アセナフトヘテロ環式化合物、そのシクロデキストリン包接化合物及びシクロデキストリン複合体、並びにそれらがBH3タンパク質類似体、Bcl−2ファミリータンパク質の阻害剤の製造における使用
本発明は、アセナフトヘテロ環式化合物、そのシクロデキストリン包接化合物及びシクロデキストリン複合体、並びにBH3類似体であるBcl−2ファミリータンパク質の阻害剤の製造におけるそれらの使用に関する。アセナフトヘテロ環式化合物は、8−オキソ−8H−アセナフト[1,2−b]ピロール−9−カルボニトリルの3位、4位、及び6位においてオキソ−、チオ−、カルボニル、エステル、又はアシルを導入すること、或いは9−シアノをカルボキシル、エステル、又はアミドでさらに置換することによって得られる。化合物は、インビトロ又は細胞内でBcl−2、Bcl−XL、及びMcl−1タンパク質と競合的に結合し、拮抗するBH3−onlyタンパク質のシミュレーションをして、細胞のアポトーシスを誘導することができる。シクロデキストリン包接化合物及び複合体は効果を改善することができる。したがって、これらはすべて、抗癌性化合物の製造において使用することができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新しいタイプのアセナフトヘテロ環式化合物、及びナノテクノロジーを用いて調製されるそのシクロデキストリン包接化合物又はシクロデキストリン複合体に関し、また、これらの化合物が、インビトロ及びインビボでBH3−onlyタンパク質を模倣して、Bcl−2、Bcl−xL及びMcl−1タンパク質に競合的に結合し、拮抗し、それによって細胞のアポトーシスを誘導し、抗癌性化合物としての使用に関する。
【背景技術】
【0002】
分子標的抗腫瘍薬は、細胞毒性類抗腫瘍薬に続き新薬研究開発及び製品化の新世代製品となりつつある。Bcl−2タンパク質は、悪性腫瘍の不死性に拮抗し、不死性を覆すのに最も重要な分子標的である。したがって、Bcl−2タンパク質に特異的に拮抗する薬物は、腫瘍細胞のみにおいてアポトーシスを誘導することによって、高選択性、安全性、高性能、及び低苦痛の抗癌療法という目標を実現できるものである。Bcl−2阻害剤のうちで、BH3類似体(BH3模倣体)は、最も著しい抗腫瘍効果、最良の薬力学的活性、及び最小の毒性副作用を示す。さらに、このような阻害剤は、Bcl−2ファミリーの抗アポトーシス性メンバー(Bcl−2、Bcl−xL、及びMcl−1タンパク質を含む)に関して広域スペクトルの拮抗能力も所有しなければならない。
【0003】
しかし、今のところ、Bcl−2を標的とする抗腫瘍製品はまだ市販されていない。既存の19種の前臨床段階のBcl−2阻害剤のうちで、3種の最適な製品がそれぞれ、第I相、第II相、及び第III相臨床試験の段階にある。これらは、Abbott Laboratories、Illinois、USAで研究開発されたABT−737、Gemin Xで研究開発されたオバトクラックス(Obatoclax)(GX15−070)、及び米国のAscentaで研究開発されたAT−101である。これらはすべて、BH3類似体である。競合的結合定数は、Bcl−2タンパク質についてnMオーダーであり、他の15個の同様の分子より遥かに高い。しかし、これらはすべて、ゴシポール(Gossypol)及びオバトクラックスのBH3類似レベルは不十分であり、これらは絶対的BH3類似体ではないという欠点を有する。言い換えれば、これらは、BAX/BAKとは無関係の細胞毒性を有する。これは、他の標的点が存在し、したがってこれらは毒性副作用を有することを示す。この欠点のため、オバトクラックスは、淘汰される危機に直面している。ABT−737は絶対的BH3類似体であるが、Mcl−1と反応することができず、且つ広域スペクトルでBcl−2ファミリータンパク質を阻害することができず、それによってその用途範囲が大幅に制限される。
【0004】
本発明者らは、8−オキソ−8H−アセナフト[1,2−b]ピロール−9−カルボニトリルのアセナフトヘテロ環式化合物を開示し、これらの化合物は、細胞のアポトーシスを誘導することにより腫瘍増殖を阻害する活性を有することを開示した(中国特許、授権公告CN1304370C)。しかし、アポトーシスに基づく有望な抗腫瘍薬として、その研究開発は、同様の薬物と同じ困難である、アポトーシスシグナルのゲートウェイの複雑さ、潜在的及び強い細胞毒性、並びに必然的に薬品の盲目的な適用を引き起こす。これらはすべて、同様のこのような薬物の開発における失敗の重大な理由である。したがって、薬物の標的指向性効果は、研究の過程において顕著に強調されるべきである。
【0005】
一方、薬物の物理化学的特性は、薬理効果の発現に影響を及ぼす重要な因子であり、薬物の開発時において薬理効果の正確な評価にも影響を及ぼすことがある。このような問題は初期の研究期間に認められた。従来の研究におけるこれらの化合物は、水溶性が比較的悪く、したがってその研究及び使用をより大幅に制限された。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、より強い標的指向性を有し、BH3類似体であるBcl−2ファミリータンパク質(Bcl−2、Bcl−xL、及びMcl−1タンパク質を含む)の阻害剤として使用することができるアセナフトヘテロ環式化合物を提供し、それに基づいて、現代のナノテクノロジーと組み合わせることによって、シクロデキストリン包接体又はシクロデキストリン複合体の形成により、水溶性及びバイオアベイラビリティを改善して、標的指向性抗腫瘍性製剤としてのその使用を十分に展開することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のアセナフトヘテロ環式化合物は、以下の構造式を有する。
【化1】
R1、R2、R3、及びR4はそれぞれ、3位、4位、6位、及び9位における置換基である。
式中、
(I)R1=XR5、チオフェンメトキシル、チオフェンメチルアミノ又はチオモルホリニル、R2=H、R3=H、R4=CN、COOH、COOR6又はCONHR7、
(II)R1=H、R2=XR5、チオフェンメトキシル、チオフェンメチルアミノ又はチオモルホリニル、R3=H、R4=CN、COOH、COOR6又はCONHR7、
(III)R1=H、R2=H、R3=H、XR5、テトラヒドロピラン−4−オキシ−、テトラヒドロチアピラン−4−オキシ−、チオフェンメトキシル、チオフェンメチルアミノ又はチオモルホリニル、R4=CN、
(IV)R1=XR5、R2=H、R3=XR5、R4=CN
であり、
式中、
X=O、S、カルボニル、エステル又はアミド、
R5=a:(CH2)nAr−(o、m、p)Y(Y=CH3、NO2、Ph、F、Cl、Br、CF3、OCH3、SCH3又はNH2、n=0〜4)、
b:テトラヒドロピラン又はテトラヒドロチアピラン、
R6=CH3又はC2H5、
R7=CH3、C2H5又はAr
である。
【0008】
本発明の化合物は、以下の2つの経路で合成することができる。
【0009】
第1の経路では、優れた剛性、共平面性、及び強い電子欠損性を有する原材料の8−オキソ−8H−アセナフト[1,2−b]ピロール−9−カルボニトリルは、アルコール、チオアルコール、フェノール又はチオフェノールなどの求核試薬を用いた芳香族水素求核置換反応を経て、3位、4位又は6位置換8−オキソ−8H−アセナフト[1,2−b]ピロール−9−カルボニトリルを生じる。カルボニトリルの加水分解、エステル化、及びアミド化を行った後、対応する酸、エステル、及びアミドが得られる。化学反応式は以下の通りである。
【化2】
【0010】
溶媒(テトラヒドロフラン、アセトニトリル、ピリジン、ジメチルホルムアミド又はジメチルスルホキシド)中の8−オキソ−8H−アセナフト[1,2−b]ピロール−9−カルボニトリルを、20〜100℃の温度で適正な量のアルコール、チオアルコール、フェノール又はチオフェノールなどの求核試薬と0.5〜24時間反応させる。冷却後、溶媒の一部を減圧条件下で蒸発させる。次いで、濾過又は直接カラムクロマトグラフィーにより、生成物の3位又は6位置換8−オキソ−8H−アセナフト[1,2−b]ピロール−9−カルボニトリルを得ることができる。
【0011】
濃硫酸の存在下で、3位又は6位置換8−オキソ−8H−アセナフト[1,2−b]ピロール−9−カルボニトリルを加水分解して、対応する酸を得ることができ、次いで対応するアルコール及びアミンと反応させることにより、対応するエステル又はアミド化合物を得ることができる。
【0012】
第2の経路では、原材料のアセナフテンキニーネ及び溶媒の濃硫酸を液体臭素に添加し、2時間還流して、ブロモアセナフテンキニーネを得る。得られたブロモアセナフテンをアルコール、チオアルコール、フェノール又はチオフェノールと反応させて、対応する置換アセナフテンキニーネを得る。得られた置換アセナフテンキニーネを、シリカゲルなどの弱酸条件下でアセトニトリルと反応させて、3−(2−オキソ−2H−アセナフテン)−マロノニトリルを得る。その後、反応生成物にK2CO3を触媒として使用し、アセトニトリルを加えて0.5〜6時間還流する。次いで、冷却し、溶媒の一部を減圧条件下で蒸発させる。濾過又は直接カラムクロマトグラフィーにより、対応する3位又は4位置換オキシ−8−オキソ−8H−アセナフト[1,2−b]ピロール−9−カルボニトリルが得られる。その後の加水分解、エステル化、アミド化の条件は、第1の経路のものと同じである。
【0013】
第1の経路と第2の経路の違いは、置換が輪状構造形成前に行われることであり、こうして3位、6位ではなく3位、4位における2つの異性体を得ることができる。化学反応式は以下の通りである。
【化3】
【0014】
多くの方法を使用して、上記の経路で得られた化合物のBH3類似レベル並びにMcl−1及びBcl−2に対する阻害が検出された。その結果から、上記のアセナフトヘテロ環式化合物は極めて高いBH3類似レベルを有し、Mcl−1及びBcl−2タンパク質を有効に阻害できることが実証されている。このような属性のため、この化合物を使用して、BH3類似体であるBcl−2ファミリータンパク質の阻害剤を調製することができ、さらに、この化合物を使用して、標的指向性の高い抗腫瘍薬を調製することができる。
【0015】
アセナフトヘテロ環式化合物の研究過程において、水溶性の低化は、最も顕著な問題であり、化合物の研究及び応用を大幅に制限することもわかった。Modern Technique of Drug Preparation(Cyclodextrin Chemistry−preparation and application, Chemical Industry Press, 2009、β−Cyclodextrin Inclusion Technique and Application, Medicine Innovation Research,2006, 3(3):31−33、Chem. Pharm. Bull,2006, 54(1)26−32)を参照のこと。本発明の別の態様は、このような化合物をシクロデキストリンで包接又はシクロデキストリン複合体形成させることによって、包接化合物又は複合体を形成し、それによって水溶性を改善し、バイオアベイラビリティを向上させることである。
【0016】
本発明によれば、上記のアセナフトヘテロ環式化合物のシクロデキストリン包接化合物は、以下の方法で調製することができる。
(1)所定量のシクロデキストリンを計量し、シクロデキストリンを水に添加し、次いで加熱撹拌し、飽和溶液を生成させるステップ(ここで、シクロデキストリンは、β−シクロデキストリン、γ−シクロデキストリン、2−ヒドロキシプロピル−β−シクロデキストリン、メチル−β−シクロデキストリン、又はヒドロキシプロピル−γ−シクロデキストリンである)、
(2)所定量の包接用アセナフトヘテロ環式化合物を計量するステップ(ここで、化合物とシクロデキストリンのモル比は1:3〜10である)、
(3)包接用アセナフトヘテロ環式化合物を、5〜10mg/mLの濃度でアセトンに溶解させ、得られた溶液をシクロデキストリンの水溶液に線状に滴下し、次いで沈澱が析出するまで、40〜65℃の温度で1〜6日加熱撹拌するステップ、
(4)上記の溶液を濾過し、濾過ケーキを少量の蒸留水で洗浄し、次いで遊離した状態の化合物を少量のアセトンで洗い流し、50〜70℃の温度で24〜48時間真空乾燥した後、上記アセナフトヘテロ環式化合物のシクロデキストリン包接化合物を得るステップ。
【0017】
本発明によれば、上記のアセナフトヘテロ環式化合物のシクロデキストリン複合体は、以下の方法で調製することができる。
(1)乾燥シクロデキストリン及び複合体用アセナフトヘテロ環式化合物を計量するステップ(ここで、シクロデキストリンとアセナフトヘテロ環式化合物のモル比は1:1.5〜3であり、シクロデキストリンは、β−シクロデキストリン、γ−シクロデキストリン、2−ヒドロキシプロピル−β−シクロデキストリン、メチル−β−シクロデキストリン、又はヒドロキシプロピル−γ−シクロデキストリンである)、
(2)複合体用アセナフトヘテロ環式化合物をN,N’−カルボニルジイミダゾールと1:1〜2のモル比で混合し、次いで複合体用アセナフトヘテロ環式化合物のDMSO溶液中の濃度が0.2〜0.5mmol/mLとなるまでDMSOに溶解させ、次いで室温で30〜60分間撹拌するステップ、
(3)ステップ(1)で計量したシクロデキストリン及び0.1〜0.3mmol/mLのトリエタノールアミンをDMSO溶液に添加し、室温で18〜24時間反応させるステップ、
(4)0.50〜1.0mg/mLのアセトンをステップ(3)の反応系に添加し、減圧条件下で反応系から析出物を分離させるステップ、
(5)濾過し、精製して、上記アセナフトヘテロ環式化合物のシクロデキストリン複合体を得るステップ。
【0018】
精製は、イオン交換カラムによって実施することができる。条件は、吸着剤としてダイアイオン(DIAION)(商標)HP−20イオン交換樹脂、及び分割にメタノールと水との混合溶媒を採用することである。混合溶媒中のメタノールの量を徐々に増加させ、薄層クロマトグラフィーを使用して、溶離プロセスを試験する。溶離剤の水中のメタノールの量が40〜55%に到達すると、いくつかの複合体が溶離によって得られる。得られた溶離液中のメタノールを減圧下で遠心脱水した後、残留溶液を凍結乾燥して、複合体を得る。
【0019】
本発明によれば、得られたアセナフトヘテロ環式化合物のシクロデキストリン包接化合物又はシクロデキストリン複合体は、相溶解度法、蛍光分光法、円二色性分光法、赤外分光光度法、熱重量分析、走査電子顕微鏡、及びH核磁気共鳴、質量分析法、単結晶X線回折法などの特性決定技法で特性決定を行い、包接体又は複合体形成の前及び後のアセナフトヘテロ環式化合物の溶解度、Mcl−1及びBcl−2に対する阻害が比較のために検出される。その結果から、シクロデキストリンを使用することによる処理方法は、アセナフトヘテロ環式化合物の水への溶解度を大幅に増大させ、Bcl−2及びMcl−1タンパク質に対する阻害能力をある程度強化することが実証される。製剤を使用して、BH3類似体であるBcl−2ファミリータンパク質の阻害剤を調製することもでき、さらには標的指向性の高い抗腫瘍薬を調製することができる。
【0020】
したがって、本発明の別の目的は、BH3類似体であるBcl−2ファミリータンパク質の阻害剤の製造における上記のアセナフトヘテロ環式化合物、そのシクロデキストリン包接化合物及びシクロデキストリン複合体の使用を実現することである。
【0021】
上記のBcl−2ファミリータンパク質の阻害剤又は対応する抗腫瘍薬は、単一化合物の製剤、化合物のシクロデキストリン包接化合物又はシクロデキストリン複合体の製剤、或いは有効用量のアセナフトヘテロ環式化合物、又はそのシクロデキストリン包接化合物、複合体と、適量の医薬品添加剤とを含む組成物とすることができ、医薬の需要及び従来の医薬製剤方法に従って所望の製剤に作製することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
本発明においては、14の図面がある。
【図1】Bcl−2タンパク質に競合的に結合する化合物及びFAM−Bidペプチドの蛍光偏光法で検出された動態曲線である。
【図2】化合物(種々の濃度)によって干渉された、Bcl−2とBaxとの細胞レベルでの相互作用を示す図である。
【図3】化合物によって(種々の作用時間)干渉された、Bcl−2とBaxとの細胞レベルでの相互作用を示す図である。
【図4】Baxタンパク質とコンドリオソームの共局在で検出される、化合物のBH3類似性のポジティブな結果を示す図である。
【図5】Baxタンパク質とコンドリオソームの共局在で検出される、化合物のBH3類似性のネガティブな結果を示す図である。
【図6】BAX/BAKに応じた、化合物の細胞毒性の結果を示す図である(ゴシポールは非特異的比較である)。
【図7】化合物のMcl−1に対する阻害を示すウェスタンブロッティング電気泳動図である。
【図8】化合物のBcl−2に対する阻害を示すウェスタンブロッティング電気泳動図である。
【図9】化合物3−チオモルホリン−8−オキソ−8H−アセナフト[1,2−b]ピロール−9−カルボニトリルのMcl−1タンパク質に対する阻害を示す半定量曲線である。
【図10】化合物3−チオモルホリン−8−オキソ−8H−アセナフト[1,2−b]ピロール−9−カルボニトリルのBcl−2タンパク質に対する阻害を示す半定量曲線である。
【図11】アセナフトヘテロ環式化合物並びにそのシクロデキストリン包接化合物及びシクロデキストリン複合体のMcl−1及びBcl−2に対する阻害を示すウェスタンブロッティング電気泳動図である。
【図12】化合物3−チオモルホリン−8−オキソ−8H−アセナフト[1,2−b]ピロール−9−カルボニトリル及びその包接化合物のMcl−1タンパク質に対する阻害を示す半定量曲線である。
【図13】化合物3−チオモルホリン−8−オキソ−8H−アセナフト[1,2−b]ピロール−9−カルボニトリル及びその包接化合物のBcl−2タンパク質に対する阻害を示す半定量曲線である。
【図14】インビボ腫瘍モデルにおける化合物及びその包接化合物のMcl−1に対する阻害を示すウェスタンブロッティング電気泳動図である(図中、1はブランク対照群、2は対照群(1)、3は対照群(2)、4は実験群(1)、5は実験群(2)、6は実験群(3)、7は実験群(4))。
【発明を実施するための形態】
【0023】
次に、添付図面を引用しながら、本発明の様々な実施形態をさらに詳細に説明する。
【0024】
パートI:アセナフトヘテロ環式化合物の調製及び特性決定
【0025】
実施例1:8−オキソ−8H−アセナフト[1,2−b]ピロール−9−カルボニトリルの合成及び特性決定
500mLの一口フラスコに、0.1molのアセナフテンキノン、0.11molのマロノニトリル、及び150mLのアセトニトリルを順に添加した。反応混合物を、不透明な淡黄色から透明な橙赤色に変色するまで4時間加熱還流した。反応混合物を室温に冷却した後、濾過し、橙赤色の濾過ケーキを回収して、1−ジシアノメチレン−2−オキソ−アセナフテンを得た。500mLの一口フラスコに、0.05molの1−ジシアノメチレン−2−オキソ−アセナフテン、1gのK2CO3、及び200mLのアセトニトリルを順に添加、反応混合物を4時間加熱還流した。大量の黄土固体が析出した。濾過し、濾過ケースを回収し、大量の温水で洗浄し、次いで乾燥し、計量した。収率は95%であった。
【0026】
融点275〜277℃;1H NMR(400M,DMSO):δ 8.705(d,J=8.0Hz,1H)、8.662(d,J=8.8Hz,1H)、8.631(d,J=8.0Hz,1H)、8.411(d,J=8.0Hz,1H)、8.06(t,J=8.0Hz,1H)、7.984(t,J=8.0Hz,1H)。
【0027】
実施例2:3−(4−メチルフェノキシ)−8−オキソ−8H−アセナフト[1,2−b]ピロール−9−カルボニトリルの合成及び特性決定
1gの8−オキソ−8H−アセナフト[1,2−b]ピロール−9−カルボニトリル及び0.47gのp−メチルフェノールを、50mLのアセトニトリルに添加した。混合物を3時間還流撹拌した。溶媒の一部を蒸発させた。クロマトグラフカラムにより、収率40%で生成物3−(4−メチルフェノキシ)−8−オキソ−8H−アセナフト[1,2−b]ピロール−9−カルボニトリルが得られた。
【0028】
構造決定結果:融点232〜233℃;1H NMR(400M,CDCl3):δ 8.916(dd,J=8.8Hz,1H)、8.623(d,J=8.8Hz,1H)、8.447(d,J=6.4Hz,1H)、7.859(t,J=8.0Hz,1H)、8.324(d,J=8.4Hz,2H)、7.101(d,J=8.4Hz,2H)、7.016(d,J=8.4Hz,1H)、3.256(s,3H)。
【0029】
実施例3:3−フェノキシ−8−オキソ−8H−アセナフト[1,2−b]ピロール−9−カルボニトリル(A)及び4−フェノキシ−8−オキソ−8H−アセナフト[1,2−b]ピロール−9−カルボニトリル(B)の合成及び特性決定
0.93gのフェノキシアセナフテンキノン及び0.3gのマロノニトリルを計量し、ジクロロメタンに溶解した。混合物をシリカゲルカラムに加え、急速に溶離した。混合物をすべて通過させた後、カラムを遠心脱水した。赤色固体が重量10.1g及び収率92%で得られた。0.08gのK2CO3及び20mLのアセトニトリルを、0.6gの3−フェノキシ−(2−オキソ−2H−アセナフテン)−マロノニトリルに添加した。混合物を3時間加熱還流した。反応が終了した後、反応溶液を遠心脱水し、クロマトグラフカラム(CH2Cl2:石油エーテル=2:1)で分離して、橙赤色固体を得た。異性体比は、核磁気共鳴で試験して1:0.3であった。得られた異性体を液相分離で分離して、2つの異性体を得た。
【0030】
第1の成分A:融点265〜267℃;1H NMR(400M,CDCl3):δ 8.927(d,J=8.0Hz,1H)、8.630(d,J=8.8Hz,1H)、8.450(d,J=7.2Hz,1H)、7.876(t,J=8.0Hz,1H)、7.754(t,J=8.0Hz,2H)、7.392(t,J=7.6Hz,1H)、7.233(d,J=7.6Hz,2H)、7.028(d,J=8.4Hz,1H)。
【0031】
第2の成分B:融点282〜283℃;1H NMR(400M,CDCl3):δ 9.047(dd,J=8.0Hz,1H)、8.850(dd,J=7.6Hz,1H)、8.213(d,J=8.2Hz,1H)、7.999(t,J=8.0Hz,1H)、7.561(t,J=8.0Hz,2H)、7.410(t,J=7.0Hz,1H)、7.251(d,J=8.8Hz,2H)、6.899(d,J=8.4Hz,1H)。
【0032】
実施例4:3−(p−メチルフェノキシ)−8−オキソ−8H−アセナフト[1,2−b]ピロール−9−カルボニトリル(A)及び4−(p−メチルフェノキシ)−8−オキソ−8H−アセナフト[1,2−b]ピロール−9−カルボニトリル(B)の合成及び特性決定
1gのp−メチルフェノキシアセナフテンキノン及び0.3gのマロノニトリルを、ジクロロメタンに溶解した。混合物をシリカゲルカラムに加え、急速に溶離した。混合物をすべて通過させた後、カラムを遠心脱水した。赤色固体が重量11.2g及び収率93%で得られた。0.08gのK2CO3及び20mLのアセトニトリルを、0.7gの3−フェノキシ−(2−オキソ−2H−アセナフテン)−マロノニトリルに添加した。混合物を4時間加熱還流した。反応が終了した後、反応溶液を遠心脱水し、クロマトグラフカラム(CH2Cl2:石油エーテル=1:1)で分離して、橙赤色固体を得た。異性体比は、核磁気共鳴で試験して1:0.4であった。得られた異性体を液相分離で分離して、2つの異性体を得た。
【0033】
第1の成分A:融点232〜233℃;1H NMR(400M,CDCl3):δ 8.916(dd,J=8.8Hz,1H)、8.623(d,J=8.8Hz,1H)、8.447(d,J=6.4Hz,1H)、7.859(t,J=8.0Hz,1H)、8.324(d,J=8.4Hz,2H)、7.101(d,J=8.4Hz,2H)、7.016(d,J=8.4Hz,1H)、2.351(s,3H)。
【0034】
第2の成分B:融点258〜260℃;1H NMR(400M,CDCl3):δ 8.987(dd,J=8.8Hz,1H)、8.858(d,J=8.8Hz,1H)、8.208(d,J=8.4Hz,1H)、7.986(t,J=8.0Hz,1H)、8.333(d,J=8.4Hz,2H)、7.112(d,J=8.4Hz,2H)、6.889(d,J=8.4Hz,1H)、2.349(s,3H)。
【0035】
実施例5:3−(m−メチルフェニルチオ)−8−オキソ−8H−アセナフト[1,2−b]ピロール−9−カルボニトリル(A)及び4−(m−メチルフェニルチオ)−8−オキソ−8H−アセナフト[1,2−b]ピロール−9−カルボニトリル(B)の合成及び特性決定
1gのm−メチルフェニルチオアセナフテンキノン及び0.3gのマロノニトリルを、ジクロロメタンに溶解した。混合物をシリカゲルカラムに加え、急速に溶離した。混合物をすべて通過させた後、カラムを遠心脱水した。赤色固体が重量12.2g及び収率91%で得られた。0.08gのK2CO3及び20mLのアセトニトリルを、0.7gの2−フェニルチオ−(2−オキソ−2H−アセナフテン)−マロノニトリルに添加した。混合物を4時間加熱還流した。反応が終了した後、反応溶液を遠心脱水し、クロマトグラフカラム(CH2Cl2:石油エーテル=1:1)で分離して、赤色固体を得た。異性体比は、核磁気共鳴で検査して1:0.25であった。得られた異性体を液相分離で分離して、2つの異性体を得た。
【0036】
第1の成分A:融点255〜257℃;1H NMR(400M,CDCl3):δ 8.826(dd,J=8.8Hz,1H)、8.513(d,J=8.8Hz,1H)、8.327(d,J=6.4Hz,1H)、7.659(t,J=8.0Hz,1H)、8.014(d,J=8.4Hz,2H)、6.901(d,J=8.4Hz,2H)、6.896(d,J=8.4Hz,1H)、2.353(s,3H)。
【0037】
第2の成分B:融点269〜271℃;1H NMR(400M,CDCl3):δ 8.877(dd,J=8.8Hz,1H)、8.748(d,J=8.8Hz,1H)、8.108(d,J=8.4Hz,1H)、7.856(t,J=8.0Hz,1H)、8.123(d,J=8.4Hz,2H)、6.892(d,J=8.4Hz,2H)、6.679(d,J=8.4Hz,1H)、2.355(s,3H)。
【0038】
実施例6:6−(チエニル−2−メトキシ)−8−オキソ−8H−アセナフト[1,2−b]ピロール−9−カルボニトリルの合成及び特性決定
1gの8−オキソ−8H−アセナフト[1,2−b]ピロール−9−カルボニトリル及び0.5gのチエニルメタノールを、50mLのアセトニトリルに添加した。混合物を3時間還流撹拌した。溶媒の一部を蒸発させた。クロマトグラフカラムにより、収率45%で生成物6−(2−チエニルメトキシ)−8−オキソ−8H−アセナフト[1,2−b]ピロール−9−カルボニトリルが得られた。
【0039】
融点241〜243℃;1H NMR(400M,CDCl3):δ 8.685(dd,J=8.7Hz,1H)、8.433(d,J=8.7Hz,1H)、8.014(d,J=6.4Hz,1H)、7.75(t,J=8.0Hz,1H)、7.251(t,J=8.4Hz,1H)、7.181(d,J=8.4Hz,1H)、6.985(d,J=8.4Hz,1H)、6.232(d,J=8.4Hz,1H)、3.454(s,2H)。
【0040】
実施例7:3−(3−フルオロフェニルホルミル)−8−オキソ−8H−アセナフト[1,2−b]ピロール−9−カルボニトリル(A)及び4−(3−フルオロフェニルホルミル)−8−オキソ−8H−アセナフト[1,2−b]ピロール−9−カルボニトリル(B)の合成及び特性決定
1gのm−フルオロフェニルカルボニルアセナフテンキノン及び0.4gのマロノニトリルを、ジクロロメタンに溶解した。混合物をシリカゲルカラムに加え、急速に溶離した。混合物をすべて通過させた後、カラムを遠心脱水した。緋色固体が重量10.5g及び収率85%で得られた。0.08gのK2CO3及び20mLのアセトニトリルを、0.8gの2−フルオロカルボニル−(2−オキソ−2H−アセナフテン)−マロノニトリルに添加し、混合物を3時間加熱還流した。反応が終了した後、反応溶液を遠心脱水し、クロマトグラフカラム(CH2Cl2:石油エーテル=2:1)で分離して、緋色固体を得た。異性体比は、核磁気共鳴で検査して1:0.2であった。得られた異性体を液相分離で分離して、2つの異性体を得た。
【0041】
第1の成分A:融点285〜287℃;1H NMR(400M,CDCl3):δ 8.726(dd,J=8.8Hz,1H)、8.423(d,J=8.8Hz,1H)、8.015(d,J=6.4Hz,1H)、7.598(t,J=8.0Hz,1H)、8.003(d,J=8.4Hz,2H)、6.853(d,J=8.4Hz,2H)、6.756(d,J=8.4Hz,1H)。
【0042】
第2の成分B:融点269〜271℃;1H NMR(400M,CDCl3):δ 8.568(dd,J=8.8Hz,1H)、8.478(d,J=8.8Hz,1H)、8.006(d,J=8.4Hz,1H)、7.568(t,J=8.0Hz,1H)、8.045(d,J=8.4Hz,2H)、6.908(d,J=8.4Hz,2H)、6.596(d,J=8.4Hz,1H)。
【0043】
実施例8:3−(N−フェニルホルミル)−8−オキソ−8H−アセナフト[1,2−b]ピロール−9−カルボニトリル(A)及び4−(N−フェニルホルミル)−8−オキソ−8H−アセナフト[1,2−b]ピロール−9−カルボニトリル(B)の合成及び特性決定
1gのフェニルアミドアセナフテンキノン及び0.4gのマロノニトリルを、ジクロロメタンに溶解した。混合物をシリカゲルカラムに加え、急速に溶離した。混合物をすべて通過させた後、カラムを遠心脱水した。緋色固体が重量11.2g及び収率86%で得られた。0.08gのK2CO3及び20mLのアセトニトリルを、0.8gのフェニルアミド−(2−オキソ−2H−アセナフテン)−マロノニトリルに添加した。混合物を3時間加熱還流した。反応が終了した後、反応溶液を遠心脱水し、クロマトグラフカラム(CH2Cl2:石油エーテル=2:1)で分離して、緋色固体を得た。異性体比は、核磁気共鳴で検査して1:0.4であった。得られた異性体を液相分離で分離して、2つの異性体を得た。
【0044】
第1の成分A:融点281〜283℃;1H NMR(400M,CDCl3):δ 9.112(d,J=8.0Hz,1H)、8.945(d,J=8.8Hz,1H)、8.682(d,J=7.2Hz,1H)、8.452(t,J=8.0Hz,1H)、8.312(s,1H)、7.986(t,J=8.0Hz,2H)、7.627(t,J=7.6Hz,1H)、7.433(d,J=7.6Hz,2H)、7.241(d,J=8.4Hz,1H)。
【0045】
第2の成分B:融点293〜294℃;1H NMR(400M,CDCl3):δ 9.213(dd,J=8.0Hz,1H)、9.012(dd,J=7.6Hz,1H)、8.685(d,J=8.2Hz,1H)、8.428(t,J=8.0Hz,1H)、8.320(s,1H)、7.896(t,J=8.0Hz,2H)、7.675(t,J=7.0Hz,1H)、7.531(d,J=8.8Hz,2H)、7.015(d,J=8.4Hz,1H)。
【0046】
実施例9:3−(テトラヒドロ−2H−ピラニル−4−オキソ)−8−オキソ−8H−アセナフト[1,2−b]ピロール−9−カルボニトリル(A)及び4−(テトラヒドロ−2H−ピラニル−4−オキソ)−8−オキソ−8H−アセナフト[1,2−b]ピロール−9−カルボニトリル(B)の合成及び特性決定
1.0gのテトラヒドロピラニルオキシルアセナフテンキノン及び0.4gのマロノニトリルを、ジクロロメタンに溶解した。混合物をシリカゲルカラムに加え、急速に溶離した。混合物をすべて通過させた後、カラムを遠心脱水した。緋色固体が重量11.2g及び収率86%で得られた。0.08gのK2CO3及び20mLのアセトニトリルを、0.8gの4−テトラヒドロピラニル−(2−オキソ−2H−アセナフテン)−マロノニトリルに添加した。混合物を9時間加熱還流した。反応が終了した後、反応溶液を遠心脱水し、クロマトグラフカラム(CH2Cl2:石油エーテル=2:1)で分離して、深紅色固体を得た。異性体比は、核磁気共鳴で検査して1:0.4 であった。得られた異性体を液相分離で分離して、2つの異性体を得た。
【0047】
第1の成分A:融点230〜231℃;1H NMR(400M,CDCl3):δ 8.601(d,J=8.0Hz,1H)、8.134(d,J=8.8Hz,1H)、7.945(dd,J=8.0Hz,1H)、7.452(d,J=8.4Hz,1H)、3.822(t,J=4.8Hz,4H)、3.815(t,J=5.0Hz,4H)、3.766(t,J=5.2Hz,1H)。
【0048】
第2の成分B:融点242〜244℃;1H NMR(400M,CDCl3):δ 8.568(d,J=8.0Hz,1H)、8.115(d,J=8.8Hz,1H)、7.856(dd,J=8.0Hz,1H)、7.326(d,J=8.4Hz,1H)、3.796(t,J=4.8Hz,4H)、3.807(t,J=5.0Hz,4H)、3.791(t,J=5.2Hz,1H)。
【0049】
実施例10:3−フェノキシ−8−オキソ−8H−アセナフト[1,2−b]ピロール−9−カルボン酸の合成及び特性決定
50mlの一口フラスコに、60mLの濃硫酸又は25mLの発煙硫酸を添加した。それに、0.05molの3−フェノキシ−8−オキソ−8H−アセナフト[1,2−b]ピロール−9−カルボニトリルを、0〜5℃の温度でバッチごとに1時間以内で添加した。その後、反応を、室温でさらに16時間実施した。得られた反応混合物は、粘性で深茶褐色であった。次いで、得られた混合物を砕氷に徐々に滴下し、激しく撹拌した。その後、混合物を静置し、濾過した。濾過ケーキが中性になるまで、大量の水で洗浄した。濾過ケーキを乾燥して、濃黄色生成物を収率96%で得た。
【0050】
融点248℃;1H NMR(400M,CDCl3):δ 11.42(s,1H)、8.965(dd,J=8.0Hz,1H)、8.750(dd,J=7.8Hz,1H)、8.313(d,J=8.2Hz,1H)、7.999(t,J=8.2Hz,1H)、7.561(t,J=8.2Hz,2H)、7.410(t,J=7.0Hz,1H)、7.251(d,J=8.8Hz,2H)、6.963(d,J=8.4Hz,1H)。
【0051】
実施例11:3−フェノキシ−8−オキソ−8H−アセナフト[1,2−b]ピロール−9−カルボキシラートの合成及び特性決定
100mlの一口フラスコに、0.01molの3−フェノキシ−8−オキソ−8H−アセナフト[1,2−b]ピロール−9−カルボニトリル、溶媒として50mlのアセトニトリル、脱酸試薬として0.02mmolのK2CO3、及び10倍を超すヨードメタンを順に添加した。窒素保護下で、混合物を40℃まで加熱し、反応を15時間続けた。アセトニトリルを減圧条件下で蒸発させ、ジクロロメタンを添加することによって、反応物質を完全に溶解した。濾過した後、濾液を遠心脱水して、黄褐色粗生成物を得た。シリカゲルカラムクロマトグラフ分離(展開剤:ジクロロメタン−メタノール=40:1)により、濃黄色生成物が得られた。収率は92%であった。
【0052】
融点213℃;1H NMR(400M,CDCl3):δ 9.102(d,J=7.2Hz,1H)、8.965(dd,J=8.0Hz,1H)、8.850(dd,J=7.8Hz,1H)、8.233(d,J=8.2Hz,1H)、7.856(t,J=8.2Hz,1H)、7.453(t,J=8.2Hz,2H)、7.350(t,J=7.2Hz,1H)、7.325(d,J=8.4Hz,2H)、3.213(s,3H)。
【0053】
実施例12:3−フェノキシ−8−オキソ−8H−アセナフト[1,2−b]ピロール−9−N−tert−ブチルアミドの合成及び特性決定
100mlの一口フラスコに、0.01molの3−フェノキシ−8−オキソ−8H−アセナフト[1,2−b]ピロール−9−カルボン酸、溶媒として50mlのDMF、0.02mmolのトリエチルアミン、0.01mmolの(EtO)2P(=O)CN、及び10倍を超えるtert−ブチルアミドを順に添加し、室温で1時間反応させた。次いで、反応が終了した後、黄色固体が得られた。収率は85%であった。融点237℃;1H NMR(400M,CDCl3):δ 8.746(dd,J=8.0Hz,1H)、8.650(dd,J=7.8Hz,1H)、8.213(d,J=8.2Hz,1H)、7.846(t,J=8.0Hz,1H)、7.352(t,J=8.0Hz,2H)、7.210(t,J=7.4Hz,1H)、7.051(d,J=8.4Hz,2H)、6.963(d,J=8.4Hz,1H)、3.721(s,3H)、3.113(m,2H)、1.568(dd,J=5.6Hz,2H)、1.421(m,J=5.7Hz,2H)、0.968(t,J=6.2Hz,3H)。
【0054】
実施例13:3−(4−ブロモフェニルチオ)−8−オキソ−8H−アセナフト[1,2−b]ピロール−9−カルボニトリルの合成及び特性決定
1gの8−オキソ−8H−アセナフト[1,2−b]ピロール−9−カルボニトリル及び3.2gの4−ブロモチオフェノールを、50mLのアセトニトリルに添加し、室温で2時間反応させた。溶媒の一部を蒸発させた。クロマトグラフカラムにより、収率40%で化合物3−(4−ブロモフェニルチオ)−8−オキソ−8H−アセナフト[1,2−b]ピロール−9−カルボニトリルが得られた。
【0055】
融点262〜263℃;1H NMR(400M,CDCl3):δ 8.852(dd,J=8.8Hz,1H)、8.813(d,J=8.8Hz,1H)、8.015(d,J=6.4Hz,1H)、7.945(t,J=8.0Hz,1H)、7.560(d,J=8.4Hz,2H)、7.096(d,J=8.4Hz,2H)、7.006(d,J=8.4Hz,1H)。
【0056】
実施例14:3,6−ジ(4−ブロモフェニルチオ)−8−オキソ−8H−アセナフト[1,2−b]ピロール−9−カルボニトリルの合成及び特性決定
1gの8−オキソ−8H−アセナフト[1,2−b]ピロール−9−カルボニトリル及び6.5gの4−ブロモチオフェノールを、50mLのアセトニトリルに添加し、室温で36時間反応させた。溶媒の一部を蒸発させた。クロマトグラフカラムにより、収率20%で化合物3,6−ジ(4−ブロモフェニルチオ)−8−オキソ−8H−アセナフト[1,2−b]ピロール−9−カルボニトリルが得られた。
【0057】
融点262〜263℃;1H NMR(400M,CDCl3):δ 8.815(dd,J=8.8Hz,1H)、8.671(d,J=8.8Hz,1H)、7.881(t,J=6.4Hz,1H)、7.551(q,J=8.0Hz,4H)、7.215(q,J=8.4Hz,4H)、6.472(s,1H)。
【0058】
実施例15:6−(4−アミノフェニルチオ)−8−オキソ−8H−アセナフト[1,2−b]ピロール−9−カルボニトリルの合成及び特性決定
1gの8−オキソ−8H−アセナフト[1,2−b]ピロール−9−カルボニトリル及び2.5gの4−アミノチオフェノールを、50mLのアセトニトリルに添加し、室温で2時間反応させた。溶媒の一部を蒸発させた。クロマトグラフカラムにより、収率30%で化合物6−(4−アミノフェニルチオ)−8−オキソ−8H−アセナフト[1,2−b]ピロール−9−カルボニトリルが得られた。融点255〜257℃;1H NMR(400M,CDCl3):δ 8.832(dd,J=8.8Hz,1H)、8.801(d,J=8.8Hz,1H)、7.985(d,J=6.4Hz,1H)、7.925(t,J=8.0Hz,1H)、7.570(d,J=8.4Hz,2H)、6.997(d,J=8.4Hz,2H)、7.006(d,J=8.4Hz,1H)、6.271(s,2H)。
【0059】
実施例16:3,6−ジ(4−アミノフェニルチオ)−8−オキソ−8H−アセナフト[1,2−b]ピロール−9−カルボニトリルの合成及び特性決定
1gの8−オキソ−8H−アセナフト[1,2−b]ピロール−9−カルボニトリル及び5.0gの4−アミノチオフェノールを、50mLのアセトニトリルに添加し、室温で30時間反応させた。溶媒の一部を蒸発させた。クロマトグラフカラムにより、収率25%で化合物3,6−ジ(4−アミノフェニルチオ)−8−オキソ−8H−アセナフト[1,2−b]ピロール−9−カルボニトリルが得られた。融点288〜290℃;1H NMR(400M,CDCl3):δ 8.835(dd,J=8.8Hz,1H)、8.682(d,J=8.8Hz,1H)、7.973(t,J=6.4Hz,1H)、7.581(q,J=8.0Hz,4H)、7.234(q,J=8.4Hz,4H)、6.651(s,1H),6.269(s,4H)。
【0060】
パートII:アセナフトヘテロ環式化合物のシクロデキストリン包接化合物及びシクロデキストリン複合体の調製及び特性決定
【0061】
このパートは、アセナフトヘテロ環式化合物のシクロデキストリン包接化合物及びシクロデキストリン複合体の調製及び特性決定を含む。用いた特性決定方法には、紫外分光法、蛍光分光法、円二色性分光法、赤外分光法、熱重量分析、及びSEMが含まれる。特別な説明のない限り、このパートにおける装置及び検出方法については以下の資料を参照のこと。
相溶解度図:J. Agric. Food Chem.、2007年、55巻(9号)、3535〜3539頁に記載の方法に従って作図。
紫外分光法:HP8453(米国)、検出方法については、Journal of Photochemistry and Photobiology A:Chemistry 173巻(2005年)、319〜327頁を参照のこと。
蛍光分光法:PTI−700(米国)、検出方法については、J Fluoresc(2008年)、18巻:1103〜1114頁を参照のこと。
円二色性分光法:J−810(日本)、検出方法については、J. Phys. Chem. B、2006年、110巻(13号)、7044〜7048頁を参照のこと。
赤外分光法:FT/IR−430(日本)、検出方法については、Mol. Pharmaceutics、2008年、5巻(2号)、358〜363頁を参照のこと。
熱重量分析:TGA/SDT851e(スイス)、検出方法については、Mol. Pharmaceutics、2008年、5巻(2号)、358〜363頁を参照のこと。
SEM:JSM−5600LV(日本)、検出方法については、J. Med. Chem. 2003年、46巻、4634〜4637頁を参照のこと。
H NMR:ブルーカーアバンス(Bruker Avance)II400M(スイス)、検出条件は、(溶媒CDCl3、400M)である。
質量分析:GC−Tof MS(英国)、検出方法については、J. Org. Chem. 2000年、65巻、9013〜9021頁を参照のこと。
単結晶X線回折:XD−3A(日本)、検出方法については、J. Org. Chem. 2008年、73巻、8305〜8316頁、8305を参照のこと。
実施例17:3−チオモルホリニル−8−オキソ−8H−アセナフト[1,2−b]ピロール−9−カルボニトリルのβ−シクロデキストリン包接化合物の調製及び特性決定
【0062】
最初に、二次再結晶し、完全に乾燥させたβ−シクロデキストリン1.85g(1.63mMol)を水100mLに添加し、次いで完全に溶解するまで加熱撹拌した。検出対象化合物0.179g(0.54mMol)をアセトン35mLで溶解させた後、β−シクロデキストリンの水溶液に線状に滴下した。混合物を60℃の温度で3日間加熱撹拌した。その結果、若干の析出物がそれから分離した。濾過し、濾過ケーキを少量の蒸留水で洗浄した。遊離した状態の化合物を少量のアセトンで洗い出した。50℃の温度で24時間真空乾燥した後、藤色固体が得られた。
【0063】
紫外分光法を用いた検出結果は、β−シクロデキストリンの濃度の増大と共に、化合物の紫外吸収及び溶解度が増大することを示した。このことから、対応する包接化合物が形成されたことがわかる。
【0064】
相溶解度図の結果から、化合物の溶解度が0.21μMから0.36μMに1.5倍増大したことを知ることができる。
【0065】
蛍光分光法を用いた検出結果は、検出対象化合物の濃度が一定不変に維持される条件下で、β−シクロデキストリンの濃度の増大と共に、蛍光スペクトルの値が増大することを示した。蛍光発光波長は変化しなかったが、化合物がシクロデキストリンの空洞に入り込んだ後、空洞における環境変化が、励起状態の化合物分子を大量の分子及び消光剤との接触から保護したので、強度は増大した。蛍光スペクトルの変化は、化合物とβ−シクロデキストリンが対応する包接化合物を形成したことを示唆した。
【0066】
円二色性分光法を用いた検出結果は、β−シクロデキストリンの存在下で、検出対象化合物の誘導円二色性が、260nm〜375nmにおいて強い正のコットン効果を示し、400nm〜500nmにおいて弱い正のコットン効果を示すことを示した。これは、化合物がβ−シクロデキストリンのキラルな空洞に入り込んだ後に誘導円二色性効果が生じたことを示唆し、このことから、包接化合物が形成されたことが示された。
【0067】
赤外分光法を用いた検出結果は、β−シクロデキストリンが3410.18及び1029.22cm−1において強い吸収帯を示し、指紋領域の579〜911cm−1において一連の特性吸収帯を示すことを示した。化合物は、2218.55cm−1及び1625.08cm−1において鋭い特性吸収帯を2本示した。赤外スペクトルでは、2219.13cm−1及び1625.48cm−1における特性吸収ピークの強度が低下し、わずかな変位が生じた。一方では、1706cm−1に新しい鋭いピークが現れ、このことから、包接化合物が形成されたことが示された。
【0068】
熱重量分析を用いた検出結果は、β−シクロデキストリンが298℃において変曲点を示し、分解し始めることを示した。しかし、β−シクロデキストリンとは異なり、包接化合物は269℃で変曲点を示し、分解し始めた。これによって、包接化合物が形成されたことが示された。シクロデキストリン含有量は73.1%であった。したがって、包接モデルは1:1であった。
【0069】
SEMの結果から、3−チオモルホリニル−8−オキソ−8H−アセナフト[1,2−b]ピロール−9−カルボニトリルは針状の外観を有し、β−シクロデキストリンはより大きい四角形の外観を有することがわかった。化合物とβ−シクロデキストリンとの混合物のSEM図は、針と四角形の外観が混合したものであった。しかし、β−シクロデキストリン包接化合物は、規則正しいダイヤモンド状の外観を有し、上記の3種類とは明らかに異なるものであった。外観が明らかに異なることから、包接化合物が形成されたことを知ることができる。
【0070】
他の包接化合物の調製及び特性決定:
実施例17と同様にして、同じ一連の他の化合物を様々な種類のシクロデキストリンで包接させた。これらの生成物についても、包接化合物の形成を証明するために紫外分光法、蛍光分光法、円二色性分光法、赤外分光法、熱重量分析、及びSEMで特性決定を行った。相溶解度実験により、化合物及びその包接化合物について包接前及び後の溶解度の変化を比較のために検出した。詳細な結果を表1に示した。
【0071】
表1から、様々な種類のシクロデキストリンで包接されたアセナフトヘテロ環式化合物の溶解度は、化合物自体の溶解度と比較すると大幅に増大したことがわかる。
【表1】
【0072】
実施例18:3−チオモルホリニル−8−オキソ−8H−アセナフト[1,2−b]ピロール−9−カルボン酸のγ−シクロデキストリン複合体の調製及び特性決定
3−チオモルホリニル−8−オキソ−8H−アセナフト[1,2−b]ピロール−9−カルボン酸(0.263g、0.75mmol)及びN,N’−カルボニルジイミダゾール(0.179g)を、3mLのDMSOに溶解した。混合物を室温で30分間撹拌した後、γ−シクロデキストリン(0.6485g、0.5mmol)及び4mLのトリエタノールアミンを混合物に添加した。反応を室温で18時間続けた。反応が終了した後、約200mLのアセトンを試薬に添加した。減圧下で、析出物が分離した。得られた析出物をイオン交換カラムで精製し、得られた生成物をメタノールと水の混合溶媒で洗浄し、次いで溶液を凍結乾燥した後、0.42gの3−チオモルホリニル−8−オキソ−8H−アセナフト[1,2−b]ピロール−9−カルボン酸/γ−シクロデキストリンの複合体が収率25%で得られた。
【0073】
H核磁気共鳴及び質量スペクトルによる検出結果は、下記を示した。1H NMR(400M,D2O−d6)δ(ppm)8.87(d,J=8.5Hz,1H),8.58〜8.55(m,2H)、7.91(t,J=8.5Hz,1H)、7.39(d,J=8.5Hz,1H)、5.03(m,8H)、3.83(m,8H)、3.80(m,8H)、3.74(m,8H)、3.72〜3.70(m,3−N(CH2*)2(CH2)2S,4H)、3.59(m,8H)、3.52(m,8H)、2.98〜2.96(m,3−N(CH2)2(CH2)2*S,4H);(ESI)m/z(M+H)−(1629m/z)。
【0074】
単結晶X線回折で特性決定を行った結果から、γ−シクロデキストリンは12°及び15〜23°において一連の鋭いピークを示したが、化合物3−チオモルホリニル−8−オキソ−8H−アセナフト[1,2−b]ピロール−9−カルボン酸は11°及び7°において鋭いピークを示しただけであることがわかった。しかし、複合体では、6°において新しい鋭いピークが現れ、11°における鋭いピークは消失し、同時に複合体は、14〜18°及び20〜25°において一連の鋭いピークを示した。複合体は、化合物及びシクロデキストリンに比べて、新しい鋭いピークを有するものであった。これによって、複合体が形成されたことが示された。
【0075】
化合物3−チオモルホリニル−8−オキソ−8H−アセナフト[1,2−b]ピロール−9−カルボン酸は、γ−シクロデキストリンで複合体形成された後、水に対する溶解度が明らかに増大した。相溶解度曲線の当てはめ式は、Y=0.68+0.14×Xであった。化合物3−チオモルホリニル−8−オキソ−8H−アセナフト[1,2−b]ピロール−9−カルボン酸の水に対する溶解度は、元の0.68μMから11.2μMに16.5倍増大した。
【0076】
他の複合体の調製及び特性決定:
実施例18と同様にして、同じ一連の他の化合物を様々な種類のシクロデキストリンで複合体形成した。これらの生成物についても、複合体の形成を証明するために紫外分光法、蛍光分光法、円二色性分光法、赤外分光法、熱重量分析、及びSEMで特性決定を行った。相溶解度実験により、化合物及びその複合体について複合体形成前及び後の溶解度の変化を比較のために検出した。詳細な結果を表2に示した。
【0077】
表2から、様々な種類のシクロデキストリンで複合体形成されたアセナフトヘテロ環式化合物の溶解度は、化合物自体の溶解度と比較すると大幅に増大したことがわかる。
【表2】
【0078】
パートIII:アセナフトヘテロ環式化合物、そのシクロデキストリン包接化合物及び複合体の物理化学的特性の検出
【0079】
実施例19:蛍光偏光アッセイによる化合物のBH3類似度の検出
21個のアミノ酸を有するBid BH3ペプチド(アミノ酸:79〜99:QEDIIRNIARHLAQVGDSMDR)を合成し、6−カルボキシフルオレセインN−スクシンイミジルエステル(FAM)を蛍光性タグ(FAM−Bid)としてN末端において標識した。競合的結合実験で使用される反応系は、GST−Bcl−2タンパク質(40nM)又はMcl−1タンパク質であった。これを、FAM−Bidポリペプチド(5nM)と共に反応緩衝液(100mM K3PO4、pH 7.5、100μg/mlウシγアルブミン、0.02%アジ化ナトリウム)に溶解した。96ウェルプレートにおいて、100μLの反応系を各ウェルに添加した。次いでそこに、DMSOに溶解させた異なる濃度の検出対象である3−チオモルホリニル−8−オキソ−8H−アセナフト[1,2−b]ピロール−9−カルボニトリル母液1μLを、最終濃度が実験計画の要件を満たすまで添加した。一方、2つの対照群を設置した。反応系を含む一群は、Bcl−2又はMcl−1及びFAM−Bidを含有するだけであり(阻害率0%に相当)、反応系を含む他群は、FAM−Bidペプチドを含有するだけである。インキュベーションを4時間行った後、96ウェルプレートを酵素標識計器で検出した。530nmの波長によって励起され、発生させた発光波長485nmにおいて、蛍光偏光値(mP)を試験した。Ki値を、計算式に従って演繹した。実験結果を図1に示した。化合物とBcl−2との競合的結合定数は310nMであった。
【0080】
上述された実験方法で、他の9種の化合物のBH3類似度を検出した。それらの化合物とBcl−2及びMcl−1タンパク質との結合定数もnMレベルであった。詳細な結果を表3に示した。
【表3】
【0081】
実施例20:細胞内蛍光偏光エネルギー移動(FRET)による化合物のBH3類似度の検出
2μgのBcl−2−CFP及びBax−YFPプラスミドを、リン酸カルシウム共沈法でHela細胞に別々に又は同時にトランスフェクトし、24時間後、細胞を6ウェルプレートに播種し(2×105細胞/ウェル)、そこに、DMSOに溶解させた検出対象化合物3−チオモルホリニル−8−オキソ−8H−アセナフト[1,2−b]ピロール−9−カルボニトリルを、最終濃度(2、5、10、及び15μM)が実現されるまで添加した。24時間後(図2を参照のこと)、細胞をPBSで3回洗浄した。蛍光値は、GENIOS蛍光酵素標識計器(TECAN、スイス)で検出された。時間依存的な実験において、トランスフェクトされた細胞を6ウェルプレートに播種し、その後、40μMの化合物をそれに添加した。3、6及び24時間後(図3)、蛍光強度をプレートリーダーで検出した。Bcl−2−CFPプラスミドだけをトランスフェクトさせた細胞群に関して、475nmの発光波長及び433nmの励起波長における値を記録した。Bax−YFPプラスミドのみをトランスフェクトさせた細胞群に関して、527nmの発光波長及び505nmの励起波長における値を記録した。Bcl−2−CFPとBax−YFPプラスミドを共トランスフェクトさせた細胞群に関して、527nm及び475の発光波長並びに433nmの励起波長における値を記録した。527nmと475nmの発光波長における蛍光強度の比がFRETであった。プラスミドを単独でトランスフェクトさせた対照群のFRETを1.0と設定した。これは、2つのタンパク質に関して蛍光偏光エネルギー移動が生じないことを意味した。共トランスフェクトされた細胞では、Bcl−2タンパク質とBaxタンパク質との相互作用により、FRETは2.0まで増大したが、2つのタンパク質間の相互作用への干渉が増大すると、FRETは、薬物濃度の増大及び時間と共に低減した。細胞生存能力をMTT法で検出した。実験結果を図2及び3に示した。化合物の濃度が2μMに到達すると、Bcl−2とBaxの相互作用は3時間後に干渉を受けるおそれがあり、その結果は濃度−時間依存的傾向を示した。
【0082】
他の7種の化合物も、上述された方法と同じ実験方法で検出され、化合物はすべて、細胞においてBH3−onlyタンパク質を刺激する機能を有し、様々な濃度及び時間の条件下でBcl−2とBaxの相互作用に明らかに干渉することができることが実験的に証明された。詳細な結果を表4に示した。
【0083】
ここで、濃度及び時間とは、検出された化合物が、その濃度でその時間、Bcl−2とBaxの相互作用に干渉したことを意味する。
【表4】
【0084】
実施例21:Baxタンパク質とコンドリオソームとの間の共局在性による化合物のBH3類似度の検出
リン酸カルシウム共沈法で、5μgのBax−YFPプラスミドをMCF−7細胞にトランスフェクトし、24時間後、細胞を6ウェルプレートに播種し(0.2×106細胞/ウェル)、10μMの検出対象化合物3−チオモルホリニル−8−オキソ−8H−アセナフト[1,2−b]ピロール−9−カルボニトリルをそれに添加した。6時間後、細胞をPBSで洗浄し、光を避けて50nMのMito Tracker Red CMXRos(コンドリオソーム特異的プローブ、赤色)で10分間インキュベートした。次いで、細胞をPBSで3回洗浄し、ラジアンス(Radiance)2000レーザー共焦点顕微鏡(Bio−Rad、米国)を用いて、蛍光像を走査した。一方、二波長走査を実施した。1つの波長は、Bax−YFPの緑色蛍光を走査するのに使用し、もう1つの波長は、コンドリオソームを示唆するためのCMXRosプローブの赤色蛍光を走査するのに使用した。二波長像を重ね合せることによって、共局在の状況が示された。Baxタンパク質がコンドリオソームに局在すると、図4に示すように緑色と赤色の蛍光が重なり合って、オレンジ色になった。比較のための図5から、BAXをコンドリオソームに移動するようにすることはできず、すなわち共局在化は成功しなかったことがわかった。
【0085】
他の8種の化合物を、上述された方法と同じ実験方法で検出した。その結果から、これらの化合物はすべて、BAXをコンドリオソームに移動させるようにする機能を有することがわかった。これによって、これらの化合物はすべて、細胞においてBH3−onlyタンパク質を刺激する機能を有することが示された。詳細な結果を表5に示した。ここで、濃度及び時間とは、検出された化合物が、その濃度及びその時間で、BH3−onlyタンパク質をシミュレーションし、BAXをコンドリオソームに移動させるようにすることを意味する。
【0086】
【表5】
【0087】
実施例22:BAX/BAKに応じた化合物の細胞毒性によるBH3類似体の特性に関する実験的試験
リン酸カルシウム共沈法で、3μgのBAX/BAK干渉プラスミドをMCF−7細胞にトランスフェクトし、24時間後、細胞を回収した。BAX及びBAKタンパク質がRNAを干渉した後の発現をウェスタン法で検出し、プラスミドをトランスフェクトしていない細胞群を同様に処理し、対照群と設定した。トランスフェクトされた細胞を96ウェルプレートに播種し(1×105細胞/ウェル)、プラスミドをトランスフェクトしていない細胞群の対照実験を並行して実施した。それに、検出対象化合物3−チオモルホリニル−8−オキソ−8H−アセナフト[1,2−b]ピロール−9−カルボニトリルを、実験前に設計された濃度勾配に従って添加した。48時間後、細胞生存能力をMTTで検出した。実験結果を図6に示した。並行して、ゴシポールを非特異的BH3類似体として処理した。その結果から、3−チオモルホリニル−8−オキソ−8H−アセナフト[1,2−b]ピロール−9−カルボニトリルは、BAX/BAKに対して絶対的に依存する細胞毒性を有することがわかった。
【0088】
他の8種の化合物(化合物(1)〜(8)と称する)も、上述された方法と同じ実験方法で検出した。その結果から、検出された化合物も、BAX/BAKに対する絶対的依存性という特性を有することがわかった。これらの化合物は、以下の通りである。
(1)8−オキソ−8H−アセナフト[1,2−b]ピロール−9−カルボニトリル、
(2)3−(4−ブロモフェニルチオ)−8−オキソ−8H−アセナフト[1,2−b]ピロール−9−カルボニトリル、
(3)6−(4−アミノフェニルチオ)−8−オキソ−8H−アセナフト[1,2−b]ピロール−9−カルボニトリル、
(4)3,6−ジ(4−ブロモフェニルチオ)−8−オキソ−8H−アセナフト[1,2−b]ピロール−9−カルボニトリル、
(5)3,6−ジ(4−アミノフェニルチオ)−8−オキソ−8H−アセナフト[1,2−b]ピロール−9−カルボニトリル、
(6)3−(3−フルオロフェニルホルミル)−8−オキソ−8H−アセナフト[1,2−b]ピロール−9−カルボニトリル、
(7)6−(チエニル−2−メトキシ)−8−オキソ−8H−アセナフト[1,2−b]ピロール−9−カルボニトリル、
(8)3−フェノキシ−8−オキソ−8H−アセナフト[1,2−b]ピロール−9−カルボン酸。
【0089】
実施例23:ウェスタンブロッティングによる化合物のMcl−1及びBcl−2に対する阻害の検出
細胞試料を回収し、低温において1×106/50μlの細胞溶解液(62.5mM Tris−HCL pH 6.8、2%SDS、10%グリセロール、50mM DTT、0.01%ブロムフェノールブルー)で粉砕し、次いで溶液を遠心し、タンパク質上澄液を回収した。試料を100℃で5分間煮沸し、次いでSDS−PAGE(12%)電気泳動で分離し、移動させた。対象のタンパク質を対応する抗体で検出した。細胞中における対象のタンパク質の発現は、ECL着色法と組み合わせて西洋わさびペルオキシダーゼ標識二次抗体で検出した。検出対象化合物3−チオモルホリニル−8−オキソ−8H−アセナフト[1,2−b]ピロール−9−カルボニトリルのMcl−1及びBcl−2に対する阻害を別々に、図7及び図8に示した。これらの図から、検出対象化合物が腫瘍細胞に対して作用する時間が経過するにつれて、Bcl−2及びMcl−1タンパク質の帯が次第に明るくなったことを知ることができる。このことは、化合物がこれらの2つのタンパク質に対する阻害を有することを意味した。ウェスタン像のタンパク質帯の濃度について、半定量分析、及びコダックゲルロジック(KODAK Gel Logic)1500画像処理システムソフトウェアを用いた規格化処理を実施した。タンパク質帯の濃度を図9及び図10に示した。
【0090】
以下の8種の化合物も、上述された方法と同じ方法で検出した。これらの化合物はすべて、Bcl−2及びMcl−1タンパク質に対して阻害したことを知ることができる。これらの化合物は下記を含む。
(1)8−オキソ−8H−アセナフト[1,2−b]ピロール−9−カルボニトリル、
(2)3−(4−ブロモフェニルチオ)−8−オキソ−8H−アセナフト[1,2−b]ピロール−9−カルボニトリル、
(3)6−(4−アミノフェニルチオ)−8−オキソ−8H−アセナフト[1,2−b]ピロール−9−カルボニトリル、
(4)3,6−ジ(4−ブロモフェニルチオ)−8−オキソ−8H−アセナフト[1,2−b]ピロール−9−カルボニトリル、
(5)3,6−ジ(4−アミノフェニルチオ)−8−オキソ−8H−アセナフト[1,2−b]ピロール−9−カルボニトリル、
(6)3−フェノキシ−8−オキソ−8H−アセナフト[1,2−b]ピロール−9−N−tert−ブチルアミド、
(7)6−(チエニル−2−メトキシ)−8−オキソ−8H−アセナフト[1,2−b]ピロール−9−カルボニトリル、
(8)4−(テトラヒドロ−2H−ピラニル−4−オキシ)−8−オキソ−8H−アセナフト[1,2−b]ピロール−9−カルボニトリル。
【0091】
半定量分析によるこれらの化合物に関するMcl−1タンパク質及びBcl−2タンパク質の減少結果をそれぞれ、表6及び表7に示した。
【表6】
【表7】
【0092】
実施例24:ウェスタンブロッティングによるアセナフトヘテロ環式化合物並びにそのシクロデキストリン包接化合物及び複合体のMcl−1及びBcl−2に対する阻害の比較
細胞を6ウェルプレートに播種した(2×105細胞/ウェル)。化合物群では、化合物3−チオモルホリニル−8−オキソ−8H−アセナフト[1,2−b]ピロール−9−カルボニトリルを、最終濃度が10μMに到達するまでDMSOに溶解した。包接群では、水に溶解させておいた10μMの化合物に相当するγ−シクロデキストリン包接体を細胞に添加した。24時間後、細胞をPBSで3回洗浄し、次いで細胞試料を回収し、低温において1×106/50μlの細胞溶解液(62.5mM Tris−HCL pH 6.8、2%SDS、10%グリセロール、50mM DTT、0.01%ブロムフェノールブルー)で粉砕し、次いで溶液を遠心し、タンパク質上澄液を回収した。試料を100℃で5分間煮沸し、次いでSDS−PAGE(12%)電気泳動で分離し、移動させた。対象のタンパク質を対応する抗体で検出した。細胞における対象のタンパク質の発現は、ECL着色法と組み合わせて西洋わさびペルオキシダーゼ標識二次抗体で検出した。検出結果を図11に示した。この図から、3−チオモルホリニル−8−オキソ−8H−アセナフト[1,2−b]ピロール−9−カルボニトリルのγ−シクロデキストリン包接化合物のBcl−2及びMcl−1タンパク質に対する阻害は、化合物自体の阻害より明らかに高いことを知ることができる。すなわち、γ−シクロデキストリン包接化合物は、Bcl−2及びMcl−1タンパク質に対する阻害能力を明らかに増大させた。
【0093】
ウェスタン図のタンパク質帯の濃度について、半定量分析、及びコダックゲルロジック1500画像処理システムソフトウェアを用いた規格化処理を実施した。タンパク質帯の濃度を図12及び図13に示した。
【0094】
この例においては、β−シクロデキストリン、2−ヒドロキシプロピル−β−シクロデキストリン、メチル−β−シクロデキストリン、及びヒドロキシプロピル−γ−シクロデキストリンで包接された3−チオモルホリニル−8−オキソ−8H−アセナフト[1,2−b]ピロール−9−カルボニトリル、並びに以下の化合物を、上述された方法と同じ方法で検出した。その結果から、細胞においてBcl−2及びMcl−1タンパク質に対する包接された化合物の阻害能力は、化合物自体の阻害能力より高いことがわかった。
(1)8−オキソ−8H−アセナフト[1,2−b]ピロール−9−カルボニトリル、
(2)3−(4−ブロモフェニルチオ)−8−オキソ−8H−アセナフト[1,2−b]ピロール−9−カルボニトリル、
(3)6−(4−アミノフェニルチオ)−8−オキソ−8H−アセナフト[1,2−b]ピロール−9−カルボニトリル、
(4)3,6−ジ(4−ブロモフェニルチオ)−8−オキソ−8H−アセナフト[1,2−b]ピロール−9−カルボニトリル、
(5)3,6−ジ(4−アミノフェニルチオ)−8−オキソ−8H−アセナフト[1,2−b]ピロール−9−カルボニトリル、
(6)4−(テトラヒドロ−2H−ピラニル−4−オキシ)−8−オキソ−8H−アセナフト[1,2−b]ピロール−9−カルボニトリル。
【0095】
半定量分析によるこれらの化合物及びその包接化合物に関するMcl−1タンパク質及びBcl−2タンパク質の減少結果をそれぞれ、表8及び表9に示した。
【表8】
【表9】
【0096】
γ−シクロデキストリン、2−ヒドロキシプロピル−β−シクロデキストリン、メチル−β−シクロデキストリン又はヒドロキシプロピル−γ−シクロデキストリンで複合体形成された3−(p−メチルフェノキシ)−8−オキソ−8H−アセナフト[1,2−b]ピロール−9−カルボキサミド、3−(4−ブロモフェニルチオ)−8−オキソ−8H−アセナフト[1,2−b]ピロール−9−カルボン酸、3−チオモルホリニル−8−オキソ−8H−アセナフト[1,2−b]ピロール−9−カルボキサミドなど、同じ種類の他の化合物を、この実施例において上述された方法と同じ方法で検出した。実験結果から、細胞において、これらの化合物のシクロデキストリン複合体のBcl−2及びMcl−1タンパク質に対する阻害能力は、化合物自体の阻害能力より高いことがわかった。
【0097】
実施例25:ウェスタンブロッティングによる、腫瘍モデルにおける化合物と包接化合物のMcl−1及びBcl−2に対する阻害のインビボ比較
昆明マウス(中国)をランダムに群に割付け、各群10匹のマウスとした。培養された肝ガン細胞H22を、マウスの腋下に200μL/マウスで皮下接種した。癌細胞を5日間担持した後、皮下腫瘍が形成された。次いで、化合物3−チオモルホリニル−8−オキソ−8H−アセナフト[1,2−b]ピロール−9−カルボニトリル及びそのγ−シクロデキストリン包接化合物を腹膜注射で投与し、γ−シクロデキストリンで包接された検出対象化合物を経口投与した。検出条件は下記を含む。
ブランク対照群:担癌後、マウスにはいかなる処置も施さなかった、
対照群(1):担癌後、マウスにDMSO溶液を1日おきに全部で10日間腹膜注射した、
対照群(2):担癌後、マウスにシクロデキストリン溶液を1日おきに全部で10日間腹膜注射した、
実験群(1):担癌後、マウスに、0.03mg/kgのBW化合物に相当するDMSO溶液を1日おきに全部で10日間腹膜注射した、
実験群(2):担癌後、マウスに、0.3mg/kgのBW化合物に相当するDMSO溶液を1日おきに全部で10日間腹膜注射した、
実験群(3):担癌後、マウスに、0.3mg/kgのBW化合物に相当する包接化合物水溶液を1日おきに全部で10日間腹膜注射した、
実験群(4):担癌後、マウスに、0.3mg/kgのBW化合物に相当する包接化合物水溶液を1日おきに全部で10日間胃内投与した。
【0098】
実験期間中、腫瘍の長径(a)及び長径と直角を成す短径(b)を、毎週2回検出した。肉眼的腫瘍体積を、式:1/2ab2に従って決定した。動物の生存期間を観察した。40日目に、腫瘍阻害率を腫瘍体積によって算出した。結果を下記に示した。
実験群(2)(化合物のDMSO溶液注射群):腫瘍阻害率は22.3%であった、
実験群(3)(包接化合物注射群):腫瘍阻害率は61.5%であった、
実験群(4)(包接化合物の経口投与群):腫瘍阻害率は43.7%であった。
【0099】
対照群における動物の平均生存期間は28±2.1日であり、化合物群における動物の平均寿命は33±3.1日であり、包接化合物の注射群における動物の平均生存期間は48±5.1日であり、包接化合物の経口投与群における動物の平均生存期間は42±1.1日であった。統計処理の結果から、P<0.05であることがわかった。
【0100】
マウスが死亡又は屠殺した後、皮下腫瘍を取り出した。体積1:3の生理食塩水を使用して、細胞懸濁液調製用の組織ホモジネートを作製した。腫瘍細胞におけるBcl−2、Mcl−1タンパク質の発現を、実施例24に記載の方法と同じウェスタン検出方法で検出した。その結果を図14に示した。ここで、電気泳動パス6におけるタンパク質帯は、電気泳動パス5におけるタンパク質帯より明るい。これは、インビボにおいて包接化合物のBcl−2、Mcl−1に対する阻害能力が、化合物自体の阻害能力より高いことを示唆した。
【0101】
β−シクロデキストリン、2−ヒドロキシプロピル−β−シクロデキストリン、メチル−β−シクロデキストリン、及びヒドロキシプロピル−γ−シクロデキストリンで包接された3−チオモルホリニル−8−オキソ−8H−アセナフト[1,2−b]ピロール−9−カルボニトリル、並びに以下の化合物は、下記を含む同じ抗腫瘍効果をインビボで有した。
(1)実験群(2)と同じ条件下で、8−オキソ−8H−アセナフト[1,2−b]ピロール−9−カルボニトリルの腫瘍阻害率は約60%であった、実験群(3)と同じ条件下で、γ−シクロデキストリンで包接された化合物29−1の腫瘍阻害率は約80%であった、
(2)実験群(2)と同じ条件下で、3−(4−ブロモフェニルチオ)−8−オキソ−8H−アセナフト[1,2−b]ピロール−9−カルボニトリルの腫瘍阻害率は約40%であった、実験群(3)と同じ条件下で、2−ヒドロキシプロピル−β−シクロデキストリンで包接された化合物29−2の腫瘍阻害率は約60%であった、
(3)実験群(2)と同じ条件下で、6−(4−アミノフェニルチオ)−8−オキソ−8H−アセナフト[1,2−b]ピロール−9−カルボニトリルの腫瘍阻害率は約30%であった、実験群(3)と同じ条件下で、γ−シクロデキストリンで包接された化合物29−3の腫瘍阻害率は約40%であった、
(4)実験群(2)と同じ条件下で、3,6−ジ(4−ブロモフェニルチオ)−8−オキソ−8H−アセナフト[1,2−b]ピロール−9−カルボニトリルの腫瘍阻害率は約78%であった、実験群(3)と同じ条件下で、メチル−β−シクロデキストリンで包接された化合物29−4の腫瘍阻害率は約85%であった、
(5)実験群(2)と同じ条件下で、3,6−ジ(4−アミノフェニルチオ)−8−オキソ−8H−アセナフト[1,2−b]ピロール−9−カルボニトリルの腫瘍阻害率は約50%であった、実験群(3)と同じ条件下で、γ−シクロデキストリンで包接された化合物29−5の腫瘍阻害率は約60%であった、
(6)実験群(2)と同じ条件下で、4−(テトラヒドロ−2H−ピラニル−4−オキシ)−8−オキソ−8H−アセナフト[1,2−b]ピロール−9−カルボニトリルの腫瘍阻害率は約40%であった、実験群(3)と同じ条件下で、β−シクロデキストリンで包接された化合物29−6の腫瘍阻害率は約55%であった。
【0102】
他の化合物の腫瘍阻害率は30%〜50%であった。シクロデキストリン包接化合物の腫瘍阻害率は、化合物自体の腫瘍阻害率より一般に高い(P<0.05)。
【0103】
γ−シクロデキストリン、2−ヒドロキシプロピル−β−シクロデキストリン、メチル−β−シクロデキストリン、ヒドロキシプロピル−γ−シクロデキストリンで複合体形成された以下の化合物も化合物自体より、Bcl−2及びMcl−1に対する阻害能力が強く、腫瘍阻害率が高いものであった。
ここで、
3−(p−メチルフェノキシ)−8−オキソ−8H−アセナフト[1,2−b]ピロール−9−カルボキサミドの腫瘍阻害率は30%であり、メチル−β−シクロデキストリンで複合体形成されたとき、腫瘍阻害率は約38%に到達した、
3−(4−ブロモフェニルチオ)−8−オキソ−8H−アセナフト[1,2−b]ピロール−9−カルボン酸の腫瘍阻害率は45%であり、ヒドロキシプロピル−γ−シクロデキストリンで複合体形成されたとき、腫瘍阻害率は55%に到達した、
3−チオモルホリニル−8−オキソ−8H−アセナフト[1,2−b]ピロール−9−カルボキサミドの腫瘍阻害率は45%であり、2−ヒドロキシプロピル−β−シクロデキストリンで複合体形成されたとき、腫瘍阻害率は60%に到達した。
【技術分野】
【0001】
本発明は、新しいタイプのアセナフトヘテロ環式化合物、及びナノテクノロジーを用いて調製されるそのシクロデキストリン包接化合物又はシクロデキストリン複合体に関し、また、これらの化合物が、インビトロ及びインビボでBH3−onlyタンパク質を模倣して、Bcl−2、Bcl−xL及びMcl−1タンパク質に競合的に結合し、拮抗し、それによって細胞のアポトーシスを誘導し、抗癌性化合物としての使用に関する。
【背景技術】
【0002】
分子標的抗腫瘍薬は、細胞毒性類抗腫瘍薬に続き新薬研究開発及び製品化の新世代製品となりつつある。Bcl−2タンパク質は、悪性腫瘍の不死性に拮抗し、不死性を覆すのに最も重要な分子標的である。したがって、Bcl−2タンパク質に特異的に拮抗する薬物は、腫瘍細胞のみにおいてアポトーシスを誘導することによって、高選択性、安全性、高性能、及び低苦痛の抗癌療法という目標を実現できるものである。Bcl−2阻害剤のうちで、BH3類似体(BH3模倣体)は、最も著しい抗腫瘍効果、最良の薬力学的活性、及び最小の毒性副作用を示す。さらに、このような阻害剤は、Bcl−2ファミリーの抗アポトーシス性メンバー(Bcl−2、Bcl−xL、及びMcl−1タンパク質を含む)に関して広域スペクトルの拮抗能力も所有しなければならない。
【0003】
しかし、今のところ、Bcl−2を標的とする抗腫瘍製品はまだ市販されていない。既存の19種の前臨床段階のBcl−2阻害剤のうちで、3種の最適な製品がそれぞれ、第I相、第II相、及び第III相臨床試験の段階にある。これらは、Abbott Laboratories、Illinois、USAで研究開発されたABT−737、Gemin Xで研究開発されたオバトクラックス(Obatoclax)(GX15−070)、及び米国のAscentaで研究開発されたAT−101である。これらはすべて、BH3類似体である。競合的結合定数は、Bcl−2タンパク質についてnMオーダーであり、他の15個の同様の分子より遥かに高い。しかし、これらはすべて、ゴシポール(Gossypol)及びオバトクラックスのBH3類似レベルは不十分であり、これらは絶対的BH3類似体ではないという欠点を有する。言い換えれば、これらは、BAX/BAKとは無関係の細胞毒性を有する。これは、他の標的点が存在し、したがってこれらは毒性副作用を有することを示す。この欠点のため、オバトクラックスは、淘汰される危機に直面している。ABT−737は絶対的BH3類似体であるが、Mcl−1と反応することができず、且つ広域スペクトルでBcl−2ファミリータンパク質を阻害することができず、それによってその用途範囲が大幅に制限される。
【0004】
本発明者らは、8−オキソ−8H−アセナフト[1,2−b]ピロール−9−カルボニトリルのアセナフトヘテロ環式化合物を開示し、これらの化合物は、細胞のアポトーシスを誘導することにより腫瘍増殖を阻害する活性を有することを開示した(中国特許、授権公告CN1304370C)。しかし、アポトーシスに基づく有望な抗腫瘍薬として、その研究開発は、同様の薬物と同じ困難である、アポトーシスシグナルのゲートウェイの複雑さ、潜在的及び強い細胞毒性、並びに必然的に薬品の盲目的な適用を引き起こす。これらはすべて、同様のこのような薬物の開発における失敗の重大な理由である。したがって、薬物の標的指向性効果は、研究の過程において顕著に強調されるべきである。
【0005】
一方、薬物の物理化学的特性は、薬理効果の発現に影響を及ぼす重要な因子であり、薬物の開発時において薬理効果の正確な評価にも影響を及ぼすことがある。このような問題は初期の研究期間に認められた。従来の研究におけるこれらの化合物は、水溶性が比較的悪く、したがってその研究及び使用をより大幅に制限された。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、より強い標的指向性を有し、BH3類似体であるBcl−2ファミリータンパク質(Bcl−2、Bcl−xL、及びMcl−1タンパク質を含む)の阻害剤として使用することができるアセナフトヘテロ環式化合物を提供し、それに基づいて、現代のナノテクノロジーと組み合わせることによって、シクロデキストリン包接体又はシクロデキストリン複合体の形成により、水溶性及びバイオアベイラビリティを改善して、標的指向性抗腫瘍性製剤としてのその使用を十分に展開することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のアセナフトヘテロ環式化合物は、以下の構造式を有する。
【化1】
R1、R2、R3、及びR4はそれぞれ、3位、4位、6位、及び9位における置換基である。
式中、
(I)R1=XR5、チオフェンメトキシル、チオフェンメチルアミノ又はチオモルホリニル、R2=H、R3=H、R4=CN、COOH、COOR6又はCONHR7、
(II)R1=H、R2=XR5、チオフェンメトキシル、チオフェンメチルアミノ又はチオモルホリニル、R3=H、R4=CN、COOH、COOR6又はCONHR7、
(III)R1=H、R2=H、R3=H、XR5、テトラヒドロピラン−4−オキシ−、テトラヒドロチアピラン−4−オキシ−、チオフェンメトキシル、チオフェンメチルアミノ又はチオモルホリニル、R4=CN、
(IV)R1=XR5、R2=H、R3=XR5、R4=CN
であり、
式中、
X=O、S、カルボニル、エステル又はアミド、
R5=a:(CH2)nAr−(o、m、p)Y(Y=CH3、NO2、Ph、F、Cl、Br、CF3、OCH3、SCH3又はNH2、n=0〜4)、
b:テトラヒドロピラン又はテトラヒドロチアピラン、
R6=CH3又はC2H5、
R7=CH3、C2H5又はAr
である。
【0008】
本発明の化合物は、以下の2つの経路で合成することができる。
【0009】
第1の経路では、優れた剛性、共平面性、及び強い電子欠損性を有する原材料の8−オキソ−8H−アセナフト[1,2−b]ピロール−9−カルボニトリルは、アルコール、チオアルコール、フェノール又はチオフェノールなどの求核試薬を用いた芳香族水素求核置換反応を経て、3位、4位又は6位置換8−オキソ−8H−アセナフト[1,2−b]ピロール−9−カルボニトリルを生じる。カルボニトリルの加水分解、エステル化、及びアミド化を行った後、対応する酸、エステル、及びアミドが得られる。化学反応式は以下の通りである。
【化2】
【0010】
溶媒(テトラヒドロフラン、アセトニトリル、ピリジン、ジメチルホルムアミド又はジメチルスルホキシド)中の8−オキソ−8H−アセナフト[1,2−b]ピロール−9−カルボニトリルを、20〜100℃の温度で適正な量のアルコール、チオアルコール、フェノール又はチオフェノールなどの求核試薬と0.5〜24時間反応させる。冷却後、溶媒の一部を減圧条件下で蒸発させる。次いで、濾過又は直接カラムクロマトグラフィーにより、生成物の3位又は6位置換8−オキソ−8H−アセナフト[1,2−b]ピロール−9−カルボニトリルを得ることができる。
【0011】
濃硫酸の存在下で、3位又は6位置換8−オキソ−8H−アセナフト[1,2−b]ピロール−9−カルボニトリルを加水分解して、対応する酸を得ることができ、次いで対応するアルコール及びアミンと反応させることにより、対応するエステル又はアミド化合物を得ることができる。
【0012】
第2の経路では、原材料のアセナフテンキニーネ及び溶媒の濃硫酸を液体臭素に添加し、2時間還流して、ブロモアセナフテンキニーネを得る。得られたブロモアセナフテンをアルコール、チオアルコール、フェノール又はチオフェノールと反応させて、対応する置換アセナフテンキニーネを得る。得られた置換アセナフテンキニーネを、シリカゲルなどの弱酸条件下でアセトニトリルと反応させて、3−(2−オキソ−2H−アセナフテン)−マロノニトリルを得る。その後、反応生成物にK2CO3を触媒として使用し、アセトニトリルを加えて0.5〜6時間還流する。次いで、冷却し、溶媒の一部を減圧条件下で蒸発させる。濾過又は直接カラムクロマトグラフィーにより、対応する3位又は4位置換オキシ−8−オキソ−8H−アセナフト[1,2−b]ピロール−9−カルボニトリルが得られる。その後の加水分解、エステル化、アミド化の条件は、第1の経路のものと同じである。
【0013】
第1の経路と第2の経路の違いは、置換が輪状構造形成前に行われることであり、こうして3位、6位ではなく3位、4位における2つの異性体を得ることができる。化学反応式は以下の通りである。
【化3】
【0014】
多くの方法を使用して、上記の経路で得られた化合物のBH3類似レベル並びにMcl−1及びBcl−2に対する阻害が検出された。その結果から、上記のアセナフトヘテロ環式化合物は極めて高いBH3類似レベルを有し、Mcl−1及びBcl−2タンパク質を有効に阻害できることが実証されている。このような属性のため、この化合物を使用して、BH3類似体であるBcl−2ファミリータンパク質の阻害剤を調製することができ、さらに、この化合物を使用して、標的指向性の高い抗腫瘍薬を調製することができる。
【0015】
アセナフトヘテロ環式化合物の研究過程において、水溶性の低化は、最も顕著な問題であり、化合物の研究及び応用を大幅に制限することもわかった。Modern Technique of Drug Preparation(Cyclodextrin Chemistry−preparation and application, Chemical Industry Press, 2009、β−Cyclodextrin Inclusion Technique and Application, Medicine Innovation Research,2006, 3(3):31−33、Chem. Pharm. Bull,2006, 54(1)26−32)を参照のこと。本発明の別の態様は、このような化合物をシクロデキストリンで包接又はシクロデキストリン複合体形成させることによって、包接化合物又は複合体を形成し、それによって水溶性を改善し、バイオアベイラビリティを向上させることである。
【0016】
本発明によれば、上記のアセナフトヘテロ環式化合物のシクロデキストリン包接化合物は、以下の方法で調製することができる。
(1)所定量のシクロデキストリンを計量し、シクロデキストリンを水に添加し、次いで加熱撹拌し、飽和溶液を生成させるステップ(ここで、シクロデキストリンは、β−シクロデキストリン、γ−シクロデキストリン、2−ヒドロキシプロピル−β−シクロデキストリン、メチル−β−シクロデキストリン、又はヒドロキシプロピル−γ−シクロデキストリンである)、
(2)所定量の包接用アセナフトヘテロ環式化合物を計量するステップ(ここで、化合物とシクロデキストリンのモル比は1:3〜10である)、
(3)包接用アセナフトヘテロ環式化合物を、5〜10mg/mLの濃度でアセトンに溶解させ、得られた溶液をシクロデキストリンの水溶液に線状に滴下し、次いで沈澱が析出するまで、40〜65℃の温度で1〜6日加熱撹拌するステップ、
(4)上記の溶液を濾過し、濾過ケーキを少量の蒸留水で洗浄し、次いで遊離した状態の化合物を少量のアセトンで洗い流し、50〜70℃の温度で24〜48時間真空乾燥した後、上記アセナフトヘテロ環式化合物のシクロデキストリン包接化合物を得るステップ。
【0017】
本発明によれば、上記のアセナフトヘテロ環式化合物のシクロデキストリン複合体は、以下の方法で調製することができる。
(1)乾燥シクロデキストリン及び複合体用アセナフトヘテロ環式化合物を計量するステップ(ここで、シクロデキストリンとアセナフトヘテロ環式化合物のモル比は1:1.5〜3であり、シクロデキストリンは、β−シクロデキストリン、γ−シクロデキストリン、2−ヒドロキシプロピル−β−シクロデキストリン、メチル−β−シクロデキストリン、又はヒドロキシプロピル−γ−シクロデキストリンである)、
(2)複合体用アセナフトヘテロ環式化合物をN,N’−カルボニルジイミダゾールと1:1〜2のモル比で混合し、次いで複合体用アセナフトヘテロ環式化合物のDMSO溶液中の濃度が0.2〜0.5mmol/mLとなるまでDMSOに溶解させ、次いで室温で30〜60分間撹拌するステップ、
(3)ステップ(1)で計量したシクロデキストリン及び0.1〜0.3mmol/mLのトリエタノールアミンをDMSO溶液に添加し、室温で18〜24時間反応させるステップ、
(4)0.50〜1.0mg/mLのアセトンをステップ(3)の反応系に添加し、減圧条件下で反応系から析出物を分離させるステップ、
(5)濾過し、精製して、上記アセナフトヘテロ環式化合物のシクロデキストリン複合体を得るステップ。
【0018】
精製は、イオン交換カラムによって実施することができる。条件は、吸着剤としてダイアイオン(DIAION)(商標)HP−20イオン交換樹脂、及び分割にメタノールと水との混合溶媒を採用することである。混合溶媒中のメタノールの量を徐々に増加させ、薄層クロマトグラフィーを使用して、溶離プロセスを試験する。溶離剤の水中のメタノールの量が40〜55%に到達すると、いくつかの複合体が溶離によって得られる。得られた溶離液中のメタノールを減圧下で遠心脱水した後、残留溶液を凍結乾燥して、複合体を得る。
【0019】
本発明によれば、得られたアセナフトヘテロ環式化合物のシクロデキストリン包接化合物又はシクロデキストリン複合体は、相溶解度法、蛍光分光法、円二色性分光法、赤外分光光度法、熱重量分析、走査電子顕微鏡、及びH核磁気共鳴、質量分析法、単結晶X線回折法などの特性決定技法で特性決定を行い、包接体又は複合体形成の前及び後のアセナフトヘテロ環式化合物の溶解度、Mcl−1及びBcl−2に対する阻害が比較のために検出される。その結果から、シクロデキストリンを使用することによる処理方法は、アセナフトヘテロ環式化合物の水への溶解度を大幅に増大させ、Bcl−2及びMcl−1タンパク質に対する阻害能力をある程度強化することが実証される。製剤を使用して、BH3類似体であるBcl−2ファミリータンパク質の阻害剤を調製することもでき、さらには標的指向性の高い抗腫瘍薬を調製することができる。
【0020】
したがって、本発明の別の目的は、BH3類似体であるBcl−2ファミリータンパク質の阻害剤の製造における上記のアセナフトヘテロ環式化合物、そのシクロデキストリン包接化合物及びシクロデキストリン複合体の使用を実現することである。
【0021】
上記のBcl−2ファミリータンパク質の阻害剤又は対応する抗腫瘍薬は、単一化合物の製剤、化合物のシクロデキストリン包接化合物又はシクロデキストリン複合体の製剤、或いは有効用量のアセナフトヘテロ環式化合物、又はそのシクロデキストリン包接化合物、複合体と、適量の医薬品添加剤とを含む組成物とすることができ、医薬の需要及び従来の医薬製剤方法に従って所望の製剤に作製することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
本発明においては、14の図面がある。
【図1】Bcl−2タンパク質に競合的に結合する化合物及びFAM−Bidペプチドの蛍光偏光法で検出された動態曲線である。
【図2】化合物(種々の濃度)によって干渉された、Bcl−2とBaxとの細胞レベルでの相互作用を示す図である。
【図3】化合物によって(種々の作用時間)干渉された、Bcl−2とBaxとの細胞レベルでの相互作用を示す図である。
【図4】Baxタンパク質とコンドリオソームの共局在で検出される、化合物のBH3類似性のポジティブな結果を示す図である。
【図5】Baxタンパク質とコンドリオソームの共局在で検出される、化合物のBH3類似性のネガティブな結果を示す図である。
【図6】BAX/BAKに応じた、化合物の細胞毒性の結果を示す図である(ゴシポールは非特異的比較である)。
【図7】化合物のMcl−1に対する阻害を示すウェスタンブロッティング電気泳動図である。
【図8】化合物のBcl−2に対する阻害を示すウェスタンブロッティング電気泳動図である。
【図9】化合物3−チオモルホリン−8−オキソ−8H−アセナフト[1,2−b]ピロール−9−カルボニトリルのMcl−1タンパク質に対する阻害を示す半定量曲線である。
【図10】化合物3−チオモルホリン−8−オキソ−8H−アセナフト[1,2−b]ピロール−9−カルボニトリルのBcl−2タンパク質に対する阻害を示す半定量曲線である。
【図11】アセナフトヘテロ環式化合物並びにそのシクロデキストリン包接化合物及びシクロデキストリン複合体のMcl−1及びBcl−2に対する阻害を示すウェスタンブロッティング電気泳動図である。
【図12】化合物3−チオモルホリン−8−オキソ−8H−アセナフト[1,2−b]ピロール−9−カルボニトリル及びその包接化合物のMcl−1タンパク質に対する阻害を示す半定量曲線である。
【図13】化合物3−チオモルホリン−8−オキソ−8H−アセナフト[1,2−b]ピロール−9−カルボニトリル及びその包接化合物のBcl−2タンパク質に対する阻害を示す半定量曲線である。
【図14】インビボ腫瘍モデルにおける化合物及びその包接化合物のMcl−1に対する阻害を示すウェスタンブロッティング電気泳動図である(図中、1はブランク対照群、2は対照群(1)、3は対照群(2)、4は実験群(1)、5は実験群(2)、6は実験群(3)、7は実験群(4))。
【発明を実施するための形態】
【0023】
次に、添付図面を引用しながら、本発明の様々な実施形態をさらに詳細に説明する。
【0024】
パートI:アセナフトヘテロ環式化合物の調製及び特性決定
【0025】
実施例1:8−オキソ−8H−アセナフト[1,2−b]ピロール−9−カルボニトリルの合成及び特性決定
500mLの一口フラスコに、0.1molのアセナフテンキノン、0.11molのマロノニトリル、及び150mLのアセトニトリルを順に添加した。反応混合物を、不透明な淡黄色から透明な橙赤色に変色するまで4時間加熱還流した。反応混合物を室温に冷却した後、濾過し、橙赤色の濾過ケーキを回収して、1−ジシアノメチレン−2−オキソ−アセナフテンを得た。500mLの一口フラスコに、0.05molの1−ジシアノメチレン−2−オキソ−アセナフテン、1gのK2CO3、及び200mLのアセトニトリルを順に添加、反応混合物を4時間加熱還流した。大量の黄土固体が析出した。濾過し、濾過ケースを回収し、大量の温水で洗浄し、次いで乾燥し、計量した。収率は95%であった。
【0026】
融点275〜277℃;1H NMR(400M,DMSO):δ 8.705(d,J=8.0Hz,1H)、8.662(d,J=8.8Hz,1H)、8.631(d,J=8.0Hz,1H)、8.411(d,J=8.0Hz,1H)、8.06(t,J=8.0Hz,1H)、7.984(t,J=8.0Hz,1H)。
【0027】
実施例2:3−(4−メチルフェノキシ)−8−オキソ−8H−アセナフト[1,2−b]ピロール−9−カルボニトリルの合成及び特性決定
1gの8−オキソ−8H−アセナフト[1,2−b]ピロール−9−カルボニトリル及び0.47gのp−メチルフェノールを、50mLのアセトニトリルに添加した。混合物を3時間還流撹拌した。溶媒の一部を蒸発させた。クロマトグラフカラムにより、収率40%で生成物3−(4−メチルフェノキシ)−8−オキソ−8H−アセナフト[1,2−b]ピロール−9−カルボニトリルが得られた。
【0028】
構造決定結果:融点232〜233℃;1H NMR(400M,CDCl3):δ 8.916(dd,J=8.8Hz,1H)、8.623(d,J=8.8Hz,1H)、8.447(d,J=6.4Hz,1H)、7.859(t,J=8.0Hz,1H)、8.324(d,J=8.4Hz,2H)、7.101(d,J=8.4Hz,2H)、7.016(d,J=8.4Hz,1H)、3.256(s,3H)。
【0029】
実施例3:3−フェノキシ−8−オキソ−8H−アセナフト[1,2−b]ピロール−9−カルボニトリル(A)及び4−フェノキシ−8−オキソ−8H−アセナフト[1,2−b]ピロール−9−カルボニトリル(B)の合成及び特性決定
0.93gのフェノキシアセナフテンキノン及び0.3gのマロノニトリルを計量し、ジクロロメタンに溶解した。混合物をシリカゲルカラムに加え、急速に溶離した。混合物をすべて通過させた後、カラムを遠心脱水した。赤色固体が重量10.1g及び収率92%で得られた。0.08gのK2CO3及び20mLのアセトニトリルを、0.6gの3−フェノキシ−(2−オキソ−2H−アセナフテン)−マロノニトリルに添加した。混合物を3時間加熱還流した。反応が終了した後、反応溶液を遠心脱水し、クロマトグラフカラム(CH2Cl2:石油エーテル=2:1)で分離して、橙赤色固体を得た。異性体比は、核磁気共鳴で試験して1:0.3であった。得られた異性体を液相分離で分離して、2つの異性体を得た。
【0030】
第1の成分A:融点265〜267℃;1H NMR(400M,CDCl3):δ 8.927(d,J=8.0Hz,1H)、8.630(d,J=8.8Hz,1H)、8.450(d,J=7.2Hz,1H)、7.876(t,J=8.0Hz,1H)、7.754(t,J=8.0Hz,2H)、7.392(t,J=7.6Hz,1H)、7.233(d,J=7.6Hz,2H)、7.028(d,J=8.4Hz,1H)。
【0031】
第2の成分B:融点282〜283℃;1H NMR(400M,CDCl3):δ 9.047(dd,J=8.0Hz,1H)、8.850(dd,J=7.6Hz,1H)、8.213(d,J=8.2Hz,1H)、7.999(t,J=8.0Hz,1H)、7.561(t,J=8.0Hz,2H)、7.410(t,J=7.0Hz,1H)、7.251(d,J=8.8Hz,2H)、6.899(d,J=8.4Hz,1H)。
【0032】
実施例4:3−(p−メチルフェノキシ)−8−オキソ−8H−アセナフト[1,2−b]ピロール−9−カルボニトリル(A)及び4−(p−メチルフェノキシ)−8−オキソ−8H−アセナフト[1,2−b]ピロール−9−カルボニトリル(B)の合成及び特性決定
1gのp−メチルフェノキシアセナフテンキノン及び0.3gのマロノニトリルを、ジクロロメタンに溶解した。混合物をシリカゲルカラムに加え、急速に溶離した。混合物をすべて通過させた後、カラムを遠心脱水した。赤色固体が重量11.2g及び収率93%で得られた。0.08gのK2CO3及び20mLのアセトニトリルを、0.7gの3−フェノキシ−(2−オキソ−2H−アセナフテン)−マロノニトリルに添加した。混合物を4時間加熱還流した。反応が終了した後、反応溶液を遠心脱水し、クロマトグラフカラム(CH2Cl2:石油エーテル=1:1)で分離して、橙赤色固体を得た。異性体比は、核磁気共鳴で試験して1:0.4であった。得られた異性体を液相分離で分離して、2つの異性体を得た。
【0033】
第1の成分A:融点232〜233℃;1H NMR(400M,CDCl3):δ 8.916(dd,J=8.8Hz,1H)、8.623(d,J=8.8Hz,1H)、8.447(d,J=6.4Hz,1H)、7.859(t,J=8.0Hz,1H)、8.324(d,J=8.4Hz,2H)、7.101(d,J=8.4Hz,2H)、7.016(d,J=8.4Hz,1H)、2.351(s,3H)。
【0034】
第2の成分B:融点258〜260℃;1H NMR(400M,CDCl3):δ 8.987(dd,J=8.8Hz,1H)、8.858(d,J=8.8Hz,1H)、8.208(d,J=8.4Hz,1H)、7.986(t,J=8.0Hz,1H)、8.333(d,J=8.4Hz,2H)、7.112(d,J=8.4Hz,2H)、6.889(d,J=8.4Hz,1H)、2.349(s,3H)。
【0035】
実施例5:3−(m−メチルフェニルチオ)−8−オキソ−8H−アセナフト[1,2−b]ピロール−9−カルボニトリル(A)及び4−(m−メチルフェニルチオ)−8−オキソ−8H−アセナフト[1,2−b]ピロール−9−カルボニトリル(B)の合成及び特性決定
1gのm−メチルフェニルチオアセナフテンキノン及び0.3gのマロノニトリルを、ジクロロメタンに溶解した。混合物をシリカゲルカラムに加え、急速に溶離した。混合物をすべて通過させた後、カラムを遠心脱水した。赤色固体が重量12.2g及び収率91%で得られた。0.08gのK2CO3及び20mLのアセトニトリルを、0.7gの2−フェニルチオ−(2−オキソ−2H−アセナフテン)−マロノニトリルに添加した。混合物を4時間加熱還流した。反応が終了した後、反応溶液を遠心脱水し、クロマトグラフカラム(CH2Cl2:石油エーテル=1:1)で分離して、赤色固体を得た。異性体比は、核磁気共鳴で検査して1:0.25であった。得られた異性体を液相分離で分離して、2つの異性体を得た。
【0036】
第1の成分A:融点255〜257℃;1H NMR(400M,CDCl3):δ 8.826(dd,J=8.8Hz,1H)、8.513(d,J=8.8Hz,1H)、8.327(d,J=6.4Hz,1H)、7.659(t,J=8.0Hz,1H)、8.014(d,J=8.4Hz,2H)、6.901(d,J=8.4Hz,2H)、6.896(d,J=8.4Hz,1H)、2.353(s,3H)。
【0037】
第2の成分B:融点269〜271℃;1H NMR(400M,CDCl3):δ 8.877(dd,J=8.8Hz,1H)、8.748(d,J=8.8Hz,1H)、8.108(d,J=8.4Hz,1H)、7.856(t,J=8.0Hz,1H)、8.123(d,J=8.4Hz,2H)、6.892(d,J=8.4Hz,2H)、6.679(d,J=8.4Hz,1H)、2.355(s,3H)。
【0038】
実施例6:6−(チエニル−2−メトキシ)−8−オキソ−8H−アセナフト[1,2−b]ピロール−9−カルボニトリルの合成及び特性決定
1gの8−オキソ−8H−アセナフト[1,2−b]ピロール−9−カルボニトリル及び0.5gのチエニルメタノールを、50mLのアセトニトリルに添加した。混合物を3時間還流撹拌した。溶媒の一部を蒸発させた。クロマトグラフカラムにより、収率45%で生成物6−(2−チエニルメトキシ)−8−オキソ−8H−アセナフト[1,2−b]ピロール−9−カルボニトリルが得られた。
【0039】
融点241〜243℃;1H NMR(400M,CDCl3):δ 8.685(dd,J=8.7Hz,1H)、8.433(d,J=8.7Hz,1H)、8.014(d,J=6.4Hz,1H)、7.75(t,J=8.0Hz,1H)、7.251(t,J=8.4Hz,1H)、7.181(d,J=8.4Hz,1H)、6.985(d,J=8.4Hz,1H)、6.232(d,J=8.4Hz,1H)、3.454(s,2H)。
【0040】
実施例7:3−(3−フルオロフェニルホルミル)−8−オキソ−8H−アセナフト[1,2−b]ピロール−9−カルボニトリル(A)及び4−(3−フルオロフェニルホルミル)−8−オキソ−8H−アセナフト[1,2−b]ピロール−9−カルボニトリル(B)の合成及び特性決定
1gのm−フルオロフェニルカルボニルアセナフテンキノン及び0.4gのマロノニトリルを、ジクロロメタンに溶解した。混合物をシリカゲルカラムに加え、急速に溶離した。混合物をすべて通過させた後、カラムを遠心脱水した。緋色固体が重量10.5g及び収率85%で得られた。0.08gのK2CO3及び20mLのアセトニトリルを、0.8gの2−フルオロカルボニル−(2−オキソ−2H−アセナフテン)−マロノニトリルに添加し、混合物を3時間加熱還流した。反応が終了した後、反応溶液を遠心脱水し、クロマトグラフカラム(CH2Cl2:石油エーテル=2:1)で分離して、緋色固体を得た。異性体比は、核磁気共鳴で検査して1:0.2であった。得られた異性体を液相分離で分離して、2つの異性体を得た。
【0041】
第1の成分A:融点285〜287℃;1H NMR(400M,CDCl3):δ 8.726(dd,J=8.8Hz,1H)、8.423(d,J=8.8Hz,1H)、8.015(d,J=6.4Hz,1H)、7.598(t,J=8.0Hz,1H)、8.003(d,J=8.4Hz,2H)、6.853(d,J=8.4Hz,2H)、6.756(d,J=8.4Hz,1H)。
【0042】
第2の成分B:融点269〜271℃;1H NMR(400M,CDCl3):δ 8.568(dd,J=8.8Hz,1H)、8.478(d,J=8.8Hz,1H)、8.006(d,J=8.4Hz,1H)、7.568(t,J=8.0Hz,1H)、8.045(d,J=8.4Hz,2H)、6.908(d,J=8.4Hz,2H)、6.596(d,J=8.4Hz,1H)。
【0043】
実施例8:3−(N−フェニルホルミル)−8−オキソ−8H−アセナフト[1,2−b]ピロール−9−カルボニトリル(A)及び4−(N−フェニルホルミル)−8−オキソ−8H−アセナフト[1,2−b]ピロール−9−カルボニトリル(B)の合成及び特性決定
1gのフェニルアミドアセナフテンキノン及び0.4gのマロノニトリルを、ジクロロメタンに溶解した。混合物をシリカゲルカラムに加え、急速に溶離した。混合物をすべて通過させた後、カラムを遠心脱水した。緋色固体が重量11.2g及び収率86%で得られた。0.08gのK2CO3及び20mLのアセトニトリルを、0.8gのフェニルアミド−(2−オキソ−2H−アセナフテン)−マロノニトリルに添加した。混合物を3時間加熱還流した。反応が終了した後、反応溶液を遠心脱水し、クロマトグラフカラム(CH2Cl2:石油エーテル=2:1)で分離して、緋色固体を得た。異性体比は、核磁気共鳴で検査して1:0.4であった。得られた異性体を液相分離で分離して、2つの異性体を得た。
【0044】
第1の成分A:融点281〜283℃;1H NMR(400M,CDCl3):δ 9.112(d,J=8.0Hz,1H)、8.945(d,J=8.8Hz,1H)、8.682(d,J=7.2Hz,1H)、8.452(t,J=8.0Hz,1H)、8.312(s,1H)、7.986(t,J=8.0Hz,2H)、7.627(t,J=7.6Hz,1H)、7.433(d,J=7.6Hz,2H)、7.241(d,J=8.4Hz,1H)。
【0045】
第2の成分B:融点293〜294℃;1H NMR(400M,CDCl3):δ 9.213(dd,J=8.0Hz,1H)、9.012(dd,J=7.6Hz,1H)、8.685(d,J=8.2Hz,1H)、8.428(t,J=8.0Hz,1H)、8.320(s,1H)、7.896(t,J=8.0Hz,2H)、7.675(t,J=7.0Hz,1H)、7.531(d,J=8.8Hz,2H)、7.015(d,J=8.4Hz,1H)。
【0046】
実施例9:3−(テトラヒドロ−2H−ピラニル−4−オキソ)−8−オキソ−8H−アセナフト[1,2−b]ピロール−9−カルボニトリル(A)及び4−(テトラヒドロ−2H−ピラニル−4−オキソ)−8−オキソ−8H−アセナフト[1,2−b]ピロール−9−カルボニトリル(B)の合成及び特性決定
1.0gのテトラヒドロピラニルオキシルアセナフテンキノン及び0.4gのマロノニトリルを、ジクロロメタンに溶解した。混合物をシリカゲルカラムに加え、急速に溶離した。混合物をすべて通過させた後、カラムを遠心脱水した。緋色固体が重量11.2g及び収率86%で得られた。0.08gのK2CO3及び20mLのアセトニトリルを、0.8gの4−テトラヒドロピラニル−(2−オキソ−2H−アセナフテン)−マロノニトリルに添加した。混合物を9時間加熱還流した。反応が終了した後、反応溶液を遠心脱水し、クロマトグラフカラム(CH2Cl2:石油エーテル=2:1)で分離して、深紅色固体を得た。異性体比は、核磁気共鳴で検査して1:0.4 であった。得られた異性体を液相分離で分離して、2つの異性体を得た。
【0047】
第1の成分A:融点230〜231℃;1H NMR(400M,CDCl3):δ 8.601(d,J=8.0Hz,1H)、8.134(d,J=8.8Hz,1H)、7.945(dd,J=8.0Hz,1H)、7.452(d,J=8.4Hz,1H)、3.822(t,J=4.8Hz,4H)、3.815(t,J=5.0Hz,4H)、3.766(t,J=5.2Hz,1H)。
【0048】
第2の成分B:融点242〜244℃;1H NMR(400M,CDCl3):δ 8.568(d,J=8.0Hz,1H)、8.115(d,J=8.8Hz,1H)、7.856(dd,J=8.0Hz,1H)、7.326(d,J=8.4Hz,1H)、3.796(t,J=4.8Hz,4H)、3.807(t,J=5.0Hz,4H)、3.791(t,J=5.2Hz,1H)。
【0049】
実施例10:3−フェノキシ−8−オキソ−8H−アセナフト[1,2−b]ピロール−9−カルボン酸の合成及び特性決定
50mlの一口フラスコに、60mLの濃硫酸又は25mLの発煙硫酸を添加した。それに、0.05molの3−フェノキシ−8−オキソ−8H−アセナフト[1,2−b]ピロール−9−カルボニトリルを、0〜5℃の温度でバッチごとに1時間以内で添加した。その後、反応を、室温でさらに16時間実施した。得られた反応混合物は、粘性で深茶褐色であった。次いで、得られた混合物を砕氷に徐々に滴下し、激しく撹拌した。その後、混合物を静置し、濾過した。濾過ケーキが中性になるまで、大量の水で洗浄した。濾過ケーキを乾燥して、濃黄色生成物を収率96%で得た。
【0050】
融点248℃;1H NMR(400M,CDCl3):δ 11.42(s,1H)、8.965(dd,J=8.0Hz,1H)、8.750(dd,J=7.8Hz,1H)、8.313(d,J=8.2Hz,1H)、7.999(t,J=8.2Hz,1H)、7.561(t,J=8.2Hz,2H)、7.410(t,J=7.0Hz,1H)、7.251(d,J=8.8Hz,2H)、6.963(d,J=8.4Hz,1H)。
【0051】
実施例11:3−フェノキシ−8−オキソ−8H−アセナフト[1,2−b]ピロール−9−カルボキシラートの合成及び特性決定
100mlの一口フラスコに、0.01molの3−フェノキシ−8−オキソ−8H−アセナフト[1,2−b]ピロール−9−カルボニトリル、溶媒として50mlのアセトニトリル、脱酸試薬として0.02mmolのK2CO3、及び10倍を超すヨードメタンを順に添加した。窒素保護下で、混合物を40℃まで加熱し、反応を15時間続けた。アセトニトリルを減圧条件下で蒸発させ、ジクロロメタンを添加することによって、反応物質を完全に溶解した。濾過した後、濾液を遠心脱水して、黄褐色粗生成物を得た。シリカゲルカラムクロマトグラフ分離(展開剤:ジクロロメタン−メタノール=40:1)により、濃黄色生成物が得られた。収率は92%であった。
【0052】
融点213℃;1H NMR(400M,CDCl3):δ 9.102(d,J=7.2Hz,1H)、8.965(dd,J=8.0Hz,1H)、8.850(dd,J=7.8Hz,1H)、8.233(d,J=8.2Hz,1H)、7.856(t,J=8.2Hz,1H)、7.453(t,J=8.2Hz,2H)、7.350(t,J=7.2Hz,1H)、7.325(d,J=8.4Hz,2H)、3.213(s,3H)。
【0053】
実施例12:3−フェノキシ−8−オキソ−8H−アセナフト[1,2−b]ピロール−9−N−tert−ブチルアミドの合成及び特性決定
100mlの一口フラスコに、0.01molの3−フェノキシ−8−オキソ−8H−アセナフト[1,2−b]ピロール−9−カルボン酸、溶媒として50mlのDMF、0.02mmolのトリエチルアミン、0.01mmolの(EtO)2P(=O)CN、及び10倍を超えるtert−ブチルアミドを順に添加し、室温で1時間反応させた。次いで、反応が終了した後、黄色固体が得られた。収率は85%であった。融点237℃;1H NMR(400M,CDCl3):δ 8.746(dd,J=8.0Hz,1H)、8.650(dd,J=7.8Hz,1H)、8.213(d,J=8.2Hz,1H)、7.846(t,J=8.0Hz,1H)、7.352(t,J=8.0Hz,2H)、7.210(t,J=7.4Hz,1H)、7.051(d,J=8.4Hz,2H)、6.963(d,J=8.4Hz,1H)、3.721(s,3H)、3.113(m,2H)、1.568(dd,J=5.6Hz,2H)、1.421(m,J=5.7Hz,2H)、0.968(t,J=6.2Hz,3H)。
【0054】
実施例13:3−(4−ブロモフェニルチオ)−8−オキソ−8H−アセナフト[1,2−b]ピロール−9−カルボニトリルの合成及び特性決定
1gの8−オキソ−8H−アセナフト[1,2−b]ピロール−9−カルボニトリル及び3.2gの4−ブロモチオフェノールを、50mLのアセトニトリルに添加し、室温で2時間反応させた。溶媒の一部を蒸発させた。クロマトグラフカラムにより、収率40%で化合物3−(4−ブロモフェニルチオ)−8−オキソ−8H−アセナフト[1,2−b]ピロール−9−カルボニトリルが得られた。
【0055】
融点262〜263℃;1H NMR(400M,CDCl3):δ 8.852(dd,J=8.8Hz,1H)、8.813(d,J=8.8Hz,1H)、8.015(d,J=6.4Hz,1H)、7.945(t,J=8.0Hz,1H)、7.560(d,J=8.4Hz,2H)、7.096(d,J=8.4Hz,2H)、7.006(d,J=8.4Hz,1H)。
【0056】
実施例14:3,6−ジ(4−ブロモフェニルチオ)−8−オキソ−8H−アセナフト[1,2−b]ピロール−9−カルボニトリルの合成及び特性決定
1gの8−オキソ−8H−アセナフト[1,2−b]ピロール−9−カルボニトリル及び6.5gの4−ブロモチオフェノールを、50mLのアセトニトリルに添加し、室温で36時間反応させた。溶媒の一部を蒸発させた。クロマトグラフカラムにより、収率20%で化合物3,6−ジ(4−ブロモフェニルチオ)−8−オキソ−8H−アセナフト[1,2−b]ピロール−9−カルボニトリルが得られた。
【0057】
融点262〜263℃;1H NMR(400M,CDCl3):δ 8.815(dd,J=8.8Hz,1H)、8.671(d,J=8.8Hz,1H)、7.881(t,J=6.4Hz,1H)、7.551(q,J=8.0Hz,4H)、7.215(q,J=8.4Hz,4H)、6.472(s,1H)。
【0058】
実施例15:6−(4−アミノフェニルチオ)−8−オキソ−8H−アセナフト[1,2−b]ピロール−9−カルボニトリルの合成及び特性決定
1gの8−オキソ−8H−アセナフト[1,2−b]ピロール−9−カルボニトリル及び2.5gの4−アミノチオフェノールを、50mLのアセトニトリルに添加し、室温で2時間反応させた。溶媒の一部を蒸発させた。クロマトグラフカラムにより、収率30%で化合物6−(4−アミノフェニルチオ)−8−オキソ−8H−アセナフト[1,2−b]ピロール−9−カルボニトリルが得られた。融点255〜257℃;1H NMR(400M,CDCl3):δ 8.832(dd,J=8.8Hz,1H)、8.801(d,J=8.8Hz,1H)、7.985(d,J=6.4Hz,1H)、7.925(t,J=8.0Hz,1H)、7.570(d,J=8.4Hz,2H)、6.997(d,J=8.4Hz,2H)、7.006(d,J=8.4Hz,1H)、6.271(s,2H)。
【0059】
実施例16:3,6−ジ(4−アミノフェニルチオ)−8−オキソ−8H−アセナフト[1,2−b]ピロール−9−カルボニトリルの合成及び特性決定
1gの8−オキソ−8H−アセナフト[1,2−b]ピロール−9−カルボニトリル及び5.0gの4−アミノチオフェノールを、50mLのアセトニトリルに添加し、室温で30時間反応させた。溶媒の一部を蒸発させた。クロマトグラフカラムにより、収率25%で化合物3,6−ジ(4−アミノフェニルチオ)−8−オキソ−8H−アセナフト[1,2−b]ピロール−9−カルボニトリルが得られた。融点288〜290℃;1H NMR(400M,CDCl3):δ 8.835(dd,J=8.8Hz,1H)、8.682(d,J=8.8Hz,1H)、7.973(t,J=6.4Hz,1H)、7.581(q,J=8.0Hz,4H)、7.234(q,J=8.4Hz,4H)、6.651(s,1H),6.269(s,4H)。
【0060】
パートII:アセナフトヘテロ環式化合物のシクロデキストリン包接化合物及びシクロデキストリン複合体の調製及び特性決定
【0061】
このパートは、アセナフトヘテロ環式化合物のシクロデキストリン包接化合物及びシクロデキストリン複合体の調製及び特性決定を含む。用いた特性決定方法には、紫外分光法、蛍光分光法、円二色性分光法、赤外分光法、熱重量分析、及びSEMが含まれる。特別な説明のない限り、このパートにおける装置及び検出方法については以下の資料を参照のこと。
相溶解度図:J. Agric. Food Chem.、2007年、55巻(9号)、3535〜3539頁に記載の方法に従って作図。
紫外分光法:HP8453(米国)、検出方法については、Journal of Photochemistry and Photobiology A:Chemistry 173巻(2005年)、319〜327頁を参照のこと。
蛍光分光法:PTI−700(米国)、検出方法については、J Fluoresc(2008年)、18巻:1103〜1114頁を参照のこと。
円二色性分光法:J−810(日本)、検出方法については、J. Phys. Chem. B、2006年、110巻(13号)、7044〜7048頁を参照のこと。
赤外分光法:FT/IR−430(日本)、検出方法については、Mol. Pharmaceutics、2008年、5巻(2号)、358〜363頁を参照のこと。
熱重量分析:TGA/SDT851e(スイス)、検出方法については、Mol. Pharmaceutics、2008年、5巻(2号)、358〜363頁を参照のこと。
SEM:JSM−5600LV(日本)、検出方法については、J. Med. Chem. 2003年、46巻、4634〜4637頁を参照のこと。
H NMR:ブルーカーアバンス(Bruker Avance)II400M(スイス)、検出条件は、(溶媒CDCl3、400M)である。
質量分析:GC−Tof MS(英国)、検出方法については、J. Org. Chem. 2000年、65巻、9013〜9021頁を参照のこと。
単結晶X線回折:XD−3A(日本)、検出方法については、J. Org. Chem. 2008年、73巻、8305〜8316頁、8305を参照のこと。
実施例17:3−チオモルホリニル−8−オキソ−8H−アセナフト[1,2−b]ピロール−9−カルボニトリルのβ−シクロデキストリン包接化合物の調製及び特性決定
【0062】
最初に、二次再結晶し、完全に乾燥させたβ−シクロデキストリン1.85g(1.63mMol)を水100mLに添加し、次いで完全に溶解するまで加熱撹拌した。検出対象化合物0.179g(0.54mMol)をアセトン35mLで溶解させた後、β−シクロデキストリンの水溶液に線状に滴下した。混合物を60℃の温度で3日間加熱撹拌した。その結果、若干の析出物がそれから分離した。濾過し、濾過ケーキを少量の蒸留水で洗浄した。遊離した状態の化合物を少量のアセトンで洗い出した。50℃の温度で24時間真空乾燥した後、藤色固体が得られた。
【0063】
紫外分光法を用いた検出結果は、β−シクロデキストリンの濃度の増大と共に、化合物の紫外吸収及び溶解度が増大することを示した。このことから、対応する包接化合物が形成されたことがわかる。
【0064】
相溶解度図の結果から、化合物の溶解度が0.21μMから0.36μMに1.5倍増大したことを知ることができる。
【0065】
蛍光分光法を用いた検出結果は、検出対象化合物の濃度が一定不変に維持される条件下で、β−シクロデキストリンの濃度の増大と共に、蛍光スペクトルの値が増大することを示した。蛍光発光波長は変化しなかったが、化合物がシクロデキストリンの空洞に入り込んだ後、空洞における環境変化が、励起状態の化合物分子を大量の分子及び消光剤との接触から保護したので、強度は増大した。蛍光スペクトルの変化は、化合物とβ−シクロデキストリンが対応する包接化合物を形成したことを示唆した。
【0066】
円二色性分光法を用いた検出結果は、β−シクロデキストリンの存在下で、検出対象化合物の誘導円二色性が、260nm〜375nmにおいて強い正のコットン効果を示し、400nm〜500nmにおいて弱い正のコットン効果を示すことを示した。これは、化合物がβ−シクロデキストリンのキラルな空洞に入り込んだ後に誘導円二色性効果が生じたことを示唆し、このことから、包接化合物が形成されたことが示された。
【0067】
赤外分光法を用いた検出結果は、β−シクロデキストリンが3410.18及び1029.22cm−1において強い吸収帯を示し、指紋領域の579〜911cm−1において一連の特性吸収帯を示すことを示した。化合物は、2218.55cm−1及び1625.08cm−1において鋭い特性吸収帯を2本示した。赤外スペクトルでは、2219.13cm−1及び1625.48cm−1における特性吸収ピークの強度が低下し、わずかな変位が生じた。一方では、1706cm−1に新しい鋭いピークが現れ、このことから、包接化合物が形成されたことが示された。
【0068】
熱重量分析を用いた検出結果は、β−シクロデキストリンが298℃において変曲点を示し、分解し始めることを示した。しかし、β−シクロデキストリンとは異なり、包接化合物は269℃で変曲点を示し、分解し始めた。これによって、包接化合物が形成されたことが示された。シクロデキストリン含有量は73.1%であった。したがって、包接モデルは1:1であった。
【0069】
SEMの結果から、3−チオモルホリニル−8−オキソ−8H−アセナフト[1,2−b]ピロール−9−カルボニトリルは針状の外観を有し、β−シクロデキストリンはより大きい四角形の外観を有することがわかった。化合物とβ−シクロデキストリンとの混合物のSEM図は、針と四角形の外観が混合したものであった。しかし、β−シクロデキストリン包接化合物は、規則正しいダイヤモンド状の外観を有し、上記の3種類とは明らかに異なるものであった。外観が明らかに異なることから、包接化合物が形成されたことを知ることができる。
【0070】
他の包接化合物の調製及び特性決定:
実施例17と同様にして、同じ一連の他の化合物を様々な種類のシクロデキストリンで包接させた。これらの生成物についても、包接化合物の形成を証明するために紫外分光法、蛍光分光法、円二色性分光法、赤外分光法、熱重量分析、及びSEMで特性決定を行った。相溶解度実験により、化合物及びその包接化合物について包接前及び後の溶解度の変化を比較のために検出した。詳細な結果を表1に示した。
【0071】
表1から、様々な種類のシクロデキストリンで包接されたアセナフトヘテロ環式化合物の溶解度は、化合物自体の溶解度と比較すると大幅に増大したことがわかる。
【表1】
【0072】
実施例18:3−チオモルホリニル−8−オキソ−8H−アセナフト[1,2−b]ピロール−9−カルボン酸のγ−シクロデキストリン複合体の調製及び特性決定
3−チオモルホリニル−8−オキソ−8H−アセナフト[1,2−b]ピロール−9−カルボン酸(0.263g、0.75mmol)及びN,N’−カルボニルジイミダゾール(0.179g)を、3mLのDMSOに溶解した。混合物を室温で30分間撹拌した後、γ−シクロデキストリン(0.6485g、0.5mmol)及び4mLのトリエタノールアミンを混合物に添加した。反応を室温で18時間続けた。反応が終了した後、約200mLのアセトンを試薬に添加した。減圧下で、析出物が分離した。得られた析出物をイオン交換カラムで精製し、得られた生成物をメタノールと水の混合溶媒で洗浄し、次いで溶液を凍結乾燥した後、0.42gの3−チオモルホリニル−8−オキソ−8H−アセナフト[1,2−b]ピロール−9−カルボン酸/γ−シクロデキストリンの複合体が収率25%で得られた。
【0073】
H核磁気共鳴及び質量スペクトルによる検出結果は、下記を示した。1H NMR(400M,D2O−d6)δ(ppm)8.87(d,J=8.5Hz,1H),8.58〜8.55(m,2H)、7.91(t,J=8.5Hz,1H)、7.39(d,J=8.5Hz,1H)、5.03(m,8H)、3.83(m,8H)、3.80(m,8H)、3.74(m,8H)、3.72〜3.70(m,3−N(CH2*)2(CH2)2S,4H)、3.59(m,8H)、3.52(m,8H)、2.98〜2.96(m,3−N(CH2)2(CH2)2*S,4H);(ESI)m/z(M+H)−(1629m/z)。
【0074】
単結晶X線回折で特性決定を行った結果から、γ−シクロデキストリンは12°及び15〜23°において一連の鋭いピークを示したが、化合物3−チオモルホリニル−8−オキソ−8H−アセナフト[1,2−b]ピロール−9−カルボン酸は11°及び7°において鋭いピークを示しただけであることがわかった。しかし、複合体では、6°において新しい鋭いピークが現れ、11°における鋭いピークは消失し、同時に複合体は、14〜18°及び20〜25°において一連の鋭いピークを示した。複合体は、化合物及びシクロデキストリンに比べて、新しい鋭いピークを有するものであった。これによって、複合体が形成されたことが示された。
【0075】
化合物3−チオモルホリニル−8−オキソ−8H−アセナフト[1,2−b]ピロール−9−カルボン酸は、γ−シクロデキストリンで複合体形成された後、水に対する溶解度が明らかに増大した。相溶解度曲線の当てはめ式は、Y=0.68+0.14×Xであった。化合物3−チオモルホリニル−8−オキソ−8H−アセナフト[1,2−b]ピロール−9−カルボン酸の水に対する溶解度は、元の0.68μMから11.2μMに16.5倍増大した。
【0076】
他の複合体の調製及び特性決定:
実施例18と同様にして、同じ一連の他の化合物を様々な種類のシクロデキストリンで複合体形成した。これらの生成物についても、複合体の形成を証明するために紫外分光法、蛍光分光法、円二色性分光法、赤外分光法、熱重量分析、及びSEMで特性決定を行った。相溶解度実験により、化合物及びその複合体について複合体形成前及び後の溶解度の変化を比較のために検出した。詳細な結果を表2に示した。
【0077】
表2から、様々な種類のシクロデキストリンで複合体形成されたアセナフトヘテロ環式化合物の溶解度は、化合物自体の溶解度と比較すると大幅に増大したことがわかる。
【表2】
【0078】
パートIII:アセナフトヘテロ環式化合物、そのシクロデキストリン包接化合物及び複合体の物理化学的特性の検出
【0079】
実施例19:蛍光偏光アッセイによる化合物のBH3類似度の検出
21個のアミノ酸を有するBid BH3ペプチド(アミノ酸:79〜99:QEDIIRNIARHLAQVGDSMDR)を合成し、6−カルボキシフルオレセインN−スクシンイミジルエステル(FAM)を蛍光性タグ(FAM−Bid)としてN末端において標識した。競合的結合実験で使用される反応系は、GST−Bcl−2タンパク質(40nM)又はMcl−1タンパク質であった。これを、FAM−Bidポリペプチド(5nM)と共に反応緩衝液(100mM K3PO4、pH 7.5、100μg/mlウシγアルブミン、0.02%アジ化ナトリウム)に溶解した。96ウェルプレートにおいて、100μLの反応系を各ウェルに添加した。次いでそこに、DMSOに溶解させた異なる濃度の検出対象である3−チオモルホリニル−8−オキソ−8H−アセナフト[1,2−b]ピロール−9−カルボニトリル母液1μLを、最終濃度が実験計画の要件を満たすまで添加した。一方、2つの対照群を設置した。反応系を含む一群は、Bcl−2又はMcl−1及びFAM−Bidを含有するだけであり(阻害率0%に相当)、反応系を含む他群は、FAM−Bidペプチドを含有するだけである。インキュベーションを4時間行った後、96ウェルプレートを酵素標識計器で検出した。530nmの波長によって励起され、発生させた発光波長485nmにおいて、蛍光偏光値(mP)を試験した。Ki値を、計算式に従って演繹した。実験結果を図1に示した。化合物とBcl−2との競合的結合定数は310nMであった。
【0080】
上述された実験方法で、他の9種の化合物のBH3類似度を検出した。それらの化合物とBcl−2及びMcl−1タンパク質との結合定数もnMレベルであった。詳細な結果を表3に示した。
【表3】
【0081】
実施例20:細胞内蛍光偏光エネルギー移動(FRET)による化合物のBH3類似度の検出
2μgのBcl−2−CFP及びBax−YFPプラスミドを、リン酸カルシウム共沈法でHela細胞に別々に又は同時にトランスフェクトし、24時間後、細胞を6ウェルプレートに播種し(2×105細胞/ウェル)、そこに、DMSOに溶解させた検出対象化合物3−チオモルホリニル−8−オキソ−8H−アセナフト[1,2−b]ピロール−9−カルボニトリルを、最終濃度(2、5、10、及び15μM)が実現されるまで添加した。24時間後(図2を参照のこと)、細胞をPBSで3回洗浄した。蛍光値は、GENIOS蛍光酵素標識計器(TECAN、スイス)で検出された。時間依存的な実験において、トランスフェクトされた細胞を6ウェルプレートに播種し、その後、40μMの化合物をそれに添加した。3、6及び24時間後(図3)、蛍光強度をプレートリーダーで検出した。Bcl−2−CFPプラスミドだけをトランスフェクトさせた細胞群に関して、475nmの発光波長及び433nmの励起波長における値を記録した。Bax−YFPプラスミドのみをトランスフェクトさせた細胞群に関して、527nmの発光波長及び505nmの励起波長における値を記録した。Bcl−2−CFPとBax−YFPプラスミドを共トランスフェクトさせた細胞群に関して、527nm及び475の発光波長並びに433nmの励起波長における値を記録した。527nmと475nmの発光波長における蛍光強度の比がFRETであった。プラスミドを単独でトランスフェクトさせた対照群のFRETを1.0と設定した。これは、2つのタンパク質に関して蛍光偏光エネルギー移動が生じないことを意味した。共トランスフェクトされた細胞では、Bcl−2タンパク質とBaxタンパク質との相互作用により、FRETは2.0まで増大したが、2つのタンパク質間の相互作用への干渉が増大すると、FRETは、薬物濃度の増大及び時間と共に低減した。細胞生存能力をMTT法で検出した。実験結果を図2及び3に示した。化合物の濃度が2μMに到達すると、Bcl−2とBaxの相互作用は3時間後に干渉を受けるおそれがあり、その結果は濃度−時間依存的傾向を示した。
【0082】
他の7種の化合物も、上述された方法と同じ実験方法で検出され、化合物はすべて、細胞においてBH3−onlyタンパク質を刺激する機能を有し、様々な濃度及び時間の条件下でBcl−2とBaxの相互作用に明らかに干渉することができることが実験的に証明された。詳細な結果を表4に示した。
【0083】
ここで、濃度及び時間とは、検出された化合物が、その濃度でその時間、Bcl−2とBaxの相互作用に干渉したことを意味する。
【表4】
【0084】
実施例21:Baxタンパク質とコンドリオソームとの間の共局在性による化合物のBH3類似度の検出
リン酸カルシウム共沈法で、5μgのBax−YFPプラスミドをMCF−7細胞にトランスフェクトし、24時間後、細胞を6ウェルプレートに播種し(0.2×106細胞/ウェル)、10μMの検出対象化合物3−チオモルホリニル−8−オキソ−8H−アセナフト[1,2−b]ピロール−9−カルボニトリルをそれに添加した。6時間後、細胞をPBSで洗浄し、光を避けて50nMのMito Tracker Red CMXRos(コンドリオソーム特異的プローブ、赤色)で10分間インキュベートした。次いで、細胞をPBSで3回洗浄し、ラジアンス(Radiance)2000レーザー共焦点顕微鏡(Bio−Rad、米国)を用いて、蛍光像を走査した。一方、二波長走査を実施した。1つの波長は、Bax−YFPの緑色蛍光を走査するのに使用し、もう1つの波長は、コンドリオソームを示唆するためのCMXRosプローブの赤色蛍光を走査するのに使用した。二波長像を重ね合せることによって、共局在の状況が示された。Baxタンパク質がコンドリオソームに局在すると、図4に示すように緑色と赤色の蛍光が重なり合って、オレンジ色になった。比較のための図5から、BAXをコンドリオソームに移動するようにすることはできず、すなわち共局在化は成功しなかったことがわかった。
【0085】
他の8種の化合物を、上述された方法と同じ実験方法で検出した。その結果から、これらの化合物はすべて、BAXをコンドリオソームに移動させるようにする機能を有することがわかった。これによって、これらの化合物はすべて、細胞においてBH3−onlyタンパク質を刺激する機能を有することが示された。詳細な結果を表5に示した。ここで、濃度及び時間とは、検出された化合物が、その濃度及びその時間で、BH3−onlyタンパク質をシミュレーションし、BAXをコンドリオソームに移動させるようにすることを意味する。
【0086】
【表5】
【0087】
実施例22:BAX/BAKに応じた化合物の細胞毒性によるBH3類似体の特性に関する実験的試験
リン酸カルシウム共沈法で、3μgのBAX/BAK干渉プラスミドをMCF−7細胞にトランスフェクトし、24時間後、細胞を回収した。BAX及びBAKタンパク質がRNAを干渉した後の発現をウェスタン法で検出し、プラスミドをトランスフェクトしていない細胞群を同様に処理し、対照群と設定した。トランスフェクトされた細胞を96ウェルプレートに播種し(1×105細胞/ウェル)、プラスミドをトランスフェクトしていない細胞群の対照実験を並行して実施した。それに、検出対象化合物3−チオモルホリニル−8−オキソ−8H−アセナフト[1,2−b]ピロール−9−カルボニトリルを、実験前に設計された濃度勾配に従って添加した。48時間後、細胞生存能力をMTTで検出した。実験結果を図6に示した。並行して、ゴシポールを非特異的BH3類似体として処理した。その結果から、3−チオモルホリニル−8−オキソ−8H−アセナフト[1,2−b]ピロール−9−カルボニトリルは、BAX/BAKに対して絶対的に依存する細胞毒性を有することがわかった。
【0088】
他の8種の化合物(化合物(1)〜(8)と称する)も、上述された方法と同じ実験方法で検出した。その結果から、検出された化合物も、BAX/BAKに対する絶対的依存性という特性を有することがわかった。これらの化合物は、以下の通りである。
(1)8−オキソ−8H−アセナフト[1,2−b]ピロール−9−カルボニトリル、
(2)3−(4−ブロモフェニルチオ)−8−オキソ−8H−アセナフト[1,2−b]ピロール−9−カルボニトリル、
(3)6−(4−アミノフェニルチオ)−8−オキソ−8H−アセナフト[1,2−b]ピロール−9−カルボニトリル、
(4)3,6−ジ(4−ブロモフェニルチオ)−8−オキソ−8H−アセナフト[1,2−b]ピロール−9−カルボニトリル、
(5)3,6−ジ(4−アミノフェニルチオ)−8−オキソ−8H−アセナフト[1,2−b]ピロール−9−カルボニトリル、
(6)3−(3−フルオロフェニルホルミル)−8−オキソ−8H−アセナフト[1,2−b]ピロール−9−カルボニトリル、
(7)6−(チエニル−2−メトキシ)−8−オキソ−8H−アセナフト[1,2−b]ピロール−9−カルボニトリル、
(8)3−フェノキシ−8−オキソ−8H−アセナフト[1,2−b]ピロール−9−カルボン酸。
【0089】
実施例23:ウェスタンブロッティングによる化合物のMcl−1及びBcl−2に対する阻害の検出
細胞試料を回収し、低温において1×106/50μlの細胞溶解液(62.5mM Tris−HCL pH 6.8、2%SDS、10%グリセロール、50mM DTT、0.01%ブロムフェノールブルー)で粉砕し、次いで溶液を遠心し、タンパク質上澄液を回収した。試料を100℃で5分間煮沸し、次いでSDS−PAGE(12%)電気泳動で分離し、移動させた。対象のタンパク質を対応する抗体で検出した。細胞中における対象のタンパク質の発現は、ECL着色法と組み合わせて西洋わさびペルオキシダーゼ標識二次抗体で検出した。検出対象化合物3−チオモルホリニル−8−オキソ−8H−アセナフト[1,2−b]ピロール−9−カルボニトリルのMcl−1及びBcl−2に対する阻害を別々に、図7及び図8に示した。これらの図から、検出対象化合物が腫瘍細胞に対して作用する時間が経過するにつれて、Bcl−2及びMcl−1タンパク質の帯が次第に明るくなったことを知ることができる。このことは、化合物がこれらの2つのタンパク質に対する阻害を有することを意味した。ウェスタン像のタンパク質帯の濃度について、半定量分析、及びコダックゲルロジック(KODAK Gel Logic)1500画像処理システムソフトウェアを用いた規格化処理を実施した。タンパク質帯の濃度を図9及び図10に示した。
【0090】
以下の8種の化合物も、上述された方法と同じ方法で検出した。これらの化合物はすべて、Bcl−2及びMcl−1タンパク質に対して阻害したことを知ることができる。これらの化合物は下記を含む。
(1)8−オキソ−8H−アセナフト[1,2−b]ピロール−9−カルボニトリル、
(2)3−(4−ブロモフェニルチオ)−8−オキソ−8H−アセナフト[1,2−b]ピロール−9−カルボニトリル、
(3)6−(4−アミノフェニルチオ)−8−オキソ−8H−アセナフト[1,2−b]ピロール−9−カルボニトリル、
(4)3,6−ジ(4−ブロモフェニルチオ)−8−オキソ−8H−アセナフト[1,2−b]ピロール−9−カルボニトリル、
(5)3,6−ジ(4−アミノフェニルチオ)−8−オキソ−8H−アセナフト[1,2−b]ピロール−9−カルボニトリル、
(6)3−フェノキシ−8−オキソ−8H−アセナフト[1,2−b]ピロール−9−N−tert−ブチルアミド、
(7)6−(チエニル−2−メトキシ)−8−オキソ−8H−アセナフト[1,2−b]ピロール−9−カルボニトリル、
(8)4−(テトラヒドロ−2H−ピラニル−4−オキシ)−8−オキソ−8H−アセナフト[1,2−b]ピロール−9−カルボニトリル。
【0091】
半定量分析によるこれらの化合物に関するMcl−1タンパク質及びBcl−2タンパク質の減少結果をそれぞれ、表6及び表7に示した。
【表6】
【表7】
【0092】
実施例24:ウェスタンブロッティングによるアセナフトヘテロ環式化合物並びにそのシクロデキストリン包接化合物及び複合体のMcl−1及びBcl−2に対する阻害の比較
細胞を6ウェルプレートに播種した(2×105細胞/ウェル)。化合物群では、化合物3−チオモルホリニル−8−オキソ−8H−アセナフト[1,2−b]ピロール−9−カルボニトリルを、最終濃度が10μMに到達するまでDMSOに溶解した。包接群では、水に溶解させておいた10μMの化合物に相当するγ−シクロデキストリン包接体を細胞に添加した。24時間後、細胞をPBSで3回洗浄し、次いで細胞試料を回収し、低温において1×106/50μlの細胞溶解液(62.5mM Tris−HCL pH 6.8、2%SDS、10%グリセロール、50mM DTT、0.01%ブロムフェノールブルー)で粉砕し、次いで溶液を遠心し、タンパク質上澄液を回収した。試料を100℃で5分間煮沸し、次いでSDS−PAGE(12%)電気泳動で分離し、移動させた。対象のタンパク質を対応する抗体で検出した。細胞における対象のタンパク質の発現は、ECL着色法と組み合わせて西洋わさびペルオキシダーゼ標識二次抗体で検出した。検出結果を図11に示した。この図から、3−チオモルホリニル−8−オキソ−8H−アセナフト[1,2−b]ピロール−9−カルボニトリルのγ−シクロデキストリン包接化合物のBcl−2及びMcl−1タンパク質に対する阻害は、化合物自体の阻害より明らかに高いことを知ることができる。すなわち、γ−シクロデキストリン包接化合物は、Bcl−2及びMcl−1タンパク質に対する阻害能力を明らかに増大させた。
【0093】
ウェスタン図のタンパク質帯の濃度について、半定量分析、及びコダックゲルロジック1500画像処理システムソフトウェアを用いた規格化処理を実施した。タンパク質帯の濃度を図12及び図13に示した。
【0094】
この例においては、β−シクロデキストリン、2−ヒドロキシプロピル−β−シクロデキストリン、メチル−β−シクロデキストリン、及びヒドロキシプロピル−γ−シクロデキストリンで包接された3−チオモルホリニル−8−オキソ−8H−アセナフト[1,2−b]ピロール−9−カルボニトリル、並びに以下の化合物を、上述された方法と同じ方法で検出した。その結果から、細胞においてBcl−2及びMcl−1タンパク質に対する包接された化合物の阻害能力は、化合物自体の阻害能力より高いことがわかった。
(1)8−オキソ−8H−アセナフト[1,2−b]ピロール−9−カルボニトリル、
(2)3−(4−ブロモフェニルチオ)−8−オキソ−8H−アセナフト[1,2−b]ピロール−9−カルボニトリル、
(3)6−(4−アミノフェニルチオ)−8−オキソ−8H−アセナフト[1,2−b]ピロール−9−カルボニトリル、
(4)3,6−ジ(4−ブロモフェニルチオ)−8−オキソ−8H−アセナフト[1,2−b]ピロール−9−カルボニトリル、
(5)3,6−ジ(4−アミノフェニルチオ)−8−オキソ−8H−アセナフト[1,2−b]ピロール−9−カルボニトリル、
(6)4−(テトラヒドロ−2H−ピラニル−4−オキシ)−8−オキソ−8H−アセナフト[1,2−b]ピロール−9−カルボニトリル。
【0095】
半定量分析によるこれらの化合物及びその包接化合物に関するMcl−1タンパク質及びBcl−2タンパク質の減少結果をそれぞれ、表8及び表9に示した。
【表8】
【表9】
【0096】
γ−シクロデキストリン、2−ヒドロキシプロピル−β−シクロデキストリン、メチル−β−シクロデキストリン又はヒドロキシプロピル−γ−シクロデキストリンで複合体形成された3−(p−メチルフェノキシ)−8−オキソ−8H−アセナフト[1,2−b]ピロール−9−カルボキサミド、3−(4−ブロモフェニルチオ)−8−オキソ−8H−アセナフト[1,2−b]ピロール−9−カルボン酸、3−チオモルホリニル−8−オキソ−8H−アセナフト[1,2−b]ピロール−9−カルボキサミドなど、同じ種類の他の化合物を、この実施例において上述された方法と同じ方法で検出した。実験結果から、細胞において、これらの化合物のシクロデキストリン複合体のBcl−2及びMcl−1タンパク質に対する阻害能力は、化合物自体の阻害能力より高いことがわかった。
【0097】
実施例25:ウェスタンブロッティングによる、腫瘍モデルにおける化合物と包接化合物のMcl−1及びBcl−2に対する阻害のインビボ比較
昆明マウス(中国)をランダムに群に割付け、各群10匹のマウスとした。培養された肝ガン細胞H22を、マウスの腋下に200μL/マウスで皮下接種した。癌細胞を5日間担持した後、皮下腫瘍が形成された。次いで、化合物3−チオモルホリニル−8−オキソ−8H−アセナフト[1,2−b]ピロール−9−カルボニトリル及びそのγ−シクロデキストリン包接化合物を腹膜注射で投与し、γ−シクロデキストリンで包接された検出対象化合物を経口投与した。検出条件は下記を含む。
ブランク対照群:担癌後、マウスにはいかなる処置も施さなかった、
対照群(1):担癌後、マウスにDMSO溶液を1日おきに全部で10日間腹膜注射した、
対照群(2):担癌後、マウスにシクロデキストリン溶液を1日おきに全部で10日間腹膜注射した、
実験群(1):担癌後、マウスに、0.03mg/kgのBW化合物に相当するDMSO溶液を1日おきに全部で10日間腹膜注射した、
実験群(2):担癌後、マウスに、0.3mg/kgのBW化合物に相当するDMSO溶液を1日おきに全部で10日間腹膜注射した、
実験群(3):担癌後、マウスに、0.3mg/kgのBW化合物に相当する包接化合物水溶液を1日おきに全部で10日間腹膜注射した、
実験群(4):担癌後、マウスに、0.3mg/kgのBW化合物に相当する包接化合物水溶液を1日おきに全部で10日間胃内投与した。
【0098】
実験期間中、腫瘍の長径(a)及び長径と直角を成す短径(b)を、毎週2回検出した。肉眼的腫瘍体積を、式:1/2ab2に従って決定した。動物の生存期間を観察した。40日目に、腫瘍阻害率を腫瘍体積によって算出した。結果を下記に示した。
実験群(2)(化合物のDMSO溶液注射群):腫瘍阻害率は22.3%であった、
実験群(3)(包接化合物注射群):腫瘍阻害率は61.5%であった、
実験群(4)(包接化合物の経口投与群):腫瘍阻害率は43.7%であった。
【0099】
対照群における動物の平均生存期間は28±2.1日であり、化合物群における動物の平均寿命は33±3.1日であり、包接化合物の注射群における動物の平均生存期間は48±5.1日であり、包接化合物の経口投与群における動物の平均生存期間は42±1.1日であった。統計処理の結果から、P<0.05であることがわかった。
【0100】
マウスが死亡又は屠殺した後、皮下腫瘍を取り出した。体積1:3の生理食塩水を使用して、細胞懸濁液調製用の組織ホモジネートを作製した。腫瘍細胞におけるBcl−2、Mcl−1タンパク質の発現を、実施例24に記載の方法と同じウェスタン検出方法で検出した。その結果を図14に示した。ここで、電気泳動パス6におけるタンパク質帯は、電気泳動パス5におけるタンパク質帯より明るい。これは、インビボにおいて包接化合物のBcl−2、Mcl−1に対する阻害能力が、化合物自体の阻害能力より高いことを示唆した。
【0101】
β−シクロデキストリン、2−ヒドロキシプロピル−β−シクロデキストリン、メチル−β−シクロデキストリン、及びヒドロキシプロピル−γ−シクロデキストリンで包接された3−チオモルホリニル−8−オキソ−8H−アセナフト[1,2−b]ピロール−9−カルボニトリル、並びに以下の化合物は、下記を含む同じ抗腫瘍効果をインビボで有した。
(1)実験群(2)と同じ条件下で、8−オキソ−8H−アセナフト[1,2−b]ピロール−9−カルボニトリルの腫瘍阻害率は約60%であった、実験群(3)と同じ条件下で、γ−シクロデキストリンで包接された化合物29−1の腫瘍阻害率は約80%であった、
(2)実験群(2)と同じ条件下で、3−(4−ブロモフェニルチオ)−8−オキソ−8H−アセナフト[1,2−b]ピロール−9−カルボニトリルの腫瘍阻害率は約40%であった、実験群(3)と同じ条件下で、2−ヒドロキシプロピル−β−シクロデキストリンで包接された化合物29−2の腫瘍阻害率は約60%であった、
(3)実験群(2)と同じ条件下で、6−(4−アミノフェニルチオ)−8−オキソ−8H−アセナフト[1,2−b]ピロール−9−カルボニトリルの腫瘍阻害率は約30%であった、実験群(3)と同じ条件下で、γ−シクロデキストリンで包接された化合物29−3の腫瘍阻害率は約40%であった、
(4)実験群(2)と同じ条件下で、3,6−ジ(4−ブロモフェニルチオ)−8−オキソ−8H−アセナフト[1,2−b]ピロール−9−カルボニトリルの腫瘍阻害率は約78%であった、実験群(3)と同じ条件下で、メチル−β−シクロデキストリンで包接された化合物29−4の腫瘍阻害率は約85%であった、
(5)実験群(2)と同じ条件下で、3,6−ジ(4−アミノフェニルチオ)−8−オキソ−8H−アセナフト[1,2−b]ピロール−9−カルボニトリルの腫瘍阻害率は約50%であった、実験群(3)と同じ条件下で、γ−シクロデキストリンで包接された化合物29−5の腫瘍阻害率は約60%であった、
(6)実験群(2)と同じ条件下で、4−(テトラヒドロ−2H−ピラニル−4−オキシ)−8−オキソ−8H−アセナフト[1,2−b]ピロール−9−カルボニトリルの腫瘍阻害率は約40%であった、実験群(3)と同じ条件下で、β−シクロデキストリンで包接された化合物29−6の腫瘍阻害率は約55%であった。
【0102】
他の化合物の腫瘍阻害率は30%〜50%であった。シクロデキストリン包接化合物の腫瘍阻害率は、化合物自体の腫瘍阻害率より一般に高い(P<0.05)。
【0103】
γ−シクロデキストリン、2−ヒドロキシプロピル−β−シクロデキストリン、メチル−β−シクロデキストリン、ヒドロキシプロピル−γ−シクロデキストリンで複合体形成された以下の化合物も化合物自体より、Bcl−2及びMcl−1に対する阻害能力が強く、腫瘍阻害率が高いものであった。
ここで、
3−(p−メチルフェノキシ)−8−オキソ−8H−アセナフト[1,2−b]ピロール−9−カルボキサミドの腫瘍阻害率は30%であり、メチル−β−シクロデキストリンで複合体形成されたとき、腫瘍阻害率は約38%に到達した、
3−(4−ブロモフェニルチオ)−8−オキソ−8H−アセナフト[1,2−b]ピロール−9−カルボン酸の腫瘍阻害率は45%であり、ヒドロキシプロピル−γ−シクロデキストリンで複合体形成されたとき、腫瘍阻害率は55%に到達した、
3−チオモルホリニル−8−オキソ−8H−アセナフト[1,2−b]ピロール−9−カルボキサミドの腫瘍阻害率は45%であり、2−ヒドロキシプロピル−β−シクロデキストリンで複合体形成されたとき、腫瘍阻害率は60%に到達した。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の構造式を有するアセナフトヘテロ環式化合物。
【化1】
[式中、
(I)R1=XR5、チオフェンメトキシル、チオフェンメチルアミノ、又はチオモルホリニル、R2=H、R3=H、R4=CN、COOH、COOR6又はCONHR7、
(II)R1=H、R2=XR5、チオフェンメトキシル、チオフェンメチルアミノ、又はチオモルホリニル、R3=H、R4=CN、COOH、COOR6又はCONHR7、
(III)R1=H、R2=H、R3=H、XR5、テトラヒドロピラン−4−オキシ−、テトラヒドロチアピラン−4−オキシ−、チオフェンメトキシル、チオフェンメチルアミノ、又はチオモルホリニル、R4=CN、
(IV)R1=XR5、R2=H、R3=XR5、R4=CN
であり、
式中、
X=O、S、カルボニル、エステル又はアミド、
R5=a:(CH2)nAr−(o、m、p)Y(Y=CH3、NO2、Ph、F、Cl、Br、CF3、OCH3、SCH3又はNH2、n=0〜4)、
b:テトラヒドロピラン又はテトラヒドロチアピラン、
R6=CH3又はC2H5、
R7=CH3、C2H5又はAr
である]
【請求項2】
以下の方法で調製される、請求項1に記載のアセナフトヘテロ環式化合物のシクロデキストリン包接化合物:
(1)所定量のシクロデキストリンを計量し、水に添加し、次いで加熱撹拌し、飽和溶液を生成させるステップ(ここで、シクロデキストリンは、β−シクロデキストリン、γ−シクロデキストリン、2−ヒドロキシプロピル−β−シクロデキストリン、メチル−β−シクロデキストリン、又はヒドロキシプロピル−γ−シクロデキストリンである)、
(2)所定量の包接用アセナフトヘテロ環式化合物を計量するステップ(ここで、化合物とシクロデキストリンのモル比は1:3〜10である)、
(3)包接用アセナフトヘテロ環式化合物を、5〜10mg/mLの濃度でアセトンに溶解し、得られた溶液をシクロデキストリンの水溶液に線状に滴下し、次いで沈澱が析出するまで、40〜65℃の温度で1〜6日加熱撹拌するステップ、
(4)上記の溶液を濾過し、濾過ケーキを少量の蒸留水で洗浄し、次いで遊離状態の化合物を少量のアセトンで洗い流し、50〜70℃の温度で24〜48時間真空乾燥した後、前記アセナフトヘテロ環式化合物のシクロデキストリン包接化合物を得るステップ。
【請求項3】
以下の方法で調製される、請求項1に記載のアセナフトヘテロ環式化合物のシクロデキストリン複合体:
(1)乾燥シクロデキストリン及び複合体用アセナフトヘテロ環式化合物を計量するステップ(ここで、シクロデキストリンとアセナフトヘテロ環式化合物のモル比は1:1.5〜3であり、シクロデキストリンは、β−シクロデキストリン、γ−シクロデキストリン、2−ヒドロキシプロピル−β−シクロデキストリン、メチル−β−シクロデキストリン、又はヒドロキシプロピル−γ−シクロデキストリンである)、
(2)複合体用アセナフトヘテロ環式化合物をN,N’−カルボニルジイミダゾールと1:1〜2のモル比で混合し、次いで複合体用アセナフトヘテロ環式化合物のDMSO溶液中の濃度が0.2〜0.5mmol/mLとなるまでDMSOに溶解させ、次いで室温で30〜60分間撹拌するステップ、
(3)ステップ(1)で計量したシクロデキストリン及び0.1〜0.3mmol/mLのトリエタノールアミンをDMSO溶液に添加し、室温で18〜24時間反応させるステップ、
(4)0.50〜1.0mg/mLのアセトンをステップ(3)の反応系に添加し、減圧条件下で反応系から析出物を分離させるステップ、
(5)濾過し、精製して、前記アセナフトヘテロ環式化合物のシクロデキストリン複合体を得るステップ。
【請求項4】
BH3類似体であるBcl−2ファミリータンパク質の阻害剤の製造における請求項1に記載のアセナフトヘテロ環式化合物の使用。
【請求項5】
BH3類似体であるBcl−2ファミリータンパク質の阻害剤の製造における請求項2に記載のアセナフトヘテロ環式化合物のシクロデキストリン包接化合物の使用。
【請求項6】
BH3類似体であるBcl−2ファミリータンパク質の阻害剤の製造における請求項3に記載のアセナフトヘテロ環式化合物のシクロデキストリン複合体の使用。
【請求項1】
以下の構造式を有するアセナフトヘテロ環式化合物。
【化1】
[式中、
(I)R1=XR5、チオフェンメトキシル、チオフェンメチルアミノ、又はチオモルホリニル、R2=H、R3=H、R4=CN、COOH、COOR6又はCONHR7、
(II)R1=H、R2=XR5、チオフェンメトキシル、チオフェンメチルアミノ、又はチオモルホリニル、R3=H、R4=CN、COOH、COOR6又はCONHR7、
(III)R1=H、R2=H、R3=H、XR5、テトラヒドロピラン−4−オキシ−、テトラヒドロチアピラン−4−オキシ−、チオフェンメトキシル、チオフェンメチルアミノ、又はチオモルホリニル、R4=CN、
(IV)R1=XR5、R2=H、R3=XR5、R4=CN
であり、
式中、
X=O、S、カルボニル、エステル又はアミド、
R5=a:(CH2)nAr−(o、m、p)Y(Y=CH3、NO2、Ph、F、Cl、Br、CF3、OCH3、SCH3又はNH2、n=0〜4)、
b:テトラヒドロピラン又はテトラヒドロチアピラン、
R6=CH3又はC2H5、
R7=CH3、C2H5又はAr
である]
【請求項2】
以下の方法で調製される、請求項1に記載のアセナフトヘテロ環式化合物のシクロデキストリン包接化合物:
(1)所定量のシクロデキストリンを計量し、水に添加し、次いで加熱撹拌し、飽和溶液を生成させるステップ(ここで、シクロデキストリンは、β−シクロデキストリン、γ−シクロデキストリン、2−ヒドロキシプロピル−β−シクロデキストリン、メチル−β−シクロデキストリン、又はヒドロキシプロピル−γ−シクロデキストリンである)、
(2)所定量の包接用アセナフトヘテロ環式化合物を計量するステップ(ここで、化合物とシクロデキストリンのモル比は1:3〜10である)、
(3)包接用アセナフトヘテロ環式化合物を、5〜10mg/mLの濃度でアセトンに溶解し、得られた溶液をシクロデキストリンの水溶液に線状に滴下し、次いで沈澱が析出するまで、40〜65℃の温度で1〜6日加熱撹拌するステップ、
(4)上記の溶液を濾過し、濾過ケーキを少量の蒸留水で洗浄し、次いで遊離状態の化合物を少量のアセトンで洗い流し、50〜70℃の温度で24〜48時間真空乾燥した後、前記アセナフトヘテロ環式化合物のシクロデキストリン包接化合物を得るステップ。
【請求項3】
以下の方法で調製される、請求項1に記載のアセナフトヘテロ環式化合物のシクロデキストリン複合体:
(1)乾燥シクロデキストリン及び複合体用アセナフトヘテロ環式化合物を計量するステップ(ここで、シクロデキストリンとアセナフトヘテロ環式化合物のモル比は1:1.5〜3であり、シクロデキストリンは、β−シクロデキストリン、γ−シクロデキストリン、2−ヒドロキシプロピル−β−シクロデキストリン、メチル−β−シクロデキストリン、又はヒドロキシプロピル−γ−シクロデキストリンである)、
(2)複合体用アセナフトヘテロ環式化合物をN,N’−カルボニルジイミダゾールと1:1〜2のモル比で混合し、次いで複合体用アセナフトヘテロ環式化合物のDMSO溶液中の濃度が0.2〜0.5mmol/mLとなるまでDMSOに溶解させ、次いで室温で30〜60分間撹拌するステップ、
(3)ステップ(1)で計量したシクロデキストリン及び0.1〜0.3mmol/mLのトリエタノールアミンをDMSO溶液に添加し、室温で18〜24時間反応させるステップ、
(4)0.50〜1.0mg/mLのアセトンをステップ(3)の反応系に添加し、減圧条件下で反応系から析出物を分離させるステップ、
(5)濾過し、精製して、前記アセナフトヘテロ環式化合物のシクロデキストリン複合体を得るステップ。
【請求項4】
BH3類似体であるBcl−2ファミリータンパク質の阻害剤の製造における請求項1に記載のアセナフトヘテロ環式化合物の使用。
【請求項5】
BH3類似体であるBcl−2ファミリータンパク質の阻害剤の製造における請求項2に記載のアセナフトヘテロ環式化合物のシクロデキストリン包接化合物の使用。
【請求項6】
BH3類似体であるBcl−2ファミリータンパク質の阻害剤の製造における請求項3に記載のアセナフトヘテロ環式化合物のシクロデキストリン複合体の使用。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公表番号】特表2012−508194(P2012−508194A)
【公表日】平成24年4月5日(2012.4.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−534990(P2011−534990)
【出願日】平成21年10月25日(2009.10.25)
【国際出願番号】PCT/CN2009/074602
【国際公開番号】WO2010/054575
【国際公開日】平成22年5月20日(2010.5.20)
【出願人】(510262769)大連理工大学 (3)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成24年4月5日(2012.4.5)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年10月25日(2009.10.25)
【国際出願番号】PCT/CN2009/074602
【国際公開番号】WO2010/054575
【国際公開日】平成22年5月20日(2010.5.20)
【出願人】(510262769)大連理工大学 (3)
【Fターム(参考)】
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