説明

アミロイド沈積、アミロイド神経毒性およびミクログリオーシスを低減する方法

本発明はアルツハイマー疾患のような大脳アミロイド形成性疾患に冒された動物またはヒトにニルバジピンを投与することにより、β-アミロイドの沈積、β-アミロイドの神経毒性およびミクログリオーシスを軽減する方法を提供する。また上記疾患の診断方法、進行するリスクを決定する方法のみならず、 外傷性脳損傷に苦しむ動物およびヒトにニルバジピンを投与することを含み、 ニルバジピン投与が急性頭部損傷の直後から始められ、その後もニルバジピン治療が、処方された期間継続されることにより、β-アミロイドの沈積、β-アミロイドの神経毒性およびミクログリオーシスのリスクを低減する方法、大脳アミロイド形成性疾患に苛まれる動物またはヒトの中枢神経系における神経幹細胞に対してニルバジピンを、その幹細胞を移植する前に投与することを含む、移植可能な神経幹細胞を処置する方法をも提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アルツハイマー疾患のような、大脳のアミロイド形成性疾患の病態生理作用を治療するための方法に関する。すなわち、アルツハイマー疾患のような大脳のアミロイド形成症と関連する疾患に苦しむヒトや動物の脳においてそうした病態生理作用を抑制する、特異的ジヒドロピリジンアンタゴニストカルシウムチャネルブロッカーであるニルバジピン(nilvadipine)を投与する方法である。
【背景技術】
【0002】
アルツハイマー疾患(AD)は加齢による最も一般的な神経変性の疾患であり、65歳を超える人々の約1%の人を苦しませている。この疾患の特徴として、細胞内神経原線維のもつれの蓄積が進行すること、細胞外実質組織の老人性斑、および脳内の脳血管の沈積物が挙げられる。老人斑と脳血管の沈積物の主成分は、39-43個のアミノ酸からなるβ-アミロイドペプチド(Aβ)であり、トランスメンブラン糖タンパク質のアミロイド前駆体タンパク質(APP)からタンパク質分解により生じる。
【0003】
APPは、590-680個のアミノ酸の細胞外アミノ末端ドメインと約55個のアミノ酸からなる細胞質内の尾端とを有する単一のトランスメンブランタンパク質である。染色体21上にあるAPP遺伝子からのmRNAは交互スプライシングを受け、8つの可能なイソ型を生じる。そのうち3つ(695、751および770個アミノ酸のイソ型)が脳内で優位を占める。APPは3つの酵素、α-,β-および γ-セクレターゼの作用によってタンパク質分解性のプロセッシングを受ける。α-セクレターゼはAβドメインのアミノ酸17でAPPを開裂し、大きな可溶性アミノ末端フラグメント、α-APPを分泌のため放出する。なぜならα-セクレターゼはAβドメイン内で開裂するために、この開裂によりAβ生成が阻害される。あるいはAPPは、Aβのアミノ末端範囲を定めるβ-セクレターゼにより開裂されて、可溶性アミノ末端フラグメントβ-APPを生じる。続いて、細胞内にあるAPPカルボキシ末端ドメインのγ-セクレターゼによる切断によって、多数のペプチドが生成し、その中の最も多い生成物は40-アミノ酸のAβ(Aβ40)および42-アミノ酸のAβ(Aβ42)である。Aβ40は分泌されたAβの90〜95%を占め、脊髄液から回収される優勢分子種である(Seubertら, Nature, 359: 325-7,1992)。これに比べて、Aβ42は分泌されたAβの10%未満である。Aβ42の生成が相対的に少量であるにもかかわらず、Aβ42は斑(plaque)に見出される優勢種であり、また最初に沈積するものである。これはAβ40よりも速やかに不溶性アミロイド凝集体を形成する能力によるものであろう(Jarrettら, Biochemistry, 32: 4693-7,1993)。脳内でのAβの異常な蓄積は、APPの過剰発現によるか、あるいはAPPプロセッシングの変調によるものと信じられている。
【0004】
このようにAβペプチドはADの病理生物学において重要な役割を果たすと信じられているが、これはADの系統形態に関係しているすべての変異が、これらAPPからのペプチドのプロセッシング変調に帰着するからである。実際、脳内におけるAβの不溶性もしくは凝集性の原繊維の沈積は、AD形態すべての神経病理上の顕著な特徴であり、患者の遺伝子素質には関わらない。
【0005】
Aβ沈積に付随してAD脳において炎症経路の激しい活性化が現れ、これにはAβ沈積の内部および周辺に、炎症性サイトカイン前駆体および急性相反応物質の産生が含まれる(McGeerら, J. Leukocyte Biol., 65: 409-15,1999)。
【0006】
脳に内在する固有の免疫細胞、小グリア細胞(microglia)の活性化は、この炎症性カ
スケードに密接に関与していると考えられている。反応性の小グリア細胞が炎症性サイトカイン前駆体を生産することは証明されている。該前駆体には炎症性タンパク質および急性相の反応物質であり、たとえばα-1-アンチキモトリプシン、変換成長因子β、アポリポプロテインEおよび補体因子などであり、これらはすべてAβプラークに局在化されており、Aβプラークの「濃縮」もしくは成熟を促進することが示されている(Nilssonら, J Neurosci. 21:1444-5, 2001)。高レベルになるとさらに神経変性の促進が見られる。疫学的研究からは、非ステロイド系抗炎症性薬剤(NSAID)を使用している患者は、ADのリスクを50%も減少しており(Rogersら, Neurobiol. Agiyzg 17: 681-6,1996)、ならびにNSAID 治療を受けたAD患者の死後評価からは、このリスク減少は活性化小グリアの数の減少と関係していることが示された(Mackenzieら, Neurology 50: 986-90, 1998)。さらにTgAPPsw
マウス(アルツハイマー疾患のマウスモデル)にNSAID(イブプロフェン)を与えた場合、これらの動物では、活性化小グリア細胞の減少に関係したAβ沈積の減少、星状細胞症、および発育異常神経突起が見られる(Limら, J. Neurosci. 20 : 5709-14,2000)。
【0007】
AD脳における炎症性過程の生成物は、それゆえAD病理を悪化させるかもしれない。さらにAD脳において活性化された小グリアは、Aβ除去の代わりにAβ線維素形成を促進し、結果的に老人性プラークのような沈積を生じさせることから病原性を有するという証拠もある(Wegielら, Acta Neuropathol. (Berl.) 100: 356-64,2000)。
【0008】
AD発症病理はAβの神経毒性作用が原因であることが示唆されている。Aβの細胞毒性は、げっし類の脳からの初代培養細胞およびヒトの培養細胞によって、最初に確立された。Mattsonらの研究(J. Neurosci., 12:376-389, 1992)から、興奮性の神経伝達物質グルタミン酸の存在下で、Aβは細胞内カルシウムの急速かつ異常な増加をもたらすことが示された。このことは顕著に亢進した第二メッセンジャー活性を通じて細胞に対して著しい毒性を示すと信じられている。
【0009】
かくしてADの特徴である、変えられない脳の変質進行の予防方法が必要とされる。この予防法はAD患者に見られるAβ沈積、Aβ神経毒性、小グリア細胞により賦活された炎症、およびAPPの過剰なまたは変調した発現に取り組み、解決する。
[発明の開示]
上記要請に応えるために、本発明はまずアルツハイマー疾患(AD)のような大脳のアミロイド形成性疾患に冒された動物またはヒトにおいて、カルシウムチャネルアンタゴニストであるニルバジピンの治療有効量を投与することにより、β-アミロイドの沈積、β-アミロイドの神経毒性およびミクログリオーシス(microgliosis)を軽減する方法を提供する。
【0010】
さらに本発明は、動物またはヒトの末梢循環におけるβ-アミロイドの血漿濃度を最初に測定すること;その動物またはヒトにニルバジピンの治療的有効量を単位投与形態で投与すること;その動物またはヒトの末梢循環におけるβ-アミロイドの血漿濃度をその後のある時点で2回目に測定すること;Aβの血漿濃度について最初の測定および2回目の測定との間の差を算出すること;により動物またはヒトにおけるADのような大脳アミロイド形成性疾患の診断方法、あるいはその動物またはヒトは大脳のアミロイド形成性疾患が進行するリスクに置かれているかどうかを決定する方法もまた提供する。最初の測定と比べて2回目の測定で、β-アミロイドの血漿濃度が上昇しておれば、動物またはヒトにおける大脳のアミロイド形成性疾患を進行させるリスクおよび/またはそれらしい徴候を示す。
【0011】
本発明は、外傷性の脳損傷に苦しむ動物およびヒトにおいて、ニルバジピンの治療的有効量を単位投与形態で頭部損傷の直後からその動物またはヒトに投与され、その後もニルバジピン治療が指定された期間継続されることにより、β-アミロイドの沈積、β-アミロイドの神経毒性およびミクログリオーシスのリスクを低減する方法をさらに提供する。
【0012】
本発明は、ADのような大脳アミロイド形成性疾患に苛まれる動物またはヒトの中枢神経系における神経幹細胞に対して、ニルバジピンの治療的有効量をその幹細胞を移植する前に投与することを含む、移植可能な神経幹細胞を処置する方法をも提供する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
動物およびヒトにおいてアルツハイマー疾患(AD)といった、ある大脳アミロイド形成性疾患の特徴である脳退化の仮借のない進行に対して、ニルバジピン (isopropyl-3-methyl-2-cyano-1,4-dihydro-6-methyl-4-(m-nitrophenyl)-3,5-pyridine-dicarboxylate; MW 385.4)、ジヒドロピリジン類縁体カルシウムチャネルアンタゴニストを投与することによる予防的方法を本発明が初めて提供する。
【0014】
本発明の一態様として、特に大脳のアミロイド形成性の疾患または病態に苛まれる動物およびヒトに、ニルバジピンの治療的有効量を単位投与形態で投与することを含む、動物またはヒトにおけるβ-アミロイドの沈積、β-アミロイドの神経毒性およびミクログリオーシスを低減する方法が提供される。ADのような大脳のアミロイド形成性疾患の大半は、慢性的で進行性であり、治りにくい脳痴呆であるために、ニルバジピン治療の持続が動物またはヒトの終生まで続くことが想定される。そうした大脳アミロイド形成性疾患または病態には、限定されないが、アルツハイマー疾患、伝染性海綿様脳症、スクレーピー、外傷性の脳損傷、大脳のアミロイド脈管障害(angiopathy)およびGerstmann-Straussler-Scheinker症候群などが挙げられる。
【0015】
本発明の別の態様において、外傷性脳損傷(TBI)に苦しむ動物およびヒトにおいて、その動物またはヒトにニルバジピンの治療的有効量を単位投与形態で投与することを含み、ニルバジピン投与がTBI直後から始められ、その後もニルバジピン治療が指定された期間、継続されることを特徴とする、β-アミロイド沈積、β-アミロイドの神経毒性およびミクログリオーシスのリスクを低減する方法が提供される。TBIは、AD進展に対する感受性を増強させることが示されており、ならびに理論に拘泥するわけではないが、TBIが大脳のAβ蓄積および酸化的ストレス(これらは協同的に作用して、ADを発症させるかその進行を推進するかも知れない)を助長させると信じられている。
【0016】
ニルバジピンによる治療の持続は、TBIに苦しむ動物またはヒトについて想定されているのは、およそ1時間と5年間との間、好ましくは約2週間と3年間との間で、および最も好ましくは約6ヶ月と12ヶ月との間で続くものとされる。
【0017】
本発明の別の態様は、動物またはヒトの末梢循環におけるβ-アミロイドの血漿濃度を最初に測定すること;その動物またはヒトにニルバジピンの治療的有効量を単位投与形態で投与すること;その動物またはヒトの末梢循環におけるβ-アミロイドの血漿濃度をその後のある時点で2回目に測定すること;次いで最初の測定および2回目の測定との間の差を算出すること;により、動物またはヒトにおけるADのような大脳アミロイド形成性疾患の診断方法、あるいはその疾患が進行するリスクを決定する方法もまた提供する。最初の測定と比べて2回目の測定で、β-アミロイドの血漿濃度が上昇しておれば、動物またはヒトにおける大脳のアミロイド形成性疾患が進行するリスクまたはそれらしい徴候を示される。
【0018】
ニルバジピンが最初および2回目の血漿Aβ濃度測定との間で持続的に投与される期間は、およそ1日と12ヶ月との間、好ましくはおよそ1週間と6ヶ月との間、最も好ましくはおよそ2週間と4週間との間まで続く。ニルバジピンを投与した後、血漿Aβ濃度における少々の増加は、ADの進行のリスクおよび/またはAD発症段階の徴候を表すであろうと考えられる。ニルバジピン投与に血漿Aβ濃度が大きく増加することは、脳から末梢循環
へ遊離されたAβのより高い濃度を反映するものであり、このため一層ADを陽性と診断する指針となるであろう。
【0019】
本発明の方法に基づき、大脳のアミロイド形成性疾患に苛まれているか、あるいは外傷性の脳損傷に苦しむ動物またはヒトに対して単位投与形態で投与されるニルバジピンの治療的有効量のみならず、動物またはヒトにおいて大脳のアミロイド形成性疾患が進行するリスクおよび/または徴候を決定する目的で投与される治療的有効量は、次の範囲内にある。約0.05〜20mg/日の間、好ましくは約2〜15mg/日の間、さらに好ましくは約4〜12mg/日の間、特に好ましくは約8mg/日である。毎日の投与は、一日当り、単回の単位投与量、または2、3または4回の単位投与量に分割される。
【0020】
本発明のもう一つの態様として、ADのような大脳のアミロイド形成性疾患に苛まれる動物またはヒトの中枢神経系における神経幹細胞に対してニルバジピンの治療的有効量をその幹細胞を移植する前に投与することによる、移植可能なヒトまたは異種の神経幹細胞を予備的に処置する方法がある。
【0021】
おそらく神経幹細胞自体は、Aβの沈積を大して有しないであろう。しかしながら、もし神経細胞の移植がAβの載荷された環境のために意図されるのであれば、神経幹細胞の予備的な処置は、移植された神経細胞が新しい環境で生存してAβ濃度を低下させ、そのAβ毒性を減らすことができる能力を増強させるものでなくてはならない。神経幹細胞を予備的に処置するために単位投与形態で投与されるニルバジピンの治療的有効量は、約1nM〜3μMの間、好ましくは約10nM〜2μMの間、特に好ましくは、約100nM〜1μMの間の範囲にある。幹細胞は、特定タイプの細胞、例えば神経細胞に分化するように向かう場合、アルツハイマー疾患、パーキンソン氏疾患または脊髄損傷といった疾患および病態を治療するために、細胞および組織を置き換える再生可能な供給源の可能性を提供する。そのような細胞が患者に移植/埋め込みをされる場合、該細胞をニルバジピンで予備的に処置することのみならず、移植後においても患者にニルバジピンを用いた治療的処置を始めることが推奨される。
【0022】
本発明の方法は、AD用のトランスジェニック動物モデル、例えばPDAPPおよびTgAPPswマウスモデルなどに用いることができると想定される。これによりそのような動物またはヒトの中枢神経系におけるアミロイド沈積、β-アミロイドおよびミクログリオーシスに関係した病態を処置し、予防しおよび/または抑制するために最終的には有用であるかも知れない。かくして本発明はAD用のトランスジェニック動物のモデルを提供する。これらは当業界で知られた標準的な方法、また以下の米国特許に示された方法を用いて構築される:米国特許番号5,487,992; 5,464,764; 5,387,742; 5,360,735; 5,347,075; 5,298,422; 5,288,846; 5,221,778; 5,175,385; 5,175,384; 5,175,383; および4,736,866.
ニルバジピンは、患者に非経口、経口、腹腔内を含むさまざまな経路によって患者に投与され得る。非経口的な投与には以下のような経路が挙げられる:静脈内;筋肉内;組織実質内;動脈内;皮下;眼球内;頭蓋内;心室内;滑液嚢内;経皮、肺吸入、眼、舌下、頬側を含む経上皮的;眼、皮膚、眼球、直腸、吹送または噴霧による鼻からの吸引を含む局所的。
【0023】
経口的に摂取されるニルバジピンは、硬殻もしくは軟殻ゼラチンカプセルに収めるか、または錠剤に圧縮することができる。ニルバジピンは、また賦形剤と合わされ、錠剤、頬側の錠剤、トローチ剤、カプセル剤、小袋剤(sachets)、薬用飴錠剤(lozenge)、エリキシル剤、懸濁剤、シロップ剤、ウエハー、および類似物の摂取可能な形態で用いることができる。ニルバジピンは、また粉末剤または顆粒剤、水性液体もしくは非水性液体の溶液または懸濁液あるいは油/水型または水/油型の乳剤の形態をとることができる。
【0024】
錠剤、トローチ、丸剤、カプセル剤および類似物はまた、たとえばトラガカントゴム、アラビアゴム、コーンスターチのような結合剤;リン酸二カルシウムのようなゼラチン賦形剤;コーンスターチ、ジャガイモデンプン、アルギン酸および類似物のような崩壊剤;ステアリン酸マグネシウムのような滑沢剤;ショ糖、乳糖、サッカリンのような甘味料、または香料を含有することができる。投与単位の形態がカプセル剤のときは、上記材料に加えて液体基剤を含有することができる。その他のさまざまな材料が、被覆剤として、あるいは投与単位の物理的形態を別のものに変えるために、存在することができる。たとえば、錠剤、丸剤またはカプセル剤は、シェラック、糖またはその両方で被覆することができる。シロップまたはエリキシル剤は、ニルバジピン、甘味料としてのショ糖、保存料としてのメチルもしくはプロピルパラベン、着色料および香料を含有することができる。さらに、ニルバジピンは徐放性の調剤物および処方製剤中に取り込め得る。
【0025】
ニルバジピンは非経口的または腹腔内的にCNSに投与される。遊離の塩基または医薬的に許容される塩としてのニルバジピンの溶液は、ヒドロキシプロピルセルロースのような好適な界面活性剤の混じった水で調合される。分散液は、グリセロール、液体ポリエチレングリコールおよびそれらの混合物ならびに油脂の中で調合される。通常の貯蔵または使用の条件下で、微生物の成長または化学的劣化を防ぐために、これらの調合製剤は保存剤および/または酸化防止剤を含有することができる。
【0026】
ADのようなアミロイド形成性疾患に関係した疾患に苦しむ動物またはヒトにおいて、Aβの病理的作用を軽減する本発明の方法は、限定を意図しない以下の実施例においてさらに詳細に記載される。
【実施例1】
【0027】
Aβ沈積(アミロイド積荷)に対するニルバジピンの長期にわたる投与
Aβ沈積(アミロイド積荷)に対するニルバジピンの長期にわたる投与の効果を、TgAPPswマウス脳の様々な領域において4G8抗Aβモノクローナル抗体免疫染色技術を用いて調べた。Aβ積荷の定量には、4G8免疫染色技術がAβ沈積の定量的解析についてそのしっかりしたシグナルおよび最良の結果であるために選ばれた。簡潔にはパラフィン切片を以前に記載されたように(Nakagawa,Y ら Exp. Neurol., 163: 244-252, 2000)、免疫組織化学的に調べた。切片は、キシレン中でパラフィンを除き、一連のエタノールおよび脱イオン水で水和させ、Aβについての免疫組織化学検査の前にその切片を60分間、88% 蟻酸に浸漬することにより、抗原検索工程にかけた。該切片を水で洗浄し、過酸化水素(33%, 30ml)を加えて調製した新鮮なメタノール(150ml)混合液を用いて、内因性ペルオキシダーゼを失活させた。アビジン-ビオチン複合体手法が、販売者の指示書(Vector Laboratories, Burlingame, CA)に従って利用された。アミロイド積荷は、Aβについて陽性に染色された大脳領域のパーセンテージを決定することにより評価された。陰性コントロールでは、一次抗体の代わりに免疫化前の血清を適用したことを除き、切片に同一の免疫組織化学の手順を実施することが含めてあった。TgAPPswマウスは、有効量のニルバジピンを受けた実験群(n=7)および媒体を受けたコントロール群(n=5)の2群に分けた。
【0028】
図1に示されるようにニルバジピンを使用する治療により、大脳の視覚野皮質ではコントロールと比較して約62%、頭頂葉皮質ではコントロールと比較して約65%、運動野皮質ではコントロールと比較して約58%、梨状皮質ではコントロールと比較して約58%、海馬CA1領域ではコントロールと比較して約52%、海馬のCA2-CA3領域ではコントロールと比較して約50%、Aβ積荷は減少した。
【実施例2】
【0029】
小グリア細胞活性化に対するニルバジピンの長期にわたる投与
TgAPPswマウスにおける小グリア細胞活性化に対するニルバジピンの長期にわたる投与
の効果をそのマウス大脳の3つの領域について、CD45免疫染色技術(CD45+小グリア細胞の個数が決定される)を用いて調べた。簡潔に述べると、CD45(白血球の特異的マーカー)の免疫組織化学がクリオスタット大脳切片について実施された。CD45-陽性の小グリア細胞は、CD45に対するマウス・モノクローナル抗体(Chemicon International)を用いて4℃で一晩インキュベーションし、続いてビオチン化ウサギ抗マウス二次抗体を30分間適用することにより、免疫的に固定化された。CD45の検出は、ジアミノベンチジン(diaminobenzidine)発色原基質(CD45-陽性小グリア細胞について、褐色の細胞表面染色を形成する)を用いることにより行なわれた。図2に示されるように有効投与量を投与するニルバジピン治療では、小グリア細胞活性化が海馬で約33%、頭頂葉皮質で約43%、および運動野皮質で約27%、コントロールと比較して減少した。
【実施例3】
【0030】
小グリア細胞活性化に対するニルバジピン投与の効果
小グリア細胞活性化に対するニルバジピン投与の効果が、N9げっ歯類の小グリア細胞で、リポ多糖体(LPS)を用いて24時間インビトロで活性化させた細胞を用いて調べられた。N9げっ歯類の小グリア細胞は、胚性のマウス脳に由来し、詳しく調べられたスカベンジャーげっ歯類小グリア細胞クローンである。小グリア細胞活性化の程度は、ELISAで測定したTNF-α生産(pg/ml)により決定された。図3に示されるように、LPSで活性化されない小グリア細胞は、約40 pg/ml TNF-αを産生した(コントロール細胞)。小グリア細胞は、50 nMニルバジピンの存在で、約40 pg/mlTNF-αを産生した。ニルバジピン投与を10倍(500 nM)に増大させてもTNF-αの産生は変化しなかった。小グリア細胞は、1 μg/ml LPSの存在下で、約820 pg/mlTNF-αを産生し、コントロール細胞およびニルバジピン投与細胞よりも、およそ95%の増大である。小グリア細胞は、1μg/ml LPSおよび50nM ニルバジピン両方の存在では、約670 pg/mlTNF-αを産生した。LPSおよび500 nMニルバジピンの投与により、TNF-α産生は、約610 pg/mlに減少した。よってニルバジピンは、LPSにより誘導される小グリア細胞活性化をおよそ20〜25%抑制した。
【実施例4】
【0031】
Aβ神経毒性に対するニルバジピン投与の効果
Aβ神経毒性に対するニルバジピン投与(10 nMおよび100 nM)の効果が、3日間、30μM プレ凝集(pre-aggregated)Aβ1-40(AgAβ)で処理されたヒトの神経前駆細胞(HNPC; human neuronal progenitor cell)を用いて調べられた。HNPC細胞は、cyclicAMPを用いる処理で容易に神経細胞に分化する。cyclicAMP (1mM)(Sigma)が培養培地に添加され、ならびにHNPC細胞は、37℃、48時間以上、血清フリーの条件下でインキュベートされた。この培地中で上記前駆細胞は、神経細胞系列の細胞に分化した。このことは、微小管結合タンパク質、MAP-2に対する抗体で細胞の大半を染色することにより確認された。神経毒性は、細胞から放出された乳酸脱水素酵素(LDH;あらゆる細胞に見出される細胞内酵素の一つ)の量を測定することにより評価された。
【0032】
図4に示されるようにAgAβで処置された該細胞は、ニルバジピンで処置された細胞と比較して、LDH放出が約44%増加した。10 nMニルバジピンを、AgAβと一緒に加えた場合には、LDH放出には変化がなかった。しかしながら、ニルバジピンの投与量を10倍に増やして100nMにすると、LDH放出量は、約44%だけ減少した。
【実施例5】
【0033】
APPプロセッシングに対するニルバジピン投与の効果
APPプロセッシングに対するニルバジピン投与の効果が、APPswでトランスフェクトされたヒトグリア芽腫(glioblastoma)細胞を用いて調べられた。この細胞は50nMおよび250nMのニルバジピンで24時間および48時間処置され、さらに培養培地中におけるAβ1-40の産生が、商業的に入手できるヒトAβ1-40 ELISA(Biosource, CA)を使用して測定された。
【0034】
図5-Aに表されるように処置して24時間後に、50 nMニルバジピンではAβl-40の産生を約9%だけ、ならびに250 nMニルバジピンでは、Aβ1-40の産生を約15%だけ減少させた。処置して48時間後においては(図5-B)、50 nMニルバジピンではAβ1-40産生を約18%だけ、ならびに250 nMニルバジピンではAβ1-40産生を約5%だけ減少させた。
【実施例6】
【0035】
血漿Aβレベルへのニルバジピン投与の効果
血漿Aβレベル(pg/ml)へのニルバジピン投与の効果が、2年齢のTgPS/APPswマウスを使用して調べられた。動物は、毎日腹腔内(I.P.)に3.5週間、ニルバジピン(1.5mg/kg体重; n=10)または媒体のみ(50% DMSO、PBS中;n=12)で処置された。この処置の後で100μlの血液が、抗凝固剤としてEDTA(4%)を使用し、動物の尾静脈から採取された。血液サンプルは、4000×gで1分間遠心分離され、血漿が回収された。これを4倍に希釈してから、商業的に入手できるヒトAβ1-40 ELISA(Biosource, CA)を使用し、ヒトAβ1-40についてアッセイした。
【0036】
図6に表されるように、TgPS/APPswマウスにニルバジピンを1.5mg/kg体重の投与量で3.5週間にわたってI.P.投与することにより、血漿Aβレベル(pg/ml)は、コントロール動物に比較して42%の増加となった。
一般的結論
ニルバジピンの長期にわたる投与は、トランスジェニックマウスの大脳皮質の様々な領域および海馬において存在するAβ量を有意に減らし、小グリア細胞活性化の程度も有意に低下させた。N9げっ歯類小グリア細胞が、LPSにより活性化される場合、ニルバジピン投与は、LPSにより誘導される小グリア細胞の活性化を有意に低下させた。さらにニルバジピンは、ヒトの前駆体神経細胞系列においてAgAβによる神経毒性を有効に抑制した。Aβ1-40の産生はニルバジピン処置により有意に減少しなかったけれども、ニルバジピン投与後にAβ1-40の産生が減少に向かう傾向が見られた。このAβ1-40の減少は、潜在的に低下した生産を反映するものであるが、低下したAβ1-40出現が帰せられるべき他の機構には、限定されるものではないが、貪食作用または他の分解、あるいはその凝集と検出を妨げる細胞的な作用などが含まれる。しかしながら機構が何であれ、ニルバジピンの存在がAβ1-40存在を付随して減らしていることをデータは示唆している。最後に2歳のTgPS/APPswマウスへのニルバジピンの長期にわたるI.P.投与は、有意に血漿Aβレベルを上昇させたが、このことは大脳におけるAβ沈積を低下させるニルバジピンの能力に加えて、ニルバジピンの処置が罹病した患者の大脳において既に沈積したAβを減らすかもしれないことを示唆している。
【0037】
上記のデータによって、ADのような大脳のアミロイド形成性疾患に苛まれる動物またはヒトへのニルバジピン投与は、大脳の重要な領域(そこでは病理的な沈積が夥しいことが特徴的に示されている)において有意にAβ沈積量を減らすことのみならず、既に大脳に沈積したAβの量を減らすことに推論することができる。加えてニルバジピン投与は、Aβによる神経毒性、すなわちADに見られるように幅広くかつ壊滅的な神経細胞の破壊の原因となっていると信じられているその作用を抑制するのみならず、AD患者の大脳に見られる特徴的な炎症性反応を引き起こす小グリア細胞活性化を低下させる。最後にニルバジピン治療は、ADのような大脳のアミロイド形成性疾患に苛まれる動物またはヒトの大脳において、既に沈積したAβの濃度を低下させる。
【0038】
本発明の方法において本発明の精神または範囲から逸脱しないで、様々な修飾および変更をなし得ることは当業者には自明なことであろう。したがって、添付した請求項およびそれと等価なものの範囲で思いつく限り、本発明はそのような修飾および変更のすべてを包含するものとして意図されるものである。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】図1は、4G8免疫染色技術を用いて、TgAPPswマウス脳の異なる領域におけるAβ沈積(Aβ重荷)に及ぼす、ニルバジピンの長期にわたる投与効果を説明する棒グラフである。
【図2】図2は、CD45+小グリア個数を決定するCD45免疫染色技術を用いて、TgAPPswマウス脳の3領域における小グリア細胞活性化に及ぼす、ニルバジピンの長期にわたる投与効果を説明する棒グラフである。
【図3】図3は、リポ多糖体(LPS)を用いて24時間インビトロで活性化した、N9げっ歯類小グリア細胞における小グリア細胞活性化に及ぼすニルバジピンの作用を説明する棒グラフである。小グリア細胞の活性化は、ELISAによって測定されたTNF-α産生(pg/ml)により決定される。
【図4】図4は、30μMプレ凝集Aβl-40(AgAβ;図中では“AgAbeta”)を使用して3日間処置したHPNC細胞を用いてAβ神経毒性に及ぼす、ニルバジピン(図中では“Nilva”)の投与効果を説明する棒グラフである。神経毒性は、細胞から放出された乳酸脱水素酵素(LDH)量を測定することによる。
【図5−A】図5-Aは、APPswでトランスフェクトしたヒトグリア芽腫(glioblastoma)細胞を使用して、APPプロセッシングに及ぼすニルバジピンの投与効果を説明する棒グラフである。細胞は、50 nMおよび250 nMのニルバジピンを24時間で処置された。培養培地におけるAβ1-40産生は、ELISAにより測定した。
【図5−B】図5-Bは、APPswでトランスフェクトしたヒトグリア芽腫(glioblastoma)細胞を使用して、APPプロセッシングに及ぼすニルバジピンの投与効果を説明する棒グラフである。細胞は、50 nMおよび250 nMのニルバジピンを48時間で処置された。培養培地におけるAβ1-40産生は、ELISAにより測定した。
【図6】図6は、2年齢のTgPS/APPswマウスの血漿Aβレベルに対するニルバジピンの効果を説明する棒グラフである。動物には、3.5週間、毎日腹腔内にニルバジピンが投与された(1.5mg/kg体重)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
大脳のアミロイド形成性の疾患または病態に苛まれる動物およびヒトに、ニルバジピンの治療的有効量を単位投与形態で投与することを含む、動物またはヒトにおけるβ-アミロイドの沈積、β-アミロイドの神経毒性およびミクログリオーシスを低減する方法。
【請求項2】
前記の大脳のアミロイド形成性疾患または病態が、アルツハイマー疾患、伝染性海綿様脳症、スクレーピー、外傷性の脳損傷、大脳のアミロイド脈管障害およびGerstmann-Straussler-Scheinker症候群よりなる群から選択されるものであることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
ニルバジピンの治療的有効量が約0.05〜20mg/日の間である、請求項1の方法。
【請求項4】
ニルバジピンの治療的有効量が約2〜15mg/日の間である、請求項1の方法。
【請求項5】
ニルバジピンの治療的有効量が約4〜12mg/日の間である、請求項1の方法。
【請求項6】
ニルバジピンの治療的有効量が8mg/日である、請求項1の方法。
【請求項7】
ニルバジピン治療の持続が、動物またはヒトの終生まで続くことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前期の動物またはヒトへのニルバジピンの投与が、非経口的、経口的または腹腔内への投与であることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項9】
経口摂取の単位投与形態が、硬殻もしくは軟殻のゼラチンカプセル、錠剤、トローチ、小袋剤、薬用飴剤、エリキシル剤、懸濁剤、シロップ剤、ウエハー、散剤、顆粒剤、溶液剤および乳剤よりなる群から選ばれることを特徴とする請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記の非経口的投与の経路が、静脈内;筋肉内;組織実質内;動脈内;皮下;眼球内;頭蓋内;心室内;滑液嚢内;経皮、肺吸入、眼、舌下、頬側を含む経上皮的;眼、皮膚、眼球、直腸、吹送または噴霧による鼻からの吸引を含む局所 よりなる群から選ばれることを特徴とする請求項8に記載の方法。
【請求項11】
前記のニルバジピンの鼻への投与が、エアゾル剤、アトマイザおよびネブライザよりなる群より選択される、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
動物またはヒトの末梢循環におけるβ-アミロイドの血漿濃度を最初に測定すること;その動物またはヒトにニルバジピンの治療的有効量を単位投与形態で投与すること;その動物またはヒトの末梢循環におけるβ-アミロイドの血漿濃度を2回目に測定すること;最初の測定および2回目の測定との間の差を算出することで、最初の測定と比べて2回目に測定されたβ-アミロイドの血漿濃度が上昇しておれば、動物またはヒトにおける大脳のアミロイド形成性疾患について診断が可能となることを示すことを特徴とする、動物またはヒトにおける大脳のアミロイド形成性疾患の診断方法。
【請求項13】
前記の大脳のアミロイド形成性疾患が、アルツハイマー疾患、伝染性海綿様脳症、スクレーピー、外傷性の脳損傷、大脳のアミロイド脈管障害およびGerstmann-Straussler-Scheinker症候群よりなる群から選択されるものであることを特徴とする、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
ニルバジピンの治療的有効量が約0.05〜20mg/日の間である、請求項12の方法。
【請求項15】
ニルバジピンの治療的有効量が約2〜15mg/日の間である、請求項12の方法。
【請求項16】
ニルバジピンの治療的有効量が約4〜12mg/日の間である、請求項12の方法。
【請求項17】
ニルバジピンの治療的有効量が8mg/日である、請求項12の方法。
【請求項18】
ニルバジピン治療の持続が、1日と12ヶ月との間で続くことを特徴とする、請求項12に記載の方法。
【請求項19】
ニルバジピン治療の持続が、1週間と6ヶ月との間で続くことを特徴とする、請求項12に記載の方法。
【請求項20】
ニルバジピン治療の持続が、2週間と4週間との間で続くことを特徴とする、請求項12に記載の方法。
【請求項21】
前期の動物またはヒトへのニルバジピンの投与が、非経口的、経口的または腹腔内への投与であることを特徴とする請求項12に記載の方法。
【請求項22】
経口摂取の単位投与形態が、硬殻もしくは軟殻のゼラチンカプセル、錠剤、トローチ、小袋剤、薬用飴剤、エリキシル剤、懸濁剤、シロップ剤、ウエハー、散剤、顆粒剤、溶液剤および乳剤よりなる群から選ばれることを特徴とする請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記の非経口的投与の経路が、静脈内;筋肉内;組織実質内;動脈内;皮下;眼球内;頭蓋内;心室内;滑液嚢内;経皮、肺吸入、眼、舌下、頬側を含む経上皮的;眼、皮膚、眼球、直腸、吹送または噴霧による鼻からの吸引を含む局所 よりなる群から選ばれることを特徴とする請求項21に記載の方法。
【請求項24】
前記のニルバジピンの鼻への投与が、エアゾル剤、アトマイザおよびネブライザよりなる群より選択される、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
外傷性脳損傷に苦しむ動物およびヒトにおいて、動物またはヒトにニルバジピンの治療的有効量を単位投与形態で投与することを含み、ニルバジピン投与が急性頭部損傷の直後から始められることを特徴とする、β-アミロイドの沈積、β-アミロイドの神経毒性およびミクログリオーシスのリスクを低減する方法。
【請求項26】
前記の大脳のアミロイド形成性疾患または病態が、アルツハイマー疾患、伝染性海綿様脳症、スクレーピー、外傷性の脳損傷、大脳のアミロイド脈管障害およびGerstmann-Straussler-Scheinker症候群よりなる群から選択されるものであることを特徴とする、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
ニルバジピンの治療的有効量が約0.05〜20mg/日の間である、請求項25の方法。
【請求項28】
ニルバジピンの治療的有効量が約2〜15mg/日の間である、請求項25の方法。
【請求項29】
ニルバジピンの治療的有効量が約4〜12mg/日の間である、請求項25の方法。
【請求項30】
ニルバジピンの治療的有効量が8mg/日である、請求項25の方法。
【請求項31】
ニルバジピン治療の持続が、1時間と5年間との間で続くことを特徴とする、請求項25に記載の方法。
【請求項32】
ニルバジピン治療の持続が、2週間と3年間との間で続くことを特徴とする、請求項25に記載の方法。
【請求項33】
ニルバジピン治療の持続が、6ヶ月間と12ヶ月間との間で続くことを特徴とする、請求項25に記載の方法。
【請求項34】
前期の動物またはヒトへのニルバジピンの投与が、非経口的、経口的または腹腔内への投与であることを特徴とする請求項25に記載の方法。
【請求項35】
経口摂取の単位投与形態が、硬殻もしくは軟殻のゼラチンカプセル、錠剤、トローチ、小袋剤、薬用飴剤、エリキシル剤、懸濁剤、シロップ剤、ウエハー、散剤、顆粒剤、溶液剤および乳剤よりなる群から選ばれることを特徴とする請求項34に記載の方法。
【請求項36】
前記の非経口的投与の経路が、静脈内;筋肉内;組織実質内;動脈内;皮下;眼球内;頭蓋内;心室内;滑液嚢内;経皮、肺吸入、眼、舌下、頬側を含む経上皮的;眼、皮膚、眼球、直腸、吹送または噴霧による鼻からの吸引を含む局所 よりなる群から選ばれることを特徴とする請求項34に記載の方法。
【請求項37】
前記のニルバジピンの鼻への投与が、エアゾル剤、アトマイザおよびネブライザよりなる群より選択される、請求項36に記載の方法。
【請求項38】
大脳のアミロイド形成性疾患に苛まれる動物またはヒトの中枢神経系における神経幹細胞または胎児細胞に対してニルバジピンの治療的有効量を、その幹細胞または胎児細胞を移植する前に投与することを含む、移植可能な神経幹細胞または胎児細胞を治療する方法。
【請求項39】
前記の大脳アミロイド形成性疾患が、アルツハイマー疾患、伝染性海綿様脳症、スクレーピー、外傷性の脳損傷、大脳のアミロイド脈管障害およびGerstmann-Straussler-Scheinker症候群よりなる群から選択されるものであり、ならびにその患者は、さらに神経幹細胞または胎児細胞の移植後にニルバジピンの有効量で治療されることを特徴とする、請求項38に記載の方法。
【請求項40】
ニルバジピンの治療的有効量が約1nM〜3μMの間である、請求項38の方法。
【請求項41】
ニルバジピンの治療的有効量が約10nM〜2μMの間である、請求項38の方法。
【請求項42】
ニルバジピンの治療的有効量が約100nM〜1μMの間である、請求項38の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5A】
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【図5B】
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【図6】
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【公表番号】特表2007−501277(P2007−501277A)
【公表日】平成19年1月25日(2007.1.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−533144(P2006−533144)
【出願日】平成16年5月17日(2004.5.17)
【国際出願番号】PCT/US2004/015417
【国際公開番号】WO2004/110354
【国際公開日】平成16年12月23日(2004.12.23)
【出願人】(505166557)ロスカンプ リサーチ エルエルシー (2)
【Fターム(参考)】