説明

アトムプローブ用針状試料の加工方法及び集束イオンビーム装置

【課題】集束イオンビームを照射して加工する時に針状試料の先端の頂点周辺の汚染を抑えるとともに、針状試料の機械的な強度の低下を抑えたアトムプローブ用針状試料の加工方法及び集束イオンビーム装置を提供する。
【解決手段】針状試料10を、その先端11側が集束イオンビームBの進行方向D先方を向きかつ基端12側が集束イオンビームの進行方向後方を向くように、集束イオンビームの進行方向に対して針状試料の軸線C1が鋭角をなすように傾斜させて配置する。そして、針状試料をその軸線を中心に回転させながら、針状試料の先端に集束イオンビームを照射して加工する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アトムプローブ用針状試料の加工方法及びアトムプローブ用針状試料を加工する集束イオンビーム装置に関する。
【背景技術】
【0002】
アトムプローブは、針状に形成された試料の先端の頂点周辺に高電界を発生させ、電界蒸発現象により針状試料の先端の頂点周辺の組成を原子レベルで分析する装置である。電界蒸発は針状試料の先端の表面第一層から内部に向けて各原子層を順番に進行する。このため、アトムプローブによって、針状試料の層ごとの組成や界面の組成分布、さらには電子状態変化を調べることができる(例えば、特許文献1参照)。
ここで、アトムプローブで分析される針状試料の先端の頂点周辺とは、先端の頂点を中心とした直径が数十nmの範囲のことである。
アトムプローブ用の針状試料の先端の頂点周辺の形状は、その頂点周辺の曲率半径が数十nm程度に鋭いことが必要であり、ナノメートルサイズの加工が可能な集束イオンビーム(Focused Ion Beam)を用いて針状試料の加工が行われている。
【0003】
集束イオンビームを用いた針状試料の一つの加工方法として、針状試料の先端に保護層を形成し、針状試料の軸線方向から集束イオンビームを照射して先端の頂点周辺を鋭く尖らせた形状に加工する方法が知られている(例えば、特許文献2参照)。また、針状試料の他の方法加工として、針状試料の軸線に対して直交する方向から集束イオンビームを照射して先端の頂点周辺を鋭く尖らせた形状に加工する方法がある。
【特許文献1】特開2002−42715号公報
【特許文献2】特開2006−258680号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献2の方法では、照射した集束イオンビーム中のイオンが針状試料に打ち込まれて汚染されるために、正確な分析ができないという問題があった。
また、針状試料に集束イオンビーム中のイオンが打ち込まれるために針状試料の機械的な強度が弱くなり、針状試料をアトムプローブで分析する時に針状試料が軸線方向に引っ張られて、折れてしまうという問題があった。
【0005】
本発明は、このような問題点に鑑みてなされたものであって、集束イオンビームを照射して加工する時に針状試料の先端の頂点周辺の汚染を抑えるとともに、針状試料の機械的な強度の低下を抑えたアトムプローブ用針状試料の加工方法及び集束イオンビーム装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、この発明は以下の手段を提案している。
本発明のアトムプローブ用針状試料の加工方法は、集束イオンビームの照射によってアトムプローブ用の針状試料の先端を加工するアトムプローブ用針状試料の加工方法であって、前記針状試料を、その先端側が前記集束イオンビームの進行方向先方を向きかつ基端側が該集束イオンビームの進行方向後方を向くように、前記集束イオンビームの進行方向に対して前記針状試料の軸線が鋭角をなすように傾斜させて配置し、前記針状試料をその軸線を中心に回転させながら、該針状試料の先端を加工することを特徴としている。
【0007】
また、本発明の集束イオンビーム装置は、針状試料を収容するチャンバーと、前記チャンバーの内部を真空排気させる減圧手段と、前記チャンバーの内部に集束イオンビームを照射させるビーム発生手段と、前記チャンバー内に配置された試料載置台とを備え、前記試料載置台に設けられたブラケットには、前記針状試料を、その先端側が前記集束イオンビームの進行方向先方を向きかつ基端側が該集束イオンビームの進行方向後方を向くように、前記針状試料の軸線を前記集束イオンビームの進行方向に対して鋭角をなすように傾斜させて保持するクランプが設けられ、前記クランプごと前記針状試料をその軸線を中心に回転させる回転手段を備えることを特徴としている。
【0008】
この発明によれば、アトムプローブで分析される針状試料の先端の頂点周辺が集束イオンビームの進行方向先方に位置する状態で頂点周辺が加工される。このため針状試料の先端において、削除される部分以外には集束イオンビームが当たらないので、針状試料の先端の頂点周辺の汚染を抑えることができる。
また、削除される部分にのみ集束イオンビーム中のイオンが打ち込まれるので、針状試料の表面に生じる傷を低減させ、針状試料の機械的な強度の低下を抑えることができる。
【0009】
また、前記集束イオンビームの進行方向に対する前記針状試料の軸線の傾斜角度が30°以上45°以下の範囲に設定されていることがより好ましい。
この発明によれば、傾斜角度が45°以下なので、加工された針状試料の先端の円錐面の頂点部の角度は45°の2倍の90°以下になる。このため、針状試料をアトムプローブで分析する時に電界蒸発する場所が針状試料の先端の頂点周辺に集中する。従って、針状試料の組成をより正確に分析することができる。
また、傾斜角度が30°以上なので、集束イオンビームを照射させる装置と針状試料を軸線を中心に回転させながら支持する装置との配置位置の干渉が抑えられる。従って、アトムプローブ用針状試料の加工装置の設計を容易に行うことができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明のアトムプローブ用針状試料の加工方法及び集束イオンビーム装置によれば、集束イオンビームを照射して加工する時に針状試料の先端の頂点周辺の汚染を抑えるとともに、針状試料の機械的な強度の低下を抑えることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態を図面を参照して詳細に説明する。図1は本発明の集束イオンビーム装置100の側面断面図、図2は図1における要部断面図である。
図1に示すように、本発明の集束イオンビーム装置100は、真空排気されたチャンバー101内に配置された軸線C1を中心に回転するアトムプローブ用の針状試料10を、その先端11をSEM鏡筒150で観察しながらFIB鏡筒120から照射される集束イオンビームBで加工する装置である。
集束イオンビーム装置100は、針状試料10を収容するチャンバー101と、チャンバー101の内部を真空排気させる真空ポンプ102と、チャンバー101の内部に集束イオンビームBを照射させるFIB鏡筒120と、チャンバー101内に配置された試料載置台130と、試料載置台130に設けられたブラケット110と、ブラケット110に設けられ針状試料10を保持するクランプ106と、クランプ106ごと針状試料10をその軸線C1を中心に回転させる試料回転モータ140と、針状試料10を観察するSEM鏡筒150と、各構成を制御する制御手段160とを備えている。
なお、真空ポンプ102は特許請求の範囲の減圧手段に、FIB鏡筒120はビーム発生手段に、試料回転モータ140は回転手段にそれぞれ相当する。
【0012】
針状試料10は、後述する集束イオンビーム装置100で針状試料10を加工する工程で説明するように、図3に示すような形状に加工される。すなわち、針状試料10は、基端12に略直方体の形状を有し、中央部15から先端11までは円筒の形状を有し、先端11には軸線C1上の頂点13と外周16とを有する円錐面14を備えている。
なお図3に示すように、針状試料10の先端11の円錐面14の頂点13部の角度はαとなっている。
【0013】
図1に示すように、真空ポンプ102はチャンバー101の側面に設けられた排気口101aからチャンバー101内の空気を排気する。
また、SEM鏡筒150は、図示しない電子発生源で発生した電子を図示しない電子光学系で細く絞って電子ビームEとした後に照射して、測定対象物である針状試料10を観察する。
【0014】
ここで、水平面に平行でかつ互いに直交する二軸をX軸及びY軸、これらX軸及びY軸のそれぞれに直交する軸をZ軸とする。
試料載置台130は、ブラケット110をX軸、Y軸及びZ軸に沿って移動させるXYZ移動機構132と、ブラケット110をZ軸回りに回転させるローテーション機構133と、ブラケット110をX軸回りに回転させるチルト機構131と、上部にブラケット110を設ける天板134とを有する。このように構成された試料載置台130は、ブラケット110を5軸に変位させることで、クランプ106に保持された針状試料10位置を調節することができる。
【0015】
図2に示すように、ブラケット110は、天板134上に設けられ内部に試料回転モータ140を収容する凹型溝111aを備えたベース111と、ベース111の上面であって凹型溝111aの両側からベース111の上面に直交する方向へ伸びる一対の側板112と、一対の側板112に同一軸線C2を有するように固定された一対の軸受け113と、一対の軸受け113に固定され、軸線C2を中心に回転する一対の回転板114と、一対の回転板114を一対の側板112に固定させる固定部材115と、一対の回転板114を連結させる取付板116とを備えている。
【0016】
一対の側板112には、軸線C2を中心とするガイド孔112aがそれぞれ設けられている。また、一対の回転板114は一対の側板112の内側に配置され、一対の回転板114の側面には円筒形状のボス114aがそれぞれ外側向きに設けられている。ボス114aの径はガイド孔112aの幅より少し小さくなるように設定されていて、ボス114aがガイド孔112aに沿って移動可能なように配置されている。
そして、制御手段160からの信号により、図示しない回転板モータが、軸受け113の軸線C2を中心として回転板114を回転させ、図示しない固定モータが固定部材115をその軸線方向に移動させて側板112を回転板114と固定部材115で挟み込むことにより、回転板114を側板112に固定させる。
一対の軸受け113は同一軸線C2を有するように固定されているが、この二つの軸受け113の間には空間があり、そこに針状試料10の先端11が配置されている。そして、この空間に後述する集束イオンビームBが照射され、針状試料10の先端11が加工される。
【0017】
試料回転モータ140は取付板116に固定され、試料回転モータ140の図示しない出力軸は、軸線C4を中心に回転する。ブラケット110に設けられたクランプ106は、4方向から針状試料10の基端12を把持し、試料回転モータ140はクランプ106ごと針状試料10をその軸線C1を中心に回転させる。この時、針状試料10の軸線C1と試料回転モータ140の軸線C4が一致するとともに、針状試料10の軸線C1と軸受け113の軸線C2が直交するように針状試料10、ブラケット110等の形状が設定されている。
【0018】
FIB鏡筒120は、ビーム状のイオンを発生させるイオン発生源121と、発生したイオンビームをX軸方向及びY軸方向にそれぞれ偏向させる偏向器122x及び偏向器122yと、イオンビームを集光させる対物レンズ123とを有している。
対物レンズ123で集光された集束イオンビームBは、Z軸の一つの方向である進行方向Dに向かって進む。
【0019】
図2に示す針状試料10の先端11を加工する時には、クランプ106は、針状試料10を、その先端11側が集束イオンビームBの進行方向D先方を向きかつ基端12側が集束イオンビームBの進行方向D後方を向くように、針状試料10の軸線C1を集束イオンビームBの進行方向Dに対して30°以上45°以下の範囲の角度をなすように傾斜させて保持している。すなわち、図2に示す針状試料10の軸線C1と集束イオンビームBの進行方向Dとのなす傾斜角度θが30°以上45°以下の範囲なるように、クランプ106は針状試料10を保持している。
【0020】
次に、図4から図8を参照して、集束イオンビーム装置100で針状試料10を加工する工程について説明する。図4及び図5は斜視図であり、図6から図8は側面図である。また、図9は、集束イオンビーム装置100で針状試料10を加工する工程を示すフローチャートである。
なお、針状試料10は、集積回路等の電子デバイスから集束イオンビーム等を用いて加工して取り出された時には図4に示すように細長いブロック状の針状試料20となっている。そして、集束イオンビーム装置100により、この針状試料20は、図3で示した針状試料10の形状に加工される。
【0021】
まずステップS10において、図4に示すように、集束イオンビーム装置100内のブラケット110に設けられたクランプ106に針状試料20を固定する。そして制御手段160により、針状試料20の軸線C3がX軸と平行になり、かつZ軸方向から照射される集束イオンビームBが針状試料20に当たるように調整する。この時は、SEM鏡筒150で観察しながら制御手段160に指示して、ブラケット110、試料載置台130のチルト機構131、XYZ移動機構132及びローテーション機構133を調整することになる。
そして、制御手段160により真空ポンプ102を駆動させ、排気口101aからチャンバー101内の空気を排気させ、ステップS20に移行する。
【0022】
次にステップS20では、図5に示すように、制御手段160に指示して試料回転モータ140を駆動させて、針状試料20を軸線C3を中心に回転させる。そして、FIB鏡筒120により集束イオンビームBを照射させながらXYZ移動機構132をX軸方向に移動させることによりクランプ106に保持された針状試料20をX軸方向移動させ、針状試料20の先端21から中央部25までを円筒状に加工し、ステップS30に移行する。
なお、集束イオンビームBに対して針状試料20をX軸方向に移動させるために、XYZ移動機構132をX軸方向に移動させたが、替わりに偏向器122xに電圧を印加させて集束イオンビームBをX軸方向に移動させてもよい。
【0023】
次にステップS30では、図6に示すように、SEM鏡筒150で観察しながら制御手段160に指示して試料載置台130を調整して、軸受け113の軸線C2がY軸と平行になり、かつ集束イオンビームBと針状試料20の軸線C3が交わるように配置させる。そして、制御手段160に指示して図示しない回転板モータにより、軸受け113の軸線C2を中心として針状試料20の軸線C3と集束イオンビームBの進行方向Dとのなす傾斜角度θが30°以上45°以下のある角度、例えば45°になるように回転板114を回転させる。さらに、制御手段160に指示して図示しない固定モータにより固定部材115を移動させて、側板112を回転板114と固定部材115で挟み込むことにより、回転板114を側板112に固定する。これにより、傾斜角度θが45°に保持される。
すなわち、針状試料20を、その先端21側が集束イオンビームBの進行方向D先方を向きかつ基端22側が集束イオンビームBの進行方向D後方を向くように、集束イオンビームBの進行方向Dに対して針状試料20の軸線C3が45°をなすように傾斜させて配置させる。
傾斜角度θが45°に保持されると、ステップS40に移行する。
【0024】
ステップS40では、図7及び図8に示すように、制御手段160に指示して試料回転モータ140を駆動させることにより、針状試料20を軸線C3を中心に回転させる。次に、FIB鏡筒120に集束イオンビームBを照射させながら、偏向器122xに電圧を印加させて集束イオンビームBをX軸方向のうち針状試料20に近づく方向であるX1方向に移動させる。そして、針状試料20の先端21に円錐面24が形成されるまで加工を行う。
先端21の加工が終了すると、針状試料20は図3に示す針状試料10となり、ステップS40が終了して、集束イオンビーム装置100による針状試料10を加工する工程が終了する。
【0025】
こうして、本発明の集束イオンビーム装置100によれば、図8に示すようにアトムプローブで分析される針状試料10の先端11の頂点13周辺が集束イオンビームBの進行方向D先方に位置する状態で頂点13周辺が加工される。このため針状試料10の先端11において、削除される部分以外には集束イオンビームBが当たらないので、針状試料10の先端11の頂点13周辺の汚染を抑えることができる。すなわち、図8に示す領域Aは集束イオンビームBにより汚染されるが、領域Aより頂点13側は集束イオンビームBによる汚染は抑えられる。
また、削除される部分にのみ集束イオンビームB中のイオンが打ち込まれるので、針状試料10の表面に生じる傷を低減させ、針状試料10の機械的な強度の低下を抑えることができる。
【0026】
また、集束イオンビームBの進行方向Dに対する針状試料10の軸線C1の傾斜角度θが30°以上45°以下の範囲に設定されている。
傾斜角度θが45°以下なので、図8に示す加工された針状試料10の先端11の円錐面14の頂点13部の角度αは45°の2倍の90°以下になる。このため、針状試料10をアトムプローブで分析する時に電界蒸発する場所が針状試料10の先端11の頂点13周辺に集中する。従って、針状試料10の組成をより正確に分析することができる。
また、傾斜角度θが30°以上なので、FIB鏡筒120の配置位置と、ブラケット110及び試料回転モータ140の配置位置の間隔が広く取れて部品の干渉が抑えられる。従って、集束イオンビーム装置100の設計を容易に行うことができる。
【0027】
ここで、アトムプローブの構成と、集束イオンビーム装置100で加工された針状試料10がアトムプローブで分析される工程を説明する。図10はアトムプローブ200の構成を示す説明図である。
アトムプローブ200は、針状試料10を収容するチャンバー201と、チャンバー201の内部を真空排気させる真空ポンプ202と、針状試料10を保持する試料台203と、針状試料10との間に電位差を生じさせる漏斗状の引出電極204と、針状試料10にレーザーLを照射するレーザー発振器205と、針状試料10から発生したイオンMを検出する二次元イオン検出器206と、各構成を制御する制御装置207とを概略備えている。
【0028】
まず、真空ポンプ202によりチャンバー201内の空気を排気した後で、制御装置207により、針状試料10と引出電極204との間に高電圧を印加し強電界を発生させる。次に、レーザー発振器205により、パルス幅が約100フェムト秒程度のレーザーLを針状試料10の先端11に照射させる。すると電界蒸発により針状試料10の先端11の原子がイオンMとなり、引出電極204の方向に導かれて飛び出し、二次元イオン検出器206に当たる。
制御装置207は、イオンMが発生してから二次元イオン検出器206に到着するまでに要した所要時間を計測し、計測した所要時間からイオンMの質量を求める。
また制御装置207は、二次元イオン検出器206で検出されたイオンMが当たった位置から、イオンMが針状試料10から飛び出した位置を求める。
こうして、アトムプローブ200により、針状試料10の先端11における、三次元の微小領域の物質の構造及び組成を分析することができる。
【0029】
以上、本発明の実施形態について図面を参照して詳述したが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の構成の変更等も含まれる。
例えば、上記実施形態では図7及び図8に示すように、FIB鏡筒120から照射される集束イオンビームBで針状試料20の先端11を加工する時に、偏向器122xに電圧を印加させて集束イオンビームBをX1方向に移動させている。この集束イオンビームBをX1方向に移動させている時に、偏向器122yに電圧を印加させて集束イオンビームBをX1方向に移動させる速度に比較して高速度でY軸方向の一定範囲を往復移動するように集束イオンビームBを走査させてもよい。
これにより針状試料10の先端11の表面の加工をより安定させることができる。
【0030】
また上記実施形態では、図2に示すように、針状試料10の軸線C1と集束イオンビームBの進行方向Dとのなす傾斜角度θは30°以上45°以下の範囲としたが、0°より大きく90°より小さい範囲になるように設定してもよい。
傾斜角度θが90°より小さければ、針状試料10の円錐面14の角度αが180°より小さくなる。このため、針状試料10をアトムプローブで分析する時に電界蒸発する場所が針状試料10の先端11の頂点13周辺に集中し、針状試料10の組成を正確に分析することができる。
また、傾斜角度θが0°より大きければ、針状試料10の円錐面14の角度αが0°より大きくなる。本発明の実施形態の集束イオンビーム装置100で加工された針状試料10は機械的な強度が高いので、アトムプローブによる分析時に破損することを抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明の集束イオンビーム装置の実施形態の側面断面図である。
【図2】図1における要部断面図である。
【図3】本発明の集束イオンビーム装置の実施形態で加工された針状試料の説明図である。
【図4】本発明の集束イオンビーム装置の実施形態で針状試料を加工する工程を示す斜視図である。
【図5】本発明の集束イオンビーム装置の実施形態で針状試料を加工する工程を示す斜視図である。
【図6】本発明の集束イオンビーム装置の実施形態で針状試料を加工する工程を示す断面図である。
【図7】本発明の集束イオンビーム装置の実施形態で針状試料を加工する工程を示す断面図である。
【図8】本発明の集束イオンビーム装置の実施形態で針状試料を加工する工程を示す断面図である。
【図9】本発明の集束イオンビーム装置の実施形態で針状試料を加工する工程を示すフローチャートである。
【図10】アトムプローブの構成を示す説明図である。
【符号の説明】
【0032】
10 針状試料
11 先端
12 基端
101 チャンバー
102 真空ポンプ(減圧手段)
106 クランプ
110 ブラケット
120 FIB鏡筒(ビーム発生手段)
130 試料載置台
140 試料回転モータ(回転手段)
150 SEM鏡筒(観察手段)
B 集束イオンビーム
C1 軸線
D 進行方向
θ 傾斜角度

【特許請求の範囲】
【請求項1】
集束イオンビームの照射によってアトムプローブ用の針状試料の先端を加工するアトムプローブ用針状試料の加工方法であって、
前記針状試料を、その先端側が前記集束イオンビームの進行方向先方を向きかつ基端側が該集束イオンビームの進行方向後方を向くように、前記集束イオンビームの進行方向に対して前記針状試料の軸線が鋭角をなすように傾斜させて配置し、
前記針状試料をその軸線を中心に回転させながら、該針状試料の先端を加工することを特徴とするアトムプローブ用針状試料の加工方法。
【請求項2】
請求項1に記載のアトムプローブ用針状試料の加工方法において、
前記集束イオンビームの進行方向に対する前記針状試料の軸線の傾斜角度が30°以上45°以下の範囲に設定されていることを特徴とするアトムプローブ用針状試料の加工方法。
【請求項3】
針状試料を収容するチャンバーと、
前記チャンバーの内部を真空排気させる減圧手段と、
前記チャンバーの内部に集束イオンビームを照射させるビーム発生手段と、
前記チャンバー内に配置された試料載置台とを備え、
前記試料載置台に設けられたブラケットには、前記針状試料を、その先端側が前記集束イオンビームの進行方向先方を向きかつ基端側が該集束イオンビームの進行方向後方を向くように、前記針状試料の軸線を前記集束イオンビームの進行方向に対して鋭角をなすように傾斜させて保持するクランプが設けられ、
前記クランプごと前記針状試料をその軸線を中心に回転させる回転手段を備えることを特徴とする集束イオンビーム装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2009−109236(P2009−109236A)
【公開日】平成21年5月21日(2009.5.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−279319(P2007−279319)
【出願日】平成19年10月26日(2007.10.26)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 平成19年9月13日 独立行政法人 日本学術振興会主催の「マイクロビームアナリシス 第141委員会 第129回研究会」に文書をもって発表
【出願人】(507355467)
【出願人】(507355478)
【出願人】(503460323)エスアイアイ・ナノテクノロジー株式会社 (330)
【Fターム(参考)】