説明

アクチュエータ装置

【課題】コストの低減と検出対象部材の位置検出精度の確保を図るアクチュエータ装置を提供する。
【解決手段】アクチュエータ装置1は、ケース2内に設けられるモータ3が発生する回転力を出力する第1減速ギア4とドアに連結される第2減速ギア5とを噛み合わせて第2減速ギア5の回転を減速してドアを駆動し、センサ6によって第2減速ギア5の回転角度を検出する。第2減速ギア5は、回転動作を通じて第2減速ギア5に対する位置ずれを生じないで第2減速ギア5と一体に回転するように突出する軸部51を備える。センサ6は、モータ3が設けられる同一のケース2内に収容されるとともに、軸部51に結合されて一体に回転する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転部材の位置を検出するためのセンサ部を備えたアクチュエータ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のアクチュエータ装置として、回転する部材の位置を検出するためのセンサを有する特許文献1に記載の装置が知られている。この従来のアクチュエータ装置は、直流モータからの出力をアクチュエータ装置の複数のギア(第1減速ギア、第2減速ギア、第3減速ギア)によって多段階的に減速することにより、出力軸に連結された駆動用リンク部材を介してドア等の駆動対象部材を駆動する。特許文献1のアクチュエータ装置では、4個のギアを組み合わせて3段の減速を実施している。
【0003】
また、当該アクチュエータ装置が備えるセンサは、複数のギアの一つである第3減速ギアの下軸が圧入されることにより、第3減速ギアと一体に回転し、第3減速ギアの回転角度を検出する。また、特許文献1には明示されていないが、当該下軸とは反対側に延びる第3減速ギアの出力軸には、駆動対象部材を連動させるために駆動対象部材に連結される駆動用リンク部材が結合される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004‐166320号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1のアクチュエータ装置によれば、複数のギアによる多段減速構造により、トルクの確保とギアの小型化の両立を図ろうとしているが、一方で装置を構成する部品点数が多くなり、構成の簡単化を阻害することになる。これに対し、ギアの個数を単に減らした場合には、減速比を確保するためにギア自体の大型化が必要になり、装置全体が大型化することもある。
【0006】
さらに、上記の第3減速ギアの出力軸と当該駆動用リンク部材との結合構造によっては、出力軸の回転と駆動用リンク部材の動作とが正確に連動せず、両者の動作にわずかなずれが起こり、駆動用リンク部材の位置検出に誤差が生じてしまうという問題がある。このような場合には、センサによる駆動対象部材の位置検出精度を確保できないことになる。
【0007】
さらにこのような問題を回避するために、駆動用リンク部材に直接センサを取り付ける構造とすれば、駆動対象部材の位置検出精度を確保し得る。しかしながら、当該構造では、通常、駆動用リンク部材はギアを駆動する直流モータとは離れた位置にあるため、電源の供給が必要なモータと検出信号の送信が必要なセンサとが離れることになる。したがって、センサの信号送信用配線を取り回す煩雑さやその結線に要するコストが問題になる。
【0008】
そこで本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、コストの低減と検出対象部材の位置検出精度の確保を図るアクチュエータ装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために以下の技術的手段を採用する。すなわち、請求項1は、ケース(2)内に設けられる駆動用モータ(3)が発生する回転力を出力する第1の回転部材(4)と、駆動対象である駆動対象部材(103,105,107)を連動させる第2の回転部材(5)と、を第1の回転部材の回転を減速可能に連動させて駆動対象部材を駆動し、センサ(6)によって第2の回転部材の回転角度を検出するアクチュエータ装置に係る発明であって、
第2の回転部材は、回転動作を通じて第2の回転部材に対する位置ずれを生じないで第2の回転部材と一体に回転するように突出する軸部(51)を備え、センサは、駆動用モータが設けられる同一のケース内に収容されるとともに、軸部に結合されて一体に回転することを特徴とする。
【0010】
回転角度が検出される軸部と第2の回転部材との結合構造が、例えば相対回転を防止するための嵌めあい等で構成されている場合には、軸部と第2の回転部材側の軸部が嵌まる凹部との間で寸法誤差が生じることは否めず、この誤差が起因して第2の回転部材の回転し始めに両者間で回転位置のずれが生じることがある。そこで上記発明によれば、第2の回転部材から突出する軸部が、第2の回転部材の回転動作において第2の回転部材と位置ずれを生じないで第2の回転部材と一体に回転する構成であることにより、第2の回転部材と軸部は回転時に両者の相対位置が変化せず、第2の回転部材の回転角度はそのまま軸部の回転角度と同一になる。さらに、軸部と一体に回転するように結合されるセンサで検出される軸部の回転角度は第2の回転部材の回転角度と等しくなる。またさらに、このような位置検出精度を確保できるセンサは、駆動用モータが設けられる同一のケース内に収容されることにより、電源の供給が必要なモータと検出信号の送信が必要なセンサとを近接させることができるので、電源供給用の配線や信号送信用の配線に係る構成の煩雑化を回避できる。したがって、装置コストの低減と回転部材の位置検出精度の確保とが図れるアクチュエータ装置を提供できる。
【0011】
請求項2に記載の発明によると、駆動用モータは、ケース内において、第2の回転部材に対して軸方向外側であって、第2の回転部材の外周部に噛み合って連動する第1の回転部材とセンサとの間に配置されていることを特徴とする。
【0012】
この発明によれば、第1の回転部材は第2の回転部材の外周部に噛み合って連動するため、第2の回転部材の回転中心に位置するセンサと第1の回転部材との間には第2の回転部材の半径相当の距離が生じる。そして駆動用モータを、第2の回転部材に対して軸方向外側であってケース内で第1の回転部材とセンサとの間に配置することにより、駆動用モータは当該距離分のスペースに配置され、比較的大きな第2の回転部材の軸方向外部におけるケース内部のスペースを有効活用することができる。したがって、ケース内部における第2の回転部材の半径方向長さを有効活用した各部品の配置が得られるとともに、当該半径方向に直交する方向のケース幅寸法を抑えることにも貢献でき、ケースの小型化に伴うアクチュエータ装置の小型化が図れる。
【0013】
請求項3に記載の発明は、請求項2に記載の発明において、駆動用モータは電源が入力される給電端子部(32,33)を備え、駆動用モータは、ケース内において、給電端子部がセンサ側に位置する姿勢で配置されていることを特徴とする。この発明によれば、ケース内の駆動用モータは、給電端子部がセンサ側に位置する姿勢で配置されることにより、駆動用モータへの電源用配線、センサへの電源用配線や信号用配線を束ねるコネクタ等の電気接続部をコスト及び設置スペースに関して効率的に配置することができる。
【0014】
請求項4に記載の発明は、請求項3に記載の発明において、ケースは、駆動用モータ及びセンサに電源を入力するとともにセンサによる検出信号を取得するために、駆動用モータ及びセンサに配線部(34,35,61,62)によって接続されるコネクタ部(7)を備え、駆動用モータは、ケース内において給電端子部がコネクタ部側に位置する姿勢で配置されていることを特徴とする。
【0015】
この発明によれば、ケース内の駆動用モータは、給電端子部がコネクタ部側になる姿勢で配置されることにより、駆動用モータに対してコネクタ部を効率的に配置することができるので、駆動用モータ及びセンサからコネクタ部に至る配線の一層の短縮化が図れる。
【0016】
請求項5に記載の発明は、請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の発明において、第1の回転部材及び第2の回転部材は、互いに噛み合う一組の歯車構造(42,54)を構成することを特徴とする。この発明によれば、駆動用モータが発生する回転力を減速に必要な回数を抑えて駆動対象部材に出力することができる。したがって、ギア個数の低減と第2の回転部材の位置検出精度の確保とにより、製品性に優れたアクチュエータ装置を提供できる。
【0017】
請求項6に記載の発明は、請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の発明において、第2の回転部材は、駆動対象部材を連動させるために、軸部と一体に回転する連動用歯車部(55)またはカム溝(52,53)をさらに備えることを特徴とする。この発明によれば、駆動対象部材を第2の回転部材に連動させるための構成を第2の回転部材に形成して複雑でない構成を採用できるので、部品点数の低減が図れ、生産性に優れたアクチュエータ装置を提供できる。
【0018】
なお、上記各手段の括弧内の符号は、後述する実施形態の具体的手段との対応関係を示す一例である。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】第1実施形態のアクチュエータ装置の構成を示す概略図である。
【図2】アクチュエータ装置において、センサと結合する軸部と第2減速ギアとの結合構造を断面で示した側断面図である。
【図3】センサと結合する軸部と第2減速ギアとの結合構造について他の形態を示した側断面図である。
【図4】アクチュエータ装置を使用する吹出口開閉ドアを備えるエアコンユニットの空気通路を示す概略図である。
【図5】第2実施形態のアクチュエータ装置の構成を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下に、図面を参照しながら本発明を実施するための複数の形態を説明する。各形態において先行する形態で説明した事項に対応する部分には同一の参照符号を付して重複する説明を省略する場合がある。各形態において構成の一部のみを説明している場合は、構成の他の部分については先行して説明した他の形態を適用することができる。
【0021】
(第1実施形態)
第1実施形態のアクチュエータ装置1について図面を参照して説明する。図1は、第1実施形態のアクチュエータ装置1の構成を示す概略図であり、理解を容易にするため、ケース2を構成する蓋部を取り外してケース2内部が視認可能な状態を示している。図2は、アクチュエータ装置1において、センサ6と結合する軸部51と第2減速ギア5との結合構造を断面で示した側断面図である。
【0022】
アクチュエータ装置1は、駆動対象とされる部材(以下、駆動対象部材ともいう)についての位置決め制御(停止位置制御)を必要とする多種の装置に広く適用することができる。アクチュエータ装置1は、例えば、車両用エアコン、家庭用エアコン、業務用エアコン等の空調装置、空気清浄機等に用いられる各種ドアや、ドア等の駆動対象部材に直接又は間接的に連結されるリンク部材を駆動する装置である。
【0023】
アクチュエータ装置1は、駆動対象部材を駆動するための回転力を出力する駆動用モータとしてのモータ3、ウォーム31、第1の回転部材としての第1減速ギア4、第2の回転部材としての第2減速ギア5、第2減速ギア5の回転角度を検出するセンサ6、及びコネクタ部7を備えている。
【0024】
モータ3は、モータヨークによって覆われる有底円筒状の直流モータである。モータヨークの軸方向に垂直な端面の中心部からはモータ3の出力軸が軸方向に突出している。モータヨークは、ケース2の内壁から突出するように形成されたモータ支持部21によって位置決め及び支持されて、さらに所定の位置に固定されている。モータ3の出力軸には、ウォーム31が当該出力軸と一体に回転するように取り付けられている。ウォーム31は、第1減速ギア4の入力側歯車部41と噛み合うことにより第1減速ギア4に歯合されている。
【0025】
第1減速ギア4は、ウォーム31と噛み合う入力側歯車部41と、入力側歯車部41とは同軸であって軸方向の反対側に突出する出力側歯車部42とを備える。入力側歯車部41及び出力側歯車部42の軸は、第1減速ギア用軸受(図示せず)によって回転可能に支持されている。出力側歯車部42は、その歯数が入力側歯車部41の備える歯数よりも少なくなるように形成されている。第1減速ギア4は、このような出力側歯車部42によって第2減速ギア5と歯合されている。
【0026】
第2減速ギア5は、大径の円盤状部の外周に形成される歯車部であって、第1減速ギア4の出力側歯車部42と噛み合って第1減速ギア4の回転出力が入力される入力側歯車部54と、入力側歯車部54とは同軸であって軸方向の反対側に突出する、入力側歯車部54よりも小径の円盤状部の外周に形成される出力側歯車部55とを備える。入力側歯車部54は、第1減速ギア4の出力側歯車部42とで一組の歯車構造をなし、その歯数が第1減速ギア4の出力側歯車部42の備える歯数よりも多くなるように形成されている。出力側歯車部55は、その歯数が入力側歯車部54の備える歯数よりも少なくなるように形成されている。以上によれば、モータ3が発生する回転力を減速に必要な回数を抑えて減速可能に構成し、ドア等の駆動対象部材に適切に出力することができる。また、入力側歯車部54及び出力側歯車部55の軸部51は、第2減速ギア用軸受(図示せず)によって回転可能に支持されている。
【0027】
出力側歯車部55は、駆動対象部材を第2減速ギア5の回転に連動させるために、軸部51と一体に回転する連動用歯車部であり、駆動対象部材と連結するために設けられる歯車部(図示せず)と歯合するようになっている。また、第2減速ギア5には、入力側歯車部54が形成されている円盤状部における第1減速ギア4とは反対側の面にカム溝52,53を形成するようにしてもよい。このカム溝52,53には、駆動対象部材に連結されるリンク部材(図示せず)が連結されるようになっている。このように駆動対象部材が直接的または間接的に出力側歯車部55またはカム溝52,53に連結されることにより、モータ3が発生する回転力が、ウォーム31、第1減速ギア4、第2減速ギア5に順に伝達されて、駆動対象部材を駆動することができるのである。以上の出力側歯車部55またはカム溝52,53によれば、駆動対象部材を第2減速ギア5に連動させるための構成を第2減速ギア5に直接形成することにより、複雑でない連動構造を実現できるので、部品点数の低減を図り生産性に優れたアクチュエータ装置1を実現できる。
【0028】
軸部51は、図2に示すように、回転動作を通じて第2減速ギア5に対する位置ずれを生じることなく第2減速ギア5と一体に回転するように、入力側歯車部54が形成される円盤状部の中心軸からケース2側に突出するシャフトである。図2に示すように、軸部51と当該円盤状部は、例えば、一体ものの一部材で構成されており、両者は例えば嵌め合いや係合等の取付け工程を経て一体になるものではない。
【0029】
また図3に示すように、軸部51Aは、入力側歯車部54が形成される円盤状部に設けられた圧入孔に圧入されて確実に固定される構成であってもよい。この構成により、軸部51Aは第2減速ギア5Aの回転動作において第2減速ギア5Aと異なる挙動をすることないのである。図3はセンサ6と結合する軸部51Aと第2減速ギア5Aとの結合構造についての他の形態を示した側断面図である。このようにいずれの形態であっても、軸部51,51Aは第2減速ギア5,5Aの回転の際に、互いの相対回転角度がゼロで変化することなく、常に第2減速ギア5,5Aと一体になって回転する。
【0030】
図2に示すように、第2減速ギア5、軸部51、第1減速ギア4の出力側歯車部42等は、ケース2の外部に露出しており、モータ3、ウォーム31、第1減速ギア4の入力側歯車部41、センサ6、コネクタ部7等は、ケース2の内部に配置されている。ケース2は、複数のケース部材を組み合わせることで形成されており、例えば複数のケース部材はポリプロピレン等の樹脂成形品で形成されている。複数のケース部材は、金属ばね、ねじ等の締結手段によって一体的に結合されてケース2を構成している。
【0031】
図1に示すように、センサ6は、モータ3、第1減速ギア4の入力側歯車部41、及びコネクタ部7が設けられる同一のケース2内に収容され、入力側歯車部54が形成される第2減速ギア5の円盤状部(以下、単に第1の円盤状部ともいう)の中心軸の延長上に位置して軸部51に結合されて、第2減速ギア5と一体に回転する。センサ6は、例えば、軸部51が圧入される圧入孔を有し、この圧入孔に軸部51が固定されることにより、軸部51と一体に回転可能になる。センサ6は、例えば内部に可変抵抗を備えるポテンショメータ、ディジタル型センサであるロータリエンコーダ等を用いることができ、第2減速ギア5の回転角度を検出する。
【0032】
ケース2の内部では、センサ6が第1の円盤状部の中心軸の外部延長上に位置している。さらにコネクタ部7がケース2の内部であって、センサ6に対して半径方向の側方に位置し、第1減速ギア4の入力側歯車部41がセンサ6に対してコネクタ部7の位置する方向とは直交する方向にある第1の円盤状部の外周部に位置している。さらにモータ3は、ケース2の内部において第1減速ギア4の入力側歯車部41とセンサ6との間に位置している。そして、モータ3に設けられ電源が入力される給電端子部32,33は、ケース2の内部において、センサ6側(第1の円盤状部の中心軸側)に向けて配置されている。さらに給電端子部32,33は、コネクタ部7側に向けて配置されている。
【0033】
また、図2に示すように、ケース2は、第2減速ギア5の軸方向についての高さがモータ3の高さに応じて可能な限り低くなるように設定されており、センサ6、コネクタ部7及び第1減速ギア4の入力側歯車部41の高さは、ケース2内においてモータ3の高さ以下に納まるように配置されている。
【0034】
コネクタ部7は、モータ3及びセンサ6に電源を入力するとともにセンサ6による検出信号を取得するために、モータ3及びセンサ6にリード線等からなる配線部34,35,61,62を介して接続される接続部材である。コネクタ部7は、複数のコネクタピン71,72,73及びハウジング74を備えている。ハウジング74は、コネクタピン71〜73を支持するとともに、外部からの接続端子の装着を可能とする開口部を有する略箱形状の樹脂部材である。ハウジング74の内部には、所定位置からコネクタ端子としての5個のコネクタピン71〜73が当該開口部に向けて突出するように設けられている。したがって、ハウジング74は、当該開口部がケース2における第2減速ギア5の軸方向に延びる側面の一部をなすようにケース2に一体に設けられるため、外部からの接続端子は第2減速ギア5の第1の円盤状部表面に沿うように装着可能である。
【0035】
コネクタピン71は、センサ6の給電部に配線部61によって接続されており、コネクタピン72は、センサ6の信号検出部に配線部62によって接続されている。コネクタピン73は、モータ3の給電端子部32,33にそれぞれ配線部34,35によって接続されている。
【0036】
アクチュエータ装置1は、図4に示す車両用空調装置に適用することができる。車両用空調装置の空調ユニット101の内部には、空調風が流通する通路が形成されており、当該通路の下流側にデフロスタ吹出口102、フェイス吹出口104、フット吹出口106が設けられている。デフロスタ吹出口102は、例えば、車両前方側の上部に位置し、フロントウィンドウガラス等の車室内側面に沿うように空調風を吹き出してフロントウィンドウガラス等の曇り度合いを低減する開口部であり、この開口部はデフロスタ吹出口開閉ドア103によって開放、閉鎖される。フェイス吹出口104は、例えば、デフロスタ吹出口102よりも車両後方側に位置し、乗員の上半身に向けて空調風を吹き出す開口部で主に冷房時に使用され、この開口部はフェイス吹出口開閉ドア105によって開放、閉鎖される。フット吹出口106は、例えば、車両後方側で、デフロスタ吹出口102及びフェイス吹出口104よりも下方に位置し、乗員の足元へ空調風を吹き出すための開口で主に暖房時に使用され、この開口部はフット吹出口開閉ドア107によって開放、閉鎖される。各吹出口開閉ドアの作動は、エアコン制御装置100による、センサ6の検出信号の受信、モータ3及びセンサ6の作動制御によって調節される。
【0037】
本実施形態のアクチュエータ装置1がもたらす作用効果について以下に述べる。上記従来のアクチュエータ装置では、回転角度が検出される軸部と検出対象の回転部材との結合構造が、単に嵌め合い等で構成されている場合には、軸部と軸部が嵌まる回転部材側の凹部との間で、各部の寸法誤差によって回転部材の回転当初に回転部材と軸部との間に回転位置のずれが起こりうる。このような場合には、軸部の回転角度を直接検出しても、正確な回転部材の回転角度を検出することができない。
【0038】
そこで、アクチュエータ装置1は、ケース2内に設けられるモータ3が発生する回転力を出力する第1減速ギア4とドアに連結される第2減速ギア5とを噛み合わせて第2減速ギア5の回転を減速してドアを駆動し、センサ6によって第2減速ギア5の回転角度を検出する。第2減速ギア5は、回転動作を通じて第2減速ギア5に対する位置ずれを生じないで第2減速ギア5と一体に回転するように突出する軸部51を備える。センサ6は、モータ3が設けられる同一のケース2内に収容されるとともに、軸部51に結合されて一体に回転する。
【0039】
この構成によれば、軸部51は、回転動作において軸部51と第2減速ギア5との間に周方向の位置ずれが生じないで第2減速ギア5と一体に回転することにより、第2減速ギア5と軸部51は回転時に両者の回転角度が相対変化せず、第2減速ギア5の回転角度はそのまま軸部51の回転角度と同一になる。よって、センサ6が検出する軸部51の回転角度は第2減速ギア5の回転角度と正確に一致することになる。したがって、従来品に比べて減速に係るギア数の低減を実現できることに加え、回転部材の適正な位置検出精度が得られるアクチュエータ装置1を提供できる。
【0040】
さらに、このような位置検出精度を確保できるセンサ6は、モータ3が設けられる同一のケース2内に収容されることにより、電源の供給が必要なモータ3と検出信号の送信が必要なセンサ6とを近接させることが可能になるため、電源供給用の配線や信号送信用の配線に係る構成の煩雑化が回避でき、ケース2内部の構造の簡単化が図れる。したがって、アクチュエータ装置1は配線等の部品の低コスト化及び低工数化とケース2の小型化を提供できる。
【0041】
また、モータ3は、ケース2内において第2減速ギア5の入力側歯車部54と噛み合って連動する第1減速ギア4の入力側歯車部41とセンサ6との間に配置されている。この構成によれば、第1減速ギア4の出力側歯車部42は第2減速ギア5の外周部に設けられる入力側歯車部54に噛み合って連動するため、第2減速ギア5の回転中心に位置するセンサ6と第1減速ギア4との間には入力側歯車部54の半径相当の距離が生じる。そしてモータ3は、第2減速ギア5に対して軸方向外側であってケース2内で第1減速ギア4とセンサ6との間に配置されるため、モータ3は当該半径相当の距離分のスペースに配置されて、比較的大きな第2減速ギア5の軸方向外部に形成できるケース2内部のスペースを有効に活用する構造が得られる。したがって、ケース2内部における各部品の配置は、第2減速ギア5の半径方向長さを有効活用したものになるとともに、当該半径方向に直交する方向のケース幅寸法を抑えることにも貢献できる。
【0042】
また、モータ3は、ケース2内部において給電端子部32,33がセンサ6側に位置する姿勢で配置されている。この構成によれば、モータ3に接続する電源用配線、センサ6に接続する電源用配線及び信号用配線を束ねるコネクタ部7を、各配線が短くなるように、またはケース2の小型化が図れるように、効果的な場所に配することが可能になる。
【0043】
また、モータ3は、ケース2の内部において給電端子部32,33がコネクタ部7側に位置する姿勢で配置されている。この構成によれば、ケース2内のモータ3に対してコネクタ部7を、モータ3及びセンサ6からコネクタ部7に至る各配線の短縮化が図れるように、効果的な場所に配することが可能になる。
【0044】
また、センサ6とコネクタ部7は、ケース2内部において隣接するように配置されていることにより、コネクタ部7は第2減速ギア5の中心軸の延長上に近い位置に設けられている。このため、ケース2内部のスペースにおいてコネクタ部7側(第2減速ギア5の中心軸側)の幅(図1の寸法L1)を短くすることができ、ケース2の容積の低減が図れ、アクチュエータ装置1の搭載スペースが低減できる。
【0045】
(第2実施形態)
第2実施形態では、第1実施形態のアクチュエータ装置1に対して、ケース内部に収容される部品の位置関係が異なるアクチュエータ装置1Aについて図5を参照して説明する。第2実施形態は、以下の説明を除く他の構成については、第1実施形態と同様であり、同様の作用効果を発揮するものである。図5はアクチュエータ装置1Aの構成を示す概略図である。
【0046】
図5に示すように、アクチュエータ装置1Aが有するモータ3は、ケース2Aの内部において、給電端子部32,33がセンサ6よりもコネクタ部7寄りに向くように回転軸31aが傾斜する姿勢で配置されている。換言すれば、モータ3の外殻における給電端子部32,33が設けられている面はセンサ6よりもコネクタ部7により対向するように、モータ3がケース2A内部に設置されている。このため、給電端子部32,33は第1実施形態のアクチュエータ装置1の場合に比べて、コネクタ部7に対してより近づけて配置することができる。モータ3のモータヨークは、ケース2Aの内壁から突出するように形成されたモータ支持部21Aによって位置決め及び支持されて、上記の姿勢となるように所定の位置に固定されている。
【0047】
このような構成により、アクチュエータ装置1Aによれば、第1実施形態のアクチュエータ装置1の場合に比べて、ウォーム31と入力側歯車部41の噛み合い部位が第2減速ギア5の回転軸寄りに位置し、モータ3のモータヨークが第1減速ギア4側に傾いて設置されるため、ケース2A内部のスペースにおいて入力側歯車部41側の幅(図5の寸法L2)を短くすることができる。したがって、ケース2Aの容積の低減が図れ、アクチュエータ装置1Aの搭載スペースが低減できる。
【0048】
(他の実施形態)
以上、本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明は上述した実施形態に何ら制限されることなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲において種々変形して実施することが可能である。
【0049】
上記実施形態においては、単一のドア等の駆動対象部材を駆動、制御するための一つのユニットである、モータ3、センサ6、減速機構、コネクタ部7が説明されている。しかしながら、ケース2内に搭載されるユニットは、単一のドア等の駆動対象部材を駆動、制御するものに限定されない。例えば、複数の駆動対象部材を駆動、制御する機能を単一のケース2内に搭載するようにしてもよい。例えば車両用空調装置の場合、複数の駆動対象部材である吹出口開閉ドア、エアミックスドア、内外気切替ドア等を駆動、制御する機能を実現する各種部品を単一のケース2内に収容することができる。
【0050】
このような具体的構成を採用しても、本願発明は、従来技術品に比べて減速ギアの個数を低減しても減速比の確保のために第2減速ギア5の円盤状部の体格を大きくしているので、この第2減速ギア5の円盤状部についての軸方向外側のスペースをアクチュエータの構成部品の搭載場所として有効利用することができる。これにより、第2減速ギア5が従来技術品に比べて大きくなっても装置全体の体格を抑えることができる。
【符号の説明】
【0051】
1…アクチュエータ装置
2…ケース
3…モータ(駆動用モータ)
4…第1減速ギア(第1の回転部材)
5…第2減速ギア(第2の回転部材)
6…センサ
7…コネクタ部
32,33…給電端子部
34,35,61,62…配線部
42…出力側歯車部(一組の歯車構造)
52,53…カム溝
54…入力側歯車部(一組の歯車構造)
55…出力側歯車部(連動用歯車部)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケース(2)内に設けられる駆動用モータ(3)が発生する回転力を出力する第1の回転部材(4)と、駆動対象である駆動対象部材(103,105,107)を連動させる第2の回転部材(5)と、を前記第1の回転部材の回転を減速可能に連動させて前記駆動対象部材を駆動し、センサ(6)によって前記第2の回転部材の回転角度を検出するアクチュエータ装置であって、
前記第2の回転部材は、回転動作を通じて前記第2の回転部材に対する位置ずれを生じないで前記第2の回転部材と一体に回転するように突出する軸部(51)を備え、
前記センサは、前記駆動用モータが設けられる同一の前記ケース内に収容されるとともに、前記軸部に結合されて一体に回転することを特徴とするアクチュエータ装置。
【請求項2】
前記駆動用モータは、前記ケース内において、前記第2の回転部材に対して軸方向外側であって、前記第2の回転部材の外周部に噛み合って連動する前記第1の回転部材と前記センサとの間に配置されていることを特徴とする請求項1に記載のアクチュエータ装置。
【請求項3】
前記駆動用モータは電源が入力される給電端子部(32,33)を備え、
前記駆動用モータは、前記ケース内において前記給電端子部が前記センサ側に位置する姿勢で配置されていることを特徴とする請求項2に記載のアクチュエータ装置。
【請求項4】
前記ケースは、前記駆動用モータ及び前記センサに電源を入力するとともに前記センサによる検出信号を取得するために、前記駆動用モータ及び前記センサに配線部(34,35,61,62)によって接続されるコネクタ部(7)を備え、
前記駆動用モータは、前記ケース内において前記給電端子部が前記コネクタ部側に位置する姿勢で配置されていることを特徴とする請求項3に記載のアクチュエータ装置。
【請求項5】
前記第1の回転部材及び前記第2の回転部材は、互いに噛み合う一組の歯車構造(41,54)を構成することを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか一項に記載のアクチュエータ装置。
【請求項6】
前記第2の回転部材は、前記駆動対象部材を連動させるために、前記軸部と一体に回転する連動用歯車部(55)またはカム溝(52,53)をさらに備えることを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか一項に記載のアクチュエータ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−142755(P2011−142755A)
【公開日】平成23年7月21日(2011.7.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−2343(P2010−2343)
【出願日】平成22年1月7日(2010.1.7)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】