説明

アスパルテート誘導体及びその製造方法

本発明は、新規なアスパルテート、その製造方法、これらのモノ及びポリアスパルテートの 2 成分ポリウレタン被覆組成物中のポリイソシアネート反応性成分としての使用、及びポリウレタンプレポリマー調製のためのその使用に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規なアスパルテート、1 級アミン及びマレエートからのその製造方法、2 成分ポリウレタン被覆組成物中のポリイソシアネート反応性成分としてのその使用、及びポリウレタンプレポリマー調製のためのその使用に関する。
【背景技術】
【0002】
1 種以上のイソシアネート反応性成分と組み合わせたポリイソシアネート成分をバインダーとして含む 2 成分被覆組成物は既知である。それらは、硬質、弾性、耐摩耗性、溶媒耐性及び耐候性である高品質被膜を製造するのに適している。
【0003】
2 成分表面被覆産業において、エステル基を含む 2 級ポリアミンが使用されるようになった。2 級ポリアミンは、低温で被膜を急速に硬化できることから、ラッカーポリイソシアネートと組み合わせて、低い溶媒量の又は溶媒を含まない高固形分被覆組成物におけるバインダーとして特に適している。
【0004】
これらの 2 級ポリアミンは、ポリアスパルテートであり、例えば米国特許第 5,126,170 号明細書、同第 5,214,086 号、同第 5,236,741 号、同第 5,243,012 号、同第 5,364,955 号、同第 5,412,056 号、同第 5,623,045 号、同第 5,736,604 号、同第 6,183,870 号、同第 6,355,829 号、同第 6,458,293 及び同第 6,482,333 号、並びに欧州特許出願公開第 667,362 号に記載されている。更に、アルジミン基を含有するアスパルテートも既知である(米国特許第 5,489,704 号明細書、同第 5,559,204 号及び同第 5,847,195 号参照)。2 成分被覆組成物における単独での又は他のイソシアネート反応性成分と組み合わせたイソシアネート反応性成分としてのそれらの使用も、上記の特許に記載されている。
【0005】
これらのポリアスパルテートを製造する方法では、対応する 1 級ポリアミンを、式:
R3OOC-C(R1)=C(R2)-COOR4
[式中、R1、R2、R3 及び R4 は、同じ又は異なった有機基である。]
に相当するマレエート又はフマレートと反応させ、2 級ポリアミンを形成する。立体的効果、構造的効果及び電子的効果により、これらの 2 級アミノ基は、確実かつ容易な方法で、ポリイソシアネートと混合できるほど十分に低いイソシアネート基に対する反応性を有している。
【0006】
従来技術(Chem. Ber.、1946 年、38 巻、83 号;Houben Weyl 著、Meth. d. Org. Chemie、11/1 巻、272 号、1957 年;及び Usp. Chimii、1969 年、38 巻、1933 号)において記載されているように、ポリアスパルテートを調製するために使用される反応は、ビニルカルボニル化合物中の活性化 C-C 二重結合への 1 級アミンの付加である。しかしながら、この反応は、実際の合成工程(例えば 60 ℃で撹拌しながら 24 時間)の進行中に完了しないことが見出された。反応の実際の程度は、1 級ポリアミンの種類に依存する。従って、1,6-ヘキサンジアミンについて 1 日後の(遊離未転化マレエート及び塩基触媒の存在下でのマレエートの転位により生じるフマレートの濃度によって測定される)転化率は、約 90〜93 %である。立体障害 1 級アミノ基を有する脂環式ポリアミン、即ち 4,4'-ジアミノ-3,3'-ジメチルジシクロヘキシルメタンについての 1 日後の転化率は、たった 77 %である。完全な又は実質的に完全な転化は、数日後でしか、又は 4,4'-ジアミノ-3,3'-ジメチルジシクロヘキシルメタンの場合は数ヶ月後でしか達成されない。
【0007】
典型的な商業的製造では 16 時間反応を行い、この時点で、使用するアミンに依存して、転化は 75 と 95 %の間のある値で完了する。「未完成な」物質は、ドラムに入れられ、反応が完了するまで貯蔵される。この貯蔵は、一般に、2 週間から 6 ヶ月の間のある期間行われる。
【0008】
米国特許第 5,821,326 号明細書は、アスパルテートの調製を促進する触媒としての、ある種の 5 員環芳香族化合物の使用が記載されている。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、式:
【化1】

[式中、
X は、(環状)脂肪族的に結合したアミノ基を含み、60〜6000 の数平均分子量を有し、イソシアネート基に対して反応性であるか又は 100 ℃までの温度でイソシアネート基に対して不活性である更なる官能基を含んでもよいモノ又はポリアミンから、1 級アミノ基を除去することによって得られた m 価の有機基を表し、
R1 及び R2 は、同じか又は異なっていてもよく、水素、又は 100 ℃以下の温度でイソシアネート基に対して不活性である有機基を表し(好ましくは両方とも水素である)、
R3 及び R4 は、同じか又は異なっていてもよく、100 ℃以下の温度でイソシアネート基に対して不活性である有機基を表し(好ましくは C1〜C8 であり、最も好ましくはメチル又はエチルである)、
R5 は、C2H4、C3H6 及び C5H10 からなる群から選ばれる基を表し、
a 及び b は 1〜5 の整数を表し、a と b の合計は 2〜6 であり、
R5 が C2H4 又は C3H6 を表すとき x は 1 であり、R5 が C5H10 を表すとき x は 0 である。]
に相当するアスパルテートを対象とする。
【0010】
本発明は、
A)0〜100 ℃の温度で、溶液中又は溶媒不存在下、
a)式(II):
X[-NH2]m (II)
に相当するモノ又はポリアミンと
b)式(III):
R3OOC-C(R1)=C(R2)-COOR4 (III)
に相当する化合物
[式中、X、R1、R2、R3 及び R4 は、上記で定義したとおりであり、m は 2〜6 の整数を表す。]
とを、約 1.1:1〜約 3.0:1 の成分 a)中の 1 級アミノ基と成分 b)中の C=C 二重結合との当量比で反応させる工程、及び
B)得られた生成物を、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート及びε-カプロラクトンからなる群から選ばれる化合物と反応させる工程
を含む、上記式に相当するアスパルテートの製造方法にも関する。
【0011】
本発明は、バインダーとして、
a)ポリイソシアネート成分、
b)b1)式(I)に相当する化合物、及び
b2)任意に他のイソシアネート反応性成分
を含有するイソシアネート反応性成分
を含み、任意に表面被覆技術において既知の添加剤を含んでもよく、イソシアネート基のイソシアネート反応性基に対する当量比が約 0.8:1〜約 2.0:1 である、2 成分被覆組成物にも関する。
【0012】
最後に、本発明は、ポリイソシアネートと、任意に 1 種以上のイソシアネート反応性成分と混合してもよい本発明のアスパルテートとの反応生成物に基づく、ウレア、ウレタン、アロファネート及び/又はビウレット構造を含むプレポリマーにも関する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明で有用なポリアミンは、i)400〜約 10,000、好ましくは 800〜約 6,000 の分子量を有する高分子量アミン、及び ii)400 未満の分子量を有する低分子量アミンを含む。分子量は、数平均分子量(Mn)であり、末端基分析(NH 数)によって決定される。これらのポリアミンの例は、アミノ基が、脂肪族化合物、脂環式化合物、芳香脂肪族化合物及び/又は芳香族化合物の炭素原子に結合しているものである。
【0014】
適当な低分子量ポリアミン出発化合物は、エチレンジアミン、1,2-及び 1,3-プロパンジアミン、2-メチル-1,2-プロパンジアミン、2,2-ジメチル-1,3-プロパンジアミン、1,3-及び 1,4-ブタンジアミン、1,3-及び 1,5-ペンタンジアミン、2-メチル-1,5-ペンタンジアミン、1,6-ヘキサンジアミン、2,5-ジメチル-2,5-ヘキサンジアミン、2,2,4-及び/又は 2,4,4-トリメチル-1,6-ヘキサンジアミン、1,7-ヘプタンジアミン、1,8-オクタンジアミン、1,9-ノナンジアミン、1,10-デカンジアミン、1,11-ウンデカンジアミン、1,12-ドデカンジアミン、1-アミノ-3-アミノメチル-3,5,5-トリメチルシクロヘキサン、2,4-及び/又は 2,6-ヘキサヒドロトルイレンジアミン、2,4'-及び/又は 4,4'-ジアミノ-ジシクロヘキシルメタン、3,3'-ジアルキル-4,4'-ジアミノ-ジシクロヘキシルメタン(例えば、3,3'-ジメチル-4,4'-ジアミノ-ジシクロヘキシルメタン及び 3,3'-ジエチル-4,4'-ジアミノ-ジシクロヘキシルメタン)、1,3-及び/又は 1,4-シクロヘキサンジアミン、1,3-ビス(メチルアミノ)-シクロヘキサン、1,8-p-メンタンジアミン、ヒドラジン、セミカルバジドカルボン酸のヒドラジド、ビス-ヒドラジド、ビス-セミカルバジド、フェニレンジアミン、2,4-及び 2,6-トルイレンジアミン、2,3-及び 3,4-トルイレンジアミン、2,4'-及び/又は 4,4'-ジアミノジフェニルメタン、アニリン/ホルムアルデヒド縮合反応によって得られる高官能性ポリフェニレンポリメチレンポリアミン、N,N,N-トリス-(2-アミノエチル)-アミン、グアニジン、メラミン、N-(2-アミノエチル)-1,3-プロパンジアミン、3,3'-ジアミノ-ベンジジン、ポリオキシプロピレンアミン、ポリオキシエチレンアミン、2,4-ビス-(4'-アミノベンジル)-アニリン及びこれらの混合物を含む。
【0015】
好ましいポリアミンは、1-アミノ-3-アミノメチル-3,5,5-トリメチルシクロヘキサン(イソホロンジアミン又は IPDA)、ビス-(4-アミノシクロヘキシル)-メタン、ビス-(4-アミノ-3-メチルシクロヘキシル)-メタン、1,6-ジアミノヘキサン、2-メチルペンタメチレンジアミン及びエチレンジアミンである。
【0016】
適当な高分子量ポリアミンは、アミノ化によって、又はヒドロキシル基のジイソシアネートとの反応及びそれに続く末端イソシアネート基のアミノ基への加水分解によって末端ヒドロキシル基がアミノ基に転化されていることを除き、NCO プレポリマーを調製するために使用されるポリヒドロキシル化合物に相当する。好ましい高分子量ポリアミンは、アミン末端ポリエーテル、例えば Huntsman から入手可能な Jeffamine 樹脂である。
【0017】
アスパルテートの調製に使用するための適当な任意に置換されていてよいマレイン酸エステル又はフマル酸エステルは、式:
R3OOC-C(R1)=C(R2)-COOR4
[式中、R1、R2、R3 及び R4 は、上記で定義したとおりである。]
に相当するものである。その例は、マレイン酸及びフマル酸のジメチルエステル、ジエチルエステル、ジ-n-ブチルエステル及び混合アルキルエステル、並びに 2 位及び/又は 3 位がメチルによって置換されている対応するマレイン酸エステル又はフマル酸エステルを含む。本発明のアスパルテートを調製するのに適当なマレエート又はフマレートは、ジメチルマレエート、ジエチルマレエート、ジ-n-プロピルマレエート、ジ-イソプロピルマレエート、ジ-n-ブチルマレエート及びジ-2-エチルへキシルマレエート、メチルエチルマレエート、又は対応するフマレートである。
【0018】
本発明のアスパルテートは、まず、成分 a)と成分 b)とを、0〜100 ℃、好ましくは 20〜80 ℃、より好ましくは 20〜60 ℃の温度で反応させることによって製造される。ここで、成分 a)中の 1 級アミノ基の成分 b)中の C=C 二重結合当量に対する当量比は、約 1.1:1〜約 3.0:1、好ましくは約 1.1:1〜約 2.0:1 である。反応時間は、ポリアミンの種類、及び所望する反応混合物中の反応体の最大残留濃度によって、約 1〜約 4 時間の間であり得る。次いで、得られた生成物を、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート及びε-カプロラクトンからなる群から選ばれる化合物と反応させる。この第二の反応は、一般に、約 50〜約 100 ℃の温度で、約 1〜約 4 時間の範囲の時間で行われる。1 モルのエチレンカーボネート、プロピレンカーボネート又はε-カプロラクトンが未反応アミン基各々に対して存在するように、反応体の比を選択する。
【0019】
本発明のアスパルテートの製造方法は、溶液中、又は溶媒の不存在下のいずれで行われてもよい。合成工程後に、例えば粘度を低下させるために溶媒を添加してもよい。適当な溶媒は、いずれかの有機溶媒、好ましくは、表面被覆技術で既知の有機溶媒を含む。その例は、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、n-ブチルアセテート、メトキシ-プロピルアセテート、トルエン、キシレン及び高級芳香族溶媒(例えば、Exxon 製 Solvesso 溶媒)を包含する。
【0020】
本発明に従って製造されたアスパルテートは、合成工程の完了後、ポリイソシアネート反応性成分として直接使用され得る。
【0021】
本発明のアスパルテートのある使用は、バインダーとして、
a)ポリイソシアネート成分、及び
b)b1)本発明のアスパルテート、
b2)任意に他の既知であるイソシアネート反応性成分
を含有するイソシアネート反応性成分
を含む 2 成分被覆組成物から被膜を製造することである。
【0022】
適当なポリイソシアネート成分 a)は既知であり、ポリウレタン化学で知られているポリイソシアネート、例えば低分子量ポリイソシアネート及びこの低分子量ポリイソシアネートから調製されるラッカーポリイソシアネートを含む。表面被覆技術で既知のラッカーポリイソシアネートが好ましい。これらのラッカーポリイソシアネートは、ビウレット基、イソシアヌレート基、アロファネート基、ウレトジオン基、カルボジイミド基及び/又はウレタン基を含み、好ましくは、(環状)脂肪族ポリイソシアネートから調製される。
【0023】
本発明において使用するため、又はラッカーポリイソシアネートを調製するために適当な低分子量ポリイソシアネートは、140〜300 の分子量を有するポリイソシアネートであり、例えば、1,4-テトラメチレンジイソシアネート、1,6-ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、2,2,4-及び/又は 2,4,4-トリメチル-ヘキサメチレンジイソシアネート、ドデカメチレンジイソシアネート、2-メチル-1,5-ジイソシアナトペンタン、1,4-ジイソシアナトシクロヘキサン、1-イソシアナト-3,3,5-トリメチル-5-イソシアナト-メチルシクロヘキサン(IPDI)、2,4-及び/又は 4,4'-ジイソシアナト-ジシクロヘキシル-メタン、1-イソシアナト-1-メチル-3(4)-イソシアナトメチル-シクロヘキサン(IMCI)、2,4-及び/又は 2,6-ヘキサヒドロトルイレンジイソシアネート(H6TDI)、2,4-及び/又は 4,4'-ジイソシアナトジフェニルメタン又はこれらの異性体と高級同族体との混合物(アニリン/ホルムアルデヒド縮合物のホスゲン化による既知の方法で得ることができる)、2,4- 及び/又は 2,6-ジイソシアナトトルエン、並びにそれらの混合物である。低分子量ポリイソシアネート自体の使用は好ましくない。また、芳香族ポリイソシアネート、例えば 2,4-及び/又は 2,6-ジイソシアナトトルエンから調製されるラッカーポリイソシアネートもそれほど好ましくない。ウレタン基含有ラッカーポリイソシアネートは、好ましくは、62〜300 の分子量を有する低分子量ポリヒドロキシル化合物、例えばエチレングリコール、プロピレングリコール及び/又はトリメチロールプロパンに基づく。
【0024】
成分 a)としての使用に好ましいラッカーポリイソシアネートは、1,6-ヘキサメチレンジイソシアネートに基づき、16〜24 重量%の NCO 含有量及び 23 ℃で 10,000 mPa・s、好ましくは 3000 mPa・s の最大粘度を有するものである。
【0025】
成分 b1)は、本発明のアスパルテートから選択される。好ましくは、X は、1-アミノ-3,3,5-トリメチル-5-アミノメチル-シクロヘキサン(IPDA)、4,4'-ジアミノシクロヘキシルメタン(HMDI)、3,3'-ジメチル-4,4'-ジアミノジシクロヘキシルメタン(BASF 製 Lasomin C260)、ヘキサヒドロ-2,4-及び/又は 2,6-ジアミノトルエン(H6TDA)、C-モノメチル-ジアミノジシクロヘキシル-メタンの異性体、3(4)-アミノメチル-1-メチルシクロヘキシルアミン(AMCA)、ヘキサンジアミン又は 2-メチル-5-ペンタンジアミンからアミノ基を除去することによって得られる二価の炭化水素基を表す。
【0026】
特に好ましい出発成分 b1)は、R3 及び R4 が、C1〜C8 アルキル基、例えばメチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、2-エチルヘキシルを表すアスパルテートを含む。
【0027】
任意の出発成分 b2)は、湿気又は/及び熱の作用下でイソシアネート基と反応する基を含む、少なくとも 2 個のイソシアネート反応性基を含有する既知の化合物である。その例は、ヒドロキシ官能化ポリアクリレート及びポリエステルポリオールを含む。これらの化合物の混合物も使用できる。
【0028】
本発明で使用されるバインダーにおいて、成分 a)、b1)及び(任意に)b2)の量は、イソシアネート基のイソシアネート反応性基に対する当量比が、約 0.8:1〜約 2.0:1、好ましくは約 0.8:1〜約 1.2:1 になるように選択される。
【0029】
本発明のバインダーは、溶媒の不存在下、又はポリウレタン表面被覆技術で一般に使用される溶媒の存在下で、各成分を混合することにより調製される。適当な溶媒は、酢酸エチル、酢酸ブチル、メトキシプロピルアセテート、メチルイソブチルケトン、メチルエチルケトン、キシレン、N-メチルピロリドン、石油スピリット、クロロベンゼン、Solvesso 溶媒又はこれらの混合物を含む。
【0030】
好ましくは、本発明の被覆組成物における、バインダー成分 a)及び b)の溶媒に対する重量比は、約 40:60〜約 100:0、より好ましくは約 60:40〜約 90:10 である。
【0031】
塗料組成物は、表面被覆技術で既知の添加剤も含んでよい。添加剤は、顔料、充填材、流れ制御剤、触媒及び沈降防止剤を包含する。
【0032】
本発明の被覆組成物から得られた被膜の特性は、出発成分 a)、b1)及び b2)の種類及び割合の適切な選択によって調整できる。
【0033】
被覆組成物は、既知の方法、例えば、噴霧塗り、ペイント塗り、浸漬塗り、流し塗り、或いはローラー又はスプレッダーを用いた方法によって、いかなる基材にも、単層又は多層で塗布され得る。本発明に従った被覆組成物は、金属、プラスチック、木材又はガラスのような基材上に被膜を製造するのに適している。被覆組成物は、車体、機械類、クラッディングパネル、容器、コンテナの製造に使用されるスチール製シートを被覆するのに特に適当である。本発明の被覆組成物を塗布する前に、基材を適当な下塗で処理してもよい。被膜の乾燥は、約 0〜160 ℃の温度で行い得る。
【0034】
本発明のアスパルテートを用いる被覆組成物の製造方法は、ウレア、ウレタン、アロファネート及び/又はビウレット構造を含有するプレポリマーの製造にも使用され得る。
【0035】
従来のアスパルテートとは対照的に、ほぼ完全な転化率が達成されるので、本発明のアスパルテートは、合成工程の完了後に直接使用され得る。マレエート、フマレート及び/又は一級アミノ基の低濃度の結果として、これらの生成物は、毒物学的及び生理学的に無害なだけではなく、イソシアネートに対して、激しい反応性とは対照的に適度な反応性を示す。低粘度故に、それらは、反応性希釈剤として、従来より使用されている環境を汚染する有機溶媒の適当な代替品となり、従って、高品質の、低溶媒又は溶媒不含有でさえある高固形分 2 成分被覆組成物に使用され得る。
【0036】
全ての部及びパーセントは、特に記載のない限り重量による。
【実施例】
【0037】
実施例 1
丸底フラスコに、撹拌機、加熱マントル、窒素注入口、熱電対及び添加漏斗を取り付けた。210 g(2 当量)のビス-(パラアミノシクロヘキシル)メタン(PACM)を、室温でフラスコに導入した。172 g(1 当量)のジエチルマレエートを、30 分かけて添加漏斗により添加した。フラスコの温度は 35 ℃まで上昇した。反応物を 60 ℃まで加熱して 7 時間維持した。この時点で不飽和度は、反応が 99 %完了したことを示す 0.69 mg マレイン酸/g 樹脂であった。反応混合物を室温まで冷却した。102 g(1 当量)のプロピレンカーボネートを、30 分かけて添加した。温度を 60 ℃まで上昇させて 1 時間半維持した。この時、アミン価は 116(理論アミン価は 116.2)であった。生成物は、25 ℃で 52,000 mPa・s の粘度を有していた。
【0038】
実施例 2
116 g(2 当量)のヘキサンジアミン(HDA)を使用した以外は、上記方法を繰り返した。アミン価は 149(理論アミン価は 143.6)であった。生成物は、25 ℃で 850 mPa・s の粘度を有していた。
【0039】
実施例 3 及び 4
被覆組成物を、100 %固体で、Desmodur N-3300 と混合することによって製造した。(Desmodur N-3300 は、約 22 %の NCO 含有量、25 ℃で約 2500 mPa・s の粘度、約 193 の NCO 当量を有する、商業的に入手可能な Bayer Polymers LLC 製のヘキサジイソシアネートベース三量体である。)樹脂を、NCO/(OH-NH)= 1.05 で、N3300 と混合した。適当な混合を保証するために、物質を 2 倍撹拌した。使用した物質及び量を、以下の表に示した。
【0040】
【表1】

【0041】
可使時間の終点は、撹拌により容易に容器が持ち上がるのに十分な程、物質が硬化した時点として測定した。乾燥時間は、恒温恒湿槽内で、硬化乾燥用の 6 時間計を用いて管理した。硬度は、硬化の翌日に、ショア D 試験を利用して測定した。
【0042】
実施例 5
丸底フラスコに、撹拌機、加熱マントル、窒素注入口、熱電対及び添加漏斗を取り付けた。58 g(1.00 当量)の Dytek A を、室温でフラスコに導入した。86.0 g(0.5 当量)のジエチルマレエートを、一度に添加した。フラスコの温度は 35 ℃まで上昇した。反応物を 60 ℃まで加熱して 5 時間半維持した。この時点で不飽和度は、反応が 99 %完了したことを示す 0.35 mg マレイン酸/g 樹脂であった。57.2 g(0.5 当量)のε-カプロラクトンを一度に添加し、60 度で 5 日間加熱した。最終不飽和度は、反応が 100 %完了したことを示す 0 であった。アミン価は 143(理論アミン価は 139)であった。生成物は、25 ℃で 300 mPa・s の粘度を有していた。
【0043】
実施例 6
丸底フラスコに、撹拌機、加熱マントル、窒素注入口、熱電対及び添加漏斗を取り付けた。57.2 g(0.5 当量)のε-カプロラクトンを、室温でフラスコに導入した。58 g(1.00 当量)の Dytek A を、一度に添加した。反応物を 60 ℃で 6 時間加熱し、この時点でアミン価は 256(理論アミン価は 253)mg KOH/g 樹脂であった。86.0 g(0.5 当量)のジエチルマレエートを一度に添加し、60 度で 6 時間半加熱した。この時点で不飽和度は、反応が 96 %完了したことを示す 1.12 mg マレイン酸/g 樹脂であった。翌日、不飽和度は、反応が 98 %完了したことを示す 0.58 であった。アミン価は 143(理論アミン価は 139)であり、生成物は、25 ℃で 1820 mPa・s の粘度を有していた。
【0044】
本発明を、説明の目的で上に詳しく記載したが、このような詳細は、説明の目的のためだけのものであり、特許請求の範囲によって限定される以外は、本発明の意図及び範囲から外れることなく、当業者によって変更をなし得ることが理解されるであろう。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式:
【化1】

[式中、
X は、(環状)脂肪族的に結合したアミノ基を含み、60〜6000 の数平均分子量を有し、イソシアネート基に対して反応性であるか又は 100 ℃までの温度でイソシアネート基に対して不活性である更なる官能基を含んでもよいモノ又はポリアミンから、1 級アミノ基を除去することによって得られた m 価の有機基を表し、
R1 及び R2 は、同じか又は異なっていてもよく、水素、又は 100 ℃以下の温度でイソシアネート基に対して不活性である有機基を表し、
R3 及び R4 は、同じか又は異なっていてもよく、100 ℃以下の温度でイソシアネート基に対して不活性である有機基を表し、
R5 は、C2H4、C3H6 及び C5H10 からなる群から選ばれる基を表し、
a 及び b は 1〜5 の整数を表し、a と b の合計は 2〜6 であり、
R5 が C2H4 又は C3H6 を表すとき x は 1 であり、R5 が C5H10 を表すとき x は 0 である。]
に相当するアスパルテート。
【請求項2】
式:
【化2】

[式中、
X は、(環状)脂肪族的に結合したアミノ基を含み、60〜6000 の数平均分子量を有し、イソシアネート基に対して反応性であるか又は 100 ℃までの温度でイソシアネート基に対して不活性である更なる官能基を含んでもよいモノ又はポリアミンから、1 級アミノ基を除去することによって得られた m 価の有機基を表し、
R1 及び R2 は、同じか又は異なっていてもよく、水素、又は 100 ℃以下の温度でイソシアネート基に対して不活性である有機基を表し(好ましくは両方とも水素である)、
R3 及び R4 は、同じか又は異なっていてもよく、100 ℃以下の温度でイソシアネート基に対して不活性である有機基を表し(好ましくは C1〜C8 であり、最も好ましくはメチル又はエチルである)、
R5 は、C2H4、C3H6 及び C5H10 からなる群から選ばれる基を表し、
a 及び b は 1〜5 の整数を表し、a と b の合計は 2〜6 であり、
R5 が C2H4 又は C3H6 を表すとき x は 1 であり、R5 が C5H10 を表すとき x は 0 である。]
に相当するアスパルテートの製造方法であって、
A)0〜100 ℃の温度で、溶液中又は溶媒不存在下、
a)式(II):
X[-NH2]m (II)
に相当するモノ又はポリアミンと
b)式(III):
R3OOC-C(R1)=C(R2)-COOR4 (III)
に相当する化合物
[式中、X、R1、R2、R3 及び R4 は、上記で定義したとおりであり、m は 2〜6 の整数を表す。]
とを、約 1.1:1〜約 3.0:1 の成分 a)中の 1 級アミノ基と成分 b)中の C=C 二重結合との当量比で反応させる工程、及び
B)得られた生成物を、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート及びε-カプロラクトンからなる群から選ばれる化合物と反応させる工程
を含む方法。
【請求項3】
バインダーとして、
a)ポリイソシアネート成分、及び
b)b1)請求項1に記載のアスパルテート、
b2)任意に他のイソシアネート反応性成分
を含有するイソシアネート反応性成分
を含んでなり、イソシアネート基のイソシアネート反応性基に対する当量比が約 0.8:1〜約 2.0:1 である 2 成分被覆組成物。
【請求項4】
ポリイソシアネートと請求項1に記載のアスパルテートとの反応生成物を含有する、ウレア、ウレタン、アロファネート及び/又はビウレット構造を含むプレポリマー。

【公表番号】特表2007−507507(P2007−507507A)
【公表日】平成19年3月29日(2007.3.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−534006(P2006−534006)
【出願日】平成16年9月27日(2004.9.27)
【国際出願番号】PCT/US2004/031719
【国際公開番号】WO2005/033180
【国際公開日】平成17年4月14日(2005.4.14)
【出願人】(503349707)バイエル・マテリアルサイエンス・リミテッド・ライアビリティ・カンパニー (178)
【氏名又は名称原語表記】Bayer MaterialScience LLC
【Fターム(参考)】