説明

アダパレン多形形態

【課題】有利な性質を持つ、生物学的に活性のある新奇のアダパレン結晶質および無定形の諸形態、それらの製造方法、それらのアダパレン精製のための使用、前記諸形態を含有する薬剤組成物および治療におけるその使用の提供。
【解決手段】無定形形態および「形態α」と呼ばれる新奇の結晶質形態のアダパレンを特定の溶媒および温度を含む製法で得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アダパレン(adapalene)の無定形形態およびアダパレンの新奇の結晶質形態、それらの製造法、無定形のアダパレン形態およびアダパレンの精製法による新奇の結晶質形態の利用、前記の新奇形態を含有する薬剤組成物およびその治療における使用に関する。
【背景技術】
【0002】
下記の化学式を有するアダパレン、即ち6-[3-(1-アダマンチル)-4-メトキシフェニル]-2-ナフトエ酸、
【0003】
【化1】

はUS 4,717,720に開示されていて、皮膚科、特に尋常性アクネおよび乾癬の処置に用いられる。
【0004】
多形体のような、生物学的に活性のある化合物の異なる形態は、異なる生物学的利用能、放出時間(release time)および溶解性を持ち、たとえば、服用量低減または投与間隔の延長を可能にすることが知られている。そのうえ、薬物の異なる物理的形態としばしば関連する異なる物理的特性が、薬剤の製造に有利に活用できる。
【0005】
それゆえ、有利な性質を持つ、生物学的に活性のある化合物の新奇の多形体形態を、提供することが必要である。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
いまや発見されたのは、アダパレンが、下記に「形態I」と呼ばれる既知の結晶質形態に加えて、無定形形態および下記に結晶質「形態α」と呼ばれる新奇の結晶質形態も、室温で安定で、同様に存在できることである。
【0007】
ゆえに本発明は、アダパレン無定形形態および結晶質形態α、それらの製造法、前記の諸形態を含有する薬剤組成物、およびその治療での利用法、に関する。
【0008】
本発明の更なる目的は、前記の新奇の諸形態を用いて、薬剤製品の規制要件を充たす適当な品質のアダパレンを得る、アダパレンの精製法である。
【0009】
本発明によって、粒子試料がXμmよりも高い平均直径(D[4,3]と呼ばれる)を有すると述べられたとき、それは、試料を構成している粒子の平均体積が、直径Xの球形粒子の体積よりも高い、ことを意味する。
【0010】
粒子寸法、すなわち平均直径値D[4,3]は、Malvern Mastersizer MSI器械を用いて、下記の操作条件下で、既知の技法であるレーザー光散乱で測定された:
- 300RF mm レンズ、レーザー・ビーム長2.4 mm;
- 100 mlのisoparおよび0.5 mlのレシチン2%のisopar溶液中に分散された100 mg試料、 3 min の予めの音波処理(presonication)と2500 rpmの攪拌速度
本発明の第一の目的は、図1に報じられているXRPDスペクトルを実質的に有するアダパレン無定形形態である。
【課題を解決するための手段】
【0011】
アダパレン無定形形態は、下記の工程からなる製法によって製造できる:
- 有機極性非プロトン性溶媒中での粗アダパレンの熱可溶化、
- 反溶媒(anti-solvent)を用いての無定形のアダパレンの析出、および
- 結果として生じる無定形のアダパレンの分離。
【0012】
本発明によれば、有機極性非プロトン性溶媒は、たとえば、ジメチルスルホキシド、ジメチルアセタミド、ジメチルホルマミド、テトラヒドロフランまたはこれらの混合物の群から択ばれる溶媒、特にはジメチルスルホキシドである。
【0013】
本発明によれば、反溶媒は、たとえば、水、アルカノールまたは、これらの混合物である。アルカノールの好ましい例は、メタノール、エタノール、1-プロパノール、2--プロパノールである。水-アルカノール混合物の好ましい例は、水-メタノールおよび水-エタノール混合物、より好ましくは、水-メタノールである。この水対アルコール性溶媒の比率は、およそ1:5 ないし5:1の範囲でよく、好ましくは 2:1ないし1:2、特には ほぼ 1:1 である。
【0014】
アダパレンは、有機溶媒中で、ほぼ40℃から溶媒還流温度までの範囲内の温度、好ましくは約55℃から溶媒還流温度までの範囲内の温度、更に好ましくはほぼ中間値の温度で、可溶化される。その溶液中のアダパレン濃度は、およそ5 ないし50%でよく、好ましくは15 ないし30% w/vである。
【0015】
この溶液は反溶媒中に注がれ、およそ0 ないし25℃、好ましくは4ないし8℃の範囲の温度に保たれ、そして固体のアダパレンが無定形形態で分離される。これは、濾過による固体の分離、ついで、先に使った同一の反溶媒による洗浄、エチルエーテル、アセトン、またはメタノールなどの低沸有機溶媒、好ましくはアセトン、による最終洗浄、そして真空下の乾燥を含む方法で、回収できる。
【0016】
アダパレンは、室温で安定であり、ここで本発明の更なる目的である形態αと定義された更なる結晶質形態で存在できることが、今や発見された。アダパレンの結晶質形態αは、図2に報じたXRPDスペクトルを本質的に有し、ここで最も強度の回析ピークは、2θで3.17; 14.75; 16.16; 22.13および 25.22 ± 0.2°に在る。
【0017】
アダパレン結晶質形態αは、下記の工程を含む製法によって、都合よく製造できる:
- 非エステル有機溶媒中の、またはその溶媒とエステル溶媒との混合物中の、粗アダパ レン分散液を可溶化まで加熱;
- その溶液を冷却、そして
- 結果として生じる固体の分離。
【0018】
アダパレン結晶質形態αは、たとえば、ジメチルスルホキシド、ジメチルアセタミド、ジメチルフホルマミドおよびテトラヒドロフラン、好ましくはジメチルスルホキシドおよびテトラヒドロフランから択ばれた非エステル溶媒中に、または、これらの溶媒の一つとエステル溶媒との混合物中に、粗アダパレンを分散させることによって得られる。本発明によっては、エステル溶媒は、たとえば酢酸エチル、酢酸イソプロピル、酢酸ブチルおよび酢酸イソブチルの群から択ばれた溶媒、好ましくは酢酸エチルである。非エステル溶媒とエステル溶媒との混合物、たとえばテトラヒドロフランと酢酸エチルの混合物は、好ましくは50ないし90% v/vの比率範囲にあり、より好ましくは約70% v/vである。出発溶液中のアダパレン濃度は、ほぼ2ないし5%の範囲でよく、好ましくは3ないし4%である。
【0019】
粗アダパレンを可溶化するために、この分散物は、それからほぼ50℃ないし溶媒に左右される還流温度の範囲にある温度までに加熱される。その結果に生じた溶液が、室温以下に冷却されることにより、アダパレン結晶質形態αが分離される。これが回収されるには、好ましくは濾過、ついで分散液製造に使ったのと同一の溶媒混合物による洗浄、また、好ましくは真空下、その溶媒混合物に左右される温度、典型的には略30℃から該混合物の沸点までの範囲の温度、好ましくは略50℃、での乾燥が続く。
【0020】
無定形アダパレンおよびアダパレン結晶質形態αの両者の製造の出発材料として用いられる粗アダパレンは、たとえばUS 4,717,720に報告されているようにして、得られる。
【0021】
アダパレン無定形形態およびアダパレン結晶質形態αは、上記に報じたごとく、既知のアダパレン形態Iと同じく、皮膚科の病状の処置の治療に有用である。
【0022】
本発明は、活性成分としてアダパレン無定形形態および/またはアダパレン結晶質形態α、随意に結晶質形態Iを混合し、一緒に希釈剤および/または担体を含んでいる、薬剤組成物にも関する。
【0023】
本発明の優先目的は、活性成分としてのアダパレン無定形形態と、一緒に、希釈剤および/または担体を含んでいる、薬剤組成物に関する。
【0024】
本発明の優先目的は、活性成分としてのアダパレン結晶質形態αと、一緒に、希釈剤および/または担体を含んでいる、薬剤組成物に関する。
【0025】
アダパレン無定形形態 、アダパレン結晶質形態αおよびアダパレン結晶質形態Iの諸比率の選択は、それらの物理学上および生物学上の性質に依存し、技術の熟練者により適宜選択されよう。
【0026】
本発明の薬剤組成物は、既知の技法によって、人間または動物への施与に合わせて、多様の薬剤形態に処方できる。こういう組成物は、たとえば、クリ−ム、ゲル、サスペンション、エマルション、溶液、カプセル、錠剤、糖衣錠または既知の他の形態である。たとえば、クリーム、ゲルまたは溶液を処方するときは、活性成分の量は、およそ0.02%ないし0.2%の範囲でよい。
【0027】
前に報じたアダパレン結晶質形態αおよびアダパレン無定形形態を得る為の諸方法は、アダパレン合成過程間に形成された、副反応および製品自体の減成に由来するいかなる不純物をも、最終製品から取り去って精製することを可能ならしめる。
【0028】
故に、本発明の更なる目的は、たとえば、US 4,717,720で得られる粗アダパレン のアダパレン結晶質形態αまたはアダパレン無定形形態への物質変換および、所望ならば、US 4,717,720に開示されている諸条件の下の結晶化による、その新奇の結果の形態を形態Iへの続いての物質変換を含む、アダパレンの精製法である。
【0029】
前記方法は、約99.9%を超える純度を有する、即ち薬剤使用の規制要件を充たすに適当な、アダパレン無定形形態、結晶質形態α、結晶質形態Iを提供する。
【0030】
本発明によって得られる、アダパレン無定形形態、結晶質形態α、または結晶質形態Iの粒子は、一般的には30 μm以下、好ましくは20 μm以下、より好ましくは15 μm以下の、平均D[4,3]直径を有する。
【0031】
所望ならば、上記方法の完了後、アダパレン無定形形態、結晶質形態α、結晶質形態Iの粒子は、たとえば、微粉砕またはミクロン微粉化に付されて、より低い平均D[4,3]直径、一般的には5 μm以下、好ましくは2 μm以下の粒子が得られる。
【0032】
前記の粒子寸法分布を有するアダパレンは、局所投与用の調合薬形態の処方に、特に向いている。
下記の諸実施例は、本発明を例証する。
【実施例】
【0033】
実施例1 アダパレン結晶質形態αの調製
1gのアダパレンが、30 mlのテトラヒドロフラン・酢酸エチル混合物(7:3 v/v)中に、還流温度(68℃)下で、溶かされる。その結果の澄んだ溶液は、ほぼ30分間で、約15℃までに冷却され、そこで濾過される。生成物は、真空下50℃で乾燥され、99.5%よりも高いHPLC純度、図2に報じた特性ピークが実質的にあるXPRDスペクトル及びおよそ15 μmの平均D[4,3]を有する、0.900 gのアダパレン結晶質形態αを提供する。
【0034】
実施例2 アダパレン結晶質形態αの調製
1gのアダパレンが、25 mlのジメチルスルホキシド中に、約90℃で溶かされる。その結果の溶液は、20℃までに冷却され、0.750 gの固体を提供する。およそ15 μmの平均D[4,3]および99.5%よりも高いHPLC純度を有する粒子について、生成物のXPRDスペクトルは、図2に報じた特性ピークを実質的に示す。
【0035】
実施例3 アダパレン 無定形形態の調製
1gのアダパレンが、5 mlのジメチルスルホキシド中に、約90℃で溶かされる。その熱溶液は、約5℃の20 mlの水・メタノール混合物(1:1 v/v)中に注がれる。直ちにゴム状固体が形成され、これは濾過によって回収され、最初には水・メタノール混合物で、続いてアセトンで洗われ、最後に真空下50℃で乾燥される。得られた固体は、およそ15 μmの平均D[4,3]および99.5%よりも高いHPLC純度を有する粒子で、図1に報じたXPRDスペクトルを実質的に有している。
【図面の簡単な説明】
【0036】
アダパレンの多形体諸形態は、既知のXRPD(X線粉末回析)技術によって、性格づけられる。X線回析スペクトル(XRPD)は、粉末および液体用のAPD 2000 θ/θ自動回析計(Ital-Structures)に下記操作条件下で記録された:照射CuKα(1.5418 Å)、1 secの時間0.03°の角幅で走査3-40°。
【図1】アダパレンの無定形形態のXRPDスペクトルを示す。
【図2】アダパレンの結晶質形態αのXRPDスペクトルを示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
無定形形態のアダパレン、6-[3-(1-アダマンチル)-4-メトキシフェニル]-2-ナフトエ酸。
【請求項2】
活性成分としてのアダパレン無定形形態と、一緒に、希釈剤および/または担体を含んでいる、薬剤組成物。
【請求項3】
最も強度の回析ピークが、2θで3.17; 14.75; 16.16; 22.13 および25.22 ± 0.2°に在る、XRPDスペクトルを有するアダパレンの結晶質形態α。
【請求項4】
図2に報じられているXRPDスペクトルを実質的に有する、請求項3のアダパレンの結晶質形態α。
【請求項5】
活性成分としての、請求項3で定義されたアダパレン結晶質形態αと、一緒に、希釈剤および/または担体を含んでいる、薬剤組成物。
【請求項6】
随意にアダパレン結晶質形態Iを混合している、活性成分としての、アダパレン無定形形態および/または請求項3で定義されたアダパレン結晶質形態αと、一緒に、希釈剤および/または担体を含んでいる、薬剤組成物。
【請求項7】
有機極性非プロトン性溶媒中での粗アダパレンの熱可溶化、反溶媒を用いての無定形のアダパレンの析出、および 結果として生じる無定形のアダパレンの分離を含む、アダパレン無定形形態の製法。
【請求項8】
非エステル有機溶媒中の、またはその溶媒とエステル溶媒との混合物中の、粗アダパレン分散液を可溶化までの加熱;その溶液の冷却、および 結果として生じる固体の分離、を含む、請求項3で定義されたアダパレン結晶質形態αの製法。
【請求項9】
粗アダパレンの、請求項3で定義されたアダパレン結晶質形態αへの、または、アダパレン無定形形態への変換;および、所望ならば、その結果の新奇形態の結晶質形態Iへの二次変換を含む、アダパレンの精製法。
【請求項10】
99.9%より高い純度を有する、アダパレン無定形形態、請求項3で定義された結晶質形態α、または結晶質形態I。
【請求項11】
典型的に30μmまたはより低い平均D[4,3]直径を有する粒子形態にある、アダパレン無定形形態、請求項3で定義された結晶質形態α、または結晶質形態I。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2006−151976(P2006−151976A)
【公開日】平成18年6月15日(2006.6.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−336730(P2005−336730)
【出願日】平成17年11月22日(2005.11.22)
【出願人】(504407413)ディフアルマ ソシエタ ペル アチオニ (12)
【氏名又は名称原語表記】DIPHARMA S.P.A.
【出願人】(505433976)ランドベック ファマシュティカルズ イタリー ソシエタ ペル アチオニ (2)
【氏名又は名称原語表記】LUNDBECK PHARMACEUTICALS ITALY S.P.A.
【Fターム(参考)】