説明

アセチル化タンパク質

単離された多重にアセチル化されたタンパク質HMGB1;またはその変種または断片、またはそれをコードするポリヌクレオチド。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はアセチル化HMGB1タンパク質、そのモジュレーター、および療法におけるそれらの使用に関する。
【背景技術】
【0002】
非ヒストン核タンパク質HMGB1は高移動度群としても知られているHMGタンパク質のBファミリーに属する。最近、非ヒストン核タンパク質HMGB1は壊死細胞によって放出されることが報告されている(Scaffidi et al.,2001)。生細胞においては、タンパク質HMGB1は安定にクロマチンに結合せず;他方、それはアポトーシスの間に脱アセチル化された核クロマチンによって隔離(sequestrate)される。
【0003】
EP 1 079 849は、医薬組成物における細胞傷害剤として用いられるHMGタンパク質の使用を開示する。より詳細には、それは細胞傷害剤としてのHMG−Iを腫瘍を有するラットに投与することを記載する。HMG−Iは、HMG Bファミリーに対していずれの分子同様性も有さないHMG AファミリーからHMGA1と今日では命名されている。EP 1079 849には、Bファミリーの活性に関連しては証拠が提供されていない。
【0004】
EP 1 079 849における教示とは対照的に、(本明細書に参照として組み込む)我々の同時係属国際特許出願番号PCT/IB02/04080は、いかにして、我々が、今回、HMGB1が直接的細胞傷害性活性を有さず、むしろ免疫応答を活性化する際に共働することを見出したかを記載する。従って、それを用いて、抗原特異的抗腫瘍免疫応答を誘導し、抗腫瘍薬の効果を補うことができる。
【0005】
細胞外タンパク質HMGB1はTNF−αおよび他のサイトカインの産生を決定し、敗血症ショックの病因に関与する(Anderson et al.,2000;Wang et al.,1999;WO00/47104)。さらに、タンパク質HMGB1の濃度は細菌成分の非存在下で出血性ショックの間に増加する(Ombrellino et al.,1999)。より詳細には、(本明細書に参照として組み込む)WO00/47104は、(今日HMGB1と命名される)HMG1のアンタゴニストまたは阻害剤を含む、炎症性サイトカインカスケードの活性化によって特徴付けられる疾患を治療するための医薬組成物を記載する。WO00/47104は、その中で炎症性サイトカインカスケードが媒介するとされる疾患の長いリストを掲げる。WO00/47104のアプローチとは対照的に、我々の同時係属国際特許出願番号PCT/IB02/04080は、いかにして、我々が、HMGB1を用いて抗原媒介免疫応答を調節することができるかを見出したことを記載する。例えば、WO00/47104に教示されたアプローチにおいて、いくつかの感染症およびいくつかの悪性疾患のような疾患はタンパク質HMGB1のアンタゴニストを用いることによって治療することができる。しかしながら、抗原特異的免疫応答アプローチに従い、我々は、タンパク質HMGB1の投与を用いることができることを見出した。
【0006】
それにもかかわらず、副作用は、治療目的でHMGB1を投与する場合、例えば、後天性免疫応答に関連するある範囲の障害を治療するにおいてそれを用いる場合に起こるであろうことが認識される。特に、望まない炎症に導く炎症性サイトカインカスケードの望ましくない活性化があり得る。
【発明の開示】
【0007】
我々は、今回、驚くべきことに、炎症の後期相を媒介するタンパク質HMGB1の形態はタンパク質HMGB1のアセチル化形態であることを見出した。これはWO00/47104には教示されていない。従って、本発明は、炎症サイトカインカスケードの活性化に関連した疾患を治療するさらなる方法を提供する。本発明は減量を行う、または肥満を治療するさらなる方法も提供する。本発明は、好ましくは、炎症性サイトカインカスケードの活性化に関連する副作用が軽減される、後天性免疫応答に関連するある範囲の障害を治療するさらなる方法を提供する。
【0008】
高移動度群1タンパク質(HMGB1:High Mobility Group 1)は、壊死細胞によって漏出された場合、炎症をトリガーするクロマチン成分である。注目すべきことに、HMGB1は活性化された骨髄系細胞によって分泌され得、炎症の後期メディエータとして機能する。我々は、ここに、全ての細胞において、HMGB1は核および細胞質の間を行き来し;骨髄系細胞が活性化されると、HMGB1はその2つの核局所化シグナルでアセチル化され、核には再び入ることができず、分泌小胞に蓄積されることを示す。前骨髄球細胞は、ERKシグナリング経路を活性化することによってHMGB1アセチル化/分泌を達成する。我々は、これを、壊死によって死滅し、それを後期炎症シグナルとして用いる細胞によって発せられる進化的に古代のプロ炎症シグナルを模倣するための骨髄系細胞の特異的適合として解釈する。しかしながら、(受動的に放出された核タンパク質とは反対に)能動的に分泌されたサイトカインとしてのHMGB1の再改変(reinvention)は、アセチル化の形態の有意な翻訳後修飾を必要とした。HMGB1のこの翻訳後修飾を用いて、モジュレーター、例えば、後期炎症を選択的に防止するのに用いることができるアンタゴニストを設計することができる。
【0009】
本発明は、「受動的に放出された核タンパク質」の効果から、タンパク質HMGB1の「分泌されたサイトカイン」の効果を分離し、別々に変調することを可能とする。これが望ましい他の場合があり、例えば、HMGB1は、我々のUS仮出願においては幹細胞のための化学誘引物質および増殖因子として特許請求されており、WO02/074337においては、平滑筋細胞のための化学誘引物質として特許請求されている。
【0010】
[発明の陳述]
本発明の1つの態様によると、単離されたアセチル化タンパク質HMGB1;またはアセチル化HMGB1を模倣するその変種または断片(以下、「変種または断片」)、またはそれをコードするポリヌクレオチドが提供される。もう1つの態様によると、単離されたアセチル化HMGB1;またはその変種または断片、またはそれをコードするポリヌクレオチド(但し、リシン2および11はアセチル化されていないものとする。)が提供される。結局、このアセチル化パターンは骨髄系細胞による分泌では重要でない。
【0011】
もう1つの態様によると、骨髄系細胞に由来することができる単離されたアセチル化タンパク質HMGB1;またはその変種または断片、またはそれをコードするポリヌクレオチドが提供される。
【0012】
好ましくは、少なくとも1つの核局所化シグナルはアセチル化されている。
【0013】
好ましくは、図2C中、リシン27、28、29、179、181、182、183または184のうち少なくとも1以上はアセチル化されている。
【0014】
好ましくは、タンパク質は図2Cのアセチル化パターンを有する。
【0015】
好ましくは、HMGB1はその2つの核局所化シグナルでアセチル化される。
【0016】
また、本発明は、本発明のポリヌクレオチドを含む発現ベクターおよび前記発現ベクターを含む宿主細胞を提供する。
【0017】
本発明のもう1つの態様によると、アセチル化タンパク質HMGB1;またはその変種または断片、またはそれをコードするポリヌクレオチド、および医薬上許容される担体、賦形剤または希釈剤を含む医薬組成物が提供される。
【0018】
また、本発明は、アセチル化タンパク質HMGB1またはその変種または断片、またはそれをコードするポリヌクレオチドモジュレーターの、またはタンパク質HMGB1またはその変種または断片のアセチル化のモジュレーター;である剤を同定する方法であって、
(a)前記剤の存在下および非存在下においてアセチル化タンパク質HMGB1活性を測定するステップと;
(b)ステップ(a)で観察された活性を比較するステップと;
(c)前記化合物の存在下および非存在下でのアセチル化タンパク質HMGB1活性化の観察された差によって、前記剤をモジュレーターと同定するステップと;
を含む方法を提供する。
【0019】
前記活性はタンパク質HMGB1のアセチル化の変調を介して観察することができる。
【0020】
本発明のもう1つの態様によると、単離されたアセチル化タンパク質HMGB1またはその変種または断片のモジュレーター、またはタンパク質HMGB1またはその変種または断片のアセチル化のモジュレーターが提供される。
【0021】
好ましい実施形態において、モジュレーターは非アセチル化HMGB1(またはHMGB1)よりもアセチル化HMGB1に対して特異的、またはある程度選択的であり、すなわち、それは非アセチル化形態よりもアセチル化HMGB1を少なくともある程度より大きく変調する。モジュレーターの選択性を決定するためのアッセイを本明細書に開示する。ある程度の選択性を達成するためのもう1つの方法は、アセチル化経路を標的化することである。
【0022】
従って、モジュレーターはアセチル化タンパク質それ自体の活性に影響することができるか、あるいは例えば、ERK、p38またはJnkシグナリング経路のようなMAP(マイトジェンタンパク質活性化)シグナリング経路を変調し、核からの能動輸出を阻害し、骨髄系細胞の活性化を変調し、LPSの細胞への結合を変調し、IL−1β、TNF−α、LPSまたはHMGB1のような炎症性サイトカインの細胞受容体への結合を変調し、MAPキナーゼ経路を変調し、NF−κB経路を変調し、LPCシグナリングを変調し、ヒストンアセチルトランスフェラーゼ酵素を変調し、またはデアセチラーゼ酵素を変調することによって、HMGB1のアセチル化を変調することができる。広く、我々はこのアプローチを、HMGB1アセチル化経路を変調するということができる。例えば、核からの輸出はレプトマイシンBのようなHMGB1へのCRM1/エクスポルチン結合の阻害剤、U0126のようなERKのリン酸化の阻害剤、またはpCAF、CBPおよびp300のような1以上のヒストンアセチルトランスフェラーゼ(HAT)酵素の阻害剤を用いることによって阻害することができる。
【0023】
モジュレーターは、本発明のスクリーニング方法を用いて同定可能である。
【0024】
1つの実施形態において、モジュレーターはアセチル化タンパク質HMGB1またはその変種または断片、またはそれをコードするポリヌクレオチドのアゴニスト、または、タンパク質HMGB1またはその変種または断片のアセチル化のアゴニストの形態である。
【0025】
もう1つの実施形態において、モジュレーターは、アセチル化タンパク質HMGB1またはその変種または断片の阻害剤、またはタンパク質HMGB1またはその変種または断片のアセチル化の阻害剤の形態である。
【0026】
好ましくは、阻害剤は抗体、アンチセンス配列またはアセチル化タンパク質HMGB1受容体アンタゴニストである。
【0027】
また、本発明は、モジュレーターをコードするポリヌクレオチド、前記ポリヌクレオチドを含む発現ベクター、および前記発現ベクターを含む宿主細胞も提供する。
【0028】
本発明のもう1つの態様によると、アセチル化HMGB1のモジュレーター、および医薬上許容される担体、賦形剤または希釈剤を含む医薬組成物が提供される。
【0029】
1つの実施形態において、医薬組成物は、さらに、タンパク質HMGB1;またはその変種または断片、またはそれをコードするポリヌクレオチド、または、タンパク質HMGB1またはその変種または断片、またはそれをコードするポリヌクレオチドのモジュレーター(好ましくは、タンパク質HMGB1のアップレギュレーター)を含む。
【0030】
1つの実施形態において、医薬組成物はワクチンの形態であり、所望により、さらに、抗原および/またはAPCを含む。
【0031】
本発明のもう1つの態様によると、炎症性サイトカインカスケードの活性化に関連する疾患を治療する方法であって、有効量のアセチル化HMGB1の阻害剤を投与するステップを含む、方法が提供される。
【0032】
前記疾患は敗血症または関連疾患であり得る。
【0033】
前記方法は、さらに、モジュレーターと組み合わせた第二の剤を投与するステップであって、前記第二の剤は初期敗血症メディエータの阻害剤である、ステップを含む。
【0034】
1つの実施形態において、第二の剤はTNF、IL−1α、IL−1β、MIFおよびIL−6から選択されるサイトカインの阻害剤である。
【0035】
もう1つの実施形態において、第二の剤はTNFまたはIL−1受容体アンタゴニスト(IL−lra)に対する抗体である。
【0036】
本発明のもう1つの態様によると、敗血症または関連疾患を含む、炎症性カスケードの活性化に関連する疾患を治療する際に用いる医薬の調製のためのアセチル化HMGB1の阻害剤の使用が提供される。
【0037】
また、本発明は、敗血症および関連疾患の重傷度をモニターし、および/またはその臨床的経過を予測する方法であって、試料中のアセチル化タンパク質HMGB1の濃度を測定するステップと、その濃度を、同様の試料中のアセチル化タンパク質HMGB1の正常な濃度範囲を代表するアセチル化タンパク質HMGB1の標準と比較するステップであって、それにより、アセチル化タンパク質HMGB1のより高いレベルは深刻な疾患および/または毒性反応を示す、ステップを含む、方法を提供する。
【0038】
本発明は、炎症カスケードの活性化に関連する疾患を診断し、および/またはその経過を予測する方法であって、試料中のアセチル化タンパク質HMGB1の濃度を測定し、その濃度を、同様な試料中のアセチル化タンパク質HMGB1の正常な濃度範囲を代表するアセチル化タンパク質HMGB1の標準と比較するステップであって、それにより、アセチル化タンパク質HMGB1のより高いレベルはそのような疾患および/または深刻な疾患を示す、ステップを含む、方法をさらに提供する。
【0039】
1つの実施形態において、試料は血清試料である。
【0040】
本発明のもう1つの実施形態によると、減量を行い、または肥満を治療する方法であって、有効量のアセチル化タンパク質HMGB1;その断片または変種、またはそれをコードするポリヌクレオチド、または、アセチル化タンパク質HMGB1のアップレギュレーター、またはHMGB1のアセチル化のアップレギュレーターを投与するステップを含む、方法が提供される。
【0041】
本発明のもう1つの態様によると、減量を行い、または肥満を治療するのに用いる医薬の調製のためのアセチル化タンパク質HMGB1;またはその断片または変種、またはそれをコードするポリヌクレオチド、または、アセチル化タンパク質HMGB1のアップレギュレーター、またはHMGB1のアセチル化のアップレギュレーターの使用が提供される。
【0042】
本発明のもう1つの態様によると、タンパク質HMGB1またはその断片または変種、またはそれをコードするポリヌクレオチド;タンパク質HMGB1またはその断片または変種のアゴニスト;またはタンパク質HMGB1またはその断片または変種のアンタゴニストでの療法を受けている患者に投与するためのアセチル化HMGB1の阻害剤の使用が提供される。
【0043】
本発明のもう1つの態様によると、タンパク質HMGB1またはその断片または変種、またはそれをコードするポリヌクレオチド;タンパク質HMGB1またはその断片または変種のアゴニスト;またはタンパク質HMGB1またはその断片または変種のアンタゴニストでの療法を受けている患者を治療するにおいて用いる医薬の調製用のアセチル化HMGB1の阻害剤の使用が提供される。
【0044】
本発明のもう1つの態様によると、免疫応答を刺激する方法であって、タンパク質HMGB1またはその変種または断片、またはそれをコードするポリヌクレオチド、およびアセチル化HMGB1の阻害剤を投与するステップを含む、方法が提供される。
【0045】
本発明のもう1つの態様によると、免疫応答を刺激するのに用いる医薬の調製のためのタンパク質HMGB1またはその変種または断片、またはそれをコードするポリヌクレオチド、およびアセチル化HMGB1の阻害剤の使用が提供される。
【0046】
本発明のもう1つの態様によると、癌または細菌もしくはウイルス感染の予防または治療方法であって、タンパク質HMG1またはその変種または断片、またはそれをコードするポリヌクレオチド、およびアセチル化HMGB1の阻害剤を投与するステップを含む、方法が提供される。
【0047】
本発明のもう1つの態様によると、癌または細菌もしくはウイルス感染を治療するのに用いられる医薬の調製用の、タンパク質HMGB1またはその変種または断片、またはそれをコードするポリヌクレオチド、およびアセチル化HMGB1の阻害剤の使用が提供される。
【0048】
本発明のもう1つの態様によると、活性化APCの生産方法であって、APCをタンパク質HMGB1またはその変種または断片、またはそれをコードするポリヌクレオチドおよびアセチル化HMGB1の阻害剤に暴露するステップを含む、方法が提供される。
【0049】
1つの実施形態において、前記APCはインビトロで暴露される。
【0050】
もう1つの実施形態において、前記APCは抗原にも暴露される。
【0051】
もう1つの実施形態において、前記APCはインビボにて抗原に暴露される。
【0052】
さらなる実施形態において、前記阻害剤はインビボで投与される。
【0053】
もう1つの実施形態において、前記APCおよび/または抗原はT細胞にも暴露される。
【0054】
さらにもう1つの実施形態において、前記APCおよび/または抗原はインビボにてT細胞に暴露される。
【0055】
前記抗原は、好ましくは、腫瘍、細菌またはウイルス抗原である。
【0056】
好ましくは、タンパク質HMGB1はワクチンの形態である。
【0057】
また、本発明は、組織の修復および/または再生を達成し;炎症を治療し、および結合組織の再生を促進しおよび/または誘導する方法であって、タンパク質HMGB1、またはその断片または変種、またはそれをコードするポリヌクレオチド、およびアセチル化HMGB1の阻害剤を投与するステップを含む、方法が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0058】
さて、本発明の種々の好ましい特徴および実施形態を非限定的例によって記載する。
【0059】
本発明の実施は、特に示さない限り、当業者の能力内にある化学、分子生物学、微生物学、組換えDNAおよび免疫学の従来の技術を使用する。そのような技術は文献に説明されている。例えば、J.Sambrook,E.F.Fritsch,and T.Maniatis,1989,Molecular Cloning:A Laboratory Manual,Second Edition,Books 1-3,Cold Spring Harbor Laboratory Press;Ausubel,F.M.et al.(1995 and periodic supplements;Current Protocols in Molecular Biology,ch.9,13,and 16,John Wiley & Sons,New York,N.Y.);B.Roe,J.Crabtree,and A.Kahn,1996,DNA Isolation and Sequencing:Essential Techniques,John Wiley & Sons;J.M.Polak and James O'D.McGee,1990,In Situ Hybridization:Principles and Practice;Oxford University Press;M.J.Gait(Editor),1984,Oligonucleotide Synthesis:A Practical Approach,Irl Press;and,D.M.J.Lilley and J.E.Dahlberg,1992,Methods of Enzymology:DNA Structure Part A:Synthesis and Physical Analysis of DNA Methods in Enzymology,Academic Press.参照。これらの一般的なテキストの各々を本明細書に参照として組み込む。
【0060】
[モジュレーター]
本明細書中で用いるように、用語「HMGB1のアセチル化」は用語「HMGB1アセチル化経路」と同義であり、HMGB1のアセチル化をもたらす上流または下流の事象のいずれかの1以上をいう。
【0061】
本明細書中で用いる用語「変調する」とは、HMGB1アセチル化経路の生物学的活性の変化または改変をいう。従って、HMGB1アセチル化の変調は、例えば、アセチル化経路の正常な生物学的活性を少なくともある程度ブロックする化合物によるHMGB1アセチル化の阻害または下方調節を含む。別法として、用語「変調」とは、例えば、アセチル化経路の正常な生物学的活性を少なくともある程度刺激または上方調節する化合物によるHMGB1アセチル化の活性化または上方調節をいうことができる。
【0062】
本明細書で用いるように、生物学的または化学的剤に関して、用語「変調する」は、例えば、本発明のアッセイにおけるアセチル化HMGB1の活性の増強または阻害を含み;そのような変調は直接的(例えば、限定されるものではないが、他の物質の切断、または他の物質のタンパク質への競合的結合を含む)または間接的(例えば、初期生産をブロックするまたは、必要であれば、修飾経路の活性化による)であってもよい。
【0063】
「変調」とは少なくとも10%、15%、20%、25%、50%、100%またはそれ以上だけ生物学的活性またはプロセスの測定可能な機能的特性を増加させるまたは減少させる能力をいい;そのような増加または減少は、シグナル変換経路の活性化のような特異的事象が起こることに付随することができ、および/または特定の細胞型においてのみ発現することができる。
【0064】
本発明の好ましい実施形態において、アセチル化HMGB1のモジュレーターはHMGB1のモジュレーター、すなわち、HMGB1を上方調節または下方調節できる化合物と組み合わせて用いられる。
【0065】
用語「モジュレーター」とは生物学的高分子(例えば、核酸、タンパク質、非ペプチド、または有機分子)のような(天然に生じるまたは天然に生じない)化学的化合物または細菌、植物、真菌または動物(特に哺乳動物)細胞または組織のような生物学的物質から作成された抽出物、または無機元素または分子さえいう。モジュレーターは、本明細書中に記載されたスクリーニングアッセイに含ませることによって、生物学的プロセスまたは複数プロセス(例えば、アゴニスト、部分的アンタゴニスト、部分的アゴニスト、アンタゴニスト、阻害剤など)の(直接的または間接的)阻害剤またはアクチベーターとしての潜在的活性につき評価される。モジュレーターの複数活性(または活性)は知られており、未知であり、または部分的に知られているであろう。そのようなモジュレーターは本明細書中に記載された方法を用いてスクリーニングすることができる。
【0066】
用語「候補モジュレーター」とは、推定モジュレーターとして本発明の1以上のスクリーニング方法によってテストされるべき化合物をいう。通常、後により十分に記載するように、0.01μM、0.1μM、1.0μM、および10.0μのような種々の所定の濃度をスクリーニングで用いる。テスト化合物対照はテスト化合物の非存在下におけるシグナルの測定、または標的を変調することが知られている化合物に対する比較を含むことができる。
【0067】
当分野で用いられる用語「アンタゴニスト」は、一般には、酵素に結合し、前記酵素の活性を阻害する化合物をいうと解釈される。しかしながら、本明細書で用いる前記用語は、必ずしもそれに結合することによるのではなく、分子の活性を阻害するいずれの剤も広くいうことを意図する。用語「アンタゴニスト」は「阻害剤」と交換可能に用いられる。
【0068】
従って、それは、タンパク質の発現もしくは分子の生合成、または当該阻害剤の活性のモジュレーターの発現に影響する剤を含む。阻害される具体的活性は分子の特徴的ないずれの活性、例えば、後期炎症経路を活性化する能力であってもよい。
【0069】
アンタゴニストは、関連分子上の1以上の部位、例えば、HMGボックスに結合でき、またそれにつき競合することができる。好ましくは、そのような結合は当該分子および他の存在の間の相互作用をブロックする。
【0070】
アセチル化HMGB1タンパク質またはタンパク質阻害剤の活性のブロックは、細胞中でのタンパク質または阻害剤の発現のレベルを低下させることによって達成することもできる。例えば、細胞をアンチセンス化合物、例えば、タンパク質またはタンパク質阻害剤mRNAに特異的な配列を有するオリゴヌクレオチドで処理することができる。
【0071】
本明細書中で用いるように、一般に、用語「アンタゴニスト」は、限定されるものではないが、原子または分子のような剤を含み、分子は無機または有機、生物学的エフェクター分子、および/または生物学的エフェクター分子のような剤をコードする核酸、タンパク質、ポリペプチド、ペプチド、核酸、ペプチド核酸(PNA)、ウイルス、ウイルス様粒子、ヌクレオチド、リボヌクレオチド、ヌクレオチドの合成アナログ、リボヌクレオチドの合成アナログ、修飾されたヌクレオチド、修飾されたリボヌクレオチド、アミノ酸、アミノ酸アナログ、修飾されたアミノ酸、修飾されたアミノ酸アナログ、ステロイド、プロテオグリカン、脂質、脂肪酸および炭水化物であり得る。剤は溶液または懸濁液であり得る(例えば、結晶、コロイドまたは他の粒状形態)。前記剤はモノマー、ダイマー、オリゴマーなど、または複合体の形態であり得る。
【0072】
用語「アンタゴニスト」、「アップレギュレーター」および「剤」は、限定されるものではないが、構造タンパク質、酵素、(インターフェロンおよび/またはインターロイキンのような)サイトカイン、抗生物質、ポリクローナルまたはモノクローナル抗体、またはFv断片のようなその効果的部分(その抗体またはその部分は天然、合成またはヒト化されていてよく)、ペプチドホルモン、受容体、シグナリング分子または他のタンパク質を含むタンパク質、ポリペプチドまたはペプチド;限定されるものではないが、オリゴヌクレオチドまたは修飾されたオリゴヌクレオチド、アンチセンスオリゴヌクレオチドまたは修飾されたアンチセンスオリゴヌクレオチド、cDNA、ゲノミックDNA、人工または天然染色体(例えば、酵母人工染色体)またはその部分、mRNA、tRNA、rRNAまたはリボザイムを含むRNA、またはペプチド核酸(PNA)を含む後記定義の核酸;ウイルスまたはウイルス様粒子;修飾されたまたは修飾されていなくてもよいヌクレオチドまたはリボヌクレオチドまたはその合成アナログ;修飾されたまたは修飾されていなくてもよいアミノ酸またはそのアナログ;非ペプチド(例えば、ステロイド)ホルモン;プロテオグリカン;脂質;または炭水化物を含む。ポリペプチドの活性部位に結合し、前記部位を占有し、それにより、正常な生物学的活性が妨げるように触媒部位を基質に接近不可能とする無機および有機化学物質を含む小分子もまた含まれる。小分子の例は、限定されるものではないが、小ペプチドまたはペプチド様分子を含む。
【0073】
[HMGB1、アセチル化HMGB1およびアセチル化経路]
前記したように、HMGB1は高移動度群タンパク質としても知られたHMGタンパク質のBファミリーのメンバーである。HMGB1は哺乳動物においてほとんど同一である(約99%アミノ酸同一性)。好ましくは、本発明はヒトHMGB1を使用する。ラットHMGB1はBianchi et al.,1989,Specific recognition of cruciform DNA by nuclear protein HMG1,Science 243:1056-1059(データバンクY00463における配列のアクセス番号)に報告されている。ヒトHMGB1およびマウスHMGB1はいくつかのアクセス番号(例えば、ヒトについてはNM 002128およびマウスについてはNM 010439)で報告されている。
【0074】
WO00/47104に報告されているように、(HMG−1としてそこに示された)HMGB1は非ヒストンクロマチン関連タンパク質の急増する高移動度群(HMG)に属する25kDa染色体核タンパク質である。群として、HMGタンパク質はユニークなDNA構造を認識し、ヌクレオソーム構造および安定性の決定を含む多様な細胞機能、ならびに転写および/または複製に関連付けられてきた。HMGタンパク質は、最初に、ポリアクリルアミドゲルにおける高電気泳動移動度を有するクロマチン成分としてJohnsおよびGoodwinによって特徴付けられた(The HMG Chromosomal Proteins,E.W.Johns,Academic Press,London,1982参照)。より高等な真核生物はHMGタンパク質の3つのファミリー;HMGAファミリー(以前のHMG−I/Y)、HMGBファミリー(以前のHMG1、HMG2およびHMG4)、およびHMGNファミリー(以前のHMG−14/−17)を呈する。前記ファミリーはサイズおよびDNA結合特性によって識別することができる。HMGタンパク質は種にわたって高度に保存されており、普遍的に分布し、かなり豊富であり、0.35MのNaCl中のクロマチンから抽出可能であって、5%過塩素酸またはトリクロロ酢酸に可溶性である。一般に、HMGBタンパク質はDNAを曲げ、種々の転写因子の、例えば、プロゲステロン受容体、エストロゲン受容体、HOXタンパク質、およびOct1、Oct2およびOct6を含むそれらの同族配列への結合を容易とすると考えられる。最近、いくつかの転写因子および他のDNA相互作用タンパク質を含むタンパク質の大きなかなり多様な群がHMGB1と同様な1以上の領域を含み、この特徴はHMGボックスまたはHMGBドメインとして知られるようになったことが明らかとなった。HMGB1をコードするcDNAはヒト、ラット、マウス、モールラット、マス、ハムスター、ブタおよび子牛細胞からクローン化されており、HMGB1は全ての脊椎動物細胞核で豊富であると考えられる。前記タンパク質は80%の範囲で種間配列同一性にて高度に保存されている。クロマチンにおいては、HMGB1はヌクレオソームの間のリンカーDNA、およびパリンドローム、十字形およびステムループ構造、ならびにシスプラチン修飾DNAのような種々の非B−DNA構造に結合する。HMGB1によるDNA結合は、一般には、配列不感受性であると考えられる。HMGB1は洗浄された核またはクロマチンから最も頻繁に調製されるが、前記タンパク質は細胞質においても検出されている(LandsmanおよびBustin,BioEssays 15:539-546,1993;Baxevanis and Landsman,Nucleic acids Research 23:514-523,1995でレビューされている)。
【0075】
より詳細には、HMGB1は2つの相同なDNA結合ドメイン、HMGボックス、およびアスパラギン酸およびグルタミン酸のC末端ドメインから構成される三部構造を有する(Bustin,1999,Bianchi and Beltrame,2000,およびThomas and Travers,2001にレビューされている)。ほとんどの細胞において、HMGB1は核に位置し、そこで、それは核タンパク質組立てを容易とする建造タンパク質として作用する。それはDNAの小さな溝に結合し、二重ラセンの局所的歪みを誘導する。その配列特異性の欠如は、(HoxおよびPouタンパク質、ステロイドホルモン受容体p53、TBP、いくつかのウイルスタンパク質およびRAG1リコンビナーゼを含む)異なるタイプの核因子によるタンパク質−タンパク質相互作用を介する動員によって相殺される。HMGB1はヌクレオソーム(Falciola et al.,1997;Nightingale et al.,1996)に結合することができるが、インビボにて、そのクロマチンとの会合は非常に動的である。光漂白実験は、クロマチン上のHMGB1分子の平均滞留時間が2秒未満であることを示した(Scaffidi et al.,2002)。
【0076】
Hmgb1ノックアウトマウスの表現型により、転写のレギュレーターとしてのHMGB1の機能的受容性が確認された。それらは誕生の後まもなく死亡し、グルココルチコイド受容体によって発揮される転写制御の欠陥を示す(Calogero et al.,1999)。
【0077】
驚くべきことに、その核内機能を超えて、HMGB1は細胞の外部にも中枢的機能を有する(Mueller et al.,2001bによってレビューされている)。Wang et al.(1999a)は、マウスにおけるエンドトキシン死亡率の後期メディエータとしてのHMGB1を同定し、LPS、TNFまたはIL−1によって刺激されたマクロファージおよび骨髄系細胞は遅延した応答としてHMGB1を分泌することを示した。従って、HMGB1はサイトカインとして作用することができ、それに対する受容体を備えた細胞においていくつかの異なる応答を誘導する。例えば、HMGB1は炎症細胞を暫増させ、TNFの分泌を促進する。HMBG1が細胞を活性化させて応答させるシグナリングメカニズムについてはほとんど知られていない。我々は、平滑筋細胞の移動が、内皮細胞、平滑筋細胞、単核食細胞およびニューロンで発現される免疫グロブリンスーパーファミリーのマルチリガンド受容体であるRAGEへの結合を通じて媒介されることを示した(Degryse et al.,2001およびその中の引用文献)。
【0078】
単球に加えて、発生するニューロンおよび少数の他の細胞型も、特異的刺激に応答してHMBG1を分泌する(Mueller et al.,2001bによってレビューされている)。しかしながら、ほとんどの細胞は能動的にHMGB1を分泌することができない。
【0079】
骨髄系細胞において、分泌は、細胞質で新たに作成されたHMGB1タンパク質には関係しないが、核貯蔵の枯渇を通じて進行する。核タンパク質の分泌は恐るべき攻撃を引き起こす。我々は、最近、骨髄系細胞の活性化が、核からのHMGB1の分泌リソソームへの再分布をもたらすことを示した(Gardella et al.,2002)。HMGB1は、小胞体およびゴルジ体を横切らず、これは、タンパク質中のリーダーペプチドの非存在に合致する。炎症インターロイキン(IL)−1βの初期メディエータもまた、分泌リソソームのエクソサイトーシスに関連する非古典的経路を介して骨髄系細胞によって分泌される(Andrei et al.,1999)。しかしながら、初期および後期炎症因子としてのIL−1βおよびHMGB1の役割を維持する際に、これらの二つのタンパク質を含有する分泌小胞の排出は異なる刺激に対して異なる時点で応答する。IL−1β分泌は、活性化の後まもなく骨髄系細胞によってオートクライン的に放出されるATPによってより早く誘導される;HMGB1分泌は、炎症部位において後に生じる脂質であるリソホスファチジルコリン(LPC)によってトリガーされる(Gardella et al.,2002)。
【0080】
本研究は、それにより、HMGB1が核から分泌リソソームに移動する工程の分子的特徴付けを提供する。我々は、活性化された骨髄系細胞において、HMGB1がアセチル化によってかなり修飾され、アセチル化リシンの二つの主なクラスターは二つの独立した核局所化シグナルに属することを見出した。また、我々は、HMGB1が非古典的な核輸出シグナル(NES)を有することを証明した。従って、ほとんどの細胞において、HMGB1は継続的に核から細胞質へ行き来するが、平衡はほとんど完全に核蓄積に向けてシフトしている。デアセチラーゼ阻害剤での細胞の処理はHMGB1アセチル化を引き起こし、それはその核への輸入をシャットするが、輸出は影響を受けないままにし、次いで、前記タンパク質は再び細胞質に位置する。骨髄系細胞は活性化に応じてHMGB1をアセチル化し、前骨髄球細胞においてLPSまたは炎症性サイトカインのそれらの表面受容体への結合は、ERKを犯すMAPキナーゼ経路の活性化を促進する。その結果、HMGB1はアセチル化され、核から細胞質へ移動し、そこで、それは分泌リソソームに濃縮され、第二のシグナルLPCに応答して分泌され得る。従って、骨髄系細胞は、それが炎症性刺激に応答してHMGB1のアセチル化を調節できるようにし、クロマチンタンパク質をサイトカインにスイッチングすることができるシグナリング経路を有する。
【0081】
[HMGB1は複数部位においてアセチル化され得る。]
我々は、HMGB1が多重にアセチル化できることを最初に確立した。Allfreyおよび共同研究家の研究(Sterner et al.,1979)は、HMGB1のリシン2および11は、ヒストンアセチル化が最初に発見されたときにほぼ同時にアセチル化に従うことを示した。これはほとんどの組織および細胞系統で確かに当てはまるが、胸腺、単球および、恐らくは、骨髄系起源の全ての細胞において、HMGB1内の少なくとも17の異なるリシンがアセチル化でき(リシン2および11を含む)、単一HMGB1分子は10回までアセチル化することができる。我々は、(ポリ−ADP−リボシル化以外の)いずれかの他の翻訳後修飾も検出しなかったが、原理的には、このレベルのアセチル化は、もし全てのリシンが独立してアセチル化されれば、100000を超える異なるHMGB1分子種を可能とする。現実には、いくつかのリシンは同時にアセチル化されるようであり、特筆すべきは、調和したリシンアセチル化の二つの領域はNLS機能を有する配列に対応する。
【0082】
[HMGB1は核および細胞質の間を継続的に行き来する。]
HMGB1(分子量25000)は、核ポアを通じて受動的に拡散するのに十分小さく、事実、もし細胞が4℃において数時間(エネルギー駆動輸送をブロックする条件)インキュベートされれば、前記タンパク質のかなりの部分が細胞質に拡散する。しかしながら、HMGB1は、前記タンパク質におけるCRM1−相互作用表面と定義される、二つの独立したNLSおよび二つのNESも含む。1つのNLSは古典的な二部NLSに完全にマッチし、他の1つはむしろ一部NLSに緩く関連する。前記NLSは二つのHMGボックスで起こるので相互に関連することができるが、今日知られた他のものに対する配列同様性は有さない。二つのNLSおよび(少なくとも)1つのNESもまた群E Soxタンパク質(Sox8、9および10)に存在し、これはそれらの転写活性で必須である。(Sudbeck and Scherer,1997;Rehberg et al.,2002)。機能的には、輸入/輸出シグナルの存在は、定常状態においては、ほとんどのHMGB1は核にあるが、HMGB1は全ての細胞型において核および細胞質区画の間を能動的に行き来することを確実とする。
【0083】
一般的なデアセチラーゼ阻害剤はHMGB1の過剰アセチル化および前記タンパク質の一部の細胞質への再移動を引き起こす。これは恐らくは全ての細胞型で起こり、双方のNLS内のリシンのアセチル化によるのであろう。ほとんどがアセチル化リシンに似た、NLS内のリシンクラスターのグルタミンへの突然変異は、NLS機能をなくするのに十分である。アセチル化による核vs細胞質局所化の調節は以前転写因子HNF4およびCTIIAにつき記載されている(Suotoglou et al.,2000;Spilianakis et al.,2000);しかしながら、これらの場合、リシンアセチル化は、NES機能およびタンパク質輸出メカニズムに関連するように見えるプロセスにおいて核蓄積を促進する。非常に最近、ウイルスタンパク質E1Aのアセチル化はその細胞質蓄積を引き起こすことが示されている(Madison et al.,2002)。我々が記載するプロセスは規模を除いては同様であり;細胞当たり約100万のHMGB1分子がアセチル化されなければならない。
【0084】
[骨髄系細胞はHMGB1のアセチル化を制御する。]
骨髄系細胞および前骨髄球細胞は、クロマチン区画をかなりアセチル化して、それを分泌に再び向け、それをサイトカインとして用いる特異的な能力を発達させなければならない。核輸出、小胞蓄積および分泌は、その発生が従前の工程の完了に依存する別々の工程である。従って、分泌リソソームに蓄積されたHMGB1はアセチル化されるべきことは自然なことに過ぎない。というのは、これは核タンパク質の細胞質再配置に必要だからである。しかしながら、HMGB1アセチル化は小胞蓄積に必要ではなく:分泌リソソームは、休息するU937.12細胞の4℃におけるインキュベーションの間に細胞質へ拡散する過少アセチル化HMGB1タンパク質のいくらかを捕獲する。全ての分泌リソソームのほとんどは、有糸分裂の間に細胞質に放出される過少アセチル化HMGB1を摂取する。従って、細胞質HMGB1の小胞蓄積は、単純に分泌リソソームの存在を必要とするだけの、欠陥プロセスであるようである。これは、さらに、HMGB1分泌についての第二のシグナルとしてのリソホスファチジルコリン(LPC)の生理学的重要性を強調する(Gardella et al.,2002);もし第二のシグナルが必要でなければ、新たに分裂した細胞からのHMGB1のいくらかの分泌は回避できないであろう。
【0085】
骨髄系細胞は活性化された場合にHMGB1を別の経路に切り替えるに過ぎない。活性化は、それら自体の受容体への炎症性分子(IL−1β、TNF−α、LPS、HMGB1それ自体)の結合によってトリガーされ、これは細胞の分化に付随する。しかしながら、また、TSAが過剰アセチル化を引き起こす場合には、非活性化U937.12細胞はHMGB1を小胞に輸送することができる。TSAは、潜在的には、炎症性分子によってトリガーされる同一種類の分化を引き起こすことができるが、これは、ありそうもなく見える。というのは、活性化のいくつかの形態学的マーカーが存在しないからである(示さず)。
【0086】
骨髄系細胞中の表面受容体へのプロ炎症性シグナルの結合は、カルモジュリンおよびNFAT/カルシネウリン、NF−κBおよび全てのMAPキナーゼを通じてのカルシウムシグナリングを含む多数の経路を活性化する(ERK、Jnkおよびp38経路)。我々は、U937.12前骨髄球細胞において、ERKリン酸化の阻害がHMGB1の分泌リソソームへのLPSに誘導される移動をブロックすることを示した。ERKキナーゼは、特異的遺伝子の発現を制御する転写因子のリン酸化を通じての間接的よりはむしろ、HMGP1アセチル化を担う酵素を直接的に制御するに違いない。というのは、LPS活性化U937.12細胞または単球いずれかのシクロヘキシミド処理は、核から細胞質小胞へのHMGB1の再配置を妨げないからである。他の骨髄系細胞(例えば、単球、小神経膠細胞、クッパー細胞、樹状細胞)は、他のシグナリング経路(例えば、キナーゼ経路Jnkまたはp38)を用いて、HMGB1アセチル化を制御することができる。従って、輸送はU397細胞においてERKによって制御されるが、それは他の細胞においては、p38によって、あるいはさらに他の細胞においてはJnkによって制御でき、あるいは事実これらの組合せによって制御できる。事実、小神経膠細胞およびマクロファージ双方はLPSに応答するが、一方はERKを用いるが、他方はそれを用いないことが示されている(Watters et al.(2002)J.Biol.Chem.277:9077-9087;Barbour et al.(1998)Mol.Immunol.35:977-87;Rao et al.(2002)J.Toxicol.Environ.Health.65:757-68)。ERK、p38およびJnkは、全て、セリン/スレオニンキナーゼであり、これは、全て、rasおよび/またはRAC/CDC42の下流にある。以前、異なる骨髄系細胞型が、特異的サイトカイン、例えば、TNFの放出を制御するために異なるシグナリング経路を用いることが示されている。本発明は、HMGB1アセチル化に導く骨髄系細胞によって用いられる全ての経路を網羅する。
【0087】
[骨髄系細胞は、後期炎症性メディエータとして組織損傷シグナルを用いる。]
我々は、最近、膜の一体性が壊死の間に失われる場合、(全ての他の可溶性タンパク質と共に)HMGB1が受動的に漏出することを示した(Degryse et al.,2001;Scaffidi et al.,2002)。壊死細胞によるHMGB1の放出は活性な分泌とは異なる。というのは、全く受動的なプロセスだからである。HMGB1は濃度グラジエントに従って細胞外媒質中に希釈される。我々は、従って、特に、アポトーシス細胞は、それがそれらの膜の一体性を失う場合でさえ(後期アポトーシスまたは二次壊死)、HMGB1をそれらのクロマチンにしっかりと結合させて保持するゆえに、細胞外HMGB1は壊死についてのシグナルであると仮定した(Scaffidi et al.,1982)。一次壊死は外傷、低酸素症または中毒によって引き起こされ、これは、修復を必要とする組織損傷に関連する。このシナリオにおいて、細胞外HMGB1に結合するRACEのような受容体の発展(Hori et al.,1995)は、組織損傷によって直接的には傷つけられない細胞に、一定の距離にて、損傷が起こったことを認識する能力を付与する。いくつかの細胞は移動して死滅細胞を置き換え(Degryse et al.,2001)、いくつかは単純に分裂し、いくつかは身体中の末端領域への組織損傷シグナルを増幅し、伝達する。骨髄系統(単球、マクロファージ、好中球など)の細胞はこの後者のクラスに属するようであり:それらは壊死の部位に暫増し、活性化されてTNF−αおよび他のプロ炎症性サイトカインを分泌する(Andersson et al.,2000;Scaffidi et al.2002)。顕著には、活性化から約16時間後に単球およびマクロファージもHMGB1を分泌でき(Wang et al.,1999a)、損傷シグナリングのサイクルを再び開始することができる。
【0088】
HMGB1によって活性化された細胞によるHMGB1の分泌は内蔵される遅延を有する閉じたフィードバックループを作り、従って、炎症性細胞は適時に組織損傷についてのシグナルを保持することができ、HMGB1は初期および後期双方の炎症シグナルとして働く。この回路は概念的には単純であり、経済的かつエレガントである。我々の解釈では、最初に炎症シグナリング用のインプットとして働いた同一タンパク質をアウトプットとして提供する骨髄系細胞の能力は分子模倣の例であって、組織損傷シグナルとしてのHMGB1の発展の後に発展したに違いない。従って、組織損傷についてのシグナルは一般的な危険シグナルで発生した。炎症性細胞は、やはり、TNF−α、IL−1βおよびLPSに応答してHMGB1を分泌することができる。
【0089】
炎症についてのインプットおよびアウトプットタンパク質の同一性は正のフィードバックループを設定することができ、炎症性応答は潜在的に極端な結果を伴って自己増幅性であり得る。HMGB1のための分泌プロセスの性質は有用な回路ブレーカーを提供する。単球によるHMGB1の分泌は少なくとも16時間を要し、IL−1βの分泌よりも後に到来し、(分泌小胞での蓄積とは反対に)現実の分泌は第二のシグナルとしてLPCを必要とする(Gardella et al.,2002)。従って、炎症シグナルの適時の継続は条件付である。
【0090】
分泌されたHMGB1は高度にアセチル化され、他方、受動的に放出されたHMGB1はそうではないという認識は、潜在的に、壊死関連シグナリングを阻害することなく、(例えば、特異的抗体とで)後期炎症シグナルとして機能するHMGB1のみを阻害する能力を提供する。
【0091】
さらに、アセチル化プロセスそれ自体を標的化して、それが、例えば、敗血症ショックの間に有害となる場合に骨髄系細胞からのHMGB1の分泌をブロックすることができる。
【0092】
[変種、断片および誘導体]
また、本発明は、アセチルHMGB1の変種、誘導体および断片に関し、これは、アセチル化を模倣するHMGB1の変種、誘導体および断片を使用することができる。好ましくは、変種配列などは本明細書中に提示する配列と少なくとも同程度に生物学的に活性である。
【0093】
本明細書中で用いるように、「生物学的に活性」とは、天然に生じる配列の、同様な構造的機能(必ずしも同程度である必要はない)および/または同様な調節機能(必ずしも同程度である必要はない)および/または同様な生化学的機能(必ずしも同程度である必要はない)を有する配列をいう。
【0094】
好ましくは、そのような変種、誘導体および断片は、一方または双方のHMGボックスを含む。
【0095】
用語「タンパク質」は単一鎖ポリペプチド分子ならびに複数ポリペプチド複合体を含み、そこでは、個々の構成ポリペプチドは共有結合または非共有結合手段によって連結されている。用語「ポリペプチド」は、典型的には、5、10または20を超えるアミノ酸を有する長さが2以上のアミノ酸のペプチドを含む。
【0096】
本発明で用いるアミノ酸配列は特定の配列またはその断片、または特定のタンパク質から得られた配列に制限されず、いずれかの源、例えば、関連ウイルス/細菌タンパク質、細胞ホモログおよび合成ペプチド、ならびにその変種または誘導体から得られた相同配列も含むことが理解され得る。
【0097】
従って、本発明は、本発明で用いるアミノ酸配列の変種、ホモログまたは誘導体ならびに本発明で用いるアミノ酸配列をコードするヌクレオチド配列の変種、ホモログまたは誘導体を網羅する。
【0098】
本発明の意味では、相同配列は、アミノ酸レベルで少なくとも60、70、80または90%同一、好ましくは、少なくとも95または98%同一であるアミノ酸配列を含むように採用される。特に、相同性は、典型的には、非必須隣接配列よりはむしろAPC活性化に必須であることが知られている配列の領域に関して考えられるべきである。相同性は同様性の点でも考えられるが(すなわち、同様な化学的特性/機能を有するアミノ酸残基)、本発明の意味では、配列同一性の点で相同性を表すのが好ましい。
【0099】
相同性の比較は目によって、またはより通常には容易に入手できる配列比較プログラムの助けを借りて行うことができる。これらの商業的に入手可能なコンピュータープログラムは2以上の配列の間の%相同性を計算することができる。
【0100】
%相同性は連続配列にわたって計算することができ、すなわち、1つの配列を他の配列と整列させ、1つの配列における各アミノ酸を他の配列における対応するアミノ酸と、一度に1つの残基にて、直接的に比較する。これは「アンギャップド」整列と呼ばれる。典型的には、そのようなアンギャップド整列は比較的短い数の残基(例えば、50未満の連続アミノ酸)にわたってのみ行われる。
【0101】
これは非常に単純かつ無矛盾方法であるが、それは、例えば、配列の他の方法の同一対において、1つの挿入または欠失が引き続いてのアミノ酸残基が整列から外れるようにし、従って、潜在的に、全体の整列が行われた場合に%相同性をかなり低下させることを考慮に入れていない。結果として、ほとんどの配列比較方法は、全体としての相同性スコアを不当にペナルティを与えることなく、可能な挿入および欠失を考慮に入れる最適な整列を生じさせるよう設計される。これは、「ギャップ」を配列整列に挿入して、局所的相同性を最大化するよう努めることによって達成される。
【0102】
しかしながら、これらのより複雑な方法は、同一数の同一アミノ酸につき、できる限り少数のギャップ(2つの比較された配列の間のより高い関連性を反映する)における配列整列が、多くのギャップにおけるものより高いスコアを達成するように整列が起こる各ギャップに「ギャップペナルティ」を割り当てる。ギャップの存在に対して比較的高いコストおよびギャップにおける各引き続いての残基に対してより小さなペナルティを科する「密接関連ギャップコスト」が典型的には用いられる。これは、最も普通に用いられるギャップスコアリングシステムである。高ギャップペナルティは、もちろん、より少数のギャップをもっての最適化整列を生じる。ほとんどの整列プログラムはギャップペナルティが修飾されるのを可能とする。しかしながら、配列比較のためのそのようなソフトウェアを用いる場合、デフォルト値を用いるのが好ましい。例えば、GCG Wisconsis Bestfitパッケージ(後記参照)を用いる場合、アミノ酸配列に対するデフォルトギャップペナルティはギャップについては−12であり、各延長については−4である。
【0103】
従って、最大%相同性の計算は、まず、ギャップペナルティを考慮に入れて、最適整列の生成を必要とする。そのような整列を実行するための適当なコンピュータープログラムはGCG Wisconsin Bestfitパッケージ(University of Wisconsin,U.S.A.:Devereux et al.,1984,Nucleic Acids Research 12:387)を含む。配列比較を実行できる他のソフトウェアの例は限定されるものではないが、BLASTパッケージ(Ausubel et al.,1999 ibid-Chapter18参照)、FASTA(Atschul et al.,1990,J.Mol.Biol.,403-410)および比較ツールのGENEWORKSスイートを含む。BLASTおよびFASTA双方はオフラインおよびオンラインサーチングで利用できる(Ausubel et al.,1999 ibid,頁7-58〜7-60参照)。しかしながら、GCG Bestfitプログラムを用いるのが好ましい。
【0104】
最終%相同性は密度の項目で測定することができるが、整列プロセスそれ自体は、典型的には、オールオアナッシング対比較に基づいてはいない。その代わり、化学的同様性または進化の距離に基づく各対様式比較にスコアを割り当てるメモリを付けた同様性スコアマトリックスが一般に用いられる。通常に用いられるそのようなマトリックスの例はBLOSUM62マトリックスプログラムのBLASTスイートに対するデフォルトマトリックスである。GCG Wisconsinプログラムは、一般には、公けのデフォルト値または、供給されるならば従来の記号比較表(さらなる詳細についてはユーザーのマニュアル参照)いずれかを用いる。GCGパッケージについては公のデフォルト値を用いるのが好ましく、あるいは他のソフトウェアの場合には、BLOSUM62のようなデフォルトマトリックスを用いるのが好ましい。
【0105】
一旦ソフトウェアが最適な整列を生じさせたならば、%相同性、好ましくは%配列同一性を計算することが可能である。前記ソフトウェアは、典型的には、これを配列比較の一部として行い、数値的結果を生じる。
【0106】
本発明のアミノ酸配列に関連する用語「変種」または「誘導体」は、配列からのまたはそれへの1(またはそれ以上)のアミノ酸のいずれかの置換、変形、修飾、置き換え、欠失または付加を含み、得られたアミノ酸配列はAPC活性化活性を有し、好ましくは、ヒトHMGB1と少なくとも同一の活性を有する。
【0107】
アセチル化HMGB1および/またはHMGB1は本発明で用いるために修飾することができる。典型的には、配列の活性を維持する修飾がなされる。アミノ酸置換は、例えば、1、2または3〜10、20または30の置換からなすことができ、但し、修飾された配列はAPC活性化活性および/または抗炎症活性を保持するものとする。アミノ酸置換は、例えば、治療のために投与されたポリペプチドの血漿中半減期を増大させるための、非天然アナログの使用を含むことができる。
【0108】
保存的置換は、例えば、以下の表に従ってなすことができる。第2の欄における同一ブロックの、好ましくは、第3の欄の同一行のアミノ酸は相互に置換することができる。
【0109】
【表1】

【0110】
本発明で用いるタンパク質は、典型的には、例えば、後記するような組換え手段によって得られる。しかしながら、それらは、固相合成のような当業者に周知の技術を用いて合成手段によって作成することもできる。本発明で用いるタンパク質は融合タンパク質として生じさせて、例えば、抽出および精製を助けることもできる。融合タンパク質のパートナーの例はグルタチオン−S−トランスフェラーゼ(GST)、6xHis、GAL4(DNA結合および/または転写活性化ドメイン)およびβ−ガラクトシダーゼを含む。また、融合タンパク質パートナーおよび注目するタンパク質配列の間にタンパク質分解切断部位を含めて、融合タンパク質配列の除去を可能とするのも便宜であろう。好ましくは、融合タンパク質は注目するタンパク質の活性を妨げない。
【0111】
本発明で用いられるタンパク質は実質的に単離された形態であり得る。前記タンパク質は、前記タンパク質の意図した目的に干渉しない担体または希釈剤と混合することができ、依然として、実質的に単離されたとみなされるのは理解されよう。本発明のタンパク質は実質的に精製された形態とすることもでき、その場合、それは、一般には、前記製剤中のタンパク質の90%を超えて、例えば、95%、98%または99%が本発明のタンパク質である製剤中のタンパク質を含む。
【0112】
[ポリヌクレオチド]
本発明で用いるポリヌクレオチドは、本発明で用いるための、誘導体、変種、断片等を含むアセチル化HMGB1タンパク質、およびアセチル化HMGB1を模倣する誘導体および変種、ならびにそのモジュレーターをコードする核酸配列を含む。多数の異なるポリヌクレオチドが、遺伝子暗号の縮重の結果として同一タンパク質をコードできるのは当業者に理解されるであろう。加えて、当業者は、ルーチン的技術を用い、本発明のポリヌクレオチドによってコードされるタンパク質配列に影響しないヌクレオチド置換を行って、本発明で用いるタンパク質を発現させるべきいずれかの特定の宿主生物のコドンの使用を反映させることができるのは理解されるべきである。
【0113】
本発明で用いるポリヌクレオチドはDNAまたはRNAを含むことができる。それらは一本鎖または二本鎖であり得る。また、それらはその中に合成または修飾ヌクレオチドを含むポリヌクレオチドであってもよい。オリゴヌクレオチドに対する多数の異なるタイプの修飾は当分野で公知である。これらはメチルホスホネートおよびホスホロチオエート骨格、分子の3’および/または5’末端におけるアクリジンまたはポリリシン鎖の付加を含む。本発明の目的では、本明細書中に記載されたポリヌクレオチドは当分野で入手できるいずれの方法によっても修飾できるのは理解されるべきである。そのような修飾を行って、本発明で用いるポリヌクレオチドのインビボ活性または寿命を高めることができる。
【0114】
ヌクレオチド配列に関連する用語「変種」、「ホモログ」または「誘導体」は、配列からの、または配列への1(またはそれ以上)の核酸の置換、変形、修飾、置き換え、欠失または付加を含み、得られたヌクレオチド配列はAPCを活性化する能力を有するポリペプチドをコードする。
【0115】
前記したように、配列相同性に関しては、好ましくは、本明細書中でリストした配列で示した配列に対して少なくとも75%、より好ましくは少なくとも85%、より好ましくは少なくとも90%の相同性がある。より好ましくは、少なくとも95%、より好ましくは少なくとも98%の相同性がある。ヌクレオチド相同性比較は前記したように行うことができる。好ましい配列比較プログラムは前記したGCG Wisconsin Bestfitプログラムである。デフォルトスコアリングマトリックスは各同一ヌクレオチドに対しては10のマッチ値、および各ミスマッチに対しては−9の値を有する。欠乏ギャップ創製ペナルティは−50であって、欠乏ギャップ延長ペナルティは各ヌクレオチドに対して−3である。
【0116】
また、本発明は、本明細書中に提示された配列、またはそのいずれかの変種、断片または誘導体、または前記のいずれかの相補体に対して選択的にハイブリダイズすることができるヌクレオチド配列も含む。ヌクレオチド配列は、好ましくは長さが少なくとも15ヌクレオチドであり、より好ましくは長さが少なくとも20、30、40または50ヌクレオチドである。
【0117】
本明細書中で用いる用語「ハイブリダイゼーション」は「核酸のストランドが塩基対合を介して相補ストランドと連結するプロセス」ならびにポリメラーゼ連鎖反応技術を行う増幅のプロセスを含むべきである。
【0118】
本明細書中に提示されたヌクレオチド配列、またはその相補体に選択的にハイブリダイズすることができる本発明で用いるポリヌクレオチドは、一般に、少なくとも20、好ましくは少なくとも25または30、例えば、少なくとも40、60または100以上の連続ヌクレオチドの領域にわたって、本明細書中に提示した対応するヌクレオチド配列に対して少なくとも70%、好ましくは少なくとも80または90%、より好ましくは少なくとも95%または98%相同であろう。本発明で用いるための好ましいポリヌクレオチドは、HMGボックスに対して相同な領域を含み、HMGボックスに対して好ましくは少なくとも80または90%、より好ましくは少なくとも95%相同である。
【0119】
用語「選択的にハイブリダイズできる」は、プローブとして用いられるポリヌクレオチドが、本発明で用いる標的ポリヌクレオチドがバックグラウンドを有意に超えたレベルにてプローブにハイブリダイズすることが判明する条件下で用いることを意味する。バックグラウンドハイブリダイゼーションは、例えば、cDNAまたはゲノミックDNAライブラリがスクリーニングされる場合に存在する他のポリヌクレオチドのため起こり得る。この事象においては、バックグラウンドは、標的DNAで観察された特異的相互作用の10倍未満、好ましくは100倍未満の強度である、プローブおよびライブラリーの非特異的DNAメンバーの間の相互作用によって生じるシグナルのレベルを意味する。相互作用の強度は、例えば、32Pでのプローブの放射性標識によって測定することができる。
【0120】
ハイブリダイゼーション条件は、BergerおよびKimmel(1987,Guide to Molecular Cloning Techniques,Methods in Enzymology,Vol 152,Academic Press,San Diego CA)に教示されているように、核酸結合複合体の融解温度(Tm)に基づき、後に説明するように規定された「ストリンジェンシー」を与える。
【0121】
最大ストリンジェンシーは典型的には約Tm−5℃(プローブのTmよりも5℃低い)で起こり;最高ストリンジェンシーはTmの約5℃〜10℃未満で起こり;中程度のストリンジェンシーはTmの約10℃〜20℃未満に起こり;および低ストリンジェンシーはTmの約20℃〜25℃未満で起こる。当業者に理解されるように、最大ストリンジェンシーハイブリダイゼーションを用いて、同一のポリヌクレオチド配列を同定または検出することができ、他方、中程度(または低い)ストリンジェンシーのハイブリダイゼーションを用いて、同様なまたは関連するポリヌクレオチド配列を同定または検出することができる。
【0122】
好ましい態様においては、本発明は、ストリンジェントな条件(例えば、65℃および0.1×SSC{1×SSC=0.15MのNaCl、0.015Mのクエン酸ナトリウム、pH7.0})下で本発明のヌクレオチド配列にハイブリダイズすることができるヌクレオチド配列を網羅する。
【0123】
本発明で用いられるポリヌクレオチドが二本鎖である場合、デュプレックスの双方のストランドは、個々にまたは組み合わされて、本発明に含まれる。ポリヌクレオチドが一本鎖である場合、そのポリヌクレオチドの相補的配列もまた本発明の範囲内に含まれることが理解されるべきである。
【0124】
本発明で用いる配列に対して100%相同ではないが、本発明の範囲に入るポリヌクレオチドは多数の方法で得ることができる。本明細書中に記載された配列の他の変種は、例えば、ある範囲の個体、例えば、異なる集団からの個体から作成されたDNAライブラリーをプローブすることによって得ることができる。加えて、他のウイルス/細菌、または細胞ホモログ、特に、哺乳動物細胞(例えば、ラット、マウス、ウシおよび霊長類細胞)で見出された細胞ホモログを得ることができ、そのようなホモログおよびその断片は、一般には、本明細書中の配列リストに示された配列に対して選択的にハイブリダイズすることができよう。そのような配列は、他の動物種からのゲノミックDNAライブラリーから作成されたcDNAライブラリーをプローブし、中程度〜高ストリンジェンシーの条件下で、ヒトHMGB1配列の全てまたは一部を含むプローブでそのようなライブラリーをプローブすることによって得ることができる。同様な考慮を、本発明で用いるタンパク質またはヌクレオチドの配列の種ホモログおよび対立遺伝子変種を得ることに適用される。
【0125】
変種および株/種ホモログは、本発明の配列内の保存されたアミノ酸配列をコードする変種およびホモログ内の配列を標的化するように設計されたプライマーを用いる縮重PCRを用いて得ることもできる。保存された配列は、例えば、いくつかの変種/ホモログからのアミノ酸配列を整列させることによって予測されることができる。配列の整列は、当分野で知られたコンピューターソフトウェアを用いて行うことができる。例えば、GCG Wisconsin PileUpプログラムが広く用いられる。
【0126】
縮重PCRで用いるプライマーは1以上の縮重位置を含み、既知の配列に対する単一配列プライマーで配列をクローニングするのに用いられるものよりも低いストリンジェンシー条件にて用いられる。
【0127】
別法として、そのようなポリヌクレオチドは部位特異的突然変異誘発によって得ることができる。これは、例えば、ポリヌクレオチド配列を発現すべき特定の宿主細胞に対するコドン優先性を最適化するために、サイレントコドン変化が配列に要求される場合に有用であり得る。他の配列の変化は、制限酵素認識部位を導入するために望まれるであろう。
【0128】
本発明のポリヌクレオチドを用いて、プライマー、例えば、PCRプライマー、代替増幅反応用のプライマー、例えば、放射性または非放射性標識を用いる従来の手段によって解明標識で標識されたプローブを作成することができるか、あるいはポリヌクレオチドをベクターにクローン化することができる。そのようなプライマー、プローブおよび他の断片は長さが少なくとも15、好ましくは少なくとも20、例えば、少なくとも25、30または40ヌクレオチドであり、本明細書中で用いる本発明の用語「ポリヌクレオチド」にやはり含まれる。
【0129】
本発明で用いられるDNAポリヌクレオチドおよびプローブのようなポリヌクレオチドは組換えにより、合成により、あるいは当業者に入手可能ないずれかの手段によって生じさせることができる。また、それらは標準的な技術によってクローン化することもできる。
【0130】
一般に、プライマーは、一度に1ヌクレオチドにて、所望の核酸配列の段階的製造を含む合成手段によって得られるであろう。自動技術を用いてこれを達成するための技術は当分野で容易に入手可能である。
【0131】
より長いポリヌクレオチドは、一般に、組換え手段を用いて、例えば、PCR(ポリメラーゼ連鎖反応)クローニング技術を用いて生産されるであろう。これは、クローン化が望まれる脂質標的化配列の領域に近接する(例えば、約15〜30ヌクレオチドの)プライマーの対を作成し、前記プライマーを、動物またはヒト細胞から得られたmRNAまたはcDNAと接触させ、所望の領域の増幅を行う条件下でポリメラーゼ連鎖反応を行い、(例えば、反応混合物をアガロースゲルで精製することによって)増幅された断片を単離し、増幅されたDNAを回収することを含む。プライマーは、増幅されたDNAが適当なクローニングベクターにクローン化できるように、適当な制限酵素認識部位を含むように設計することができる。
【0132】
[ヌクレオチドベクター]
本発明のポリヌクレオチドは組換え複製可能ベクターに組み込むことができる。前記ベクターを用いて、適合する宿主細胞中で核酸を複製することができる。従って、さらなる実施形態において、本発明は、本発明のポリヌクレオチドを複製可能ベクターに導入するステップと、前記ベクターを適合する宿主細胞に導入するステップと、ベクターの複製を行う条件下で宿主細胞を増殖させるステップとによって、本発明で用いるポリヌクレオチドを作成する方法を提供する。ベクターは宿主細胞から回収することができる。適当な宿主細胞はE.coliのような細菌、酵母、哺乳動物細胞系統および他の真核生物細胞系統、例えば、昆虫Sf9細胞を含む。
【0133】
好ましくは、ベクター中の本発明のポリヌクレオチドは、宿主細胞によってコード配列の発現を提供することができる対象配列に作動可能に連結しており、すなわち、前記ベクターは発現ベクターである。用語「作動可能に連結した」とは、記載した構成要素が、それがその意図したように機能させる関係にあることを意味する。コード配列に「作動可能に連結した」調節配列は、コード配列の発現が対照配列に適合する条件下で達成されるように連結される。
【0134】
対照配列は、例えば、さらなる転写調節エレメントの付加によって修飾して、対照配列によって指令される転写のレベルを転写モジュレーターに対してより応答性とすることができる。
【0135】
本発明のベクターは以下に述べる適当な宿主細胞に形質転換またはトランスフェクトして、本発明のタンパク質の発現を提供することができる。このプロセスは、タンパク質をコードするコード配列のベクターによって発現を提供する条件下で前記発現ベクターで形質転換された宿主細胞を培養するステップと、所望により、発現されたタンパク質を回収するステップとを含むことができる。
【0136】
ベクターは、例えば、複製起点、所望により、前記ポリヌクレオチドの発現用のプロモーターおよび、所望により、プロモーターのレギュレータを備えたプラスミドまたはウイルスベクターであり得る。ベクターは1以上の選択マーカー遺伝子、例えば、細菌プラスミドの場合にはアンピシリン耐性遺伝子、または哺乳動物ベクターではネオマイシン耐性遺伝子を含むことができる。ベクターを用いて、例えば、宿主細胞をトランスフェクトし、または形質転換することができる。
【0137】
好ましい実施形態においては、アセチル化HMGB1およびHMGB1は細菌細胞(Bianchi 1991,Gene 104:271-275;Lee et al.1998,Gene 225:97-105)によって、酵母(Mistry et al.1997,Biotechniques 22:718-729)によって、または細胞培養からの、または哺乳動物組織からの精製によって生じさせることができる。
【0138】
本発明で用いられるベクター/ポリヌクレオチドは、トランスフェクション、形質転換およびエレクトロポレーションのような当分野で知られた種々の技術を用いて適当な宿主細胞に導入することができる。本発明のベクター/ポリヌクレオチドを動物に投与すべき場合、例えば、レトロウイルス、単純疱疹ウイルスおよびアデノウイルスのような組換えウイルスベクターでの感染、核酸の直接的注入およびバイオリスティック形質転換のようないくつかの技術が当分野で知られている。
【0139】
[タンパク質の発現および精製]
本発明のポリヌクレオチドを含む宿主細胞を用いて、本発明で用いるタンパク質を発現させることができる。宿主細胞は、本発明のタンパク質の発現を可能とする適当な条件下で培養することができる。本発明のタンパク質の発現は、それが連続的に生産されるように構成的とすることができるか、あるいは誘導性とすることができ、発現を開始するには刺激体を必要とする。誘導性発現の場合には、タンパク質の生産が、例えば、インデューサー物質、例えば、デキサメタゾンまたはIPTGの培養基への添加によって要求とされる場合に開始することができる。
【0140】
本発明で用いるタンパク質は、酵素的、化学的および/または浸透圧溶解および物理的破壊を含む当分野で知られた種々の技術によって宿主細胞から抽出することができる。
【0141】
[アッセイ]
また、本発明は、化合物をスクリーニングして、アセチル化HMGB1に対するアゴニストおよびアンタゴニストを同定する方法を提供する。候補化合物は種々の源、例えば、細胞、無細胞調製物、化学的ライブラリー、ペプチドおよび遺伝子ライブラリー、および天然生成物混合物から同定することができる。そのようなアゴニストまたはアンタゴニストまたはそのように同定された阻害剤は、レチノール結合タンパク質受容体の受容体で当てはまる場合のように、天然または修飾物質、リガンド、受容体、酵素等であってもよく、またはその構造的または機能的ミメテックスであり得る(Coligan et al.,Current Protocols in Immunology 1(2):Chapter 5(1991))。
【0142】
スクリーニング方法は、直接的にまたは間接的に候補化合物に会合した標識によって、候補化合物のアセチル化HMGB1への結合を単に測定することができる。別法として、スクリーニング方法は標識された競合体との競合を含むことができる。さらに、これらのスクリーニング方法は、候補化合物が、受容体を担う細胞に適切な検出システムを用いてアセチル化HMGB1の活性化または阻害によって生じるシグナルをもたらすか否かをテストすることができる。結合するが、応答を誘導しない化合物はその化合物をアンタゴニストと同定する。アンタゴニスト化合物は、結合し、反対応答、換言すれば、増殖の低下および、所望により、分化の誘導を生じるものでもある。
【0143】
本発明によって考えられる1つのアッセイは2−ハイブリッドスクリーニングである。2−ハイブリッドシステムは酵母で開発され[Chien et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,88:9578-9582(1991)]、レポーター遺伝子を活性化する転写因子の機能的インビボ再構成に基づく。アセチル化HMGB1と相互作用するタンパク質を同定するための他のアッセイは、アセチル化HMGB1またはテストタンパク質を固定化し、非固定化結合パートナーを検出可能に標識し、結合パートナーを一緒にインキュベートし、結合した標識の量を測定することを含むことができる。結合した標識は、テストタンパク質がアセチル化HMGB1と相互作用することを示す。
【0144】
アセチル化HMGB1相互作用タンパク質を同定するためのもう1つのタイプのアッセイは、蛍光剤を被覆した(またはそれを含浸した)固体支持体にアセチル化HMGB1またはその断片を固定化し、前記蛍光剤を励起することができる化合物でテストタンパク質を標識し、固定化されたアセチル化HMGB1を標識されたテストタンパク質と接触させ、蛍光剤による発光を検出し、次いで、蛍光剤による光の発光をもたらすテストタンパク質としての相互作用タンパク質を同定することを含む。別法として、推定相互作用タンパク質を固定化し、アセチル化HMGB1をアッセイで標識することができる。
【0145】
また、本発明に含まれるのは、本発明のアセチル化HMGB1タンパク質に特異的な抗体産物(例えば、モノクローナルおよびポリクローナル抗体、単一鎖抗体、キメラ抗体、CDR−グラフテッド抗体およびその抗体−結合断片)および(前記アッセイで同定されたもののような)他の結合タンパク質である。結合タンパク質は、単離された天然または組換え酵素を用いて開発することができる。結合タンパク質は、今度は、組換えおよび天然酵素を精製し、そのような酵素を生産する細胞を同定するのに有用である。細胞および流体中のタンパク質の検出および定量のためのアッセイは、アセチル化HMGB1タンパク質レベルの細胞学的分析を決定するための「サンドイッチ」アッセイフォーマットにおける単一抗体物質または複数抗体物質を含むことができる。また、結合タンパク質は、酵素/基質または酵素/レギュレーター相互作用を変調する(すなわち、ブロックし、阻害しまたは刺激する)のに明らかに有用である。哺乳動物チェックポイントキナーゼ結合タンパク質に特異的な抗イディオタイプ抗体も考えられる。
【0146】
機能的アセチル化HMGB1を模倣するタンパク質につきコードする遺伝子の適当な細胞への送達はウイルスベクター(例えば、アデノウイルス、アデノ関連ウイルス、またはレトロウイルス)の使用によってインビボまたはエキソビボにて、または物理的DNA導入方法(例えば、リポソームまたは化学的処理)の使用によってエキソビボにて行われる。遺伝子治療技術のレビューについては、Friedmann,Science,244:1275-1281(1989);Verma,Scientific American:68-84(1990);およびMiller,Nature,357:455-460(1992)参照。別法として、他のヒト病気状態においては、アセチル化HMGB1の発現の防止、またはその阻害は前記病気状態を治療するのに有用であると考えられる。アンチセンス治療または遺伝子治療を適用して、アセチル化HMGB1の発現を負に調節することができると考えられる。アセチル化HMGB1発現制御配列またはアセチル化HMGB1 RNAに特異的に結合できるアンチセンス核酸(好ましくは、10〜20塩基対オリゴヌクレオチド)を(例えば、ウイルスベクターまたはリポソームのようなコロイド分散系によって)細胞に導入する。アンチセンス核酸は細胞においてアセチル化HMGB1標的配列に結合し、標的配列の転写または翻訳を妨げる。ホスホロチオエートおよびメチルホスフェートアンチセンスオリゴヌクレオチドは、本発明による治療的使用で具体的に考えられる。アンチセンスオリゴヌクレオチドは、その5’末端にて、ポリ−L−リシン、トランスフェリンポリリシン、またはコレステロール部分によってさらに修飾することができる。
【0147】
小分子ベースの療法は特に好ましい。なぜならば、そのような分子は経口投与の後により容易に吸収されるおよび/またはより大きなタンパク質ベースの医薬よりも少数の潜在的抗原決定基を有するからである。本開示に鑑みて、当業者であれば、免疫疾患の治療用の候補小分子医薬の同定で有用な薬物スクリーニング方法を開発することができるであろう。特に、当業者であれば、小分子の大きなライブラリーをスクリーニングして、正常および/または突然変異体/アセチル化HMGB1タンパク質に結合し、従って、正常または突然変異体/アセチル化タンパク質のインビボ活性を修飾するための候補であるものを同定することができよう。さらに、当業者であれば、アセチル化HMGB1タンパク質の突然変異体形態に選択的に、または優先的に結合する小分子を同定することができよう。
【0148】
候補タンパク質結合分子についての小分子ライブラリーをスクリーニングするための方法は当分野で周知であり、本開示に鑑みて、今や、それを用いて、アセチル化HMGB1の正常または突然変異体形態に結合する化合物を同定することができる。
【0149】
当業者に自明なように、個々の小分子または小分子の大きなライブラリー(例えば、ファージディスプレイライブラリー)をスクリーニングして、正常または突然変異体アセチル化HMGB1に結合する化合物を同定する多数の他の方法がある。これらの方法の全ては、正常または突然変異体アセチル化HMGB1をテスト化合物と混合し、(もしあれば)結合させ、結合した複合体につきアッセイするステップを含む。
【0150】
正常または突然変異体または双方の形態のアセチル化HMGB1に結合する化合物は治療において利用性を有することができる。正常なアセチル化HMGB1のみに結合する化合物は、例えば、その正常な活性のエンハンサーとして作用することができ、それにより、免疫疾患に罹った患者においてアセチル化HMGB1の突然変異体形態の失われたまたは異常な活性を少なくとも部分的に補償することができる。アセチル化HMGB1の正常および突然変異体形態双方に結合する化合物は、もし、それらが、2つの形態の活性に異なって影響して、正常な機能からの総じての逸脱を軽減するならば、利用性を有することができる。
【0151】
前記した方法によって一旦同定されると、次いで、医薬投与またはテストに十分な量にて候補化合物を生産することができるか、あるいは新しい医薬の設計および開発において「リード化合物」として働かせることができる。例えば、当分野で周知のように、小分子の順次の修飾(例えば、ペプチドでのアミノ酸残基の置き換え;ペプチドまたは非ペプチド化合物での官能基の置き換え)は、新しい医薬の開発のための医薬産業では標準的なアプローチである。そのような開発は、一般には、所望の医薬の活性の少なくともいくらかを有することが示された「リード化合物」から進められる。特に、注目する少なくともいくらかの活性を有する1以上の化合物が同定されれば、分子の構造的比較は、保存すべきリード化合物の部分、および新しい候補化合物の設計で変化させることができる部分を示唆することによって、当業者に大いに情報を与えることができる。従って、本発明は、順次修飾して、免疫疾患の治療で用いられる新しい候補化合物を生産することができるリード化合物を同定する手段も提供する。次いで、これらの新しい化合物の(例えば、前記した結合アッセイにおいて)結合につき、(例えば、本明細書中に記載した動物モデルにおいて)治療的効率につきその双方をテストすることができる。この手法は、所望の治療活性および/または効率を有する化合物が同定されるまで反復することができる。
【0152】
この方法によって同定された化合物は、インビボにてアセチル化HMGB1の発現を修飾するにおいて潜在的利用性を有するであろう。これらの化合物は、開示された動物モデルでさらにテストすることができ、ここでは、ほとんどの優れたインビボ効果を有する化合物を同定するのを可能とすることができる。加えて、アセチル化HMGB1結合活性を有する小分子に関して前記したように、これらの分子は、例えば、化合物を順次の修飾、分子モデリング、および合理的薬物設計で使用される他のルーチン的手法に付すことによって、医薬のさらなる開発用の「リード化合物」として働くことができる。
【0153】
我々の発明の方法および組成物は、いくつかの実施形態において、HMGB1の活性のブロックに頼る。また、他の実施形態においては、HMGB1を上方調節する剤を用いることもできる。HMGB1の活性を増加させることができる剤を、その活性のアゴニストという。同様に、アンタゴニストはHMGB1の活性を低下させる。
【0154】
[アンチセンス化合物]
前記したように、アンタゴニストは、アセチル化HMGB1の発現のレベルを低下させることができるアンチセンスRNAおよびアンチセンスDNAを含む1以上のアンチセンス化合物を含むことができる。好ましくは、アンチセンス化合物はHMGB1をコードするmRNAに相補的な配列を含む。
【0155】
好ましくは、アンチセンス化合物はオリゴマーアンチセンス化合物、特にオリゴヌクレオチドである。アンチセンス化合物は、好ましくは、HMGB1をコードする1以上の核酸と特異的にハイブリダイズする。本明細書中で用いるように、用語「HMGB1をコードする核酸」はHMGB1をコードするDNA、そのようなDNAから転写された(プレ−mRNAおよびmRNAを含む)RNA、およびそのようなRNAに由来するcDNAを含む。オリゴマー化合物とその標的核酸との特異的ハイブリダイゼーションは、核酸の正常な機能と干渉する。それに特異的にハイブリダイズする化合物による標的核酸の機能のこの変調は、一般的には、「アンチセンス」という。干渉すべきDNAの機能は、複製および転写を含む。干渉すべきRNAの機能は、例えば、タンパク質翻訳の部位へのRNAの輸送、RNAからのタンパク質の翻訳、1以上のmRNA種を生じさせるためのRNAのスプライシング、およびRNAが従事することができる、またはそれによって促進させることができる触媒活性のような全ての活力のある機能を含む。標的核酸機能とのそのような干渉の総じての効果は、HMGB1の発現の変調である。本発明の意味においては、「変調(modulation)」は、遺伝子の発現の増加(刺激)または減少(阻害)のいずれかを意味する。例えば、HMGB1活性の阻害剤、またはHMGB1の発現の阻害剤をコードする遺伝子の発現を増加させることができる。しかしながら、好ましくは、発現の阻害、特に、HMGB1発現の阻害は遺伝子発現の変調の好ましい形態であり、mRNAは好ましい標的である。
【0156】
アンチセンス構築体は米国特許第6,100,090号(Monia et al.,)およびNeckers et al.,1992,Crit Rev Oncog 3(1-2):175-231に詳細に記載されている。
【0157】
[抗体]
また、本発明は、本発明で用いるタンパク質に対するモノクローナルまたはポリクローナル抗体またはその断片も提供する。従って、本発明は、さらに、本発明で用いるタンパク質に対するモノクローナルまたはポリクローナル抗体の生産方法を提供する。
【0158】
本発明のアセチル化HMGB1またはその誘導体または変種、あるいはそれを発現する細胞を用いて、そのようなポリペプチドに対して免疫特異的な抗体を生じさせることができる。用語「免疫特異的」とは、抗体が、他の関連ポリペプチドに対するよりも本発明のアセチル化HMGB1に対する実質的により大きな親和性を有することを意味する。
【0159】
もしポリクローナル抗体が望まれれば、選択された哺乳動物(例えば、マウス、ウサギ、ヤギ、ウシなど)を、HMGB1エピトープを担う免疫原性ポリペプチドで免疫化する。免疫化動物からの血清を集め、公知の手法に従って処理する。もしエピトープに対するポリクローナル抗体を含有する血清が他の抗原に対する抗体を含有すれば、ポリクローナル抗体を免疫アフィニティークロマトグラフィーによって精製することができる。ポリクローナル抗血清を生産し、処理するための技術は当分野で知られている。そのような抗体を作成できるためには、本発明は、動物またはヒトにおいて免疫原として用いられるもう1つのポリペプチドに対してハプテン化された本発明のポリペプチドまたは断片も提供する。
【0160】
本発明のポリペプチドにおけるエピトープに対して向けられたモノクローナル抗体もまた当業者によって容易に製造することができる。モノクローナル抗体をハイブリドーマによって作成するための一般的な手法は周知である。不滅抗体生産細胞系統は細胞融合によって、また、Bリンパ球のオンコジーンDNAでの直接的形質転換、またはエプスタイン・バーウイルスでのトランスフェクションのような他の技術によって作り出すことができる。エピトープに対して生じたモノクローナル抗体のパネルを、種々の特性につき、すなわち、イソタイプおよびエピトープ親和性につきスクリーニングすることができる。
【0161】
別の技術はファージディスプレイライブラリーのスクリーニングを含み、そこでは、例えば、ファージは、非常に種々の相補性決定領域(CDR)を有するそのコートの表面にscFv断片を発現する。この技術は当分野で周知である。
【0162】
エピトープに向けられたモノクローナルおよびポリクローナル双方の抗体は診断で特に有用であり、中和する抗体は受動免疫療法で有用である。特に、モノクローナル抗体を用いて、抗イディオタイプ抗体を生起させることができる。抗イディオタイプ抗体は、それに対して保護が望まれる剤の抗原の「内部イメージ」を運ぶ免疫グロブリンである。
【0163】
抗イディオタイプ抗体を生起させるための技術は当分野で公知である。これらの抗イディオタイプ抗体は治療でも有用であり得る。
【0164】
本発明の目的では、用語「抗体」は、特に反対の表示がなければ、標的抗原に対するその結合活性を保持する全抗体の断片を含む。そのような断片はFv、F(ab’)およびF(ab’)2断片、ならびに単一鎖抗体(scFv)を含む。さらに、抗体およびその断片は、例えば、EP-A-239400に記載されたヒト化抗体であり得る。
【0165】
生物学的試料に存在する本発明のポリペプチドを検出する方法において、
(a)本発明の抗体を提供するステップと;
(b)抗体−抗原複合体の形成を可能とする条件下で生物学的試料を前記抗体と共にインキュベートするステップと;
(c)前記抗体を含む抗体−抗原複合体が形成されるか否かを判断するステップと;
を含む方法によって、抗体を用いることができる。
【0166】
適当な試料は脳、乳房、卵巣、肺、結腸、膵臓、精巣、肝臓、筋肉および骨組織のような組織からの、あるいはそのような組織に由来する新形成増殖からの抽出物を含む。
【0167】
本発明の抗体は、適当な試薬、対照、指示書などと共に、適当な容器中で、固体支持体に結合させおよび/またはキットにパッケージングすることができる。
【0168】
[治療タンパク質]
本発明のタンパク質は治療のために患者に投与することができる。天然に生じるアミノ酸のみを含まず、例えば、免疫原性を低下させ、患者の身体中での循環半減期を増加させ、生物学的利用性を高めおよび/または効率および/または特異性を高めるように修飾されたタンパク質を用いるのが好ましい。
【0169】
多数のアプローチが、治療的適用のためにタンパク質を修飾するのに用いられてきた。1つのアプローチはポリエチレングリコール(PDG)およびポリプロピレングリコール(PPG)のような種々のポリマーにペプチドまたはタンパク質を連結させることである−例えば、米国特許第5,091,176号、第5,214,131号および米国特許第5,264,209号参照。
【0170】
また、天然に生じるアミノ酸の、D−アミノ酸およびN−メチルアミノ酸のような種々の未暗号化または修飾アミノ酸での置き換えを用いて、タンパク質を修飾することもできる。
【0171】
もう1つのアプローチはN−スクシンイミジル3−(2ピリジルジチオ)プロピオネート、スクシンイミジル6−[3−(2ピリジルジチオ)プロピオンアミド]ヘキサノエート、およびスルホスクシンイミジル6−[3−(2ピリジルジチオ)プロピオンアミド]ヘキサノエートのような二官能性架橋剤を用いることである(米国特許第5,580,853号参照)。
【0172】
立体配座的に拘束される本発明のタンパク質の誘導体を用いるのが望ましいであろう。立体配座拘束とは、タンパク質によって採られる三次元形状の安定性および好ましい立体配座をいう。立体配座拘束はタンパク質における単一残基の立体配座移動度を拘束することを含む局所的拘束;残基の群(その残基は、いくらかの二次構造ユニットを形成し得る)の立体配座移動度を制限することを含む地域的拘束;および全タンパク質構造に関与する全体的拘束を含む。
【0173】
タンパク質の活性な立体配座は、環化、またはγ−ラクタムまたは他のタイプのブリッジの取り込みによるような共有結合修飾によって安定化することができる。例えば、側鎖は骨格に環化して、相互作用部位の各側にL−γ−ラクタム部位を作り出すことができる。一般に、Hruby et al.,「Applications of Synthetic Peptides」,in Synthetic Peptides:A User’s Guide:259-345(W.H.Freeman & Co.1992)参照。環化は、例えば、システインブリッジの形成、各末端アミノ酸のアミノおよびカルボキシ末端基のカップリング、またはLys残基のアミノ基または関連ホモログの、Asp、Gluのカルボキシ基または関連ホモログとのカップリングによって達成することもできる。ポリペプチドのα−アミノ基の、無水ヨード酢酸を用いるリシン残基のε−アミノ基とのカップリングも行うことができる。Wood and Wetzel,1992,Int'l J.Peptide Protein Res.39:533-39参照。
【0174】
米国特許第5,891,418号に記載されたもう1つのアプローチは、タンパク質の構造中に金属イオン錯体化骨格を含むことである。典型的には、好ましい金属ペプチド骨格は、所与の錯体化金属イオンの配位圏によって必要とされる必要数の特定の配位基に基づく。一般に、有用であることが判明するであろう金属イオンのほとんどは4〜6の配位数を有する。タンパク質鎖における配位基の性質はアミン、アミド、イミダゾールまたはグアニジノ官能性を有する窒素原子;チオールまたはジスルフィドの硫黄原子;およびヒドロキシ、フェノール、カルボニルまたはカルボキシ官能性の酸素原子を含む。加えて、タンパク質鎖または個々のアミノ酸は、例えば、オキシム、ヒドラジノ、スルフヒドリル、ホスフェート、シアノ、ピリジノ、ピペリジノ、またはモルホリノのような配位基を含むように化学的に改変することができる。タンパク質構築体は線状または環状いずれかであり得るが、線状構築対が典型的には好ましい。小さな線状ペプチドの1つの例は、配位数4にて金属イオンに錯体化することができる骨格中に4つの窒素を有する(N4錯体化系)Gly−Gly−Gly−Glyである。
【0175】
治療タンパク質の特性を改良するためのさらなる技術は、非ペプチドペプチドミメティックスを用いることである。広く種々の有用な技術を用いて、タンパク質の正確な構造を解明することができる。これらの技術はアミノ酸配列決定、x線結晶学、質量分析、核磁気共鳴分光測定、コンピューター−援助分子モデリング、ペプチドマッピング、およびその組合せを含む。タンパク質の構造的解析は、一般には、タンパク質のアミノ酸配列ならびにその原子成分の三次元位置決定を含む膨大なデータを提供する。この情報から、治療的活性のための必要な化学的官能性を有するが、より安定な、例えば、生物学的分解に対して感受性が低い非ペプチドペプチドミメティックスを設計することができる。このアプローチの例は米国特許第5,811,512号に提供される。
【0176】
本発明の治療タンパク質を化学的に合成する技術は前記文献に記載されており、また、Borgia and Fields,2000,TibTech 18:243-251によってレビューされており、そこに含まれる文献に詳細に記載されている。
【0177】
[細胞]
本出願は、HMGB1を分泌するいずれの細胞にも関連する適用性を有する。そのような細胞は骨髄系細胞およびニューロンを含む。本発明を適用することができる骨髄系細胞の例は前骨髄球細胞、マクロファージ、単球、小神経膠細胞、クッパー細胞、樹状細胞を含む。好ましくは、本発明は前骨髄球細胞または単球を含む。
【0178】
[治療的使用]
これは、ヒトまたは非ヒト動物に役に立つことができるいずれの治療的適用も含む。動物の治療が特に好ましい。ヒトおよび動物治療双方は本発明の範囲内のものである。
【0179】
治療は現存する疾患に関してのものであってもよく、あるいはそれは予防的であってもよい。それは成人、若者、幼児、胎児、または前記のいずれかの一部(例えば、器官、組織、細胞、または核酸分子)であってよい。
【0180】
[免疫サイトカインカスケード]
1つの実施形態において、本発明は、有効量のアセチル化HMGB1に対するアンタゴニストを投与するステップを含む、敗血症ショックおよびARDS(急性呼吸窮迫症候群)を含む、炎症性サイトカインカスケードの活性化によって特徴付けられる病気、特に敗血症を治療するための医薬組成物および方法を提供する。本発明は、さらに、炎症性サイトカインカスケードの活性化によって特徴付けられる病気の兆候を呈する患者においてHMGB1の血清濃度を測定するステップを含む、敗血症および関連疾患の重傷度をモニターする診断方法を提供する。
【0181】
敗血症は、感染または負傷後に発生するしばしば致命的な臨床的症候群である。敗血症は、入院患者において死亡率の最も頻繁な原因である。細菌エンドトキシン(リポ多糖、LPS)の投与に基づくグラム陰性敗血症の実験モデルは、通常の基本となる炎症性サイトカインカスケードの活性化による致死的敗血症および敗血症に関連する疾患の病因メカニズムの改良された理解に導いた。この宿主−応答メディエータのカスケードはTNF、IL−1、PAF、および深刻なエンドトキシン血症における究極的な死亡率の急性な初期メディエータとして広く研究された他のマクロファージ由来因子を含む(Zhang and Tracey,In The Cytokine Handbook,3rd ed.Ed.Thompson(Academic Press Limited,USA).515-547,1998)。
【0182】
あいにく、エンドトキシン血症のこれらの個々の「初期」メディエータの阻害に基づく治療的アプローチは、ヒト患者において敗血症に対する大いに期待される臨床テストにおいて限定された成功しか満たさなかった。これらの失望する結果から、宿主応答におけるより後に出現する因子が敗血症および関連障害において病因および/または死亡率を臨界的に決定しているらしいと推定することができる。従って、広範なマルチシステム病因の一部または全てにつき、または深刻なエンドトキシン血症の死亡率につき必要なおよび/または十分なそのような推定「後期」メディエータを発見する必要性がある、特に、エンドトキシン血症は臨床的敗血症および関連臨床障害の代表だからである。
【0183】
炎症性サイトカインカスケードによって媒介される病気および疾患は多数ある。そのような疾患は以下にグループ分けされた病気カテゴリーを含む。
【0184】
以下のものを含む全身炎症性応答症候群:
敗血症症候群
グラム陽性敗血症
グラム陰性敗血症
培養陰性敗血症
真菌敗血症
好中球減少症発熱
尿路性敗血症
髄膜炎菌血症
外傷出血
唸音
イオン化放射線暴露
急性膵臓炎
成人呼吸窮迫症候群(ARDS)
以下のものを含む再灌流負傷:
ポンプ後症候群
虚血症−再灌流負傷
以下のものを含む心血管病:
心昏睡症候群
心筋梗塞
鬱血性心不全
以下のものを含む感染症:
HIV感染/HIV神経障害
髄膜炎
肝炎
敗血症関節炎
腹膜炎
肺炎喉頭蓋炎
E.coli 0157:H7
溶血性尿毒症症候群/血栓性血小板減少性紫斑病
マラリア
出血性デング熱
リーシュマニア症
らい病
毒性ショック症候群
ストレプトコッカス筋炎
ガス壊疽
マイコバクテリウム結核
Micobaclerium aviunイントラセルラーレ
Pyneumocystis carinii肺炎
骨盤炎症病
精巣炎/精巣上体炎
レジェネラ属
ライム病
インフルエンザA型
エプスタイン・バーウイルス
ウイルス関連血球貪食症候群
ウイルス脳炎/敗血症髄膜炎
以下のものを含む産科学/婦人科学:
未成熟出産
流産
不妊
以下のもの含む炎症病/自己免疫学:
慢性関節リウマチ/血清陰性関節症
骨関節炎
膨張性腸疾患
全身性エリテマトーデス
虹彩眼炎/ブドウ膜炎神経炎
特発性肺線維症
全身性血管炎/ウェゲナーグラミロマトーシス
サルコイドーシス
精巣炎/精管切除逆手法
以下のものを含むアレルギー/アトピー病:
喘息
アレルギー性鼻炎
湿疹
アレルギー性接触皮膚炎
アレルギー性結膜炎
過敏性肺炎
以下のものを含む悪性疾患:
ALL
AML
CML
CLL
ホジキン病、非ホジキンリンパ腫
カポジ肉腫
結直腸癌腫
鼻咽頭癌腫
悪性組織球増殖症
腫瘍随伴性症候群/悪性疾患の高カルシウム血症
以下のものを含む移植:
器官移植拒絶
移植片対宿主疾患
悪液質
以下のものを含む先天性病:
嚢胞性線維症
家族性血液食細胞リンパ組織増多症
鎌状細胞貧血
以下のものを含む皮膚病:
乾癬
脱毛症
以下のものを含む神経病:
多発性硬化症
偏頭痛
以下のものを含む腎臓病:
ネフローゼ症候群
血液透析
尿毒症
以下のものを含む毒性:
OKT3療法
抗−CD3療法
サイトカイン療法
化学療法
放射線療法
慢性サリシレート中毒
以下のものを含む代謝/特発性病:
ウイルソン病
ヘモクロマトーシス
α−1抗トリプシン欠乏症
糖尿病
橋本甲状腺炎
骨粗鬆症
視床下部−下垂体−副腎軸評価
原発性単管硬変。
【0185】
従って、本発明は、有効量のアセチル化HMGB1のアンタゴニストまたは阻害剤を含む、炎症性サイトカインカスケードによって媒介される疾患(病気)を治療するための医薬組成物を提供する。好ましくは、HMGB1アンタゴニストはアセチル化HMGB1タンパク質、アセチル化HMGB1遺伝子アンチセンス配列およびアセチル化HMGB1受容体アンタゴニストに結合する抗体からなる群から選択される。本発明は、有効量のアセチル化HMGB1アンタゴニストを投与することを含む、炎症性サイトカインカスケードによって媒介される疾患を治療する方法を提供する。もう1つの実施形態において、本発明の方法は、さらに、アセチル化HMGB1アンタゴニストと組み合わせて第二の剤を投与することを含み、第二の剤はTNF、IL−1α、IL−1β、MIFまたはIL−6のような初期敗血症メディエータのアンタゴニストである。最も好ましくは、第二の剤はTNFまたはIL−1受容体アンタゴニスト(IL−lra)に対する抗体である。
【0186】
本発明は、さらに、ショック様兆候を呈する、または炎症性カスケードによって媒介される疾患に関連する兆候を呈する危険性がある患者につき敗血症および関連疾患の重傷度をモニターし、およびその起こり得る臨床的経過を予測する診断および予後方法を提供する。本発明の診断および予後方法は、試料、好ましくは血清試料中のアセチル化HMGB1の濃度を測定し、次いで、同様な試料中のアセチル化HMGB1の正常な濃度範囲を代表するアセチル化HMGB1の標準とその濃度とを比較することを含み、それにより、アセチル化HMGB1のより高いレベルは貧弱な予後または毒性反応の尤度を示す。前記診断方法は、脳脊髄液または尿のような他の組織または流体区画に適用することもできる。
【0187】
本明細書中に提供する診断アッセイは、ポリクローナルまたはモノクローナルまたは双方のいずれかであり得る抗アセチル化HMGB1抗体を用いる。前記診断手法は、生物学的流体中のアセチル化HMGB1遺伝子の遺伝子産物の濃度を測定するための標準的抗体ベースの技術を利用することができる。好ましい標準診断手法はELISAアッセイおよびウェスタン技術である。
【0188】
[減量/肥満]
本発明は、有効量のアセチル化HMGB1またはその治療的に活性な断片を投与することを特徴とする、減量を行い、または肥満を治療するための医薬組成物および方法を提供する。
【0189】
[免疫応答]
本発明の好ましい実施形態において、アセチル化タンパク質HMGB1の阻害剤を、免疫応答、特に抗原媒介免疫応答を変調する方法においてHMGB1と組み合わせて用いることができる。
【0190】
我々の同時係属国際特許出願番号PCT/IB02/04080に記載したように、非特異的メカニズムをトリガーすることを加え、例えば、感染の間の病原体は抗原特異的適応免疫応答をトリガーする。感染に対する適応免疫応答は免疫系のTおよびB細胞媒介区画双方を含む。いわゆる誘導相の間に、抗原提示細胞(APC:antigen presenting cell)は適応免疫応答の開始に関与する。APCの機能は適応免疫応答の維持にも必要である。
【0191】
より詳細には、APCは、抗原を内部化し、それを処理し、そのエピトープをクラスIおよびクラスIIのMHC分子と共に発現することができる細胞の複合体を構成する。一般に、医療に用いられるAPCの群の細胞の共通の特徴は細胞表面でのクラスIIならびにクラスIのMHC分子の発現であるということができる。前記群は主として樹状細胞、活性化されたマクロファージ、中枢神経系の小神経膠細胞およびBリンパ球を含む。これらのうち、樹状細胞(DC:dendritic cell)は抗原提示において特に特殊化されており、区別される特徴を有する集団を構成し、組織において広く分布している。DCは免疫応答の活性化に関与し、それは、感染病、自己免疫疾患および移植拒絶のような種々の病因の経過においてTリンパ球の刺激によって起こる。DCの活性化または成熟化は、T細胞を「プライミング」し、免疫応答を開始させるための必要なプロセスである。
【0192】
自己免疫疾患および移植拒絶において、すなわち、病因剤の非存在下では、樹状細胞の成熟化の誘導は、インビボにて、免疫刺激活性を保有する内因性分子によって起こる。死滅しつつある細胞は免疫応答を増幅することができる分子を含有し、それを放出することが知られている(Gllucci et al.,1999;Sauter et al.,2000;Ignatius et al.,2000;Shi et al.,2000;Basu et al.,2000;Larsson et al.,2001)。生細胞内部で通常は分離されたこれらの分子は、従って、それらは細胞死滅の間に放出されつつアポトーシスプロセスにある。
【0193】
細胞死滅の後に培養基に放出される細胞構成要素はDCの成熟化を惹起させることができる(Gallucci et al.,1999;Sauter et al.,2000)。他方、初期アポトーシス状態にある細胞で、またはその培養基で刺激されたDCは活性化されない(Gallucci et al.,1999;Sauter et al.,2000;Ignatius et al.,2000;Rovere et al.)。同様に、DCは壊死多形核(PMN)白血球によって活性化されない。
【0194】
我々は、HMGB1がAPCの成熟化を活性化できることを見出した。「活性化する」とは、我々は、APCの成熟化の誘導を含める。逆に、我々は、HMGB1のアンタゴニストはAPCの活性化を防止または低下させることができるとする。従って、例えば、HMGB1のアンタゴニストを、成熟化が起こり得る条件にあるAPCの集団に加えると、より少数のAPCがHMGB1アンタゴニストの非存在下におけるよりも成熟に進行する。
【0195】
アセチル化タンパク質HMGB1のモジュレーターは、このアプローチと組み合わせて用いることができる。特に好ましい実施形態において、アセチル化タンパク質HMGB1の阻害剤はHMGB1のアンタゴニストと共に用いることができる。このアプローチにより、例えば、APCのアクチベーターとしてのHMGB1のサイトカイン効果をアセチル化HMGB1とは別に変調できるようになり、よって、遅発性炎症によるHMGB1の投与に伴う毒性効果を取り除き、または低下させることができる。
【0196】
[APC]
抗原提示細胞(APC)はマクロファージ、樹状細胞、B細胞、およびMHC分子を発現することができる実質的にいずれの他の細胞型も含む。
【0197】
マクロファージは組織内に存在する単球系列の食細胞であり、効果的な抗原提示のために特に十分に備わっている。それらは、一般に、MHCクラスII分子を発現し、それらの貪食特性と共に、高分子または粒状物質を飲み込み、それを消化し、それを広範なリソソーム系で抗原性ペプチド形態まで処理し、それを、Tリンパ球による認識のために細胞表面に発現させるのに極端に効果的である。
【0198】
その高度に分岐した形態のためそう命名された樹状細胞は身体全体の多くの器官で見出され、骨髄由来であり、通常は、高レベルのMHCクラスII抗原を発現する。樹状細胞は能動的に動くことができ、血流および組織の間を再循環することができる。このように、それらは最も重要なAPCと考えられる。ランゲルハンス細胞は、皮膚に位置する樹状細胞の例である。
【0199】
能動的には貪食性ではないBリンパ球はクラスII陽性であり、細胞表面抗原特異的受容体、免疫グロブリン、または抗体分子を保有する。高親和性抗原結合に対するその潜在能力のため、B細胞には、低濃度の抗原をその表面に濃縮し、それを取り込み、それを処理し、それをその表面のMHC抗原と共に抗原性ペプチドの意味で提示する能力がユニークにも与えられている。このように、B細胞は極端に効果的なAPCとなる。
【0200】
本発明の方法によって調製されたAPCは、悪性疾患に罹った患者に投与することができる。
【0201】
一般に、エキソビボアプローチにおいては、患者は処理されたAPCが由来する同一患者であろう。治療することができる悪性疾患の例は乳癌、頸癌、結腸癌、直腸癌、子宮内膜癌、腎臓癌、肺癌、卵巣癌、膵臓癌、前立腺癌、皮膚癌、胃癌、膀胱癌、CNS癌、食道癌、頭部または頸部癌、肝臓癌、精巣癌、胸腺癌または甲状腺癌の癌を含む。血液細胞、骨髄細胞、B−リンパ球、T−リンパ球、リンパ系先祖または骨髄系細胞先祖の悪性疾患も治療することができる。
【0202】
腫瘍は固形腫瘍または非固形腫瘍であってよく、原発性腫瘍または散在性転移性(二次的)腫瘍であってよい。非固形腫瘍は骨髄腫;急性骨髄芽腫、急性前骨髄球、急性骨髄単球、急性単球、赤白血病のような白血病(急性または慢性、リンパ球または骨髄球);およびホジキン、非ホジキンおよびバーキットのようなリンパ腫を含む。固形腫瘍は癌腫、結腸癌腫、小細胞肺癌腫、非小細胞肺癌腫、腺癌腫、メラノーマ、基底または扁平細胞癌腫、中皮腫、腺癌腫、神経芽腫、神経膠腫、神経膠星状細胞腫、髄芽細胞腫、網膜芽腫、肉腫、骨肉腫、横紋筋肉腫、線維肉腫、骨形成性肉腫、肝臓癌およびセミノーマを含む。
【0203】
典型的には、本発明の組成物は、腫瘍細胞の表面で過剰発現される抗原のような腫瘍特異的抗原と共に投与することができる。
【0204】
APCを用いて(アレルギー性疾患または自己免疫疾患のような)継続する免疫応答を治療することができるか、あるいはそれを用いて、患者において寛容(tolerance)を生じさせることができる。従って、本発明の細胞を、動物およびヒトにおける不適切なリンパ球活性によって特徴付けられる病気を治療および予防の双方のための治療的方法で用いることができる。APCを用いて、単一抗原または複数抗原に対する寛容を付与することができる。
【0205】
典型的には、APCは患者またはドナーから得、前記したようにプライミングし、しかる後に患者に戻す(エキソビボ療法)。
【0206】
治療または予防することができる特定の疾患は多発性硬化症、慢性関節リウマチ、糖尿病、アレルギー、喘息および移植片拒絶を含む。また、本発明は、器官移植または骨髄移植で用いることもできる。
【0207】
[ワクチン]
本発明のもう1つの態様は、抗体および/またはT細胞免疫応答を生じさせて、例えば、腫瘍、または細菌またはウイルス感染のような感染から個体を保護するのに適した本発明のHMGB1タンパク質、またはその断片または変種で個体を摂取するステップを含む、個体、特に哺乳動物、好ましくはヒトにおいて免疫学的応答を誘導する方法に関する。また、そのような免疫学的応答が腫瘍の成長またはウイルスまたは細菌の複製を遅延させる方法も提供される。
【0208】
本発明のさらなる態様は、中で免疫学的応答が誘導できる個体、好ましくはヒトに導入されると、そのような個体において免疫学的応答を誘導する免疫学的組成物に関する。免疫学的応答は治療的にまたは予防的に用いることができ、CTLまたはCD4+T細胞から生起する細胞免疫性のような抗体免疫性および/または細胞性免疫性の形態を採ることができる。
【0209】
免疫学的応答は本発明のHMGB1タンパク質に対するものであってよい;しかしながら、我々は、驚くべきことに、組成物中のアジュバントとしてHMGB1タンパク質を用いることができ、ここに、免疫学的応答がもう1つの抗原に向けられることを見出した。従って、HMGB1はワクチン組成物においてアジュバントとして用いることができる。
【0210】
免疫学的ポリペプチドを有効成分として含有するワクチンの調製は当業者に知られている。典型的には、そのようなワクチンは液状溶液または懸濁液いずれかとしての注射剤として調製され;注射に先立って液体中の溶液または懸濁液に適した固体形態も調製することができる。製剤は乳化することもでき、あるいはタンパク質をリポソームにカプセル化することもできる。活性な免疫原性成分は、しばしば、医薬上許容され、有効成分に適合する賦形剤と混合される。適当な賦形剤は、例えば、水、生理食塩水、デキストロース、グリセロール、エタノールなどおよびその組合せである。
【0211】
加えて、所望ならば、ワクチンは、少量の、湿潤剤または乳化剤、pH緩衝剤、および/またはワクチンの有効性を高めるアジュバントのような補助的物質を含むことができる。
【0212】
本発明のワクチン処方は、好ましくは、処方の免疫原性を高めるためのアジュバント系に関し、および/またはそれを含む。好ましくは、アジュバント系は支配的にTH1−タイプの応答を生起させる。
【0213】
免疫応答は2つの極端なカテゴリー(液性または細胞媒介免疫応答(伝統的には、各々、保護の抗体および細胞エフェクターメカニズムによって特徴付けられる))に広く区別することができる。応答のこれらのカテゴリーはTH1−タイプ応答(特に、細胞内病因および腫瘍細胞に対して効果的)およびTH2−タイプ免疫応答(主として、細胞外病因に対する応答に関与する液性応答)と呼ばれてきた。
【0214】
極端なTH1−タイプ免疫応答は抗原特異的なハプロタイプ制限細胞傷害性Tリンパ球、およびナチュラルキラー細胞応答発生によって特徴付けることができる。マウスにおいては、TH1−タイプ応答は、しばしば、IgG2aサブタイプの抗体の発生によって特徴付けられ、他方、ヒトにおいては、これらはIgG1タイプ抗体に対応する。TH2−タイプ免疫応答はマウスIgG1、IgAおよびIgMを含む広い範囲の免疫グロブリンイソタイプの発生によって特徴付けられる。
【0215】
これらの2つのタイプの免疫応答の発生の後ろにある駆動力はサイトカインであると考えることができる。高レベルのTH1−タイプサイトカインは所与の抗原に対する細胞媒介免疫応答の誘導に好都合である傾向があり、他方、高レベルのTH2−タイプサイトカインは抗原に対する液性免疫応答の誘導に好都合である傾向がある。
【0216】
TH1およびTH2−タイプ免疫応答の区別は絶対的ではない。現実には、個体は圧倒的にTH1または圧倒的にTH2であると記載される免疫応答を支持するであろう。しかしながら、MosmannおよびCoffmanによってネズミCD4+ve T細胞クローンにおいて記載された点でサイトカインのファミリーを考慮するのがしばしば便宜である(Mosmann,T.R.and Coffman,R.L.(1989)TH1 and TH2 cells:different patterns of lymphokine secretion lead to different functional properties.Annual Review of Immunology,7,p145-173)。伝統的には、TH1−タイプ応答はT−リンパ球によるINF−γおよびIL−2サイトカインの生産と関連付けられる。TH1−タイプ免疫応答の誘導にしばしば直接関連付けられる他のサイトカインはIL−12のようなT細胞によって生産されない。対照的に、TH2−タイプ応答はIL−4、IL−5、IL−6およびIL−13の分泌に関連付けられる。
【0217】
ある種のワクチンアジュバントはTH1またはTH2−タイプいずれかのサイトカインの応答の刺激に特に適合することが知られている。伝統的には、ワクチン接種または感染後の免疫応答のTH1:TH2バランスの最良のインジケーターは、抗原での再刺激後のインビトロでのTリンパ球によるTH1またはTH2サイトカインの生産の直接的測定、および/または抗原特異的抗体応答のIgG1:IgG2a比率の測定を含む。
【0218】
従って、TH1−タイプのアジュバントは、インビトロにて抗原で再度刺激すると、単離されたT細胞集団を優先的に刺激して、高レベルのTH1−タイプサイトカインを生産し、CD8+細胞傷害性Tリンパ球およびTH1−タイプのイソタイプに関連する抗原特異的免疫グロブリン応答の双方の発生を促進するものである。
【0219】
HMGB1タンパク質は、種々のワクチンタイプにおいてアジュバントとして用いることができる。そのようなワクチンタイプの非限定的例は、サブユニットワクチンおよび細胞ワクチン、例えば、樹状細胞での腫瘍の免疫療法を含む。
【0220】
本発明の組成物は(さらなる)アジュバントを含むことができる。アジュバントおよび他の剤の例は水酸化アルミニウム、リン酸アルミニウム、硫酸カリウムアルミニウム(ミョウバン)、硫酸ベリリウム、シリカ、カオリン、炭素、油中水型エマルジョン、水中油型エマルジョン、ムラミルジペプチド、細菌エンドトキシン、脂質X、Corynebacterium parvum(Propionobacterium acnes)、Bordetella pertussis、ポリリボヌクレオチド、アルギン酸ナトリウム、ラノリン、リゾレシチン、ビタミンA、サポニン、リポソーム、レバミソール、DEAE−デキストラン、ブロックコポリマーまたは他の合成アジュバントを含む。そのようなアジュバントは種々の源、例えば、Merckアジュバント65(Merck and Company,Inc.,Rahway,N.J.)またはフロイントの不完全アジュバントおよび完全アジュバント(Difco Laboratories,Detroit,Michigan)から商業的に入手可能である。
【0221】
典型的には、Amphigen(水中油型)、Alhydrogel(水酸化アルミニウム)、AmphigenおよびAlhydrogelの混合物のようなアジュバントを用いる。水酸化アルミニウムのみがヒトでの使用で認可されている。
【0222】
免疫原およびアジュバントの割合は、双方が有効量で存在する限り、広い範囲にわたって変化させることができる。例えば、水酸化アルミニウムはワクチン混合物の約0.5%の量で存在させることができる(Al23ベース)。便宜には、ワクチンは0.2〜200μg/ml、好ましくは5〜50μg/ml、最も好ましくは15μg/mlの範囲の最終濃度の免疫原を含むように処方される。
【0223】
処方の後、ワクチンは滅菌容器に入れることができ、次いで、これを密封し、低温、例えば、4℃で貯蔵することができるか、あるいはそれを凍結乾燥することができる。凍結乾燥は安定化された形態での長期貯蔵を可能とする。
【0224】
アジュバントの有効性は、やはり種々のアジュバントからなるワクチン中のこのポリペプチドの投与に由来する抗原配列を含む免疫原生ポリペプチドに対して向けられ抗体またはT細胞の量を測定することによって決定することができる。
【0225】
ワクチンは便宜には、非経口、注射(例えば、皮下または筋肉内)のいずれかにより投与される。投与の他の形態に適したさらなる処方は坐薬および、ある場合には、経口処方を含む。坐薬では、伝統的なバインターおよび担体は、例えば、ポリアルキレングリコールまたはトリグリセリドを含むことができ;そのような坐薬は0.5%〜10%、好ましくは1%〜2%の範囲の有効成分を含有する混合物から形成することができる。経口処方は、例えば、医薬グレードのマンニトール、ラクトース、澱粉、ステアリン酸マグネシウム、サッカリンナトリウム、セルロース、炭酸マグネシウムなどのような通常使用される賦形剤を含む。これらの組成物は溶液、懸濁液、錠剤、丸剤、カプセル剤、徐放処方または散剤の形態を採り、10%〜95%、好ましくは25%〜70%の有効成分を含む。ワクチン組成物を凍結乾燥する場合、凍結乾燥した物質は、例えば、懸濁液として投与前に復元することができる。復元は好ましくは緩衝液中で行う。
【0226】
患者への経口投与のためのカプセル、錠剤および丸剤には、例えば、オイドラギット「S」オイドラギット「L」、酢酸セルロース、酢酸フタル酸セルロースまたはヒドロキシプロピルメチルセルロースを含む腸溶コーティングを設けることができる。
【0227】
ポリペブチドは中性または塩形態としてワクチンに処方することができる。医薬上許容される塩は(ペプチドの遊離アミノ基とで形成された)酸付加塩を含み、これは例えば塩酸またはリン酸のような無機酸、あるいは酢酸、シュウ酸、酒石酸およびマレイン酸のような有機酸とで形成される。遊離カルボキシル基とで形成された塩は、例えば、水酸化ナトリウム、カルシウム、アンモニウム、カルシウムまたは第二鉄のような無機塩基およびイソプロピルアミン、トリメチルアミン、2−エチルアミノエタノール、ヒスチジンおよびプロカインのような有機塩基に由来することもできる。
【0228】
APCの注射(皮下、真皮内、静脈内、節内または腫瘍内いずれか)に依拠するさらなるワクチン接種が最近開発されている。細胞は注射前に通常は適当な等張媒体に再懸濁させ、これはさらにアジュバントを補うことができる。
【0229】
[方法]
本発明で用いる未成熟樹状細胞はGM−CSF、IL−4およびflt3−Lのようなサイトカインでの適当な処理によって、造血前駆体から、あるいは幹細胞から、例えば、PBMC細胞から得ることができる。
【0230】
抗原提示細胞の活性化または成熟化は、HMGB1タンパク質および、恐らくは、サイトカインのような他の共アジュバントを培養基に添加することによって未成熟または不活性細胞の培養から出発して行うことができる。
【0231】
一旦成熟化または活性化に導かれれば、抗原提示細胞、特にDCは、特定の抗原に応答してTリンパ球の活性化で用いることができる;次いで、各活性化されたリンパ球を対象に投与して、前記抗原に対するその免疫応答を刺激することができる。
【0232】
活性化のインジケーターは考慮する細胞型に従って変化させることができる。マクロファージ、小神経膠細胞およびDリンパ球に関しては、例えば、Rovere et al.,2000およびAderem et al.,2000に記載されているように、それは機能的活性化であり、他のアジュバントとの接触に続いて、MHC分子および共刺激分子の膜発現の増加が伴う。
【0233】
樹状細胞の場合には、CD83およびCD86表面分子のような「成熟化表現型」に特徴的なマーカーの増大した発現またはCD115、CD14、CD68およびCD32のような未成熟表現型に特徴的なマーカーの低下した発現を呈する細胞は活性化されたまたは成熟しているとみなされる。
【0234】
1つの実施形態によると、従って、本発明は以下のステップ:
a)不活性なAPCの調製物をHMGB1またはその生物学的活性断片と接触させて、その活性化を誘導するステップと;
b)活性化させたAPCを特定の抗原と接触させるステップと;
c)Tリンパ球を、活性化され、抗原に暴露されたAPCに暴露するステップと;
を含む、Tリンパ球の活性化のためのエキソビボ方法に関する。
【0235】
好ましい実施形態によると、APCとして樹状細胞を用いる。
【0236】
前記した工程a)〜c)は異なる順序で行うことができる。例えば、抗原を、HMGB1タンパク質またはその断片前に未成熟または不活性APCの培養に添加することができる。加えて、APCまたはDCを、特定の抗原またはそれに由来するポリペプチドの発現用のベクター、あるいは特定的MHC分子の発現用のベクターでトランスフェクトすることができる。微生物、ウイルス、腫瘍または自己免疫疾患に関連する抗原を、記載した方法に従ってリンパ球の活性化で用いることができる。腫瘍抗原として、腫瘍組織または細胞から単離されたタンパク質または他の断片に加えて、アポトーシスまたは壊死によって死滅した全細胞を用いることができる。また、ウイルスまたはレトロウイルス、特にHIVに、またはマイコバクテリアまたはプラスモディウムのような細胞内病原体に関連する抗原を用いることもできる。
【0237】
もう1つの実施形態において、本発明は、HMGB1および、所望により、抗原を患者、例えば、リンパ節または腫瘍に導入するインビボ方法に関する。抗原はHMGB1の前、同時、または後に導入することができる。別法として、抗原は、例えば、HLA抗原としてインビボで存在することができるか、あるいは、移植の間に導入されてしまっている。
【0238】
全ての実施形態において、HMGB1および/または抗原は、ポリヌクレオチド配列として、すなわち、遺伝子送達アプローチを用いて導入することができる。
【0239】
[核酸配列のAPCへの導入]
前記したAPCは、所望により、ウシ胎児血清の存在下でDMEMまたは他の規定された培地のような適当な培養基で培養することができる。
【0240】
HMGB1は、APCにおけるポリペプチドの発現を可能とする条件下で、タンパク質をコードする核酸構築体/ウイルスベクターを細胞に導入することによってAPCに投与することができる。同様に、アンチセンス構築体をコードする核酸構築体をトランスフェクション、ウイルス感染またはウイルス形質導入によってAPCに導入することができる。
【0241】
本発明のアンタゴニストはHMGB1と同様に投与することもできる。
【0242】
[幹細胞化学誘引物質および増殖促進剤]
我々の同時係属US仮出願は炎症および組織修復の最初の工程の処理における幹細胞化学誘引物質および増殖促進剤としてのHMGB1の使用を記載する。前記したように、我々は、今回、骨髄系細胞によって分泌され、炎症の後期相を媒介するHMGB1の形態がHMGB1のアセチル化形態であることを見出した。対照的に、細胞壊死の間に放出されたHMGB1は必ずしもアセチル化されず、化学誘引物質およびマイトジェン活性を有する。従って、本発明は、アセチル化HMGB1のアンタゴニストを用いることによって同時炎症化をブロックしつつ、細胞を有効量のHMGB1に暴露する工程を含む、細胞培養中の、またはインビボで幹細胞移動および/または増殖を誘導する方法が考えられる。
【0243】
また、本発明は、腸梗塞、急性膵臓炎および広範な外傷のような大規模な壊死の場合における、HMGB1の非アセチル化形態の阻害剤、およびその使用にも関する。
【0244】
前記の場合、非アセチル化HMGB1またはその阻害剤はアセチル化HMGB1またはその阻害剤と共に投与することができる。本発明によると、もう1つの化合物との投与へのいずれの言及も、2つの化合物が同時に投与されることを必ずしも意味しない。その代わり、1つの化合物を他の化合物の前または後に投与することができる。
【0245】
前記方法は、従って、炎症に関連する通常の副作用を回避する。
【0246】
[血管病]
WO02/074337は、血管病の治療のためのHMGB1の阻害剤の使用に関する。そのような阻害剤はHMGB1の非アセチル化形態に向けられるべきである。血管病はアセローム性動脈硬化症および/または血管形成術の間に起こる再狭窄を含む。
【0247】
WO02/074337は、結合組織の再生を促進しおよび/または誘導するためHMGB1の使用も教示する。再度、そのような阻害剤はHMGB1からの非アセチル化に向けられるべきである。
【0248】
前記の場合、非アセチル化HMGB1またはその阻害剤はアセチル化HMGB1またはその阻害剤と共に投与することができる。
【0249】
従って、前記方法は、炎症に関連する従来の副作用を回避する。
【0250】
[送達システム]
本発明は、さらに、本発明のタンパク質、ポリヌクレオチド、アゴニストまたはアンタゴニストのための送達システムを提供する。タンパク質への参照の容易性のために、アゴニストおよび/またはアンタゴニストを本セクションでは「剤(agent)」という。
【0251】
本発明の送達システムはウイルスまたは非ウイルス送達システムであり得る。非ウイルス送達メカニズムは限定されるものではないが、脂質媒介トランスフェクション、リポソーム、免疫リポソーム、リポフェクチン、カチオン性両親媒性物質(CFA)およびその組合せを含む。先に示したように、前記剤が、そこでの引き続いての発現のためにポリヌクレオチドの形態で細胞に送達される場合、前記剤は好ましくはレトロウイルスベクター送達システムを介して送達される。しかしながら、ポリヌクレオチドは、いずれかの適当な遺伝子送達ビヒクル(GDV)によって標的細胞集団に送達することができる。これは、限定されるものではないが、脂質またはタンパク質複合体に処方されたまたは注射またはバイオリスティック送達を介して裸のDNAとして投与されるDNA、およびレトロウイルスのようなウイルスを含む。別法として、ポリヌクレオチドは単球、マクロファージ、リンパ球または造血幹細胞のような細胞によって送達される。特に、細胞依存性送達システムが用いられる。このシステムにおいては、前記剤をコードするポリヌクレオチドをエキソビボにて一以上の細胞に導入し、その後、患者に導入される。
【0252】
本発明の剤は単独で投与することができるが、一般には、医薬組成物として投与される。
【0253】
[医薬組成物]
医薬組成物は治療上有効量の医薬的に活性な剤を含む、またはそれからなる組成物である。それは好ましくは医薬上許容される担体、希釈剤または賦形剤(その組合せを含む)を含む。治療用途の許容される担体または希釈剤は医薬分野で周知であり、例えば、Remington's Pharmaceutical Sciences,Mack Publishing Co.(A.R.Gennaro edit.1985)に記載されている。医薬担体、賦形剤または希釈剤の選択は、意図された投与経路および標準的な医薬プラクティスに関して選択することができる。医薬組成物は前記担体、賦形剤または希釈剤として、あるいはそれに加えて、いずれかの適当なバインダー、滑沢剤、懸濁化剤、コーティング剤、可溶化剤を含むことができる。
【0254】
「治療上有効量」とは、その意図した目的を達成するのに有効な治療剤の量をいう。個々の患者の必要性は変わり得るが、HMGB1の有効量についての最適範囲の決定は当業者の技量内のものである。一般に、本発明の化合物および/または組成物での疾患を治療するための投与方法は、薬物送達システムを用いるか否か、および前記化合物が薬物組合せの一部として投与されるか否かを問わず、患者のタイプ、年齢、体重、性別、食事および医学的疾患、機能不全の重傷度、投与経路、用いる特定の化合物の活性、効果、薬物動態学および毒性学的プロフィールのような薬理学的考慮を含む種々の因子に従って選択され、これは、当業者によって調整することができる。従って、現実に使用される投与方法は広く変化させることができ、従って、本明細書中に記載された好ましい投与方法から逸脱し得る。
【0255】
医薬上許容される担体の例は、例えば、水、塩溶液、アルコール、シリコーン、ワックス、石油ゼリー、植物油、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、リポソーム、糖、ゼラチン、ラクトース、アミロース、ステアリン酸マグネシウム、タルク、界面活性剤、ケイ酸、粘性パラフィン、香油、脂肪酸モノグリセリドおよびジグリセリド、ペテロエテラル脂肪酸エステル、ヒドロキシメチル−セルロース、ポリビニルピロリドン等を含む。
【0256】
適当な場合、医薬組成物は、吸入、坐薬またはペッサリーの形態、ローション、溶液、クリーム、軟膏または散粉の形態で局所的に皮膚パッチの使用によって、澱粉またはラクトースのような賦形剤を含有する錠剤の形態で、あるいは単独または賦形剤と混合したカプセルまたは小胞で経口的に、またはフレーバー剤または着色剤を含有するエリキシル、溶液または懸濁液の形態で:のいずれか1以上によって投与することができるか、あるいは非経口、例えば、洞内、静脈内、筋肉内または皮下注射することができる。非経口投与では、組成物は他の物質、例えば、溶液を血液と等張とするために十分な塩または単糖を含有することができる滅菌水溶液の形態で最良に用いることができる。バッカルまたは舌下投与では組成物は従来の方法で処方することができる錠剤またはロゼンジの形態で投与することができる。
【0257】
異なる送達システムに応じて異なる組成物/処方の要件があり得る。その例として、本発明の医薬組成物は、例えば、吸入用の鼻スプレーまたはエアロゾル、または摂取可能な溶液として、ミニ−ポンプを用いてまたは粘膜経路によって、あるいは送達のために組成物が注射形態によって処方される非経口的に、例えば、静脈内、筋肉内または皮下経路によって送達するように処方することができる。別法として、処方は双方の経路によって送達されるように設計することができる。
【0258】
典型的には、各コンジュゲートは0.01〜30mg/kg体重、好ましくは0.1〜10mg/kg、より好ましくは0.1〜1mg/kg体重の用量にて投与することができる。
【0259】
ポリヌクレオチド/ベクターを裸の核酸として投与する場合、投与される核酸の量は、典型的には、1μg〜10mg、好ましくは100μg〜1mgの範囲とすることができる。
【0260】
哺乳動物細胞による裸の核酸構築体の摂取は、いくつかの公知のトランスフェクション技術、例えば、トランスフェクション剤の使用を含むものによって増強される。これらの剤の例はカチオン性剤(例えば、リン酸カルシウム、DEAE−デキストラン)およびリポフェクタント(例えば、lipofectam(商標)およびtransfectam(商標))を含む。典型的には、核酸構築体をトランスフェクション剤と混合して、組成物を得る。
【0261】
記載された投与の経路および投与量はガイドとしてのみ意図する。当業者であれば、いずれかの特定の患者および疾患については、最適な投与経路および投与量を容易に決定できるからである。
【0262】
非限定的実施例および図面を参照して本発明を今やさらに記載する。
【実施例】
【0263】
HMGB1は、それが(それをプロ炎症性サイトカインとして用いる)骨髄系起源の細胞によって、および発生する神経細胞(そこでは、その役割はあまり理解されていない)によっての双方により分泌することができる点で核タンパク質内ではユニークである(Mueller et al.,2001bおよびBustin,2002によってレビューされている)。本研究は、それが人工的因子としてその一次的機能を発揮する核において、および細胞質において、またはその最終的な分泌に向けての中間ステーションとして働く細胞質小胞において、HMGB1の別の細胞下位置がその核局所化配列(NLS)のアセチル化状態に依存することを確立する。U937前骨髄球細胞において、HMGB1アセチルトランスフェラーゼ(またはデアセチラーゼ)の活性は、今度は、ERKキナーゼによって直接的に調節される。
【0264】
[実施例1:タンパク質の発現および精製]
細菌により生産された全長HMGB1およびその断片の発現および精製は記載のように行った(Mueller et al.,2001a)。HMGB1はJ.Bernues(CSIC,Barcelona)によって親切にも贈られたプロトコルにしたがって子牛胸腺から精製した。簡単に述べると、脂肪および結合組織を除去した後器官を緩衝液1(0.14MのNaCl,0.5mMのEDTA,0.1mMのPMSF)中でミンチする。ホネジネートを3回の5%PCA抽出に供し;遠心後に収集した上清をプールし、TCA(18%最終濃度)で清澄化する。アセトン−HCl(400:1v/v)およびアセトン単独で分画した沈殿はヒストンH1を排除する。ホウ酸緩衝液pH9.0に溶解させた沈積物を、次いで、CM-Sephadex C25カラムを(試料の純度に応じて)1回または3回通過させ、0.11M〜0.2MのNaClグラジエントで溶出させる。
【0265】
本明細書を通じて、HMGB1における残基はAllfreyおよび共同研究者に従ってナンバリングした。成熟HMGB1の最初のaaはグリシンである。というのは、前記遺伝子によってコードされた最初のメチオニンは合成後に切断除去されるからである。
【0266】
[実施例2:プラスミド]
プラスミドpEGFP−HMGB1は、従前に記載されているように(Scaffidi et al.,2002)、増強された緑色蛍光タンパク質(EGFP)のコーディング領域と3’末端で融合されたHMGB1のオープンリーディングフレームを含む。プラスミドpEGFP−HMGB1は鋳型として用いて、外部プライマーとして5'HMG-GFP(5'-ATCCTCgAgACATgggCAAAggAg-3')および3'HMG-GFP(5'-ACCCCgCggTTCATCATCATCATC-3')および内部突然変異誘発プライマー(下線は置換)の6つの対:
NLS1KQdir 5'-gAggAgCACCAgCAgCAgCACCCggATg-3'
NLS1KQrev 5'-CATCCgggTgCTgCTgCTggTggTCCTC-3';
NLS1KRdir 5'-CACAggAggAggCACCCggATgCTTCTgTC-3'
NLS1KRrev 5'-gTgCCTCCTCCTgtgCTCCTCCCgGCAg-3';
NLS1KAdir 5'-gAggAgCACgCggCggCgCACCCggATgC-3'
NLS1KArev 5'-gCATCCgggTgCgCCgCCgCgTgCTCCTC-3';
NLS2KQdir 5'-AgCCAgCAACAgAAggAAgAggAAgACgACgAg-3'
NLS2KQrev 5'-CTTCTgTTgCTggCTCTTCTCAgCCTTgAC-3';
NLS2KRdir 5'-AgCAggAgAAggAAggAAgAggAAgACgACgAg-3'
NLS2KRrev 5'-CTTCCTTCTCCTgCTCTTCTCAgCCTTgAC-3';
NLS2KAdir 5'-AgCgCggCAgCgAAggAAgAggAAgACgAC-3'
NLS2KArev 5'-CgCTgCCgCgCTCTTCTCAgCCTTgAC-3'
を用い、2工程PCR突然変異誘発にてNLS1およびNLS2において突然変異体を作り出した。次いで、最終のPCR産物を、XhoIおよびSacIIで切断したpEGFP−HMGB1にクローン化して、突然変異体プラスミドを得た。
【0267】
二重突然変異体は、NLS2内部突然変異プライマーおよび鋳型としてのpEGFP−HMG1のNLS1突然変異体を用いて作成した。クローニングアプローチは単一突然変異と同一であった。
【0268】
我々は、オリゴヌクレオチドの以下の対:
NLS1dir:5'-TCTACTCgAgACATGAAgAAgAAgCACCCggATgCTTCTgTCAACTTCTCAgAgTTCTCCAAgAAgCCgCggCTAA-3’および
NLS1rev:5'-TTAgCCgCggCTTCTTggAgAACTCTgAgAAgTTgACAgAAgCATCCgggTgCTTCTTCTTCATgTCTCgAgTAgA-3';
NLS2dir:5'- TCTACTCgAgACATGAAgAgCAAgAAAAAgAAggAACCgCggCTCA-3'および
NLS2rev:5'-TgAgCCgCggTTCCTTCTTTTTCTTgCTCTTCTAgTCTCgAgTAgA-3'
をアニールすることによって生じた、pEGFP−N1ベクターの2つのカセットのXhoI/SacII部位の間のクローニングによってNLS−GFPおよびNLS2−GFP融合についての構築体を作成した。
【0269】
全ての構築体は配列決定によって確認した。
【0270】
[実施例3:2Dゲル電気泳動]
約50μgの精製されたHMGB1または約250μgの全細胞タンパク質を、8M尿素、2%CHAPS、20mMジチオエリスリトール(DTE)、0.8%IPG緩衝液(担体両性電解質、pH3〜10非直線またはpH4〜7直線)を含有する350μlの再水和緩衝液(RB)に添加した。試料を18cmポリアクリルアミドゲルストリップ(pH範囲:3〜10NL、またはpH4〜7L)に適用した。等電点電気泳動(IEF:Isoelectrophocusing)をIPGphor(Pharmacia Biotech)で行った。IEFは75000〜90000ボルト時間で停止した。二次元の泳動はProtean II装置(Bio-Rad)を用いて行った。IEFの後、ストリップをまず平衡緩衝液(EB:6M尿素、3%SDS、375mMトリスpH8.6、30%グリセロール、2%DTE)中で、次いで、3%ヨードアセトアミド(IAA)および痕跡量のブロモフェノールブルー(BBP)を含有するEB中に浸漬した。次いで、ストリップを10%〜12%ポリアクリルアミドゲルに適用した。ゲルを90Vにて約16時間泳動させ、次いで、25mMトリスpH7.5、0.192Mグリシン、20%メタノール中で銀染色し、またはニトロセルロース膜(ECL、Amersham)に移した。
【0271】
[実施例4:質量分析]
単離されたタンパク質スポットを、コロイド状クーマシーで染色した2Dゲルから切り出し、記載されているように還元し、アルキル化した(Shevchenko et al,.1996)。次いで、我々は、異なる配列特異的プロテアーゼおよび/または化学的切断を用いて順次の消化を行った。特に、振盪しつつ、37℃の50mMのNH4HCO3緩衝液pH8.0中でトリプシン、Asp−N、Glu−C消化を行った。消化の時間は、切断の効率に従って、3時間から一晩まで変化させた。ギ酸での化学的切断(Asp−C)は、スポットを2%ギ酸中で56℃にて一晩インキュベートすることによって達成された。PVDF膜にブロットされたスポットを、暗所にて、70%トリフルオロ酢酸中の臭化シアン(CNBr)の存在下で室温にて1時間インキュベートした。乾燥された液滴技術およびα−シアノ−4−ヒドロキシ桂皮酸(HCCA)またはシナピン酸をマトリックスとして用いて、1μlの消化産物をMALDI標的に負荷した。
【0272】
MALDI−TOF質量測定は、遅延抽出およびレフレクターモードで作動するVoyager-DE STR時間飛行(TOF)マススペクトロメーター(Applied Biosystems,Framingham,MA,USA)で行った。内部較正したスペクトルをData Explorerソフトウェアを介して処理した。
【0273】
[実施例5:細胞培養、トランスフェクション、およびLPSおよび阻害剤での処理]
5%CO2湿潤雰囲気中、10%胎児ウシ血清(GibcoからのFBS)、100IU/mlのペニシリンおよび100μg/mlのストレプトマイシンを補足したダルベッコウの修飾イーグル培地(DMEM)中で線維芽細胞およびHeLa細胞を培養した。HeLa細胞および3134マウス線維芽細胞をリン酸カルシウム共沈殿によってトランスフェクトした。蛍光タンパク質を発現させるために、3×105細胞を6cm皿中で平板培養し、8μgの適当なプラスミドで一時的にトランスフェクトした。細胞をトランスフェクションから36時間後に観察した。細胞集団中のHMGB1−GFPの平均量は(抗−HMGB1抗体で免疫ブロッティングすることによって測定して)1および3%の間のHMGB1であった。トランスフェクションから約24時間後に、固定およびイメージング前に、3134線維芽細胞を10ng/mlトリクロスタチンA(TSA,Sigma)で3時間処理した。M.AlfanoおよびG.Poli(HSR,Milano)によって親切にも贈られたU937前骨髄球細胞のサブクローン12[−]を、10%FCS、L−グルタミン、100U/mlペニシリン、100μg/mlストレプトマイシンを補足したRPMI培地(Gibco)中で増殖させ、3日間0.1μMビタミンD3(Roche)に暴露して、CD14発現を促進し、100ng/mlのLPS(Sigmaカタログ番号L4391)または10ng/mlのTSAで3時間刺激した。キナーゼ阻害剤での実験では、細胞をLPSと同時に1μMのU0126、10μMのSB203580または30μMのSP600125(全てCalbiochemから)に暴露した。末梢血液(M.Iannacone,HSRからの親切な贈物)から精製された一次ヒト単球を前記したように補足したRPMI培地中で維持し、100ng/mlのLPSで活性化した。
【0274】
[実施例6:ヘテロカリオンアッセイ]
HeLa細胞を6−ウェル皿中のカバーグラス上で平板培養した(100000細胞/皿)。16時間後に、200000のHmgb1−/−マウス線維芽細胞を同一のカバーグラス上で平板培養した。100μg/mlのシクロヘキシミドの存在下での3時間のインキュベーションの後に、細胞をPBSで洗浄し、PBS中の100μlの予め加温した50%PEG−6000で1分間処理した。PBSで3回洗浄した後、細胞を、100μg/mlのシクロヘキシミドを含有するDMEMと共に4時間インキュベートし、次いで、4%パラホルムアルデヒドで固定した。抗−ヒトサイトケラチン(Santa Cruz)および抗−HMGB1抗体を用いて免疫蛍光を行い、DAPI染色によってクロマチンを可視化した。示された場合、150nMのレプトマイシンB(Barbara Wolff,Novartis,Viennaの親切な贈物)をシクロヘキシミドと共に培地に添加した。
【0275】
HMGB1の受動拡散のテストでは、HeLa細胞を100μg/mlのシクロヘキシミドで37℃にて30分間予備処理し、4℃にて4時間インキュベートし、4%パラホルムアルデヒドで固定し、抗−HMGB1抗体で染色した。
【0276】
[実施例7:CRM1でのプルダウンアッセイ]
pSGCRM1プラスミドを鋳型として用い、製造業者のプロトコルに従い、CRM1タンパク質をTnTカップルド網状赤血球溶解物システム(Promega)でインビトロ転写−翻訳した。7μlの新たに作成した[35S]−Met標識CRM1を15μlのRAN緩衝液(50mMトリス−HCl pH7.5,200mMのNaCl,2mMのMgCl2,10%グリセロール)、5μlの6×CRM1緩衝液(20mMのHEPES−KOH pH7.5,80mMのCH3COOK,4mMのMg(CH3COO)2,250mMのスクロース,2.5mMのDTT)、1mg/mlのBSA、示された場合は400nMのレプトマイシンB、およびほぼ10μlの固定化GST−NS2、BSA、組換えテールレスHMGB1(HMGB1ΔC,Muller et at.,2001b)、boxA、またはboxBを担うビーズ中でインキュベートした。GST−NS2をグルタチオンSepharose(Amersham)にカップリングさせ、他のタンパク質を活性化されたSepharose-CH(Amersham)に共有結合により架橋した。インキュベーションは回転するホイール上の4℃における1時間であった。ビーズを遠心によってペレット化し、上清をSavant中で乾燥した。次いで、ビーズを、9%グリセロール、5mMのMgCl2および1%NP−40を含有する50容量のPBSで4℃にて5回洗浄した。次いで、ビーズを10μlのSDS−PAGE負荷緩衝液中で沸騰させ、乾燥した上清(アウトプット)、4番目の洗浄液(W4)および参照としての等量のインプットと共に8%SDS PAGE上に負荷した。次いで、ゲルをナイロンフィルターにブロットし、X線フイルムに暴露して、標識されたCRM1を検出した。
【0277】
[実施例8:免疫蛍光およびGFPイメージング]
LabTek IIチャンバー(Nalgene)中で培養した細胞をPHEM緩衝液(KOHでpH7.0に緩衝化した36.8g/lのPIPES,13g/lのHEPES,7.6g/lのEGTA,1.99g/lのMgSO4)中の3.7%パラホルムアルデヒド(PFA)中で室温にて10分間直接固定した。固定の後、細胞をPBSで洗浄し、300mMのスクロースおよび0.2%トリトンX−100を含有するHEPESベースの浸透緩衝液と共に4℃にて3分間インキュベートした。続いて、ブロッキング溶液(B1S,PBS中の0.2%BSA)中で15分間インキュベーションした。次いで、一次抗体をB1S中で適当な最終濃度まで希釈し、室温にて1時間インキュベーションを延長した。B1Sで3回すすいだ後、細胞をB1S中の二次抗体と共に1時間インキュベートし、B1Sで3回洗浄し、次いで、0.5μg/mlのHoechst33342を含有するPBSと共にインキュベートした。ポリクローナルウサギ抗−HMGB1をBD PharMingen(Torrey Pines,CA)から購入し、1:1600希釈で用いた。Alexa Fluor594(作動希釈1:1000)にコンジュゲートしたウサギIgG(H+L)に対するヤギポリクローナル抗体はMolecular Probes(Eugene,Oregon,USA)から購入した。
【0278】
HMGB1−GFP、その誘導体およびNLSs−GFP融合を発現する細胞を前記したようにPFA−固定し、次いで、Hoechst33342を含有するPBS中でインキュベートして、核を染色し、最後にイメージした。
【0279】
水銀アーク照明を備えたOlympus IX70顕微鏡の周りに形成されたDelta Vision Restoration Microscopy System(Applied Precision,Issaquah,WA,USA)のOlympus 60×または100×1.4NA Plan Apo油浸漬対物レンズを用いて細胞をイメージした。フィルターはChroma Technology Corp.(Brattleboro,VT,USA):Hoechst33342励起360/40、発光457/50;GFP励起490/20、発光528/38;AlexaFluor 574、励起555/30、発光617/73からのものであった。0.4μmの間隔を設けた40の光学セクションをCoolsnap#Hq/ICX285 CCDカメラ(Photometrix,Tucson,AZ,USA)で収集し、10反復および標準パラメータを用いるSoftWoRx2.50パッケージ(Applied Precision)で入手可能な拘束反復アルゴリズムによってほどいた。各イメージの測定された512×512画素、および有効画素サイズは106nm(60×)または63nm(100×)であった。
【0280】
[実施例9:バイオインフォーマッティックス]
HMGB1は、CUBIC(http://cubic.bioc.columbia.edu/predictNLS)(Cokol et al.,2001)に維持されたPredictNLSデータベースを用いて、潜在的NLSにつき精査した。PredictNLSは核局所化シグナル(NLS)の分析および測定のための自動ツールである。タンパク質の配列または潜在的NLSを提出することによって、PredictNLSは前記タンパク質が核であるかを予測し、あるいは潜在的NLSがデータベース中の既知のものに対応するか否かを見出す。プログラムは核/非核タンパク質の数についての統計を編集し、そこでは、潜在的NLSが見出されるか、あるいはそれがマッチを有する。最終的に、同様なNLSモチーフを有するタンパク質が報告され、特定のNLSを記載する実験論文への参照が与えられる。
【0281】
[実施例10:2D電気泳動はHMGB1タンパク質に対応する幾つかのスポットを解像する。]
HMGB1はリシン2および11がアセチル化されており(Sterner et al.,1979)、ADP−リボシル化されているのは既に知られていた。我々は、二次元電気泳動を用いてHMGB1の翻訳後修飾の問題点を再度調べた。種々の考察する修飾を拡大するため、我々は、リンパ系、骨髄系および上皮系の細胞を含む複雑な器官である胸腺からのHMGB1を分析した。
【0282】
精製されたHMGB1は一次元SDS−PAGEにて2つのバンドに分離し、主な1つは29kDaの見かけの分子量に対応し、従たる1つはADP−リボシル部分で修飾されたHMGB1を含む(図1A、左側のゲル、結果は示さず)。50μgのこの調製物を2D電気泳動によって分離し、銀染色すると、8〜10の異なるスポットが出現した(図1A、右側)。スポットはpHグラジエントに沿って規則的な間隔であり、非常に似た分子量を有し、これは、修飾が分子の荷電に影響することを示唆する。ポリクローナル抗−HMGB1抗体は、ニトロセルロースフィルターへのブロッティングの後に同様な親和性を有する全てのスポットを認識し(データは示さず);これは、それらは全て同一タンパク質の異なるイソ形態に対応することを確認した。
【0283】
スポットが精製人工物から生じた可能性を排除するために、我々は、17日齢マウス肺からの胸腺の全抽出物を調整し、同様にしてそれを分析した。双子のゲルを負荷し;1つは銀染色し、他方はブロットし、抗−HMGB1抗体でプローブした。HMGB1についての複数スポットが出現し、これは、修飾が生理学的であることを確認する(図1B)。検出されたより少数のスポットは、全組織抽出物の複雑性を仮定すれば、おそらくは、負荷されたHMGB1の少量によるものであった。
【0284】
また、我々は、3つの異なる細胞系統(3T3マウス線維芽細胞、HeLa細胞、HEK細胞)におけるHMGB1のアセチル化状態を確認した。これらはHMGB1のただ2つのイソ形態を示し(図1C、左側)、これは以前の知見と合致する。しかしながら、低い複雑性のHMGB1アセチル化を有する細胞系統においてさえ、トリコスタチンA(TSA)、酪酸ナトリウム、およびHC−トキシンのような、一般的なデアセチラーゼ阻害剤での処理によって過剰アセチル化を得ることができよう(図1C右側、結果は示さず)。HDAC阻害剤は、子牛胸腺から精製されたHMGB1で検出されたパターンと同様に、pHグラジエントのより酸性の部分にシフトした一連のスポットを生じた。アセチル化の最大レベルは処理から5および6時間の間に到達した(データは示さず)。
【0285】
[実施例11:HMGB1は多重にアセチル化される。]
質量分析(MS)を用いて、HMGB1で起こる修飾の性質を調べた。MS分析はタンパク質断片の正確な質量を決定し、それらの特異的断片化プロフィールに従ったタンパク質の同定を可能とする;別法として、ペプチドの実験的に見出された質量および予測された質量の間の差を正確に見積もることによって、それはタンパク質の修飾を特徴付けることができる。
【0286】
我々は、クーマシー染色2Dゲルから4つの最も豊富なスポットを切り出し、リシンおよび−程度は低いが−アルギニンのC末端のペプチド結合を切断するプロテアーゼであるトリプシンでタンパク質を消化した。ペプチドの質量はMALDI−TOFによって測定し、各消化産物に対応する質量をコンピュータでの消化から予測される質量と比較した(図2A)。
【0287】
我々は、ペプチド間の質量の差が、しばしば、アセチル部分に対応する42Daまたはこの値の倍数であることを見出した。タンパク質は、アセチル基(−COCH3)のリシンのεアミノ基への縮合によってアセチル化され;これは、1つの塩基性電荷の中和および全タンパク質のpIの減少を引き起こす。均等な間隔を持ち、分子量の変化がほとんどないスポットの2Dパターンは複数のアセチル化によって容易に説明され、10までのスポットの存在は、少なくとも多くのリシンがアセチル化できることを示唆する。
【0288】
今日でさえ、10以上のアセチル化部位を有するタンパク質混合物の分析は挑戦的である。さらに、HMGB1は丁度214アミノ酸の長さにわたる43リシンを含み、多くは単一タンパク質分解断片内にクラスター化されている。
【0289】
我々は複数−消化戦略を工夫し、我々は単独および組み合わせての双方にて、異なる部位特異的タンパク質分解剤(Asp−N、CNBr、トリプシン、Glu−C、Asp−C)を用い、MALDIによってペプチドを分析した。従って、1以上のアセチル化が(特異的リシンではなく)タンパク質の大きな断片に帰属され、次いで、それらの位置はより小さな断片内部に徐々に制限された。図2に示された例では、HMGB1をまずAsp−Nで消化し、消化から予測された非アセチル化断片はMSデータの複雑なパターン中で同定された。非アセチル化ペプチド+42または42のn倍数の質量に対応するピークは、推定によると、その特異的ペプチドの1〜nのアセチル化として帰属された。次いで、同一ペプチドのアリコットをさらにCNBrで切断し、より小さな断片が得られた。帰属手法を、アセチル化が特定のリシンに帰属されるまで反復した。
【0290】
消化産物の大きな組の分析によって(示さず)、我々は17のアセチル化リシンを帰属させ、20のリシンの修飾を排除することができ;43のうち6つのリシンのみが特徴付けされないままであった。我々は修飾の他のタイプの証拠を見出すことができず;特に、我々はメチル化、リン酸化およびグリコシル化を探した。MSは定量的な技術ではないが、それは、リシンが試料中の全てのHMGB1分子においてアセチル化されていないというデータから非常に明らかであった。原理的には、もし我々が帰属させたリシンの各々が独立してアセチル化できるならば、HMGB1の217(100000を超える)分子種が存在でき;しかしながら、幾つかのリシンはクラスターとしてアセチル化される傾向にあるように見えた。
【0291】
[実施例12:HMGB1は二部核局所化シグナルを有する。]
アセチル化クラスターの調査は、HMGB1の残基27および43内のリシンが核局所化シグナル(NLS)を表すことを示唆した。この配列は、約12アミノ酸によって分離された(図3A)2〜3の塩基性残基(KまたはR)の2つのストレッチから通常は構成される古典的二部NLSの特徴的なコンセンサス(Cokol et al.,2001)に対する完全なマッチである。
【0292】
我々はHMGB1のaa27〜43をGFPのN末端に融合させ、それを、HeLa細胞中の一過的に発現されたGFPと比較した。未融合GFPは全て細胞にわたって分布し、他方、NLS−GFP融合からの蛍光の約90%は核に濃縮されていた(図3A)。従って、アミノ酸27〜43はHMGB1に対して機能的NLSを提供することができる。
【0293】
リシン27、28、29は最も頻繁にアセチル化されている中にあるので、我々は、NLSのアセチル化が細胞下局所化HMGB1に関連する確率を調べた。我々はHMGB1−GFP融合のリシン27〜29をグルタミンに突然変異させて、アセチル化を模倣した;また、我々は、3つのリシンをアラニンに変化させることによってNLSを十分に破壊した。驚くべきことに、いずれの突然変異もHMB1−GEPの核局所化に影響せず、これは、aa27〜43以外のエレメントがHMGB1を核に局所化させるのに寄与しているに違いないことを示唆する(図3A)。
【0294】
[実施例13:第二のNLSはHMGB1を核に駆動することができる。]
HMGB1配列の視覚による精査によって、我々は、いずれの他のカノニカルNLSも見出すことができず、したがって、我々は、HMGB1におけるさらなるNLSを予測するのを助ける実験的に確認された+コンピュータでの作成NLSのコレクション(Cokol et al.,2001)を供するhttp://cubic.bioc.columbia.edu/predictNLSで入手可能なデータベースを利用した。
【0295】
aa178〜184の間の領域は一部NLSモチーフについての良好な候補として出現し、典型的には、これらは螺旋−破壊残基が先行する塩基性残基のクラスターによって特徴付けられるが、幾つかの変異は可能である(Boulikas,1993)。この配列をデータベース中に送り出すと、それは既に知られたNLSとして同定されなかったが、それは幾つかのタンパク質との最高の同様性にてマッチし、その93%は核であった(図3B)。我々は、それをGFPのN末端に融合させることによってそのNLS活性をテストし、融合タンパク質は核において蛍光の約90%を示した(図3B)。従って、HMGB1にはNLS活性を有する2モチーフが与えられ、我々は二部モチーフNLS1および一部モチーフNLS2と呼んだ。顕著には、NLS2も頻繁にアセチル化されたリシンのクラスターに対応する。
【0296】
HMGB1−GFP融合のリシン181、182、183をグルタミンまたはアラニンに変化させると、結果はNLS1突然変異で得られたのと同様であった。NLS2突然変異体は細胞質への再局所化を示さなかった(図3B)。NLS1およびNLS2における双方のリシンクラスターをグルタミン、アラニンまたはアルギニンに変化させたHMGB1−GFPの二重突然変異体を次いで構築した。リシンがアルギニンに変化された二重NLS1/NLS2突然変異体は核のままである。二重K−>QおよびK−>A突然変異体は明らかに細胞質局所化を有し(図3C);また、融合タンパク質は核内にも存在し、これは、それらが受動的拡散によって核ポアを通過するのに十分小さいことを示唆する。
【0297】
[実施例14:HMGB1は非古典的核輸出シグナルを有する。]
HMGB1(分子量25kDa)が核ポアを横切る単純な拡散によって核へ、または核から通過できるか否かをテストするために、我々は4℃にて4時間(活性なGTP−駆動核輸入/輸出を妨げる条件)HeLa細胞をインキュベートした。冷インキュベーションの後、HMGB1の一部は細胞質へ拡散で戻った。これはHMGB1−GFPでも当てはまった(示さず)。
【0298】
しかしながら、受動的拡散によって核膜を横切ることができる多くの小さなタンパク質にもまた、タンパク質の能動的核押し出しを促進する核輸出シグナル(NES)が備わっている。能動的輸出につきテストするため、Hmgb1−/1マウス胚線維芽細胞(Calogero et al.,1999)をHMGB1−陽性ヒトHeLa細胞と融合させた。ヒト細胞質は抗−ヒトサイトケラチン抗体での染色(赤色、図4A)によって同定され、マウス核は、青色のバックグラウンド上のその明るいDAPI−陽性異質染色質の白色がかったスポットによって同定された。ヒトサイトケラチンおよびマウス核を有する細胞はヘテロカリオンであった。HMGB1はマウスおよびヒトにおいて99.5%同一であり、その核存在は緑色蛍光抗体でスコア取りされた。融合の後間もなく、ヘテロカリオンにおけるマウス核はほとんどHMGB1を有さず(示さず)、しかしながら(タンパク質合成を阻害するシクロヘキシミドの存在下で)37℃にて4時間は、ヒトおよびマウス核の間で均等にHMGB1を平衡化させるのに一般に十分であった(図4AおよびB)。それ自体、この結果は、HMGB1が核側から細胞質側へ核膜を横切ることができることを示し、輸出が能動的であることを示さない。しかしながら、CRM1エクスポルチンを含む能動的輸出はレプトマイシンBによって阻害することができる。次いで、我々は、ヘテロカリオンをレプトマイシンで処理し、ヒトおよびマウス核の間のHMGB1の再平衡化は強く低下されたことに気がついた(図4B)。緑色蛍光の強度の定量は、レプトマイシン−処理ヘテロカリオンのほとんど大部分においては、HMGB1の5%未満が4時間後にマウス核に移動したことを示した(対照では、核のほとんど50%が平衡化した)。
【0299】
これらの結果は、HMGB1が、CRM1エクスポルチン(レプトマイシンの標的)と相互作用するNESを有することを示す。次いで、我々は、網状赤血球抽出物において標識されたCRM1を合成し、それを、NS2(陽性対照としての強い核シグナル)、BSA(陰性対照)、テールレスHMGB1(BoxA+B)、BoxAまたはBoxBを含有したカラムを通過させた。CRM1は双方のHMG boxesに結合し、これは、各々がNESを含有することを示す。CRM1を含有する網状赤血球抽出物に400nMレプトマイシンを添加すると、標識されたタンパク質は、双方のNESを含有するNS2またはBoxA+Bいずれかに結合しなかった。
【0300】
[実施例15:LPS−活性化単球によって分泌されたHMGB1は過剰アセチル化される。]
ヒト末梢血液から得られた休止単球は核HMGB1を含有し;LPSでの挑戦に際して、単球はHMGB1の大部分を細胞質小胞に蓄積し(図5)、他方、核タンパク質は徐々に枯渇する(示さず)。移動は約16時間を要し(異なるドナーに関連する変動を伴う)、シクロヘキシミドによって阻害されない(示さず)。HMGB1はリーダーペプチドを有さず;さらに、HMGB1分泌は古典的なER−ゴルジ経路に従わない(Gardella et al.,2002)。胸腺から精製されたHMGB1におけるNLSおよびアセチル化クラスターの間の一致は、小胞蓄積が細胞質局所化に続き、これはNLSのアセチル化に依存するであろう。
【0301】
我々は休止および活性化単球からの全抽出物を生成し、それらを2D電気泳動およびウェスタンブロッティングによって分析した。顕著には、休止単球は我々がこれまでにテストした全ての細胞系統のようにHMGB1のただ2つのイソ形態を示し、LPS−活性化単球においては、HMGB1の細胞質小胞への再分布は大部分のさらなるHMGB1スポットの出現と平行している(図5)。前記スポットは2つの「ベースライン」のものとほぼ同一の分子量にあるが、より低いpIからは離れている。ゲル中のその位置からスポットのpIを計算し、規定されたΔpIに対応する特定の修飾の数を見積もるように特別に設計されたソフトウェアImageMaster 2Dは、新規なスポットが最も右側のベースラインスポットよりも4または5倍アセチル化されたHMGB1に対応することを予測する。「活性化された」およびベースラインスポットの間の中間スポットの非存在は、単球においては、HMGB1のアセチル化が徐々にではなく、かなり同時であることを示唆する。
【0302】
[実施例16:HMGB1のアセチル化は線維芽細胞における細胞質への、および前骨髄球細胞における小胞へのその再配置を決定する。]
前記に示した結果は、HMGB1のアセチル化およびその細胞下局所化の間の相関を提供した。アセチル化の役割をさらに確認するために、我々は、分泌リソソームを含有しない線維芽細胞で、およびそれを含有するU937前骨髄球細胞で実験を行った。
【0303】
GFP−HMGB1を一過的に発現する3134マウス線維芽細胞の3時間のTSA処理は、かなりの量のHMGB1を細胞質に再配置させるのに十分であり(図6)、これは、過剰アセチル化がHMGB1がほとんどの細胞において細胞質に再配置させることを強いることができることを示唆する。
【0304】
U937細胞の異なるサブクローンはサイトカイン分泌において異なって行動し;この理由で、我々は、原形質膜分子マーカーおよび機能的応答の十分に確立されたプロフィールを有する規定されたサブクローン12[−]を選択する(Biswas et al.,2001;Bovolenta et al.,1999)。U937.12細胞は初代単球の挙動に密接に平行し;休止細胞は核にHMGB1を含有し、他方、LPS−活性化のものはかなりの割合のタンパク質を細胞質小胞に再分布させた(図6)。しかしながら、再配置は単球におけるよりもかなり速く、刺激から1時間後に出発して明瞭に見えた。
【0305】
HMGB1局所化がそのアセチル化状態によって直接的に決定されるかをテストするために、我々は、10ng/mlのTSAでU937.12細胞を3時間処理し、HMGB1のある割合は細胞質小胞へとシフトし出した(図6、矢印)。顕著には、これは、LPSによる活性化を伴う細胞質拡大の非存在下で起こった。
【0306】
また、我々は、過少アセチル化HMGB1が分泌リソソームによって摂取され得るか否かもテストした。我々はU937.12細胞を4℃にて数時間インキュベートし、かなりの割合のHMGB1の細胞質への受動的拡散を引き起こし、次いで、温度を37℃まで上昇させて戻した。5分以内に、HMGB1は分泌リソソームに蓄積された。同様に、有糸分裂の間に核膜の破壊によって細胞質に放出されたHMGB1(Falciola et al.,1997)もまた分泌リソソームに蓄積された。
【0307】
安定にトランスフェクトされたU937.12クローンで発現されたHMGB1−GFPはLPSおよびTSAに応答して核から細胞質へと行き来したが、さらに分泌リソソームへとは進むことができず、分泌されたのはかなり少なかった(示さず)。HMGB1−GFPの二重NLS1/NLS2突然変異体(二重K−>Aおよび二重K−>Q)は細胞質休止U937細胞に存在し、これは、線維芽細胞におけるそれらの表現型を確認する(示さず)。リシンからアルギニンへの二重置換はU938.12細胞にとっては致死的であり、テストすることができなかった。
【0308】
[実施例17:HMGB1のアセチル化はERK MAPキナーゼ経路を介して制御される。]
前記で報告した実験は、U937.12細胞が活性化に応答して小胞中でHMGB1をアセチル化し、蓄積することを示す。従って、アセチル化または脱アセチル化活性(少なくともHMGB1のもの)は、TNF−α、IL−1β、LPS、HMGB1それ自体および/または他の炎症誘発性リガンドについての受容体の従事で開始するシグナル変換経路によって制御されるに違いない。LPS−刺激単球によるTNF−α、IL−1、IL−8およびPGE2の分泌は、ERKリン酸化を阻害することによってブロックすることができる(Scherle et al.,1998)。従って、我々は、それがHMGB1アセチル化および小胞蓄積にも当てはまるか否かをテストした。U937.12細胞は、1μMのU0126(ERKリン酸化の特異的阻害剤)、30μMのSP600125(Jnkキナーゼの特異的阻害剤)または10μMのSB203580(p38キナーゼの特異的阻害剤)の存在下で200ng/mlのLPSに暴露した。対照培養はLPSに暴露せず、あるいは阻害剤無しのLPSに暴露した。HMGB1の移動はLPS単独、またはLPS+Jnk(示さず)およびp38の阻害剤に暴露した細胞では実質的ではなく、レプトマイシンBに暴露された細胞では部分的にブロックされ、LPS+U0126に暴露された細胞ではほとんど完全にブロックされた(図7;95%を超える細胞は示した形態学を有した)。全てのキナーゼ阻害剤はU937.12細胞生存性に対しては効果を有さず、活性化に続く接着および細胞質拡大に対しても効果を有しなかった;LPS刺激後におけるHMGB1移動はU0126の除去の後に回復した(示さず)。
【0309】
これらの結果は、(p38またはJnkキナーゼはそうではないが)ERKキナーゼがHMGB1のアセチル化および移動の制御に関与していることを示す。ERK1および2は、キナーゼMEK1によってリン酸化されると(U0126によって阻害される工程)核に移動し、今度は、多数の遺伝子の発現を促進するいくつかの転写因子をリン酸化する。例えば、TNF−αの分泌は、TNFA遺伝子の転写上方調節に関係し、これは、EGR1転写因子の発現に依存し、これは、今度は、転写因子ELK1のERK媒介リン酸化に依存する(Guha et al.,2002)。対照的に、HMGB1の再位置は特異的遺伝子のLPS−活性化発現には依存せず。10μg/mのシクロヘキシミドの存在下で維持されたU937.12細胞は依然として、LPSが添加されると、HMGB1を小胞に移動させる(図7)。それは、(16〜20時間のタイムスケールではあるが)ヒト単球にも当てはまった。これらの結果は、HMGB1アセチル化の活性化が予め存在するタンパク質の翻訳後修飾を必要とするに過ぎないことを示す。
【0310】
[実施例18:HMGB1のアセチル化形態に特異的なポリクローナル抗体の精製]
2つのオリゴペプチド(NLS1中のアセチル化可能リシンを含むPep1、PKGETKKKFKD、およびNLS2を含むPep2、AKKGVVKAEKSKKKKE)は、全てのリシンがアセチル−リシンによって置換されたそのコンパニオンAcPep1およびAcPep2と一緒に、Tecnogen(Piana di Monte Vema,イタリア国)によって合成された。4つのペプチドの同一性、組成および純度はRP−HPLCおよびMALDI−TOFによってチェックした。次いで、製造業者の指示に従って、ペプチドを活性化されたCH Sepharose 4B(Amersham Pharmacia Biotech)に共有結合させた。
【0311】
子牛胸腺から精製されたHMGB1に対して生起されたウサギポリクローナル抗体を、まず、固定化AcPep2を有するカラムに通した。結合した抗体を0.1Mグリシン−HCl pH2.0で溶出させ、溶出物を直ちにトリス塩基でpH7.0に滴定し;BSAを100μg/mlに添加した。この溶液を固定化Pep2を有するカラムに通した;フロースルーを集めた。これは、アセチル化ペプチドを認識するが、非アセチル化ペプチドを認識しない抗体を含み、我々は、この調製物を抗−AcNLS2と呼んだ。抗−AcNLS1を同様に調製した。
【0312】
抗−NLS2を、細菌から精製された組換えHMGB1(非アセチル化)および子牛胸腺から精製されたHMGB1(HMGB1の異なるアセチル化形態の混合物)に対するELISAアッセイで用いた。HMGB1の2つの形態は異なる親和性でもって抗−AcNLS2によって認識された。細菌が作ったHMGB1から得られたシグナルは子牛胸腺HMGB1からのものよりも少なくとも50倍大きかった。Pharmingen抗−HMGB1抗体を用いて行った同一ELISAアッセイは、細菌が作ったおよび子牛胸腺HMGB1についての匹敵するシグナルを与えた。抗−NLS1は特異性が低く、細菌が作ったHMGB1よりも4〜5倍良好に子牛胸腺HMGB1を認識したに過ぎなかった。
【0313】
前記明細書で言及した全ての刊行物は本明細書に参照として組み込む。本発明の記載された方法およびシステムの種々の修飾および変形は、本発明の範囲および精神を逸脱することなく当業者に明らかであろう。本発明を特定の好ましい実施形態の関連で記載してきたが、特許請求する発明はそのような特定の実施形態に限定されるべきではないと理解されるべきである。事実、分子生物学または関連分野における当業者に明白な本発明を実施するための記載された形態の種々の変形は、特許請求の範囲の範囲内にあることを意図する。
【0314】
【表2】

【表3】

【表4】

【表5】

【表6】

【図面の簡単な説明】
【0315】
【図1】二次元電気泳動はHMGB1の多くのイソ形態を明らかにする。(A)子牛胸腺から精製されたHMGB1は、2つのバンド(矢印)に対する一次元ゲル(SDS−PAGE、クーマシー染色、右側パネル)を生起し;主なバンドは約29kDaの見掛け分子量におけるものであり、および従たるバンドはADP−リボシル化タンパク質を含むものである。50μgのHMGB1の同一試料を2Dゲル電気泳動(銀染色、左側パネル)に供した;BioRadからの5μlの2DプロテインマーカーをHMGB1と共に負荷し、右側にリストした分子量におけるスポットのマトリックスを生じた。(B)全マウス胸腺はHMGB1の多くのイソ形態を含有する。(17日のマウス胚からの)胸腺全抽出物からの約300μgのタンパク質を2つの双子2−Dゲルに負荷した;左側に示すゲルは銀染色し、他方、他のゲルはニトロセルロースフィルターに電気ブロットし、特異的抗−HMGB1ウサギ抗体でアッセイした。精製されたHMGB1(A)から得られたものに対するパターンの同様性に注意されたい。(C)ほとんどの細胞系統はHMGB1の2つのイソ形態を含み、タンパク質はTSA処理で過剰アセチル化することができる。3T3細胞はDMEM、または10ng/ml TSAを補足したDMEM中で6時間インキュベートし、次いで、収集し、溶解させた。約400μgの全細胞抽出物を二連にて2つの2Dゲルに負荷し、次いで、ニトロセルロースにブロットし;HMGB1のパターンはポリクローナル抗−HMGB1抗体で明らかにされた。HDACの阻害に際して(右側)、対照線維芽細胞においてはただ2つであるのと比較し(左側)、いくつかのHMGB1スポットが出現した。
【図2】多重に修飾されたHMGB1の2D/MALDI−MS分析についての戦略を示す。スポットを2Dゲルから切り出し、タンパク質分解した;オリゴペプチドの複雑な混合物をMALDI−TOFによって分析した。質量を混合物中の各ペプチドに割り当てた;コンピュータで予測されたペプチドに対応する質量は「アンカー」として選択し、我々は、アンカー質量+42(アセチル基の分子量)の倍数に対応するさらなる質量ピークについての複雑なスペクトルをサーチした。2つの試料を図面に掲げる;前記手法は全てのペプチドについて反復した。また、我々はいずれも見出すことなく、リン酸化、メチル化およびグリコシル化の証拠につきスペクトルを調べた。この情報を用いて、HMGB1についての修飾パターンを推定した。(B)HMGB1におけるアセチル化部位を決定するために開発された多工程消化戦略の例:2DゲルからのスポットをプロテアーゼAsp−Nでゲル中にて消化した。このように得られたペプチドの1つのアリコットをMALDI−TOFによって分析し、矢印は配列中に強調した未修飾断片に対応するピークを同定する。次いで、未修飾断片の分子量+42の倍数に対するピークを同定した。従って、各断片上のアセチル部分の最大数を決定した。Asp−N消化HMGB1のもう1つのアリコットをCNBrでさらに消化し、産物を同様に分析した。我々は、全てのリシンがアセチル化され、あるいはいずれもアセチル化されていない同定可能な断片を得るまでさらなる切断を進めた。(C)HMGB1配列上のアセチル化部位の最終的帰属:矢印の記号をつけたリシン(43のうち8)は頻繁に修飾されており;星印をつけたリシンは決して修飾されておらず(20/43);十字を付したリシン(9/43)は低い検出可能な頻度で修飾されており;弾丸印のリシン(6/43)は特徴付けられていない。なぜならば、それらは配列網羅がないHMGB1の領域に位置するからである(ペプチドはスペクトル中に見出すことができなかった)。HMGボックスおよび酸性テールはボックスに入れる。
【図3】HMGB1における2つのNLSの同定を示す。(A)HMGB1のアミノ酸27〜43を従前に特徴付けられている二部NLSと比較した。この配列はヒトp53、プロゲステロン受容体およびXenopusヌクレオプラスミンのNLSと完全にマッチする。HMGB1の推定二部NLSはGFPに融合され、HeLa細胞で発現された;他方、NLS−GFP融合は圧倒的に核であり、GFP単独は広く拡散する。HMGB1−GFPのリシン(K)27、28および29はグルタミン(Q)またはアラニン(A)に変化された。いずれの突然変異も蛍光タンパク質の核局所化を改変しなかった。(B)HMGB1における第二のNLS。HMGB1の配列セグメントをPredictNLSデータベースに投げ出し、178〜184セグメントはデータベース中の19のタンパク質とマッチし、そのうち17は核タンパク質であった。これは、我々がNLS2と名付けた優れたNLSについての良好な表示を構成する。推定NLS2はGFPに融合され、HeLa細胞で発現され、圧倒的な核分布を示す。HMGB1−GFPのリシン181、182および183はグルタミン(Q)またはアラニン(A)に突然変異した。いずれの突然変異もHMGB1−GFPの細胞質局所化を引き起こさなかった。(C)双方のNLSの不活化はHMGB1−GFPの細胞質への再分布を引き起こす。HeLa細胞においては、2つのNLSにおける6つのリシンの(アセチル−リシンのミミックとして、上側パネル)グルタミンまたはアラニン(中央パネル)への突然変異は、匹敵する強度の明瞭な細胞質蛍光を生じる。陰性対照としての、6つのリシンがアルギニンに突然変異した突然変異体はHMGB1−GFPの核局所化を改変しなかった(下側パネル)。傍線は全てのパネルにおいて10μmを表す。
【図4】HMGB1は、受動的および能動的双方の輸送による核から細胞質へ移動する。(A)ヘテロカリオンはHMGB1−発現HeLa細胞(ヒト)およびHmgb1−/−マウス胚線維芽細胞を融合させることによって形成された。ヒトサイトケラチンおよびHMGB1は、各々、特異的抗体で赤色および緑色に染色され;核はDAPI(またはHoechst)で青色に染色された。ヒトサイトケラチン染色および2つの核(そのうちの1つはマウス細胞に特徴的な明るいDAPI−陽性異質染色質のスポットを有する)を有する細胞はヘテロカリオンであると考えられた。37℃における4時間のインキュベーションの後、HMGB1はヒトからマウス核へ再度平衡化し、これは、それが核膜の核側から細胞質側へ通過でき、他の核によって再度取り込まれることを示す。(B)レプトマイシンB(150nM)は実質的に減少したが、無くなりはせず、HMGB1はヒトおよびマウスの核の間を移動する。ヘテロカリオンが生成し、パネルAにおけるようにスコア取りされた;150のヘテロカリオンが、2つのクラス(レプトマイシンおよび対照)の各々につき、受容体マウス核へのHMGB1導入につき評価された。50%レベルは完全な平衡と同等である。(C)双方のHMGボックスはCRM1エクスポルチンと直接相互作用する。標識されたCRM1タンパク質を、Sepharoseに共有結合したグルタチオンSepharoseまたはBSA、テールレスHMGB1(boxA+B)または個々のボックスに固定化されたGST−NS2を担うビーズと混合した。インプット物質(In)、4回目の洗浄液(W4)、5回の洗浄後にビーズに結合したままの物質(結合、B)、および未結合物質(アウトプット、O)を表すアリコットを電気泳動し、オートラジオグラフィーに付した。CRM1は陰性対照BSAを除いて全てのビーズに結合する。0.4μMレプトマイシンBを結合緩衝液に入れると、HMGボックスに含有されたGST−NS2およびNES双方へのCRM1の結合を妨げる(レーン18〜23)。
【図5】LPS−活性化ヒト単球はHMGB1を過剰アセチル化し、それを細胞質小胞に蓄積する。 末梢血液細胞から精製された一次単球を、100ng/mlのLPSの存在下または非存在下で一晩培養した。活性化されたおよび対照単球のアリコットを、次いで、固定し、抗−HMGB1ウサギ抗体で免疫染色した。LPS−活性化単球における核+小胞HMGB1局所化とは反対に、未刺激単球におけるHMGB1の専らの核局所化に注意されたい。傍線は7μmを表す。未処理およびLPS−活性化単球のさらなるアリコットを凍結−解凍によって溶解させ、約400μgの全タンパク質抽出物を2Dゲルに負荷し、ニトロセルロースフィルターにブロットし、抗−HMGB1で免疫検出した。活性化された単球における主要なさらなるHMGB1スポットに注意されたい。
【図6】HMGB1はLPSまたはTSA処理に続いて再配置する。 10ng/mlのTSAへの3134線維芽細胞の3時間の暴露は、HMGB1−GFPの細胞質へのかなりの再配置を引き起こし;小胞は認識できない。U937.12細胞を100ng/mlのLPSの存在下で刺激無しに、または10ng/mlTSAと共に3時間培養した。次いで、細胞を固定し、抗−HMGB1抗体で免疫染色した。HMGB1は休止U937.12細胞では専ら核であり、他方、それは、圧倒的にLPS−活性化細胞では小胞であり、これは、かなり大きな細胞質を呈する。TSA処理U937.12細胞は細胞質拡大を示さないが、HMGB1のある割合は細胞質小胞に再配置する。HMGB1のかなりの割合は、4℃にて3時間インキュベートして、過少アセチル化HMGB1の細胞質への受動的拡散を促進し、37℃にて10分間再度加温されて、活性な輸送を回復した休止単球細胞中の小胞に含まれる。同様に、単球細胞がM相に入り、核膜破壊の後に遊離過少アセチル化HMGB1が細胞質に入ると、HMGB1のかなりの割合が小胞に含まれる。
【図7】ERKリン酸化はHMGB1のアセチル化および小胞蓄積を直接活性化する。 LPSで3時間攻撃されると、U937.12細胞はHMGB1のその核貯蔵を枯渇させ、それを小胞に蓄積する。LPSと共に150nMレプトマイシンを添加すると、HMGB1の再位置をほとんど完全にブロックし、(ERK1/2リン酸化および核導入を阻害するのに十分な(示さず))1μMのU0126の添加はそれを完全にブロックする(LPSで攻撃されていない休止単球と比較されたい)。対照的に、(p38キナーゼを完全に阻害するのに十分な(示さず))10μMのSB203580の添加は効果を有さない。U937.12におけるタンパク質合成の10μMのシクロヘキシジンでの(LPS添加に20分先立って開始する)阻害はHMGB1移動をブロックせず、これは、このプロセスが遺伝子発現を要しないことを示す。
【図8】炎症細胞におけるHMGB1分泌の制御を示す。 休止炎症細胞(左側パネル)を含む全ての細胞において、HMGB1は核および細胞質の間に分配される。核輸入はNLSによって媒介され、前記タンパク質は受動的拡散およびCRM1媒介能動的輸出を介して核ポアを通って細胞質に再度拡散して戻る。NLSがアセチル化されないと、核輸入の速度は再拡散または輸出のそれを超え、前記タンパク質は圧倒的にまたは単独で核のようである。IL−1β、TNF−α、LPSまたはHMGB1それ自体のその受容体への結合を通じての炎症細胞の刺激に際して(右側パネル)、NF−κB(示さず)およびMAPキナーゼ経路は活性化される。p38またはJnkはそうではないが、ERK1/2の関与は、SB203580またはSP600125ではなくU0126によるHMGB1移動の阻害によって示される。リン酸化ERKは核に移動し、そこで、直接的に、またはアダプタータンパク質を介して、それはヒストンアセチラーゼを活性化し、またはヒストンデアセチラーゼを阻害する。これは、今度は、HMGB1の2つのNLSのアセチル化を促進する。輸出されたアセチル−HMGB1は核に戻ることができない。骨髄系細胞は、適当な刺激に際して分泌され得(Andrews,2000)、恐らくは、リソソーム膜に埋められた特異的トランスポーターの作用を介してIL−1β(示さず)またはHMGB1を蓄積することができる特に種々のリソソームが備えられている(Andrei et al.,1999;Gardella et al.,2002)。LPC(リソホスファチジルコリン、炎症性脂質)のそれ自体の受容体への結合に際して、HMGB1を運ぶ分泌リソソームは原形質膜と融合し、その荷物を分泌する(Gardella et al.,2002)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
単離された多重アセチル化タンパク質HMGB1;もしくはその変種もしくは断片、またはそれをコードするポリヌクレオチド。
【請求項2】
単離されたアセチル化HMGB1であって、リシン2および11はアセチル化されていないアセチル化HMGB1;もしくはその変種もしくは断片、またはそれをコードするポリヌクレオチド。
【請求項3】
骨髄系細胞に由来することができる単離されたアセチル化タンパク質HMGB1;もしくはその変種もしくは断片、またはそれをコードするポリヌクレオチド。
【請求項4】
少なくとも1つの核局所化シグナルがアセチル化されている前記請求項のいずれかに記載のタンパク質。
【請求項5】
図2C中、リシン27、28、29、179、181、182、183または184の少なくとも1以上がアセチル化されている前記請求項のいずれかに記載のタンパク質。
【請求項6】
図2Cのアセチル化パターンを有する前記請求項のいずれかに記載のタンパク質。
【請求項7】
前記請求項のいずれかに記載のポリヌクレオチドを含む発現ベクター。
【請求項8】
請求項7に記載の発現ベクターを含む宿主細胞。
【請求項9】
前記請求項のいずれかに記載のアセチル化タンパク質HMGB1、および医薬上許容される担体、賦形剤または希釈剤を含む医薬組成物。
【請求項10】
アセチル化タンパク質HMGB1もしくはその変種もしくは断片、またはそれをコードするポリヌクレオチドのモジュレーター、または、タンパク質HMGB1またはその変種もしくは断片のアセチル化のモジュレーターである剤を同定する方法であって、
前記剤の存在下または非存在下でアセチル化タンパク質HMGB1活性を測定するステップと;
ステップ(a)で観察された活性を比較するステップと;
前記化合物の存在下および非存在下でのアセチル化タンパク質HMGB1活性の観察された差によって前記剤をモジュレーターとして同定するステップと;
を含む方法。
【請求項11】
前記活性がタンパク質HMGB1のアセチル化の変調を介して観察される請求項10に記載の方法。
【請求項12】
単離されたアセチル化タンパク質HMGB1もしくはその変種もしくは断片、またはそれをコードするポリヌクレオチドのモジュレーター、または、タンパク質HMGB1またはその変種もしくは断片のアセチル化のモジュレーター。
【請求項13】
請求項10または11に記載の方法を用いて同定可能な請求項12に記載のモジュレーター。
【請求項14】
rasおよび/またはRac/CDC42の下流の経路を変調する、核からの能動輸出を変調する、骨髄系細胞の活性化を変調する、LPSの細胞への結合を変調する、炎症性サイトカインの細胞への結合を変調する、MAPキナーゼ経路を変調する、NF−κB経路を変調する、LPCシグナリングを変調する、ヒストンアセチルトランスフェラーゼ酵素を変調する、またはデアセチラーゼ阻害剤を変調する請求項12または13に記載のモジュレーター。
【請求項15】
前記炎症性サイトカインが、IL−1β、TNF−α、LPSまたはHMGB1である請求項14に記載のモジュレーター。
【請求項16】
Ras/CDDC42の下流の前記経路が、ERK、Jnkまたはp38経路である請求項14に記載のモジュレーター。
【請求項17】
核からの輸出が、HMGB1へのCRM1エクスポルチン結合のモジュレーター、ERKのリン酸化のモジュレーター、またはヒストンアセチルトランスフェラーゼ(HAT)酵素のモジュレーターを用いて変調することができる請求項14に記載のモジュレーター。
【請求項18】
HAT酵素がpCAF、CBPまたはp300である請求項17に記載のモジュレーター。
【請求項19】
アセチル化タンパク質HMGB1もしくはその変種もしくは断片、またはそれをコードするポリヌクレオチドの阻害剤、またはタンパク質HMGB1またはその変種もしくは断片のアセチル化の阻害剤の形態である請求項12または18のいずれかに記載のモジュレーター。
【請求項20】
前記阻害剤が、抗体、アンチセンス配列またはアセチル化タンパク質HMGB1受容体アンタゴニストである請求項19に記載のモジュレーター。
【請求項21】
HMGB1へのCRM1エクスポルチン結合の阻害剤が、レプトマイシンBまたはその機能的ミメティックである請求項19に記載のモジュレーター。
【請求項22】
ERKのリン酸化のモジュレーターが、U0126またはその機能的ミメティックである請求項19に記載のモジュレーター。
【請求項23】
アセチル化タンパク質HMGB1もしくはその変種もしくは断片、またはそれをコードするポリヌクレオチドのアゴニスト、または、タンパク質HMGB1またはその変種もしくは断片のアセチル化のアゴニストの形態である請求項12〜18のいずれかに記載のモジュレーター。
【請求項24】
請求項12〜23のいずれかに記載のモジュレーターをコードするポリヌクレオチド。
【請求項25】
請求項24に記載のポリヌクレオチドを含む発現ベクター。
【請求項26】
請求項25の発現ベクターを含む宿主細胞。
【請求項27】
請求項12〜23のいずれかに記載のモジュレーター、および医薬上許容される担体、賦形剤または希釈剤を含む医薬組成物。
【請求項28】
タンパク質HMGB1;もしくはその変種もしくは断片、またはそれをコードするポリヌクレオチド、または、タンパク質HMGB1もしくはその変種もしくは断片、またはそれをコードするポリヌクレオチドのモジュレーターをさらに含む請求項27に記載の医薬組成物。
【請求項29】
HMGB1のモジュレーターが、タンパク質HMGB1のアップレギュレーターである請求項28に記載の医薬組成物。
【請求項30】
ワクチンの形態である請求項28または29に記載の医薬組成物。
【請求項31】
さらに抗原を含む請求項28〜30のいずれかに記載の医薬組成物。
【請求項32】
さらにAPCを含む請求項28〜31のいずれかに記載の医薬組成物。
【請求項33】
炎症性サイトカインカスケードの活性化に関連する疾患を治療する方法であって、有効量の請求項12〜22のいずれかに記載の阻害剤を投与するステップを含む、方法。
【請求項34】
前記疾患が、敗血症または関連疾患である請求項33に記載の方法。
【請求項35】
前記モジュレーターと組み合わせて第二の剤を投与するステップであって、前記第二の剤が初期敗血症メディエータの阻害剤である、ステップをさらに含む請求項33または34に記載の方法。
【請求項36】
前記第二の剤が、TNF、IL−1α、IL−1β、MIFおよびIL−6から選択されるサイトカインの阻害剤である請求項35に記載の方法。
【請求項37】
前記第二の剤が、TNFまたはIL−1受容体アンタゴニスト(IL−1ra)に対する抗体である請求項35に記載の方法。
【請求項38】
敗血症および関連疾患の重傷度をモニターしおよび/またはその臨床的経過を予測する方法であって、試料中のアセチル化タンパク質HMGB1の濃度を測定するステップと、前記濃度を、同様な試料中のアセチル化タンパク質HMGB1の正常な濃度範囲を代表するアセチル化タンパク質HMGB1の標準と比較するステップであって、それにより、アセチル化タンパク質HMGB1のより高いレベルが深刻な疾患および/または毒性反応を示す、ステップとを含む、方法。
【請求項39】
炎症カスケードの活性化に関連した疾患の経過を診断および/または予測する方法であって、試料中のアセチル化タンパク質HMGB1の濃度を測定するステップと、前記濃度を、同様な試料中のアセチル化タンパク質HMGB1の正常な濃度範囲を代表するアセチル化タンパク質HMGB1の標準と比較するステップであって、それにより、アセチル化タンパク質HMGB1のより高いレベルがそのような疾患および/または深刻な疾患を示す、ステップとを含む、方法。
【請求項40】
前記試料が血清試料である請求項38または39に記載の方法。
【請求項41】
減量を行う、または肥満を治療する方法であって、有効量のアセチル化タンパク質HMGB1;もしくはその断片もしくは変種、またはそれをコードするポリヌクレオチド、または請求項12〜22のいずれかに記載のモジュレーターを投与するステップを含む、方法。
【請求項42】
タンパク質HMGB1;もしくはその断片もしくは変種、またはそれをコードするポリヌクレオチド;タンパク質HMGB1またはその断片もしくは変種のアゴニスト;または、タンパク質HMGB1またはその断片もしくは変種のアンタゴニストによる治療を受けている患者へ投与するための請求項12〜23のいずれかに記載のモジュレーターの使用。
【請求項43】
免疫応答を刺激する方法であって、タンパク質HMGB1;もしくはその変種もしくは断片、またはそれをコードするポリヌクレオチド、および請求項12〜22のいずれかに記載の阻害剤を投与するステップを含む、方法。
【請求項44】
癌または細菌もしくはウイルス感染の予防または治療方法であって、タンパク質HMGB1;もしくはその変種もしくは断片、またはそれをコードするポリヌクレオチド、および請求項12〜22のいずれかに記載の阻害剤を投与するステップを含む、方法。
【請求項45】
活性化されたAPCを生産する方法であって、活性化されたAPCを、タンパク質HMGB1;もしくはその変種もしくは断片、またはそれをコードするポリヌクレオチド、および請求項12〜22のいずれかに記載の阻害剤に暴露するステップを含む、方法。
【請求項46】
前記APCがインビトロにて暴露される請求項45に記載の方法。
【請求項47】
前記APCが抗原にも暴露される請求項45または46に記載の方法。
【請求項48】
前記APCがインビボにて前記抗原に暴露される請求項47に記載の方法。
【請求項49】
前記阻害剤がインビボにて投与される請求項43〜48のいずれかに記載の方法。
【請求項50】
前記APCおよび/または抗原がT細胞にも暴露される請求項45〜49のいずれかに記載の方法。
【請求項51】
前記APCおよび/または抗原がインビボにて前記T細胞に暴露される請求項50に記載の方法。
【請求項52】
前記抗原が、腫瘍、細菌またはウイルス抗原である請求項47〜51のいずれかに記載の方法。
【請求項53】
タンパク質HMGB1がワクチンの形態である請求項43〜52のいずれかに記載の方法。
【請求項54】
幹細胞の移動および/または増殖を誘導する方法であって、前記細胞をHMGB1および請求項12〜22のいずれかに記載のアセチル化HMGB1の阻害剤に暴露するステップを含む、方法。
【請求項55】
組織の修復および/または再生の処置方法であって、前記細胞をHMGB1および請求項12〜22のいずれかに記載のアセチル化HMGB1の阻害剤に暴露するステップを含む、方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公表番号】特表2006−523085(P2006−523085A)
【公表日】平成18年10月12日(2006.10.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−551112(P2004−551112)
【出願日】平成15年11月11日(2003.11.11)
【国際出願番号】PCT/IB2003/005718
【国際公開番号】WO2004/044001
【国際公開日】平成16年5月27日(2004.5.27)
【出願人】(502296110)フォンダツィオーネ・チェントロ・サン・ラッファエーレ・デル・モンテ・タボール (2)
【Fターム(参考)】