説明

アッパクロス構造

【課題】本発明は、アッパクロス本体等によりボディ全体の水平方向の捩じれと上下方向の捩じれを効果的に抑制することを目的とする。
【解決手段】本発明に係るアッパクロス構造は、オープンカーのボディ1において、シートバック3bの後方位置で車幅方向に延びるアッパクロス本体12と、そのアッパクロス本体12の両端部をボディ側壁1sに接続する左右一対の接続部材22とを備えるアッパクロス構造であって、接続部材22は、基端部がアッパクロス本体12に接続されて、そのアッパクロス本体12と等しい高さで前方に延出するように構成されており、接続部材22の外側面がボディ内側壁1sに接続されるとともに、先端部がセンターピラー5に接続されており、接続部材22の内側面222とアッパクロス本体12の前面120との角部には、補強部材30が円弧状側面32の一端側と他端側とを内側面222と前面120とに重ねた状態で固定されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、オープンカーのボディにおいて、シートバックの後方位置で車幅方向に延びるアッパクロス本体と、そのアッパクロス本体の両端部をボディの側壁に接続する左右一対の接続部材とを備えるアッパクロス構造に関する。
【背景技術】
【0002】
オープンカーのボディにおけるアッパクロス構造に関する技術が特許文献1に記載されている。
特許文献1に記載されたオープンカーのボディにおけるアッパクロス構造では、図6(A)(B)に示すように、車幅方向に延びるアッパクロス本体101の両端に、平面略L字形をした接続部材103がそのアッパクロス本体101から前方に突出するように接続されている。さらに、前記接続部材103の先端部には、リンクブラケット104の保持部105が接続されている。
リンクブラケット104は、いわゆる開閉式ハードルーフのリンク機構を支持するブラケットであり、そのリンクブラケット104のブラケット本体106がボディの側壁を構成するサイドパネルに接続されている。
【特許文献1】特開2006−160143号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記した従来のアッパクロス構造では、アッパクロス本体101の両端に接続された接続部材103は、先端部がリンクブラケット104を介して間接的にボディのサイドパネルに接続される構成である。即ち、接続部材103の外側面の全体が直接的にボディのサイドパネルに接続される構成ではない。このため、ボディの上下方向や水平方向の捩じれがサイドパネルからリンクブラケット104、接続部材103及びアッパクロス本体101に加わる場合に、その捩じれ力がリンクブラケット104及び接続部材103の部分で吸収され、効率的にアッパクロス本体101に伝達されない。
さらに、リンクブラケット104は、ボディのサイドパネルに接続される構成でボディのセンターピラーには直接的に接続されていない。このため、センターピラーに加わるボディ全体の捩じれが効率的にアッパクロス本体101に伝達されない。
したがって、上記したアッパクロス構造では、アッパクロス本体101等によってボディ全体の水平方向、上下方向の捩じれを効率的に抑制することは難しい。
【0004】
本発明は、上記問題点を解決するためになされたものであり、本発明が解決しようとする課題は、アッパクロス本体等でボディ全体の水平方向の捩じれと上下方向の捩じれを効果的に抑制できるようにすることである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記した課題は、各請求項の発明によって解決される。
請求項1の発明は、オープンカーのボディにおいて、シートバックの後方位置で車幅方向に延びるアッパクロス本体と、そのアッパクロス本体の両端部を前記ボディの側壁に接続する左右一対の接続部材とを備えるアッパクロス構造であって、前記接続部材は、基端部が前記アッパクロス本体に接続されて、そのアッパクロス本体から前方に延出するように構成されており、前記接続部材の車幅方向外側に位置する外側面が前記ボディの内側壁に接続されるとともに、前記接続部材の先端部が前記ボディのセンターピラーに接続されており、前記接続部材の車幅方向内側に位置する内側面と前記アッパクロス本体の前面との角部には、円弧状側面を備える補強部材がその円弧状側面の一端側と他端側とを前記接続部材の内側面と前記アッパクロス本体の前面とにそれぞれ重ねた状態で固定されていることを特徴とする。
【0006】
本発明によると、アッパクロス本体の両端は、そのアッパクロス本体から前方に延出するように構成された接続部材によりボディの内側壁とセンターピラーとに接続されている。このため、ボディが上下方向に捩じれると、その捩じれが主にセンターピラーから接続部材に加わり、その接続部材がアッパクロス本体に対して上下回動方向に捩じられる。しかし、接続部材の車幅方向内側に位置する内側面とアッパクロス本体の前面との角部には、補強部材が円弧状側面の一端側と他端側とを接続部材の内側面とアッパクロス本体の前面とにそれぞれ重ねた状態で固定されている。これにより、接続部材がアッパクロス本体に対して上下回動方向に捩じられるような力を受けても、補強部材の働きでその捩じり力が接続部材とアッパクロス本体の接続部分に集中せず、アッパクロス本体の中央部分にも伝達される。即ち、ボディの上下方向の捩じれがセンターピラー、接続部材を介して効率的にアッパクロス本体の全体に加わるため、そのアッパクロス本体によってボディの上下方向の捩じれを抑えることができる。
また、ボディが水平方向に捩じれると、その捩じれが主にセンターピラーから接続部材に加わり、その接続部材がアッパクロス本体に対して水平回動方向に捩じられる。しかし、前述のように、接続部材の車幅方向内側に位置する内側面とアッパクロス本体の前面との角部には、前述のように、円弧状側面を備える補強部材がその円弧状側面の一端側と他端側とを接続部材の内側面とアッパクロス本体の前面とに重ねた状態で固定されている。これにより、接続部材がアッパクロス本体に対して水平方向に捩じられるような力を受けても、補強部材の働きでその捩じり力が接続部材とアッパクロス本体との角部に集中せず、アッパクロス本体にほぼ均等に分散される。これにより、ボディの水平方向に捩じれ力が効率的にアッパクロス本体に伝達され、前記アッパクロス本体でボディの水平方向の捩じれを効率的に抑えることができる。
【0007】
請求項2の発明によると、アッパクロス本体は、車幅方向に直線的に延びる構成であり、第1の板材と第2の板材とにより角形の中空閉断面状に形成されていることを特徴とする。
このため、アッパクロス本体を構成する第1の板材と第2の板材とを折り曲げ加工により製造することができる。このため、プレス加工により第1の板材と第2の板材とを製造する場合と比較してコスト低減を図ることができる。
請求項3の発明によると、アッパクロス本体の上面と接続部材の上面とが略同一平面となるように、前記接続部材が前記アッパクロス本体に接続されていることを特徴とする。
このため、アッパクロス構造における強度が向上し、ボディの捩じれを抑制することができる。
【0008】
請求項4の発明によると、接続部材は、平面視において基端部が幅広で先端側が徐々に幅狭となるように形成されており、前記接続部材の外側面が前記ボディの内側壁を形成する側壁部材と接続された状態で、その接続部材と前記側壁部材とにより中空の閉断面が形成される構成であり、前記接続部材の先端部と前記側壁部材との間に、ピラーインナとピラーアウタとからなる前記センターピラーの前記ピラーインナが挟まれて固定されていることを特徴とする。
このように、接続部材は平面視において基端部が幅広で先端側が徐々に幅狭となるように形成されているため、接続部材の内側面から補強部材が円弧状側面までを全体的に平面略円弧状に成形することが可能になる。このため、接続部材とアッパクロス本体との角部に捩じれ力が集中し難くなる。
また、接続部材と側壁部材とにより中空の閉断面が形成される構成であるため、前記接続部材の長手方向の強度が向上する。
また、接続部材の先端部と前記側壁部材との間にセンターピラーのピラーインナが挟まれて固定されるため、接続部材の先端部とセンターピラーとの接続が強固になる。
請求項5の発明によると、補強部材の円弧状側面には、前記円弧に沿う方向に延びる凹凸が形成されていることを特徴とする。
このため、接続部材とアッパクロス本体との角部における補強部材の圧縮強度、及び引っ張り強度が向上する。
【発明の効果】
【0009】
本発明によると、アッパクロス構造よりボディの水平方向の捩じれとボディの上下方向の捩じれを効率的に抑制できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
[実施形態1]
以下、図1から図5に基づいて本発明の実施形態1に係るアッパクロス構造について説明する。ここで、図1は本実施形態に係るアッパクロス構造を備えるオープンカーのボディにおけるシート部分を表す模式斜視図、図2は図1のII矢視拡大斜視図、図3は図2のIIIA-IIIA及びIIIB-IIIB矢視横断面図、図4は図2のIV-IV矢視縦断面図である。また、図5はアッパクロス構造の構成部品を表す斜視図である。
なお、図中の前後左右及び上下は車両の前後左右及び上下に対応している。
【0011】
<ボディ1の概要について>
本実施形態に係るアッパクロス構造10を備えるオープンカーのボディ1は、図1に示すように、車幅方向に二台のシート3(二点鎖線参照)を設置可能なように構成されている。さらに、左側のシート3の左前横位置及び右側のシート3の右前横位置には、それぞれドア(図示省略)により開閉される乗降口4が形成されている。そして、左右の乗降口4の後側で、シート3の真横位置には、ボディ1のフレームを構成するセンターピラー5が柱状に立設されている。
また、シート3のシートバック3bの後方位置には、同じくボディ1のフレームを構成するアッパクロス本体12が水平に配置されており、そのアッパクロス本体12の両端部が接続部材20、補強部材30を介してボディ1の側壁及びセンターピラー5の上部に接続されている。即ち、アッパクロス本体12と接続部材20と補強部材30等とから本実施形態に係るアッパクロス構造10が構成される。
また、アッパクロス本体12には、左右のシートバック3bに対応する位置に山形のガードバー10bが取付けられている。
【0012】
<アッパクロス本体12について>
次に、アッパクロス構造10を構成するアッパクロス本体12について説明する。
アッパクロス本体12は、車幅方向に直線的に延びる角筒状部材であり、図5(C)に示すように、断面略L字形に成形された第1の板材13と第2の板材14とから構成されている。第1の板材13は、アッパクロス本体12の前板120と上板124とを構成する部材であり、前板120の下端縁に第2の板材14(後記する)が合わせられる下受け部13dが形成されている。また、第1の板材13の上板124の後端縁に同じく第2の板材14が合わせられる上受け部13uが形成されている。
第2の板材14は、アッパクロス本体12の下板123と後板125とを構成する部材であり、下板123の前端縁14dが下側に折り曲げられて、第1の板材13の下受け部13dに合わせられるように構成されている。また、第2の板材14の後板125の上端縁14uが後側に約90°折り曲げられて、第1の板材13の上受け部13uに合わせられるように構成されている。
即ち、第1の板材13の下受け部13dが第2の板材14の前端縁14dに合わせられて溶接等により接続され、第1の板材13の上受け部13uが第2の板材14の上端縁14uに合わせられて溶接等により接続されることで、アッパクロス本体12が角形の中空閉断面状に形成される。
【0013】
<接続部材20について>
アッパクロス構造10を構成する接続部材20は、アッパクロス本体12の端部とセンターピラー5とを繋ぐとともに、アッパクロス本体12の端部をボディ1の側壁に接続するための部材である。
接続部材20は、アッパクロス本体12の端部とセンターピラー5とを繋ぐ接続部材本体22(図2、図5(A)参照)と、アッパクロス本体12の端部をボディ1の側壁を構成する柱状部1h(図3(B)参照)に接続するアッパクロス延長部21とから構成されている。なお、図3(B)は、図2のIIIB-IIIB矢視断面図を表している。
接続部材本体22は、図5(A)に示すように、ボディ1の側壁側で開放する縦断面(I-I矢視断面)略コ字形をした部材であり、上板221、内側板222、下板223とを備えている。上板221と下板222とはほぼ等しい平面形状で先端に近づくにつれて徐々に幅狭となるように形成されている。また、上板221の車幅方向外側の端縁221cは上方に直角に折り曲げられており、下板223の車幅方向外側の端縁223eは下方に直角に折り曲げられている。そして、接続部材本体22が水平に保持された状態で、上板221の端縁221cと下板223の端縁223eとが、図2等に示すように、ボディ1の内側壁部材1sに接続される。これにより、接続部材本体22とボディ1の内側壁部材1sとにより前後方向に延びる筒状体が形成される。
そして、接続部材本体22の先端とボディ1の内側壁部材1sとの間にセンターピラー5のピラーインナ5eが挟まれた状態で固定される。
【0014】
接続部材本体22の上板221は、図5(A)に示すように、基端部側が内側板222、下板223よりもアッパクロス本体12の前後幅分だけ後方に突出しており、その突出端縁221xが上方に直角に折り曲げられている。そして、接続部材本体22の上板221の突出端縁221xがアッパクロス延長部21に接続される。
また、接続部材本体22の内側板222は、基端縁222kがアッパクロス本体12の前板120と平行になるまで折り曲げられており、その内側板222の基端縁222kが前板120の端縁121に接続される。さらに、接続部材本体22の内側板222は、基端部から先端までの間が凹円弧状に湾曲しており、その内側板222に基端部から先端側に延びる凹部222mが形成されている。このように、凹部222mが形成されることで、接続部材本体22の水平方向の曲げ強度が向上する。
接続部材20のアッパクロス延長部21は、前述のように、アッパクロス本体12の端部をボディ1の側壁を構成する柱状部1h(図3(B)参照)に接続する部材であり、アッパクロス本体12とほぼ等しい構成で角筒状に形成されている。
【0015】
<補強部材30について>
補強部材30は、接続部材本体22とアッパクロス本体12との角部の内側に固定されて、接続部材本体22とアッパクロス本体12との接続部分を補強する部材である。
補強部材30は、図2、図5(B)に示すように、平面円弧状に形成された円弧状側板32と、その円弧状側板32の上端中央に形成された支持板34とを備えている。
補強部材30の円弧状側板32は、水平方向における一端側が接続部材本体22の内側板222に重ねられた状態で接続され、他端側がアッパクロス本体12の前板120に重ねられた状態で接続される。ここで、補強部材30の円弧状側板32の曲率は、接続部材本体22の内側板222の曲率にほぼ等しく、かつ、アッパクロス本体12の前板120に緩やかに重なるような曲率に設定されている。即ち、接続部材本体22の内側板222とアッパクロス本体12の前板120との角部には、補強部材30が円弧状側板32の表面を接続部材本体22の内側板222の表面とアッパクロス本体12の前板120の表面とにほぼ連続させた状態で固定される。
このため、接続部材本体22の内側板222の表面が本発明における接続部材の車幅方向内側に位置する内側面に相当し、アッパクロス本体12の前板120の表面が本発明におけるアッパクロス本体の前面に相当する。また、補強部材30が円弧状側板32の表面が本発明における補強部材の円弧状側面に相当する。
【0016】
補強部材30の円弧状側板32の一端側には、接続部材本体22の内側板222のボルト孔222b(図5(A)参照)に対応する位置にボルト孔32bが形成されており、そのボルト孔32bの下側に横長の溶接穴32wが形成されている。また、円弧状側板32の他端側には、アッパクロス本体12の前板120のボルト孔120b(図5(C)参照)に対応する位置にボルト孔32bが形成されており、そのボルト孔32bの上側に縦長の溶接穴32wが形成されている。
さらに、補強部材30の円弧状側板32には、一端側から他端側にかけて溝部32m及び突条32t(凹凸)が設けられている。
補強部材30の支持板34は、図2に示すように、接続部材本体22の上板221とアッパクロス本体12の上板124とに重ねられて、補強部材30の高さ方向の位置決めを行う部分であり、円弧状側板32に対して直角に折り曲げ成形されている。
【0017】
<アッパクロス構造10の施工手順について>
次に、アッパクロス構造10の施工手順について説明する。
先ず、所定形状に裁断されたアッパクロス本体12の第1の板材13における板素材と第2の板材14の板素材とが折り曲げ加工されて、第1の板材13と第2の板材14とが成形される。また、第1の板材13、第2の板材14の成形と平行して、接続部材20の接続部材本体22、アッパクロス延長部21及び補強部材30がプレス成形される。
次に、図3(B)に示すように、左右のボディ1の柱状部1hに対して接続部材20を構成するアッパクロス延長部21が車幅内側方向に突出するように水平に接続される。ここで、「接続」には、溶接による接続だけではなく、溶接とボルト止め(ネジ止め)等を組み合わせることによる接続も含むものとする。
さらに、アッパクロス本体12の第2の板材14の両端部が左右のアッパクロス延長部21に接続される。これにより、アッパクロス本体12の第2の板材14が車幅方向に直線的に延びるように配置される。
【0018】
次に、接続部材本体22の上板221の端縁221cと下板223の端縁223eが、図2に示すように、ボディ1の内側壁部材1sに内側から水平に接続される。さらに、接続部材本体22の先端では、上板221の端縁221cと下板223の端縁223eとがセンターピラー5のピラーインナ5eの側面に内側から接続される。ここで、図2のIIIA-IIIA断面を示す図3(A)、図2のIV-IV断面を示す図4に示すように、ボディ1の内側壁部材1sはセンターピラー5のピラーインナ5eに対して外側から接続されている。このため、接続部材本体22がピラーインナ5e及びボディ1の内側壁部材1sに対して内側から接続されることで、ピラーインナ5eはボディ1の内側壁部材1sと接続部材本体22との間に挟まれる。
ここで、センターピラー5のピラーアウタ5fの外側には、図2、図3(A)、図4に示すように、アウタリンフォース1yを介してアウタパネル1pが接続される。なお、図3(B)では、アウタリンフォース1y、アウタパネル1pは省略されている。
【0019】
また、接続部材本体22の上板221の基端部が、図2に示すように、アッパクロス延長部21を上から覆った状態で、その上板221の基端部に形成された突出端縁221xがアッパクロス延長部21に接続される。また、接続部材本体22の内側板222の基端縁222kが図3(B)に示すように、アッパクロス延長部21の前面に重ねられる。
次に、アッパクロス本体12の第1の板材13の上受け部13u(図5(C)参照)が第2の板材14の上端縁14uに合わせられて接続され、第1の板材13の下受け部13dが第2の板材14の前端縁14dに合わせられて接続される。これにより、アッパクロス本体12が角形の中空閉断面状に成形される。
さらに、アッパクロス本体12の第1の板材13の両端部が左右のアッパクロス延長部21に接続される。また、第1の板材13の前板120の端縁121が、図3(B)に示すように、接続部材本体22の内側板222の基端縁222kとアッパクロス延長部21の前面とに重ねられた状態で接続される。これにより、アッパクロス本体12の両端部が、そのアッパクロス本体12と等しい高さで前方に延出するように構成された左右の接続部材本体22と、そのアッパクロス本体12の延長線上に位置するアッパクロス延長部21とによりボディ1の内側壁に接続される。また、左右の接続部材本体22の上面とアッパクロス本体12の上面とはほぼ同一平面となる。
【0020】
次に、補強部材30が接続部材本体22とアッパクロス本体12に角部の内側に配置されて、その補強部材30の支持板34が接続部材本体22の上板221とアッパクロス本体12の上板124とに重ねられる。この状態で、補強部材30の円弧状側板32における複数のボルト孔32bが接続部材本体22の内側板222のボルト孔222bと、アッパクロス本体12の前板120のボルト孔120bとにそれぞれ合わせられ、補強部材30が接続部材本体22及びアッパクロス本体12にボルト止めされる。これにより、補強部材30が円弧状側板32を接続部材本体22の内側板222とアッパクロス本体12の前板120とにほぼ連続させた状態で位置決めされる。次に、補強部材30が溶接穴32wを利用して接続部材本体22の内側板222とアッパクロス本体12の前板120とに溶接されて、アッパクロス構造10が完成する。
なお、本実施形態では、アッパクロス本体12の第2の板材14をボディ1に取付けた後、接続部材本体22をボディ1に取付け、その後に第1の板材13を第2の板材14に組付ける例を示したが、第2の板材14と第1の板材13とを組み合わせてアッパクロス本体12を成形した後、そのアッパクロス本体12をボディ1に取付けることも可能である。
【0021】
<本実施形態に係るアッパクロス構造10の長所について>
上記したように、本実施形態に係るアッパクロス構造10によると、アッパクロス本体12の両端は、そのアッパクロス本体12から前方に延出する接続部材本体22によりボディ1の内側壁1sとセンターピラー5とに接続されている。このため、ボディ1が上下方向に捩じれると、その捩じれが主にセンターピラー5から接続部材本体22に加わり、その接続部材本体22がアッパクロス本体12に対して上下回動方向に捩じられる。しかし、接続部材本体22の車幅方向内側に位置する内側板222とアッパクロス本体12の前板120との角部には、補強部材30が円弧状側板32の一端側と他端側とを接続部材本体22の内側板222とアッパクロス本体12の前板120とにそれぞれ重ねた状態で固定されている。これにより、接続部材本体22がアッパクロス本体12に対して上下回動方向に捩じられるような力を受けても、補強部材30の働きでその捩じり力が接続部材本体22とアッパクロス本体12の接続部分に集中せず、アッパクロス本体12の中央部分にも伝達される。即ち、ボディ1の上下方向の捩じれがセンターピラー5、接続部材本体22を介して効率的にアッパクロス本体12の全体に加わるため、そのアッパクロス本体12によりボディ1の上下方向の捩じれを抑制することができる。
また、ボディ1が水平方向に捩じれると、その捩じれが主にセンターピラー5から接続部材本体22に加わり、その接続部材本体22がアッパクロス本体12に対して水平回動方向に捩じられる。しかし、前述のように、接続部材本体22の車幅方向内側に位置する内側板222とアッパクロス本体12の前板120との角部には、前述のように、円弧状側板32を備える補強部材30がその円弧状側板32の一端側と他端側とを接続部材本体22の内側板222とアッパクロス本体12の前板120とに重ねた状態で固定されている。これにより、接続部材本体22がアッパクロス本体12に対して水平方向に捩じられるような力を受けても、補強部材30の働きでその捩じり力が接続部材本体22とアッパクロス本体12との角部に集中せず、アッパクロス本体12にほぼ均等に分散される。これにより、ボディ1の水平方向の捩じれ力が効率的にアッパクロス本体12に伝達され、アッパクロス本体12でボディ1の水平方向の捩じれを効率的に抑えることができる。
また、左右の接続部材本体22の上面とアッパクロス本体12の上面とはほぼ同一平面となるため、アッパクロス構造10における強度が向上し、ボディ1の捩じれを抑制することができる。
【0022】
また、アッパクロス本体12は車幅方向に直線的に延びる構成であり、第1の板材13と第2の板材14とにより角形の中空閉断面状に形成されている。このため、アッパクロス本体12を構成する第1の板材13と第2の板材14とを折り曲げ加工により製造することができる。このため、プレス加工により第1の板材13と第2の板材14とを製造する場合と比較してコスト低減を図ることができる。
また、接続部材本体22は平面視において基端部が幅広で先端側が徐々に幅狭となるように形成されて、接続部材本体22の内側板222から補強部材30の円弧状側板32までが全体的に平面略円弧状に成形されている。このため、接続部材本体22とアッパクロス本体12との角部に捩じれ力が一層集中し難くなる。
また、接続部材本体22と側壁部材1sとにより中空の閉断面が形成される構成であるため、接続部材本体22の長手方向の強度が向上する。
さらに、接続部材本体22の先端部と側壁部材1sとの間にセンターピラー5の内壁を構成するピラーインナ5eが挟まれて固定されているため、接続部材本体22の先端部とセンターピラー5との接続が強固になる。
また、補強部材30の円弧状側板32には、前記円弧に沿う方向に延びる突条32t及び溝部32mが形成されているため、接続部材本体22とアッパクロス本体12との角部における補強部材30の圧縮強度、及び引っ張り強度が向上する。
【0023】
<アッパクロス構造10の変更例>
ここで、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲における変更が可能である。例えば、本実施形態では、アッパクロス延長部21を接続部材本体22、アッパクロス本体12と別々に成形する例を示したが、アッパクロス延長部21を接続部材本体22と一体に成形しても良いし、アッパクロス本体12と一体に成形しても良い。
また、接続部材本体22を先細となるように形成する例を示したが、接続部材本体22を前後方向に等しい幅寸法で形成することも可能である。さらに、接続部材本体22を縦断面略コ字形に形成する例を示したが、アッパクロス本体12のように縦断面略L字形をした第1の板材13と第2の板材14とを組み合わせることにより構成することも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の実施形態1に係るアッパクロス構造を備えるオープンカーのボディにおけるシート部分を表す模式斜視図である。
【図2】図1のII矢視拡大斜視図である。
【図3】図2のIIIA-IIIA矢視横断面図(A図)であり、図2のIIIB-IIIB矢視横断面図(B図)である。
【図4】図2のIV-IV矢視縦断面図である。
【図5】アッパクロス構造の構成部品を表す斜視図であり、接続部材本体の斜視図(A図)、補強部材の斜視図(B図)及びアッパクロス本体の分解斜視図(C図)である。
【図6】従来のアッパクロス構造を表す斜視図(A図)、アッパクロス本体と接続部材及び保持部の接続構造を表す平面図(B図)である。
【符号の説明】
【0025】
1 ボディ
1s 内側壁部材(内側壁を形成する側壁部材)
3 シート
3b シートバック
5 センターピラー
5e ピラーインナ
5f ピラーアウタ
12 アッパクロス本体
13 第1の板材
14 第2の板材
20 接続部材
21 アッパクロス延長部(接続部材)
22 接続部材本体(接続部材)
30 補強部材
32 円弧状側板
32t 突条(凹凸)
32m 溝部(凹凸)
120 アッパクロス本体の前板(アッパクロス本体の前面)
124 アッパクロス本体の上板(アッパクロス本体の上面)
221 接続部材本体の上板(接続部材の上面)
222 接続部材本体の内側板(接続部材の内側面)


【特許請求の範囲】
【請求項1】
オープンカーのボディにおいて、シートバックの後方位置で車幅方向に延びるアッパクロス本体と、そのアッパクロス本体の両端部を前記ボディの側壁に接続する左右一対の接続部材とを備えるアッパクロス構造であって、
前記接続部材は、基端部が前記アッパクロス本体に接続されて、そのアッパクロス本体から前方に延出するように構成されており、
前記接続部材の車幅方向外側に位置する外側面が前記ボディの内側壁に接続されるとともに、前記接続部材の先端部が前記ボディのセンターピラーに接続されており、
前記接続部材の車幅方向内側に位置する内側面と前記アッパクロス本体の前面との角部には、円弧状側面を備える補強部材がその円弧状側面の一端側と他端側とを前記接続部材の内側面と前記アッパクロス本体の前面とにそれぞれ重ねた状態で固定されていることを特徴とするアッパクロス構造。
【請求項2】
請求項1に記載されたアッパクロス構造であって、
アッパクロス本体は、車幅方向に直線的に延びる構成であり、第1の板材と第2の板材とにより角形の中空閉断面状に形成されていることを特徴とするアッパクロス構造。
【請求項3】
請求項2に記載されたアッパクロス構造であって、
前記アッパクロス本体の上面と前記接続部材の上面とが略同一平面となるように、前記接続部材が前記アッパクロス本体に接続されていることを特徴とするアッパクロス構造。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれかに記載されたアッパクロス構造であって、
接続部材は、平面視において基端部が幅広で先端側が徐々に幅狭となるように形成されており、
前記接続部材の外側面が前記ボディの内側壁を形成する側壁部材と接続された状態で、その接続部材と前記側壁部材とにより中空の閉断面が形成される構成であり、
前記接続部材の先端部と前記側壁部材との間に、ピラーインナとピラーアウタとからなる前記センターピラーの前記ピラーインナが挟まれて固定されていることを特徴とするアッパクロス構造。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれかに記載されたアッパクロス構造であって、
前記補強部材の円弧状側面には、前記円弧に沿う方向に延びる凹凸が形成されていることを特徴とするアッパクロス構造。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2008−137411(P2008−137411A)
【公開日】平成20年6月19日(2008.6.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−323256(P2006−323256)
【出願日】平成18年11月30日(2006.11.30)
【出願人】(000110321)トヨタ車体株式会社 (1,272)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】