説明

アウターロータ型回転電機

【課題】ロータとステータとの間のエアギャップに冷媒が介在することを抑制し、回転抵抗を低減可能なアウターロータ型の回転電機を提供する。
【解決手段】オイル供給部40は、ロータ20の円環部25よりも径方向外側に設けられたオイル供給口41を備え、ハウジング30には、底面34上に所定量のオイルを貯留する貯留部33が設けられる。ロータ20の外周面である円環部外周面24bは、軸心Oとの間の径方向距離が軸連結部から開口側に向かうにしたがい拡径しており、ハウジング30の底面34とロータ20の円環部外周面24bとの径方向隙間が、軸連結部側から開口側に向かうに従って小さくなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アウターロータ型回転電機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、アウターロータ型回転電機において、運転中にロータやステータのコイルから発熱することが知られており、回転電機が昇温することで回転電機の効率が低下するのを抑制するため、潤滑油(冷媒)を循環させて回転電機を冷却することが行われている。
【0003】
例えば、特許文献1に記載のアウターロータ型回転電機においては、図9に示すように、ベアリング112及びスプラグ104からオイル溜まり115に流入したオイルを、ロータカップ103の軸連結部103bに形成された通孔103eに導入させ、さらに通孔103eに導入したオイルを慣性力によってロータカップの径方向外側に移動させて、発電コイル106bに噴射することで、回転電機を冷却することが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001‐45714号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、アウターロータ型回転電機の場合、磁石の表面積、又はロータカップの軸連結部が大きくなることにより高出力化が可能となるが、エアギャップ位置がインナーロータ型に比べて外径に位置するため、油冷を行う場合には、ハウジングの底面に貯留したオイルがエアギャップへ浸入しやすく、回転抵抗の増加、即ち回転電機の効率の低下につながるおそれがあった。
【0006】
本発明は、前述した課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、ロータとステータとの間のエアギャップに冷媒が介在することを抑制し、回転抵抗を低減可能なアウターロータ型の回転電機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、請求項1に係る発明は、
ステータ(例えば、後述の実施形態におけるステータ10)と、
前記ステータの径方向外側に所定のエアギャップ(例えば、後述の実施形態におけるエアギャップS)を介して配置され、軸心周りに回転可能なロータ(例えば、後述の実施形態におけるロータ20)と、
前記ステータおよび前記ロータを収納するハウジング(例えば、後述の実施形態におけるハウジング30)と、
少なくとも前記ロータを冷却する冷媒(例えば、後述の実施形態におけるオイル)を前記ハウジング内に供給する冷媒供給部(例えば、後述の実施形態におけるオイル供給部40)と、を備えたアウターロータ型回転電機(例えば、後述の実施形態におけるアウターロータ型回転電機1)であって、
前記ロータは、前記ステータの径方向外側に配置される円環部(例えば、後述の実施形態における円環部25)と、該円環部の軸方向一端側に設けられ回転軸(例えば、後述の実施形態における回転軸13)に連結された軸連結部(例えば、後述の実施形態における軸連結部26)と、を備え、軸方向他端側が開口しており、
前記冷媒供給部は、前記ロータの前記円環部よりも径方向外側に設けられた供給口(例えば、後述の実施形態におけるオイル供給口41)を備え、
前記ハウジングには、底面(例えば、後述の実施形態における底面34)上に所定量の前記冷媒を貯留する貯留部(例えば、後述の実施形態における貯留部33)が設けられ、
前記ロータの外周面(例えば、後述の実施形態における円環部外周面24b)は、軸心(例えば、後述の実施形態における軸心O)との間の径方向距離が軸方向一端側(例えば、後述の実施形態における軸連結部側)から他端側(例えば、後述の実施形態における開口側)に向かうにしたがい拡径しており、前記ハウジングの底面と前記ロータの外周面との径方向隙間が、軸方向一端側から軸方向他端側に向かうに従って小さくなることを特徴とする。
【0008】
請求項2に係る発明は、請求項1の構成に加えて、
前記ロータの前記軸連結部と前記ハウジングの側面との間に仕切り部材(例えば、後述の実施形態におけるバッフルプレート60)が設けられ、
前記仕切り部材は、前記ロータの軸心よりも下方で前記ロータの前記軸連結部と前記ハウジングの側面を仕切る仕切り部(例えば、後述の実施形態における仕切り部65)と、該仕切り部の下端部から軸方向他端側に伸びるとともに湾状に窪んだ受け部(例えば、後述の実施形態における受け部66)と、を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
請求項1の発明によれば、ハウジングの底面とロータの外周面との径方向隙間で発生する圧力差により、ハウジングの底面とロータの外周面との径方向隙間に貯留した液体が軸方向他端側から軸方向一端側に流動することにより、ロータとステータとの間のエアギャップに冷媒が介在することを抑制することができ、回転抵抗を低減することができる。
【0010】
請求項2の発明によれば、ロータの回転時に、ロータ側の貯留部に貯留される冷媒上面の高さを、ハウジングの側面側の貯留部に貯留される冷媒上面の高さよりも低くすることができ、これにより、貯留した冷媒中に浸かるロータの表面積が小さくなり、ロータが回転する際の冷媒の抵抗を小さくすることができ、回転電機の効率を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明のアウターロータ型回転電機の一実施形態の断面図である。
【図2】図1に示すアウターロータ型回転電機の正面図である。
【図3】図1に示すアウターロータ型回転電機の側面図である。
【図4】図1のロータ上部の拡大断面図である。
【図5】(a)は本実施形態の図1のロータ下部の部分拡大図であり、(b)は比較例のアウターロータ型回転電機のロータ下部の部分拡大図である。
【図6】変形例に係るアウターロータ型回転電機の正面図である。
【図7】図6に示すアウターロータ型回転電機の側面図である。
【図8】(a)はバッフルプレートを取り付けた場合のロータの回転時の模式図であり、(b)はバッフルプレートを取り付けていない場合のロータの回転時の模式図である。
【図9】特許文献1に記載のアウターロータ型回転電機の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の各実施の形態を、添付図面に基づいて説明する。なお、図面は符号の向きに見るものとする。
図1〜図3に示すように、本実施形態のアウターロータ型回転電機1は、ステータ10と、ステータ10の径方向外側に僅かな隙間(以下、エアギャップSと呼ぶ。)を介して対向配置される円環状のロータ20と、ステータ10およびロータ20を収納するハウジング30と、少なくともロータ20を冷却する冷媒としてのオイルをハウジング30内に供給するオイル供給部40と、を備えて構成される。
【0013】
ステータ10およびロータ20を収納するハウジング30は、軸方向一端側に位置する円板状の側壁31から軸方向に環状の円筒部32が突出し、円筒部32の上方(径方向外側)には、オイル供給部40のオイル供給口41が設けられている。ロータ20の回転中には、オイル供給口41からロータ20にオイルが供給され、供給されたオイルがハウジング30の円筒部32下方の貯留部33に貯留するように構成される。
【0014】
ステータ10は、ステータコア3と、複数のコイル4とを備える。ステータコア3は、複数の電磁鋼板が軸方向に積層されて構成され、円環状の支持部3aから径方向外側に向かって放射状に突出形成された複数のティース3bを有する。支持部3aの内側には、ボルト穴3cをそれぞれ有する複数の凸部3dが設けられ、ボルト穴3cに挿通されるボルト11により、ステータコア3がハウジング30の軸方向他端側の側壁35に固定されている。コイル4は、巻線6を、絶縁特性を有する合成樹脂などで形成されたインシュレータ7を介してステータコア3のティース3bの周囲に巻回することで形成される。従って、複数のコイル4は、全体として略円環状に組みつけられている。
【0015】
ロータ20は、略円環状のロータヨーク21と、ロータヨーク21の内周面に固定される永久磁石22aからなる複数の磁極部22と、ロータヨーク21を径方向内側に保持すると共に回転軸13に固定される縁付円盤状のロータカップ24と、を備える。
【0016】
ロータヨーク21は、透磁可能な材料からなる複数の円環状の電磁鋼板を軸方向に積層することにより構成され、外周面21aが、ロータカップ24の内周面24aに圧入固定される。なお、圧入代は、スリップトルク以上のトルクが確保できるように設定されている。
【0017】
複数の磁極部22は、周方向で隣り合う磁極が異極となるように周方向で交互に設けられており、各磁極部22は、2つの永久磁石22aから構成される。なお、各磁極部22は、1つの永久磁石22aで構成されていてもよい。
【0018】
ロータカップ24は、ステータ10の径方向外側に配置される円環部25の軸方向一端側に、回転軸13に連結された軸連結部26が一体に取り付けられている。言い換えると、ロータカップ24は、軸方向一端側に軸連結部26が形成され、軸方向他端側が開口している。また、ロータカップ24の円環部外周面24bは、図3及び4に示すように、軸心Oとの間の径方向距離が軸連結部側から開口側に向かうにしたがい拡径する傾斜面をなしている。これに対しロータカップ24の円環部外周面24bと対向するハウジング30の円筒部32は、軸心Oとの間の径方向距離が一定なので、ハウジング30の円筒部32の底面34と円環部外周面24bと径方向隙間が、軸連結部側から開口側に向かうに従って小さくなっている。
【0019】
図1に戻って、回転軸13は、軸受8により、ハウジング30に対して回転自在に支承されており、ステータ10に発生させる回転磁界によってロータ20が回転駆動される。
【0020】
このように構成されたアウターロータ型回転電機1では、運転中にオイル供給部40のオイル供給口41からハウジング30内にオイルが、ロータカップ24の円環部外周面24bに向かって噴射又は滴下される。
【0021】
ここで、本実施形態のアウターロータ型回転電機1の作用を説明する前に、比較例としての回転電機の場合について図5(b)を参照して説明する。比較例の回転電機では、図5(b)に示すように、ロータカップ24の円環部外周面24bは、軸心Oとの間の径方向距離が一定な円筒面として形成されている。従って、ハウジング30の円筒部32の底面34と円環部外周面24bと径方向隙間が、一定となっている。
【0022】
ロータ20の回転時に、ロータ20の外周面であるロータカップ24の円環部外周面24bとハウジング30の底面34との間においては、ロータ20の回転によりオイルが下方へ向かって押圧されるため、オイルの圧力が貯留部33の他の位置よりも高くなる。圧力の高いオイルは、ロータカップ24の円環部外周面24bとハウジング30の底面34との間から、軸方向両側へ流動するが、ロータカップ24の円環部外周面24bとハウジング30の底面34との間の径方向距離が一定の場合には、軸方向両側へほぼ均等に流動する。
【0023】
これに対し、本実施形態のアウターロータ型回転電機1では、図5(a)に示すように、ロータカップ24の円環部外周面24bは、軸心Oとの間の径方向距離が軸連結部側から開口側に向かうに従い拡径する傾斜面をなしているので、供給されたオイルは、開口側から軸連結部側に向かって、且つ、上方から下方に向かって円環部外周面24bに沿って移動し、軸連結部側の貯留部33に導かれる。
【0024】
また、ハウジング30の円筒部32の底面34と円環部外周面24bと径方向隙間が、軸連結部側から開口側に向かうに従って小さくなっているので、ロータ20の回転時に、ロータ20の円環部外周面24bとハウジング30の底面34との間において、オイルの圧力が軸連結部側から開口側に向かうに従い大きくなるように分布する。従って、ロータ20の回転時に、ロータ20の円環部外周面24bとハウジング30の底面34との間から、ロータ20の開口側へ流動するオイルの量に比べて、ロータ20の軸連結部側へ流動するオイルの量が多くなる。
【0025】
以上のことから、ロータ20の開口側における貯留部33の高さが、ロータ20の軸連結部側における貯留部33の高さよりも低くなる。これにより、ロータ20とステータ10との間のエアギャップSにオイルが介在することを抑制することができ、回転抵抗を低減することができる。
【0026】
以上説明したように、本実施形態によれば、オイル供給部40は、ロータ20の円環部25よりも径方向外側に設けられたオイル供給口41を備え、ハウジング30には、底面34上に所定量のオイルを貯留する貯留部33が設けられ、ロータ20の外周面である円環部外周面24bは、軸心Oとの間の径方向距離が軸連結部側(軸方向一端側)から開口側(他端側)に向かうにしたがい拡径しており、ハウジング30の底面34とロータ20の円環部外周面24bとの径方向隙間が、軸連結部側から開口側に向かうに従って小さくなるので、ハウジング30の底面34と円環部外周面24bとの径方向隙間で発生する圧力差により、ハウジング30の底面34と円環部外周面24bとの径方向隙間に貯留したオイルが開口側から軸連結部側に流動することにより、ロータ20とステータ10との間のエアギャップSにオイルが介在することを抑制することができ、回転抵抗を低減することができる。
【0027】
次に、本実施形態のアウターロータ型回転電機1の変形例について図6及び図7を参照しながら説明する。
本変形例では、ロータ20の軸連結部26とハウジング30の側面との間にバッフルプレート60が設けられている。
【0028】
バッフルプレート60は、ロータ20の軸心Oよりも下方でロータの軸連結部26とハウジングの側壁31を仕切る仕切り部65が軸連結部26に沿って径方向に延びており、仕切り部65の周縁下端部に、周縁下端部から開口側に延び、且つ、湾状に窪んだ受け部66が形成される。仕切り部65は、ロータ20の円環部外周面24bの軸連結部側の外径と略等しい径寸法を有する円板を水平に切断したものである。また、受け部66は、ハウジング30の円筒部32の底面34と円環部外周面24bと径方向隙間に干渉しない位置に配置される。符号67は、バッフルプレート60をハウジング30に固定する取り付け孔である。
【0029】
このように、バッフルプレート60を備える本変形例のアウターロータ型回転電機1では、ロータ20の回転停止時におけるオイルの液面の高さは、バッフルプレート60を挟んで同じ高さとなっているが、図8(a)に示すように、ロータ20が回転すると、ロータ20の回転に伴ってバッフルプレート60の上方、即ち、ロータ側貯留部33aに貯留されているオイルがロータ側貯留部33aの外部にかき出される。これにより、ロータ側貯留部33aから流出するオイルの量が、ロータ側貯留部33aに流入するオイルの量よりも多くなって、ロータ側貯留部33aに貯留されるオイルの液面の高さHがハウジング側貯留部33bに貯留されるオイルの液面の高さhよりも低下する。従って、図8(b)に示すバッフルプレートを備えていないアウターロータ型回転電機に比べて、ロータ20の回転時には、オイルに浸漬しているロータ20の表面積が少なくなり、オイルによる回転抵抗が低減することで、アウターロータ型回転電機1の効率が向上する。
【0030】
尚、本発明は、前述した各実施形態に限定されるものではなく、適宜、変形、改良、等が可能である。
【符号の説明】
【0031】
1 アウターロータ型回転電機
10 ステータ
13 回転軸
20 ロータ
24b 円環部外周面(ロータの外周面)
25 円環部
26 軸連結部
30 ハウジング
33 貯留部
34 底面
40 オイル供給部(冷媒供給部)
41 オイル供給口
60 バッフルプレート(仕切り部材)
65 仕切り部
66 受け部
S エアギャップ
O 軸心

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ステータと、
前記ステータの径方向外側に所定のエアギャップを介して配置され、軸心周りに回転可能なロータと、
前記ステータおよび前記ロータを収納するハウジングと、
少なくとも前記ロータを冷却する冷媒を前記ハウジング内に供給する冷媒供給部と、を備えたアウターロータ型回転電機であって、
前記ロータは、前記ステータの径方向外側に配置される円環部と、該円環部の軸方向一端側に設けられ回転軸に連結された軸連結部と、を備え、軸方向他端側が開口しており、
前記冷媒供給部は、前記ロータの前記円環部よりも径方向外側に設けられた供給口を備え、
前記ハウジングには、底面上に所定量の前記冷媒を貯留する貯留部が設けられ、
前記ロータの外周面は、軸心との間の径方向距離が軸方向一端側から他端側に向かうにしたがい拡径しており、前記ハウジングの底面と前記ロータの外周面との径方向隙間が、軸方向一端側から軸方向他端側に向かうに従って小さくなることを特徴とするアウターロータ型回転電機。
【請求項2】
前記ロータの前記軸連結部と前記ハウジングの側面との間に仕切り部材が設けられ、
前記仕切り部材は、前記ロータの軸心よりも下方で前記ロータの前記軸連結部と前記ハウジングの側面を仕切る仕切り部と、該仕切り部の下端部から軸方向他端側に伸びるとともに湾状に窪んだ受け部と、を有することを特徴とする請求項1に記載のアウターロータ型回転電機。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate


【公開番号】特開2013−5530(P2013−5530A)
【公開日】平成25年1月7日(2013.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−132470(P2011−132470)
【出願日】平成23年6月14日(2011.6.14)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】