説明

アクネ、脂漏性皮膚炎または脂漏過多症の処置におけるCIDEAモジュレータ

本発明は、CIDEAタンパク質の発現または活性を調節する化合物の能力の判定を含む、アクネ、脂漏性皮膚炎または脂漏過多症随伴性皮膚障害の予防的または治療的処置のための候補化合物をスクリーニングするためのインビトロまたはインビボの方法に関し、アクネ、脂漏性皮膚炎または脂漏過多症随伴性皮膚障害を処置するためのこのタンパク質の発現または活性モジュレータの使用にも関する。本発明はまた、これら病態のインビトロ診断またはインビトロ予後診断のための方法にも関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、CIDEAタンパク質を調節する化合物の、アクネ、脂漏性皮膚炎ならびに脂漏過多症随伴性皮膚障害の治療のための、同定および使用に関する。本発明はまた、これら病態のインビトロ(in vitro)診断またはインビトロの予後診断のための方法にも関する。
【背景技術】
【0002】
脂漏過多の脂肪性皮膚は、皮脂の過剰分泌および排出を特徴とする。慣例的に、前額で測定した200μg/cm2を超える皮脂レベルは、脂肪性皮膚の特徴と考えられる。脂肪性皮膚は、しばしば落屑不全、テカリのある顔色、皮膚の粗い肌理に関連する。これらの美的障害に加え、過剰な皮脂は、腐生細菌フローラ(特にニキビ桿菌(P. acnes))の無秩序な発生の支持体として働き、かつ、コメドおよび/またはアクネ性の病変の原因となることがある。
【0003】
この皮脂腺産生の刺激は、アンドロゲンにより誘発される。
【0004】
アクネは、実際には、ホルモン調節下での毛嚢脂腺の濾胞の慢性疾患である。アクネに対するホルモン療法は女性にとって処置の可能性のひとつであり、目的は皮脂腺に対するアンドロゲンの作用を防止することである。この文脈において、エストロゲン、抗アンドロゲン剤または卵巣もしくは副腎によるアンドロゲン産生を低減する薬剤が一般に使用される。アクネの処置に使用される抗アンドロゲン剤には、特に、スピロノラクトン、酢酸シプロテロンおよびフルタミドが含まれる。しかし、これらの薬剤は、潜在的に重度の副作用を示す。したがって、特に男性胎児の女性化のリスクがあるために、妊娠期には絶対に避けなければならない。これらの薬剤は、男性患者においては使用が禁止されている。
【0005】
脂漏性皮膚炎は、脂肪性の黄色っぽい鱗片に覆われた赤色のプラークの形態を示し、多かれ少なかれ掻痒性の、主として脂漏性領域に存在する、一般的な炎症性の皮膚疾患である。
【0006】
したがって、これら疾患に関して、副作用は低減させながら同様な治療的プロフィールを得るために、ステロイドホルモンの作用の下流の伝達物質を同定し、それらを調節するという必要性が存在する。
【0007】
本出願人は、今般、CIDEAタンパク質をコードする遺伝子が、表皮と比較してヒト皮脂腺中で優先的に発現されるということ、およびその発現はヒト皮脂腺細胞の初代培養において、アンドロゲン(R1881、メチルトリエノロンとしても知られている、1nM)およびPPARγリガンド(ロシグリタゾン、100nM)を含む皮脂腺細胞前駆体の分化を促進するカクテルによってインビトロで調節されるということを発見した。
【0008】
本出願人はまた、この同一の標的は、動物薬理学モデルにおいて、ラット皮脂腺に関して存在することをも実証している。
【0009】
このことは、結果として、アクネ、脂漏性皮膚炎または脂漏過多症随伴性皮膚障害、特に、脂肪性皮膚の外観を予防および/または改善するために、CIDEA遺伝子またはその発現産物を標的とすることを提案している。
【0010】
さらに、PPARアゴニストによる処置は、皮脂腺サイズの大幅な減少およびアンドロゲン誘発性脂漏過多症の低減を引き起こすことが知られている(WO2007/093747)。
【0011】
提案された標的は、PPAR受容体の下流であるので、皮脂腺および皮脂排出において観察される作用の原因となるのは、前記標的であるといわれている。
【0012】
したがって、同定された遺伝子は、PPARモジュレータとして最も活性である化合物を同定し、それらを分類し、かつ、それらを選択するために使用することができる。これに基づき、アクネ、脂漏性皮膚炎または脂漏過多症随伴性皮膚障害を処置するためのPPARモジュレータ候補をスクリーニングするためのマーカーとして、CIDEA遺伝子またはCIDEAタンパク質を使用することも、また提案されている。より具体的には、CIDEAの発現もしくは活性またはその遺伝子の発現またはそのプロモーターのうちの少なくとも1つの活性を調節するPPARモジュレータの能力を判定することができる。
【0013】
用語「アクネ」は、アクネのすべての形態、すなわち、特に、尋常性座蒼、コメド性アクネ、多形性アクネ、結節嚢胞性アクネ、凝塊性アクネ、または日光性アクネ、薬物性アクネまたは職業性アクネなどの二次性アクネを意味するよう意図されている。出願人はまた、CIDEAの発現または活性のレベルの検出に基づく、インビトロ、インビボ(in vivo)および臨床的診断または予後診断の方法をも提案している。
【0014】
CIDEA
用語「CIDEA」は、細胞死アクチベータまたはCIDE-Aとしても知られている、細胞死誘導性DFF様エフェクターA(DNA断片化因子)を意味する。
【0015】
CIDEA遺伝子は、ヒトの白色脂肪組織を含む数多くの組織において発現し、アポトーシス活性化タンパク質のファミリーに属する(Inohara他、1998年、EMBO Journal、17(9):2526〜2533頁)。CIDEAは、肥満症の一因である可能性がある(Gummesson他、2007年、J Clin Endocrinol Metab、92(12):4759〜65頁)。肥満細胞においてCIDEAによって仲介される分子メカニズムは依然として比較的知られていないが、CIDEAがDFF45を活性化し、それによって、アポトーシスに帰着するDNA断片化を誘発することは、今日、明確に確立されている(Nordstrom他、2005年、Diabetes, 54:1726〜1734頁)。
【0016】
CIDEA機能を失ったマウスは、代謝率がより高く、褐色脂肪組織における脂肪分解が増大し、低温条件下で高体温である。これらの観察は、マウスにおいて、CIDEAのホモログが熱産生および脂肪産生のプロセスにおいて調節的役割を果たしており、したがって肥満症および糖尿病に関与しているであろうことを示唆している(Zhou他、2003年、Nat Genet、35:49〜56頁)。
【0017】
本発明の文脈において、用語「CIDEA遺伝子」または「CIDEA核酸」は、CIDEAタンパク質をコードする遺伝子または核酸配列を意味する。対象とされる標的は、好ましくはヒト遺伝子またはその発現産物であるが、その一方で本発明はまた、タンパク質をコードする外来性の核酸のゲノムへの組込みまたは一過性発現によって、異種の細胞死誘導性DFF様エフェクターAを発現する細胞をもまた対象としてよい。
【0018】
CIDEAの2つの異なるアイソフォームをコードするCIDEA遺伝子の2つのオルターナティブトランスクリプトが存在する。CIDEAのヒトcDNA配列は、添付書類に再現する(配列番号1および配列番号2)。これらはそれぞれ、1099塩基対を含むオープンリーディングフレームである配列NM 001279 (Genbank)、および1324の塩基対を含むオープンリーディングフレームである配列NM 198289 (Genbank)である。
【0019】
用語「CIDEA」には、これら2つのアイソフォームが含まれる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0020】
【特許文献1】WO2007/093747
【非特許文献】
【0021】
【非特許文献1】Inohara他、1998年、EMBO Journal、17(9):2526〜2533頁
【非特許文献2】Gummesson他、2007年、J Clin Endocrinol Metab、92(12):4759〜65頁
【非特許文献3】Nordstrom他、2005年、Diabetes, 54:1726〜1734頁
【非特許文献4】Zhou他、2003年、Nat Genet、35:49〜56頁
【非特許文献5】KohlerおよびMilstein(Nature (London)、256: 495〜497頁(1975年))
【非特許文献6】Jayasena、1999年、Clinical Chemistry 45(9): 1628〜1650頁
【非特許文献7】Christian他、2005年、Mol Cell Biol、25(21):9383〜91頁
【非特許文献8】Xia他、J Invest Dermatol. 1989年9月、93(3):315〜21頁
【非特許文献9】Rosenfield他、J. Invest. Dermatol. 1999年、112:226〜32頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0022】
診断的応用
本発明の主題は、コントロール個体からの生物学的試料に対する個体からの生物学的試料におけるCIDEAタンパク質の発現もしくは活性、その遺伝子の発現またはそのプロモーターのうちの少なくとも1つの活性の比較を含む、個体におけるアクネ性病変、脂漏性皮膚炎または脂漏過多症随伴性皮膚障害の発現を診断またはモニターするためのインビトロの方法である。
【0023】
タンパク質発現は、ウエスタンブロッティング、免疫組織化学、マススペクトル解析(Maldi-TOFおよびLC/MS解析)、ラジオイムノアッセイ(RIA)およびELISAまたは当業者に既知の他の方法のいずれかなどの方法のうちの1つに従ってCIDEAタンパク質を定量することによって判定することができる。特にCIDEA遺伝子の発現を測定するためのもう1つの方法は、前記に記述したいずれかの方法によって、対応するmRNAの量を測定することである。CIDEA活性を定量することもまた想定することができる。
【課題を解決するための手段】
【0024】
診断の文脈において、「コントロール」個体は、「健康な」個体である。
【0025】
アクネ性病変、脂漏性皮膚炎または脂漏過多症随伴性皮膚障害の発現をモニターすることの文脈において、「コントロール個体」は、好ましくは処置の開始時(T0)に相当する異なる時点における、同一の個体をいう。このCIDEAの発現もしくは活性またはその遺伝子の発現またはそのプロモーターのうちの少なくとも1つの活性の差の測定は、処置、特に上記に想定されたようなCIDEAモジュレータによる処置、またはアクネ、脂漏性皮膚炎または脂漏過多症随伴性皮膚障害に対する別の処置の有効性をモニターすることを特に可能にする。このようなモニタリングは、処置を継続することが、根拠の確かなものであるのかまたは必要であるのかどうかに関して、患者を再確認させることができる。
【0026】
本発明のもう1つの態様は、コントロール個体からの生物学的試料に対する個体からの生物学的試料におけるCIDEAタンパク質の発現もしくは活性、その遺伝子の発現またはそのプロモーターのうちの少なくとも1つの活性の比較を含む、個体のアクネ性病変、脂漏性皮膚炎または脂漏過多症随伴性皮膚障害の発現に対する感受性を判定するためのインビトロの方法に関する。
【0027】
ここでもまた、CIDEAタンパク質の発現は、イムノアッセイによって、例えばELISAアッセイによって、または前述の他の方法のいずれかによって、このタンパク質を定量することによって判定することができる。特にCIDEA遺伝子の発現を測定するためのもう1つの方法は、前記に記述したいずれかの方法によって、対応するmRNAの量を測定することである。CIDEA活性を定量することもまた想定することができる。
【0028】
試験する個体は、この場合、脂漏過多症、脂漏性皮膚炎またはアクネに随伴する皮膚状態をまったく呈していない無症状の個体である。この方法における「コントロール」個体は、「健康な」参照母集団または個体を意味する。この感受性の検出は、アクネ、脂漏性皮膚炎または脂漏過多症随伴性皮膚障害に付随する兆候の予防的処置および/またはモニタリングの増加を計画することを可能にする。
【0029】
これらのインビトロの診断または予後診断の方法において、試験される生物学的試料は、いかなる生体液の試料または生検の試料であってもよい。好ましくは、試料は、例えば生検または落屑によって得られた皮膚細胞であってよい。試料はまた皮脂であってもよい。
【0030】
スクリーニング方法
本発明の主題は、CIDEAの発現もしくは活性またはその遺伝子の発現またはそのプロモーターのうちの少なくとも1つの活性を調節する化合物の能力の判定を含む、アクネ、脂漏性皮膚炎または脂漏過多症随伴性いずれかの皮膚障害の予防的および/または治療的処置のための候補化合物をスクリーニングするためのインビトロまたはインビボの方法であり、前記調節は、アクネ、脂漏性皮膚炎または脂漏過多症随伴性いずれかの皮膚障害の予防的または治療的処置のための化合物の有用性を表示する。したがって、この方法は、CIDEAの発現もしくは活性、その遺伝子の発現、またはそのプロモーターのうちの少なくとも1つの活性を調節することができる化合物を選択することを可能にする。
【0031】
より特に、本発明の主題は、下記のステップ:
a. 少なくとも2つの生物学的試料または反応混合物を調製するステップ;
b. 試料または反応混合物のうち1つを1つまたは複数の試験化合物と接触させるステップ;
c. 生物学的試料または反応混合物中のCIDEAタンパク質の発現もしくは活性、その遺伝子の発現またはそのプロモーターのうち少なくとも1つの活性を測定するステップ;
d. 未処理の試料または未処理の混合物と比較して、b)で処理された試料または混合物において、CIDEAタンパク質の発現もしくは活性、その遺伝子の発現またはそのプロモーターのうち少なくとも1つの活性の調節が測定されている化合物を選択するステップ、
を含む、アクネ、脂漏性皮膚炎または脂漏過多症随伴性皮膚障害の予防的および/または治療的処置のための候補化合物をスクリーニングするためのインビトロの方法である。
【0032】
インビトロのスクリーニング方法は、いかなる実験動物、例えば、げっ歯類において実施されてもよい。好ましい一実施形態によれば、スクリーニング方法は、試験化合物を動物に、好ましくは局所適用によって投与すること、次いで任意選択で動物を安楽死により屠殺すること、ならびに表皮切片の試料を採取してから本明細書に記載のいずれかの方法によって表皮切片における遺伝子の発現を評価することを含む。
【0033】
用語「調節」は、タンパク質の発現もしくは活性、その遺伝子の発現またはそのプロモーターのうち少なくとも1つの活性に対するいずれかの影響、すなわち、部分的または完全な刺激または阻害を意味することが意図されている。したがって、試験される化合物は、上記のステップd)において、CIDEAタンパク質の発現もしくは活性、その遺伝子の発現またはそのプロモーターのうち少なくとも1つの活性を好ましくは阻害する。試験された化合物について、化合物の非存在下で実施されたコントロールとの比較により得られた発現の差は、25%以上で有意である。
【0034】
本明細書を通して、別段の指定がない限り、用語「遺伝子の発現」は、発現されたmRNAの量を意味するよう意図され;
用語「タンパク質の発現」は、このタンパク質の量を意味するよう意図され;
用語「CIDEAタンパク質の活性」は、DFFタンパク質を活性化することによってアポトーシスを誘導するこのタンパク質の能力を意味するよう意図され;
用語「プロモーターの活性」は、このプロモーターが、このプロモーターの下流でコードされたDNA配列の転写を(したがって間接的に対応するタンパク質の合成を)開始させる能力を意味するよう意図されている。
【0035】
試験される化合物は、いかなるタイプであってもよい。試験される化合物は、天然由来であっても、化学合成によって生成されたものであってもよい。構造が定義された化合物、特徴付けがなされていない化合物または物質、または化合物の混合物のライブラリーも含むことができる。
【0036】
特に、本発明は、アクネ、脂漏性皮膚炎ならびに脂漏過多症随伴性皮膚障害の処置のためのPPARまたはAR(アンドロゲン受容体)モジュレータ候補のためのマーカーとしてのCIDEA遺伝子またはCIDEAタンパク質の使用を対象にしている。より具体的には、PPARまたはARモジュレータが、CIDEAの発現もしくは活性またはその遺伝子の発現またはそのプロモーターのうち少なくとも1つの活性を調節する能力を判定する。
【0037】
好ましくは、モジュレータは、PPARγモジュレータである。
【0038】
PPARモジュレータは、PPARアゴニストまたはアンタゴニスト、好ましくはアゴニストである。
【0039】
ARモジュレータは、ARアゴニストまたはアンタゴニスト、好ましくはアゴニストである。
【0040】
これらの化合物を試験するためおよびCIDEAタンパク質の発現または活性を調節する治療的利用の対象となる化合物を同定するために種々の手法を使用することができる。
【0041】
第1の実施形態によれば、生物学的試料は、CIDEAタンパク質をコードする遺伝子のプロモーターの全体または一部と機能的に連結したレポーター遺伝子を形質移入した細胞であり、上記のステップc)が前記レポーター遺伝子の発現を測定するステップを含む。
【0042】
レポーター遺伝子は、特に所与の基質の存在下で、CAT(クロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ)、GAL(β-ガラクトシダーゼ)またはGUS(β-グルクロニダーゼ)などの着色した生成物を形成する酵素をコードすることがある。レポーター遺伝子はまた、ルセリフェラーゼ遺伝子またはGFP(緑色蛍光タンパク質)遺伝子であってよい。レポーター遺伝子によってコードされたタンパク質またはその活性の定量は、慣例的に、比色分析法、蛍光分析法または化学発光法によって、特に実施される。
【0043】
第2の実施形態によれば、生物学的試料は、CIDEAをコードする遺伝子を発現する細胞であり、上記のステップc)が前記遺伝子の発現を測定するステップを含む。
【0044】
本明細書において使用される細胞は、いかなるタイプであってもよい。細胞は、CIDEA遺伝子を内在的に発現する細胞、例えば、心臓細胞、平滑筋細胞、よりよくは皮脂腺細胞であってよい。ヒトまたは動物由来の器官、例えば、包皮腺、陰核腺、または皮膚の皮脂腺などもまた使用することができる。
【0045】
細胞は、好ましくはヒト、または哺乳類CIDEAタンパク質をコードする異種核酸によって形質転換された細胞であってもまたよい。
【0046】
多種多様な宿主細胞システム、例えば、Cos-7、CHO、BHK、3T3またはHEK293細胞などを使用することができる。核酸は、当業者に既知のいずれかの方法、例えばリン酸カルシウム、DEAE-デキストラン、リポソーム、ウイルス、エレクトロポレーションまたはマイクロインジェクションによって、安定的にまたは一過性に形質移入してもよい。
【0047】
これらの方法において、CIDEA遺伝子またはレポーター遺伝子の発現は、前記遺伝子の転写のレベルまたはその翻訳のレベルの評価によって判定することができる。
【0048】
表現「遺伝子の転写のレベル」は、産生された対応するmRNAの量を意味するよう意図されている。表現「遺伝子の翻訳のレベル」は、産生されたタンパク質の量を意味するよう意図されている。当業者であれば、対象となる遺伝子のmRNAを定量的または半定量的に検出する手法に精通している。特定のヌクレオチドプローブによるmRNAのハイブリダイゼーションに基づく手法は、最も一般的である(ノーザンブロッティング、RT-PCR(リバーストランスクリプターゼポリメラーゼ連鎖反応)、定量的RT-PCR(qRT-PCR)、RNaseプロテクション)。蛍光剤、放射性薬剤、酵素薬剤または他のリガンド(例えば、アビジン/ビオチン)などの検出標識の使用は、有利である可能性がある。
【0049】
特に、遺伝子の発現は、リアルタイムPCRまたはRNaseプロテクションによって測定することができる。用語「RNaseプロテクション」は、組織のポリ(A)-RNA中の既知のmRNAの検出であって、標識されたプローブを用いた特定のハイブリダイゼーションを使用して行われる検出を意味するよう意図されている。プローブは、検出対象のメッセンジャーと相補的な標識された(放射性の)RNAである。このRNAは、既知のmRNAで構成されてよく、そのcDNAは、RT-PCRの後で、ファージの中にクローン化されている。その配列が検出の対象である組織からのポリ(A)-RNAは、このプローブと共に、液体培地中で、ゆっくりとしたハイブリダイゼーション下で、インキュベートする。RNA:RNAハイブリッドは、検出対象のmRNAとアンチセンスプローブとの間に形成される。ハイブリッド化された培地は、次いで、プローブとの間に形成されるハイブリッドのみがこの消化に耐えられるように、一本鎖RNAに対して特異的なリボヌクレアーゼの混合物と共にインキュベートする。次いで、消化産物を、除タンパクし、再精製してから、電気泳動によって定量する。標識されたハイブリッドRNAは、オートラジオグラフィーによって検出される。
【0050】
遺伝子の翻訳のレベルは、例えば、前記遺伝子の産物を免疫学的に定量することによって評価する。この目的に使用される抗体は、ポリクローナルタイプでもモノクローナルタイプでもよい。その生成法には、慣例的な手法が含まれる。抗CIDEAポリクローナル抗体は、特に、ウサギまたはマウスなどの動物の全タンパク質による免疫化によって得ることができる。抗血清を採取し、次いで、それ自体が当業者には既知の方法に従って枯渇させる。モノクローナル抗体は、特に、KohlerおよびMilstein(Nature (London)、256: 495〜497頁(1975年))の慣例的な方法によって得ることができる。モノクローナル抗体を調製する他の方法もまた知られている。モノクローナル抗体は、例えば、ハイブリドーマからクローン化された核酸の発現によって生成してもよい。抗体はまたファージディスプレイ法によって生成してもよく、すなわち抗体cDNAsを、典型的にはV-遺伝子ライブラリーをファージ表面で提示する線維状ファージ(例えば、大腸菌に対するfUSE5)であるベクターに導入することにより生成してよい。
【0051】
免疫学的な定量は、固相または均一相において;一段階でまたは二段階で;非限定的な例として、サンドイッチ法または競合法によって実施してもよい。好ましい一実施形態によれば、捕獲抗体は、固相に固定化させる。固相の非限定的な例として、マイクロプレート、特にポリスチレンマイクロプレート、または固体粒子もしくはビーズ、または常磁性ビーズを使用することができる。
【0052】
ELISAアッセイ、ラジオイムノアッセイまたは他のいずれかの検出手法を用いて、形成された抗原/抗体複合体の存在を明らかにすることができる。
【0053】
形成された抗原/抗体複合体、より一般的には分離または精製された、しかしまた、組み換えられたタンパク質(インビトロまたはインビボで得られた)の特徴付けは、マススペクトル解析によって行うことができる。この同定は、タンパク質(一般に、トリプシン)の酵素的加水分解によって生成されたペプチドの解析(質量の決定)によって可能になる。一般に、タンパク質は、酵素的消化に先立ち、当業者に既知の方法に従って分離される。(過水分解物形態の)ペプチドの定量は、その物理化学的特性に基づきHPLC(ナノHPLC)によってペプチドを分離することによって実施される(逆相)。したがって、分離されたペプチドの質量の決定は、ペプチドのイオン化をマススペクトル解析(エレクトロスプレーESIモード)と直接、連結することによって行うか、または当業者に既知のマトリックスの存在下での沈殿および結晶化(MALDIモードでの定量)を行った後に行うかのいずれかによって実施される。その後、タンパク質を適切なソフトウエア(例えば、Mascot)を使用して同定する。
【0054】
第3の実施形態によれば、スクリーニング方法は、化合物をCIDEAタンパク質と接触させるステップ、および化合物がCIDEAタンパク質の活性を調節する能力、すなわち化合物の非存在下で実施したコントロールと比較した活性の差を判定してアクネ、脂漏性皮膚炎または脂漏過多症随伴性皮膚障害の予防的または治療的処置に対する化合物の有用性を示すステップを含む。
【0055】
好ましくは、化合物がCIDEAタンパク質と結合する能力も評価する。
【0056】
CIDEAの活性の判定は、種々の方法、特にCIDEA-誘導性アポトーシスを実証することによって実施することができる。
【0057】
次いで、本明細書で定義されるスクリーニング方法によって選択された化合物を、他のインビトロモデルおよび/またはインビボモデル(動物またはヒト)において、アクネ、脂漏性皮膚炎または脂漏過多症随伴性皮膚障害に対するそれらの効果を試験することができる。
【0058】
酵素のモジュレータ
本発明の主題はまた、上記の方法の1つによって得ることができる、ヒトCIDEAタンパク質のモジュレータの、アクネ、脂漏性皮膚炎または脂漏過多症随伴性皮膚障害の予防的および/または治療的処置のために使用する薬剤の調製のための使用でもある。
【0059】
したがって、アクネ、脂漏性皮膚炎または脂漏過多症随伴性皮膚障害の予防的および/または治療的処置のための方法は本明細書に記載され、前記方法は、治療有効量のCIDEAモジュレータを、そのような処置を必要とする患者に投与することを含む。
【0060】
最後に、本発明は、脂肪性皮膚の美的処置のための、CIDEAモジュレータの化粧品的使用を対象とする。
【0061】
好ましくは、モジュレータは、CIDEA阻害剤である。用語「阻害剤」は、CIDEAタンパク質の生物学的活性を消去または実質的に低減する化合物または化学物質をいう。用語「実質的に」は、少なくとも25%、好ましくは少なくとも35%、より好ましくは少なくとも50%、より好ましくは少なくとも70%または90%の低減を意味する。
【0062】
好ましい阻害剤は、溶液中で、阻害剤濃度20μM未満、10μM未満、5μM未満、1μM未満、好ましくは0.1μM未満、より好ましくは0.01μM未満で、CIDEAと反応する。
【0063】
モジュレータ化合物は、抗CIDEA阻害抗体、好ましくはモノクローナル抗体であってよい。有利には、そのような阻害抗体は、血漿濃度が約0.01μg/mlから約100μg/ml、好ましくは約1μg/mlから約5μg/mlを得るのに十分な量で投与される。
【0064】
モジュレータ化合物はまた、ポリペプチド、アンチセンスDNAまたはRNAポリヌクレオチド、siRNAまたはPNA(ペプチド核酸、その空間構造がDNAと類似しており、DNAとハイブリダイゼーションすることが可能な、プリンおよびピリミジン塩基によって置換されたポリペプチド鎖)であってもよい。
【0065】
モジュレータ化合物はまた、アプタマーであってもよい。アプタマーは、分子認識に関して、抗体の代替となる分子のクラスである。これらは、実質上すべてのクラスの標的分子を高度の親和性および特異性をもって認識する能力のあるオリゴヌクレオチド配列である。このようなリガンドは、TuerkおよびGoldにより、1990年に記述されているように、ランダム配列ライブラリーにおいて実施される指数的濃縮によるリガンドの系統的進化(SELEX)によって分離することができる。ランダム配列ライブラリーは、DNAのコンビナトリアル化学合成によって得ることができる。このライブラリーにおいて、個々の構成要素は、直鎖状の、任意選択で化学的に修飾された、ユニーク配列のオリゴマーである。このクラスの分子の潜在的な修飾、使用および優位性は、Jayasena、1999年、Clinical Chemistry 45(9): 1628〜1650頁に概説されている。
【0066】
いくつかのCIDEAモジュレータが知られており、エネルギーホメオスタシスおよび代謝ホメオスタシスの調節に提案されている(Christian他、2005年、Mol Cell Biol、25(21):9383〜91頁)。本発明は、このようなCIDEA阻害性化合物の、アクネ、脂漏性皮膚炎または脂漏過多症随伴性皮膚障害の予防的および/または治療的処置のための使用を含む。
【0067】
上記のスクリーニング方法によって同定された他のモジュレータ化合物もまた有用である。
【0068】
モジュレータ化合物は、医薬品に許容できる担体と組み合わせて、医薬用組成物中に配合される。これらの組成物は、例えば、経口的に、経腸的に、非経口的に、または局所的に投与することができる。好ましくは、医薬用組成物は、局所的に適用される。経口投与に関しては、医薬用組成物は、錠剤、ゲルカプセル、糖衣錠、シロップ、懸濁液、溶液、粉末、顆粒、エマルジョン、マイクロスフィアもしくはナノスフィアの懸濁液、または徐放のための脂質もしくはポリマーベシクルの形態であってよい。非経口的投与に関しては、医薬用組成物は、点滴または注射用の溶液または懸濁液の形態であってよい。
【0069】
局所投与に関しては、医薬用組成物は、より特に、皮膚および粘膜を処置するために使用され、膏薬、クリーム、ミルク、軟膏、パウダー、含浸パッド、溶液、ゲル、スプレー、ローションまたは懸濁液の形態であってよい。組成物はまた、マイクロスフィアまたはナノスフィアの懸濁液、または徐放のための脂質またはポリマーベシクルまたはポリマーパッチまたは水性ゲルの形態であってもよい。この局所適用のための組成物は、無水形態、含水形態またはエマルジョンの形態であってもよい。好ましい変形例において、医薬用組成物は、ゲル、クリームまたはローションの形態である。
【0070】
組成物は、CIDEAモジュレータを、組成物の全重量に対して、0.001重量%から10重量%、特に0.01重量%から5重量%の範囲の含有量で含んでよい。
【0071】
医薬用組成物は、
- 湿潤剤;
- 香味向上剤;
- パラヒドロキシ安息香酸エステルなどの防腐剤;
- 安定化剤
- 水分調節剤;
- pH調節剤;
- 浸透圧調節剤;
- 乳化剤;
- UV-AおよびUV-Bスクリーン剤;
- ならびに抗酸化剤、例えばα-トコフェロール、ブチルヒドロキシアニソールまたはブチルヒドロキシトルエン、スーパーオキシドジスムターゼ、ユビキノールまたはある種の金属キレート化剤、
などの不活性な添加剤またはこれら添加剤の組合せをもまた含んでよい。
【発明を実施するための形態】
【0072】
下記の実施例は、本発明を、その範囲を限定することなく例証する。
【0073】
(実施例)
実験データ
(実施例1)
ヒト皮脂腺中およびヒト表皮中のCIDEAタンパク質の発現
ヒト皮脂腺を、ヒト表皮からディスパーゼによる処理および双眼拡大レンズ下での切開により分離した。全RNA試料を皮脂腺および表皮から調製した。
【0074】
遺伝子の発現を、Affymetrixステーション(マイクロフルイディックモジュール;ハイブリダイゼーションオーブン;スキャナー;コンピュータ)で、同社により供給されたプロトコールに従って定量した。簡潔には、組織から分離した全RNAをcDNAに転写する。T7ポリメラーゼおよびビオチンと共役する前駆体NTPを用いて、二本鎖cDNAから、ビオチンで標識したcRNAを合成する。その後cRNAを小さなフラグメントに断片化する。酵素的反応が非常に効率的であることを確認するために、Agilent「lab on a chip」システムを使用して、すべての分子生物学的ステップを検証する。Affymetrixチップを、ビオチン化したcRNAとハイブリッド化し、すすいで、その後ストレプトアビジン共役フルオロホアを用いて蛍光標識する。洗浄後、チップをスキャンし、Affymetrixより供給されたMAS5ソフトウエアを用いて結果を計算する。発現値が各遺伝子に対して得られ、同様に得られた値の有意性の表示が得られる。発現の有意性の計算は、所与の遺伝子のcRNAとパーフェクトマッチオリゴヌクレオチドとのハイブリダイゼーション対オリゴヌクレオチドの中心領域に単一のミスマッチを含むオリゴヌクレオチドとのハイブリダイゼーションに続いて得られるシグナルの解析に基づいている(Table 1(表1)を参照)。
【0075】
【表1】

【0076】
(実施例2)
ヒト皮脂腺中およびヒト表皮中のCIDEAタンパク質の発現
表皮およびヒト皮脂腺の試料を、健康なヒト皮膚の3点のリフトからレーザーマイクロダイセクションにより調製した。
【0077】
CIDEAタンパク質をコードするメッセンジャーRNAの発現を、Applied Biosystemsが開発したマイクロフルイディクスカード法を用いて定量的RT-PCR(qRT-PCR)によって定量した。
【0078】
Ctは、PCRサイクルの数に対応し、それによりすべての試料に対して同一のレベルの蛍光を選択することが可能になる。発現のレベルは、3名の提供者に関して得られたCtの平均および標準偏差によって各組織において表される。
【0079】
2つの組織間での発現の差は、3つのハウスキーピング遺伝子(リボソーマル18S RNA、グリセルアルデヒド3-リン酸デヒドロゲナーゼ GAPDH、β-アクチン)の発現を介してのCtの標準化の後で、表皮に対する皮脂腺の平均インダクションファクター(I.F)によって測定する。
【0080】
【表2】

【0081】
(実施例3)
初代培養におけるヒト皮脂腺細胞中のCIDEAタンパク質の発現
a. ヒト皮脂腺細胞の分離および培養
Xia他によって記載されている方法(J Invest Dermatol. 1989年9月、93(3):315〜21頁)に従って、健康なヒト提供者からのリフトを用いて、ディスパーゼの作用および双眼拡大レンズ下での皮脂腺のマイクロダイセクションにより真皮から表皮を分離した後、ヒト皮脂腺細胞を培養する。
【0082】
皮脂腺を6-ウエルプレート中の10%のウシ胎児血清(FCS);10ng/mlの上皮増殖因子(EGF);10-10Mコレラ毒素(CT);0.5μg/mlのハイドロコルチゾン(HC);5μg/mlのインシュリン(INS);2mM L-グルタミン(Gln);100IU/mlのペニシリン-ストレプトマイシン(PS)を補充したミトマイシン処理3T3線維芽細胞を含むDMEM-Ham's F12 (3:1)培地のフィーダー層の上に播種する。
【0083】
皮脂腺播種の3日後に、ヒト皮脂腺細胞の最初の増殖巣が現れる。
【0084】
細胞を、次いでPPARγアゴニストのロシグリタゾン(1μM)およびアンドロゲンR1881(10nM)の組合せに相当するセボジェニック(sebogenic)カクテル、または担体として使用されるジメチルスルホキシド(DMSO)によって6日間処理する。
【0085】
b. PCR発現データ
CIDEAタンパク質をコードするメッセンジャーRNAの発現を、1名の提供者に対応するヒト皮脂腺細胞の培養物に関して、上記の通り(実施例2)、Applied Biosystemsが開発したマイクロフルイディクスカード法を用いてqRT-PCRによって定量した。
【0086】
発現のレベル (Ct)は、各処置条件に相当する。
【0087】
セボジェニックカクテルによるCIDEA発現の誘発は、3つのハウスキーピング遺伝子(リボソーマル18S RNA、グリセルアルデヒド3-リン酸デヒドロゲナーゼ GAPDH、β-アクチン)の発現を介したCtの標準化の後で、DMSOコントロールと比較して、インダクションファクター(I.F)によって測定する。
【0088】
【表3】

【0089】
(実施例4)
初代培養におけるラット包皮腺中のCIDEAタンパク質の発現
ラット包皮腺皮脂腺細胞の初代培養(Rosenfield他、J. Invest. Dermatol. 1999年、112:226〜32頁)を使用して、PPARγとアンドロゲン受容体アゴニストとの組合せなどの分化カクテルを評価した。24-ウエルプレートに播種した後、包皮腺細胞を、10%のウシ胎児血清(FCS)、10-10Mのコレラ毒素(CT)、10-10Mのコルチゾール、5μg/mlのインシュリンおよび抗生物質を含むDMEM培地中で3日間培養する。次いで、細胞を血清フリーの培地(Cellgro complete medium)中で培養し、培地を2日ごとに変えながら、PPARγアゴニスト(ロシグリタゾン、100nM)およびアンドロゲン受容体アゴニスト(R1181、1nM)で3から9日間処理する。9日目に、細胞を回収し、Affymetrix RAE230Aチップによって遺伝子発現の大規模解析を行う。
【0090】
【表4】

【0091】
(実施例5)
PPARγ受容体アゴニストによる処理後のラット皮脂腺における発現のデータ:
材料および方法:
動物: 種:ラット
系統:OFA-SD (SPF Caw)
性別:雄
年齢:10週
バッチあたりの数:40匹(1グループあたり8匹)
処理: 投与経路:局所
化合物/バッチ:PPARγアゴニスト(ロシグリタゾン)
用量:1%
担体:アセトン(001)
継続期間 96時間
評価方法:研究の開始時および終了時に動物を秤量する。遺伝子の発現を定量する(RNA抽出、リバーストランスクリプターゼおよびリアルタイムPCR)ために皮膚の生検試料を採取する(ラット1匹あたり6個の皮膚切除試料)。試料は4℃で一晩保管した後、1M臭化ナトリウム(NaBr)中、37℃で2時間インキュベーションを行う。インキュベーション後に、試料を表皮と真皮に分ける。表皮試料は、20℃で保管する。これらの条件下で、皮脂腺は、表皮切片中にある。コントロールラットまたはPPARγアゴニストで処理したラットからの皮脂腺を含む表皮切片に由来するcDNAから始めて、PCRを行う。カラムを使用してmRNAを抽出し、定量する。mRNAの質を測定し、18S/28S比で表す。結果は、未処理動物(担体グループ)に対する相対的誘導として発現する18Sに関して標準化する。統計的解析は、修正モンテカルロ分析に基づく内部ソフトウエアを用いて得られる。
【0092】
【表5】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
CIDEAタンパク質の発現もしくは活性またはその遺伝子の発現またはそのプロモーターのうちの少なくとも1つの活性を調節する化合物の能力の判定を含む、アクネ、脂漏性皮膚炎または脂漏過多症随伴性皮膚障害の予防的および/または治療的処置のための候補化合物をスクリーニングするためのインビトロまたはインビボの方法。
【請求項2】
下記のステップ:
a. 少なくとも2つの生物学的試料または反応混合物を調製するステップ;
b. 試料または反応混合物のうち1つを1つまたは複数の試験化合物と接触させるステップ;
c. 生物学的試料または反応混合物中のCIDEAタンパク質の発現もしくは活性、その遺伝子の発現またはそのプロモーターのうち少なくとも1つの活性を測定するステップ;
d. 未処理の試料または未処理の混合物と比較して、b)で処理された試料または混合物において、CIDEAタンパク質の発現もしくは活性の調節、またはその遺伝子の発現の調節またはそのプロモーターのうち少なくとも1つの活性の調節が測定されている化合物を選択するステップ、
を含む、請求項1に記載のアクネ、脂漏性皮膚炎または脂漏過多症随伴性皮膚障害の予防的および/または治療的処置のための候補化合物をスクリーニングするためのインビトロの方法。
【請求項3】
ステップd)において選択された化合物が、CIDEAタンパク質の発現もしくは活性、その遺伝子の発現またはそのプロモーターのうち少なくとも1つの活性を阻害することを特徴とする、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
生物学的試料が、CIDEAタンパク質をコードする遺伝子のプロモーターの全体または一部と機能的に連結したレポーター遺伝子を形質移入した細胞であること、およびステップc)が前記レポーター遺伝子の発現を測定するステップを含むことを特徴とする、請求項2または3に記載の方法。
【請求項5】
生物学的試料がCIDEAタンパク質をコードする遺伝子を発現する細胞であること、およびステップc)が前記遺伝子の発現を測定するステップを含むことを特徴とする、請求項2または3に記載の方法。
【請求項6】
細胞が皮脂腺細胞である、請求項4または5に記載の方法。
【請求項7】
細胞が、CIDEAタンパク質をコードする異種核酸を形質移入した細胞である、請求項5に記載の方法。
【請求項8】
遺伝子の発現が、前記遺伝子の転写のレベルを測定することによって判定される、請求項2から7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
遺伝子の発現が、前記遺伝子の翻訳のレベルを測定することによって判定される、請求項2から7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
化合物をCIDEAタンパク質と接触させるステップおよび化合物がCIDEAタンパク質の活性を調節する能力、すなわち化合物の非存在下で実施した対照と比較した活性の差を判定して、アクネ、脂漏性皮膚炎または脂漏過多症随伴性皮膚障害の予防的または治療的処置に対する化合物の有用性を示すステップを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
アクネ、脂漏性皮膚炎または脂漏過多症随伴性皮膚障害の予防的および/または治療的処置に使用する薬剤を調製するための、請求項2から10のいずれか一項に記載の方法によって得ることができる、ヒトCIDEAタンパク質モジュレータの使用。
【請求項12】
モジュレータが、CIDEAタンパク質の阻害剤である、請求項11に記載の使用。
【請求項13】
脂肪性皮膚の美的処置のための、ヒトCIDEAタンパク質モジュレータの化粧品的使用。
【請求項14】
コントロール個体からの生物学的試料に対する、体からの生物学的試料におけるCIDEAタンパク質の発現もしくは活性、その遺伝子の発現またはそのプロモーターのうちの少なくとも1つの活性の比較を含む、個体におけるアクネ、脂漏性皮膚炎または脂漏過多症随伴性皮膚障害の発現を診断またはモニターするためのインビトロの方法。
【請求項15】
タンパク質の発現を、イムノアッセイでこのタンパク質を定量することによって判定する、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
イムノアッセイが、ELISAアッセイである、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
遺伝子の発現を、対応するmRNAの量を測定することによって判定する、請求項14に記載の方法。
【請求項18】
コントロール個体からの生物学的試料に対する、体からの生物学的試料におけるCIDEAタンパク質の発現もしくは活性、その遺伝子の発現またはそのプロモーターのうちの少なくとも1つの活性の比較を含む、個体のアクネ、脂漏性皮膚炎または脂漏過多症随伴性皮膚障害の発現に対する感受性を判定するためのインビトロの方法。
【請求項19】
タンパク質の発現を、このタンパク質をイムノアッセイで定量することによって判定する、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
イムノアッセイが、ELISAアッセイまたはラジオイムノアッセイである、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
遺伝子の発現を、対応するmRNAの量を測定することによって判定する、請求項18に記載の方法。
【請求項22】
アクネ、脂漏性皮膚炎または脂漏過多症随伴性皮膚障害を処置するためのPPARモジュレータ候補をスクリーニングするためのマーカーとしての、CIDEA遺伝子またはCIDEAタンパク質の使用。
【請求項23】
CIDEAの発現もしくは活性またはその遺伝子の発現またはそのプロモーターのうちの少なくとも1つの活性を調節するPPARモジュレータの能力の判定を含む、請求項22に記載の使用。
【請求項24】
PPARモジュレータが、PPARγモジュレータである、請求項22または23に記載の使用。
【請求項25】
モジュレータが、PPAR受容体アゴニストである、請求項22から24のいずれか一項に記載の使用。
【請求項26】
アクネ、脂漏性皮膚炎または脂漏過多症随伴性皮膚障害を処置するためのAR(アンドロゲン受容体)モジュレータ候補をスクリーニングするためのマーカーとしての、CIDEA遺伝子またはCIDEAタンパク質の使用。
【請求項27】
CIDEAの発現もしくは活性またはその遺伝子の発現またはそのプロモーターのうちの少なくとも1つの活性を調節するARモジュレータの能力の判定を含む、請求項26に記載の使用。
【請求項28】
モジュレータが、AR受容体アゴニストである、請求項26および27のいずれか一項に記載の使用。

【公表番号】特表2011−523354(P2011−523354A)
【公表日】平成23年8月11日(2011.8.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−507926(P2011−507926)
【出願日】平成21年5月7日(2009.5.7)
【国際出願番号】PCT/EP2009/055551
【国際公開番号】WO2009/135906
【国際公開日】平成21年11月12日(2009.11.12)
【出願人】(599045604)ガルデルマ・リサーチ・アンド・デヴェロップメント (117)
【Fターム(参考)】