説明

アライメント装置及びアライメント方法

【課題】マスクを高精度に位置合わせでき、作業性の向上も図ることができるアライメント装置及びアライメント方法を提供する。
【解決手段】本発明に係るアライメント装置1は、基板3を支持する基板ホルダ2と、基板3に対して位置決め配置され、基板3上の処理領域を区画する開口を有するマスク4と、マスク4の少なくとも一部を加熱することでマスク4の形状を部分的に変化させるための形状制御手段(電極6、配線7、通電制御板8)とを備えている。基板3に対するマスク4のアライメント工程では、基板3の上に複数設けられたアライメント位置(アライメントマーク3M)にマスク4の各部(アライメントマーク4M)を位置合わせする。マスク4の一部がアライメント位置に適合しないとき、マスク4の少なくとも一部を加熱して形状を部分的に変化させることで、マスク4をアライメント位置に適合させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板とマスクとを精度良く位置合わせするためのアライメント装置及びアライメント方法に関する。
【背景技術】
【0002】
基板にマスクを重ねて成膜する成膜装置においては、基板とマスクを高精度に位置合わせするアライメント技術が重要とされている。例えば、有機薄膜を用いた有機EL(Electro Luminescence)表示装置の製造においては、三原色の各色の光を発生させる三種類の有機薄膜を同一の基板上に形成する際、所定のマスクパターン(開口)が形成されたマスクを基板の成膜面に高精度に位置決めして蒸着あるいはスパッタ等の所定の成膜処理が行われている。
【0003】
ところで、従来より、有機EL表示装置の製造に用いられる成膜装置においては、マスクとして磁性材料製のメタルマスクが用いられており、マスクの上に基板を位置合わせした後、基板の上にマグネットを重ね、このマグネットとマスクとの間で基板を挟むことによって、互いに位置合わせされた基板とマスクの密着状態を保持している(下記特許文献1参照)。
【0004】
また、下記特許文献2には、磁性材料で形成された薄板状の真空蒸着マスクを、マスクホルダーへの保持領域、開口部を有する成膜領域及びマスクの歪みを緩和する領域を有する構成とすることで、マスクの歪みや撓みの影響を抑えて蒸着マスクと基板との密着性の向上を図ることが開示されている。
【0005】
【特許文献1】特開2001−358202号公報
【特許文献2】特開2005−310472号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
基板に対するマスクの設置は、従来より、CCD(Charge Coupled Device)カメラ等でモニタリングしながら、基板上のマーカー位置(アライメント位置)へマスクを動かして両者間の位置合わせを行っている。通常、アライメント位置は少なくとも2箇所あり、各アライメント位置に適合するようにマスクを移動させることで、基板とマスクの間の位置合わせが完了する。
【0007】
しかしながら、近年における基板の大面積化に伴い、基板とマスクとの間の位置合わせを高精度に行うことが困難となっている。
すなわち、基板の大型化に伴って、マスクも大型化し変形が生じやすくなっている。特に、マスク外縁部の微細な歪みや撓み、うねり等の変形が生じている場合、マスクがアライメント位置に適合せず、高精度な位置合わせが行えない場合が発生する。また、マスクアライメント工程が完了しないと次工程(成膜工程など)に移行できないので、アライメント作業時間が増大して生産性を損ねる結果を招く。
【0008】
本発明は上述の問題に鑑みてなされ、マスクを高精度に位置合わせでき作業性も向上できるアライメント装置及びアライメント方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
以上の課題を解決するに当たり、本発明のアライメント装置は、被処理基板を支持する基板支持手段と、被処理基板に対して位置決め配置され、被処理基板上の処理領域を区画する開口を有するマスクと、マスクの少なくとも一部を加熱することでマスクの形状を部分的に変化させる形状制御手段とを備えている。
【0010】
また、本発明のアライメント方法は、被処理基板上に前記マスクを対向配置させる工程と、被処理基板の上に複数設けられたアライメント位置にマスクの各部を位置合わせする工程とを有し、マスクの一部がアライメント位置に適合しないとき、マスクの少なくとも一部を加熱して形状を部分的に変化させることで、マスクをアライメント位置に適合させる。
【0011】
上述のように、本発明は、マスクの一部がアライメント位置に適合しないとき、マスクの少なくとも一部を加熱することで、マスクの熱膨張を利用したマスクの積極的な位置合わせを行うようにしている。これにより、マスク4の変形が矯正され、マスクと基板間の高精度な位置合わせが可能となるとともに、アライメント作業時間の短縮と生産性の向上を図ることが可能となる。
【0012】
マスクの加熱機構としては、マスクに対する通電加熱やランプ加熱を用いることができる。通電加熱には、マスク構成材料への通電加熱のほか、マスクに内蔵したヒータへの通電加熱などが含まれる。マスクの加熱位置は特に限定されないが、例えば、アライメント位置に適合しないマスク領域に対する局所加熱が挙げられる。
【発明の効果】
【0013】
以上述べたように、本発明によれば、マスクと基板間の高精度な位置合わせが可能となるとともに、アライメント作業時間の短縮と生産性の向上を図ることが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
【0015】
図1は本発明の実施形態によるアライメント装置1の概略構成図である。本実施形態において、アライメント装置1は、図示しない成膜装置(蒸着装置、スパッタ装置など)の内部に設置されている。
【0016】
基板支持手段としての基板ホルダ2の上には、被処理基板としての基板3が配置されている。基板3の上には、マスク4が位置合わせされた状態で対向配置されている。基板ホルダ2は、基板3を支持するためのもので、特に構成は限定されないが、例えば永久磁石材料または電磁石等のマグネット構造を有している。一方、マスク4は磁性材料からなり、基板ホルダ2によって着磁(磁化)されることで、基板ホルダ2との間で基板3を挟持している。
【0017】
基板3には、矩形状の大型ガラス基板等が用いられている。基板3の四隅位置には、マスク4との位置合わせ用のアライメントマーク3Mがそれぞれ設けられている。各アライメントマーク3Mは、基板ホルダ2に形成された4つの検出孔2aにそれぞれ整列しており、図1において基板ホルダ2の下方位置に配置された4つのCCDカメラ5によって各アライメントマーク3Mがそれぞれモニタリングされている。
【0018】
マスク4は、基板3上の処理領域を区画する開口が形成された開口形成領域4Aと、この開口形成領域4Aを支持する枠体4Bとを有している。開口形成領域4Aは、基板3とほぼ同等な形状、大きさの矩形薄板で形成されている。この開口形成領域4Aには、基板3上の処理領域を区画する所定形状の開口が形成されており、基板3の被処理面に密着配置されることで、上記開口を介して露出する基板の処理領域に対して成膜、エッチング等の所定の処理が行われる。
【0019】
マスク4の開口形成領域4Aの四隅位置には、基板3との位置合わせ用のアライメントマーク4Mがそれぞれ設けられている。各アライメントマーク4Mは、基板3に対してマスク4が正規に位置合わせされた際に、基板3の各々対応するアライメントマーク3Mに適合する位置に設けられている。なお、アライメントマーク3M,4Mの形成位置、形成個数は上記の例に限定されず、少なくとも2箇所に形成されていればよい。
【0020】
基板3に対するマスク4の位置合わせ工程では、CCDカメラ5を用いてアライメントマーク3Mとアライメントマーク4Mのマーク位置をそれぞれ一致させる。基板3の四隅位置でアライメントマーク3Mがマスク4のアライメントマーク4Mに適合したとき、基板3に対するマスク4の位置合わせ作業が完了する。
【0021】
ここで、近年の基板3の大型化に伴い、マスク4も大型化してきており、このためマスク4の変形も生じやすくなっている。このとき、マスク4の開口形成領域4Aあるいは枠体4Bの微細な歪みや撓み、うねり等の変形が生じている場合、マスク4のアライメントマーク4Mが基板3のアライメントマーク3Mに適合せず、基板3とマスク4との間の高精度な位置合わせが行えない場合が発生し得る。また、マスク4のアライメント工程が完了しないと次工程(成膜工程など)に移行できないので、アライメント作業時間が増大して生産性を損ねる結果を招く。
【0022】
そこで、本実施形態のアライメント装置1は、マスク4の少なくとも一部を加熱することでマスク4の形状を部分的に変化させる形状制御手段を備えており、マスク4の一部がアライメント位置に適合しないとき、マスクの所定部位を加熱して形状を部分的に変化させることで、マスク4の撓みを矯正し、マスク4をアライメント位置に適合させるようにしている。
【0023】
本実施形態において、上記形状制御手段は、マスク4の枠体4Bに沿って形成された複数の電極6と、これら複数の電極6に各々配線部7を介して接続された通電制御板8とを備えた通電機構で構成されている。通電制御板8は、任意の電極6間への供給電流を生成する電流源、電流量を調整する素子、CCDカメラ5からの出力に基づいて通電すべき電極6を選択するとともに供給電流量を決定する制御部などが搭載されている。
【0024】
なお、図1において通電制御板8は、マスク4の一側辺部側にのみ示されているが、図示するひとつの通電制御板8にマスク4上のすべての電極6が接続されていてもよいし、マスク4の各辺に対応してそれぞれ通電制御板8を配置してもよい。あるいは、通電制御板8をマスク4の周囲を囲むように環状に構成してもよい。
【0025】
通電制御板8は、CCDカメラ5の出力に基づいて、マスク形成領域4Aの周囲に沿って配置された所定の電極6間に所定の大きさの電流を供給することによってマスク4の所定部位を通電加熱し、その熱膨張による変形を利用してマスク4のアライメントマーク4Mを基板3のアライメントマーク3Mに適合させる。マスク4の形状変化部位、形状変化方向、形状変化量などは、選択される電極6の組合せ、電流の印加方法、電流の大きさ等によって制御される。
【0026】
図2〜図4は、マスク4に対する通電形態の一例を示す模式図である。図2は、マスク4の四隅を挟む一対の電極6間を通電し、マスク4の隅部を形状変化させる様子を示している。図3は、マスク4の各辺に沿って電流を供給し、枠体4を辺方向に変形させる様子を示している。図4は、マスク4全体を形状変化させる様子を示している。通電する電極6の組は一組に限らず、複数組同時に行ってもよい。
【0027】
以上のように構成される本実施形態のアライメント装置1においては、まず、基板ホルダ2の上に基板3が載置される。このとき、基板ホルダ2の検出孔2aに基板3のアライメントマーク3Mが整列するように、基板3が基板ホルダ2上に配置される。
【0028】
次いで、マスク4が基板3に対向配置される。基板3に対するマスク4の位置合わせは、基板3の上に複数設けられたアライメント位置にマスク4の各部を位置合わせする。本実施形態では、検出孔2aを介してのCCDカメラ5による基板3及びマスク4の各々のアライメントマーク3M,4Mの適合作業が行われる。マスク4の移動は、マスク4を支持する図示しないマスクホルダによって行われる。
【0029】
基板3の四隅位置で各々のアライメントマーク4がすべて適合すると、その位置でマスク4が基板3上に載置され、基板ホルダ2のマグネット作用によりマスク4が基板ホルダ2に吸着される。これにより、基板3が基板ホルダ2とマスク4との間で位置決め挟持される。以上によりアライメント工程が完了し、成膜処理工程に移行する。
【0030】
一方、マスク4に撓みが生じていると、基板3及びマスク4の各々のアライメントマーク3M,4Mのすべてが同時に適合しない場合がある。この場合、アライメント位置の適否を監視するCCDカメラ5の出力に基づいて、アライメントが非適合なマスク部位が検出される。そして、当該マスク部位への通電加熱によりマスク形状を矯正できる電極6の組合せ、必要電流量等が決定され、通電制御板8を介してマスク4の部分的な通電加熱が行われる。これにより、マスク4の通電部位が熱膨張により形状変化し、マスク4の撓みが矯正される。
【0031】
以上のようにして、マスク4の少なくとも一部に対する通電加熱作用により、基板3及びマスク4の各々のアライメントマーク3M,4Mを同時に適合させることができるようになる。これにより、マスク4の撓み等による位置合わせ作業性の低下を防止し、基板3とマスク4間の高精度な位置合わせを実現できるとともに、アライメント工程時間の短縮を図ることができる。また、成膜処理工程への移行を速やかに行うことで、生産性の向上を図ることが可能となる。
【0032】
マスク4の通電制御は、マスク4の一部である場合に限らず、マスク4の全体である場合も含まれる。また、マスク4が複数のマスク分割片の集合体で構成される場合には、図5に示すように、マスク分割片4dの各々について上述した通電加熱が可能なように構成することができる。なお、マスク分割片4dのすべてについて通電加熱機構を適用する場合に限られず、少なくとも1つのマスク分割片についてのみ通電加熱機構を設けるようにしてもよい。
【0033】
以上、本発明の実施形態について説明したが、勿論、本発明はこれに限定されることなく、本発明の技術的思想に基づいて種々の変形が可能である。
【0034】
例えば以上の実施形態では、マスク4の通電加熱手段として、マスク4の枠体4Bに複数の電極6を形成し、任意の複数の電極6間に電流を供給したときのマスク4自体の抵抗加熱作用を利用したが、これに代えて、図6A,Bに示したように、マスク4の枠体4Bの任意の位置に取り付けた電熱線(抵抗加熱線)10に対する通電作用でマスク4の加熱を行うようにしてもよい。ここで、図6Aはマスク4の枠体10の辺方向に沿って電熱線10を間欠的に取り付けた例を示しており、図6Bはマスク4の枠体10の辺方向に沿って電熱線10を連続して取り付けた例を示している。
【0035】
また、図7に示すように、マスク4の枠体4Bの所定部位にヒーター11を埋め込み、形状変化制御すべきマスク4の部位に対応する任意のヒーター11を選択的に通電加熱することによって、本発明の通電加熱機構を構成してもよい。
【0036】
あるいは、図8に示すように、マスク4の枠体4Bの所定部位に加熱ランプ(赤外線ランプ)の照射領域12を設定し、形状変化制御すべきマスク4の部位に対応する任意の照射領域12を選択的にランプ照射して、本発明の形状制御手段を構成するようにしてもよい。
【0037】
更に、例えば、マスク4の所定部位に外部から交流磁界を印加してマスク4に渦電流の発生を誘起し、この渦電流の抵抗加熱作用によってマスク4の加熱機構を構成することも可能である。これ以外にも、マスク4に対する加熱操作には公知の加熱機構が適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】本発明の実施形態によるアライメント装置の概略構成図である。
【図2】図1に示したアライメント装置におけるマスクの通電形態の一例を説明する模式図である。
【図3】図1に示したアライメント装置におけるマスクの通電形態の一例を説明する模式図である。
【図4】図1に示したアライメント装置におけるマスクの通電形態の一例を説明する模式図である。
【図5】図1に示したアライメント装置におけるマスクの構成及び通電形態の変形例を説明する模式図である。
【図6】図1に示したアライメント装置におけるマスクの通電加熱機構の構成の変形例を示すマスク平面図である。
【図7】図1に示したアライメント装置におけるマスクの加熱機構の構成の変形例を示すマスク平面図である。
【図8】図1に示したアライメント装置におけるマスクの加熱機構の構成の変形例を示すマスク平面図である。
【符号の説明】
【0039】
1 アライメント装置
2 基板ホルダ
2a 検出孔
3 基板
3M アライメントマーク
4 マスク
4A 開口形成領域
4B 枠体
4M アライメントマーク
5 CCDカメラ
6 電極
7 配線
8 通電制御部
10 電熱線
11 ヒーター
12 ランプ照射領域

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被処理基板を支持する基板支持手段と、
前記被処理基板に対して位置決め配置され、前記被処理基板上の処理領域を区画する開口を有するマスクと、
前記マスクの少なくとも一部を加熱することで前記マスクの形状を部分的に変化させる形状制御手段とを備えた
ことを特徴とするアライメント装置。
【請求項2】
前記形状制御手段は、前記マスクの少なくとも一部を通電加熱する通電機構を有する
ことを特徴とする請求項1に記載のアライメント装置。
【請求項3】
前記マスクの周囲に沿って、通電加熱用の複数の電極が配列されている
ことを特徴とする請求項1に記載のアライメント装置。
【請求項4】
前記マスクは複数のマスク分割片の集合体からなり、前記各マスク分割片の少なくともひとつには、通電加熱用の端子部が設けられている
ことを特徴とする請求項1に記載のアライメント装置。
【請求項5】
被処理基板に対して、前記被処理基板上の処理領域を区画する開口を有するマスクを位置合わせするアライメント方法であって、
前記被処理基板上に前記マスクを対向配置させる工程と、
前記被処理基板の上に複数設けられたアライメント位置に前記マスクの各部を位置合わせする工程とを有し、
前記マスクの一部が前記アライメント位置に適合しないとき、前記マスクの少なくとも一部を加熱して形状を部分的に変化させることで、前記マスクをアライメント位置に適合させる
ことを特徴とするアライメント方法。
【請求項6】
前記マスクの加熱を、前記マスクに対する通電加熱により行う
ことを特徴とする請求項5に記載のアライメント方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2008−24956(P2008−24956A)
【公開日】平成20年2月7日(2008.2.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−195119(P2006−195119)
【出願日】平成18年7月18日(2006.7.18)
【出願人】(000231464)株式会社アルバック (1,740)
【Fターム(参考)】