説明

アニリンスルホンアミド誘導体およびそれらの使用

式Iのアニリンスルホンアミド誘導体は治療、特に糖尿病、肥満、ならびに関連する状態および障害の治療において有用である:式中、R1、R2、R3、R4、R5、R6、およびLは明細書中に示している。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は一般には、11β-HSD1などのヒドロキシステロイドデヒドロゲナーゼを調節するため、ならびに糖尿病および肥満などのヒドロキシステロイドデヒドロゲナーゼの調節に関連する疾患を治療または予防するための方法における、新規化合物、組成物、およびいずれかの使用を目的とする。この方法は、それを必要としている患者へのアニリンスルホンアミド誘導体の治療的有効量の投与を含む。新規アニリンスルホンアミド誘導体またはその薬学的に許容される塩、溶媒和物、立体異性体、もしくはプロドラッグが本明細書において提示される。
【背景技術】
【0002】
ヒドロキシステロイドデヒドロゲナーゼ(HSD)は、ステロイドホルモンをそれらの不活性代謝物に変換することにより、ステロイドホルモン受容体の占有率および活性化を調節する。最近の総説については、Nobel et al., Eur. J. Biochem. 2001, 268:4113-4125を参照されたい。
【0003】
HSDには多くのクラスがある。11-β-ヒドロキシステロイドデヒドロゲナーゼ(11β-HSD)は活性グルココルチコイド(コルチゾルおよびコルチコステロンなど)と、それらの不活性体(コルチゾンおよび11-デヒドロコルチコステロンなど)との相互変換を触媒する。アイソフォーム11-β-ヒドロキシステロイドデヒドロゲナーゼ1型(11β-HSD1)は肝臓、脂肪組織、脳、肺および他のグルココルチコイド組織で発現され、糖尿病、肥満および加齢性認知機能不全などの、グルココルチコイド作用の低下により改善しうる多くの障害に対する治療法の標的となる可能性がある。Seckl, et al., Endocrinology, 2001, 142:1371-1376。
【0004】
グルココルチコイドが糖尿病発症において中心的役割を果たしていること、およびグルココルチコイドがグルカゴンの肝臓への作用を可能にすることは周知である。Long et al., J. Exp. Med. 1936, 63: 465-490;およびHoussay, Endocrinology 1942, 30: 884-892。加えて、11β-HSD1が局所グルココルチコイド作用および肝臓でのグルコース産生の調節において重要な役割を果たしていることは十分に実証されている。Jamieson et al., J. Endocrinol. 2000, 165:685-692。Walker, et al., J. Clin. Endocrinol. Metab. 1995, 80:3155-3159において、非特異的11β-HSD1阻害剤であるカルベノキソロンを投与することにより、ヒトの肝インスリン感受性が改善されることが報告された。
【0005】
さらに、糖尿病治療におけるHSDの作用メカニズムの仮説は、マウスやラットで行われた様々な実験によって裏付けられている。これらの試験から、肝グルコース産生における二つの重要な酵素、ホスホエノールピルビン酸カルボキシキナーゼ(PEPCK)、およびグルコース-6-ホスファターゼ(G6Pアーゼ)のmRNAレベルおよび活性はHSD阻害剤の投与後に下がることが明らかにされた。加えて、血糖レベルおよび肝グルコース産生は11β-HSD1ノックアウトマウスでは低いことが示された。このマウスノックアウトモデルを用いて集めた他のデータにより、PEPCKおよびGbPアーゼの基底レベルはグルココルチコイドとは無関係に調節されるため、11β-HSD1の阻害が低血糖を引き起こすことはないことも確認されている。Kotelevtsev et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 1997, 94: 14924-14929。
【0006】
HSDは肥満においても役割を果たすと考えられる。肥満は、X症候群ならびにII型(インスリン非依存性)糖尿病における重要な因子で、腹部脂胖症は糖不耐性、高インスリン血症、高トリグリセリド血症、およびX症候群の他の因子(例えば、高血圧、低HDLレベル、および高VLDLレベル)と関連づけられているため、大網脂肪はこれらの疾患両方の発症において最も重要であると思われる。Montague et al., Diabetes 2000, 49:883-888, 2000。前脂肪細胞(ストローマ細胞)において11β-HSD1を阻害すると、脂肪細胞への分化の速度低下が起こることも報告されている。これは大網脂肪蓄積の拡大減少(おそらくは低減)を引き起こし、それによって中心性肥満の低減を引き起こしうることが予想される。Bujalska et al., Lancet 1997, 349:1210-1213。
【0007】
Halleux et al., J. Clin. Endocrinol. Metab. 1999, 84:4097-4105に報告されたとおり、成熟脂肪細胞における11β-HSD1の阻害は、独立の心血管危険因子であるプラスミノゲン活性化因子阻害剤1(PAI-1)の分泌を減弱すると予想される。加えて、グルココルチコイド活性と特定の心血管危険因子との間に相関性があることが示されている。これは、グルココルチコイド作用の低下は特定の心血管疾患の治療または予防において有益であることを示唆するものである。Walker et al., Hypertension 1998, 31:891-895;およびFraser et al., Hypertension 1999, 33:1364-1368。
【0008】
HSDは食欲制御の過程にも関連するとされており、したがって体重関連障害においてさらなる役割を果たすと考えられる。副腎摘出が食物摂取と視床下部神経ペプチドY発現を両方とも高める絶食の効果を減弱することが知られている。これは、グルココルチコイドが食物摂取の促進において役割を果たすこと、および脳内の11β-HSD1の阻害が満腹感を高め、したがって食物摂取の低下を来すことを示唆するものである。Woods et al., Science 1998, 280:1378-1383。
【0009】
HSDの調節に関連する別の可能性がある治療効果は、様々な膵栄養物に関連するものである。マウス膵β細胞における11β-HSD1の阻害がインスリン分泌を高めることが報告されている。Davani et al., J. Biol. Chem. 2000, 275:34841-34844。これは、先行する発見からグルココルチコイドはインビボでの膵インスリン放出低下の原因であることが以前に判明していたことになる。Billaudel et al., Horm. Metab. Res. 1979, 11:555-560。したがって、11β-HSD1の阻害は、予想される肝臓への効果および脂肪減少効果以外の、糖尿病治療における他の有益な効果を生じることが示唆される。
【0010】
11β-HSD1は脳内のグルココルチコイド活性も調節し、したがって神経毒性に寄与する。Rajan et al., Neuroscience 1996, 16:65-70;およびSeckl et al., Neuroendocrinol. 2000, 18:49-99。ストレスおよび/またはグルココルチコイドは認知機能に影響をおよぼすことが知られており(de Quervain et al., Nature 1998, 394:787-790)、未発表の結果より、非特異的11β-HSD阻害剤で治療したラットにおいて有意な記憶改善が示されている。これらの報告は、脳内のグルココルチコイドの公知の作用に加えて、脳内のHSDを阻害することで不安および関連状態に対するプラスの治療効果が得られることを示唆している。Tronche et al., Nature Genetics 1999, 23:99-103。11β-HSD1は海馬細胞において11-DHCをコルチコステロンへと再活性化し、キナーゼ神経毒性を強化して、加齢性学習障害を引き起こすこともある。したがって、11β-HSD1の選択的阻害剤は、加齢に伴う海馬機能低下に対して保護すると考えられる。Yau et al., Proc Natl. Acad. Sci. USA 2001, 98:4716-4721。したがって、ヒト脳内の11β-HSD1の阻害は、認知障害、うつ、および食欲亢進などの神経機能への有害なグルココルチコイド仲介性作用に対して保護するとの仮説が立てられている。
【0011】
HSDは、グルココルチコイドは免疫系を抑制するとの一般的認識に基づき、免疫調節において役割を果たすと考えられる。免疫系とHPA(視床下部下垂体副腎)系との間に力学的相互作用があることが知られており(Rook, Baillier's Clin. Endocrinol. Metab. 2000, 13: 576-581)、グルココルチコイドは細胞性応答と液性応答との間のバランスを取る助けとなる。ストレスによって誘導されうるグルココルチコイド活性の亢進は液性応答に関連し、したがって11β-HSD1の阻害は応答を細胞性反応へとシフトさせることになる。結核、ライ、および乾癬などの特定の疾患状態において、免疫反応は典型的に、細胞性反応がより適当である場合にも、液性応答に偏っている。これらの場合に細胞性応答に向かわせるための使用について、11β-HSD1の研究が行われている。Mason, Immunology Today 1991, 12:57-60。したがって、11β-HSD1阻害の別の用途は免疫化に関連する一時的免疫応答を強化して、細胞性応答が確実に得られるようにすることである。
【0012】
最近の報告から、グルココルチコイド標的受容体およびHSDのレベルは緑内障を発症するリスクに関連していることが示唆される。Stokes et al., Invest. Ophthalmol. 2000, 41:1629-1638。さらに、11β-HSD1の阻害と眼内圧低下との間の関連が報告された。1999年6月12〜15日、San DiegoでのEndocrine society meeting、ポスターP3-698、Walker et al.。非特異的11β-HSD1阻害剤、カルベノキソロンの投与は、健常患者において眼内圧の20%の低下を引き起こすことが示された。眼内で、11β-HSD1は角膜上皮の基底細胞、角膜の無色素上皮(epithelialium)(房水産生部位)、毛様体筋、ならびに虹彩の括約筋および散大筋においてもっぱら発現される。これとは対照的に、遠縁のイソ酵素11β-ヒドロキシステロイドデヒドロゲナーゼ2型(「11β-HSD2」)は無色素毛様体上皮および角膜内皮で高度に発現される。房水流出部位の小柱網ではHSDは見いだされていない。したがって、11β-HSD1は房水産生において役割を有することが示唆される。
【0013】
グルココルチコイドは骨格の発生および機能においても必須の役割を果たすが、過剰にあるとそのような発生および機能にとって有害である。Kim et al., J. Endocrinol. 1999, 162:371 379に報告されているとおり、グルココルチコイド誘導性の骨損失は、部分的には骨芽細胞増殖およびコラーゲン合成の抑制による。グルココルチコイドの骨小結節形成に対する有害作用は、非特異的11β-HSD1阻害剤であるカルベノキソロンの投与によって減弱することができる。Bellows et al., Bone 1998, 23:119-125。さらなる報告により、11β-HSD1は破骨細胞における活性グルココルチコイドのレベルを高め、したがって骨再吸収を促進する役割を担っていることが示唆される。Cooper et al., Bone 2000, 27:375-381。このデータは、11β-HSD1の阻害が、並行して作用しうる一つまたは複数のメカニズムを介して、骨粗鬆症に対し有益な効果を有することを示唆するものである。
【0014】
胆汁酸が11β-HSD2を阻害すること、およびそのような阻害がコルチゾル/コルチゾンの平衡をコルチゾルの方にシフトさせることが知られている。Quattropani et al., J. Clin. Invest. Nov. 2001, 108:1299-305。したがって、11β-HSD2の肝臓における活性低下は、コルチゾル/コルチゾンの平衡をコルチゾンの方に逆行させ、それにより高血圧などの疾患における治療的恩典が得られると予想される。
【0015】
17-β-ヒドロキシステロイドデヒドロゲナーゼ(17β-HSD)の様々なアイソザイムはアンドロゲン受容体またはエストロゲン受容体に結合し、エストラジオール/エストロンおよびテストステロン/アンドロステンジオンを含む様々な性ホルモンの相互変換を触媒する。今日までに、ヒトにおいて6つのアイソザイムが同定されており、これらは子宮内膜組織、乳房組織、結腸組織、および精巣を含む様々なヒト組織で発現される。17-β-ヒドロキシステロイドデヒドロゲナーゼ2型(17β-HSD2)はヒト子宮内膜で発現され、その活性は子宮頸癌に関連することが報告されている。Kitawaki et al., J. Clin. Endocrin. Metab., 2000, 85:1371-3292-3296。17-β-ヒドロキシステロイドデヒドロゲナーゼ3型(17β-HSD3)は精巣で発現され、その調節はアンドロゲン関連障害の治療のために有用でありうる。
【0016】
アンドロゲンおよびエストロゲンはそれらの17β-ヒドロキシ配置で活性であるが、それらの17-ケト誘導体はアンドロゲンおよびエストロゲン受容体に結合せず、したがって不活性である。性ホルモンの活性体と不活性体(エストラジオール/エストロンおよびテストステロン/アンドロステンジオン)との間の変換は、17β-HSDファミリーのメンバーによって触媒される。17β-HSD1は乳房組織において、悪性乳房腫瘍の成長にとって重要なエストラジオールの生成を触媒する。Labrie et al., Mol. Cell. Endocrinol. 1991, 78:C113-C118。同様の役割が結腸癌における17β-HSD4に対して示唆されている。English et al., J. Clin. Endocrinol. Metab. 1999, 84:2080-2085。17β-HSD3は精巣でほぼ限定的に発現され、アンドロステンジオンをテストステロンに変換する。胎児発生中にこの酵素が不足すると、雄性の偽雌雄同体現象が起こる。Geissler et al., Nat. Genet. 1994, 7:34-39。17β-HSD3および様々な3α-HSDアイソザイムはいずれも、不活性体と活性体との間のアンドロゲンシャッフルを引き起こす複雑な代謝経路に関与している。Penning et al., Biochem. J. 2000, 351:67-77。したがって、特定のHSDの調節は、アンドロゲンおよびエストロゲン関連障害の治療において有益な効果を有する可能性がある。
【0017】
20-α-ヒドロキシステロイドデヒドロゲナーゼ(20α-HSD)はプロゲスチンの相互変換(プロゲステロンと20α-ヒドロキシプロゲステロンとの間など)を触媒する。20α-HSDの他の基質には、17α-ヒドロキシプレグネノロンまたは17α-ヒドロキシプロゲステロンが含まれ、20α-OHステロイドを生じる。いくつかの20α-HSDアイソフォームが同定されており、20α-HSDは胎盤、卵巣、精巣および副腎を含む様々な組織で発現される。Peltoketo, et al., J. Mol. Endocrinol. 1999, 23:1-11。
【0018】
3-α-ヒドロキシステロイドデヒドロゲナーゼ(3α-HSD)は、アンドロゲン、ジヒドロテストステロン(DHT)と5α-アンドロスタン-3α,17β-ジオールとの相互変換およびアンドロゲン、DHEAとアンドロステンジオンとの相互変換を触媒し、したがってアンドロゲン代謝において重要な役割を果たす。Ge et al., Biology of Reproduction 1999, 60:855-860。
【0019】
HSD阻害の分野で行われた以前の研究にもかかわらず、HSDの様々なファミリーの強力な阻害剤であり、糖尿病、肥満、緑内障、骨粗鬆症、認知障害、免疫障害、うつ、高血圧などのHSD仲介性状態を治療するために有効な、新規化合物がいまだに必要とされている。
【発明の開示】
【0020】
発明の概要
本発明は、11β-ヒドロキシステロイドデヒドロゲナーゼ1型(以下、「11β-HSD1」)、11β-ヒドロキシステロイドデヒドロゲナーゼ2型(以下、「11β-HSD2」)、および17β-ヒドロキシステロイドデヒドロゲナーゼ3型(以下、「17β-HSD3」)を含むが、それらに限定されるわけではない、11β-ヒドロキシステロイドデヒドロゲナーゼ、17β-ヒドロキシステロイドデヒドロゲナーゼ、20α-ヒドロキシステロイドデヒドロゲナーゼ、および3α-ヒドロキシステロイドデヒドロゲナーゼなどであって、そのすべてのアイソフォームを含む、ヒドロキシステロイドデヒドロゲナーゼ(HSD)の活性を調節するための新規化合物、その組成物、および方法を提供することにより、この必要性および他の必要性を満たすものである。一つ態様において、本発明の化合物はHSD活性を阻害する。
【0021】
本発明は、ヒドロキシステロイドデヒドロゲナーゼの作用に関連する疾患または障害を治療または予防するための方法であって、それを必要としている患者に、式Iのアニリンスルホンアミド誘導体またはその薬学的に許容される塩、溶媒和物、立体異性体、もしくはプロドラッグの治療的有効量を投与する段階を含む方法にも関する。本発明は、ヒドロキシステロイドデヒドロゲナーゼの選択的および非選択的阻害剤の両方を含む。
【0022】
ヒドロキシステロイドデヒドロゲナーゼの選択的および非選択的阻害剤はそれぞれ、例えば、異常なグルコースレベルまたは視床下部機能に関連する疾患の治療または予防において利点を有することが理解されるべきである。本発明はHSDの選択的阻害剤も含む。他の型の受容体もしくはグルコース代謝に関連する遺伝子標的よりもクラスとしてのHSDへの選択性に関するもの、または様々なHSDもしくはその特定のアイソフォームに対し、他のHSDもしくはその特定のアイソフォームに比べて選択的であるものの、二つの型の選択性が企図される。
【0023】
一つの態様において、アニリンスルホンアミド誘導体は選択的または非選択的11β-HSD阻害剤として作用することができる。化合物は不活性11-ケトステロイドとそれらの活性ヒドロキシ等価物との相互変換を阻害すると考えられる。本発明は、それによって不活性体の活性体への変換を制御することができ、そのような制御の結果、有用な治療効果が得られる方法を提供する。より具体的には、本発明はヒトにおけるコルチゾンとコルチゾルとの間の相互変換に関するが、それらに限定されるわけではない。
【0024】
別の態様において、アニリンスルホンアミド誘導体はインビボで11β-HSD阻害剤として作用することもできる。
【0025】
別の態様において、本発明のアニリンスルホンアミド誘導体は経口により活性であると考えられる。
【0026】
アニリンスルホンアミド誘導体は、下記の一つまたは複数を含むが、それらに限定されるわけではない、多くの代謝機能の調節のためにも有用である:(i)炭水化物代謝の調節、(ii)タンパク質代謝の調節、(iii)脂質代謝の調節、(iv)正常な成長および/または発生の調節、(v)認知機能への影響、(vi)ストレスおよび鉱質コルチコイド活性に対する抵抗性。
【0027】
加えて、アニリンスルホンアミド誘導体は、肝糖新生を阻害するためにも有用であり、また糖尿病、肥満(エントリピータル(entripetal)肥満を含む)、ニューロン損失、および/または高齢の認知障害における内因性グルココルチコイドの作用を軽減するためにも有効でありうる。したがって、さらなる局面において、本発明は、アニリンスルホンアミド誘導体を投与する患者で一つまたは複数の治療効果を生じることを目的とした方法におけるHSD阻害剤の使用を提供し、該治療効果は肝糖新生の阻害、脂肪組織および筋肉におけるインスリン感受性の増大、ならびにグルココルチコイドにより増強された神経毒性または神経の機能不全もしくは損傷によるニューロン損失/認知障害の予防または軽減からなる群より選択される。
【0028】
本発明は、肝インスリン抵抗性、脂肪組織インスリン抵抗性、筋肉インスリン抵抗性、グルココルチコイドにより増強された神経毒性によるニューロン損失または機能不全、および前述の状態の任意の組み合わせからなる群より選択される状態の治療法であって、それを必要としている患者に、アニリンスルホンアミド誘導体の治療的有効量を投与する段階を含む方法をさらに提供する。
【0029】
本発明のアニリンスルホンアミド誘導体は、式(I)を有する化合物ならびにその薬学的に許容される塩、溶媒和物、立体異性体、またはプロドラッグである。

【0030】
式Iにおいて、R1は-OH、ハロゲンおよび(C1-C8)ハロアルキルからなる群より選択されるメンバーである。R2は(C1-C8)アルキル、(C2-C8)アルケニル、(C2-C8)アルキニル、(C1-C8)アルコキシ、(C1-C8)ハロアルキル、(C2-C8)ヒドロキシアルキルおよび(C3-C8)シクロアルキルからなる群より選択される。R3はハロゲン、(C1-C8)アルキル、(C2-C8)アルケニル、(C2-C8)アルキニル、(C1-C8)アルコキシ、(C2-C8)ヒドロキシアルキルおよび(C3-C8)シクロアルキルからなる群より選択される。
【0031】
置換基R4は水素、ハロゲン、(C1-C8)アルキルおよび(C3-C8)シクロアルキルからなる群より選択されるメンバーである。
【0032】
置換基R5は水素、-OH、ハロゲン、(C1-C8)アルキル、(C1-C8)ハロアルキル、以下の定義のとおりの(C2-C8)ヘテロアルキル、(C3-C8)シクロアルキル、(C3-C8)ヘテロシクロアルキル、C(O)R'、C(O)NR'2、NR'2、NR'C(O)R'、CN、NO2、アリール、およびヘテロアリールからなる群より選択される。
【0033】
一つの態様において、R6はR5と組み合わされて、Lがある場合にはL、R5が結合している窒素原子、およびR6が結合している硫黄を含む5から6員縮合環を形成してもよい。
【0034】
変数Lは直接結合、以下の定義のとおりの(C1-C4)アルキレンおよび(C2-C4)アルケニレンからなる群より選択される。
【0035】
本明細書に記載の態様において、任意のシクロアルキル部分、ヘテロシクロアルキル部分、アリールまたはヘテロアリール部分はハロゲン、-CN、-NO2、(C1-C8)アルキル、(C2-C8)アルケニル、(C2-C8)アルキニル、(C1-C8)アルコキシ、(C1-C8)ハロアルキル、(C2-C8)ヒドロキシアルキル、-C(O)R'、-C(O)OR'、-NR'C(O)OR''、-OR'、-SR'、-OC(O)R'、-C(O)N(R')2、-S(O)R''、-SO2R''、-SO2N(R')2、-N(R')2および-NR'C(O)R'からなる群より選択される1から4つのメンバーで置換されていてもよい。
【0036】
R'の存在はそれぞれ独立にHまたは、(C1-C8)アルキル、(C2-C8)アルケニル、(C2-C8)アルキニル、(C1-C4)アルコキシ(C1-C4)アルキル、(C1-C8)ハロアルキル、(C2-C8)ヒドロキシアルキル、(C3-C8)シクロアルキル、(C3-C8)ヘテロシクロアルキル、ヘテロアリール、アリール、(C3-C8)シクロアルキル(C1-C6)アルキル、(C3-C8)ヘテロシクロアルキル(C1-C6)アルキル、ヘテロアリール(C1-C6)アルキル、およびアリール(C1-C6)アルキルからなる群より選択される非置換メンバーである。いくつかの態様において、二つのR'基は、それらが同じ窒素原子に結合している場合には、それらが結合している窒素原子と組み合わされて複素環またはヘテロアリール基を形成することができる。
【0037】
R''の存在はそれぞれ独立に(C1-C8)アルキル、(C2-C8)アルケニル、(C2-C8)アルキニル、(C1-C4)アルコキシ(C1-C4)アルキル、(C1-C8)ハロアルキル、(C2-C8)ヒドロキシアルキル、(C3-C8)シクロアルキル、(C3-C8)ヘテロシクロアルキル、ヘテロアリール、アリール、(C3-C8)シクロアルキル(C1-C6)アルキル、ヘテロシクリル(C1-C6)アルキル、ヘテロアリール(C1-C6)アルキルおよびアリール(C1-C6)アルキルからなる群より選択される非置換メンバーである。
【0038】
本発明の一つの態様は、式(I)のアニリンスルホンアミド誘導体と薬学的に許容される媒体、担体、賦形剤または希釈剤とを含む薬学的組成物を提供する。
【0039】
別の態様において、本発明は、インスリン依存性糖尿病の治療法であって、それを必要としている患者に、式(I)のアニリンスルホンアミド誘導体の治療的有効量を投与する段階を含む方法を提供する。
【0040】
別の態様において、本発明は、インスリン非依存性糖尿病の治療法であって、それを必要としている患者に、式(I)のアニリンスルホンアミド誘導体の治療的有効量を投与する段階を含む方法を提供する。
【0041】
さらに別の態様において、本発明は、インスリン抵抗性の治療法であって、それを必要としている患者に、式(I)のアニリンスルホンアミド誘導体の治療的有効量を投与する段階を含む方法を提供する。
【0042】
さらに別の態様において、本発明は、肥満の治療法であって、それを必要としている患者に、式(I)のアニリンスルホンアミド誘導体の治療的有効量を投与する段階を含む方法を提供する。
【0043】
別の態様において、本発明は、コルチゾル産生の調節法であって、それを必要としている患者に、式(I)のアニリンスルホンアミド誘導体の治療的有効量を投与する段階を含む方法を提供する。
【0044】
別の態様において、本発明は、肝グルコース産生の調節法であって、それを必要としている患者に、式(I)のアニリンスルホンアミド誘導体の治療的有効量を投与する段階を含む方法を提供する。
【0045】
別の態様において、本発明は、視床下部機能の調節法であって、それを必要としている患者に、式(I)のアニリンスルホンアミド誘導体の治療的有効量を投与する段階を含む方法を提供する。
【0046】
一つの態様において、本発明は、ヒドロキシステロイドデヒドロゲナーゼ仲介性の状態または障害の治療法であって、それを必要としている患者に、式(I)のアニリンスルホンアミド誘導体の治療的有効量を投与する段階を含む方法を提供する。
【0047】
別の態様において、本発明は、細胞におけるヒドロキシステロイドデヒドロゲナーゼの機能の調節法であって、それを必要としている患者に、式(I)のアニリンスルホンアミド誘導体の治療的有効量を投与する段階を含む方法を提供する。
【0048】
さらなる態様において、本発明は、ヒドロキシステロイドデヒドロゲナーゼの調節法であって、それを必要としている患者に、式(I)のアニリンスルホンアミド誘導体の治療的有効量を投与する段階を含む方法を提供する。
【0049】
さらに別の態様において、本発明は、11β-HSD1仲介性の状態または障害の治療法であって、それを必要としている患者に、式(I)のアニリンスルホンアミド誘導体の治療的有効量を投与する段階を含む方法を提供する。
【0050】
さらに別の態様において、本発明は、細胞における11β-HSD1の機能の調節法であって、それを必要としている患者に、式(I)のアニリンスルホンアミド誘導体の治療的有効量を投与する段階を含む方法を提供する。
【0051】
さらなる態様において、本発明は、11β-HSD1の調節法であって、それを必要としている患者に、式(I)のアニリンスルホンアミド誘導体の治療的有効量を投与する段階を含む方法を提供する。
【0052】
一つの態様において、本発明は、11β-HSD2仲介性の状態または障害の治療法であって、それを必要としている患者に、式(I)のアニリンスルホンアミド誘導体の治療的有効量を投与する段階を含む方法を提供する。
【0053】
別の態様において、本発明は、細胞における11β-HSD2の機能の調節法であって、それを必要としている患者に、式(I)のアニリンスルホンアミド誘導体の治療的有効量を投与する段階を含む方法を提供する。
【0054】
さらなる態様において、本発明は、11β-HSD2の調節法であって、それを必要としている患者に、式(I)のアニリンスルホンアミド誘導体の治療的有効量を投与する段階を含む方法を提供する。
【0055】
一つの態様において、本発明は、17β-HSD3仲介性の状態または障害の治療法であって、それを必要としている患者に、式(I)のアニリンスルホンアミド誘導体の治療的有効量を投与する段階を含む方法を提供する。
【0056】
別の態様において、本発明は、細胞における17β-HSD3の機能の調節法であって、それを必要としている患者に、式(I)のアニリンスルホンアミド誘導体の治療的有効量を投与する段階を含む方法を提供する。
【0057】
さらなる態様において、本発明は、17β-HSD3の調節法であって、それを必要としている患者に、式(I)のアニリンスルホンアミド誘導体の治療的有効量を投与する段階を含む方法を提供する。
【0058】
本発明のこれらおよび他の態様は下記の詳細な説明を参照すれば明らかになると思われる。そのために、特定の特許および他の文書を本明細書において引用し、本発明の様々な態様をより具体的に示す。これらの文書はそれぞれその全体が参照により本明細書に組み入れられる。
【0059】
発明の詳細な説明
定義
本明細書において用いられる場合、用語は下記の意味を有する:
【0060】
本明細書において用いられる「アルキル」という用語は、示された数の炭素原子を有する直鎖または分枝鎖飽和炭化水素を意味する。例えば、(C1-C6)アルキル基には、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、sec-ブチル、tert-ブチル、ペンチル、イソペンチル、ネオペンチル、ヘキシル、イソヘキシル、およびネオヘキシルが含まれることになるが、それらに限定されるわけではない。アルキル基は非置換でもよく、または本明細書において後述する一つもしくは複数の置換基で置換されていてもよい。
【0061】
本明細書において用いられる「アルケニル」という用語は、示された数の炭素原子および少なくとも一つの二重結合を有する直鎖または分枝鎖不飽和炭化水素を意味する。(C2-C8)アルケニル基の例には、エチレン、プロピレン、1-ブチレン、2-ブチレン、イソブチレン、sec-ブチレン、1-ペンテン、2-ペンテン、イソペンテン、1-ヘキセン、2-ヘキセン、3-ヘキセン、イソヘキセン、1-ヘプテン、2-ヘプテン、3-ヘプテン、イソヘプテン、1-オクテン、2-オクテン、3-オクテン、4-オクテン、およびイソオクテンが含まれるが、それらに限定されるわけではない。アルケニル基は非置換でもよく、または本明細書において後述する一つもしくは複数の置換基で置換されていてもよい。
【0062】
本明細書において用いられる「アルキニル」という用語は、示された数の炭素原子および少なくとも一つの三重結合を有する直鎖または分枝鎖不飽和炭化水素を意味する。(C2-C8)アルキニル基の例には、アセチレン、プロピン、1-ブチン、2-ブチン、1-ペンチン、2-ペンチン、1-ヘキシン、2-ヘキシン、3-ヘキシン、1-ヘプチン、2-ヘプチン、3-ヘプチン、1-オクチン、2-オクチン、3-オクチン、および4-オクチンが含まれるが、それらに限定されるわけではない。アルキニル基は非置換でもよく、または本明細書において後述する一つもしくは複数の置換基で置換されていてもよい。
【0063】
本明細書において用いられる「アルキレン」という用語は、二価のアルキル基(例えば、二つの他の部分に、典型的には連結基として結合しているアルキル基)を意味する。(C1-C7)アルキレンの例には、-CH2-、-CH2CH2-、-CH2CH2CH2-、-CH2CH2CH2CH2-、-CH2CH2CH2CH2CH2-、-CH2CH2CH2CH2CH2CH2-、および-CH2CH2CH2CH2CH2CH2CH2-、ならびにその分枝型が含まれる。アルキレン基は非置換でもよく、または本明細書において後述する一つもしくは複数の置換基で置換されていてもよい。
【0064】
本明細書において用いられる「アルケニレン」という用語は、二価のアルケン基(例えば、二つの他の部分に、典型的には連結基として結合しているアルケン基)を意味する。(C2-C7)アルケニレンの例には、-CH=CH-、-CH=CHCH2-、-CH=CHCH2CH2-、-CH=CHCH2CH2CH2-、-CH=CHCH2CH2CH2CH2-、および-CH=CHCH2CH2CH2CH2CH2-、ならびにその分枝型および構造異性体が含まれる。アルケニレン基は非置換でもよく、または本明細書において後述する一つもしくは複数の置換基で置換されていてもよい。
【0065】
本明細書において用いられる「アルコキシ」という用語は、示された数の炭素原子を有する式-O-アルキル基を意味する。例えば、(C1-C6)アルコキシ基には、-O-メチル、-O-エチル、-O-プロピル、-O-イソプロピル、-O-ブチル、-O-sec-ブチル、-O-tert-ブチル、-O-ペンチル、-O-イソペンチル、-O-ネオペンチル、-O-ヘキシル、-O-イソヘキシル、および-O-ネオヘキシルが含まれる。
【0066】
本明細書において用いられる「アミノアルキル」という用語は、C1-C6アルキル基の水素原子の一つまたは複数が式-N(Ra)2のアミンで置き換えられており、ここでRaの存在はそれぞれ独立に-Hまたは(C1-C6)アルキルである、アルキル基(典型的には1から6個の炭素原子)を意味する。アミノアルキルの例には、-CH2NH2、-CH2CH2NH2、-CH2CH2CH2NH2、-CH2CH2CH2CH2NH2、-CH2CH2CH2CH2CH2NH2、-CH2CH2CH2CH2CH2CH2NH2、-CH2CH2CH2N(CH3)2、t-ブチルアミノメチル、イソプロピルアミノメチルなどが含まれるが、それらに限定されるわけではない。
【0067】
本明細書において用いられる「アリール」という用語は、6から14員単環式、二環式または三環式芳香族炭化水素環系を意味する。アリール基の例にはフェニルおよびナフチルが含まれる。アリール基は非置換でもよく、または本明細書において後述する一つもしくは複数の置換基で置換されていてもよい。
【0068】
本明細書において用いられる「シクロアルキル」という用語は、3から14員飽和または不飽和非芳香族単環式、二環式または三環式炭化水素環系を意味する。このクラスに含まれるものは、ベンゼン環に縮合されたシクロアルキル基である。代表的シクロアルキル基には、シクロプロピル、シクロブチル、シクロブテニル、シクロペンチル、シクロペンテニル、シクロペンタジエニル、シクロヘキシル、シクロヘキセニル、1,3-シクロヘキサジエニル、シクロヘプチル、シクロヘプテニル、1,3-シクロヘプタジエニル、1,4-シクロヘプタジエニル、-1,3,5-シクロヘプタトリエニル、シクロオクチル、シクロオクテニル、1,3-シクロオクタジエニル、1,4-シクロオクタジエニル、-1,3,5-シクロオクタトリエニル、デカヒドロナフタレン、オクタヒドロナフタレン、ヘキサヒドロナフタレン、オクタヒドロインデン、ヘキサヒドロインデン、テトラヒドロインデン、デカヒドロベンゾシクロヘプテン、オクタヒドロベンゾシクロヘプテン、ヘキサヒドロベンゾシクロヘプテン、テトラヒドロベンゾシクロへプテン、ドデカヒドロヘプタレン、デカヒドロヘプタレン、オクタヒドロヘプタレン、ヘキサヒドロヘプタレン、およびテトラヒドロヘプタレンが含まれるが、それらに限定されるわけではない。シクロアルキル基は非置換でもよく、または本明細書において後述する一つもしくは複数の置換基で置換されていてもよい。
【0069】
本明細書において用いられる「ハロ」という用語は、-F、-Cl、-Brまたは-Iを意味する。
【0070】
本明細書において用いられる「ハロアルキル」という用語は、C1-C6アルキル基の水素原子の一つまたは複数がハロゲン原子で置き換えられており、このハロゲン原子は同じでも異なっていてもよい、C1-C6アルキル基を意味する。ハロアルキル基の例には、トリフルオロメチル、2,2,2-トリフルオロエチル、4-クロロブチル、3-ブロモプロピル、ペンタクロロエチル、および1,1,1-トリフルオロ-2-ブロモ-2-クロロエチルが含まれるが、それらに限定されるわけではない。
【0071】
「ヘテロアルキル」という用語は、それ自体で、または別の用語と組み合わせて、特に明記されない限り、炭素原子と、O、NおよびSからなる群より選択され、ここで窒素および硫黄原子は任意に酸化されていてもよく、窒素ヘテロ原子は任意に4級化されていてもよい、1から3個のヘテロ原子とからなる安定な直鎖もしくは分枝鎖、または環状炭化水素基、あるいはその組み合わせを意味する。ヘテロ原子O、NおよびSはヘテロアルキル基のいかなる位置にあってもよい。例には-CH2-CH2-O-CH3、-CH2-CH2-NH-CH3、-CH2-CH2-N(CH3)-CH3、-CH2-S-CH2-CH3、-CH2-CH2-S(O)-CH3、-CH2-CH2-S(O)2-CH3、および-CH2-CH=N-OCH3が含まれる。二つまでのヘテロ原子は、例えば、-CH2-NH-OCH3のように連続していてもよい。ヘテロアルキル基を指すために(C2-C8)などの接頭辞を用いる場合、炭素の数(この例では2から8)はヘテロ原子も含むことになる。例えば、C2-ヘテロアルキル基には、例えば、-CH2OH(一つの炭素原子および炭素原子に代わる一つのヘテロ原子)および-CH2SHが含まれることになる。
【0072】
ヘテロ原子が酸素であるヘテロアルキル基の定義をさらに例示するために、ヘテロアルキル基はオキシアルキル基である。例えば、(C2-C5)オキシアルキルには、例えば、-CH2-O-CH3(二つの炭素原子および炭素原子に代わる一つの酸素原子を有するC3-オキシアルキル基)、-CH2CH2CH2CH2OHなどが含まれることになる。
【0073】
「ヘテロアルキレン」という用語は、それ自体または別の置換基の一部として、-CH2-CH2-S-CH2CH2-および-CH2-S-CH2-CH2-NH-CH2-によって例示される、ヘテロアルキルから誘導された二価の基を意味する。ヘテロアルキレン基において、ヘテロ原子は鎖の末端のいずれかまたは両方を占有することもできる(例えば、アルキレンオキシ、アルキレンジオキシ、アルキレンアミノ、アルキレンジアミノなど)。さらに、アルキレンおよびヘテロアルキレン連結基について、連結基の配向は示されない。
【0074】
本明細書において用いられる「ヘテロアリール」という用語は、単環式、二環式、および三環式環系を含む、5から14員で、窒素、酸素および硫黄から選択される少なくとも一つのヘテロ原子を有し、かつ少なくとも1個の炭素原子を含む、芳香族複素環を意味する。代表的ヘテロアリールは、トリアゾリル、テトラゾリル、オキサジアゾリル、ピリジル、フリル、ベンゾフラニル、チオフェニル、ベンゾチオフェニル、キノリニル、ピロリル、インドリル、オキサゾリル、ベンゾキサゾリル、イミダゾリル、ベンズイミダゾリル、チアゾリル、ベンゾチアゾリル、イソキサゾリル、ピラゾリル、イソチアゾリル、ピリダジニル、ピリミジニル、ピラジニル、トリアジニル、シンノリニル、フタラジニル、キナゾリニル、ピリミジル、アゼピニル、オキセピニル、キノキサリニルおよびオキサゾリルである。ヘテロアリール基は非置換でもよく、または本明細書において後述する一つもしくは複数の置換基で置換されていてもよい。
【0075】
本明細書において用いられる「ヘテロ原子」という用語は、酸素(O)、窒素(N)、および硫黄(S)を含むことになる。
【0076】
本明細書において用いられる「複素環」という用語は、単環式、二環式、および三環式環系を含む、飽和、不飽和、または芳香族のいずれかであり、窒素、酸素および硫黄から独立に選択され、ここで窒素および硫黄ヘテロ原子は任意に酸化されていてもよく、窒素ヘテロ原子は任意に4級化されていてもよい、1から4個のヘテロ原子を含む、3から14員環系を意味する。二環式および三環式環系はベンゼン環に縮合された複素環またはヘテロアリールを含んでいてもよい。複素環は任意のヘテロ原子または炭素原子を介して結合していてもよい。複素環には前述の定義のヘテロアリールが含まれる。複素環の代表例には、アジリジニル、オキシラニル、チイラニル、トリアゾリル、テトラゾリル、アジリニル、ジアジリジニル、ジアジリニル、オキサジリジニル、アゼチジニル、アゼチジノニル、オキセタニル、チエタニル、ピペリジニル、ピペラジニル、モルホリニル、ピロリル、オキサジニル、チアジニル、ジアジニル、ジオキサニル、トリアジニル、テトラジニル、イミダゾリル、テトラゾリル、ピロリジニル、イソキサゾリル、フラニル、フラザニル、ピリジニル、オキサゾリル、ベンゾキサゾリル、ベンズイソキサゾリル、チアゾリル、ベンズチアゾリル、チオフェニル、ピラゾリル、トリアゾリル、ピリミジニル、ベンズイミダゾリル、イソインドリル、インダゾリル、ベンゾジアゾリル、ベンゾトリアゾリル、ベンゾキサゾリル、ベンズイソキサゾリル、プリニル、インドリル、イソキノリニル、キノリニルおよびキナゾリニルが含まれるが、それらに限定されるわけではない。複素環基は非置換でもよく、または本明細書において後述する一つもしくは複数の置換基で置換されていてもよい。
【0077】
「ヘテロシクロアルキル」という用語は、それ自体または他の用語と組み合わせて、特に明記されない限り、「ヘテロアルキル」の環式型を意味する。したがって、「ヘテロシクロアルキル」という用語は、「ヘテロアルキル」という用語に含まれることになる。加えて、ヘテロ原子は複素環が分子の残りに結合している位置を占めることもできる。ヘテロシクロアルキルの例には1-(1,2,5,6-テトラヒドロピリジル)、1-ピペリジニル、2-ピペリジニル、3-ピペリジニル、4-モルホリニル、3-モルホリニル、テトラヒドロフラン-2-イル、テトラヒドロフラン-3-イル、テトラヒドロチエン-2-イル、テトラヒドロチエン-3-イル、1-ピペラジニル、2-ピペラジニルなどが含まれる。
【0078】
本明細書において用いられる「ヒドロキシアルキル」という用語は、アルキル基の水素原子の一つまたは複数が-OH基で置き換えられている、示された数の炭素原子を有するアルキル基を意味する。ヒドロキシアルキル基の例には、-CH2OH、-CH2CH2OH、-CH2CH2CH2OH、-CH2CH2CH2CH2OH、-CH2CH2CH2CH2CH2OH、-CH2CH2CH2CH2CH2CH2OH、およびその分枝型が含まれるが、それらに限定されるわけではない。
【0079】
アルキル基(ならびにアルキレン、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、シクロアルケニルおよびヘテロシクロアルケニルと呼ばれる基)の置換基は、0から3の範囲の数の、-OR'、=O、=NR'、=N-OR'、-NR'R''、-SR'、-ハロ、-SiR'R''R'''、-OC(O)R'、-C(O)R'、-CO2R'、-CONR'R''、-OC(O)NR'R''、-NR''C(O)R'、-NR'''C(O)NR'R''、-NR'''SO2NR'R''、-NR''CO2R'、-NHC(NH2)=NH、-NR'C(NH2)=NH、-NHC(NH2)=NR'、-S(O)R'、-SO2R'、-SO2NR'R''、-NR''SO2R'、-CNおよび-NO2から選択される様々な基でありえ、0、1または2個の置換基を有する基が好ましい。R'、R''およびR'''はそれぞれ独立に水素、非置換(C1-C8)アルキル、非置換ヘテロ(C1-C8)アルキル、非置換アリールならびに-ハロ、非置換アルキル、非置換アルコキシ、非置換チオアルコキシおよび非置換アリール(C1-C4)アルキルから選択される1から3個の置換基で置換されたアリールを意味する。R'およびR''が同じ窒素原子に結合している場合、これらはそれらが結合している窒素原子と組み合わされて5、6、または7員環を形成することができる。例えば、-NR'R''は1-ピロリジニルおよび4-モルホリニルを含むことになる。典型的には、アルキルまたはヘテロアルキル基は0から3個の置換基を有し、本発明においては2個以下の置換基を有する基が好ましい。アルキルまたはヘテロアルキル基は非置換または一置換でありうる。いくつかの態様において、アルキルまたはヘテロアルキル基は非置換である。前述の置換基の議論から、当業者であれば「アルキル」という用語はトリハロアルキル(例えば、-CF3および-CH2CF3)などの基を含むことが理解されると思われる。
【0080】
アルキルおよびヘテロアルキル基の例示的置換基には、-OR'、=O、-NR'R''、-SR'、-ハロ、-SiR'R''R'''、-OC(O)R'、-C(O)R'、-CO2R'、-C(O)NR'R''、-OC(O)NR'R''、-NR''C(O)R'、-NR''CO2R'、-NR'''SO2NR'R''、-S(O)R'、-SO2R'、-SO2NR'R''、-NR''SO2R'、-CNおよび-NO2が含まれるが、それらに限定されるわけではなく、ここでR'、R''およびR'''は前述の定義のとおりである。典型的置換基は、-OR'、=O、-NR'R''、-ハロ、-OC(O)R'、-CO2R'、-C(O)NR'R''、-OC(O)NR'R''、-NR''C(O)R'、-NR''CO2R'、-NR'''SO2NR'R''、-SO2R'、-SO2NR'R''、-NR''SO2R'-CNおよび-NO2から選択することができる。
【0081】
同様に、アリールおよびヘテロアリール基の置換基も多様で、0から芳香環系の空いた原子価の総数の範囲の数の、-ハロ、-OR'、-OC(O)R'、-NR'R''、-SR'、-R'、-CN、-NO2、-CO2R'、-C(O)NR'R''、-C(O)R'、-OC(O)NR'R''、-NR''C(O)R'、-NR''CO2R'、-NR'''C(O)NR'R''、-NR'''SO2NR'R''、-NHC(NH2)=NH、-NR'C(NH2)=NH、-NH-C(NH2)=NR'、-S(O)R'、-SO2R'、-SO2NR'R''、-NR''SO2R'、-N3、-CH(Ph)2、過フルオロアルコキシおよび過フルオロ(C1-C4)アルキルから選択され;ここでR'、R''およびR'''は水素、非置換(C1-C8)アルキル、非置換ヘテロ(C1-C8)アルキル、非置換アリール、非置換ヘテロアリール、非置換アリール(C1-C4)アルキルおよび非置換アリールオキシ(C1-C4)アルキルから独立に選択される。典型的には、アリールまたはヘテロアリール基は0から3個の置換基を有し、本発明においては2個以下の置換基を有する基が好ましい。本発明の一つの態様において、アリールまたはヘテロアリール基は非置換または一置換である。別の態様において、アリールまたはヘテロアリール基は非置換である。
【0082】
アリールまたはヘテロアリール基におけるアリールまたはヘテロアリール環の隣接原子上の置換基の二つは式-T-C(O)-(CH2)q-U-(式中、TおよびUは独立に-NH-、-O-、-CH2-または一重結合であり、qは0から2の整数である)の置換基で置換されていてもよい。または、アリールまたはヘテロアリール環の隣接原子上の置換基の二つは式-A-(CH2)r-B-(式中、AおよびBは独立に-CH2-、-O-、-NH-、-S-、-S(O)-、-S(O)2-、-S(O)2NR'-または一重結合であり、rは1から3の整数である)の置換基で置換されていてもよい。このように形成された新しい環の一重結合の一つは、二重結合で置き換えられてもよい。または、アリールまたはヘテロアリール環の隣接原子上の置換基の二つは式-(CH2)s-X-(CH2)t-(式中、sおよびtは独立に0から3の整数であり、Xは-O-、-NR'-、-S-、-S(O)-、-S(O)2-、または-S(O)2NR'-である)の置換基で置換されていてもよい。-NR'-および-S(O)2NR'-における置換基R'は水素または非置換(C1-C6)アルキルから選択される。
【0083】
本明細書において用いられる置換基-CO2Hは下記などの生物学的等価性の置換物で置き換えられてもよい:

など。例えば、The Practice of Medicinal Chemistry; Wermuth, C.G., Ed.; Academic Press: New York, 1996; p. 203参照。
【0084】
式Iのアニリンスルホンアミド誘導体は、立体配置、幾何、および配座異性体を含む様々な異性体として、ならびに様々な互変異性体、特に水素原子の結合点が異なるもので存在することもできる。本明細書において用いられる「異性体」という用語は、化合物の互変異性体を含む、アニリンスルホンアミド誘導体のすべての異性体を含むことが意図される。
【0085】
特定のアニリンスルホンアミド誘導体は不斉中心を有し、したがって異なる鏡像異性体およびジアステレオマーで存在してもよい。アニリンスルホンアミド誘導体は光学異性体またはジアステレオマーの形でありうる。したがって、本発明は、光学異性体、ジアステレオマーおよびラセミ混合物を含むその混合物の形の、本明細書に記載のアニリンスルホンアミド誘導体およびそれらの使用を含む。アニリンスルホンアミド誘導体の光学異性体は、不斉合成、キラルクロマトグラフィ、疑似移動床技術または光学活性な分割剤の使用による立体異性体の化学的分離などの公知の技術によって得ることができる。
【0086】
本明細書において用いられ、特に明記されない限り、「立体異性体」という用語は、その化合物の他方の立体異性体を実質的に含まない、化合物の一方の立体異性体を意味する。例えば、一つのキラル中心を有する立体異性体として純粋な化合物は、化合物の反対の鏡像異性体を実質的に含まないことになる。二つのキラル中心を有する立体異性体として純粋な化合物は、化合物の他のジアシテレオマーを実質的に含まないことになる。典型的な立体異性体として純粋な化合物は、約80重量%を越える化合物の一方の立体異性体と、約20重量%未満の化合物の他方の立体異性体、例えば約90重量%を越える化合物の一方の立体異性体と、約10重量%未満の化合物の他方の立体異性体、または約95重量%を越える化合物の一方の立体異性体と、約5重量%未満の化合物の他方の立体異性体、または約97重量%を越える化合物の一方の立体異性体と、約3重量%未満の化合物の他方の立体異性体とを含む。
【0087】
示された構造とその構造に与えられた名称との間に矛盾がある場合、示された構造が支配することに留意すべきである。加えて、構造または構造の一部の立体化学が、例えば、太線、くさび形、または破線で示されていない場合、その構造または構造の一部はそのすべての立体異性体を含むと解釈すべきである。
【0088】
アニリンスルホンアミド誘導体は薬学的に許容される塩の形であってもよい。誘導体の構造に応じて、本明細書において用いられる「薬学的に許容される塩」なる句はアニリンスルホンアミド誘導体の薬学的に許容される有機または無機酸または塩基の塩を意味する。代表的な薬学的に許容される塩には、例えば、酢酸塩、アムソン酸塩(4,4-ジアミノスチルベン-2,2-ジスルホネート)、ベンゼンスルホン酸塩、安息香酸塩、炭酸水素塩、硫酸水素塩、酒石酸水素塩、ホウ酸塩、臭化物、酪酸塩、カルシウム、エデト酸カルシウム、カンシレート、炭酸塩、塩化物、クエン酸塩、クラブラン酸塩、2塩酸塩、エデト酸塩、エジシレート、エストレート、エシレート、フィウナレート、グルセプテート、グルコン酸塩、グルタミン酸塩、グリコリルアルサニレート、ヘキサフルオロリン酸塩、ヘキシルレゾルシネート、ヒドラバミン、臭化水素酸塩、塩酸塩、ヒドロキシナフトエ酸塩、ヨウ化物、イソチオン酸塩、乳酸塩、ラクトビオン酸塩、ラウリン酸塩、リンゴ酸塩、マレイン酸塩、マンデル酸塩、メシレート、メチル臭化物、メチル硝酸塩、メチル硫酸塩、粘液酸塩、ナプシル酸塩、硝酸塩、N-メチルグルカミンアンモニウム塩、3-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸塩、オレイン酸塩、シュウ酸塩、パルミチン酸塩、パモ酸塩(1,1-メテン-ビス-2-ヒドロキシ-3-ナフトエ酸塩、エインボネート(einbonate))、パントテン酸塩、リン酸塩/2リン酸塩、ピクリン酸塩、ポリガラクツロン酸塩、プロピオン酸塩、p-トルエンスルホン酸塩、サリチル酸塩、ステアリン酸塩、塩基性酢酸塩、コハク酸塩、硫酸塩、スルホサリチル酸塩、スラメート、タンニン酸塩、酒石酸塩、テオクル酸塩、トシレート、トリエチオジド、および吉草酸塩などの、アルカリ金属塩、アルカリ土類塩、アンモニウム塩、水溶性および水不溶性塩が含まれる。さらに、薬学的に許容される塩はその構造内に複数の荷電原子を有することもできる。この場合、薬学的に許容される塩は複数の対イオンを有することができる。したがって、薬学的に許容される塩は一つもしくは複数の荷電原子および/または一つもしくは複数の対イオンを有することができる。
【0089】
本明細書において用いられる「単離および精製された形」という用語は、単離された(例えば、合成有機化学反応混合物の他の成分から)時、単離物は単離物重量の少なくとも30%、少なくとも35%、少なくとも40%、少なくとも45%、少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%または少なくとも98%のアニリンスルホンアミド誘導体を含むことを意味する。一つの態様において、単離物は単離物重量の少なくとも95%のアニリンスルホンアミド誘導体を含む。
【0090】
本明細書において用いられる「プロドラッグ」という用語は、生物学的条件下(インビトロまたはインビボで)で加水分解、酸化、またはそれ以外の反応をして、活性化合物、特にアニリンスルホンアミド誘導体を生じることができる、化合物の誘導体を意味する。プロドラッグの例には、生物加水分解可能なアミド、生物加水分解可能なエステル、生物加水分解可能なカルバミン酸エステル、生物加水分解可能な炭酸エステル、生物加水分解可能なウレイド、および生物加水分解可能なリン酸エステル類縁体(例えば、1リン酸エステル、2リン酸エステルまたは3リン酸エステル)などの生物加水分解可能な基を含むアニリンスルホンアミド誘導体の誘導体および代謝物が含まれるが、それらに限定されるわけではない。いくつかの態様において、カルボキシル官能基を有する化合物のプロドラッグはカルボン酸の低級アルキルエステルである。カルボン酸エステルは、分子上の任意のカルボン酸部分をエステル化することにより都合よく形成される。プロドラッグは典型的には、Burger's Medicinal Chemistry and Drug Discovery 6th ed. (Donald J. Abraham ed., 2001, Wiley)およびDesign and Application of Prodrugs (H Bundgaard ed., 1985, Harwood Academic Publishers Gmfh)に記載のものなどの周知の方法を用いて調製することができる。
【0091】
本明細書において用いられる「治療する」、「治療すること」、および「治療」という用語は、疾患または疾患に関連する症状の根絶または改善を意味する。特定の態様において、そのような用語は、疾患を有する患者への一つまたは複数の予防または治療薬の投与による、そのような疾患の蔓延または悪化の最小化を意味する。
【0092】
本明細書において用いられる「予防する」、「予防すること」、および「予防」という用語は、予防または治療薬の投与による、患者における疾患の発症、再発または蔓延の防止を意味する。
【0093】
本明細書において用いられる「有効量」という用語は、疾患の治療もしくは予防における治療的もしくは予防的な恩典を提供する、または疾患に関連する症状を遅延もしくは最小化するのに十分な、アニリンスルホンアミド誘導体または他の活性成分の量を意味する。さらに、アニリンスルホンアミド誘導体に関する治療的有効量とは、疾患の治療または予防における治療的恩典を提供する、治療薬単独、または他の治療法と組み合わせての量を意味する。アニリンスルホンアミド誘導体に関連して用いる場合、この用語は全体の治療法を改善する、疾患の症状もしくは原因を低減もしくは回避する、または別の治療薬の治療的有効性もしくは別の治療薬との相乗性を増強する量を含みうる。
【0094】
本明細書において用いられる「X症候群」とは、高インスリン血症、肥満、高レベルのトリグリセリド、尿酸、フィブリノゲン、低密度LDL粒子およびプラスミノゲン活性化因子阻害剤1(PAI-1)、ならびに低レベルのHDLコレステロールを含む異常の集まりを意味する。X症候群はさらに代謝症候群を含むことになる。
【0095】
「調節する」、「調節」などの用語は、例えば11β-HSD1の機能または活性を増大または低減する、化合物の能力を意味する。本明細書において用いられる「調節」は、その様々な形で、11β-HSD1に関連する活性の阻害、アンタゴニズム、部分アンタゴニズム、活性化、アゴニズムおよび/または部分アゴニズムを含むことが意図される。11β-HSD1阻害剤は、例えば、結合して、刺激を部分的または完全に阻止する、活性化を低減、防止、遅延する、不活化する、脱感作する、またはシグナル伝達をダウンレギュレートする化合物である。11β-HSD1活性化物質は、例えば、結合して、刺激する、活性化を増大、開放、活性化、促進、増強する、感作する、またはシグナル伝達をアップレギュレートする化合物である。11β-HSD1を調節する化合物の能力は、酵素アッセイまたは細胞アッセイにおいて示すことができる。例えば、11β-HSD1の阻害は、コルチゾンのコルチゾルへの変換を阻止することにより、患者のコルチゾルレベルを低下させ、かつ/または患者のコルチゾンレベルを上昇させうる。または、11β-HSD2の阻害は、コルチゾルのコルチゾンへの変換を阻止することにより、患者のコルチゾルレベルを上昇させ、かつ/または患者のコルチゾンレベルを低下させうる。
【0096】
「患者」は、動物(例えば、ウシ、ウマ、ヒツジ、ブタ、ニワトリ、シチメンチョウ、ウズラ、ネコ、イヌ、マウス、ラット、ウサギ、またはモルモット)を含み、一つの態様において、非霊長類または霊長類(例えば、サルおよびヒト)などの哺乳類を含み、別の態様において、ヒトを含む。一つの態様において、患者はヒトである。他の態様において、患者はヒト乳児、小児、青年または成人である。
【0097】
本明細書において用いられる「HSD」という用語は、11-β-ヒドロキシステロイドデヒドロゲナーゼ(11β-HSD)、17-β-ヒドロキシステロイドデヒドロゲナーゼ(17β-HSD)、20-α-ヒドロキシステロイドデヒドロゲナーゼ(20α-HSD)、3-α-ヒドロキシステロイドデヒドロゲナーゼ(3α-HSD)、およびそのすべてのアイソフォームを含むが、それらに限定されるわけではない、一般にはヒドロキシステロイドデヒドロゲナーゼ酵素を意味する。
【0098】
本明細書において用いられる「11β-HSD1」という用語は、11-β-ヒドロキシステロイドデヒドロゲナーゼ1型酵素、その変異体、またはアイソフォームを意味する。11β-HSD1変異体は、天然の11β-HSD1と実質的に相同なタンパク質、すなわち一つまたは複数の天然または非天然に起こるアミノ酸欠失、挿入または置換を有するタンパク質(例えば、11β-HSD1誘導体、相同体および断片)を含む。11β-HSD1変異体のアミノ酸配列は天然11β-HSD1と少なくとも約80%同一、または少なくとも約90%同一、または少なくとも約95%同一である。
【0099】
本明細書において用いられる「11β-HSD2」という用語は、11-β-ヒドロキシステロイドデヒドロゲナーゼ2型酵素、その変異体、またはアイソフォームを意味する。11β-HSD2変異体は、天然の11β-HSD2と実質的に相同なタンパク質、すなわち一つまたは複数の天然または非天然に起こるアミノ酸欠失、挿入または置換を有するタンパク質(例えば、11β-HSD2誘導体、相同体および断片)を含む。11β-HSD2変異体のアミノ酸配列は天然11β-HSD2と少なくとも約80%同一、または少なくとも約90%同一、または少なくとも約95%同一である。(Bart et al., J. Med. Chem., 2002, 45:3813-3815参照)。
【0100】
本明細書において用いられる「17β-HSD3」という用語は、17-β-ヒドロキシステロイドデヒドロゲナーゼ3型酵素、その変異体、またはアイソフォームを意味する。17β-HSD3変異体は、天然の17β-HSD3と実質的に相同なタンパク質、すなわち一つまたは複数の天然または非天然に起こるアミノ酸欠失、挿入または置換を有するタンパク質(例えば、17β-HSD3誘導体、相同体および断片)を含む。17β-HSD3変異体のアミノ酸配列は天然17β-HSD3と少なくとも約80%同一、または少なくとも約90%同一、または少なくとも約95%同一である。
【0101】
本明細書において用いられる「HSD反応性状態または障害」という用語および関連する語句は、ヒドロキシステロイドデヒドロゲナーゼ酵素(HSD)の調節に都合よく反応する状態または障害を意味する。HSD調節への好都合な反応には、疾患および/またはその随伴症状の軽減または抑止、疾患の阻害、すなわち疾患の発生またはその臨床症状の停止または減少、および疾患またはその臨床症状の退行が含まれる。HSD反応性状態または疾患は、HSD調節に完全または部分的に反応性でありうる。HSD反応性状態または障害は、不適当な、例えば、正常よりも低い、または高いHSD活性に関連し、少なくとも部分的にHSD調節に反応性である、またはHSD調節による影響を受ける(例えば、HSD阻害剤は少なくとも一部の患者で患者の健康の幾分かの改善をもたらす)。不適当なHSDの機能活性は、通常はHSDを発現しない細胞におけるHSD発現、HSD発現の低下、またはHSD発現の上昇の結果起こると考えられる。HSD反応性状態または障害には、任意のHSDまたはそのアイソフォームによって仲介される状態または障害が含まれうる。
【0102】
本明細書において用いられる「11β-HSD1反応性状態または障害」という用語および関連する語句は、11β-HSD1活性の調節に都合よく反応する状態または障害を意味する。11β-HSD1調節への好都合な反応には、疾患および/またはその随伴症状の軽減または抑止、疾患の阻害、すなわち疾患の発生またはその臨床症状の停止または減少、および疾患またはその臨床症状の退行が含まれる。11β-HSD1反応性状態または疾患は、11β-HSD1調節に完全または部分的に反応性でありうる。11β-HSD1反応性状態または障害は、不適当な、例えば、正常よりも低い、または高い11β-HSD1活性に関連し、少なくとも部分的に11β-HSD1調節に反応性である、または11β-HSD1調節による影響を受ける(例えば、11β-HSD1阻害剤は少なくとも一部の患者で患者の健康の幾分かの改善をもたらす)。不適当な11β-HSD1の機能活性は、通常は11β-HSD1を発現しない細胞における11β-HSD1発現、11β-HSD1発現の低下、または11β-HSD1発現の上昇の結果起こると考えられる。11β-HSD1反応性状態または障害には、11β-HSD1仲介性の状態または障害が含まれうる。
【0103】
本明細書において用いられる「11β-HSD2反応性状態または障害」という用語および関連する語句は、11β-HSD2活性の調節に都合よく反応する状態または障害を意味する。11β-HSD2調節への好都合な反応には、疾患および/またはその随伴症状の軽減または抑止、疾患の阻害、すなわち疾患の発生またはその臨床症状の停止または減少、および疾患またはその臨床症状の退行が含まれる。11β-HSD2反応性状態または疾患は、11β-HSD2調節に完全または部分的に反応性でありうる。11β-HSD2反応性状態または障害は、不適当な、例えば、正常よりも低い、または高い11β-HSD2活性に関連し、少なくとも部分的に11β-HSD2調節に反応性である、または11β-HSD2調節による影響を受ける(例えば、11β-HSD2阻害剤は少なくとも一部の患者で患者の健康の幾分かの改善をもたらす)。
【0104】
本明細書において用いられる「17β-HSD3反応性状態または障害」という用語および関連する語句は、17β-HSD3活性の調節に都合よく反応する状態または障害を意味する。17β-HSD3調節への好都合な反応には、疾患および/またはその随伴症状の軽減または抑止、疾患の阻害、すなわち疾患の発生またはその臨床症状の停止または減少、および疾患またはその臨床症状の退行が含まれる。17β-HSD3反応性状態または疾患は、17β-HSD3調節に完全または部分的に反応性でありうる。17β-HSD3反応性状態または障害は、不適当な、例えば、正常よりも低い、または高い17β-HSD3活性に関連し、少なくとも部分的に17β-HSD3調節に反応性である、または17β-HSD3調節による影響を受ける(例えば、17β-HSD3阻害剤は少なくとも一部の患者で患者の健康の幾分かの改善をもたらす)。不適当な17β-HSD3の機能活性は、通常は17β-HSD3を発現しない細胞における17β-HSD3発現、17β-HSD3発現の低下、または17β-HSD3発現の上昇の結果起こると考えられる。17β-HSD3反応性状態または障害には、17β-HSD3仲介性の状態または障害が含まれうる。
【0105】
本明細書において用いられる「HSD仲介性状態または障害」という用語および関連する語句は、不適当な、例えば、正常よりも低い、または高いヒドロキシステロイドデヒドロゲナーゼ(HSD)の活性によって特徴づけられる状態または障害を意味する。HSD仲介性状態または障害は、不適当なHSD活性によって完全または部分的に特徴づけられうる。しかし、HSD仲介性状態または障害は、HSDの調節が根元的な状態または障害に幾分かの効果をもたらす(例えば、HSD阻害剤が少なくとも一部の患者で患者の健康の幾分かの改善をもたらす)ものである。
【0106】
本明細書において用いられる「11β-HSD1仲介性状態または障害」という用語および関連する語句は、不適当な、例えば、正常よりも低い、または高い11β-HSD1活性によって特徴づけられる状態または障害を意味する。11β-HSD1仲介性状態または障害は、不適当な11β-HSD1活性によって完全または部分的に特徴づけられうる。しかし、11β-HSD1仲介性状態または障害は、11β-HSD1の調節が根元的な状態または障害に幾分かの効果をもたらす(例えば、11β-HSD1阻害剤が少なくとも一部の患者で患者の健康の幾分かの改善をもたらす)ものである。
【0107】
本明細書において用いられる「11β-HSD2仲介性状態または障害」という用語および関連する語句は、不適当な、例えば、正常よりも低い、または高い11β-HSD2活性によって特徴づけられる状態または障害を意味する。11β-HSD2仲介性状態または障害は、不適当な11β-HSD2活性によって完全または部分的に特徴づけられうる。しかし、11β-HSD2仲介性状態または障害は、11β-HSD2の調節が根元的な状態または障害に幾分かの効果をもたらす(例えば、11β-HSD2阻害剤が少なくとも一部の患者で患者の健康の幾分かの改善をもたらす)ものである。
【0108】
本明細書において用いられる「17β-HSD3仲介性状態または障害」という用語および関連する語句は、不適当な、例えば、正常よりも低い、または高い17β-HSD3活性によって特徴づけられる状態または障害を意味する。17β-HSD3仲介性状態または障害は、不適当な17β-HSD3活性によって完全または部分的に特徴づけられうる。しかし、17β-HSD3仲介性状態または障害は、17β-HSD3の調節が根元的な状態または障害に幾分かの効果をもたらす(例えば、17β-HSD3阻害剤が少なくとも一部の患者で患者の健康の幾分かの改善をもたらす)ものである。
【0109】
下記の略語が本明細書において用いられ、以下に示す定義を有する:DMEMはダルベッコ改変イーグル培地である;Et3Nはトリエチルアミンである;EtOAcは酢酸エチルである;MeOHはメタノールである;MSは質量分析である;NMRは核磁気共鳴である;PBSはリン酸緩衝化食塩水である;SPAはシンチレーション近接アッセイである;THFはテトラヒドロフランである;およびTMSはトリメチルシリルである。
【0110】
本発明の化合物
本発明は、総称して「アニリンスルホンアミド誘導体」と呼ばれる、式(I)の化合物ならびにその薬学的に許容される塩、溶媒和物、立体異性体、またはプロドラッグを提供する。

【0111】
変数R1、R2、R3、R4、R5、R6、およびLは発明の概要において示したとおりに定義される。
【0112】
本明細書に記載の任意の態様と組み合わせて、一つの態様は直接結合であるLを提供する。
【0113】
他の態様において、R5は(C1-C8)アルキルである。例えば、R5は(C1-C3)アルキルでありうる。R5の具体例にはメチル、エチル、およびイソプロピルが含まれるが、それらに限定されるわけではない。一つの態様において、R5はイソプロピルである。
【0114】
さらに他の態様において、R5は(C3-C8)シクロアルキルである。具体的な(C3-C8)シクロアルキル基には、シクロプロピルおよびシクロブチルが含まれるが、それらに限定されるわけではない。
【0115】
他の態様はアリールであるR6を提供する。いくつかの態様において、R6は1から4個の置換基で置換されていてもよいアリールである。したがって、例えば、R6はジクロロ置換フェニル、2-クロロ-5-シアノ-フェニル、2-クロロ-フェニル、または2-クロロ-5-トリフルオロメチル-フェニルでありうる。
【0116】
さらなる態様において、R5は(C1-C8)アルキルおよびハロ-(C1-C8)アルキルから選択され、R6はフェニルおよび置換フェニルから選択される。例えば、R5はメチル、エチルおよびイソプロピルから選択されえ、R6はハロ置換フェニルまたはCN-置換フェニルでありうる。
【0117】
他の態様において、R5はC3-C8シクロアルキル部分であり、R6はフェニルおよび置換フェニルから選択される。これらの態様において、R5はシクロプロピルまたはシクロブチルでありうる。
【0118】
いくつかの態様において、任意に本明細書に記載の任意の他の態様と組み合わせて、R1は-OHである。
【0119】
さらに他の態様において、R2は(C1-C8)ハロアルキルであり、R3は(C1-C8)アルキルである。例えば、(C1-C8)ハロアルキル基はトリフルオロメチルでありうる。(C1-C8)アルキル基の例はメチルである。
【0120】
さらなる態様は、R1が-OHであり、R2がトリフルオロメチルであり、R3がメチルである化合物を提供する。これらの構造上の要求を満たす具体例は、R1、R2、およびR3が、それらが結合している炭素原子と一緒に、下記の式の(S)-トリフルオロメチルカルビノール基となるものである。

【0121】
または、R1、R2、およびR3は、それらが結合している炭素原子と一緒に、下記の式の(R)-トリフルオロメチルカルビノール基となる。

【0122】
アニリンスルホンアミド誘導体は不斉中心を有し、したがって異なる鏡像異性体およびジアステレオマーで存在することができる。本発明は、アニリンスルホンアミド誘導体のすべての光学異性体および立体異性体とその混合物の使用、ならびにそれらを用いる、または含むすべての薬学的組成物および治療法に関する。
【0123】
前述の化合物のラセミ体、ラセミ混合物、および立体異性体、特にジアステレオマー混合物またはジアステレオマーとして純粋な化合物および鏡像異性体または鏡像異性体として純粋な化合物がすべて企図されることに留意すべきである。
【0124】
式Iの化合物の具体例を以下に示す。





【0125】
本発明は、式(I)のアニリンスルホンアミド誘導体と、薬学的に許容される媒体、担体、希釈剤または賦形剤とを含む組成物も提供する。
【0126】
本発明は、単離および精製された形の式(I)のアニリンスルホンアミド誘導体をさらに提供する。
【0127】
本発明は、糖尿病の治療法であって、それを必要としている患者に、式(I)のアニリンスルホンアミド誘導体の治療的有効量を投与する段階を含む方法を提供する。
【0128】
本発明は、肥満の治療法であって、それを必要としている患者に、式(I)のアニリンスルホンアミド誘導体の治療的有効量を投与する段階を含む方法も提供する。
【0129】
本発明は、HSD仲介性状態または障害の治療法であって、それを必要としている患者に、式(I)のアニリンスルホンアミド誘導体の治療的有効量を投与する段階を含む方法をさらに提供する。
【0130】
本発明は、11β-HSD1仲介性状態または障害の治療法であって、それを必要としている患者に、式(I)のアニリンスルホンアミド誘導体の治療的有効量を投与する段階を含む方法をさらに提供する。
【0131】
本発明は、11β-HSD2仲介性状態または障害の治療法であって、それを必要としている患者に、式(I)のアニリンスルホンアミド誘導体の治療的有効量を投与する段階を含む方法をさらに提供する。
【0132】
本発明は、17β-HSD3仲介性状態または障害の治療法であって、それを必要としている患者に、式(I)のアニリンスルホンアミド誘導体の治療的有効量を投与する段階を含む方法をさらに提供する。
【0133】
本発明は、HSD反応性状態または障害の治療法であって、それを必要としている患者に、式(I)のアニリンスルホンアミド誘導体の治療的有効量を投与する段階を含む方法をさらに提供する。
【0134】
本発明は、11β-HSD1反応性状態または障害の治療法であって、それを必要としている患者に、式(I)のアニリンスルホンアミド誘導体の治療的有効量を投与する段階を含む方法をさらに提供する。
【0135】
本発明は、11β-HSD2反応性状態または障害の治療法であって、それを必要としている患者に、式(I)のアニリンスルホンアミド誘導体の治療的有効量を投与する段階を含む方法をさらに提供する。
【0136】
本発明は、17β-HSD3反応性状態または障害の治療法であって、それを必要としている患者に、式(I)のアニリンスルホンアミド誘導体の治療的有効量を投与する段階を含む方法をさらに提供する。
【0137】
式Iのアニリンスルホンアミド誘導体の調製
当業者であれば、特許請求の範囲に示す分子を合成するために利用可能な様々な方法があることを理解すると思われる。一般に、特許請求の範囲に示す化合物を合成するための有用な方法は下記の三つの部分を含み、いかなる順で行ってもよい:スルホンアミド結合の形成、-CR1R2R3基の導入、ならびに-N(LR5)SO2R6基およびR4置換アリール環に結合している官能基の導入または修飾。本発明の化合物構築のために有用な、化合物の断片a、bおよびcへの逆合成的切断を以下に示す。

【0138】
本発明の化合物を調製するために様々な方法を用いることができる(式1〜4)。式1はスルホンアミド結合を形成するための一つの方法を示す。式1の場合、XはClもしくはFなどの適当な基から、またはアミンによる置換のためにスルホニル基を活性化することができる任意の基(例えば、イミダゾールなど)から選択してもよい。

【0139】
式1において言及されるカップリングは有機または無機塩基の使用により、また同様にDMAPなどの触媒により補助することができる。適当なカップリング相手には、塩化スルホニルとアミン、フッ化スルホニルとアミン、RSO2-イミダゾールとアミンが含まれるが、それらに限定されるわけではない。当業者であれば、同様に所望の生成物を与えることになる他の可能な組み合わせがあることを理解すると思われる。
【0140】
L-R5の導入はスルホンアミド結合の形成前(式1)またはスルホンアミド形成後(式2)に達成することができる。後者の場合、スルホンアミド窒素のアルキル化を当業者には公知の一般法を用いて達成することができ、ここでXはハロゲン化物、トリフレート、または求核置換に適した他の基である。式2の反応は有機または無機塩基の使用により補助することができる。

【0141】
-CR1R2R3基の導入は中心カップリング反応の前または後に行うことができ、特許請求される分子調製中の様々な時点でさらに修飾することができる。式3は、-CR1R2R3基をケトンの形で中心カップリング反応の前に導入した後、さらに修飾して本発明の化合物に達する、一つの方法を示す。中心カップリングに続いて、例えば、CF3TMS、MeLi、MeMgBrまたは類似の試薬の添加を介して、CF3-またはCH3-などの求核剤(「Nu」)の付加により-CR1R2R3基の導入が完了する。この後、置換基をさらに修飾して、調製を完了することができる。

【0142】
または、式4に示すとおり、-CR1R2R3基はフリーデル-クラフツのアシル化を介して中心カップリング後に導入することもできる。当業者であれば、この方法はいくつかの置換パターンに特に対応しうることを理解すると思われる。式1、2、および3のようなさらなる修飾により、本発明の化合物が得られる。

【0143】
トリフルオロメチルカルビノール部分の導入は様々な方法を介して達成することができ、そのいくつかを式5〜7に例示する。-CF3基はCF3TMSおよびTBAFを用いてのケトンへの付加により導入することができ、またはCaron et al. (2003) Synthesis 1693-1698に記載されているように、TBAFの4級アンモニウム塩基を式5に示すようなキラル4級塩基で置換して、例えば、一つの鏡像異性体を過剰に生成することもできる。

【0144】
別の有用な方法は、トリフルオロメチルケトンへのアミンまたはアミノアルコール添加剤を介しての、MeLiまたはMeMgBrなどの求核剤のキラル付加である(式6)(例えば、Thompson et al. (1995) Tetrahedron Lett 49:8937-8940参照)。さらに別の有用な方法は、フリーデル-クラフツのアルキル化(式7)で、ビナフトール誘導チタニウム触媒(Ishii et al. (2000) J. Org. Chem 65:1597-1599)、およびキラル銅触媒(Zhuang et al. (2001) J. Org. Chem. 66:1009-1013)などのキラル触媒を用いて光学活性生成物を得る様式で行ってもよい。当業者であれば、この変換のために様々な方法が利用可能であることを理解すると思われる。本発明の任意の特定の化合物の最も効率的な調製のために、当業者であれば-CR1R2R3基導入のタイミングは変動し、所与の化合物の調製における最初、最後、または中間の変換でありうることを理解すると思われる。
【0145】
前述の様々な方法を用いて本発明の化合物を調製したが、そのいくつかを実施例に示す。
【0146】
薬学的組成物
アニリンスルホンアミド誘導体、またはその薬学的に許容される立体異性体、プロドラッグ、塩、溶媒和物、水和物、もしくは包接化合物を含む薬学的組成物および単位用量剤形も本発明に含まれる。本発明の個々の剤形は、経口、粘膜(舌下、口腔内、直腸内、鼻内、または腟内を含む)、非経口(皮下、筋肉内、ボーラス注射、動脈内、または静脈内を含む)、経皮、または局所投与に適していると考えられる。
【0147】
剤形の例には、錠剤;カプレット;ゼラチン軟カプセル剤などのカプセル剤;カシェ剤;トローチ;ロゼンジ;分散剤;坐剤;軟膏;パップ剤(湿布剤);ペースト;散剤;包帯剤;クリーム;硬膏剤;液剤;パッチ;エアロゾル(例えば、鼻スプレーまたは吸入器);ゲル;懸濁剤(例えば、水性もしくは非水性懸濁液、水中油乳剤、または油中水乳濁液)、液剤、発泡組成物、およびエリキシル剤を含む、患者への経口または粘膜投与に適した液体剤形;患者への非経口投与に適した液体剤形;ならびに再構成して患者への非経口投与に適した液体剤形を提供することができる滅菌固体(例えば、結晶またはアモルファス固体)が含まれるが、それらに限定されるわけではない。
【0148】
本発明の剤形の組成、形状、およびタイプは、典型的にはそれらの用途に応じて変動することになる。例えば、炎症または関連疾患の急性治療において用いる剤形は、それが含む一つまたは複数の活性成分を、同じ疾患の慢性治療において用いる剤形よりも多量に含むこともある。同様に、非経口剤形は、それが含む一つまたは複数の活性成分を、同じ疾患または障害を治療するために用いる経口剤形よりも少量で含むこともある。本発明に含まれる具体的剤形がお互いに異なるこれらおよび他の様式は、当業者には容易に明らかになると思われる。例えば、Remington's Pharmaceutical Sciences, 18th ed., Mack Publishing, Easton PA (1990)参照。
【0149】
典型的な薬学的組成物および剤形は、一つまたは複数の担体、賦形剤または希釈剤を含む。適当な賦形剤は薬学の当業者には周知で、適当な賦形剤の非限定例を本明細書に記載する。特定の賦形剤が薬学的組成物または剤形への取り込みに適しているかどうかは、剤形を患者に投与する様式を含むが、それらに限定されるわけではない、当技術分野において周知の様々な因子に依存する。例えば、錠剤などの経口剤形は、非経口剤形における使用に適していない賦形剤を含むこともある。特定の賦形剤の適合性は、剤形中の具体的活性成分にも依存しうる。
【0150】
水はいくつかの化合物の分解を促進することがあるため、本発明は、活性成分を含む無水(例えば、水<1%)薬学的組成物および剤形をさらに含む。例えば、水の添加(例えば、5%)は、貯蔵寿命または製剤の経時安定性などの特徴を調べるために、長期保存を模擬する手段として薬学分野で広く認められている。例えば、Jens T. Carstensen, Drug Stability: Principles & Practice, 2d. Ed., Marcel Dekker, NY, NY, 1995, pp. 379-80参照。実際、水および熱はいくつかの化合物の分解を促進する。このように、水分および/または湿度は製剤の製造、取り扱い、包装、保存、輸送、および使用中に遭遇することが多いため、製剤に対する水の影響は非常に重要となりうる。
【0151】
本発明の無水薬学的組成物および剤形は、無水または低水分含有成分および低水分または低湿度条件を用いて調製することができる。乳糖および一級または二級アミンを含む少なくとも一つの活性成分を含む薬学的組成物および剤形は、製造、包装、および/または保存中の水分および/または湿度との実質的接触が予想される場合には、無水でありうる。
【0152】
無水薬学的組成物は、その無水の性質が維持されるように調製および保存すべきである。したがって、無水組成物は、適当な処方キットに含まれうるような、水への曝露を防止することが知られている材料を用いて包装することができる。適当な包装の例には、密封されたホイル、プラスティック、単位用量容器(例えば、バイアル)、ブリスターパック、およびストリップパックが含まれるが、それらに限定されるわけではない。
【0153】
本発明は、活性成分が分解する速度を低下させる一つまたは複数の化合物を含む薬学的組成物および剤形をさらに含む。本明細書において「安定化剤」と呼ばれるそのような化合物には、アスコルビン酸などの抗酸化剤、pH緩衝剤、または塩緩衝剤が含まれるが、それらに限定されるわけではない。
【0154】
式Iのアニリンスルホンアミド誘導体は、11β-HSD1調節剤、糖尿病の予防もしくは治療薬、糖尿病合併症(網膜症、腎症、神経症、心筋梗塞および動脈硬化症による脳梗塞など)の予防もしくは治療薬、高脂血症の予防もしくは治療薬、肥満、神経変性疾患などの予防もしくは治療薬、または11β-HSD1仲介性疾患の予防もしくは治療薬として、哺乳動物(ヒト、ウマ、マウス、ラット、ウサギ、イヌ、ネコ、ウシ、ブタ、サルなど)に投与することができる。
【0155】
アニリンスルホンアミド誘導体は、疾患の予防または治療を目的として、糖尿病または肥満などの疾患治療のための追加の治療薬と同時に、哺乳動物に投与することができる。したがって、本発明のアニリンスルホンアミド誘導体は、糖尿病および肥満を含むが、それらに限定されるわけではない、多くの疾患の治療または予防のための他の治療薬と組み合わせて投与することができる。
【0156】
治療する疾患および患者の状態に応じて、本発明の化合物を経口、非経口(例えば、筋肉内、腹腔内、静脈内、ICV、大槽内注射もしくは注入、皮下注射または埋込み)、吸入、鼻内、腟内、直腸内、舌下、または局所(topical)(例えば、経皮、局所(local))投与経路で投与してもよく、かつそれぞれの投与経路に適した通常の非毒性の薬学的に許容される担体、補助剤および媒体を含む適当な単位用量製剤で、単独または一緒に製剤してもよい。本発明は、活性成分が決められた期間で放出されるデポー製剤での本発明の化合物の投与も企図する。
【0157】
組み合わせ投与の場合、アニリンスルホンアミド誘導体を、糖尿病、肥満、もしくは他の疾患の治療もしくは予防のために有用な他のもう一つの治療薬と同時に投与してもよく、またはもう一つの治療薬の前もしくは後に投与してもよい。組み合わせ投与の場合、アニリンスルホンアミド誘導体および追加の治療薬を含む薬学的組成物を投与することもできる。または、アニリンスルホンアミド誘導体を含む薬学的組成物と、追加の治療薬を含む薬学的組成物とを、別々に投与してもよい。それぞれの薬学的組成物の投与経路は同じでも異なっていてもよい。
【0158】
組み合わせ投与の場合、アニリンスルホンアミド誘導体を、1回の投与につき50mgから800mgの用量で、1日に数回まで投与してもよい。例えば、1日1回または1日1回未満の投与が企図される。加えて、化合物をより少量で投与してもよい。組み合わせ薬剤は、糖尿病もしくは肥満の予防もしくは治療用に一般に用いられる用量、またはそれよりも少量で投与することができる。
【0159】
賦形剤の量およびタイプと同様、剤形中の活性成分の量および具体的なタイプは、患者に投与する経路などであるが、それらに限定されるわけではない因子に応じて異なることもある。しかし、本発明の典型的剤形は、アニリンスルホンアミド誘導体、またはその薬学的に許容される塩、溶媒和物、包接化合物、水和物、多形もしくはプロドラッグを含む。糖尿病、肥満、緑内障、骨粗鬆症、認知障害、免疫障害、うつまたはヒドロキシステロイドデヒドロゲナーゼの調節に関連する他の状態もしくは障害の治療または予防において、適当な用量レベルは一般に、1日に患者の体重1kgあたり約0.001から約100mgで、1回または複数回で投与することができる。例示的用量レベルは1日に約0.01から約25mg/kg、または1日に約0.05から約10mg/kgでありうる。他の態様において、適当な用量レベルは1日に約0.01から約25mg/kg、1日に約0.05から約10mg/kg、または1日に約0.1から約5mg/kgでありうる。この範囲内で、用量は1日に約0.005から約0.05、約0.05から約0.5または約0.5から約5.0mg/kgでありえ、1日1回の用量で朝に投与するが、典型的には1日を通して食事と共に分割用量で投与する、1日に約0.1mgから約2000mgの範囲内に入る。一つの態様において、1日用量を等しく分割した用量で1日2回投与する。1日用量の範囲は1日に約5mgから約500mg、または1日に約10mgから約200mgの間でありうる。患者を管理する際に、治療は約1mgから約25mgなどの低い用量で開始し、患者の包括的反応に応じて、必要があれば1日に約200mgから約2000mgまで、1回用量または分割用量のいずれかとして増量することができる。
【0160】
多剤療法のために、本発明の化合物の第二の活性成分に対する重量比は変動することがあり、各成分の有効量に依存することになる。一般に、それぞれの有効量を用いる。したがって、例えば、本発明の化合物をNSAIDと組み合わせる場合、本発明の化合物のNSAIDに対する重量比は一般に、約200:1から約1:200などの、約1000:1から約1:1000の範囲となる。本発明の化合物と他の活性成分との組み合わせも一般に前述の範囲内となるが、それぞれの場合に、各活性成分の有効量を用いるべきである。
【0161】
しかし、任意の特定の患者の具体的用量レベルおよび投与頻度は変動することがあり、用いる具体的化合物の活性、その化合物の代謝的安定性および作用期間、年齢、体重、全身の健康、性別、食事、投与の様式および時間、排出速度、薬物組み合わせ、特定の状態の重症度、ならびに治療を受けている宿主を含む様々な因子に依存することになる。
【0162】
経口剤形
経口投与に適した本発明の薬学的組成物は、錠剤(例えば、咀嚼錠)、カプレット、カプセル剤、および液剤(例えば、着香シロップ)などであるが、それらに限定されるわけではない、分離した剤形で提供することができる。そのような剤形はあらかじめ決められた量の活性成分を含み、当業者には周知の製薬法により調製してもよい。一般には、Remington's Pharmaceutical Sciences, l8th ed., Mack Publishing, Easton PA (1990)参照。
【0163】
本発明の典型的な経口剤形は、通常の薬学的調剤技術に従って、活性成分を少なくとも一つの賦形剤と密接混合物中で混合することにより調製する。賦形剤は、投与のために望まれる製剤の形に応じて、多様な形態を取ることができる。例えば、経口液体またはエアロゾル剤形における使用に適した賦形剤には、水、グリコール、油、アルコール、着香剤、保存剤、および着色剤が含まれるが、それらに限定されるわけではない。固体経口剤形(例えば、散剤、錠剤、カプセル剤、およびカプレット)における使用に適した賦形剤の例には、デンプン、糖、微結晶セルロース、希釈剤、造粒剤、滑沢剤、結合剤、および崩壊剤が含まれるが、それらに限定されるわけではない。
【0164】
それらの投与は容易であるため、錠剤およびカプセル剤は最も都合のよい経口単位用量剤形であり、ここでは固体賦形剤が用いられる。望まれる場合には、錠剤を標準の水性または非水性技術によって調製することができる。そのような剤形は任意の製薬法によって調製することができる。一般に、薬学的組成物および剤形は、活性成分を液体担体、微粒子固体担体、または両方と均質かつ密接に混合し、次いで必要があれば生成物を望まれる体裁に成形することにより調製する。
【0165】
例えば、錠剤は圧縮または成形により調製することができる。圧縮錠は、適当な機器で、粉末または顆粒などの流動体の活性成分を、任意に賦形剤と混合して圧縮することにより調製することができる。成形錠は、適当な機器で、不活性液体希釈剤で湿らせた粉末化合物の混合物を成形することにより調製することができる。
【0166】
本発明の経口剤形において用いることができる賦形剤の例には、結合剤、充填剤、崩壊剤、および滑沢剤が含まれるが、それらに限定されるわけではない。薬学的組成物および剤形における使用に適した結合剤には、トウモロコシデンプン、ジャガイモデンプン、または他のデンプン、ゼラチン、アカシアなどの天然および合成ゴム、アルギン酸ナトリウム、アルギン酸、他のアルギン酸塩、粉末トラガカント、ガーゴム、セルロースおよびその誘導体(例えば、エチルセルロース、酢酸セルロース、カルボキシメチルセルロースカルシウム、カルボキシメチルセルロースナトリウム)、ポリビニルピロリドン、メチルセルロース、α化デンプン、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、(例えば、Nos. 2208、2906、2910)、微結晶セルロース、ならびにその混合物が含まれるが、それらに限定されるわけではない。
【0167】
本明細書において開示される薬学的組成物および剤形における使用に適した充填剤の例には、タルク、炭酸カルシウム(例えば、顆粒または粉末)、微結晶セルロース、粉末セルロース、デキストレート、カオリン、マンニトール、ケイ酸、ソルビトール、デンプン、α化デンプン、およびその混合物が含まれるが、それらに限定されるわけではない。本発明の薬学的組成物中の結合剤または充填剤は典型的には薬学的組成物または剤形の約50から約99重量パーセントで存在する。
【0168】
微結晶セルロースの適当な形には、AVICEL-PH-101、AVICEL-PH-103 AVICEL RC-581、AVICEL-PH-105(FMC Corporation, American Viscose Division, Avicel Sales, Marcus Hook, PAから入手可能)として販売されている材料、およびその混合物が含まれるが、それらに限定されるわけではない。具体的結合剤は、AVICEL RC-581として販売されている微結晶セルロースとカルボキシメチルセルロースナトリウムとの混合物である。適当な無水または低水分賦形剤または添加剤には、登録商標AVICEL-PH-103およびStarch 1500 LMが含まれる。
【0169】
水性環境に曝露されると崩壊する錠剤を提供するために、本発明の組成物において崩壊剤を用いる。過剰の崩壊剤を含む錠剤は保存中に崩壊する可能性があるが、崩壊剤が少なすぎるものは所望の速度または所望の条件下で崩壊しないこともある。したがって、多すぎたり、少なすぎて、活性成分の放出を不都合に変えることのない、十分な量の崩壊剤を用いて本発明の固体経口剤形を形成すべきである。用いる崩壊剤の量は製剤のタイプに応じて変動し、当業者には容易に識別することができる。典型的な薬学的組成物は、約0.5から約15重量パーセントの崩壊剤、具体的には約1から約5重量パーセントの崩壊剤を含む。
【0170】
本発明の薬学的組成物および剤形において用いることができる崩壊剤には、寒天、アルギン酸、炭酸カルシウム、微結晶セルロース、クロスカルメロースナトリウム、クロスポビドン、ポラクリリンカリウム、デンプングリコール酸ナトリウム、ジャガイモまたはタピオカデンプン、α化デンプン、他のデンプン、粘土、他のアルギン、他のセルロース、ガム、およびその混合物が含まれるが、それらに限定されるわけではない。
【0171】
本発明の薬学的組成物および剤形において用いることができる滑沢剤には、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、鉱油、軽油、グリセリン、ソルビトール、マンニトール、ポリエチレングリコール、他のグリコール、ステアリン酸、ラウリル硫酸ナトリウム、タルク、硬化植物油(例えば、落花生油、綿実油、ヒマワリ油、ゴマ油、オリーブ油、トウモロコシ油、およびダイズ油)、ステアリン酸亜鉛、オレイン酸エチル、ラウリン酸エチル、寒天、およびその混合物が含まれるが、それらに限定されるわけではない。追加の滑沢剤には、例えば、サイロイドシリカゲル(AEROSIL 200、製造者:Baltimore, MDのW. R. Grace Co.)、合成シリカの凝固エアロゾル(販売者:Plano, TXのDegussa Co.)、CAB-O-SIL(発熱性二酸化ケイ素製品、販売者:Boston, MAのCabot Co.)、およびその混合物が含まれる。少しでも用いる場合には、滑沢剤は典型的には、それらが組み込まれる薬学的組成物または剤形の約1重量パーセント未満の量で用いる。
【0172】
経口投与のために、組成物は約1から約1000ミリグラムの活性成分を含む錠剤の形で提供することができる。他の態様において、組成物は治療する患者の症状に合わせた用量の調節のために、約1.0、約5.0、約10.0、約15.0. 約20.0、約25.0、約50.0、約75.0、約100.0、約150.0、約200.0、約250.0、約300.0、約400.0、約500.0、約600.0、約750.0、約800.0、約900.0、または約1000.0ミリグラムの活性成分を含む錠剤の形で提供される。化合物は1日に1または2回などの1日に1から4回の投与法で投与してもよい。
【0173】
遅延放出剤形
本発明の活性成分は、当業者には周知の制御放出手段または送達装置によって投与することができる。例には、米国特許第3,845,770号;第3,916,899号;第3,536,809号;第3,598,123号;ならびに第4,008,719号、第5,674,533号、第5,059,595号第、第5,591,767号、第5,120,548号、第5,073,543号、第5,639,476号、第5,354,556号、および第5,733,566号に記載のものが含まれ、それぞれ参照により本明細書に組み入れられるが、それらに限定されるわけではない。そのような剤形は、例えば、ヒドロプロピルメチルセルロース、他のポリマーマトリックス、ゲル、透過膜、浸透圧システム、多層コーティング、微粒子、リポソーム、ミクロスフェア、またはその組み合わせを用いて様々な比率の所望の放出特性を提供する、一つまたは複数の活性成分の遅延または制御放出を提供するために用いることができる。本明細書に記載のものを含む、当業者には公知の適当な制御放出製剤は、本発明の活性成分と共に用いるために容易に選択することができる。したがって、本発明は、制御放出に適合させた錠剤、カプセル剤、ゲルキャップ、およびカプレットなどであるが、それらに限定されるわけではない、経口投与に適した単位用量剤形を含む。
【0174】
制御放出製剤は、それらの対応する非制御のもので得られるよりも、薬物療法を改善することができる。理想的には、最適に設計された制御放出製剤の医学的治療における使用は、最短時間で状態を治癒または管理するために用いる最少量の薬物によって特徴づけられる。制御放出製剤の利点には、薬物の活性拡大、投与頻度の低下、および患者のコンプライアンス上昇が含まれる。加えて、制御放出製剤は、作用開始時間または薬物の血中レベルなどの他の特徴に影響をおよぼすために用いることができ、したがって、副(例えば、有害)作用の発生に影響をおよぼすことができる。
【0175】
ほとんどの制御放出製剤は、最初は所望の治療効果をただちに生ずる量の薬物(活性成分)を放出し、次いで長期間にわたってこのレベルの治療または予防効果を維持するために、他の量の薬物を徐々に、かつ持続的に放出するよう設計される。体内で薬物のこの一定レベルを維持するために、薬物は剤形から、代謝され、体から排出される薬物の量を元に戻す速度で放出されなければならない。活性成分の制御放出は、pH、温度、酵素、水、もしくは他の生理的条件または化合物を含むが、それらに限定されるわけではない、様々な条件によって刺激されうる。
【0176】
非経口剤形
非経口剤形は、皮下、静脈内(ボーラス注射を含む)、筋肉内、および動脈内を含むが、それらに限定されるわけではない、様々な経路によって患者に投与することができる。それらの投与は典型的に、汚染に対する患者の自然な防御を回避するため、非経口剤形は無菌であるか、または患者への投与の前に滅菌可能でありうる。非経口剤形の例には、注射用に準備ができている液剤、注射用の薬学的に許容される媒体に溶解または懸濁する準備ができている乾燥製剤、注射用に準備ができている懸濁剤、および乳剤が含まれるが、それらに限定されるわけではない。例えば、ヒトへの投与に適した微粒子を含まない剤形に再構成するのに適した凍結乾燥滅菌組成物。
【0177】
本発明の非経口剤形を提供するために用いることができる適当な媒体は、当業者には周知である。例には、米国薬局方注射用蒸留水;生理食塩液注射、リンガー液、デキストロース注射液、デキストロースおよび生理食塩液注射、ならびに乳酸加リンゲル液などであるが、それらに限定されるわけではない、水性媒体;エチルアルコール、ポリエチレングリコール、およびポリプロピレングリコールなどであるが、それらに限定されるわけではない、水混和性媒体;ならびにトウモロコシ油、綿実油、落花生油、ゴマ油、オレイン酸エチル、ミリスチン酸イソプロピル、および安息香酸ベンジルなどであるが、それらに限定されるわけではない、非水性媒体が含まれるが、それらに限定されるわけではない。
【0178】
本明細書において開示される一つまたは複数の活性成分の溶解性を高める化合物も、本発明の非経口剤形中に組み込むことができる。
【0179】
いくつかの態様において、癌患者の疾患を予防、治療または管理する方法のために用いる非経口剤形。
【0180】
経皮および局所剤形
本発明の経皮および局所剤形には、クリーム、ローション、軟膏、ゲル、液剤、乳剤、懸濁剤、または当業者には公知の他の剤形が含まれるが、それらに限定されるわけではない。例えば、Remington's Pharmaceutical Sciences, 18th eds., Mack Publishing, Easton PA (1990);およびIntroduction to Pharmaceutical Dosage Forms, 4th ed., Lea & Febiger, Philadelphia (1985)参照。経皮剤形には「レザバータイプ」または「マトリックスタイプ」パッチが含まれ、これは皮膚に適用し、特定の期間装着して、所望の量の活性成分を浸透させることができる。
【0181】
本発明に含まれる経皮および局所剤形を提供するために用いることができる、適当な賦形剤(例えば、担体および希釈剤)および他の材料は、薬学の当業者には周知で、所与の薬学的組成物または剤形を適用することになる特定の組織に依存する。この事実を考慮して、典型的な賦形剤には、非毒性で薬学的に許容される、ローション、チンキ剤、クリーム、乳剤、ゲルまたは軟膏を生成するための、水、アセトン、エタノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブタン-1,3-ジオール、ミリスチン酸イソプロピル、パルミチン酸イソプロピル、鉱油、およびその混合物が含まれるが、それらに限定されるわけではない。望まれる場合には、加湿剤または湿潤剤も薬学的組成物および剤形に加えることができる。そのような追加の成分の例は当技術分野において公知である。例えば、Remington's Pharmaceutical Sciences, 18th eds., Mack Publishing, Easton PA (1990)参照。
【0182】
治療する特定の組織に応じて、追加の成分を、本発明の活性成分による治療の前、同時、または後に用いてもよい。例えば、浸透促進剤を用いて活性成分の組織への送達を補助することができる。適当な浸透促進剤には、アセトン;エタノール、オレイル、およびテトラヒドロフリルなどの様々なアルコール;ジメチルスルホキシドなどのアルキルスルホキシド;ジメチルアセトアミド;ジメチルホルムアミド;ポリエチレングリコール;ポリビニルピロリドンなどのピロリドン;コリドン等級(ポビドン、ポリビドン);尿素;ならびにトゥイーン80(ポリソルベート80)およびスパン60(モノステアリン酸ソルビタン)などの様々な水溶性または不溶性糖エステルが含まれるが、それらに限定されるわけではない。
【0183】
薬学的組成物もしくは剤形、または薬学的組成物もしくは剤形を適用する組織のpHも、一つまたは複数の活性成分の送達を改善するために調節してもよい。同様に、溶媒担体の極性、そのイオン強度、または張性も、送達を改善するために調節することができる。一つまたは複数の活性成分の親水性または親油性を都合よく変えて送達を改善するために、ステアリン酸エステルなどの化合物を薬学的組成物または剤形に加えることもできる。これに関して、ステアリン酸エステルは製剤の脂質媒体、乳化剤または界面活性剤、および送達促進または浸透促進剤として役立ちうる。活性成分の異なる塩、水和物または溶媒和物を用いて、得られる組成物の性質をさらに調節することもできる。
【0184】
粘膜剤形および肺送達
本発明の粘膜剤形には、点眼液、噴霧剤およびエアロゾル、または当業者には公知の他の剤形が含まれるが、それらに限定されるわけではない。例えば、Remington's Pharmaceutical Sciences, 18th eds., Mack Publishing, Easton PA (1990);およびIntroduction to Pharmaceutical Dosage Forms, 4th ed., Lea & Febiger, Philadelphia (1985)参照。口腔内の粘膜組織を治療するのに適した剤形は、洗口剤または口内ゲルとして製剤することができる。一つの態様において、エアロゾルは担体を含む。別の態様において、エアロゾルは担体を含まない。
【0185】
本発明の化合物は吸入により肺に直接投与することもできる(例えば、Tong et al.、国際公開公報第97/39745号;Clark et al.、国際公開公報第99/47196を参照されたく、これらは参照により本明細書に組み入れられる)。吸入による投与のために、アニリンスルホンアミド誘導体をいくつかの異なる装置により都合よく肺に送達することができる。例えば、適当な低沸点噴射剤、例えば、ジクロロジフルオロメタン、トリクロロフルオロメタン、ジクロロテトラフルオロエタン、二酸化炭素または他の適当なガスを含むキャニスターを用いる定量噴霧式吸入器(「MDI」)を用いて、アニリンスルホンアミド誘導体を肺に直接送達することができる。MDI装置は3M Corporation、Aventis、Boehringer Ingleheim、Forest Laboratories、Glaxo-Wellcome、Schering PloughおよびVecturaなどのいくつかの供給元から市販されている。
【0186】
または、粉末吸入器(DPI)装置を用いてアニリンスルホンアミド誘導体を肺に投与することができる(例えば、Raleigh et al., Proc. Amer. Assoc. Cancer Research Annual Meeting, 1999, 40, 397を参照されたく、これは参照により本明細書に組み入れられる)。DPI装置は典型的には、容器内で乾燥粉末の霧を発生させ、これを次いで患者が吸入することができる、ガスの爆発などのメカニズムを用いる。DPI装置も当技術分野において周知で、例えば、Fisons、Glaxo-Wellcome、Inhale Therapeutic Systems、ML Laboratories、QdoseおよびVecturaを含むいくつかの供給業者から購入することができる。普及している変形は反復投与DPI(「MDDPI」)で、これは複数回の治療用量の送達を可能にする。MDDPI装置はAstraZeneca、Glaxo Wellcome、IVAX、Schering Plough、SkyePharmaおよびVecturaなどの会社から市販されている。例えば、これらのシステムのために、化合物の粉末混合物と、乳糖またはデンプンなどの適当な粉末基剤とを含む、吸入器または注入器において用いるためのゼラチンのカプセルおよびカートリッジを調製することができる。
【0187】
アニリンスルホンアミド誘導体を肺に送達するために用いることができる別のタイプの装置は、例えば、Aradigm Corporationによって供給される液体噴霧装置である。液体噴霧システムは非常に小さいノズルの孔を用いて、液体製剤をエアロゾル化し、これを次いで肺に直接吸入することができる。
【0188】
一つの態様において、ネブライザー装置を用いて、アニリンスルホンアミド誘導体を肺に送達する。ネブライザーは、例えば、容易に吸入することができる微粒子を生成するために超音波エネルギーを用いて、液体製剤からエアロゾルを生成する(例えば、Verschoyle et al., British J Cancer, 1999, 80, Suppl 2, 96を参照されたく、これは参照により本明細書に組み入れられる)。ネブライザーの例には、Sheffield/Systemic Pulmonary Delivery Ltd.(Armer et al.、米国特許第5,954,047号;van der Linden et al.、米国特許第5,950,619号;van der Linden et al.、米国特許第5,970,974号を参照されたく、これらは参照により本明細書に組み入れられる)、AventisおよびBatelle Pulmonary Therapeuticsによって供給される装置が含まれる。ネブライザー装置によって送達される吸入化合物は、気道・消化管癌(Engelke et al., Poster 342 at American Association of Cancer Research, San Francisco, Calif., Apr. 1-5, 2000)および肺癌(Dahl et al., Poster 524 at American Association of Cancer Research, San Francisco, Calif., April 1-5, 2000)の治療薬として現在試験中である。
【0189】
別の態様において、電気流体力学(「EHD」)エアロゾル装置を用いて、アニリンスルホンアミド誘導体を肺に送達する。EHDエアロゾル装置は電気エネルギーを用いて液体薬物溶液または懸濁液をエアロゾル化する(例えば、Noakes et al.、米国特許第4,765,539号;Coffee、米国特許第4,962,885号;Coffee、国際公開公報第94/12285号;Coffee、国際公開公報第94/14543号;Coffee、国際公開公報第95/26234号、Coffee、国際公開公報第95/26235号、Coffee、国際公開公報第95/32807号を参照されたく、これらは参照により本明細書に組み入れられる)。本発明の製剤の化合物の電気化学的性質は、この薬物を肺にEHDエアロゾル装置を用いて送達する際に最適化するための重要なパラメーターであると考えられ、そのような最適化は当業者であれば日常的に実施している。EHDエアロゾル装置は既存の肺送達技術よりも効率的に薬物を肺に送達しうる。アニリンスルホンアミド誘導体の肺内送達の他の方法は当業者には公知であると思われ、本発明の範囲内である。
【0190】
ネブライザーおよび液体噴霧装置ならびにEHDエアロゾル装置と共に用いるのに適した液体製剤は、典型的には、アニリンスルホンアミド誘導体を薬学的に許容される担体と共に含む。いくつかの態様において、薬学的に許容される担体は、アルコール、水、ポリエチレングリコールまたは過フルオロ炭素などの液体である。任意に、アニリンスルホンアミド誘導体の溶液または懸濁液のエアロゾル特性を変えるために、もう一つの材料を加えてもよい。この材料は、アルコール、グリコール、ポリグリコールまたは脂肪酸などの液体でありうる。エアロゾル装置における使用に適した液体薬物溶液または懸濁液の他の製剤法は当業者には公知である(例えば、Biesalski、米国特許第5,112,598号;Biesalski、第5,556,611号を参照されたく、これらは参照により本明細書に組み入れられる)。本発明の化合物は、例えば、カカオ脂または他のグリセリドなどの通常の坐剤基剤を含む、坐剤または保持浣腸などの直腸または膣組成物に製剤することもできる。
【0191】
前述の製剤に加えて、アニリンスルホンアミド誘導体はデポー製剤として製剤することもできる。そのような長期作用製剤は、埋込み(例えば、皮下または筋肉内)または筋肉内注射により投与することができる。したがって、例えば、化合物は適当なポリマーもしくは疎水性材料(例えば、許容される油中の乳濁液として)またはイオン交換樹脂と共に、あるいは難溶性誘導体、例えば、難溶性の塩として製剤することができる。
【0192】
他の送達系
または、他の薬学的送達系を用いることもできる。リポソームおよび乳剤は、アニリンスルホンアミド誘導体を送達するために用いることができる送達媒体の周知の例である。ジメチルスルホキシドなどの特定の有機溶媒を用いることもできるが、通常はより大きい毒性という犠牲が伴う。本発明の化合物は制御放出系で送達することもできる。一つの態様において、ポンプを用いることができる(Sefton, CRC Crit. Ref Biomed Eng., 1987, 14, 201; Buchwald et al., Surgery, 1980, 88, 507; Saudek et al., N. Engl. J Med, 1989, 321, 574)。別の態様において、ポリマー材料を用いることができる(Medical Applications of Controlled Release, Langer and Wise (eds.), CRC Pres., Boca Raton, Fla. (1974); Controlled Drug Bioavailability, Drug Product Design and Performance, Smolen and Ball (eds.), Wiley, New York (1984); Ranger and Peppas, J Macromol. Sci. Rev. Macromol. Chem., 1983, 23, 61参照; Levy et al., Science 1985, 228, 190; During et al., Ann. Neurol., 1989, 25, 351; Howard et al., 1989, J. Neurosurg. 71, 105も参照されたい)。さらに別の態様において、本発明の化合物の標的、例えば肺の近くに制御放出系を置くこともでき、したがって全身用量のほんの一部しか必要としない(例えば、Goodson, in Medical Applications of Controlled Release, supra, vol. 2, pp. 115 (1984)参照)。他の制御放出系を用いることもできる(例えば、Langer, Science, 1990, 249, 1527参照)。
【0193】
本発明に含まれる粘膜剤形を提供するために用いることができる適当な賦形剤(例えば、担体および希釈剤)および他の材料は薬学の当業者には周知で、所与の薬学的組成物または剤形を投与することになる特定の部位または方法に依存する。この事実を考慮して、典型的な賦形剤には、非毒性かつ薬学的に許容される、水、エタノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブタン-1,3-ジオール、ミリスチン酸イソプロピル、パルミチン酸イソプロピル、鉱油、およびその混合物が含まれるが、それらに限定されるわけではない。そのような追加の成分の例は当技術分野において周知である。例えば、Remington's Pharmaceutical Sciences, 18th eds., Mack Publishing, Easton PA (1990)参照。
【0194】
薬学的組成物もしくは剤形、または薬学的組成物もしくは剤形を適用する組織のpHも、一つまたは複数の活性成分の送達を改善するために調節することができる。同様に、溶媒担体の極性、そのイオン強度、または張性も、送達を改善するために調節することができる。一つまたは複数の活性成分の親水性または親油性を都合よく変えて送達を改善するために、ステアリン酸エステルなどの化合物を薬学的組成物または剤形に加えることもできる。これに関して、ステアリン酸エステルは製剤の脂質媒体、乳化剤または界面活性剤、および送達促進または浸透促進剤として役立ちうる。活性成分の異なる塩、水和物または溶媒和物を用いて、得られる組成物の性質をさらに調節することもできる。
【0195】
アニリンスルホンアミド誘導体の治療的使用
一つの局面において、本発明は、ヒドロキシステロイドデヒドロゲナーゼの調節に関連する状態または障害を治療または予防するための方法であって、そのような状態または障害を有している患者に、本発明の化合物または組成物の治療的有効量を投与することによる方法を提供する。態様の一つのグループにおいて、ヒトまたは他の種の慢性疾患を含む状態および障害を、11β-HSD1などのヒドロキシステロイドデヒドロゲナーゼの調節剤、刺激剤、または阻害剤で治療することができる。
【0196】
糖尿病の治療または予防
糖尿病および糖尿病状態を、アニリンスルホンアミド誘導体の治療的有効量を投与することにより治療または予防することができる。
【0197】
アニリンスルホンアミド誘導体の治療的有効量を投与することにより治療または予防することができる糖尿病の型には、I型糖尿病(若年型糖尿病、インスリン依存性糖尿病すなわちIDDM)、II型糖尿病(インスリン非依存性糖尿病すなわちNIDDM)、異常インスリン症、膵臓障害に関連する糖尿病、他の障害(クッシング症候群、先端巨大症、クロム親和細胞腫、グルカゴノーマ、原発性アルドステロン症、およびソマトスタチン産生腫瘍など)に関連する糖尿病、A型およびB型インスリン抵抗性症候群、脂肪萎縮性糖尿病、およびβ細胞毒素により誘導される糖尿病が含まれる。
【0198】
いくつかの態様において、治療する糖尿病の型はII型糖尿病である。
【0199】
肥満の治療または予防
肥満を、アニリンスルホンアミド誘導体の治療的有効量を投与することにより治療または予防することができる。
【0200】
肥満は、遺伝、環境(例えば、消費するよりも少ないエネルギーを使っている)および調節決定因子を有すると考えられる。肥満には外因性、過インスリン性、過血漿性、甲状腺機能低下性、視床下部性、症候性、小児、上半身、食事性、性機能低下性、単純および中心性肥満、下垂体性肥満ならびに過食症が含まれる。ハイパーリデミア(hyperlidemia)および糖尿病などの代謝障害、ならびに高血圧および冠動脈疾患などの心血管障害は一般に肥満と関連している。
【0201】
肥満による合併症も、アニリンスルホンアミド誘導体の治療的有効量を投与することにより治療または予防することができる。そのような合併症には、睡眠無呼吸、ピックウィック症候群、荷重および非荷重関節の整形外科疾患、ならびに発汗または皮膚分泌増加による皮膚障害が含まれる。
【0202】
他の状態の治療または予防
アニリンスルホンアミド誘導体の治療的有効量を投与することにより治療または予防することができる他の状態には、ヒドロキシステロイドデヒドロゲナーゼまたはその特定のアイソフォームの、阻害などの調節に反応性で、それによりそのような調節剤の投与から利益を得る、いかなる状態も含まれるが、それらに限定されるわけではない。これに関する代表的状態には、X症候群、多嚢胞性卵巣、摂食障害(例えば、食欲不振および過食症)、頭蓋咽頭腫、プラダー-ウィリ症候群、フレーリッヒ症候群、高脂血症、異脂肪血症、高コレステロール血症、高トリグリセリド血症、低HDLレベル、高HDLレベル、高血糖、インスリン抵抗性、高インスリン血症およびクッシング症候群などの代謝障害および関連する心血管危険因子;高血圧、アテローム性動脈硬化症、血管再狭窄、網膜症および腎症などのそれに関連する疾患;神経変性疾患、神経症および筋萎縮などの神経障害;加齢性学習障害、痴呆、神経変性などの認知障害、ならびに重度障害(例えば、パーキンソンまたはアルツハイマー関連痴呆)、軽度障害(例えば、加齢性記憶障害、薬物誘導性認知障害)から障害のない被験者(例えば、一般集団のための認知増強剤)までの範囲の被験者における認知機能の改善のため(Sandeep, et al., PNAS参照、www.pnas.org/cgi/doi/10.1073/pnas.0306996101で電子的に利用可能);前立腺癌、結腸癌、乳癌、良性前立腺肥大症、卵巣癌、子宮癌、および男性偽半陰陽などのアンドロゲンおよび/またはエストロゲン関連障害;子宮内膜症、痴呆、うつ、乾癬、緑内障、骨粗鬆症、ウイルス感染症、炎症性障害、ならびに免疫障害が含まれるが、それらに限定されるわけではない。
【0203】
他の治療薬
一つの態様において、本発明の治療または予防法は、本明細書に開示される疾患または障害を治療または予防するのに有用な別の治療薬の治療的有効量の投与をさらに含む。この態様において、他の治療薬の治療効果が発揮される時期はアニリンスルホンアミド誘導体の治療効果が発揮される時期と重なる。
【0204】
本発明の化合物は、糖尿病、肥満、緑内障、骨粗鬆症、認知障害、免疫障害、うつおよび前述の病状を含む、本発明の化合物が有用な状態または障害の治療、予防、抑制、または改善において有用な他の物質と組み合わせる、または組み合わせて用いることができる。
【0205】
そのような他の物質、または薬物は、そのために一般的に用いられている経路および量で、アニリンスルホンアミド誘導体と同時または逐次投与することができる。一つの態様において、アニリンスルホンアミド誘導体を一つまたは複数の他の薬物と同時に用いる場合、薬学的組成物はそのような薬物を本発明の化合物に加えて含む。したがって、本発明の薬学的組成物には、アニリンスルホンアミド誘導体に加えて、一つまたは複数の他の活性成分または治療薬も含むものが含まれる。
【0206】
一つの態様において、糖尿病の治療または予防のために、アニリンスルホンアミド誘導体を、インスリン、吸入型インスリン(登録商標Exubera)、インスリン様物質、インスリン分泌促進物質、スルホニルウレア(例えば、グリブリド、メグリナチド、グリメピリド、グリクラジド、グリピジド、グリキドン、クロロプロプレスポンシベミド、トルブタミド、アセトヘキサミド、グリコピラミド、カルブタミド、グリボヌリド、グリソキセピド、グリブチアゾール、グリブゾール、グリへキサミド、グリミジン、グリピナミド、フェンブタミド、トルシルアミド、およびトラザミド)、ビグアニド(例えば、メトフォルミン(登録商標Glucophage))、α-グルコシダーゼ阻害剤(例えば、アカルボース、ボグリボース、およびミグリトール)、チアゾリジノン化合物(例えば、ロシグリタゾン(登録商標Avandia)、トログリタゾン(登録商標Rezulin)、シグリタゾン、ピオグリタゾン(登録商標Actos)およびエングリタゾン)、食事性グルコース調節剤(例えば、レパグリニドおよびナテグリニド)およびグルカゴン受容体アンタゴニストなどの抗糖尿病薬を含むが、それらに限定されるわけではない、別の治療薬と共に投与することができる。
【0207】
別の態様において、肥満の治療または予防のために、アニリンスルホンアミド誘導体を、β3アドレナリン受容体アゴニスト、レプチンまたはその誘導体、神経ペプチドY(例えば、NPY5)アンタゴニスト、およびマジンドールを含むが、それらに限定されるわけではない、別の治療薬と共に投与することができる。
【0208】
別々に投与するにせよ、同じ薬学的組成物中で投与するにせよ、アニリンスルホンアミド誘導体と組み合わせてもよい他の治療薬の例には下記が含まれるが、それらに限定されるわけではない:(i)HMG-CoAレダクターゼ阻害剤(例えば、ロバスタチン、シンバスタチン(登録商標Zocor)、プラバスタチン、フルバスタチン、アトルバスタチン(登録商標Lipitor)および他のスタチン)、胆汁酸抑制剤(例えば、コレスチラミンおよびコレスチポール)、ビタミンB3(ニコチン酸、またはナイアシンとしても知られている)、ビタミンB6(ピリドキシン)、ビタミンB12(シアノコバラミン)、フィブリン酸誘導体(例えば、ゲムフィブロジル、クロフィブレート、フェノフィブレート、およびベンザフィブレート)、プロブコール、ニトログリセリン、およびコレステロール吸収の阻害剤(例えば、β-シトステロールおよびメリナミドなどのアシルCoA-コレステロールアシルトランスフェラーゼ(ACAT)阻害剤)、HMG-CoAシンターゼ阻害剤、スクアレンエポキシダーゼ阻害剤およびスクアレンシンターゼ阻害剤などのコレステロール低下剤;(ii)血栓溶解剤(例えば、ストレプトキナーゼ、アルテプラーゼ、アニストレプラーゼおよびレテプラーゼ)、ヘパリン、ヒルジンおよびワルファリン誘導体、β-遮断薬(例えば、アテノロール)、βアドレナリンアゴニスト(例えば、イソプロテレノール)、アンギオテンシンIIアンタゴニスト、ACE阻害剤および血管拡張薬(例えば、ニトロプルシドナトリウム、塩酸ニカルジピン、ニトログリセリンおよびエナロプリラト)などの抗血栓剤;(iii)PPARアゴニスト、例えば、PPARγおよびPPARδアゴニスト;(iv)DPアンタゴニスト;(v)ワセリンおよびラノリンなどの潤滑剤または皮膚軟化剤、角質溶解剤、ビタミンD3誘導体(例えば、カルシポトリエンおよびカルシポトリオール(登録商標Dovonex))、PUVA、アントラリン(登録商標Drithrocreme)、エトレチネート(登録商標Tegison)、およびイソトレチノイン;(vi)コリン作用性アゴニスト(例えば、ピロカルピンおよびカルバコール)、コリンエステラーゼ阻害剤(例えば、フィゾスチグミン、ネオスチグミン、デマカリウム、ヨウ化エコチオフェートおよびイソフルオロフェート)、炭酸脱水酵素阻害剤(例えば、アセタゾラミド、ジクロルフェナミド、メタゾラミド、エトキシゾラミド、およびドルゾラミド)、非選択的アドレナリンアゴニスト(例えば、エピネフリンおよびジピベフリン)、α2-選択的アドレナリンアゴニスト(例えば、アプラクロニジンおよびブリモニジン)、β-遮断薬(例えば、チモロール、ベタゾロール、レボブノロール、カルテオロールおよびメチプラノロール)、プロスタグランジン類縁体(例えば、ラタノプロスト)ならびに浸透圧利尿薬(例えば、グリセリン、マンニトールおよびイソソルビド);ベクロメタゾン、メチルプレドニゾロン、ベタメタゾン、プレドニゾン、プレニゾロン、デキサメタゾン、フルチカゾンおよびヒドロコルチゾンなどのコルチコステロイド、ならびにブデソニドなどのコルチコステロイド類縁体などの緑内障治療薬;(vii)シクロスポリン(シクロスポリンA、登録商標Sandimmune、登録商標Neoral)、タクロリムス(FK-506、登録商標Prograf)、ラパマイシン(シロリムス、登録商標Rapamune)および他のFK-506型免疫抑制剤、ならびにミコフェノール酸エステル、例えば、ミコフェノール酸モフェチル(登録商標CellCept)などの免疫抑制剤;(viii)プロピオン酸誘導体(例えば、アルミノプロフェン、ベノキサプロフェン、ブクロクス酸、カルプロフェン、フェンブフェン、フェノプロフェン、フルプロフェン、フルルビプロフェン、イブプロフェン、インドプロフェン、ケトプロフェン、ミロプロフェン、ナプロキセン、オキサプロジン、ピルプロフェン、プラノプロフェン、スプロフェン、チアプロフェン酸およびチオキサプロフェン)、酢酸誘導体(例えば、インドメタシン、アセメタシン、アルクロフェナク、クリダナク、ジクロフェナク、フェンクロフェナク、フェンクロズ酸、フェンチアザク、フロフェナク、イブフェナク、イソキセパク、オキシピナク、スリンダク、チオピナク、トルメチン、ジドメタシンおよびゾメピラク)、フェナム酸誘導体(例えば、フルフェナム酸、メクロフェナム酸、メフェナム酸、ニフルム酸およびトルフェナム酸)、ビフェニルカルボン酸誘導体(例えば、ジフルニサルおよびフルフェニサル)、オキシカム(例えば、イソキシカム、ピロキシカム、スドキシカムおよびテノキシカン)、サリチル酸エステル(例えば、アセチルサリチル酸およびスルファサラジン)、ならびにピラゾロン(例えば、アパゾン、ベズピペリロン、フェプラゾン、モフェブタゾン、オキシフェンブタゾンおよびフェニルブタゾン)などの非ステロイド性抗炎症剤(NSAID);(ix)セレコキシブ(登録商標Celebrex)およびロフェコキシブ(登録商標Vioxx)などのシクロオキシゲナーゼ-2(COX-2)阻害剤;(xi)ホスホジエステラーゼIV型(PDE-IV)の阻害剤;(xii)コデイン、フェンタニル、ヒドロモルフォン、レボルファノール、メペリジン、メサドン、モルフィン、オキシコドン、オキシモルフォン、プロポキシフェン、ブプレノルフィン、ブトルファノール、デゾシン、ナルブフィンおよびペンタゾシンなどのオピオイド鎮痛剤;(xiii)肝保護物質;および(xiv)5-アミノサリチル酸およびそのプロドラッグなどの他の化合物。
【0209】
本発明の化合物の第二の活性成分に対する重量比は変動することがあり、各成分の有効用量に依存することになる。一般に、それぞれの有効用量を用いることになる。したがって、例えば、アニリンスルホンアミド誘導体をNSAIDと組み合わせる場合、本発明の化合物のNSAIDに対する重量比は一般に、約200:1から約1:200などの約1000:1から約1:1000の範囲となる。アニリンスルホンアミド誘導体と他の活性成分との組み合わせも、一般には前述の範囲内に入ることになるが、それぞれの場合に、各活性成分の有効用量を用いるべきである。
【0210】
キット
本発明は、本発明のアニリンスルホンアミド誘導体または組成物の患者への投与を単純化することができるキットを含む。
【0211】
本発明の典型的キットはアニリンスルホンアミド誘導体の単位用量を含む。一つの態様において、単位用量剤形は、アニリンスルホンアミド誘導体の治療的有効量と薬学的に許容される媒体とを含む、無菌でありうる容器に含まれる。別の態様において、単位用量剤形は、アニリンスルホンアミド誘導体の治療的有効量を凍結乾燥物または薬学的に許容される塩として含む容器に含まれる。この場合、キットは、凍結乾燥物の再構成または塩の溶解のために有用な溶液を含む別の容器をさらに含むことができる。キットは、アニリンスルホンアミド誘導体の使用のためにラベルまたは印刷した説明書も含むことができる。
【0212】
本発明のキットは、逐次、別々、または同時に投与することができる第二の治療薬を含んでいてもよい。そのような第二の治療薬の非限定例は本明細書において前述している。
【0213】
さらなる態様において、キットは本発明の組成物の単位用量剤形を含む。
【0214】
本発明のキットは、本発明のアニリンスルホンアミド誘導体または組成物の単位用量剤形を投与するために有用な、一つまたは複数の装置をさらに含むこともできる。そのような装置の例には、単位用量剤形を任意に含む、シリンジ、点滴袋、パッチまたは浣腸が含まれるが、それらに限定されるわけではない。
【0215】
本発明は、本発明の少数の局面の例示として意図される、実施例において開示される特定の態様による範囲に限定されるものではなく、機能的に等価のいかなる態様も本発明の範囲内である。事実、本明細書に示され、記載されているものに加えて、本発明の様々な変更は当業者には明らかになると思われ、添付の特許請求の範囲内に入ることが意図される。このために、一つまたは複数の水素原子またはメチル基は、そのような有機化合物の認められた簡略表記に一致する構造式から省略してもよく、有機化学の当業者であればそれらの存在を容易に理解することに留意すべきである。
【0216】
実施例
本発明の式で表されるアニリンスルホンアミド誘導体およびその調製法を以下の実施例において詳細に説明するが、これらは本発明を限定すると解釈されるべきではない。
【0217】
実施例1:N-イソプロピル-N-[4-(1,1,1-トリフルオロ-2-ヒドロキシプロパン-2-イル)フェニル]ベンゼンスルホンアミド(1)の調製

【0218】
(a)1,1,1-トリフルオロ-2-(4-ニトロフェニル)プロパン-2-オール
THF(150mL)中の4'-ニトロアセトフェノン(15.0g、90.8mmol、1.0当量)およびTMS-CF3(39.9mL、272mmol、3.0当量)の溶液を0℃でフッ化テトラブチルアンモニウム(45.0mL、THF中1.0M、45.0mmol、0.5当量)により処理した。反応混合物を1時間撹拌し、希釈(EtOAc)し、洗浄(1×H2Oおよび1×食塩水)し、乾燥(Na2SO4)して、減圧下で濃縮した。残渣のフラッシュクロマトグラフィ(SiO2、20〜25%EtOAc/ヘキサン、勾配溶出)により生成物を黄色固体で得た。
【0219】
(b)2-(4-アミノフェニル)-1,1,1-トリフルオロプロパン-2-オール(i)
EtOH(300mL)中の段階(a)のとおりに調製した1,1,1-トリフルオロ-2-(4-ニトロフェニル)プロパン-2-オール(19.5g、82.9mmol、1.0当量)の溶液をSnCl2(78.6g、415mmol、5.0当量)で処理した。70℃で2時間撹拌した後、反応混合物を減圧下で濃縮し、希釈(EtOAc)し、洗浄(3×1N NaOH水溶液および1×食塩水)した。有機抽出物を乾燥(Na2SO4)し、減圧濃縮して、生成物を黄色固体で得た。
【0220】
(c)1,1,1-トリフルオロ-2-[4-(イソプロピルアミノ)フェニル]プロパン-2-オール(ii)
CH3CN(90mL)中の上の段階(b)で調製した2-(4-アミノフェニル)-1,1,1-トリフルオロプロパン-2-オール(8.80g、42.9mmol、1.0当量)およびアセトン(15.7mL、215mmol、5.0当量)の溶液を0℃でNaBH3CN(13.5g、215mmol、5.0当量)により処理した。反応混合物を0℃で10分間撹拌し、AcOH(8.1mL、141mmol、3.3当量)で処理し、25℃で2時間撹拌した。反応混合物をAcOH(8.1mL、141mmol、3.3当量)で再度処理し、28時間撹拌した。反応を停止(1M NaOH水溶液)し、抽出(EtOAc)し、乾燥(Na2SO4)して、減圧下で濃縮した。残渣のフラッシュクロマトグラフィ(SiO2、1%の28%NH3水溶液を含む5〜10%MeOH/CH2Cl2、勾配溶出)により生成物を黄色泡状物で得た。
【0221】
(d)N-イソプロピル-N-[4-(1,1,1-トリフルオロ-2-ヒドロキシプロパン-2-イル)フェニル]ベンゼンスルホンアミド(1)
CH2Cl2(1.0mL)中の上の段階(c)で調製した1,1,1-トリフルオロ-2-[4-(イソプロピルアミノ)フェニル]プロパン-2-オール(40mg、0.16mmol、1.0当量)および塩化ベンゼンスルホニル(30mg、0.16mmol、1.0当量)の溶液をピリジン(39μL、0.48mmol、3.0当量)で処理した。25℃で2日間撹拌した後、反応混合物を希釈(EtOAc)し、洗浄(1×1M HCl水溶液、1×飽和NaHCO3、および1×食塩水)した。有機物を乾燥(Na2SO4)して減圧下で濃縮した。残渣のフラッシュクロマトグラフィ(SiO2、20%EtOAc/ヘキサン)により生成物を淡黄色固体で得た。

【0222】
実施例2:2-クロロ-N-イソプロピル-N-[4-(1,1,1-トリフルオロ-2-ヒドロキシプロパン-2-イル)フェニル]ベンゼンスルホンアミド(2)の調製

【0223】
実施例1で前述した段階(a)、(b)、(c)、および(d)に従うが、段階(d)の塩化ベンゼンスルホニルの代わりに塩化2-クロロベンゼンスルホニルを用いて、2-クロロ-N-イソプロピル-N-[4-(1,1,1-トリフルオロ-2-ヒドロキシプロパン-2-イル)フェニル]ベンゼンスルホンアミド(2)を調製した。ラセミ生成物をキラルHPLCで分割して光学異性体2aおよび2bを得た。

Chiralpak AD-H内径20mm×250mm、5micカラム(Daicel Chemical Industries LTD)で流速18mL/分、溶離剤として5%イソプロピルアルコール/ヘキサンを用いた。完全な分割は一回の注入あたりラセミ体30mgまでで得られた。
【0224】
実施例3:2,3-ジクロロ-N-イソプロピル-N-[4-(1,1,1-トリフルオロ-2-ヒドロキシプロパン-2-イル)フェニル]ベンゼンスルホンアミド(3)の調製

【0225】
実施例1で前述した段階(a)、(b)、(c)、および(d)に従うが、段階(d)の塩化ベンゼンスルホニルの代わりに塩化2,3-ジクロロベンゼンスルホニルを用いて、2,3-ジクロロ-N-イソプロピル-N-[4-(1,1,1-トリフルオロ-2-ヒドロキシプロパン-2-イル)フェニル]ベンゼンスルホンアミド(3)を調製した。ラセミ生成物をキラルHPLCで分割して光学異性体3aおよび3bを得た。

Chiralpak AS-H内径20mm×250mm、5micカラム(Daicel Chemical Industries LTD)で流速10mL/分、溶離剤として10%イソプロピルアルコール/ヘキサンを用いた。完全な分割は一回の注入あたりラセミ体30mgまでで得られた。
【0226】
実施例4:2-フルオロ-N-イソプロピル-N-[4-(1,1,1-トリフルオロ-2-ヒドロキシプロパン-2-イル)フェニル]ベンゼンスルホンアミド(4)の調製

【0227】
実施例1で前述した段階(a)、(b)、(c)、および(d)に従うが、段階(d)の塩化ベンゼンスルホニルの代わりに塩化2-フルオロベンゼンスルホニルを用いて、2-フルオロ-N-イソプロピル-N-[4-(1,1,1-トリフルオロ-2-ヒドロキシプロパン-2-イル)フェニル]ベンゼンスルホンアミド(4)を調製した。

【0228】
実施例5:2,6-ジクロロ-N-イソプロピル-N-[4-(1,1,1-トリフルオロ-2-ヒドロキシプロパン-2-イル)フェニル]ベンゼンスルホンアミド(5)の調製

【0229】
実施例1で前述した段階(a)、(b)、(c)、および(d)に従うが、段階(d)の塩化ベンゼンスルホニルの代わりに塩化2,6-ジクロロベンゼンスルホニルを用いて、2,6-ジクロロ-N-イソプロピル-N-[4-(1,1,1-トリフルオロ-2-ヒドロキシプロパン-2-イル)フェニル]ベンゼンスルホンアミド(5)を調製した。

【0230】
実施例6:2-クロロ-4-シアノ-N-イソプロピル-N-[4-(1,1,1-トリフルオロ-2-ヒドロキシプロパン-2-イル)フェニル]ベンゼンスルホンアミド(6)の調製

【0231】
実施例1で前述した段階(a)、(b)、(c)、および(d)に従うが、段階(d)の塩化ベンゼンスルホニルの代わりに塩化2-クロロ-4-シアノベンゼンスルホニルを用いて、2-クロロ-4-シアノ-N-イソプロピル-N-[4-(1,1,1-トリフルオロ-2-ヒドロキシプロパン-2-イル)フェニル]ベンゼンスルホンアミド(6)を調製した。

【0232】
実施例7:2,5-ジクロロ-N-イソプロピル-N-[4-(1,1,1-トリフルオロ-2-ヒドロキシプロパン-2-イル)フェニル]ベンゼンスルホンアミド(7)の調製

【0233】
(a)2,5-ジクロロ-N-[4-(1,1,1-トリフルオロ-2-ヒドロキシプロパン-2-イル)フェニル]ベンゼンスルホンアミド
CH2Cl2(20mL)中の上の実施例1、段階(b)で調製した2-(4-アミノフェニル)-1,1,1-トリフルオロプロパン-2-オール(i)(1.00g、4.87mmol、1.0当量)および塩化2,5-ジクロロベンゼンスルホニル(1.21g、4.87mmol、1.0当量)の溶液をピリジン(1.18mL、14.6mmol、3.0当量)で処理した。1.5時間撹拌した後、溶液を希釈(EtOAc)し、洗浄(1×1M HCl水溶液、1×飽和NaHCO3水溶液、および1×食塩水)した。有機物を乾燥(Na2SO4)し、減圧下で濃縮した。残渣のフラッシュクロマトグラフィ(SiO2、30%EtOAc/ヘキサン)により生成物を黄色固体で得た。
【0234】
(b)2,5-ジクロロ-N-イソプロピル-N-[4-(1,1,1-トリフルオロ-2-ヒドロキシプロパン-2-イル)フェニル]ベンゼンスルホンアミド(7)
DMF(2.0mL)中の上の段階(a)で調製した2,5-ジクロロ-N-[4-(1,1,1-トリフルオロ-2-ヒドロキシプロパン-2-イル)フェニル]ベンゼンスルホンアミド(103mg、0.25mmol、1.0当量)の溶液をヨウ化イソプロピル(250μL、2.50mmol、10当量)およびK2CO3(346mg、2.50mmol、10当量)で処理した。75℃で1時間撹拌した後、溶液を希釈(EtOAc)して、洗浄(3×食塩水)した。有機物を乾燥(Na2SO4)し、減圧下で濃縮した。残渣のフラッシュクロマトグラフィ(SiO2、25%EtOAc/ヘキサン)により生成物7を淡黄色固体で得た。
【0235】
(c)ラセミ生成物をキラルHPLCで分割して光学異性体7aおよび7bを得た。

Chiralpak AS-H内径20mm×250mm、5micカラム(Daicel Chemical Industries LTD)で流速18mL/分、溶離剤として7%イソプロピルアルコール/ヘキサンを用いた。完全な分割は一回の注入あたりラセミ体30mgまでで得られた。
【0236】
実施例8:N-tert-ブチル-2,5-ジクロロ-N-[4-(1,1,1-トリフルオロ-2-ヒドロキシプロパン-2-イル)フェニル]ベンゼンスルホンアミド(8)の調製

【0237】
実施例7で前述した段階(b)に従うが、ヨウ化イソプロピルの代わりに臭化tert-ブチルを用いて、N-tert-ブチル-2,5-ジクロロ-N-[4-(1,1,1-トリフルオロ-2-ヒドロキシプロパン-2-イル)フェニル]ベンゼンスルホンアミド(8)を調製した。

【0238】
実施例9:2-クロロ-N-(シクロプロピルメチル)-N-[4-(1,1,1-トリフルオロ-2-ヒドロキシプロパン-2-イル)フェニル]ベンゼンスルホンアミド(9)の調製

【0239】
実施例7で前述した段階(a)および(b)に従うが、段階(a)の塩化2,5-ジクロロベンゼンスルホニルの代わりに塩化2-クロロベンゼンスルホニルと、段階(b)のヨウ化イソプロピルの代わりに(ブロモメチル)シクロプロパンを用いて、2-クロロ-N-(シクロプロピルメチル)-N-[4-(1,1,1-トリフルオロ-2-ヒドロキシプロパン-2-イル)フェニル]ベンゼンスルホンアミド(9)を調製した。

【0240】
実施例10:2,5-ジクロロ-N-イソブチル-N-[4-(1,1,1-トリフルオロ-2-ヒドロキシプロパン-2-イル)フェニル]ベンゼンスルホンアミド(10)の調製

【0241】
実施例7で前述した段階(b)に従うが、ヨウ化イソプロピルの代わりに1-ブロモ-2-メチルプロパンを用いて、2,5-ジクロロ-N-イソブチル-N-[4-(1,1,1-トリフルオロ-2-ヒドロキシプロパン-2-イル)フェニル]ベンゼンスルホンアミド(10)を調製した。

【0242】
実施例11:2-クロロ-N-イソプロピル-5-ニトロ-N-[4-(1,1,1-トリフルオロ-2-ヒドロキシプロパン-2-イル)フェニル]ベンゼンスルホンアミド(11)の調製

【0243】
実施例7で前述した段階(a)および(b)に従うが、段階(a)の塩化2,5-ジクロロベンゼンスルホニルの代わりに塩化2-クロロ-5-ニトロベンゼンスルホニルを用いて、2-クロロ-N-イソプロピル-5-ニトロ-N-[4-(1,1,1-トリフルオロ-2-ヒドロキシプロパン-2-イル)フェニル]ベンゼンスルホンアミド(11)を調製した。

【0244】
実施例12:5-アミノ-2-クロロ-N-イソプロピル-N-[4-(1,1,1-トリフルオロ-2-ヒドロキシプロパン-2-イル)フェニル]ベンゼンスルホンアミド(12)の調製

【0245】
EtOH(40mL)中の2-クロロ-N-イソプロピル-5-ニトロ-N-[4-(1,1,1-トリフルオロ-2-ヒドロキシプロパン-2-イル)フェニル]ベンゼンスルホンアミド(11)(704mg、1.50mmol、1.0当量)の溶液をSnCl2-2H2O(1.70g、7.50mmol、5.0当量)で処理した。75℃で2時間撹拌した後、反応混合物を減圧下で濃縮し、希釈(EtOAc)して、洗浄(3×1M NaOH水溶液および1×食塩水)した。有機物を乾燥(Na2SO4)し、減圧下で濃縮した。残渣のフラッシュクロマトグラフィ(SiO2、30〜40%EtOAc/ヘキサン、勾配溶出)により生成物を白色泡状物で得た。

【0246】
実施例13:5-ブロモ-2-クロロ-N-イソプロピル-N-[4-(1,1,1-トリフルオロ-2-ヒドロキシプロパン-2-イル)フェニル]ベンゼンスルホンアミド(13)の調製

【0247】
CH3CN(6.0mL)中の5-アミノ-2-クロロ-N-イソプロピル-N-[4-(1,1,1-トリフルオロ-2-ヒドロキシプロパン-2-イル)フェニル]ベンゼンスルホンアミド(12)(287mg、0.66mmol、1.0当量)およびCuBr2(294mg、1.32mmol、2.0当量)の溶液を亜硝酸イソアミル(180μL、1.32mmol、2.0当量)により0℃で処理した。25℃で1時間撹拌した後、溶液を希釈(EtOAc)して、洗浄(3×食塩水)した。有機物を乾燥(Na2SO4)し、減圧下で濃縮した。残渣のフラッシュクロマトグラフィ(SiO2、20%EtOAc/ヘキサン)により生成物を白色固体で得た。

【0248】
実施例14:2-クロロ-N-エチル-N-[4-(1,1,1-トリフルオロ-2-ヒドロキシプロパン-2-イル)フェニル]ベンゼンスルホンアミド(14)の調製

【0249】
(a)4-(1,1,1-トリフルオロ-2-ヒドロキシプロパン-2-イル)フェニルカルバミン酸tert-ブチル
THF(100mL)中の上の実施例1、段階(b)で調製した2-(4-アミノフェニル)-1,1,1-トリフルオロプロパン-2-オール(i)の溶液をNaOH(33.5mL、2.0M水溶液、1.0当量)およびBoc2O(14.6g、67.3mmol、1.0当量)により0℃で処理し、40℃まで加熱した。12時間撹拌した後、反応混合物を25℃まで冷却し、希釈(飽和NaHCO3水溶液)し、抽出(3×EtOAc)して、洗浄(1×食塩水)した。有機物を乾燥(MgSO4)し、減圧下で濃縮した。残渣のフラッシュクロマトグラフィ(SiO2、5%MeOH/CH2Cl2)により生成物を白色固体で得た。
【0250】
(b)エチル[4-(1,1,1-トリフルオロ-2-ヒドロキシプロパン-2-イル)フェニル]カルバミン酸tert-ブチル
DMF(5.0mL)中の上の段階(a)で調製した4-(1,1,1-トリフルオロ-2-ヒドロキシプロパン-2-イル)フェニルカルバミン酸tert-ブチルの溶液を0℃でNaH(138mg、鉱油中60%、3.44mmol、2.1当量)により処理した。反応混合物を0℃で20分間撹拌し、臭化エチル(138μL、1.80mmol、1.1当量)を加えた。25℃で50分間撹拌した後、反応混合物を希釈(EtOAc)し、洗浄(3×食塩水)し、乾燥(Na2SO4)して、減圧下で濃縮した。残渣のフラッシュクロマトグラフィ(SiO2、15%EtOAc/ヘキサン)により生成物を淡黄色泡状物で得た。
【0251】
(c)2-(4-(エチルアミノ)フェニル)-1,1,1-トリフルオロプロパン-2-オール
上の段階(b)で調製したエチル[4-(1,1,1-トリフルオロ-2-ヒドロキシプロパン-2-イル)フェニル]カルバミン酸tert-ブチルの試料(182mg、0.55mmol、1.0当量)をトリフルオロ酢酸(2.1mL、27.5mmol、50当量)で処理し、混合物を25℃で20分間撹拌した。揮発性物質をN2気流下で除去し、残渣を希釈(EtOAc)して、洗浄(1×飽和NaHCO3水溶液および1×食塩水)した。有機物を乾燥(Na2SO4)し、減圧下で濃縮して、生成物を黄色固体で得た。
【0252】
(d)2-クロロ-N-エチル-N-[4-(1,1,1-トリフルオロ-2-ヒドロキシプロパン-2-イル)フェニル]ベンゼンスルホンアミド(14)
CH2Cl2(1.0mL)中の上の段階(c)で調製した2-(4-(エチルアミノ)フェニル)-1,1,1-トリフルオロプロパン-2-オール(40mg、0.17mmol、1.0当量)および塩化2-クロロベンゼンスルホニル(37mg、0.17mmol、1.0当量)の溶液をピリジン(42μL、0.51mmol、3.0当量)で処理した。25℃で12時間撹拌した後、溶液を希釈(EtOAc)して、洗浄(1×1N HCl水溶液、1×飽和NaHCO3水溶液、および1×食塩水)した。有機物を乾燥(Na2SO4)して、減圧下で濃縮した。残渣のフラッシュクロマトグラフィ(SiO2、20%EtOAc/ヘキサン)により生成物を白色固体で得た。

【0253】
実施例15:2-クロロ-N-メチル-N-[4-(1,1,1-トリフルオロ-2-ヒドロキシプロパン-2-イル)フェニル]ベンゼンスルホンアミド(15)の調製

【0254】
実施例14で前述した段階(b)、(c)、および(d)に従うが、段階(b)の臭化エチルの代わりにヨウ化メチルを用いて、2-クロロ-N-メチル-N-[4-(1,1,1-トリフルオロ-2-ヒドロキシプロパン-2-イル)フェニル]ベンゼンスルホンアミド(15)を調製した。

【0255】
実施例16:2-クロロ-N-(2-クロロ-4-(1,1,1-トリフルオロ-2-ヒドロキシプロパン-2-イル)フェニル)-N-イソプロピルベンゼンスルホンアミド(16)の調製

【0256】
(a)2-(4-アミノ-3-クロロフェニル)-1,1,1-トリフルオロプロパン-2-オール
100mLフラスコに2-(4-アミノフェニル)-1,1,1-トリフルオロプロパン-2-オール(i)(410mg、2.0mmol、1.0当量)、N-クロロスクシンイミド(267mg、2.0mmol、1.0当量)およびアセトニトリル(3mL)を加えた。フラスコに還流冷却器を取り付け、あらかじめ加熱した85℃の浴に入れて3時間撹拌した。溶液をH2Oで希釈し、抽出(10%MeOH/CH2Cl2)し、洗浄(食塩水)し、乾燥(Na2SO4)して、減圧下で濃縮した。残渣のフラッシュクロマトグラフィ(SiO2、5%MeOH/CH2Cl2)により生成物を白色固体で得た。
【0257】
(b)2-クロロ-N-(2-クロロ-4-(1,1,1-トリフルオロ-2-ヒドロキシプロパン-2-イル)フェニル)ベンゼンスルホンアミド
2-(4-アミノ-3-クロロフェニル)-1,1,1-トリフルオロプロパン-2-オール(95.6mg、0.4mmol、1.0当量)をフラスコ内で塩化2-クロロスルホニル(84.4mg、0.4mmol、1.0当量)、ピリジン(0.5mL)およびアセトン(0.5mL)と混合し、反応混合物を4時間還流した。溶液を冷却し、H2Oで希釈し、抽出(EtOAc)し、洗浄(食塩水)し、乾燥(Na2SO4)して、減圧下で濃縮した。残渣のフラッシュクロマトグラフィ(SiO2、2%MeOH/CH2Cl2)により生成物を白色固体で得た。
【0258】
(c)2-クロロ-N-(2-クロロ-4-(1,1,1-トリフルオロ-2-ヒドロキシプロパン-2-イル)フェニル)-N-イソプロピルベンゼンスルホンアミド(16)
2-クロロ-N-(2-クロロ-4-(1,1,1-トリフルオロ-2-ヒドロキシプロパン-2-イル)フェニル)ベンゼンスルホンアミド(15mg、0.036mmol、1.0当量)、K2CO3(40mg、0.29mmol、8.0当量)およびDMF(0.5mL)の懸濁液にヨウ化イソプロピル(123mg、0.73mmol、20.0当量)を加えた。得られた懸濁液を120℃に加熱して1時間撹拌し、懸濁液を飽和NaHCO3で希釈し、抽出(CH2Cl2)し、洗浄(食塩水)し、乾燥(Na2SO4)して、減圧下で濃縮した。残渣のフラッシュクロマトグラフィ(SiO2、1%MeOH/CH2Cl2)により生成物(16)を白色固体で得た。

【0259】
実施例17:2-クロロ-N-(2-クロロ-4-(1,1,1-トリフルオロ-2-ヒドロキシプロパン-2-イル)フェニル)-N-エチルベンゼンスルホンアミド(17)の合成

【0260】
上の実施例16に記載の方法を用い、ヨウ化イソプロピルの代わりに臭化エチルを用いて、2-クロロ-N-(2-クロロ-4-(1,1,1-トリフルオロ-2-ヒドロキシプロパン-2-イル)フェニル)-N-エチルベンゼンスルホンアミド(17)を調製した。

【0261】
実施例18:2-クロロ-N-(1-フルオロプロパン-2-イル)-N-(4-(1,1,1-トリフルオロ-2-ヒドロキシプロパン-2-イル)フェニル)ベンゼンスルホンアミド(18)の合成

【0262】
(a)1,1,1-トリフルオロ-2-(4-(1-フルオロプロパン-2-イルアミノ)フェニル)プロパン-2-オール
2-(4-アミノフェニル)-1,1,1-トリフルオロプロパン-2-オール(i)(820mg、4.0mmol、1.0当量)、AcOH(1.44mL)およびアセトニトリル(20mL)を加えた100mLフラスコにフルオロアセトン(1.52g、20.0mmol、5.0当量)およびNaCNBH3(1.24g、20.0mmol、5当量)を加えた。室温で2時間撹拌した後、溶液を1N NaOHで希釈し、抽出(EtOAc)し、洗浄(食塩水)し、乾燥(Na2SO4)して、減圧下で濃縮した。残渣のフラッシュクロマトグラフィ(SiO2、CH2Cl2)により生成物を白色固体で得た。
【0263】
(b)2-クロロ-N-(1-フルオロプロパン-2-イル)-N-(4-(1,1,1-トリフルオロ-2-ヒドロキシプロパン-2-イル)フェニル)ベンゼンスルホンアミド(18)
1,1,1-トリフルオロ-2-(4-(1-フルオロプロパン-2-イルアミノ)フェニル)プロパン-2-オール(53mg、0.2mmol、1.0当量)をフラスコ内で塩化2-クロロスルホニル(126.7mg、0.6mmol、3.0当量)およびピリジン(1.0mL)と混合し、反応混合物を2時間還流した。溶液をH2Oで希釈し、抽出(EtOAc)し、洗浄(食塩水)し、乾燥(Na2SO4)して、減圧下で濃縮した。残渣のフラッシュクロマトグラフィ(SiO2、30%EtOAc/ヘキサン)により生成物(18)を淡黄色固体で得た。

【0264】
実施例19:2,5-ジクロロ-N-(2,2,2-トリフルオロエチル)-N-[4-(1,1,1-トリフルオロ-2-ヒドロキシプロパン-2-イル)フェニル]ベンゼンスルホンアミド(19)の調製

【0265】
DMF(1.0mL)中の2,5-ジクロロ-N-(4-(1,1,1-トリフルオロ-2-ヒドロキシプロパン-2-イル)フェニル)ベンゼンスルホンアミド(7)(実施例7のとおりに調製、60.0mg、0.146mmol)、K2CO3(161.5mg、1.17mmol)およびCF3CH2OSO2CCl3(204mg、0.723mmol)の混合物を110℃で18時間撹拌した。反応混合物を室温まで冷却し、Et2O(10mL)で希釈した。溶液を水および食塩水で洗浄し、乾燥して、濃縮した。残渣のフラッシュクロマトグラフィ(EtOAc-ヘキサン3:7)により2,5-ジクロロ-N-(4-(1,1,1-トリフルオロ-2-ヒドロキシプロパン-2-イル)フェニル)-N-(2,2,2-トリフルオロエチル)ベンゼンスルホンアミド(19)を得た。

【0266】
実施例20:2,3-ジクロロ-N-(2,2,2-トリフルオロエチル)-N-[4-(1,1,1-トリフルオロ-2-ヒドロキシプロパン-2-イル)フェニル]ベンゼンスルホンアミド(20)の調製

【0267】
DMF(1.0mL)中の2,3-ジクロロ-N-(4-(1,1,1-トリフルオロ-2-ヒドロキシプロパン-2-イル)フェニル)ベンゼンスルホンアミド(3)(実施例6のとおりに調製、32.0mg、0.077mmol)、K2CO3(86mg、0.62mmol)およびCF3CH2OSO2CCl3(109mg、0.385mmol)の混合物を110℃で18時間撹拌した。反応混合物を室温まで冷却し、Et2O(10mL)で希釈した。溶液を水および食塩水で洗浄し、乾燥して、濃縮した。残渣のフラッシュクロマトグラフィ(EtOAc-ヘキサン3:7)により2,3-ジクロロ-N-(4-(1,1,1-トリフルオロ-2-ヒドロキシプロパン-2-イル)フェニル)-N-(2,2,2-トリフルオロエチル)ベンゼンスルホンアミド(20)を得た。

【0268】
実施例21:2-クロロ-N-(2,2,2-トリフルオロエチル)-N-[4-(1,1,1-トリフルオロ-2-ヒドロキシプロパン-2-イル)フェニル]ベンゼンスルホンアミド(21)の調製

【0269】
DMF(1.0mL)中の2-クロロ-N-(4-(1,1,1-トリフルオロ-2-ヒドロキシプロパン-2-イル)フェニル)ベンゼンスルホンアミド(2)(実施例7のとおりに調製、48.4mg、0.128mmol)、K2CO3(141.3mg、1.02mmol)およびCF3CH2OSO2CCl3(181mg、0.64mmol)の混合物を110℃で18時間撹拌した。反応混合物を室温まで冷却し、Et2O(10mL)で希釈した。溶液を水および食塩水で洗浄し、乾燥して、濃縮した。残渣のフラッシュクロマトグラフィ(EtOAc-ヘキサン3:7)により2-クロロ-N-(4-(1,1,1-トリフルオロ-2-ヒドロキシプロパン-2-イル)フェニル)-N-(2,2,2-トリフルオロエチル)ベンゼンスルホンアミド21を得た。

【0270】
実施例22:2,3-ジクロロ-N-シクロプロピル-N-[4-(1,1,1-トリフルオロ-2-ヒドロキシプロパン-2-イル)フェニル]ベンゼンスルホンアミド(22)の調製

【0271】
(a)アリールハロゲン化物中間体の調製
THF(80mL)中の4'-ブロモアセトフェノン(10g、50mmol)を0℃に冷却し、これにTMSCF3(11mL、75mmol)を加えた。5分間でTHF中1M TBAF(0.38mL)を溶液に滴下した。30分後、冷却源を取り除き、溶液を2.5時間撹拌した。溶媒をロータリーエバポレーションで除去した。残渣をCH2Cl2(200mL)に溶解し、水(200mL)で抽出した。分配した有機物をNa2SO4で乾燥した。CH2Cl2をロータリーエバポレーションで除去した後、残渣を蒸留(78〜82℃、0.1mmHg)して臭化物を得た。

【0272】
(b)アリールハロゲン化物のPd触媒によるアミノ化の一般法
Pd2(dba)3(0.27g、0.30mmol)、(±)-BINAP(0.56g、0.90mmol)、およびNaOtBu(1.4g、14mmol)を含むアルゴンパージした密封試験管に、脱気トルエン(10mL)を加えた。シクロプロピルアミン(0.84mL、12mmol)、臭化物iii(上のとおりに調製、4.4g、10mmol)、およびトルエン(10mL)を別のバイアル内でアルゴン雰囲気下で混合し、触媒懸濁液にアルゴン雰囲気下で加えた。試験管をアルゴン雰囲気下で密封し、80℃の油浴中、16時間加熱した。冷却した反応懸濁液をCH2Cl2(200mL)で希釈し、水(100mL)で抽出した。有機物をNa2SO4で乾燥し、減圧下で除去した。シリカゲルカラムクロマトグラフィ(5%酢酸エチル/ヘキサンで溶出)によりアルキルアニリンivを得た。

【0273】
(c)2,3-ジクロロ-N-シクロプロピル-N-[4-(1,1,1-トリフルオロ-2-ヒドロキシプロパン-2-イル)フェニル]ベンゼンスルホンアミド(22)
上で調製したシクロプロピルアニリンiv(0.10g、0.32mmol)および塩化2,3-ジクロロベンゼンスルホニル(0.093g、0.38mmol)にピリジン(0.5mL)を加えた。溶液を100℃で30分間加熱し、H2O(5mL)で希釈し、1M HClで酸性化(pH1)した。得られた混合物をCH2Cl2(2×1mL)で抽出した後、集めた有機物をTHF中1M TBAF(2mL)に加え、得られた溶液をH2O(2mL)で抽出した。分配した有機物をNa2SO4で乾燥し、減圧下で濃縮した。シリカゲルカラムクロマトグラフィ(15%酢酸エチル/ヘキサンで溶出)により22を得た。

【0274】
実施例23:2,5-ジクロロ-N-シクロブチル-N-[4-(1,1,1-トリフルオロ-2-ヒドロキシプロパン-2-イル)フェニル]ベンゼンスルホンアミド(23)の調製

【0275】
シクロプロピルアニリンivの調製の一般法に従って調製したシクロブチルアニリン(0.082mg、0.25mmol)のCHCl3(0.25mL)中の溶液に、ピリジン(0.040mL、0.50mmol)を加え、続いて塩化2,5-ジクロロベンゼンスルホニル(0.073mg、0.30mmol)を分割して加えた。反応混合物を室温で20時間撹拌した。反応混合物にTHF中の1M TBAF(0.25mL)を加えた。有機物を2.5M HCl(0.5mL)で洗浄し、Na2SO4で乾燥し、減圧下で濃縮した。シリカゲルカラムクロマトグラフィ(10から30%酢酸エチル/ヘキサンの勾配)により23を得た。

【0276】
実施例24:2,5-ジクロロ-N-フェニル-N-[4-(1,1,1-トリフルオロ-2-ヒドロキシプロパン-2-イル)フェニル]ベンゼンスルホンアミド(24)の調製

【0277】
(a)ゴムセプタムで密封し、Pd2(dba)3(0.055g、0.060mmol)および(±)-BINAP(0.110g、0.18mmol)を含む、アルゴンパージした試験管にトルエン(2mL)を加えた。溶液をアルゴン雰囲気下、室温で10分間撹拌した。溶液に上で調製した臭化物(0.89g、2.0mmol)およびアニリン(0.219mL、2.4mmol)を加えた。シールを取り除き、Cs2CO3(0.92g、2.8mmol)を加え、続いてトルエン(2mL)を加えた。試験管をアルゴンでパージし、テフロン栓で密封した。反応混合物を100℃で20時間加熱した。冷却後、H2O(5mL)を反応混合物に加え、得られた懸濁液を酢酸エチル(2×5mL)で抽出した。合わせた有機物をMgSO4で乾燥し、減圧下で濃縮し、シリカゲルクロマトグラフィ(5%酢酸エチル/ヘキサンで溶出)によりジフェニルアニリンを得た。
【0278】
(b)2,5-ジクロロ-N-フェニル-N-[4-(1,1,1-トリフルオロ-2-ヒドロキシプロパン-2-イル)フェニル]ベンゼンスルホンアミド(24)
CHCl3(0.15mL)およびピリジン(0.023mL、0.28mmol)中の上で調製したジフェニルアニリン(0.050g、0.141mmol)に塩化2,5-ジクロロベンゼンスルホニルを加えた。反応混合物を室温で5時間撹拌した。反応混合物にTHF中の1M TBAF(0.5mL)と、続いてH2O(2mL)を加えた。懸濁液をCH2Cl2(2×2mL)で抽出した。有機物をNa2SO4で乾燥し、減圧下で濃縮し、シリカゲルカラムクロマトグラフィ(5から20%酢酸エチル/ヘキサンの勾配)により24を得た。

【0279】
実施例25:2-シクロプロピル-N-イソプロピル-N-[4-(1,1,1-トリフルオロ-2-ヒドロキシプロパン-2-イル)フェニル]ベンゼンスルホンアミド(25)の調製

【0280】
2-ブロモ-N-イソプロピル-N-(4-(1,1,1-トリフルオロ-2-ヒドロキシプロパン-2-イル)フェニル)ベンゼンスルホンアミド(ii)(実施例1のとおりに調製、0.020g、0.043mmol)、シクロプロピルボロン酸(0.0070g、0.086mmol)、K3PO4(0.018g、0.086mmol)、およびPd(PPh3)4(0.0050mg、0.0043mmol)を含む容器に、窒素雰囲気下で脱気トルエン(0.40mL)およびH2O(0.040mL)を加えた。容器を窒素雰囲気下で密封し、95℃の油浴中で17.5時間加熱した。反応混合物を室温まで冷却し、CH2Cl2(2mL)で希釈し、H2O(1mL)で抽出した。合わせた有機物をNa2SO4で乾燥し、減圧下で濃縮し、シリカゲルカラムクロマトグラフィ(5〜20%酢酸エチル/ヘキサンの勾配溶出)により25を得た。

【0281】
生物学的実施例
アニリンスルホンアミド誘導体の生物学的評価のために有用な方法
様々な疾患および障害におけるHSDの役割を開示している広範な文献に加えて、本発明のアニリンスルホンアミド誘導体を試験するために有用なアッセイを本明細書において記載する。
【0282】
アッセイ
インビトロ11β-HSD1(ヒドロキシステロイドデヒドロゲナーゼ1)活性阻害作用
11β-HSD1阻害活性を、酵素供給源としてバキュロウイルスシステムを用いて発現させたヒト11β-HSD1(以下、組換え11β-HSD1)を用いての、コルチゾンからコルチゾルへの変換に対する抑制作用のSPA(シンチレーション近接アッセイ)システムによる定量的評価によって調べた。反応のために、試薬を96穴プレート(96穴Opti-plates(商標)-96(Packard))に下記の最終濃度まで加え、100μl量を室温で90分間反応させた。用いた反応溶液は、0.1%BSA(Sigma)含有PBSに溶解した0.1μg/ml組換え11β-HSD1、500μM NADPH、16nM 3Hコルチゾン(Amersham Biosciences、1.78Tbq/mol)で、試験薬は化合物溶液(DMSOに溶解)2μlであった。90分後、0.08μg抗コルチゾルマウスモノクローナル抗体(East Coast Biologics)、365μg SPA PVTマウス抗体結合ビーズ(Amersham Biosciences)および175μMカルベノキソロン(Sigma)を含むPBS(40μL、0.1%BSA(Sigma)含有)を反応溶液に加えて反応を停止した。反応完了後、プレートを室温で終夜インキュベートし、放射能をTopcount(Packard)により測定した。対照用に、試験薬の代わりに2μlのDMSOを含むウェルの値(0%阻害)を用い、陽性対照用に、試験薬の代わりにカルベノキソロンを最終濃度50μMで含むウェルの値(100%阻害)を用いた。試験薬の阻害(%)を、((対照の値-試験薬の値)/(対照の値-陽性対照の値))×100(%)により算出した。IC50値をコンピューターによる曲線あてはめソフトを用いて解析した。
【0283】
この下記の実施例は11β-HSD1を調節する化合物を評価および選択する際に有用なアッセイを提供する。
【0284】
SPAによる11β-HSD1の生化学アッセイ
組換えヒト、マウスおよびラット11β-HSD1をバキュロウイルス発現システムで発現させ、アフィニティー精製により単離し、インビトロでのコルチゾンからコルチゾル変換のための酵素供給源として用いた。3H-コルチゾン(Amersham Bioscience、1.78Tbq/mol. 49Ci/mmol)を基質として用い、モノクローナル抗コルチゾル抗体およびシンチレーション近接アッセイ(SPA)システムを用いて、11β-HSD1触媒反応の生成物、3H-コルチゾルを検出した。反応は96穴Opti-plates(商標)-96(Packard)内で、0.1%BSA(Sigma)補足PBS緩衝液中、DMSO中の試験化合物または対照2μL、0.1μg/mL 11β-HSD1タンパク質、500μM NADPHおよび16nM放射性コルチゾンを含む100μL量で、室温で90分間行った。0.08μg抗コルチゾルモノクローナル抗体(East Coast Biologics)、365μg SPA PVT抗体結合ビーズ(Amersham Biosciences)および175μMカルベノキソロン(Sigma)を含む緩衝液40μLを加えて反応を停止した。
【0285】
プレートを室温で終夜インキュベートした後、Topcount(Packard)で読み取った。11β-HSD1酵素活性の50%阻害点(IC50)を、コンピューターによる曲線あてはめソフトを用いて評価した。
【0286】
SPAによる11β-HSD1の細胞アッセイ
この細胞アッセイは、ヒト組換え11β-HSD1を安定に過剰発現するHEK-293細胞株における3H-コルチゾンの3H-コルチゾルへの変換を測定する。HEK-293細胞を10%ウシ胎仔血清を補足したDMEM/F12中で培養し、ポリ-D-リジン-コーティング96穴アッセイプレート(Costar 3903)に、ウェル毎に100,000細胞/50μLアッセイ培地(フェノールを含まないDMEM/F12(Invitrogen)+0.2%BSA+1%抗菌-抗真菌溶液)で播種した。溶液を37℃で24時間インキュベートし、所望の濃度の化合物を含むアッセイ培地25μLおよび40nMの3H-コルチゾンを含むアッセイ培地25μLを各ウェルに加えて反応を開始した。反応混合物を37℃で90分間インキュベートし、0.2μg抗コルチゾルモノクローナル抗体(East Coast Biologics)、500μg SPA PVT抗体結合ビーズ(Amersham Biosciences)および500μMカルベノキソロン(Sigma)を含むアッセイ培地25μLを加えて反応を停止した。
【0287】
プレートを室温で少なくとも2時間インキュベートした後、Topcount(Packard)で読み取った。11β-HSD1酵素活性の50%阻害点(IC50)を、コンピューターによる曲線あてはめソフトを用いて評価した。
【0288】
前述の実施例で調製した化合物はアッセイにおいて<1nMから1000nMの範囲の11β-HSD1酵素活性(IC50)を示した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I)を有する化合物またはその薬学的に許容される塩、溶媒和物、水和物、立体異性体もしくはプロドラッグ:

式中:
R1は-OH、ハロゲンおよび(C1-C8)ハロアルキルからなる群より選択されるメンバーであり;
R2は(C1-C8)アルキル、(C2-C8)アルケニル、(C2-C8)アルキニル、(C1-C8)アルコキシ、(C1-C8)ハロアルキル、(C2-C8)ヒドロキシアルキルおよび(C3-C8)シクロアルキルからなる群より選択され
R3はハロゲン、(C1-C8)アルキル、(C2-C8)アルケニル、(C2-C8)アルキニル、(C1-C8)アルコキシ、(C2-C8)ヒドロキシアルキルおよび(C3-C8)シクロアルキルからなる群より選択され、
R4は水素、ハロゲン、(C1-C8)アルキルおよび(C3-C8)シクロアルキルからなる群より選択されるメンバーであり;
R5は水素、-OH、ハロゲン、(C1-C8)アルキル、(C1-C8)ハロアルキル、(C2-C8)ヘテロアルキル、(C3-C8)シクロアルキル、(C3-C8)ヘテロシクロアルキル、C(O)R'、C(O)NR'2、NR'2、NR'C(O)R'、CN、NO2、アリール、およびヘテロアリールからなる群より選択され;
R6はアリールもしくはヘテロアリールであるか、またはR6は任意にR5と組み合わされて、L、Lが結合している窒素原子、およびR6が結合している硫黄原子を含む5から6員縮合環を形成してもよく;
Lは直接結合、(C1-C4)アルキレンおよび(C2-C4)アルケニレンからなる群より選択され;
任意のシクロアルキル部分、ヘテロシクロアルキル部分、アリールまたはヘテロアリール部分はハロゲン、-CN、-NO2、(C1-C8)アルキル、(C2-C8)アルケニル、(C2-C8)アルキニル、(C1-C8)アルコキシ、(C1-C8)ハロアルキル、(C2-C8)ヒドロキシアルキル、-C(O)R'、-C(O)OR'、-NR'C(O)OR''、-OR'、-SR'、-OC(O)R'、-C(O)N(R')2、-S(O)R''、-SO2R''、-SO2N(R')2、-N(R')2および-NR'C(O)R'からなる群より選択される1から4つのメンバーで置換されていてもよく;
R'の存在はそれぞれ独立にHまたは、(C1-C8)アルキル、(C2-C8)アルケニル、(C2-C8)アルキニル、(C1-C4)アルコキシ(C1-C4)アルキル、(C1-C8)ハロアルキル、(C2-C8)ヒドロキシアルキル、(C3-C8)シクロアルキル、(C3-C8)ヘテロシクロアルキル、ヘテロアリール、アリール、(C3-C8)シクロアルキル(C1-C6)アルキル、(C3-C8)ヘテロシクロアルキル(C1-C6)アルキル、ヘテロアリール(C1-C6)アルキル、およびアリール(C1-C6)アルキルからなる群より選択される非置換メンバーであり、
二つのR'基は、それらが同じ窒素原子に結合している場合には、それらが結合している窒素原子と組み合わされて複素環またはヘテロアリール基を形成することができ;かつ
R''の存在はそれぞれ独立に(C1-C8)アルキル、(C2-C8)アルケニル、(C2-C8)アルキニル、(C1-C4)アルコキシ(C1-C4)アルキル、(C1-C8)ハロアルキル、(C2-C8)ヒドロキシアルキル、(C3-C8)シクロアルキル、(C3-C8)ヘテロシクロアルキル、ヘテロアリール、アリール、(C3-C8)シクロアルキル(C1-C6)アルキル、ヘテロシクリル(C1-C6)アルキル、ヘテロアリール(C1-C6)アルキルおよびアリール(C1-C6)アルキルからなる群より選択される非置換メンバーである。
【請求項2】
Lが直接結合である、請求項1記載の化合物。
【請求項3】
R5が(C1-C8)アルキルである、請求項1記載の化合物。
【請求項4】
R5が(C1-C3)アルキルである、請求項3記載の化合物。
【請求項5】
R5がメチル、エチル、およびイソプロピルからなる群より選択される、請求項4記載の化合物。
【請求項6】
R5がイソプロピルである、請求項5記載の化合物。
【請求項7】
R5が(C3-C8)シクロアルキルである、請求項1記載の化合物。
【請求項8】
R5がシクロプロピルまたはシクロブチルである、請求項7記載の化合物。
【請求項9】
R6がアリールである、請求項1記載の化合物。
【請求項10】
R6が1から4つの置換基で置換されていてもよいアリールである、請求項9記載の化合物。
【請求項11】
R6がジクロロ置換フェニルである、請求項10記載の化合物。
【請求項12】
R6が2-クロロ-5-シアノ-フェニルである、請求項10記載の化合物。
【請求項13】
R6が2-クロロ-フェニルである、請求項10記載の化合物。
【請求項14】
R6が2-クロロ-5-トリフルオロメチル-フェニルである、請求項10記載の化合物。
【請求項15】
R5が(C1-C8)アルキルおよびハロ-(C1-C8)アルキルから選択され、かつR6がフェニルおよび置換フェニルから選択される、請求項1記載の化合物。
【請求項16】
R5がメチル、エチルおよびイソプロピルから選択され、かつR6がハロ置換フェニルまたはCN-置換フェニルである、請求項15記載の化合物。
【請求項17】
R5がC3-C8シクロアルキル部分であり、かつR6がフェニルおよび置換フェニルから選択される、請求項1記載の化合物。
【請求項18】
R5がシクロプロピルまたはシクロブチルである、請求項17記載の化合物。
【請求項19】
R1が-OHである、請求項1記載の化合物。
【請求項20】
R2の一つが(C1-C8)ハロアルキルであり、かつR3が(C1-C8)アルキルである、請求項1記載の化合物。
【請求項21】
R2の一つがトリフルオロメチルであり、かつR3がメチルである、請求項20記載の化合物。
【請求項22】
R1が-OHであり、R2がトリフルオロメチルであり、かつR3がメチルである、請求項1記載の化合物。
【請求項23】
R1、R2、およびR3が、それらが結合している炭素原子と一緒に、下記の式の(S)-トリフルオロメチルカルビノール基となる、請求項22記載の化合物。

【請求項24】
R1、R2、およびR3が、それらが結合している炭素原子と一緒に、下記の式の(R)-トリフルオロメチルカルビノール基となる、請求項22記載の化合物。

【請求項25】
請求項1記載の化合物と薬学的に許容される担体とを含む、薬学的組成物。
【請求項26】
請求項1記載の化合物と追加の治療薬とを含む、薬学的組成物。
【請求項27】
追加の治療薬が糖尿病、X症候群、肥満、多嚢胞性卵巣、摂食障害、頭蓋咽頭腫、プラダー-ウィリ症候群、フレーリッヒ症候群、高脂血症、異脂肪血症、高コレステロール血症、高トリグリセリド血症、低HDLレベル、高HDLレベル、高血糖、インスリン抵抗性、高インスリン血症、クッシング症候群、高血圧、アテローム性動脈硬化症、血管再狭窄、網膜症、腎症、神経変性疾患、神経症、筋萎縮、認知障害、痴呆、うつ、乾癬、緑内障、骨粗鬆症、ウイルス感染症、炎症性障害および免疫障害からなる群より選択される状態または障害を治療するために有用である、請求項26記載の薬学的組成物。
【請求項28】
糖尿病、X症候群、肥満、多嚢胞性卵巣、摂食障害、頭蓋咽頭腫、プラダー-ウィリ症候群、フレーリッヒ症候群、高脂血症、異脂肪血症、高コレステロール血症、高トリグリセリド血症、低HDLレベル、高HDLレベル、高血糖、インスリン抵抗性、高インスリン血症、クッシング症候群、高血圧、アテローム性動脈硬化症、血管再狭窄、網膜症、腎症、神経変性疾患、神経症、筋萎縮、認知障害、痴呆、うつ、乾癬、緑内障、骨粗鬆症、ウイルス感染症、炎症性障害および免疫障害からなる群より選択される状態または障害の治療法であって、該状態または障害を患う患者に請求項1記載の化合物の治療的有効量を投与する段階を含む方法。
【請求項29】
状態または障害が糖尿病または肥満である、請求項28記載の方法。
【請求項30】
ヒドロキシステロイドデヒドロゲナーゼの調節に対して反応性を有する状態または障害の治療法であって、それを必要としている患者に請求項1記載の化合物の治療的有効量を投与する段階を含む方法。
【請求項31】
前記ヒドロキシステロイドデヒドロゲナーゼが11β-HSD1、11β-HSD2および17β-HSD3からなる群より選択される、請求項30記載の方法。
【請求項32】
細胞におけるヒドロキシステロイドデヒドロゲナーゼの機能の調節法であって、該細胞を請求項1記載の化合物と接触させる段階を含む方法。
【請求項33】
化合物がヒドロキシステロイドデヒドロゲナーゼを阻害する、請求項32記載の方法。
【請求項34】
細胞における11β-HSD1の機能の調節法であって、該細胞を請求項1記載の化合物と接触させる段階を含む方法。
【請求項35】
細胞における11β-HSD2の機能の調節法であって、該細胞を請求項1記載の化合物と接触させる段階を含む方法。
【請求項36】
細胞における17β-HSD3の機能の調節法であって、該細胞を請求項1記載の化合物と接触させる段階を含む方法。
【請求項37】
下記からなる群より選択される化合物、ならびにその薬学的に許容される塩、溶媒和物、立体異性体、およびプロドラッグ:
N-イソプロピル-N-[4-(1,1,1-トリフルオロ-2-ヒドロキシプロパン-2-イル)フェニル]ベンゼンスルホンアミド;
2-クロロ-N-イソプロピル-N-[4-(1,1,1-トリフルオロ-2-ヒドロキシプロパン-2-イル)フェニル]ベンゼンスルホンアミド;
2,3-ジクロロ-N-イソプロピル-N-[4-(1,1,1-トリフルオロ-2-ヒドロキシプロパン-2-イル)フェニル]ベンゼンスルホンアミド;
2-フルオロ-N-イソプロピル-N-[4-(1,1,1-トリフルオロ-2-ヒドロキシプロパン-2-イル)フェニル]ベンゼンスルホンアミド;
2,6-ジクロロ-N-イソプロピル-N-[4-(1,1,1-トリフルオロ-2-ヒドロキシプロパン-2-イル)フェニル]ベンゼンスルホンアミド;
2-クロロ-4-シアノ-N-イソプロピル-N-[4-(1,1,1-トリフルオロ-2-ヒドロキシプロパン-2-イル)フェニル]ベンゼンスルホンアミド;
2,5-ジクロロ-N-イソプロピル-N-[4-(1,1,1-トリフルオロ-2-ヒドロキシプロパン-2-イル)フェニル]ベンゼンスルホンアミド;
-tert-ブチル-2,5-ジクロロ-N-[4-(1,1,1-トリフルオロ-2-ヒドロキシプロパン-2-イル)フェニル]ベンゼンスルホンアミド;
2-クロロ-N-(シクロプロピルメチル)-N-[4-(1,1,1-トリフルオロ-2-ヒドロキシプロパン-2-イル)フェニル]ベンゼンスルホンアミド;
2,5-ジクロロ-N-イソブチル-N-[4-(1,1,1-トリフルオロ-2-ヒドロキシプロパン-2-イル)フェニル]ベンゼンスルホンアミド;
2-クロロ-N-イソプロピル-5-ニトロ-N-[4-(1,1,1-トリフルオロ-2-ヒドロキシプロパン-2-イル)フェニル]ベンゼンスルホンアミド;
5-アミノ-2-クロロ-N-イソプロピル-N-[4-(1,1,1-トリフルオロ-2-ヒドロキシプロパン-2-イル)フェニル]ベンゼンスルホンアミド;
5-ブロモ-2-クロロ-N-イソプロピル-N-[4-(1,1,1-トリフルオロ-2-ヒドロキシプロパン-2-イル)フェニル]ベンゼンスルホンアミド;
2-クロロ-N-エチル-N-[4-(1,1,1-トリフルオロ-2-ヒドロキシプロパン-2-イル)フェニル]ベンゼンスルホンアミド;
2-クロロ-N-メチル-N-[4-(1,1,1-トリフルオロ-2-ヒドロキシプロパン-2-イル)フェニル]ベンゼンスルホンアミド;
2-クロロ-N-(2-クロロ-4-(1,1,1-トリフルオロ-2-ヒドロキシプロパン-2-イル)フェニル)-N-イソプロピルベンゼンスルホンアミド;
2-クロロ-N-(2-クロロ-4-(1,1,1-トリフルオロ-2-ヒドロキシプロパン-2-イル)フェニル)-N-エチルベンゼンスルホンアミド;
2-クロロ-N-(1-フルオロプロパン-2-イル)-N-(4-(1,1,1-トリフルオロ-2-ヒドロキシプロパン-2-イル)フェニル)ベンゼンスルホンアミド;
2,5-ジクロロ-N-(2,2,2-トリフルオロエチル)-N-[4-(1,1,1-トリフルオロ-2-ヒドロキシプロパン-2-イル)フェニル]ベンゼンスルホンアミド;
2,3-ジクロロ-N-(2,2,2-トリフルオロエチル)-N-[4-(1,1,1-トリフルオロ-2-ヒドロキシプロパン-2-イル)フェニル]ベンゼンスルホンアミド;
2-クロロ-N-(2,2,2-トリフルオロエチル)-N-[4-(1,1,1-トリフルオロ-2-ヒドロキシプロパン-2-イル)フェニル]ベンゼンスルホンアミド;
2,3-ジクロロ-N-シクロプロピル-N-[4-(1,1,1-トリフルオロ-2-ヒドロキシプロパン-2-イル)フェニル]ベンゼンスルホンアミド;
2,5-ジクロロ-N-シクロブチル-N-[4-(1,1,1-トリフルオロ-2-ヒドロキシプロパン-2-イル)フェニル]ベンゼンスルホンアミド;
2,5-ジクロロ-N-フェニル-N-[4-(1,1,1-トリフルオロ-2-ヒドロキシプロパン-2-イル)フェニル]ベンゼンスルホンアミド;
2-シクロプロピル-N-イソプロピル-N-[4-(1,1,1-トリフルオロ-2-ヒドロキシプロパン-2-イル)フェニル]ベンゼンスルホンアミド。

【公表番号】特表2009−505955(P2009−505955A)
【公表日】平成21年2月12日(2009.2.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−522930(P2008−522930)
【出願日】平成18年7月20日(2006.7.20)
【国際出願番号】PCT/US2006/028059
【国際公開番号】WO2007/013929
【国際公開日】平成19年2月1日(2007.2.1)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.テフロン
【出願人】(506147331)アムゲン インコーポレイティッド (27)
【Fターム(参考)】