説明

アミノイミダゾールカルボキサミドの塩による腫瘍の治療および阻止

【課題】1次または2次転移腫瘍の阻止および/または抑制のための方法および組成物を提供する。
【解決手段】5-アミノイミダゾール-4-カルボキサミドの塩を含む、癌の増殖防止および抑制用医薬組成物であって、前記塩がオロト酸塩、塩酸塩およびリン酸塩から選ばれる前記医薬組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はアミノイミダゾールカルボキサミド(AICA)の塩および5-アミノ、または置換アミノ1,2,3-トリアゾール(トリアゾール類)の塩による1次または2次転移腫瘍の阻止および/または抑制するための組成物および方法に関する。
【背景技術】
【0002】
1.アミノイミダゾールカルボキサミドの塩
AICAは、文献上「オラザミド」と称される。オラザミドはアミノイミダゾールカルボキサミド(以下「AICA」と記す)の塩であって、肝臓の柔組織細胞の壊死を防止し再生を促進する作用に基づいて肝保護薬として使用されてきた。
【0003】
1.1. アミノイミダゾールカルボキサミドの塩の化学的性質および特性
オラザミドは以下のような種々の形で得られる。すなわち、オロト酸5-アミノイミダゾール4-カルボキサミド、オロト酸4-アミノ-5-イミダゾールカルボキサミド、または1,2,3,6-テトラヒドロ-2,6-ジオキソ-4-ピリミジンカルボキサミドと5-アミノ-1H-イミダゾール-4-カルボキサミドとの1:1の組み合わせ、またはオロト酸と5(または4)-アミノイミダゾール-4(または5)カルボキサミドの1:1の組み合わせなどである。イミダゾール環のC5アミン基はオロト酸あるいは化学的に生体と共存できるその他任意の有機酸のC4カルボキシル基に結合しうる。
オラザミドまたはオロト酸AICAの既知の薬理学的作用はAICAおよび/またはオロト酸によるものである。AICAは動物の核酸に取り込まれ、特にプリン生合成において取り込まれる。オロト酸はまた乳に見いだされ、動物の諸器官におけるピリミジン前駆体である。従って、オロト酸AICAは核酸のプリンおよびピリミジン部分の前駆体を含み、オロト酸AICAの肝保護薬としての適用はその肝実質細胞の再生を促進する効果に基づくものである。
【0004】

【0005】
1.2.AICA塩の薬物動態
オラザミドまたはオロト酸AICAは現在肝保護薬として使用されている。AICAは肝壊死を阻止しおよび肝実細胞の再生を促進することが見いだされた。AICA塩の投与において、AICAは主要な代謝産物である。
【0006】
1.3.AICA塩と腫瘍
AICAが正常細胞および腫瘍細胞においてプリン生合成の前駆体として使われるという知見はAICAのアナログが核酸生合成経路を阻害することによる抗腫瘍活性を示すことを示唆する。(Hano,K.,Akashi,A.,1964,Gann 55 :25-35.)従って一連のトリアゼノイミダゾール、5-アミノ基が種々のモノアルキル基およびジアルキルトリアゼノ基によって置換されたAICAアナログが合成され抗腫瘍活性が評価されてきた(Shealy,Y.F.,および Kranth,C.A.,1966,J.Med.Chem.9:34-38,Shealy,Y.F.,et al.,1962,J.Org.Chem.27:2150-2154;およびShealy,Y.F.,et al.,1961,J.Org.Chem.26:2396-2401.)。これらのアナログの一つである、以下の式を有する5-(ジメチルトリアゼノ)イミダゾール-4-カルボキサミン(DTICまたはDTIC-Dome、ダカルバジン)はマウス肉腫細胞180、アデノカルシノーマ細胞755、白血病細胞L1210に対して顕著な活性を示し(Shealy,Y.F.,et al.,1962,Biochem.Pharmacol.11:674-676)またメラノーマ細胞に対しても顕著な活性を示した(Rutty,C.J.,et al.,1984,Br.J.Cancer 48:140).
【0007】


【0008】
ダカルバジンまたはDTIC-Domeはヒトの抗癌剤として使用されている。DTIC-Domeの静脈投与後に分布容積が全体内水分量を越え、このことは特定の体内組織、おそらくは肝臓に局在することを示唆する。血漿内からの消失は二相性を示し初期半減期は19分であり、最終半減期は5時間である。尿中における無変化DTICの平均的な累積排出量は6時間後において注射投与量の40%である。DTICは腎糸球体で濾過されるより細尿管分泌されやすい。処置に用いられる濃度でDTICはヒト血漿タンパクと測定可能な程度には結合しない。DTICはヒトではさまざまに分解する。無変化のDTICの他に、5-アミノイミダゾール-4カルボキサミド(AICA)は尿中に排出されるDTICの主要な代謝産物である。AICAは内因性のものではなく、注射されたDTICに由来するものである。なぜなら、分子中のイミダゾール部分を14Cラベルした放射性DTIC(DTIC-2-14C)を投与した場合AICA-2-14Cを生ずるからである。DTIC-Domeの正確な作用機序は明らかでないが、以下の3つの仮説が提唱されている。すなわち1)プリンアナログとして機能することによるDNA合成阻害、2)アルキル化剤としての機能、3)SH基との相互作用である。DTIC-Domeは悪性転移性メラノーマの処置において必要である。さらに、DTIC-Domeは2次的処置として他の有効な薬剤と併用して用いられることによりホジキン病にも必要とされる。
【0009】
AICAはDTICの至要な代謝産物であるが、生じたAICAがDTICの抗腫瘍性および/または抗転移性を示すために重要であるか否かについて従来技術において示唆も証拠も示されていない。従来技術においてDTIC-DomeがAICAのプロドラッグであるかもしれないという示唆はなされていない。ここで用いられる「プロドラッグ」の語は活性のある薬剤を遊離するためには体内において転換を必要とする薬剤分子の、薬理学的に不活性な化学的誘導体を意味する。実際、AICAを阻害および/またはこれと競合して核酸生合成と相互作用させる目的でDTIC-DomeのようなAICAアナログが開発された。Hakala et al.,1964,Biochem.Biophys.Acts.80:666-668 にこの点について報告がなされており、AICAが化学療法剤6-メルカプトプリンの腫瘍細胞増殖抑制効果をin vitroで妨げることが示されている。しかし、これとの関連では、AICAは6-メルカプトプリンに誘導されたリンパ球応答反応をin vitroで抑制することができることも報告されている(Al-safi,S.A.,および Maddocks,J.L.,1984,Br.J.Clin.Pharmac. 17:417-422.)。さらに、AICAは抗酸化剤活性を示しin vitroでインキュベーションされたリンパ球におけるスーパーオキサイドジスムターゼの発現を増大させることが発見された(Muzes,G.,et al.,1990,Acta Physiologica Hungarica 76:183-190)。原発および転移した腫瘍や他の疾病の予防および治療のためのAICA単独使用または腫瘍化学療法剤との併用は報告されていない。
【0010】
2.5-アミノまたは置換アミノ1,2,3-トリアゾールの塩
5-アミノまたは置換アミノ1,2,3−トリアゾールは当初、家禽において抗コクシジウム病活性があるとして発表されたが(米国特許4,590,201号,1986年5月20日発行)、のちに卵巣腫瘍の腹膜癌腫症の処置における腫瘍治療剤として発表され(米国特許5,132,315号,1992年7月21日発行、およびKohn E.C.et al.,1990,J.Natl Cancer Inst.82:54-60)またマウスのPMT-6 線維肉腫モデルにおける抗転移薬として発表された(米国特許5,045,546号,1991年9月3日発行)。下記の式を有する1,2,3-トリアゾール-4-カルボキサミド化合物の一つ、特に、5-アミノ-1-4-[4-クロロベンゾイル]-3,5-ジクロロベンジル-1,2,3-トリアゾール-4-カルボキサミドはL651582と称され(メルク研究所、米国特許4,590,201号)細胞増殖を阻害し、炎症を抑え、カルシウム流入やアラキドン酸の放出とイノシトールリン酸の生成を含むある種のシグナル伝達系路を阻害することが示された(Kohn,E.C.et al.,1992,Cancer Res.52:3208-3212およびFelder,et al.,1991,J.Pharmacolo.EXP.Ther.257:967-971)。
【0011】

【0012】
アラキドン酸および/またはそのエイコサノイド代謝産物は悪性度の種々の段階に関与しており、乾癬、湿疹、全身性エリテマトーデスを含む、さまざまな疾病に関与しているが、これらの疾病に限定されるものではない。動物モデルおよびヒトにおけるエイコサノイド合成の薬理阻害は腫瘍や他の疾患の発生と進行を抑制する(Karmali,R.A.,et al.,1982,Prostaglandins and Med 8:437-446およびKarmali,R.A.,et al.,1985,Prostaglandins Leuk Med 20:283-286)。L651582はアラキドン酸放出を阻害し、それによりエイコサノイド合成に利用できる基質の量を減少させることが示されている。現在のところ、L651582塩およびその関連化合物についての研究は報告されていない。
【0013】
3.オロト酸の代謝的効果
生体と臨床的に共存しうるいかなる種類の有機酸または無機酸はAICAまたは5-アミノまたは置換アミノ1,2,3-トリアゾールと反応させるために選択しうる。特に望ましいのは、オロト酸、乳酸、コハク酸、マレイン酸、酒石酸、グルコン酸、ガラクトン酸、塩酸、リン酸、およびペンタまたはポリヒドロキシカルボン酸である。
オロト酸はピリミジン経路の中間体で、ヒト及び動物の食物における主たる源は牛乳と乳製品である。オロト酸は、タンパク合成の促進を阻害し、また細胞増殖の重要な指標と考えられているオルニチンデカルボキシラーゼの活性を抑える(Grezelkowska K.,et al.,1993,Endocrine Regulations 27:133-138)。しかし、AICAおよび/または5-アミノあるいは置換アミノ1,2,3-トリアゾールのオロト酸塩の、腫瘍または他の疾病の処置予防についての記述はない。
【0014】
4.癌の増殖と化学療法
癌は不適切な組織が蓄積する病気である。この乱れは腫瘍組織塊が生体器官の機能をおびやかしているときに臨床的にもっとも明らかになる。一般的に考えられているのと異なり、ヒト悪性疾患は通常、急激な細胞増殖による病気ではない。実際、もっとも一般的な癌の細胞は正常組織の多くの細胞よりもゆっくりと増殖する。癌で死亡する患者の大部分にとって致命的となるのは生体の器官における比較的ゆっくりとした腫瘍組織の蓄積である。
化学療法剤は一つの共通の性質を有する。すなわち、それらは通常、正常細胞よりも悪性細胞をより効果的に殺し、または障害を与える。しかし、それらが正常細胞に障害を与えるという事実はその毒性の可能性を示す。化学療法の使用法について理解するには、薬剤の作用機序と細胞および組織の増殖の無秩序さを基礎とする癌の病態生理の双方を知る必要がある。
現在使用されているほとんどすべての化学療法剤はDNA合成を阻害し、DNAまたはRNA合成の前駆体の供給を妨害し、あるいは有糸分裂を妨害する。そのような薬剤は細胞周期を回っている細胞に対して最も効果的である。どの単一の薬剤あるいは薬剤の組み合わせによる治療の後の細胞死の機構も複雑であり、1以上の過程を含むと思われる。臨床的に検出できる大部分の腫瘍はほとんど細胞周期上にない細胞からなっており、必ずしも化学療法が腫瘍を根絶するのに効果的でなくとも驚くことではない。
【0015】
癌治療のストラテジーは癌細胞を細胞分裂周期を回っていない集団から細胞周期に従って分裂する集団に移行させるものである。この移行を促進するいくつかの方法は複合モダリティー治療の基礎を形成する。外科的手術は腫瘍の大きさを減少させるためにもっとも普通に用いられ、その結果、癌細胞が再び細胞分裂周期に入るのを容易にする。原発の腫瘍が完全に除去されたのちでも、顕微鏡的転移が離れた部位に残っていることもある。それらの大きさは小さいため、微小転移は主として細胞分裂周期上の細胞からなっている。原発巣に残る少数の細胞もまた細胞分裂周期上に入ろうとする。従って、多くの場合、残った癌細胞は化学療法に対して感受性である。放射線療法または化学療法は単独でも腫瘍塊を縮小するために用いられ、その結果細胞を細胞周期を回る細胞群に移す。例えば、乳房の補助化学療法はこのような考えに基づいている(Weiss.R.B.,および DeVita,Jr.,V.T.,1979,Ann.Intern.Med.91:251;Bonadonna,G.,およびValagussa,P.1988,Semin.Surg.Oncol.4:250)。
【0016】
4.1.複合化学療法
動物の腫瘍の研究とヒトの臨床試験によって、薬剤の併用は単一の薬剤よりも目的とする応答性が高く、生存期間が長いことが示された(Frei,III,E.,1972,Cancer Res.32:2539-2607.)。したがって、複合薬剤治療は現在用いられている化学療法の基礎となっている。複合化学療法は複数の薬剤の作用機序と毒性を利用する。すべての化学療法剤はDNA合成を行っている細胞に対して最も効果的であるが、多くの薬剤、特にアルキル化剤は細胞分裂周期上にない細胞も殺すことができる。これらの薬剤は細胞増殖非依存性薬剤と称される。多くの代謝拮抗薬および抗生物質を含むいくつかの薬剤は細胞に対してDNA合成期に最も効果的であり、従って細胞増殖依存性薬剤と称される。細胞増殖非依存性薬剤を繰り返し投与すれば、腫瘍の構成細胞のうち細胞分裂周期上にある集団と細胞分裂周期にない集団の双方を殺すことによって腫瘍の大きさを縮小することができる。生き残った細胞は細胞周期に従って分裂している集団へ移行し、それらは細胞増殖依存性薬剤に対してより感受性となる。細胞周期に依存性の低い薬剤に続いて細胞周期に依存する薬剤を併用することにより腫瘍細胞の死滅を亢進することができる。処置の各サイクルにおいて一定の画分の細胞を死滅させるので、治療のためにはサイクルを繰り返す必要がある。例えば、1回の処置で腫瘍細胞の99.9%の腫瘍細胞を殺す薬物の併用については、各サイクルの間に腫瘍細胞が再び増殖しないとして、平均的な腫瘍を除去するためには少なくとも6回繰り返す必要がある。
【0017】
併用すべき薬剤についてはいくつかの原則がある。個々に活性のある薬剤が使用され患者が耐えられる程度の最も高い投与量で、かつ毒性が許す限り高頻度で投与される。従って、主要毒性の重なりが限定された薬剤の併用が望ましい。また選択された薬剤が異なる作用機序を持たなければならない。こうした手法は腫瘍細胞の死滅を亢進し、薬剤耐性細胞集団が出現する機会を減少させ、複数の代謝経路を攻撃することにより腫瘍細胞の機能を破壊する(DeVita.V/T.,et al.,1975,Cancer 35:98.)。しかし、化学療法剤が正常細胞よりも悪性細胞を死滅させ、または障害を与えるのに最も効果的であっても、それらの薬剤が正常細胞に障害を与えるという事実は、その毒性について大きな可能性を示す。化学療法が効果的であるためには、患者は生理的に良好な状態でなければならない。
【0018】
4.2.化学療法の使用におけるストラテジー
癌の治療には、癌細胞の増殖、体の他の部位への転移性分散、浸潤、腫瘍誘導性の血管新生、宿主の免疫学的応答性や細胞障害性の増大を含む種々の因子を抑制する必要がある。従来の癌化学療法剤は多くの場合腫瘍細胞に対する細胞障害性を基礎として選ばれてきた。しかし、いくつかの抗癌剤は患者の免疫機構に対して有害な効果を有する。残念なことに、従来の化学療法剤の大多数は効果的な投与量と毒性のある投与量との境界、すなわち、治療係数が極めて低い。従って、浸潤性の腫瘍の増殖、進行および転移を引き起こすかもしれない因子に対して細胞障害性のない防御をすることができる癌治療または処置が開発されれば非常に有利である。
【0019】
5.細胞の異常増殖を特徴とする疾病
多数の臨床的疾病状態は細胞の異常増殖によって特徴づけられる。例えば、乾癬、湿疹、子宮内膜症があり、これらは疾病細胞が局所に広がったことによるものである。細胞の異常増殖による他の疾病としては全身性エリテマトーデス、関節炎、神経伝導疾患や嚢胞性線維症などがあるが、これらに限定されるものではない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0020】
本発明は、1次および転移した腫瘍の阻止および/または治療のための組成物および方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0021】
本発明は、AICA塩を癌患者の治療のために用いることを含む、1次および転移した腫瘍の阻止および/または治療方法である。従って、AICA塩の効果的な量が癌患者に投与される。また本発明は、AICA塩を含む、1次および転移した腫瘍の阻止および/または治療用組成物である。特に、本発明は、5-アミノイミダゾール-4-カルボキサミドの塩を含む、癌の増殖防止および抑制用医薬組成物であって、前記塩がオロト酸塩、塩酸塩およびリン酸塩から選ばれる前記医薬組成物である。
本発明はまた、以下の式で表される化合物群である、5-アミノあるいは置換アミノ1,2,3-トリアゾールの塩を用いることを含む、1次および転移した腫瘍の阻止および/または治療のための改良された方法である。本発明はまた、以下の式で表される化合物群である、5-アミノあるいは置換アミノ1,2,3-トリアゾールの塩を含む、1次および転移した腫瘍の阻止および/または治療のための組成物である。
【0022】

【0023】
ここで、R1
【0024】

【0025】
ここでpは、0から2であり、mは0から4であり、nは0から5、XはO、S、SO、SO2、CO、CHCN、CH2、またはC=NR6ここでR6は水素、低級アルキル、ヒドロキシル、低級アルコキシ、アミノ、低級アルキルアミノ、ジ低級アルキルアミノまたはシアノであり、R4とR5は独立にハロゲン、シアノ、トリフルオロメチル、低級アルカノイル、ニトロ、低級アルキル、低級アルコキシル、カルボキシル、低級カルバルコキシ、トリフルオロメトキシ、アセトアミド、低級アルキルチオ、低級アルキルスルフィニル、低級アルキルスルフォニル、トリクロロビニル、トリフルオロメチルチオ、トリフルオロメチルスルフィニル、または、トリフルオロメチルスルフォニルであり、R2はアミノ、モノまたはジ低級アルキルアミノ、アセトアミド、アセトイミド、ウレイド、フォルムアミド、フォルムイミド、あるいはグアニジノであり、R3はカルバモイル、シアノ、カルバゾイル、アミジノまたはN−ヒドロキシカルバモイルであり、ここで低級アルキル、低級アルキルを含むもの、および低級アルコキシおよび低級アルカノイル基は1から3個の炭素原子を含む。
【0026】
特に、本発明の組成物は癌患者治療のためのL651582すなわち5-アミノ-1-(4-[4-クロロベンゾイル]-3,5 ジクロロベンジル)1,2,3-トリアゾール-4-カルボキサミドの塩を含むが、これらに限定するものではない。従って、効果的な量の5-アミノ、または置換アミノ1,2,3-トリアゾール化合物が癌患者に投与される。
本発明の方法において使用される5-アミノまたは置換アミノ1,2,3-トリアゾール化合物の塩は新規であり、本発明の他の側面を構成する。本発明の好ましい実施態様のひとつは、L651582のオロト酸塩または1,2,3-トリアゾール-4-カルボキサミドのオロト酸塩である。
本発明はまた、AICAまたは5-アミノあるいは置換アミノ1,2,3-ジアゾール化合物の塩による増殖抑制に対する癌の感受性を評価する方法に関する。
本発明はまた、AICAの塩および/または5-アミノあるいは置換アミノ1,2,3-トリアゾール化合物の塩の有効な投与量の併合使用を含み、癌患者処置のための従来の化学療法またはホルモン療法および/または放射線療法または外科的手術を併用するあるいは併用しない、転移性の腫瘍の抑制および/または治療方法に関する。
本発明はまた、AICAの塩または5-アミノあるいは置換アミノ1,2,3-トリアゾール化合物の塩の有効な量の使用を含む、抗癌化学療法剤によって引き起こされる免疫抑制および毒性を防ぐ方法または癌患者の免疫賦活誘導方法に関する。AICA塩の好ましい実施態様は塩酸AICAまたはオロト酸AICAである。トリアゾール化合物の塩の好ましい実施態様はL651582すなわち5-アミノ-1-(4-[4-クロロベンゾイル]-3,5ジクロロベンジル)-1,2,3,-トリアゾール-4-カルボキサミドのオロト酸塩である。
【0027】
本発明の方法はAICAまたは5-アミノもしくは置換アミノ1,2,3-トリアゾール化合物の、これらに限定されるものではないが、オロト酸、乳酸、コハク酸、マレイン酸、クエン酸、および酒石酸を含む脂肪族の酸との塩、また、グルコン酸、ガラクトン酸、特にペンタまたはポリヒドロカルボキシル酸のような糖酸との有機酸塩、を用いて腫瘍を治療するための薬物療法学的手法に関する。AICAまたは5-アミノもしくは置換アミノ1,2,3-トリアゾール化合物は、これらに限定されるものではないが、塩酸およびリン酸などを含む無機酸と反応して無機酸塩を形成していてもよい。本発明の好ましい方法は、補助化学療法剤としてオロト酸AICAまたは塩酸AICAを用いて異なるタイプの癌を処置するための薬物療法学的手法に関する。本発明の好ましい実施形態は、L651582(5-アミノ-1-(4-[4-クロロベンゾイル]-3,5ジクロロベンジル)-1,2,3-トリアゾール-4-カルボキサミド)のオロト酸塩または塩酸塩を補助化学療法剤として用いて異なるタイプの腫瘍を治療するための薬物療法学的手法に関する。
本発明は更に、乾癬、湿疹、膠原血管炎、神経性疾患、薬物毒などの、細胞の異常増殖を伴う疾病、ただしこれらに限定するものではないが、を治療するためにAICAまたは5-アミノまたは置換アミノ1,2,3-トリアゾール化合物の塩を用いる方法を提供する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
本発明はアミノイミダゾールカルボキサミドの塩(AICA)および5-アミノ、または置換アミノ1,2,3-トリアゾール(トリアゾール類)の塩による1次または2次転移腫瘍の阻止および/または抑制するための組成物および方法に関する。オロト酸から得られるもののみでなく5-アミノイミダゾールカルボキサミドおよび/または5-アミノもしくは置換アミノ1,2,3-トリアゾールの有機酸塩および無機酸塩群全体の利用法は本発明の方法に含まれる。例えば、AICAおよび/またはトリアゾールは、以下のものに限定されるものではないが、乳酸、コハク酸、マレイン酸、クエン酸および酒石酸を含む脂肪族の酸と、グルコン酸、ガラクトン酸などの糖酸、特にペンタおよびポリヒドロキシカルボン酸と反応して有機酸塩を形成していてもよく、又、AICAおよび/またはトリアゾール類は、以下のものに限定されるものではないが、塩酸やリン酸を含む無機酸と反応して本発明の方法に従った用途に適した無機酸塩を形成していてもよい。これらの方法は、癌の危険性が増した人や癌が生じた人にアミノイミダゾールカルボキサミドの塩および/または5-アミノもしくは置換アミノ1,2,3-トリアゾールの塩を治療上の効果を生ずる量で投与する治療を含む。本発明の方法による癌の治療方法の実施おいて、AICAおよび/またはトリアゾール類の塩を含む組成物は周囲の細胞間組織の1次あるいは2次転移した部位および細胞において癌細胞が発生し増殖することを抑制するために使用される。本発明の望ましい組成物は、一般的な細胞障害効果を生じずに、特異的または優先的に前腫瘍細胞が腫瘍細胞へ転換することを妨げ、腫瘍細胞の増殖、浸潤、転移を阻止または抑制するものである。更に、本発明の方法は、乾癬、湿疹,膠原血管炎、神経疾患、薬物障害などの疾病状態にある人の治療を含むが、これらに限定されるものではない。
【0029】
本発明の方法は癌の危険性が増したと判断された人および/または癌のある人に対し、原発のおよび/または転移性癌の処置および抑制するためにAICAの有機酸塩または無機酸塩あるいは5-アミノまたは置換アミノ1,2,3-トリアゾールの塩の有効な量を投与することを含む。
腫瘍細胞の増殖と拡散を抑制するAICAまたはトリアゾール関連化合物の塩は治療薬として有用であることは当業者にとって明らかとなるであろう。このようなさらなる化合物はここで記述した増殖抑制アッセイを用いることにより同定することができる。
腫瘍細胞の増殖を抑制し、腫瘍細胞の転移の拡散を阻止し、免疫賦活を誘導し、癌患者に用いられるある種の化学療法剤によって誘導される免疫抑制を防ぐ、というAICAあるいはトリアゾール塩の能力は、1次または2次腫瘍の治療および阻止におけるこれらの効能・効力に寄与するであろう。これらの考えられる作用機序は本発明の範囲を決して限定するものではなく、単に説明のためおよび/または例示するために記載されたものである。
例えば、生命にとって癌の最も危険な側面は制御のきかない増殖と全身にわたる検出できない癌細胞の拡散(転移)である。
【0030】
1.浸潤と転移の病理学
癌の本質的な2つの特徴は浸潤と転移である。一端では、基底膜への微小な浸潤は腫瘍症から癌への移行を特徴づけ、他の一端では転移は通常死へつながるものである。
下部結合組織への浸潤は段階的に進行し、腫瘍細胞によって産生される種々のメディエーターによって促進される。基底膜に浸潤しておらず上皮にとどまっている腫瘍は限局性腫瘍と呼ばれる。これらの細胞によって分泌されるコラゲナーゼIVは基底膜のコラーゲンを溶解し、それにより腫瘍細胞が下部細胞間質へ浸潤することができる。浸潤性の腫瘍細胞は、ラミニンとファイブロネクチンに対する膜リセプターを有する。ラミニンとファイブロネクチンは、それぞれ基底膜および結合組織支質を構成する巨大な糖タンパク体である。これらの成分への結合は腫瘍細胞にたいしてその固定と進行のきっかけを与える。腫瘍細胞によって分泌される酵素群、例えばプラスミノーゲン活性化物質、コラゲナーゼI、IIおよびIII、カテプシン、ヘパラナーゼおよびヒアルロニダーゼは、フィブリン、糖タンパク体,プロテオグリカンおよびヒアルロン酸を含むマトリックス成分を破壊し、その結果、腫瘍細胞が結合組織にさらに浸潤する。
腫瘍細胞はまたエイコサノイド、プロスタグランジン、フリーラジカルオキシダントおよび酸化付加物などの炎症メディエーターや、前進する腫瘍の運動を支配する自己分泌性の運動性因子(autocrine motility factors)、血漿タンパクの腫瘍への蓄積を可能とする血管透過性因子や、腫瘍の血管分布を増大させる血管形成因子などを分泌する。腫瘍細胞は結合組織支質などの最も抵抗の少ないところに沿って優先的に浸潤する。腫瘍は、筋膜、骨、厚壁動脈(thick-walled arteries)、細動脈などの抵抗性の組織には浸潤しにくい。しかしながら、腫瘍細胞は単一の細胞層からなる壁を持つ静脈毛細血管やリンパ管に容易に侵入する。静脈とリンパ管系は相互につながっているため、リンパ管に入った腫瘍細胞はリンパ節で捕えられあるいは静脈循環系に入り離れた部位にばらまかれる。腫瘍が大きくなるに従って、腫瘍内の血管分布はおそらく不完全となりそのため出血を引き起こし増殖する画分が減少する。
【0031】
一方,転移は、血小板および付着性のリンパ球とともに循環している腫瘍細胞が毛細血管の中で捕らえられ腫瘍細胞の細胞膜が毛細血管内皮と相互作用するときに起こり得る。毛細血管内皮接合部(endothelial junctions)は退縮し腫瘍細胞のリガンドが内皮膜または基底膜のリセプターに結合する。その後、腫瘍細胞はコラゲナーゼIVを分泌し、それが下部の基底膜の腫瘍構成成分であるコラーゲンIVを破壊する。毛細血管下の結合組織への浸潤は、糖タンパクのラミニンとファイブロネクチンへの結合、マトリックスを破壊するプロテアーゼの放出や運動性および走化性因子の分泌によって助けられる。次に、腫瘍細胞は増殖し、トロンボキサンや凝血原などの血小板凝集因子を合成し、その結果細胞の周囲にフィブリンの繭が沈着するに至ることがある。このような繭は患者の免疫系の攻撃から微小転移機構を保護しうるものである。
動物におけるいくつかの実験的な腫瘍およびヒトの自発性腫瘍は、エイコサノイド、プロスタグランジン、フリーラジカルオキシダント、酸化付加物の局所的および循環濃度の増大、免疫抑制、骨転移、高カルシウム症を伴う。プロスタグランジンE2は免疫抑制活性および溶骨活性があるため、PGE2はこのような腫瘍随伴症に関与すると考えられてきた(Karmali,R.A.,1983,CA Cancer J Clin.33:322-332.)。いくつかの研究から血行性の腫瘍転移における血小板の凝集およびプロスタグランジンの効果が推測されている。腫瘍細胞の転移性播種において血小板が重要な役割を果たしているという証拠がある。腫瘍細胞は血小板と血管内皮に対して特異的な性質を示す。血小板の凝集は腫瘍細胞によって誘導され、凝集した血小板は腫瘍新生を亢進する増殖因子を生成する。
【0032】
血小板の凝集は過酸化脂質とアラキドン酸代謝からのトロンボキサンの生成を必要とするため、抗腫瘍効果を発揮させるためには、トロンボキサンA2の抑制がどのようになされるかについての進んだ研究が期待される。エイコサペンタエン酸によるトロンボキサンA2合成阻害はラットにおいて乳腺腫瘍細胞の転移を抑制した(Karmali et al.,1993,Prost.Leuk.Essential & Fatty Acids 48:309-314)。トロンボキサンA2の合成は例えばアミノイミダゾールカルボキサミドなどのイミダゾール化合物によって抑制されうる(Horrobin,D.F.,et al.,1978,Med.Hypothesis 4: 178-184: および Terao,S.,et al.,1985,Advances in Prostagl.Thromb.Leuk Res.15: 315-315)。それに加えて、AICAは抗酸化活性を持ち,スーパーオキサイドジスムターゼ活性を増大させることが発見された(Muzes,G.et al.,1990,Acta Physiologica Hungarica 76:183-190)。
同様に、L651582は、エイコサノイド合成の基質であるアラキドン酸の放出を含むシグナル伝達系を阻害することが示され(Kohn,E.C.et al.,1992,Cancer Res.52: 3208-3212)、卵巣腫瘍による腹膜癌腫症を抑制することが示された(米国特許5,132,315号,1992年7月21日発行、Kohn,E.C.et al.,1990,J.Natl.Cancer Inst.82: 54-60)。
本発明において、AICAの塩または5-アミノあるいは置換アミノ1,2,3-トリアゾール塩の投与はエイコサノイドおよびトロンボキサンA2を抑制し、かつ/またはスーパーオキサイドジスムターゼによるフリーラジカルおよび酸化剤に対する抗酸化的防御を増強する。より具体的には、塩酸AICAの投与はラットにおいて前立腺腫瘍を抑制する。しかし、意外にもL651582のオロト酸塩の投与はL651582よりも腫瘍の増殖を強く抑制する。これについては以下の第7章を参照のこと。従って、本発明における5-アミノあるいは置換アミノ1,2,3-トリアゾール化合物の新規な塩はL651582よりも、より改良された高い抗腫瘍活性を有するものとして開示される。これらの化合物は1次および2次転移腫瘍を抑制し阻止するために有用である。
【0033】
特異的なリンパ球の機能に関する薬剤の発明も腫瘍の治療と防止にあらたなアプローチを提供する。例えば、腫瘍はさまざまな程度にリンパ球が浸潤した支持間質を含む不均質の組織である。このような腫瘍浸潤性のリンパ球が単離され、インターロイキン2(IL-2)によってin vitroで活性化され進行した癌患者を治療するのに利用されている。しかし、患者を化学療法剤などの抗癌剤や電離放射線で治療することは非常に免疫抑制的となりうる。毒物や薬剤による組織の損傷の態様のいくつかはフリーラジカル機構を含むものである(Gerson,R.J.et al.,1985,Biochem.Biophys.Res.Commun.126:1129-1135)。リンパ球は多くの化学療法剤および電離放射線による損傷に対して極めて高感受性である。考えられるとおり、これらの薬剤等による免疫抑制はしばしば感染症の増大につながる。さらに、多くの抗癌剤は変異原と同様免疫抑制的である。従って、最初の癌治療の成功後、化学療法または放射線療法の成功後の合併症として、2次的悪性腫瘍が生じることがある(Harris,C.C.,1979,J.Natl.Cancer Inst.63:275-277)。大部分の2次悪性腫瘍は、免疫抑制的抗癌剤にたいする直接的な最も感受性の高い標的である造血系、リンパ球生成系および網内皮系に由来する。例えば、6-メルカプトプリンのような一部の抗癌化学療法剤はリンパ球活性をin vitroで阻害することが発見されている。またAICAが6-メルカプトプリンによるリンパ球活性阻害を抑制できることが見つかっている(Al-Safi,S.A.,およびMaddocks,J.L.,1984,Br.J.Clin.Pharmac.17: 417-422)。従って、AICAまたはその塩を6−メルカプトプリンとともに投与するとリンパ球応答の抑制をin vivo で阻止することができる。さらに、AICAはリンパ球においてスーパーオキシドジスムターゼの活性を高めることが見つかっており、それにより毒性のある化学療法剤によってしばしば誘導される高度に有毒なフリーラジカル酸素を除去する効果的な手段を提供する(Muzes,G.et al.,1990,Acta Physiologica Hungarica 76:183-190)。
免疫調節に必要な他のシグナルに加えて、サイトカインは効果的な癌免疫療法の開発において主要な役割を果たすと思われる。従って、抗腫瘍免疫療法のために、患者のT細胞の活性化を刺激するためにAICA塩および5-アミノあるいは置換アミノ1,2,3-トリアゾールをINF-α,IFN-γ、TNF-α、IL-2、IL-4、IL-6およびサイモシンαのようなサイトカインとともに投与することができる。
【0034】
2.AICA塩の選択と投与量
本発明は、腫瘍細胞の増殖および/または転移を阻止する、アミノイミダゾールカルボキサミドの多数の異なる有機酸塩、例えば、オロト酸 5-アミノイミダゾール-4-カルボキサミドあるいはオロト酸4-アミノ-5-イミダゾールカルボキサミド(オロト酸AICA)または1,2,3,6-テトラヒドロ-2,6-ジオキソ-4-ピリミジンカルボン酸化合物と5-アミノ-1H-イミダゾール-4-カルボキサミドの1:1の組合わせ、またはオロト酸化合物と5(または4)-アミノイミダゾール-4(または5)-カルボキサミドとの1:1の組合わせ、AICAと、乳酸、コハク酸、マレイン酸、クエン酸および酒石酸などの脂肪族の酸、またはグルコン酸、ガラクトン酸その他の糖酸、特にペンタおよびポリヒドロキシカルボン酸との有機酸塩、および、AICAの塩酸塩および/またはリン酸塩などの、本発明の方法に従って使用するのに適した無機酸塩を提供する。
【0035】
3.5-アミノまたは置換アミノ1,2,3-トリアゾール化合物の選択
本発明は、インタクトな5-アミノあるいは置換アミノ1,2,3-トリアゾール化合物よりも腫瘍細胞の増殖および/または転移を強く阻止する5-アミノまたは置換アミノ1,2,3-トリアゾール化合物の新規な塩を提供する。この新規な塩は以下の式の化合物群の塩を含む。
【0036】

ここでR1は、
【0037】

【0038】
であり、pは0から2であり、mは0から4であり、nは0から5であり、XはO、S、SO2、CO、CHCN、CH2またはC=NR6、ここでR6は水素、低級アルキル、ヒドロキシル、低級アルコキシ、アミノ、低級アルキルアミノ、ジ低級アルキルアミノまたはシアノであり、R4とR5は独立にハロゲン、シアノ、トリフルオロメチル、低級アルカノイル、ニトロ、低級アルキル、低級アルコキシル、カルボキシル、低級カルバルコキシ、トリフルオロメトキシ、アセトアミド、低級アルキルチオ、低級アルキルスルフィニル、低級アルキルスルホニル、トリクロロビニル、トリフルオロメチルチオ、トリフルオロメチルスルフィニル、または、トリフルオロメチルスルフォニルであり、R2はアミノ、モノまたはジ低級アルキルアミノ、アセトアミド、アセトイミド、ウレイド、フォルムアミド、フォルムイミド、あるいはグアニジノであり、R3はカルバモイル、シアノ、カルバゾイル、アミジノまたはN−ヒドロキシカルバモイルであり、ここで低級アルキル、低級アルキルを含むもの、および低級アルコキシおよび低級アルカノイルは1から3個の炭素原子を含む。
【0039】
5-アミノまたは置換アミノ1,2,3-トリアゾール化合物は、以下のものに限定されるものでないが、オロト酸、乳酸、コハク酸、マレイン酸、クエン酸および酒石酸を含む脂肪族の酸と反応し、またはグルコン酸、ガラクトン酸、特にペンタおよびポリヒドロキシカルボン酸を含む、ただしこれらに限定されるものではないが、糖酸と反応して有機酸塩となり、また、塩酸および/またはリン酸を含む、ただしこれらに限定されるものではない、無機酸と反応して無機酸塩となり、本発明の方法に従って使用するのに適した5-アミノまたは置換アミノ1,2,3-トリアゾール化合物となる。
【0040】
4.投与量と製剤
AICAの塩または5-アミノまたは置換アミノ1,2,3-トリアゾール(トリアゾール類)の塩は1次および転移腫瘍および他の細胞増殖性疾病の阻止と治療のためのホ乳動物への投与のために医薬品として製剤される。
多くのAICAの塩またはトリアゾール類の塩の化合物は製薬上共存可能な対イオンとともに、完全に水溶性の形態である有機酸塩として供給されるであろう。製薬上共存可能な塩は、以下に限定されるものでないが、乳酸、コハク酸、マレイン酸、クエン酸および酒石酸などの脂肪族の酸、または、以下に限定されるものではないが、グルコン酸、ガラクトン酸その他、特にペンタあるいはポリヒドロキシカルボン酸などの糖酸、有機酸、および塩酸、リン酸を含み、これらに限定されない無機酸、を含む多くの酸との間で形成される。塩は対応する遊離の塩基型のものよりも水あるいは他のプロトン性溶媒に溶解しやすい傾向がある。
治療用の化合物あるいは医薬組成物は、静脈投与、腹腔内投与、皮下投与、筋肉投与、くも膜下腔内投与、経口投与、直腸投与、局所投与され、またはエアーゾル剤の形で投与される。
経口投与に適した製剤は、生理食塩水や水、PEG400のような希釈剤に有効成分を溶解した溶液、カプセルまたは錠剤であって、定められた一定量の有効な薬剤を固体、粉末あるいはゼラチンとして含むもの、適当な溶媒に懸濁したもの、および乳剤を含む。
非経口投与に適した製剤は、緩衝液、酸化防止剤および保存剤を含んだ、水性あるいは非水性の滅菌された等張溶液を含む。この製剤は単位投与量であっても、複数単位投与量をシールされた容器に入れてもよい。
【0041】
患者に対するAICA塩の経口投与量の範囲は1〜1000mg/日であり、一般には100〜300mg/日であり、典型的には200〜300mg/日である。患者の体重の点から定めれば、通常の投与量の範囲は0.02〜12.5mg/kg/日であり、一般的には1.25mg〜3.75mg/kg/日、典型的には2.5から3.75mg/kg/日である。患者の体表面積から定めれば、通常の投与量の範囲は0.5〜600mg/m2/日であり、一般的には66〜200mg/m2/日であり、典型的には130〜200mg/m2/日である。
投与する量と間隔は、抗増殖効果および抗転移効果を維持するのに十分な血漿中レベルを供給すべく個別に調整される。平均的血漿レベルは10〜100マイクログラム/mlで維持されなければならず、一般的には10〜50マイクログラム/ml、典型的には10〜20マイクログラム/mlで維持されなければならない。
患者に対するトリアゾール類の塩の経口投与量の範囲は0.25〜250mg/日であり、一般には25〜100mg/日であり、典型的には50〜100mg/日である。患者の体重の点から定めれば、通常の投与量の範囲は0.005〜5mg/kg/日であり、一般的には0.25mg〜1mg/Kg/日、典型的には0.5から1.0mg/kg/日である。患者の体表面積から定めれば、通常の投与量の範囲は0.1〜150mg/m2/日であり、一般的には20〜50mg/m2/日であり、典型的には130〜200mg/m2/日である。
投与する量と間隔は、抗増殖効果および抗転移効果を維持するのに十分な血漿中レベルを供給すべく個別に調整される。
または、化合物を経口ではなく、局所的に投与、例えばデポー製剤や持効性製剤の形で腫瘍に直接薬剤を注入してもよい。
【0042】
リポソームや乳濁質液などを含む、これらに限定されるものではないが、薬理学的な化合物のための様々なデリバリー系を用いることができる。医薬組成物は適当な固形またはゲル相担体または賦形剤を含む。そのような担体または賦形剤の例としては、炭酸カルシウム、リン酸カルシウム、種々の糖、デンプン、セルロース誘導体、ゼラチン、ポリエチレングリコールなどのポリマーが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
さらに、薬剤を標的を定めたドラッグ・デリバリー・システム、たとえば、腫瘍特異的抗体で覆ったリポソームなどに入れて投与することもできる。リポソームは腫瘍細胞を標的とし選択的に取り込まれる。
局所的投与あるいは選択的な取り込みの場合は、薬剤の有効な局所的濃度は血漿中の濃度と関係しないであろう。
【0043】
5.標的とする癌
本発明の方法と組成物によって阻止され、かつ/または治療される腫瘍には、ヒト肉腫およびヒト癌腫、例えば結腸癌、膵臓癌,乳癌、卵巣癌、前立腺癌、線維肉腫、粘液肉腫、脂肪肉腫、軟骨肉腫、骨肉腫、軟骨腫、血管肉腫、内皮肉腫、リンパ肉腫、リンパ管内皮肉腫、滑膜腫、中皮癌腫、ユーイング種、平滑筋芽細胞腫、横紋筋肉腫、扁平上皮癌、基底細胞癌、腺癌、汗腺腫、皮脂腺種、乳頭癌、乳頭腺癌、嚢胞腺癌、髄質癌、気管支癌、腎細胞癌(renal cell carcionoma)、肝癌、胆管癌、絨毛膜癌腫、精上皮腫、胎児性癌、ウイルムス腫瘍、子宮頚癌、精巣腫瘍、肺癌、肺小細胞癌、膀胱癌、上皮癌、神経膠腫、星状細胞腫、髄芽細胞腫、頭蓋咽頭腫、脳室上衣細胞腫、松果体腫、血管芽細胞腫、聴神経腫、乏突起細胞腫、髄膜腫、黒色腫、神経芽細胞腫、網膜芽腫が含まれ、白血病、例えば、急性リンパ性白血病および急性骨髄球性白血病(骨髄芽球性、前骨髄球性、骨髄単球性、単球性、赤血白血病)、慢性白血病(慢性骨髄性(顆粒白血球性)白血病および慢性リンパ球性白血病)、真正赤血球増加症、リンパ腫(ホジキン病および非ホジキン病)、多発性骨髄腫、ワルデンストレームマクログロブリン血症、重鎖症が含まれるが、これらに限定されるものではない。これらの腫瘍の具体的な例を以下の章において記載する。
【0044】
6.標的とする細胞増殖疾病
本発明の組成物と方法によって阻止および/または治療される細胞増殖疾病には、これらに限定されるものではないが、乾癬、湿疹、子宮内膜症、全身エリテマトーデス、関節炎、神経伝導疾患および嚢胞性線維症が含まれる。
【0045】
7.抗増殖活性の評価
本発明に従って、特定の細胞株のAICAまたはトリアゾール類の有機酸塩の投与に対する増殖抑制感受性を評価するためにいくつかのアッセイ法を利用することができる。このようなアッセイ法は特定の癌がAICAの塩または5-アミノあるいは置換アミノ1,2,3-トリアゾール化合物の塩によってうまく治療できるかどうかを評価するのに特に有用である。この方法により、個々の腫瘍の生化学的特徴に合わせて化学療法剤の選択をすることができる。この方法は、マルチプルサンプル・プレートまたはマルチプルサンプル・ウェル中で目的とする腫瘍細胞株を培養することによって行うのがよい。サンプル・プレートは様々な濃度で試験阻害剤を含み、これによりIC50が評価される。阻害剤なしのプレートは対照区として扱われる。サンプルは増殖を測定するのに十分な時間培養される。そして、試験される薬剤の存在下および非存在下での相対的な増殖が決定される。細胞の増殖は、軟寒天中のコロニー増殖や3H-チミジンの取り込みなどの多数の方法で測定され得る。評価される癌細胞株は個々の患者または疾患動物からバイオプシーで得てもよい。
【0046】
実験的腫瘍モデルは、動物におけるAICAの塩あるいはトリアゾール類の塩の投与による増殖阻害および転移阻害に対する特定の転移または非転移腫瘍の感受性を決定するために、臨床前実験プロトコルにおいて用いられる。
本発明における治療法はまた1次腫瘍および/転移病変の増殖と進行を支持する非悪性細胞の増殖抑制に関する。そのような非悪性細胞は血管内皮細胞、他のストロマの細胞、良性細胞を含む。たとえば、固形癌の新生微小血管系に対する要求は血管内皮細胞の増殖抑制によって見られなくなることがある。
【0047】
7.1.前立腺癌
本発明の1側面は前立腺癌の治療に関する。前立腺癌は男性の癌による死亡原因の第2位である。前立腺癌の男性の25%がこれにより死亡する(Boring,C.C.,et al.,1993,CA Cancer J.Clin.43:7-26)。さらに、前立腺癌で死亡しない多数の患者も、痛み、出血、尿路閉塞などの症状を改善するための治療を必要としている。したがって、前立腺癌はまた主要な苦痛および医療費の原因でもある(Catalona,W.J.,1994,New Eng.J.Med.331:996-1004)。
前立腺癌を治療することに関して決断する際に、臨床医は患者の年齢、健康状態、癌の臨床的状態および組織学的段階、および生命の質に関する要因、たとえば癌の進行に伴う今後の危険に対する治療に伴う直接的な危険を考慮する。細胞障害性の化学療法は前立腺癌の治療には大部分効果がない。薬剤の併用は単一薬剤と同様に効果がなく、ホルモン療法に化学療法を追加しても生存率を上げない(Eisenberger,M.A.,1988,Chemotherapy for prostate carcinoma.In:Wittes,R.E.,ed. Consensus Development Conference on the Management of Clinically Localized Prostate Cancer.NCI monographs No.7 Washington D.C.:Government Printing Office:151-153(NIH publication no.88-3005)。従って、前立腺癌の改良された治療法に対する多大な需要がある。
本発明は、前立腺癌モデル、たとえば、アンドロゲン非依存性Dunning R-3327-AT-I ラット前立腺癌モデル(Pinski,J.,et al.,1994,Int.J.Cancer 59:51-55)、高転移性前立腺癌モデルPC-3-M(Koziowski,J.M.,et al.,1984,Cancer Res.44:3522-3529)(以下の第7章を参照のこと)、非転移性DU-145前立腺腫瘍モデル(Karmali,R.A.,et al.,Anticancer Res.7:1173-1180)などにおけるAICAおよび/または5-アミノあるいは置換アミノ1,2,3-トリアゾール有機酸塩および無機酸塩の前臨床試験方法を提供する。本発明はまた、腫瘍細胞の発達を阻止し腫瘍細胞、間質細胞および/または関係する血管内皮細胞の増殖と拡散を阻害し、抗癌剤の併用によって生ずる毒性という不利な効果を減少させる、AICAの塩またはトリアゾール類の塩の投与を含む前立腺腫瘍の治療法を提供する。
【0048】
本発明は実施例において開示された態様によって範囲を限定されるものではなく、実施例は本発明の1つの側面を例示するためのものであり、機能的に等価であるいかなる方法も本発明の範囲である。実際、ここで示しかつ記載したものに加えて、本発明の種々の変法が上記の説明から当業者にとって明らかとなるであろう。そのような修飾は添付した請求項の範囲内に含まれると意図されている。
ここでいくつかの文献が引用されており、それらの開示はそっくりそのまま本明細書の記載に含まれるものとする。
【実施例1】
【0049】
5-アミノ-1-(4-[4-クロロベンゾイル]-3,5-ジクロロベンジル)-1,2,3-トリアゾール-4- カルボキサミドのオロト酸塩
5-アミノ-1-(4-[4-クロロベンゾイル]-3,5-ジクロロベンジル)-1,2,3-トリアゾール-4-カルボキサミド(L651582)はメルクリサーチ研究所から供給された。2gのL651582と0.87gのオロト酸を30mlの水+120mlのメタノール溶液に加え、15分間煮沸した。生じた透明な溶液を活性炭ノーリットを通して濾過した。
融点が234-235℃である白色の結晶沈殿物約2gを冷却および乾燥により得た。
重水素ラベルしたジメチルスルホキシド(DMSO)を溶媒として用いたプロトンNMRによる結晶の解析によって、オロト酸とL651582の双方が両化合物のイオン結合した結晶として、約1:2の比で存在することが明らかになった。図1を参照のこと。
【実施例2】
【0050】
AICA塩またはL651582塩の投与による腫瘍の阻止および/または治療
以下の実施例において、アンドロゲン非依存性Dunning R-3327-AT-1 前立腺腫瘍モデルを用い、L6515182あるいはL651582およびAICAの塩で治療することによる、in vivo における前立腺腫瘍の阻止および/または治療を具体的に示す。
【0051】
1.細胞培養
AT-1アンドロゲン非依存性前立腺腫瘍細胞(Johns Hopkins Oncology CenterのProstate and Breast Laboratoriesより供給を受けた)をL-グルタミン、10% ウシ胎児血清(Hyclone Inc.)および250nM デキサメタゾンを添加したRPMI 1640培地(Grand Island Biologicals社)中で増殖させた。細胞をT-75プラスティックフラスコ(Corning Glass)中で維持した。接種のため,T-75フラスコ中で増殖した細胞を対数増殖後期にトリプシン処理により剥がし、一定量のサンプル2つを電子式粒子計測器(Coulter Model ZBI,Coulter Electronics)で計測した。細胞をリン酸緩衝食塩水で希釈し、0.8x106細胞/0.25ml培地をオスのコペンハーゲン・ラット(250-265gms)に皮下注射した。
【0052】
2.ラットの治療
5群のオスコペンハーゲン・ラット(Harlan Sprague Dwoley)(各群12匹)に同じ日に0.8 x 106のR-3327-AT-1腫瘍細胞を皮下接種した。各群は腫瘍細胞を接種されない3匹のラットを含み体重の変化を測定した。腫瘍細胞接種の5日後、ラットにDMSOに溶解した試験薬剤、その後トリオクタノイン懸濁液を皮下注射した。体重と腫瘍の大きさを1週間単位で測定した。5群のラットを以下のように治療した。第1群のラットはオロト酸4-アミノ-5-イミダゾールカルボキサミドを10mg/100g体重の投与量で治療した。第2群のラットは塩酸4-アミノ-5-イミダゾールカルボキサミドを10mg/100g体重の投与量で治療した。第3群のラットにはL651582を2.6mg/100g体重で投与した。第4群のラットにはオロト酸L651582を2.6mg/100g体重で投与した。第5群のラットには対照溶液としてDMSOあるいはトリオクタノインを投与した。これらの投与量は、4-アミノ-5-イミダゾールカルボキサミドのオロト酸塩(米国特許3,271,398)およびL651582(Kohn,E.C.et al.,1990,J.Natl.Cancer Inst.82:54-60)がこれらの濃度では毒性が見られなかったという知見を基に選択した。
ラットは実験を通じてNIH-07ストックダイエットと水をアドリビダムに与えた。
【0053】
3.治療の結果
期間中、ラットの体重は5群の間において対照群も担腫瘍ラットも変化がなかった。
腫瘍は腫瘍細胞の接種後約20日で3次元的に計測可能となり、その後急速な対数増殖期に入った。剖検での腫瘍の体積および重量を結果の指標として用いた(表1および2)。
【0054】
表1.腫瘍の体積(mm3)

【0055】
表2.腫瘍の質量

【0056】
5群の間での差はANOVA(P-0.0382)で解析した。簡単にいえば、対照区と比較した腫瘍の平均体積および平均重量が示すとおり、塩酸AICA、L651582およびオロト酸L651582は腫瘍の増殖を抑制した。オロト酸AICAの皮下投与処置群から得られた結果は、大きな標準偏差が示すとおり、大きく変動している。しかし、この群の腫瘍は壊死による出血障害が最も少なかった。
得られたデータはまた、L651582のオロト酸塩はL651582よりも腫瘍増殖を低減させるという点でより効果的であることを示している。
【実施例3】
【0057】
塩酸AICAまたはオロト酸L651582の投与による1次および転移腫瘍の治療および阻止療法
本発明は、癌をもつ患者に用いられる化学療法のためのプロトコルによって例示され、種々の癌の阻止および治療におけるオラザミドの有効性を示す。
AICAの塩および/またはL651582の塩は、様々な細胞の作用を妨げることにより毒性を現す種々の化学療法剤と組み合わせて用いることができる。本発明の組成物は前腫瘍細胞の腫瘍細胞への転換を阻止し、腫瘍細胞の増殖を抑制し、浸潤と転移を阻止するのに有用である。
本発明に従ってAICAのおよび/またはL651582の塩と共に一般に用いることができる化学療法剤には、いくつかの薬剤はどの単一のグループにも明確には当てはまらないものの、その作用機序、由来及び構造によって分類される様々な薬剤が含まれる。薬剤のカテゴリーにはアルキル化剤、抗代謝剤、抗生物質、アルカロイドおよびホルモンを含むその他の薬剤が含まれる。
アルキル化剤(たとえば、ニトロジェンマスタード、シクロホスファミド、メルファラン、ブスルファン、その他)は核酸と共有結合を形成する。これらの薬剤は核酸にアルキル基を転位することによりDNAの統合性を変える。このクラスの薬剤は、骨髄抑制、無月経、雄性不妊その他と関連する毒性を有する。
【0058】
抗代謝剤(たとえば、メトトレキセート、メルカプトプリン、チオグアニン、フルオロウラシル、その他)は正常な代謝基質と構造的に類似する。これらは生体の生理学的反応において正常な前駆体とおき変わることにより、あるいは、それらの反応を妨害することにより細胞の機能に障害を与える。このクラスの薬剤は骨髄抑制、肝障害、その他と関連する毒性を有する。
抗生物質(たとえば、ドキソルビシン、ダウノルビシン、ブレオマイシン、その他)はバクテリアおよび菌類の生体産生物である。これらは単一の作用を共有しない。たとえば、アントラサイクリン類、ドキソルビシンおよびダウノルビシンは、DNA鎖の間のインターカレーション、フリーラジカルの生成、2価イオンのキレーションおよび細胞膜との反応を含む、いくつかの作用機序によってその毒性を発揮する。可能な作用点が広範囲であることはアントラサイクリン系の毒性の範囲と同様に広範囲な効能の原因であるかもしれない。Myers,C.E.1992,Cancer Chemother.Biol.Response Modif.13: 45.
アルカロイド(たとえば、ビンクリスチン、ビンブラスチン、ビンデシン、パクリタセル(タクソール))は細胞骨格タンパクであるチューブリンに結合し微小管の重合と脱重合を阻害する。これらの薬剤の使用と関連する神経障害は神経の長軸索の微小管に対する作用によるものである。
その他の薬剤は様々な作用をもつ。たとえば、ダカルバジン及びプロカルバジン(AICAアナログ)はその作用機序においてアルキル化剤と類似する。一方,アスパラギナーゼは、酵素的に作用する。
ホルモン、特にステロイドホルモン(プレドニゾン、プロゲステロン、エストロゲン)およびアンドロゲンは、癌の治療によく用いられる。癌の処置に重要な役割を果たす他のホルモンには、乳癌に用いられる抗エストロゲンであるタモキシフェン、ヒト・ゴナドトロピン放出ホルモンであるロイプロリドを含み、これらは乳癌および前立腺癌の治療に用いられる。
AICAの塩または5-アミノもしくは置換アミノ1,2,3-トリアゾールの塩、たとえば、それぞれ塩酸AICAまたはオロト酸L651582を、単独でまたは互いの組み合わせで、あるいは1または1以上の上記の化学療法剤と組み合わせて有効な量を投与することは、in vivo で患者の種々の1次または2次腫瘍の増殖を阻止および/または拡散を完全に抑制すると考えられる。AICAまたは5-アミノもしくは置換アミノ1,2,3-トリアゾールの塩とともに他の化学療法剤が投与される場合は、そのような化学療法剤に関する当業者に知られたプロトコルおよび投与量の範囲で投与される。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】図1はL651582、オロト酸、およびオロト酸L651582のプロトンNMRスキャンを示す。L651582のオロト酸塩はDMSOに溶解されている。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
5-アミノイミダゾール-4-カルボキサミドの塩を含む、癌の増殖防止および抑制用医薬組成物であって、前記塩がオロト酸塩、塩酸塩およびリン酸塩から選ばれる前記医薬組成物。

【図1】
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【公開番号】特開2008−120827(P2008−120827A)
【公開日】平成20年5月29日(2008.5.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−27656(P2008−27656)
【出願日】平成20年2月7日(2008.2.7)
【分割の表示】特願平9−506890の分割
【原出願日】平成8年7月18日(1996.7.18)
【出願人】(507154125)タクティカル セラピューティクス インコーポレイテッド (3)
【Fターム(参考)】