説明

アリーリデンピラゾロン色素、着色組成物、感熱転写記録用インクシート、感熱転写記録方法、カラートナー、インクジェット用インクおよびカラーフィルター

【課題】吸収がシャープで優れた分光特性および高い堅牢性を有する色素を提供すること。
【解決手段】下記式で表されるアリーリデンピラゾロン色素。


(R1、R2、R4およびR5は水素原子または1価の置換基を表し、R3は1価の置換基を表し、nは0〜4の整数を表す。R1およびR2は互いに結合して環構造を形成してもよい。)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は特定の新規なアリーリデンピラゾロン色素、および該色素を含有することを特徴とする着色組成物、感熱転写記録用インクシート、感熱転写記録方法、カラートナー、インクジェット用インクおよびカラーフィルターに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、画像記録材料としては、特にカラー画像を形成するための材料が主流であり、具体的には、インクジェット方式の記録材料、感熱転写方式の記録材料、電子写真方式の記録材料、転写式ハロゲン化銀感光材料、印刷インク、記録ペン等が盛んに利用されている。また、撮影機器ではCCDなどの撮像素子において、ディスプレイではLCDやPDPにおいて、カラー画像を記録、再現するためにカラーフィルターが使用されている。
カラー画像記録材料やカラーフィルターでは、フルカラー画像を再現あるいは記録するために、いわゆる加法混色法や減法混色法の3原色の着色剤(色素や顔料)が使用されている。しかしながら、好ましい色再現域を実現できる吸収特性を有し、且つさまざまな使用条件に耐えうる堅牢な着色剤がないのが実情であり、改善が強く望まれている。
【0003】
感熱転写記録には、支持体(ベースフィルム)上に熱溶融性インク層を形成させた感熱転写材料をサーマルヘッドにより加熱し該インクを溶融して受像材料上に記録する方式と、支持体上に熱移行性色素を含有する色素供与層を形成させた感熱転写材料をサーマルヘッドにより加熱して色素を受像材料上に熱拡散転写させる方式とがある。後者の感熱転写方式は、サーマルヘッドに加えるエネルギーを変えることにより色素の転写量を変化させることができるために階調記録が容易であり、高画質のフルカラー記録には特に有利である。しかしこの方式に用いる熱移行性色素には種々の制約があり、必要とされる性能を全て満たすものは極めて少ない。
【0004】
必要とされる性能としては、例えば、色再現上好ましい分光特性を有すること、転写し易いこと、光や熱に堅牢であること、種々の化学薬品に堅牢であること、合成が容易であること、感熱転写用記録材料を作りやすいことなどがある。しかしながら、色再現上好ましい分光特性を有し、光や熱に堅牢であるとして提案されている従来の特定の色素(例えば、特許文献1および2参照)は、満足できるレベルではなく、さらなる改良が強く望まれている。
【0005】
電子写真方式を利用したカラーコピア、カラーレーザープリンターにおいては、一般に樹脂粒子中に着色剤を分散させたトナーが広く用いられている。カラートナーに要求される性能として、好ましい色再現域を実現できる吸収特性、特にオーバーヘッドプロジェクター(以下OHPという)で使用される際に必要とされる高い透過性(透明性)、および使用される環境条件下における各種堅牢性が挙げられる。顔料を着色剤として粒子に分散させたトナーが提案されているが(例えば特許文献3〜5参照)、これらのトナーは耐光性には優れるが、不溶性であるため凝集しやすく、透明性の低下や透過色の色相変化に問題がある。一方、特定の色素を着色剤として使用したトナーも提案されているが(例えば特許文献6〜8参照)、これらのトナーは逆に透明性が高く、色相変化はないものの耐光性に問題がある。
【0006】
インクジェット記録方法は、材料費が安価であること、高速記録が可能なこと、記録時の騒音が少ないこと、さらにカラー記録が容易であることから、急速に普及し、さらに発展しつつある。
インクジェット記録方法には、連続的に液滴を飛翔させるコンティニュアス方式と画像情報信号に応じて液滴を飛翔させるオンデマンド方式が有り、その吐出方式にはピエゾ素子により圧力を加えて液滴を吐出させる方式、熱によりインク中に気泡を発生させて液滴を吐出させる方式、超音波を用いた方式、あるいは静電力により液滴を吸引吐出させる方式がある。また、インクジェット記録用インクとしては、水性インク、油性インク、あるいは固体(溶融型)インクが用いられる。
このようなインクジェット記録用インクに用いられる着色剤に対しては、溶剤に対する溶解性あるいは分散性が良好なこと、高濃度記録が可能であること、色相が良好であること、光、熱、環境中の活性ガス(NOx、SOx、オゾンなどの酸化性ガス)に対して堅牢であること、水や薬品に対する堅牢性に優れていること、受像材料に対して定着性が良く滲みにくいこと、インクとしての保存性に優れていること、毒性がないこと、純度が高いこと、さらには、安価に入手できることが要求されている。しかしながら、これらの要求を高いレベルで満たす着色剤を捜し求めることは、極めて難しい。特に、良好なマゼンタの色相を有し、溶解性が高く、光、湿度、熱に対して堅牢であること、なかでも光に対して高堅牢であることが強く望まれている。
【0007】
カラーフィルターは高い透明性が必要とされるために、色素を用いて着色する染色法と呼ばれる方法が行われてきた。たとえば、被染色性のフォトレジストをパターン露光,現像することによりパターンを形成し、次いでフィルター色の色素で染色する方法を全フィルター色について順次繰り返すことにより、カラーフィルターを製造することができる。染色法の他にも、ポジ型レジストを用いる方法によってもカラーフィルターを製造することができる。これらの方法により製造されるカラーフィルターは、色素を使用しているために透過率が高く、光学特性も優れているが、耐光性や耐熱性等に限界がある。このため、諸耐性に優れかつ透明性の高い着色剤が望まれていた。一方、色素の代わりに耐光性や耐熱性が優れる有機顔料が用いる方法が広く知られているが、顔料を用いたカラーフィルターでは色素のような光学特性を得ることは困難である。
【0008】
前記のそれぞれの用途に使用可能な色素には共通して、次のような性質を具備していることが望まれている。すなわち、色再現上好ましい色相を有すること、最適な分光吸収を有すること、耐光性、耐湿性、耐薬品性などの堅牢性が良好であること、溶解性が高いことなどが挙げられる。
感熱転写記録に使用するために、特定のアリーリデンピラゾロン骨格を有する色素が提案されている(例えば特許文献9参照)。しかしながら、これらの色素は上記の要求特性が必ずしも満足の行くレベルではなく、更なる検討が求められていた。
【特許文献1】特開昭53−67524号公報
【特許文献2】特開昭59−78895号公報
【特許文献3】特開昭62−157051号公報
【特許文献4】特開昭62−255956号公報
【特許文献5】特開平6−118715号公報
【特許文献6】特開平3−276161号公報
【特許文献7】特開平2−207274号公報
【特許文献8】特開平2−207273号公報
【特許文献9】特開平2−3450号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、吸収がシャープで優れた分光特性および高い堅牢性を有する新規なアリーリデンピラゾロン色素、該アリーリデンピラゾロン色素を含有する感熱転写記録用インクシートおよび感熱転写記録方法を提供することにある。さらには、印画サンプルにおける優れた色再現性、画像保存性および転写感度の全てを同時に満足する感熱転写記録用インクシートおよび感熱転写記録方法を提供することにある。さらにはインクの溶解性に優れた該アリーリデンピラゾロン色素を提供することにある。さらには、該アリーリデンピラゾロン色素を用いたカラートナー、インクジェット用インクおよびカラーフィルターを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、鋭意研究を重ねた結果、以下の構成によって上記課題が達成されることを見出した。
【0011】
(1)下記一般式(1)で表されるアリーリデンピラゾロン色素。
【0012】
【化1】

【0013】
(一般式(1)中、R1、R2、R4およびR5は、各々独立に水素原子または1価の置換基を表し、R3は1価の置換基を表し、nは0〜4の整数を表す。nが2以上のとき、複数のR3は互いに同一であっても異なっていてもよい。また、R1およびR2は互いに結合して環構造を形成してもよい。)
(2)前記(1)に記載のアリーリデンピラゾロン色素を含有することを特徴とする着色組成物。
(3)前記(1)に記載のアリーリデンピラゾロン色素を含有することを特徴とする感熱転写記録用インクシート。
(4)支持体上にポリマーを含有するインク受容層を有する受像材料上に(3)に記載の感熱転写記録用インクシートを用いて画像を形成することを特徴とする感熱転写記録方法。
(5)前記(1)に記載のアリーリデンピラゾロン色素を含有することを特徴とするカラートナー。
(6)前記アリーリデンピラゾロン色素を含有することを特徴とするインクジェット用インク。
(7)前記(1)に記載のアリーリデンピラゾロン色素を含有することを特徴とするカラーフィルター。
【発明の効果】
【0014】
本発明によって、種々の有機溶剤に対する溶解性に優れ、吸収がシャープで優れた分光特性、高い堅牢性、および優れた転写感度を同時に満足する新規なアリーリデンピラゾロン色素、該アリーリデンピラゾロン色素を含有する感熱転写用インクシートおよび感熱転写記録方法を提供することができる。予想外にも、これらの新規なアゾ色素は溶剤への溶解性に優れ、インクシート作成における作業負荷および環境負荷を大幅に軽減できる。なおかつ印画サンプルにおける優れた色再現性、画像保存性および転写感度の全てを満足する感熱転写材料用インクシートおよび感熱転写記録方法を提供することができる。さらには該アゾ色素を用いたカラートナー、インクジェット用インクおよびカラーフィルターを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下において、本発明の感熱転写材料用インクシート、カラートナー、インクジェット用インクおよびカラーフィルターやそれに用いるアゾ色素等について詳細に説明する。
以下に記載する構成要件の説明は、本発明の代表的な実施態様に基づいてなされることがあるが、本発明はそのような実施態様に限定されるものではない。なお、本明細書において「〜」を用いて表される数値範囲は、「〜」の前後に記載される数値を下限値および上限値として含む範囲を意味する。
【0016】
〔一般式(1)で表されるアリーリデンピラゾロン色素〕
最初に、本発明の一般式(1)で表されるアリーリデンピラゾロン色素について詳細に説明する。
一般式(1)で表されるアリーリデンピラゾロン色素は、3−ピラゾロンの5位の置換基としてアルキルチオ基もしくはアリールチオ基を代表とする硫黄原子で結合する置換基が導入されていることを特徴とする色素である。このような特徴的な構造を有するアリーリデンピラゾロン色素はこれまでに全く知られていなかった。3−ピラゾロンの5位の置換基やアルキル基の色素と比較して、一般式(1)で表されるアゾ色素は光堅牢性が圧倒的に優れ、また同じく5位の置換基がアルコキシ基の色素と比較して溶解性に優れる。
一般式(1)で表されるアリーリデンピラゾロン色素は、溶解性および光堅牢性に優れているため感熱転写記録用インクシートの用途に好適であることに加え、他の用途(例えばインク液等)にも好適に使用可能であると考えられる。
【0017】
一般式(1)において、R1、R2およびR5は、各々独立に1価の置換基を表す。
該置換基は特に制限はないが、代表例として、脂肪族基(例えばアルキル基、アルケニル基、アルキニル基)、アリール基、ヘテロ環基、アシル基、アリールオキシカルボニル基、脂肪族オキシカルボニル基(例えばアルコキシカルボニル基)、カルバモイル基を挙げることができ、それぞれの基はさらに置換基を有していてもよい。置換基に関しては、別途後述する。
1およびR2は互いに結合して環構造を形成してもよい。環構造を形成する場合の環構造は、5〜7員の環構造であることが好ましく、5〜6員の環構造であることがより好ましい。R1、R2およびこれらが結合する窒素原子が構成する環構造の具体例としてピロリジン環、ピペリジン環、およびモルホリン環が挙げられ、ピペリジン環、またはモルホリン環が好ましい。
【0018】
一般式(1)において、R3は1価の置換基を表す。R3で表される置換基は、特に制限はないが、代表例として、ハロゲン原子、脂肪族基〔飽和脂肪基(アルキル基または、シクロアルキル基、ビシクロアルキル基、架橋環式飽和炭化水素基もしくはスピロ飽和炭化水素基を含む環状飽和脂肪族基を意味する)、不飽和脂肪族基(二重結合または三重結合を有す、アルケニル基またはアルケニル基のような鎖状不飽和脂肪族基または、シクロアルケニル基、ビシクロアルケニル基、架橋環式不飽和炭化水素基もしくはスピロ不飽和炭化水素基を含む環状不飽和脂肪族基を意味する)〕、アリール基(好ましくは置換基を有してもよいフェニル基)、ヘテロ環基(好ましくは、環構成原子が酸素原子、硫黄原子または窒素原子を含む5〜8員環で、脂環、芳香環やヘテロ環で縮環していてもよい)、シアノ基、脂肪族オキシ基(代表としてアルコキシ基)、アリールオキシ基、アシルオキシ基、カルバモイルオキシ基、脂肪族オキシカルボニルオキシ基(代表としてアルコキシカルボニルオキシ基、アリールオキシカルボニルオキシ基、アミノ基〔脂肪族アミノ基(代表としてアルキルアミノ基)、アニリノ基およびヘテロ環アミノ基を含む〕、アシルアミノ基、アミノカルボニルアミノ基、脂肪族オキシカルボニルアミノ基(代表としてアルコキシカルボニルアミノ基)、アリールオキシカルボニルアミノ基、スルファモイルアミノ基、脂肪族(代表としてアルキル)もしくはアリールスルホニルアミノ基、脂肪族チオ基(代表としてアルキルチオ基)、アリールチオ基、スルファモイル基、脂肪族(代表としてアルキル)もしくはアリールスルフィニル基、脂肪族(代表としてアルキル)もしくはアリールスルホニル基、アシル基、アリールオキシカルボニル基、脂肪族オキシカルボニル基(代表としてアルコキシカルボニル基)、カルバモイル基、アリールもしくはヘテロ環アゾ基、イミド基、脂肪族オキシスルホニル基(代表としてアルコキシスルホニル基)、アリールオキシスルホニル基、ハロゲン原子、ヒドロキシル基、ニトロ基、カルボキシル基、スルホ基を挙げることができ、それぞれの基はさらに置換基(例えば上記R3で挙げた置換基)を有していてもよい。
【0019】
一般式(1)において、R4は置換基を表す。該置換基は特に制限はないが、代表例として、R3で挙げた置換基、特に脂肪族基(代表として、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、シクロアルキル基、シクロアルケニル基)、アリール基を挙げることができ、それぞれの基はさらに置換基(例えば上記R3で挙げた置換基)を有していてもよい。
【0020】
一般式(1)において、nは0〜4の整数を表す。nが2以上のとき、複数のR3は互いに同一であっても異なっていてもよい。nは0または1が好ましい。
【0021】
以下に、上記R1〜R5における置換基、さらに、これらの置換基に置換してもよい置換基をさらに詳しく説明する。
ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、およびヨウ素原子が挙げられる。中でも塩素原子、臭素原子が好ましく、特に塩素原子が好ましい。
脂肪族基は、直鎖、分枝または環状の脂肪族基であり、前述のように、飽和脂肪族基には、アルキル基、シクロアルキル基、ビシクロアルキル基が含まれ、置換基を有してもよい。これらの炭素数は1〜30が好ましい。例としてはメチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、tert−ブチル基、n−オクチル基、エイコシル基、2−クロロエチル基、2−シアノエチル基、ベンジル基および2−エチルヘキシル基を挙げることができる。ここで、シクロアルキル基としては置換もしくは無置換のシクロアルキル基が含まれる。置換もしくは無置換のシクロアルキル基は、炭素数3〜30のシクロアルキル基が好ましい。例としては、シクロヘキシル基、シクロペンチル基、4−n−ドデシルシクロヘキシル基を挙げることができる。ビシクロアルキル基としては、炭素数5〜30の置換もしくは無置換のビシクロアルキル基、つまり、炭素数5〜30のビシクロアルカンから水素原子を一個取り去った一価の基を挙げることができる。例として、ビシクロ[1.2.2]ヘプタン−2−イル基、ビシクロ[2.2.2]オクタン−3−イル基を挙げることができる。さらに環構造が多いトリシクロ構造なども包含するものである。
【0022】
不飽和脂肪族基としては、直鎖、分枝または環状の不飽和脂肪族基であり、アルケニル基、シクロアルケニル基、ビシクロアルケニル基、アルキニル基が含まれる。アルケニル基としては直鎖、分岐、環状の置換もしくは無置換のアルケニル基を表す。アルケニル基としては、炭素数2〜30の置換または無置換のアルケニル基が好ましい。例としてはビニル基、アリル基、プレニル基、ゲラニル基、オレイル基を挙げることができる。シクロアルケニル基としては、炭素数3〜30の置換もしくは無置換のシクロアルケニル基、つまり、炭素数3〜30のシクロアルケンの水素原子を一個取り去った一価の基が好ましい。例としては、2−シクロペンテン−1−イル基、2−シクロヘキセン−1−イル基が挙げられる。ビシクロアルケニル基としては、置換もしくは無置換のビシクロアルケニル基が含まれる。ビシクロアルケニル基としては炭素数5〜30の置換もしくは無置換のビシクロアルケニル基、つまり二重結合を一個持つビシクロアルケンの水素原子を一個取り去った一価の基が好ましい。例として、ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン−1−イル基、ビシクロ[2.2.2]オクト−2−エン−4−イル基を挙げることができる。アルキニル基は、炭素数2〜30の置換または無置換のアルキニル基が好ましく、例えば、エチニル基、およびプロパルギル基が挙げられる。
【0023】
アリール基は、炭素数6〜30の置換もしくは無置換のアリール基が好ましく、例えば、フェニル基、p−トリル基、ナフチル基、m−クロロフェニル基、o−ヘキサデカノイルアミノフェニル基が挙げられ、置換基を有してもよいフェニル基が好ましい。
ヘテロ環基は、置換もしくは無置換の芳香族もしくは非芳香族のヘテロ環化合物から一個の水素原子を取り除いた一価の基であり、それらはさらに縮環していてもよい。これらのヘテロ環基としては、好ましくは5または6員のヘテロ環基であり、また環構成のヘテロ原子としては、酸素原子、硫黄原子、窒素原子が好ましい。さらに好ましくは、炭素数3〜30の5もしくは6員の芳香族のヘテロ環基である。ヘテロ環基におけるヘテロ環としては、ピリジン環、ピラジン環、ピリダジン環、ピリミジン環、トリアジン環、キノリン環、イソキノリン環、キナゾリン環、シンノリン環、フタラジン環、キノキサリン環、ピロール環、インドール環、フラン環、ベンゾフラン環、チオフェン環、ベンゾチオフェン環、ピラゾール環、イミダゾール環、ベンズイミダゾール環、トリアゾール環、オキサゾール環、ベンズオキサゾール環、チアゾール環、ベンゾチアゾール環、イソチアゾール環、ベンズイソチアゾール環、チアジアゾール環、イソオキサゾール環、ベンズイソオキサゾール環、ピロリジン環、ピペリジン環、ピペラジン環、イミダゾリジン環、チアゾリン環が挙げられる。
脂肪族オキシ基(代表としてアルコキシ基)は、置換もしくは無置換の脂肪族オキシ基(代表としてアルコキシ基)が含まれ、炭素数は1〜30が好ましい。例えば、メトキシ基、エトキシ基、イソプロポキシ基、n−オクチルオキシ基、メトキシエトキシ基、ヒドロキシエトキシ基および3−カルボキシプロポキシ基などを挙げることができる。
アリールオキシ基は、炭素数6〜30の置換もしくは無置換のアリールオキシ基が好ましい。アリールオキシ基の例として、フェノキシ基、2−メチルフェノキシ基、4−tert−ブチルフェノキシ基、3−ニトロフェノキシ基、2−テトラデカノイルアミノフェノキシ基などを挙げることができる。好ましくは、置換基を有してもよいフェニルオキシ基である。
【0024】
アシルオキシ基は、ホルミルオキシ基、炭素数2〜30の置換もしくは無置換のアルキルカルボニルオキシ基、炭素数6〜30の置換もしくは無置換のアリールカルボニルオキシ基が好ましい。アシルオキシ基の例には、ホルミルオキシ基、アセチルオキシ基、ピバロイルオキシ基、ステアロイルオキシ基、ベンゾイルオキシ基、p−メトキシフェニルカルボニルオキシ基などを挙げることができる。
カルバモイルオキシ基は、炭素数1〜30の置換もしくは無置換のカルバモイルオキシ基が好ましい。カルバモイルオキシ基の例には、N,N−ジメチルカルバモイルオキシ基、N,N−ジエチルカルバモイルオキシ基、モルホリノカルボニルオキシ基、N,N−ジ−n−オクチルアミノカルボニルオキシ基、N−n−オクチルカルバモイルオキシ基などを挙げることができる。
脂肪族オキシカルボニルオキシ基(代表としてアルコキシカルボニルオキシ基)は、炭素数2〜30が好ましく、置換基を有していてもよい。例えば、メトキシカルボニルオキシ基、エトキシカルボニルオキシ基、tert−ブトキシカルボニルオキシ基、n−オクチルカルボニルオキシ基などを挙げることができる。
アリールオキシカルボニルオキシ基は、炭素数7〜30の置換もしくは無置換のアリールオキシカルボニルオキシ基が好ましい。アリールオキシカルボニルオキシ基の例には、フェノキシカルボニルオキシ基、p−メトキシフェノキシカルボニルオキシ基、p−n−ヘキサデシルオキシフェノキシカルボニルオキシ基などを挙げることができる。好ましくは置換基を有してもよいフェノキシカルボニルオキシ基である。
【0025】
アミノ基は、アミノ基、脂肪族アミノ基(代表としてアルキルアミノ基)、アリールアミノ基およびヘテロ環アミノ基を含む。アミノ基は、炭素数1〜30の置換もしくは無置換の脂肪族アミノ基(代表としてアルキルアミノ基)、炭素数6〜30の置換もしくは無置換のアリールアミノ基が好ましい。アミノ基の例には、例えば、アミノ基、メチルアミノ基、ジメチルアミノ基、アニリノ基、N-メチル−アニリノ基、ジフェニルアミノ基、ヒドロキシエチルアミノ基、カルボキシエチルアミノ基、スルフォエチルアミノ基、3,5−ジカルボキシアニリノ基、4−キノリルアミノ基などを挙げることができる。
アシルアミノ基は、ホルミルアミノ基、炭素数1〜30の置換もしくは無置換のアルキルカルボニルアミノ基、炭素数6〜30の置換もしくは無置換のアリールカルボニルアミノ基が好ましい。アシルアミノ基の例には、ホルミルアミノ基、アセチルアミノ基、ピバロイルアミノ基、ラウロイルアミノ基、ベンゾイルアミノ基、3,4,5−トリ−n−オクチルオキシフェニルカルボニルアミノ基などを挙げることができる。
アミノカルボニルアミノ基は、炭素数1〜30の置換もしくは無置換のアミノカルボニルアミノ基が好ましい。アミノカルボニルアミノ基の例には、カルバモイルアミノ基、N,N−ジメチルアミノカルボニルアミノ基、N,N−ジエチルアミノカルボニルアミノ基、モルホリノカルボニルアミノ基などを挙げることができる。なお、この基における「アミノ」の用語は、前述のアミノ基における「アミノ」と同じ意味である。
【0026】
脂肪族オキシカルボニルアミノ基(代表としてアルコキシカルボニルアミノ基)は、炭素数2〜30が好ましく、置換基を有してもよい。例えば、メトキシカルボニルアミノ基、エトキシカルボニルアミノ基、tert−ブトキシカルボニルアミノ基、n−オクタデシルオキシカルボニルアミノ基、N−メチルーメトキシカルボニルアミノ基などを挙げることができる。
アリールオキシカルボニルアミノ基は、炭素数7〜30の置換もしくは無置換のアリールオキシカルボニルアミノ基が好ましい。アリールオキシカルボニルアミノ基の例には、フェノキシカルボニルアミノ基、p−クロロフェノキシカルボニルアミノ基、m−n−オクチルオキシフェノキシカルボニルアミノ基などを挙げることができる。置換基を有してもよいフェニルオキシカルボニルアミノ基が好ましい。
スルファモイルアミノ基は、炭素数0〜30の置換もしくは無置換のスルファモイルアミノ基が好ましい。スルファモイルアミノ基の例には、スルファモイルアミノ基、N,N−ジメチルアミノスルホニルアミノ基、N−n−オクチルアミノスルホニルアミノ基などを挙げることができる。
脂肪族(代表としてアルキル)もしくはアリールスルホニルアミノ基は、炭素数1〜30の置換もしくは無置換の脂肪族スルホニルアミノ基(代表としてアルキルスルホニルアミノ基)、炭素数6〜30の置換もしくは無置換のアリールスルホニルアミノ基(好ましくは置換基を有してもよいフェニルスルホニルアミノ基)が好ましい。例えば、メチルスルホニルアミノ基、ブチルスルホニルアミノ基、フェニルスルホニルアミノ基、2,3,5−トリクロロフェニルスルホニルアミノ基、p−メチルフェニルスルホニルアミノ基などを挙げることができる。
【0027】
脂肪族チオ基(代表としてアルキルチオ基)は、炭素数1〜30の置換もしくは無置換のアルキルチオ基が好ましい。アルキルチオ基の例には、メチルチオ基、エチルチオ基、n−ヘキサデシルチオ基などを挙げることができる。
スルファモイル基は、炭素数0〜30の置換もしくは無置換のスルファモイル基が好ましい。スルファモイル基の例には、N−エチルスルファモイル基、N−(3−ドデシルオキシプロピル)スルファモイル基、N,N−ジメチルスルファモイル基、N−アセチルスルファモイル基、N−ベンゾイルスルファモイル基、N−(N’−フェニルカルバモイル)スルファモイル)基などを挙げることができる。
脂肪族(代表としてアルキル)もしくはアリールスルフィニル基は、炭素数1〜30の置換または無置換の脂肪族スルフィニル基(代表としてアルキルスルフィニル基)、6〜30の置換または無置換のアリールスルフィニル基(好ましくは置換基を有してもよいフェニルスルフィニル基)が好ましい。例えば、メチルスルフィニル基、エチルスルフィニル基、フェニルスルフィニル基、p−メチルフェニルスルフィニル基などを挙げることができる。
脂肪族(代表としてアルキル)もしくはアリールスルホニル基は、炭素数1〜30の置換または無置換の脂肪族スルホニル基(代表としてアルキルスルホニル基)、6〜30の置換または無置換のアリールスルホニル基(好ましくは置換基を有してもよいフェニルスルホニル基)が好ましい。例えば、メチルスルホニル、エチルスルホニル、フェニルスルホニル、p−トルエンスルホニル基などを挙げることができる。
【0028】
アシル基は、ホルミル基、炭素数2〜30の置換または無置換の脂肪族カルボニル基(代表としてアルキルカルボニル基)、炭素数7〜30の置換もしくは無置換のアリールカルボニル基(好ましくは置換基を有してもよいフェニルカルボニル基)、炭素数4〜30の置換もしくは無置換の炭素原子でカルボニル基と結合しているヘテロ環カルボニル基が好ましい。例えば、アセチル、ピバロイル、2−クロロアセチル、ステアロイル、ベンゾイル、p−n−オクチルオキシフェニルカルボニル、2−ピリジルカルボニル、2−フリルカルボニル基などを挙げることができる。
アリールオキシカルボニル基は、炭素数7〜30の置換もしくは無置換のアリールオキシカルボニル基が好ましい。アリールオキシカルボニル基の例には、フェノキシカルボニル、o−クロロフェノキシカルボニル、m−ニトロフェノキシカルボニル、p−tert−ブチルフェノキシカルボニル基などを挙げることができる。好ましくは置換基を有してもよいフェニルオキシカルボニル基である。
脂肪族オキシカルボニル基(代表としてアルコキシカルボニル基)は、炭素数2〜30が好ましく、置換基を有してもよい。例えば、メトキシカルボニル、エトキシカルボニル、tert−ブトキシカルボニル、n−オクタデシルオキシカルボニル基などを挙げることができる。
カルバモイル基は、炭素数1〜30の置換もしくは無置換のカルバモイル基が好ましい。カルバモイル基の例には、カルバモイル、N−メチルカルバモイル、N,N−ジメチルカルバモイル、N,N−ジ−n−オクチルカルバモイル、N−(メチルスルホニル)カルバモイル基などを挙げることができる。
アリールもしくはヘテロ環アゾ基として、例えば、フェニルアゾ、4−メトキシフェニルアゾ、4−ピバロイルアミノフェニルアゾ、2−ヒドロキシ−4−プロパノイルフェニルアゾ基などを挙げることができる。
イミド基として、例えば、N−スクシンイミド基、N−フタルイミド基などを挙げることができる。
これらに加え、ヒドロキシル基、シアノ基、ニトロ基、スルホ基、カルボキシル基が挙げられる。
これらの各基はさらに置換基を有してもよく、このような置換基としては、上述の置換基が挙げられる。
【0029】
1およびR2は各々独立に、好ましくは置換または無置換の炭素数1〜20の脂肪族基(好ましくはアルキル基、アルケニル基、シクロアルキル基でより好ましくはアルキル基)、置換または無置換のアリール基(好ましくは置換基を有してよいフェニル基)、置換もしくは無置換のヘテロ環基、さらに好ましくは置換または無置換の炭素数1〜10の脂肪族基(好ましくはアルキル基、アルケニル基、シクロアルキル基でより好ましくはアルキル基)、置換または無置換のアリール基であり、最も好ましくは無置換の炭素数1〜4のアルキル基である。
【0030】
3は、好ましくは置換または無置換の炭素数1〜10の脂肪族基(好ましくはアルキル基、アルケニル基、シクロアルキル基でより好ましくはアルキル基)、置換または無置換のアリール基(好ましくは置換基を有してよいフェニル基)、置換もしくは無置換の炭素数1〜10の脂肪族オキシ基(好ましくはアルコキシ基、アルケノキシ基、シクロアルコキシ基でより好ましくはアルコキシ基)であり、さらに好ましくは、置換または無置換の炭素数1〜5のアルキル基、置換もしくは無置換の炭素数1〜5のアルコキシ基であり、最も好ましくは無置換の炭素数1〜3のアルキル基である。
【0031】
4は、好ましくは置換または無置換の炭素数1〜20の脂肪族基(好ましくはアルキル基、アルケニル基、シクロアルキル基でより好ましくはアルキル基)、置換または無置換のアリール基であり、さらに好ましくは置換または無置換の炭素数1〜10の脂肪族基(好ましくはアルキル基、アルケニル基、シクロアルキル基でより好ましくはアルキル基)、置換または無置換のアリール基であり、最も好ましくは無置換の炭素数1〜4のアシル基、置換または無置換のアリール基である。
【0032】
5は、好ましくは置換もしくは無置換の炭素数1〜20の脂肪族基(好ましくはアルキル基、アルケニル基、シクロアルキル基でより好ましくはアルキル基)、置換もしくは無置換のアリール基(好ましくは置換基を有してよいフェニル基)であり、より好ましくは、置換もしくは無置換の炭素数1〜10の脂肪族基(好ましくはアルキル基、アルケニル基、シクロアルキル基でより好ましくはアルキル基)、置換もしくは無置換のアリール基、最も好ましくは置換もしくは無置換の炭素数1〜4のアルキル基、置換もしくは無置換のアリール基である。
【0033】
nは、好ましくは0〜2であり、より好ましくは0〜1であり、最も好ましくは0である。
【0034】
本発明の一般式(1)で表される色素の好ましい置換基の組み合わせ(R1〜R5の組み合わせ)については、これらの置換基の少なくとも1つが前記の好ましい基である化合物が好ましく、より多くの種々の置換基が前記好ましい基である化合物がより好ましく、全ての置換基が前記好ましい基である化合物が最も好ましい。
好ましい組み合わせは、R1が置換もしくは無置換の炭素数1〜4のアルキル基、R2が置換もしくは無置換の炭素数1〜4のアルキル基、R4が置換もしくは無置換の炭素数1〜4のアルキル基、置換もしくは無置換のアリール基、R5が置換もしくは無置換の炭素数1〜4のアルキル基、置換もしくは無置換のアリール基、n=0である組み合わせである。
より好ましい組み合わせは、R1が置換もしくは無置換の炭素数1〜4のアルキル基、R2が置換もしくは無置換の炭素数1〜4のアルキル基、R4が置換もしくは無置換の炭素数1〜4のアルキル基、置換もしくは無置換のアリール基、R6が無置換の炭素数1〜4のアルキル基、無置換のアリール基、n=0である組み合わせである。
最も好ましい組み合わせは、R1が置換もしくは無置換の炭素数1〜4のアルキル基、R2が置換もしくは無置換の炭素数1〜4のアルキル基、R4が置換もしくは無置換の炭素数1〜4のアルキル基、置換もしくは無置換のアリール基、R6が無置換の炭素数1〜2のアルキル基、置換もしくは無置換のフェニル基、n=0である組み合わせである。
【0035】
一般式(1)で表される色素の分子量は、熱拡散性の観点から、550以下であることが好ましく、500以下であることがより好ましい。
【0036】
以下に、本発明の一般式(1)で表されるアリーリデンピラゾロン色素の具体例を示すが、本発明で用いることができる一般式(1)のアリーリデンピラゾロン色素は以下の具体例によって限定的に解釈されるものではない。なお、以下の具体例においてPhはフェニル基(−C65)を表す。
【0037】
【化2】

【0038】
これらのアリーリデンピラゾロン色素は、一般的に行われている脱水縮合反応により合成できる。
具体的には、下記一般式(2)で表される3−ピラゾロン誘導体と、下記一般式(3)で表されるベンズアルデヒド誘導体を加熱条件で反応させることで容易に合成できる。具体的には実施例で例示する。
【0039】
【化3】

【0040】
【化4】

【0041】
(式中、R1〜R5は、各々前記一般式(1)におけるR1〜R5と同義である。)
一般式(3)で表される化合物の多くは、市販品として容易に入手可能である(例えば、東京化成株式会社製カタログ番号D0463など)。また、一般式(2)で表される化合物は以下スキームのいずれか合成経路に準じて合成できる。合成法は実施例で具体例を挙げて説明する
【0042】
【化5】

【0043】
本発明のアリーリデンピラゾロン色素は3原色のうちイエロー色として使用されることが好ましい。
本発明のアリーリデンピラゾロン色素の最大吸収波長は、好ましくは400〜500nmの範囲であり、より好ましくは420〜470nmの範囲である。
【0044】
〔着色組成物〕
本発明の着色組成物は、一般式(1)で表される本発明の色素を含有することを特徴とする。本明細書における着色組成物は、感熱転写記録用インクシート、インクジェット用インク、カラートナー、カラーフィルター、筆記用ペン、着色プラスチック、その他インク液などのことを指す。
本発明の着色組成物は、特に感熱転写記録用インクシート、インクジェット用インク、カラートナー、カラーフィルターとして有効に用いることができる。
【0045】
〔感熱転写記録用インクシート〕
本発明の感熱転写記録用インクシートは、前記一般式(1)で表される色素を含有することを特徴とする。感熱転写記録用インクシートは、一般に支持体上に色素供与層が形成された構造を有しており、その色素供与層中に一般式(1)で表される色素を含有させる。本発明の感熱転写記録用インクシートは、一般式(1)で表される色素をバインダーとともに溶剤中に溶解するか、あるいは溶媒中に微粒子状に分散させることによってインク液を調製し、該インク液を支持体上に塗設し、適宜乾燥して色素供与層を形成することにより製造することができる。
【0046】
本発明の感熱転写記録用インクシートの支持体には、インクシート用支持体として従来から用いられているものを適宜選択して用いることができる。例えば特開平7−137466号公報の段落番号0050に記載される材料を好ましく用いることができる。支持体の厚みは、2〜30μmが好ましい。
【0047】
本発明の感熱転写記録用インクシートの色素供与層に用いることができるバインダー樹脂は、耐熱性が高くて、加熱されたときに色素が受像材料へ移行するのを妨げないものであれば特にその種類は制限されない。例えば、特開平7−137466号公報の段落番号0049に記載されるものを好ましい例として挙げることができる。また、色素供与層形成用の溶剤についても、従来公知の溶剤を適宜選択して用いることができ、特開平7−137466号公報の実施例に記載されるものを好ましく用いることができる。
色素供与層中における一般式(1)で表される色素の含有量は、0.03〜1.0g/m2が好ましく、0.1〜0.6g/m2がより好ましい。また、色素供与層の厚みは、0.2〜5μmが好ましく、0.4〜2μmがより好ましい。
本発明の感熱転写記録用インクシートは、本発明の効果を過度に阻害しない範囲内であれば、色素供与層以外の層を有するものであってもよい。例えば、支持体と色素供与層との間に中間層を有するものであってもよいし、色素供与層とは反対側の支持体面(以下において「背面」ともいう)にバック層を有するものであってもよい。中間層としては、例えば下塗り層や、色素の支持体方向への拡散を防止するための拡散防止層(親水性バリアー層)を挙げることができる。また、バック層としては、例えば耐熱スリップ層を挙げることができ、サーマルヘッドのインクシートへの粘着防止を図ることができる。
【0048】
本発明をフルカラー画像記録が可能な感熱転写記録材料に適用するには、シアン画像を形成することができる熱拡散性シアン色素を含有するシアンインクシート、マゼンタ画像を形成することができる熱拡散性マゼンタ色素を含有するマゼンタインクシート、イエロー画像を形成することができる熱拡散性イエロー色素を含有するイエローインクシートを支持体上に順次塗設して形成することが好ましい。また、必要に応じて他に黒色画像形成物質を含むインクシートがさらに形成されていてもよい。
シアン画像を形成することができる熱拡散性シアン色素を含有するシアンインクシートとしては、例えば、特開平3−103477号公報や特開平3−150194号公報などに記載されるものを好ましく用いることができる。イエロー画像を形成することができる熱拡散性イエロー色素を含有するイエローインクシートとしては、例えば、特開平1−225592号公報などに記載されるものを好ましく用いることができる。
【0049】
〔感熱転写記録〕
本発明の感熱転写記録用インクシートを用いて感熱転写記録を行う際には、サーマルヘッド等の加熱手段と受像材料を組み合わせて用いる。すなわち、画像記録信号に従ってサーマルヘッドから熱エネルギーがインクシートに加えられ、該熱エネルギーが加えられた部分の色素が受像材料に移行し固定されることによって画像記録がなされる。受像材料は、通常は支持体上にポリマーを含有するインク受容層を設けた構成を有している。受像材料の構成や使用材料については、例えば特開平7−137466号公報の段落番号0056〜0074に記載されたものを好ましく用いることができる。
【0050】
〔カラートナー〕
本発明のカラートナーは、前記一般式(1)で表される色素を含有することを特徴とする。本発明の一般式(1)で表される色素を導入するカラートナー用バインダー樹脂としては、トナー用に一般に使用される全てのバインダーが使用できる。例えば、スチレン系樹脂、アクリル系樹脂、スチレン/アクリル系樹脂、ポリエステル樹脂等が挙げられる。トナーに対して流動性向上や帯電制御等を付与する目的で、無機微粉末、有機微粒子を外部添加してもよい。表面をアルキル基含有のカップリング剤等で処理したシリカ微粒子、チタニア微粒子が好ましく用いられる。なお、これらは数平均一次粒子サイズが10〜500nmのものが好ましく、さらにはトナー中に0.1〜20質量%添加するのが好ましい。
離型剤としては、トナー用に従来使用されている離型剤は全て使用することができる。具体的には、低分子量ポリプロピレン、低分子量ポリエチレン、エチレン−プロピレン共重合体等のオレフィン類、マイクロクリスタリンワックス、カルナウバワックス、サゾールワックス、パラフィンワックス等が挙げられる。これらの添加量はトナー中に1〜5質量%添加することが好ましい。
【0051】
荷電制御剤としては、必要に応じて添加してもよいが、発色性の点から無色のものが好ましい。例えば4級アンモニウム塩構造のもの、カリックスアレン構造を有するものなどが挙げられる。
キャリヤとしては、鉄・フェライト等の磁性材料粒子のみで構成される非被覆キャリヤ、磁性材料粒子表面を樹脂等によって被覆した樹脂被覆キャリヤのいずれを使用してもよい。このキャリヤの平均粒子サイズは体積平均粒子サイズで30〜150μmが好ましい。
本発明のトナーが適用される画像形成方法としては、特に限定されるものではないが、例えば感光体上に繰り返しカラー画像を形成した後に転写を行い、画像を形成する方法や、感光体に形成された画像を逐次中間転写体等へ転写し、カラー画像を中間転写体等に形成した後に紙等の画像形成部材へ転写しカラー画像を形成する方法等が挙げられる。
【0052】
〔インクジェット用インク〕
本発明のインクジェット用インクは、前記一般式(1)で表される色素を含有することを特徴とする。本発明のインクは、親油性媒体や水性媒体中に前記一般式(1)で表される色素を溶解および/または分散させることによって作製することができ、好ましくは、水性媒体を用いる場合である。本発明のインクは上述したように分光特性や堅牢性等に優れた色素を含有するので、インクジェット記録用インクとして好適に用いることができる。必要に応じてその他の添加剤が、本発明の効果を害しない範囲内において含有される。その他の添加剤としては、例えば、乾燥防止剤(湿潤剤)、褪色防止剤、乳化安定剤、浸透促進剤、紫外線吸収剤、防腐剤、防黴剤、pH調整剤、表面張力調整剤、消泡剤、粘度調整剤、分散剤、分散安定剤、防錆剤、キレート剤等の公知の添加剤が挙げられる。これらの各種添加剤は、色素分散物の調製後分散物に添加するのが一般的であるが、調製時に油相または水相に添加してもよい。
【0053】
前記乾燥防止剤はインクジェット記録方式に用いるノズルのインク噴射口において該インクジェット用インクが乾燥することによる目詰まりを防止する目的で好適に使用される。
前記乾燥防止剤としては、水より蒸気圧の低い水溶性有機溶剤が好ましい。具体的な例としてはエチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、ポリエチレングリコール、チオジグリコール、ジチオジグリコール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、1,2,6−ヘキサントリオール、アセチレングリコール誘導体、グリセリン、トリメチロールプロパン等に代表される多価アルコール類、エチレングリコールモノメチル(またはエチル)エーテル、ジエチレングリコールモノメチル(またはエチル)エーテル、トリエチレングリコールモノエチル(またはブチル)エーテル等の多価アルコールの低級アルキルエーテル類、2−ピロリドン、N−メチル−2−ピロリドン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、N−エチルモルホリン等の複素環類、スルホラン、ジメチルスルホキシド、3−スルホレン等の含硫黄化合物、ジアセトンアルコール、ジエタノールアミン等の多官能化合物、尿素誘導体が挙げられる。これらのうちグリセリン、ジエチレングリコール等の多価アルコールがより好ましい。また上記の乾燥防止剤は単独で用いても良いし2種以上併用しても良い。これらの乾燥防止剤はインク中に10〜50質量%含有することが好ましい。
【0054】
前記浸透促進剤は、インクジェット用インクを紙により良く浸透させる目的で好適に使用される。前記浸透促進剤としてはエタノール、イソプロパノール、ブタノール、ジ(トリ)エチレングリコールモノブチルエーテル、1,2−ヘキサンジオール等のアルコール類やラウリル硫酸ナトリウム、オレイン酸ナトリウムやノニオン性界面活性剤等を用いることができる。これらはインク中に5〜30質量%含有すれば通常充分な効果があり、印字の滲み、紙抜け(プリントスルー)を起こさない添加量の範囲で使用するのが好ましい。
前記紫外線吸収剤は、画像の保存性を向上させる目的で使用される。前記紫外線吸収剤としては特開昭58−185677号公報、同61−190537号公報、特開平2−782号公報、同5−197075号公報、同9−34057号公報等に記載されたベンゾトリアゾール系化合物、特開昭46−2784号公報、特開平5−194483号公報、米国特許第3,214,463号明細書等に記載されたベンゾフェノン系化合物、特公昭48−30492号公報、同56−21141号公報、特開平10−88106号公報等に記載された桂皮酸系化合物、特開平4−298503号公報、同8−53427号公報、同8−239368号公報、同10−182621号公報、特表平8−501291号公報等に記載されたトリアジン系化合物、リサーチ・ディスクロージャーNo.24239号に記載された化合物やスチルベン系、ベンズオキサゾール系化合物に代表される紫外線を吸収して蛍光を発する化合物、いわゆる蛍光増白剤も用いることができる。
【0055】
前記褪色防止剤は、画像の保存性を向上させる目的で使用される。前記褪色防止剤としては、各種の有機系および金属錯体系の褪色防止剤を使用することができる。有機の褪色防止剤としてはハイドロキノン類、アルコキシフェノール類、ジアルコキシフェノール類、フェノール類、アニリン類、アミン類、インダン類、クロマン類、アルコキシアニリン類、ヘテロ環類などがあり、金属錯体としてはニッケル錯体、亜鉛錯体などがある。より具体的にはリサーチ・ディスクロージャーNo.17643の第VIIのIないしJ項、同No.15162、同No.18716の650頁左欄、同No.36544の527頁、同No.307105の872頁、同No.15162に引用された特許文献に記載された化合物や特開昭62−215272号公報の127頁〜137頁に記載された代表的化合物の一般式および化合物例に含まれる化合物を使用することができる。
前記防黴剤としてはデヒドロ酢酸ナトリウム、安息香酸ナトリウム、ナトリウムピリジンチオン−1−オキシド、p−ヒドロキシ安息香酸エチルエステル、1,2−ベンズイソチアゾリン−3−オンおよびその塩等が挙げられる。これらはインク中に0.02〜1.00質量%使用するのが好ましい。
【0056】
前記pH調整剤としては前記中和剤(有機塩基、無機アルカリ)を用いることができる。前記pH調整剤はインクジェット用インクの保存安定性を向上させる目的で、該インクジェット用インクがpH6〜10となるように添加するのが好ましく、pH7〜10となるように添加するのがより好ましい。
前記表面張力調整剤としてはノニオン、カチオンあるいはアニオン界面活性剤が挙げられる。尚、本発明の着色組成物を含むインクジェット用インクの表面張力は20〜60mN/mが好ましい。さらに25〜45mN/mが好ましい。また本発明のインクジェット用インクの粘度は30mPa・s以下が好ましい。さらに20mPa・s以下に調整することがより好ましい。
【0057】
界面活性剤の例としては、脂肪酸塩、アルキル硫酸エステル塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルナフタレンスルホン酸塩、ジアルキルスルホコハク酸塩、アルキルリン酸エステル塩、ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物、ポリオキシエチレンアルキル硫酸エステル塩等のアニオン系界面活性剤や、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルアリルエーテル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルアミン、グリセリン脂肪酸エステル、オキシエチレンオキシプロピレンブロックコポリマー等のノニオン系界面活性剤が好ましい。また、アセチレン系ポリオキシエチレンオキシド界面活性剤であるSURFYNOLS(商品名、AirProducts&Chemicals社製)も好ましく用いられる。また、N,N−ジメチル−N−アルキルアミンオキシドのようなアミンオキシド型の両性界面活性剤等も好ましい。さらに、特開昭59−157636号公報の第(37)〜(38)頁、リサーチ・ディスクロージャーNo.308119(1989年)記載の界面活性剤として挙げたものも使うことができる。
【0058】
前記消泡剤としては、フッ素系、シリコーン系化合物やEDTAに代表されるキレート剤等も必要に応じて使用することができる。
前記一般式(1)で表される色素を水性媒体に分散させる場合は、特開平11−286637号、特開2001−240763号、同2001−262039号、同2001−247788号の各公報に記載のように化合物と油溶性ポリマーとを含有する着色微粒子を水性媒体に分散したり、特開2001−262018号、同2001−240763号、同2001−335734号、同2002−80772号の各公報に記載のように高沸点有機溶媒に溶解した一般式(1)で表される色素を水性媒体中に分散することが好ましい。一般式(1)で表される色素を水性媒体に分散させる場合の具体的な方法、使用する油溶性ポリマー、高沸点有機溶剤、添加剤およびそれらの使用量は、前記特許文献に記載されたものを好ましく使用することができる。あるいは、前記ビスアゾ化合物を固体のまま微粒子状態に分散してもよい。分散時には、分散剤や界面活性剤を使用することができる。
【0059】
分散装置としては、簡単なスターラーやインペラー攪拌方式、インライン攪拌方式、ミル方式(例えば、コロイドミル、ボールミル、サンドミル、アトライター、ロールミル、アジテーターミル等)、超音波方式、高圧乳化分散方式(高圧ホモジナイザー;具体的な市販装置としてはゴーリンホモジナイザー、マイクロフルイダイザー、DeBEE2000(BEEインターナショナル社製)等)を使用することができる。上記のインクジェット記録用インクの調製方法については、先述の特許文献以外にも特開平5−148436号、同5−295312号、同7−97541号、同7−82515号、同7−118584号、特開平11−286637号、特開2001−271003号の各公報に詳細が記載されていて、本発明のインクジェット記録用インクの調製にも利用できる。
【0060】
前記水性媒体は、水を主成分とし、所望により、水混和性有機溶剤を添加した混合物を用いることができる。前記水混和性有機溶剤の例には、アルコール(例えば、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、イソブタノール、sec−ブタノール、t−ブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、シクロヘキサノール、ベンジルアルコール)、多価アルコール類(例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、ブチレングリコール、ヘキサンジオール、ペンタンジオール、グリセリン、ヘキサントリオール、チオジグリコール)、グリコール誘導体(例えば、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングルコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールジアセテート、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノフェニルエーテル)、アミン(例えば、エタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、N−メチルジエタノールアミン、N−エチルジエタノールアミン、モルホリン、N−エチルモルホリン、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、ポリエチレンイミン、テトラメチルプロピレンジアミン)およびその他の極性溶媒(例えば、ホルムアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、スルホラン、2−ピロリドン、N−メチル−2−ピロリドン、N−ビニル−2−ピロリドン、2−オキサゾリドン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、アセトニトリル、アセトン)が含まれる。なお、前記水混和性有機溶剤は、二種類以上を併用してもよい。
【0061】
〔カラーフィルター〕
本発明のカラーフィルターは、前記一般式(1)で表される色素を含有することを特徴とする。カラーフィルターの形成方法としては、初めにフォトレジストによりパターンを形成し、次いで染色する方法、或いは特開平4−163552号、特開平4−128703号、特開平4−175753号などの各公報で開示されているように、着色剤を添加したフォトレジストによりパターンを形成する方法がある。本発明の一般式(1)で表される色素をカラーフィルターに導入する場合に用いられる方法としては、これらのいずれの方法を用いてもよいが、好ましい方法としては、特開平4−175753号公報や特開平6−35182号公報に記載されている方法、即ち、熱硬化性樹脂、キノンジアジド化合物、架橋剤、着色剤および溶剤を含有してなるポジ型レジスト組成物を基体上に塗布後、マスクを通して露光し、該露光部を現像してポジ型レジストパターンを形成させ、上記ポジ型レジストパターンを全面露光し、次いで露光後のポジ型レジストパターンを硬化させることからなるカラーフィルターの形成方法を挙げることができる。また、常法に従いブラックマトリックスを形成させ、RGB原色系あるいはY.M.C補色系カラーフィルターを得ることができる。
【0062】
この際使用する熱硬化性樹脂、キノンジアジド化合物、架橋剤、および溶剤とそれらの使用量については、前記公報に記載されているものを好ましく使用することができる。
【実施例】
【0063】
以下に合成例と実施例を挙げて本発明の特徴をさらに具体的に説明する。
以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容、処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り適宜変更することができる。したがって、本発明の範囲は以下に示す具体例により限定的に解釈されるべきものではない。
【0064】
実施例1:色素の合成と評価
<例示化合物(2)の合成>
【0065】
【化6】

【0066】
(中間体(A)の合成)
5−エトキシ−2−メチル−2H−ピラゾール−3−オン2.84g(0.02mol)、チオフェノール3.1mL(0.03mol)、メタンスルホン酸2mLを混合し130℃で6時間反応させた。反応液を室温まで冷却した後、クロロホルムを加え、食塩水でメタンスルホン酸を洗浄した。クロロホルム層を硫酸マグネシウムで乾燥後、シリカゲルクロマトグラフィー(展開溶媒:酢酸エチル/ヘキサン=1/3)にて精製し、中間体(A)の淡黄色粉末を得た(収量1.1g、収率27%)。
【0067】
(例示化合物(2)の合成)
中間体(A)1.0g(0.0048mol)、p−(N−シアノエチル−N−エチルアミノ)ベンズアルデヒド0.86g(0.0048mol)、酢酸アンモニウム0.5g、アセトニトリル35mLを混合し、1時間還流加熱した。反応液をロータリーエバポレータで濃縮し、シリカゲルクロマトグラフィー(展開溶媒:酢酸エチル/ヘキサン=1/3)にて精製し例示化合物(2)の粉末を得た(収量1.0g、収率51%、融点197℃)。例示化合物(2)のλmax(酢酸エチル溶液)は433nmであった。
【0068】
<例示化合物(5)の合成>
【0069】
【化7】

【0070】
(中間体(B)の合成)
3,3−ジメチルチオアクリル酸エチル5g(0.025mol)、2,4,6−トリクロロフェニルヒドラジン5g(0.025mol)、p−トルエンスルホン酸一水和物1gを混合し、140℃で2時間反応させた。シリカゲルクロマトグラフィー(展開溶媒:酢酸エチル/ヘキサン=1/3)にて精製し、中間体(B)を得た(収量5.2g、収率67%)。
【0071】
(例示化合物(5)の合成)
中間体(B)3.1g(0.01mol)、p−ジエチルアミノベンズアルデヒド1.8g(0.01mol)、酢酸アンモニウム0.5g、アセトニトリル35mLを混合し、1時間還流加熱した。反応液をロータリーエバポレータで濃縮し、シリカゲルクロマトグラフィー(展開溶媒:酢酸エチル/ヘキサン=1/3)にて精製し例示化合物(2)の粉末を得た(収量0.56g、収率12%)。例示化合物(5)のλmax(酢酸エチル溶液)は459nmであった。
【0072】
<例示化合物(4)、(6)および(7)の合成>
なお例示化合物(4)、(6)および(7)は、上記合成例に準じた方法で合成した。また、例示化合物(2)および(4)〜(7)以外の例示化合物に関しても、化学的な見地から、上記合成例に準じた方法で合成することができる。
【0073】
<評価>
得られた例示化合物(2)および(4)〜(7)の酢酸エチル溶液中(濃度1×10-6mol/L、光路長10mm)における吸収スペクトルの極大吸収波長を下記表1に示す。
【0074】
【表1】

【0075】
実施例2:感熱転写記録用インクシートの作製と評価
<感熱転写記録用インクシートの作製>
裏面に熱硬化アクリル樹脂(厚み1μm)により耐熱滑性処理が施された厚み6.0μmのポリエステルフィルム(ルミラー、商品名、(株)東レ製)を支持体として使用し、フィルムの表面側に下記の色素供与層形成用塗料組成物をワイヤーバーコーティングにより乾燥時の厚みが1μmとなるように塗布形成し、インクシート1を作製した。
【0076】
(色素供与層形成用塗料組成物)
例示化合物(2) 5.5質量部
ポリビニルブチラール樹脂 4.5質量部
(エスレックBX−1、商品名、積水化学工業(株)製)
メチルエチルケトン/トルエン(1/1) 90質量部
【0077】
次に、上記例示化合物(2)を下記表2に記載の色素にそれぞれ変更したこと以外はインクシート1の作製と同様にして、本発明のインクシート2〜4および比較用インクシート5〜7をそれぞれ作製した。この際、色素の溶解性をA(容易に溶解する)、B(溶解する)、C(溶けにくいが溶解する)の三段階で評価した。結果を表2に示す。
【0078】
<受像材料の作製>
支持体として合成紙(ユポFPG200、商品名、ユポコーポレーション社製、厚み200μm)を用い、この一方の面に下記組成の白色中間層形成用塗料組成物、受容層形成用塗料組成物の順にバーコーターにより塗布を行った。それぞれの塗布量は、乾燥時に白色中間層1.0g/m2、受容層4.0g/m2となる量とし、乾燥は各層110℃で30秒間行った。
【0079】
(白色中間層形成用塗料組成物)
ポリエステル樹脂(バイロン200、商品名、東洋紡積(株)製) 10質量部
蛍光増白剤(Uvitex OB、商品名、チバガイギー社製) 1質量部
酸化チタン 30質量部
メチルエチルケトン/トルエン(1/1) 90質量部
【0080】
(受容層形成用塗料組成物)
塩化ビニル−酢酸ビニル樹脂 100質量部
(ソルバインA、商品名、日信化学工業(株)製)
アミノ変性シリコーン 5質量部
(X22−3050C、商品名、信越化学工業(株)製)
エポキシ変性シリコーン 5質量部
(X22−300E、商品名、信越化学工業(株)製)
メチルエチルケトン/トルエン(=1/1) 400質量部
ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤 5質量部
(Tinuvin900、商品名、チバスペシャリティーケミカルズ社製)
【0081】
<画像記録および評価>
上記のようにして得られたインクシート1と受像材料とを、色素供与層と受像層とが接するようにして重ね合わせ、色素供与材料の背面側からサーマルヘッドを使用し、サーマルヘッドの出力0.25W/ドット、パルス巾0.15〜15ミリ秒、ドット密度6ドット/mmの条件で印字を行い、受像材料の受像層にマゼンタ色の色素を像状に染着させたところ、転写むらのない鮮明な画像記録が得られた。インクシート1をインクシート2〜8にそれぞれ変更したこと以外は同様にして画像記録を行った。
得られた各画像のベタ濃度(100%網点濃度)におけるステータスA反射濃度を測定し、反射濃度が1.8以上をA(非常に良い)、1.6以上1.8未満をB(良い)、1.0以上1.6未満をC(一応許容できる)の3段階で転写性を評価した。結果を下記表2に示す。
次に、得られた記録済の各熱転写受像材料を7日間、Xeライト(17000ルクス)で照射し、色像の光安定性(光堅牢性)を調べた。ステータスA反射濃度1.0を示す部分の照射後のステータスA反射濃度を測定し、照射前の反射濃度1.0に対する残存率(百分率)でその安定度をA(80%以上100%未満)、B(60%以上80%未満)、C(60%未満)の3段階で評価した。結果を下記表2に示す。
【0082】
【表2】

【0083】
【化8】

【0084】
上記の画像記録試験の結果、一般式(1)で表される本発明のアリーリデンピラゾロン色素を用いたインクシートから受像層に転写された画像は、色相が鮮やかであり、比較用の色素を用いた場合と比較していずれも光に対する安定性が向上し、優れた画像保存性を示すことがわかった。
また、一般式(1)で表される本発明のアゾ色素は、比較用の色素と比較して、意外にも溶解性に優れ、インクシート作製における溶解に関する負荷を大幅に軽減できること、さらには転写感度も向上し、これまで両立が難しいとされていたこれらの課題を一気に解決することができることがわかった。
【0085】
実施例3:カラートナーの作製と評価
<カラートナーの作製>
本発明のアリーリデンピラゾロン色素(例示化合物(6))3質量部、トナー用樹脂〔スチレン−アクリル酸エステル共重合体;ハイマーTB−1000F(商品名、三洋化成(株)製)〕100質量部をボールミルで混合粉砕後、150℃に加熱して熔融混和を行い、冷却後ハンマーミルを用いて粗粉砕し、次いでエアージェット方式による微粉砕機で微粉砕した。さらに分級して1〜20μmの粒子を選択し、トナーとした。
【0086】
<評価>
このトナー10質量部に対しキャリヤ鉄粉(EFV250/400、商品名、日本鉄粉(株)製)900質量部を均一に混合し現像剤とした。この現像剤を用いて乾式普通紙電子写真複写機〔NP−5000、商品名、キャノン(株)製〕で複写を行ったところ、優れた分光特性を有し、トナーとして優れた性質を示すことがわかった。
【0087】
実施例4:インクジェット用インクの作製と評価
<インクジェット用インクの作製>
本発明のアゾ色素(例示化合物(6))5.63g、ジオクチルスルホコハク酸ナトリウム7.04gを、下記高沸点有機溶媒(S−2)4.22g、下記高沸点有機溶媒(S−11)5.63gおよび酢酸エチル50ml中に70℃にて溶解させた。この溶液中に500mlの脱イオン水をマグネチックスターラーで撹拌しながら添加し、水中油滴型の粗粒分散物を作製した。
次に、この粗粒分散物を、マイクロフルイダイザー(MICROFLUIDEX INC社製)にて60MPaの圧力で5回通過させることで微粒子化を行い、さらにでき上がった乳化物をロータリーエバポレータにて酢酸エチルの臭気が無くなるまで脱溶媒を行った。
こうして得られた疎水性染料の微細乳化物に、ジエチレングリコール140g、グリセリン50g、SURFYNOL465(商品名、AirProducts&Chemicals社製)7g、脱イオン水900mlを添加してインクジェット用インクを作製した。
【0088】
【化9】

【0089】
<評価>
得られたインク液をインクジェットプリンタ(PM−G800、商品名、セイコーエプソン(株)製)のカートリッジに詰め、同機にてインクジェットペーパー画彩写真仕上げPro(商品名、富士写真フイルム(株)製)に画像を記録した。得られた画像は優れた分光特性を有し、インクジェット用インクとして優れた性質を示すことがわかった。
【0090】
実施例5:カラーフィルターの作製と評価
<カラーフィルターの作製>
(ポジ型レジスト組成物の調製)
m−クレゾール/p−クレゾール/ホルムアルデヒド(反応モル比=5/5/7.5)混合物から得たクレゾールノボラック樹脂(ポリスチレン換算質量平均分子量4300)3.4質量部、下式のフェノール化合物を用いて製造したo−ナフトキノンジアジド−5−スルホン酸エステル(平均2個の水酸基がエステル化されている)1.8質量部、ヘキサメトキシメチロール化メラミン0.8質量部、乳酸エチル20質量部、および例示化合物(6)を1質量部混合してポジ型レジスト組成物を得た。
【0091】
【化10】

【0092】
(カラーフィルターの作製)
得られたポジ型レジスト組成物をシリコンウエハにスピンコートした後、溶剤を蒸発させた。次いで、マスクを通してシリコンウエハを露光し、キノンジアジド化合物を分解させた。その後100℃で加熱し、次いでアルカリ現像により露光部を除去して0.8μmの解像度を有するポジ型着色パターンを得た。これを全面露光後、150℃、15分加熱してマゼンタの補色系カラーフィルターを得た。露光は、i線露光ステッパーHITACHI LD−5010−i(商品名、日立製作所(株)製、NA=0.40)により行った。また、現像液は、SOPDまたはSOPD−B(いずれも商品名、住友化学工業(株)製)を用いた。
【0093】
<評価>
図1に得られたカラーフィルターの透過スペクトルを示す。図1の結果から明らかなように、得られたカラーフィルターは優れた分光特性、光の透過性を有し、カラーフィルターとして優れた性質を示すことがわかった。
【産業上の利用可能性】
【0094】
本発明によれば、吸収がシャープで優れた分光特性および高い堅牢性を有し、かつ溶解性に優れた新規なアリーリデンピラゾロン色素およびこれを含有する着色組成物を提供することができる。また、本発明によれば、印画サンプルにおける優れた色再現性、画像保存性および転写感度の全てを満足する感熱転写材料用インクシートおよび感熱転写記録方法を提供することができる。このインクシートは、作製時の作業負荷と環境負荷が大幅に軽減されている点でも優れている。さらには、該アリーリデンピラゾロン色素を用いたカラートナー、インクジェット用インクおよびカラーフィルターを提供することもできる。このため、本発明は高画質のフルカラー記録等に効果的に用いられることが期待され、産業上の利用可能性が高い。
【図面の簡単な説明】
【0095】
【図1】実施例で作製したカラーフィルターの透過スペクトルである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)で表されるアリーリデンピラゾロン色素。
【化1】

(一般式(1)中、R1、R2、R4およびR5は、各々独立に水素原子または1価の置換基を表し、R3は1価の置換基を表し、nは0〜4の整数を表す。nが2以上のとき、複数のR3は互いに同一であっても異なっていてもよい。また、R1およびR2は互いに結合して環構造を形成してもよい。)
【請求項2】
請求項1に記載の色素を含有することを特徴とする着色組成物。
【請求項3】
請求項1に記載の色素を含有することを特徴とする感熱転写記録用インクシート。
【請求項4】
支持体上にポリマーを含有するインク受容層を有する受像材料上に請求項3に記載の感熱転写記録用インクシートを用いて画像を形成することを特徴とする感熱転写記録方法。
【請求項5】
請求項1に記載の色素を含有することを特徴とするカラートナー。
【請求項6】
請求項1に記載の色素を含有することを特徴とするインクジェット用インク。
【請求項7】
請求項1に記載の色素を含有することを特徴とするカラーフィルター。

【図1】
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【公開番号】特開2008−248123(P2008−248123A)
【公開日】平成20年10月16日(2008.10.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−92232(P2007−92232)
【出願日】平成19年3月30日(2007.3.30)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】