説明

アクチュエータ及び基板搬送ロボット

【課題】 内軸用のマグネットと外軸用のマグネットとを一体とすることで、低コストのアクチュエータを提供すること。
【解決手段】 アクチュエータは、中空構造を有し、中空構造の内側を真空排気可能に構成され、中空構造の外周側で第1コイル部を保持するハウジングと、ハウジングの内部において回転自在に支持され、外周に第2コイル部を有する内軸と、内軸の回転軸と同軸にハウジングの内部において回転自在に支持されており、内軸の外周側を囲むように配置されている円筒状の外軸と、外軸の外周側で第1コイル部に対向し、外軸の内周側で第2コイル部に対向する磁石と、内軸とハウジングの一方に設けられた整流子と、内軸とハウジングの他方に設けられ、内軸が少なくとも回転する際には整流子と摺接するブラシと、を備え、第2コイル部は、整流子とブラシを介して給電される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はアクチュエータ及び基板搬送ロボットに関する。特に、半導体ウエハ基板や、液晶ディスプレイ、太陽電池基板、あるいは光通信機器用基板を搬送する基板搬送ロボット、基板搬送ロボットに用いるアクチュエータに関する。
【背景技術】
【0002】
図6、7の参照により、従来のアクチュエータ、基板搬送ロボットおよびプロセス処理装置(例えば、特許文献1を参照)を説明する。図7に示す複数のプロセス処理装置(以下、「処理室」)1−6は、基板搬送ロボット51を中心にして放射状に配置されている。基板搬送ロボット51は、搬送室60の内部に配置され、ロードロック室(LL1)から搬入された基板を処理室1−6のそれぞれに搬送する。各処理室で処理された基板は、最終的にロードロック室(LL2)から排出される。基板搬送ロボット51は、第1アーム52の回転(+α度)動作と、第2アーム53の回転(−2α度)動作と、を同時に行うことにより、第2アームの先端に構成されている基板保持プレート54の軌道が直線的になるように動作可能である。処理室1−6は、基板搬送ロボット51を中心にして放射状に配置されている。第1アーム52および第2アーム53の回転動作に基づいて基板保持プレート54を直線的に動作させることより、基板搬送ロボット51は各処理室に基板を搬送することが可能である。処理室で基板の処理が終了した後に、基板搬送ロボット51は処理室から基板を排出し、次の処理を行う別の処理室に基板を移載する。
【0003】
基板搬送ロボット51の概略を説明する。ベルト55と連結された内軸480は固定のまま(未回転)、外軸490を回転させると、第1アーム52は中心軸を中心に回転(+α角)する。第1アーム52の内部で所定の歯数のプーリ58と接続されたベルト55の働きにより、第2アーム53は第1アーム52の回転とは逆の方向に所定倍の角度(例えば2倍:−2α角)だけ動作する。基板保持プレート54は、第1アーム52と同一方向に同一角度回転することができるように構成されているため、結果的に、外軸490の回転運動を行うだけで、基板保持プレート54を直線的に動かす直動動作が可能になる。この直動動作により、基板保持プレート54に載置された基板を処理室内に搬送することができる。処理室で基板の処理が終了した後に、基板搬送ロボット51は、直動動作により処理室から基板を排出する。そして、基板搬送ロボット51の外軸490と内軸480を同期させて同一方向に回転させることにより、基板搬送ロボット51の向きを変えて、別の処理室へ基板を移載(以下アームの公転)することが可能である。
【0004】
特許文献2には、ベルトを排除して構成されたアームが提案されている。特許文献2のアームの場合、アームの公転時は、図7と同様に外軸、内軸を同期させて同一方向に回転させることにより基板搬送ロボットの向きを変えることができる。また、第1アームの駆動と第2アームの駆動とを同期させて、特許文献1と同様にそれぞれ所定の角度だけ回転させることにより、直動動作を実現している。更に、基板を載せかえるために、基板搬送ロボットの基板保持プレートを上下動させる上下機構を搭載している基板搬送ロボットもある。各処理室における基板処理は真空環境で行うため、基板搬送ロボット51は真空チャンバとして機能する搬送室60の真空環境を悪化することなく動作可能に構成されている。
【0005】
図6の基板搬送ロボットは、第1アームを動作させる回転駆動機構と第2アームを動作させる回転駆動機構とを有している(上側モータ400、下側モータ410)。基板搬送ロボットは、基板を保持する基板保持プレートと連結されているアームに接続されている駆動軸を直接駆動するロータとステータのセットを2セット有する。真空対応の場合、ロータとステータの間に真空隔壁の機能を有するハウジング430が設けられる。ハウジング430から真空チャンバの間では、外軸490の回りはベローズ495で覆われハウジング内部の気密状態が保持されている。永久磁石を有したロータ(内軸ロータ440、外軸ロータ450)は、ハウジング430に固定されているステータ(内軸ステータ445、外軸ステータ455)とそろえられて配置されている。下側モータ410により駆動される内軸480と上側モータ400により駆動される外軸490とは同軸になるように配置され、上側モータ400と下側モータ410とが上下に直列に設けられた構成になっている。また、回転位置検出用のセンサ(内軸用エンコーダ460、外軸用エンコーダ465)が設けられ、駆動軸の回転位置、回転角度を検出することが可能である。
【0006】
基板搬送ロボットはステータ(内軸ステータ445、外軸ステータ455)に供給された電力に基づいて、ロータ(内軸ロータ440、外軸ロータ450)を所定の角度、回転させて、基板保持プレート54に載置された基板を、図7で説明したように搬送する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特登録02761438号公報
【特許文献2】特開平10−128692号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、図6に示す構成では、ロータとステータのセットが直列に配置されているため、回転駆動機構の回転軸方向に長くなる。そのため、基板を搬送する基板搬送ライン(パスライン)も合わせて高くする必要がある。すなわち、各処理室装置全体の基板搬送ライン(パスライン)も高くすることが必要とされ、装置全体は大型化せざるを得ないものとなった。
【0009】
また、内軸ロータ440および外軸ロータ450に用いられる磁石、例えば、ネオジム磁石は高価な材料であり、内軸用および外軸用として別体の磁石を使用した場合、アクチュエータのコストアップにつながるという問題もある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は駆動機構の回転軸方向の長さをコンパクトにしたアクチュエータを提供することを目的とする。あるいは、内軸用のマグネットと外軸用のマグネットとを一体とすることで、低コストのアクチュエータを提供することを目的する。
【0011】
上記の目的のうち少なくともいずれか一つを達成する本発明の一つの側面にかかるアクチュエータは、
中空構造を有し、当該中空構造の内側を真空排気可能に構成され、当該中空構造の外周側で第1コイル部を保持するハウジングと、
前記ハウジングの内部において回転自在に支持され、外周に第2コイル部を有する内軸と、
前記内軸の回転軸と同軸に前記ハウジングの内部において回転自在に支持されており、前記内軸の外周側を囲むように配置されている円筒状の外軸と、
前記外軸の外周側で前記第1コイル部に対向し、前記外軸の内周側で前記第2コイル部に対向する磁石と、
前記内軸と前記ハウジングの一方に設けられた整流子と、
前記内軸と前記ハウジングの他方に設けられ、前記内軸が少なくとも回転する際には前記整流子と摺接するブラシと、を備え、
前記第2コイル部は、前記整流子と前記ブラシを介して給電されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、駆動機構の回転軸方向の長さをコンパクトにしたアクチュエータの提供が可能になる。
【0013】
あるいは、本発明によれば、内軸用のマグネットと外軸用のマグネットとを一体とすることで、低コストのアクチュエータの提供が可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の実施形態に係るアクチュエータの構成を説明する図。
【図2】図1のA−A断面図を示す図。
【図3】本発明の実施形態にかかるアクチュエータを基板搬送ロボットの駆動モータに適用した例を示す図。
【図4】本発明の実施形態の変形例1を示す図。
【図5】本発明の実施形態の変形例2を示す図。
【図6】従来の基板搬送ロボットを説明する図。
【図7】従来の基板搬送ロボットを説明する図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照して、本発明の好適な実施形態を例示的に詳しく説明する。ただし、この実施の形態に記載されている構成要素はあくまで例示であり、本発明の技術的範囲は、特許請求の範囲によって確定されるのであって、以下の個別の実施形態によって限定されるわけではない。
【0016】
(アクチュエータの構成)
図1の参照により本発明の実施形態に係るアクチュエータの構成を説明する。尚、以下の説明では、真空環境のチャンバ内でアクチュエータを駆動する構成を例示的に説明しているが、本発明の趣旨は、この例に限定されるものではなく、大気圧環境で駆動するアクチュエータにも適用可能である。
【0017】
図1は、本発明の実施形態にかかるアクチュエータ1000の縦断面図である。アクチュエータ1000は同心円状に配置された2つの軸(内軸、外軸)を独立に回転駆動することが可能である。2つの軸のうち、相対的に内側にある軸を内軸110とし、相対的に外側にある軸を外軸120とする。内軸110を駆動するモータを内軸モータ113とし、外軸120を駆動するモータを外軸モータ123とする。内軸モータ113の外周側に外軸モータ123が、内軸モータ113の回転軸を基準として同軸に配置されている。内軸モータ113と外軸モータ123を同軸に配置することで回転軸方向の長さを短くすることができる。また、動作速度を揃えるために発生トルクを変化させる工夫により、同期回転時の制御応答性を揃えることができる。
【0018】
外軸用ステータ122は、真空隔壁として機能するハウジング129を有し、ハウジング129には所定数のティース128が設けられている。各ティース128には導線が巻き付けられて外軸用コイル124(第1コイル部)が形成されている。外軸用コイル124(第1コイル部)には、外部から所定の電力を供給することが可能である。本実施形態の外軸用ステータ122は、別体として形成されたティース128と真空隔壁を組み立てて構成しているが、ティース128とハウジング129とを一体で形成し真空隔壁として構成することも可能である。外軸用ステータ122またはティース128は、ケイ素鋼板やパーマロイなど鉄損の少ない材質で構成されている。また、これらの材質で構成された板材を軸方向(上下方向)に多数枚積層させて構成するとより好適である。
【0019】
なお、真空隔壁は、ティース128と外軸120の間の空間を気密に区切る薄い管状の部材であり、真空隔壁の内側が真空排気可能に構成されている。さらに、ティース128の一部を真空隔壁の真空側に突出させてもよい。この場合には、真空隔壁にティース128の一端部を挿通する穴部をティース128の数だけ形成し、ティース128と真空隔壁の穴部に隙間が生じないように組み立てることができる。また、真空隔壁の内側に突出させたヨークを備えてもよい。この場合は、真空隔壁内側のティース128の端部に対応する部分にヨークを貼り付けるとよい。もちろん、内側面に凹凸を有する真空隔壁として形成してもよい。
【0020】
ハウジング129は構成部材の接合部分にOリング500を挟み込むことにより気密状態が保持された中空構造を有し、その内部は真空チャンバ101と連通しており、真空排気可能である。ハウジング129から真空チャンバ101へと延びる外軸120の周囲は気密保持部材(ベローズ190)に覆われ、ハウジング129内部の気密状態が保持されている。中空構造を有するハウジング129の内部で、内軸110はベアリング600により支持され、外軸120はベアリング700により回転自在に支持されている。内軸110と外軸120とは独立に回転可能である。
【0021】
ハウジング129の内側が内軸110と外軸120とが配設される真空排気可能な領域である。ハウジング129の外側は大気側に曝されており、この大気側に外周ヨーク127、ティース128、外軸用コイル124が配置されている。底面部材180と円筒部材181とにより構成されるハウジング100内には、真空側にブラシ132と外軸用読み取りヘッド134aと内軸用読み取りヘッド136aとが配置されている。ハウジング100を構成する底面部材180と円筒部材181との間にはOリング501を挟み込むことにより気密状態が保持されている。
【0022】
外軸120は、外軸用ステータ122の内側にベアリング700を介して配設されており、出力軸としての管状(円筒状)の外軸シャフト115に、管状に形成された磁石部材117が連結されて構成されており、磁石部材117は外軸用コイル124(第1コイル部)が保持されているハウジング129の内側(内周側)と対向している。外軸シャフト115の下端には外軸用読み取りヘッド134aと対になるディスク134bが取り付けられている。外軸用読み取りヘッド134aとディスク134bとで外軸120の回転角度を測定するエンコーダ134の主要な構成部材をなしている。
【0023】
磁石部材117は、外軸用ステータ122及び外軸シャフト115の軸線を一致させた状態で、外軸シャフト115に固定されている。本実施形態における磁石部材117は、管状の外軸シャフト115を径方向に貫通して取り付けられた所定数の永久磁石227とから構成されている。尚、管状の外軸シャフト115の内周面と外周面に所定数の永久磁石を並べて取り付けて、磁石部材117を構成してもよい。永久磁石227は、外軸シャフト115の径方向に磁束が向くように磁化されたセグメント型の複数の永久磁石から構成されている。本実施形態においては、上下方向に細長い16枚の矩形状のセグメント磁石が、極性が互い違いになるように外軸シャフト115の回りに配列されている。磁石材料としては、例えば、サマリウム系(Sm系)やネオジム系(Nd系)、フェライト系など任意の永久磁石を適用することができる。なお、永久磁石227は、コギングを抑えるためスキュー角度を有して外軸シャフト115に取り付けられると好適である。
【0024】
内軸110は、外軸120の内側にベアリング600を介して配設されており、出力軸としての内軸シャフト116に内軸用コイル112(第2コイル部)が連結されて構成されている。内軸用コイル112(第2コイル部)は、磁石部材117と対向して配設されており、磁石部材117との間でモータとしての機能を果たすように構成されている。1セットの磁石部材117と、1セットの外軸用コイル124(第1コイル部)と、1セットの内軸用コイル112(第2コイル部)と、より2つの軸(内軸110、外軸120)を駆動が可能にしたものである。また、内軸110の下方側には整流子131がブラシ132と摺接する位置に配置されており、ブラシ132によって内軸用コイル112(第2コイル部)への給電が行われる。内軸110の内軸シャフト116の下方には読み取りヘッド136aと対になるディスク136bが取り付けられている。読み取りヘッド136aとディスク136bとで回転角度を測定するエンコーダ136の主要な構成部材をなしている。整流子131は内軸110とハウジングの一方に設けられ、内軸用コイル112(第2コイル部)と電気的に接続されている。ブラシ132は内軸110とハウジングの他方に設けられ、内軸110が少なくとも回転する際には整流子131と摺接する。
【0025】
以下に、図1のA−A断面図を示す図2の参照により本発明の特徴的な構成について説明する。ハウジング129の内部には所定数のティース128が設けられている。各ティース128には導線が巻き付けられて外軸用コイル124(第1コイル部)が形成されている。内軸用コイル112(第2コイル部)は、内軸シャフト116の外周側に放射状に取り付けられた6つのティース201のそれぞれに導線が巻回されて構成された部材であり、内軸シャフト116と中心軸を揃えて接続されている。各ティース201は、上下方向に配置された略板状の部材であるため、各ティースに巻回された導線は上下方向に細長いコイルを形成する。また、各ティース201は磁石部材117と対向する側にコアホルダ部202を備えている。
【0026】
整流子131は、内軸110が回転する際にブラシ132と摺接するように内軸シャフト116の外周に取り付け可能な導電性の部材であり、給電配線を介してブラシ132から供給された電力を、内軸駆動の電力に変換して内軸用コイル112のそれぞれに供給する。ブラシ132は、整流子131に摺接するようにハウジング100の内側に取り付けられた部材であり、ばねなどの付勢部材により整流子131に常時押圧されている。ブラシ132は、外部の電源(不図示)に接続されている。
【0027】
なお、本実施形態では、整流子131を内軸110に、ブラシ132をハウジング100に取り付ける構成であるが、整流子131をハウジング100に取り付ける構成であってもよいことはもちろんである。また、ブラシ132又は整流子131のうち、遠心方向の内側に位置する部材が内軸110の回転によって外側に変形する構成とすると、ブラシ132と整流子131は内軸110の回転時のみ摺接するようにすることができる。
【0028】
なお、図2に示す例では、外軸用コイル124(第1コイル部)の構成として、例えば、3相8極24コイルを使用している。また、磁石部材117の構成として16極を使用し、内軸用コイル112(第2コイル部)として6コイルとした構成例を示しているが、コイル数や極数の組み合わせとしてはこの例に限定されず、他の組み合わせを適宜採用することも可能である。また、本実施形態においては、外軸用コイル124(第1コイル部)や内軸用コイル112に巻回される導線として、例えば、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)絶縁皮膜された直径1.0mmワイヤーが用いられているが、ポリエステルエナメルワイヤーなどの導線を適宜用いることができるものとする。ただし、ガス放出量が少ないPTFE絶縁皮膜のワイヤーがより好適である。
【0029】
(アクチュエータの動作)
次に、アクチュエータ1000の内軸110と外軸120の動作について説明する。まず、内軸110のみ回転させるときは、外軸用コイル124へ電力を供給して、発生させた磁界により外軸120の磁石部材117を固定する。その状態で、ブラシ132から内軸用コイル112を励起して内軸110を回転させる。このとき、外軸用コイル124は励起させるコイルを変化させないことで、磁石部材117が回転しないようにするとともに、内軸用コイル112よりも強く磁石部材117を磁気結合させている。従って、外軸用コイル124と磁石部材117との間で、外軸120の位置を保持するサーボロックの状態、すなわち、外軸用コイル124と磁石部材117とは実質的にDCモータ(サーボモータ)を構成した状態となっている。内軸用コイル112に供給する電力の向きを変えることで内軸110を逆回転させることができる。
【0030】
外軸120のみ回転させるときは、外軸用コイル124は励起させるコイルを順次変化させて磁石部材117を回転させる。このとき、内軸110のエンコーダ136からの検出値に応じてブラシ132から内軸用コイル112に電力を供給して、内軸110が磁石部材117の磁界の影響で回転しないようにしている。内軸用コイル112と磁石部材117との間で実質的にDCモータ(サーボモータ)を構成した状態となっている。なお、エンコーダ136の検出値を用いずに、予め設定した電力をブラシ132から供給する構成でもよい。外軸用コイル124に供給する電力の向きを変えることで外軸120を逆回転させることができる。内軸110と外軸120を同時に同一方向に回転(公転動作)させる場合、内軸110のエンコーダ136からの検出値と、外軸120のエンコーダ134からの検出値を同期させながら内軸110と外軸120を回転させる。
【0031】
内軸110の回転速度を変化させるには、ブラシ132から内軸用コイル112への給電を行う。このとき、内軸110は、磁石部材117に対して相対的に変位するため、エンコーダ136の検出値に基づいて回転角度や回転速度を制御する。内軸110を逆方向に回転させるときは、外軸用コイル124は励起させるコイルを順次変化させて磁石部材117を逆回転させるとともに、ブラシ132から内軸用コイル112への給電を行う。このとき、内軸110は、磁石部材117に対して相対的に変位するため、エンコーダ136の検出値に基づいて回転角度や回転速度を制御する。
【0032】
(基板搬送ロボットへの適用)
本発明の実施形態にかかるアクチュエータ1000を基板搬送ロボットの駆動モータ(駆動源)に適用することが可能である。図3(a)は、内部が真空排気可能な搬送室301にベローズ190を介して基板搬送ロボット351を取り付けた構成例を示している。上下動機構337をモータケーシング350に取り付けることで搬送室301に対してモータケーシング350(アクチュエータ1000)の上下方向の位置を操作することができる。図3(b)に示すように基板搬送ロボット351は多関節タイプのロボットであり、基板341を保持して搬送するアーム機構336を備えている。アーム機構336は、基板を載置することが可能な基板保持器336a、2つのアーム336b、336cを有している。アクチュエータ1000の外軸120の回転によりアーム336cを駆動し、内軸110の回転によりアーム336bを駆動することができる。基板保持器336aは、基板341を載置することが可能であり、アーム336bの一端で回転自在に支持されている。アーム336bの他端はアーム336c上で回転自在に支持されている。
【0033】
本発明の実施形態にかかるアクチュエータ1000を基板搬送ロボットに適用し、電子デバイスを製造するための電子デバイスの製造システムを構成することも可能である。電子デバイスとしては、例えば、半導体、液晶ディスプレイ、太陽電池、あるいは光通信機器用デバイス等が含まれる。電子デバイスの製造システムで実行される電子デバイスの製造方法は、アクチュエータ1000を用いた基板搬送ロボットを用いて基板を搬送する搬送工程と、少なくとも一つのプロセス処理装置において、搬送工程で搬送された基板に対して、デバイス製造プロセスを実行するプロセス実行工程とを有する。
【0034】
本実施形態によれば、駆動機構の回転軸方向の長さをコンパクトにしたアクチュエータの提供が可能になる。あるいは、本実施形態によれば、内軸用のマグネットと外軸用のマグネットとを一体とすることで、低コストのアクチュエータの提供が可能になる。
【0035】
(変形例1)
図4の参照により、図1で説明したアクチュエータ1000の構成の変形例1を説明する。例えば、図4に示すように、内軸110は少なくとも一部が円筒部(中空構造)になっている。内軸110には、内軸用コイル112(第2コイル部)へ給電するための給電配線をとおすための配線用穴477が設けられている。内軸用コイル112(第2コイル部)と整流子131とを電気的に接続する給電配線は、内軸110の外周面から円筒部の内部(中空構造の内部)へ連通する配線用穴477をとおり、内軸110の円筒部の内部(中空構造の内部)に配線される。内軸110を回転自在に支持するベアリング600が内軸110の下部に配置される構造の場合、配線用穴477を介して給電配線を内軸110の内側に配線してベアリング600と給電配線との干渉を回避する。内軸110の下端の開口部から再び内軸110の外側に給電配線を出すように引き回し、整流子131に接続されるよう構成することが可能である。本変形例1によれば、ベアリング600と給電配線との干渉を機構部品を追加することなく、効果的に回避することが可能になる。
【0036】
(変形例2)
図5の参照により、図1で説明したアクチュエータ1000の構成の変形例2を説明する。図5に示す構造では、整流子131は内軸110の中空構造の内周面に配置されている。ブラシ132は、内軸110の内部において、内軸110が回転する際に整流子131と摺接可能に配置されている。配線用穴477を介して給電配線は内軸110の内側に配線されており、給電配線と整流子131とが内軸110の内部で接続している。内軸110の下端にはパーティクルカバー555が設けられている。パーティクルカバー555には、ブラシ132と外部の電源(不図示)とを接続する電源配線を通すための開口部556が設けられている。電源配線は開口部556をとおり外部の電源に接続される。本変形例2によれば、ブラシ132と整流子131とを内軸110の内部に配置したことで、ブラシ132と整流子131との摺接により発生した粒子(パーティクル)が真空チャンバ101へ入り込むことを防止することができる。
【符号の説明】
【0037】
101 真空チャンバ
112 内軸用コイル
117 磁石部材
124 外軸用コイル
131 整流子
132 ブラシ
227 永久磁石

【特許請求の範囲】
【請求項1】
中空構造を有し、当該中空構造の内側を真空排気可能に構成され、当該中空構造の外周側で第1コイル部を保持するハウジングと、
前記ハウジングの内部において回転自在に支持され、外周に第2コイル部を有する内軸と、
前記内軸の回転軸と同軸に前記ハウジングの内部において回転自在に支持されており、前記内軸の外周側を囲むように配置されている円筒状の外軸と、
前記外軸の外周側で前記第1コイル部に対向し、前記外軸の内周側で前記第2コイル部に対向する磁石と、
前記内軸と前記ハウジングの一方に設けられた整流子と、
前記内軸と前記ハウジングの他方に設けられ、前記内軸が少なくとも回転する際には前記整流子と摺接するブラシと、を備え、
前記第2コイル部は、前記整流子と前記ブラシを介して給電されることを特徴とするアクチュエータ。
【請求項2】
前記内軸は、少なくとも一部が中空構造を有し、
前記第2コイル部に電気的に接続された給電配線は、前記内軸の外周面から前記中空構造の内部へ連通する配線用穴をとおり、前記内軸の前記中空構造の内部を通って配線されることを特徴とする請求項1に記載のアクチュエータ。
【請求項3】
前記整流子は、前記内軸の前記中空構造の内周面に配置されており、
前記ブラシは、前記内軸の前記中空構造の内部において、前記内周面に配置された前記整流子と摺接することを特徴とする請求項2に記載のアクチュエータ。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか1項に記載されたアクチュエータを備えることを特徴とする基板搬送ロボット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−23940(P2012−23940A)
【公開日】平成24年2月2日(2012.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−162193(P2010−162193)
【出願日】平成22年7月16日(2010.7.16)
【出願人】(000227294)キヤノンアネルバ株式会社 (564)
【Fターム(参考)】