説明

アミン結合基を有する架橋ポリマー類

ペンダントアミン捕捉基を含有する架橋型高分子物質が記載されている。前記アミン捕捉基としては、開環反応によってアミン含有物質と反応可能なN−スルホニルジカルボキシイミド基が挙げられる。前記架橋型高分子物質を調製するために使用される反応混合物、当該架橋型高分子物質を含有する物品、物品の製造方法、及びアミン含有物質の不動化方法についてもまた記載されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
ペンダントアミン捕捉基を有する架橋型高分子物質、当該架橋型高分子物質を含有する物品及びアミン含有物質の不動化方法を記載する。
【背景技術】
【0002】
表面上に不動化されたアミン含有物質、例えばアミン含有検体、アミノ酸、DNA、RNA、タンパク質、細胞、組織、細胞器官、免疫グロブリン(immunoglobins)、又はこれらの断片を、多数の用途にて使用することが可能である。例えば、不動化された生物学的アミン類を、疾病又は遺伝的欠陥の医学的診断のため、生物学的分離のため、又は各種生体分子の検出のために使用することが可能である。アミン含有物質の不動化は、通常、アミノ基と、基材表面に共有結合したアミン反応性官能基との反応によって行う。
【0003】
かかるアミン反応表面は、例えば、N−[(メタ)アクリルオキシ]スクシンイミド又はビニルアズラクトンなどのアミン反応性モノマーから調製した高分子物質の溶液を基材表面へコーティングすることにより、調製可能である。アミン含有物質は、N−アシルオキシスクシンイミド基と反応して、N−ヒドロキシスクシンイミドの変位及びカルボキサミドの形成をもたらすことができる。アミン含有物質は、前記環式アズラクトンと反応して、環状構造の開環をもたらすことができる。
【0004】
N−アシルオキシスクシンイミド基又はアズラクトン基などの反応性官能基を包含する高分子表面は、一級又は二級アミン含有物質と素早く反応することができるが、かかる反応性官能基は、多数の欠点に悩まされる場合がある。例えば、生物学的アミンとの反応の多くは、希釈水溶液中にて実施される。これらの条件下で、前記N−アシルオキシスクシンイミド官能基が、急速に加水分解されることが知られている。本競争反応は、アミン含有物質の基材上への不完全又は非効率的不動化を引き起こすことがある。
【0005】
アズラクトン官能基は、加水分解に対してより安定しているが、ビニル基以外の任意の重合性基に結合したアズラクトンを合成することは困難である。これにより、ポリマー骨格に直接結合したアミン反応性官能基を持つ高分子物質が生じる。これにより、前記アミン含有物質がアミン反応性基へ効率的不動化のために十分接近することが困難になる場合がある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
アミン含有物質の不動化のためのコーティング材として使用可能で且つ基材に対する良好な接着性を有する、代わりのアミン反応性官能基を有する高分子物質の必要性が存在する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
反応混合物及び当該反応混合物から形成された架橋型高分子物質が記載されている。より具体的には、前記反応混合物及び前記架橋型高分子物質は、アミン捕捉基を含有する。前記アミン捕捉基としては、開環反応によってアミン含有物質と反応可能なN−スルホニルジカルボキシイミド基が挙げられる。前記架橋型高分子物質を含有する物品、当該物品の製造方法、及びアミン含有物質の不動化方法についてもまた記載されている。
【0008】
第1の態様では、(a)化学式Iのアミン捕捉モノマー
【0009】
【化1】

【0010】
及び(b)少なくとも2つの(メタ)アクリロイル基を含む架橋モノマー、を含む反応混合物について記載する。化学式Iのアミン捕捉モノマーは、ハロ、アルキル、アルコキシ、又はそれらの組み合わせによって非置換又は置換されてもよい。化学式Iにおいて、
Lは、オキシ又は−NR−であり;
及びRは、それらが結合したジカルボキシイミド基と共に、任意の芳香族基、任意の飽和若しくは不飽和環状基、又は任意の飽和若しくは不飽和二環状基と縮合することができる、4〜8員複素環基又は二環式複素環基を形成し;
は、水素又はメチルであり;
は、アルキル、アリール、アラルキル、又は−N(Rであって、式中、各Rはアルキル基であるか、又は両R基はそれらが結合している窒素原子と共に4〜8員複素環基を形成し;
は、水素、アルキル、アリール、アラルキル、アシル、アルキルスルホニル、又はアリールスルホニルであり;且つ
Yは、単結合又はアルキレン、ヘテロアルキレン、アリーレン、若しくはそれらの組み合わせを含む二価の基である。
【0011】
第2の態様では、(a)化学式Iのアミン捕捉モノマー及び(b)少なくとも2つの(メタ)アクリロイル基を含む架橋モノマーを含有する反応混合物の反応生成物を含む架橋型高分子物質について記載する。
【0012】
第3の態様では、基材及び、基材表面上に配置した架橋型高分子物質を含む物品について記載する。前記架橋型高分子物質は、(a)化学式Iのアミン捕捉モノマー及び(b)少なくとも2つの(メタ)アクリロイル基を含む架橋モノマーを含有する反応混合物の反応生成物を含む。前記架橋型高分子物質は、N−スルホニルジカルボキシイミド基を含むペンダントアミン捕捉基を有する。
【0013】
第4の態様では、物品の作製方法について記載する。前記方法は、基材を提供すること、基材表面上に反応混合物を配設すること、及び反応混合物を硬化して架橋型高分子物質を形成することを含む。前記反応混合物は、(a)化学式Iのアミン捕捉モノマー及び(b)少なくとも2つの(メタ)アクリロイル基を含む架橋モノマーを含有する。前記架橋型高分子物質は、N−スルホニルジカルボキシイミド基を含むペンダントアミン捕捉基を有する。
【0014】
第5の態様では、アミン含有物質の不動化方法について記載する。前記方法は、基材を提供すること、及び基材表面上に反応混合物を配設することを含む。前記反応混合物は、(a)化学式Iのアミン捕捉モノマー及び(b)少なくとも2つの(メタ)アクリロイル基を含む架橋モノマーを含有する。前記方法は更に、反応混合物を硬化して、N−スルホニルジカルボキシイミド基を含むペンダントアミン捕捉基を有する架橋型高分子物質を形成すること、及びアミン含有物質をN−スルホニルジカルボキシイミド基と反応させることを含む。
【0015】
第6の態様では、化学式IIのペンダント基を含む高分子物質が提供される。
【0016】
【化2】

【0017】
(式中、
Lは、オキシ又は−NR−であり;
及びRは、それらが結合したジカルボキシイミド基と共に、任意の芳香族基、任意の飽和若しくは不飽和環状基、又は任意の飽和若しくは不飽和二環状基と縮合することができる、4〜8員複素環基又は二環式複素環基を形成し;
は、アルキル、アリール、アラルキル、又は−N(Rであって、式中、各Rはアルキル基であるか、又は両R基はそれらが結合している窒素原子と共に4〜8員複素環基を形成し;
は、水素、アルキル、アリール、アラルキル、アシル、アルキルスルホニル、又はアリールスルホニルであり;
Yは、単結合又はアルキレン、ヘテロアルキレン、アリーレン、若しくはそれらの組み合わせを含む二価の基であり;
アスタリスク(*)は、前記ペンダント基の、前記高分子物質の主鎖への結合部位を意味し;
化学式IIのペンダント基は、ハロ、アルキル、アルコキシ、又はそれらの組み合わせによって非置換又は置換であり;且つ
前記高分子物質は、架橋している。)
第7の態様では、化学式IIIのペンダント基を含む高分子物質が提供される。
【0018】
【化3】

【0019】
(式中、
Lは、オキシ又は−NR−であり;
は、アルキル、アリール、アラルキル、又は−N(Rであって、式中、各Rはアルキル基であるか、又は両R基はそれらが結合している窒素原子と共に4〜8員複素環基を形成し;
は、水素、アルキル、アリール、アラルキル、アシル、アルキルスルホニル、又はアリールスルホニルであり;
は、1〜5個の炭素原子を有するアルキレン、芳香族基、飽和若しくは不飽和環状基、飽和若しくは不飽和二環状基、又はそれらの組み合わせであり;
Tは、一級アミン含有生体物質(−NH2基を含まない)に相当し;
Yは、単結合又はアルキレン、ヘテロアルキレン、アリーレン、若しくはそれらの組み合わせを含む二価の基であり;
アスタリスク(*)は、前記ペンダント基の、前記高分子物質の主鎖への結合部位を意味し;
化学式IIのペンダント基は、ハロ、アルキル、アルコキシ、又はそれらの組み合わせによって非置換又は置換であり;且つ
前記高分子物質は、架橋している。)
用語「a」、「an」、及び「the」は、「少なくとも1つの」と同じ意味で用いられ、記載された要素の1以上を意味する。
【0020】
用語「アシル」とは、化学式−(CO)Rの一価の基を意味し、式中、Rはアルキル基であり、且つ本明細書で用いられる(CO)は、炭素が二重結合にて酸素に結合していることを指す。
【0021】
用語「アルコキシ」とは、化学式−ORの一価の基を意味し、式中、Rはアルキル基である。
【0022】
用語「アルキル」とは、アルカンのラジカルであり、且つ直鎖、分岐鎖、環状、又はそれらの組み合わせである基を含む一価の基を意味する。前記アルキル基は通常、1〜30個の炭素原子を有する。幾つかの実施形態では、前記アルキル基は、1〜20個の炭素原子、1〜10個の炭素原子、1〜6個の炭素原子又は1〜4個の炭素原子を含有する。アルキル基の例としては、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、第3ブチル、n−ペンチル、n−ヘキシル、シクロヘキシル、n−ヘプチル、n−オクチル、及びエチルヘキシルが挙げられるが、これらに限定されない。
【0023】
用語「アルキレン」とは、アルカンのラジカルである二価の基を意味する。前記アルキレンは、直鎖、分岐鎖、環状、又はそれらの組み合わせであることができる。前記アルキレンは通常、1〜30個の炭素原子を有する。幾つかの実施形態では、前記アルキレンは、1〜20個、1〜10個、1〜8個、1〜6個、又は1〜4個の炭素原子を含有する。前記アルキレンのラジカル中心は、同一炭素原子上に(即ち、アルキリデン)又は異なる炭素原子上にあることができる。
【0024】
用語「アルキルスルホニル」とは、化学式−SORの一価の基を意味し、式中、Rはアルキルである。
【0025】
用語「アミン捕捉モノマー」とは、アミン捕捉基を有するモノマーを意味する。用語「アミン捕捉」とは、モノマー又は高分子物質上にある、アミン含有物質と反応可能な基を意味する。前記アミン捕捉基は多くの場合、N−スルホニルジカルボキシイミド基を含む。
【0026】
用語「アミン含有物質」とは、一級アミン基、二級アミン基、又はそれらの組み合わせを有する物質を意味する。前記アミン含有物質は、生体物質又は非生体物質であることができる。前記アミン含有物質は多くの場合、一級アミン基、二級アミン基、又はそれらの組み合わせに結合したアルキレン基を有する。
【0027】
用語「アラルキル」とは、化合物R−Arのラジカルである一価の基を意味し、式中、Arは芳香族炭素環基であり、Rはアルキル基である。
【0028】
用語「アリール」とは、芳香族且つ炭素環式である一価の基を意味する。前記アリールは、芳香環に結合又は縮合した1〜5個の環を有することができる。その他の環状構造は、芳香族、非芳香族、又はそれらの組み合わせであることができる。アリール基の例としては、フェニル、ビフェニル、テルフェニル、アンスリル、ナフチル、アセナフチル、アントラキノニル、フェナンスリル、アントラセニル、ピレニル、ペリレニル、及びフルオレニルが挙げられるが、これらに限定されない。
【0029】
用語「アリールスルホニル」とは、化学式−SOArの一価の基を意味し、式中、Arはアリールである。
【0030】
用語「アリーレン」とは、炭素環式且つ芳香族である二価の基を意味する。前記基は、結合し、縮合し、又はこれらが組み合わせられた1〜5個の環を有する。その他の環は、芳香族、非芳香族、又はそれらの組み合わせであることができる。幾つかの実施形態では、前記アリーレン基は、5個までの環、4個までの環、3個までの環、2個までの環、又は1個の芳香環を有する。例えば、前記アリーレン基は、フェニレンであることができる。
【0031】
用語「カルボニル」とは、化学式−(CO)−の二価の基を意味する。
【0032】
用語「カルボニルイミノ」とは、
−化学式−(CO)NR−の二価の基を意味し、式中、Rは、水素、アルキル、アリール、アラルキル、アシル、アリールスルホニル、又はアルキルスルホニルである。
【0033】
用語「カルボニルオキシ」とは、化学式−(CO)O−の二価の基を意味する。
【0034】
用語「ジカルボキシイミド」とは、化学式
【0035】
【化4】

【0036】
を意味する。
【0037】
用語「ハロ」とは、フルオロ、ブロモ、クロロ、又はヨードを意味する。
【0038】
用語「ヘテロアルキレン」とは、チオ、オキシ、又は−NR−(式中、Rは水素又はアルキル)により置換された1以上の−CH−基を有する二価のアルキレンを意味する。前記ヘテロアルキレンは、直鎖、分岐鎖、環状、又はそれらの組み合わせであることができ、且つ60個までの炭素原子及び15個までのヘテロ原子を含むことができる。幾つかの実施形態では、前記ヘテロアルキレンは、50個までの炭素原子、40個までの炭素原子、30個までの炭素原子、20個までの炭素原子、又は10個までの炭素原子を含む。
【0039】
用語「(メタ)アクリレート」とは、アクリレート又はメタクリレートであるモノマーを意味する。同様に、用語「(メタ)アクリルアミド」とは、アクリルアミド又はメタクリルアミドであるモノマーを意味する。
【0040】
用語「(メタ)アクリロイル」基とは、化学式CH=CR−(CO)−のエチレン性不飽和基を意味し、式中、Rは水素又はメチルである。
【0041】
用語「N−スルホニルジカルボキシイミド」とは、化学式
【0042】
【化5】

【0043】
を意味する。
【0044】
用語「オキシ」とは、化学式−O−の二価の基を意味する。
【0045】
用語「ペンダント」は、高分子物質に関する場合、高分子物質の主鎖に結合しているが、高分子物質の主鎖の一部ではない基を意味する。前記ペンダント基は、重合反応には関与しない。例えば、基Qは、化学式CH=C(R)−Qのエチレン性不飽和モノマーを含む反応混合物のフリーラジカル重合により形成されるポリマー内のペンダント基である。本モノマーにおいて、化学式Rは、水素、アルキル、又はアリールであり、且つQは前記エチレン性不飽和基に結合した基である。
【0046】
用語「ポリマー」とは、1種のモノマーから調製した物質、例えばホモポリマー又は、2種若しくはそれ以上のモノマーから調製した物質、例えばコポリマー、ターポリマーなど、の両方を意味する。同様に、用語「重合させる」とは、ホモポリマー、コポリマー、ターポリマーなどであり得る高分子物質の製造プロセスを意味する。
【0047】
用語「チオ」とは、化学式−S−の二価の基を意味する。
【0048】
用語「室温」とは、約20℃〜約25℃又は約22℃〜約25℃の温度を意味する。
【0049】
化学式中で2個の基を連結している曲線は、当該2個の基が共に、環状であり得る構造体の一部を形成していることを示している。即ち、当該2個の基は、共に結合している。この曲線を横切る線は、前記構造体内の原子への共有結合を指す。
【0050】
本発明の上述の「課題を解決するための手段」は、本発明の開示された各実施形態又はあらゆる実施を記載することを意図していない。以下の説明は、説明に役立つ実施形態をより詳細に例示する。明細書全体にわたって幾つかの箇所で、実施例の一覧を通して説明を提供するが、実施例は各種組み合わせにて使用することが可能である。それぞれの事例において、列挙される一覧は代表的な群としてのみ与えられるのであって、排他的な一覧として解釈されるべきではない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0051】
架橋型高分子物質を調製するために使用される反応混合物、当該反応混合物から形成される架橋型高分子物質、当該架橋型高分子物質を含有する物品、当該物品の製造方法、及びアミン含有物質の不動化方法が記載されている。より具体的には、前記反応混合物は、(a)アミン捕捉基を有するモノマー及び(b)架橋モノマーを含む。前記架橋型高分子物質は、開環反応によってアミン含有物質と反応可能なN−スルホニルジカルボキシイミド基を含むペンダントアミン捕捉基を有する。
【0052】
(a)化学式Iのアミン捕捉モノマー
【0053】
【化6】

【0054】
及び(b)少なくとも2つの(メタ)アクリロイル基を含む架橋モノマー、を含む反応混合物について記載する。化学式Iのモノマーは、ハロ、アルキル、アルコキシ、又はそれらの組み合わせによって非置換又は置換されてもよい。化学式Iにおいて、
Lは、オキシ又は−NR−であり;
及びRは、それらが結合したジカルボキシイミド基と共に、任意の芳香族基、任意の飽和若しくは不飽和環状基、又は任意の飽和若しくは不飽和二環状基と縮合することができる、4〜8員複素環基又は二環式複素環基を形成し;
は、水素又はメチルであり;
は、アルキル、アリール、アラルキル、又は−N(R)2であり、式中、各Rはそれぞれアルキル基であるか、又はそれらが結合している窒素原子と共に4〜8員複素環基を形成し;
は、水素、アルキル、アリール、アラルキル、アシル、アルキルスルホニル、又はアリールスルホニルであり;且つ
Yは、単結合又はアルキレン、ヘテロアルキレン、アリーレン、若しくはそれらの組み合わせから選択される二価の基である。
【0055】
化学式Iの前記アミン捕捉モノマーは、化学式I(a)に示すように、Lがオキシの場合、(メタ)アクリレートモノマーであることができる。
【0056】
【化7】

【0057】
幾つかの代表的なモノマーは、アクリレート類(即ち、Rが水素)又はメタクリレート類(即ち、Rがメチル)である。
【0058】
化学式Iの前記アミン捕捉モノマーは、化学式I(b)に示すように、Lが−NR−の場合、(メタ)アクリルアミドモノマーであることができる。
【0059】
【化8】

【0060】
幾つかの代表的なモノマーは、アクリルアミド類(即ち、Rが水素)又はメタクリルアミド類(即ち、Rがメチル)である。
【0061】
基Yは、単結合であることができ、又はアルキレン、ヘテロアルキレン、アリーレン、若しくはそれらの組み合わせを含む二価の基であることができる。前記二価の基Yは、カルボニル、カルボニルイミノ、カルボニルオキシ、オキシ、チオ、−NR−、又はそれらの組み合わせから選択される任意の基を更に包含することができる。基Y及び前記の結合した基−Y−L−は通常、ペルオキシド基(即ち、2個のオキシ基が互いに結合している)を含まない。
【0062】
基Yは、アルキレン基であることができ、又はYは、別のアルキレン、ヘテロアルキレン、アリーレン、カルボニル、カルボニルオキシ、カルボニルイミノ、オキシ、チオ、−NR−、若しくはそれらの組み合わせから選択される、少なくとも1つのその他の基に結合したアルキレンを含むことができる。その他の実施例では、Yは、ヘテロアルキレン基であることができ、又はYは、別のヘテロアルキレン、アルキレン、アリーレン、カルボニル、カルボニルオキシ、カルボニルイミノ、オキシ、チオ、−NR−、若しくはそれらの組み合わせから選択される、少なくとも1つのその他の基に結合したヘテロアルキレンを含むことができる。更にその他の実施例では、Yは、アリーレン基であることができ、又はYは、別のアリーレン、アルキレン、ヘテロアルキレン、カルボニル、カルボニルオキシ、カルボニルイミノ、オキシ、チオ、−NR−、若しくはそれらの組み合わせから選択される、少なくとも1つのその他の基に結合したアリーレンを含むことができる。
【0063】
化学式Iの幾つかの代表的なモノマー類において、基Yは、アルキレンに結合したカルボニルオキシ、又はカルボニルイミノ基を、例えば次の化学式のモノマー内に含むことができる。
【0064】
【化9】

【0065】
式中、nは1〜30の整数である。基R、R、R、R、及びLは、化学式Iについて記載されたものと同一である。幾つかのモノマー類では、nは20以下、10以下、8以下、6以下、又は4以下である。前記モノマー類は、ハロ、アルキル、アルコキシ、又はそれらの組み合わせによって非置換又は置換されてもよい。
【0066】
その他の実施例では、Yは、カルボニル、カルボニルオキシ、カルボニルイミノ、オキシ、チオ、又は−NR−から選択される基によって、第2のアルキレン基又は第1のヘテロアルキレン基に結合された第1のアルキレン基を含む。追加のアルキレン又はヘテロアルキレン基は、カルボニル、カルボニルオキシ、カルボニルイミノ、オキシ、チオ、又は−NR−から選択される基によって、前記第2のアルキレン基又は前記第1のヘテロアルキレン基に結合されることができる。
【0067】
基Yは、次の化学式内にあるように、ヘテロアルキレンであることができ、
【0068】
【化10】

【0069】
又は、基Yは、次の化学式内にあるように、カルボキシ若しくはカルボニルイミノなどの別の基に結合したヘテロアルキレンであることができる。
【0070】
【化11】

【0071】
これらの化学式において、qは1〜15の整数であり、xは2〜4の整数であり、且つDはオキシ、チオ、又は−NH−である。基R、R、R、R及びLは、化学式Iについて既に定義されたものと同一である。代表的な化合物類としては、qが、12以下、10以下、8以下、6以下、4以下、又は2以下の整数であり、且つxが3以下、又は2に等しいものが挙げられる。前記化合物類は、ハロ、アルキル、アルコキシ、又はそれらの組み合わせによって非置換又は置換されてもよい。
【0072】
化学式Iのその他の代表的なモノマー類では、基Yは、第2のヘテロアルキレン又は第1のアルキレン基に、カルボニル、カルボニルオキシ、カルボニルイミノ、オキシ、チオ、又は−NR−から選択された基によって結合された、第1のヘテロアルキレン基を含む。追加のアルキレン又はヘテロアルキレン基は、カルボニル、カルボニルオキシ、カルボニルイミノ、オキシ、チオ、又は−NR−から選択された基によって、前記第2のアルキレン基又は前記第1のヘテロアルキレン基に結合されることができる。
【0073】
化学式I内のR基は、アルキル、アリール、又はアラルキルであることができる。好適なアルキル基は、通常、30個以下の炭素原子、20個以下の炭素原子、10個以下の炭素原子、6個以下の炭素原子、又は4個以下の炭素原子を含有する。幾つかの化合物では、前記アルキル基は、メチル、エチル、又はプロピルである。好適なアリール基は、通常、6〜30個の炭素原子、6〜24個の炭素原子、6〜18個の炭素原子、6〜12個の炭素原子、又は6個の炭素原子を含有する。幾つかの化合物では、前記アリール基はフェニルである。好適なアラルキル基は、通常、6〜30個の炭素原子を有するアリール基、及び30個以下の炭素原子を有するアルキル基を含有する。アラルキル基の一例は、4−メチル−フェニルである。
【0074】
化学式IIの他の実施形態では、Rは基−N(R)2であり、式中、各Rは、30個以下の炭素原子、20個以下の炭素原子、10個以下の炭素原子、6個以下の炭素原子、又は4個以下の炭素原子を有するアルキル基である。或いは、2個のR基は、それらが結合している窒素原子と共に組み合わせられて、4〜8員環状構造を形成することができる。例えば、2個のR基は組み合わせられて、窒素へテロ原子を有する5〜6員複素環基を形成することができる。
【0075】
化学式Iにおいて、R及びR2が、それらが結合しているジカルボキシイミド基と共に、任意の芳香族基、任意の飽和若しくは不飽和環状基、又は任意の飽和若しくは不飽和二環状基と縮合することができる、4〜8員複素環基又は二環式複素環基を形成する。代表的な構造体としては、次のものが挙げられるが、これらに限定されない。
【0076】
【化12】

【0077】
又は
【0078】
【化13】

【0079】
基R、R、L、及びYは、上記で化学式Iについて記載されたものと同一である。これらの化学式において、基CH=CR−CO−L−Y−は、環状構造内のこの基の配置によって示されるように、上記環状構造と様々な箇所で結合することができる。前記モノマー類は、ハロ、アルキル、アルコキシ、又はそれらの組み合わせによって非置換又は置換されてもよい。
【0080】
幾つかの要因が、特定用途のための基Yの選択に影響を与え得る。これらの要因としては、例えば、前記アミン捕捉モノマー合成の容易さ、前記アミン捕捉モノマーと前記架橋モノマーとの相溶性又は反応性、及び前記アミン捕捉基とアミン含有物質との反応性又は選択性が挙げられる。例えば、基Yのサイズ及び極性は、前記アミン捕捉基とアミン含有物質との反応性に影響を与え得る。即ち、基Yの長さ及び組成を変化させることで、前記アミン捕捉基の反応性を変更することができる。更に、ジカルボキシイミド基を含有する環状構造のサイズ及び性質が、表面密度及び前記アミン含有物質との反応性に影響を与え得る。所望する場合、前記アミン捕捉モノマー中の各種の基を選択して、周囲温度にて液体であるモノマーを提供することができる。液体モノマー類は、どちらかと言えば、環境的に望ましい場合のある無溶媒コーティング組成物にて有用である。
【0081】
前記反応混合物は多くの場合、重合に先だって、溶液によりコーティングし、そして乾燥させる(例えば、ほぼ100%固形分)。前記アミン捕捉モノマーの溶媒中での溶解度及び前記架橋モノマーとの混和性は、好適なコーティングを得るための重要変数となり得る。これらの因子は、基Yの選択によって制御することができる。ヘテロアルキレン基は、どちらかと言えば、極性溶媒類及びモノマー類中での溶解度を改善し、アルキレン基は、どちらかと言えば、非極性溶媒類及びモノマー類中での溶解度を改善する。
【0082】
化学式Iの代表的なアミン捕捉モノマー類としては、
【0083】
【化14】

【0084】
【化15】

【0085】
及び
【0086】
【化16】

【0087】
が挙げられるが、これらに限定されない。
【0088】
前記アミン捕捉モノマー類は、ハロ、アルキル、アルコキシ、又はそれらの組み合わせによって非置換又は置換されてもよい。
【0089】
前記アミン捕捉モノマー類は、2個の反応性官能基即ち、N−スルホニルジカルボキシイミド基を含むアミン反応性基及び、フリーラジカル重合反応を行うことができる(メタ)アクリロイル基を含有する。合成ストラテジーは、これら2個の反応性官能基を導く必要があるが、それらの異なる反応性に寛容でなければならない。化学式Iの化合物類は、例えば、含窒素基を有する第1の化合物と、カルボン酸無水物を含有する第2の化合物との反応により調製してよい。より具体的には、前記第1の化合物の含窒素基は、スルホニル基及び2個の水素原子に直接結合した窒素原子を含む。前記第2の化合物は、更に−Y−L−CO−CR=CHを含むこともできる。典型的な合成アプローチを、反応スキームAに示す。
【0090】
反応スキームA
【0091】
【化17】

【0092】
式中、R、R、R、R、Y及びLは、化学式Iについて既に定義されたものと同一である。
【0093】
前記反応混合物は、通常、当該反応混合物中のモノマー類の重量を基準にして、0.1〜90重量%の化学式Iのアミン捕捉モノマーを含む。0.1重量%未満のアミン捕捉モノマーが前記反応混合物中に含まれる場合、アミン含有物質との反応に利用可能な、得られる架橋型高分子物質内に、十分な数のペンダントアミン捕捉基が無い可能性がある。しかし、アミン捕捉モノマー量が90重量%より多い場合には、反応混合物中の架橋モノマー量が少ないために、架橋ポリマーは機械的に堅牢でない又は寸法安定性が無い可能性がある。
【0094】
前記反応混合物は通常、少なくとも0.1重量%、少なくとも0.5重量%、少なくとも1重量%、少なくとも2重量%、少なくとも5重量%、又は少なくとも10重量%の、化学式Iのアミン捕捉モノマーを含有する。前記反応混合物は通常、90重量%までの、80重量%までの、70重量%までの、60重量%までの、50重量%までの、40重量%までの、30重量%までの、又は20重量%までの、前記アミン捕捉モノマーを含有する。例えば、前記反応混合物は、0.2〜90重量%、0.5〜90重量%、1〜90重量%、2〜80重量%、2〜60重量%、2〜40重量%、2〜20重量%、又は2〜10重量%の、前記アミン捕捉モノマーを含有することができる。
【0095】
化学式Iのモノマーに加えて、前記反応混合物は、少なくとも2つの(メタ)アクリロイル基を含む架橋モノマーを含有する。好適な架橋モノマー類としては、ジ(メタ)アクリレート類、トリ(メタ)アクリレート類、テトラ(メタ)アクリレート類、ペンタ(メタ)アクリレート類などが挙げられる。これらの(メタ)アクリレート類は、例えば、(メタ)アクリル酸をアルカンジオール類、アルカントリオール類、アルカンテトラオール類、又はアルカンペンタオール類と反応させることにより形成することができる。
【0096】
代表的な架橋モノマー類としては、1,2−エタンジオールジ(メタ)アクリレート;1,12−ドデカンジオールジ(メタ)アクリレート;1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート;1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート;トリメチロールプロパントリアクリレート(例えば、TMPTA−Nの商標名でサーフェス・スペシャルティズ(Surface Specialties)(ジョージア州スミュルナ)から、及びSR−351の商標名でサルトマー(Sartomer)(ペンシルベニア州エクストン)から市販されている);ペンタエリスリトールトリアクリレート(例えば、SR−444の商標名でサルトマー(Sartomer)から市販されている);トリス(2−ヒドロキシエチルイソシアヌレート)トリアクリレート(SR−368の商標名でサルトマー(Sartomer)から市販されている);ペンタエリスリトールトリアクリレート及びペンタエリスリトールテトラアクリレートの混合物(例えば、サーフェス・スペシャルティズ(Surface Specialties)からPETIA(テトラアクリレート対トリアクリレートを約1:1の比で含む)及びPETA−K(テトラアクリレート対トリアクリレートを約3:1の比で含む)の商標名で市販されている);ペンタエリスリトールテトラアクリレート(例えば、SR−295の商標名でサルトマー(Sartomer)から市販されている);ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート(例えば、SR−355の商標名でサルトマー(Sartomer)から市販されている);エトキシル化ペンタエリスリトールテトラアクリレート(例えば、SR−494の商標名でサルトマー(Sartomer)から市販されている);及びジペンタエリスリトールペンタアクリレート(例えば、SR−399の商標名でサルトマー(Sartomer)から市販されている)が挙げられる。架橋モノマー類の混合物を使用することが可能である。
【0097】
前記反応混合物は、当該反応混合物中のモノマー類の重量を基準にして、10〜99.9重量%の架橋モノマーを含有することができる。前記反応混合物中に含まれる架橋モノマーの量がこれ未満であれば、得られる架橋型高分子物質は、機械的に堅牢でない又は寸法安定性が無い可能性がある。他方では、より多量の架橋モノマーが使用されると、前記架橋型高分子物質中のペンダントアミン捕捉基の数が、アミン含有物質と効率的に反応するには少なすぎる可能性がある。
【0098】
架橋モノマーの量は、少なくとも10重量%、少なくとも15重量%、少なくとも20重量%、少なくとも30重量%、少なくとも40重量%、少なくとも50重量%、少なくとも60重量%、少なくとも70重量%、少なくとも80重量%、又は少なくとも90重量%であることができる。例えば、架橋モノマーの量は、10〜99重量%、20〜90重量%、30〜90重量%、30〜80重量%、30〜70重量%、又は30〜60重量%の範囲内であることができる。
【0099】
その他の任意の希釈モノマー類、例えば(メタ)アクリレート類及び(メタ)アクリルアミド類を、前記反応混合物内に含んでもよい。好適な希釈モノマー類としては、アミン捕捉基を有せず且つ(メタ)アクリロイル基を1個だけ有するモノマー類が挙げられる。前記反応混合物は、当該反応混合物中のモノマー類の重量を基準にして、20重量%までの前記希釈モノマーを含むことができる。約20重量%を超える希釈モノマーが前記反応混合物中に含まれる場合、前記架橋型高分子物質が十分に機械的に堅牢でなく且つ十分に寸法安定性がない、又はアミン含有化合物と効率的に反応するだけの十分な数のペンダントアミン捕捉基が無い可能性がある。幾つかの反応混合物中には、希釈モノマーが含まれない。希釈モノマーの量は、通常、0〜20重量%、0〜15重量%、0〜10重量%、又は0〜5重量%の範囲内である。
【0100】
幾つかの代表的な(メタ)アクリレート希釈モノマー類は、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、第3メタクリル酸ブチル、n−ヘキシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、3,3,5−トリメチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、2−メチルブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、4−メチル−2−ペンチル(メタ)アクリレート、n−オクチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、n−デシル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、イソノニル(メタ)アクリレート、イソトリデシル(メタ)アクリレート、及びベヘニル(メタ)アクリレートなどのアルキル(メタ)アクリレート類である。
【0101】
他の代表的な(メタ)アクリレート希釈モノマー類は、フェニル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、及びベンジル(メタ)アクリレートなどのアリール(メタ)アクリレート類である。更に他の代表的な(メタ)アクリレート希釈モノマー類は、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート及び3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、グリセロール(メタ)アクリレートなどのヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート類である。さらなる代表的な(メタ)アクリレート希釈モノマー類は、2−エトキシエチル(メタ)アクリレート、2−メトキシエチル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール(メタ)アクリレートなどのエーテル含有(メタ)アクリレート類である。前記希釈モノマー類は、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、2−トリメチルアンモニウムエチル(メタ)アクリレートハロゲン化合物類などの含窒素(メタ)アクリレート類であることができる。前記希釈モノマー類はまた、(メタ)アクリルアミド類、N,N−ジアルキル(メタ)アクリルアミド類などであることができる。
【0102】
幾つかの反応混合物は、溶媒を含有する。好適な溶媒類としては、水、アセトニトリル、テトラヒドロフラン、酢酸エチル、トルエン、アセトン、メチルエチルケトン、イソプロパノール、N−メチルピロリドン、塩素化及びフッ素化炭化水素類、フッ素化エーテル類、又はそれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。他の反応混合物は、無溶媒であることができる。代表的な無溶媒反応混合物としては、前記アミン捕捉モノマーが液体であるもの、又は前記反応混合物が、溶媒が除去され、コーティングされた組成物であるものが挙げられる。
【0103】
(a)化学式Iのアミン捕捉モノマー及び(b)架橋モノマーを含有する反応混合物の反応生成物を含む架橋型高分子物質は、上記の如く調製可能である。これらの反応混合物は、通常、フリーラジカル重合法を使用して重合される。多くの場合、反応混合物に含まれている反応開始剤が存在する。反応開始剤は、熱反応開始剤、光反応開始剤、又はその両方であることができる。反応開始剤は多くの場合、反応混合物中のモノマー類の重量を基準にして、0.1〜5重量%、0.1〜3重量%、0.1〜2重量%、又は0.1〜1重量%の濃度で使用される。
【0104】
熱反応開始剤を反応混合物に加えた場合、架橋ポリマーを室温で(即ち、20〜25℃)又は高温にて形成することができる。重合に必要な温度は、多くの場合、使用される具体的な熱反応開始剤に依存する。熱反応開始剤の例としては、有機過酸化物類又はアゾ化合物類が挙げられる。
【0105】
光反応開始剤を反応混合物に加えた場合、化学線を組成物がゲル化する又は硬化するまで適用することにより、架橋型高分子物質を形成することができる。好適な化学線としては、赤外線領域、可視領域、紫外線領域、又はそれらの組み合わせでの電磁放射線が挙げられる。
【0106】
紫外線領域において好適な光反応開始剤の例としては、ベンゾイン、ベンゾインアルキルエーテル類(例えば、ベンゾインメチルエーテル及び、アニソインメチルエーテルのような置換ベンゾインアルキルエーテル類)、フェノン類(例えば、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノンなどの置換アセトフェノン類及び2−メチル2−ヒドロキシプロピオフェノンなどの置換α−ケトール類)、ホスフィンオキシド類、高分子光反応開始剤などが挙げられるが、これらに限定されない。
【0107】
市販の光反応開始剤としては、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン(例えば、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(Ciba Specialty Chemicals)からダロキュア(DAROCUR)1173の商標名で市販されている)、2,4,6−トリメチルベンゾイル−ジフェニル−ホスフィンオキシド及び2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オンの混合物(例えば、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(Ciba Specialty Chemicals)からダロキュア(DAROCUR)4265の商標名で市販されている)、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン(例えば、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(Ciba Specialty Chemicals)からイルガキュア(IRGACURE)651の商標名で市販されている)、ビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチル−ペンチルホスフィンオキシド及び1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトンの混合物(例えば、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(Ciba Specialty Chemicals)からイルガキュア(IRGACURE)1800の商標名で市販されている)、ビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチル−ペンチルホスフィンオキシドの混合物(例えば、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(Ciba Specialty Chemicals)からイルガキュア(IRGACURE)1700の商標名で市販されている)、2−メチル−1[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルホリノプロパン−1−オン(例えば、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(Ciba Specialty Chemicals)からイルガキュア(IRGACURE)907の商標名で市販されている)、1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン(例えば、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(Ciba Specialty Chemicals)からイルガキュア(IRGACURE)184の商標名で市販されている)、2−ベンジル−2−(ジメチルアミノ)−1−[4−(4−モルホリニル)フェニル]−1−ブタノン(例えば、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(Ciba Specialty Chemicals)からイルガキュア(IRGACURE)369の商標名で市販されている)、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルホスフィンオキシド(例えば、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(Ciba Specialty Chemicals)からイルガキュア(IRGACURE)819の商標名で市販されている)、エチル−2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィネート(例えば、BASF(ノースカロライナ州シャーロット)からルシリン(LUCIRIN)TPO−Lの商標名で市販されている)、及び2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド(例えば、BASF(ノースカロライナ州シャーロット)からルシリン(LUCIRIN)TPOの商標名で市販されている)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0108】
可視領域にて用いるのに好適な光反応開始剤は、多くの場合、電子供与体、及びヨードニウム塩などの電子受容体、並びにα−ジケトンなどの可視光感作性化合物を含む。かかる光反応開始剤は、例えば、米国公開特許公報第2005/0113477号(オクスマン(Oxman)ら)、及び米国公開特許公報第2005/0070627号(ファルサフィ(Falsafi)ら);並びに米国特許第6,765,036号(デデ(Dede)ら)に更に記載されている。
【0109】
基材及び、当該基材表面上に配置された架橋型高分子物質を含む物品を調製可能である。前記架橋型高分子物質は、多くの場合、(a)化学式Iのアミン含有モノマー及び(b)少なくとも2つの(メタ)アクリロイル基を有する架橋モノマーを含有する反応混合物にて基材表面をコーティングした後に形成される。
【0110】
前記基材は、任意の有用な形態を有することができ、フィルム、シート、膜、フィルター、不織布繊維又は織布繊維、中空又は固体ビーズ、ボトル、プレート、チューブ、ロッド、パイプ、又はウェハが挙げられるが、これらに限定されない。前記基材は、多孔質又は非多孔質、剛性又は可撓性、透明又は不透明、無色又は有色、及び反射性又は非反射性であることができる。前記基材は、平坦な又は比較的平坦な表面を有することができ、又はウエル、ギザギザ、チャネル、バンプなどのテクスチャー表面を有することができる。前記基材は、単層又は多層の物質を有することができる。好適な基材物質としては、例えば、高分子物質、ガラス、セラミックス、金属、金属酸化物、水和金属酸化物、又はそれらの組み合わせが挙げられる。
【0111】
好適な高分子基材物質としては、ポリオレフィン類(例えば、ポリエチレン及びポリプロピレン)、ポリスチレン類、ポリアクリレート類、ポリメタクリレート類、ポリアクリロニトリル類、ポリビニルアセテート類、ポリビニルアルコール類、ポリ塩化ビニル類、ポリオキシメチレン類、ポリカーボネート類、ポリアミド類、ポリイミド類、ポリウレタン類、フェノール類、ポリアミン類、アミノエポキシ樹脂類、ポリエステル類、シリコーン類、セルロース系ポリマー類、多糖類、又はそれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。
【0112】
好適なガラス及びセラミック基材物質としては、例えば、シリコン、アルミニウム、鉛、ホウ素、リン、ジルコニウム、マグネシウム、カルシウム、ヒ素、ガリウム、チタン、銅、又はそれらの組み合わせを挙げることができる。ガラスは通常、様々な種類のケイ酸塩含有物質を含む。
【0113】
幾つかの実施形態では、前記基材は、米国特許第6,696,157号(デヴィッド(David)ら)にて開示されているように、ダイヤモンド類似ガラス層を含む。前記ダイヤモンド類似ガラスは、炭素、ケイ素、及び水素、酸素、フッ素、イオウ、チタン、又は銅から選択される1以上の元素を含む非晶質物質である。幾つかのダイヤモンド類似ガラス物質は、プラズマ法を使用してテトラメチルシラン前駆体から形成される。更に酸素プラズマ中で処理され、前記表面上のシラノール濃度を制御するための疎水性物質を生成することができる。
【0114】
基材のために好適な金属類、金属酸化物類、又は水和金属酸化物は、例えば、金、銀、白金、パラジウム、アルミニウム、銅、クロム、鉄、コバルト、ニッケル、亜鉛などを含有することができる。前記金属含有物質は、ステンレス鋼、酸化インジウムスズ、などの合金類であることができる。幾つかの実施形態では、金属含有物質は、多層基材の最上層である。例えば、前記基材は、高分子である第2の層及び金属を含有する第1の層を有することができる。一例において、前記第2の層は高分子フィルムであり、且つ前記第1の層は金の薄膜である。その他の例では、多層基材は、チタン含有層でコーティングされ、次に金含有層でコーティングされた高分子フィルムを含む。即ち、前記チタン層は、金の層を高分子フィルムへ接着させるための結合層又はプライマー層として機能することができる。多層基材のその他の例では、シリコン支持層は、クロム層で被覆され、次に金層で被覆されている。クロム層は、金層のシリコン層への接着を改善することができる。
【0115】
前記物品は、基材を提供すること、基材表面上に反応混合物を配置すること、及び前記反応混合物を硬化させて、架橋型高分子物質を形成することにより作製することができる。前記反応混合物は、上記のように、(a)化学式Iのアミン捕捉モノマー及び(b)架橋モノマーを含有する。前記反応混合物は、例えば、加熱(即ち、熱反応開始剤を使用する)又は化学線の適用(即ち、光反応開始剤を使用する)によって硬化することができる。
【0116】
前記反応混合物は、多くの場合、基材表面を濡らすことができ、その結果得られる架橋ポリマーが基材表面に接着する。前記架橋ポリマーは通常、ポリマー上の反応性基と基材表面上の相補的な基(complementary group)との間で共有結合を形成することなく接着する。むしろ、ポリマーは基材上の表面欠陥とかみ合うことによって接着する。
【0117】
幾つかの物品では、前記架橋型高分子物質が基材上でパターニングされる。前記架橋型高分子物質の任意の好適なパターンを形成することができる。例えば、前記パターンは、テキスト、模様、像、などの形態であることができる。前記パターンは、例えば、ドット、正方形、長方形、円形、線、又は波(例えば、方形波、正弦波、及びのこぎり波)の形態であることができる。
【0118】
パターニングされた架橋型高分子層の一形成方法としては、前記反応混合物のパターンをスクリーン印刷、ジェット印刷(例えば、スプレージェット、バルブジェット、又はインクジェット印刷)などによって基材表面上に配設することが挙げられる。ジェット印刷のための有用な装置が、例えば米国特許第6,513,897号(トキエ(Tokie))及び米国特許公報第2002/0128340号(ヤング(Young)ら)に記載されている。前記パターンを基材表面へ適用後、前記反応混合物を硬化することができる。例えば、前記反応混合物は、熱反応開始剤が前記反応混合物中に含まれる場合には加熱することにより、又は光反応開始剤が前記反応混合物中に含まれる場合には化学線を適用することにより硬化することができる。
【0119】
パターニングされた架橋型高分子層の別の形成方法は、前記反応混合物の層を基材上へ形成すること、前記反応混合物の第1の部分を硬化して、基材上へ架橋型高分子物質のパターンを形成すること、及び硬化しなかった前記反応混合物の第2の部分を除去することを含む。基材上の反応混合物の層は、例えば、ブラシコーティング、スプレーコーティング、グラビアコーティング、転写ロールコーティング、ナイフコーティング、カーテンコーティング、ワイヤコーティング、及びドクターブレードコーティングなどの任意の好適な手法を使用して調製可能である。
【0120】
反応混合物の一部を重合する一方法は、光反応開始剤を反応混合物中で使用すること及びマスクを使用することを含む。前記マスクは、開口部のパターンを含有し、且つ反応混合物の層と化学線供給源との間に配置されることができる。化学線は、前記マスクの開口部を貫通することができる。化学線に晒された際に、前記マスクの開口部に対応する前記反応混合物層の第1の部分は重合することができ、且つマスクによって化学線からブロックされた前記反応混合物層の第2の部分は、未硬化又は未反応で残存する。即ち、前記未硬化反応混合物は、ゲル化又は硬化せず、架橋型高分子物質を形成しないモノマー組成物である。前記未硬化反応混合物は、化学式Iのモノマー、前記架橋モノマー類、及びあらゆる任意の希釈モノマー類に好適な溶剤を使用して除去することができる。前記溶媒は通常、広範囲な架橋故に、硬化済架橋型高分子物質を溶解しない。このため、架橋型高分子物質のパターンを基材表面に残したまま、前記未硬化反応性混合物を除去することができる。
【0121】
前記未反応反応混合物を除去するための好適な溶媒類としては、水、アセトニトリル、テトラヒドロフラン、酢酸エチル、トルエン、アセトン、メチルエチルケトン、イソプロパノール、N−メチルピロリドン、塩素化及びフッ素化炭化水素類、フッ素化エーテル類、又はそれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。前記架橋型高分子物質は通常、これらの溶媒類に不溶性である。本明細書で使用する時、不溶性ポリマーは、室温にて例えば、水、アセトニトリル、テトラヒドロフラン、酢酸エチル、トルエン、アセトン、メチルエチルケトン、イソプロパノール、N−メチルピロリドン、塩素化及びフッ素化炭化水素類、フッ素化エーテル類、又はそれらの組み合わせなどの溶媒中で0.01重量%未満の溶解度を有するものである。
【0122】
本パターニング法に好適なマスク類としては、高分子物質(例えば、ポリエチレンテレフタレート又はポリエチレンナフタレートなどのポリエステル類、ポリイミド、ポリカーボネート、又はポリスチレン)、金属箔物質(例えば、ステンレス鋼、その他の鋼鉄類、アルミニウム、又は銅)、紙、織布又は不織布布地材料、又はそれらの組み合わせが挙げられる。高分子マスク類及びこれらマスク類の開口部は、更に米国特許第6,897,164号(ボーデ(Baude)ら)に記載されている。前記マスクの開口部は、任意の好適な寸法であることができる。
【0123】
前記架橋型高分子物質は、ペンダントアミン捕捉基を有する。このため、基材表面上に架橋型高分子物質の層又はパターンを有する物品は、アミン含有物質と反応可能なアミン捕捉基を有することができる。前記高分子物質のペンダントアミン捕捉基は、化学式IIのようなものであり、
【0124】
【化18】

【0125】
架橋したポリマー骨格の主鎖に結合している。基L、Y、R、R、及びRは、化学式Iにて既に記載した。化学式II中のアスタリスクは、ペンダントアミン捕捉基が前記架橋型高分子物質の主鎖に結合する位置を指す。前記ペンダントアミン捕捉基としては、N−スルホニルジカルボキシイミド基が挙げられる。
【0126】
化学式IIによるペンダント基は通常、N−ヒドロキシスクシンイミドの誘導体類(アミン含有物質と反応することが知られている基)と比較して、改善された加水分解安定性を有する。化学式IIのペンダント基の改善された加水分解安定性故に、前記架橋型高分子物質及び当該架橋型高分子物質を含有する物品は通常、水溶液系にて使用することが可能である。
【0127】
前記アミン捕捉基は、アミン含有物質と反応して、前記アミン含有物質の不動化をもたらすことができる。アミン含有物質の不動化方法は、基材を提供すること、及び基材表面上に反応混合物を配設することを含む。前記反応混合物は、(a)化学式Iのモノマー及び(b)少なくとも2つの(メタ)アクリロイル基を含む架橋モノマーを含有する。前記方法は更に、反応混合物を硬化して、ペンダントアミン捕捉基を有する架橋型高分子物質を形成すること、及びアミン含有物質を前記架橋型高分子物質のペンダントアミン捕捉基と反応させることを含む。本方法では、前記ペンダントアミン捕捉基内のN−スルホニルジカルボキシイミド基が、アミン含有物質と反応することができる。幾つかの実施形態では、前記アミン含有物質は、例えばアミノ酸、ペプチド、DNA、RNA、タンパク質、酵素、細胞器官、細胞、組織、免疫グロブリン(immunoglobin)、又はこれらの断片などの生体物質である。他の実施形態では、前記アミン含有物質は、アミン含有検体などの非生物学的アミンである。
【0128】
前記アミン含有物質は、N−スルホニルジカルボキシイミド基との開環反応によって、前記ペンダントアミン捕捉基と反応することができる。前記アミン含有物質は、一級アミン基又は二級アミン基を有することができる。例えば、前記アミン含有物質は、化学式HN−Tの一級アミン含有生体物質であることができ、式中、Tは、前記一級アミン含有生体物質の残り(即ち、基Tは、化学式HN−Tの一級アミン含有生体物質から−NH基を差し引いたものに相当する)である。基Tは多くの場合、−NH基に直接結合したアルキレン基を有する。前記一級アミン含有生体物質は、化学式IIのペンダント基を有する前記架橋型高分子物質と反応し、化学式IIIの反応済ペンダント基を有する架橋型高分子物質を生じる。
【0129】
【化19】

【0130】
化学式IIIでは、Rは、1〜5個の炭素原子を有するアルキレン、芳香族基、飽和若しくは不飽和環状基、飽和若しくは不飽和二環状基、又はそれらの組み合わせである。Rは、化学式I及びII中のR及びRの結合した基に相当する。基L、Y、R、及び*は、化学式I及びIIについて既に定義されたものと同一である。不動化されたアミンの存在は、例えば、質量分析、接触角測定、赤外分光法、及び偏光解析法を使用して同定することができる。更に、前記アミン含有物質が生物学的活性物質である場合、各種免疫測定法及び光学顕微鏡技術を使用することが可能である。
【0131】
アミン含有物質と、化学式IIのペンダントアミン捕捉基のN−スルホニルジカルボキシイミド基との反応速度は通常、N−スルホニルジカルボキシイミド基の加水分解速度より速い。即ち、アミン含有物質の不動化は、加水分解反応よりも高速で発生する。前記アミン含有物質は、前記架橋型高分子物質のペンダント基への不動化が一旦生じると、共有カルボニルイミノ結合が形成されるが故に、容易に移動しない。
【0132】
不動化された生物学的アミン含有物質は、疾病又は遺伝的欠陥の医学的診断において有用であり得る。前記不動化されたアミン含有物質は、生物学的分離のため又は各種生体分子の存在を検出するためにも使用できる。更に、前記不動化されたアミン含有物質は、バイオリアクター内にて使用して、又は生体触媒として使用して、他の物質を調製することが可能である。N−スルホニルアミノカルボニル基を持つペンダント基もまた、生体物質ではないアミン含有検体を検出するために使用することが可能である。前記アミン含有検体は、一級アミン基、二級アミン基、又はそれらの組み合わせを有することができる。
【0133】
更に、その他の物質が、前記不動化されたアミン含有物質に結合することができる。この更に結合した物質は、アミン含有物質の不動化前に当該アミン含有物質と組み合わせたり、アミン含有物質の不動化の後で、当該アミン含有物質に結合させたりすることができる。前記アミン含有物質及び更に結合させた物質は、相補的RNA断片、相補的DNA断片、抗原−抗体コンビネーション、免疫グロブリン−バクテリアコンビネーションなどであり得る。
【0134】
生物学的アミン含有物質は、多くの場合、前記架橋型高分子物質のペンダント基への付着後に、活性を維持することができる(即ち、化学式IIIによるペンダント基が、生物学的に活性なアミン含有物質を含むことができる)。例えば、不動化抗体は、引き続いて抗原に結合することができ、又は不動化抗原は、引き続いて抗体に結合することができる。同様に、バクテリアに結合可能な部分を有する不動化されたアミン含有生体物質は、引き続いてバクテリアに結合することができる(例えば、不動化された免疫グロブリンは、引き続いて黄色ブドウ球菌などのバクテリアに結合することができる)。
【0135】
化学式II及び化学式IIIのペンダント基は、架橋型高分子物質の主鎖に結合している。前記架橋型高分子物質は、(メタ)アクリロイル基のフリーラジカル重合反応により形成される。化学式IIのペンダント基を持つ架橋型高分子物質は、少なくとも2つの一級アミン基、二級アミン基、又はそれらの組み合わせを有する物質を含有する一級アミンの反応によって、更に架橋することができる。即ち、2以上の一級アミン又は二級アミン基を有するアミン含有物質は、化学式IIのペンダント基の2以上と反応してよい。
【実施例】
【0136】
これらの実施例は単にあくまで例示を目的としたものであり、添付した「特許請求の範囲」の範囲に限定することを意味するものではない。特に記載のない限り、実施例及びこれ以降の明細書に記載される部、百分率、比率等はすべて、重量による。使用される溶媒及びその他の試薬は、特に記載のない限り、シグマ・アルドリッチ・ケミカル社(Sigma-Aldrich Chemical Company)(ウィスコンシン州ミルウォーキー(Milwaukee))より入手した。
【0137】
【表1】

【0138】
調製例1:
【0139】
【化20】

【0140】
の調製
電磁攪拌棒、添加ロート及び窒素ガス供給源に接続されているホースアダプタを装着した三つ口丸底フラスコに、鉱油(9.45g)及びヘキサン(20mL)中の60重量%NaH分散体を充填した。前記混合物を約15分間攪拌し、その後、DMF(100mL)を前記フラスコに添加した。DMF(100mL)中のp−トルエンスルホンアミド(15.7g)及び5−ノルボルネン−2,3−ジカルボン酸無水物(16.2g)の混合物を添加ロートから前記フラスコにゆっくりと加えた。前記混合物を室温で一晩攪拌した。DMF(10mL)中の5−ノルボルネン−2,3−ジカルボン酸無水物(1.6g)の追加溶液を前記フラスコに滴加し、前記混合物を約6時間攪拌した。次に、無水酢酸(28.14g)を前記フラスコに添加し、前記混合物を一晩撹拌した。次に、NaHCO水溶液を前記フラスコに添加し、次にHCl水溶液を添加した。前記混合物を濾過し、濾過した固体を真空オーブンを使用して一晩乾燥させた。次に、前記固体をメタノールから再結晶させて、14.8グラムの生成物を得た。
【0141】
調製例2:
【0142】
【化21】

【0143】
の調製
2−メルカプトエタノール(1.69グラム)、調製例1のN−(4−メチルベンゼンスルホニル)スクシンイミド生成物(7.0グラム)、VAZO64(0.2グラム)、及び酢酸エチル(8.7グラム)の混合物を約15分間窒素ガスでパージし、次に、窒素雰囲気下55℃にて24時間加熱した。前記溶液を室温まで冷却したが、その間、白色結晶が沈殿した。前記結晶を濾過によって分離し、酢酸エチルで洗浄し、乾燥させて3.2グラムの生成物を得た。
【0144】
調製例3:
【0145】
【化22】

【0146】
の調製
調製例2のアルコール生成物(5.0グラム)、NMP(20ミリリットル)、及びトリエチルアミン(1.5グラム)から成る、磁性攪拌器によって攪拌した丸底フラスコ中の混合物へ、塩化アクリロイル(1.25グラム)を約15分間かけてゆっくりと添加した。前記混合物を一晩室温にて窒素雰囲気下で攪拌し、その後、当該混合物をビーカー内の0.1N HCl水溶液(100ミリリットル)に注ぎ込んだ。本混合物を酢酸エチルで抽出し、次に、前記酢酸エチル混合物を硫酸ナトリウム上で乾燥した。次に、揮発性成分をロータリーエバポレーターを使用して除去し、生成物を得た。
【0147】
調製例4:
【0148】
【化23】

【0149】
の調製
三つ口丸底フラスコ内の、調製例1のN−(4−メチルベンゼンスルホニル)ジカルボキシイミド生成物(25.0g)及びメルカプト酢酸(7.63g)の酢酸エチル(161g)溶液を10分間窒素ガスでパージした。前記フラスコに還流凝縮器及び電磁攪拌棒を装着した。アゾビス(イソブチロニトリル)(0.0484g)を前記フラスコに添加し、当該混合物を攪拌し、55℃で16時間加熱した。前記混合物を室温まで冷却した後、溶媒をロータリーエバポレーターを使用して除去した。茶色の固体がトルエン/アセトニトリルから再結晶し、11.9gの生成物を得た。
【0150】
調製例5:
【0151】
【化24】

【0152】
の調製
調製例4のカルボキシ含有生成物(5.06g)、チオニルクロライド(1.62g)、DMF(1滴)、及びクロロホルム(61.8g)の混合物を100mLの丸底フラスコ内で調製した。前記フラスコに電磁攪拌棒及び還流凝縮器を装着し、次に前記混合物を攪拌し、還流下で2時間加熱した。前記混合物を室温まで冷却し、次に、生成物が沈殿するまでヘプタンを前記フラスコに添加した。前記混合物を濾過し、生成物を真空オーブン中で乾燥させて、4.8gの生成物を得た。
【0153】
調製例6:
【0154】
【化25】

【0155】
の調製
磁性攪拌器を装着した丸底フラスコへ、酢酸エチル(0.25ミリリットル)、2−ヒドロキシエチルメタクリレート(0.10グラム)及びN−エチルジイソプロピルアミン(0.12グラム)を添加した。調製例5の生成物(0.30グラム)を酢酸エチル(1.75ミリリットル)中に溶解し、前記フラスコへ窒素雰囲気下にて加え、室温で一晩攪拌した。その後、酢酸エチル(10ミリリットル)を添加した。前記混合物をビーカー内の0.1N HCl水溶液(10ミリリットル)に注ぎ込んだ。水相を分離し、有機相を0.1N HCl水溶液(10ミリリットル)で洗浄し、続いて飽和塩化ナトリウム溶液(10ミリリットル)で洗浄した。前記酢酸エチル混合物を、硫酸マグネシウム上で乾燥させた。ロータリーエバポレーターを使用して前記混合物を濃縮し、それをアナロジックス(Analogix)フラッシュ・クロマトグラフィーシステム上で、35:63〜85:15の酢酸エチル/ヘキサンの濃度勾配で20分かけて精製した。所望の生成物を含有する留分を収集し、次に揮発性成分をロータリーエバポレーターを使用して除去し、0.2178gの生成物を得た(収率59%)。
【0156】
調製例7:
【0157】
【化26】

【0158】
の調製
調製例2のアルコール生成物(5.0グラム)、NMP(20ミリリットル)、及びトリエチルアミン(1.5グラム)から成る、磁性攪拌器によって攪拌した丸底フラスコ中の混合物へ、無水メタクリル酸(2.12グラム)を約15分間かけてゆっくりと添加した。前記混合物を一晩室温にて窒素雰囲気下で攪拌し、その後、当該混合物をビーカー内の0.1N HCl水溶液(100ミリリットル)に注ぎ込んだ。本混合物を酢酸エチルで抽出し、次に、前記酢酸エチル混合物を硫酸ナトリウム上で乾燥した。次に、揮発性成分をロータリーエバポレーターを使用して除去し、生成物を得た。
【0159】
調製例8:
【0160】
【化27】

【0161】
の調製
メタンスルホンアミド(10グラム)、1,2,4−ベンゼントリカルボン酸無水物(26.3グラム)、トリエチルアミン(37.2グラム)、及びDMF(84.6グラム)の混合物を磁性攪拌器によって窒素雰囲気下にて一晩室温で攪拌した。次に、前記混合物を50℃まで加熱し、この温度で30分間攪拌し、その後、それを室温まで冷却して、濾過した。前記固体を氷酢酸から再結晶させ、白色結晶固体を濾過し、ジエチルエーテルで洗浄し、乾燥して5.4グラムの生成物を得た。
【0162】
調製例9:
【0163】
【化28】

【0164】
の調製
還流凝縮器を装着した丸底フラスコ内の、調製例8のカルボン酸生成物(3.0グラム)、塩化チオニル(1.72グラム)、DMF(1滴)、及びACN(18.9グラム)の混合物を、磁性攪拌器によって窒素雰囲気下にて還流させながら1時間攪拌した。次に、揮発性成分をロータリーエバポレーターを使用して除去し、フラスコ内の部分的に固体の残留物を、ジエチルエーテルの入ったフリットガラス漏斗内に洗い流した。前記固体をジエチルエーテルで洗浄し、窒素ガス流下にて乾燥し、2.9グラムの生成物を得た。
【0165】
調製例10:
【0166】
【化29】

【0167】
の調製
丸底フラスコ内の、調製例9の塩化カルボニル生成物(5.0グラム)、NMP(20ミリリットル)、2−ヒドロキシエチルアクリレート(1.97グラム)、及びトリエチルアミン(1.89グラム)の混合物を、磁性攪拌器によって一晩窒素雰囲気下にて室温で攪拌した。次に、前記混合物をビーカー内の0.1N HCl水溶液(100ミリリットル)に注ぎ込んだ。本混合物を酢酸エチルで抽出し、次に、前記酢酸エチル混合物を硫酸ナトリウム上で乾燥した。次に、揮発性成分をロータリーエバポレーターを使用して除去し、生成物を得た。
【0168】
調製例11:
【0169】
【化30】

【0170】
の調製
丸底フラスコ内の、調製例9の塩化カルボニル生成物(1.06グラム)、アセトニトリル(5.5ミリリットル)、2−ヒドロキシエチルメタクリレート(0.51グラム)、及びエチルジイソプロピルアミン(0.62グラム)の混合物を、磁性攪拌器によって一晩窒素雰囲気下にて室温で攪拌した。前記混合物をロータリーエバポレーターで濃縮した。得られた油をクロロホルム(25ミリリットル)で回収し、次に0.1N HCl(25ミリリットル)で洗浄し、硫酸マグネシウム上で乾燥させた。前記クロロホルムを除去して、熱メタノールで油を回収した。冷却して真っ黒の油を沈降させ、透明な溶液をデカントし、ロータリーエバポレーターで濃縮した。得られた油を熱イソプロピルアルコール中に溶解させ、室温まで冷却して白色結晶固形物を沈殿させ、濾過し、冷IPAで洗浄し、オーブン内で乾燥させて、81ミリグラムの所望の生成物を得た。
【0171】
調製例12:
【0172】
【化31】

【0173】
の調製
丸底フラスコ内の、調製例9の塩化カルボニル生成物(5.0グラム)、NMP(20ミリリットル)、N−フェニルエタノールアミン(2.34グラム)、及びトリエチルアミン(1.89グラム)の混合物を、磁性攪拌器によって一晩窒素雰囲気下にて室温で攪拌した。次に、前記混合物をビーカー内の0.1N HCl水溶液(100ミリリットル)に注ぎ込んだ。本混合物を酢酸エチルで抽出し、次に、前記酢酸エチル混合物を硫酸ナトリウム上で乾燥した。次に、揮発性成分をロータリーエバポレーターを使用して除去し、生成物を得た。
【0174】
調製例13:
【0175】
【化32】

【0176】
の調製
丸底フラスコ内の、調製例12のアルコール生成物(5.0グラム)、NMP(20ミリリットル)、塩化アクリロイル(1.18グラム)、及びトリエチルアミン(1.45グラム)の混合物を、磁性攪拌器によって一晩窒素雰囲気下にて室温で攪拌した。次に、前記混合物をビーカー内の0.1N HCl水溶液(100ミリリットル)に注ぎ込んだ。本混合物を酢酸エチルで抽出し、次に、前記酢酸エチル混合物を硫酸ナトリウム上で乾燥した。次に、揮発性成分をロータリーエバポレーターを使用して除去し、生成物を得た。
【0177】
調製例14:
【0178】
【化33】

【0179】
の調製
丸底フラスコ内の、調製例12のアルコール生成物(5.0グラム)、NMP(20ミリリットル)、無水メタクリル酸(2.00グラム)、及びトリエチルアミン(1.45グラム)の混合物を、磁性攪拌器によって一晩窒素雰囲気下にて室温で攪拌した。次に、前記混合物をビーカー内の0.1N HCl水溶液(100ミリリットル)に注ぎ込んだ。本混合物を酢酸エチルで抽出し、次に、前記酢酸エチル混合物を硫酸ナトリウム上で乾燥した。次に、揮発性成分をロータリーエバポレーターを使用して除去し、生成物を得た。
【0180】
調製例15:
【0181】
【化34】

【0182】
の調製
磁性攪拌器を装着した丸底フラスコへ、酢酸エチル(0.25ミリリットル)、2−ヒドロキシエチルメタクリレート(0.10グラム)及びN−エチルジイソプロピルアミン(0.12グラム)を添加した。調製例5の生成物(0.30グラム)を酢酸エチル(1.75ミリリットル)中に溶解し、前記フラスコへ窒素雰囲気下にて加え、周囲条件にて一晩攪拌した。その後、酢酸エチル(10ミリリットル)を添加した。前記混合物をビーカー内の0.1N HCl水溶液(10ミリリットル)に注ぎ込んだ。水相を分離し、有機相を0.1N HCl水溶液(10ミリリットル)で洗浄し、続いて飽和塩化ナトリウム溶液(10ミリリットル)で洗浄した。前記酢酸エチル混合物を、硫酸マグネシウム上で乾燥させた。ロータリーエバポレーターを使用して前記混合物を濃縮し、それをアナロジックス(Analogix)フラッシュ・クロマトグラフィーシステム上で、35:63〜85:15の酢酸エチル/ヘキサンの濃度勾配で20分かけて精製した。所望の生成物を含有する留分を収集し、次に揮発性成分をロータリーエバポレーターを使用して除去し、0.2178gの生成物を得た(収率59%)。
【0183】
PEIコーティングされたスライドガラス・マトリックスの調製
ガラス製顕微鏡用スライドを2時間5モル濃度のNaOH浴で浸漬させ、脱イオン水、エタノール、及びメタノールですすぎ、窒素流下にて乾燥させた。清潔なスライドは、必要になるまで、80℃のオーブン内で保管した。
【0184】
8枚のスライドを2列、4行のマトリクスに並べた。上記スライドは、各スライドの裏側の真ん中でテープ片を使用して、マトリックス内の適切な位置に固定した。PEIの2重量%IPA溶液を、12番メイヤーロッドを使用して前記マトリクス上にコーティングした。前記コーティングは、空気中で乾燥させた。
【0185】
Cy5でラベルしたIgGの調製
Cy5色素(3H−インドリウム、2−[5−[1−[6−[(2,5−ジオキソ−1−ピロリジニル)オキシ]−6−オキソヘキシル]−1,3−ジヒドロ−3,3−ジメチル−5−スルホ−2H−インドール−2−イリデン]−1,3−ペンタジエニル]−1−エチル−3,3−ジメチル−5−スルホ−、分子内塩(9CI))の3個のバイアル瓶の内容物を、ジメチルスルホキシド(DMSO)中に溶解させて、総容量を100マイクロリットルにした。Cy5色素のバイアル瓶は、GE−アマシャム・バイオサイエンス(GE-Amersham Biosciences)(ニュージャージ州ピスカタウエイ)から入手した。得られた色素溶液を1ミリリットルの、5ミリグラム/ミリリットルのマウスIgG0.1M炭酸ナトリウム溶液に添加した(pH9.0にて)。前記マウスIgGは、シグマ(ミズーリ州セントルイス)から入手した。得られた溶液を光曝露から保護し、45分間室温にて静かに振盪させた。本溶液は、Cy5でラベルした抗体及び未反応Cy5を含有していた。
【0186】
Cy5でラベルした抗体(Cy5−IgG)は、ゲル濾過クロマトグラフィーを使用して未反応Cy5ラベルから分離した。Cy5−IgG及び未反応Cy5を含有する溶液を、リン酸緩衝液(PBS)を使用してpH7.4にて平衡が保たれたPD−10カラムに添加した。前記PD−10カラムは、GE−アマシャム・バイオサイエンス(GE-Amersham Biosciences)(ニュージャージ州ピスカタウエイ)から入手した。PBSにてpH7.4で洗浄することにより、Cy5−IgG分画を収集した。Cy5/IgG比は、Cy5−IgG分画中のIgG濃度(280nm)及びCy5濃度(650nm)を測定することにより計算した。Cy5及びIgGの製造業者により提供された製品仕様を確認して、IgG及びCy5の減衰係数値並びに共有結合したCy5の280nmでの吸光度寄与分を得た。最終Cy5−IgG溶液は、Cy5−IgG濃度1.3ミリグラム/ミリリットル、Cy5/IgG比2.2であった。本原液から、130、50、13及び5マイクログラム/ミリリットルのCy5−IgGを、pH9.6の10ミリモル炭酸塩緩衝液中に含有する試験溶液を調製した。前記緩衝液は、シグマ(ミズーリ州セントルイス)から入手可能な炭酸ナトリウム/重炭酸ナトリウム緩衝液カプセルを使用して調製した。
【0187】
比較例C1
光反応開始剤(0.01グラム)及びTMPTA(0.6グラム)のACN(5グラム)溶液を調製した。本溶液は、当該溶液の重量を基準にして、11重量%のTMPTA及び0.18重量%の光反応開始剤を含有していた。本溶液を前述のPEIコーティングされたスライドガラス・マトリックス上に、12番メイヤーロッドを使用してコーティングした。前記コーティングは、空気中で乾燥させた。前記コーティングマトリックスは、15メートル/分(50フィート/分)の速度で、2回硬化装置を通過させた。前記硬化装置は、フュージョン・システムズ(Fusion Systems)(メリーランド州ゲイサーズバーグ)から入手し、F300ランプを取り付けた。得られた硬化コーティングを金属スパチュラで擦って、当該コーティングが擦れて剥がれないことを確認した。
【0188】
上記で調製したCy5−IgG試験溶液及びCy5−IgGを含まない試料の5マイクロリットルの滴を、コーティング表面に適用し、30分間放置した。前記表面を0.25重量%トウィーン(TWEEN)−25脱イオン水溶液ですすぎ、次に脱イオン水ですすいだ。前記スライドを窒素雰囲気で乾燥させ、蛍光リーダー(テカングループ(Tecan Group LTD)(ノースカロライナ州リサーチ・トライアングル・パーク)からLSシリーズテカン(TECAN)の商標名で市販されている)内に置いた。シングルスキャン測定は、焦点高さを1002マイクロメートル、解像度を40マイクロメートル、オーバーサンプリングを3マイクロメートル、ゲインを160、且つピンホール深さ焦点を±150マイクロメートルに調整することにより行なった。前記データは、16−ビットでピクセル化したTIFFファイルとして、モレキュラー・デバイス社(Molecular Devices Corp)(カリフォルニア州サニーベール)からジェネピックス・プロ(GENEPIX PRO)の商標名で市販されているソフトウェアを使用して分析した。当該データを表1に示す。
【0189】
(実施例1)
調製例6からの物質(0.031グラム)、光反応開始剤(0.009グラム)、及びTMPTA(0.54グラム)をACN(5.2グラム)中に溶解させることにより、溶液を調製した。得られた溶液は、当該溶液の重量を基準にして、0.5重量%の調製例1、0.18重量%の光反応開始剤、及び10重量%のTMPTAを含有していた。本溶液を前述のPEIコーティングされたスライドガラス・マトリックス上に、12番メイヤーロッドを使用してコーティングした。得られたコーティングは、空気中で乾燥させた。前記コーティングマトリックスを、15メートル/分(50フィート/分)の速度で、F300ランプを備えたフュージョン・システムズ(Fusion Systems)硬化装置を2回通過させた。得られた硬化コーティングを金属スパチュラで擦って、当該コーティングが擦れて剥がれないことを確認した。
【0190】
Cy5−IgG試験溶液及びCy5−IgGを含まない試料の5マイクロリットルの滴を、コーティング表面に適用し、30分間放置した。前記表面を0.25重量%トウィーン(TWEEN)−25脱イオン水溶液ですすぎ、次に脱イオン水ですすいだ。前記スライドを窒素雰囲気で乾燥させ、蛍光リーダー(テカングループ(Tecan Group LTD)(ノースカロライナ州リサーチ・トライアングル・パーク)からLSシリーズテカン(TECAN)の商標名で市販されている)内に置いた。シングルスキャン測定は、焦点高さを1002マイクロメートル、解像度を40マイクロメートル、ゲインを160、オーバーサンプリングを3マイクロメートル、且つピンホール深さ焦点を±150マイクロメートルに調整することにより行なった。前記データは、16−ビットでピクセル化したTIFFファイルとして、モレキュラー・デバイス社(Molecular Devices Corp)(カリフォルニア州サニーベール)からジェネピックス・プロ(GENEPIX PRO)の商標名で市販されているソフトウェアを使用して分析した。当該データを表1に示す。
【0191】
(実施例2)
調製例11の物質(0.032グラム)、光反応開始剤(0.009グラム)、及びTMPTA(0.56グラム)をACN(5.3グラム)中に溶解させることにより、溶液を調製した。得られた溶液は、当該溶液の重量を基準にして、0.5重量%の調製例2、0.18重量%の光反応開始剤、及び10重量%のTMPTAを含有していた。本溶液を前述のPEIコーティングされたスライドガラス・マトリックス上に、12番メイヤーロッドを使用してコーティングした。得られたコーティングは、空気中で乾燥させた。
【0192】
前記コーティングマトリックスを、15メートル/分(50フィート/分)の速度で、F300ランプを備えたフュージョン・システムズ(Fusion Systems)硬化装置を2回通過させた。得られた硬化コーティングを金属スパチュラで擦って、当該コーティングが擦れて剥がれないことを確認した。
【0193】
Cy5−IgG試験溶液及びCy5−IgGを含まない試料の5マイクロリットルの滴を、コーティング表面に適用し、30分間放置した。前記表面を0.25重量%トウィーン(TWEEN)−25脱イオン水溶液ですすぎ、次に脱イオン水ですすいだ。前記スライドを窒素雰囲気で乾燥させ、蛍光リーダー(テカングループ(Tecan Group LTD)(ノースカロライナ州リサーチ・トライアングル・パーク)からLSシリーズテカン(TECAN)の商標名で市販されている)内に置いた。シングルスキャン測定は、焦点高さを1002マイクロメートル、解像度を40マイクロメートル、ゲインを160、オーバーサンプリングを3マイクロメートル、且つピンホール深さ焦点を±150マイクロメートルに調整することにより行なった。前記データは、16−ビットでピクセル化したTIFFファイルとして、モレキュラー・デバイス社(Molecular Devices Corp)(カリフォルニア州サニーベール)からジェネピックス・プロ(GENEPIX PRO)の商標名で市販されているソフトウェアを使用して分析した。当該データを表1に示す。
【0194】
【表2】

【0195】
本発明の範囲及び趣旨を逸脱しない本発明の様々な変更や改変は、当業者には明らかとなるであろう。本発明は、本明細書で述べる例示的な実施形態及び実施例によって不当に限定されるものではないこと、また、こうした実施例及び実施形態は、本明細書において以下に記述する特許請求の範囲によってのみ限定されることを意図する、本発明の範囲に関する例示のためにのみ提示されることを理解すべきである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)化学式Iのアミン捕捉モノマー
【化1】

(式中、
Lは、オキシ又は−NR−であり;
及びRは、それらが結合したジカルボキシイミド基と共に、任意の芳香族基、任意の飽和若しくは不飽和環状基、又は任意の飽和若しくは不飽和二環状基と縮合することができる、4〜8員複素環基又は二環式複素環基を形成し;
は、水素又はメチルであり;
は、アルキル、アリール、アラルキル、又は−N(Rであって、式中、各Rはアルキル基であるか、又は両R基はそれらが結合している窒素原子と共に4〜8員複素環基を形成し;
は、水素、アルキル、アリール、アラルキル、アシル、アルキルスルホニル、又はアリールスルホニルであり;
Yは、単結合又はアルキレン、ヘテロアルキレン、アリーレン、若しくはそれらの組み合わせを含む二価の基であり;
前記アミン捕捉モノマーは、ハロ、アルキル、アルコキシ、又はそれらの組み合わせによって非置換又は置換である。)、及び
(b)少なくとも2つの(メタ)アクリロイル基を含む架橋モノマー、
を含む反応混合物。
【請求項2】
前記アミン捕捉モノマーが、化学式I(a)である、請求項1に記載の反応混合物。
【化2】

【請求項3】
前記アミン捕捉モノマーが、化学式I(b)である、請求項1に記載の反応混合物。
【化3】

【請求項4】
前記アミン捕捉モノマーが、化学式
【化4】

(式中、nは1〜30の整数である。)である、請求項1に記載の反応混合物。
【請求項5】
前記アミン捕捉モノマーが、化学式
【化5】

又は
【化6】

(式中、
qは、1〜15の整数であり;
xは、2〜4の整数であり;且つ
Dは、オキシ、チオ、又は−NH−である。)
である、請求項1に記載の反応混合物。
【請求項6】
前記アミン捕捉モノマーが、化学式
【化7】

又は
【化8】

である、請求項1に記載の反応混合物。
【請求項7】
前記アミン捕捉モノマーが、
【化9】

又は
【化10】

を含む、請求項1に記載の反応混合物。
【請求項8】
光反応開始剤、熱反応開始剤、又はそれらの組み合わせを更に含む、請求項1に記載の反応混合物。
【請求項9】
Yが、カルボニル、カルボニルオキシ、カルボニルイミノ、オキシ、チオ、−NR−、又はそれらの組み合わせを更に含む、請求項1に記載の反応混合物。
【請求項10】
前記反応混合物が、前記反応混合物内のモノマー類の重量を基準にして、0.1〜50重量%の化学式Iの前記アミン捕捉モノマーを含む、請求項1に記載の反応混合物。
【請求項11】
(a)化学式Iのアミン捕捉モノマー
【化11】

(式中、
Lは、オキシ又は−NR−であり;
及びRは、それらが結合したジカルボキシイミド基と共に、任意の芳香族基、任意の飽和若しくは不飽和環状基、又は任意の飽和若しくは不飽和二環状基と縮合することができる、4〜8員複素環基又は二環式複素環基を形成し;
は、水素又はメチルであり;
は、アルキル、アリール、アラルキル、又は−NRであって、式中、各Rはアルキル基であるか、又は両R基はそれらが結合している窒素原子と共に4〜8員複素環基を形成し;
は、水素、アルキル、アリール、アラルキル、アシル、アルキルスルホニル、又はアリールスルホニルであり;
Yは、単結合又はアルキレン、ヘテロアルキレン、アリーレン、若しくはそれらの組み合わせを含む二価の基であり;
前記アミン捕捉モノマーは、ハロ、アルキル、アルコキシ、又はそれらの組み合わせによって非置換又は置換である。)、及び
(b)少なくとも2つの(メタ)クリロイル基を含む架橋モノマー、
を含む反応混合物の反応生成物を含む、架橋型高分子物質。
【請求項12】
基材及び前記基材表面上に配置した架橋型高分子物質を備える物品であって、
前記架橋型高分子物質が、N−スルホニルジカルボキシイミド基を含むペンダントアミン捕捉基を有し、且つ前記架橋型高分子物質が、
(a)化学式Iのアミン捕捉モノマー
【化12】

(式中、
Lは、オキシ又は−NR−であり;
及びRは、それらが結合したジカルボキシイミド基と共に、任意の芳香族基、任意の飽和若しくは不飽和環状基、又は任意の飽和若しくは不飽和二環状基と縮合することができる、4〜8員複素環基又は二環式複素環基を形成し;
は、水素又はメチルであり;
は、アルキル、アリール、アラルキル、又は−NRであって、式中、各Rはアルキル基であるか、又は両R基はそれらが結合している窒素原子と共に4〜8員複素環基を形成し;
は、水素、アルキル、アリール、アラルキル、アシル、アルキルスルホニル、又はアリールスルホニルであり;
Yは、単結合又はアルキレン、ヘテロアルキレン、アリーレン、若しくはそれらの組み合わせを含む二価の基であり;
前記アミン捕捉モノマーは、ハロ、アルキル、アルコキシ、又はそれらの組み合わせによって非置換又は置換である。)、及び
(b)少なくとも2つの(メタ)アクリロイル基を含む架橋モノマー、
を含む反応混合物の反応生成物である、前記物品。
【請求項13】
基材を提供すること;
(a)化学式Iのアミン捕捉モノマー
【化13】

(式中、
Lは、オキシ又は−NR−であり;
及びRは、それらが結合したジカルボキシイミド基と共に、任意の芳香族基、任意の飽和若しくは不飽和環状基、又は任意の飽和若しくは不飽和二環状基と縮合することができる、4〜8員複素環基又は二環式複素環基を形成し;
は、水素又はメチルであり;
は、アルキル、アリール、アラルキル、又は−NRであって、式中、各Rはアルキル基であるか、又は両R基はそれらが結合している窒素原子と共に4〜8員複素環基を形成し;
は、水素、アルキル、アリール、アラルキル、アシル、アルキルスルホニル、又はアリールスルホニルであり;
Yは、単結合又はアルキレン、ヘテロアルキレン、アリーレン、若しくはそれらの組み合わせを含む二価の基であり;
前記アミン捕捉モノマーは、ハロ、アルキル、アルコキシ、又はそれらの組み合わせによって非置換又は置換である。)、及び
(b)少なくとも2つの(メタ)アクリロイル基を含む架橋モノマー、
を含む、前記基材表面上の反応混合物を配設すること;
前記反応混合物を硬化させて、N−スルホニルジカルボキシイミド基を含むペンダントアミン捕捉基を有する架橋型高分子物質を形成すること;並びに
アミン含有物質を前記N−スルホニルジカルボキシイミド基と反応させること;
を含む、アミン含有物質の基材への不動化方法。
【請求項14】
前記アミン含有物質が、アミン含有検体、アミノ酸含有検体、アミノ酸、ペプチド、DNA、RNA、タンパク質、酵素、細胞器官、細胞、組織、免疫グロブリン、又はそれらの断片である、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記アミン含有物質が抗体であり且つ前記抗体が更に抗原に結合する、請求項13に記載の方法。
【請求項16】
前記アミン含有物質が抗原であり且つ前記抗原が更に抗体に結合する、請求項13に記載の方法。
【請求項17】
前記アミン含有物質が免疫グロブリンであり且つ前記免疫グロブリン(immunoglobin)が更にバクテリアに結合する、請求項13に記載の方法。
【請求項18】
基材を提供すること;
(a)化学式Iのアミン捕捉モノマー
【化14】

(式中、
Lは、オキシ又は−NR−であり;
及びRは、それらが結合したジカルボキシイミド基と共に、任意の芳香族基、任意の飽和若しくは不飽和環状基、又は任意の飽和若しくは不飽和二環状基と縮合することができる、4〜8員複素環基又は二環式複素環基を形成し;
は、水素又はメチルであり;
は、アルキル、アリール、アラルキル、又は−NRであって、式中、各Rはアルキル基であるか、又は両R基はそれらが結合している窒素原子と共に4〜8員複素環基を形成し;
は、水素、アルキル、アリール、アラルキル、アシル、アルキルスルホニル、又はアリールスルホニルであり;
Yは、単結合又はアルキレン、ヘテロアルキレン、アリーレン、若しくはそれらの組み合わせを含む二価の基であり;
前記アミン捕捉モノマーは、ハロ、アルキル、アルコキシ、又はそれらの組み合わせによって非置換又は置換である。)、及び
(b)少なくとも2つの(メタ)アクリロイル基を含む架橋モノマー、
を含む、前記基材表面上の反応混合物を配設すること;並びに
前記反応混合物を硬化させて、N−スルホニルジカルボキシイミド基を含むペンダントアミン捕捉基を有する架橋型高分子物質を形成すること;
を含む、物品の作製方法。
【請求項19】
化学式IIのペンダント基を含む、高分子物質。
【化15】

(式中、
Lは、オキシ又は−NR−であり;
及びRは、それらが結合したジカルボキシイミド基と共に、任意の芳香族基、任意の飽和若しくは不飽和環状基、又は任意の飽和若しくは不飽和二環状基と縮合することができる、4〜8員複素環基又は二環式複素環基を形成し;
は、アルキル、アリール、アラルキル、又は−N(Rであって、式中、各Rはアルキル基であるか、又は両R基はそれらが結合している窒素原子と共に4〜8員複素環基を形成し;
は、水素、アルキル、アリール、アラルキル、アシル、アルキルスルホニル、又はアリールスルホニルであり;
Yは、単結合又はアルキレン、ヘテロアルキレン、アリーレン、若しくはそれらの組み合わせを含む二価の基であり;
アスタリスク(*)は、前記ペンダント基の、前記高分子物質の主鎖への結合部位を意味し;
化学式IIのペンダント基は、ハロ、アルキル、アルコキシ、又はそれらの組み合わせによって非置換又は置換であり;且つ
前記高分子物質は、架橋している。)
【請求項20】
化学式IIIのペンダント基を含む、高分子物質。
【化16】

[式中、
Lは、オキシ又は−NR−であり;
は、アルキル、アリール、アラルキル、又は−N(Rであって、式中、各Rはアルキル基であるか、又は両R基はそれらが結合している窒素原子と共に4〜8員複素環基を形成し;
は、水素、アルキル、アリール、アラルキル、アシル、アルキルスルホニル、又はアリールスルホニルであり;
は、1〜5個の炭素原子を有するアルキレン、芳香族基、飽和若しくは不飽和環状基、飽和若しくは不飽和二環状基、又はそれらの組み合わせであり;
Tは、一級アミン含有生体物質(−NH基を含まない)に相当し;
Yは、単結合又はアルキレン、ヘテロアルキレン、アリーレン、若しくはそれらの組み合わせを含む二価の基であり;
アスタリスク(*)は、前記ペンダント基の、前記高分子物質の主鎖への結合部位を意味し;
化学式IIIのペンダント基は、ハロ、アルキル、アルコキシ、又はそれらの組み合わせによって非置換又は置換であり;且つ
前記高分子物質は、架橋している。]

【公表番号】特表2009−510221(P2009−510221A)
【公表日】平成21年3月12日(2009.3.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−533425(P2008−533425)
【出願日】平成18年9月18日(2006.9.18)
【国際出願番号】PCT/US2006/036271
【国際公開番号】WO2007/040968
【国際公開日】平成19年4月12日(2007.4.12)
【出願人】(599056437)スリーエム イノベイティブ プロパティズ カンパニー (1,802)
【Fターム(参考)】