説明

アミノ酸をベースとする医薬

【課題】敗血症の結果として現われる多数の代謝機能障害によってもたられる組織損傷を防止および(又は)軽減するためのアミノ酸をベースとする医薬組成物を提供する。
【解決手段】生理学上かつ栄養学上許容可能な媒質中に少なくとも遊離システイン又は前駆物質、プロドラッグ、たんぱく質又はペプチド加水分解物の形をしたシステインを健康人の身体内に存在するシステインの割合よりも薬理上活性なシステインの割合で含む医薬組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特に敗血症の結果として現われる多数の代謝機能障害によってもたられる組織損傷を防止および(又は)軽減するためのアミノ酸をベースとする成分に関する。
【背景技術】
【0002】
感染はそのどんな病理とも独立したものであるが、外科手術後に人体中に発生するのが最も一般的で、外傷、火傷、糖尿病、肝硬変、新生物等と関連している。また感染は免疫抑制、細胞溶解剤又は細胞増殖抑制剤による治療中にも起きる。敗血症は特に、幼児や中年の人々における栄養失調とも非常に大きく関連している。またそうした病気は家畜の如き動物や、特に産業用家畜飼育(豚、鶏等)においても見られる。
【0003】
感染に対する代謝反応は複雑で、現在まで非常に多くの問題が依然説明されないままに残っている。この複雑さは特に種々の器官に対する基質の供給やそれらの使用中の変更、感度の変化、ホルモンに対する組織の反応度、例えば、インスリンに対する耐性、血流速度の変化、PAFのような多くの媒介物質の関与や細胞分裂(インターロイキン、TNF等)といった多くの要素の関与から生ずるものであるが、それらの薬理学的効果は問題となる組織によっては互いに矛盾しあうことがある。
【0004】
感染に対する反応はその強さと持続時間が発作の激しさや発作に関して感染が起きる時期に依存するような若干の局面では劇的である。そのため三つの期間が通常識別される(カスバートソン、1942)。「干潮局面」は活発な基質の急速な動員と代謝活動の低下を特徴とする発作後の24時間である。干潮局面の後には「満潮局面」が続き、その持続時間は数日から2〜3週間までまちまちである。この期間には組織、特に筋肉の全般的な異化作用の結果として代謝活動の増進が見られる。生残者の最後局面は同化作用を行う回復期に相当する。
【0005】
本発明は特に、栄養物成分により最初の二つの局面で発生する機能障害を治療もしくは防止することに目標をおいている。これらの局面は食欲不振と体重の低下特に炎症による筋肉たんぱく質の浪費、瀕脈の存在、呼吸亢進、酸素消費量の増加、免疫系統の機能障害等により臨床学的に反映される代謝亢進によって特徴ずけられる。筋肉からのたんぱく質の喪失量の増加は以下に対処するために使用される。
【0006】
肝臓の新糖生成による身体のグルコースと、腸粘膜細胞や免疫系統の高速増殖細胞にとっての必須エネルギー源であるグルタミンに対する要求の増加。
【0007】
若干の器官、特に肝臓の炎症性たんぱく質合成の増加に対するアミノ酸の要求。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】DP Cuthbertson. 1942
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
これまで、ホルモンとαーTNFのような一定の媒介物質の作用がその主題であり、依然、多くの評価の主題を構成している。一定の機構が特定の栄養学的要求と、特にアミノ酸に関する要求とに関してよりよく説明されはじめてきているが、敗血症や発作後の炎症反応の場合には殆んど知られていない。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は敗血症を治療するための方法と成分を提供する。この目的のため、本発明は一例として生理学的かつ栄養学的に許容される媒質から成り、遊離システイン、システイン前駆物質、システインプロドラッグ、システイン含有たんぱく質、およびシステインを含むペプチド加水分解物から成る群から選んだシステインを提供するための少なくとも一つの成分を含む成分を提供する。
【0011】
システインを提供する同成分は同成分を摂取する個人に与えられる薬理上活性のシステインが一人の健康男子の要求に相当する栄養学的組成に存在するシステインの割合よりも大きいような割合で存在する。システインの割合は同成分に存在するアミノ酸全体に対し決定される。
【0012】
一例では、薬理上活性な形のシステインは成分内に存在する全アミノ酸に対して30%と等しいかそれ以上の割合で存在する。
【0013】
一例ではシステインからの窒素量は窒素総量に対して2.15%より大きいかそれと等しい。
【0014】
一例では、上記成分は同成分内に存在するその他のアミノ酸に対して重量で5%と等しいか、それ以上の割合でトレオニンを含む。
【0015】
一例では、上記成分は同成分内に存在するその他のアミノ酸に対して重量で12%と等しいか、それ以上の割合でセリンを含む。
【0016】
一例では、上記成分は10%以上の割合で少なくともアスパラギン酸を含む。これらの割合は同成分に存在するアミノ酸量に対して決定される。
【0017】
一例では、上記組成は10%以上の割合で少なくともアスパラギン酸を含み、これらの割合は成分内に存在するアミノ酸量に対して決定される。
【0018】
一例では、上記成分はロイシン、イソロイシン、バリン、トリプトファン、フェニルアラニン、リシン、メチオニン、およびトレオニンを含む。
【0019】
一例では、上記成分はグリシンを含む。
【0020】
一例では、上記成分はアルギニンを含む。
【0021】
一例では、上記成分はグルタミンを含む。
【0022】
一例では、アミノ酸は遊離形態で存在する。
【0023】
一例では、上記成分は1リットルあたり、以上のものを含む。
【0024】
ロイシン 5〜12g/l
イソロイシン 3〜10g/l
バリン 5〜10g/l
トリプトファン 1.0〜3g/l
フェニルアラニン 1.5〜7g/l
リシン 2〜7g/l
メチオニン 1.5〜5g/l
トレオニン 3.0〜7g/l
一例では、シスチンは、プロドラッグの形で存在する。
【0025】
一例では、上記成分はL−オキソチアゾリン−カルボキシル酸の塩を含む。
【0026】
一例では、上記成分は溶液の形で存在する。
【0027】
一例では、上記成分は非経口服用を意図した完全な栄養成分として提供され、炭水化物カロリー源と、脂質カロリー源と、電解液と、微量元素と、ビタミンを含む。
【0028】
一例では、上記成分は経口栄養成分の形で提供され、炭水化物カロリー源、脂質カロリー源、電解液、微量元素、およびビタミンを含む。
【0029】
一例では、上記成分は服用時に再度加水される粉末形態で提供される。
【0030】
また、本発明は代謝機能障害によりもたらされる組織損傷を防止又は減少させる方法を提供する。
【0031】
また、本発明は敗血症や炎症反応をもたらす発作を治療する方法を提供する。
【0032】
本発明のその他の特長、利点は以下に続く現在の好適例の詳しい解説に示す。
【発明を実施するための形態】
【0033】
発明者は身体にとって重要で、正常な生理学的状態で少量分泌され一定のアミノ酸が豊富な多数の炎症、防御たんぱく質の合成による突然の刺激が特に敗血症の場合には必要であると判断した。この急性局面では、患者や動物の食欲不振状態に鑑て、これらのたんぱく質の合成は身体が十分な量のこれらのアミノ酸を利用できるために十分な量の筋肉たんぱく質やその他のたんぱく質を分解させることを意味する。様々な発作中に消化手続によって行われるエネルギー源としてのグルタミンの消費量の増加はその一例である。
【0034】
C−反応たんぱく質、α1−1−アンチキモトリプシン、α1 −グリコプロテイン酸、パプトグログリン、α2 −マクログロブリン(ラットの場合)又はメタロチオニンのような炎症の肝臓たんぱく質は筋肉たんぱく質のそれと比べて高い割合のトレオニン、アスパルギン酸およびアスパラギンは、これら各種グリコプロテインの炭水化物構成単位が結合されるアミノ酸である。
【0035】
防御反応の間、食欲不振状態の結果として、身体はこれらの各種の必須たんぱく質を合成するために、その筋肉たんぱく質を相当分解してこれら特殊要件をカバーする必要がある。このことは筋原繊維たんぱく質、炎症反応のたんぱく質が全体として短い半生しか有しないためになおさら真実である。
【0036】
アミノ酸要件を考慮することによって身体が必須たんぱく質の合成を向上させることができるだけでなく、筋肉たんぱく質の喪失を避けることができる。身体は予備のたんぱく質を有しないから、どのような失われたたんぱく質の量も機能の喪失に相当する。
筋肉たんぱく質の減少は患者の呼吸能力を危険な程変化させるだけでなく、彼の活動能力も変化させる。筋原繊維のたんぱく質の再生が遅いと長い回復期が続く。必要な要件を与えると、これは病気の期間を短くし入院期間を短くすることができる。また家庭内動物の十分な保護復帰が可能になる。
【0037】
また、敗血症によるショック期間中、しつこい代謝亢進の存在と共にフリーラディカルの豊富な生成が存在すると判断された。フリーラディカルの有害な影響はこれまで広く解説されている。これらの酸化プロセスを制御するために、身体は酸化防止基質と「ラジカルトラップ」を利用することができる。グリシン、グルタミニン酸、およびシステインから成るポリペプチドであるグルタチオンはこれら基質のうち最も豊富なものの一つである。この誘導体に対する加重要件は、身体が、合成のために、グルタチオンを構成する三個のアミノ酸の十分な量を利用可能であることを伴う。
【0038】
細胞レベルでのグルタチオンの喪失は身体にとって有害な代謝上の帰結を伴う。即ち、フリーラディカル捕獲子としてのその役割の他に、グルタチオンは代謝の多くの反応に含まれ(酵素反応の助酵素、デオキシリボ核酸の合成、生体異物の代謝、細胞内還元剤)それ自体、たんぱく質合成に直接利用可能なシステイン予備である。
【0039】
発明者は、このたび、ラットにおける動物を数日続く異化状態に維持する生きたバクテリア(E.コリ)を一回注射することから成るラットの敗血症モデルを開発した後、一定のアミノ酸に対する要件が増大したことを発見した。
【0040】
誘発された敗血症の間、敗血症動物には対で養われる動物と比べて相当な体重の低下が見られることを発見した。この体重の喪失は激しい食欲不振と共に2、3日続いた。また、敗血症動物では10ng/mlよりも大きな高いレベルの循環α−TNF、20〜60を乗じた酸性α1 −グリコプロテインの乳漿成分、高血糖症(1.82g/l)とインスリン過剰症(34.7uu/ml)が存在することも発見された。
【0041】
大量投与手法により評価されたたんぱく質合成の測定は、更に対で養われる動物に関して、肝臓において合成速度は1.8から2.7倍へ大きくなるが、筋肉では30%減少したことを示した。後者の組織ではたんぱく分解の増大が観察される。
【0042】
肝臓のそれより少ない身体全体のたんぱく質合成は筋肉合成の大きな減少にもかかわらず増大する。このことは他の器官ではその合成が刺激されることを意味する。特に脾臓と肺におけるたんぱく質合成の増加を観察することができた。
【0043】
この感染モデル中におけるアミノ酸の固定と酸化のバランスを調べると一連の必須アミノ酸と非必須アミノ酸と、殊に肝臓に対する要件を判断することができた。感染速度の肝臓のたんぱく質含有量は対で養われる被験動物と比較して42%増加する。発明者は、得に74%オーダのシステイン濃度の増加を観察することができた。
【0044】
身体全体のアミノ酸成分を分析すると、対で養われる被験動物に対して9%だけ相当増加するシステイン/シスチンの組合せと同一レベルに維持された一定のアミノ酸(トレオニンとアルギニン)を除いて感染動物の大きな増加を示した。このことは感染中に10〜30%の酸化の増加を示すその他の全ての必須アミノ酸とは対照的に、感染ラットが対で養った被験動物よりもそれぞれ3.7%と54%少ないトレオニンとシステインを異化させるから、これらアミノ酸の節約を示す。
【0045】
上記感染モデルでL−〔35S〕システインをラットに注入した後異なる組織における放射能の分布を分析すると炎症反応のたんぱく質とグルタチオンを合成するためのシステインの活用の向上が明らかになった。事実、脾臓と乳漿たんぱく質からアルブミンを差引いたものにおけるたんぱく質の1gあたりの合体された放射能はそれらの対で養った被験動物に対して感染動物では70%だけ増加する。主としてシステインとグルタチオンを含む部分中に発生する注入服用量の割合は対で養った被験動物と比較して感染動物の肝臓と脾臓における場合よりもそれぞれ1、9倍と4倍大きい。食餌にアミノ酸を補給することの体重の低下に及ぼす影響は感染中における一定のアミノ酸に対する加重された要件について発明者の信念を確認した。等しい窒素成分を有する食餌を受取る三グループの動物を比較した。即ち、被験動物グループ(グループC)と、トレニオン、セリン、アスパラギン酸、アスパラギン、アルギニン、グループ(グループAA)と、トレオニン、セリン、アスパラギン酸、アスパラギン、アルギニン、およびシステインを補給した食餌を受取るグループ(グループCys)である。これらの補給により体重の低下は制限され、感染動物の成長の回復を加速することができた。感染の10日後、動物の体重はそれぞれグループC、AA、Cysにおけるそれらの初期体重よりも15%、8%および2.5%低かった。0.8〜6.7%の食餌のシステイン成分を増加すると感染後の数日のそれら対で養った被験動物に対して感染動物の窒素排出量はほぼ35%減少した。この同じ調査において食餌にシステインを補給すると肝臓中のグルタチオン濃度を正常化することができた。後者の濃度は0.8%のシステインのみを含む食餌の場合、25%オーダの割合だけ低下した。
【0046】
これらの結果により発明者は得に敗血症中、より一般的には高度に異化性かつ代謝亢進的状況の発動中、システイン、およびより小さな規模ではトレオニン、セリン、アスパルギン酸、およびアスパラギンに対する要求は著しく増加することを確認することができた。
【0047】
本発明はアミノ酸に対する特殊要件を満たし相当量の筋肉たんぱく質の喪失を回避又は防止することができるように種々の割合で存在するアミノ酸成分を提供する。
【0048】
本発明は上記問題を解決することを可能にするために、経口又は非経口で服用することを意図したアミノ酸成分を提供する。
【0049】
もう一つの例では、本発明は特に敗血症の結果として現れる代謝機能障害によってもたらされる組織損傷を治療する目的でアミノ酸の成分を使用する方法を提供する。
【0050】
別の例では、本発明は特に敗血症の結果現れる代謝機能障害によってもたらされる組織損傷の治療と予防に対する方法を提供する。
【0051】
経口又は非経口により服用することを意図したアミノ酸に基づく成分は、本発明によれば、生物学的かつ栄養学的に許容可能な媒質中に少なくとも遊離システイン、又はシステインが豊富なプロドラッグ、たんぱく質又は加水分解物の形をしたシステインを健康人の要件に相当する栄養成分中に存在するシステインの割合よりも大きな薬理学上活性のシステインの割合だけ含む。システインの割合は成分中に存在する全アミノ酸に対して決定される。
【0052】
本発明の好適例では、薬理上活性な形をとったシステインは成分中に存在する全アミノ酸に対して3%に等しいかそれよりも大きな割合だけ存在する。
【0053】
本発明の一例では、本発明によるアミノ酸の成分は更に、少なくとも5%と等しいかそれ以上の割合のトレオニンと(又は)、少なくとも12%と等しいかそれ以上の割合のセリンと(又は)、少なくとも10%と等しいかそれ以上の割合のアスパラギン酸又はアスパラギンを含む。これらの割合は成分内に含まれるアミノ酸の量に対して決定される。
【0054】
好適例では、本発明は8個のアミノ酸、即ち、ロイシン、イソロイシン、バリン、トリプトファン、フェノールアニン、リシン、メチオニン、トレオニンを含む上記の成分を提供する。
【0055】
本発明のもう一つの例によれば、上記成分はまたグリシンと(又は)アルギニンを含む。
【0056】
本発明による成分はまたタウリンと(又は)グルタミンを含むことができる。
【0057】
本発明による成分はアミノ酸混合物である溶液形で提供される実施例にある。
【0058】
一例では上記成分は選択により全体として蒸留水より成る媒質中にそれらの薬理上許容可能な塩の形で使用できる。
【0059】
本発明による成分は一例ではアミノ酸溶液1リットルあたり以下の成分を以下の量だけ含む。
【0060】
ロイシン 5〜12g/l
イソロイシン 3〜10g/l
バリン 5〜10g/l
トリプトファン 1.0〜3g/l
フェニルアラニン 1.5〜7g/l
リシン 2〜7g/l
メチオニン 1.5〜5g/l
トレオニン 3.0〜7g/l

この成分は場合に応じて2.5〜6g/lの割合のセリンと1.5〜4g/lの割合のアスパラギン酸と、3〜7g/lの割合のグリシンと、5〜10g/lの割合のアルギニンと、1〜4g/lの割合のタウリンと、4g/l以上の割合のグルタミンを含む。
【0061】
本発明によれば、この成分中には存在するアミノ酸の総量に対して3%以上の割合だけシステインが存在する。特に、システインは存在する全体のアミノ酸の3〜約10%の範囲のレベルにある成分中に存在する。
【0062】
本発明のもう一つの好適例によれば、トレオニンは、既に先に示したように、存在するアミノ酸の総量に対して5%以上の割合、特に5〜約12%の範囲のレベルで存在することが望ましい。
【0063】
セリンが存在する時には存在するアミノ酸の総重量に対して12%以上、殊に12〜約16%の範囲の範囲で存在することが望ましい。アスパラギン酸又はアスパラギンは、存在する時、存在するアミノ酸の総重量に対して10%以上、特に10〜15%の割合で存在することが望ましい。
【0064】
本発明に従って使用されるシステインは、特に高いシステイン乳漿レベルを維持することを避けたい場合にはL−オキソチアゾリジンカルボキシル酸形のようにプロドラッグ形又は薬理上可能な塩の形で使用することができる。細胞内システインへ変換可能なその他のシステイン前駆物質又は誘導体を使用可能であることが十分に理解できる。システインはたんぱく質やペプチド形のように他のアミノ酸と結合した形で使用することができる。
【0065】
プロドラッグ又はシステイン前駆物質、ペプチド又はたんぱく質の量はこれら誘導体から解放可能なシステインに基づいて決定する。
【0066】
また、特にアスパラギン酸と(又は)アスパラギンの場合には例えばジペプチド形の場合のように前駆物質又はプロドラッグの形をした上記のその他のアミノ酸を使用することもできる。
【0067】
本発明による成分は水溶液形でなく他の形を提供することもできる。かくして、システインは本発明による割合の匹敵し得るシステイン量をその内部に導入することによって現存の経口処方箋を修正するだけで、服用することができる。
【0068】
システインの補給は経口栄養を意図した準備形態でも実行できる。それは、この場合、当然ながらシステイン/システインの豊富なたんぱく質又はペプチド加水分解物を使用することによって実行できる。
【0069】
システインレベルはまた、この場合、健康人用に意図した成分中に存在するシステインの割合よりも大きな量だけ存在することもできる。
【0070】
即ち、この量は遊離形又は結合した形で存在する全てのアミノ酸に対して決定される。
【0071】
また、システインに含まれる窒素成分やこれらの前駆物質、および成分中の窒素の総量のそれを考慮に入れて必要量を表現することもできる。
【0072】
その割合は、この場合、存在する総窒素に対するシステインからの窒素量を表す。
【0073】
たんぱく質又はペプチド加水分解物中に結合されるシステインは成分中に遊離形又は結合形で存在する全アミノ酸に対して3%以上の割合で存在することが望ましい。
【0074】
窒素成分として表現した時、遊離システイン又はその前駆物質、プロドラッグ、たんぱく質又はペプチド加水分解物の一つの形をしたシステインからの窒素の量は全窒素に対して2.15%以上である。
【0075】
本発明の成分は非経口服用を期した完全な栄養成分の形で提供することができる。そのような見本はアミノ酸やそれらの誘導体(ペプチド)の他に、加水分解物(グルコース、フラクトース、ソルビトール等)と(又は)脂質(脂肪酸トリグリセリド)カロリー源を含むことができる。脂質は長鎖、中鎖、又は短鎖、トリグリセリドを含むことができる。また、上記組成は電解液、微量元素、およびビタミンを含むこともできる。これらの栄養学的組成では、システイン又はその前駆物質は栄養成分中に存在するアミノ酸量に対して3%より大きな割合で存在するであろう。
【0076】
非経口成分は水溶液、又は非水溶液、懸濁物又は乳化物の形で提供することができる。
【0077】
上記成分を経口ルートを期した栄養成分の形で提供する場合にはシステインは栄養成分中に存在するアミノ酸に対して3%より大きな割合で存在することになろう。システイン又は上記したその他のアミノ酸の補給はアミノ酸自体か、プロドラッグ、又は問題のアミノ酸中に特に豊富なたんぱく質又は、ペプチド加水分解物(例えばシステイン)の何れかによって得られる。
【0078】
この成分は、たんぱく質、アミノ酸およびペプチドの他に、炭水化物(各種塩水化物の形をとる)と(又は)脂質(種々の起源によるオイルの形で導入された長中鎖を含む脂肪酸のトリグリセリド)カロリー源、電解液、微量元素およびビタミンを含むことができる。
【0079】
また、システインは本発明による成分中に使用可能なその他のアミノ酸を予めミックスすることもできる。また、シテスインは服用時に再度加水可能な無菌粉末の形で提供するか、使用時解凍され適当て濃度に混合される冷凍又は冷蔵濃縮物の形に保存することもできる。
【0080】
これらの成分は経口又は非経口服用の方法において、既知の装置によって服用するこができる。
【0081】
本発明のもう一つの主題は、代謝機能障害によりもたらされる組織損傷を防止又は軽減させる方法より構成される。治療は経口又は非経口により上記成分を使用するこによって実行される。
【0082】
本発明のもう一つの主題は、特に敗血症の結果として現われる代謝機能障害によりもたらされる組織を、上記したような十分な量のシステイン又は機能的類似体を薬理上活性で健康人又は動物の要件に相当する栄養成分中に存在するシステイン量よりも多い量だけ人又は動物に経口又は非経口にて服用させることにより治療することである。
【0083】
服用は特に経口又は非経口により行う。服用されるシステインの量は服用されるアミノ酸の総量について3%以上であり、殊に3〜10%の範囲にあることが望ましい。
【0084】
一例とし以下の例を挙げる。
【0085】
例1・2
以下のアミノ酸溶液が作成される。
【0086】
ロイシン 7.2g/l 7.2g/l
イソロイシン 5.6g/l 5.6g/l
バリン 5.6g/l 5.6g/l
トリプトファン 1.2g/l 1.2g/l
フェニルアラニン 3.2g/l 3.2g/l
リシン 3.2g/l 3.2g/l
メチオニン 2 g/l 2 g/l
トレオニン 4 g/l 6 g/l
アスパラギン 8 g/l 8 g/l
グルタチオン 2.4g/l 2.4g/l
セリン 9.8g/l 9.8g/l
グリシン 5.9g/l 5. g/l
アラギン 6.2g/l 5.8g/l
システイン 2.5g/l 4 g/l
オルニチン 2.4g/l −−
チロシン 0.4g/l 0.4g/l
ヒスチジン 3.2g/l 3 g/l
アルギニン 4.6g/l 4.6g/l
たんぱく質 3.2g/l 3.2g/l
1リットルに対する蒸留水q.s
AAT 80.2g/l 80.7g/l

例3
以下のアミノ酸溶液が作成される。
ロイシン 6 g/l
イソロイシン 4.5g/l
バリン 4.5g/l
トリプトファン 1.2g/l
フェニルアラニン 3 g/l
リシン 3 g/l
メチオニン 2 g/l
トレオニン 6 g/l
アスパラギン 8.5g/l
グルタチオン 8 g/l
セリン 9.8g/l
グリシン 4.8g/l
アラギン 4 g/l
システイン 4 g/l
オルニチン −−
チロシン 0.4g/l
ヒスチジン 3 g/l
アルギニン 4 g/l
たんぱく質 3 g/l
1リットルに対する蒸留水q.s
AAT 81.1g/l
例4以下のアミノ酸溶液が作成される。
ロイシン 12 g/l
イソロイシン 9.3g/l
バリン 9.3g/l
トリプトファン 2 g/l
フェニルアラニン 5.33g/l
リシン 5.33g/l
メチオニン 3.33g/l
トレオニン 10 g/l
アスパラギン 14.16g/l
グルタチオン 4 g/l
セリン 16.8g/l
グリシン 8.33g/l
アラギン 10 g/l
システイン 6.6 g/l
オルニチン −−
チロシン 0.5g/l
ヒスチジン 5 g/l
アルギニン 7.6g/l
たんぱく質 5.18g/l
1リットルに対する蒸留水q.s
AAT 134.17g/l
例5・6
以下のアミノ酸溶液が作成される。
【0087】
ロイシン 7.2g/l 7.2g/l
イソロイシン 5.6g/l 5.6g/l
バリン 5.6g/l 5.6g/l
トリプトファン 1.2g/l 1.2g/l
フェニルアラニン 3.2g/l 3.2g/l
リシン 3.2g/l 3.2g/l
メチオニン 2 g/l 2 g/l
トレオニン 4 g/l 6 g/l
アスパラギン 8 g/l 8.5g/l
グルタチオン 2.4g/l 2.4g/l
セリン 9.8g/l 9.8g/l
グリシン 5.6g/l 5 g/l
アラギン 6 g/l 5.8g/l
システイン 2.6g/l 4 g/l
オルニチン 2.4g/l −−
チロシン 0.4g/l 0.4g/l
ヒスチジン 3.2g/l 3 g/l
アルギニン 4.8g/l 4.6g/l
たんぱく質 3.2g/l 3.2g/l
1リットルに対する蒸留水q.s
AAT 80.4g/l 80.7g/l
例7
以下のアミノ酸溶液が作成される。
【0088】
ロイシン 6 g/l
イソロイシン 4.5g/l
バリン 4.5g/l
トリプトファン 1.2g/l
フェニルアラニン 3 g/l
リシン 3g/l
メチオニン 2 g/l
トレオニン 6 g/l
アスパラギン 8.5g/l
グルタチオン 7.8g/l
セリン 9.8g/l
グリシン 5 g/l
アラギン 4 g/l
システイン 4 g/l
オルニチン −−
チロシン 0.4g/l
ヒスチジン 3 g/l
アルギニン 4 g/l
たんぱく質 3 g/l
1リットルに対する蒸留水q.s
AAT 81.1g/l
4−オキソチアゾリンジンカルボキシル酸又は塩形
例8
以下のアミノ酸溶液が作成される。
【0089】
ロイシン 12g/l
イソロイシン 9.3g/l
バリン 9.3g/l
トリプトファン 2 g/l
フェニルアラニン 5.33g/l
リシン 5.33g/l
メチオニン 3.33g/l
トレオニン 10 g/l
アスパラギン 14.16g/l
グルタチオン 4 g/l
セリン 16 g/l
グリシン 8.33g/l
アラギン 10 g/l
システイン 6.66g/l
オルニチン −−
チロシン 0.5g/l
ヒスチジン 1 g/l
アルギニン 7.6g/l
たんぱく質 5.3g/l
1リットルに対する蒸留水q.s
AAT 134.17g/l
4−オキソチアゾリンジンカルボキシル酸又は塩形
例9
以下のアミノ酸溶液が作成される。
【0090】
ロイシン 6 g/l
イソロイシン 5 g/l
バリン 5 g/l
トリプトファン 1.2g/l
フェニルアラニン 3 g/l
リシン 3 g/l
メチオニン 2 g/l
トレオニン 6 g/l
アスパラギン 8.5g/l
グルタチオン 9.6g/l
セリン 5 g/l
グリシン 15 g/l
アラギン 5 g/l
システイン 4 g/l
1リットルに対する蒸留水q.s
AAT 78.3g/l
例10
以下のアミノ酸溶液が作成される。
【0091】
ロイシン 6 g/l
イソロイシン 5 g/l
バリン 5 g/l
トリプトファン 1.2g/l
フェニルアラニン 3 g/l
リシン 3 g/l
メチオニン 2 g/l
トレオニン 6 g/l
アスパラギン 8.5g/l
グルタチオン 9.6g/l
セリン 5 g/l
グリシン 15 g/l
アラギン 5 g/l
システイン 4 g/l
1リットルに対する蒸留水q.s
AAT 78.3g/l
4−オキソチアゾリンジンカルボキシル酸又は塩形
例11
経口服用成分(1000ml)
たんぱく質 58.2g(カゼインと乳清ペプチドの形)
システイン 4.9g
脂質 52 g(中鎖トリグリセリド、大豆油)
グルサイド 156 g(マルトデキストリンとスターチ)
無機物ナトリウム 1000 mg
カリウム 1660 mg
カルシウム 450 mg
リン 500 mg
マグネシウム 330 mg
鉄 13.3mg
亜鉛 13.3mg
マンガン 2.7mg
銅 1.3mg
塩化物 2500 mg
よう素 100 mg
ビタミン
A 1064 mg
E 20 mg
B1 2 mg
B2 2 mg
B5 6.7mg
B6 2.6mg
C 133 mg
PP 26.6mg
B12 3 mg
薬酸 333 mg
ビオチン 133 mg
コリン 266 mg
同じ割合のシステインを前駆物質、例えば、システインの豊富な4−オキシチアゾリジン−カルボキシル酸又は、ペプチドにより供給することもできる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
生理学的かつ栄養学的に許容可能な媒体から成り、遊離システイン、システイン前駆物質、システインプロドラッグ、システインを含むたんぱく質、およびシステインを含むペプチド加水分解物から成るグループから選ばれたシステインを提供する少なくとも一つの成分を含む、炎症反応によりもたらされる組織損傷を予防又は減少させるための医薬で、システインを提供する前記成分が成分を摂取する個人に対して提供される薬理上活性なシステインが成分中に存在する全アミノ酸に対して3%以上の割合で存在し、トレオニンが重量で5%以上の割合で存在し、セリンが重量で12%以上の割合で存在し、アスパルギン酸が重量で10%以上の割合で存在し、これらの割合が成分中に存在するアミノ酸量に対して決定され、システインの割合が成分内に存在する全アミノ酸に対して決定される前記医薬。
【請求項2】
システインからの窒素量が窒素の総量に対して2.15%以上である請求項1の医薬。
【請求項3】
ロイシン、イソロイシン、バリン、トリプトファン、フェニルアラニン、リシン、メチオニン、およびトレオニンを含む請求項1の医薬。
【請求項4】
前記医薬がさらにグリシンを含む、請求項1の医薬。
【請求項5】
前記医薬がアルギニンを含む請求項1の医薬。
【請求項6】
前記医薬がタウリンを含む請求項1の医薬。
【請求項7】
前記医薬がグルタミンを含む請求項1の医薬。
【請求項8】
アミノ酸が遊離形態で存在する請求項1の医薬。
【請求項9】
前記医薬が1リットルあたり以下のものを含む請求項1の医薬。
ロイシン 5〜12g/l イソロイシン 3〜10g/l バリン 5〜10g/l トリプトファン 1.0〜3g/l フエニルアラニン 1.5〜7g/l リシン 2〜7g/l メチオニン 1.5〜5g/l トレオニン 3.0〜7g/l
【請求項10】
システインがプロドラッグの形で存在する請求項1の医薬。
【請求項11】
前記成分がLーオキソチアゾリジンーカルボキシル酸を含む請求項1の医薬。
【請求項12】
前記医薬がLーオキソチアゾリジンーカルボキシル酸の塩を含む請求項1の医薬。
【請求項13】
前記医薬が溶液の形をした請求項1の医薬。
【請求項14】
前記医薬が非経口服用を期した完全な栄養成分として提供され、炭水化物カロリー源、脂質カロリー源、電解液、微量元素およびビタミンを含む請求項1の医薬。
【請求項15】
前記医薬が炭水化物カロリー源、脂質カロリー源、電解液、微量元素およびビタミンを含む栄養経口成分の形で与えられる請求項1の医薬。
【請求項16】
少なくとも前記医薬が服用時に再度水化可能な粉末の形で与えられる請求項1の医薬。

【公開番号】特開2009−242413(P2009−242413A)
【公開日】平成21年10月22日(2009.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−142877(P2009−142877)
【出願日】平成21年6月16日(2009.6.16)
【分割の表示】特願平6−265033の分割
【原出願日】平成6年10月28日(1994.10.28)
【出願人】(592035361)クリンテック ニュートリション カンパニー (1)
【出願人】(594184698)アンスティテュ ナシオナル ドゥ ラ ルシェルシュ アグロノミック(イエヌエールア) (3)
【Fターム(参考)】