説明

アリスキレンと硫酸の塩

本発明は、アリスキレンの新規塩、その製造法および使用、およびそのような塩を含む医薬製剤に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、式
【化1】

のレニン阻害剤2(S),4(S),5(S),7(S)−N−(3−アミノ−2,2−ジメチル−3−オキソプロピル)−2,7−ジ(1−メチルエチル)−4−ヒドロキシ−5−アミノ−8−[4−メトキシ−3−(3−メトキシ−プロポキシ)フェニル]−オクタンアミドの新規塩に関する。
【背景技術】
【0002】
この化合物は、INN名アリスキレンを有し、EP678503Aに具体的に開示されている。
活性成分アリスキレンは、EP678503Aに具体的に記載されている遊離塩基であり、それは1個の塩基性基であるアミノ基を5位に有する。この基は9.79のpKa値を有する。従って、1個の酸性基が、アミノ基の窒素孤立電子対に結合できる。
【0003】
EP678503Aは、塩酸塩(実施例137)およびヘミフマル酸塩(実施例83)をアリスキレンの具体的な塩として開示している。しかしながら、これらの塩の特定の特性を何等記載していない。その一方で、ヘミフマル酸塩形の活性成分アリスキレンは、抗高血圧剤として開発されている。遊離塩基およびHCl塩とは対照的に、ヘミフマル酸塩は取り扱いが容易であり、少なくとも一部結晶化する能力を有し、そしてこの塩は容易に入手可能であった。さらに、強酸は、弱酸と比較して、アリスキレンと安定な塩を形成しないとの技術的仮説があった。
【0004】
ヘミフマル酸塩は、開放ルツボで96.6℃(10K/分加熱速度)の融点および28.9J・g−1の融解エンタルピーを有する。
【0005】
ヘミフマル酸アリスキレンは製剤が困難である。典型的に、ヘミフマル酸アリスキレンを含むガレヌス(galenic)製剤においては、錠剤の製剤を困難にする特性のため、通常大量の医薬原体(DS)が必要である。
【0006】
例えば、ヘミフマル酸アリスキレンは針状晶癖を有し、これは、原体のバルク特性、例えば、流動特性および嵩密度に負の影響を与える。本原体の圧縮特性は不良で、加圧下では粒子間結合の弱化および多形性の変化および/または圧縮下での非晶化(amorphization)をもたらす。ヘミフマル酸アリスキレンは、強い弾力性成分を有し、これもまた粒子間結合の弱化に至る。高用量(300または600mgまでの遊離塩基/錠)は、合理的な錠剤サイズを達成するために、高い医薬原体負荷率を必要とする。
【0007】
原体品質は、錠剤の加工性、例えば、粒子サイズ分布、嵩密度、流動性、ぬれ挙動、表面積および固着性に対する大きな影響を持って変化する。さらに、アリスキレンは非常に吸湿性である。水と接触して、原体多形性は非晶質状態に変化し、後者は結晶状態と比較して劣悪な安定性を示す。これらの障害の組合せが、標準的錠剤製造工程を非常に困難とする。
【0008】
直接圧縮は、例えば、加工上の問題および用量均一性の問題をもたらす、高い吸湿性、針状粒子構造、流動性不良のために、定常的製造のための実行可能な選択肢ではない。ローラー圧縮法は、原体の高バルク容積の減少をもたらす。さらに、ローラー圧縮工程における原体の予備圧縮は、大量の賦形剤を使用することなく、十分な硬度と崩壊に対する抵抗性を備えた錠剤への後続圧縮工程を、原体の圧縮性不良のために極めて困難にする。約35%よりを超えるアリスキレン医薬高負荷率錠剤は、堅牢な錠剤(例えば崩壊性、硬度)および安定した操業(例えばローラー圧縮および打錠中の粘着およびピッキング)をもたらさない。
【0009】
上記の通り、低い結晶性、吸湿性および、特に湿気の存在下での相対的に低い安定性が、特に最終生成物を単離するときに、製造工程をより複雑にする。特に、濾過および乾燥のような工程が、上記のヘミフマル酸アリスキレンの望ましくない特性のため、非常に長くなり得る。ヘミフマル酸アリスキレンはまた造粒工程に対しても敏感である。
【0010】
それ故に、アリスキレンがなす非常に大きな寄与にも係わらず、報告されている望ましくない特性が、製造経済に関する障害となっている。それ故に、化学的製造方法の最終工程に続く乾燥、濾過または造粒工程およびまた医薬製剤を製造するための段階において、扱いがより容易である、より安定な、例えば結晶形のアリスキレンの必要性がある。塩形成を介して、できるだけ結晶であり、同時に物理的かつ化学的に安定である改善された形態を発見しようと多くの試みがなされてきたが成功していない。本発明の塩、その溶媒和物およびそれらの多形形態だけが、望まれる改善された特性を示す。
【0011】
望まれる有益な特性を有するアリスキレンの塩の形成は、困難であることが証明されている。ほとんどの場合、例えば、安定性に欠ける非晶質塩が得られる(硬泡状物、蝋質または油状物)。広範な研究により、本発明のアリスキレンの塩が、アリスキレンのヘミフマル酸塩と比較して、特に有益であることが証明された。
【発明の開示】
【0012】
本発明は、式I
【化2】

の化合物と硫酸の塩、またはそれぞれそれらの非晶質形態、溶媒和物、とりわけ水和物、ならびにそれらの多形形態に関する。
【0013】
好ましい塩は、例えば硫酸塩(SO2−)および硫酸水素塩(HSO)から選択される。硫酸塩の場合、1モルの硫酸あたり2分子のアリスキレンが存在する。硫酸水素塩の場合、1モルの硫酸水素塩あたり1分子のアリスキレンが存在する。より好ましくは、本塩は硫酸水素塩である。
【0014】
好ましい塩は、例えば
非晶質形態のアリスキレンの塩;または
結晶または一部結晶形態、とりわけそれらの溶媒和物形態のアリスキレンの塩
から選択される。
【0015】
本発明の塩は、好ましくは単離されたおよび本質的に純粋な形で、例えば>95%、好ましくは>98%、本質的に>99%の純度で存在する。本発明の塩のエナンチオマー純度は>98%、好ましくは>99%である。
【0016】
ヘミフマル酸塩と比較して、非晶質形態、塩水和物のような溶媒和物、およびまた対応するそれらの多形形態を含む本発明の塩は、予期しない有益な特性を有する。ある条件下で、塩、特に塩溶媒和物を含む結晶または一部結晶塩は明確な融点を有し、それは顕著な、吸熱性融解エンタルピーと関係している。本発明の塩、特にそれらの結晶または一部結晶形態は安定であり、貯蔵および流通の間もまたヘミフマル酸アリスキレンより良好な品質を有する。
【0017】
加えて、本発明の結晶および非晶質塩の両方が、特に40%未満の相対的湿度で、ヘミフマル酸塩より吸湿性が低い。故に、本発明の塩は物理的に安定であることが証明されている。これは、主に、両方の塩の融点が同等であるにもかかわらず、本発明の塩の融解エンタルピーが著しく高いことによると考えられる。
【0018】
ある種の塩またはある種の塩溶媒和物の改善された物理化学的特性は、それらを薬学的活性物質として製造するときおよびガレヌス製剤を製造し、貯蔵し、そして適用するときの両方で非常に重要である。この方法で、改善された物理的パラメータの恒常性を始めとして、製剤のより高い品質が保証される。塩または塩溶媒和物の高い安定性はまた、仕上げ段階でより単純な工程を可能とすることにより、経済的利益を達成する可能性ももたらす。塩または塩溶媒和物の好ましい高い結晶性は、特に種々のX線法のような、選りすぐった分析法の使用を可能にし、その使用はなされるべき放出の明解で単純な分析を可能にする。この因子はまた、製造、保管および患者への投与を通して、活性物質およびガレヌス製剤の品質に大きな重要性を有する。加えて、ガレヌス製剤における活性成分を安定化するための複雑な対策を避け得る。
【0019】
こうして、一般的な知見に反して、強酸、すなわち硫酸が、アリスキレンと安定な塩を形成し得るということが、予測を超えて発見された。
【0020】
本発明は、したがって、アリスキレンの結晶、およびまた一部結晶および非晶質塩に関する。好ましくは、本塩は30%を超える、より好ましくは40%を超える、なお好ましくは50%を超える、例えば55−60%の結晶度を有する。
【0021】
該塩の溶媒和物、例えば水和物は勿論、本発明はまた本発明の塩の多形形態にも関する。
【0022】
本発明の塩の溶媒和物およびまた水和物は、例えば、各々半、一、二、三、四、五、六溶媒和物または水和物として存在できる。結晶化に使用する溶媒、例えばアセトニトリル、アルコール、とりわけメタノール、エタノール、アルデヒド、ケトン、とりわけアセトン、エステル、例えば酢酸エチル、またはアルカン、とりわけペンタン、ヘキサン、ヘプタンまたはシクロヘキサンは、結晶格子中に包埋され得る。好ましい溶媒和物は、アセトニトリルの溶媒和物である。選択した溶媒または水が、結晶化および続く工程において溶媒和物または水和物となるかまたは直接遊離塩基となるかの度合いは、一般に予測不可能であり、操作条件およびアリスキレンと選択した溶媒、とりわけアセトニトリルの間の種々の相互作用の組合せに依存する。塩、溶媒和物および水和物、ならびに対応する塩溶媒和物または塩水和物の形の得られる結晶または非晶質固体の各安定性は、実験で確認しなければならない。それゆえに、これらの状況下で異なる結晶固体および異なる非晶質物質が製造され得るため、得られる固体の化学組成および分子の化学量論的比率のみに焦点を当てることは不可能である。
【0023】
結晶構造中の溶媒または水分子が強い分子間力により結合しており、それによりこれらの結晶の構造形成の必須要素となり、それは一部非常に安定であるため、塩の溶媒和物または水和物が好ましい。これは、形成された全ての溶媒和物が不安定であるヘミフマル酸塩と極めて対照的である。しかしながら、溶媒または水分子もまたある程度結晶格子内に存在し、それはむしろ弱い分子間力で結合している。このような分子は、多かれ少なかれ結晶構造形成に関与しているが、低いエネルギー効果に過ぎない。非晶質固体中の溶媒または水含量は、一般に、結晶溶媒和物または水和物におけるのと同様明確に決定できるが、乾燥および環境条件に大きく依存する。対照的に、安定な溶媒和物または水和物の場合、医薬活性物質と溶媒または水の間に明らかな化学量論比が存在する。多くの場合、これらの比率は完全には化学量論値を満たさず、通常いくらかの結晶欠陥のために、理論値と比較して低い値となる。より弱く結合している水についての有機分子対溶媒または水分子の比率は、例えば、二、三または四水和物となる場合を含めて、相当程度変化する。他方で、非晶質固体において、溶媒または水の分子構造分類は化学量論的ではないが、分類は偶然によって化学量論的となることもある。
【0024】
ある場合、溶媒または水分子の正確な化学量論を分類することは、層構造が形成され、そのために包埋されている溶媒または水分子が明確な形で測定できないため、不可能である。
【0025】
一つの好ましい態様において、3部の塩に対して2部の溶媒和物が存在する。
同一の化学組成を有する結晶固体について、種々の生成結晶格子は多形という用語により説明される。
【0026】
本明細書中での、本発明の塩についての全ての言及は、適当であり、好都合である限り、対応する溶媒和物、例えば水和物、および多形修飾、およびまた非晶質形も意味すると理解すべきである。
【0027】
本塩の粉末のX線回折図は、多くの個別のX線反射、および非結晶または非晶質部分の信号を示す。結晶度は驚くほど高い。
【0028】
結晶の構造を決定するためのこの工程は、測定する結晶の高い物理的、化学的およびエナンチオマー純度のような通常の条件下で、分子または原子レベルで行うべき構造、すなわち基本セルのシンメトリーおよびサイズ、原子位置および温度因子の明らかな決定を可能にし、そして確認されたセル容積から、X線密度が分子量に基づき示される。同時に、X線構造決定は、その品質の詳細を提供する。
【0029】
開放試験容器で、T=10K・min−1の加熱速度で、97.1℃および39.3J・g−1の融解エンタルピーを有する。示す融点は、開放試験容器でのみ測定できる融点である。
【0030】
これら2つの熱力学的特徴は、これら2つの対応するデータ、すなわち開放系で96.6℃の融点および28.9J・g−1の融解エンタルピーを有するヘミフマル酸と比較して、有利な物理的特性を説明する。これらの熱力学的データは、この結晶格子の高い安定性を証明している。それらは、アリスキレンの硫酸水素塩の特別な物理的および化学的抵抗性の根拠である。
【0031】
臭化カリウム圧縮錠におけるアリスキレンの硫酸水素塩の赤外線吸収スペクトルは、逆数波数(cm−1)で示す以下の顕著なバンドを示す:吸収帯の強度は以下の通りである:(w)=弱い;(m)=中程度;および(st)=強い強度。赤外線スペクトルの測定は、同様に、Bruker Optics, Germanyの顕微鏡Hyperionを使用した透過型FTIR顕微鏡の手段で実施する。
ATR−IRの全吸収帯についての許容誤差は±2cm−1である。3353(br)、3078、2960、2935、2876、1660(C=O)、1516(アミド(amid)II)、1470、1444、1425、1389、1371、1260、1234(アリール−O)、1191、1163、1140、1047、872、809、768、723
【0032】
アリスキレンの硫酸水素塩のさらなる特徴付けを、X線粉末パターンにより決定する格子間(interlattice)平面間隔を使用して行う。X線粉末パターンの測定は、反射配置のScintag XDS2000粉末回折計で、Cu−Ka1+2放射とエネルギー分散型ディテクターを室温で使用して行った。アリスキレンの硫酸水素塩の好ましい特徴付けは、確認されたX線回折図の格子間平面間隔(d)から得て、ここで、以下において、平均値を適当な誤差限界と共に示す。
【0033】
X線回折図における最強の反射は、以下の格子間平面間隔を示す:
d([Å])(±0.1Å):21.3、12.4、10.7、10.1、8.4、7.9、6.7、6.0、5.3、4.9、4.7、4.5、4.4、4.1。
【0034】
乾燥、篩い、粉砕のような物理化学的工程、および、医薬賦形剤と共に行う製剤(galenic)工程、すなわち、混合、造粒、噴霧乾燥、打錠の両方において、純粋活性物質の品質に関する必須の特性は、問題の環境の温度および相対的湿度に依存するこの活性物質の水吸収または水損失である。ある種の製剤で、遊離および結合水が、間違いなく賦形剤と共に挿入され、それと共にあるいはそれに代えて水が、各製剤工程に特有の理由のために、加工中の混合物に添加される。この方法で、医薬活性物質は、種々の操作活動(部分蒸気圧)の温度によって、かなり長い時間遊離水に曝される。
【0035】
この特性の明らかな特徴付けが、動的水蒸気吸着(Surface Measurement Systems LTD, Marlow, Buckinghamshire, UKのDVS)を使用した予定された間隔にわたるおよび予定された相対的湿度での等温測定の手段により達成する。表4は、9.5mgのアリスキレンの硫酸水素塩のサンプルで4時間の期間の、25℃での相対的湿度を関数とした質量変化、すなわち水吸収または損失を説明する。以下の相対的湿度の変化のサイクルを示す:40−0;0−95%相対的湿度:
【0036】
【表1】

【0037】
熱重量分析に基づくこの収着法の測定誤差は約0.1%である。それ故に、アリスキレンの硫酸水素塩は、医薬製剤の観点から現実的である用いた条件下で、40%を超える相対的湿度で顕著な水吸収または損失を示す。これは、ヘミフマル酸塩の示される特性とかなりの程度で同じであるが、40%以下の相対的湿度で、アリスキレンの硫酸水素塩はヘミフマル酸塩程多くの水を取りこまない。この特性は、化学製造の最終段階および種々の投与形態の全製剤段階においてまた重要である。
【0038】
硫酸水素塩の有利な特性によって、この塩は直接対応する製剤を形成するための圧縮に適する。
【0039】
硫酸水素塩の良好な物理化学的特性に加えて、医薬の全体的製造工程を改善し単純化するためにこの塩を使用することも有利である。例えば、EP678503Aに例えば開示の方法を用いるとき、ヘミフマル酸塩は、N−脱保護の後別の工程で形成しなければならない。しかしながら、硫酸を用いるとき、N−脱保護および塩形成は一工程で実施できるので、製造工程をより効率的にする。
本発明のさらなる目的は、本発明の塩の製造である。
【0040】
それらの非晶質または結晶形態を含む本発明の塩は、以下の通りに製造できる:
塩を形成するために、二つの反応物、すなわちアリスキレン塩基およびそれぞれの酸が十分に可溶性である溶媒系で行う。結晶化または沈殿を達成するために、得られる塩がわずかしか溶けないか全く溶けない溶媒または溶媒混合物中で行うことが好都合とされる。本発明の塩のための一つの方法は、この塩が非常に可溶性である溶媒を使用し、そして、その後、貧溶媒、すなわち、この溶液に得られる塩が低い溶解性しか有しない溶媒を添加する。塩結晶化のためのさらなる別法は、塩溶液を、例えば、必要であれば減圧下加熱により、または溶媒を、例えば室温でゆっくり蒸発させることによる濃縮、または種晶の添加による種晶添加により、または水和物形成に必要な水活性の誘発から成る。
【0041】
使用できる溶媒は、例えばC−C−アルキルニトリル、とりわけアセトニトリル、C−C−アルカノール、好ましくはエタノールおよびイソプロパノール、エステルs、とりわけC−C−アルカンカルボン酸−C−C−アルキルエステル、例えば酢酸エチルまたは酢酸イソプロピル、ジ−(C−C−アルキル)−エーテル、例えばtert.−ブチルメチルエーテル、さらにテトラヒドロフラン、およびC−C−アルカン、とりわけペンタン、ヘキサン、シクロヘキサンまたはヘプタンおよびこれらの溶媒と水の混合物である。最も好ましい溶媒はアセトニトリルである。
【0042】
水和物を製造するために、溶解および結晶化工程を特に使用するか、または水平衡化結晶化工程を使用する。
【0043】
溶解および結晶化工程は
(i) アリスキレン遊離塩基を有機溶媒に溶解し、
(ii) 好ましくは水溶液としての硫酸を、(i)で得た溶液に添加し、
(iii) 溶液を静置して結晶化を誘発させ、
(iv) 結晶を濾過し、乾燥させて、塩を得る
ことを特徴とする。
【0044】
溶解工程(i)において、用いる有機溶媒は、有利にはアルコール、例えばエタノールまたはイソプロパノール、またはアルキルニトリル、とりわけアセトニトリル、および水である。必要であれば、溶媒を室温より高く、例えば25〜60℃、より好ましくは30〜50℃に加熱してよい。
【0045】
工程(ii)において、用いる水溶液は、有利には硫酸の10〜30%、より好ましくは15〜25%、例えば20%溶液である。
【0046】
工程(iii)において、溶液を、有利には溶媒がゆっくり蒸発するように静置する。これは、好ましくは室温以下に、より好ましくは−10〜20℃に、さらに好ましくは−5〜10℃に、最も好ましくは0〜5℃に冷却することにより行う。溶液の濃縮はまた室温より高く、例えば>25〜100℃、より好ましくは30〜70℃に加温することにより行い得る。典型的に8〜48時間、好ましくは17〜36時間、最も好ましくは20〜30時間静置する。
【0047】
工程(iv)において、乾燥は、好ましくは高温で、より好ましくは20〜50℃で、最も好ましくは30〜40℃で行う。圧力は、好ましくは1〜100mbar、好ましくは10〜50mbar、より好ましくは20〜40mbar、例えば30mbarであるように選択する。乾燥は、典型的に恒常重量が得られるまで行う。乾燥条件によって、乾燥は5〜48時間、好ましくは10〜24時間、例えば15〜20時間かかり得る。
【0048】
塩形成法もまた本発明の対象である。
好ましい一つの方法において、結晶化を、少なくとも1個の種晶の添加により最適化、例えば加速してよい。
【0049】
本発明の塩は、例えば医薬製剤の形で使用してよく、それは、本活性物質、例えば治療的有効量の本活性物質を、所望により、経腸、例えば経口、または非経腸投与に適する薬学的に許容される担体、例えば無機または有機の、固体または所望によりまた液体の薬学的に許容される担体と共に含む。
【0050】
本発明は、特に、所望により薬学的に許容される担体と一緒の、好ましくは経口投与用の、とりわけ固体投与単位の、医薬組成物に関する。
【0051】
この種の医薬製剤は、AT受容体の遮断により阻害され得る疾患または状態、例えば
(a) 高血圧、鬱血性心不全、腎不全、とりわけ慢性腎不全、経皮経管的血管形成術後の再狭窄、および冠動脈バイパス術後の再狭窄;
(b) アテローム性動脈硬化症、インスリン抵抗性およびシンドロームX、2型真性糖尿病、肥満、腎症、腎不全、例えば慢性腎不全、甲状腺機能低下症、心筋梗塞(MI)後生存、冠動脈心疾患、高齢者の高血圧、家族性異脂肪血症性高血圧、コラーゲン形成増加、線維症、および高血圧後のリモデリング(本組合せの抗増殖効果)、高血圧を伴うまたは伴わないすべてのこのような疾患または状態;
(c) 高血圧を伴うまたは伴わない内皮機能不全、
(d) 高脂血症、高リポタンパク質血症、アテローム性動脈硬化症および高コレステロール血症、および
(e) 緑内障
から成る群から選択される疾患または状態の予防および処置のために使用し得る。
【0052】
主な使用は、高血圧および鬱血性心不全、ならびに心筋梗塞後遺症の処置用である。
当分野の技術者は、関連するおよび標準的動物試験モデルを選択し、本明細書に示す治療適応および有益な効果を確認することが十分に可能である。
【0053】
本発明の塩の代表例または本発明に従い使用する活性剤の組合せの投与により発揮される医薬活性は、例えば、本分野で既知の対応する薬理学的モデルを使用して証明できる。当分野の技術者は、適切な動物試験モデルを選択し、本明細書に示す治療適応および有益な効果を確認することが十分に可能である。
【0054】
薬理効果は、通常塩食餌または塩負荷(ラット餌中4−8%塩または飲料水として1%NaCl)のいずれかに維持した、デオキシコルチコステロン酢酸塩ラット(DOCA−塩)および本態性高血圧ラット(SHR)を含む種々の動物モデルにおいて評価する。
【0055】
DOCA−塩試験モデルは、急性または慢性試験プロトコールのいずれかを利用する。急性試験法は、留置大腿動脈および静脈カテーテルを有するラットを使用した6時間実験期間にわたる種々の試験物質の効果の評価を含む。急性試験法は、DOCA−塩高血圧の確立相中血圧低下する試験物質の能力を評価する。対照的に、慢性試験法は、DOCA−塩高血圧の発生相に中の血圧蔵相を予防または遅延する試験物質の能力を評価する。それ故に、血圧は、慢性試験法において無線送信機の手段によりモニターする。無線送信機を、DOCA−塩処置をする前、すなわち、高血圧誘発前に、ラットの腹部大動脈に外科的にインプラントする。血圧を、6週間までの期間にわたり慢性的にモニターする(DOCA−塩投与の凡そ1週間前から投与後5週間)。
【0056】
ラットを酸素吸入中2−3%イソフルランと続くアミタールナトリウム(アモバルビタール)100mg/kg、ipで麻酔する。麻酔レベルを一定リズムの呼吸パターンにより評価する。
【0057】
急性試験法
ラットにDOCAインプラントと同時に片側腎摘出を行う。毛を左脇腹および首の後にクリップで留め、滅菌アルコールスワブおよびポビドン/ヨウ素で拭く。手術中、ラットを体温を37℃に維持するために加温パッド上に置く。
【0058】
20mm切開を皮膚および下の筋肉に行い、左腎臓を露出させる。腎臓を周辺組織から離し、露出させ、2本の結紮糸(3−0絹)を、腎臓動脈および大動脈への分岐点に近位の静脈の周りをしっかり結ぶ。次いで腎臓動脈および静脈を切断し、腎臓を摘出する。筋肉および皮膚創傷を4−0絹糸およびステンレススチール創傷クリップで各々閉じる。同時に、15mm切開を首の後に行い、酢酸デオキシコルチコステロン(100mg/kg)含有3週間放出ペレット(Innovative Research of America, Sarasota, Florida)を皮下にインプラントする。次いで、創傷をステンレススチールクリップで閉じ、両方の創傷をポビドン/ヨウ素で処置する;ラットにプロカインペニシリンG(100,000U)およびブプレノルフィン(0.05−0.1mg/kg) s.c.の術後筋肉内注射をする。直ぐにラットを1%NaCl+0.2%KCl飲料水で飼育する;この処置条件を少なくとも3週間続け、その時点で動物は高血圧になっており、実験に利用可能である。
【0059】
実験の48時間前、動物をイソフルランで麻酔し、動脈圧測定、採血および試験化合物投与のための大腿動脈および静脈にカテーテルをインプラントする。ラットを48時間回復させ、その間、実験チャンバーとしても働くPlexiglasケージに入れる。
【0060】
慢性試験法
ラットに片側腎摘出およびDOCAと塩の開始7−10日前に無線送信機をインプラントする以外、上記と同じ方法である。加えて、ラットは大腿動脈および静脈カテーテルを設置するための手術を受けない。無線送信機を、M.K. Bazil, C. Krulan and R.L. Webb. in J.Cardiovasc. Pharmacol. 22:897-905, 1993に記載のようにインプラントする。
【0061】
次いで、プロトコールを血圧、心拍数等を予定された時点で測定するためのコンピューター上に設定する。ベースラインデータを種々の時点でおよび種々の感覚で採取する。例えば、ベースラインまたは投与前値は、通常、医薬投与前の、3回の連続した、24時間にわたるデータ採取および平均化から成る。
【0062】
血圧、心拍数および活動を、医薬投与前、投与中および投与後の種々の予定された時点で決定する。全測定を、拘束していない平静の動物で行う。バッテリー寿命から決定される最大実験期間は、最大9ヶ月であろう。この期間の試験について、ラットに1日2回を超えず経口で投与するか(1−3ml/kg 媒体)または医薬を飲料水を介してまたは餌に混ぜて投与する。より短い期間、すなわち、最大8週間までの試験について、医薬を皮下にインプラントした浸透圧ミニポンプを介して投与する。浸透圧ミニポンプは、医薬送達速度および時間を基に選択する。アリスキレン投与量(遊離塩基)は1〜10mg/kg/日の範囲である。
【0063】
加えて、SHRを、アリスキレンの効果の試験のために利用する。SHRの高血圧バックグラウンドを、レニンアンギオテンシン系(RAS)を抑制するための慢性塩負荷またはSHRのRASを活性化するための慢性塩涸渇のいずれかで修飾する。これらの操作は、種々の試験物質の効果をより広範に評価するために行う。本態性高血圧ラット(SHR)で行う実験は、Taconic Farms, Germantown, New York(Tac:N(SHR)fBR)により提供される。無線装置(Data Sciences International, Inc., St. Paul, Minnesota)を、14〜16週齢の間の年齢の全試験動物の下部腹部大動脈にインプラントする。全SHRを、実験開始前、少なくとも2週間、外科的インプラント工程から回復させる。心血管パラメータを無線送信機を通して連続的にモニターし、レシーバーに伝達し、そこで、その後デジタルシグナルが、コンピューター化データ獲得システムを使用して回収され、貯蔵される。血圧(平均動脈、収縮期および拡張期圧)および心拍数を、ケージに入った意識のある、自由に動け、平静のSHRにおいてモニターする。動脈圧および心拍数を、10分毎に10秒測定し、記録する。各ラットについて報告されるデータは、24時間の期間にわたり平均した平均であり、毎日集めた144−10分サンプルから成る。血圧および心拍数のベースライン値は、医薬処置開始前に取った連続3回の24時間読み取りの平均から成る。全ラットを、温度および湿度制御室に個々に入れ、12時間明暗サイクルで飼育する。
【0064】
心血管パラメータに加えて、全ラットで毎週体重を測定し、記録する。処置薬を、上記の通り飲料水中、毎日の胃管栄養法またはまたは浸透圧ミニポンプで投与する。飲料水で与えるならば、水消費を週に5回測定する。次いで、個々のラットのアリスキレン投与量(遊離塩基)を、各ラットの水消費、飲料水中の医薬物質濃度、および個々の体重に基づいて計算する。全ての飲料水中の医薬溶液を、3〜4日毎に新たに調製する。飲料水でのアリスキレン(遊離塩基)の典型的投与量は、3〜30mg/kg/日の範囲である。しかしながら、組合せ処置でのレスポンダー率が増加した場合、投与量は単剤療法で使用したのと同じである。
【0065】
医薬を胃管栄養法により投与するとき、アリスキレン(遊離塩基)の投与量は、1〜50mg/kg/日の範囲である。
【0066】
慢性試験が完了すると、SHRまたはDOCA−塩ラットを麻酔し、心臓を直ぐに摘出する。分離し、動脈付属体の除去後、左心室および左+右心室(全)を秤量し、記録する。次いで、左心室および全心室重量を体重に対して標準化し、記録する。血圧および心重量について報告する全値は、群の平均+semを示す。
【0067】
欠陥機能および構造を、本組合せの有益な効果を評価するために、処置後評価する。SHRを、Intengan HD, Thibault G, Li JS, Schiffrin EL, Circulation 100(22):2267-2275, 1999により記載の方法に従い、試験する。同様に、DOCA−塩ラットにおける欠陥機能を評価するための方法は、Intengan HD, Park JB, Schiffrin, EL, Hypertension 34 (4 Part 2): 907-913, 1999に記載されている。
【0068】
望むのであれば、さらに薬理学的活性物質を含み得る本医薬製剤は、それ自体既知の方法で、例えば慣用の混合、造粒、コーティング、溶解または凍結乾燥工程の手段により製造し、約0.1%から100%、とりわけ約1%から約50%の、凍結乾燥物では100%までの活性物質を含む。
【0069】
本発明は、同様に本発明の塩を含む組成物に関する。
本発明は、同様に、好ましくは、とりわけレニン阻害により調節され得る疾患または状態の予防およびまた処置用医薬製剤の製造のための本発明の塩の使用に関する。主な使用は、高血圧、腎不全、左室機能不全および心不全の処置用である。
【0070】
本発明は、同様に、処置を必要とするヒト患者を含む患者に、治療的有効量の本発明の塩を、所望により、心血管疾患および関連状態および前記または後記の疾患の処置のための少なくとも1種の組成物と組み合わせて投与することを特徴とする、レニン阻害により調節され得る疾患または状態を予防または処置するための使用に関する。
【0071】
本発明は、同様に、本発明の塩またはいずれの場合もそれらのその薬学的に許容される塩を、少なくとも1種の心血管疾患および関連状態および前記および後記の疾患の処置用組成物、または、いずれの場合もそれらの薬学的に許容される塩と組み合わせて含む、組合せ、例えば医薬組合せに関する。心血管疾患および関連状態および前記および後記の疾患の処置のための他の組成物、またはいずれの場合もその薬学的に許容される塩との組合せは、同様に本発明の目的である。
【0072】
本組合せは、例えば:
(i) HMG−Co−Aレダクターゼ阻害剤またはその薬学的に許容される塩、
(ii) アンギオテンシン変換酵素(ACE)阻害剤またはその薬学的に許容される塩、
(iii) カルシウムチャネルブロッカーまたはその薬学的に許容される塩、
(iv) アルドステロンシンターゼ阻害剤またはその薬学的に許容される塩、
(v) アルドステロンアンタゴニストまたはその薬学的に許容される塩、
(vi) 2機能性アンギオテンシン変換酵素/中性エンドペプチダーゼ(ACE/NEP)阻害剤またはその薬学的に許容される塩、
(vii) エンドセリンアンタゴニストまたはその薬学的に許容される塩、
(viii) アンギオテンシンII受容体ブロッカー(ARB)またはその薬学的に許容される塩、および
(ix) 利尿剤またはその薬学的に許容される塩
から成る群から選択される、組成物と製造し得る。
【0073】
HMG−Co−Aレダクターゼ阻害剤(β−ヒドロキシ−β−メチルグルタリル−コエンザイムAレダクターゼ阻害剤とも呼ばれる)は、血中のコレステロールを含む脂質の濃度の低下に使用できる活性剤と理解される。
【0074】
HMG−Co−Aレダクターゼ阻害剤のクラスは、種々の構造特性を有する化合物を含む。例えば、アトルバスタチン、セリバスタチン、コンパクチン、ダルバスタチン(dalvastatin)、ジヒドロコンパクチン、フルインドスタチン(fluindostatin)、フルバスタチン、ロバスタチン、ピタバスタチン、メバスタチン、プラバスタチン、リバスタチン(rivastatin)、シンバスタチン、およびベロスタチン(velostatin)、または、いずれの場合も、それらの薬学的に許容される塩から成る群から選択される化合物を特記し得る。
【0075】
好ましいHMG−Co−Aレダクターゼ阻害剤は市販されている薬剤であり、最も好ましいのはフルバスタチンおよびピタバスタチンまたは、いずれの場合も、それらの薬学的に許容される塩である。
【0076】
アンギオテンシンIからアンギオテンシンIIへの酵素的分解の、いわゆるACE−阻害剤(アンギオテンシン変換酵素阻害剤とも呼ばれる)による阻害が、血圧制御のための変法として成功しており、故に、鬱血性心不全の処置のための処置法も使用可能とする。
【0077】
ACE阻害剤のクラスは、種々の構造特性を有する化合物を含む。例えば、アラセプリル、ベナゼプリル、ベナゼプリラート、カプトプリル、セロナプリル、シラザプリル、デラプリル、エナラプリル、エナプリラート(enaprilat)、フォシノプリル、イミダプリル、リシノプリル、モベルトプリル、ペリンドプリル、キナプリル、ラミプリル、スピラプリル、テモカプリル、およびトランドラプリル、または、いずれの場合も、それらの薬学的に許容される塩から成る群から選択される化合物を特記し得る。
【0078】
好ましいACE阻害剤は市販されている薬剤であり、最も好ましいのはベナゼプリルおよびエナラプリルである。
【0079】
CCBのクラスは、本質的にジヒドロピリジン類(DHP)および非DHP類、例えばジルチアゼム型およびベラパミル型CCBを含む。
【0080】
該組合せで有用なCCBは、好ましくは、アムロジピン、フェロジピン、リオシジン(ryosidine)、イスラジピン、ラシジピン、ニカルジピン、ニフェジピン、ニグルジピン、ニルジピン、ニモジピン、ニソルジピン、ニトレンジピン、およびニバルジピンから成る群から選択されるDHP代表例であり、そして、好ましくはフルナリジン、プレニラミン、ジルチアゼム、フェンジリン、ガロパミル、ミベフラジル、アニパミル、チアパミルおよびベラパミル、およびいずれの場合も、それらの薬学的に許容される塩から成る群から選択される、非DHP代表例である。全てのこれらのCCBは、例えば抗高血圧剤、抗狭心症剤または抗不整脈剤として、治療的に使用である。好ましいCCBは、アムロジピン、ジルチアゼム、イスラジピン、ニカルジピン、ニフェジピン、ニモジピン、ニソルジピン、ニトレンジピン、およびベラパミル、または、例えば具体的にCCBによって、それらの薬学的に許容される塩を含む。DHPとしてとりわけ好ましいのはアムロジピンまたはその薬学的に許容される塩、とりわけベシル酸塩である。とりわけ好ましい非DHP代表例は、ベラパミルまたはその薬学的に許容される塩、とりわけ塩酸塩である。
【0081】
アルドステロンシンターゼ阻害剤は、コルチコステロンからアルドステロンに、コルチコステロンをヒドロキシル化して18−OH−コルチコステロンを形成し、そして18−OH−コルチコステロンをアルドステロンに変換することにより変換する酵素である。高血圧および原発性アルドステロン症の処置に適用されることが既知であるアルドステロンシンターゼ阻害剤のクラスは、ステロイド性および非ステロイド性アルドステロンシンターゼ阻害剤の両方を含み、後者が好ましい。
【0082】
市販のアルドステロンシンターゼ阻害剤または保健当局により認可されているアルドステロンシンターゼ阻害剤が好ましい。
【0083】
アルドステロンシンターゼ阻害剤のクラスは、種々の構造特性を有する化合物を含む。例えば、非ステロイド性アロマターゼ阻害剤アナストロゾール、ファドロゾール(それらの(+)−エナンチオマーを含む)、ならびにステロイド性アロマターゼ阻害剤エキセメスタン、または、いずれの場合も、適用可能であれば、それらの薬学的に許容される塩から成る群から選択される化合物を特記し得る。
【0084】
最も好ましい非ステロイド性アルドステロンシンターゼ阻害剤は、式
【化3】

の、ファドロゾールの塩酸塩の(+)−エナンチオマーである(US特許4617307および4889861)。
【0085】
好ましいステロイド性アルドステロンアンタゴニストは、式
【化4】

のエプレレノンまたはスピロノラクトンである。
【0086】
好ましい2機能性アンギオテンシン変換酵素/中性エンドペプチダーゼ(ACE/NEP)阻害剤は、例えば、オマパトリラート(参照EP629627)、ファシドトリルまたはファシドトリレート、または、適用可能であれば、それらの薬学的に許容される塩である。
好ましいエンドセリンアンタゴニストは、例えば、ボセンタン(参照EP526708A)、さらに、テゾセンタン(参照WO96/19459)、またはいずれの場合も、それらの薬学的に許容される塩である。
【0087】
本発明の組合せにおいて用い得る適当なアンギオテンシンII受容体ブロッカーは、種々の構造特性を有するAT−受容体アンタゴニストを含み、好ましいのは非ペプチド構造を有するものである。例えば、バルサルタン(EP443983)、ロサルタン(EP253310)、カンデサルタン(EP459136)、エプロサルタン(EP403159)、イルベサルタン(EP454511)、オルメサルタン(EP503785)、タソサルタン(EP539086)、テルミサルタン(EP522314)、式
【化5】

のE−4177と命名される化合物、式
【化6】

のSC−52458と命名される化合物、および式
【化7】

の化合物ZD−8731と命名される化合物、または、いずれの場合も、それらの薬学的に許容される塩から成る群から選択される化合物を、特記し得る。
【0088】
好ましいAT−受容体アンタゴニストは市販されている薬剤であり、最も好ましいのはバルサルタン、またはその薬学的に許容される塩である。
【0089】
利尿剤は、例えば、クロロチアジド、ヒドロクロロチアジド、メチルクロロチアジド(methylclothiazide)、およびクロルタリドンから成る群から選択されるチアジド誘導体である。最も好ましいのはヒドロクロロチアジドである。
【0090】
好ましくは、本発明の組合せの併用で治療的有効量を、同時にまたは任意の順番で連続的に、別々にまたは固定された組み合わせで投与できる。
【0091】
一般名または商品名により同定した活性剤の構造は、標準概論“The Merck Index”の現行版またはデータベース、例えばPatents International(例えばIMS World Publications)から取り得る。それらの対応する内容は、引用より本明細書に包含する。当業者は、活性剤を同定することが十分に可能であり、そして、これらの引用文献に基づき、製造し、医薬適用および特性を、標準試験モデルで、インビトロおよびインビボの両方で試験できる。
【0092】
対応する活性成分またはそれらの薬学的に許容される塩はまた溶媒和物、例えば、水和物または結晶化に使用した他の溶媒を含む、形でも使用できる。
【0093】
組み合わせるべき化合物は、薬学的に許容される塩として存在できる。これらの化合物が、例えば、少なくとも1個の塩基性中心を有するならば、それらは酸付加塩を形成できる。対応する酸付加塩はまた、望むならば、さらに存在する塩基性中心と共に形成できる。酸基(例えばCOOH)を有する化合物も塩基と塩を形成できる。
【0094】
一つのバリエーションとして、本発明は、同様に、例えば、本発明に従い組み合わせるべき成分が、独立して、または、成分の異なった量の異なった組合せ製剤の使用により、すなわち、同時にまたは異なる時点で投与できる点で、“複数パーツのキット”に関する。次いで、複数パーツのキットを、例えば同時にまたは時間的にずれて、すなわち、異なる時点で、複数パーツのキットのいずれかのパーツと同じまたは異なる間隔で投与できる。好ましくは、時間間隔は、複数パーツの組合せ使用の処置疾患または状態に対する効果が、これらの成分の何れか一つのみの使用により得られるであろう効果よりも大きいように選択する。
【0095】
本発明は、さらに、本発明の組合せを、同時の、別々のまたは連続使用のための指示書と共に含む、市販パッケージに関する。
【0096】
アリスキレン(遊離塩基)の投与量は、投与の形態、種、年齢および/または個々の状態のような種々の因子により得る。例えば、体重約75kgのヒトを含む温血動物に投与すべき投与量、とりわけレニン活性の阻害、例えば、血圧低下に有効な投与量は、約3mgから約3g、好ましくは約10mgから約1g、例えば、20から200mg/ヒト/日であり、好ましくは、例えば、同じサイズであってよい1日4回までの分割量に分ける。通常、小児には成体量の約半量を投与する。各個体について必要な投与量は、例えば、活性成分の血清濃度を測定し、最低レベルに調節することによりモニターできる。1回量は、例えば、遊離塩基に基づいて、75mg、150mgまたは300mg/成体患者を含む。
【0097】
本発明を、特に、実施例により説明し、そしてまた実施例において命名した新規化合物およびその製造法に関する。
以下の実施例は、如何なる方法でも本発明を限定することなく、本発明を説明するために提供する。
【実施例】
【0098】
実施例1:
(2(S),4(S),5(S),7(S)−N−(3−アミノ−2,2−ジメチル−3−オキソプロピル)−2,7−ジ(1−メチルエチル)−4−ヒドロキシ−5−アミノ−8−[4−メトキシ−3−(3−メトキシ−プロポキシ)フェニル]−オクタンアミドの硫酸水素塩の製造
11g(2(S),4(S),5(S),7(S)−N−(3−アミノ−2,2−ジメチル−3−オキソプロピル)−2,7−ジ(1−メチルエチル)−4−ヒドロキシ−5−アミノ−8−[4−メトキシ−3−(3−メトキシ−プロポキシ)フェニル]−オクタンアミド遊離塩基(0.019mol)をアセトニトリル(10ml)に溶解した。この溶液に、撹拌しながら、硫酸水溶液(4.9g、20%溶液、0.01mol)を滴下した。溶液を1時間にわたり冷却し(0−5℃)、数時間、典型的に10〜48時間この温度に維持して、結晶化を誘発させた。結晶を濾過し、真空乾燥させ(ハウスバキューム39mbar、40℃、18時間)、8.21gの無色塩を得る。
実施例1に従い製造したアリスキレンの硫酸塩の、開放ルツボ中の融点は、96.6℃(10K/min 加熱速度)であり、28.9J・g−1の融解エンタルピーである。
【0099】
実施例1に従い製造した塩のエナンチオマー純度を、立体特異的HPLC法により測定する。立体特異的分離をキラルカラム(キラルAGP)により達成する。エナンチオマー純度は、ee=100%と測定される。
Scintag XDS2000粉末回折計で取ったX線粉末パターンからの格子間平面間隔の計算は、アリスキレンの硫酸塩のこのバッチについて最も重要な線について以下の通りである:
d([Å]):21.3、12.4、10.7、10.1、8.4、7.9、6.7、6.0、5.3、4.9、4.7、4.5、4.4、4.1
【0100】
DMSO−daでのH NMRスペクトルの測定は、以下の顕著なピークを示す:
1H-NMR(400 MHz, DMSO-d6):0.81(d, 6.8Hz, 3H), 0.82(d, 6.8Hz, 3H), 0.86(d, 6.6Hz, 6H, H-C(l), H-C(m)およびH-C(9));1.06(s, 6H, h, h');1.25-1.8(m, 6H, H-C(3, 6, 7, 8));1.95(quintet, 2H, H-C(d));2.24(m, 1H, H-C(2));2.45(AB, 2H, H-C(b));2.69(br.s, 1H, H-N(n'));3.07(dd, 5.5Hz, 13.1Hz, 2H)および3.31(dd, 6.8Hz, 13.3Hz, 2H, H-C(i));3.24(s, 3H, H-C(f));3.71(s, 3H, H-C(g));3.47(t, 6.3Hz, 2H, H-C(e));3.96(t, 6.5Hz, 2H, H-C(c));5.3(br.s, 1H, OH);6.68(d, 8.1Hz, 1H, H-C(a'));6.67(d, 1.8Hz, 1H, H-C(a''));6.82(d, 8.1Hz, 1H, H-C(a));6.83および7.13(s, 各1H, H-N(n));7.46(br. t, 1H, H-N(n');7.6(非常に広いs, 3H, H3N+)。
【化8】

【0101】
元素分析は、アリスキレンの硫酸水素塩およびアセトニトリルを示す元素の以下の測定値をもたらした。誤差限界内の元素分析の発見は、式3×(C3053*HSO)+2×CHCN に対応する − アセトニトリル含有硫酸水塩(40mol%または4%g)。
実測値 C:55.00% H:8.34% N:7.57% O:23.66% S:4.60%
計算値 C:55.66% H:8.34% N:7.57% O:23.66% S:4.74%

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式I
【化1】

の化合物と硫酸の塩。
【請求項2】
硫酸水素塩としての、請求項1に記載の塩。
【請求項3】
結晶、一部結晶または非晶質形態である、請求項1または2に記載の塩。
【請求項4】
(i) 以下の格子間(interlattice)平面間隔を含むScintag XDS2000粉末回折計で測定したX線粉末パターン:
d([Å])(±0.1Å):21.3、12.4、10.7、10.1、8.4、7.9、6.7、6.0、5.3、4.9、4.7、4.5、4.4、4.1;または
(ii) 以下の波数(cm−1)で示す吸収帯を有するATR−IRスペクトル:3353(br)、3078、2960、2935、2876、1660(C=O)、1516(アミド(amid)II)、1470、1444、1425、1389、1371、1260、1234(アリール−O)、1191、1163、1140、1047、872、809、768、723
により特徴付けられる、請求項1−3のいずれかに記載の塩。
【請求項5】
溶媒和物の形である、請求項1−4のいずれかに記載の塩。
【請求項6】
アセトニトリル溶媒和物の形である、請求項5に記載の塩。
【請求項7】
水和物の形の請求項1−6のいずれかに記載の塩。
【請求項8】
(i) 結晶形;
(ii) 一部結晶形;
(iii) 非晶質形;および
(iv) 多形形態
から成る群から選択される形である、請求項1−7のいずれかに記載の塩。
【請求項9】
請求項1−8のいずれかに記載の塩および薬学的に許容される賦形剤または添加剤を含む、医薬製剤。
【請求項10】
請求項1−8のいずれかに記載の塩を、
(i) HMG−Co−Aレダクターゼ阻害剤またはその薬学的に許容される塩、
(ii) アンギオテンシン変換酵素(ACE)阻害剤またはその薬学的に許容される塩、
(iii) カルシウムチャネルブロッカーまたはその薬学的に許容される塩、
(iv) アルドステロンシンターゼ阻害剤またはその薬学的に許容される塩、
(v) アルドステロンアンタゴニストまたはその薬学的に許容される塩、
(vi) 2機能性アンギオテンシン変換酵素/中性エンドペプチダーゼ(ACE/NEP)阻害剤またはその薬学的に許容される塩、
(vii) エンドセリンアンタゴニストまたはその薬学的に許容される塩、
(viii) アンギオテンシンII受容体ブロッカー(ARB)またはその薬学的に許容される塩、および
(ix) 利尿剤またはその薬学的に許容される塩
から成る群から選択される少なくとも1種の成分と組み合わせた、請求項9に記載の医薬製剤。
【請求項11】
レニン阻害により調節できる疾患および状態の予防または処置用医薬の製造における、請求項1−8のいずれかに記載の塩の使用。
【請求項12】
(i) アリスキレン遊離塩基を有機溶媒に溶解し、
(ii) 硫酸を、好ましくは水溶液として、(i)で得た溶液に添加し、
(iii) 溶液を静置して結晶化を誘発させ、
(iv) 結晶を濾過し、乾燥させて、塩を得る
ことを特徴とする、請求項1に記載の塩の製造方法。

【公表番号】特表2009−531317(P2009−531317A)
【公表日】平成21年9月3日(2009.9.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−500755(P2009−500755)
【出願日】平成19年3月19日(2007.3.19)
【国際出願番号】PCT/EP2007/002415
【国際公開番号】WO2007/107317
【国際公開日】平成19年9月27日(2007.9.27)
【出願人】(597011463)ノバルティス アクチエンゲゼルシャフト (942)
【Fターム(参考)】