説明

アマノリ類の栽培装置及びそれを用いたアマノリ類の栽培方法

【課題】自然環境に左右されず、作業性や生産性に優れたアマノリ類の栽培装置を提供することを目的とする。
【解決手段】糸状、紐状、棒状又は帯状に形成された葉体保持部材に、アマノリ類の殻胞子又は原胞子を付着させ、殻胞子又は原胞子から発芽させて葉体を生育するアマノリ類の栽培装置であって、栽培液供給部と、栽培液供給部から供給される栽培液を上流側から下流側に流下させる栽培槽と、栽培槽の両側部の上流側から下流側にかけて形設され葉体保持部材の両端部を着脱自在に保持して複数の葉体保持部材の間隔を調整する間隔調整部と、を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、陸上に設置して、アサクサノリやスサビノリ等のアマノリ類を周年栽培し、毎日収穫できる栽培装置に関するものである。また本発明はアマノリ類を糸状体に頼ることなく、原胞子によって周年栽培できる栽培方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
日本沿岸で養殖されるノリは主として、スサビノリとその系統を主とした改良品種であり、これらはアマノリ類と呼ばれる紅藻に属する海草である。アマノリ類の多くは葉体として存在する時期と、糸状体として存在する時期の2形態からなる生活環を基本としている。成熟した葉体上に形成された精子と造卵器が受精して嚢果を経て果胞子となり、海中に放出される。果胞子は海底の貝殻に付着し、発芽して貝殻内部に侵入して糸状体となる。糸状体が成熟すると、減数分裂して殻胞子を形成して放出する。これが潮に漂い、網や岩場に付着して発芽して葉体に成長する。殻胞子から成長した葉体は原胞子を放出しつつ成長し、成熟期を迎える。
現在、日本各地のほとんどの生産地では、果胞子を人工的に蛎殻などに付着させ、栽培施設内の管理下で成長させた糸状体から殻胞子を放出させ、陸上で、あるいは海上で養殖網に種付(殻胞子を付着させること)をして、ノリ養殖の種苗としている。
【0003】
(特許文献1)には緑藻の1種であるマリモの糸状体の培養方法が記載されている。
(特許文献2)にはアマノリの葉状体に刺激を与えることにより葉状体から積極的に単胞子(原胞子と同じ意味)を放出させて担体に付着させ種付けを容易に行う技術が開示されている。
(特許文献3)には胞子体を生育する実験設備と胞子体を成熟させる複数のスリーブと栄養素が添加された海水を含む複数の小さな植菌槽と、複数の大型の養殖槽からなる、海草を陸上で養殖するシステムが開示されている。
(特許文献4)には溶解ガス、光、温度、栄養源、衛生環境の人工環境下で最も藻類の生長に最適な環境制御を行い促成栽培する装置と方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平11−137109号公報
【特許文献2】特開2006−320292号公報
【特許文献3】特表2007−512025号公報
【特許文献4】再表2005−102031号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記、従来の技術には次のような課題があった。
(1)殻胞子の放出が限られた時季にだけ起こるので、種付けの出来がその年の収穫量を左右し、安定した生産ができないという課題があった。
(2)ノリの成育が自然環境に任されるため、気候の変動による影響を受け易く、品質や生産量が安定しないという課題があった。
(3)養殖場でのノリの収穫は冬季の海上での辛い作業であり、効率化や集積化が困難であるという課題があった。
(4)(特許文献1)に記載の技術はマリモの糸状体に特化しているため、アマノリ類には転用できないという課題があった。
(5)(特許文献2)に記載の技術は糸状体からの殻胞子を用いず、葉状体(葉体)からの単胞子(原胞子)を用いているが、葉状体の培養の条件や葉状体に刺激を与える手法が記載されているのみで、原胞子を付着させた担体を用いて葉体を育成するための具体的な栽培装置の構成や栽培方法については記載されておらず、種付け後の育成方法は従来と同様であり、気候の変動による影響を受け易く、品質や生産量が安定しないという課題があった。
(6)(特許文献3)及び(特許文献4)に記載の技術は、アマノリの養殖生産に用いるためにはアマノリの生育段階ごとに別の水槽設備が必要であり、システムが大型化して、作業性や生産性の向上が困難であり、且つ、毎日収穫しようとすると成長日数に乗じた数の設備が必要となり多大な投資が必要となるという課題があった。
(7)従来のノリの栽培は乾海苔の製造を前提としているため、収穫時に引きちぎられ、小葉片に刻まれるため、ノリの鮮度の劣化が著しく、ノリの食味も著しく減退するという課題があった。
(8)従来の技術ではノリ網上に成熟段階の異なる葉体が同時に存在するため、それらは混在したまま収穫される。しかし、アマノリ類は成熟した段階にならないと栄養成分や旨味成分が蓄積しない特徴をもっており、成熟段階の異なる葉体の割合によって品質が変化するという課題があった。
【0006】
本願発明は、上記従来の課題を解決するもので、自然環境に左右されず、作業性や生産性に優れたアマノリ類の栽培装置を提供することを目的とする。また、年間を通じて連続的に種苗を得ることができ、鮮度がよく食味に優れ、葉体の生育段階が揃っており安定した品質のノリを収穫することができるアマノリ類の栽培方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記従来の課題を解決するために本発明のアマノリ類の栽培装置及びそれを用いたアマノリ類の栽培方法は、以下の構成を有している。
請求項1に記載のアマノリ類の栽培装置は、糸状、紐状、棒状又は帯状に形成された葉体保持部材に、アマノリ類の殻胞子又は原胞子を付着させ、前記殻胞子又は前記原胞子から発芽させて葉体を生育するアマノリ類の栽培装置であって、栽培液供給部と、前記栽培液供給部から供給される栽培液を上流側から下流側に流下させる栽培槽と、前記栽培槽の両側部の上流側から下流側にかけて形設され前記葉体保持部材の両端部を着脱自在に保持して複数の前記葉体保持部材の間隔を調整する間隔調整部と、を備えている構成を有する。
この構成により、以下のような作用が得られる。
(1)栽培液供給部から供給される栽培液を上流側から下流側に流下させる栽培槽を有することにより、栽培槽で栽培されるアマノリ類の葉体の表面が栽培液の水流によって洗浄され、汚れなどが付着しづらく、アマノリ類が良好な生育を続けることができる。
(2)栽培槽の両側部の上流側から下流側にかけて形設され葉体保持部材の両端部を着脱自在に保持して複数の葉体保持部材の間隔を調整する間隔調整部を有するので、葉体の生育に合わせて葉体保持部材同士の間隔を簡便に調整することができ、隣接する葉体保持部材に付着した葉体が重なり合って陰になることが防がれ、生育が平均的に進む。
(3)間隔調整部で葉体保持部材の両端部を着脱自在に保持できるので、葉体保持部材を一定の長さに保って簡便に移動させることができ、葉体保持部材の着脱及び移動の作業性に優れる。
(4)殻胞子又は原胞子から発芽した葉体は幼芽時期に原胞子を放出するので、間隔調整部の最下流側に殻胞子及び原胞子が付着していない新たな葉体保持部材を保持し、上流側に葉体が付着した葉体保持部材を保持することにより、最下流側の新たな葉体保持部材に原胞子を付着させることができ、種付けの作業性に優れる。
(5)間隔調整部によって複数の葉体保持部材の間隔を調整することができるので、葉体の生育に合わせて葉体保持部材を上流側に移動させ、小さな葉体が付着した葉体保持部材を栽培槽の下流側に保持し、大きな葉体が付着した葉体保持部材を栽培槽の上流側に保持することにより、栽培槽全体に複数の葉体保持部材を効率的に配置することができ、1つの葉体保持部材に生育状態の異なる葉体が同時に存在することがなく、十分に生育した葉体のみが付着した葉体保持部材を上流側から回収して効率的に収穫することができる。
【0008】
ここで、葉体保持部材の材質は、適宜、選択することができるが、通水性や透水性を有する濾布のような膜状の材質を用いた場合は、栽培液と共に流下する原胞子が葉体保持部材の内部(隙間)に侵入して付着し易く、種付けの確実性に優れる。例えば、繊維などを撚って糸状や紐状に形成したもの、織布、不織布、網体などを紐状や帯状に切断したもの等が好適に用いられる。また、合成樹脂や木などで棒状や帯状に形成したもの等も用いることができるが、表面に凹凸を形成したり、微小孔を穿設したりして、原胞子を付着させ易くすることもできる。或いは、合成樹脂製や木製などの棒状部材の周りに、織布、不織布、網体などを巻き付けてもよい。
尚、葉体保持部材を棒状や帯状に形成する場合は、流下する栽培液の抵抗とならないように、太さや幅を選択することが好ましい。
【0009】
栽培液供給部は、葉体の育成に必要な栽培液を栽培槽に供給できるものであればよい。栽培液としては、海水や汽水に炭酸ガスを添加したり、窒素、カリウム、リン等の肥料成分を添加したりしたものが好適に用いられる。
栽培液供給部は、他の藻類などの繁殖を防ぐために光を遮断した場所に設置するか、光を遮断できる蓋を備えることが好ましい。また、栽培槽にプランクトンや貝類などが混入することを防ぐため、栽培液供給部に海水又は汽水を注入する前、或いは栽培液供給部から栽培槽に栽培液を供給する前にろ過部でろ過することが好ましい。
尚、栽培液供給部は、栽培液(或いは海水又は汽水)の水温を所望の温度に設定するための温度調整部を有することが好ましい。栽培液の水温を5〜22℃に保つことにより、年間を通じて葉体を健康に育成することができる。
【0010】
栽培槽の全長は、栽培するアマノリ類の成長速度、収穫時の葉体の大きさ(長さ)、収穫周期によって、適宜、選択することができる。例えば、スサビノリの場合、原胞子から初めの1ヶ月で長さ約1cmの葉体に生長した後、その長さは日成長率20%で生長する。よって、約50cmの長さで週1回のペースで収穫する場合、葉体保持部材に付着した各成長段階の葉体同士が重ならないように並べるためには、80cm〜1m程度の長さが必要となる。また、毎日収穫する場合は、3.5m〜5mの長さが必要である。
【0011】
葉体保持部材の長さは、栽培槽の横幅とほぼ同等であるが、通常1〜2人で作業するので、1m以内にすることが好ましい。1mを超えると葉体保持部材の移動や収穫において葉体保持部材の扱いが困難になるからである。葉体保持部材の保持間隔は葉体が下流の葉体と重ならないように、葉体の生育状況に合わせて適宜、選択することができる。葉体が重なると、上になった葉体が光を遮って下になった葉体の光合成を妨げ、その生長を阻害するからである。
間隔調整部への葉体保持部材の固定方法は適宜、選択することができる。糸状や紐状の葉体保持部材の両端に錘や抜け止めの係止部材を取り付け、各々の錘や係止部材の内側を側壁の溝に落とし込む方法、糸状や紐状の葉体保持部材の両端を側壁に形設した突起に結びつけたり、クリップなどで挟み込んだりして固定する方法などを用いることができる。また、棒状の葉体保持部材の両端を側壁のスリットに嵌合させる等して固定することもできる。
【0012】
栽培槽の材質は適宜、選択することができるが、内表面(底面)を鏡面仕上げしたり、底面に反射材を敷設したりした場合、栽培槽に照射される光を底面で反射させ、その反射光も光合成に利用して成長を促進することができ、照射光の利用の効率性に優れる。よって、栽培槽の底面部の材質としては、錆難く、光を反射するステンレスが特に好適に用いられる。
栽培槽における栽培液の流下速度が5〜15cm/秒となるように栽培液の供給量や栽培槽の底部の傾斜角度などを調整することが好ましい。栽培液の流下速度が5cm/秒より遅くなるにつれ、栽培液の肥料成分を豊富にしてもアマノリ類の葉体の成長が抑制される傾向があり、15cm/秒より速くなるにつれ、水流によって葉体が傷付いたり、切断されたりして品質や収穫量が低下し易くなる傾向があり、いずれも好ましくない。
栽培装置の設置場所は、適宜、選択することができるが、海水や汽水が入手し易い場所が好適に用いられる。また、太陽光を遮断し、密閉した室内空間であれば、葉体の生育に最適な光の照射条件や温湿度条件などを調整、管理し易く、生産性、品質の均一性に優れる。
【0013】
このアマノリ類の栽培装置は、葉体から放出される原胞子を用いることにより、糸状体から放出される殻胞子に頼ることなく、1年を通して安定した収穫を実現することを基本とするが、必要に応じて、生育の良い葉体を選択して成熟させ、果胞子から発芽した糸状体から殻胞子を放出させて、それらを利用することにより、さらに多くの良質な葉体を得ることができ、生産性、品質を向上させることができる。
【0014】
請求項2に記載のアマノリ類の栽培装置は、請求項1に記載のアマノリ類の栽培装置であって、前記栽培槽の底部に、上流側の水深が深く、下流側の水深が浅い傾斜面が形設されている構成を有している。
この構成により、請求項1の作用に加えて、以下のような作用が得られる。
(1)栽培槽の底部に、上流側の水深が深く、下流側の水深が浅い傾斜面が形設されていることにより、葉体が幼芽時期に放出する原胞子が、下流側の葉体保持部材に付着する確率を高めることができ、原胞子の有効利用性、種付けの効率性に優れる。
【0015】
ここで、栽培槽の水深は栽培液中の葉体が空気中に露出しないように、葉体の生育状態に応じて、適宜、調整することができるが、葉体が小さい下流側から葉体が大きく生育する上流側にかけて0.2cm〜10cmの範囲で選択することが好ましい。
栽培槽の下流側の水深が0.2cmより浅くなるにつれ、原胞子を付着させるための葉体保持部材や発芽したばかりの葉体が空気中に露出し易く、原胞子の付着や発芽、葉体の成長が阻害される傾向があり、上流側の水深が10cmより深くなるにつれ、栽培液の量が不必要に増加し、栽培の効率性、省資源性が低下し易くなる傾向があり、いずれも好ましくない。
【0016】
請求項3に記載のアマノリ類の栽培装置は、請求項1又は2に記載のアマノリ類の栽培装置であって、前記栽培槽に光を照射する光照射部を備えている構成を有している。
この構成により、請求項1又は2の作用に加えて、以下のような作用が得られる。
(1)栽培槽に光を照射する光照射部を備えていることで、アマノリ類の生育に適した光環境を作ることができ、日照時間の増減が生育に与える悪影響を抑えることができる。
(2)光の照射時間を調整することで、葉体の成長を促進したり、抑制したりすることもでき、年間を通じて略均一な大きさの葉体の生産が可能であり、高品質性、生産性に優れる。
【0017】
ここで、光照射部は、栽培槽に光を照射できるものであればよいが、蛍光灯、蛍光水銀灯、発光ダイオードなどが好適に用いられる。光の照射時間はその照度(強度)にもよるが、1日当たり8〜14時間が好ましく、光合成光量子束密度は50〜80μmol/m2/sの範囲で調整することが好ましい。この範囲を下回ると光合成量が不足し、成長が遅くなる傾向があり、この範囲を超えると強光障害が発生し易くなる傾向があり、いずれも好ましくない。
【0018】
請求項4に記載のアマノリ類の栽培装置は、請求項1乃至3の内いずれか1項に記載のアマノリ類の栽培装置であって、前記間隔調整部が、前記栽培槽の両側部の上流側から下流側にかけて間隔を空けて形設された突起状又はスリット状の複数の保持部材装着部を備えている構成を有している。
この構成により、請求項1乃至3の内いずれか1項の作用に加えて、以下のような作用が得られる。
(1)間隔調整部が、栽培槽の両側部の上流側から下流側にかけて間隔を空けて形設された突起状又はスリット状の複数の保持部材装着部を備えることにより、葉体保持部材の両端部を保持部材装着部に結着したり、係止したりして簡便に固定することができ、葉体の成長に合わせて葉体保持部材の設置間隔を自由に変えることができるので、隣接する葉体保持部材に付着した葉体同士が重なることを防止でき、生育の効率性に優れ、収穫量を高めることができる。
(2)略一定の大きさに生育した葉体を一定量ずつまとめて収穫することができ、収穫量の安定性、品質の均一性に優れる。
(3)葉体保持部材に付着したままの葉体を生の状態でまとめて出荷することができ、葉体が傷付き難く、鮮度低下による品質の劣化を防ぐことができ、取扱い性、搬送性に優れる。
【0019】
ここで、保持部材装着部は、栽培槽の両側壁の内側にそれぞれ形設することができる。尚、保持部材装着部の間隔は、適宜、選択することができ、下流側から上流側にかけて等間隔(一定)で形成してもよいし、下流側から上流側に向かって徐々に広げるように形成してもよい。いずれの場合も、葉体の生育に合わせて葉体保持部材の設置位置を選択することにより、隣接する葉体保持部材との間隔を調整できる。
葉体保持部材が糸状や紐状の場合は、直接、突起状やスリット状の保持部材装着部に結着したり、端部に環状部を形成して係止したりして固定することができる。葉体保持部材が棒状の場合は、両端部に糸や紐などの固定部材を取り付けて上記と同様に結着や係止によって固定することもできるし、スリット状の保持部材装着部に直接、嵌合又は挟持して固定することもできる。
栽培槽の外側部に目盛りなどを設ければ、それを目安として簡便に葉体保持部材の間隔を調整することができ、使用性に優れる。
【0020】
請求項5に記載のアマノリ類の栽培装置は、請求項1乃至3の内いずれか1項に記載のアマノリ類の栽培装置であって、前記葉体保持部材の両端部に棒状の支持部材が配設又は形設され、前記間隔調整部が、前記栽培槽の両側部の上流側から下流側にかけて形設され前記支持部材が挿抜自在に嵌合される複数の嵌合凹部又は前記支持部材が前記栽培槽の長手方向に沿って摺動自在に挟持される凹条溝部を備えている構成を有している。
この構成により、請求項1乃至3の内いずれか1項の作用に加えて、以下のような作用が得られる。
(1)葉体保持部材の両端部に棒状の支持部材が配設又は形設され、間隔調整部が、栽培槽の両側部の上流側から下流側にかけて形設され支持部材が挿抜自在に嵌合される複数の嵌合凹部又は支持部材が栽培槽の長手方向に沿って摺動自在に挟持される凹条溝部を備えているので、支持部材を所定の位置の嵌合凹部に差し込むか、凹条溝部の長手方向の所望の位置で挟持して固定することができ、葉体の生育に合わせて葉体保持部材の設置間隔を自由に変えることができるので、隣接する葉体保持部材に付着した葉体同士が重なることを防止でき、生育の効率性に優れ、収穫量を高めることができる。
(2)葉体保持部材の両端部に配設又は形設された棒状の支持部材を嵌合凹部に挿抜したり、凹条溝部に沿って移動させたりするだけで、短時間で簡便に葉体保持部材の位置を変更することができ、間隔調整作業の容易性、省力性に優れる。
(3)間隔調整部が凹条溝部を有する場合、葉体保持部材の両端部の支持部材を持って、そのままスライドさせるだけで所望の位置に移動させることができ、操作性に優れるだけでなく、無段階で固定位置を選択することができ、位置調整の自在性に優れる。
(4)略一定の大きさに生育した葉体を一定量ずつまとめて収穫することができ、収穫量の安定性、品質の均一性に優れる。
(5)葉体保持部材に付着したままの葉体を生の状態でまとめて出荷することができ、葉体が傷付き難く、鮮度低下による品質の劣化を防ぐことができ、取扱い性、搬送性に優れる。
【0021】
ここで、葉体保持部材が糸状、紐状、帯状などの場合は、その両端部を直接、棒状の支持部材に結着するなどして取り付けることができる。葉体保持部材が棒状の場合は、葉体保持部材と支持部材を一体に形成することができる。
嵌合凹部や凹条溝部は、栽培槽の両側壁の内側にそれぞれ形設することができる。尚、嵌合凹部の間隔は、前述の保持部材装着部と同様に、下流側から上流側にかけて等間隔(一定)で形成してもよいし、下流側から上流側に向かって徐々に広げるように形成してもよい。
凹条溝部は、支持部材を挟持できるものであればよいが、少なくとも支持部材と接触する面は弾性を有することが好ましい。支持部材を確実に挟持し、支持部材の傾きや転倒、移動などを防止するためである。凹条溝部は、ブロック状の弾性体に直接、形成してもよいし、栽培槽に両側部にそれぞれ所定間隔を空けて立設した板材(壁)の内側に短冊状の弾性体を貼着する等して形成してもよい。
弾性体の材質としては、ウレタンフォーム、メラミンフォーム、ポリエチレンフォーム、セルローススポンジ、シリコンゴム等を発泡させた発泡ゴム等が好適に用いられる。
請求項4と同様に、栽培槽の外側部には目盛りなどを設けることができる。
【0022】
請求項6に記載のアマノリ類の栽培装置は、請求項1乃至5の内いずれか1項に記載のアマノリ類の栽培装置であって、前記栽培液供給部が、前記栽培液に炭酸ガスを供給する炭酸ガス発生部又は前記栽培液に肥料成分を補給する肥料補給部の少なくともいずれか一方を備えている構成を有している。
この構成により、請求項1乃至5の内いずれか1項の作用に加えて、以下のような作用が得られる。
(1)栽培液供給部が、栽培液に炭酸ガスを供給する炭酸ガス発生部を備えている場合、栽培液中の葉体に十分な炭酸ガスを供給して光合成を促進することができ、葉体の成長を促進できる。
(2)炭酸ガス発生部で予め炭酸ガスを供給、溶解させた栽培液を栽培液供給部から栽培槽に供給することができるので、炭酸ガスの発生による栽培液表面の乱れが発生することがなく、栽培槽に照射される光の乱反射を抑制し、照射された光を無駄なく有効に利用して光の照射条件を略一定に保つことができ、生育の効率性、省エネルギー性、品質の均一性に優れる。
(3)栽培液供給部が、栽培液に肥料成分を補給する肥料補給部を備えている場合、肥料成分の不足を防いで最適な栽培条件を整えることができ、高品質な葉体を収穫できる。
【0023】
ここで、炭酸ガス発生部は、海水や汽水に炭酸ガスを添加できるものでればよい。果樹や葉菜類、果菜類などのハウス栽培において用いられるものと同様の手段を用いることができるが、燃焼排ガスや二酸化炭素ボンベのガスなどをエアストーンや散気管などから水中に散気させるものが好適に用いられる。
肥料補給部は、栽培液に肥料成分を補給できるものであればよい。肥料成分としては、窒素、カリウム、リンなどがあり、これらの内の不足しているものを適宜、選択して配合することができる。通常の海水では、アマノリ類にとって窒素やリンが不足し易いので、これらを添加することが好ましい。
【0024】
請求項7に記載のアマノリ類の栽培装置は、請求項1乃至6の内のいずれか1に記載のアマノリ類の栽培装置であって、前記栽培槽の下流に連設され前記栽培槽から流下する前記栽培液と共に前記葉体が幼芽時期に放出する原胞子を回収する回収槽を備えている構成を有している。
この構成により、請求項1乃至6の内いずれか1の作用に加えて、以下のような作用が得られる。
(1)栽培槽の下流に連設された回収槽により、葉体が幼芽時期に放出し、葉体保持部材に付着しなかった原胞子を栽培液と一緒に回収することができ、その中に新たな葉体保持部材を浸漬して原胞子を付着させることができるので、葉体から放出される原胞子を無駄なく有効に利用することができ、栽培の効率性に優れる。
【0025】
ここで、回収槽に貯留される栽培液を攪拌する攪拌手段を有する場合、栽培液と共にその中に浸漬された葉体保持部材を攪拌し、葉体保持部材に確実かつ十分に原胞子を付着させる(種付けする)ことができ、原胞子の有効利用性、種付けの確実性に優れる。
攪拌手段は、回収槽中の栽培液を攪拌できるものであればよい。プロペラ状などに形成された羽根を回転させるものや平板状の羽根を揺動させるものの他、ブロワーで空気を送るなどしてエアレーションを行うものなどを用いることができる。
【0026】
請求項8に記載のアマノリ類の栽培方法は、請求項1乃至7の内いずれか1項に記載のアマノリ類の栽培装置を用いたアマノリ類の栽培方法であって、前記間隔調整部に保持される複数の前記葉体保持部材を前記葉体の生育に合わせて前記栽培槽の下流側から上流側に移動させ、小さな葉体が付着した前記葉体保持部材を前記栽培槽の下流側に、大きな葉体が付着した前記葉体保持部材を前記栽培槽の上流側に配置する構成を有している。
この構成により、以下のような作用が得られる。
(1)間隔調整部に保持される複数の葉体保持部材を葉体の生育に合わせて栽培槽の下流側から上流側に移動させ、小さな葉体が付着した葉体保持部材を栽培槽の下流側に、大きな葉体が付着した葉体保持部材を栽培槽の上流側に配置することにより、葉体が幼芽時期に放出する原胞子が、下流域に配置された葉体保持部材のみに付着し、中流域や上流域の葉体保持部材に付着するおそれが減少し、生育途中で大きさの異なる葉体が混じり難く、栽培効率を高めることができ、品質の均一性に優れる。
(2)小さな葉体が付着した葉体保持部材を栽培槽の下流側に配置することにより、その葉体保持部材に原胞子が付着して発芽しても、葉体の大きさにばらつきが生じ難く、栽培効率の低下を防ぐことができる。
(3)栽培開始時の葉体保持部材に葉体の密度が低い部分があったとしても、その部分に原胞子が付着して発芽することにより、葉体がほぼ斑無く均一な状態で生育して略一定量の葉体を得ることができ、栽培効率を高めることができる。
(4)1つの葉体保持部材に付着した葉体の大きさが、より揃った状態で育成を行うことができるので、最上流部から順に収穫することで略均一に成熟した葉体のみを収穫することができ、栄養成分や旨味成分が豊富な品質のよいノリを得ることができる。
【0027】
ここで、葉体が付着した葉体保持部材は、葉体の成長と共に下流側の葉体と重ならないように、葉体保持部材同士の間隔を広げながら上流側に移動させていく。これにより、栽培槽の中に、より多くの葉体を効率的に配置することができ、栽培槽の最上流部から順次、成熟した葉体を収穫することができる。
尚、原胞子から発芽した葉体が約1cm程度に育つまでに1ヶ月程度かかるので、その期間は葉体保持部材を移動させなくても済むように、予め下流域の葉体保持部材同士の間隔を広め(例えば2cm程度)に設定しておくことが好ましい。尚、このときの葉体保持部材同士の間隔は一定でもよい。
【0028】
請求項9に記載のアマノリ類の栽培方法は、請求項8に記載のアマノリ類の栽培方法であって、前記殻胞子及び前記原胞子が付着していない新たな葉体保持部材を前記間隔調整部の最下流側に保持し、前記間隔調整部の上流側に保持された他の前記葉体保持部材に付着した葉体が幼芽時期に放出する原胞子を付着させる構成を有している。
この構成により、請求項8による作用に加えて、以下のような作用が得られる。
(1)殻胞子及び原胞子が付着していない新たな葉体保持部材を間隔調整部の最下流側に保持し、間隔調整部の上流側に保持された他の葉体保持部材に付着した葉体が幼芽時期に放出する原胞子を付着させることにより、順次、新たな葉体保持部材に原胞子を付着させて種付けすることができ、別途、種付け用の糸状体を育成するための設備や工数が不要であり、栽培の工程を簡素化することができ、栽培作業の効率性、省力性に優れる。
(2)栽培を続けている限り、天候や季節に関わらず、葉体が放出する原胞子を利用して栽培槽の下流域に配置した葉体保持部材に種付けを行うことができ、年間を通じて高品質で均質な葉体を確実に収穫することができ、生産性に優れる。
【0029】
請求項10に記載のアマノリ類の栽培方法は、請求項8に記載のアマノリ類の栽培方法であって、前記原胞子回収部に貯留される前記栽培液に前記殻胞子及び前記原胞子が付着していない新たな葉体保持部材を浸漬、攪拌して前記栽培液中の原胞子を前記葉体保持部材に付着させて種付けし、前記間隔調整部の最下流側に保持する構成を有している。
この構成により、請求項8による作用に加えて、以下のような作用が得られる。
(1)原胞子回収部に貯留される栽培液に殻胞子及び原胞子が付着していない新たな葉体保持部材を浸漬、攪拌して栽培液中の原胞子を葉体保持部材に付着させて種付けすることにより、別途、種付け用の糸状体を育成するための設備や工数が不要であり、栽培の工程を簡素化することができ、栽培作業の効率性、省力性に優れる。
(2)栽培を続けている限り、天候や季節に関わらず、葉体が放出する原胞子を利用して確実に種付けを行うことができ、年間を通じて高品質で均質な葉体を収穫することができ、生産性に優れる。
(3)種付けした葉体保持部材を間隔調整部の最下流側に保持することにより、栽培液中で発芽させて葉体を育成することができ、葉体の成長に合わせて葉体保持部材を栽培槽の上流側に移動させて、順次、成熟した葉体を収穫することができ、収穫の作業性、効率性に優れる。
【0030】
ここで、栽培液中で葉体保持部材を攪拌する際には、前述の攪拌手段を用いてもよいし、人手で行ってもよい。
尚、原胞子を含んだ栽培液は、別途、保存しておき、必要に応じて、種付けに用いることができる。
【発明の効果】
【0031】
以上のように、本発明のアマノリ類の栽培装置及びそれを用いたアマノリ類の栽培方法によれば、以下のような有利な効果が得られる。
請求項1に記載の発明によれば、
(1)葉体の生育に合わせて葉体保持部材同士の間隔を調整しながら上流側に移動させることができ、葉体が重なり合うことを防ぎ、良好で安定した生育環境を整えることができ、年間を通じて高品質で均質な葉体を効率的に栽培、収穫することができる高品質性、効率性に優れたアマノリ類の栽培装置を提供できる。
【0032】
請求項2に記載の発明によれば、請求項1に記載の発明によって得られる効果に加え、
(1)葉体が幼芽時期に放出する原胞子を有効に利用して簡便に種付けを行うことができる種付け作業の省力性、原胞子利用の確実性に優れたアマノリ類の栽培装置を提供できる。
【0033】
請求項3に記載の発明によれば、請求項1又は2に記載の発明によって得られる効果に加え、
(1)光の照射時間を最適に保つことができるだけでなく、必要に応じて、照射時間を調整し、葉体の成長の促進や抑制を図ることもでき、年間を通じて、安定した葉体の生産が可能な量産性、安定性に優れたアマノリ類の栽培装置を提供できる。
【0034】
請求項4に記載の発明によれば、請求項1乃至3の内のいずれか1項に記載の発明によって得られる効果に加え、
(1)葉体保持部材を簡便に着脱することができ、葉体の成長に合わせて葉体保持部材の設置間隔を自由に調整して、葉体同士が重なることを防止でき、収穫量を高めることができる生育の効率性、量産性に優れたアマノリ類の栽培装置を提供できる。
【0035】
請求項5に記載の発明によれば、請求項1乃至4の内いずれか1項に記載の発明によって得られる効果に加え、
(1)葉体の成長に合わせて葉体保持部材を簡便に移動させることができ、その設置間隔を自由に調整することができる間隔調整作業の容易性、省力性に優れたアマノリ類の栽培装置を提供できる。
【0036】
請求項6に記載の発明によれば、請求項1乃至5の内いずれか1項に記載の発明によって得られる効果に加え、
(1)必要に応じて、葉体の生育に必要な炭酸ガスや肥料成分を簡便かつ確実に供給することができ、安定した条件で葉体の成長を促進して、高品質な葉体を収穫することができる生育の効率性、品質の均一性に優れたアマノリ類の栽培装置を提供できる。
【0037】
請求項7に記載の発明によれば、請求項1乃至6の内いずれか1項に記載の発明によって得られる効果に加え、
(1)葉体が幼芽時期に放出する原胞子を栽培液と一緒に漏れなく回収して葉体保持部材に付着させることができ、原胞子を無駄なく有効に利用することができる栽培の効率性、原胞子の有効利用性に優れたアマノリ類の栽培装置を提供できる。
【0038】
請求項8に記載の発明によれば、
(1)1つの葉体保持部材に付着した葉体の大きさにばらつきが生じ難く、葉体の大きさが、より揃った状態で育成を行うことができ、栽培効率を高め、栄養成分や旨味成分が豊富で品質のよいノリを得ることができる品質の均一性、安定性に優れたアマノリ類の栽培方法を提供できる。
【0039】
請求項9に記載の発明によれば、請求項8に記載の発明によって得られる効果に加え、
(1)天候や季節に関わらず、順次、新たな葉体保持部材に原胞子を付着させて種付けすることができ、別途、種付け用の糸状体を育成するための設備や工数が不要で、栽培の工程を簡素化することができ、年間を通じて高品質で均質な葉体を確実に収穫することができる栽培作業の効率性、省力性、生産の安定性に優れたアマノリ類の栽培方法を提供できる。
【0040】
請求項10に記載の発明によれば、請求項8に記載の発明によって得られる効果に加え、
(1)天候や季節に関わらず、順次、新たな葉体保持部材に原胞子を付着させて種付けすることができ、種付けの確実性に優れ、別途、種付け用の糸状体を育成するための設備や工数が不要で、栽培の工程を簡素化することができ、年間を通じて高品質で均質な葉体を確実に収穫することができる栽培作業の効率性、省力性、生産の安定性に優れたアマノリ類の栽培方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】実施の形態1のアマノリ類の栽培装置を示す要部断面模式図
【図2】(a)実施の形態1のアマノリ類の栽培装置における栽培槽の部分平面模式図 (b)図2(a)のA−A線矢視断面模式図
【図3】(a)実施の形態2のアマノリ類の栽培装置における栽培槽の部分平面模式図 (b)図3(a)のB−B線矢視断面模式図
【図4】(a)実施の形態3のアマノリ類の栽培装置における栽培槽の部分平面模式図 (b)図4(a)のC−C線矢視断面模式図
【発明を実施するための形態】
【0042】
(実施の形態1)
本発明の実施の形態1のアマノリ類の栽培装置及びそれを用いたアマノリ類の栽培方法について、以下図面を参照しながら説明する。
図1は実施の形態1のアマノリ類の栽培装置を示す要部断面模式図である。
図1中、1は実施の形態1のアマノリ類の栽培装置、2は栽培装置1の栽培液供給部、3は栽培液20に用いる海水や汽水をろ過する栽培液供給部2のろ過部、4はろ過部3でろ過された海水や汽水を貯留する栽培液供給部2の貯留部、5は貯留部4に沈設され海水や汽水を所定の温度に保持するための加温冷却器を用いた栽培液供給部2の温度調整部、6は貯留部4から後述する栽培液供給槽9への海水や汽水の供給の有無や供給量を調整する栽培液供給弁、7は栽培液20に窒素、カリウム、リン等の肥料成分を補給する肥料補給部、8は肥料補給部7からの肥料成分の補給の有無や補給量の調整を行うための肥料補給弁、9は後述する栽培槽11の上流側に連設された栽培液供給部2の栽培液供給槽、10は栽培液供給槽9に沈設され図示しない二酸化炭素ボンベなどから供給される炭酸ガスを栽培液20に添加する散気管などを用いた栽培液供給部2の炭酸ガス発生部、11は栽培液供給部2の栽培液供給槽9から供給される栽培液20を下流側に流下させる栽培装置1の栽培槽、11aは栽培槽11の底部、11bは栽培槽11の底部11aに上流側の水深が深く下流側の水深が浅くなるように形設された傾斜面、11cは栽培槽11の側壁部、12は栽培槽11の下流に連設され栽培槽11から流下する栽培液20と共にアマノリ類の葉体が幼芽時期に放出する原胞子を回収する栽培装置1の回収槽、13は排水弁13aを開閉することにより必要に応じて回収槽12から栽培液20を排水する排水管、14は栽培槽11の底部11aの四隅に配設された脚部、14aは上流側の脚部14に配設され栽培槽11の傾きを調整するための高さ調整部、15は栽培槽11の上方に配設され栽培槽11に光を照射する光照射部、16は光照射部15の傘部、17は傘部16を天井から吊り下げる吊り下げ部、18は傘部16の内側に所定の間隔で配置された光照射部15の蛍光灯、19は蛍光灯18の長手方向と平行方向及び直交方向に縦横(マトリックス状)に並ぶように蛍光灯18と蛍光灯18の間に所定の間隔で配置された光照射部15の複数列の発光ダイオードである。
【0043】
栽培液供給部2の貯留部4に海水や汽水を注入する前にろ過部3でろ過し、栽培槽11にプランクトンや貝類などが混入することを防いだ。尚、ろ過部3は栽培液供給槽9の直前に設けてもよい。
貯留部4に貯留される海水や汽水の水温は温度調整部5によって所望の温度に設定することができる。これにより、栽培液20の水温を5〜22℃に保つことができ、年間を通じて葉体を健康に育成することができる。
栽培槽11の材質は適宜、選択することができるが、底部11aは錆難く、光を反射するステンレスで形成した。栽培槽11に照射される光を傾斜面11bで反射させ、その反射光も光合成に利用して成長を促進させることができ、照射光の利用の効率性に優れるためである。
尚、栽培槽11の内表面(傾斜面11b)を鏡面仕上げしたり、傾斜面11bの表面に反射材を敷設したりして、照射光の反射率を向上させることもできる。
【0044】
次に、実施の形態1のアマノリ類の栽培装置における栽培槽の詳細について説明する。
図2(a)は実施の形態1のアマノリ類の栽培装置における栽培槽の部分平面模式図であり、図2(b)は図2(a)のA−A線矢視断面模式図である。
図2中、25は栽培槽11の両側部の上流側から下流側にかけて形設され後述する葉体保持部材50の両端部を着脱自在に保持して複数の葉体保持部材50の間隔を調整する間隔調整部、26aは栽培槽11の傾斜面11b上に載置される間隔調整部25の支持板、26bは支持板26a上に栽培槽11の長手方向と平行に立設された間隔調整部25の基部、26cは基部26bの上方に突出するように櫛歯型に形設された間隔調整部25の複数の突起部、26dは突起部26cの幅方向中央部にスリット状に形成された間隔調整部25の複数の保持部材装着部、50は両端部がそれぞれ保持部材装着部26dに係止されて左右の間隔調整部25の間に張設された糸状、紐状、帯状若しくは棒状の葉体保持部材、51は葉体保持部材50の両端部に取り付けられ保持部材装着部26dの両側の突起部26cに係合して保持部材装着部26dから葉体保持部材50が抜け落ちることを防止する錘、60は葉体保持部材50に付着したアマノリ類の葉体である。
【0045】
栽培槽11の水深は栽培液20中の葉体が空気中に露出しないように、葉体60の生育状態に応じて、適宜、調整することができるが、葉体60が小さい下流側から葉体60が大きく生育する上流側にかけて0.2cm〜10cmの範囲で選択した。
栽培槽11の下流側の水深が0.2cmより浅くなるにつれ、原胞子を付着させるための葉体保持部材50や発芽したばかりの葉体60が空気中に露出し易く、原胞子の付着や発芽、葉体60の成長が阻害される傾向があり、上流側の水深が10cmより深くなるにつれ、栽培液20の量が不必要に増加し、栽培の効率性、省資源性が低下し易くなる傾向があることがわかったためである。
【0046】
間隔調整部25への葉体保持部材50の固定方法は本実施の形態に限られるものではなく、葉体保持部材50の材質や形状などに応じて、適宜、選択することができる。糸状、紐状若しくは帯状の葉体保持部材50の両端をそれぞれ保持部材装着部26dに通した後、突起部26cに巻き付けて結着してもよいし、葉体保持部材50の両端をそれぞれ突起部26cと一緒にクリップなどで挟んで固定してもよい。また、葉体保持部材50が剛性を有する棒状に形成されている場合は、保持部材装着部26dに葉体保持部材50の両端を嵌合させて簡便に固定することができる。
保持部材装着部26dの間隔は、適宜、選択することができ、下流側から上流側にかけて等間隔(一定)で形成してもよいし、下流側から上流側に向かって徐々に広げるように形成してもよい。いずれの場合も、葉体60の生育に合わせて葉体保持部材50の設置位置を選択することにより、隣接する葉体保持部材50との間隔を調整できる。
尚、栽培槽11の側壁部11cの外側部に目盛りなどを設ければ、それを目安として簡便に葉体保持部材50の間隔を調整することができ、使用性に優れる。
【0047】
葉体保持部材50の材質は、適宜、選択することができるが、通水性や透水性を有する濾布のような膜状の材質を用いた場合は、栽培液20と共に流下する原胞子が葉体保持部材50の内部(隙間)に侵入して付着し易く、種付けの確実性に優れる。例えば、繊維などを撚って糸状や紐状に形成したもの、織布、不織布、網体などを紐状や帯状に切断したもの等が好適に用いられる。また、葉体保持部材50を合成樹脂や木などで棒状や帯状に形成する場合、表面に凹凸を形成したり、微小孔を穿設したりして、原胞子を付着させ易くすることもできる。或いは、合成樹脂製や木製などの棒状部材の周りに、織布、不織布、網体などを巻き付けてもよい。
尚、葉体保持部材50を棒状や帯状に形成する場合は、流下する栽培液20の抵抗とならないように、太さや幅を選択した。
【0048】
以上のように構成された本発明の実施の形態1のアマノリ類の栽培装置を用いたアマノリ類の栽培方法について説明する。
まず、アマノリ類の殻胞子又は原胞子を予め付着させた1乃至複数本の葉体保持部材50を間隔調整部25の下流側の保持部材装着部26dに固定し、栽培槽11の栽培液20の中に浸す。
栽培液20は、肥料成分や炭酸ガスを適宜、補給しながら、栽培槽11の上流側から下流側に流下させる。
光照射部15は、光合成光量子束密度を50〜80μmol/m2/sの範囲で調整し、1日当たり8〜14時間、栽培槽11に光を照射した。この範囲を下回ると光合成量が不足し、成長が遅くなる傾向があり、この範囲を超えると強光障害が発生し易くなる傾向があることがわかったためである。
尚、光照射部15から光を照射しない間は、栽培液20は流下させなくてもよい。
【0049】
葉体保持部材50に付着させたアマノリ類の殻胞子又は原胞子が発芽したら、葉体60の成長に合わせて、隣接する葉体保持部材50の間隔を広げながら栽培槽11の上流側へ移動させる。
間隔調整部25の最下流側の保持部材装着部26dには、殻胞子や原胞子が付着していない新たな葉体保持部材50を固定し、間隔調整部25の上流側の保持部材装着部26dに保持された他の葉体保持部材50に付着した葉体60が幼芽時期に放出する原胞子を付着させる。原胞子が発芽したら、葉体60の成長に合わせて、他の葉体保持部材50と共に、間隔を調整しながら栽培槽11の上流側へ移動させる。
葉体保持部材50が最上流側まで移動し、葉体60が十分に成熟したら、保持部材装着部26cからその葉体保持部材50を取り外して収穫する。
【0050】
最初は、予め殻胞子又は原胞子を付着させた葉体保持部材50が必要だが、殻胞子又は原胞子から発芽して葉体60が生育を始めた後は、葉体60が幼芽時期に放出する原胞子を利用することができるので、その後は、殻胞子や原胞子が付着していない新たな葉体保持部材50を追加するだけで、順次、種付けが行われ、葉体60を発芽させることができ、半永久的にアマノリ類の栽培を行うことができる。
尚、必要に応じて、回収槽12に貯留される栽培液20に殻胞子や原胞子が付着していない新たな葉体保持部材50を浸漬、攪拌して栽培液20中の原胞子を葉体保持部材50に確実かつ十分に付着させて種付けし、間隔調整部25の最下流側に取り付けてもよい。
このようにして種付けした葉体保持部材50を利用して、アマノリ類の栽培装置1の数を増やし、生産量の拡大を図ることができる。
また、回収槽12に貯留される栽培液20には葉体保持部材50に付着しなかった原胞子が含まれているので、排水弁13aを開いて排水管13から排水した栽培液20を保存しておき、必要に応じて、種付けに用いることができる。
【0051】
以上のように構成された実施の形態1におけるアマノリ類の栽培装置によれば、以下の作用を有する。
(1)栽培液供給部から供給される栽培液を上流側から下流側に流下させる栽培槽を有することにより、栽培槽で栽培されるアマノリ類の葉体の表面が栽培液の水流によって洗浄され、汚れなどが付着しづらく、アマノリ類が良好な生育を続けることができる。
(2)栽培槽の両側部の上流側から下流側にかけて形設され葉体保持部材の両端部を着脱自在に保持して複数の葉体保持部材の間隔を調整する間隔調整部を有するので、葉体の生育に合わせて葉体保持部材同士の間隔を簡便に調整することができ、隣接する葉体保持部材に付着した葉体が重なり合って陰になることが防がれ、生育が平均的に進む。
(3)間隔調整部で葉体保持部材の両端部を着脱自在に保持できるので、葉体保持部材を一定の長さに保って簡便に移動させることができ、葉体保持部材の着脱及び移動の作業性に優れる。
(4)殻胞子又は原胞子から発芽した葉体は幼芽時期に原胞子を放出するので、間隔調整部の最下流側に殻胞子及び原胞子が付着していない新たな葉体保持部材を保持し、上流側に葉体が付着した葉体保持部材を保持することにより、最下流側の新たな葉体保持部材に原胞子を付着させることができ、種付けの作業性に優れる。
(5)間隔調整部によって複数の葉体保持部材の間隔を調整することができるので、葉体の生育に合わせて葉体保持部材を上流側に移動させ、小さな葉体が付着した葉体保持部材を栽培槽の下流側に保持し、大きな葉体が付着した葉体保持部材を栽培槽の上流側に保持することにより、栽培槽全体に複数の葉体保持部材を効率的に配置することができ、1つの葉体保持部材に生育状態の異なる葉体が同時に存在することがなく、十分に生育した葉体のみが付着した葉体保持部材を上流側から回収して効率的に収穫することができる。
(6)栽培槽の底部に、上流側の水深が深く、下流側の水深が浅い傾斜面が形設されていることにより、葉体が幼芽時期に放出する原胞子が、下流側の葉体保持部材に付着する確率を高めることができ、原胞子の有効利用性、種付けの効率性に優れる。
(7)栽培槽に光を照射する光照射部を備えていることで、アマノリ類の生育に適した光環境を作ることができ、日照時間の増減が生育に与える悪影響を抑えることができる。
(8)光の照射時間を調整することで、葉体の成長を促進したり、抑制したりすることもでき、年間を通じて略均一な大きさの葉体の生産が可能であり、高品質性、生産性に優れる。
(9)間隔調整部が、栽培槽の両側部の上流側から下流側にかけて間隔を空けて形設されたスリット状の複数の保持部材装着部を備えることにより、葉体保持部材の両端部を保持部材装着部に係止したり、側方の突起部に結着したりして簡便に固定することができ、葉体の成長に合わせて葉体保持部材の設置間隔を自由に変えることができるので、隣接する葉体保持部材に付着した葉体同士が重なることを防止でき、生育の効率性に優れ、収穫量を高めることができる。
(10)略一定の大きさに生育した葉体を一定量ずつまとめて収穫することができ、収穫量の安定性、品質の均一性に優れる。
(11)葉体保持部材に付着したままの葉体を生の状態でまとめて出荷することができ、葉体が傷付き難く、鮮度低下による品質の劣化を防ぐことができ、取扱い性、搬送性に優れる。
(12)栽培液供給部が、栽培液に炭酸ガスを供給する炭酸ガス発生部を備えていることにより、栽培液中の葉体に十分な炭酸ガスを供給して光合成を促進することができ、葉体の成長を促進できる。
(13)炭酸ガス発生部で予め炭酸ガスを供給、溶解させた栽培液を栽培液供給部から栽培槽に供給することができるので、炭酸ガスの発生による栽培液表面の乱れが発生することがなく、栽培槽に照射される光の乱反射を抑制し、照射された光を無駄なく有効に利用して光の照射条件を略一定に保つことができ、生育の効率性、省エネルギー性、品質の均一性に優れる。
(14)栽培液供給部が、栽培液に肥料成分を補給する肥料補給部を備えていることにより、肥料成分の不足を防いで最適な栽培条件を整えることができ、高品質な葉体を収穫できる。
(15)栽培槽の下流に連設された回収槽により、葉体が幼芽時期に放出し、葉体保持部材に付着しなかった原胞子を栽培液と一緒に回収することができ、その中に新たな葉体保持部材を浸漬して原胞子を付着させることができるので、葉体から放出される原胞子を無駄なく有効に利用することができ、栽培の効率性に優れる。
【0052】
以上のように構成された実施の形態1におけるアマノリ類の栽培装置を用いたアマノリ類の栽培方法によれば、以下の作用を有する。
(1)間隔調整部に保持される複数の葉体保持部材を葉体の生育に合わせて栽培槽の下流側から上流側に移動させ、小さな葉体が付着した葉体保持部材を栽培槽の下流側に、大きな葉体が付着した葉体保持部材を栽培槽の上流側に配置することにより、葉体が幼芽時期に放出する原胞子が、下流域に配置された葉体保持部材のみに付着し、中流域や上流域の葉体保持部材に付着するおそれが減少し、生育途中で大きさの異なる葉体が混じり難く、栽培効率を高めることができ、品質の均一性に優れる。
(2)小さな葉体が付着した葉体保持部材を栽培槽の下流側に配置することにより、その葉体保持部材に原胞子が付着して発芽しても、葉体の大きさにばらつきが生じ難く、栽培効率の低下を防ぐことができる。
(3)栽培開始時の葉体保持部材に葉体の密度が低い部分があったとしても、その部分に原胞子が付着して発芽することにより、葉体がほぼ斑無く均一な状態で生育して略一定量の葉体を得ることができ、栽培効率を高めることができる。
(4)1つの葉体保持部材に付着した葉体の大きさが、より揃った状態で育成を行うことができるので、最上流部から順に収穫することで略均一に成熟した葉体のみを収穫することができ、栄養成分や旨味成分が豊富な品質のよいノリを得ることができる。
(5)殻胞子及び原胞子が付着していない新たな葉体保持部材を間隔調整部の最下流側に保持し、間隔調整部の上流側に保持された他の葉体保持部材に付着した葉体が幼芽時期に放出する原胞子を付着させることにより、順次、新たな葉体保持部材に原胞子を付着させて種付けすることができ、別途、種付け用の糸状体を育成するための設備や工数が不要であり、栽培の工程を簡素化することができ、栽培作業の効率性、省力性に優れる。
(6)栽培を続けている限り、天候や季節に関わらず、葉体が放出する原胞子を利用して栽培槽の下流域に配置した葉体保持部材に種付けを行うことができ、年間を通じて高品質で均質な葉体を確実に収穫することができ、生産性に優れる。
【0053】
(実施の形態2)
本発明の実施の形態2のアマノリ類の栽培装置について、以下図面を参照しながら説明する。尚、実施の形態1と同様のものについては、同じ符号を付して説明を省略する。
図3(a)は実施の形態2のアマノリ類の栽培装置における栽培槽の部分平面模式図であり、図3(b)は図3(a)のB−B線矢視断面模式図である。
図3において、実施の形態2におけるアマノリ類の栽培装置の栽培槽11Aが実施の形態1におけるアマノリ類の栽培装置1の栽培槽11と異なるのは、間隔調整部35が、栽培槽11Aの両側部の上流側から下流側にかけて形設された複数の嵌合凹部36を有している点である。
尚、図3中、50aは葉体保持部材50の両端部に形成された環状部、50bは環状部50aに挿通固定され間隔調整部35の嵌合凹部36に挿抜自在に嵌合されて葉体保持部材50を支持する棒状の支持部材である。
これにより、両端部の支持部材50bを持って葉体保持部材50を簡便に移動させることができ、支持部材50bを所望の位置の嵌合凹部36に差し込むだけで、葉体保持部材50の設置間隔を調整することができる。
尚、実施の形態2におけるアマノリ類の栽培装置を用いたアマノリ類の栽培方法は実施の形態1と同様であるので、説明を省略する。
【0054】
以上のように構成された実施の形態2におけるアマノリ類の栽培装置によれば、実施の形態1の(1)乃至(8),(10)乃至(15)の作用に加え、以下の作用を有する。
(1)葉体保持部材の両端部に棒状の支持部材が配設され、間隔調整部が、栽培槽の両側部の上流側から下流側にかけて形設され支持部材が挿抜自在に嵌合される複数の嵌合凹部を備えているので、支持部材を所定の位置の嵌合凹部に差し込んで固定することができ、葉体の生育に合わせて葉体保持部材の設置間隔を自由に変えることができるので、隣接する葉体保持部材に付着した葉体同士が重なることを防止でき、生育の効率性に優れ、収穫量を高めることができる。
(2)葉体保持部材の両端部に配設された棒状の支持部材を嵌合凹部に挿抜するだけで、短時間で簡便に葉体保持部材の位置を変更することができ、間隔調整作業の容易性、省力性に優れる。
【0055】
以上のように構成された実施の形態2におけるアマノリ類の栽培装置を用いたアマノリ類の栽培方法によれば、実施の形態1と同様の作用を有する。
【0056】
(実施の形態3)
本発明の実施の形態3のアマノリ類の栽培装置について、以下図面を参照しながら説明する。尚、実施の形態1又は2と同様のものについては、同じ符号を付して説明を省略する。
図4(a)は実施の形態3のアマノリ類の栽培装置における栽培槽の部分平面模式図であり、図4(b)は図4(a)のC−C線矢視断面模式図である。
図4において、実施の形態3におけるアマノリ類の栽培装置の栽培槽11Bが実施の形態1におけるアマノリ類の栽培装置1の栽培槽11と異なるのは、間隔調整部45が、栽培槽11Bの両側部の上流側から下流側にかけて形設された凹条溝部46を有している点である。
尚、図4中、46aはウレタンフォーム、メラミンフォーム、ポリエチレンフォーム、セルローススポンジ、シリコンゴム等を発泡させた発泡ゴム等の弾性体で短冊状に形成され凹条溝部46の両側部に立設された間隔調整部45の挟持部である。
これにより、実施の形態2と同様に葉体保持部材50の両端部に配設された支持部材50bを、栽培槽11Bの長手方向に沿って摺動自在に挟持することができ、支持部材50bを持ってスライドさせるだけで、葉体保持部材50を任意の位置に移動させてその設置間隔を調整することができる。
【0057】
本実施の形態では、栽培槽11Bに両側部にそれぞれ所定間隔を空けて短冊状の弾性体を立設して挟持部46aを形成したが、少なくとも支持部材50bと接触する面が、支持部材50bを挟持できるだけの弾性を有していればよいので、硬質性の板材(壁)などの内側に弾性体を貼着する等して形成してもよい。また、断面コ字型のブロック状の弾性体により、凹条溝部46と挟持部46aを一体に形成してもよい。
尚、実施の形態3におけるアマノリ類の栽培装置を用いたアマノリ類の栽培方法は実施の形態1と同様であるので、説明を省略する。
【0058】
以上のように構成された実施の形態3におけるアマノリ類の栽培装置によれば、実施の形態1の(1)乃至(8),(10)乃至(15)の作用に加え、以下の作用を有する。
(1)葉体保持部材の両端部に棒状の支持部材が配設され、間隔調整部が、栽培槽の両側部の上流側から下流側にかけて形設され支持部材が栽培槽の長手方向に沿って摺動自在に挟持される凹条溝部を備えているので、支持部材を凹条溝部の長手方向の所望の位置で挟持して固定することができ、葉体の生育に合わせて葉体保持部材の設置間隔を自由に変えることができるので、隣接する葉体保持部材に付着した葉体同士が重なることを防止でき、生育の効率性に優れ、収穫量を高めることができる。
(2)葉体保持部材の両端部に配設された棒状の支持部材を凹条溝部に沿って移動させるだけで、短時間で簡便に葉体保持部材の位置を変更することができ、間隔調整作業の容易性、省力性に優れる。
(3)間隔調整部が凹条溝部を有することにより、葉体保持部材の両端部の支持部材を持って、そのままスライドさせるだけで所望の位置に移動させることができ、操作性に優れるだけでなく、無段階で固定位置を選択することができ、位置調整の自在性に優れる。
【0059】
以上のように構成された実施の形態3におけるアマノリ類の栽培装置を用いたアマノリ類の栽培方法によれば、実施の形態1と同様の作用を有する。
【産業上の利用可能性】
【0060】
本発明は、自然環境に左右されず、作業性や生産性に優れたアマノリ類の栽培装置の提供、及び年間を通じて連続的に種苗を得ることができ、鮮度がよく食味に優れ、葉体の生育段階が揃っており、安定した品質のノリを収穫することができるアマノリ類の栽培方法を提供することができ、アマノリ類の栽培を普及させることができる。
【符号の説明】
【0061】
1 栽培装置
2 栽培液供給部
3 ろ過部
4 貯留部
5 温度調整部
6 栽培液供給弁
7 肥料補給部
8 肥料補給弁
9 栽培液供給槽
10 炭酸ガス発生部
11,11A,11B 栽培槽
11a 底部
11b 傾斜面
11c 側壁部
12 回収槽
13 排水管
13a 排水弁
14 脚部
14a 高さ調整部
15 光照射部
16 傘部
17 吊り下げ部
18 蛍光灯
19 発光ダイオード
20 栽培液
25,35,45 間隔調整部
26a 支持板
26b 基部
26c 突起部
26d 保持部材装着部
36 嵌合凹部
46 凹条溝部
46a 挟持部
50 葉体保持部材
50a 環状部
50b 支持部材
51 錘
60 葉体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
糸状、紐状、棒状又は帯状に形成された葉体保持部材に、アマノリ類の殻胞子又は原胞子を付着させ、前記殻胞子又は前記原胞子から発芽させて葉体を生育するアマノリ類の栽培装置であって、
栽培液供給部と、前記栽培液供給部から供給される栽培液を上流側から下流側に流下させる栽培槽と、前記栽培槽の両側部の上流側から下流側にかけて形設され前記葉体保持部材の両端部を着脱自在に保持して複数の前記葉体保持部材の間隔を調整する間隔調整部と、を備えていることを特徴とするアマノリ類の栽培装置。
【請求項2】
前記栽培槽の底部に、上流側の水深が深く、下流側の水深が浅い傾斜面が形設されていることを特徴とする請求項1に記載のアマノリ類の栽培装置。
【請求項3】
前記栽培槽に光を照射する光照射部を備えていることを特徴とする請求項1又は2に記載のアマノリ類の栽培装置。
【請求項4】
前記間隔調整部が、前記栽培槽の両側部の上流側から下流側にかけて間隔を空けて形設された突起状又はスリット状の複数の保持部材装着部を備えていることを特徴とする請求項1乃至3の内いずれか1項に記載のアマノリ類の栽培装置。
【請求項5】
前記葉体保持部材の両端部に棒状の支持部材が配設又は形設され、前記間隔調整部が、前記栽培槽の両側部の上流側から下流側にかけて形設され前記支持部材が挿抜自在に嵌合される複数の嵌合凹部又は前記支持部材が前記栽培槽の長手方向に沿って摺動自在に挟持される凹条溝部を備えていることを特徴とする請求項1乃至3の内いずれか1項に記載のアマノリ類の栽培装置。
【請求項6】
前記栽培液供給部が、前記栽培液に炭酸ガスを供給する炭酸ガス発生部又は前記栽培液に肥料成分を補給する肥料補給部の少なくともいずれか一方を備えていることを特徴とする請求項1乃至5の内いずれか1項に記載のアマノリ類の栽培装置。
【請求項7】
前記栽培槽の下流に連設され前記栽培槽から流下する前記栽培液と共に前記葉体が幼芽時期に放出する原胞子を回収する回収槽を備えていることを特徴とする請求項1乃至6の内いずれか1項に記載のアマノリ類の栽培装置。
【請求項8】
請求項1乃至7の内いずれか1項に記載のアマノリ類の栽培装置を用いたアマノリ類の栽培方法であって、前記間隔調整部に保持される複数の前記葉体保持部材を前記葉体の生育に合わせて前記栽培槽の下流側から上流側に移動させ、小さな葉体が付着した前記葉体保持部材を前記栽培槽の下流側に、大きな葉体が付着した前記葉体保持部材を前記栽培槽の上流側に配置することを特徴とするアマノリ類の栽培方法。
【請求項9】
前記殻胞子及び前記原胞子が付着していない新たな葉体保持部材を前記間隔調整部の最下流側に保持し、前記間隔調整部の上流側に保持された他の前記葉体保持部材に付着した葉体が幼芽時期に放出する原胞子を付着させることを特徴とする請求項8に記載のアマノリ類の栽培方法。
【請求項10】
前記回収槽に貯留される前記栽培液に前記殻胞子及び前記原胞子が付着していない新たな葉体保持部材を浸漬、攪拌して前記栽培液中の原胞子を前記葉体保持部材に付着させて種付けし、前記間隔調整部の最下流側に保持することを特徴とする請求項8に記載のアマノリ類の栽培方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−95536(P2012−95536A)
【公開日】平成24年5月24日(2012.5.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−243170(P2010−243170)
【出願日】平成22年10月29日(2010.10.29)
【出願人】(592034962)
【Fターム(参考)】