説明

アクティブレーダオーギュメンテーション

【課題】 対象目標の電波反射断面積(RCS)は誘導弾や地上装置のレーダとの相対位置関係によって変化するが、従来はRCSを一定としてレーダ評価試験を行うのみであり、このため実目標(航空機、誘導弾等)を実際に飛行させないと、実目標の模擬を行うことができなかった。
【解決手段】 アクティブレーダオーギュメンテーションが備える受信機は、誘導弾との相対位置関係(Az、El)および周波数を計算する計算機、対象目標(航空機、誘導弾等)に応じたRCSモデルのデータベースを備える。これにより実目標(航空機、誘導弾等)を実際に飛行させることなく、実目標の模擬が可能とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、標的機や、曳航式の欺瞞装置等に搭載されるアクティブレーダオーギュメンテーションに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、無人機に搭載されるアクティブレーダオーギュメンテーションにおいて、受信レベルが大きい場合に電波の送出レベルを制限して異常発振を防止すると共に、出力レベルを制限したことを地上へ伝達するアクティブレーダオーギュメンテーションが開示されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
【特許文献1】特開平11−64484号公報(第3図)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来のアクティブレーダオーギュメンテーションは、誘導弾等の飛しょう体から送信された電波を受信機で受信した後、一定のゲインで増幅し、到来方向に送信アンテナにより送出するのみの構造であった。このように従来のアクティブレーダオーギュメンテーションは、飛しょう体から送信された電波を一定の割合で増幅させ、一定の反射断面積(RCS;Rader Cross Section。以下、単にRCSという)とすることを目的とするものであった。
しかしながら対象目標のRCSは、本来、誘導弾との相対位置関係によって変化するものである。従来のアクティブレーダオーギュメンテーションは一定のRCSを有する対象目標に向けてこの誘導弾を誘導する誘導模擬試験しかできないという課題があった。
このため、航空機などの実目標を実際に飛行させない限り、精度の高い実目標の模擬試験は不可能であり、誘導模擬試験に多大なコストを要していた。
【0005】
この発明は係る課題を解決するためになされたもので、実目標を実際に飛行させなくても、任意のRCSで、精度の高い誘導模擬試験を可能とするアクティブレーダオーギュメンテーションを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明に係るアクティブレーダオーギュメンテーションは、飛しょう体が放射する電波を受信する受信機と、前記電波に基づき、前記飛しょう体との相対位置関係と当該電波の周波数を算出する計算機と、前記相対位置関係と、前記周波数と、前記飛しょう体が模擬する目標のRCS(Radar Cross Section:反射断面積)とが関連付けされたRCSモデルが格納されたデータベースと、前記計算機から入力する相対位置関係と周波数に基づき、前記相対位置関係と前記周波数とに関連付けされた前記RCSを前記RCSモデルから抽出する処理部と、当該RCSに応じて前記電波を増幅し送信アンテナを介して放射する送信機とを備える。
【発明の効果】
【0007】
この発明によれば、より精密な電波反射特性を模擬した誘導模擬試験が可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
実施の形態1.
以下、図を参照しながら本実施の形態に係るアクティブレーダオーギュメンテーションについて説明する。アクティブレーダオーギュメンテーション1は、模擬標的機や、曳航式の欺瞞装置等に搭載され、誘導弾などの飛しょう体50のレーダ評価試験や誘導模擬試験に用いられる。
図1は実施の形態1のアクティブレーダオーギュメンテーションの構成を説明する図である。
アクティブレーダオーギュメンテーション1は、誘導弾などの飛しょう体50が発する電波を受信する受信アンテナ10と、受信した電波を計算機3とアンプ5に出力する受信機2と、受信電波から電波が到来する方向のエレベーション方向(El)とアジマス方向(Az)と電波の周波数を算出する計算機3と、誘導弾などの飛しょう体50が目標とする標的機等のRCSモデルであって、標的機毎に電波が到来する方向のアジマス方向(Az)とエレベーション方向(El)と到来電波の周波数とその時のRCSとが関連付けられたRCSモデル40を格納したデータベース(DB)7と、データベース7と接続しRCSモデル40から条件にあったRCSを抽出して出力する処理部4と、入力したRCSに応じたゲインを設定し電波を増幅するアンプ5と、計算機3が算出したエレベーション方向(El)とアジマス方向(Az)に送信アンテナ20を向けて増幅後の電波を送信する送信機6と、送信アンテナ20からなる。
【0009】
図2は、本実施の形態のDB7に格納されたRCSモデル40の一例である。
RCSモデル40は、誘導弾などの飛しょう体50が模擬する目標物であり本発明のアクティブレーダオーギュメンテーションが搭載される標的機や曳航式の欺瞞装置の種類毎に作成された対応リストであり、予めシミュレーション等により、飛しょう体50から放射される電波(送信パルス)の周波数と、標的機等が受ける電波の到来方向(アジマス方向(Az)、エレベーション方向(El))と、目標物のRCSとが関連付けされている。また、RCSモデル40には更に、RCSに応じた受信電波の増幅率が登録されている。
このようにRCSモデル40は、標的機等の種類と、標的機が放射する送信パルスの周波数と、標的機等が受ける当該送信パルスの到来方向と、RCSと、当該RCSに応じた増幅率とが関連付けされ、データベース7に保管されている。
【0010】
次に、本実施の形態のアクティブレーダオーギュメンテーションの動作について説明する。
【0011】
図1において、目標となる標的機や曳航式の欺瞞装置等への誘導模擬試験を行う誘導弾50は、この目標に向けて送信パルスを放射する。送信パルスには、誘導弾50が目標とする標的機の種類を表す信号が含まれており、例えばFLIGHT1、FLIGHT2などの識別番号が送信される。
アクティブレーダオーギュメンテーション1の受信機2は、受信アンテナ10を介してこの電波(送信パルス)を受信し、受信電波を計算機3とアンプ5に出力する。計算機3は受信電波から電波周波数、電波の到来方向(アジマス方向(Az)、エレベーション方向(El))、誘導弾50が目標としている標的機の種類の情報を取得し、取得した情報を処理部4に送出する。
【0012】
次いで、処理部4はデータベース7にアクセスし、RCSモデル40の中から誘導弾50が目標としている標的機の種類の情報を引き出し記憶部に格納する。記憶部はデータベース7の中にあってもよいし、処理部4内にあってもよい。
このようにして、まず、処理部4は目標とする標的機に関する情報をRCSモデル40から収集する。
次に、処理部4は電波周波数と電波の到来方向(アジマス方向(Az)、エレベーション方向(El))に基づき、目標とする標的機のRCSモデル40から、RCSとRCSに応じた増幅率を取得する。RCSモデル40に電波の到来方向に一致するデータがなければ補完処理などにより、RCSと増幅率を算出する。
このようにして処理部4は、誘導弾50が模擬する標的機等の種類と、誘導弾50の送信電波周波数と、誘導弾50とアクティブレーダオーギュメンテーション1との相対方位関係に応じたRCSとRCSに応じた増幅率を、RCSモデル40から抽出することができる。
処理部4は取得したRCSとその増幅率をアンプ5に出力する。
【0013】
アンプ5は処理部4からRCSと増幅率のデータを受け取り、当該増幅率のデータをアンプの増幅率に設定する。
また、アンプ5は誘導弾50が放射した電波を受信機2を介して受信する。
アンプ5は、受信機2を介して受信した誘導弾50の放射電波を、設定した増幅率で増幅し送信機6に送出する。
【0014】
送信機6は、計算機3から受けた電波到来方向(アジマス方向(Az)、エレベーション方向(El))に送信アンテナ20を向け、アンプ5で増幅した電波を送信アンテナ20を介して放射する。
【0015】
誘導弾50は、送信アンテナ20から放射された電波を目標からの反射信号として、レーダ評価試験や誘導模擬試験を行う。
【0016】
このように、本実施の形態のアクティブレーダオーギュメンテーションは、標的機等の種類と、標的機が放射する送信パルスの周波数と、標的機等が受ける当該送信パルスの到来方向と、RCSと当該RCSに応じた増幅率とが関連付けされたRCSモデル40を備え、標的機50等が模擬する標的機に応じてRCS及び増幅率を設定し、送信された電波を増幅させ放射する。
【0017】
これにより、誘導弾などの飛しょう体50は任意のRCSで、レーダ評価試験や誘導模擬試験を行うことができる。
【0018】
なお、本実施の形態では、アクティブレーダオーギュメンテーション1を、標的機や、曳航式の欺瞞装置等に搭載することを想定して説明したが、搭載対象はこれらに限られるものではなく、地上設備や海上の艦船等に搭載するものであってもよい。
【0019】
実施の形態2.
実施の形態1では、計算機3が標的機等からの送信パルスの到来方向を算出し、この到来方向に基づきRCSモデル40からRCSと増幅率を求め受信電波の増幅を行っていたが、RCSモデルはこれに限られるものではなく、例えば、標的機等の位置と自らの位置とからRCSと増幅率を求めるようにしてもよい。
【0020】
図3は、実施の形態2におけるアクティブレーダオーギュメンテーションの構成を説明する図である。図3において、本実施の形態のアクティブレーダオーギュメンテーション1は自己位置を求める測位装置21を備え、処理部4は誘導弾50の位置と自己位置とから相対位置関係を求めて、RCSモデル40に基づきRCS及び増幅率を抽出する。
誘導弾50の位置は、誘導弾50が自ら測位して送信する位置データであってもよいし、他のレーダシステムが送信する誘導弾50の位置であってもよい。または、アクティブレーダオーギュメンテーション1が備えるレーダ設備により誘導弾50の位置を算出するようにしてもよい。
【0021】
RCSモデル40は、アクティブレーダオーギュメンテーション1が搭載される標的機や曳航式の欺瞞装置の種類ごとに作成されており、シミュレーション等により、予め飛しょう体50から放射される電波(送信パルス)の周波数と、誘導弾50の位置と、RCSと増幅率とが関連付けされている。標的機や曳航式の欺瞞装置の種類が決まっていれば、RCS40から削除してもよい。
【0022】
このように本実施の形態のRCSモデル40は、誘導弾50の位置情報とRCSと関連付けされており、誘導弾50の位置情報によって、任意のRCSでレーダ評価試験や誘導模擬試験を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】実施の形態1におけるアクティブレーダオーギュメンテーションの構成を説明する図である。
【図2】実施の形態1におけるRCSモデルの一例である。
【図3】実施の形態2におけるアクティブレーダオーギュメンテーションの構成を説明する図である。
【符号の説明】
【0024】
1 アクティブレーダオーギュメンテーション、2 受信機、3 計算機、4 処理部、5 アンプ、6 送信機、7 データベース、10 受信アンテナ、20 送信アンテナ、40 RCSモデル、50 誘導弾(飛しょう体)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
飛しょう体が放射する電波を受信する受信機と、
前記電波に基づき、前記飛しょう体との相対位置関係と当該電波の周波数を算出する計算機と、
前記相対位置関係と、前記周波数と、前記飛しょう体が模擬する目標のRCS(Radar Cross Section:反射断面積)とが関連付けされたRCSモデルが格納されたデータベースと、
前記計算機から入力する相対位置関係と周波数に基づき、前記相対位置関係と前記周波数とに関連付けされた前記RCSを前記RCSモデルから抽出する処理部と、
当該RCSに応じて前記電波を増幅し送信アンテナを介して放射する送信機と、
を備えることを特徴とするアクティブレーダオーギュメンテーション。
【請求項2】
前記データベースは前記飛しょう体が模擬する目標毎に作成されたRCSモデルを備え、
前記処理部は、前記電波に基づき前記飛しょう体が模擬する目標の情報を抽出すると、当該目標用に作成されたRCSモデルを前記データベースから抽出することを特徴とする請求項1記載のアクティブレーダオーギュメンテーション。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−32420(P2010−32420A)
【公開日】平成22年2月12日(2010.2.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−196392(P2008−196392)
【出願日】平成20年7月30日(2008.7.30)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】