説明

アライメント方法

【課題】フィルム状ブランケットを用いて印刷用基材上に画像パターンを重ね合わせて形成する際に、精度良く位置合わせをすることが可能なアライメント方法を提供する。
【解決手段】インキ剥離性を有するプラスチックフィルム上に形成された画像パターンP2を、印刷用基材上に形成された画像パターンP1に転写して重ねる際に、少なくとも、画像パターンP2中の位置合わせマークM2の座標を測定する工程と、画像パターンP2の中心に点対称になる位置合わせマークM2中の二点の組の中で、位置合わせマークM2の設計座標からのずれが最も少ない二点を選択する工程と、選択された二点の位置合わせマークM2と、画像パターンP1中の位置合わせマークM1の中で設計座標が選択された二点の位置合わせマークM2と同じ値の二点の位置合わせマークM1を用いて、画像パターンP2と画像パターンP1との位置合わせを行う工程と、をこの順に含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば液晶ディスプレイ等に用いられるカラーフィルタや薄膜トランジスタなどの表示デバイス部材を製造する際に用いられる、インキ剥離性を有するプラスチックフィルムから印刷用基材上へ画像パターンを重ね合わせて形成する方法に関し、画像パターンの寸法の歪みに関係なく、高精度で位置合わせを可能にするためのアライメント方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、フラットパネルディスプレイの発展の中で、液晶ディスプレイも大型化、薄型化が進められ、それに伴い高コントラスト、広視野角など画質の面でも改善が進められてきた。なおその上に、カラーフィルタや薄膜トランジスタなどの液晶ディスプレイを構成する部材は高精細なものを低価格で製造することを求められている。
【0003】
従来、微細な画像パターンを形成する方法として、染色法や顔料分散法などのフォトリソグラフィー技術が一般的に用いられてきた。特に最近のカラーフィルタの製造方法としては顔料分散法が最も広範に使用されており、顔料を含むインキを基板に塗布し、乾燥させた後、露光装置により露光して現像という工程を経て画像パターンを得ることができる。
【0004】
フォトリソグラフィー技術を用いる方法よりも安価にカラーフィルタを作製可能と言われている印刷法としては、凸版印刷、凹版印刷、平版印刷、孔版印刷などが基礎的技術として知られている。また、各版から印刷用インキを、ブランケットと呼ばれる樹脂製またはゴム製の媒体に転移させてから、基材に印刷するオフセット印刷も広く用いられており、この方法を使うことで実際のイメージの再現性が向上する特徴がある。
【0005】
また、特許文献1には、オフセット印刷に用いるブランケットとして、透明のプラスチックフィルムにシリコーン樹脂などを塗布したものをブランケットとして用いる方法が提案されている。このフィルム状のブランケットを用いることで、画像を重ね合わせる際のアライメント工程が大きく簡略化され、アライメントの精度も向上させることが出来る。
【0006】
オフセット印刷方法としては、特許文献2に、撥インキ性のあるブランケット上にインキを塗工・予備乾燥してインキ膜を形成した後、凹凸を有する版にてこのインキ膜を押圧することにより取捨選択してブランケット上に画像形成し、このブランケット上の画像パターンを被印刷基材上に転写することで、被印刷基材上に画像パターンを形成するカラーフィルタの製造方法が提案されている。
【0007】
また、特許文献3には、巻き取りから供給された、プラスチックフィルムにシリコーン樹脂などを薄く塗布したインキ剥離性の基材をフィルムブランケットとして用いて、このフィルムブランケット上にインキ液膜を塗工し、予備乾燥してインキ膜を形成した後、凹凸を有する版の凸版をインキ膜に押あて、加熱を施さずに非画像部を該凸版の凸部に転移させ、このフィルムブランケット上に残された予備乾燥インキ膜による画像パターンを加熱を施すことなく被印刷基材表面上に転写する印刷方法が提案されている。
【0008】
フィルム状のブランケットを用いた場合は、樹脂製またはゴム製のブランケットを用いた場合と比較して、インキ中の溶剤の吸収などによるブランケットの膨潤がない為、画像パターン形状が安定して、印刷性能が向上するという利点がある。その上、特許文献3で提案しているような巻き取りロールフィルム型のブランケットを用いることにより、安定
した印刷性能でガラス基板やプラスチックフィルムに連続印刷をすることが可能になる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開平4−62096号公報
【特許文献2】特開2001−56405号公報
【特許文献3】特開2008−105400号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
フィルム状のブランケットを用いた場合は、前述のように、アライメント工程の簡略化によりアライメント精度が向上したり、画像パターン形状が安定したりして、印刷性能が向上するが、フィルム状のブランケット上に各方法で画像パターンを形成する工程で、画像パターンの寸法に歪みが生じることがある。その場合、寸法の歪みによって他の画像パターンと重ね合わせる際にアライメントにずれが生じて、欠陥に繋がってしまうことがある。
【0011】
また、印刷用基材としてプラスチックフィルムを用いる際には、印刷用基材上の画像パターンの歪みも生じやすくなる為、より一層アライメントのずれによる欠陥が生じやすくなる。
【0012】
そこで本発明は、フィルム状のブランケットを用いて印刷用基材上に画像パターンを重ね合わせて形成する際に、たとえブランケット上の画像パターンの寸法に歪みが発生したとしても、最良の精度で位置合わせをすることが可能となり、さらに、印刷用基材としてプラスチックフィルムを用いる場合でも、同様の位置合わせ精度を誇るアライメント方法を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の請求項1に係る発明は、インキ剥離性を有するプラスチックフィルム上に形成された第二の画像パターンP2を、印刷用基材上に形成された別の第一の画像パターンP1に転写して重ねる際に行うアライメント方法において、少なくとも、
(a)前記画像パターンP2面内に複数配置された位置合わせマークM2の座標を測定する工程と、
(b)前記画像パターンP2の中心を中心として点対称になる前記位置合わせマークM2中の二点の組の中で、前記位置合わせマークM2の設計座標からのずれが最も少ない二点を選択する工程と、
(c)選択された二点の前記位置合わせマークM2と、前記画像パターンP1中に複数配置された位置合わせマークM1の中で設計座標が選択された二点の位置合わせマークM2と同じ値の二点の位置合わせマークM1を用いて、前記画像パターンP2と、前記画像パターンP1との位置合わせを行う工程と、
をこの順に含むことを特徴とするアライメント方法である。
【0014】
また、本発明の請求項2に係る発明は、インキ剥離性を有するプラスチックフィルム上に形成された前記画像パターンP2が、平版印刷、凸版印刷、凹版印刷、孔版印刷のいずれかの方法で形成されたものであることを特徴とする請求項1に記載するアライメント方法である。
【0015】
また、本発明の請求項3に係る発明は、前記画像パターンP2が、インキ剥離性を有するプラスチックフィルム上に、インキ液膜を塗布して半乾燥させた後に、画像パターンが凹部として構成された凸版により不必要な部分のインキを除去する方法によって形成されたことを特徴とする請求項1または2に記載するアライメント方法である。
【0016】
また、本発明の請求項4に係る発明は、前記インキ剥離性を有するプラスチックフィルムが、プラスチックフィルムの表面にシリコーン樹脂層を積層してなるものであることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載するアライメント方法である。
【0017】
また、本発明の請求項5に係る発明は、前記インキ剥離性を有するプラスチックフィルムが、プラスチックフィルムの表面にSiO、TiO、ZrOの無機酸化物膜、あるいはこれらの複合酸化物膜のいずれかが設けられ、さらにシランカップリング剤の層を介してアルキル基、シロキサン基、フッ素原子の少なくとも一種が位置していることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載するアライメント方法である。
【0018】
また、本発明の請求項6に係る発明は、前記印刷用基材がガラス基板であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載するアライメント方法である。
【0019】
また、本発明の請求項7に係る発明は、前記印刷用基材がプラスチックフィルムであることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載するアライメント方法である。
【0020】
次に、本発明の請求項8に係る発明は、インキ剥離性を有するプラスチックフィルム上に形成された第二の画像パターンP2を、プラスチックフィルムからなる印刷用基材上に形成された別の第一の画像パターンP1に転写して重ねる際に行うアライメント方法において、少なくとも、
(a’)前記画像パターンP2中に複数配置された位置合わせマークM2の座標を測定する工程と、
(b’)前記画像パターンP1中に複数配置された前記位置合わせマークM1の座標を測定する工程と、
(c’)双方の画像パターンの中で、同じ座標設計値となっている二点の位置合わせマークの二点間距離を、座標測定値より算出する工程と、
(d’)前記画像パターンの中心を中心として点対称になる前記位置合わせマーク中の二点の組の中で前記(c’)で算出した二点間距離の合計が最も小さい二点を選択する工程と、
(e’)選択された二点に対応する二点の前記位置合わせマークM2と、二点の前記位置合わせマークM1を用いて、前記画像パターンP2と、画像パターンP1との位置合わせを行う工程と、をこの順に含むことを特徴とするアライメント方法である。
【0021】
また、本発明の請求項9に係る発明は、前記印刷用基材が、枚葉のプラスチックフィルムであることを特徴とする請求項8に記載するアライメント方法である。
【0022】
また、本発明の請求項10に係る発明は、前記印刷用基材が、巻き取りロールから供給されるウエブ状プラスチックフィルムであることを特徴とする請求項8に記載するアライメント方法である。
【発明の効果】
【0023】
本発明では、フィルム状のブランケット上に形成された画像パターンP2を、印刷用基材上の別の画像パターンP1に重ねる際に、ブランケット上に形成された画像パターンP2の寸法に歪みが生じている場合でも、複数の位置合わせマークM2の中で、位置合わせマークの設計座標からのずれが最も少ない二点を選択してアライメント工程を行っている
ため、歪みの影響を最小限に抑えて、最良の精度で画像パターンを重ねることができる。
【0024】
また、印刷用基材としてプラスチックフィルムを用いる場合でも、フィルム状のブランケット上に形成された画像パターンP2と、プラスチックフィルム上の別の画像パターンP1との、両方の画像パターンの寸法の歪みを考慮して、お互いの位置合わせマークのずれが最も少ない二点を選択してアライメント工程を行っている為、歪みの影響を最小限に抑えて、最良の精度で画像パターンを重ねることができる。
【0025】
従来のアライメント方法を用いた場合では、歪みの影響でアライメントにずれが生じ、色抜けや混色などの欠陥が生じていたサンプルも、本発明のアライメント方法であれば精度良く重ね合わせをすることが可能となるため、歩留まりを大幅に向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明のアライメント方法に係る、位置合わせマークの一例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
本発明のアライメント方法を、一実施形態に基づいて以下に説明する。
【0028】
本発明のアライメント方法では、インキ剥離性を有するプラスチックフィルムをブランケット基材として用いて印刷工程を行うものを対象としている。そのプラスチックフィルムとしては様々なものを使用することができる。その形態としては枚葉状、ロール状など特に限定されるものではないが、ロール状のプラスチックフィルムを用いた場合には、ロールツーロール方式で連続で画像パターンを形成することが可能となる。
【0029】
ブランケット基材として用いるプラスチックフィルムの材料としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリエーテルサルフォン、シクロオレフィンポリマー、ポリイミド、ナイロン、アラミド、ポリカーボネート、ポリメチルメタクリレート、ポリ塩化ビニル、トリアセチルセルロース等を用いることができる。
【0030】
本発明に係る、インキ剥離性を有するプラスチックフィルムは、前記したブランケット基材へシリコーンオイル、シリコーンワニスで代表される離型剤を塗ってあっても良いし、あるいはシリコーンゴムの薄膜層が形成されていてもよい。また同じ目的でフッ素系樹脂、フッ素系ゴム等も利用され得るし、フッ素樹脂微粉末をシリコーンゴムあるいは、アクリルゴムやウレタンゴムのような一般的な合成ゴムに混ぜて剥離性を出すなどの使い方をしてもよい。これらシリコーン系の塗膜は一般的にはフィルムとの密着が弱いが、熱硬化または紫外線硬化性のアクリル系樹脂、エポキシ系樹脂、最表面に設けるシリコーン層に対して接着性の高い樹脂等からなる層を、アンカー層としてあらかじめプラスチックフィルム上に設けるようにすれば密着性を高めることが出来る。
【0031】
いずれの構成であっても、このインキ剥離性を有するプラスチックフィルムは、ブランケット基材として適度のインキ受容性を有すると同時に、一度受容した半乾燥インキ膜の完全なインキ剥離性を有する必要がある。
【0032】
プラスチックフィルムに塗布するシリコーンオイルとしては、具体的には、ジメチルポリシロキサンの各種分子量のもの、その他メチルハイドロジエンポリシロキサン、メチルフェニルシリコーンオイル、メチル塩素化フェニルシリコーンオイル、あるいはこれらポリシロキサンと有機化合物との共重合体等を用いることができる。
【0033】
また、シリコーンゴムとしては、二液型のジオルガノポリシロキサンと架橋剤としての三官能性以上のシラン、またはシロキサン及び硬化触媒を組み合わせたもの、あるいは一液型ではジオルガノポリシロキサンとアセトンオキシム、各種メトキシシラン、メチルトリアセトキシシラン等の組み合わせになるもの等が用いられる。その他にはゴム硬度を調節するためのポリシロキサン等も適宜用いられる。
【0034】
また、本発明に係る、インキ剥離性を有するプラスチックフィルムとして、前記基材に無機物膜を設けた後、シランカップリング剤による表面処理を施したものを用いることもできる。
【0035】
シランカップリング剤としては、トリメトキシシラン類、トリエトキシシラン類等を用いることができる。このシランカップリング剤の一部位は、ビニル基、エポキシ基、アミノ基、メタクリル基、メルカプト基等の有機化合物との反応性基を持つものから選ぶことができ、あるいはアルキル基やその一部にフッ素原子が置換されたものやシロキサンが結合して、表面自由エネルギーの小さな表面を形成できる置換基が結合したものを用いることができる。前者の反応性基を有するシランカップリング剤を用いる場合には、シランカップリング剤で基材表面を処理した後、所定の表面自由エネルギーになるような他のモノマー成分を塗工して、結合させることができる。反応性基を有するシランカップリング剤としては、ビニルメトキシシラン、ビニルエトキシシラン、p−スチリルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、2−(3、4エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン等を用いることができ、モノマーとしては、スチレン、エチレングリコールジグリシジルエーテル、トリメチルプロパントリグリシジルエーテル、ラウリルアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート等を用いることができる。また、反応性基を有さないシランカップリング剤としてはメチルトリメトキシシラン、n−ヘキシルトリメトキシシラン、n−オクチルトリメトキシシラン、ドデシルトリメトキシシラン等を用いることができる。但し、アルキル基に限定されるものではない。
【0036】
前記シランカップリング剤を前記ブランケット基材に固定化する方法としては、シランカップリング剤を使用した公知の表面処理方法を用いることができる。例えば、シランカップリング剤を水、酢酸水溶液、水−アルコール混合液、あるいはアルコール溶液に希釈させた溶液を調製し、続いて、調整した溶液を公知の塗工方法であるグラビアコーター、ロールコーター、ダイコーター等を用いて基材表面に塗工し、次いで乾燥させることでシランカップリング剤を固定化できる。また、反応性基を有するシランカップリング剤を用いた場合には、次いで他のモノマー成分を同様に塗工して結合させることができる。
【0037】
前記シランカップリング剤を基材上に固定化するためには、予め基材上にSiOやTiO、ZrOからなる薄膜、もしくはこれらの複合膜が設けられていることが好ましい。これら無機酸化物膜は既知の蒸着法やスパッタ法を用いて設けたものを用いることができる。
【0038】
また、前記無機酸化物膜を設けるには、一般式M(OR)nで表される金属アルコキシド(MはSi、Ti、Al、Zrなどの金属、RはCH、C等のアルキル基)を水、アルコールの共存下で加水分解反応および縮重合反応させて得られたゲル溶液を表面にコーティング後、加熱することで無機酸化物膜を設ける、いわゆるゾル−ゲル法を用いることができる。
【0039】
さらに、前記ゾル−ゲル法で用いる金属アルコキシド溶液中にあらかじめ前記シランカップリング剤を添加しておくこともできる。この場合、表面性改質に特に効果が得られる。
【0040】
このようにして得られるインキ剥離性を有するプラスチックフィルムに対するインキの剥離性は、処理面へインキ液を滴下した際の接触角が、10°以上90°以下の程度となることが好ましく、20°以上70°以下であることがより好ましい。接触角が小さいと後工程で所定のインキ剥離性が確保できず、転写させようとする半乾燥インキ膜の転写パターンの欠陥(再現性不良等)が発生しやすくなり、接触角が大きいと第一の画像パターンを基材上に均一に形成することが困難になる。
【0041】
インキ剥離性を有するプラスチックフィルム上に画像パターンを形成する方法は様々な方法が存在し、例えば平版、凸版、凹版のいずれかの版上に第一の画像パターンを形成したうえでインキ剥離性を有するプラスチックフィルム上に転写する、所謂オフセットすることにより、容易に形成することができる。
【0042】
また、スクリーン印刷などに代表される孔版印刷により、インキ剥離性を有するプラスチックフィルム上に直接第一の画像パターンを形成する方法も選択できる。
【0043】
或いはインキ剥離性を有するプラスチックフィルム上に、インキ液膜を塗工して半乾燥させた後に、所望の画像パターンが凹部として構成された凸版により不必要な部分のインキを除去することによっても形成することができる。
【0044】
印刷用基材としては、ガラス基板やプラスチックフィルムなどの基材を用いることができ、枚葉やロール状などの形態に関しては特に限定されるものではない。ただ、ロール状のプラスチックフィルムを用いた場合には、ロールツーロール方式で連続で画像パターンを形成することが可能となる。
【0045】
ガラス基板を用いる場合は、例えば、ソーダガラス、無アルカリガラス、ホウケイ酸ガラス、石英ガラス等の材料を用いることができる。
【0046】
プラスチックフィルムを基材として用いる場合は、形成した画像パターンを熱で硬化させるという観点から、ある程度耐熱性があり、線膨張係数が小さいプラスチックフィルムが必要となる。カラーフィルタや薄膜トランジスタなどの表示デバイス部材を製造するのであれば、ガラス転移温度が200℃以上のものが望ましい。
【0047】
これらの印刷用基材に対して、凸版印刷、凹版印刷、平版印刷、孔版印刷などに代表される印刷法や、インクジェット法、フォトリソグラフィー法などの方法を用いて、インキ剥離性を有するプラスチックフィルム上に形成する画像パターンと位置合わせマークが対応するように設計された画像パターンを形成する。
【0048】
いずれかの方法によって形成された画像パターンは、インキ剥離性を有するプラスチックフィルム上に形成した画像パターンを重ねる前に熱処理によって硬化することが望ましいが、プラスチックフィルムの膨張収縮を考慮するのであれば、なるべく低温で硬化する樹脂材料を用いて画像パターンを形成することが望ましい。
【0049】
前記の方法にて、インキ剥離性を有するプラスチックフィルム上に形成した画像パターンP2を、印刷用基材上に形成された別の画像パターンP1に転写して重ねる際には、まず、インキ剥離性を有するプラスチックフィルム上に形成された画像パターンP2中に複数配置された位置合わせマークM2の座標を測定する。
【0050】
位置合わせマークM2は、図1に示すように画像パターンP2面内の外側部分に複数設
けるが、それらは画像パターンP2の中心を中心として点対称となる一点を有するように設計する。つまり、これらの対となる二点の座標(X,、Y)はそれぞれお互いの正負が逆になるように設計されている。
【0051】
それらの位置合わせマークM2の座標を測定する際には、インキ剥離性を有するプラスチックフィルムの中心付近に設けた二点の軸設定用マークを用いて、座標軸を設定したうえで測定する。軸設定用マーク二点の中心を原点とし、二点を通る直線をX軸、二点の垂直二等分線をY軸とする。インキ剥離性を有するプラスチックフィルムの面内でも、形成された画像パターンの歪みの影響が少ない中心付近に二点を設けることで、座標軸を歪みのないように設定することが可能となる。
【0052】
位置合わせマークM2の座標の測定は、アライメント工程を行うステージ上で、各位置の座標も読み取れる機構を具備したアライメントカメラによって測定する方法が想定される。アライメント工程を行うステージ以外で座標を測定した後にアライメント工程を行う方法も考えられるが、インキ剥離性を有するプラスチックフィルムが座標測定時とアライメント工程のときで状態が異なる可能性があるため、可能な限り同じステージ上で測定をするのが望ましい。
【0053】
測定した位置合わせマークの座標を基に、複数の位置合わせマークの中で設計座標からのずれが最も少ない二点を選択する。まず、各位置合わせマークの設計値からの測定値のずれ量をAとして算出した後に、各位置合わせマークの原点からの距離(設計値)で割った値をずれ値Bとした。原点からの距離でずれ量Aを割ることによって、各位置合わせマークの比較上で正確な歪みを知ることができる。各位置合わせマークの対となる二点のずれ値Bを足し合わせて、ずれ値合計を算出して、この値が最も小さい二点をアライメント用の二点と設定する。ずれ値合計が同じ値の二組が存在した場合は、対となる二点間の距離(測定値)を算出し、設計値からのずれが少ない方の組をアライメント用の二点と設定するようにする。
【0054】
選択したインキ剥離性を有するプラスチックフィルム上の画像パターンP2の位置合わせマークM2二点と、それに対応する印刷用基材上の画像パターンP1の同じ座標位置で設計された位置合わせマークM1二点とを用いて、アライメントカメラにて位置合わせを行い、インキ剥離性を有するプラスチックフィルムから画像パターンを転写して、重ね合わせを行う。
【0055】
次に、印刷用基材がプラスチックフィルムを用いている場合は、印刷用基材上に形成された別の画像パターンの座標も測定して、別の画像パターンの寸法の歪みも考慮しつつアライメント工程を行うことで、より精度良く位置合わせを行うことが可能となる。
【0056】
その方法として、まず前記のアライメント方法と同様に、まずインキ剥離性を有するプラスチックフィルム上に形成された画像パターンP2中に複数配置された位置合わせマークM2の座標を測定し、それと並行して、印刷用基材上に形成された別の画像パターンP1中に複数配置された位置合わせマークM1の座標も測定する。
【0057】
双方の画像パターンの位置合わせマークの座標を測定したら、全ての位置合わせマークにおいて、同じ座標設計値となっている二点の距離を二点間ずれ量Cとしてそれぞれの座標測定値から算出し、二点間ずれ量Cを各位置合わせマークの原点からの距離(設計値)で割った値を二点間ずれ値Dとした。各位置合わせマークの対となる二点の二点間ずれ値Dを足し合わせて、二点間ずれ値合計を算出し、この値が最も小さい二点をアライメント用の二点と設定する。ずれ値合計が同じ値の二組が存在した場合は、インキ剥離性を有するプラスチックフィルム上に形成された画像パターンP2中の対となる二点間の距離(測
定値)を算出し、設計値からのずれが少ない方の組をアライメント用の二点と設定するようにする。
【0058】
アライメント工程に用いる位置合わせマーク二点を選択したら、前記のアライメント方法と同様に、アライメントカメラにて位置合わせを行い、インキ剥離性を有するプラスチックフィルムから画像パターンを転写して、重ね合わせを行う。
【実施例】
【0059】
以下に、本発明の具体的実施例について説明する。
【0060】
<実施例1>
300mm幅のウエブ状のインキ剥離性を有するプラスチックフィルム上に凸版印刷法にて形成されたカラーフィルタのRedストライプパターンを、ガラス基板上に予め形成されたブラックマトリクスパターンに重ね合わせる試験を行った。Redストライプパターンの面内には、図1(a)に示すように、複数の位置合わせマークが設計されており、それぞれの座標位置及び位置合わせマークの原点からの距離は表1に示したとおりである。なお、表1中の各位置合わせマークのナンバーは、図1(b)に添え字で表示した番号である。
【0061】
【表1】

インキ剥離性を有するプラスチックフィルム上に凸版印刷法で形成されたRedストライプパターンの各位置合わせマークの座標を、アライメントカメラにて測定したところ、測定値は表2のようになった。
【0062】
【表2】

測定した位置合わせマークの座標を基に、ずれ量A1、A2、及びずれ値B1、B2を求め、それぞれの対となる位置合わせマークの二点のずれ値合計を算出すると、表2に示したように、設計座標が(−80、−120)、(80、120)の二点のずれ値合計が最も小さかった為、それらをアライメント用の二点と設定した。
【0063】
上記の二点を用いてアライメント工程を行い、インキ剥離性を有するプラスチックフィルムからRedストライプパターンをブラックマトリクスパターンに重ね合わせたところ、Redストライプパターンがずれて色抜けが生じたり隣のセルのストライプパターンが混入してしまったりという欠陥のない、良好な画像パターンを得ることができた。
【0064】
<実施例2>
実施例1と同様の画像パターンを重ね合わせる試験において、印刷用基材としてプラスチックフィルムを用いて試験を行った。
【0065】
インキ剥離性を有するプラスチックフィルム上に形成されたRedストライプパターンの各位置合わせマークの座標を、アライメントカメラにて測定したところ、測定値は表3のようになった。
【0066】
【表3】

また、印刷用基材であるプラスチックフィルム上に形成されたブラックマトリクスパターンの各位置合わせマークの座標を、アライメントカメラにて測定したところ、測定値は表4のようになった。
【0067】
【表4】

測定した双方の画像パターンの位置合わせマークの座標を基に、二点間ずれ量C1、C
2、及び二点間ずれ値D1、D2を求め、それぞれの対となる位置合わせマークの二点間ずれ値の合計を算出すると、表5に示したように、設計座標が(−120、−120)、(120、120)の二点のずれ値合計が最も小さかった為、それらをアライメント用の二点と設定した。実施例1の方法と同様にインキ剥離性を有するプラスチックフィルム上の画像パターンの座標だけで考えた場合、設計座標が(−80、−120)、(80、120)の二点のずれ値合計が最も小さくなるが、印刷用基材であるプラスチックフィルム上の画像パターンの座標も考慮すると、設計座標が(−120、−120)、(120、120)の二点をアライメント工程に用いることが、最も双方の画像パターンのずれを小さくすることが出来る。
【0068】
【表5】

上記の二点を用いてアライメント工程を行い、インキ剥離性を有するプラスチックフィルムからRedストライプパターンを、印刷用基材であるプラスチックフィルム上のブラックマトリクスパターンに重ね合わせたところ、Redストライプパターンがずれて色抜けが生じたり隣のセルのストライプパターンが混入してしまったりという欠陥のない、良好な画像パターンを得ることができた。
【0069】
<比較例1>
実施例1と同様にして、
300mm幅のウエブ状のインキ剥離性を有するプラスチックフィルム上に凸版印刷法にて形成されたカラーフィルタのRedストライプパターンを、ガラス基板上に予め形成されたブラックマトリクスパターンに重ね合わせる試験を行った。この試験においては、アライメント工程前に、インキ剥離性を有するプラスチックフィルム上のRedストライプパターン、及び印刷用基材であるプラスチックフィルム上のブラックマトリクスパターンの各位置合わせマークの座標の測定は行わず、予め設定された(−120、120)、(120、−120)の二点を用いてアライメント工程を行った。
【0070】
その結果、ブラックマトリクスパターンに対して、Redストライプパターンの平行がややずれてしまい、所々で色抜けや隣のセルへの混入などの不具合が生じた。
【符号の説明】
【0071】
10・・・位置合わせマーク 20・・・軸設定用マーク 30・・・画像パターン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
インキ剥離性を有するプラスチックフィルム上に形成された第二の画像パターンP2を、印刷用基材上に形成された別の第一の画像パターンP1に転写して重ねる際に行うアライメント方法において、
少なくとも、
(a)前記画像パターンP2面内に複数配置された位置合わせマークM2の座標を測定する工程と、
(b)前記画像パターンP2の中心を中心として点対称になる前記位置合わせマークM2中の二点の組の中で、前記位置合わせマークM2の設計座標からのずれが最も少ない二点を選択する工程と、
(c)選択された二点の前記位置合わせマークM2と、前記画像パターンP1中に複数配置された位置合わせマークM1の中で設計座標が選択された二点の位置合わせマークM2と同じ値の二点の位置合わせマークM1を用いて、前記画像パターンP2と、前記画像パターンP1との位置合わせを行う工程と、
をこの順に含むことを特徴とするアライメント方法。
【請求項2】
インキ剥離性を有するプラスチックフィルム上に形成された前記画像パターンP2が、平版印刷、凸版印刷、凹版印刷、孔版印刷のいずれかの方法で形成されたものであることを特徴とする請求項1に記載するアライメント方法。
【請求項3】
前記画像パターンP2が、インキ剥離性を有するプラスチックフィルム上にインキ液膜を塗布して半乾燥させた後に、画像パターンが凹部として構成された凸版により不必要な部分のインキを除去する方法によって形成されたことを特徴とする請求項1または2に記載するアライメント方法。
【請求項4】
前記インキ剥離性を有するプラスチックフィルムが、プラスチックフィルムの表面にシリコーン樹脂層を積層してなるものであることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載するアライメント方法。
【請求項5】
前記インキ剥離性を有するプラスチックフィルムが、プラスチックフィルムの表面にSiO、TiO、ZrOの無機酸化物膜、あるいはこれらの複合酸化物膜のいずれかが設けられ、さらにシランカップリング剤の層を介してアルキル基、シロキサン基、フッ素原子の少なくとも一種が位置していることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載するアライメント方法。
【請求項6】
前記印刷用基材がガラス基板であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載するアライメント方法。
【請求項7】
前記印刷用基材がプラスチックフィルムであることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載するアライメント方法。
【請求項8】
インキ剥離性を有するプラスチックフィルム上に形成された第二の画像パターンP2を、プラスチックフィルムからなる印刷用基材上に形成された別の第一の画像パターンP1に転写して重ねる際に行うアライメント方法において、少なくとも、
(a’)前記画像パターンP2中に複数配置された位置合わせマークM2の座標を測定する工程と、
(b’)前記画像パターンP1中に複数配置された前記位置合わせマークM1の座標を測定する工程と、
(c’)双方の画像パターンの中で、同じ座標設計値となっている二点の位置合わせマー
クの二点間距離を、座標測定値より算出する工程と、
(d’)前記画像パターンの中心を中心として点対称になる前記位置合わせマーク中の二点の組の中で、前記(c’)で算出した二点間距離の合計が最も小さい二点を選択する工程と、
(e’)選択された二点に対応する二点の前記位置合わせマークM2と、二点の前記位置合わせマークM1を用いて、前記画像パターンP2と、画像パターンP1との位置合わせを行う工程と、
をこの順に含むことを特徴とするアライメント方法。
【請求項9】
前記印刷用基材が、枚葉のプラスチックフィルムであることを特徴とする請求項7に記載するアライメント方法。
【請求項10】
前記印刷用基材が、巻き取りロールから供給されるウエブ状プラスチックフィルムであることを特徴とする請求項7に記載するアライメント方法。

【図1】
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【公開番号】特開2011−235596(P2011−235596A)
【公開日】平成23年11月24日(2011.11.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−110910(P2010−110910)
【出願日】平成22年5月13日(2010.5.13)
【出願人】(000003193)凸版印刷株式会社 (10,630)
【Fターム(参考)】