説明

アゾ顔料又はその互変異性体、その製造方法、顔料分散物、着色組成物、インクジェット記録用インク、カラーフィルター用着色組成物及びカラーフィルター

【課題】着色力、色相等の色彩的特性に優れ、耐熱性、耐光性、及び高コントラストを示すアゾ化合物およびその製造、アゾ顔料、アゾ顔料分散物及び着色組成物を提供することである。着色力、色相等の色彩的特性に優れ、かつ耐光性、耐オゾン性等の耐久性に優れ、また分散性、分散安定性、経時安定性に優れた顔料分散物を提供する。
【解決手段】CuKα特性X線回折におけるブラッグ角(2θ±0.2°)が6.9°、21.5°及び27.3°に特徴的X線回折ピークを有し、10.9°におけるピークの高さに対する11.9°におけるピークの高さが0.6以下である下記式(1)で表されるアゾ顔料、その互変異性体、塩、水和物又は溶媒和物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アゾ顔料又はその互変異性体、その製造方法、顔料分散物、着色組成物、インクジェット記録用インク、カラーフィルター用着色組成物及びカラーフィルターに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、画像記録材料としては、特にカラー画像を形成するための材料が主流であり、具体的には、インクジェット方式の記録材料、感熱転写方式の記録材料、電子写真方式の記録材料、転写式ハロゲン化銀感光材料、印刷インキ、記録ペン等が盛んに利用されている。また、撮影機器ではCCDなどの撮像素子において、ディスプレーではLCDやPDPにおいてカラー画像を記録・再現するためにカラーフィルターが使用されている。これらのカラー画像記録材料やカラーフィルターでは、フルカラー画像を表示あるいは記録する為に、いわゆる加法混色法や減法混色法の3原色の色素(染料や顔料)が使用されているが、好ましい色再現域を実現できる吸収特性を有し、かつさまざまな使用条件、環境条件に耐えうる堅牢な色素がないのが実情であり、改善が強く望まれている。
【0003】
上記の各用途で使用する染料や顔料には、共通して次のような性質を具備している必要がある。即ち、色再現性上好ましい吸収特性を有すること、使用される環境条件下における堅牢性、例えば耐光性、耐熱性、オゾンなどの酸化性ガスに対する耐性が良好であること、等が挙げられる。加えて、色素が顔料の場合には更に、水や有機溶剤に実質的に不溶であり耐薬品堅牢性が良好であること、及び、粒子として使用しても分子分散状態における好ましい吸収特性を損なわないこと、等の性質をも具備している必要がある。上記要求特性は分子間相互作用の強弱でコントロールすることができるが、両者はトレードオフの関係となるため両立させるのが困難である。
また、顔料を使用するにあたっては、他にも、所望の透明性を発現させるために必要な粒子径及び粒子形を有すること、使用される環境条件下における堅牢性、例えば耐光性、耐熱性、オゾンなどの酸化性ガスに対する耐性、その他有機溶剤や亜硫酸ガスなどへの耐薬品堅牢性が良好であること、使用される媒体中において微小粒子まで分散し、かつ、その分散状態が安定であること、等の性質も必要となる。
【0004】
すなわち、顔料に対する要求性能は色素分子としての性能を要求される染料に比べて、多岐にわたり、色素分子としての性能だけでなく、色素分子の集合体としての固体(微粒子分散物)としての上記要求性能を全て満足する必要がある。結果として、顔料として使用できる化合物群は染料に比べて極めて限定されたものとなっており、高性能な染料を顔料に誘導したとしても微粒子分散物としての要求性能を満足できるものは数少なく、容易に開発できるものではない。これは、カラーインデックスに登録されている顔料の数が染料の数の1/10にも満たないことからも確認される。
【0005】
アゾ顔料は色彩的特性である色相及び着色力に優れているため、印刷インキ、インクジェット用インク、電子写真材料などに広く使用されている。これらのうち、最も典型的に使用されているアゾ顔料は、イエロージアリーリド顔料、レッドナフトールアゾ顔料である。ジアリーリド顔料としては例えば、C.I.ピグメント・イエロー12、同13、同17などが挙げられる。ナフトールアゾ顔料としては、C.I.ピグメント・レッド208、同242などが挙げられる。しかし、これらの顔料は堅牢性、とりわけ耐光性が非常に劣るため、印字物が光に曝されることによって顔料が分解して退色してしまい、印字物の長期間の保存に適さない。
【0006】
イエロー、マゼンタ、シアンの3色、又は更にブラックを加えた4色による減色混合法を用いてフルカラーを表現する場合、1色だけ堅牢性の劣る顔料を用いると、時間の経過とともに印字物のグレーバランスが変化してしまい、また、色彩的特性に劣る顔料を用いると、印刷時の色再現性が低下してしまう。したがって、高い色再現性を長期間維持する印字物を得るために、色彩的特性及び堅牢性の両立した顔料及び顔料分散物が望まれている。
そして特許文献1には、着色力、色相等の色彩的特性に優れ、かつ耐光性等の耐久性にも優れるアゾ顔料が開示されている。
【0007】
一方、有機顔料の代表的なものの多くは多形性であり、同一の化学組成を有するにもかかわらず、このような顔料は2つ以上の結晶形態をとることが知られている。
有機顔料には、例えばアゾ顔料のように、合成時に適切な反応条件を選択することにより、微細で整粒された粒子を得ることができるものもあり、銅フタロシアニングリーン顔料のように、合成時に生成する極めて微細で凝集した粒子を、後工程で粒子成長、整粒させることにより顔料化するもの、銅フタロシアニンブルー顔料のように、合成時に生成する粗大で不揃いな粒子を後工程で微細化し、整粒させることにより顔料化を行うものもある。例えば、ジケトピロロピロール顔料は、一般的には、琥珀酸ジエステルと芳香族ニトリルとを有機溶媒中で反応させて合成される(例えば、特許文献2参照)。そして、粗製ジケトピロロピロール顔料は、水又は有機溶剤中で熱処理し、次に湿式摩砕のごとき粉末化を行うことにより、使用に適する形態にされる(例えば、特許文献3参照)。C.I.ピグメントレッド254には、α型とβ型の結晶形態が知られている(例えば、特許文献4参照)。また、アゾ顔料であるC.I.ピグメントイエロー181は、数種の結晶形態が知られている(例えば、特許文献5参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2010−47750号公報
【特許文献2】特開昭58−210084号公報
【特許文献3】特開平5−222314号公報
【特許文献4】特開平8−48908号公報
【特許文献5】米国特許出願公開第2008/0058531号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、着色力、色相等の色彩的特性に優れ、耐熱性、耐光性、及び高コントラストを示すアゾ化合物、アゾ顔料、アゾ顔料分散物及び着色組成物を提供することである。
さらに本発明は、該アゾ顔料を含有する着色組成物を提供することを目的とするものである。
そして本発明は、特定の構造異性及び結晶多型に制御しながら再現性よく高効率に製造することのできるアゾ顔料の製造方法を提供することを目的とするものである。
更に、該アゾ顔料の分散物を含む着色組成物を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者等は上記した実情に鑑みて鋭意検討した結果、本発明の態様において特定の位置に特徴的X線回折ピークを有するアゾ顔料が色再現性、分散性及び顔料分散物安定性が極めて良好であり、優れた色相及び着色力を有することを見出した。また、顔料が分散された着色組成物は色再現性に優れ、経時においても顔料の粒径が安定した顔料分散物安定性及びインク液安定性が良好なインクジェット記録用インクを製造することができることを見出した。
更に、特定の構造異性及び結晶多形に制御しながら再現性よく高効率にアゾ顔料を製造することのできるアゾ顔料の製造方法を見出し、本発明を完成するに至った。
【0011】
即ち、本発明は以下のとおりである。
〔1〕
CuKα特性X線回折におけるブラッグ角(2θ±0.2°)が6.9°、21.5°及び27.3°に特徴的X線回折ピークを有し、10.9°におけるピークの高さに対する11.9°におけるピークの高さが0.6以下である下記式(1)で表されるアゾ顔料、その互変異性体、塩、水和物又は溶媒和物。
【化1】

〔2〕
下記式(2)で表されるヘテロ環アミンから誘導したジアゾニウム塩と、下記式(3)で表される化合物とをアゾカップリング反応させる工程を含む、CuKα特性X線回折におけるブラッグ角(2θ±0.2°)が6.9°、21.5°及び27.3°に特徴的X線回折ピークを有し、10.9°におけるピークの高さに対する11.9°におけるピークの高さが0.6以下である下記式(1)で表されるアゾ顔料又はその互変異性体の製造方法。
【化2】

〔3〕
更に、前記式(1)で表されるアゾ顔料又はその互変異性体を、含水量が0%以上5%未満まで乾燥する乾燥工程、及び後処理工程に供することを特徴とする〔2〕に記載のアゾ顔料又はその互変異性体の製造方法。
〔4〕
前記式(1)で表されるアゾ顔料が、CuKα特性X線回折におけるブラッグ角(2θ±0.2°)が6.9°、17.9°、21.5°及び27.3°に特徴的X線回折ピークを有し、10.9°におけるピークの高さに対する11.9°におけるピークの高さが0.6以下であることを特徴とする〔2〕又は〔3〕に記載のアゾ顔料又はその互変異性体の製造方法。
〔5〕
前記〔2〕〜〔4〕のいずれか一項に記載の製造方法により得られたアゾ顔料、その互変異性体、塩、水和物又は溶媒和物。
〔6〕
〔1〕又は〔5〕に記載のアゾ顔料、その互変異性体、塩、水和物又は溶媒和物から選ばれる少なくとも1種を含有することを特徴とする顔料分散物。
〔7〕
〔6〕に記載の顔料分散物を含有することを特徴とする着色組成物。
〔8〕
〔7〕に記載の着色組成物を含有することを特徴とするインクジェット記録用インク。
〔9〕
〔7〕に記載の着色組成物を含有することを特徴とするカラーフィルター用着色組成物。
〔10〕
〔9〕に記載のカラーフィルター用着色組成物を用いて製造されたことを特徴とするカラーフィルター。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、着色力等の色彩的特性に優れ、かつ経時においても顔料の粒径が安定した、顔料分散物安定性及びインク液安定性にも優れるアゾ顔料が提供される。本発明の顔料を種々の媒体に分散させることにより、色彩的特性、分散物安定性及びインク液安定性に優れる顔料分散物が得られる。顔料分散物は、例えば、インクジェットなどの印刷用のインク、電子写真用のカラートナー、LCD、PDPなどのディスプレーやCCDなどの撮像素子で用いられるカラーフィルター、塗料、着色プラスチック等に使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】合成例1に従って合成されたα型結晶形態顔料(1)のX線回折の図である。
【図2】合成例2に従って合成された顔料(D−1)のX線回折の図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明のアゾ顔料、又はその互変異性体は、それらの水和物、あるいは溶媒和物、あるいは塩であっても良い。
【0015】
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明のアゾ顔料は、CuKα特性X線回折におけるブラッグ角(2θ±0.2°)が6.9°、17.9°、21.5°及び27.3°に特徴的X線回折ピークを有し、10.9°におけるピークの高さに対する11.9°におけるピークの高さが0.6以下である下記式(1)で表されるアゾ顔料又はその互変異性体である。
本明細書においては、以下、CuKα特性X線回折におけるブラッグ角(2θ±0.2°)が6.9°、17.9°、21.5°及び27.3°に特徴的X線回折ピークを有し、10.9°におけるピークの高さに対する11.9°におけるピークの高さが0.6以下である下記式(1)で表されるアゾ顔料をα型結晶形態アゾ顔料と称する。
【0016】
【化3】

【0017】
顔料は、色素分子間の強力な相互作用による凝集エネルギーによって、分子同士がお互いに強固に結合しあっている状態のことである。この状態を作るには、分子間のファンデルワールス力、分子間水素結合が必要であることが、例えば、日本画像学会誌、43巻、10頁(2004年)等に記載されている。
分子間のファンデルワールス力を強めるには、分子への芳香族基、極性基及び/又はヘテロ原子の導入等が考えられる。また、分子間水素結合を形成させるには、分子へのヘテロ原子に結合した水素原子を含有する置換基の導入及び/又は電子供与性の置環基の導入等が考えられる。更に分子全体の極性が高い方が好ましいと考えられる。そのためには、例えば、アルキル基等鎖状の基は短い方が好ましく、分子量/アゾ基の値は小さい方が好ましいと考えられる。
これらの観点から、顔料分子は、一般に、アミド結合、スルホンアミド結合、エーテル結合、スルホン基、オキシカルボニル基、イミド基、カルバモイルアミノ基、ヘテロ環、ベンゼン環等を含有することが好ましいが、式(1)で表される化合物は、その特異的な構造により色素分子の分子間相互作用を形成しやすく、水又は有機溶媒等に対する溶解性が低く、アゾ顔料とすることができる。
顔料は、水や有機溶媒等に分子分散状態で溶解する染料とは異なり、溶媒中に分子集合体等の固体粒子として微細に分散するものである。
【0018】
本発明において、上記式(1)で表されるα型結晶形態アゾ顔料のX線回折の測定は、日本工業規格JISK0131(X線回析分析通則)に準じて、粉末X線回折測定装置RINT2500(株式会社リガク製)にて行うことができる。
【0019】
顔料が単一の結晶形態である場合、分子間が密になり、分子間相互作用が強くなる。その結果、耐溶剤性、熱安定性、耐光性、耐ガス性、印画濃度があがり、更には色再現域が広がる。式(1)で表されるアゾ顔料及びその互変異性体は、CuKα特性X線回折におけるブラッグ角(2θ±0.2°)が6.9°、17.9°、21.5°及び27.3°に特徴的X線回折ピークを有し、10.9°におけるピークの高さに対する11.9°におけるピークの高さが0.6以下であり、11.9°に明瞭なX線回折ピークを有さない単一の結晶形態であることが好ましい。さらに、6.9°、10.9°、17.9°、21.5°及び27.3°に特徴的なX線回折ピークを有する結晶形態であることがより好ましい。
【0020】
単一の結晶形態であるα型結晶形態アゾ顔料は、後述の本発明の製造方法により得ることができる。
α型結晶形態アゾ顔料以外の式(1)で表されるアゾ顔料としては、CuKα特性X線回折におけるブラッグ角(2θ±0.2°)6.9°、11.9°、23.8°、25.8°、26.7°及び27.1°に特徴的X線回折ピークを有する式(1)で表されるアゾ顔料(以下β型結晶形態アゾ顔料と称する)及び、α型結晶形態アゾ顔料とβ型結晶形態アゾ顔料の混合物を挙げることができる。β型結晶形態アゾ顔料は鮮やかな黄味を帯びた色相を有する。一方、α型結晶形態アゾ顔料とβ型結晶形態アゾ顔料の混合物は優れた分散性を有する。
【0021】
CuKα特性X線回折におけるブラッグ角(2θ±0.2°)の10.9°におけるピークの高さを1とした場合に、11.9°におけるピークの高さが0.6以下であると、色相において黄味をおびにくいという観点から好ましい。
そのため、CuKα特性X線回折におけるブラッグ角(2θ±0.2°)の11.9°におけるピーク高さは、10.9°におけるピーク高さを1とした場合に、0〜0.6であり、0〜0.5であることが好ましく、0〜0.4であることが更に好ましく、11.9°に明瞭なX線回折ピークを有さない単一の結晶形態であることが好ましい。
【0022】
上記式(1)で表されるα型結晶形態アゾ顔料の1次粒子を、透過型顕微鏡で観察した際の長軸方向の長さは、0.01μm以上30μm以下であることが好ましく、0.02μm以上10μm以下であることが更に好ましく、0.03μm以上0.5μm以下であることが特に好ましい。
【0023】
1次粒子を透過型顕微鏡で観察した際の長軸方向の長さが0.01μm以上であることによって、光やオゾンに対する堅牢性、及び、顔料分散物とした場合の分散性をより確実に発現できる。一方、上記長軸方向の長さが30μm以下であることによって、分散して所望の体積平均粒子径にした際に過分散状態となりにくく、凝集が起こりにくいため、顔料分散物の保存安定性をより確実に発現できる。
【0024】
1次粒子の長軸方向の長さが、上記の範囲内ならば、光やオゾンに対して高い堅牢性を示し、その顔料分散物は保存安定性に優れ、好ましい。
【0025】
本発明の顔料組成物を含有する顔料分散物の体積平均粒子径測定は、ナノトラックUPA粒度分析計(UPA−EX150;日機装社製)を用いることができる。その測定は、顔料分散物3mlを測定セルに入れ、所定の測定方法に従って行った。なお、測定時に入力するパラメーターとしては、粘度にはインク粘度を、分散粒子の密度には顔料の密度を用いることができる。
【0026】
以上のように、本発明のアゾ顔料は、特定の構造を有し、かつ、特定の位置に特徴的X線回折ピークを有することにより、着色力、色相等の色彩的特性において優れた特性を示し、かつ堅牢性(特に、耐溶剤性)にも優れた特性を示すことができる。
【0027】
本発明は、式(1)で表されるアゾ顔料の互変異性体もその範囲に含むものである。式(1)は、化学構造上取りうる数種の互変異性体の中から極限構造式の形で示しているが、記載された構造以外の互変異性体であってもよく、複数の互変異性体を含有した混合物として用いてもよい。
例えば、式(1)で表される顔料には、下記式(1’)で表されるアゾ−ヒドラゾンの互変異性体が考えられる。
本発明は、式(1)で表されるアゾ顔料の互変異性体である以下の式(1’)で表される化合物もその範囲に含むものである。
【0028】
アゾとヒドラゾンの比率は、固体NMR測定やラマン吸収測定によって容易に半定量的に把握することができる。アゾもヒドラゾンであっても良好な性能を発揮するが、色相の観点から、ヒドラゾンの比率が多い方が好ましい。ヒドラゾンが50%以上である場合が好ましく、80%以上である場合が更に好ましく、90%以上である場合が最も好ましい。
【0029】
【化4】

【0030】
特にCuKα特性X線回折におけるブラッグ角(2θ±0.2°)が6.9°、17.9°、21.5°及び27.3°に特徴的X線回折ピークを有し、10.9°におけるピークの高さに対する11.9°におけるピークの高さが0.6以下である式(1)で表されるα型結晶形態アゾ顔料は良好な赤色系色素の吸収特性に特徴を示し、フォト用途やCF用途等の色再現性を求められる分野に適している。
【0031】
〔アゾ顔料又はその互変異性体の製造方法〕
本発明のアゾ顔料又はその互変異性体の製造方法は、下記式(2)で表されるヘテロ環アミンから誘導したジアゾニウム塩と、下記式(3)で表される化合物とをアゾカップリング反応させる工程を含む、下記式(1)で表されるアゾ顔料又はその互変異性体の製造方法である。この製造方法は、式(1)で表されるアゾ顔料(特に、α型結晶形態アゾ顔料)又はその互変異性体を再現性よく高効率に製造可能な方法である。本発明の製造方法において、式(1)で表されるアゾ顔料は、CuKα特性X線回折におけるブラッグ角(2θ±0.2°)が6.9°、17.9°、21.5°及び27.3°に特徴的X線回折ピークを有し、10.9°におけるピークの高さに対する11.9°におけるピークの高さが0.6以下であることが好ましい。
【0032】
【化5】

【0033】
ジアゾニウム塩の調製及びジアゾニウム塩と式(3)で表される化合物とのカップリング反応は、慣用法によって実施できる。
【0034】
式(2)で表されるヘテロ環アミンのジアゾニウム塩調製は、例えば酸(例えば、塩酸、硫酸、リン酸、酢酸、プロピオン酸、メタンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸等)含有反応媒質中で、ニトロソニウムイオン源、例えば亜硝酸、亜硝酸塩又はニトロシル硫酸を用いる慣用のジアゾニウム塩調製方法が適用できる。
【0035】
より好ましい酸の例としては、酢酸、プロピオン酸、メタンスルホン酸、リン酸、硫酸を単独又は併用して用いる場合が挙げられ、その中でリン酸、又は酢酸と硫酸の併用系、酢酸とプロピオン酸の併用系、酢酸とプロピオン酸と硫酸の併用系が更に好ましく、リン酸が特に好ましい。
【0036】
反応媒質(溶媒)の好ましい例としては、有機酸、無機酸を用いることが好ましく、特にリン酸、硫酸、酢酸、プロピオン酸、メタンスルホン酸が好ましく、その中でもリン酸が好ましい。
【0037】
好ましいニトロソニウムイオン源の例としては、亜硝酸エステル類、亜硝酸塩類、ニトロシル硫酸等が挙げられる。その中でも、亜硝酸ナトリウム、亜硝酸カリウム、亜硝酸イソアミル、ニトロシル硫酸(例えば、ONHSO4硫酸溶液)が好ましく、特に亜硝酸ナトリウムを用いることで安定にかつ効率的にジアゾニウム塩を調製できる。この際、反応媒質には、亜硝酸ナトリウムに由来する過剰量の物質(例えば、ニトロソニウムイオン)をトラップするためのトラップ剤(例えば、尿素)を適当量添加しても良く、これにより、上記過剰量の物質に起因する不純物の生成を抑制できる。
【0038】
式(2)のヘテロ環アミンに対する溶媒の使用量は、0.5〜50質量倍が好ましく、より好ましくは1〜20質量倍であり、特に3〜15質量倍が好ましい。
【0039】
本発明において、式(2)のヘテロ環アミンは溶媒に分散している状態であっても、ジアゾ成分の種類によっては溶解液の状態になっていてもどちらでも良いが、溶解液の状態となっていることが好ましい。
【0040】
ニトロソニウムイオン源の使用量は式(2)のヘテロ環アミンに対して0.95〜5.0当量が好ましく、より好ましくは1.00〜3.00当量であり、特に1.00〜1.50当量であることが好ましい。
【0041】
反応温度は、−15℃〜40℃が好ましく、より好ましくは−10℃〜35℃であり、更に好ましくは−5℃〜30℃である。−15℃未満では反応速度が顕著に遅くなり合成に要する時間が著しく長くなるため経済的でなく、また40℃を超える高温で合成する場合には、副生成物の生成量が増加するため好ましくない。
【0042】
反応時間は、30分から300分が好ましく、より好ましくは30分から200分であり、更に好ましくは30分から150分である。
【0043】
式(3)で表される化合物は、市販品で入手することもできるが、特開2008−13472号公報に記載に準じた方法で製造することができる。
【0044】
〔カップリング反応工程〕
カップリング反応する工程は、酸性反応媒質中〜塩基性反応媒質中で実施することができるが、本発明のアゾ顔料は酸性〜中性反応媒質中で実施することが好ましく、ジアゾニウム塩の分解を抑制し効率良くアゾ顔料に誘導することができる。
【0045】
反応媒質(溶媒)の好ましい例としては、有機酸、無機酸、有機溶媒を用いることができるが、特に有機溶媒が好ましく、反応時に液体分離現象を起こさず、溶媒と均一な溶液を呈する溶媒が好ましい。例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、t−ブチルアルコール、アミルアルコール等のアルコール性有機溶媒、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン系有機溶媒、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1,3−プロパンジオール等のジオール系有機溶媒、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル等のエーテル系有機溶媒、テトラヒドロフラン、ジオキサン、アセトニトリル等が挙げられる。これらの溶媒は2種類以上の混合液であってもよい。
【0046】
好ましくは、極性パラメータ(ET)の値が40以上の有機溶媒である。なかでも溶媒分子中に水酸基を2個以上有するグリコール系の溶媒、あるいは炭素原子数が3個以下のアルコール系溶媒、総炭素数5以下のケトン系溶媒、好ましくは炭素原子数が2以下のアルコール溶媒(例えば、メタノール、エチレングリコール)、総炭素数4以下のケトン系溶媒(例えばアセトン、メチルエチルケトン)が好ましい。またこれらの混合溶媒も含まれる。
【0047】
また、反応媒質の好ましい例としては、極性非プロトン性溶媒も好適に挙げることができる。極性非プロトン性溶媒の例としては、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドン、ジメチルスルホキシド、テトラメチル尿素、アセトン、メチルエチルケトン、アセトニトリル、及びこれらの混合溶媒等が挙げられる。これらの溶媒の中でも、アセトン、メチルエチルケトン、N,N−ジメチルアセトアミド、アセトニトリルが特に好ましい。これらの溶媒を用いる場合、上記式(3)の化合物は溶媒に完溶していても完溶していなくてもよい。
【0048】
また、以上に例示した反応媒質は、式(2)で表されるヘテロ環アミンをジアゾニウム塩に誘導するのに使用される酸含有反応媒質を含んでいて良い。
【0049】
溶媒の使用量は上記式(3)で表される化合物の1〜100質量倍が好ましく、より好ましくは1〜50質量倍であり、更に好ましくは2〜30質量倍である。
【0050】
本発明において、式(3)で表される化合物は溶媒に分散している状態であっても、溶解液の状態になっていてもどちらでも良い。
【0051】
式(3)で表される化合物の使用量は、ジアゾニウム塩に対して0.5〜5当量が好ましく、より好ましくは0.6〜3当量であり、特に0.6〜1.5当量であることが好ましい。
【0052】
反応温度は、−30℃〜30℃が好ましく、より好ましくは−20℃〜20℃であり、更に好ましくは−10℃〜10℃である。−30℃未満では反応速度が顕著に遅くなり合成に要する時間が著しく長くなるため経済的でなく、また30℃を超える高温で合成する場合には、副生成物の生成量が増加するため好ましくない。
【0053】
反応時間は、30分から300分が好ましく、より好ましくは30分から250分であり、更に好ましくは30分から200分である。
【0054】
本発明のアゾ顔料又はその互変異性体の合成方法においては、これらの反応によって得られる生成物(粗アゾ顔料)は通常の有機合成反応の後処理方法に従って処理した後、精製してあるいは精製せずに供することができる。
【0055】
すなわち、例えば、反応系から遊離したものを精製せずに、あるいは再結晶、造塩等にて精製する操作を単独、あるいは組み合わせて行ない、供することができる。
【0056】
また、反応終了後、反応溶媒を留去して、あるいは留去せずに水、又は氷にあけ、中和してあるいは中和せずに、遊離したものをあるいは有機溶媒/水溶液にて抽出したものを、精製せずにあるいは再結晶、晶析、造塩等にて精製する操作を単独に又は組み合わせて行なった後、供することもできる。
【0057】
更に詳細に本発明のアゾ顔料又はその互変異性体の合成方法について説明する。
【0058】
本発明のアゾ顔料又はその互変異性体の製造方法は、上記式(2)で表されるヘテロ環アミンをジアゾニウム化したジアゾニウム化合物と、上記式(3)で表される化合物とのカップリング反応において、該式(3)の化合物を有機溶媒に溶解させた後カップリング反応を行うことが好ましい。
【0059】
上記式(2)で表されるヘテロ環アミンのジアゾニウム化反応は例えば、硫酸、リン酸、酢酸などの酸性溶媒中、亜硝酸ナトリウム、ニトロシル硫酸等の試薬と30℃以下の温度で10分〜6時間程度反応させることで行うことができる。カップリング反応は、上述の方法で得られたジアゾニウム塩と上記式(3)で表される化合物とを40℃以下、好ましくは15℃以下で10分〜12時間程度反応させることで行うことが好ましい。
【0060】
アゾ顔料を製造する方法としては、例えば、上記式(3)で表される化合物を有機溶媒に一度溶解させた後カップリング反応を行う本発明の方法を用いるのが好ましい。このとき使用できる有機溶媒としては、例えば、アルコール溶媒、ケトン系溶媒、極性非プロトン性溶媒が挙げられる。アルコール溶媒の例としては、メタノール、エタノール、イソプロパノール、エチレングリコール、ジエチレングリコール等が好ましく、その中でもメタノールが特に好ましい。ケトン系溶媒の例としては、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン等が好ましく、その中でもアセトンが特に好ましい。極性非プロトン性溶媒の例としては、ケトン系溶媒として例示したアセトン及びメチルエチルケトンの他、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドン、ジメチルスルホキシド、テトラメチル尿素、アセトニトリル等が好ましく、その中でもN,N−ジメチルアセトアミドが特に好ましい。
【0061】
以上に説明したアゾ顔料又はその互変異性体の製造方法の中でも、式(2)で表されるヘテロ環アミンとして、該ヘテロ環アミンをリン酸に溶解させた溶液を用いることによって、該ヘテロ環アミンから誘導されたジアゾニウム塩の溶液を調製し、次いで、前記ジアゾニウム塩の溶液と、前記式(3)で表される化合物をN,N−ジメチルアセトアミドに溶解させた溶液とを混合することによって、前記アゾカップリング反応を行うことが特に好ましい。
【0062】
なお、上記好ましい形態においては、カップリング反応工程の反応媒質は、N,N−ジメチルアセトアミドに加えて、式(2)で表されるヘテロ環アミンのジアゾ化で使用された酸含有反応媒質としてのリン酸を含んだ状態となっている。
【0063】
なお、式(2)で表されるヘテロ環アミンをジアゾニウム塩に誘導するのに使用されるリン酸は、上記した酸含有反応媒質において、酸としても反応媒質としても機能している。
【0064】
上記の製造方法によって得られた化合物を用途に応じて、精製工程に供することができる。精製工程としては塩基を加えてpHを調整してもしなくても良い。pHを調整する場合、pHは4〜10が好ましい。その中でも、pHが5〜8がより好ましく、5.5〜7.5が特に好ましい。
【0065】
pHが10以下であれば、色相が黄味を増すこともなく、色相の観点から好ましい。pHが4以上の場合には、例えば、インクジェット記録用インクとして用いた場合、ノズルを腐食してしまう等の問題が生じ難く、好ましい。
【0066】
本発明の製造方法において、前記式(1)は、更に、乾燥工程、及び後処理工程に供することが好ましく、式(1)で表されるアゾ顔料又はその互変異性体を、含水量が0%以上5%未満まで乾燥する乾燥工程に次いで後処理工程に供することがより好ましい。これにより、後処理工程での水によるβ型形態アゾ顔料への誘起を抑制することができ、その結果、α型結晶形態アゾ顔料を純度良く得ることができる。
【0067】
〔乾燥工程〕
本発明の製造方法において、前記式(1)は、必要に応じて乾燥工程に供することができる。
式(1)で表される化合物は、アゾカップリング反応の後に、溶媒加熱処理に供される前に、ろ過等によって得た粉末を中和し、更に乾燥させることにより得られる化合物であることが好ましい。これにより、α型結晶形態アゾ顔料を、より再現性よく、より高効率に製造することができる。なお、乾燥工程は、中和の後、式(1)で表される化合物の含水量が5%未満まで乾燥させることをいう。
【0068】
含水量は、0%以上〜10%未満であることが好ましく、0%以上〜5%未満であることが更に好ましく、0%以上〜1%未満であることが特に好ましい。含水量が小さいほど、加熱処理に使用する溶媒量を減らすことができる。
【0069】
〔後処理工程〕
本発明の式(1)で表される化合物は後処理工程として溶媒加熱処理を行うことが好ましい。これによって、α型結晶形態アゾ顔料を純度良く得ることができる。
【0070】
本発明において、後処理工程はSP値が7.0〜14.0の溶媒を用いた溶媒加熱処理を含むことが好ましい。この溶媒加熱処理により顔料が若干ながらでも溶解するために、顔料内に取り込まれている不純物を除去することができる。
溶媒加熱処理に使用する溶媒として、SP値が7.0〜14.0の溶媒を用いるのが好ましく、SP値が9.0から13.0がより好ましく、酢酸エチル、ジブチルフタレート、アセトン、イソプロピルアルコール、アセトニトリル、酢酸、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミドが更に好ましく、アセトン、アセトニトリル、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミドを用いるのが最も好ましい。
【0071】
溶媒加熱処理に使用する溶媒の量は、溶媒の種類により異なるが、式(1)で表される化合物の1〜100重量倍が好ましく、5〜70重量倍が更に好ましく、5〜30重量倍が特に好ましい。
上記で挙げた溶媒に、更に無機又は有機の酸又は塩基を加えてもよい。溶媒加熱処理の温度は所望する顔料の一次粒子径の大きさによって異なるが、40〜150℃が好ましく、60〜100℃が更に好ましい。また、処理時間は、30分〜24時間が好ましい。
【0072】
上述した互変異性及び結晶多形の制御は、後処理の際の製造条件で制御することができる。この後処理の方法としては、例えば、ソルベントソルトミリング、ソルトミリング、ドライミリング、ソルベントミリング、アシッドペースティング等の磨砕処理、溶媒加熱処理などによる顔料粒子制御工程、樹脂、界面活性剤及び分散剤等による表面処理工程が挙げられる。
【0073】
ソルベントソルトミリングとしては、例えば、粗アゾ顔料と、無機塩と、それを溶解しない有機溶剤とを混練機に仕込み、その中で混練磨砕を行うことが挙げられる。上記無機塩としては、水溶性無機塩が好適に使用でき、例えば塩化ナトリウム、塩化カリウム、硫酸ナトリウム等の無機塩を用いることが好ましい。また、平均粒子径0.5〜50μmの無機塩を用いることがより好ましい。当該無機塩の使用量は、粗アゾ顔料に対して3〜20質量倍とするのが好ましく、5〜15質量倍とするのがより好ましい。有機溶剤としては、水溶性有機溶剤が好適に使用でき、混練時の温度上昇により溶剤が蒸発し易い状態になるため、安全性の点から高沸点溶剤が好ましい。このような有機溶剤としては、例えばジエチレングリコール、グリセリン、エチレングリコール、プロピレングリコール、液体ポリエチレングルコール、液体ポリプロピレングリコール、2−(メトキシメトキシ)エタノール、2−ブトキシエタノール、2ー(イソペンチルオキシ)エタノール、2−(ヘキシルオキシ)エタノール、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングルコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコール、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、1−メトキシ−2−プロパノール、1−エトキシ−2−プロパノール、ジプロピレングリコール、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコール又はこれらの混合物が挙げられる。当該水溶性有機溶剤の使用量は、粗アゾ顔料に対して0.1〜5質量倍が好ましい。混練温度は、20〜130℃が好ましく、40〜110℃が特に好ましい。混練機としては、例えばニーダーやミックスマーラー等が使用できる。
【0074】
本発明は上記製造方法で製造されたα型結晶形態アゾ顔料、その互変異性体、塩、水和物又は溶媒和物にも関する。
【0075】
[顔料分散物]
本発明の顔料分散物は、上記α型結晶形態アゾ顔料又はその互変異性体、若しくは、本発明の製造方法により得られたアゾ顔料又はその互変異性体から選ばれる少なくとも1種を含有することを特徴とする。これにより、色彩的特性、耐久性及び分散安定性に優れた顔料分散物とすることができる。
【0076】
本発明の顔料分散物は、水系であっても非水系であってもよいが、水系の顔料分散物であることが好ましい。本発明の水系顔料分散物において顔料を分散する水性の液体は、水を主成分とし、所望により親水性有機溶剤を添加した混合物を用いることができる。
【0077】
前記親水性有機溶剤としては,例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、イソブタノール、sec−ブタノール、t−ブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、シクロヘキサノール、ベンジルアルコール等のアルコール類、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、ブチレングリコール、ヘキサンジオール、ペンタンジオール、グリセリン、ヘキサントリオール、チオジグリコール等の多価アルコール類、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールものブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールジアセテート、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテートトリエチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノフェニルエーテル等のグリコール誘導体、エタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、N−メチルジエタノールアミン、N−エチルジエタノールアミン、モルホリン、N−エチルモルホリン、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、ポリエチレンイミン、テトラメチルプロピレンジアミン等のアミン、ホルムアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、スルホラン、2−ピロリドン、N−メチル−2−ピロリドン、N−ビニル−2−ピロリドン、2−オキサゾリドン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、アセトニトリル、アセトン等が挙げられる。
【0078】
さらに、本発明の水系顔料分散物には水性樹脂を含んでいてもよい。水性樹脂としては,水に溶解する水溶解性の樹脂、水に分散する水分散性の樹脂,コロイダルディスパーション樹脂、又はそれらの混合物が挙げられる。水性樹脂として具体的には,アクリル系,スチレン−アクリル系,ポリエステル系,ポリアミド系,ポリウレタン系,フッ素系等の樹脂が挙げられる。
【0079】
本発明における水系顔料分散物が水性樹脂を含有する場合、その含有率は特に制限はない。例えば、顔料に対して0〜100質量%とすることができる。
【0080】
さらに,顔料の分散及び画像の品質を向上させるため,界面活性剤及び分散剤を用いてもよい。界面活性剤としては、アニオン性,ノニオン性,カチオン性,両イオン性の界面活性剤が挙げられ、いずれの界面活性剤を用いてもよいが、アニオン性、又は非イオン性の界面活性剤を用いるのが好ましい。
【0081】
本発明における水系顔料分散物が界面活性剤を含有する場合、その含有率は特に制限はない。例えば、顔料に対して0〜100質量%とすることができる。
【0082】
アニオン性界面活性剤としては,例えば、脂肪酸塩,アルキル硫酸エステル塩,アルキルベンゼンスルホン酸塩,アルキルナフタレンスルホン酸塩,ジアルキルスルホコハク酸塩,アルキルジアリールエーテルジスルホン酸塩,アルキルリン酸塩,ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩,ポリオキシエチレンアルキルアリールエーテル硫酸塩,ナフタレンスルホン酸フォルマリン縮合物,ポリオキシエチレンアルキルリン酸エステル塩,グリセロールボレイト脂肪酸エステル,ポリオキシエチレングリセロール脂肪酸エステル等が挙げられる。
【0083】
ノニオン界面活性剤としては,例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル,ポリオキシエチレンアルキルアリールエーテル,ポリオキシエチレンオキシプロピレンブロックコポリマー,ソルビタン脂肪酸エステル,ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル,ポリオキシエチレンソルビトール脂肪酸エステル,グリセリン脂肪酸エステル,ポリオキシエチレン脂肪酸エステル,ポリオキシエチレンアルキルアミン,フッ素系,シリコン系等が挙げられる。
【0084】
本発明の非水系顔料分散物は、前記式(1)で表される顔料を非水系ビヒクルに分散してなるものである。非水系ビヒクルに使用される樹脂は、例えば、石油樹脂、カゼイン、セラック、ロジン変性マレイン酸樹脂、ロジン変性フェノール樹脂、ニトロセルロース、セルロースアセテートブチレート、環化ゴム、塩化ゴム、酸化ゴム、塩酸ゴム、フェノール樹脂、アルキド樹脂、ポリエステル樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、アミノ樹脂、エポキシ樹脂、ビニル樹脂、塩化ビニル、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、ポリウレタン樹脂、シリコン樹脂、フッ素樹脂、乾性油、合成乾性油、スチレン/マレイン酸樹脂、スチレン/アクリル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、ベンゾグアナミン樹脂、メラミン樹脂、尿素樹脂塩素化ポリプロピレン、ブチラール樹脂、塩化ビニリデン樹脂等が挙げられる。非水系ビヒクルとして、光硬化性樹脂を用いてもよい。
【0085】
また、非水系ビヒクルに使用される溶剤としては、例えば、トルエンやキシレン、メトキシベンゼン等の芳香族系溶剤、酢酸エチルや酢酸ブチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート等の酢酸エステル系溶剤、エトキシエチルプロピオネート等のプロピオネート系溶剤、メタノール、エタノール等のアルコール系溶剤、ブチルセロソルブ、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル等のエーテル系溶剤、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系溶剤、ヘキサン等の脂肪族炭化水素系溶剤、N,N−ジメチルホルムアミド、γ−ブチロラクタム、N−メチル−2−ピロリドン、アニリン、ピリジン等の窒素化合物系溶剤、γ−ブチロラクトン等のラクトン系溶剤、カルバミン酸メチルとカルバミン酸エチルの48:52の混合物のようなカルバミン酸エステル等が挙げられる。
【0086】
本発明において、顔料の体積平均粒子径は10nm以上250nm以下であることが好ましい。なお、顔料粒子の体積平均粒子径とは、顔料そのものの粒子径、又は顔料に分散剤等の添加物が付着している場合には、添加物が付着した粒子径をいう。本発明において、顔料の体積平均粒子径の測定装置には、ナノトラックUPA粒度分析計(UPA−EX150;日機装社製)を用いることができる。その測定は、顔料分散物3mlを測定セルに入れ、所定の測定方法に従って行った。なお、測定時に入力するパラメーターとしては、粘度にはインク粘度を、分散粒子の密度には顔料の密度を用いる。
【0087】
より好ましい体積平均粒子径は、20nm以上250nm以下であり、更に好ましくは30nm以上230nm以下である。顔料分散物中の粒子の数平均粒子径が20nm未満である場合には、保存安定性が確保できない場合が存在し、一方、250nmを超える場合には、光学濃度が低くなる場合が存在する。
【0088】
本発明の顔料分散物に含まれる顔料の濃度は、1〜35質量%の範囲であることが好ましく、2〜25質量%の範囲であることがより好ましい。濃度が1質量%に満たないと、インクとして顔料分散物を単独で用いるときに十分な画像濃度が得られない場合がある。濃度が35質量%を超えると、分散安定性が低下する場合がある。
【0089】
本発明の顔料分散物は、上記のアゾ顔料及び水系又は非水系の媒体とを、分散装置を用いて分散することで得られる。分散装置としては、簡単なスターラーやインペラー攪拌方式、インライン攪拌方式、ミル方式(例えば、コロイドミル、ボールミル、サンドミル、ビーズミル、アトライター、ロールミル、ジェットミル、ペイントシェイカー、アジテーターミル等)、超音波方式、高圧乳化分散方式(高圧ホモジナイザー;具体的な市販装置としてはゴーリンホモジナイザー、マイクロフルイダイザー、DeBEE2000等)を使用することができる。
【0090】
本発明のアゾ顔料の用途としては、画像、特にカラー画像を形成するための画像記録材料が挙げられ、具体的には、以下に詳述するインクジェット方式記録材料を始めとして、感熱記録材料、感圧記録材料、電子写真方式を用いる記録材料、転写式ハロゲン化銀感光材料、印刷インク、記録ペン等があり、好ましくはインクジェット方式記録材料、感熱記録材料、電子写真方式を用いる記録材料であり、更に好ましくはインクジェット方式記録材料である。
【0091】
また、CCDなどの固体撮像素子やLCD、PDP等のディスプレーで用いられるカラー画像を記録・再現するためのカラーフィルター、各種繊維の染色の為の染色液にも適用できる。
【0092】
本発明のアゾ顔料は、その用途に適した耐溶剤性、分散性、熱移動性などの物性を、置換基で調整して使用する。また、本発明のアゾ顔料は、用いられる系に応じて乳化分散状態、更には固体分散状態でも使用することが出来る。
【0093】
[着色組成物]
本発明の着色組成物は、上記したアゾ顔料又はその互変異性体、若しくは、上記した顔料分散物を含有する着色組成物を意味する。本発明の着色組成物は、媒体を含有させることができるが、媒体として溶媒を用いた場合は特にインクジェット記録用インクとして好適である。本発明の着色組成物は、媒体として、親油性媒体や水性媒体を用いて、それらの中に、本発明のアゾ顔料を分散させることによって作製することができる。好ましくは、水性媒体を用いる場合である。本発明の着色組成物には、媒体を除いたインク用組成物も含まれる。本発明の着色組成物は、必要に応じてその他の添加剤を、本発明の効果を害しない範囲内において含有しうる。その他の添加剤としては、例えば、乾燥防止剤(湿潤剤)、褪色防止剤、乳化安定剤、浸透促進剤、紫外線吸収剤、防腐剤、防黴剤、pH調整剤、表面張力調整剤、消泡剤、粘度調整剤、分散剤、分散安定剤、防錆剤、キレート剤等の公知の添加剤(特開2003−306623号公報に記載)が挙げられる。これらの各種添加剤は、水溶性インクの場合にはインク液に直接添加する。油溶性インクの場合には、アゾ顔料分散物の調製後分散物に添加するのが一般的であるが、調製時に油相又は水相に添加してもよい。
【0094】
[インクジェット記録用インク]
次に、本発明のインクジェット記録用インクについて説明する。
本発明のインクジェット記録用インク(以下、「インク」という場合がある)は、上記で説明した顔料分散物を用いる。好ましくは、水溶性溶媒、水等を混合して調製される。ただし、特に問題がない場合は、前記本発明の顔料分散物をそのまま用いてもよい。
【0095】
本発明のインク中の顔料分散物の含有割合は、記録媒体上に形成した画像の色相、色濃度、彩度、透明性等を考慮すると、1〜100質量%の範囲が好ましく、3〜20質量%の範囲が特に好ましく、その中でも3〜10質量%の範囲がもっとも好ましい。
【0096】
本発明のインク100質量部中に、本発明の顔料を0.1質量部以上20質量部以下含有するのが好ましく、0.2質量部以上10質量部以下含有するのがより好ましく、1〜10質量部含有するのが更に好ましい。また、本発明のインクには、本発明の顔料とともに、他の顔料を併用してもよい。2種類以上の顔料を併用する場合は、顔料の含有量の合計が前記範囲となっているのが好ましい。
【0097】
本発明のインクは、単色の画像形成のみならず、フルカラーの画像形成に用いることができる。フルカラー画像を形成するために、マゼンタ色調インク、シアン色調インク、及びイエロー色調インクを用いることができ、また、色調を整えるために、更にブラック色調インクを用いてもよい。
【0098】
さらに、本発明におけるインクは、上記本発明におけるアゾ顔料の他に別の顔料を同時に用いることが出来る。適用できるイエロー顔料としては、例えば、C.I.P.Y.74、C.I.P.Y.128、C.I.P.Y.155、C.I.P.Y.213が挙げられ、適用できるマゼンタ顔料としては、C.I.P.V.19、C.I.P.R.122が挙げられ、適用できるシアン顔料としては、C.I.P.B.15:3、C.I.P.B.15:4が挙げられ、これらとは別に、各々任意のものを使用する事が出来る。適用できる黒色材としては、ジスアゾ、トリスアゾ、テトラアゾ顔料のほか、カーボンブラックの分散体を挙げることができる。
【0099】
本発明のインクジェット記録用インクに用いられる水溶性溶媒としては、多価アルコール類、多価アルコール類誘導体、含窒素溶媒、アルコール類、含硫黄溶媒等が使用される。具体例としては、多価アルコール類では、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、トリエチレングリコール、1、5−ペンタンジオール、1,2,6−ヘキサントリオール、グリセリン等が挙げられる。
【0100】
前記多価アルコール誘導体としては、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノブチルエーテル、ジグリセリンのエチレンオキサイド付加物等が挙げられる。
【0101】
また、前記含窒素溶媒としては、ピロリドン、N−メチル−2−ピロリドン、シクロヘキシルピロリドン、トリエタノールアミン等が、アルコール類としてはエタノール、イソプロピルアルコール、ブチルアルコール、ベンジルアルコール等のアルコール類が、含硫黄溶媒としては、チオジエタノール、チオジグリセロール、スルフォラン、ジメチルスルホキシド等が各々挙げられる。その他、炭酸プロピレン、炭酸エチレン等を用いることもできる。
【0102】
本発明に使用される水溶性溶媒は、単独で使用しても、2種類以上混合して使用しても構わない。水溶性溶媒の含有量としては、インク全体の1質量%以上60質量%以下、好ましくは、5質量%以上40質量%以下で使用される。インク中の水溶性溶媒量が1質量%よりも少ない場合には、十分な光学濃度が得られない場合が存在し、逆に、60質量%よりも多い場合には、液体の粘度が大きくなり、インク液体の噴射特性が不安定になる場合が存在する。
【0103】
本発明のインクジェット記録用インクの好ましい物性は以下の通りである。インクの表面張力は、20mN/m以上60mN/m以下であることが好ましい。より好ましくは、20mN以上45mN/m以下であり、更に好ましくは、25mN/m以上35mN/m以下である。表面張力が20mN/m未満となると記録ヘッドのノズル面に液体が溢れ出し、正常に印字できない場合がある。一方、60mN/mを超えると、印字後の記録媒体への浸透性が遅くなり、乾燥時間が遅くなる場合がある。
なお、上記表面張力は、前記同様ウイルヘルミー型表面張力計を用いて、23℃、55%RHの環境下で測定した。
【0104】
インクの粘度は、1.2mPa・s以上8.0mPa・s以下であることが好ましく、より好ましくは1.5mPa・s以上6.0mPa・s未満、更に好ましくは1.8mPa・s以上4.5mPa・s未満である。粘度が8.0mPa・sより大きい場合には、吐出性が低下する場合がある。一方、1.2mPa・sより小さい場合には、長期噴射性が悪化する場合がある。
なお、上記粘度(後述するものを含む)の測定は、回転粘度計レオマット115(Contraves社製)を用い、23℃でせん断速度を1400s-1として行った。
【0105】
インクには、前記各成分に加えて、上記の好ましい表面張力及び粘度となる範囲で、水が添加される。水の添加量は特に制限は無いが、好ましくは、インク全体に対して、10質量%以上99質量%以下であり、より好ましくは、30質量%以上80質量%以下である。
【0106】
さらに必要に応じて、吐出性改善等の特性制御を目的とし、ポリエチレンイミン、ポリアミン類、ポリビニルピロリドン、ポリエチレングリコール、エチルセルロース、カルボキシメチルセルロース等のセルロース誘導体、多糖類及びその誘導体、その他水溶性ポリマー、アクリル系ポリマーエマルション、ポリウレタン系エマルション、親水性ラテックス等のポリマーエマルション、親水性ポリマーゲル、シクロデキストリン、大環状アミン類、デンドリマー、クラウンエーテル類、尿素及びその誘導体、アセトアミド、シリコーン系界面活性剤、フッ素系界面活性剤等を用いることができる。
【0107】
また、導電率、pHを調整するため、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化リチウム等のアルカリ金属類の化合物、水酸化アンモニウム、トリエタノールアミン、ジエタノールアミン、エタノールアミン、2−アミノ−2−メチル−1−プロパノール等の含窒素化合物、水酸化カルシウム等のアルカリ土類金属類の化合物、硫酸、塩酸、硝酸等の酸、硫酸アンモニウム等の強酸と弱アルカリの塩等を使用することができる。
その他必要に応じ、pH緩衝剤、酸化防止剤、防カビ剤、粘度調整剤、導電剤、紫外線吸収剤、等も添加することができる。
【0108】
[カラーフィルター用着色組成物]
本発明のカラーフィルター用着色組成物は、上記した本発明の顔料組成物を含有するが、更に重合性化合物及び溶剤を含むことが好ましい。
また、本発明のカラーフィルター用着色組成物を製造する際、上記のようにして得られたアゾ顔料はそのまま配合しても、溶剤中に分散した顔料分散物を配合してもよい。アゾ顔料は顔料分散物とすることで、色彩的特性、耐久性及び分散安定性、耐光性や耐候性が優れたものとなり好ましい。
【0109】
本発明のカラーフィルター用着色組成物における有機顔料の使用量は、重合性化合物1質量部に対し、0.01〜2質量部であるのが好ましく、0.1〜1質量部であるのが特に好ましい。
【0110】
〔重合性化合物〕
重合性化合物は、カラーフィルターの製造プロセスを考慮して適宜選択すれば良く、重合性化合物としては、感光性化合物及び熱硬化性化合物などが挙げられるが、感光性化合物が特に好ましい。
【0111】
感光性化合物としては、光重合性樹脂、光重合性モノマー及び光重合性オリゴマーの少なくとも1種以上から選ばれ、エチレン性不飽和結合を有するものであることが好ましい。カラーフィルター用着色組成物には硬化した状態で樹脂となるものを含めば良く、未硬化の状態では樹脂化していない成分のみが含まれる場合を含む。
光重合性化合物、光重合性モノマー及び光重合性オリゴマーとしては、例えば2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ビスフェノールA型エポキシジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールF型エポキシジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールフルオレン型エポキシジ(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸エステル類等が挙げられる。また、アクリル酸(共)重合体、(メタ)アクリル酸(共)重合体、マレイン酸(共)重合体等のビニル樹脂や、ポリエチレンオキサイド、ポリビニルピロリドン、ポリアミド、ポリウレタン、ポリエーテル、ポリエステル等の側鎖にエチレン性二重結合を有する樹脂類も挙げることができる。これらは単独で用いても良いし、2種以上を併用しても良い。重合性化合物の配合量はカラーフィルター用組成物中の全固形分中20〜95質量%、好ましくは40〜80質量%の範囲がよい。
【0112】
重合性化合物の配合率は、カラーフィルター用組成物中の全固形分中40〜95質量%であることが好ましく、更には50〜90質量%であることが好ましい。組成物中には、必要に応じて他の樹脂類等を配合することができるが、この場合には、他の樹脂類を合わせた合計量が上記範囲に入ることが望ましい。なお、全固形分とは乾燥、硬化後に固形分として残る成分をいい、溶剤を含まず、単量体を含む。
【0113】
〔光重合開始剤〕
重合性化合物として感光性化合物を用いる場合には、感光性化合物の単量体及びオリゴマーの少なくとも1種と共に光重合開始剤を用いる。光重合開始剤としては、ベンゾフェノン誘導体、アセトフェノン誘導体、ベンゾイン誘導体、ベンゾインエーテル誘導体、チオキサントン誘導体、アントラキノン誘導体、ナフトキノン誘導体、及びトリアジン誘導体などの化合物から選択される1種以上が挙げられる。これらの光重合開始剤とともに、更に公知の光増感剤を使用してもよい。
【0114】
熱硬化性樹脂としては、例えばメラミン樹脂、尿素樹脂、アルキド樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、シクロペンタジエン樹脂などが挙げられる。
なお、本明細書及び請求の範囲において、「感光性樹脂」、及び「熱硬化性樹脂」は、各々硬化後の樹脂のみではなく、重合性の単量体及びオリゴマーの少なくとも1種も含むものとする。
【0115】
上記の感光性樹脂及び熱硬化性樹脂の少なくとも1種とともに、他の重合性化合物として、酸性基を有するバインダー樹脂、及び、アクリル樹脂、ウレタン樹脂など一般的にインクに使用される樹脂を使用してもよい。
【0116】
〔溶剤〕
顔料分散物は、水系であっても非水系であってもよいが、そのカラーフィルターの製造方法によって異なり、例えばフォトリソグラフィー法では、非水系が好ましく、インクジェット法では、どちらでもかまわない。
本発明の着色組成物に用いる溶剤としては、酢酸エチル、酢酸ブチル、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートなどの脂肪酸エステル類;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、ジアセトンアルコールなどのケトン類;ベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族類;メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノールなどのアルコール類;エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、トリメチレングリコール、ヘキサントリオールなどのグリコール類;グリセリン;エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテルなどのアルキレングリコールモノアルキルエーテル類;トリエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールジエチルエーテル、テトラエチレングリコールジメチルエーテル、テトラエチレングリコールジエチルエーテルなどのアルキレングリコールジアルキルエーテル類;テトラヒドロフラン、ジオキサン、ジエチレングリコールジエチルエーテルなどのエーテル類;モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミンなどのアルカノールアミン類;N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドン、2−ピロリドン、1,3―ジメチル−2−イミダゾリジノンなどの含窒素極性有機溶媒;水などが挙げられる。
【0117】
これらの溶剤のうち水溶性であるものは、水と混合して水性媒体として用いてもよい。また、水を除く上記の溶剤から選ばれる二種以上を混合して油性媒体として用いてもよい。
【0118】
本発明におけるカラーフィルター用着色組成物には、更に、界面活性剤、シリコーン系添加剤、シラン系カップリング剤及びチタン系カップリング剤から選択される1種以上の分散剤を含むことが好ましい。これらの分散剤は2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0119】
以下に前記の分散剤の具体例について説明する。
界面活性剤は界面活性作用を有するものであれば特に限定されないが、陽イオン性、陰イオン性、非イオン性、又は両性などの界面活性剤を挙げることができ、その具体例としては、アルカンスルホン酸塩、直鎖アルキルベンゼンスルホン酸塩、分岐鎖アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルナフタレンスルホン酸塩、ナフタレンスルホン酸塩ホルムアルデヒド縮合物、アルキル硫酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩、アルキルりん酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテルりん酸塩、及び脂肪族モノカルボン酸塩などの陰イオン性界面活性剤;アルキルアミン塩、及び四級アミン塩などの陽イオン性界面活性剤;グリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル、及びポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルなどの非イオン性界面活性剤;アルキルベタインなどの両性界面活性剤;陽イオン性、陰イオン性、非イオン性、両性のいずれであってもよい高分子系界面活性剤などが挙げられる。
【0120】
シリコーン系添加剤の具体例としては、ポリアルキルシロキサン、ポリアルキルフェニルシロキサン、ポリオルガノシロキサン、ポリジメチルシロキサン、ポリオルガノシロキサンポリエーテルコポリマー、ポリフルオロシロキサン、オルガノシランなどが挙げられる。これらのシリコーン系添加剤は2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0121】
シラン系カップリング剤の具体例としては、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリス(β−メトキシエトキシ)シラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−フェニル−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン、n−ブチルトリメトキシシラン、イソブチルトリメトキシシラン、トリメチルメトキシシラン、ヒドロキシプロピリトリメトキシシラン、n−ヘキサデシルトリメトキシシラン、及びn−オクタデシルトリメトキシシランなどが挙げられる。
【0122】
チタン系カップリング剤の具体例としては、イソプロピルトリ(N−アミノエチルアミノエチル)チタネート、及びジブトキシビストリエタノールアミンチタネートなどが挙げられる。
【0123】
上記の分散剤の使用量は、使用する分散剤の種類にもよるが、有機顔料100質量部に対して、0.1〜100質量部用いるのが好ましく、0.5〜80質量部用いるのが特に好ましい。
【0124】
分散剤の使用方法は特に制限されず、公知のフォトリソグラフィー法用の着色組成物の調製方法に従えばよい。
【0125】
本発明はまた、上記のカラーフィルター用着色組成物を用いて得られる、カラーフィルターを提供する。該カラーフィルターは、高いコントラスト及び良好な光透過性を示す。具体的には、650nmの波長において、好ましくは85%以上、より好ましくは90%以上の光透過性を示す。
【0126】
本発明のカラーフィルターを製造するには、公知のいずれの方法を用いてもよく、好適にはフォトリソグラフィー法及びインクジェット法が挙げられる。以下、フォトリソグラフィー法及びインクジェット法について、詳細に説明する。
【0127】
1)フォトリソグラフィー法
フォトリソグラフィー法によりカラーフィルターを形成する場合には、本発明のカラーフィルター用着色組成物の重合性化合物として、感光性樹脂を用いる。感光性樹脂は、単量体又はオリゴマーとして光重合開始剤と共に着色組成物中に配合され、光照射により硬化し透明基板上に被膜を形成する。
【0128】
感光性樹脂としては、前述の分子中に一つ以上のエチレン性二重結合を有する重合性単量体の重合体又は共重合体が好適に用いられる。
【0129】
これらの感光性樹脂(重合性単量体)としては、特にアクリル酸エステル及びメタクリル酸エステルが好ましく、具体的にはメチルアクリレート、メチルメタクリレート、ブチルメタクリレート、ブチルアクリレート、ペンタエリトリトールテトラアクリレート、ペンタエリトリトールテトラメタクリレート、ペンタエリトリトールトリアクリレート、ペンタエリトリトールトリメタクリレート、ジペンタエリトリトールヘキサアクリレート、ジペンタエリトリトールヘキサメタクリレート、ジペンタエリトリトールペンタアクリレート、ジペンタエリトリトールペンタメタクリレート、グリセロールジアクリレート、グリセロールジメタクリレート、1,4−ブタンジオールジアクリレート、1,4−ブタンジオールジメタクリレート、ビスフェノールAジアクリレート、ビスフェノールAジメタクリレートなどが挙げられる。
【0130】
フォトリソグラフィー法を用いる場合、本発明のカラーフィルター用着色組成物に、前述の感光性樹脂に加え、酸性基を有するバインダー樹脂を用いる。酸性基を有するバインダー樹脂としては、カルボキシル基、水酸基、スルホン酸基などを有する樹脂が挙げられ、カルボキシル基及び水酸基の少なくとも1種を有するバインダー樹脂が好ましい。
【0131】
上記の酸性基を有するバインダー樹脂としては、アクリル酸エステル類、メタクリル酸エステル類、スチレン、酢酸ビニル、塩化ビニル、N−ビニルピロリドン及びアクリルアミドなどから選ばれるエチレン性二重結合を有する単量体と、アクリル酸、メタクリル酸、p−スチレンカルボン酸、p−スチレンスルホン酸、p−ヒドロキシスチレン及び無水マレイン酸などから選択される、酸性基を有するエチレン性二重結合を有する単量体との共重合体が好ましく使用される。
【0132】
酸性基を有するバインダー樹脂は、感光性樹脂(重合性単量体)1質量部に対して、0.5〜4質量部用いるのが好ましく、1〜3質量部用いるのが特に好ましい。
【0133】
フォトリソグラフィー法用の着色組成物に用いる溶剤としては、脂肪酸エステル類、ケトン類、芳香族類、アルコール類、グリコール類、グリセリン、アルキレングリコールモノアルキルエーテル類、アルキレングリコールジアルキルエーテル類、エーテル類、及び含窒素極性有機溶媒から選択される1種以上の油性媒体が挙げられる。
【0134】
これらの溶剤の使用量は、着色組成物中の溶剤以外の成分の総質量に対して3〜30倍質量であるのが好ましく、4〜15倍質量であるのが特に好ましい。
【0135】
また、本発明におけるフォトリソグラフィー法用の着色組成物に、前述の成分の他に必要に応じて、湿潤剤、褪色防止剤、乳化安定剤、紫外線吸収剤、防腐剤、防カビ剤、pH調整剤、表面張力調整剤、消泡剤、粘度調整剤、分散安定剤、防錆剤、キレート剤などの公知の添加剤(特開2003−306623号公報に記載)が挙げられる。これらの各種添加剤は、調製時に油相又は水相に添加してもよい。
【0136】
本発明のカラーフィルター用着色組成物は、上記した本発明の顔料組成物、重合性化合物、溶剤、及びその他各種添加剤を、例えば、ビーズミル、ボールミル、サンドミル、二本ロールミル、三本ロールミル、ホモジナイザー、ニーダー、振とう分散機などの機器を用い、均一に混合、分散させる工程、及び前記溶剤等を用いて粘度調整する工程を含む方法により調製することが出来る。
【0137】
本発明のカラーフィルター用着色組成物を用いてカラーフィルターをディスプレー基板上に形成させる方法は、公知のフォトリソグラフィー法を用いれば良い。例えば、本発明の着色組成物を印刷法、スプレー法、バーコート法、ロールコート法、スピンコート法などの公知の方法によりディスプレー基板上に均一に塗布する工程、加熱によりインク中の溶剤を除去する工程、ディスプレー基板上のカラーフィルターパターンを高圧水銀ランプなどを用い露光する工程、アルカリ現像工程、洗浄工程、及び、ベーキング工程を含む方法によりカラーフィルターが得られる。
【0138】
2)インクジェット法
カラーフィルターをインクジェット法を用いて形成する場合には、本発明のカラーフィルター用着色組成物の重合性化合物としては、インクジェット方式用インクに従来用いられているものであれば特に限定されず、いずれを用いてもよい。感光性樹脂及び熱硬化性樹脂の少なくとも1種の単量体が好適に用いられる。
【0139】
これらの感光性樹脂としては、アクリル樹脂、メタクリル樹脂及びエポキシ樹脂などが挙げられ、アクリル樹脂、及びメタクリル樹脂が好適に使用される。アクリル樹脂及びメタクリル樹脂は、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、ウレタンアクリレート、ウレタンメタクリレート、アクリル酸アミド、メタクリル酸アミド、アルキルアクリレート、ベンジルメタクリレート、ベンジルアクリレート、アミノアルキルメタクリレートなどから選ばれる光重合性の単量体と、ベンゾフェノン誘導体、アセトフェノン誘導体、ベンゾイン誘導体、ベンゾインエーテル誘導体、チオキサントン誘導体、アントラキノン誘導体、ナフトキノン誘導体、及びトリアジン誘導体などの化合物から選ばれる光重合開始剤を組み合わせて用いたものが好ましい。また、上記の光重合性単量体の他に、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、酢酸ビニルなどの親水性基を有する光重合性単量体を加えてもよい。
【0140】
熱硬化性樹脂としては、例えばメラミン樹脂、尿素樹脂、アルキド樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂及びシクロペンタジエン樹脂などが挙げられる。
【0141】
インクジェット法を用いる場合、着色組成物に用いる溶剤は、油性媒体でも水性媒体でもよいが、水性媒体がより好適に使用される。水性媒体は水又は、水及び水溶性有機溶媒の混合溶媒が用いられるが、水及び水溶性有機溶媒の混合溶媒が好ましい。また、脱イオン処理されたものを使用することが望ましい。
【0142】
上記の着色組成物において使用する油性媒体は特に限定されないが、例えばフォトリソグラフィー法に用いる着色組成物用の溶剤として挙げたものなどを使用することが出来る。
【0143】
水性媒体中に使用する溶剤としては、アルコール類、ケトン類、エーテル類、グリコール類、グリセリン、アルキレングリコールモノアルキルエーテル類、アルキレングリコールジアルキルエーテル類、アルカノールアミン類、及び含窒素極性有機溶媒などから選択され、水溶性を有するものが挙げられる。これらの水溶性有機溶媒は単独で用いてもよく、二種以上を用いてもよい。
【0144】
これらの溶剤の使用量は特に限定されないが、着色組成物の粘度が室温にて20mPa・s以下、好ましくは10mPa・s以下となるように使用量を適宜調節するのがよい。
【0145】
本発明の着色組成物は、フォトリソグラフィー法用の着色組成物と同様に成分を分散、混合させる工程を含む方法により調製することが出来る。分散時には必要に応じ、フォトリソグラフィー法の場合と同様に分散剤を配合してもよい。
【0146】
また、本発明における着色組成物に、前述の成分の他に必要に応じて、湿潤剤、褪色防止剤、乳化安定剤、紫外線吸収剤、防腐剤、防カビ剤、pH調整剤、表面張力調整剤、消泡剤、粘度調整剤、分散安定剤などの公知の種々の添加剤を含めてもよい。
【0147】
上記のように得られた着色組成物を用いたカラーフィルターの形成方法は、公知のインクジェット方式によるカラーフィルターの形成方法であれば特に限定されない。例えば、ディスプレー基板上に液滴状で所定のカラーフィルターパターンを形成させる工程、これを乾燥させる工程、及び熱処理あるいは光照射あるいはこれらの双方を行って基板上のカラーフィルターパターンを硬化、皮膜化させる工程を含む方法によりカラーフィルターを形成することができる。
【0148】
以上、フォトリソグラフィー法とインクジェット法について説明したが、本発明のカラーフィルターは他の方法によって得られたものでもよい。
【0149】
上記以外のカラーフィルター形成方法(例えばオフセット印刷法などの種々の印刷法)を用いる場合であっても、着色組成物が前述の重合性化合物及び溶剤を含み、式(1)で表されるアゾ化合物を着色剤に使用するものであれば、カラーフィルター用着色組成物、得られたカラーフィルターの何れも本発明の範囲に含まれる。
例えば、重合性化合物、溶剤、添加剤などの成分、及びカラーフィルター形成時の処方については、慣用例に従って選択すればよく、上述のフォトリソグラフィー法及びインクジェット法の説明に挙げたものに限定されない。
【0150】
以上のようにして得られる、本発明のカラーフィルターは、公知の方法によりG(緑)、B(青)のカラーフィルターパターンとともに画素を形成する。かかるフィルターは、透明性が非常に高く、分光特性にすぐれ、消偏光作用の小さい、鮮明な画像を表示可能な液晶ディスプレーを与えることができる。
【0151】
また、カラーフィルターの形成方法としては、初めにフォトレジストによりパターンを形成し、次いで染色する方法、或いは特開平4−163552号、特開平4−128703号、特開平4−175753号公報で開示されているように色素を添加したフォトレジストによりパターンを形成する方法がある。本発明の顔料組成物をカラーフィルターに導入する場合に用いられる方法としては、これらのいずれの方法を用いても良いが、好ましい方法としては、特開平4−175753号や特開平6−35182号に記載されたところの、熱硬化性樹脂、キノンジアジド化合物、架橋剤、本発明の顔料組成物及び溶剤を含有してなるポジ型レジスト組成物、並びに、それを基体上に塗布後、マスクを通して露光し、該露光部を現像してポジ型レジストパターンを形成させ、上記ポジ型レジストパターンを全面露光し、次いで露光後のポジ型レジストパターンを硬化させることからなるカラーフィルターの形成方法を挙げる事ができる。又、常法に従いブラックマトリックスを形成させ、RGB原色系あるいはY、M、C補色系カラーフィルターを得ることができる。カラーフィルターの場合も本発明の顔料組成物における有機顔料の使用量の制限はないが0.1〜50質量%が好ましい。
【0152】
この際使用する熱硬化性樹脂、キノンジアジド化合物、架橋剤、及び溶剤とそれらの使用量については、前記特許文献に記載されているものを好ましく使用することができる。
【実施例】
【0153】
以下に本発明を実施例に基づき具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。以下、部とあるのは質量部を意味する。
【0154】
α型結晶形態アゾ顔料のX線回折の測定は、日本工業規格JISK0131(X線回析分析通則)に準じて、粉末X線回折測定装置RINT2500(株式会社リガク製)にてCuKα線を用い、次の条件で行ったものである。
【0155】
使用測定器:Rigaku社製 自動X線回折装置RINT2500
X線管球:Cu
管電圧:55KV
管電流:280mA
スキャン方法:2θ/θスキャン
スキャン速度:6deg./min
サンプリング間隔:0.100deg.
スタート角度(2θ):5deg.
ストップ角度(2θ):55deg.
ダイバージェンススリット:2deg.
スキャッタリングスリット:2deg.
レシービングスリット:0.6mm
縦型ゴニオメータ使用
【0156】
〔合成例1〕
式(1)で表されるα型結晶形態アゾ顔料は、以下のルートで合成した。
【0157】
【化6】

【0158】
α型結晶形態アゾ顔料の合成
20gの式(2)で表される化合物を200mlのリン酸に加えて室温下完溶させ、この溶液を氷冷して−5℃に保ち、亜硝酸ナトリウム8.0gを加えて40分攪拌し、その後、亜硝酸ナトリウムを3.3g追加して、更に20分攪拌した。この反応液に尿素1.5gを加えて、ジアゾニウム塩溶液を得た。このジアゾニウム塩溶液を、式(3)で表される化合物21gをN,N−ジメチルアセトアミド(DMAc)(400ml)に溶かした溶液に、5〜10℃に保ちながら80分間かけて滴下した。得られた溶液を5〜10℃に保ちながら2h攪拌し、その後、メタノールを240ml追加し、更に10分間攪拌した。析出した結晶を濾別し、メタノール300mlでかけ洗いをした。結晶を乾燥せずに水500ml、飽和炭酸水素ナトリウムを50ml加えて中和した。析出した結晶を濾別し、水300mlでかけ洗いをした。その後、送風乾燥機を用い、50℃で24時間乾燥させた。得られた結晶(含水量0.50%)をDMAc400mLに懸濁させた後、80℃中30分間攪拌した後に、二時間かけて室温に冷却し、得られた結晶を濾別し、室温にて24時間、50℃の減圧デシケータで10時間乾燥させ、α型結晶形態アゾ顔料を26.9g得た。収率82%。
得られたα型結晶形態アゾ顔料のX線回折の測定を上記条件により行ったところ、ブラッグ角(2θ±0.2°)が6.9°、21.5°及び27.3°に特徴的X線回折ピークを示した。また、10.9°におけるピークの高さに対する11.9°におけるピークの高さが0.6以下であった。CuKα特性X線回折図を図1に示す。
【0159】
〔実施例1〕顔料分散物1の作製
合成例1で合成したα型結晶形態アゾ顔料を2.5部、オレイン酸ナトリウム0.5部、グリセリン5部、水42部を混合し、直径0.1mmのジルコニアビーズ100部とともに遊星型ボールミルを用いて毎分300回転、6時間分散を行った。分散終了後、ジルコニアビーズを分離し、赤色の顔料分散物1(体積平均粒子径;Mv≒82nm:日機装(株)製Nanotrac150(UPA−EX150)を用いて測定)を得た。
【0160】
〔比較合成例1〕
式(1)で表されるアゾ顔料(D−1)は、以下のルートで合成した。
【0161】
【化7】

【0162】
1.0gの化合物(2)を10mlのリン酸(和光純薬株式会社;試薬特級純度85%、以下同様)に加えて溶かした。この溶液を氷冷して−5〜0℃に保ち、亜硝酸ナトリウム0.38gを加えて1時間攪拌し、ジアゾニウム塩溶液を得た。別に化合物(3)1.30gにアセトニトリル25mlを添加し攪拌下に、前述のジアゾニウム塩溶液を8℃以下で加えた。添加終了と同時に氷浴をはずし、更に3時間攪拌した。反応液にアセトニトリル50mlを添加し、30分間攪拌し、析出している結晶を濾別し、アセトニトリル30mlでかけ洗いをした。結晶を乾燥せずに水100mlに加え、炭酸水素ナトリウム0.5gを水30mlに溶かした溶液を添加し、20〜25℃で30分間攪拌した。析出している結晶を濾別し、更に水で充分にかけ洗いした。得られた結晶を乾燥させずにジメチルアセトアミド50mlに加え、100℃で加熱攪拌を30分間行なった。室温で30分間攪拌し、析出している結晶を濾過し、ジメチルアセトアミド30mlでかけ洗いをした。得られた結晶を乾燥させずにジメチルアセトアミド50mlに加え、水25mlを徐々に滴下し、80℃で1時間攪拌し、更に室温下で30分間攪拌した。析出している結晶を濾過し、ジメチルアセトアミド/水=2/1の20ml及びメタノール20mlでかけ洗いした。得られた結晶を乾燥し、式(1)で表される(D−1)を1.2g得た。収率52%。
得られたアゾ顔料(D−1)をCuKα特性X線回折を用いて分析し、α型結晶形態アゾ顔料に特徴的な10.9°のピーク強度をα型結晶形態アゾ顔料に特徴的な10.9°のピーク強度とβ型結晶形態アゾ顔料に特徴的な11.9°のピーク強度の和で割ることにより、アゾ顔料(D−1)は式(1)で表されるα型結晶形態アゾ顔料74%と式(1)で表されるβ型結晶形態アゾ顔料26%の混合物(α型結晶とβ型結晶の混合物)であることがわかった。アゾ顔料(D−1)のCuKα特性X線回折図を図2に示す。
【0163】
〔比較例1〕比較顔料分散物1の作製
実施例1で用いたα型結晶形態アゾ顔料に替えて、アゾ顔料(D−1)を用いた以外は実施例1と同様にして赤色の比較顔料分散物1を得た。
【0164】
〔比較例2〕比較顔料分散物2の作製
実施例1で用いたα型結晶形態アゾ顔料に替えて、C.I.ピグメント・レッド254(チバスペシャリティ社製B−CF)を用いた以外は実施例1と同様にして赤色の比較顔料分散物2を得た。
【0165】
(評価)
<着色力評価>
上記で得られた各顔料分散物をNo.3のバーコーターを用いてセイコーエプソン(株)社製フォトマット紙<顔料専用>に塗布した。得られた塗布物の画像濃度を反射濃度計(X−Rite社製X−Rite938)を用いて測定し、「着色力(OD:OpticalDensity)」を以下の基準で評価した。結果を表1に示す。
◎:OD値が1.6以上
○:OD値が1.4以上1.6未満
△:OD値が1.2以上1.4未満
×:OD値が1.2未満
【0166】
<耐溶剤性評価>
耐溶剤性については、顔料分散物1(実施例1)で用いた式(1)で表されるα型結晶形態アゾ顔料、比較顔料分散物1(比較例1)で用いたアゾ顔料(D−1)、及び比較顔料分散物2(比較例2)で用いたC.I.ピグメント・レッド254のそれぞれに関して、顔料10mgをN−メチルピロリドン50mLに懸濁させ、内温60℃にて10分間加熱した際に完溶したものを×、完溶しなかったものを○として評価した。
【0167】
<色相評価>
上記した着色力評価で用いた方法によりOD値が1.0の塗布物の反射スペクトルにおいて、以下の目視による3つの基準で判断した。
(1)黄味を帯びていないこと
(2)青味を帯びていないこと
(3)鮮やかであることを判断した。
◎:すべて満たす場合
○:2つを満たす場合
△:1つを満たす場合
×:すべて満たさない場合
【0168】
<耐光性評価>
着色力評価に用いた画像濃度1.0の塗布物を、フェードメーターを用いてキセノン光(170000lux.;325nm以下カットフィルター存在下)を14日間照射し、キセノン照射前後の画像濃度を、反射濃度計を用いて測定し、色素残存率[(照射後濃度/照射前濃度)×100%]として評価した。結果を表1に示す。
【0169】
【表1】

【0170】
表1の結果から明らかなように、本発明のα体結晶形態顔料は、高い耐溶剤性を示すとともに、顔料分散物とした場合には、着色力及び色相に特に優れる。
従って、本発明の顔料を用いた顔料分散物は、例えば、インクジェットなどの印刷用のインク等に好適に使用することができる。
【0171】
〔実施例2〕
国際公開番号WO06/064193号パンフレットの22ページに記載されているDispersant 10で表される高分子分散剤を水酸化カリウム水溶液で中和した。得られた分散剤水溶液75質量部(固形分濃度20質量%)の中に、前記合成例1で合成したα型結晶形態アゾ顔料30質量部及びイオン交換水95質量部を加えて、ディスパー攪拌翼にて混合・粗分散する。混合・粗分散した液にジルコニア・ビーズを600質量部を入れて、これを分散機(サンドグラインダミル)で4時間分散した後、ビーズと分散液に分離した。得られた混合物を攪拌しながら、25℃でポリエチレングリコールジグリシジルエ−テル〔ナガセ化成工業(株)製 デナコールEX−821〕2質量部をゆっくり加え、50℃で6時間攪拌した。更に、分画分子数300Kの限外濾過膜を使って不純物を除去し、これをポアサイズ5μmのフィルター(アセチルセルロース膜、外径:25mm、富士フイルム(株)社製)を取り付けた容量20mlのシリンジで濾過し、粗大粒子を除去することにより固形分濃度10質量%の顔料分散物2(粒径80nm:日機装(株)社製Nanotrac150(UPA−EX150)を用いて測定)を得た。
【0172】
〔比較例3〕
実施例2において用いたα型結晶形態アゾ顔料の代わりに、アゾ顔料(D−1)を用いた以外は実施例2と同様にして比較顔料分散物3を得た。
【0173】
〔実施例3〕
実施例2で得られた顔料分散物2を固形分で5質量%、グリセリン10質量%、2−ピロリドン5質量%、1,2―ヘキサンジオール2質量%、トリエチレングリコールモノブチルエーテル2質量%、プロピレングリコール0.5質量%、イオン交換水75.5質量%になる様に各成分を加えて、得られた混合液をポアサイズ1μmのフィルター(アセチルセルロース膜、外径:25mm、富士フイルム(株)社製)を取り付けた容量20mlのシリンジで濾過し、粗大粒子を除去することにより本発明の顔料インク液3を得た。
【0174】
〔比較例4〕
実施例2で得られた顔料分散物2の代わりに、比較例3で得られた比較顔料分散物3を用いた以外は実施例3と同様にして比較顔料インク液4を得た。
【0175】
なお、表2において、「吐出安定性」、「光堅牢性」、「熱堅牢性」、「オゾン堅牢性」、「金属光沢」、「インク液安定性」は、各インクをセイコーエプソン(株)社製インクジェットプリンターPX−V630のマゼンタ赤インク液のカートリッジに装填し、その他の色のインクはPX−V630の顔料インク液を用い、受像シートはセイコーエプソン(株)社製写真用紙<光沢>、及びセイコーエプソン(株)社製写真用紙クリスピア<高光沢>に推奨モードきれいで階段状に濃度が変化した単色画像パターン並びにブルー、レッド、グレーの画像パターンを印画させ、画像品質並びにインクの吐出性と画像堅牢性の評価を行った。金属光沢以外の評価は単色で行なった。
【0176】
上記実施例3(顔料インク液3)及び比較例4(比較顔料インク液4)について、下記評価を行った。その結果を表2に示した。
【0177】
(評価実験)
1)吐出安定性については、カートリッジをプリンターにセットし全ノズルからのインクの突出を確認した後、A4 20枚出力し、以下の基準で評価した。
A:印刷開始から終了まで印字の乱れ無し
B:印字の乱れのある出力が発生する
C:印刷開始から終了まで印字の乱れあり
【0178】
2)画像保存性については、印画サンプルを用いて、以下の評価を行った。
[1]光堅牢性は印画直後の画像濃度CiをX−Rite社製PhotographicDensitometer310(X−rite310)にて測定した後、アトラス社製ウェザーメーターを用い画像にキセノン光(10万ルックス)を14日照射した後、再び画像濃度Cfを測定し画像残存率Cf/Ci×100を求め評価を行った。
画像残像率について反射濃度が1、1.5、2の3点にて評価し、いずれの濃度でも画像残存率が80%以上の場合をA、1又は2点が80%未満の場合をB、全ての濃度で80%未満の場合をCとした。
[2]熱堅牢性については、80℃60%RHの条件下に7日間、印字サンプルを保存する前後での濃度を、反射濃度計X−rite310にて測定し、画像残存率を求め評価した。画像残像率について反射濃度が1、1.5及び2の3点にて評価し、いずれの濃度でも画像残存率が95%以上の場合をA、1又は2点が95%未満の場合をB、全ての濃度で95%未満の場合をCとした。
[3]耐オゾン性(オゾン堅牢性)については、オゾンガス濃度が5ppm(25℃;50%)に設定されたボックス内に14日間放置し、オゾンガス下放置前後の画像濃度を反射濃度計X−Rite310を用いて測定し、画像残存率として評価した。なお、前記反射濃度は、1、1.5及び2.0の3点で測定した。ボックス内のオゾンガス濃度は、APPLICS製オゾンガスモニター(モデル:OZG−EM−01)を用いて設定した。何れの濃度でも画像残存率が80%以上の場合をA、1又は2点が80%未満をB、全ての濃度で70%未満の場合をCとして、三段階で評価した。
3)金属光沢の発生有無:マゼンタ、ブルー、レッドイエロー及びグリーン、レッドのベタ印画部を反射光により目視観察し評価した。
金属光沢の見えないものを「○」、金属光沢の見えるものを「×」として評価した。
4)インク液安定性:実施例及び比較例の顔料インク液を60℃で10日間経時した後、顔料インク液中の粒径変化なしを「○」、粒径変化ありを「×」として評価した。下記表2に示した。
【0179】
【表2】

【0180】
表2の結果から、本発明の顔料を使用した顔料インク液は吐出性、堅牢性に優れ、金属光沢の発生が押さえられ、顔料インク液安定性に優れることがわかった。
表2の結果から明らかなように、本発明のインク液を使用した系ではすべての性能に優れていることがわかる。特に比較例に対して、光堅牢性、オゾン堅牢性及びインク液安定性が優れている。
【0181】
〔実施例4〕
実施例3で作製した顔料インク液3を、エプソン(株)社製のPX−V630にて画像を富士フイルム(株)社製インクジェットペーパーフォト光沢紙「画彩」にプリントし、実施例3と同様な評価を行ったところ、同様な結果が得られた。
表1、表2の結果から明らかなように、本発明の顔料を用いた顔料分散物1、2及び顔料インク液3は色調に優れ、高い着色力及び耐光性を示す。
従って、本発明の顔料を用いた顔料分散物は、例えば、インクジェットなどの印刷用のインク等に好適に使用することができる。
【0182】
〔実施例201〕
〔フォトリソグラフィー法によるカラーフィルターの作製〕
合成例1で合成したα型結晶形態アゾ顔料を用いた。70ccのマヨネーズ瓶に、下記に示す材料を投入し、これを振とう分散機(LAU社製DAS200)で6時間振盪して、ジルコニアビーズを分離し、顔料分散物201を得た。
【0183】
【表3】

【0184】
〔実施例202〕
顔料分散物201に下記に示す材料を加え、上記振とう分散機にて更に30分振盪しフォトリソグラフィー法用のカラーフィルター用着色組成物202を調製した。
【0185】
【表4】

【0186】
〔実施例203〕
上記実施例202で得られたカラーフィルター用着色組成物202を、スライドグラスにバーコーター Rod No.10 を用いて塗布した後、80℃のオーブンで5分間乾燥してインク塗膜を得た。
上記塗膜を、塗膜の一部を適当にマスキングした後、高圧水銀ランプを用い、200mJ/cmの条件で照射して露光した。その後0.5%炭酸ナトリウム水溶液を用い25℃で現像を行い、更に220℃のオーブンで20分間乾燥を行って、カラーフィルター203を作製した。このカラーフィルターの光透過率を、分光光度計(日立製作所(株)製、U−3310)を用いて測定した。また、波長540〜610nmの間で、得られたカラーフィルター203の透過率が最低の波長を示す波長を求めた。結果を表5に示す。
【0187】
〔実施例204〕
実施例201において、α型結晶形態アゾ顔料0.6gに対して分散剤として、更に界面活性剤(ビックケミー(株)社製顔料湿潤分散剤BYK−161)を0.5g添加して分散を行った以外は実施例201〜203と同様の操作を行ったところ、カラーフィルター203と同等の性能を有するカラーフィルター204が得られた。
【0188】
〔比較例201〜203〕
実施例201において使用したα型結晶形態アゾ顔料の代わりに、アゾ顔料(D−1)、C.I.ピグメントレッド254(C.I.Pigment Red 254:IRGAPHORE DPP RED、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製)及び下記式〔I〕の化合物を、それぞれ使用した以外は実施例201〜204と全く同様にして比較カラーフィルター201〜203を調製した。
【0189】
得られたカラーフィルターの光透過率の測定を行い、光透過率の最低の波長と590nmの光透過率、540nmの光透過率を求めた。結果を表5に示す。
【0190】
【化8】

【0191】
【表5】

【0192】
着色剤としてα型結晶形態アゾ顔料を含む本発明のカラーフィルター用着色組成物を用いて作成した実施例203、204及び比較例201〜203のカラーフィルターは、透過率曲線がシャープに立ち上がり、かつ、650〜750nmの領域において、透過率が高く、優れた透過率曲線を示すものであった。更に、比較例201のカラーフィルターは、540nmに透過率の高い部分がある。
【0193】
また、本発明のカラーフィルター用着色組成物を用いて作成したカラーフィルターは、比較例202及び比較例203において得られたカラーフィルターと比較し、350〜400nmの青色光の透過率が非常に低く、色純度の高い赤色を表示可能にするものであった。
【0194】
すなわち、本発明のカラーフィルター用着色組成物は、式(1)で表されるアゾ顔料の中でもCuKα特性X線回折におけるブラッグ角(2θ±0.2°)が6.9°、17.9°、21.5°及び27.3°に特徴的X線回折ピークを有し、10.9°におけるピークの高さに対する11.9°におけるピークの高さが0.6以下であるものを選択することにより、ディスプレーのバックライトの光源波長に応じて最適の色相の赤色を得ることができ、その結果、色再現性が向上する点で有用なものである。
【0195】
〔耐熱性評価〕
実施例203、実施例204、比較例201〜203で得られたカラーフィルターを用いて、耐熱性試験を行った。
<耐熱性試験方法>
カラーフィルターを大気下、250℃で90分間曝露し、その前後の色差(ΔEab)を分光光度計(サカタインクス社製Macbeth Coloreye―3000)で測定を行った。下記判定基準に従って評価しこれらの結果を表6に示した。
<判定基準>
○:ΔE*ab<1.0
△1.0≦ΔE*ab<1.1
×:1.1≦ΔE*ab
【0196】
【表6】

【0197】
着色剤としてα型結晶形態アゾ顔料を含む本発明のカラーフィルター用着色組成物を用いて作成した実施例203、204及び比較例201〜203のカラーフィルター2は、比較例201〜203の顔料を用いたものと比べて、同等以上の耐熱性を示した。
【0198】
〔耐光性評価〕
実施例203及び204のカラーフィルターを、フェードメーターを用いてキセノン光(170000lux.;325nm以下カットフィルター存在下、スガ試験機)を20日間照射し、その前後の色差(ΔEab)を分光光度計(サカタインクス社製Macbeth Coloreye―3000)で測定を行った。下記判定基準に従って評価しこれらの結果を表7に示した。
<判定基準>
◎:ΔE*ab≦2.0
○:2.0<ΔE*ab≦3.0
△:3.0<ΔE*ab≦6.0
×:6.0<ΔE*ab
【0199】
【表7】

【0200】
着色剤として式(1)で表されるアゾ化合物を含む本発明のカラーフィルター用着色組成物を用いて作成した実施例203及び204のカラーフィルターは、比較例201〜203のカラーフィルターを用いたものと比べて、同等以上の耐光性を示した。
【0201】
(コントラスト評価)
カラーフィルター203及び204のコントラストを、壷坂電機株式会社製、コントラストテスター CT−1を用いて測定した。評価はコントラスト≧23000を○、23000>コントラスト≧18000を△、18000>コントラストを×とし、結果を表8に示す。
【0202】
【表8】

【0203】
着色剤としてα型結晶形態アゾ顔料を含む本発明のカラーフィルター用着色組成物を用いて作成した実施例203、204のカラーフィルター203及び204は、比較例203の顔料を用いたものと比べて、優れたコントラストを示した。
【0204】
〔実施例301〕
<Green顔料分散液の調製>
−Green顔料分散液P1の調製−
顔料としてC.I.ピグメント・グリーン36とC.I.ピグメント・イエロー139との100/55(質量比)混合物12.6部と、分散剤としてBYK2001(Disperbyk:ビックケミー(BYK)社製、固形分濃度45.1質量%)5.2部と、分散樹脂としてベンジルメタクリレート/メタクリル酸共重合体(酸価134mgKOH/g、Mw=30,000)を2.7部と、溶媒としてプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート78.3部とからなる混合液を、ビーズミルにより15時間混合・分散して、Green顔料分散液P1を調製した。
【0205】
<Red顔料分散液の調製>
−Red顔料分散液P2の調製−
顔料としてα型結晶形態アゾ顔料とC.I.ピグメント・イエロー139との100/45(質量比)混合物12.1部と、分散剤としてBYK2001(Disperbyk:ビックケミー(BYK)社製、固形分濃度45.1質量%)10.4部と、分散樹脂としてベンジルメタクリレート/メタクリル酸共重合体(酸価134mgKOH/g、Mw=30,000)を3.8部と、溶媒としてプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート73.7部とからなる混合液を、ビーズミルにより15時間混合・分散して、Red顔料分散液P2を調製した。
【0206】
<Blue顔料分散液の調製>
−Blue顔料分散液P3の調製−
顔料としてC.I.ピグメント・ブルー15:6とC.I.ピグメント・バイオレット23との100/25(質量比)混合物14部と、分散剤としてBYK2001(Disperbyk:ビックケミー(BYK)社製、固形分濃度45.1質量%)4.7部と、分散樹脂としてベンジルメタクリレート/メタクリル酸共重合体(酸価134mgKOH/g、Mw=30,000)を3.5部と、溶媒としてプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート77.8部とからなる混合液を、ビーズミルにより15時間混合・分散して、Blue顔料分散P3を調製した。
【0207】
<Green着色感光性組成物(塗布液)A−1の調製>
上記のGreen顔料分散液P1を用い、下記組成となるように混合、撹拌して着色感光性組成物A−1を調製した。
【0208】
【表9】

【0209】
<Red着色感光性組成物(塗布液)B−1の調製>
上記のRed顔料分散液P2を用い、下記組成となるように混合、撹拌して着色感光性組成物B−1を調製した。
【0210】
【表10】

【0211】
<Blue着色感光性組成物(塗布液)C−1の調製>
上記のBlue顔料分散液P3を用い、下記組成となるように混合、撹拌して着色感光性組成物C−1を調製した。
【0212】
【表11】

【0213】
前記において調製されたGreen着色感光性組成物A−1を、あらかじめヘキサメチルジシラザンを噴霧した8インチのデバイス形成済みシリコンウエハの上に塗布し、光硬化性の塗布膜を形成した。そして、この塗布膜の乾燥膜厚が1.0μmになるように、100℃のホットプレートを用いて180秒間加熱処理(プリベーク)を行った。次いで、i線ステッパー露光装置FPA−3000i5+(Canon(株)製)を使用して、365nmの波長で1.0μm四方のベイヤーパターンマスクを通して50〜1000mJ/cmにて照射した(50mJ/cmずつ露光量を変化)。その後、照射された塗布膜が形成されているシリコンウエハをスピン・シャワー現像機(DW−30型;(株)ケミトロニクス製)の水平回転テーブル上に載置し、CD−2000(富士フイルムエレクトロニクスマテリアルズ(株)製)の40%希釈液を用いて23℃で180秒間パドル現像を行ない、シリコンウエハに着色パターンを形成した。
【0214】
着色パターンが形成されたシリコンウエハを真空チャック方式で前記水平回転テーブルに固定し、回転装置によって該シリコンウエハを回転数50rpmで回転させつつ、その回転中心の上方より純水を噴出ノズルからシャワー状に供給してリンス処理を行ない、その後スプレー乾燥した。
次に、200℃のホットプレートにて5分間加熱し、パターンが形成されたカラーフィルターを得た。
【0215】
さらに、上記Red着色感光性組成物B−1、Blue感光性組成物C−1を用い、露光パターンを1.0μm四方のアイランドパターンマスクを通して露光する以外はGreenと同様の工程を繰り返すことにより、RGBのパターンで形成されたカラーフィルター301を形成した。
このカラーフィルター301が形成されたデバイスを使用してカメラモジュールを作成すると、良好な分光特性を有することが確認できた。
【0216】
【化9】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
CuKα特性X線回折におけるブラッグ角(2θ±0.2°)が6.9°、21.5°及び27.3°に特徴的X線回折ピークを有し、10.9°におけるピークの高さに対する11.9°におけるピークの高さが0.6以下である10.9°におけるピークの高さに対する11.9°におけるピークの高さが0.6以下である下記式(1)で表されるアゾ顔料、その互変異性体、塩、水和物又は溶媒和物。
【化1】

【請求項2】
下記式(2)で表されるヘテロ環アミンから誘導したジアゾニウム塩と、下記式(3)で表される化合物とをアゾカップリング反応させる工程を含む、CuKα特性X線回折におけるブラッグ角(2θ±0.2°)が6.9°、21.5°及び27.3°に特徴的X線回折ピークを有し、10.9°におけるピークの高さに対する11.9°におけるピークの高さが0.6以下である下記式(1)で表されるアゾ顔料又はその互変異性体の製造方法。
【化2】

【請求項3】
更に、前記式(1)で表されるアゾ顔料又はその互変異性体を、含水量が0%以上5%未満まで乾燥する乾燥工程、及び後処理工程に供することを特徴とする請求項2に記載のアゾ顔料又はその互変異性体の製造方法。
【請求項4】
前記式(1)で表されるアゾ顔料が、CuKα特性X線回折におけるブラッグ角(2θ±0.2°)が6.9°、17.9°、21.5°及び27.3°に特徴的X線回折ピークを有し、10.9°におけるピークの高さに対する11.9°におけるピークの高さが0.6以下であることを特徴とする請求項2又は3に記載のアゾ顔料又はその互変異性体の製造方法。
【請求項5】
前記請求項2〜4のいずれか一項に記載の製造方法により得られたアゾ顔料、その互変異性体、塩、水和物又は溶媒和物。
【請求項6】
請求項1又は5に記載のアゾ顔料、その互変異性体、塩、水和物又は溶媒和物から選ばれる少なくとも1種を含有することを特徴とする顔料分散物。
【請求項7】
請求項6に記載の顔料分散物を含有することを特徴とする着色組成物。
【請求項8】
請求項7に記載の着色組成物を含有することを特徴とするインクジェット記録用インク。
【請求項9】
請求項7に記載の着色組成物を含有することを特徴とするカラーフィルター用着色組成物。
【請求項10】
請求項9に記載のカラーフィルター用着色組成物を用いて製造されたことを特徴とするカラーフィルター。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2011−252044(P2011−252044A)
【公開日】平成23年12月15日(2011.12.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−125326(P2010−125326)
【出願日】平成22年5月31日(2010.5.31)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】