説明

アゾ顔料の製造方法、顔料分散物、着色組成物、インクジェット記録用インクの調製方法、カラーフィルター用着色組成物及びカラーフィルター

【課題】着色力、色相等の色彩的特性に優れ、かつ耐光性等の耐久性にも優れるアゾ顔料、顔料分散物を提供する。
【解決手段】一般式(1)で表されるアゾ化合物と、酸若しくは塩基又は酸若しくは塩基を含む良溶媒とを含む溶液(A)を調製する工程、及び、該溶液(A)と貧溶媒とを混合することによりアゾ顔料を析出する工程を含むことを特徴とする下記一般式(1)で表されるアゾ顔料の製造方法。


(一般式(1)中、Gは水素原子、脂肪族基、アリール基、ヘテロ環基、アシル基、脂肪族オキシカルボニル基、カルバモイル基、脂肪族スルホニル基又はアリールスルホニル基を表す。)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は新規な含窒素複素環アゾ顔料の製造方法、アゾ顔料、該アゾ顔料を含む顔料分散物、着色組成物、インクジェット記録用インク、カラーフィルター用着色組成物及びカラーフィルターに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、画像記録材料としては、特にカラー画像を形成するための材料が主流であり、具体的には、インクジェット方式の記録材料、感熱転写方式の記録材料、電子写真方式の記録材料、転写式ハロゲン化銀感光材料、印刷インキ、記録ペン等が盛んに利用されている。また、撮影機器ではCCDなどの撮像素子において、ディスプレーではLCDやPDPにおいてカラー画像を記録・再現するためにカラーフィルターが使用されている。これらのカラー画像記録材料やカラーフィルターでは、フルカラー画像を表示あるいは記録する為に、いわゆる加法混色法や減法混色法の3原色の色素(染料や顔料)が使用されているが、好ましい色再現域を実現できる吸収特性を有し、かつさまざまな使用条件、環境条件に耐えうる堅牢な色素がないのが実情であり、改善が強く望まれている。
【0003】
上記の各用途で使用する染料や顔料には、共通して次のような性質を具備している必要がある。即ち、色再現性上好ましい吸収特性を有すること、使用される環境条件下における堅牢性、例えば耐光性、耐熱性、オゾンなどの酸化性ガスに対する耐性が良好であること、等が挙げられる。加えて、色素が顔料の場合には更に、水や有機溶剤に実質的に不溶であり耐薬品堅牢性が良好であること、及び、粒子として使用しても分子分散状態における好ましい吸収特性を損なわないこと、等の性質をも具備している必要がある。上記要求特性は分子間相互作用の強弱でコントロールすることができるが、両者はトレードオフの関係となるため両立させるのが困難である。
また、顔料を使用するにあたっては、他にも、所望の透明性を発現させるために必要な粒子径及び粒子形を有すること、使用される環境条件下における堅牢性、例えば耐光性、耐熱性、オゾンなどの酸化性ガスに対する耐性、その他有機溶剤や亜硫酸ガスなどへの耐薬品堅牢性が良好であること、使用される媒体中において微小粒子まで分散し、かつ、その分散状態が安定であること、等の性質も必要となる。
しかしながら、該アゾ顔料はその製造方法によって異なる構造異性及び結晶多形を示すため、所望の特性を発揮する構造異性及び結晶多形を有する該アゾ顔料を再現性よく高純度に製造することは困難であった。
【0004】
特許文献1には、アゾ顔料を有機酸又は有機酸を含有する溶媒に溶解した顔料溶液と、析出用有機溶媒とを混合して顔料ナノ粒子を製造する方法が記載されている。
特許文献2には、ジスクシネートとニトリルを付加反応させ、その反応の際に存在する成長阻害剤により粒度の小さな1,4−ジケトピロロ〔3,4−c〕ピロール生成物を得る方法が記載されている。
しかし、更に良好な色相を有し、光、湿熱及び環境中の活性ガス、中でも着色力が高く、光に対して堅牢な顔料を効率良く製造する方法が強く望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−321106号公報
【特許文献2】特開2000−7677号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、着色力、色相等の色彩的特性に優れ、かつ耐光性、耐オゾン性等の耐久性にも優れるアゾ顔料の製造方法、アゾ顔料、顔料分散物、着色組成物及びインクジェット記録用インクを提供することである。
本発明の別の目的は、良好な色相を有し、光、熱及びオゾンに対して良好な堅牢性を発揮し、かつ分散性が良好であり、透明性の高く分光特性、コントラスト、分散物経時安定性に優れたカラーフィルターを提供し得るカラーフィルター用着色組成物及びカラーフィルター用着色組成物の調製方法を提供することにある。
更に本発明の別の目的は、上記カラーフィルター用着色組成物を用いて得られる、透明性が高く、分光特性、コントラスト、分散物経時安定性に優れたカラーフィルターを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、鋭意研究を重ねた結果、良好な色相を有し、かつ光、熱及びオゾンに対して良好な堅牢性を発揮する特定の含窒素ヘテロ環アゾ顔料を効率良く得られる製造方法を見出した。
以下に具体的手段を以下に示す。
【0008】
〔1〕
下記一般式(1)で表されるアゾ化合物と、酸若しくは塩基又は酸若しくは塩基を含む良溶媒とを含む溶液(A)を調製する工程、及び、
該溶液(A)と貧溶媒とを混合することによりアゾ顔料を析出する工程
を含むことを特徴とする下記一般式(1)で表されるアゾ顔料の製造方法。
【0009】
【化1】

【0010】
(一般式(1)中、Gは水素原子、脂肪族基、アリール基、ヘテロ環基、アシル基、脂肪族オキシカルボニル基、カルバモイル基、脂肪族スルホニル基又はアリールスルホニル基を表す。Rは、アミノ基、脂肪族オキシ基、脂肪族基、アリール基、又はヘテロ環基を表す。Rは置換基を表す。Aは芳香族5〜6員ヘテロ環基を表す。mは0〜5の整数を表し、nは1〜4の整数を表す。n=2の場合は、R、R、A又はGを介した2量体を表す。n=3の場合はR、R、A又はGを介した3量体を表す。n=4の場合はR、R、A又はGを介した4量体を表す。一般式(1)がイオン性親水性基を有することはない。)
〔2〕
前記一般式(1)で表されるアゾ化合物及びアゾ顔料が、下記一般式(2−1)で表わされることを特徴とする〔1に記載のアゾ顔料の製造方法。
【0011】
【化2】

【0012】
(一般式(2−1)中、Gは、水素原子、脂肪族基、アリール基、又はヘテロ環基を表す。R21は、アミノ基、脂肪族オキシ基、脂肪族基、アリール基、又はヘテロ環基を表す。R22は置換基を表す。A’は、下記一般式(A−1)〜(A−18)、(A−20)〜(A−28)、(A−30)〜(A−32)を表す。mは0〜5の整数を表し、nは1〜4の整数を表す。n=2の場合は、R21、R22、G又はA’を介した2量体を表す。n=3の場合はR21、R22、G又はA’を介した3量体を表す。n=4の場合はR21、R22、G又はA’を介した4量体を表す。一般式(2−1)がイオン性親水性基を有することはない。)
【0013】
【化3】

【0014】
(一般式(A−1)〜(A−18)、(A−20)〜(A−28)、(A−30)〜(A−32)中、R51〜R59は水素原子、又は置換基を表し、隣接する置換基は互いに結合し、5〜6員環を形成していてもよい。*は一般式(2−1)のアゾ基との結合位置を表す。)
〔3〕
前記Aが前記一般式(A−16)を表すことを特徴とする〔1〕に記載のアゾ顔料の製造方法。
〔4〕
下記一般式(9)で表されるアゾ化合物を良溶媒と、酸若しくは塩基、又は酸若しくは塩基を含む良溶媒とを含む溶液(9A)を調製する工程、及び、
溶液(9A)と貧溶媒とを混合することによりアゾ顔料を析出する工程、
溶液(9A)と貧溶媒とを混合することによりアゾ顔料を析出する工程
を含むことを特徴とする下記一般式(9)で表されるアゾ顔料の製造方法。
【0015】
【化4】

【0016】
〔5〕
前記式(9)で表されるアゾ顔料がCuKα特性X線回折におけるブラッグ角(2θ±0.5°)が7.1°、25.3°、26.0°及び27.2°に特徴的なX線回折ピークを有することを特徴とする〔4〕に記載のアゾ顔料の製造方法。
〔6〕
前記一般式(1)又は式(9)で表されるアゾ化合物と、酸若しくは塩基又は酸若しくは塩基を含む良溶媒とを含む溶液(A)又は溶液(9A)を調整する工程において、該溶液(A)又は溶液(9A)が、更に一般式(1)又は式(9)で表されるアゾ化合物とは異なる構造を有する顔料誘導体を含むことを特徴とする〔1〕〜〔5〕のいずれかに記載のアゾ顔料の製造方法。
〔7〕
前記顔料誘導体がヘテリルアゾ顔料であることを特徴とする〔1〕〜〔6〕のいずれかに記載のアゾ顔料の製造方法。
〔8〕
前記顔料誘導体が一般式(S1)で表されるアゾ顔料であることを特徴とする〔1〕〜〔7〕のいずれかに記載のアゾ顔料の製造方法。
【0017】
【化5】

【0018】
(一般式(S1)中、G、R、R、A、m、nは一般式(1)におけるG、R、R、A、m、nと同義であるが、一般式(1)と一般式(S1)とが同一の構造を表す場合はない。)
〔9〕
前記顔料誘導体が分子量が140〜500の置換基を有するヘテリルアゾ顔料であることを特徴とする〔1〕〜〔8〕のいずれかに記載のアゾ顔料の製造方法。
〔10〕
上記〔1〕〜〔9〕のいずれかに記載のアゾ顔料の製造方法において、顔料誘導体が、顔料に対し、1質量%〜30質量%であるアゾ顔料の製造方法。
〔11〕
上記〔1〕〜〔10〕のいずれかに記載のアゾ顔料の製造方法において、良溶媒がメタンスルホン酸であるアゾ顔料の製造方法。
〔12〕
上記〔1〕〜〔11〕のいずれかに記載のアゾ顔料の製造方法から得られる一般式(1)で表されるアゾ顔料又はその互変異性体。
〔13〕
〔12〕に記載のアゾ顔料又はその互変異性体を含有することを特徴とする顔料分散物。
〔14〕
〔13〕に記載の顔料分散物を含有することを特徴とする着色組成物。
〔15〕
〔14〕に載の着色組成物を含有することを特徴とするインクジェット記録用インク。
〔16〕
〔14〕に記載の着色組成物を含有することを特徴とするカラーフィルター用着色組成物。
〔17〕
〔16〕に記載のカラーフィルター用着色組成物を用いて製造されたことを特徴とするカラーフィルター。
【発明の効果】
【0019】
本発明のアゾ顔料の製造方法は着色力、色相等の色彩的特性に優れ、かつ耐光性、耐熱性等の耐久性にも優れるアゾ顔料を製造することができる。
本発明の製造方法により製造したアゾ顔料は、高い着色力、色相等の色彩的特性に優れ、かつ耐光性、耐熱性等の耐久性にも優れる。
更に、本発明の顔料分散物は、本発明の製造方法により製造したアゾ顔料を種々の媒体に分散させてなり、色彩的特性、耐久性、インク液安定性及び分散安定性に優れる。
また、本発明によれば種々の用途におけるカラー液晶ディスプレー及びカメラモジュールに要求される高コントラスト、優れた透明性を達成するカラーフィルターが得られる分散性、分散物経時安定性、耐熱性及び耐光性が良好なカラーフィルター用着色組成物、及びカラーフィルターを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】合成例1に従って合成された具体的化合物例D−8の赤外吸収スペクトルの図である。
【図2】具体的化合物例D−1の赤外吸収スペクトルの図である。
【図3】具体的化合物例D−7の赤外吸収スペクトルの図である。
【図4】具体的化合物例D−36の赤外吸収スペクトルの図である。
【図5】具体的化合物例D−127の赤外吸収スペクトルの図である。
【図6】具体的化合物例D−222の赤外吸収スペクトルの図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
まず、本発明における脂肪族基、アリール基、アシル基、ヘテロ環基及び置換基について説明する。
本発明における脂肪族基において、その脂肪族部位は直鎖、分岐鎖及び環状のいずれであってもよい。また、飽和であっても不飽和であってもよい。具体的には例えば、アルキル基、アルケニル基、シクロアルキル基、シクロアルケニル基等を挙げることができる。更に脂肪族基は無置換であっても置換基を有していてもよい。
【0022】
また、アリール基は、単環であっても縮合環であってもよい。また、無置換であっても置換基を有していてもよい。また、ヘテロ環基は、そのヘテロ環部位は環内にヘテロ原子(例えば、窒素原子、イオウ原子、酸素原子)を持つものであればよく、飽和環であっても、不飽和環であってもよい。また、単環であっても縮合環であってもよく、更に無置換であっても置換基を有していてもよい。
アシル基は、脂肪族カルボニル基であっても、アリールカルボニル基であっても、ヘテロ環カルボニル基であってもよく、置換基を有していてもよく、置換してもよい基としては、下記置換基の項で述べた基で、置換可能な基であれば何でもよい。例えばアセチル、プロパノイル、ベンゾイル、3−ピリジンカルボニル等が挙げられる。
【0023】
また、本発明における置換基とは、置換可能な基であればよく、例えば脂肪族基、アリール基、ヘテロ環基、アシル基、アシルオキシ基、アシルアミノ基、脂肪族オキシ基、アリールオキシ基、ヘテロ環オキシ基、脂肪族オキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、ヘテロ環オキシカルボニル基、カルバモイル基、脂肪族スルホニル基、アリールスルホニル基、ヘテロ環スルホニル基、脂肪族スルホニルオキシ基、アリールスルホニルオキシ基、ヘテロ環スルホニルオキシ基、スルファモイル基、脂肪族スルホンアミド基、アリールスルホンアミド基、ヘテロ環スルホンアミド基、アミノ基、脂肪族アミノ基、アリールアミノ基、ヘテロ環アミノ基、脂肪族オキシカルボニルアミノ基、アリールオキシカルボニルアミノ基、ヘテロ環オキシカルボニルアミノ基、脂肪族スルフィニル基、アリールスルフィニル基、脂肪族チオ基、アリールチオ基、ヒドロキシ基、シアノ基、スルホ基、カルボキシ基、脂肪族オキシアミノ基、アリールオキシアミノ基、カルバモイルアミノ基、スルファモイルアミノ基、ニトロ基、ハロゲン原子、スルファモイルカルバモイル基、カルバモイルスルファモイル基、ジ脂肪族オキシホスフィニル基、ジアリールオキシホスフィニル基等をあげることができる。
【0024】
本発明のアゾ顔料は溶解性の観点からイオン性親水性基(例えば、カルボキシル基、スルホ基、ホスホノ基及び4級アンモニウム基)を置換基として有さない方が良い。イオン性親水性基を含有する場合は、多価金属カチオンとの塩(例えば、マグネシウム、カルシウム、バリウム)であることが好ましく、レーキ顔料であることがより好ましい。
【0025】
ここで、本明細書中で用いられるハメットの置換基定数σp値について若干説明する。
ハメット則はベンゼン誘導体の反応又は平衡に及ぼす置換基の影響を定量的に論ずるために1935年L.P.Hammettにより提唱された経験則であるが、これは今日広く妥当性が認められている。ハメット則に求められた置換基定数にはσp値とσm値があり、これらの値は多くの一般的な成書に見出すことができるが、例えば、J.A.Dean編、「Lange’s Handbook of Chemistry」第12版、1979年(Mc Graw−Hill)や「化学の領域」増刊、122号、96〜103頁、1979年(南光堂)に詳しい。なお、本発明において各置換基をハメットの置換基定数σpにより限定したり説明したりするが、これは上記の成書で見出せる、文献既知の値がある置換基にのみ限定されるという意味ではなく、その値が文献未知であってもハメット則に基づいて測定した場合にその範囲内に含まれるであろう置換基をも含むことはいうまでもない。本発明の一般式(1)、で表される化合物はベンゼン誘導体ではないが、置換基の電子効果を示す尺度として、置換位置に関係なくσp値を使用する。本発明においては今後、σp値をこのような意味で使用する。
【0026】
本発明の製造方法は、下記一般式(1)で表されるアゾ化合物と、酸若しくは塩基又は酸若しくは塩基を含む良溶媒とを含む溶液(A)を調整する工程、及び、
該溶液(A)と貧溶媒とを混合することによりアゾ顔料を析出する工程
を含むことを特徴とする下記一般式(1)で表されるアゾ顔料の製造方法である。本願の製造方法を用いることにより、所望の結晶形態を示す顔料を高収率で得ることができる。
【0027】
【化6】

【0028】
(一般式(1)中、Gは水素原子、脂肪族基、アリール基、ヘテロ環基、アシル基、脂肪族オキシカルボニル基、カルバモイル基、脂肪族スルホニル基又はアリールスルホニル基を表す。Rは、アミノ基、脂肪族オキシ基、脂肪族基、アリール基、又はヘテロ環基を表す。Rは置換基を表す。Aは芳香族5〜6員ヘテロ環基を表す。mは0〜5の整数を表し、nは1〜4の整数を表す。n=2の場合は、R、R、A又はGを介した2量体を表す。n=3の場合はR、R、A又はGを介した3量体を表す。n=4の場合はR、R、A又はGを介した4量体を表す。一般式(1)がイオン性親水性基を有することはない。)
【0029】
本発明は、本発明のアゾ顔料の製造方法から得られる一般式(1)で表されるアゾ顔料又はその互変異性体にも関する。
一般式(1)で表されるアゾ化合物及びアゾ顔料について説明する。
〔一般式(1)で表されるアゾ化合物及びアゾ顔料〕
顔料は、色素分子間の強力な相互作用による凝集エネルギーによって、分子同士がお互いに強固に結合しあっている状態のことである。この状態を作るには、分子間のファンデルワールス力、分子間水素結合が必要であることが、例えば、日本画像学会誌、43巻、10頁(2004年)等に記載されている。
分子間のファンデルワールス力を強めるには、分子へ芳香族基、極性基及び/又はヘテロ原子の導入等が考えられる。また、分子間水素結合を形成させるには、分子へヘテロ原子に結合した水素原子を含有する置換基の導入及び/又は電子供与性の置環基の導入等が考えられる。更に分子全体の極性が高い方が好ましいと考えられる。そのためには、例えば、アルキル基等鎖状の基は短い方が好ましく、分子量/アゾ基の値は小さい方が好ましいと考えられる。
これらの観点から、顔料分子は、アミド結合、スルホンアミド結合、エーテル結合、スルホン基、オキシカルボニル基、イミド基、カルバモイルアミノ基、ヘテロ環、ベンゼン環等を含有することが好ましい。
【0030】
一般式(1)で表されるアゾ化合物は、その特異的な構造により色素分子の分子間相互作用を形成しやすく、水又は有機溶媒等に対する溶解性が低く、アゾ顔料とすることができる。
顔料は、水や有機溶媒等に分子分散状態で溶解させて使用する染料とは異なり、溶媒中に分子集合体等の固体粒子として微細に分散させて用いるものである。
また、本発明にかかるアゾ顔料は下記一般式(1)で表される特定の構造を有することにより、着色力、色相等の色彩的特性において優れた特性を示し、かつ耐光性、耐オゾン性等の耐久性にも優れた特性を示すことができる。
次に一般式(1)で表される顔料について説明する。
【0031】
【化7】

【0032】
(一般式(1)中、Gは水素原子、脂肪族基、アリール基、ヘテロ環基、アシル基、脂肪族オキシカルボニル基、カルバモイル基、脂肪族スルホニル基又はアリールスルホニル基を表す。Rは、アミノ基、脂肪族オキシ基、脂肪族基、アリール基、ヘテロ環基を表す。Rは置換基を表す。Aは芳香族5〜6員ヘテロ環基を表す。mは0〜5の整数を表し、nは1〜4の整数を表す。n=2の場合は、R、R、A又はGを介した2量体を表す。n=3の場合はR、R、A又はGを介した3量体を表す。n=4の場合はR、R、A又はGを介した4量体を表す。一般式(1)がイオン性親水性基を有することはない。)
【0033】
Gで表される脂肪族基としては、置換基を有していてもよく、飽和であっても不飽和であってもよい。置換してもよい基としては、前述の置換基の項で述べた基で、置換可能な基であれば何でもよく、好ましい置換基としては、ヒドロキシ基、脂肪族オキシ基、カルバモイル基、脂肪族オキシカルボニル基、脂肪族チオ基、アミノ基、脂肪族アミノ基、アシルアミノ基、カルバモイルアミノ基である。Gで表される脂肪族基として、好ましくは総炭素原子数1〜8の脂肪族基であり、より好ましくは総炭素原子数1〜4のアルキル基であり、例えばメチル、エチル、ビニル、シクロヘキシル、カルバモイルメチル等が挙げられる。
【0034】
Gで表されるアリール基としては、縮環していてもよく、置換基を有していてもよい。置換してもよい基としては、前述の置換基の項で述べた基で、置換可能な基であれば何でもよく、好ましい置換基としては、ニトロ基、ハロゲン原子、脂肪族オキシ基、カルバモイル基、脂肪族オキシカルボニル基、脂肪族チオ基、アミノ基、脂肪族アミノ基、アシルアミノ基、カルバモイルアミノ基である。Gで表されるアリール基として、好ましくは炭素数6〜12のアリール基であり、より好ましくは総炭素原子数6〜10のアリール基であり、例えばフェニル、4−ニトロフェニル、4−アセチルアミノフェニル、4−メタンスルホニルフェニル等が挙げられる。
【0035】
Gで表されるヘテロ環基としては、置換基を有していてもよく、飽和であっても不飽和であってもよく、縮環していてもよい。置換してもよい基としては、前述の置換基の項で述べた基で、置換可能な基であれば何でもよく、好ましい置換基としてはハロゲン原子、ヒドロキシ基、脂肪族オキシ基、カルバモイル基、脂肪族オキシカルボニル基、脂肪族チオ基、アミノ基、脂肪族アミノ基、アシルアミノ基、カルバモイルアミノ基である。Gで表されるヘテロ環基として、好ましくは総炭素原子数2〜12の炭素原子で結合したヘテロ環基であり、より好ましくは炭素原子で結合した総炭素原子数2〜10の5〜6員へテロ環であり、例えば2−テトラヒドロフリル、2−ピリミジル等が挙げられる。
【0036】
Gで表されるアシル基としては、脂肪族カルボニル基であっても、アリールカルボニル基であっても、ヘテロ環カルボニル基であってもよく、置換基を有していてもよい。置換してもよい基としては、前述の置換基の項で述べた基で、置換可能な基であれば何でもよく、好ましい置換基としては、ヒドロキシ基、ハロゲン原子、アリール基、脂肪族オキシ基、カルバモイル基、脂肪族オキシカルボニル基、脂肪族チオ基、アミノ基、脂肪族アミノ基、アシルアミノ基、カルバモイルアミノ基である。Gで表されるアシル基として、好ましくは総炭素原子数2〜8のアシル基であり、より好ましくは総炭素原子数2〜4のアシル基であり、例えばアセチル、プロパノイル、ベンゾイル、3−ピリジンカルボニル等が挙げられる。
【0037】
Gで表される脂肪族オキシカルボニル基としては、飽和であっても不飽和であってもよく、置換基を有していてもよい。置換してもよい基としては、前述の置換基の項で述べた基で、置換可能な基であれば何でもよく、好ましい置換基としては、ヒドロキシ基、脂肪族オキシ基、カルバモイル基、脂肪族オキシカルボニル基、脂肪族チオ基、アミノ基、脂肪族アミノ基、アシルアミノ基、カルバモイルアミノ基である。Gで表される脂肪族オキシカルボニル基として、好ましくは総炭素原子数2〜8のアルコキシカルボニル基であり、より好ましくは総炭素原子数2〜4のアルコキシカルボニル基であり、例えばメトキシカルボニル、エトキシカルボニル、(t)−ブトキシカルボニル等が挙げられる。
【0038】
Gで表されるカルバモイル基としては、置換基を有していてもよい。置換してもよい基としては、前述の置換基の項で述べた基で、置換可能な基であれば何でもよく、好ましい置換基としては、脂肪族基、アリール基、へテロ環基等が好ましい。Gで表される置換基を有してもよいカルバモイル基として、好ましくは無置換のカルバモイル基、総炭素数2〜9のアルキルカルバモイル基、総炭素原子数7〜11であり、より好ましくは無置換のカルバモイル基、総炭素原子数2〜5のアルキルカルバモイル基であり、例えばN−メチルカルバモイル、N,N−ジメチルカルバモイル、N−フェニルカルバモイル等が挙げられる。
【0039】
Gで表される脂肪族スルホニル基としては、飽和であっても不飽和であってもよく、置換基を有していてもよい。置換してもよい基としては、前述の置換基の項で述べた基で、置換可能な基であれば何でもよく、好ましい置換基としては、ヒドロキシ基、アリール基、脂肪族オキシ基、カルバモイル基、脂肪族オキシカルボニル基、脂肪族チオ基、アミノ基、脂肪族アミノ基、アシルアミノ基、カルバモイルアミノ基である。Gで表される脂肪族スルホニル基として、好ましくは総炭素原子数1〜6のアルキルスルホニル基であり、より好ましくは総炭素原子数1〜4のアルキルスルホニル基であり、例えばメタンスルホニル等が挙げられる。
【0040】
Gで表されるアリールスルホニル基としては、置換基を有していてもよい。置換してもよい基としては、前述の置換基の項で述べた基で、置換可能な基であれば何でもよく、好ましい置換基としては、ヒドロキシ基、脂肪族基、脂肪族オキシ基、カルバモイル基、脂肪族オキシカルボニル基、脂肪族チオ基、アミノ基、脂肪族アミノ基、アシルアミノ基、カルバモイルアミノ基である。Gで表されるアリールスルホニル基として、好ましくは総炭素原子数6〜10のアリールスルホニル基であり、例えばベンゼンスルホニル等が挙げられる。
【0041】
Gとして好ましくは、水素原子、脂肪族基、アリール基、ヘテロ環基であり、より好ましくは水素原子である。分子内水素結合又は分子内交叉水素結合を形成しやすくなるためである。
【0042】
で表されるアミノ基としては、置換基を有していてもよく、置換してもよい基としては、前述の置換基の項で述べた基であって、置換可能な基であればなんでもよく、置換基として好ましくは、脂肪族基、アリール基、ヘテロ環基等が挙げられる。
これらの置換基は、更に置換基を有していてもよく、その置換基としては、脂肪族基、ヒドロキシ基、アミド結合、エーテル結合、オキシカルボニル結合、チオエーテル結合等を有する置換基が好ましく、ヘテロ原子と水素原子の結合を有する置換基が、分子間水素結合等の分子間相互作用をし易くする観点でより好ましい。
で表される置換基を有してもよいアミノ基として、好ましくは無置換のアミノ基、総炭素原子数1〜10のアルキルアミノ基、総炭素原子数2〜10のジアルキルアミノ基、総炭素原子数6〜13のアリールアミノ基、総炭素原子数2〜12の飽和であっても、不飽和であってもよいヘテロ環アミノ基であり、より好ましくは、無置換のアミノ基、総炭素原子数1〜8のアルキルアミノ基、総炭素原子数6〜13のアリールアミノ基、総炭素原子数2〜12の飽和であっても、不飽和であってもよいヘテロ環アミノ基であり、例えばメチルアミノ、N,N−ジメチルアミノ、N−フェニルアミノ、N−(2−ピリミジル)アミノ等が挙げられる。
更に好ましくは、置換基を有していても良い総炭素原子数6〜13のアリールアミノ基及び置換基を有していても良い総炭素原子数2〜12の飽和であっても、不飽和であってもよいヘテロ環アミノ基である。
【0043】
がアリールアミノ基の場合、アリール基上の置換基が、アミノ基との結合位置からパラ位に置換基を有する場合が好ましく、パラ位にのみ置換基を有する場合が最も好ましい。その置換基としては、前述の置換基の項で述べた基で置換可能な基であればなんでも良く、好ましくは、総炭素原子数1〜7、より好ましくは総炭素原子数1〜4の置換基を有していても良い脂肪族基(例えばメチル、エチル、アリル、(i)−プロピル、(t)−ブチル等)、総炭素原子数1〜7、より好ましくは総炭素原子数1〜4の置換基を有していても良い脂肪族オキシ基(例えばメトキシ、エトキシ、(i)−プロピルオキシ、アリルオキシ等)、ハロゲン原子(例えばフッ素、塩素、臭素等)、総炭素原子数1〜7、より好ましくは総炭素原子数1〜4の置換基を有していても良いカルバモイル基(例えばカルバモイル、N−フェニルカルバモイル、N−メチルカルバモイル等)、総炭素原子数1〜7、より好ましくは総炭素原子数1〜4の置換基を有していても良いウレイド基(例えばウレイド、N−メチルウレイド、N,N−ジメチルウレイド、N−4−ピリジルウレイド、N−フェニルウレイド等)、ニトロ基、総炭素原子数1〜7の該アリール基と縮環したヘテロ環(例えばイミダゾロン)、ヒドロキシ基、総炭素原子数1〜7、より好ましくは総炭素原子数1〜4の置換基を有していても良い脂肪族チオ基(例えばメチルチオ、エチルチオ、(i)−プロピルチオ、アリルチオ、(t)−ブチルチオ等)、総炭素原子数2〜7、より好ましくは総炭素原子数2〜4の置換基を有していても良いアシルアミノ基(例えばアセトアミノ、プロピオニルアミノ、ピバロイルアミノ、ベンゾイルアミノ等)、総炭素原子数1〜7、より好ましくは総炭素原子数1〜4の置換基を有していても良い脂肪族オキシカルボニルアミノ基(例えばメトキシカルボニルアミノ、プロピルオキシカルボニルアミノ等)、総炭素原子数2〜7、より好ましくは総炭素原子数2〜4の置換基を有していても良い脂肪族オキシカルボニル基(例えばメトキシカルボニル、エトキシカルボニル等)、総炭素原子数2〜7、より好ましくは総炭素原子数2〜4の置換基を有していても良いアシル基(脂肪族カルボニル基であっても、アリールカルボニル基であっても、ヘテロ環カルボニル基であってもよく、置換基を有していてもよく、置換してもよい基としては、前述の置換基の項で述べた基で、置換可能な基であれば何でもよい。好ましくは総炭素原子数2〜7のアシル基であり、より好ましくは総炭素原子数2〜4のアシル基であり、例えばアセチル、プロパノイル、ベンゾイル、3−ピリジンカルボニル等)が挙げられる。
アリール基上の置換基が、アミノ基との結合位置からパラ位に置換した場合、置換基が分子の末端にあるために、分子間水素結合等の分子間相互作用をし易く、そのために色相がシャープになる。該アリール基上の置換基が更に置換基を有する場合は、脂肪族基、ヒドロキシ基、アミド結合、エーテル結合、オキシカルボニル結合、チオエーテル結合等を有する置換基が好ましく、ヘテロ原子と水素原子の結合を有する置換基が、分子間水素結合等の分子間相互作用をし易くする観点でより好ましい。
がへテロ環アミノ基の場合、その置換基としては、前述の置換基の項で述べた基で置換可能な基であればなんでも良く、好ましくは、前記アリールアミノ基の場合と同じ置換基が好ましい。該ヘテロ環基上の置換基が更に置換基を有する場合は、脂肪族基、ヒドロキシ基、アミド結合、エーテル結合、オキシカルボニル結合、チオエーテル結合等を有する置換基が好ましく、ヘテロ原子と水素原子の結合を有する置換基が、分子間水素結合等の分子間相互作用をし易くする観点でより好ましい。
【0044】
がアリールアミノ基、へテロ環アミノ基の場合のより好ましい置換基としては、脂肪族基、脂肪族オキシ基、ハロゲン原子、カルバモイル基、該アリール基と縮環したへテロ環、脂肪族オキシカルボニル基である。置換基として更に好ましくは総炭素原子数1〜4の脂肪族基、総炭素原子数1〜4の脂肪族オキシ基、ハロゲン原子、総炭素原子数1〜4のカルバモイル基、ニトロ基、総炭素原子数2〜4の脂肪族オキシカルボニル基である。
【0045】
で表される脂肪族オキシ基としては、置換基を有していてもよく、飽和であっても不飽和であってもよい。置換基としては、前述の置換基の項で述べた基であって、置換可能な基であればなんでもよく、好ましい置換基としては、ヒドロキシ基、脂肪族オキシ基、カルバモイル基、脂肪族オキシカルボニル基、脂肪族チオ基、アミノ基、脂肪族アミノ基、アシルアミノ基、カルバモイルアミノ基である。Rの脂肪族オキシ基として、好ましくは総炭素原子数1〜8のアルコキシ基であって、より好ましくは総炭素原子数1〜4のアルコキシ基であって、更に好ましくは総炭素数1〜2であり、例えば、メトキシ、エトキシ、(t)−ブトキシ、メトキシエトキシ、カルバモイルメトキシ等が挙げられる。
【0046】
で表される脂肪族基としては、置換基を有していてもよく、飽和であっても不飽和であってもよい。前述の置換基の項で述べた基であって、置換可能な基であればなんでもよく、好ましい置換基としては、ヒドロキシ基、脂肪族オキシ基、カルバモイル基、脂肪族オキシカルボニル基、脂肪族チオ基、アミノ基、脂肪族アミノ基、アシルアミノ基、カルバモイルアミノ基である。Rの脂肪族基として、好ましくは総炭素原子数1〜8のアルキル基であって、より好ましくは総炭素数数1〜4のアルキル基であり、例えば、メチル、エチル、(s)−ブチル、メトキシエチル、カルバモイルメチル等が挙げられる。
【0047】
で表されるアリール基としては、置換基を有していてもよく、置換基としては、前述の置換基の項で述べた基であって、置換可能な基であればなんでもよい。好ましい置換基としては、脂肪族基、脂肪族オキシ基、ハロゲン原子、カルバモイル基、該アリール基と縮環したへテロ環、脂肪族オキシカルボニル基である。Rのアリール基として、好ましくは総炭素原子数6〜12のアリール基であって、より好ましくは総炭素原子数6〜10のアリール基であり、例えば、フェニル、4−メチルフェニル、3−クロルフェニル等が挙げられる。
【0048】
で表されるヘテロ環基としては、飽和ヘテロ環であっても、不飽和ヘテロ環基であってもよく、置換基を有していてもよく、縮環していてもよい。置換基としては、前述の置換基の項で述べた基であって、置換可能な基であればなんでもよく、好ましい置換基としては、脂肪族基、脂肪族オキシ基、カルバモイル基、該へテロ基と縮環したへテロ環、脂肪族オキシカルボニル基である。Rのヘテロ環基として、好ましくは総炭素原子数2〜10のヘテロ環基であって、より好ましくは総炭素原子数2〜8の窒素原子で結合した飽和ヘテロ環基であり、例えば、1−ピペリジル、4−モルホリニル、2−ピリミジル、4−ピリジル等が挙げられる。
【0049】
として好ましくは、置換基を有していてもよいアミノ基、脂肪族オキシ基、窒素原子で結合した飽和ヘテロ環基の場合であり、より好ましくは、置換基を有していてもよいアミノ基、脂肪族オキシ基、更に好ましくは置換基を有していてもよいアミノ基である。
【0050】
で表される置換基としては、前述の置換基の項で述べた基で、置換可能な基であればなんでもよく、好ましくは脂肪族基、アリール基、ヘテロ環基、脂肪族オキシカルボニル基、カルボキシル基、置換基を有していてもよいカルバモイル基、アシルアミノ基、スルホンアミド基、置換基を有していてもよいカルバモイルアミノ基、置換基を有していてもよいスルファモイル基、脂肪族オキシ基、脂肪族チオ基、シアノ基、ハロゲン原子、ヒドロキシ基であり、より好ましくは、脂肪族オキシカルボニル基、置換基を有していてもよいカルバモイル基、アシルアミノ基、置換基を有していてもよいカルバモイルアミノ基、脂肪族オキシ基、ハロゲン原子であり、最も好ましくは、脂肪族オキシ基である。
これらの置換基が更に置換基を有する場合は、脂肪族基、ヒドロキシ基、アミド結合、エーテル結合、オキシカルボニル結合、チオエーテル結合等を有する置換基が好ましく、ヘテロ原子と水素原子の結合を有する置換基が、分子間水素結合等の分子間相互作用をし易くする観点でより好ましい。
【0051】
で表される脂肪族基としては、置換基を有していてもよく、飽和であっても不飽和であってもよく、置換してもよい基としては、前述の置換基の項で述べた基で、置換可能な基であれば何でもよい。Rの脂肪族基として、好ましくは総炭素原子数1〜8のアルキル基であり、より好ましくは総炭素原子数1〜6のアルキル基であり、例えばメチル、エチル、i−プロピル、シクロヘキシル、t−ブチル等が挙げられる。
【0052】
で表されるアリール基としては、置換基を有していてもよく、置換してもよい基としては、前述の置換基の項で述べた基で、置換可能な基であれば何でもよい。Rのアリール基として、好ましくは総炭素原子数6〜12のアリール基であり、より好ましくは総炭素原子数6〜10のアリール基であり、例えばフェニル、3−メトキシフェニル、4−カルバモイルフェニル等が挙げられる。
【0053】
で表されるヘテロ環基としては、置換基を有していてもよく、飽和であっても不飽和であってもよく、縮環していてもよく、置換してもよい基としては、前述の置換基の項で述べた基で、置換可能な基であれば何でもよい。Rのヘテロ環基として、好ましくは総炭素原子数2〜16のヘテロ環基であり、より好ましくは総炭素原子数2〜12の5〜6員環のヘテロ環基であり、例えば1−ピロリジニル、4−モルホリニル、2−ピリジル、1−ピロリル、1−イミダゾリル、1−ベンゾイミダゾリル等が挙げられる。
【0054】
で表される脂肪族オキシカルボニル基としては、置換基を有していてもよく、飽和であっても不飽和であってもよく、置換してもよい基としては、前述の置換基の項で述べた基で、置換可能な基であれば何でもよい。Rの脂肪族オキシカルボニル基として、好ましくは総炭素原子数1〜8のアルコキシカルボニル基であり、より好ましくは総炭素原子数1〜6のアルコキシカルボニル基であり、例えばメトキシカルボニル、i−プロピルオキシカルボニル、カルバモイルメトキシカルボニル等が挙げられる。
【0055】
で表されるカルバモイル基としては、置換基を有していてもよく、置換してもよい基としては、前述の置換基の項で述べた基で、置換可能な基であれば何でもよく、好ましくは、脂肪族基、アリール基、ヘテロ環基等である。Rの置換基を有していてもよいカルバモイル基として、好ましくはカルバモイル基、総炭素原子数2〜9のアルキルカルバモイル基、総炭素原子数3〜10のジアルキルカルバモイル基、総炭素原子数7〜13のアリールカルバモイル基、総炭素原子数3〜12のヘテロ環カルバモイル基であり、より好ましくはカルバモイル基、総炭素原子数2〜7のアルキルカルバモイル基、総炭素原子数3〜6のジアルキルカルバモイル基、総炭素原子数7〜11のアリールカルバモイル基、総炭素原子数3〜10のヘテロ環カルバモイル基であり、例えば、カルバモイル、メチルカルバモイル、ジメチルカルバモイル、フェニルカルバモイル、4−ピリジンカルバモイル等が挙げられる。
【0056】
で表されるアシルアミノ基としては、置換基を有していてもよく、脂肪族であっても、芳香族であっても、ヘテロ環であってもよく、置換してもよい基としては、前述の置換基の項で述べた基で、置換可能な基であれば何でもよい。Rのアシルアミノ基として、好ましくは総炭素原子数2〜12のアシルアミノ基であり、より好ましくは総炭素原子数2〜8のアシルアミノ基であり、更に好ましくは総炭素原子数2〜8のアルキルカルボニルアミノ基であって、例えばアセチルアミノ、ベンゾイルアミノ、2−ピリジンカルボニルアミノ、プロパノイルアミノ等が挙げられる。
【0057】
で表されるスルホンアミド基としては、置換基を有していてもよく、脂肪族であっても、芳香族であっても、ヘテロ環であってもよく、置換してもよい基としては、前述の置換基の項で述べた基で、置換可能な基であれば何でもよい。Rのスルホンアミド基として、好ましくは総炭素原子数1〜12のスルホンアミド基であり、より好ましくは総炭素原子数1〜8のスルホンアミド基であり、更に好ましくは総炭素原子数1〜8のアルキルスルホンアミド基であって、例えばメタンスルホンアミド、ベンゼンスルホンアミド、2−ピリジンスルホンアミド等が挙げられる。
【0058】
で表されるカルバモイルアミノ基としては置換基を有していてもよく、置換してもよい基としては、前述の置換基の項で述べた基で、置換可能な基であれば何でもよく、好ましくは、脂肪族基、アリール基、ヘテロ環基等である。Rの置換基を有していてもよいカルバモイルアミノ基として、好ましくはカルバモイルアミノ基、総炭素原子数2〜9のアルキルカルバモイルアミノ基、総炭素原子数3〜10のジアルキルカルバモイルアミノ基、総炭素原子数7〜13のアリールカルバモイルアミノ基、総炭素原子数3〜12のヘテロ環カルバモイルアミノ基であり、より好ましくはカルバモイルアミノ基、総炭素原子数2〜7のアルキルカルバモイルアミノ基、総炭素原子数3〜6のジアルキルカルバモイルアミノ基、総炭素原子数7〜11のアリールカルバモイルアミノ基、総炭素原子数3〜10のヘテロ環カルバモイルアミノ基であり、例えば、カルバモイルアミノ、メチルカルバモイルアミノ、N,N−ジメチルカルバモイルアミノ、フェニルカルバモイルアミノ、4−ピリジンカルバモイルアミノ等が挙げられる。
【0059】
で表される置換基を有していてもよいスルファモイル基として、置換してもよい基としては、前述の置換基の項で述べた基で、置換可能な基であれば何でもよく、好ましくは、脂肪族基、アリール基、ヘテロ環基等である。Rの置換基を有していてもよいスルファモイル基として、好ましくはスルファモイル基、総炭素原子数1〜9のアルキルスルファモイル基、総炭素原子数2〜10のジアルキルスルファモイル基、総炭素原子数7〜13のアリールスルファモイル基、総炭素原子数2〜12のヘテロ環スルファモイル基であり、より好ましくはスルファモイル基、総炭素原子数1〜7のアルキルスルファモイル基、総炭素原子数3〜6のジアルキルスルファモイル基、総炭素原子数6〜11のアリールスルファモイル基、総炭素原子数2〜10のヘテロ環スルファモイル基であり、例えば、スルファモイル、メチルスルファモイル、N,N−ジメチルスルファモイル、フェニルスルファモイル、4−ピリジンスルファモイル等が挙げられる。
【0060】
で表される脂肪族オキシ基としては、置換基を有していてもよく、飽和であっても不飽和であってもよく、置換してもよい基としては、前述の置換基の項で述べた基で、置換可能な基であれば何でもよい。Rの脂肪族オキシ基として、好ましくは総炭素原子数1〜8のアルコキシ基であり、より好ましくは総炭素原子数1〜6のアルコキシ基であり、例えばメトキシ、エトキシ、i−プロピルオキシ、シクロヘキシルオキシ、メトキシエトキシ等が挙げられる。
【0061】
で表される脂肪族チオ基としては、置換基を有していてもよく、飽和であっても不飽和であってもよく、置換してもよい基としては、前述の置換基の項で述べた基で、置換可能な基であれば何でもよい。Rの脂肪族チオ基として、好ましくは総炭素原子数1〜8のアルキルチオ基であり、より好ましくは総炭素原子数1〜6のアルキルチオ基であり、例えばメチルチオ、エチルチオ、カルバモイルメチルチオ、t−ブチルチオ等が挙げられる。
【0062】
で表されるハロゲン原子としては、好ましくはフッ素原子、塩素原子、臭素原子であり、より好ましくは塩素原子が挙げられる。
本発明の効果の点で、Rは、脂肪族オキシ基、脂肪族オキシカルボニル基、置換基を有していてもよいカルバモイル基である場合が好ましく、脂肪族オキシ基である場合はより好ましい。
【0063】
Aで表される芳香族5〜6員ヘテロ環としては、縮環していてもよく、単環であってもよく、縮環は炭素環であってもよく、縮環は炭素環であっても、ヘテロ環であっても、芳香環であっても、非芳香環であってもよく、好ましくは、ヘテロ原子が1〜3個含有の芳香族の5〜6員環である。Aで表される縮環していてもよい芳香族5〜6員ヘテロ環として、好ましくは、総炭素原子数2〜15であって、好ましくは2〜10であって、例えばピリジン環、ピラジン環、ピリミジン環、ピリダジン環、トリアジン環、ピロール環、フラン環、チオフェン環、イミダゾール環、ピラゾール環、オキサゾール環、チアゾール環、イソオキサゾール環、イソチアゾール環、トリアゾール環、チアジアゾール環、オキサジアゾール環等及びそれらとベンゼン環誘導体、ヘテロ環誘導体との縮環ヘテロ環基である。
mは、0〜3である場合が好ましく、0〜1である場合はより好ましく、0である場合は、更に好ましい。nは1又は2である場合が好ましい。
【0064】
一般式(1)で表されるアゾ化合物及び顔料は、下記一般式(2−1)で表されるアゾ化合物及びアゾ顔料である場合が好ましい。
【0065】
【化8】

【0066】
(一般式(2−1)中、Gは、水素原子、脂肪族基、アリール基、又はヘテロ環基を表す。R21は、アミノ基、脂肪族オキシ基、脂肪族基、アリール基、又はヘテロ環基を表す。R22は置換基を表す。A’は、下記一般式(A−1)〜(A−18)、(A−20)〜(A−28)、(A−30)〜(A−32)を表す。m、nは一般式(1)で定義したものと同義である。n=2の場合は、R21、R22、G又はA’を介した2量体を表す。n=3の場合はR21、R22、G又はA’を介した3量体を表す。n=4の場合はR21、R22、G又はA’を介した4量体を表す。一般式(2−1)がイオン性親水性基を有することはない。)
【0067】
【化9】

【0068】
(一般式(A−1)〜(A−18)、(A−20)〜(A−28)、(A−30)〜(A−32)中、R51〜R59は水素原子、又は置換基を表し、隣接する置換基は互いに結合し、5〜6員環を形成していてもよい。*は一般式(2−1)のアゾ基との結合位置を表す。)
【0069】
で表される脂肪族基、アリール基、ヘテロ環基としては、一般式(1)のGで説明したものと同じである。本発明の効果の点で、Gとして好ましくは水素原子である。
21で表されるアミノ基、脂肪族オキシ基、脂肪族基、アリール基、ヘテロ環基としては、一般式(1)のRで説明したものと同じである。本発明の効果の点で、R21として好ましくは、置換基を有していてもよいアミノ基、窒素原子で結合した飽和ヘテロ環基であり、より好ましくは、置換基を有していてもよいアミノ基の場合である。
22で表される置換基として好ましくは、一般式(1)で表されるRで説明したものと同じである。
【0070】
’で表される一般式(A−1)〜(A−32)について説明する。
【0071】
51〜R54で表される置換基としては、前述の置換基の項で述べた基で、置換可能な基であれば何でもよい。R51〜R54の置換基として、好ましくは脂肪族基、アリール基、ヘテロ環基、脂肪族オキシカルボニル基、置換基を有していてもよいカルバモイル基、アシルアミノ基、スルホンアミド基、脂肪族オキシ基、脂肪族チオ基、シアノ基等であり、より好ましくは脂肪族基、脂肪族オキシカルボニル基、置換基を有していてもよいカルバモイル基、脂肪族オキシ基、シアノ基等である。
【0072】
本発明の効果の点でR51〜R54は水素原子、脂肪族基、アリール基、ヘテロ環基、脂肪族オキシカルボニル基、置換基を有していてもよいカルバモイル基、アシルアミノ基、スルホンアミド基、脂肪族オキシ基、脂肪族チオ基、シアノ基等である場合が好ましく、水素原子、脂肪族基、脂肪族オキシカルボニル基、置換基を有していてもよいカルバモイル基、脂肪族オキシ基、シアノ基である場合はより好ましい。
【0073】
55で表される置換基としては、前述の置換基の項で述べた基で、置換可能な基であれば何でもよい。R55の置換基として、好ましくは脂肪族基、アリール基、ヘテロ環基等であり、より好ましくは脂肪族基、アリール基、窒素原子との結合部位の隣接位に窒素原子を含有する芳香族5〜6員ヘテロ環基である。
【0074】
本発明の効果の点で、R55は脂肪族基、アリール基、ヘテロ環基である場合が好ましく、脂肪族基、アリール基、該窒素原子との結合部位の隣接位に窒素原子を含有する芳香族5〜6員ヘテロ環基である場合はより好ましく、該窒素原子との結合部位の隣接位に窒素原子を含有する芳香族5〜6員ヘテロ環基である場合は更dに好ましい。R55が該窒素原子との結合部位の隣接位に窒素原子を含有する芳香族5〜6員ヘテロ環基あることにより、色素分子の分子間相互作用だけでなく、分子内相互作用を強固に形成しやすくなる。それにより安定な分子配列の顔料を構成しやすくなり、良好な色相、高い堅牢性(耐光・ガス・熱・水等)を示す点で好ましい。
【0075】
本発明の効果の点で、R55として好ましい、該窒素原子との結合部位の隣接位に窒素原子を含有する芳香族5〜6員ヘテロ環基としては、置換基を有していてもよく、置換してもよい基としては、前述の置換基の項で述べた基で、置換可能な基であれば何でもよく、好ましい置換基としては、ヒドロキシ基、脂肪族オキシ基、カルバモイル基、脂肪族オキシカルボニル基、脂肪族チオ基、アミノ基、脂肪族アミノ基、アシルアミノ基、カルバモイルアミノ基であり、飽和へテロ環であっても不飽和へテロ環であっても、縮環へテロ環であってもよく、好ましくは総炭素原子数2〜12の該窒素原子との結合部位の隣接位に窒素原子を含有する芳香族5〜6員ヘテロ環基であり、より好ましくは総炭素原子数2〜10の該窒素原子との結合部位の隣接位に窒素原子を含有する芳香族5〜6員ヘテロ環基である。例えば、2−チアゾリル、2−ベンゾチアゾリル、2−オキサゾリル、2−ベンゾオキサゾリル、2−ピリジル、2−ピラジニル、3−ピリダジニル、2−ピリミジニル、4−ピリミジニル、2−イミダゾリル、2−ベンズイミダゾリル、2−トリアジニル等が挙げられ、これらのヘテロ環基は置換基と共に互変異性体構造であってもよい。
【0076】
本発明の効果の点で、R55として好ましいアリール基としては、置換基を有していてもよく、置換してもよい基としては、前述の置換基の項で述べた基で、置換可能な基であれば何でもよく、好ましい置換基としては、ヒドロキシ基、ニトロ基、脂肪族オキシ基、カルバモイル基、脂肪族オキシカルボニル基、脂肪族チオ基、アミノ基、脂肪族アミノ基、アシルアミノ基、カルバモイルアミノ基である。R55のアリール基として、好ましくは総炭素原子数6〜12のアリール基であり、より好ましくは総炭素原子数6〜10のアリール基であり、例えばフェニル、3−メトキシフェニル、4−カルバモイルフェニル等が挙げられ、フェニル基が好ましい。
【0077】
本発明の効果の点で、R55として好ましい脂肪族基としては、置換基を有していてもよく、飽和であっても不飽和であってもよい。置換してもよい基としては、前述の置換基の項で述べた基で、置換可能な基であれば何でもよく、好ましい置換基としては、ヒドロキシ基、脂肪族オキシ基、カルバモイル基、脂肪族オキシカルボニル基、脂肪族チオ基、アミノ基、脂肪族アミノ基、アシルアミノ基、カルバモイルアミノ基である。R55で表される脂肪族基として、好ましくは総炭素原子数1〜8の脂肪族基であり、より好ましくは総炭素原子数1〜4のアルキル基であり、例えばメチル、エチル、ビニル、シクロヘキシル、カルバモイルメチル等が挙げられる。
【0078】
一般式(2−1)中、R55としては、下記(Y−1)〜(Y−13)のいずれかである場合が好ましく、分子内水素結合構造をとり易い構造にするために6員環の下記(Y−1)〜(Y−6)のいずれかである場合はより好ましく、下記(Y−1)、(Y−3)、(Y−4)、(Y−6)のいずれかである場合は更に好ましく、下記(Y−1)、又は(Y−4)である場合は特に好ましい。一般式(Y−1)〜(Y−13)中の*は、ピラゾール環のN原子との結合部位を表す。Y〜Y11は水素原子又は置換基を表す。(Y−13)におけるG11は5〜6員ヘテロ環を構成する事ができる非金属原子群を表し、G11で表されるヘテロ環は無置換であっても、置換基を有していてもよく、ヘテロ環は単環であっても縮環していてもよい。式(Y−1)〜(Y−13)は置換基と共に互変異性体構造であってもよい。
【0079】
【化10】

【0080】
本発明の効果の点でY〜Y11は水素原子、脂肪族基、アリール基、ヘテロ環基、脂肪族オキシカルボニル基、置換基を有していてもよいカルバモイル基、アシルアミノ基、スルホンアミド基、脂肪族オキシ基、脂肪族チオ基、シアノ基等である場合が好ましく、水素原子、脂肪族基、脂肪族オキシカルボニル基、置換基を有していてもよいカルバモイル基、脂肪族オキシ基、シアノ基である場合はより好ましい。
【0081】
56、R57、R59で表される置換基としては、前述の置換基の項で述べた基で、置換可能な基であれば何でもよい。R56、R57、R59の置換基として、好ましくは脂肪族基、アリール基、ヘテロ環基、脂肪族オキシカルボニル基、置換基を有していてもよいカルバモイル基、アシルアミノ基、スルホンアミド基、脂肪族オキシ基、脂肪族チオ基、シアノ基等であり、より好ましくは脂肪族基、脂肪族オキシ基、脂肪族チオ基、シアノ基等である。
【0082】
本発明の効果の点で、R56、R57、R59は、水素原子、脂肪族基、アリール基、ヘテロ環基、脂肪族オキシカルボニル基、置換基を有していてもよいカルバモイル基、アシルアミノ基、スルホンアミド基、脂肪族オキシ基、脂肪族チオ基、シアノ基等である場合が好ましく、水素原子、脂肪族基、脂肪族オキシ基、脂肪族チオ基、シアノ基である場合はより好ましい。
【0083】
58で表される置換基としては、前述の置換基の項で述べた基で、置換可能な基であれば何でもよい。本発明の効果の点で、R58として、好ましくは、ヘテロ環基、ハメットの置換基定数σp値が0.2以上の電子求引性基であり、σp値が0.3以上の電子求引性基であることが好ましい。上限としては1.0以下の電子求引性基である。R58はσp値がこの範囲であれば、同様な合成方法で合成可能であり、色相長波長化の点で同様の効果を得ることができる。
【0084】
σp値が0.2以上の電子求引性基であるR58の具体例としては、アシル基、アシルオキシ基、カルバモイル基、アルキルオキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、シアノ基、ニトロ基、ジアルキルホスホノ基、ジアリールホスホノ基、ジアリールホスフィニル基、アルキルスルフィニル基、アリールスルフィニル基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、スルホニルオキシ基、アシルチオ基、スルファモイル基、チオシアネート基、チオカルボニル基、ハロゲン化アルキル基、ハロゲン化アルコキシ基、ハロゲン化アリールオキシ基、ハロゲン化アルキルアミノ基、ハロゲン化アルキルチオ基、σp値が0.2以上の他の電子求引性基で置換されたアリール基、ヘテロ環基、ハロゲン原子、アゾ基、又はセレノシアネート基が挙げられる。
【0085】
本発明の効果の点で、一般式(2−1)で表される顔料は、Gが水素原子であって、R21が置換基を有していてもよいアミノ基、窒素原子で結合した飽和ヘテロ環基であって、mが0又は1であって、mが1の場合は、R22が脂肪族オキシカルボニル基、置換基を有していてもよいカルバモイル基であって、A’が、(A−1)、(A−10)〜(A−17)、(A−20)〜(A-23)、(A−27)、(A−28)、(A−30)〜(A−32)のいずれかであって、nが1又は2である場合が好ましく、Gが水素原子であって、R21が置換基を有していてもよいアミノ基、窒素原子で結合した飽和ヘテロ環基であって、mが0又は1であって、mが1の場合は、R22が脂肪族オキシカルボニル基、置換基を有していてもよいカルバモイル基であって、A’が、(A−10)、(A−11)、(A−13)〜(A−17)、(A−20)、(A−22)〜(A-23)、(A−27)、(A−28)、(A−30)〜(A−32)のいずれかであって、nが1又は2である場合がより好ましく、Gが水素原子であって、R21が置換基を有していてもよいアミノ基、窒素原子で結合した飽和ヘテロ環基であって、mが0であって、A’が、(A−10)、(A−11)、(A−13)〜(A−17)、(A−20)、(A−22)〜(A−23)、(A−27)、(A−28)、(A−30)〜(A−32)のいずれかであって、nが1又は2である場合が更に好ましく、Gが水素原子であって、R21が置換基を有していてもよいアミノ基であって、mが0であって、A’が、(A−16)〜(A−17)、(A−20)、(A−28)、(A−32)のいずれかであって、nが1又は2である場合が特に好ましく、Gが水素原子であって、R21が置換基を有していてもよいアミノ基であって、mが0であって、A’が(A−16)であってnが1又は2である場合が最も好ましい。
【0086】
前記一般式(2−1)で表されるアゾ顔料は、一の態様においては、A’が(A−10)、(A−14)〜(A−16)、(A−25)又は(A−26)であることが好ましく、A’が(A−10)、(A−14)〜(A−16)、又は(A−26)であることがより好ましく、(A−16)であることがより好ましい。
【0087】
本発明の効果の点で、一般式(1)及び一般式(2−1)で表されるアゾ顔料は、下記一般式(3)で表されるアゾ顔料であることが好ましい。
【0088】
以下、一般式(3)により表されるアゾ顔料、その互変異性体、それらの塩又は水和物について詳細に説明する。
【0089】
【化11】

【0090】
(一般式(3)中、R21、R22、R55、R59、m、nは一般式(2−1)で定義したものと同じである。Zはハメットのσp値が0.2以上の電子求引性基を表す。n=2の場合は、R21、R22、R55、R59又はZを介した2量体を表す。n=3の場合はR21、R22、R55、R59又はZを介した3量体を表す。n=4の場合はR21、R22、R55、R59又はZを介した4量体を表す。一般式(3)がイオン性親水性基を有することはない。)
【0091】
Zで表されるハメットのσp値が0.2以上の置換基としては前述の一般式(2−1)のR58の説明で述べた基が挙げられる。
【0092】
一般式(3)で表される顔料のR21、R22、R55、R59、m、nの好ましい置換基、範囲は、一般式(2−1)と同じである。
本発明の効果の点で、Zとしては、アシル基、カルバモイル基、アルキルオキシカルボニル基、シアノ基、アルキルスルホニル基、スルファモイル基が好ましく、カルバモイル基、アルキルオキシカルボニル基、シアノ基がより好ましく、シアノ基である場合が最も好ましい。
【0093】
本発明の効果の点で、一般式(3)で表される顔料は、R21が置換基を有していてもよいアミノ基、窒素原子で結合した飽和ヘテロ環基であって、mが0又は1であって、mが1の場合は、R22が脂肪族オキシカルボニル基、置換基を有していてもよいカルバモイル基であって、R55が、窒素原子との結合部位の隣接位に窒素原子を含有する芳香族5〜6員ヘテロ環基であって、R59が水素原子、脂肪族基であって、Zがアシル基、カルバモイル基、アルキルオキシカルボニル基、シアノ基、アルキルスルホニル基、スルファモイル基であって、nが1又は2である場合が好ましく、R21が置換基を有していてもよいアミノ基、窒素原子で結合した飽和ヘテロ環基であって、mが0であって、R55が、(Y−1)〜(Y−13)のいずれかであって、R59が水素原子、脂肪族基であって、Zがカルバモイル基、アルキルオキシカルボニル基、シアノ基であって、nが1又は2である場合がより好ましく、R21が置換基を有していてもよいアミノ基であって、mが0であって、R55が、(Y−1)〜(Y−6)のいずれかであって、R59が水素原子、脂肪族基であって、Zがカルバモイル基、アルキルオキシカルボニル基、シアノ基であって、nが1又は2である場合が更に好ましく、R21が置換基を有していてもよいアミノ基であって、mが0であって、R55が、(Y−1)、(Y−4)、(Y−6)のいずれかであって、R59が水素原子であって、Zがシアノ基であって、nが1又は2である場合が更に好ましい。
【0094】
本発明の効果の点で、一般式(1)で表される化合物は、「総炭素数/アゾ基の数」が40以下であることが好ましく、30以下である場合はより好ましい。本発明の効果の点で、一般式(1)で表される顔料は、「分子量/アゾ基の数」が700以下であることが好ましい。本発明の効果の点で、一般式(1)で表される顔料は、スルホ基、カルボキシル基等、イオン性置換基が置換していない。
【0095】
前記一般式(2−1)で表されるアゾ化合物は、他の態様においては、A’が(A−1)〜(A−9)、(A−11)〜(A−13)、(A−17)、(A−20)〜(A−23)、(A−27)、(A−28)、(A−30)〜(A−32)であることが好ましく、(A−11)〜(A−13)、(A−17)、(A−20)〜(A−23)、(A−27)、(A−28)、(A−30)〜(A−32)であることがより好ましく、(A−17)、(A−20)、(A−22)〜(A−23)、(A−27)、(A−28)、(A−31)、(A−32)であることがより好ましく、(A−20)、(A−28)、(A−32)であることが更に好ましく、(A−20)であることが最も好ましい。また、(A−20)のR56がR59であることが特に好ましい。
【0096】
中でも、一般式(1)で表されるアゾ化合物は、下記一般式(2−2)のアゾ、その互変異性体、それらの塩又は水和物であることが好ましい。
【0097】
【化12】

【0098】
(一般式(2−2)中、Gは、水素原子、脂肪族基、アリール基、ヘテロ環基を表す。Rは、アミノ基、脂肪族オキシ基、脂肪族基、アリール基、又はヘテロ環基を表す。Rは置換基を表す。Aは下記一般式(A−17)、(A−18)、(A−20)、(A−22)〜(A−24)、(A−27)、(A−28)、(A−31)、(A−32)のいずれかを表す。mは0〜5の整数を表し、nは1〜4の整数を表す。n=2の場合は、R、R、又はAを介した2量体を表す。n=3の場合はR、R、又はAを介した3量体を表す。n=4の場合はR、R、又はAを介した4量体を表す。一般式(2−2)がイオン性親水性基を有することはない。)
【0099】
【化13】

【0100】
(一般式(A−17)、(A−18)、(A−20)、(A−22)〜(A−24)、(A−27)、(A−28)、(A−31)、(A−32)中、R55〜R59は水素原子又は置換基を表す。隣接するR51とR52、R52とR53、R53とR54、R55とR56、R56とR57、R55とR58、R56とR58、R57とR58、R55とR59は互いに結合し、5〜6員環を形成していてもよい。*は一般式(2−2)のアゾ基との結合位置を表す。)
【0101】
一般式(2−2)で表される顔料のR、R、A、R55〜R59、m、nの好ましい置換基、範囲は、一般式(2−1)のR21、R22、A’、R55〜R59、m、nと同じである。
【0102】
前記一般式(2−2)で表されるアゾ顔料が、下記一般式(2−3)で表わされることが好ましい。
【0103】
【化14】

【0104】
(一般式(2−3)中、Rはアミノ基、脂肪族オキシ基、脂肪族基、アリール基、又はヘテロ環基を表す。Rは置換基を表す。R56及びR58は水素原子又は置換基を表す。mは0〜5の整数を表し、nは1〜4の整数を表す。R56とR58は互いに結合し、5〜6員環を形成していてもよい。n=2の場合は、R、R、R56又はR58を介した2量体を表す。n=3の場合は、R、R、R56又はR58を介した3量体を表す。n=4の場合はR、R、R56又はR58を介した4量体を表す。一般式(2−3)がイオン性親水性基を有することはない。)
【0105】
一般式(2−3)で表される顔料のR、R、A、R56、R58、m、nの好ましい置換基、範囲は、一般式(2−1)のR21、R22、A’、R56、R58、m、nと同じである。
【0106】
本発明は、一般式(1)、一般式(2−1)及び一般式(3)で表されるアゾ顔料の互変異性体もその範囲に含むものである。一般式(1)、一般式(2−1)及び一般式(3)は、化学構造上取りうる数種の互変異性体の中から極限構造式の形で示しているが、記載された構造以外の互変異性体であってもよく、複数の互変異性体を含有した混合物として用いてもよい。
例えば、一般式(1)で表される顔料には、下記一般式(1’)で表されるアゾ−ヒドラゾンの互変異性体が考えられる。
本発明は、一般式(1)で表されるアゾ顔料の互変異性体である以下の一般式(1’)で表される化合物もその範囲に含むものである。
【0107】
【化15】

【0108】
一般式(1’)中、R、R、A、m、nは一般式(1)で定義したものと同じである。一般式(1’)中、G’は一般式(1)で定義したGに対応する基である。一般式(1’)がイオン性親水性基を有することはない。
【0109】
一般式(1)及び一般式(2−1)で表されるアゾ顔料のうち、前述したように特に好ましいアゾ顔料の一般式の例としては、下記一般式(3−1)〜一般式(3−4)で表されるアゾ顔料を挙げることができる。上記一般式(1)で表される顔料は、下記一般式(3−1)〜一般式(3−4)で表されるアゾ顔料であることが好ましい。
【0110】
以下、一般式(3−1)〜一般式(3−4)により表されるアゾ顔料、その互変異性体、それらの塩又は水和物について詳細に説明する。
【0111】
【化16】

【0112】
(一般式(3−1)〜一般式(3−4)中、R、R、m、及びnは一般式(1)及び一般式(2−1)で定義したものと同じである。Xは炭素原子又は窒素原子を表す。Ax、及びBxは、一般式(2−1)のA’で定義した(A−1)〜(A−18)、(A−20)〜(A−28)、(A−30)〜(A−32)の中で該当するものを表す。R23は一般式(2−1)で規定したR51、R54、R57、R58等の置換基の内、該当する置換基からカルボニル基を除いた置換基を表す。それぞれ形成されるヘテロ環基は、一般式(2−1)のA’で定義した基の中で該当するものを表す。Yxは該窒素原子及び炭素原子と共に一般式(2−1)のR55で定義したへテロ環基のうち該当するものを表す。R23は一般式(2−1)で規定したR51、R54、R58等の置換基の内、該当する置換基からカルボニル基を除いた置換基を表す。R’は、一般式(1)で定義したRのアミノ基から−NH−を除いた相当する置換基を表す。一般式(3−1)〜一般式(3−4)がイオン性親水性基を有することはない。)
【0113】
上記一般式(1)、(2−1)、(2−2)、(2−3)、(3)、(3−1)〜(3−4)で表されるアゾ顔料において多数の互変異性体が考えられる。
また、本発明において、一般式(1)で表されるアゾ顔料は、分子内水素結合又は分子内交叉水素結合を形成する置換基を有することが好ましい。少なくとも1個以上の分子内水素結合を形成する置換基を有することがより好ましく、少なくとも1個以上の分子内交叉水素結合を形成する置換基を有することが特に好ましい。
【0114】
この構造が好ましい要因としては、一般式(3−1)〜(3−4)で示すようにアゾ顔料構造に含有するヘテロ環基を構成する窒素原子、ナフタレン置換基のヒドロキシ基の水素原子及び酸素原子、及びアゾ基又はその互変異性体であるヒドラゾン基の窒素原子、あるいはアゾ顔料構造に含有するアゾ成分に置換するカルボニル基、ナフタレン置換基のヒドロキシ基の水素原子及び酸素原子、及びアゾ基又はその互変異性体であるヒドラゾン基の窒素原子が分子内の交叉水素結合を容易に形成し易いことが挙げられる。
その結果、分子の平面性が上がり、更に分子内・分子間相互作用が向上し、一般式(3−1)〜一般式(3−4)で表されるアゾ顔料の結晶性が高くなり(高次構造を形成し易くなり)、顔料としての要求性能である、光堅牢性、熱安定性、湿熱安定性、耐水性、耐ガス性及び又は耐溶剤性が大幅に向上するため、更に好ましい例となる。
この観点からも、一般式(1)、(2−1)(2−2)及び(2−3)で表される顔料は、一般式(3)、(3−1)〜(3−4)で表される顔料であることが好ましく、一般式(3)、(3−2)又は(3−4)で表される顔料がより好ましく、一般式(3)で表される顔料が特に好ましい。
【0115】
以下に前記一般式(1)で表されるアゾ顔料及びアゾ化合物の具体例を以下に示すが、本発明に用いられるアゾ顔料及び本発明のアゾ化合物は、下記の例に限定されるものではない。また、以下の具体例の構造は化学構造上取りうる数種の互変異性体の中から極限構造式の形で示されるが、記載された構造以外の互変異性体構造であってもよいことは言うまでもない。
【0116】
【化17】

【0117】
【化18】

【0118】
【化19】

【0119】
【化20】

【0120】
【化21】

【0121】
【化22】

【0122】
【化23】

【0123】
【化24】

【0124】
【化25】

【0125】
【化26】

【0126】
【化27】

【0127】
【化28】

【0128】
【化29】

【0129】
【化30】

【0130】
【化31】

【0131】
【化32】

【0132】
【化33】

【0133】
【化34】

【0134】
【化35】

【0135】
【化36】

【0136】
【化37】

【0137】
【化38】

【0138】
一般式(1)で表される顔料は、化学構造式が一般式(1)又はその互変異性体であればよく、多形とも呼ばれるいかなる結晶形態の顔料であってもよい。
【0139】
結晶多形は、同じ化学組成を有するが、結晶中におけるビルディングブロック(分子又はイオン)の配置が異なることを言う。結晶構造によって化学的及び物理的性質が決定され、各多形は、レオロジー、色、及び他の色特性によってそれぞれ区別することができる。また、異なる多形は、X−Ray Diffraction(粉末X線回折測定結果)やX−Ray Analysis(X線結晶構造解析結果)によって確認することもできる。
【0140】
本発明の一般式(2)で表される顔料に結晶多形が存在する場合、どの多形であってもよく、また2種以上の多形の混合物であってもよいが、結晶型が単一のものを主成分とすることが好ましい。すなわち結晶多形が混入していないものが好ましく、単一の結晶型を有するアゾ顔料の含有量はアゾ顔料全体に対し70%〜100%、好ましくは80%〜100%、より好ましくは90%〜100%、更に好ましくは95%〜100、特に好ましくは100%である。単一の結晶型を有するアゾ顔料を主成分とすることで、色素分子の配列に対して規則性が向上し、分子内・分子間相互作用が強まり高次な3次元ネットワークを形成しやすくなる。その結果として色相の向上・光堅牢性・熱堅牢性・湿度堅牢性・酸化性ガス堅牢性及び耐溶剤性等、顔料に要求される性能の点で好ましい。
アゾ顔料における結晶多形の混合比は、単結晶X線結晶構造解析、粉末X線回折(XRD)、結晶の顕微鏡写真(TEM)、IR(KBr法)等の固体の物理化学的測定値から確認できる。
【0141】
上述した互変異性及び/又は結晶多形の制御は、カップリング反応の際の製造条件で制御することができる。
【0142】
また、本発明において一般式(1)で表されるアゾ顔料は、酸基のある場合には、酸基の一部あるいは全部が塩型のものであってもよく、塩型の顔料と遊離酸型の顔料が混在していてもよい。上記の塩型の例としてNa、Li、K等のアルカリ金属の塩、アルキル基若しくはヒドロキシアルキル基で置換されていてもよいアンモニウムの塩、又は有機アミンの塩が挙げられる。有機アミンの例として、低級アルキルアミン、ヒドロキシ置換低級アルキルアミン、カルボキシ置換低級アルキルアミン及び炭素数2〜4のアルキレンイミン単位を2〜10個有するポリアミン等が挙げられる。これらの塩型の場合、その種類は1種類に限られず複数種混在していてもよい。
【0143】
更に、本発明で使用する顔料の構造において、その1分子中に酸基が複数個含まれる場合は、その複数の酸基は塩型あるいは酸型であり互いに異なるものであってもよい。
【0144】
本発明において、前記一般式(1)で表されるアゾ顔料は、結晶中に水分子を含む水和物であってもよい。
【0145】
〔一般式(1)で表されるアゾ顔料の製造方法〕
次に本発明の製造方法について説明する。
本発明の製造方法は、前記一般式(1)で表されるアゾ化合物と、有機酸又は有機酸を含む良溶媒とを含む溶液(A)を調整する工程、及び、
該溶液(A)と貧溶媒とを混合することによりアゾ顔料を析出する工程
を含む。
【0146】
本発明の製造方法の好ましい態様として、下記一般式(9)で表されるアゾ化合物と、有機酸又は有機酸を含む良溶媒とを含む溶液(9A)を調製する工程、及び、
溶液(9A)と貧溶媒とを混合することによりアゾ顔料を析出する工程
を含む下記一般式(9)で表されるアゾ顔料の製造方法を挙げることができる。
【0147】
【化39】

【0148】
式(9)で表されるアゾ顔料がCuKα特性X線回折におけるブラッグ角(2θ±0.5°)が7.1°、25.3°、26.0°及び27.2°に特徴的なX線回折ピークを有することが好ましい。以下CuKα特性X線回折におけるブラッグ角(2θ±0.5°)が7.1°、25.3°、26.0°及び27.2°に特徴的なX線回折ピークを有する式(9)で表されるアゾ顔料を「α型」と称する場合がある。α型アゾ顔料は色相の点で優れる。
【0149】
〔ジアゾ化工程〕
ジアゾニウム塩の調製及びジアゾニウム塩と式(2)で表される化合物とのカップリング反応は、慣用法によって実施できる。
【0150】
ヘテロ環アミンのジアゾニウム塩調製は、例えば酸(例えば、塩酸、硫酸、リン酸、酢酸、プロピオン酸、メタンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸等)含有反応媒質中で、ニトロソニウムイオン源、例えば亜硝酸、亜硝酸塩又はニトロシル硫酸を用いる慣用のジアゾニウム塩調整方法が適用できる。
【0151】
より好ましい酸の例としては、酢酸、プロピオン酸、メタンスルホン酸、リン酸、硫酸を単独又は併用して用いる場合が挙げられ、その中でリン酸、又は酢酸と硫酸の併用系、酢酸とプロピオン酸の併用系、酢酸とプロピオン酸と硫酸の併用系が更に好ましく、酢酸とプロピオン酸の併用系、酢酸とプロピオン酸と硫酸の併用系が特に好ましい。
【0152】
反応媒質(溶媒)の好ましい例としては、有機酸、無機酸を用いることが好ましく、特にリン酸、硫酸、酢酸、プロピオン酸、メタンスルホン酸が好ましく、その中でも酢酸及び又はプロピオン酸が好ましい。
【0153】
好ましいニトロソニウムイオン源の例としては、上記の好ましい酸含有含有反応媒質中でニトロシル硫酸を用いることが安定にかつ効率的にジアゾニウム塩を調製できる。
【0154】
ジアゾ成分に対する溶媒の使用量は、0.5〜50質量倍が好ましく、より好ましくは1〜20質量倍であり、特に3〜15質量倍が好ましい。
【0155】
本発明において、式(2)のジアゾ成分は溶媒に分散している状態であっても、ジアゾ成分の種類によっては溶解液の状態になっていてもどちらでも良い。
【0156】
ニトロソニウムイオン源の使用量はジアゾ成分に対して0.95〜5.0当量が好ましく、より好ましくは1.00〜3.00当量であり、特に1.00〜1.10当量であることが好ましい。
【0157】
反応温度は、−15℃〜40℃が好ましく、より好ましくは−5℃〜35℃であり、更に好ましくは0℃〜30℃である。−15℃未満では反応速度が顕著に遅くなり合成に要する時間が著しく長くなるため経済的でなく、また40℃を超える高温で合成する場合には、副生成物の生成量が増加するため好ましくない。
【0158】
反応時間は、30分から300分が好ましく、より好ましくは30分から200分であり、更に好ましくは30分から150分である。
【0159】
〔カップリング反応工程〕
カップリング反応する工程は、酸性反応媒質中〜塩基性反応媒質中で実施することができるが、本発明のアゾ顔料は酸性〜中性反応媒質中で実施することが好ましく、特に酸性反応媒質中で実施することがジアゾニウム塩の分解を抑制し効率良くアゾ顔料に誘導することができる。
【0160】
反応媒質(溶媒)の好ましい例としては、有機酸、無機酸、有機溶媒を用いることができるが、特に有機溶媒が好ましく、反応時に液体分離現象を起こさず、溶媒と均一な溶液を呈する溶媒が好ましい。例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、t−ブチルアルコール、アミルアルコール等のアルコール性有機溶媒、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン系有機溶媒、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1,3−プロパンジオール等のジオール系有機溶媒、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル等のエーテル系有機溶媒、テトラヒドロフラン、ジオキサン、アセトニトリル等が挙げられる、これらの溶媒は2種類以上の混合液であってもよい。
【0161】
好ましくは、極性パラメータ(ET)の値が40以上の有機溶媒である。なかでも溶媒分子中に水酸基を2個以上有するグリコール系の溶媒、あるいは炭素原子数が3個以下のアルコール系溶媒、総炭素数5以下のケトン系溶媒、好ましくは炭素原子数が2以下のアルコール溶媒(例えば、メタノール、エチレングリコール)、総炭素数4以下のケトン系溶媒(例えばアセトン、メチルエチルケトン)が好ましい。またこれらの混合溶媒も含まれる。
【0162】
溶媒の使用量は上記式(2)で表されるカップリング成分の1〜100質量倍が好ましく、より好ましくは1〜50質量倍であり、更に好ましくは2〜30質量倍である。
【0163】
本発明において、式(2)のカップリング成分は溶媒に分散している状態であっても、カップリング成分の種類によっては溶解液の状態になっていてもどちらでも良い。
【0164】
カップリング成分の使用量は、アゾカップリング部位あたり、ジアゾ成分が0.95〜5.0当量が好ましく、より好ましくは1.00〜3.00当量であり、特に1.00〜1.50当量であることが好ましい。
【0165】
反応温度は、−30℃〜30℃が好ましく、より好ましくは−15℃〜10℃であり、更に好ましくは−10℃〜5℃である。−30℃未満では反応速度が顕著に遅くなり合成に要する時間が著しく長くなるため経済的でなく、また30℃を超える高温で合成する場合には、副生成物の生成量が増加するため好ましくない。
【0166】
反応時間は、30分から300分が好ましく、より好ましくは30分から200分であり、更に好ましくは30分から150分である。
【0167】
反応後、ジアゾニウム塩をクエンチするために尿素などを加えても加えなくてもよい。
【0168】
本発明のアゾ顔料の合成方法においては、これらの反応によって得られる生成物(粗アゾ顔料)は通常の有機合成反応の後処理方法に従って処理した後、精製してあるいは精製せずに供することができる。
【0169】
すなわち、例えば、反応系から遊離したものを精製せずに、あるいは再結晶、造塩等にて精製する操作を単独、あるいは組み合わせて行ない、供することができる。
【0170】
また、反応終了後、反応溶媒を留去して、あるいは留去せずに水、又は氷にあけ、中和してあるいは中和せずに、遊離したものをあるいは有機溶媒/水溶液にて抽出したものを、精製せずにあるいは再結晶、晶析、造塩等にて精製する操作を単独に又は組み合わせて行なった後、供することもできる。
【0171】
更に詳細に本発明のアゾ顔料の合成方法について説明する。
(一般式(1)で表されるアゾ化合物)
前記一般式(1)で表されるアゾ化合物はカップリング反応により製造することができる。
【0172】
例えば、下記一般式(4)で表されるヘテロ環アミンを酸性条件下でジアゾ化し、下記一般式(5)で表される化合物と酸性状態でカップリング反応を行い、常法による後処理を行って本発明の一般式(6)で表されるアゾ化合物を製造することができる。一般式(4)に代えて一般式(1)のAに対応するヘテロ環アミンを用い、同様の操作を行うことにより一般式(1)で表されるアゾ化合物を製造することができる。
【0173】
【化40】

【0174】
(式中、R55、R58及びR59は、前記一般式(2−1)で定義したものと同義である。)
【0175】
【化41】

【0176】
(式中、R、R及びmは、前記一般式(1)で定義したものと同義である。)
以下に反応スキームを示す。
【0177】
【化42】

【0178】
(式中G、R〜R、R55、R58、R59、n及びmは一般式(1)及び一般式(2−1)で定義したものと同義である。)
【0179】
上記一般式(4)及び(A−1)〜(A−32)のアミノ体に対応するヘテロ環アミンは、市販品で入手することができるものもあるが、一般的には公知慣用の方法、例えば特許第4022271号公報、に記載の方法で製造することができる。上記一般式(5)で表されるヘテロ環カプラ−は、市販品で入手することもできるが、特開2008−13472号公報に記載の方法及びそれに準じた方法で製造することができる。上記反応スキームで表されるヘテロ環アミンのジアゾニウム化反応は例えば、硫酸、リン酸、酢酸、塩酸及びこれらの混合溶媒などの酸性溶媒中、亜硝酸ナトリウム、ニトロシル硫酸、亜硝酸イソアミル等の試薬と15℃以下の温度で10分〜6時間程度反応させることで行うことができる。カップリング反応は、上述の方法で得られたジアゾニウム塩と上記一般式(5)で表される化合物とを40℃以下、好ましくは25℃以下で10分〜12時間程度反応させることで行うことが好ましい。
一般式(1)のnが2以上の場合の合成方法は、一般式(4)又は一般式(5)のR〜R、R55、R59、Z等において、置換可能な2価、3価あるいは4価の置換基を導入した原料を合成し、前記スキームと同様に合成することができる。
【0180】
〔一般式(1)で表されるアゾ化合物と、酸若しくは塩基又は酸若しくは塩基を含む良溶媒とを含む溶液(A)を調整する工程〕
溶液(A)は、一般式(1)で表されるアゾ化合物と、酸若しくは塩基又は酸若しくは塩基を含む良溶媒とを含む。
ここで良溶媒と貧溶媒との組み合わせはアゾ化合物の溶解度に十分な差があることが必要であり、アゾ化合物に合わせて好ましいものを選択する必要があるが、本発明における工程を可能にする組み合わせであればいかなる選択も可能である。
【0181】
良溶媒(第1溶媒)は用いるアゾ化合物を溶解することが可能で、前記貧溶媒(第2溶媒)と相溶する若しくは均一に混ざるものであれば特に限定されない。アゾ化合物の良溶媒への溶解性はアゾ顔料の溶解度が0.2質量%以上であることが好ましく、0.5質量%以上であることがより好ましい。アゾ化合物の良溶媒への溶解度に特に上限はないが、50質量%以下であることが実際的である。この溶解度は酸又はアルカリの存在下で溶解された場合の溶解度であってもよい。なお本発明においては、互いに構造が異なる2種以上のアゾ化合物及びアゾ顔料をそれぞれ良溶媒に溶解する態様を含むが、このとき用いる2種以上の良溶媒は互いに異なるものであっても、同じものであってもよい。
第1溶媒と第2溶媒との相溶性若しくは均一混合性は、第1溶媒の第2溶媒に対する溶解量が30質量%以上であることが好ましく、50質量%以上であることがより好ましい。第1溶媒の第2溶媒に対する溶解量に特に上限はないが、任意の割合で混じり合うことが実際的である。
【0182】
良溶媒としては、例えば、スルホン酸系溶媒、水性溶媒、アルコール化合物溶媒、アミド化合物溶媒、ケトン化合物溶媒、エーテル化合物溶媒、芳香族化合物溶媒、二硫化炭素溶媒、脂肪族化合物溶媒、ニトリル化合物溶媒、スルホキシド化合物溶媒、ハロゲン化合物溶媒、エステル化合物溶媒、イオン性液体、これらの混合溶媒などが挙げられ、スルホン酸系溶媒、水性溶媒、アルコール化合物溶媒、ケトン化合物溶媒、エーテル化合物溶媒、スルホキシド化合物溶媒、エステル化合物溶媒、アミド化合物溶媒、又はこれらの混合物が好ましく、スルホン酸系溶媒、水性溶媒、アルコール化合物溶媒、エステル化合物溶媒、スルホキシド化合物溶媒又はアミド化合物溶媒が好ましく、スルホン酸系溶媒、水性溶媒、スルホキシド化合物溶媒又はアミド化合物溶媒が更に好ましく、スルホン酸系溶媒が特に好ましい。
【0183】
スルホン酸系溶媒としては、トリフルオロ酢酸、メタンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、パラトルエンスルホン酸、硫酸などが挙げられ、なかでも硫酸、メタンスルホン酸であることが好ましく、メタンスルホン酸であることがより好ましい。
【0184】
また、溶液(A)における一般式(1)で表されるアゾ化合物の濃度としては、溶解時の条件におけるアゾ化合物の良溶媒に対する飽和濃度乃至これの1/100程度の範囲が好ましい。
溶液(A)の調製条件に特に制限はなく、常圧から亜臨界、超臨界条件の範囲を選択できる。常圧での温度は−10〜150℃が好ましく、−5〜130℃がより好ましく、0〜100℃が特に好ましい。
【0185】
良溶媒の具体例として列挙したものと後述の貧溶媒として列挙したものとで共通するものもあるが、良溶媒及び貧溶媒として同じものを組み合わせることはなく、採用する各アゾ化合物との関係で良溶媒に対する溶解度が貧溶媒に対する溶解度より十分高ければよく、例えばその溶解度差が0.2質量%以上であることが好ましく、0.5質量%以上であることがより好ましい。良溶媒と貧溶媒に対する溶解度の差に特に上限はないが、50質量%以下であることが実際的である。
【0186】
アゾ化合物を良溶媒中に均一に溶解するとき、酸若しくはアルカリなどの顔料溶解促進剤を添加して溶解してもよい。一般に分子内にアルカリ性で解離可能な基を有する顔料の場合はアルカリの添加が、アルカリ性で解離する基が存在せず、プロトンが付加しやすい窒素原子等を分子内に多く有するときは酸の添加が好ましい。例えば、キナクリドン、ジケトピロロピロール、ジスアゾ縮合化合物顔料はアルカリ性で溶解される。
【0187】
アルカリとしては、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム、水酸化バリウムなどの無機塩基、又はトリアルキルアミン、ジアザビシクロウンデセン(DBU)、金属アルコキシドなどの有機塩基が挙げられ、なかでも、トリアルキルアミン、金属アルコキシドが好ましく、金属アルコキシドがより好ましい。アルカリの添加量は特に限定されないが、無機塩基の場合、アゾ化合物に対して1.0〜30モル当量であることが好ましく、1.0〜25モル当量であることがより好ましく、1.0〜20モル当量であることが特に好ましい。有機塩基の場合、アゾ化合物に対して1.0〜100モル当量であることが好ましく、5.0〜100モル当量であることがより好ましく、20〜100モル当量であることが特に好ましい。
【0188】
酸としては、硫酸、塩酸、酢酸、トリフルオロ酢酸、シュウ酸、メタンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸などの酸が挙げられ、なかでも硫酸、メタンスルホン酸であることが好ましく、メタンスルホン酸であることがより好ましい。酸の添加量は特に限定されないが、塩基に比べて過剰量用いられる場合が多い。酸の使用量はアゾ化合物に対して体積比で2倍以上50倍以下が好ましく、2倍以上30倍以下がより好ましく、2倍以上10倍以下が更に好ましく、2倍以上5倍以下が特に好ましい。2倍以上であれば粘度が高くなりすぎず、ハンドリング適正に優れるため好ましい。
【0189】
本発明においては、アルカリ又は酸を有機溶媒と混合して、アゾ化合物の良溶媒として用いることもできる。
アルカリ又は酸を有機溶媒と混合して、アゾ化合物の良溶媒として用いる際は、アルカリ又は酸を完全に溶解させるため、若干の水や低級アルコールなどのアルカリ又は酸に対して高い溶解度をもつ溶剤を、有機溶媒に添加することができる。水や低級アルコールの量は、溶液(A)全量に対して、50質量%以下が好ましく、30質量%以下がより好ましい。具体的には、水、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、ブチルアルコールなどを用いることができる。
【0190】
良溶媒中においてアゾ化合物の溶解が進む一方、アゾ化合物分子の分解が進んでしまうことがある。顔料分子の分解については後述するが、溶液(A)と貧溶媒とを接触させる時点でのアゾ化合物の分解を抑えることが好ましい。特に、顔料溶解促進剤の作用によりアゾ化合物が溶解されると同時に、アゾ化合物分子の分解が進んでしまう場合は、溶液(A)と貧溶媒とを接触させる直前に、良溶媒に顔料溶解促進剤を添加することが好ましい。このとき、例えば、アゾ化合物を良溶媒(例えばジメチルスルホキシド)に添加し、アゾ化合物が完全には溶解していない分散液として準備しておき、上記酸若しくはアルカリからなる顔料溶解促進剤を添加し顔料溶液とし、その直後に顔料溶液と貧溶媒とを混合する態様が好ましい。
【0191】
溶液(A)の粘度は0.5〜80.0mPa・sであることが好ましく1.0〜50.0mPa・sであることがより好ましい。
【0192】
本発明において、前記一般式(1)又は式(9)で表されるアゾ化合物と、有機酸又は有機酸を含む良溶媒とを含む溶液(A)又は溶液(9A)を調整する工程において、該溶液(A)又は溶液(9A)が、更に一般式(1)又は式(9)で表されるアゾ化合物とは異なる構造を有する顔料誘導体を含むことが好ましい。溶液(A)又は溶液(9A)が一般式(1)又は式(9)で表されるアゾ化合物と異なる構造を有する顔料誘導体を含むことにより結晶成長を抑制して、過分散による凝集を抑制することができる。その結果分散性、分散安定性及び耐光性の点で優れるためである。
【0193】
一般式(1)又は式(9)で表されるアゾ化合物と異なる構造を有する顔料誘導体としては、アゾ顔料誘導体であることが好ましく、ヘテリルアゾ顔料誘導体が更に好ましい。母体骨格であるアゾ顔料と同骨格であるほど顔料への吸着性が向上するためである。
従来の方法により得られるアゾ顔料は粒子サイズが300nm〜1000nmであるが、本発明の方法により粒子サイズが50nm〜300nmのアゾ顔料を析出することができる。
溶液(A)が更に一般式(1)又は式(9)で表されるアゾ化合物とは異なる構造を有する顔料誘導体を含むことで、粒子サイズが10nm〜100nmのアゾ顔料を析出することができるため好ましい。
アゾ顔料を析出することで、粒子サイズを所望の範囲とすることができ、着色組成物やインクに用いた際に、アゾ顔料の凝集を抑制し、諸耐性が向上する。また、α型結晶変換を確実に行うことができる。
ヘテリルアゾ顔料誘導体としては、下記一般式(S1)で表されるアゾ化合物である場合が好ましい。
【0194】
【化43】

【0195】
(一般式(S1)中、G、R、R、A、m、nは一般式(1)におけるG、R、R、A、m、nと同義であるが、一般式(1)と一般式(S1)とが同一の構造を表す場合はない。一般式(S1)において、イオン性親水性基は有してもよい)
【0196】
ヘテリルアゾ顔料誘導体は、前述したように、母体骨格であるヘテリルアゾ顔料と同骨格であるほど更に顔料への吸着性が向上する。このため、一般式(1)又は式(9)で表されるアゾ化合物と異なる構造を有する顔料誘導体は、上記一般式(S1)で表されるアゾ化合物であることが好ましい。一般式(1)と一般式(S1)とは同一の一般式を表すが、その使用の態様において、置換基の選択により同一の構造を表す場合はない。
前記一般式(S1)で表されるアゾ化合物は、一般式(S2)で表されるアゾ化合物である場合が好ましい。
【0197】
【化44】

【0198】
(一般式(S2)中、RS2〜RS6、及びnは一般式(S1)で定義したR及びnと同じである。RS21は一般式(1)におけるRと同義である。R55及びR59は一般式(2)で定義したものと同じである。Zはハメットのσp値が0.2以上の電子求引性基を表す。一般式(S2)において、イオン性親水性基は有してもよい)
【0199】
Zで表されるハメットのσp値が0.2以上の置換基としては前述の一般式(2)のR58の説明で述べた基が挙げられる。
前記一般式(S1)で表されるアゾ化合物は、一般式(S3)で表されるアゾ化合物である場合が好ましい。
【0200】
【化45】

【0201】
(一般式(S3)中、RS2〜RS6、R55、R59、Z及びnは一般式(S2)で定義したものと同じである。RS10は水素原子、アリール基、ヘテロアリール基又は脂肪族基を表す。一般式(S3)において、イオン性親水性基は有してもよい)
【0202】
本発明の効果の点で、ヘテリルアゾ顔料誘導体は、分子量100〜2000の置換基を有することが好ましい。分子量140〜1000の置換基を有することがより好ましく、分子量140〜500の置換基を有することが更に好ましい。ここで、分子量100〜2000の置換基とは分子量101〜2001の化合物の水素原子を1つ除いたものをいう。また、分子量100〜2000の置換基は、炭素原子数5〜100の置換基であることが好ましく、炭素原子数7〜50の置換基であることがより好ましく、炭素原子数8〜20の置換基であることが更に好ましい。
分子量100〜2000の置換基は嵩高い置換基であることが好ましく、例えば、カルバゾールアミノ基、ベンズイミダゾリル基、ナフチル基、アントラニル基、キノリニル基、t−ブチル基等が挙げられ、好ましくはカルバゾールアミノ基、ベンズイミダゾリル基、ナフチル基、t−ブチル基であり、より好ましくはカルバゾールアミノ基、ベンズイミダゾリル基である。
ヘテリルアゾ顔料誘導体が嵩高い置換基を有することにより顔料の結晶成長を抑制する効果が向上する点で好ましい。
【0203】
嵩高い置換基としては、例えば、ヘテロアリール基又はアリール基を挙げることができる。好ましくは炭素原子数100〜1000のヘテロアリール基又は炭素原子数100〜1000アリール基であり、より好ましくは炭素原子数140〜500のヘテロアリール基又は炭素原子数140〜500のアリール基である。中でも、ヘテロアリール基が好ましく、親水性基を有するヘテロアリール基がより好ましい。これらは更に置換基を有していてもよく、置換基を有する場合の置換基は置換基を有していてもよいカルバモイル基、アミノ基、ニトロ基、スルホ基、カルボキシル基、iso-プロピル基又はt−ブチル基を挙げることができ、スルホ基、又はt−ブチル基が好ましい。
【0204】
ヘテリルアゾ顔料誘導体は嵩高い置換基を有する一般式(S3)で表される化合物であることが好ましく、一般式(S3)の中でも、RS2〜RS6が水素原子、脂肪族オキシカルボニル基、置換基を有していてもよいカルバモイル基であって、R55が、窒素原子との結合部位の隣接位に窒素原子を含有する芳香族5〜6員ヘテロ環基、ナフチル基、アントラニル基、キノリニル基、置換基を有していてもよいフェニル基であってであって、R59が水素原子、脂肪族基であって、Zがアシル基、カルバモイル基、アルキルオキシカルボニル基、シアノ基、アルキルスルホニル基、スルファモイル基であって、Zがカルバモイル基、アルキルオキシカルボニル基、シアノ基であって、nが1又は2であって、RS10がエチルカルバゾールアミノ基、ベンズイミダゾリル基、ナフチル基、アントラニル基、キノリニル基、tブチル基である化合物が好ましく、RS2〜RS6が水素原子又はであって、R55が(Y−1)〜(Y−13)のいずれかであって、R59が水素原子、脂肪族基であって、Zがカルバモイル基、アルキルオキシカルボニル基、シアノ基又はであって、nが1又は2であって、RS10がエチルカルバゾールアミノ基、ベンズイミダゾリル基である化合物がより好ましい。
顔料の結晶成長を抑制する効果が向上するためである。
【0205】
上記各一般式で表されるアゾ化合物において多数の互変異性体が考えられる。
また、本発明において、一般式(1)で表されるアゾ化合物は、分子内水素結合又は分子内交叉水素結合を形成する置換基を有することが好ましい。少なくとも1個以上の分子内水素結合を形成する置換基を有することがより好ましく、少なくとも1個以上の分子内交叉水素結合を形成する置換基を有することが特に好ましい。
【0206】
この構造が好ましい要因としては、アゾ化合物構造に含有する複素環基を構成する窒素原子、ナフタレン置換基のヒドロキシ基の水素原子及び酸素原子、及びアゾ基又はその互変異性体であるヒドラゾン基の窒素原子、あるいはアゾ化合物構造に含有するアゾ成分に置換するカルボニル基、ナフタレン置換基のヒドロキシ基の水素原子及び酸素原子、及びアゾ基又はその互変異性体であるヒドラゾン基の窒素原子が分子内の交叉水素結合を容易に形成し易いことが挙げられる。
その結果、分子の平面性が上がり、顔料の母体骨格と相互作用しやすくなり、分散性、分散安定性及び耐光性等が向上することが期待できる。ヘテリルアゾ顔料誘導体は嵩高い置換基を有することがより好ましい。
結晶成長を抑制する効果が向上するためである。
【0207】
以下に前記一般式(S1)〜(S3)で表されるアゾ化合物の具体例を以下に示すが、本発明に用いられるアゾ化合物は、下記の例に限定されるものではない。また、以下の具体例の構造は化学構造上取りうる数種の互変異性体の中から極限構造式の形で示されるが、記載された構造以外の互変異性体構造であってもよいことは言うまでもない。なお、以下の化学式において、Meはメチル基、Etはエチル基、Buはn−ブチル基、Phはフェニル基を示す。
【0208】
【化46】

【0209】
【化47】

【0210】
【化48】

【0211】
【化49】

【0212】
【化50】

【0213】
【化51】

【0214】
【化52】

【0215】
【化53】

【0216】
一般式(S2)及び(S3)で表されるアゾ顔料誘導体は、化学構造式が一般式(S2)及び(S3)又はその互変異性体であればよい。
【0217】
本発明において、前記一般式(S2)及び(S3)で表されるアゾ顔料誘導体は、結晶中に水分子を含む水和物であってもよい。
【0218】
アゾ顔料誘導体の製造方法の一例について説明する。例えば、上記一般式(S2)で表されるアゾ顔料誘導体を製造する場合、前記一般式(1)で表される化合物の製造と同様に、対応する複素環アミンを酸性でジアゾニウム化し、ナフトール誘導体と酸性状態でカップリング反応を行い、常法による後処理を行って一般式(S2)で表されるアゾ化合物を製造することができる。一般式(S2)のAに対応する複素環又は芳香族環アミンを用い、同様の操作を行うことにより一般式(S2)で表されるアゾ顔料誘導体を製造することができる。
【0219】
複素環アミンは、市販品で入手することができるものもあるが、一般的には公知慣用の方法、例えば特許第4022271号公報、に記載の方法で製造することができる。ナフトール誘導体は、市販品で入手することもできるが、特開2008−13472号公報に記載の方法及びそれに準じた方法で製造することができる。上記反応スキームで表される複素環アミンのジアゾニウム化反応は例えば、硫酸、リン酸、酢酸などの酸性溶媒中、亜硝酸ナトリウム、ニトロシル硫酸、亜硝酸イソアミル等の試薬と15℃以下の温度で10分〜6時間程度反応させることで行うことができる。カップリング反応は、上述の方法で得られたジアゾニウム塩と上記ナフトール誘導体とを40℃以下、好ましくは25℃以下で10分〜12時間程度反応させることで行うことができる。
【0220】
〔溶液(A)と貧溶媒とを混合することによりアゾ顔料を析出する工程〕
貧溶媒(第2溶媒)は特に限定されないが、アゾ化合物の溶解度が0.02質量%以下であることが好ましく、0.01質量%以下であることがより好ましい。アゾ化合物の貧溶媒への溶解度に特に下限はないが、0.000001質量%以上が実際的である。この溶解度は酸又はアルカリの存在下で溶解された場合の溶解度であってもよい。また、良溶媒と貧溶媒との相溶性若しくは均一混合性は、良溶媒の貧溶媒に対する溶解量が30質量%以上であることが好ましく、50質量%以上であることがより好ましい。
【0221】
貧溶媒としては、例えば、水性溶媒、アルコール化合物溶媒、ケトン化合物溶媒、エーテル化合物溶媒、芳香族化合物溶媒、二硫化炭素溶媒、脂肪族化合物溶媒、ニトリル化合物溶媒、ハロゲン化合物溶媒、エステル化合物溶媒、イオン性液体、これらの混合溶媒などが挙げられ、水性溶媒、アルコール化合物溶媒、ケトン化合物溶媒、エーテル化合物溶媒、エステル化合物溶媒、又はこれらの混合物が好ましく、水性溶媒、アルコール化合物溶媒又はエステル化合物溶媒がより好ましい。
【0222】
第1溶媒若しくは第2溶媒として好ましく用いられる具体的な溶媒について以下に説明する。
水性溶媒としては、例えば、水、又は塩酸、水酸化ナトリウム水溶液などが挙げられる。
アルコール化合物溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、n−プロピルアルコール、1−メトキシ−2−プロパノールなどが挙げられる。
アミド化合物溶媒としては、例えば、N,N−ジメチルホルムアミド、1−メチル−2−ピロリドン、2−ピロリジノン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、2−ピロリジノン、ε−カプロラクタム、ホルムアミド、N−メチルホルムアミド、アセトアミド、N−メチルアセトアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルプロパンアミド、ヘキサメチルホスホリックトリアミドなどが挙げられる。
【0223】
ケトン化合物溶媒としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノンが挙げられる。
エーテル化合物溶媒としては、例えば、ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、テトラヒドロフランなどが挙げられる。
芳香族化合物溶媒としては、例えば、ベンゼン、トルエンなどが挙げられる。
脂肪族化合物溶媒としては、例えば、ヘキサンなどが挙げられる。
ニトリル化合物溶媒としては、例えば、アセトニトリルなどが挙げられる。
【0224】
スルホキシド化合物溶媒としては、例えば、ジメチルスルホキシド、ジエチルスルホキド、ヘキサメチレンスルホキシド、スルホランなどが挙げられる。
ハロゲン化合物溶媒としては、例えば、ジクロロメタン、トリクロロエチレンなどが挙げられる。
エステル化合物溶媒としては、例えば、酢酸エチル、乳酸エチル、2−(1−メトキシ)プロピルアセテートなどが挙げられる。
イオン性液体としては、例えば、1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムとPFとの塩などが挙げられる。
【0225】
前記第1溶媒の具体例として列挙したものと、第2溶媒として列挙したものとで共通するものもあるが、第1溶媒及び第2溶媒として同じものを組み合わせることはない。採用する各有機材料との関係で第1溶媒に対する溶解度が、第2溶媒に対する溶解度より十分高ければよい。例えばその溶解度差が0.2質量%以上であることが好ましく、0.5質量%以上であることがより好ましい。有機材料の第1溶媒に対する溶解度と第2溶媒に対する溶解度との差に特に上限はないが、通常用いられる有機材料を考慮すると50質量%以下であることが実際的である。
【0226】
前記溶液(A)と貧溶媒とを混合する際、両者のどちらを添加して混合してもよいが、溶液(A)を貧溶媒に噴流して混合することが好ましく、その際に貧溶媒が撹拌された状態であることが好ましい。
【0227】
アゾ顔料を析出生成させる際の貧溶媒の条件に特に制限はなく、常圧から亜臨界、超臨界条件の範囲を選択できる。常圧での温度は−30〜100℃が好ましく、−10〜60℃がより好ましく、0〜30℃が特に好ましい。
【0228】
撹拌速度は100〜10000rpmが好ましく、150〜8000rpmがより好ましく、200〜6000rpmが特に好ましい。添加にはポンプ等を用いることもできるし、用いなくてもよい。また、液中添加でも液外添加でもよいが、液中添加がより好ましい。更に供給管を介してポンプで液中に連続供給することが好ましい。供給管の内径は0.1〜200mmが好ましく0.2〜100mmがより好ましい。供給管から液中に供給される速度としては1〜10000ml/minが好ましく、5〜5000ml/minがより好ましい。
【0229】
溶液(A)と貧溶媒との混合に当り、レイノルズ数を調節することにより、析出生成させるアゾ顔料の粒子径を制御することができる。ここでレイノルズ数は流体の流れの状態を表す無次元数であり次式で表される。
Re=ρUL/μ ・・・ 数式(1)
数式(1)中、Reはレイノルズ数を表し、ρは溶液(A)の密度[kg/m]を表し、Uは溶液(A)と第2溶媒とが出会う時の相対速度[m/s]を表し、Lは溶液(A)と第2溶媒とが出会う部分の流路若しくは供給口の等価直径[m]を表し、μは溶液(A)の粘性係数[Pa・s]を表す。
【0230】
等価直径Lとは、任意断面形状の配管の開口径や流路に対し等価な円管を想定するとき、その等価円管の直径をいう。等価直径Lは、配管の断面積をA、配管のぬれぶち長さ(周長)又は流路の外周をpとすると下記数式(2)で表される。
L=4A/p ・・・ 数式(2)
配管を通じて溶液(A)を貧溶媒中に注入して粒子を形成することが好ましく、配管に円管を用いた場合には等価直径は円管の直径と一致する。例えば、液体供給口の開口径を変化させて等価直径を調節することができる。等価直径Lの値は特に限定されないが、例えば、上述した供給口の好ましい内径と同義である。
【0231】
溶液(A)と貧溶媒とが出会う時の相対速度Uは、両者が出会う部分の面に対して垂直方向の相対速度で定義される。すなわち、例えば静止している貧溶媒中に溶液(A)を注入して混合する場合は、供給口から注入する速度が相対速度Uに等しくなる。相対速度Uの値は特に限定されないが、例えば、0.5〜100m/sとすることが好ましく、1.0〜50m/sとすることがより好ましい。
【0232】
溶液(A)の密度ρは、選択される材料の種類により定められる値であるが、本発明に好ましく用いられる材料の範囲では、例えば、0.8〜2.0kg/mであることが実際的である。また、溶液(A)の粘性係数μについても用いられる材料や環境温度等により定められる値であるが、その好ましい範囲は、上述した溶液(A)の好ましい粘度と同義である。
【0233】
レイノルズ数(Re)の値は、小さいほど層流を形成しやすく、大きいほど乱流を形成しやすい。例えば、レイノルズ数を60以上で調節してアゾ顔料(粒径ナノメートルサイズの顔料粒子)の粒子径を制御して得ることができ、100以上とすることが好ましく、150以上とすることがより好ましい。レイノズル数に特に上限はないが、例えば、100000以下の範囲で調節して制御することで良好なアゾ顔料を制御して得ることができ好ましい。あるいは、得られるナノ粒子の平均粒径が60nm以下となるようにレイノルズ数を高めた条件としてもよい。このとき、上記の範囲内においては、通常レイノルズ数を高めることで、より粒径の小さなアゾ顔料を制御して得ることができる。
【0234】
貧溶媒の使用量はアゾ化合物に対して体積比で10倍以上500倍以下が好ましく、20倍以上300倍以下がより好ましく、30倍以上200倍以下が更に好ましく、30倍以上100倍以下が特に好ましい。これは、30倍以下だと、粘度が高くなってしまい、また、100倍以上だと、生産性が悪くなってしまうためである。
溶液(A)と貧溶媒との混合比は体積比で1/50〜2/3が好ましく、1/40〜1/2がより好ましく、1/20〜3/8が特に好ましい。
アゾ顔料を析出させた場合液中のアゾ顔料濃度は特に制限されないが、溶媒1000mlに対してアゾ顔料が10〜40000mgの範囲であることが好ましく、より好ましくは20〜30000mgの範囲であり、特に好ましくは50〜25000mgの範囲である。
また、アゾ顔料を生成させる際の調製スケールは、特に限定されないが、貧溶媒の混合量が10〜2000Lの調製スケールであることが好ましく、50〜1000Lの調製スケールであることがより好ましい。
【0235】
アゾ顔料の粒径に関しては、計測法により数値化して集団の平均の大きさを表現する方法があるが、よく使用されるものとして、分布の最大値を示すモード径、積分分布曲線の中央値に相当するメジアン径、各種の平均径(数平均、長さ平均、面積平均、質量平均、体積平均等)などがあり、本発明においては、特に断りのない限り、平均粒径とは数平均径をいう。アゾ顔料(一次粒子)の平均粒径はナノメートルサイズであり、平均粒径が1nm〜0.5μmであることが好ましく、1〜200nmであることがより好ましく、2〜100nmであることが更に好ましく、5〜80nmであることが特に好ましい。なお本発明で形成される粒子は結晶質粒子でも非晶質粒子でもよく、又はこれらの混合物でもよい。
【0236】
また、粒子の単分散性を表す指標として、本発明においては、特に断りのない限り、体積平均粒径(Mv)と数平均粒径(Mn)の比(Mv/Mn)を用いる。アゾ顔料(一次粒子)の単分散性、つまりMv/Mnは、1.0〜2.0であることが好ましく、1.0〜1.8であることがより好ましく、1.0〜1.5であることが特に好ましい。
アゾ顔料の粒径の測定方法としては、顕微鏡法、質量法、光散乱法、光遮断法、電気抵抗法、音響法、動的光散乱法が挙げられ、顕微鏡法、動的光散乱法が特に好ましい。顕微鏡法に用いられる顕微鏡としては、例えば、走査型電子顕微鏡、透過型電子顕微鏡などが挙げられる。動的光散乱法による粒子測定装置として、例えば、日機装社製ナノトラックUPA−EX150、大塚電子社製ダイナミック光散乱光度計DLS−7000シリーズなどが挙げられる(いずれも商品名)。
【0237】
本発明では、アゾ顔料を析出させ分散液を調製するに当り、顔料溶液及び貧溶媒の少なくとも一方に分散剤を含有させることが好ましく、少なくとも顔料溶液に分散剤を含有させることが好ましい。
【0238】
予め分散剤により表面処理を施されたアゾ顔料を用いることも好ましく、アゾ顔料には分散剤の吸着を促進し得るような表面処理が施されていてもよい。分散剤は(1)析出した顔料表面に素早く吸着して、微細なナノ粒子を形成し、かつ(2)これらの粒子が再び凝集することを防ぐ作用を有するものである。
分散剤としては、例えば、アニオン性、カチオン性、両イオン性、ノニオン性若しくは顔料誘導体の高分子分散剤を使用することができる。
【0239】
高分子分散剤としては、その質量平均分子量が1,000〜500,000であることが好ましく、10,000〜500,000であることがより好ましく、10,000〜100,000であることが特に好ましい。
具体的には、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、ポリビニルメチルエーテル、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリアクリルアミド、ビニルアルコール−酢酸ビニル共重合体、ポリビニルアルコール−部分ホルマール化物、ポリビニルアルコール−部分ブチラール化物、ビニルピロリドン−酢酸ビニル共重合体、ポリエチレンオキシド/プロピレンオキシドブロック共重合体、ポリアクリル酸塩、ポリビニル硫酸塩、ポリ(4−ビニルピリジン)塩、ポリアミド、ポリアリルアミン塩、縮合ナフタレンスルホン酸塩、セルロース誘導体、澱粉誘導体などが挙げられる。その他、アルギン酸塩、ゼラチン、アルブミン、カゼイン、アラビアゴム、トンガントゴム、リグニンスルホン酸塩などの天然高分子類も使用できる。なかでも、ポリビニルピロリドンが好ましい。これら高分子化合物は、1種単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができ、また、低分子量の分散剤を組み合わせて用いてもよい。顔料の分散に用いる分散剤に関しては、「顔料分散安定化と表面処理技術・評価」(化学情報協会、2001年12月発行)の29〜46頁に詳しく記載されている。
【0240】
アニオン性分散剤(アニオン性界面活性剤)としては、N−アシル−N−アルキルタウリン塩、脂肪酸塩、アルキル硫酸エステル塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルナフタレンスルホン酸塩、ジアルキルスルホコハク酸塩、アルキルリン酸エステル塩、ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物、ポリオキシエチレンアルキル硫酸エステル塩等を挙げることができる。なかでも、N−アシル−N−アルキルタウリン塩が好ましい。N−アシル−N−アルキルタウリン塩としては、特開平3−273067号明細書に記載されているものが好ましい。これらアニオン性分散剤は、単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0241】
カチオン性分散剤(カチオン性界面活性剤)には、四級アンモニウム塩、アルコキシル化ポリアミン、脂肪族アミンポリグリコールエーテル、脂肪族アミン、脂肪族アミンと脂肪族アルコールから誘導されるジアミン及びポリアミン、脂肪酸から誘導されるイミダゾリン及びこれらのカチオン性物質の塩が含まれる。これらカチオン性分散剤は、単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0242】
両イオン性分散剤は、前記アニオン性分散剤が分子内に有するアニオン基部分とカチオン性分散剤が分子内に有するカチオン基部分を共に分子内に有する分散剤である。
ノニオン性分散剤(ノニオン性界面活性剤)としては、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルアリールエーテル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルアミン、グリセリン脂肪酸エステルなどを挙げることができる。なかでも、ポリオキシエチレンアルキルアリールエーテルが好ましい。これらノニオン性分散剤は、単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0243】
顔料誘導体型分散剤とは、親物質としてのアゾ顔料から誘導され、その親構造を化学修飾することで製造される顔料誘導体型分散剤、あるいは化学修飾された顔料前駆体の顔料化反応により得られる顔料誘導体型分散剤と定義する。例えば、糖含有顔料誘導体型分散剤、ピペリジル含有顔料誘導体型分散剤、ナフタレン又はペリレン誘導顔料誘導体型分散剤、メチレン基を介して顔料親構造に連結された官能基を有する顔料誘導体型分散剤、ポリマーで化学修飾された顔料親構造、スルホン酸基を有する顔料誘導体型分散剤、スルホンアミド基を有する顔料誘導体型分散剤、エーテル基を有する顔料誘導体型分散剤、あるいはカルボン酸基、カルボン酸エステル基又はカルボキサミド基を有する顔料誘導体型分散剤などがある。
【0244】
分散剤として、アミノ基を含有する顔料分散剤を用いることも好ましい。ここで、アミノ基とは一級アミノ基、二級アミノ基、三級アミノ基を含み、アミノ基の数は一つでも複数でもよい。顔料骨格にアミノ基を有する置換基を導入した顔料誘導体化合物でも、アミノ基を有するモノマーを重合成分としたポリマー化合物でもよい。これらの例として、例えば、特開2000−239554号公報、2003−96329号公報、2001−31885号公報、特開平10−339949号公報、特公平5−72943号公報、国際公開第WO2006/121017号パンフレットの段落0018〜0033、特願2006−129714号明細書に記載の化合物などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0245】
分散剤の含有量は、アゾ顔料の均一分散性及び保存安定性をより一層向上させるために、顔料100質量部に対して0.1〜1000質量部の範囲であることが好ましく、より好ましくは1〜500質量部の範囲であり、更に好ましくは5〜20質量部の範囲である。0.1質量部未満であるとアゾ顔料の分散安定性の向上が見られない場合がある。また、分散剤は、単独で用いても、複数のものを組み合わせて用いてもよい。
【0246】
本発明においては、有機アゾ顔料の分散物を調製した後、該分散物を粒子生成時よりも顔料濃度が高い状態に濃縮して顔料濃縮物を得る。このとき、アゾ顔料を析出させた後、その析出粒子を含有する分散液の溶媒分(第1溶媒及び第2溶媒)を減少させるか、又は除去することが好ましい(以下、これらの工程を「濃縮・除去工程」ということもある。)。また、アゾ顔料微粒子を析出させた後、混合液の溶媒分を第1溶媒及び第2溶媒のいずれとも異なる置換用溶媒(第3溶媒)に置換し、その後に第3溶媒置換用溶媒を含む溶媒分を除去してもよい。ここでの溶媒置換は完全に第1溶媒及び第2溶媒を除去する必要はなく、第3溶媒が作用する範囲で第1溶媒及び第2溶媒が残留していてもよい。なお、第1溶媒及び第2溶媒を減少させる又は除去する量は、「濃縮・除去量」として後述する。これらの操作によって、カラーフィルタ塗布液やインクジェット用インクに適したナノ粒子濃縮液やアゾ顔料粉末とすることができる。
【0247】
濃縮・除去工程は特に限定されないが、例えば、フィルタなどによりろ過して濃縮ナノ粒子液とする態様、遠心分離によってアゾ顔料を沈降させて濃縮する態様、限外ろ過により脱塩濃縮を行う態様、噴霧乾燥を用いる態様、真空凍結乾燥により溶媒を昇華させて濃縮する態様、加熱ないし減圧による溶媒を乾燥させて濃縮する態様、それらを組合せた態様などが挙げられ、なかでも、遠心分離によって濃縮する態様、噴霧乾燥を用いる態様、加熱ないし減圧によって溶媒を乾燥させて濃縮する態様が好ましい。
【0248】
限外ろ過による場合、例えばハロゲン化銀乳剤の脱塩/濃縮に用いられる方法を適用することができる。リサーチ・ディスクロージャー(Research Disclosure)No.10208(1972)、No.13 122(1975)及びNo.16 351(1977)が知られている。操作条件として重要な圧力差や流量は、大矢春彦著「膜利用技術ハンドブック」幸書房出版(1978)、p275に記載の特性曲線を参考に選定することができるが、目的のアゾ顔料分散物を処理する上では、粒子の凝集を抑えるために最適条件を見いだす必要がある。また、膜透過より損失する溶媒を補充する方法においては、連続して溶媒を添加する定容式と断続的に分けて添加する回分式とがあるが、脱塩処理時間が相対的に短い定容式が好ましい。こうして補充する溶媒には、イオン交換又は蒸留して得られた純水を用いるが、純水の中に分散剤、分散剤の貧溶媒を混合してもよいし、アゾ顔料分散物に直接添加してもよい。
【0249】
限外ろ過膜は、すでにモジュールとして組み込まれた平板型、スパイラル型、円筒型、中空糸型、ホローファイバー型などが旭化成(株)社、ダイセル化学(株)社、(株)東レ社、(株)日東電工社などから市販されているが、総膜面積や洗浄性の観点より、スパイラル型若しくは中空糸型が好ましい。また、膜を透過することができる成分のしきい値の指標となる分画分子量は、用いられる分散剤の分子量より決定する必要があるが、5,000以上50,000以下のものが好ましく、5,000以上15,000以下のものがより好ましい。
【0250】
フィルタろ過による態様においては、例えば、加圧ろ過のような装置を用いることができる。好ましいフィルタとしては、ナノフィルタ、ウルトラフィルタなどが挙げられる。このとき下記のようにして濃縮抽出した有機ナノ粒子をフィルタろ過することが好ましい。
【0251】
濃縮抽出に用いられる抽出溶媒は特に限定されないが、有機ナノ粒子分散液の分散溶媒(例えば、水性溶媒)と実質的に混じり合わず(本発明において、実質的に混じり合わずとは、相溶性が低いことをいい、溶解量50質量%以下が好ましく、30質量%以下がより好ましい。この溶解量に特に下限はないが、通常の溶媒の溶解性を考慮すると1質量%以上であることが実際的である。)、混合後、静置すると界面を形成する溶媒であることが好ましい。また、この抽出溶媒は、有機ナノ粒子が抽出溶媒中で再分散しうる弱い凝集(ミリング又は高速撹拌などの高いせん断力を加えなくても再分散が可能であるフロック)を生ずる溶媒であることが好ましい。このような状態であれば、粒子サイズを変化させる強固な凝集を起こさず、目的の有機ナノ粒子を抽出溶媒で湿潤させる一方、フィルタろ過などにより容易に水などの分散溶媒を除去することができる点で好ましい。抽出溶媒としてはエステル化合物溶媒、アルコール化合物溶媒、芳香族化合物溶媒、脂肪族化合物溶媒が好ましく、エステル化合物溶媒、芳香族化合物溶媒又は脂肪族化合物溶媒がより好ましく、エステル化合物溶媒が特に好ましい。
【0252】
エステル化合物溶媒としては、例えば、2−(1−メトキシ)プロピルアセテート、酢酸エチル、乳酸エチルなどが挙げられる。アルコール化合物溶媒としては、例えば、n−ブタノール、イソブタノールなどが挙げられる。芳香族化合物溶媒としては、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレンなどが挙げられる。脂肪族化合物溶媒としては、例えば、n−ヘキサン、シクロヘキサンなどが挙げられる。また、抽出溶媒は上記の好ましい溶媒による純溶媒であっても、複数の溶媒による混合溶媒であってもよい。
【0253】
抽出溶媒の量は有機ナノ粒子を抽出できれば特に制約されないが、濃縮して抽出することを考慮して有機ナノ粒子分散液より少量であることが好ましい。これを体積比で示すと、有機ナノ粒子分散液を100としたとき、添加される抽出溶媒は1〜100の範囲であることが好ましく、より好ましくは10〜90の範囲であり、20〜80の範囲が特に好ましい。多すぎると濃縮化に多大な時間を要し、少なすぎると抽出が不十分で分散溶媒中にナノ粒子が残存する。
抽出溶媒を添加した後、分散液と十分に接触するように撹拌混合することが好ましい。撹拌混合は通常の方法を用いることができる。抽出溶媒を添加し混合するときの温度に特に制約はないが、1〜100℃であることが好ましく、5〜60℃であることがより好ましい。抽出溶媒の添加、混合はそれぞれの工程を好ましく実施できるものであればどのような装置を用いてもよいが、例えば、分液ロート型の装置を用いて実施できる。
【0254】
凍結乾燥は特に限定されず、通常の方法であればいかなるものを採用してもよい。例えば、冷媒直膨方法、重複冷凍方法、熱媒循環方法、三重熱交換方法、間接加熱凍結方法が挙げられるが、好ましくは冷媒直膨方法、間接加熱凍結方法、より好ましくは間接加熱凍結方法を用いるのがよい。いずれの方法においても、予備凍結を行なった後凍結乾燥を行なうことが好ましい。予備凍結の条件は特に限定されないが、凍結乾燥を行なう試料がまんべんなく凍結されている必要がある。
【0255】
間接加熱凍結方法の装置としては、小型凍結乾燥機、FTS凍結乾燥機、LYOVAC凍結乾燥機、実験用凍結乾燥機、研究用凍結乾燥機、三重熱交換真空凍結乾燥機、モノクーリング式凍結乾燥機、HULL凍結乾燥機が挙げられるが、好ましくは小型凍結乾燥機、実験用凍結乾燥機、研究用凍結乾燥機、モノクーリング式凍結乾燥機、より好ましくは小型凍結乾燥機、モノクーリング式凍結乾燥機を用いるのがよい。
【0256】
凍結乾燥の温度は特に限定されないが、例えば−190〜−4℃、好ましくは−120〜−20℃、より好ましくは−80〜−60℃程度である。凍結乾燥の圧力も特に限定されず、当業者が適宜選択可能であるが、例えば、0.1〜35Pa、好ましくは1〜15Pa、更に好ましくは、5〜10Pa程度で行なうのがよい。凍結乾燥時間は、例えば2〜48時間、好ましくは6〜36時間、より好ましくは16〜26時間程度である。もっとも、これらの条件は当業者に適宜選択可能である。凍結乾燥方法については、例えば、製剤機械技術ハンドブック:製剤機械技術研究会編、地人書館、p.120−129(2000年9月);真空ハンドブック:日本真空技術株式会社編、オーム社、p.328−331(1992年);凍結及び乾燥研究会会誌:伊藤孝治他、No.15、p.82(1965)などを参照することができる。
【0257】
遠心分離機は有機ナノ粒子を沈降させることができればどのような装置を用いてもよい。例えば、汎用の装置の他にもスキミング機能(回転中に上澄み層を吸引し、系外に排出する機能)付きのものや、連続的に固形物を排出する連続遠心分離機などが挙げられる。
遠心分離条件は、遠心力(重力加速度の何倍の遠心加速度がかかるかを表す値)で50〜10000が好ましく、100〜8000がより好ましく、150〜6000が特に好ましい。遠心分離時の温度は、分散液の溶剤種によるが、−10〜80℃が好ましく、−5〜70℃がより好ましく、0〜60℃が特に好ましい。
【0258】
減圧乾燥は溶媒を蒸発させることができれば特に制限はない。例えば、汎用の真空乾燥器及びロータリーポンプや、液を撹拌しながら加熱減圧乾燥できる装置、液を加熱減圧した管中に通すことによって連続的に乾燥ができる装置等が挙げられる。
加熱減圧乾燥温度は30〜230℃が好ましく、35〜200℃がより好ましく、40〜180℃が特に好ましい。減圧時の圧力は、100〜100000Paが好ましく、300〜90000Paがより好ましく、500〜80000Paが特に好ましい。
【0259】
また次のような態様によって乾燥させてもよい。例えば、熱風を用いる乾燥機としては棚型乾燥機、バンド乾燥機、撹拌乾燥機、流動層乾燥機、噴霧乾燥機、気流乾燥機など、熱伝導を利用する乾燥機としてはドラム乾燥機、多重管乾燥機、円筒乾燥機などが好適に用いられる。また、溶媒組成によっては凍結乾燥機や赤外線乾燥機も使用することが可能である。
これらの手段の中では、分散液から直接乾燥したアゾ顔料粉末を得るのに適しているという観点から、噴霧乾燥機(例えば大川原化工機(株)製COC−12)、流動層乾燥機(例えば(株)奈良機械製作所製MSD−100)が特に好ましく用いられる(いずれも商品名)。また、残存溶媒量の少ないアゾ顔料粉末とするために複数の乾燥手段を組み合わせて使用しても良く、例えば円筒乾燥機で予備濃縮した顔料分散物をドラム乾燥機にて完全に乾燥させてアゾ顔料粉末を得る、といったプロセスを使用することができる。
乾燥条件については、溶媒を蒸発させることが可能であり、かつ顔料や分散剤などの材料が変性しない範囲であれば特に制約されない。また、乾燥速度を増加させる目的で、乾燥機の種類によって減圧、撹拌混合、多段化などの手段を組み合わせることが可能である。
【0260】
溶媒分を減少させる若しくは除去する量(濃縮・除去量)は特に限定されないが、溶媒分を減少させる態様においては全溶媒分の50質量%以上を取り除くことが好ましく、75質量%以上を取り除くことがより好ましい。溶媒分を除去する態様においては全溶媒分の80質量%以上を取り除くことが好ましく、90質量%以上を取り除くことがより好ましい。
溶媒分を減少させる若しくは除去することにより溶媒分を減じたとき、残された分散物中の含水率は特に限定されないが、0.01〜3質量%とすることが好ましく、0.01〜1質量%とすることがより好ましい。このとき例えば上記の乾燥法等により溶媒分を除去してアゾ顔料の粉末とすることが好ましく、例えば固形分の含率を50〜100質量%とすることが好ましく、70〜100質量%とすることがより好ましい。
濃縮・除去工程は複数回行ってもよく、例えば、後述する第3溶媒の添加の前及び/又は後に行うことが好ましい。
【0261】
このようにして反応させたものは、結晶が析出しているものもあるが、一般的には反応液に水、あるいはアルコール系溶媒を添加し、結晶を析出させ、結晶を濾取することができる。また、反応液にアルコール系溶媒、水等を添加して結晶を析出させて、析出した結晶を濾取することができる。濾取した結晶を必要に応じて洗浄・乾燥して、一般式(1)で表されるアゾ顔料を得ることができる。
【0262】
上記の製造方法によって、上記一般式(1)で表される顔料は粗アゾ顔料(クルード)として得られるが、本発明の顔料として用いる場合、後処理を行うことが望ましい。この後処理の方法としては、例えば、ソルベントソルトミリング、ソルトミリング、ドライミリング、ソルベントミリング、アシッドペースティング等の磨砕処理、溶媒加熱処理などによる顔料粒子制御工程、樹脂、界面活性剤及び分散剤等による表面処理工程が挙げられる。
【0263】
本発明の一般式(1)で表される顔料は後処理として溶媒加熱処理及び/又はソルベントソルトミリングを行うことが好ましい。
溶媒加熱処理に使用される溶媒としては、例えば、水、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素系溶媒、クロロベンゼン、o−ジクロロベンゼン等のハロゲン化炭化水素系溶媒、イソプロパノール、イソブタノール等のアルコール系溶媒、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドン等の極性非プロトン性有機溶媒、氷酢酸、ピリジン、又はこれらの混合物等が挙げられる。上記で挙げた溶媒に、更に無機又は有機の酸又は塩基を加えてもよい。溶媒加熱処理の温度は所望する顔料の一次粒子径の大きさによって異なるが、40〜150℃が好ましく、60〜100℃が更に好ましい。また、処理時間は、30分〜24時間が好ましい。
ソルベントソルトミリングとしては、例えば、粗アゾ顔料と、無機塩と、それを溶解しない有機溶剤とを混練機に仕込み、その中で混練磨砕を行うことが挙げられる。上記無機塩としては、水溶性無機塩が好適に使用でき、例えば塩化ナトリウム、塩化カリウム、硫酸ナトリウム等の無機塩を用いることが好ましい。また、平均粒子径0.5〜50μmの無機塩を用いることがより好ましい。当該無機塩の使用量は、粗アゾ顔料に対して3〜20質量倍とするのが好ましく、5〜15質量倍とするのがより好ましい。有機溶剤としては、水溶性有機溶剤が好適に使用でき、混練時の温度上昇により溶剤が蒸発し易い状態になるため、安全性の点から高沸点溶剤が好ましい。このような有機溶剤としては、例えばジエチレングリコール、グリセリン、エチレングリコール、プロピレングリコール、液体ポリエチレングルコール、液体ポリプロピレングリコール、2−(メトキシメトキシ)エタノール、2−ブトキシエタノール、2ー(イソペンチルオキシ)エタノール、2−(ヘキシルオキシ)エタノール、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングルコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコール、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、1−メトキシ−2−プロパノール、1−エトキシ−2−プロパノール、ジプロピレングリコール、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコール又はこれらの混合物が挙げられる。当該水溶性有機溶剤の使用量は、粗アゾ顔料に対して0.1〜5質量倍が好ましい。混練温度は、20〜130℃が好ましく、40〜110℃が特に好ましい。混練機としては、例えばニーダーやミックスマーラー等が使用できる。
【0264】
本発明の製造方法により得られたアゾ顔料の平均一次粒子サイズは1nm以上500nm以下であることが好ましく、5nm以上300nm以下であることがより好ましく、10nm以上100nm以下であることが更に好ましい。これは大きな粒子を小さくすることにより過分散状態となってしまい、凝集が起こりやすくなってしまうためである。
【0265】
[顔料分散物]
本発明の顔料分散物は、一般式(1)で表されるアゾ顔料、互変異性体、その塩又は水和物を少なくとも1種を含むことを特徴とする。これにより、色彩的特性、耐久性及び分散安定性に優れた顔料分散物とすることができる。
【0266】
本発明の顔料分散物は、水系であっても非水系であってもよいが、水系の顔料分散物であることが好ましい。本発明の水系顔料分散物において顔料を分散する水性の液体は、水を主成分とし、所望により親水性有機溶剤を添加した混合物を用いることができる。
【0267】
前記親水性有機溶剤としては,例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、イソブタノール、sec−ブタノール、t−ブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、シクロヘキサノール、ベンジルアルコール等のアルコール類、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、ブチレングリコール、ヘキサンジオール、ペンタンジオール、グリセリン、ヘキサントリオール、チオジグリコール等の多価アルコール類、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールものブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールジアセテート、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテートトリエチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノフェニルエーテル等のグリコール誘導体、エタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、N−メチルジエタノールアミン、N−エチルジエタノールアミン、モルホリン、N−エチルモルホリン、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、ポリエチレンイミン、テトラメチルプロピレンジアミン等のアミン、ホルムアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、スルホラン、2−ピロリドン、N−メチル−2−ピロリドン、N−ビニル−2−ピロリドン、2−オキサゾリドン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、アセトニトリル、アセトン等が挙げられる。
【0268】
更に、本発明の水系顔料分散物には水性樹脂を含んでいてもよい。水性樹脂としては,水に溶解する水溶解性の樹脂、水に分散する水分散性の樹脂,コロイダルディスパーション樹脂、又はそれらの混合物が挙げられる。水性樹脂として具体的には,アクリル系,スチレン−アクリル系,ポリエステル系,ポリアミド系,ポリウレタン系,フッ素系等の樹脂が挙げられる。
【0269】
本発明における水系顔料分散物が水性樹脂を含有する場合、その含有率は特に制限はない。例えば、顔料に対して0〜100質量%とすることができる。
【0270】
更に,顔料の分散及び画像の品質を向上させるため,界面活性剤及び分散剤を用いてもよい。界面活性剤としては、アニオン性,ノニオン性,カチオン性,両イオン性の界面活性剤が挙げられ、いずれの界面活性剤を用いてもよいが、アニオン性、又は非イオン性の界面活性剤を用いるのが好ましい。
【0271】
本発明における水系顔料分散物が界面活性剤を含有する場合、その含有率は特に制限はない。例えば、顔料に対して0〜100質量%とすることができる。
【0272】
アニオン性界面活性剤としては,例えば、脂肪酸塩,アルキル硫酸エステル塩,アルキルベンゼンスルホン酸塩,アルキルナフタレンスルホン酸塩,ジアルキルスルホコハク酸塩,アルキルジアリールエーテルジスルホン酸塩,アルキルリン酸塩,ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩,ポリオキシエチレンアルキルアリールエーテル硫酸塩,ナフタレンスルホン酸フォルマリン縮合物,ポリオキシエチレンアルキルリン酸エステル塩,グリセロールボレイト脂肪酸エステル,ポリオキシエチレングリセロール脂肪酸エステル等が挙げられる。
【0273】
ノニオン界面活性剤としては,例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル,ポリオキシエチレンアルキルアリールエーテル,ポリオキシエチレンオキシプロピレンブロックコポリマー,ソルビタン脂肪酸エステル,ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル,ポリオキシエチレンソルビトール脂肪酸エステル,グリセリン脂肪酸エステル,ポリオキシエチレン脂肪酸エステル,ポリオキシエチレンアルキルアミン,フッ素系,シリコン系等が挙げられる。
【0274】
本発明の非水系顔料分散物は、前記一般式(1)で表される顔料を非水系ビヒクルに分散してなるものである。非水系ビヒクルに使用される樹脂は、例えば、石油樹脂、カゼイン、セラック、ロジン変性マレイン酸樹脂、ロジン変性フェノール樹脂、ニトロセルロース、セルロースアセテートブチレート、環化ゴム、塩化ゴム、酸化ゴム、塩酸ゴム、フェノール樹脂、アルキド樹脂、ポリエステル樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、アミノ樹脂、エポキシ樹脂、ビニル樹脂、塩化ビニル、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、ポリウレタン樹脂、シリコン樹脂、フッ素樹脂、乾性油、合成乾性油、スチレン/マレイン酸樹脂、スチレン/アクリル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、ベンゾグアナミン樹脂、メラミン樹脂、尿素樹脂塩素化ポリプロピレン、ブチラール樹脂、塩化ビニリデン樹脂等が挙げられる。非水系ビヒクルとして、光硬化性樹脂を用いてもよい。
【0275】
また、非水系ビヒクルに使用される溶剤としては、例えば、トルエンやキシレン、メトキシベンゼン等の芳香族系溶剤、酢酸エチルや酢酸ブチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート等の酢酸エステル系溶剤、エトキシエチルプロピオネート等のプロピオネート系溶剤、メタノール、エタノール等のアルコール系溶剤、ブチルセロソルブ、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル等のエーテル系溶剤、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系溶剤、ヘキサン等の脂肪族炭化水素系溶剤、N,N−ジメチルホルムアミド、γ−ブチロラクタム、N−メチル−2−ピロリドン、アニリン、ピリジン等の窒素化合物系溶剤、γ−ブチロラクトン等のラクトン系溶剤、カルバミン酸メチルとカルバミン酸エチルの48:52の混合物のようなカルバミン酸エステル等が挙げられる。
【0276】
[着色組成物]
本発明の着色組成物は、少なくとも一種の本発明のアゾ顔料を含有する着色組成物を意味する。本発明の着色組成物は、媒体を含有させることができるが、媒体として溶媒を用いた場合は特にインクジェット記録用インクとして好適である。本発明の着色組成物は、媒体として、親油性媒体や水性媒体を用いて、それらの中に、本発明のアゾ顔料を分散させることによって作製することができる。好ましくは、水性媒体を用いる場合である。本発明の着色組成物には、媒体を除いたインク用組成物も含まれる。本発明の着色組成物は、必要に応じてその他の添加剤を、本発明の効果を害しない範囲内において含有しうる。その他の添加剤としては、例えば、乾燥防止剤(湿潤剤)、褪色防止剤、乳化安定剤、浸透促進剤、紫外線吸収剤、防腐剤、防黴剤、pH調整剤、表面張力調整剤、消泡剤、粘度調整剤、分散剤、分散安定剤、防錆剤、キレート剤等の公知の添加剤(特開2003−306623号公報に記載)が挙げられる。これらの各種添加剤は、水溶性インクの場合にはインク液に直接添加する。油溶性インクの場合には、アゾ顔料分散物の調製後分散物に添加するのが一般的であるが、調製時に油相又は水相に添加してもよい。
【0277】
〔インクジェット記録用インク〕
次に、本発明のインクジェット記録用インクについて説明する。
本発明のインクジェット記録用インク(以下、「インク」という場合がある)は、上記で説明した顔料分散物を用いる。好ましくは、水溶性溶媒、水等を混合して調製される。ただし、特に問題がない場合は、前記本発明の顔料分散物をそのまま用いてもよい。
【0278】
本発明のインク中の顔料分散物の含有割合は、記録媒体上に形成した画像の色相、色濃度、彩度、透明性等を考慮すると、1〜100質量%の範囲が好ましく、3〜20質量%の範囲が特に好ましく、その中でも3〜10質量%の範囲がもっとも好ましい。
【0279】
本発明のインク100質量部中に、本発明の顔料を0.1質量部以上20質量部以下含有するのが好ましく、0.2質量部以上10質量部以下含有するのがより好ましく、1〜10質量部含有するのが更に好ましい。また、本発明のインクには、本発明の顔料とともに、他の顔料を併用してもよい。2種類以上の顔料を併用する場合は、顔料の含有量の合計が前記範囲となっているのが好ましい。
【0280】
本発明のインクは、単色の画像形成のみならず、フルカラーの画像形成に用いることができる。フルカラー画像を形成するために、マゼンタ色調インク、シアン色調インク、及びイエロー色調インクを用いることができ、また、色調を整えるために、更にブラック色調インクを用いてもよい。
【0281】
更に、本発明におけるインクは、上記本発明におけるアゾ顔料の他に別の顔料を同時に用いることが出来る。適用できるイエロー顔料としては、例えば、C.I.P.Y.74、C.I.P.Y.128、C.I.P.Y.155、C.I.P.Y.213が挙げられ、適用できるマゼンタ顔料としては、C.I.P.V.19、C.I.P.R.122が挙げられ、適用できるシアン顔料としては、C.I.P.B.15:3、C.I.P.B.15:4が挙げられ、これらとは別に、各々任意のものを使用する事が出来る。適用できる黒色材としては、ジスアゾ、トリスアゾ、テトラアゾ顔料のほか、カーボンブラックの分散体を挙げることができる。
【0282】
本発明のインクジェット記録用インクに用いられる水溶性溶媒としては、多価アルコール類、多価アルコール類誘導体、含窒素溶媒、アルコール類、含硫黄溶媒等が使用される。
具体例としては、多価アルコール類では、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、トリエチレングリコール、1、5−ペンタンジオール、1,2,6−ヘキサントリオール、グリセリン等が挙げられる。
【0283】
前記多価アルコール誘導体としては、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノブチルエーテル、ジグリセリンのエチレンオキサイド付加物等が挙げられる。
【0284】
また、前記含窒素溶媒としては、ピロリドン、N−メチル−2−ピロリドン、シクロヘキシルピロリドン、トリエタノールアミン等が、アルコール類としてはエタノール、イソプロピルアルコール、ブチルアルコール、ベンジルアルコール等のアルコール類が、含硫黄溶媒としては、チオジエタノール、チオジグリセロール、スルフォラン、ジメチルスルホキシド等が各々挙げられる。その他、炭酸プロピレン、炭酸エチレン等を用いることもできる。
【0285】
本発明に使用される水溶性溶媒は、単独で使用しても、2種類以上混合して使用しても構わない。水溶性溶媒の含有量としては、インク全体の1質量%以上60質量%以下、好ましくは、5質量%以上40質量%以下で使用される。インク中の水溶性溶媒量が1質量%よりも少ない場合には、十分な光学濃度が得られない場合が存在し、逆に、60質量%よりも多い場合には、液体の粘度が大きくなり、インク液体の噴射特性が不安定になる場合が存在する。
【0286】
本発明のインクジェット記録用インクの好ましい物性は以下の通りである。
インクの表面張力は、20mN/m以上60mN/m以下であることが好ましい。より好ましくは、20mN以上45mN/m以下であり、更に好ましくは、25mN/m以上35mN/m以下である。表面張力が20mN/m未満となると記録ヘッドのノズル面に液体が溢れ出し、正常に印字できない場合がある。一方、60mN/mを超えると、印字後の記録媒体への浸透性が遅くなり、乾燥時間が遅くなる場合がある。
なお、上記表面張力は、前記同様ウイルヘルミー型表面張力計を用いて、23℃、55%RHの環境下で測定した。
【0287】
インクの粘度は、1.2mPa・s以上8.0mPa・s以下であることが好ましく、より好ましくは1.5mPa・s以上6.0mPa・s未満、更に好ましくは1.8mPa・s以上4.5mPa・s未満である。粘度が8.0mPa・sより大きい場合には、吐出性が低下する場合がある。一方、1.2mPa・sより小さい場合には、長期噴射性が悪化する場合がある。
なお、上記粘度(後述するものを含む)の測定は、回転粘度計レオマット115(Contraves社製)を用い、23℃でせん断速度を1400s−1として行った。
【0288】
インクには、前記各成分に加えて、上記の好ましい表面張力及び粘度となる範囲で、水が添加される。水の添加量は特に制限は無いが、好ましくは、インク全体に対して、10質量%以上99質量%以下であり、より好ましくは、30質量%以上80質量%以下である。
【0289】
更に必要に応じて、吐出性改善等の特性制御を目的とし、ポリエチレンイミン、ポリアミン類、ポリビニルピロリドン、ポリエチレングリコール、エチルセルロース、カルボキシメチルセルロース等のセルロース誘導体、多糖類及びその誘導体、その他水溶性ポリマー、アクリル系ポリマーエマルション、ポリウレタン系エマルション、親水性ラテックス等のポリマーエマルション、親水性ポリマーゲル、シクロデキストリン、大環状アミン類、デンドリマー、クラウンエーテル類、尿素及びその誘導体、アセトアミド、シリコーン系界面活性剤、フッ素系界面活性剤等を用いることができる。
【0290】
また、導電率、pHを調整するため、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化リチウム等のアルカリ金属類の化合物、水酸化アンモニウム、トリエタノールアミン、ジエタノールアミン、エタノールアミン、2−アミノ−2−メチル−1−プロパノール等の含窒素化合物、水酸化カルシウム等のアルカリ土類金属類の化合物、硫酸、塩酸、硝酸等の酸、硫酸アンモニウム等の強酸と弱アルカリの塩等を使用することができる。
その他必要に応じ、pH緩衝剤、酸化防止剤、防カビ剤、粘度調整剤、導電剤、紫外線吸収剤、等も添加することができる。
【0291】
[カラーフィルター用着色組成物]
本発明のカラーフィルター用着色組成物は、前記一般式(1)で表されるアゾ顔料を含む。本発明のカラーフィルター用着色組成物(以下単に着色組成物と称する場合がある)は、少なくとも一種の一般式(1)で表されるアゾ顔料を含有する着色組成物を意味する。
本発明の着色組成物は、更に重合性化合物及び溶剤を含むことが好ましい。
また、本発明の着色組成物を製造する際、上記のようにして得られたアゾ顔料はそのまま配合しても、溶剤中に分散した顔料分散物を配合してもよい。アゾ顔料は顔料分散物とすることで、色彩的特性、耐久性及び分散安定性、耐光性や耐候性が優れたものとなり好ましい。
【0292】
本発明の着色組成物における一般式(1)で表されるアゾ顔料(他の顔料を併用している場合には用いた顔料の合計量)の使用量は、重合性化合物1質量部に対し、0.01〜2質量部であるのが好ましく、0.1〜1質量部であるのが特に好ましい。
【0293】
〔重合性化合物〕
重合性化合物は、カラーフィルターの製造プロセスを考慮して適宜選択すれば良く、重合性化合物としては、感光性化合物及び/又は熱硬化性化合物などが挙げられるが、感光性化合物が特に好ましい。
【0294】
感光性化合物としては、光重合性樹脂、光重合性モノマー及び光重合性オリゴマーの少なくとも1種以上から選ばれ、エチレン性不飽和結合を有するものであることが好ましい。カラーフィルター用着色組成物には硬化した状態で樹脂となるものを含めば良く、未硬化の状態では樹脂化していない成分のみが含まれる場合を含む。
光重合性化合物、光重合性モノマー及び光重合性オリゴマーとしては、例えば2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ビスフェノールA型エポキシジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールF型エポキシジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールフルオレン型エポキシジ(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸エステル類等が挙げられる。また、アクリル酸(共)重合体、(メタ)アクリル酸(共)重合体、マレイン酸(共)重合体等のビニル樹脂や、ポリエチレンオキサイド、ポリビニルピロリドン、ポリアミド、ポリウレタン、ポリエーテル、ポリエステル等の側鎖にエチレン性二重結合を有する樹脂類も挙げることができる。これらは単独で用いても良いし、2種以上を併用しても良い。重合性化合物の配合量は20〜90質量%、好ましくは40〜80質量%の範囲がよい。
【0295】
重合性化合物の配合率は、カラーフィルター用組成物中の全固形分中40〜95質量%であることが好ましく、更には50〜90質量%であることが好ましい。組成物中には、必要に応じて他の樹脂類等を配合することができるが、この場合には、他の樹脂類を合わせた合計量が上記範囲に入ることが望ましい。なお、全固形分とは乾燥、硬化後に固形分として残る成分をいい、溶剤を含まず、単量体を含む。
〔光重合開始剤〕
重合性化合物として感光性化合物を用いる場合には、感光性化合物の単量体及び/又はオリゴマーと共に光重合開始剤を用いる。光重合開始剤としては、ベンゾフェノン誘導体、アセトフェノン誘導体、ベンゾイン誘導体、ベンゾインエーテル誘導体、チオキサントン誘導体、アントラキノン誘導体、ナフトキノン誘導体、及びトリアジン誘導体などの化合物から選択される1種以上が挙げられる。これらの光重合開始剤とともに、更に公知の光増感剤を使用してもよい。
【0296】
熱硬化性樹脂としては、例えばメラミン樹脂、尿素樹脂、アルキド樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、シクロペンタジエン樹脂などが挙げられる。
【0297】
なお、本明細書及び請求の範囲において、「感光性樹脂」、及び「熱硬化性樹脂」は、各々硬化後の樹脂のみではなく、重合性の単量体又はオリゴマーも含むものとする。
【0298】
上記の感光性樹脂及び/又は熱硬化性樹脂とともに、他の重合性化合物として、酸性基を有するバインダー樹脂、及び、アクリル樹脂、ウレタン樹脂など一般的にインクに使用される樹脂を使用してもよい。
【0299】
〔溶剤〕
顔料分散物は、水系であっても非水系であってもよいが、そのカラーフィルターの製造方法によって異なり、例えばフォトリソグラフィー法では、非水系が好ましく、インクジェット法では、どちらでもかまわない。
本発明の着色組成物に用いる溶剤としては、酢酸エチル、酢酸ブチル、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートなどの脂肪酸エステル類;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、ジアセトンアルコールなどのケトン類;ベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族類;メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノールなどのアルコール類;エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、トリメチレングリコール、ヘキサントリオールなどのグリコール類;グリセリン;エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテルなどのアルキレングリコールモノアルキルエーテル類;トリエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールジエチルエーテル、テトラエチレングリコールジメチルエーテル、テトラエチレングリコールジエチルエーテルなどのアルキレングリコールジアルキルエーテル類;テトラヒドロフラン、ジオキサン、ジエチレングリコールジエチルエーテルなどのエーテル類;モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミンなどのアルカノールアミン類;N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドン、2−ピロリドン、1,3―ジメチル−2−イミダゾリジノンなどの含窒素極性有機溶媒;水などが挙げられる。
【0300】
これらの溶剤のうち水溶性であるものは、水と混合して水性媒体として用いてもよい。また、水を除く上記の溶剤から選ばれる二種以上を混合して油性媒体として用いてもよい。
【0301】
顔料分散物とされたアゾ顔料は、顔料分散物とされていないアゾ顔料と比較して、耐光性や耐候性が優れたものとなる。
【0302】
本発明の着色組成物は、一般式(1)で表されるアゾ顔料を二種以上含むものでもよい。本発明のカラーフィルター用着色組成物は、好ましくは下記一般式(2)’で表されるアゾ顔料を含む。
【0303】
【化54】

【0304】
(一般式(2)’中、Gは、水素原子、脂肪族基、アリール基、又はヘテロ環基を表し、R21は、アミノ基、脂肪族オキシ基、脂肪族基、アリール基、又はヘテロ環基を表し、R22は置換基を表す。Aは、下記一般式(A−1)〜(A−32)を表す。m、nは一般式(1)で定義したものと同義である。n=2の場合は、R21、R22、G又はAを介した2量体を表す。n=3の場合はR21、R22、G又はAを介した3量体を表す。n=4の場合はR21、R22、G又はAを介した4量体を表す。一般式(2)’がイオン性親水性基を有することはない。)
【0305】
【化55】

【0306】
(一般式(A−1)〜(A−32)中、R51〜R59は水素原子、又は置換基を表し、隣接する置換基は互いに結合し、5〜6員環を形成していてもよい。*は一般式(2)’のアゾ基との結合位置を表す。)
【0307】
前記一般式(2)’において、Aは(A−1)、(A−4)〜(A−11)、(A−13)〜(A―17)、(A−19)〜(A−23)、(A−25)〜(A−32)のいずれかであることが好ましい。
また、本発明のカラーフィルター用着色組成物に用いる一般式(2)’で表される顔料は前記一般式(2)で表される顔料であることが好ましい。
【0308】
また、本発明の目的を妨げない範囲において、一般式(1)で表されるアゾ顔料とともに、他種の顔料、例えば、アゾ系顔料、ジスアゾ系顔料、ベンズイミダゾロン系顔料、縮合アゾ系顔料、アゾレーキ系顔料、アントラキノン系顔料、ジケトピロロピロール系顔料、キナクリドン系顔料、イソインドリン系顔料、イソインドリノン系顔料、ペリノン系顔料、ペリレン系顔料などから選択される1種以上の顔料又はその誘導体を使用してもよい。
【0309】
本発明で用いられる併用してもよい顔料は特に限定されない。具体的には、カラーインデックス(C.I.;The Society of Dyers and Colourists 社発行)においてピグメント(Pigment)に分類されている化合物、すなわち、下記のようなカラーインデックス(C.I.)番号が付されているものを挙げることができる。
C.I.ピグメントイエロー1、C.I.ピグメントイエロー3、C.I.ピグメントイエロー12、C.I.ピグメントイエロー13、C.I.ピグメントイエロー83、C.I.ピグメントイエロー138、C.I.ピグメントイエロー139、C.I.ピグメントイエロー150、C.I.ピグメントイエロー180、C.I.ピグメントイエロー185等のイエロー系ピグメント;C.I.ピグメントレッド1、C.I.ピグメントレッド2、C.I.ピグメントレッド3、C.I.ピグメントレッド177、C.I.ピグメントレッド254等のレッド系ピグメント;及び、C.I.ピグメントブルー15、C.I.ピグメントブルー15:3、C.I.ピグメントブルー15:4、C.I.ピグメントブルー15:6等のブルー系ピグメント;C.I.ピグメントグリーン7、C.I.ピグメントグリーン36等のグリーン系ピグメント;C.I.ピグメントバイオレット23、C.I.ピグメントバイオレット23:19などが挙げられる。
【0310】
また、前記無機顔料の具体例としては、酸化チタン、硫酸バリウム、炭酸カルシウム、亜鉛華、硫酸鉛、黄色鉛、亜鉛黄、べんがら(赤色酸化鉄(III))、カドミウム赤、群青、紺青、酸化クロム緑、コバルト緑、アンバー、チタンブラック、合成鉄黒、カーボンブラック等を挙げることができる。本発明において顔料は、単独で又は2種以上を混合して使用することができる。
【0311】
一般式(1)で表されるアゾ顔料以外の他の顔料を併用する場合、その含有量は、着色組成物中の顔料の総質量中、50質量%以下であることが好ましく、20質量%以下であることが特に好ましい。
【0312】
なお、以下、本明細書において、「一般式(1)で表されるアゾ顔料」なる語は、一種の一般式(1)で表されるアゾ顔料のみならず、二種以上の一般式(1)で表されるアゾ化合物の組み合わせ、及び一般式(1)で表されるアゾ顔料と他の顔料の組み合わせを含む意味で用いられる。
【0313】
[顔料分散物(2)]
顔料分散物は、上記のアゾ顔料及び水系又は非水系の媒体とを、分散装置を用いて分散することで得ることが好ましい。分散装置としては、簡単なスターラーやインペラー攪拌方式、インライン攪拌方式、ミル方式(例えば、コロイドミル、ボールミル、サンドミル、ビーズミル、アトライター、ロールミル、ジェットミル、ペイントシェイカー、アジテーターミル等)、超音波方式、高圧乳化分散方式(高圧ホモジナイザー;具体的な市販装置としてはゴーリンホモジナイザー、マイクロフルイダイザー、DeBEE2000等)を使用することができる。
【0314】
本発明において、顔料の体積平均粒子径は10nm以上250nm以下であることが好ましい。なお、顔料粒子の体積平均粒子径とは、顔料そのものの粒子径、又は顔料に分散剤等の添加物が付着している場合には、添加物が付着した粒子径をいう。本発明において、顔料の体積平均粒子径の測定装置には、ナノトラックUPA粒度分析計(UPA−EX150;日機装社製)を用いた。その測定は、顔料分散物3mlを測定セルに入れ、所定の測定方法に従って行った。なお、測定時に入力するパラメーターとしては、粘度にはインク粘度を、分散粒子の密度には顔料の密度を用いた。
【0315】
より好ましい体積平均粒子径は、20nm以上250nm以下であり、更に好ましくは30nm以上230nm以下である。顔料分散物中の粒子の数平均粒子径が20nm未満である場合には、保存安定性が確保できない場合が存在し、一方、250nmを超える場合には、光学濃度が低くなる場合が存在する。
【0316】
本発明の顔料分散物に含まれる顔料の濃度は、1〜35質量%の範囲であることが好ましく、2〜25質量%の範囲であることがより好ましい。上記範囲であれば表面張力、粘度等の分散物の物性値を調整しやすく好ましい。
【0317】
本発明のアゾ顔料は、その用途に適した耐溶剤性、分散性、熱移動性などの物性を、置換基で調整して使用する。また、本発明のアゾ顔料は、用いられる系に応じて乳化分散状態、更には固体分散状態でも使用することが出来る。
【0318】
また、成分を短時間で良好に分散させるために分散剤を組成物に含めてもよい。
本発明におけるカラーフィルター用着色組成物には、更に、界面活性剤、シリコーン系添加剤、顔料系の添加剤、シラン系カップリング剤及びチタン系カップリング剤から選択される1種以上の分散剤を含むことが好ましい。これらの分散剤は2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0319】
以下に前記の分散剤の具体例について説明する。
界面活性剤は界面活性作用を有するものであれば特に限定されないが、陽イオン性、陰イオン性、非イオン性、又は両性などの界面活性剤を挙げることができ、その具体例としては、アルカンスルホン酸塩、直鎖アルキルベンゼンスルホン酸塩、分岐鎖アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルナフタレンスルホン酸塩、ナフタレンスルホン酸塩ホルムアルデヒド縮合物、アルキル硫酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩、アルキルりん酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテルりん酸塩、及び脂肪族モノカルボン酸塩などの陰イオン性界面活性剤;アルキルアミン塩、及び四級アミン塩などの陽イオン性界面活性剤;グリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル、及びポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルなどの非イオン性界面活性剤;アルキルベタインなどの両性界面活性剤;陽イオン性、陰イオン性、非イオン性、両性のいずれであってもよい高分子系界面活性剤などが挙げられる。
【0320】
シリコーン系添加剤の具体例としては、ポリアルキルシロキサン、ポリアルキルフェニルシロキサン、ポリオルガノシロキサン、ポリジメチルシロキサン、ポリオルガノシロキサンポリエーテルコポリマー、ポリフルオロシロキサン、オルガノシランなどが挙げられる。これらのシリコーン系添加剤は2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0321】
顔料系の添加剤とは、顔料骨格に塩基性基、酸性基、直鎖アルキル基、分岐鎖アルキル基、ポリオキシエチレン基などの置換基を導入した顔料誘導体である。好ましい顔料骨格としては、モノアゾ系顔料、ジスアゾ系顔料、ベンズイミダゾロン系顔料、縮合アゾ系顔料、アゾレーキ系顔料、アントラキノン系顔料、ジケトピロロピロール系顔料、キナクリドン系顔料、イソインドリン系顔料、イソインドリノン系顔料、ペリノン系顔料、ペリレン系顔料などが挙げられる。
【0322】
これらの顔料系の添加剤の中でも、アゾ系顔料の骨格に、上記置換基を導入したものが、一般式(1)で表されるアゾ化合物との親和性がよく好ましい。
【0323】
シラン系カップリング剤の具体例としては、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリス(β−メトキシエトキシ)シラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−フェニル−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン、n−ブチルトリメトキシシラン、イソブチルトリメトキシシラン、トリメチルメトキシシラン、ヒドロキシプロピリトリメトキシシラン、n−ヘキサデシルトリメトキシシラン、及びn−オクタデシルトリメトキシシランなどが挙げられる。
【0324】
チタン系カップリング剤の具体例としては、イソプロピルトリ(N−アミノエチルアミノエチル)チタネート、及びジブトキシビストリエタノールアミンチタネートなどが挙げられる。
【0325】
上記の分散剤の使用量は、使用する分散剤の種類にもよるが、一般式(1)で表されるアゾ化合物100質量部に対して、0.1〜100質量部用いるのが好ましく、0.5〜80質量部用いるのが特に好ましい。
【0326】
分散剤の使用方法は特に制限されず、公知のフォトリソグラフィー法用の着色組成物の調製方法に従えばよい。
本発明はカラーフィルター用着色組成物の調製方法にも関する。本発明のカラーフィルター用着色組成物の調製方法は界面活性剤、シリコーン系添加剤、顔料系の添加剤、シラン系カップリング剤及びチタン系カップリング剤から選択される1種以上の分散剤及び、一般式(1)で表されるアゾ化合物を、溶剤の一部に分散して顔料分散体を得る工程、及び、該顔料分散体を重合性化合物及び残余の溶剤と混合する工程を含む。
カラーフィルター用着色組成物の調製方法としては本発明の方法を用いることが好ましい。
【0327】
本発明はまた、上記のカラーフィルター用着色組成物を用いて形成される、カラーフィルターを提供する。該カラーフィルターは、高いコントラスト及び良好な光透過性を示す。具体的には、650nmの波長において、好ましくは85%以上、より好ましくは90%以上の光透過性を示す。
【0328】
本発明のカラーフィルターを製造するには、公知のいずれの方法を用いてもよく、好適にはフォトリソグラフィー法及びインクジェット法が挙げられる。以下、フォトリソグラフィー法及びインクジェット法について、詳細に説明する。
【0329】
1)フォトリソグラフィー法
フォトリソグラフィー法によりカラーフィルターを形成する場合には、本発明のカラーフィルター用着色組成物の重合性化合物として、感光性樹脂を用いる。感光性樹脂は、単量体及び/又はオリゴマーとして光重合開始剤と共に着色組成物中に配合され、光照射により硬化し透明基板上に被膜を形成する。
【0330】
感光性樹脂としては、前述の分子中に一つ以上のエチレン性二重結合を有する重合性単量体の重合体又は共重合体が好適に用いられる。
【0331】
これらの感光性樹脂(重合性単量体)としては、特にアクリル酸エステル及びメタクリル酸エステルが好ましく、具体的にはメチルアクリレート、メチルメタクリレート、ブチルメタクリレート、ブチルアクリレート、ペンタエリトリトールテトラアクリレート、ペンタエリトリトールテトラメタクリレート、ペンタエリトリトールトリアクリレート、ペンタエリトリトールトリメタクリレート、ジペンタエリトリトールヘキサアクリレート、ジペンタエリトリトールヘキサメタクリレート、ジペンタエリトリトールペンタアクリレート、ジペンタエリトリトールペンタメタクリレート、グリセロールジアクリレート、グリセロールジメタクリレート、1,4−ブタンジオールジアクリレート、1,4−ブタンジオールジメタクリレート、ビスフェノールAジアクリレート、ビスフェノールAジメタクリレートなどが挙げられる。
【0332】
フォトリソグラフィー法を用いる場合、本発明の着色組成物に、前述の感光性樹脂に加え、酸性基を有するバインダー樹脂を用いる。酸性基を有するバインダー樹脂としては、カルボキシル基、水酸基、スルホン酸基などを有する樹脂が挙げられ、カルボキシル基及び/又は水酸基を有するバインダー樹脂が好ましい。
【0333】
上記の酸性基を有するバインダー樹脂としては、アクリル酸エステル類、メタクリル酸エステル類、スチレン、酢酸ビニル、塩化ビニル、N−ビニルピロリドン及びアクリルアミドなどから選ばれるエチレン性二重結合を有する単量体と、アクリル酸、メタクリル酸、p−スチレンカルボン酸、p−スチレンスルホン酸、p−ヒドロキシスチレン及び無水マレイン酸などから選択される、酸性基を有するエチレン性二重結合を有する単量体との共重合体が好ましく使用される。
【0334】
酸性基を有するバインダー樹脂は、感光性樹脂(重合性単量体)1質量部に対して、0.5〜4質量部用いるのが好ましく、1〜3質量部用いるのが特に好ましい。
【0335】
フォトリソグラフィー法用の着色組成物に用いる溶剤としては、脂肪酸エステル類、ケトン類、芳香族類、アルコール類、グリコール類、グリセリン、アルキレングリコールモノアルキルエーテル類、アルキレングリコールジアルキルエーテル類、エーテル類、及び含窒素極性有機溶媒から選択される1種以上の油性媒体が挙げられる。
【0336】
これらの溶剤の使用量は、着色組成物中の溶剤以外の成分の総質量に対して3〜30倍質量であるのが好ましく、4〜15倍質量であるのが特に好ましい。
【0337】
また、本発明におけるフォトリソグラフィー法用の着色組成物に、前述の成分の他に必要に応じて、湿潤剤、褪色防止剤、乳化安定剤、紫外線吸収剤、防腐剤、防カビ剤、pH調整剤、表面張力調整剤、消泡剤、粘度調整剤、分散安定剤、防錆剤、キレート剤などの公知の添加剤(特開2003−306623号公報に記載)が挙げられる。これらの各種添加剤は、調製時に油相又は水相に添加してもよい。
【0338】
本発明のカラーフィルター用着色組成物は、一般式(1)で表されるアゾ化合物、重合性化合物、溶剤、及びその他各種添加剤を、例えば、ビーズミル、ボールミル、サンドミル、二本ロールミル、三本ロールミル、ホモジナイザー、ニーダー、振とう分散機などの機器を用い、均一に混合、分散させる工程、及び前記溶剤等を用いて粘度調整する工程を含む方法により調製することが出来る。
【0339】
本発明のカラーフィルター用着色組成物を用いてカラーフィルターを基板上に形成させる方法は、公知のフォトリソグラフィー法を用いれば良い。例えば、本発明の着色組成物を印刷法、スプレー法、バーコート法、ロールコート法、スピンコート法などの公知の方法によりディスプレー基板上に均一に塗布する工程、加熱によりインク中の溶剤を除去する工程、ディスプレー基板上のカラーフィルターパターンを高圧水銀ランプなどを用い露光する工程、アルカリ現像工程、洗浄工程、及び、ベーキング工程を含む方法によりカラーフィルターが得られる。
上記本発明のカラーフィルターの製造方法に用いる現像液としては、本発明の組成物を溶解し、一方、放射線照射部を溶解しない組成物であればいかなるものも用いることができる。具体的には種々の有機溶剤の組み合わせやアルカリ性の水溶液を用いることができる。
有機溶剤としては、本発明の組成物を調整する際に使用される前述の溶剤が挙げられる。
アルカリ性の水溶液としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム,硅酸ナトリウム、メタ硅酸ナトリウム、アンモニア水、エチルアミン、ジエチルアミン、ジメチルエタノールアミン、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド、コリン、ピロール、ピペリジン、1,8−ジアザビシクロ−〔5.4.0〕−7−ウンデセン等のアルカリ性化合物を、濃度が0.001〜10質量%、好ましくは0.01〜1質量%となるように溶解したアルカリ性水溶液が使用される。なお、このようなアルカリ性水溶液からなる現像液を使用した場合には、一般に、現像後、水で洗浄する。
【0340】
2)インクジェット法
カラーフィルターをインクジェット法を用いて形成する場合には、本発明のカラーフィルター用着色組成物の重合性化合物としては、インクジェット方式用インクに従来用いられているものであれば特に限定されず、いずれを用いてもよい。感光性樹脂及び/又は熱硬化性樹脂の単量体が好適に用いられる。
【0341】
これらの感光性樹脂としては、アクリル樹脂、メタクリル樹脂及びエポキシ樹脂などが挙げられ、アクリル樹脂、及びメタクリル樹脂が好適に使用される。アクリル樹脂及びメタクリル樹脂は、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、ウレタンアクリレート、ウレタンメタクリレート、アクリル酸アミド、メタクリル酸アミド、アルキルアクリレート、ベンジルメタクリレート、ベンジルアクリレート、アミノアルキルメタクリレートなどから選ばれる光重合性の単量体と、ベンゾフェノン誘導体、アセトフェノン誘導体、ベンゾイン誘導体、ベンゾインエーテル誘導体、チオキサントン誘導体、アントラキノン誘導体、ナフトキノン誘導体、及びトリアジン誘導体などの化合物から選ばれる光重合開始剤を組み合わせて用いたものが好ましい。また、上記の光重合性単量体の他に、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、酢酸ビニルなどの親水性基を有する光重合性単量体を加えてもよい。
【0342】
熱硬化性樹脂としては、例えばメラミン樹脂、尿素樹脂、アルキド樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂及びシクロペンタジエン樹脂などが挙げられる。
【0343】
インクジェット法を用いる場合、着色組成物に用いる溶剤は、油性媒体でも水性媒体でもよいが、水性媒体がより好適に使用される。水性媒体は水又は、水及び水溶性有機溶媒の混合溶媒が用いられるが、水及び水溶性有機溶媒の混合溶媒が好ましい。また、脱イオン処理されたものを使用することが望ましい。
【0344】
上記の着色組成物において使用する油性媒体は特に限定されないが、例えばフォトリソグラフィー法に用いる着色組成物用の溶剤として挙げたものなどを使用することが出来る。
【0345】
水性媒体中に使用する溶剤としては、アルコール類、ケトン類、エーテル類、グリコール類、グリセリン、アルキレングリコールモノアルキルエーテル類、アルキレングリコールジアルキルエーテル類、アルカノールアミン類、及び含窒素極性有機溶媒などから選択され、水溶性を有するものが挙げられる。これらの水溶性有機溶媒は単独で用いてもよく、二種以上を用いてもよい。
【0346】
これらの溶剤の使用量は特に限定されないが、着色組成物の粘度が室温にて20mPa・s以下、好ましくは10mPa・s以下となるように使用量を適宜調節するのがよい。
【0347】
本発明のインクジェット用の着色組成物は、フォトリソグラフィー法用の着色組成物と同様に成分を分散、混合させる工程を含む方法により調製することが出来る。分散時には必要に応じ、フォトリソグラフィー法の場合と同様に分散剤を配合してもよい。
【0348】
また、本発明におけるインクジェット用の着色組成物に、前述の成分の他に必要に応じて、湿潤剤、褪色防止剤、乳化安定剤、紫外線吸収剤、防腐剤、防カビ剤、pH調整剤、表面張力調整剤、消泡剤、粘度調整剤、分散安定剤などの公知の種々の添加剤を含めてもよい。
【0349】
上記のように得られた着色組成物を用いたカラーフィルターの形成方法は、公知のインクジェット方式によるカラーフィルターの形成方法であれば特に限定されない。例えば、基板上に液滴状で所定のカラーフィルターパターンを形成させる工程、これを乾燥させる工程、及び熱処理あるいは光照射あるいはこれらの双方を行って基板上のカラーフィルターパターンを硬化、皮膜化させる工程を含む方法によりカラーフィルターを形成することができる。
【0350】
以上、フォトリソグラフィー法とインクジェット法について説明したが、本発明のカラーフィルターは他の方法によって得られたものでもよい。
【0351】
上記以外のカラーフィルター形成方法(例えばオフセット印刷法などの種々の印刷法)を用いる場合であっても、着色組成物が前述の重合性化合物及び溶剤を含み、一般式(1)で表されるアゾ顔料を着色剤に使用するものであれば、カラーフィルター用着色組成物、得られたカラーフィルターの何れも本発明の範囲に含まれる。
【0352】
例えば、重合性化合物、溶剤、添加剤などの成分、及びカラーフィルター形成時の処方については、慣用例に従って選択すればよく、上述のフォトリソグラフィー法及びインクジェット法の説明に挙げたものに限定されない。
【0353】
以上のようにして得られる、本発明のカラーフィルターは、公知の方法によりG(緑)、B(青)のカラーフィルターパターンとともに画素を形成する。かかるカラーフィルターは、透明性が非常に高く、分光特性にすぐれ、消偏光作用の小さい、鮮明な画像を表示可能な液晶ディスプレーを与えることができる。また、このカラーフィルターが形成されたデバイスを使用すると、良好な分光特性を有するカメラモジュールを与える事が出来る。
本発明のカラーフィルターは、液晶表示素子やCCD、CMOS等の固体撮像素子に用いることができ、100万画素を超えるような高解像度のCCD素子やCMOS素子等にも好適である。
【実施例】
【0354】
以下に本発明を実施例に基づき具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、以下の実施例において、特に断りのない限り「%」及び「部」は、「質量%」及び「質量部」を表す。
〔D−8化合物の製造方法1〕
具体的化合物例D−8の製造方法
具体的化合物例D−8の製造方法を以下に示す。
【0355】
【化56】

【0356】
D−8化合物の製造方法
1.0gの化合物(2)を10mlのリン酸(和光純薬株式会社;試薬特級純度85%、以下同様)に加えて溶かした。この溶液を氷冷して−5〜0℃に保ち、亜硝酸ナトリウム0.38gを加えて1時間攪拌し、ジアゾニウム塩溶液を得た。別に化合物(3)1.05gにアセトニトリル25mlを添加し攪拌下に、前述のジアゾニウム塩溶液を8℃以下で加えた。添加終了と同時に氷浴をはずし、更に3時間攪拌した。反応液にアセトニトリル50mlを添加し、30分間攪拌し、析出している結晶を濾別し、アセトニトリル30mlでかけ洗いをした。結晶を乾燥せずに水100mlに加え、炭酸水素ナトリウム0.5gを水30mlに溶かした溶液を添加し、20〜25℃で30分間攪拌した。析出している結晶を濾別し、更に水で充分にかけ洗いした。得られた結晶を乾燥させずにジメチルアセトアミド50mlに加え、100℃で加熱攪拌を30分間行なった。室温で30分間攪拌し、析出している結晶を濾過し、ジメチルアセトアミド30mlでかけ洗いをした。得られた結晶を乾燥させずにジメチルアセトアミド50mlに加え、水25mlを徐々に滴下し、80℃で1時間攪拌し、更に室温下で30分間攪拌した。析出している結晶を濾過し、ジメチルアセトアミド/水=2/1の20ml及びメタノール20mlでかけ洗いした。得られた結晶を乾燥し、本発明の化合物D−8を1.3g得た。収率72%。 CuKα特性X線回折におけるブラッグ角の特徴的X線回折ピーク:7.1°、11.7°、20.0°及び27.1°(β体)
その後、1gの化合物D−8をメタンスルホン酸10gに溶解させた溶液を、攪拌している100gのメタノール溶媒に25度で滴下した。その後、1時間攪拌したのちに、析出している結晶を濾過し、メタノール20g、水20gでかけ洗いした。その後、得られた結晶を乾燥させずにアセトン50mlで還流し1時間攪拌した。室温で30分間攪拌し、析出している結晶を濾過し、アセトン30mlでかけ洗いをした。得られた結晶を乾燥し、鮮やかな赤色の本発明の化合物D−8を0.9g得た。収率93%。CuKα特性X線回折におけるブラッグ角の特徴的X線回折ピーク:7.1°、25.3°、26.0°、27.2°(α体)
図1に赤外吸収チャートを示す。
化合物D−8と同様にして他の化合物を合成した。
〔製造方法2〕
具体的化合物例D−8aの製造方法
具体的化合物例D−8aの製造方法を以下に示す。
D−8aの合成
1.0gの化合物(2)を10mlのリン酸(和光純薬株式会社;試薬特級純度85%、以下同様)に加えて溶かした。この溶液を氷冷して−5〜0℃に保ち、亜硝酸ナトリウム0.38gを加えて1時間攪拌し、ジアゾニウム塩溶液を得た。別に化合物(3)1.05gにアセトニトリル25mlを添加し攪拌下に、前述のジアゾニウム塩溶液を8℃以下で加えた。添加終了と同時に氷浴をはずし、更に3時間攪拌した。反応液にアセトニトリル50mlを添加し、30分間攪拌し、析出している結晶を濾別し、アセトニトリル30mlでかけ洗いをした。結晶を乾燥せずに水100mlに加え、炭酸水素ナトリウム0.5gを水30mlに溶かした溶液を添加し、20〜25℃で30分間攪拌した。析出している結晶を濾別し、更に水で充分にかけ洗いした。得られた結晶を乾燥させずにジメチルアセトアミド50mlに加え、100℃で加熱攪拌を30分間行なった。室温で30分間攪拌し、析出している結晶を濾過し、ジメチルアセトアミド30mlでかけ洗いをした。得られた結晶を乾燥させずにジメチルアセトアミド50mlに加え、水25mlを徐々に滴下し、80℃で1時間攪拌し、更に室温下で30分間攪拌した。析出している結晶を濾過し、ジメチルアセトアミド/水=2/1の20ml及びメタノール20mlでかけ洗いした。得られた結晶を乾燥し、本発明の化合物D−8を1.3g得た。収率72%。 CuKα特性X線回折におけるブラッグ角の特徴的X線回折ピーク:7.1°、11.7°、20.0°及び27.1°(β体)
その後、1gの化合物D−8と、S−95(エチルカルバゾール体)0.1gをメタンスルホン酸10gに溶解させた溶液を、攪拌している100gのメタノール溶媒に25度で滴下した。その後、1時間攪拌したのちに、析出している結晶を濾過し、メタノール20g、水20gでかけ洗いした。その後、得られた結晶を乾燥させずにアセトン50mlで還流し1時間攪拌した。室温で30分間攪拌し、析出している結晶を濾過し、アセトン30mlでかけ洗いをした。得られた結晶を乾燥し、本発明の化合物D−8aを1.0g得た。収率94%。CuKα特性X線回折におけるブラッグ角の特徴的X線回折ピーク:7.1°、25.3°、26.0°、27.2°(α体)
【0357】
〔実施例1〕
具体的化合物例D−8の顔料2.5部、オレイン酸ナトリウム0.5部、グリセリン5部、水42部を混合し、直径0.1mmのジルコニアビーズ100部とともに遊星型ボールミルを用いて毎分300回転、5時間分散を行った。分散終了後、ジルコニアビーズを分離し、顔料分散物1を得た。
〔実施例2〜7〕
実施例1の顔料に変えてD−8a、D−1、D−7、D−36、D−127、D−222)を用いた以外は実施例1と同様にして赤色の顔料分散物を得た。
【0358】
〔比較例1〕
実施例1の顔料に変えてC.I.ピグメント・レッド254(チバスペシャリティ社製BT−CF)を用いた以外は実施例1と同様にして赤色の比較顔料分散物1を得た。
【0359】
[比較例2]
実施例1で用いた顔料(D−8)に変えてC.I.ピグメント・イエロー74(チバスペシャリティ社製Iralite YELLOW GO)を用いた以外は実施例1と同様にして黄色の比較顔料分散物2を得た。
【0360】
[比較例3]
実施例1で用いた顔料(D−8)に変えてC.I.ピグメント・イエロー155(クラリアント社製INKJET YELLOW 4G VP2532)を用いた以外は実施例1と同様にして黄色の比較顔料分散物3を得た。
【0361】
(評価)
<製造安定性>
合成例1を10回繰り返してD−8を製造したところ、目的とするα体が得られるかどうかの確認を行った。
その結果、目的とするα体が10回とも得られることを確認した。
D−8a、D−1、D−7、D36、D127、D222においても同じXRDのパターンが得られた。
<分散性>
上記で得られた各顔料分散物を動的光散乱粒径測定装置(日機装(株)マイクロトラックUPA150)を用いて、常法により体積平均粒子径を測定した。結果を表1に示す。
50nm未満のものを◎、50nm以上100nm未満のものを○、100nm以上200nm未満のものを△、200nm以上のものを×とした。
<分散安定性>
上記で得られた各顔料分散物を動的光散乱粒径測定装置(日機装(株)マイクロトラックUPA150)を用いて、常法により体積平均粒子径を測定した。顔料分散物を作製して2時間後に測定した体積平均粒子径、及び70℃で2日間保存後の体積平均粒子径が、共に、150nm以下のものを◎、いずれかが150nm以上200nm以下のものを○(良好)、いずれかが200nm以上のものを×(不良)とした。結果を表1に示す。
<耐光性評価>
着色力評価に用いた画像濃度1.0の塗布物を、フェードメーターを用いてキセノン光(170000lux.;325nm以下カットフィルター存在下)を14日間照射し、キセノン照射前後の画像濃度を、反射濃度計を用いて測定し、色素残存率[(照射後濃度/照射前濃度)×100%]として評価した。90%以上のものを○、80%以上90%未満を△、80%未満を×とした。
【0362】
〔実施例2〜8〕
実施例1の具体的化合物例D−8を表1のように変更した以外は、同様にして、同様な評価を行なった。
【0363】
【表1】

【0364】
〔実施例101〕
国際公開番号WO06/064193号パンフレットの22ページに記載されているDispersant 10で表される高分子分散剤を水酸化カリウム水溶液で中和した。得られた分散剤水溶液75質量部(固形分濃度20%)の中に、前記合成のアゾ顔料(D−8)30質量部及びイオン交換水95質量部を加えて、ディスパー攪拌翼にて混合・粗分散する。混合・粗分散した液にジルコニア・ビーズを600質量部を入れて、これを分散機(サンドグラインダミル)で4時間分散した後、ビーズと分散液に分離した。得られた混合物を攪拌しながら、25℃でポリエチレングリコールジグリシジルエ−テル2質量部をゆっくり加え、50℃で6時間攪拌した。更に、分画分子数300Kの限外濾過膜を使って不純物を除去し、これをポアサイズ5μmのフィルター(アセチルセルロース膜、外径:25mm、富士フイルム(株)社製)を取り付けた容量20mlのシリンジで濾過し、粗大粒子を除去することにより固形分濃度10%の顔料分散物101(粒径80nm:日機装(株)社製Nanotrac150(UPA−EX150)を用いて測定)を得た。
【0365】
[実施例102]
実施例101で用いた顔料(D−8)に変えてD−8aを用いた以外は実施例101と同様にして顔料分散物102を得た。
【0366】
[比較例101]
実施例101において用いたアゾ顔料(D−8)の代わりに、レッド顔料(C.I.ピグメント・レッド254(チバスペシャリティ社製BT−CF)を用いた以外は実施例101と同様にして比較顔料分散物101を得た。
【0367】
〔実施例103〕
【0368】
実施例101で得られた顔料分散物101を固形分で5質量%、グリセリン10質量%、2−ピロリドン5質量%、1,2―ヘキサンジオール2質量%、トリエチレングリコールモノブチルエーテル2質量%、プロピレングリコール0.5質量%、イオン交換水75.5質量%になる様に各成分を加えて、得られた混合液をポアサイズ1μmのフィルター(アセチルセルロース膜、外径:25mm、富士フイルム(株)社製)を取り付けた容量20mlのシリンジで濾過し、粗大粒子を除去することにより表2に示す本発明の顔料インク液5を得た。
[実施例104]
実施例101で得られた顔料分散物101の代わりに、実施例102で得られた比較顔料分散物102を用いた以外は実施例103と同様にして比較顔料インク液6を得た。
【0369】
[比較例104]
実施例101で得られた顔料分散物101の代わりに、比較例101で得られた比較顔料分散物101を用いた以外は実施例103と同様にして比較顔料インク液5を得た。
【0370】
なお、表2において、「吐出安定性」、「光堅牢性」、「熱堅牢性」、「オゾン堅牢性」、「金属光沢」、「インク液安定性」は、各インクをセイコーエプソン(株)社製インクジェットプリンターPX−V630のマゼンタインク液のカートリッジに装填し、その他の色のインクはPX−V630の顔料インク液を用い、受像シートはセイコーエプソン(株)社製写真用紙<光沢>、及びセイコーエプソン(株)社製写真用紙クリスピア<高光沢>に推奨モードきれいで階段状に濃度が変化した単色画像パターン並びにグリーン、レッド、グレーの画像パターンを印画させ、画像品質(金属光沢)並びにインクの吐出性と画像堅牢性の評価を行った。金属光沢以外の評価は単色で行った。
【0371】
上記実施例103(顔料インク液5)、実施例104(顔料インク液6)及び比較例102(比較顔料インク液5)のインクジェット用インクについて、下記評価を行った。その結果を表2に示した。
【0372】
(評価実験)
1)吐出安定性については、カートリッジをプリンターにセットし全ノズルからのインクの突出を確認した後、A4 20枚出力し、以下の基準で評価した。
A:印刷開始から終了まで印字の乱れ無し
B:印字の乱れのある出力が発生する
C:印刷開始から終了まで印字の乱れあり
【0373】
2)画像保存性については、印画サンプルを用いて、以下の評価を行った。
[1] 光堅牢性は印画直後の画像濃度CiをX−rite310にて測定した後、アトラス社製ウェザーメーターを用い画像にキセノン光(10万ルックス)を14日照射した後、再び画像濃度Cfを測定し画像残存率Cf/Ci×100を求め評価を行った。
画像残像率について反射濃度が1、1.5、2の3点にて評価し、いずれの濃度でも画像残存率が80%以上の場合をA、2点が80%未満の場合をB、全ての濃度で80%未満の場合をCとした。
【0374】
[2] 熱堅牢性については、80℃60%RHの条件下に7日間、印字サンプルを保存する前後での濃度を、X−rite310にて測定し、画像残存率を求め評価した。画像残像率について反射濃度が1、1.5及び2の3点にて評価し、いずれの濃度でも画像残存率が95%以上の場合をA、2点が95%未満の場合をB、全ての濃度で95%未満の場合をCとした。
【0375】
[3] 耐オゾン性(オゾン堅牢性)については、オゾンガス濃度が5ppm(25℃;50%)に設定されたボックス内に14日間放置し、オゾンガス下放置前後の画像濃度を反射濃度計(X−Rite社製PhotographicDensitometer310)を用いて測定し、画像残存率として評価した。なお、前記反射濃度は、1、1.5及び2.0の3点で測定した。ボックス内のオゾンガス濃度は、APPLICS製オゾンガスモニター(モデル:OZG−EM−01)を用いて設定した。
何れの濃度でも画像残存率が80%以上の場合をA、1又は2点が80%未満をB、全ての濃度で70%未満の場合をCとして、三段階で評価した。
【0376】
3)金属光沢の発生有無:イエロー及びグリーン、レッドのベタ印画部を反射光により目視観察し評価した。
金属光沢の見えないものを「○」、金属光沢の見えるものを「×」として評価した。
【0377】
4)インク液安定性:実施例及び比較例の顔料インク液を60℃で10日間経時した後、顔料インク液中の粒径変化なしを「○」、粒径変化ありを「×」として評価した。下記表2に示した。
【0378】
【表2】

【0379】
表2の結果から、本発明の顔料を使用した顔料インク液は吐出性、耐侯性に優れ、金属光沢の発生が押さえられ、顔料インク液安定性に優れることがわかった。
表2の結果から明らかなように、本発明のインク液を使用した系ではすべての性能に優れていることがわかる。特に比較例に対して、光堅牢性及びインク液安定性が優れている。
【0380】
〔実施例104〕
実施例103や実施例104で作製した顔料インク液を、エプソン(株)社製のPX−V630にて画像を富士フイルム(株)社製インクジェットペーパーフォト光沢紙「画彩」にプリントし、実施例103と同様な評価を行ったところ、同様な結果が得られた。
表1、表2の結果から明らかなように、本発明の顔料を用いた顔料分散物及び顔料インク液は色調に優れ、高い着色力及び耐光性を示す。
従って、本発明の顔料を用いた顔料分散物は、例えば、インクジェットなどの印刷用のインク等に好適に使用することができる。
【0381】
〔実施例201〕
〔フォトリソグラフィー法によるカラーフィルターの作製〕
合成例1で合成した化合物D−8で示される顔料を使用した。70ccのマヨネーズ瓶に、下記に示す材料を投入し、これを振とう分散機(LAU社製DAS200)で6時間振盪して、顔料分散体201を得た。
【0382】
【表3】

【0383】
〔実施例202〜207、比較例201〜203〕
実施例201において使用した顔料の代わりに、表3に記載の顔料を使用し、実施例201と同様にして着色組成物を調製した。
<分散性>
上記で得られた各顔料分散物を動的光散乱粒径測定装置(日機装(株)マイクロトラックUPA150)を用いて、常法により体積平均粒子径を測定した。結果を表1に示す。
50nm未満のものを◎、50nm以上100nm未満のものを○、100nm以上200nm未満のものを△、200nm以上のものを×とした。
<分散安定性>
上記で得られた各顔料分散物を動的光散乱粒径測定装置(日機装(株)マイクロトラックUPA150)を用いて、常法により体積平均粒子径を測定した。顔料分散物を作製して2時間後に測定した体積平均粒子径、及び70℃で2日間保存後の体積平均粒子径が、共に、150nm以下のものを◎、いずれかが150nm以上200nm以下のものを○(良好)、いずれかが200nm以上のものを×(不良)とした。結果を表4に示す。
【0384】
【表4】

【0385】
顔料分散体201に下記に示す材料を加え、上記振とう分散機にて更に30分振盪しフォトリソグラフィー法用のカラーフィルター用着色組成物201を調製した。
【0386】
【表5】

【0387】
得られたカラーフィルター用着色組成物201を、スライドグラスにバーコーター Rod No.10 を用いて塗布した後、80℃のオーブンで5分間乾燥してインク塗膜を得た。
上記塗膜を、塗膜の一部を適当にマスキングした後、高圧水銀ランプを用い、200mJ/cmの条件で照射して露光した。その後0.5%炭酸ナトリウム水溶液を用い25℃で現像を行い、更に220℃のオーブンで20分間乾燥を行って、カラーフィルターを作製した。このフィルムの光透過率を、分光光度計(日立製作所(株)製、U−3310)を用いて測定した。また、波長540〜650nmの間で、得られたカラーフィルターの最低透過率を示す波長を求めた。結果を表8に示す。
【0388】
実施例201において使用した顔料の代わりに、合成例2で合成した化合物D−8(S−95併用)で示される顔料を使用し、顔、実施例201と同様にして着色組成物を調製した。得られた着色組成物を用いてカラーフィルターを作成し、光透過率の測定を行った。また、波長540〜650nmの間で、得られたカラーフィルターの最低透過率を示す波長を求めた。結果を表8に示す。
【0389】
【表6】

【0390】
〔実施例212〕
実施例201において、顔料0.6gに対して分散剤として界面活性剤(ビックケミー(株)社製顔料湿潤分散剤BYK−161)を0.5g添加して分散を行ったところ、分散時間6時間で実施例201と同等の性能を有するカラーフィルターが得られた。
【0391】
〔実施例213〜218〕
表7に示す分散剤を用い使用量を変更することの他は、実施例201と同様に振とう分散機(LAU社製DAS200)を用いて顔料を分散させ、顔料分散体を調製したところ、それぞれ分散時間6時間で実施例201と同等の性能を有するカラーフィルターが得られた。
【0392】
【表7】

【0393】
〔実施例219〕
実施例201において使用した顔料の代わりに、合成例2で合成した化合物D−8(S−95併用)で示される顔料を使用した以外同様の作業を行い、実施例201と同等の性能を有するカラーフィルターが得られた。
【0394】
〔比較例201〕
実施例201において使用した顔料の代わりに、C.I.Pigment Red 254 (IRGAPHORE DPP RED、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製)で示される顔料を、使用した以外は実施例201と全く同様にして着色フィルムを調製した。得られたフィルムの光透過率の測定を行い、光透過率の最低の波長と650nmの光透過率、540nmの光透過率を求めた。結果を表8に示す。
【0395】
【表8】

【0396】
着色剤として化合物D−8、D−8(S−95併用)で表される化合物を含む本発明のカラーフィルター用着色組成物を用いて作成したカラーフィルターは、透過率曲線がシャープに立ち上がり、かつ、650〜750nmの領域において、透過率が高く、優れた透過率曲線を示すものであった。更に、比較例1のカラーフィルターは、540nmに透過率の高い部分があるが、実施例201〜211のカラーフィルターは540nmの透過率は低く、優れたものであった。
【0397】
また、本発明のカラーフィルター用着色組成物を用いて作成したカラーフィルターは、比較例201において得られたカラーフィルターと比較し、350〜400nmの青色光の透過率が非常に低く、色純度の高い赤色を表示可能にするものであった。
【0398】
すなわち、本発明のカラーフィルター用着色組成物は、一般式(1)で表されるアゾ顔料の構造を選択することにより、透過率が急激に変化する波長を約540nmから約590nmの間で適宜調節することを可能とし、ディスプレーのバックライトの光源波長に応じて最適の色相の赤色を得ることができる点で有用なものである。
【0399】
〔耐熱性評価〕
実施例201及び202、比較例201で得られたカラーフィルターを用いて、耐熱性試験を行った。
〈耐熱性試験方法〉
カラーフィルターを大気下、250℃で90分間曝露し、その前後の色差(ΔEab)を分光光度計(サカタインクス社製Macbeth Coloreye―3000)で測定を行った。下記判定基準に従って評価しこれらの結果を表9に示した。
<判定基準>
○:ΔE*ab<1.0
△1.0≦ΔE*ab<1.1
×:1.1≦ΔE*ab
【0400】
【表9】

【0401】
着色剤として一般式(1)で表されるアゾ化合物を含む本発明のカラーフィルター用着色組成物を用いて作成した実施例201及び202のカラーフィルターは、比較例201の顔料を用いたものと比べて、同等以上の耐熱性を示した。
【0402】
(評価)
【0403】
<耐光性>
上記で得られた各顔料分散物をNo.3のバーコーターを用いてセイコーエプソン(株)社製フォトマット紙<顔料専用>に塗布した。得られた塗布物の画像濃度を反射濃度計(X−Rite社製X−Rite938)を用いて測定し、「着色力(OD:OpticalDensity)」が1.0の塗布物を、フェードメーターを用いてキセノン光(170000lux.;325nm以下カットフィルター存在下)を14日間照射し、キセノン照射前後の画像濃度を、反射濃度計を用いて測定し、色素残存率[(照射後濃度/照射前濃度)×100%]として評価した。
色素残存率が80%より大きいとき、○
色素残存率が60%より大きく80%以下のとき、△
色素残存率が60以下のとき、×
【0404】
【表10】

【0405】
着色剤として一般式(1)で表されるアゾ化合物を含む本発明のカラーフィルター用着色組成物を用いて作成した実施例201〜211のカラーフィルターは、比較例201、202の顔料を用いたものと比べて、同等以上の耐光性を示した。
【0406】
(コントラスト評価)
得られたカラーフィルターのコントラストを、壷坂電機株式会社製、コントラストテスター CT−1を用いて測定した。評価はコントラスト≧23000を○、23000>コントラスト≧18000を△、18000>コントラストを×とし、結果を表11に示す。
【0407】
【表11】

【0408】
着色剤として一般式(1)で表される化合物を含む本発明のカラーフィルター用着色組成物を用いて作成した実施例201〜211のカラーフィルターは、比較例202の顔料を用いたものと比べて、優れたコントラストを示した。
【0409】
(分散物経時安定性の評価)
実施例201〜211、比較例201、202で作成した着色組成物201〜211、比較着色組成物1、2を暗所室温で2週間保存した後、異物の析出度合いを目視により下記判定基準に従って評価した。
<判定基準>
○:析出は認められなかった。
△:僅かに析出が認められた。
×:析出が認められた。
【0410】
【表12】

【0411】
着色剤として一般式(1)で表されるアゾ化合物を含む本発明のカラーフィルター用着色組成物を用いて作成した顔料分散体201及び202は、比較例201の顔料を用いたものと比べて、経時による異物が認められず、分散物経時安定性に優れていた。
【0412】
(実施例219)
<Green顔料分散液の調製>
−Green顔料分散液P1の調製−
顔料としてC.I.ピグメント・グリーン36とC.I.ピグメント・イエロー139との100/55(質量比)混合物12.6部と、分散剤としてBYK2001(Disperbyk:ビックケミー(BYK)社製、固形分濃度45.1質量%)5.2部と、分散樹脂としてベンジルメタクリレート/メタクリル酸共重合体(酸価134mgKOH/g、Mw=30,000)を2.7部と、溶媒としてプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート78.3部とからなる混合液を、ビーズミルにより15時間混合・分散して、Green顔料分散液P1を調製した。
【0413】
<Red顔料分散液の調製>
−Red顔料分散液P2の調製−
顔料としてD−1とC.I.ピグメント・イエロー139との100/45(質量比)混合物12.1部と、分散剤としてBYK2001(Disperbyk:ビックケミー(BYK)社製、固形分濃度45.1質量%)10.4部と、分散樹脂としてベンジルメタクリレート/メタクリル酸共重合体(酸価134mgKOH/g、Mw=30,000)を3.8部と、溶媒としてプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート73.7部とからなる混合液を、ビーズミルにより15時間混合・分散して、Red顔料分散液P2を調製した。
【0414】
<Blue顔料分散液の調製>
−Blue顔料分散液P3の調製−
顔料としてC.I.ピグメント・ブルー15:6とC.I.ピグメント・バイオレット23との100/25(質量比)混合物14部と、分散剤としてBYK2001(Disperbyk:ビックケミー(BYK)社製、固形分濃度45.1質量%)4.7部と、分散樹脂としてベンジルメタクリレート/メタクリル酸共重合体(酸価134mgKOH/g、Mw=30,000)を3.5部と、溶媒としてプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート77.8部とからなる混合液を、ビーズミルにより15時間混合・分散して、Blue顔料分散液P3を調製した。
【0415】
<Green着色感光性組成物(塗布液)A−1の調製>
上記のGreen顔料分散液P1を用い、下記組成となるように混合、撹拌して着色感光性組成物A−1を調製した。
【0416】
【表13】

【0417】
<Red着色感光性組成物(塗布液)B1−の調製>
上記のRed顔料分散液P2を用い、下記組成となるように混合、攪拌して着色感光性組成物B−1を調整した。
【0418】
【表14】

【0419】
<Blue着色感光性組成物(塗布液)C−1の調製>
上記のBlue顔料分散液P3を用い、下記組成となるように混合、撹拌して着色感光性組成物C−1を調製した。
【0420】
【表15】

【0421】
前記において調製されたGreen着色感光性組成物A−1を、あらかじめヘキサメチルジシラザンを噴霧した8インチのデバイス形成済みシリコンウエハの上に塗布し、光硬化性の塗布膜を形成した。そして、この塗布膜の乾燥膜厚が1.0μmになるように、100℃のホットプレートを用いて180秒間加熱処理(プリベーク)を行った。次いで、i線ステッパー露光装置FPA−3000i5+(Canon(株)製)を使用して、365nmの波長で1.0μm四方のベイヤーパターンマスクを通して50〜1000mJ/cmにて照射した(50mJ/cm2ずつ露光量を変化)。その後、照射された塗布膜が形成されているシリコンウエハをスピン・シャワー現像機(DW−30型;(株)ケミトロニクス製)の水平回転テーブル上に載置し、CD−2000(富士フイルムエレクトロニクスマテリアルズ(株)製)の40%希釈液を用いて23℃で180秒間パドル現像を行ない、シリコンウエハに着色パターンを形成した。
【0422】
着色パターンが形成されたシリコンウエハを真空チャック方式で前記水平回転テーブルに固定し、回転装置によって該シリコンウエハを回転数50rpmで回転させつつ、その回転中心の上方より純水を噴出ノズルからシャワー状に供給してリンス処理を行ない、その後スプレー乾燥した。
次に、200℃のホットプレートにて5分間加熱し、パターンが形成されたカラーフィルタを得た。
【0423】
更に、上記Red着色感光性組成物B−1、Blue感光性組成物C−1を用い、露光パターンを1.0μm四方のアイランドパターンマスクを通して露光する以外はGreenと同様の工程を繰り返すことにより、RGBのパターンで形成されたカラーフィルタを形成した。
このカラーフィルタが形成されたデバイスを使用してカメラモジュールを作成すると、良好な分光特性を有することが確認できた。
【0424】
【化57】

【0425】
実施例212のD−1の代わりにD−26、D−136、D−209、D−236を使用し、カラーフィルタを作成し、カメラモジュールを作成すると実施例5と同様に良好な分光特性を有することが確認できた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)で表されるアゾ化合物と、酸若しくは塩基又は酸若しくは塩基を含む良溶媒とを含む溶液(A)を調製する工程、及び、
該溶液(A)と貧溶媒とを混合することによりアゾ顔料を析出する工程
を含むことを特徴とする下記一般式(1)で表されるアゾ顔料の製造方法。
【化1】

(一般式(1)中、Gは水素原子、脂肪族基、アリール基、ヘテロ環基、アシル基、脂肪族オキシカルボニル基、カルバモイル基、脂肪族スルホニル基又はアリールスルホニル基を表す。Rは、アミノ基、脂肪族オキシ基、脂肪族基、アリール基、又はヘテロ環基を表す。Rは置換基を表す。Aは芳香族5〜6員ヘテロ環基を表す。mは0〜5の整数を表し、nは1〜4の整数を表す。n=2の場合は、R、R、A又はGを介した2量体を表す。n=3の場合はR、R、A又はGを介した3量体を表す。n=4の場合はR、R、A又はGを介した4量体を表す。一般式(1)がイオン性親水性基を有することはない。)
【請求項2】
前記一般式(1)で表されるアゾ化合物及びアゾ顔料が、下記一般式(2−1)で表わされることを特徴とする請求項1に記載のアゾ顔料の製造方法。
【化2】

(一般式(2−1)中、Gは、水素原子、脂肪族基、アリール基、又はヘテロ環基を表す。R21は、アミノ基、脂肪族オキシ基、脂肪族基、アリール基、又はヘテロ環基を表す。R22は置換基を表す。A’は、下記一般式(A−1)〜(A−18)、(A−20)〜(A−28)、(A−30)〜(A−32)を表す。mは0〜5の整数を表し、nは1〜4の整数を表す。n=2の場合は、R21、R22、G又はA’を介した2量体を表す。n=3の場合はR21、R22、G又はA’を介した3量体を表す。n=4の場合はR21、R22、G又はA’を介した4量体を表す。一般式(2−1)がイオン性親水性基を有することはない。)
【化3】

(一般式(A−1)〜(A−18)、(A−20)〜(A−28)、(A−30)〜(A−32)中、R51〜R59は水素原子、又は置換基を表し、隣接する置換基は互いに結合し、5〜6員環を形成していてもよい。*は一般式(2−1)のアゾ基との結合位置を表す。)
【請求項3】
前記Aが下記一般式(A−16)を表すことを特徴とする請求項1に記載のアゾ顔料の製造方法。
【請求項4】
下記一般式(9)で表されるアゾ化合物を良溶媒に、酸若しくは塩基、又は酸若しくは塩基を含む良溶媒とを含む溶液(9A)を調製する工程、及び、
溶液(9A)と貧溶媒とを混合することによりアゾ顔料を析出する工程、
溶液(9A)と貧溶媒とを混合することによりアゾ顔料を析出する工程
を含むことを特徴とする下記一般式(9)で表されるアゾ顔料の製造方法。
【化4】

【請求項5】
前記式(9)で表されるアゾ顔料がCuKα特性X線回折におけるブラッグ角(2θ±0.5°)が7.1°、25.3°、26.0°及び27.2°に特徴的なX線回折ピークを有することを特徴とする請求項4に記載のアゾ顔料の製造方法。
【請求項6】
前記一般式(1)又は式(9)で表されるアゾ化合物と、酸若しくは塩基又は酸若しくは塩基を含む良溶媒とを含む溶液(A)又は溶液(9A)を調整する工程において、該溶液(A)又は溶液(9A)が、さらに一般式(1)又は式(9)で表されるアゾ化合物とは異なる構造を有する顔料誘導体を含むことを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載のアゾ顔料の製造方法。
【請求項7】
前記顔料誘導体がヘテリルアゾ顔料であることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載のアゾ顔料の製造方法。
【請求項8】
前記顔料誘導体が一般式(S1)で表されるアゾ顔料であることを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載のアゾ顔料の製造方法。
【化5】

(一般式(S1)中、G、R、R、A、m、nは一般式(1)におけるG、R、R、A、m、nと同義であるが、一般式(1)と一般式(S1)とが同一の構造を表す場合はない。)
【請求項9】
前記顔料誘導体が分子量が140〜500の置換基を有するヘテリルアゾ顔料であることを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載のアゾ顔料の製造方法。
【請求項10】
上記請求項1〜9のいずれかに記載のアゾ顔料の製造方法において、顔料誘導体が、顔料に対し、1質量%〜30質量%であるアゾ顔料の製造方法。
【請求項11】
上記請求項1〜10のいずれかに記載のアゾ顔料の製造方法において、良溶媒がメタンスルホン酸であるアゾ顔料の製造方法。
【請求項12】
上記請求項1〜11のいずれかに記載のアゾ顔料の製造方法から得られる一般式(1)で表されるアゾ顔料又はその互変異性体。
【請求項13】
請求項12に記載のアゾ顔料又はその互変異性体を含有することを特徴とする顔料分散物。
【請求項14】
請求項13に記載の顔料分散物を含有することを特徴とする着色組成物。
【請求項15】
請求項14に記載の着色組成物を含有することを特徴とするインクジェット記録用インク。
【請求項16】
請求項14に記載の着色組成物を含有することを特徴とするカラーフィルター用着色組成物。
【請求項17】
請求項16に記載のカラーフィルター用着色組成物を用いて製造されたことを特徴とするカラーフィルター。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−144298(P2011−144298A)
【公開日】平成23年7月28日(2011.7.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−7532(P2010−7532)
【出願日】平成22年1月15日(2010.1.15)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】