、ポリアクリル酸エステル類、ポリメタクリル酸エステル類、ポリアクリルアミド類、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、またはこれらの共重合体、尿素樹脂、またはメラミン樹脂等の有機ラテックス、流動パラフィン、ジオクチルフタレート、トリクレジルホスフェート、シリコンオイル等の油滴微粒子、カチオンまたはノニオンの各種界面活性剤、特開昭57−74193号、同57−87988号及び同62−261476号の各公報に記載の紫外線吸収剤、特開昭57−74192号、同57−87989号、同60−72785号、同61−146591号、特開平1−95091号及び同3−13376号の各公報等に記載されている退色防止剤、特開昭59−42993号、同59−52689号、同62−280069号、同61−242871号及び特開平4−219266号の各公報等に記載されている蛍光増白剤、硫酸、リン酸、クエン酸、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸カリウム等のpH調整剤等を挙げることができる。
【0127】
本発明に係る処理液の調製については、特に制限はないが、各種添加剤を含むインクの調製を行う場合、調製過程での凝集、沈降が生じないようにインクを調製することが好ましい。必要に応じて、添加物の添加順序、添加速度を調節する等の調合方法を取ることができる。
【0128】
本発明に係る処理液の粘度は特に制限はないが、25℃における粘度が2mPa・s以上、10mPa・s以下であることが好ましい。また、本発明に係るインクジェットインクの粘度は、シェアレート依存性がない方が好ましい。
【0129】
また、本発明に係る処理液においては、表面張力が40mN/m以下であることが好ましく、より好ましくは25〜35mN/mである。本発明で言うインクの表面張力(mN/m)は、25℃で測定した表面張力で値であり、その測定法は一般的な界面化学、コロイド化学の参考書等において述べられているが、例えば、新実験化学講座第18巻(界面とコロイド)、日本化学会編、丸善株式会社発行:P.68〜117を参照することができる。
【0130】
本発明に係る処理液においては、インク保存安定性の観点から、電気伝導度が1mS/m以上、500mS/m以下であることが好ましく、より好ましくは1mS/m以上、200mS/m以下であり、更に好ましくは10mS/m以上、100mS/m以下である。また、本発明に係るインクの調製においては、イオン濃度を適宜調整することが好ましい。
【0131】
《導電性パターンシート》
上記方法により作製されるシート状の基材上に導電性パターンを形成した本発明の導電性パターンシートは、構成が簡単で安価であり、接触型、非接触あるいはハイブリッド型のICカード、ICラベル、ICタグ、ICフォームなどの情報記録媒体やペーパーコンピュータなどとして用いられる他、プリント基板など一般の導電回路として用いることができる。また、基材として透明フィルムを用いて、電磁波遮蔽フィルムとして用いることもできる。
【実施例】
【0132】
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、実施例において「部」あるいは「%」の表示を用いるが、特に断りがない限り「質量部」あるいは「質量%」を表す。
【0133】
実施例1
《導電性パターン試料の作製》
〔試料1の作製〕
表面に12W・min/m2のコロナ放電処理を2秒間施した市販のガラス−エポキシ基板上に、オフセット印刷法を用いて、85℃、80%RH環境下で12時間の強制劣化処理を施した下記めっき液C−1を、回路幅100μm、回路間隔100μmの櫛歯パターン状で、ウエット膜厚10μmで付与し、その後、溶媒を乾燥させた。次に、下記の無電解銅めっき液1に浸漬し、75℃で20分間の無電解めっき処理を行って、平均膜厚が4.5μmの導電性パターンを形成し、これを試料1とした。
【0134】
〈めっき液C−1の調製〉
平均粒子径が20nmの銀コロイド微粒子(保護コロイド成分を1.5質量%含む)を5質量%、平均粒子径が50nmのパラジウムコロイド微粒子(保護コロイド成分を3質量%含む)を15質量%、ポロピレングリコールモノメチルアセテート20質量%、水60質量%を混合させて、めっき液C−1を調製した。
【0135】
〈無電解銅めっき液1の調製〉
硫酸銅0.04モル、ホルムアルデヒド(37質量%)0.08モル、水酸化ナトリウム0.10モル、トリエタノールアミン0.05モル、ポリエチレングリコール100ppmに、水を加えて全量を1Lとし、無電解銅めっき液1を調製した。
【0136】
〔試料2の作製〕
上記試料1の作製において、めっき液C−1を、下記C−2に変更した以外は同様にして、試料2を作製した。
【0137】
〈めっき液C−2の調製〉
平均粒子径が20nmの銀コロイド微粒子(保護コロイド成分を1.5質量%含む)を20質量%、ポロピレングリコールモノメチルアセテート20質量%、水60質量%を混合させて、めっき液C−2を調製した。
【0138】
〔試料3の作製〕
表面に12W・min/m2のコロナ放電処理を2秒間施した市販のガラス−エポキシ基板上に、オフセット印刷法を用いて、85℃、80%RH環境下で12時間の強制劣化処理を施した下記めっき液A−1を、回路幅100μm、回路間隔100μmの櫛歯パターン状で、ウエット膜厚10μmで付与し、その後、溶媒を乾燥させた。この基板に、85℃、80%RH環境下で12時間の強制劣化処理を施した下記めっき液A−2を、ウエット膜厚15μmの条件で基板全面に付与し、その後溶媒を乾燥させた。次に、無電解銅めっき液1に浸漬し、75℃で20分間の無電解めっき処理を行って、平均膜厚が4.5μmの導電性パターンを形成し、これを試料3とした。
【0139】
〈めっき液A−1の調製〉
硝酸銀0.85g、チオ硫酸ナトリウム4.25g、りん酸カリウム15.0g、ホウ酸カリウム5.0g及びポリエチレングリコール100ppmに水を加えて、全量を1Lとして、めっき液A−1を調製した。
【0140】
〈めっき液A−2の調製〉
硝酸銀0.85g、チオ硫酸ナトリウム4.25g、りん酸カリウム15.0g、ホウ酸カリウム5.0g、ポリエチレングリコール0.1g及び硫酸ヒドラジン5.0gに水を加えて全量を1Lとして、めっき液A−2を調製した。
【0141】
〔試料4の作製〕
上記試料3の作製において、めっき液A−1及びめっき液A−2の調製に用いた硝酸銀を、等モルの塩化銀に変更した以外は同様にして、試料4を作製した。
【0142】
〔試料5の作製〕
上記試料3の作製において、めっき液A−1及びめっき液A−2の調製に用いたチオ硫酸ナトリムを、銀に対して2倍モルの例示化合物(1−109)に変更した以外は同様にして、試料5を作製した。
【0143】
〔試料6の作製〕
上記試料5の作製において、例示化合物(1−109)を等モルの例示化合物(1−110)に変更した以外は同様にして、試料6を作製した。
【0144】
〔試料7の作製〕
上記試料5の作製において、例示化合物(1−109)を等モルの例示化合物(2−2)に変更した以外は同様にして、試料7を作製した。
【0145】
〔試料8の作製〕
上記試料5の作製において、例示化合物(1−109)を等モルの例示化合物(2−3)に変更した以外は同様にして、試料8を作製した。
【0146】
〔試料9の作製〕
上記試料5の作製において、例示化合物(1−109)を等モルの例示化合物(1−109)/例示化合物(2−3)=0.11の混合物に変更した以外は同様にして、試料9を作製した。
【0147】
〔試料10の作製〕
上記試料5の作製において、例示化合物(1−109)を等モルの例示化合物(1−109)/例示化合物(2−3)=0.15の混合物に変更した以外は同様にして、試料10を作製した。
【0148】
〔試料11の作製〕
上記試料5の作製において、例示化合物(1−109)を等モルの例示化合物(1−109)/例示化合物(2−3)=0.10の混合物に変更した以外は同様にして、試料11を作製した。
【0149】
〔試料12の作製〕
上記試料5の作製において、例示化合物(1−109)を等モルの例示化合物(1−109)/例示化合物(2−3)=0.08の混合物に変更した以外は同様にして、試料12を作製した。
【0150】
〔試料13の作製〕
上記試料12の作製において、硫酸ヒドラジンを等モルのスルホハイドロキノンに変更した以外は同様にして、試料13を作製した。
【0151】
〔試料14の作製〕
上記試料12の作製において、硫酸ヒドラジンを等モルのL−アスコルビン酸に変更した以外は同様にして、試料14を作製した。
【0152】
〔試料15の作製〕
上記試料12の作製において、硫酸ヒドラジンを等モルのエルソルビン酸に変更した以外は同様にして、試料15を作製した。
【0153】
〔試料16の作製〕
上記試料12の作製において、硫酸ヒドラジンを等モルの4−アミノ−3−メチル−N−エチル−N−(β−(メタンスルホンアミド)エチル)アニリン硫酸塩に変更した以外は同様にして、試料16を作製した。
【0154】
〔試料17の作製〕
上記試料12の作製において、硫酸ヒドラジンを等モルのN−エチル−N−(ヒドロキシエチル)−3−メチル−4−アミノアニリン硫酸塩に変更した以外は同様にして、試料17を作製した。
【0155】
〔試料18の作製〕
上記試料17の作製において、N−エチル−N−(ヒドロキシエチル)−3−メチル−4−アミノアニリン硫酸塩をジナトリウム−N,N−ビス(スルホナートエチル)ヒドロキシルアミンに変更した以外は同様にして、試料18を作製した。
【0156】
〔試料19の作製〕
上記試料17の作製において、硝酸銀に対して、5モル%のヒドロキシルアミン硫酸塩を添加した以外は同様にして、試料19を作製した。
【0157】
〔試料20の作製〕
上記試料19の作製において、硝酸銀を等モルのp−トルエンスルホン酸銀に変更し、塩化カリウムを除いた以外は同様にして、試料20を作製した。
【0158】
〔試料21の作製〕
上記試料20の作製において、りん酸カリウム及びホウ酸カリウムを除き、水を同質量の炭酸プロピレンに変更した以外は同様にして、試料21を作製した。
【0159】
〔試料22の作製〕
上記試料21の作製において、炭酸プロピレンを同質量の炭酸プロピレン/γブチロラクトン=7/3に変更し、N−エチル−N−(ヒドロキシエチル)−3−メチル−4−アミノアニリン硫酸塩を等モルのエルソルビン酸に、ヒドロキシルアミン硫酸塩を等モルのジナトリウム−N,N−ビス(スルホナートエチル)ヒドロキシルアミンに変更した以外は同様にして、試料22を作製した。
【0160】
〔試料23の作製〕
上記試料22の作製において、ガラス−エポキシ基板を、3−メルカプトプロピルトリエトキシシランを付与して60℃で1時間加熱処理したガラス−エポキシ基板に変更した以外は同様にして、試料23を作製した。可溶性銀錯体化合物Aを付与の後、この基板を十分に水洗して、基板表面の銀を光電子分光装置を用いて既知の方法で分析したところ、基板表面から銀が検出され、銀が固定されていることが分かった。一方、シラン処理を行わなかった基板については、基板表面から銀は検出されなかった。
【0161】
《導電性パターン試料の評価》
(絶縁抵抗値の測定)
得られた櫛歯パターンを有する各試料(回路基板)を、85℃、85%RHの恒温槽内にて、24V印加で500時間通電させた後、絶縁抵抗値(MΩ)を測定した。
【0162】
(絶縁部のめっき析出耐性の評価)
上記絶縁抵抗値の評価で用いた試料の絶縁部分への無電解めっき膜の析出状況を100倍顕微鏡で観察し、下記の基準に従ってめっき析出耐性の評価を行った。
【0163】
◎:絶縁部で、めっき析出が確認できない
○:絶縁部で僅かなめっき析出が確認できる、その面積は絶縁部全面積に対して5%未満である
△:絶縁部でめっき析出が確認でき、その面積は絶縁部全面積に対して、5%以上、50%以下である
×:ほぼ絶縁部全面積にわたって析出が確認される
以上により得られた結果を、表1に示す。
【0164】
【表1】

【0165】
表1に記載の結果より明らかな様に、本発明で規定する構成を満たす試料は、めっき液の強制劣化を行っても絶縁抵抗が高く、良好なめっき皮膜が形成されていることが分かる。
【0166】
実施例2
実施例1に記載の各試料の作製において、オフセット印刷によるパターン形成に代えて、図1に記載の圧力印加手段と電界印加手段とを備えたインクジェット記録装置の圧力印加手段のみを用いてパターンを形成した以外は実施例1と同様にして各試料を作製し、実施例1に記載の各評価を行った結果、実施例1と同様の結果を得ることができた。
【0167】
実施例3
実施例2に記載の各試料の作製において、インクジェット記録装置によるパターン形成を、圧力印加手段と電界印加手段の両方を用いて行った所、強制劣化を行っためっき液C−1,C−2がインクジェット記録ヘッドのノズル部でノズル詰まりを起こし、試料1、2は作製できなかった。これに対し、試料5〜23で用いためっき液は、良好に射出でき、実施例1と同様の評価結果を得ることができた。
【0168】
実施例4
実施例1〜3に記載の各試料の作製において、無電解銅めっきの代わりに、以下に示す無電解銀めっき液2を用いてめっき処理を行った結果、実施例1〜3と同様の結果を得ることができた。
【0169】
〈無電解銀めっき液2〉
p−トルエンスルホン酸銀を1.00g、リン酸カリウムを15.0g、ホウ酸カリウムを5.0g、ヒダントインを10.0g、トリエタノールアミンを0.05モル、ポリエチレングリコールを100ppm、水を加えて全量を1Lとして、無電解めっき液2を調製した。
【図面の簡単な説明】
【0170】
【図1】本発明に好ましく適用できる圧力印加手段と電界印加手段とを用い導電性インク吐出装置の一例を示した概略断面図である。
【符号の説明】
【0171】
20 導電性インク吐出装置
21 ノズル
22 ノズル内流路
23 対向電極
24 インク室
25 吐出電圧印加手段
26 ノズルプレート
27 供給路
28 吐出電極
30 バイアス電源
K 基材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
可溶性銀錯体化合物Aを含有する処理液を被めっき基材上に付与して、該被めっき基材上に銀化合物を固定した後、該基材上に更に可溶性銀錯体化合物Bを含有する処理液を付与して銀核を形成させ、該形成された銀核上に無電解めっきにより金属皮膜を形成させることを特徴とするめっき方法。
【請求項2】
前記可溶性銀錯体化合物Aまたは可溶性銀錯体化合物Bが、下記一般式(1)及び一般式(2)で表される化合物から選択される少なくとも1種から形成されていることを特徴とする請求項1に記載のめっき方法。
一般式(1)
1−SM
〔式中、R1はアルキル基、アリール基またはヘテロ環基を表す。Mは水素原子、金属原子またはアンモニウムを表す。〕
一般式(2)
2−S−R3
〔式中、R2、R3は各々置換または無置換の炭化水素基を表す。但し、S原子を含む環を形成する場合には、芳香族基をとることはない。〕
【請求項3】
前記可溶性銀錯体化合物Aまたは可溶性銀錯体化合物Bが、前記一般式(1)で表される化合物と前記一般式(2)で表される化合物とから形成され、該一般式(1)で表される化合物及び一般式(2)で表される化合物の添加量比が、下記式(1)で規定する条件を満たすことを特徴とする請求項2に記載のめっき方法。
式(1)
0<〔一般式(1)で表される化合物のモル数/一般式(2)で表される化合物のモル数〕≦0.1
【請求項4】
前記可溶性銀錯体化合物Aまたは可溶性銀錯体化合物Bを含有する処理液が、下記一般式(A)、一般式(B)及びp−フェニレンジアミン類から選ばれる少なくとも1種の銀還元剤を含有することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のめっき方法。
【化1】

〔式中、R1は、−SO3M基、−COOM基、置換若しくは無置換のアミノ基、または置換若しくは無置換のアンモニオ基を表す。Mは、水素原子、アルカリ金属原子、または置換若しくは無置換のアンモニウムイオンを表す。nは1または2を表し、mは1、2または3を表す。〕
【化2】

〔式中、R2及びR3は各々、ヒドロキシル基、アミノ基、アシルアミノ基、アルキルスルホニルアミノ基、アリールスルホニルアミノ基、アルコキシカルボニルアミノ基、メルカプト基またはアルキルチオ基を表す。P及びQは各々、ヒドロキシル基、カルボキシル基、アルコキシ基、ヒドロキシアルキル基、カルボキシアルキル基、スルホ基、スルホアルキル基、アミノ基、アミノアルキル基、アルキル基またはアリール基を表すか、互いに結合してR2、R3が置換している二つのビニル炭素原子及びYが置換している炭素原子と共に5〜8員環を形成する非金属原子群を表す。Yは=Oまたは=NR4を表し、R4は水素原子、ヒドロキシル基、アルキル基、アシル基、ヒドロキシアルキル基、スルホアルキル基またはカルボキシアルキル基を表す。〕
【請求項5】
前記可溶性銀錯体化合物Aまたは可溶性銀錯体化合物Bを含有する処理液が、下記一般式(C)で表される化合物を含むことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載のめっき方法。
【化3】

〔式中、R5、R6は各々アルキル基または水素原子を表す。ただし、R5及びR6が同時に水素原子であることはない。また、R5及びR6は環を形成してもよい。〕
【請求項6】
前記可溶性銀錯体化合物Aまたは可溶性銀錯体化合物Bを含有する処理液が、実質的にハロゲンイオン、まはた硝酸イオンを含まないことを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載のめっき方法。
【請求項7】
前記可溶性銀錯体化合物Aまたは可溶性銀錯体化合物Bを含有する処理液が、実質的に水を含まないことを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載のめっき方法。
【請求項8】
前記可溶性銀錯体化合物Aを含有する処理液を被めっき基材上に付与する前に、該被めっき基材上にメルカプト基を含む化合物を固定化し、さらに、該メルカプト基に、該可溶性銀錯体化合物Aを含有する処理液に含まれる銀または銀イオンを固定することを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載のめっき方法。
【請求項9】
前記可溶性銀錯体化合物Aまたは可溶性銀錯体化合物Bを含有する処理液を、インクジェット記録装置を用いて被めっき基材上に付与することを特徴とする請求項1〜8のいずれか1項に記載のめっき方法。
【請求項10】
前記インクジェット記録装置のインクジェット記録手段が、圧力印加手段と電界印加手段とを用いた方法であることを特徴とする請求項9に記載のめっき方法。
【請求項11】
請求項1〜10のいずれか1項に記載のめっき方法に用いることを特徴とするめっき処理液。
【請求項12】
請求項1〜10のいずれか1項に記載のめっき方法で形成されたことを特徴とする導電性パターンシート。

【図1】
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【公開番号】特開2009−102675(P2009−102675A)
【公開日】平成21年5月14日(2009.5.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−273490(P2007−273490)
【出願日】平成19年10月22日(2007.10.22)
【出願人】(000001270)コニカミノルタホールディングス株式会社 (4,463)
【Fターム(参考)】