説明

アリールフルオレン及びそれらの類似体の合成プロセス

本発明は、次の一般式(I)の化合物の合成プロセスを提供する。
【化1】


式中、m=0若しくは1であり、n及びpが0若しくは1〜4であり、Xが単結合、O、S、若しくはNHであり、R〜Rが請求項1で定義される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アリールフルオレン及びそれらの類似体の合成のための、迅速で高収率の柔軟なプロセスに関する。
【背景技術】
【0002】
OLED(有機発光ディスプレイ:organic light emitting displays)を使用して製作されるディスプレイは、他のフラットパネル技術に勝る多くの利点を提供する。それらは、明るく、色鮮やかで、高速スイッチングであり、広視野角を提供し、また様々な基材上に製作するのが容易で安価である。有機(ここでは有機金属を含める)LEDは、ポリマー、小分子、及びデンドリマーを含めた材料を使用して、使用される材料に応じた様々な色で製作することができる。ポリマーベースの有機LEDの例は、WO90/13148、WO95/06400、及びWO99/48160に記載されており、デンドリマーベースの材料の例は、WO99/21935及びWO02/067343に記載されており、いわゆる小分子ベースのデバイスの例は、米国特許第4,539,507号に記載されている。
【0003】
典型的なOLEDデバイスは、有機材料の2つの層を含んでおり、一方の層が、発光ポリマー(LEP:light emitting polymer)、オリゴマー、又は発光低分子量材料などの発光材料の層であり、他方の層が、ポリチオフェン誘導体又はポリアニリン誘導体などの正孔輸送材料の層である。
【0004】
有機LEDを画素のマトリクスで基材上に堆積させて、単色又は多色画素ディスプレイを形成することができる。多色ディスプレイは、赤色、緑色、及び青色発光画素群を使用して構築することができる。いわゆるアクティブマトリクス式ディスプレイは、各素子に結び付けられた記憶素子、通常は蓄積容量及びトランジスタを有しており、パッシブマトリクス式ディスプレイは、そのような記憶素子をもたず、代わりに、安定した画像の印象を与えるために繰り返し走査される。他のパッシブディスプレイには、複数のセグメントが共通の電極を共有し、他の電極に電圧を印加することによってセグメントを点灯できる、セグメントディスプレイが含まれる。単純なセグメントディスプレイは、走査する必要がないが、複数のセグメント領域を含むディスプレイでは、電極を多重化し(電極の数を削減するため)、それから走査することができる。
【0005】
図1は、OLEDデバイス100の一例の垂直断面を示す。アクティブマトリクス式ディスプレイでは、画素の領域の一部が関連駆動回路(図1には図示せず)によって占められる。デバイスの構造は、説明のためにいくらか簡略化されている。
【0006】
OLED100は、通常は0.7mm又は1.1mmのガラス、任意で、透明なプラスチック又はほぼ透明な他の何らかの材料である、基材102を含む。通常は厚さ約150nmのITO(インジウムスズ酸化物:indium tin oxide)を含み、その一部分を覆って金属接触層が設けられたアノード層104が、基材上に堆積される。通常、接触層は、約500nmのアルミニウム、又はクロム層の間で挟持されたアルミニウム層を含んでおり、これは、時に、アノード金属と呼ばれる。ITO及び接触金属でコーティングされたガラス基材は、米国のコーニング(Corning)から市販されている。ITOを覆う接触金属は、アノード接続が透明である必要がない場合、特に、外部からデバイスに接触する場合に、抵抗が低減された経路を提供するのに役立つ。接触金属は、望ましくない場合、特に、除去しなければディスプレイを覆い隠すことになる場合、標準的なフォトリソグラフィプロセスと、その後のエッチングとによって、ITOから除去される。
【0007】
ほぼ透明な正孔輸送層106がアノード層の上に堆積され、続いて電界発光層108とカソード110とが堆積される。電界発光層108は、例えば、PPV(ポリ(p−フェニレンビニレン))を含むことができ、アノード層104と電界発光層108との正孔エネルギーレベルを一致させるのに役立つ正孔輸送層106は、導電性の透明ポリマー、例えば、ドイツのバイエルAG(Bayer AG)から市販のPEDOT−PSS(ポリスチレン−スルホネートでドープされたポリエチレン−ジオキシチオフェン)を含むことができる。典型的なポリマーベースのデバイスでは、正孔輸送層106は、約200nmのPEDOTを含むことができ、発光ポリマー層108は、通常、厚さ約70nmである。これらの有機層は、スピンコーティングによって(後でプラズマエッチング若しくはレーザアブレーションによって望ましくない領域から材料を除去する)、又はインクジェット印刷によって堆積させることができる。この後者の場合、有機層をその中に堆積させることのできるウェルを画定するために、例えばフォトレジストを使用して、基材の上にバンク112を形成することができる。このようなウェルは、ディスプレイの発光領域又は画素を画定する。
【0008】
カソード層110は、通常、より厚いアルミニウムのキャッピング層で覆われた、カルシウムやバリウムなどの低仕事関数金属(例えば、物理蒸着によって堆積される)を含む。任意で、電子エネルギーレベル一致の改善のために、フッ化リチウム層などの追加の層を電界発光層にすぐ隣接して設けることもできる。カソードセパレータ(図1には図示せず)を用いて、カソードラインの相互電気絶縁を達成又は強化することができる。
【0009】
同じ基本構造を、また、小分子デバイスにも使用することができる。
【0010】
通常、単一の基材の上にいくつものディスプレイが製作され、製作プロセスの終わりに基材がスクライブされ、ディスプレイが分離された後、酸化及び湿気の侵入を阻止するためにそれぞれに封入缶が取り付けられる。
【0011】
OLEDを照らすために、アノードとカソードとの間に電力が印加されており、図1ではバッテリ118によって表されている。図1に示した例では、透明なアノード104及び基材102を通じて光が発せられ、カソードは、一般に反射性である;このようなデバイスは、「ボトムエミッタ(bottom emitters)」と呼ばれる。また、カソードを通じて発光するデバイス(「トップエミッタ(top emitters)」)も、例えば、カソードがほぼ透明になるようにカソード層110の厚さを約50〜100nm未満に維持することによって構築することができる。
【0012】
有機LEDを画素のマトリクスで基材上に堆積させて、単色又は多色画素ディスプレイを形成することができる。多色ディスプレイは、赤色、緑色、及び青色発光画素群を使用して構築することができる。そのようなディスプレイでは、個々の素子は、一般に、画素を選択するために横列(若しくは縦列)のラインを活性化することによって取り扱われ、画素の横列(若しくは縦列)が書き込まれてディスプレイを作り出す。いわゆるアクティブマトリクス式ディスプレイは、各素子に結び付けられた記憶素子、通常は蓄積容量及びトランジスタを有しており、パッシブマトリクス式ディスプレイは、そのような記憶素子をもたず、代わりに、安定した画像の印象を与えるために、いくらかTV画像と同様に、繰り返し走査される。
【0013】
ここで図1bを参照すると、この図は、パッシブマトリクス式OLEDディスプレイデバイス150の簡略断面図を示しており、この図1bでは、図1と類似の要素は、類似の参照番号によって示されている。ここに示したように、正孔輸送層106及び電界発光層108は、アノード金属104及びカソード層110内にそれぞれ画定された、互いに垂直なアノードラインとカソードラインとの交点のところで、複数の画素152に細分される。図では、カソード層110内に画定された導電ライン154が紙面内へと走っており、カソードラインに対して直角に走る複数のアノードライン158の1つを通る断面が示されている。カソードラインとアノードラインとの交点にある電界発光画素152は、関連ライン間に電圧を印加することによって取り扱うことができる。アノード金属層104は、ディスプレイ150に外部接点を提供しており、OLEDへのアノード接続にもカソード接続にも使用することができる(アノード金属リードアウトの上にカソード層パターンを走らせることによる)。
【0014】
前述したOLED材料、特に、発光ポリマー材料及びカソードは、酸化及び湿気の影響を受けやすい。したがって、デバイスは、UV(紫外線)硬化エポキシ糊113によってアノード金属層104上に取り付けられた金属缶111に封入されており、この糊の中の小さなガラスビーズが、金属缶が接点に接触してショートするのを防いでいる。好ましくは、アノード金属接点は、硬化のための糊113のUV光への曝露を促進するために、金属缶111の縁部(lip)の下を該アノード金属接点が通る場所で薄くされている。
【0015】
全プラスチック製のフルカラースクリーンの実現のために、相当な努力がささげられてきた。この目標を達成するための主な課題は、(1)赤色、緑色、及び青色の3つの基本色の光を発する共役高分子を利用できるようにすること、並びに(2)該共役高分子を加工してフルカラーディスプレイ構造を製作するのが容易でなければならないことである。PLEDデバイスは、共役高分子の化学構造を変えることによって発光色の操作を達成できるので、第1の要件を満たす見込みが高い。しかし、共役高分子の化学的性質の変調は、実験室規模では容易で費用がかからないことが多いが、工業規模では費用のかかる複雑なプロセスとなる場合がある。フルカラーマトリクスデバイスの容易な加工性及び構築の第2の要件は、微細な多色画素をどのようにマイクロパターン化するか、またフルカラー発光をどのように達成するかという問題を提起する。インクジェット印刷及びハイブリッドインクジェット印刷技術は、PLEDデバイスのパターニングに関して大きな関心を集めてきた(例えば、R.F.サービス(R. F. Service)、サイエンス(Science)、1998、279、1135;ウドゥル(Wudl)他、アプライド・フィジクス・レターズ(Appl. Phys. Lett.)、1998、73、2561;J・バラタン(J. Bharathan)、Y・ヤン(Y. Yang)、アプライド・フィジクス・レターズ(Appl. Phys. Lett.)、1998、72、2660;並びにT・R・ヘブナー(T. R. Hebner)、C・C・ウー(C. C. Wu)、D・マーシー(D. Marcy)、M・L・ルー(M. L. Lu)、J・スターム(J. Sturm)、アプライド・フィジクス・レターズ(Appl. Phys. Lett.)、1998、72、519を参照)。
【0016】
フルカラーディスプレイの開発に寄与するように、直接色調整、良好な加工性、及び費用のかからない大規模製作の可能性を示す共役高分子が求められてきた。ステップラダーポリマーであるポリ−2,7−フルオレンは、青色発光ポリマーに関する多くの研究の主題である(例えば、A・W・グライス(A,W. Grice)、D・D・C・ブラッドリー(D. D. C. Bradley)、M・T・ベルニウス(M. T. Bernius)、M・インベースカラン(M. Inbasekaran)、W・W・ウー(W. W. Wu)、及びE・P・ウー(E. P. Woo)、アプライド・フィジクス・レターズ(Appl. Phys. Lett.)、1998、73、629;J・S・キム(J. S. Kim)、R・H・フレンド(R. H. Friend)、及びF・カチアリ(F. Cacialli)、アプライド・フィジクス・レターズ(Appl. Phys. Lett.)、1999、74、3084;WO−A−00/55927、並びにM・ベルニウス(M. Bernius)他、アドバンスト・マテリアルズ(Adv. Mater.)、2000、12、第23号、1737を参照)。このクラスの共役高分子は、拡張共役を妨げることなく、したがって固体状態で高い蛍光量子収率をもたらす、遠くのC−9位での可溶化基(特に、アリール基)の結合によってもたらされる優れた加工性を有する(例えば、Q・ペイ(Q. Pei)、Y・ヤン(Y. Yang)、ジャーナル・オブ・アメリカン・ケミカル・ソサエティ(J. Am. Chem. Soc.)1996、118、7416参照)。ポリ−9,9−ジアリール置換フルオレンの他の利益は、それらの優れた熱的安定性(Td>400℃)及び化学的安定性、並びにそれらの良好な被膜形成特性である。
【0017】
9,9−二置換フルオレンモノマーをベースとしてホモポリマー及びコポリマーを製造するプロセスは、AA−BB型モノマー及びAB型モノマー両方の金属媒介クロスカップリングに依存する。現在、当該技術分野にはかなりの先行技術が存在する。そのようなコポリマーは、ジブロモ置換モノマーとNi(II)塩からその場(in situ)で形成されたNi(0)触媒とを接触させることによる、該ジブロモ置換モノマーのクロスカップリングによって製造することができる(ヤマモト・カップリング(Yamamoto coupling)、ポリマー科学の進展(Progress in Polymer Science)、第17巻、p.1153、1992)(E・P・ウー(E. P. Woo)他、米国特許第5,708,130号;同第5,962,631号)。アリールボロン酸及びアリールボロン酸エステルとアリール又はビニルハロゲン化物との間のPd(0)媒介クロスカップリング(スズキ・カップリング(Suzuki coupling)、A・スズキ(A. Suzuki)他、シンセティック・コミュニケーション(Synth. Commun.)、1981、11、513)は、PLEDとしての用途のための比較的高品質のポリ(フルオレン)誘導体を製造するために、相間移動触媒と無機塩基との存在下で開発された(M・インベースカラン(M. Inbasekaran)、米国特許第5,777,070号)。また、正孔輸送特性を有する様々なコモノマーへの拡張も実現されてきた(WO−A−99/54385)。さらなる発展では、ホウ素官能基を−BX(式中、Xは、F又はOH)へと転換させるために、触媒と塩基との組合せが選択された(WO−A−00/53656)。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
これらのホモポリマー及びコポリマーの合成に付随した1つの問題は、2,7−ジブロモ置換9,9−ジアリールフルオレンなど、対応する2,7−誘導体化モノマーの合成が困難であるという事実である。現在使用されている方法はいくつもあるが、いずれも、比較的収率に劣り、プロセスのスケールアップが困難であるので、あまり満足のいくものではない。例えば、2,7−ジブロモ−9,9−ジフェニルフルオレンの合成に現在採用されている最も一般的に使用される方法の1つは、DE19846767に開示されている以下の5工程プロセスである:
【化7】

【0019】
5工程にわたるわずか40%の収率は、不十分であり、その技術自体が、様々なタイプの官能基を9−位に導入する柔軟性に欠ける。ジアリールフルオレンモノマー及びその類似体をより少ない工程且つより高い収率で合成できるようにする、より迅速且つより柔軟性の高いプロセスであって、工業規模で容易に利用できるプロセスを開発することが、きわめて望ましい。本発明の目的は、そのようなプロセスを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0020】
本発明の第1の態様では、式(I)の化合物の合成プロセスであって:
【化8】

式中、
m=0若しくは1であり、
n及びpは、同一若しくは異なるものであり、それぞれ0若しくは1〜4の整数であり、
Xは、単結合、O、S、若しくはNHであり、
は、水素原子、以下で定義されるアルキル基、以下で定義されるアルケニル基、以下で定義されるアルキニル基、以下で定義されるアリール基、及び以下で定義されるヘテロアリール基から成る群から選択され、
は、以下で定義されるアリール基及び以下で定義されるヘテロアリール基から成る群から選択され、
各R及びRは、同一若しくは異なるものであり、以下で定義されるアルキル基、以下で定義されるアルケニル基、以下で定義されるアルキニル基、以下で定義されるハロアルキル基、シアノ基、ニトロ基、ハロゲン原子、ヒドロキシル基、カルボキシ基、以下で定義されるアルコキシカルボニル基、以下で定義されるアルキルカルボニル基、以下で定義されるアルコキシ基、以下で定義されるハロアルコキシ基、以下で定義されるアルコキシアルキル基、以下で定義されるアリール基、以下で定義されるヘテロアリール基、以下で定義されるアリールオキシ基、及び以下で定義されるアラルキル基から成る群から選択され、又は、
隣接炭素原子上の2つのR基が一緒になって式(II)の基を表しており:
【化9】

式中、
qは、0若しくは1〜4の整数であり、
Yは、単結合、CH、O、S、若しくはNHであり、
は、以下で定義されるアルキル基、以下で定義されるアルケニル基、以下で定義されるアルキニル基、以下で定義されるアリール基、及び以下で定義されるヘテロアリール基から成る群から選択され、
各Rは、同一若しくは異なるものであり、以下で定義されるアルキル基、以下で定義されるアルケニル基、以下で定義されるアルキニル基、以下で定義されるハロアルキル基、シアノ基、ニトロ基、ハロゲン原子、ヒドロキシル基、カルボキシ基、以下で定義されるアルコキシカルボニル基、以下で定義されるアルキルカルボニル基、以下で定義されるアルコキシ基、以下で定義されるハロアルコキシ基、以下で定義されるアルコキシアルキル基、以下で定義されるアリール基、以下で定義されるヘテロアリール基、以下で定義されるアリールオキシ基、及び以下で定義されるアラルキル基から成る群から選択され、且つ/又は、
隣接炭素原子上の2つのR基が一緒になって式(III)の基を表しており:
【化10】

式中、
rは、0若しくは1〜4の整数であり、
Zは、単結合、CH、O、S、若しくはNHであり、
は、以下で定義されるアルキル基、以下で定義されるアルケニル基、以下で定義されるアルキニル基、以下で定義されるアリール基、及び以下で定義されるヘテロアリール基から成る群から選択され、
各Rは、同一若しくは異なるものであり、以下で定義されるアルキル基、以下で定義されるアルケニル基、以下で定義されるアルキニル基、以下で定義されるハロアルキル基、シアノ基、ニトロ基、ハロゲン原子、ヒドロキシル基、カルボキシ基、以下で定義されるアルコキシカルボニル基、以下で定義されるアルキルカルボニル基、以下で定義されるアルコキシ基、以下で定義されるハロアルコキシ基、以下で定義されるアルコキシアルキル基、以下で定義されるアリール基、以下で定義されるヘテロアリール基、以下で定義されるアリールオキシ基、及び以下で定義されるアラルキル基から成る群から選択され、
前記アルキル基は、1〜20個の炭素原子を有する直鎖若しくは分枝状アルキル基であり、
前記アルケニル基は、2〜20個の炭素原子を有する直鎖若しくは分枝状アルケニル基であり、
前記アルキニル基は、2〜20個の炭素原子を有する直鎖若しくは分枝状アルキニル基であり、
前記アリール基は、1つ若しくは複数の環内に6〜14個の炭素原子を有する芳香族炭化水素基であり、任意で、シアノ基、ニトロ基、ハロゲン原子、ヒドロキシル基、カルボキシ基、以下で定義されるアルコキシカルボニル基、以下で定義されるアルキルカルボニル基、アミノ基、以下で定義されるアルコキシ基、以上で定義したアルキル基、以下で定義されるハロアルキル基、以下で定義されるアルコキシアルキル基、アリール基、以下で定義されるアリールオキシ基、及び以下で定義されるアラルキル基から成る群から選択される少なくとも1つの置換基で置換されていてもよく、
前記ヘテロアリール基は、硫黄原子、酸素原子、及び窒素原子から成る群から選択される1〜3個のヘテロ原子を含有する5〜7員環の芳香族複素環基であり、前記基は、任意で、シアノ基、ニトロ基、ハロゲン原子、ヒドロキシル基、カルボキシ基、以下で定義されるアルコキシカルボニル基、以下で定義されるアルキルカルボニル基、アミノ基、以下で定義されるアルコキシ基、以上で定義したアルキル基、以下で定義されるハロアルキル基、以下で定義されるアルコキシアルキル基、以上で定義したアリール基、以下で定義されるアリールオキシ基、及び以下で定義されるアラルキル基から成る群から選択される少なくとも1つの置換基で置換されており、
前記ハロアルキル基は、少なくとも1つのハロゲン原子で置換された、以上で定義したアルキル基であり、
前記アルコキシ基は、酸素原子に結合した、以上で定義したアルキル基であり、
前記ハロアルコキシ基は、少なくとも1つのハロゲン原子で置換された、以上で定義したアルコキシ基であり、
前記アリールオキシ基は、酸素原子に結合した、以上で定義したアリール基であり、
前記アルコキシアルキル基は、以上で定義した少なくとも1つのアルコキシ基で置換された、以上で定義したアルキル基であり、
前記アルキルカルボニル基は、水素原子若しくは以上で定義したアルキル基で置換されたカルボニル基であり、
前記アルコキシカルボニル基は、以上で定義したアルコキシ基で置換されたカルボニル基であり、
前記アラルキル基は、以上で定義した少なくとも1つのアリール基によって置換された、以上で定義したアルキル基であり、
前記プロセスは、式(IV)の化合物:
【化11】

【0021】
(式中、R、R、R、X、m、n、及びpは、以上で定義したとおり)と、式R−Lの化合物(式中、Rは以上で定義したとおり、Lは脱離基)とを、パラジウム触媒及び塩基の存在下で反応させる工程を含むプロセスが提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以上で示したように、パラジウム触媒によるカップリング反応は、当該技術分野で公知であるが、ジアリールフルオレン及びそれらの類似体の合成については知られていない。そのようなPd触媒反応の例としては、スズキ・カップリング、スティル・カップリング(Stille coupling)、及びブッフバルト・カップリング(Buchwald coupling)が挙げられる:
Ar−Br+Ar−B(OH) → Ar−Ar スズキ・カップリング
Ar−Br+Ar−Sn(Me) → Ar−Ar スティル・カップリング
Ar−Br+Ar−NH → Ar−N−Ar ブッフバルト・カップリング
【0023】
これらのパラジウム触媒反応が、Ar−L型の化合物(式中、Lは、ハライドやトシラートなどの脱離基)を、パラジウム触媒及び塩基の存在下で酸性C−H基を有する化合物でカップリングする(C−H基を脱プロトン化するため)ことを伴う本発明のプロセスとは、大きく異なることが容易に明らかである。アリールカルボカチオンによる酸性水素の置換を伴う反応は、既に、ケトンとエノラートとのα−アリール化について[例えば、D・A・カルキン(D. A. Culkin)及びJ・F・ハートウィグ(J. F. Hartwig)、化学研究報告(Accounts of Chemical Research)(2003)、36(4)、234−245参照]、並びにベンジルC−H位のα−アリール化について[例えば、J・F・ハートウィグ(J. F. Hartwig)他、ジャーナル・オブ・アメリカン・ケミカル・ソサエティ(J. Am. Chem. Soc.)2002、124、12557−12565;J・F・ハートウィグ(J. F. Hartwig)及びD・A・カルキン(D. A. Culkin)、ジャーナル・オブ・アメリカン・ケミカル・ソサエティ(J. Am. Chem. Soc.)2002、124、9330−9331;並びにW・A・モラディ(W. A. Moradi)及びS・L・ブッフバルト(S. L. Buchwald)、ジャーナル・オブ・アメリカン・ケミカル・ソサエティ(J. Am. Chem. Soc.)2001、123、7996−8002参照]開示されている。しかし、ベンジル型カルバニオンを、フルオレン型化合物のC−9位のところで(塩基による脱プロトン化によって)生成することができ、またパラジウム挿入されたハロゲン化アリール若しくは類似の脱離基(Ar−Pd−L)と反応させることができることについては、これまで開示も示唆もされていない。
【0024】
9−位におけるフルオレンのジフェニル化を例に取ると、重要な工程は、以下に示されるように、フルオレン基の脱プロトン化C−9炭素原子と、パラジウム挿入されたハロゲン化フェニル若しくは類似の脱離基との反応である:
【化12】

【0025】
ジフェニル化化合物を合成した後、次いで望むならこれを、例えばフルオレン部分の2−位及び7−位のところで容易に誘導体化して、臭素原子などの脱離基を導入し、最終目標である2,7−誘導体化モノマーを提供することができる:
【化13】

【0026】
これを例に取ると、(安価で容易に入手可能な出発物質であるフルオレンからの)第1の工程の収率は、80%を超えており、また(直接的なハロゲン化である)第2の工程も良好な収率をもたらす。ゆえに、第1の工程としてパラジウム触媒アリール化を採用すると、2,7−ジブロモ−9,9−ジフェニルフルオレンを単純な2工程プロセスにおいて全収率73%で生成することができる。これは、容易に理解されるが、全収率が40%しかないDE19846767に開示の5工程プロセスよりもかなり迅速であり、はるかに高い収率をもたらす。
【0027】
パラジウム触媒は、アリールカルボカチオンによる酸性水素の置換を伴う反応に適した任意のものであってよい[例えば、D・A・カルキン(D. A. Culkin)及びJ・F・ハートウィグ(J. F. Hartwig)、化学研究報告(Accounts of Chemical Research)(2003)、36(4)、234−245;J・F・ハートウィグ(J. F. Hartwig)他、ジャーナル・オブ・アメリカン・ケミカル・ソサエティ(J. Am. Chem. Soc.)2002、124、12557−12565;J・F・ハートウィグ(J. F. Hartwig)及びD・A・カルキン(D. A. Culkin)、ジャーナル・オブ・アメリカン・ケミカル・ソサエティ(J. Am. Chem. Soc.)2002、124、9330−9331;並びに、W・A・モラディ(W. A. Moradi)及びS・L・ブッフバルト(S. L. Buchwald)、ジャーナル・オブ・アメリカン・ケミカル・ソサエティ(J. Am. Chem. Soc.)2001、123、7996−8002に開示されているもの]。パラジウム触媒は、Pd(0)又はPd(II)の形態、例えば、酢酸パラジウム(II)又はビス(ジベンゼニリデンアセトン)パラジウム(0)(Pddba)とすることができる。
【0028】
好ましくは、パラジウム触媒は、次のいずれかによってホスフィン配位子を含むべきである:
(i)酢酸パラジウム(II)又はビス(ジベンゼニリデンアセトン)パラジウム(0)若しくはPdCl(o−tol)などのパラジウム触媒をホスフィンと混合することによって:該ホスフィンの好ましい例としては、トリアルキルホスフィン(各アルキル基は、同一若しくは異なるものであり、以上で定義したとおりで、好ましくはメチル、エチル、又はt−ブチルである)、トリシクロアルキルホスフィン(各シクロアルキル基は、同一若しくは異なるものであり、3〜7個の炭素原子を有し、好ましくはシクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、又はシクロヘキシルである)、並びにトリアリールホスフィン(各アリール基は、同一若しくは異なるものであり、1つ若しくは複数の環内に6〜14個の炭素原子を有する芳香族炭化水素基であり、任意で、シアノ基、ニトロ基、ハロゲン原子、ヒドロキシル基、カルボキシ基、以上で定義したアルコキシカルボニル基、以上で定義したアルキルカルボニル基、以上で定義した1つ若しくは2つのアルキル基によって任意で置換されたアミノ基、以上で定義したアルコキシ基、以上で定義したアルキル基、以上で定義したハロアルキル基、以上で定義したアルコキシアルキル基、以上で定義したアリール基、以上で定義したアリールオキシ基、及び以上で定義したアラルキル基から成る群から選択される少なくとも1つの置換基で置換されていてもよく、好ましくはフェニル及びナフチルである)が挙げられ;そのようなホスフィンの特に好ましい例としては、次が挙げられる:トリフェニルホスフィン、トリ(t−ブチル)ホスフィン、トリシクロヘキシルホスフィン、
【化14】

或いは、
(ii)パラジウム錯体、例えば、PdCl(PPh又はテトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)の配位子として、ホスフィン基を含めることによって。
【0029】
これらの選択肢のうち、パラジウム(0)又はパラジウム(II)触媒[好ましくは、酢酸パラジウム(II)若しくはビス(ジベンゼニリデンアセトン)パラジウム(0)]と、トリシクロヘキシルホスフィン、トリフェニルホスフィン、及びトリブチルホスフィンから成る群から選択されるホスフィン、並びにホスフィン含有パラジウム触媒PdCl(PPhとの混合物がより好ましく、ビス(ジベンゼニリデンアセトン)パラジウム(0)又は酢酸パラジウム(II)とトリシクロヘキシルホスフィンとの混合物が最も好ましい。混合物中では、パラジウムとホスフィン化合物とのモル比は、所望の反応を触媒するのに適した任意のものであり、典型的には10:1〜1:10、より典型的には5:1〜1:5、さらに典型的には2:1〜1:2の範囲、例えば、1:1であってよい。
【0030】
使用されるパラジウム触媒の量は、存在する量が所望のアリール挿入反応を触媒するのに十分であれば、かなり多様にすることができる。典型的には、使用されるパラジウム触媒のモル当量数は、式(IV)の出発化合物の量に比べて0.1〜10%、より典型的には0.2〜5%、さらに典型的には0.5〜2%であり、好ましくは0.5〜1%である。
【0031】
好ましい一実施形態では、式(IV)の化合物中の置換基Rは、水素原子であり、式(IV)の化合物の量に比べて2モル当量以上の式R−Lの化合物が使用され、その結果、酸性プロトン位置で式Rの2つのアリール又はヘテロアリール基が置換されることになる、すなわち、その反応は、次のとおりである:
【化15】

【0032】
置換基R、R、R、R、R、R、又はRがアルキル置換基である場合、前記アルキル基は、1〜20個の炭素原子を有する直鎖若しくは分枝状アルキル基であり、それぞれ同一であっても異なるものであってもよい。それぞれが、例えば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、s−ブチル、tert−ブチル、n−ペンチル、イソペンチル、2−メチルブチル、ネオペンチル、1−エチルプロピル、n−ヘキシル、イソヘキシル、4−メチルペンチル、3−メチルペンチル、2−メチルペンチル、1−メチルペンチル、3,3−ジメチルブチル、2,2−ジメチルブチル、1,1−ジメチルブチル、1,2−ジメチルブチル、1,3−ジメチルブチル、2,3−ジメチルブチル、又は2−エチルブチル基であってよい。好ましい例としては、メチル、エチル、イソプロピル、及びt−ブチル基が挙げられる。
【0033】
置換基R、R、R、R、R、R、又はRがアルケニル基である場合、前記アルケニル基は、2〜20個の炭素原子を有する直鎖若しくは分枝状アルケニル基であり、それぞれ同一であっても異なるものであってもよい。それぞれが、例えば、ビニル、2−プロペニル、1−メチル−2−プロペニル、2−メチル−2−プロペニル、2−エチル−2−プロペニル、2−ブテニル、1−メチル−2−ブテニル、2−メチル−2−ブテニル、1−エチル−2−ブテニル、3−ブテニル、1−メチル−3−ブテニル、2−メチル−3−ブテニル、1−エチル−3−ブテニル、2−ペンテニル、1−メチル−2−ペンテニル、2−メチル−2−ペンテニル、3−ペンテニル、1−メチル−3−ペンテニル、2−メチル−3−ペンテニル、4−ペンテニル、1−メチル−4−ペンテニル、2−メチル−4−ペンテニル、2−ヘキセニル、3−ヘキセニル、4−ヘキセニル、又は5−ヘキセニル基であってよい。好ましい例としては、ビニル及び2−プロペニル基が挙げられる。
【0034】
置換基R、R、R、R、R、R、又はRがアルキニル基である場合、前記アルキニル基は、2〜20個の炭素原子を有する直鎖若しくは分枝状アルキニル基であり、それぞれ同一であっても異なるものであってもよい。それぞれが、例えば、エチニル、2−プロピニル、1−メチル−2−プロピニル、2−ブチニル、1−メチル−2−ブチニル、1−エチル−2−ブチニル、3−ブチニル、1−メチル−3−ブチニル、2−メチル−3−ブチニル、1−エチル−3−ブチニル、2−ペンチニル、1−メチル−2−ペンチニル、3−ペンチニル、1−メチル−3−ペンチニル、2−メチル−3−ペンチニル、4−ペンチニル、1−メチル−4−ペンチニル、2−メチル−4−ペンチニル、2−ヘキシニル、3−ヘキシニル、4−ヘキシニル、又は5−ヘキシニル基であってよい。好ましい例としては、エチニル及び2−プロピニル基が挙げられる。
【0035】
置換基R、R、R、R、R、R、R、又はRがアリール基である場合、前記アリール基は、1つ若しくは複数の環内に6〜14個の炭素原子を有する芳香族炭化水素基であり、任意で、シアノ基、ニトロ基、ハロゲン原子、ヒドロキシル基、カルボキシ基、以上で定義したアルコキシカルボニル基、以上で定義したアルキルカルボニル基、アミノ基、以上で定義したアルコキシ基、以上で定義したアルキル基、以上で定義したハロアルキル基、以上で定義したアルコキシアルキル基、アリール基、以上で定義したアリールオキシ基、及び以上で定義したアラルキル基から成る群から選択される少なくとも1つの置換基で置換されていてもよく、それぞれ同一であっても異なるものであってもよい。それぞれが、例えば、フェニル、ナフチル、フェナントリル、又はアントラセニル基であってよい。好ましい例としては、フェニル及びナフチル基が挙げられる。
【0036】
置換基R、R、R、R、R、R、R、又はRがヘテロアリール基である場合、前記ヘテロアリール基は、硫黄原子、酸素原子、及び窒素原子から成る群から選択される1〜3個のヘテロ原子を含有する5〜7員環の芳香族複素環基であり、前記基は、任意で、シアノ基、ニトロ基、ハロゲン原子、ヒドロキシル基、カルボキシ基、以上で定義したアルコキシカルボニル基、以上で定義したアルキルカルボニル基、アミノ基、以上で定義したアルコキシ基、以上で定義したアルキル基、以上で定義したハロアルキル基、以上で定義したアルコキシアルキル基、以上で定義したアリール基、以上で定義したアリールオキシ基、及び以上で定義したアラルキル基から成る群から選択される少なくとも1つの置換基で置換されており、それぞれ同一であっても異なるものであってもよい。それぞれが、例えば、フリル、チエニル、ピロリル、ピラゾリル、イミダゾリル、オキサゾリル、イソオキサゾリル、チアゾリル、イソチアゾリル、トリアゾリル、テトラゾリル、チアジアゾリル、ピリジル、ピリダジニル、ピリミジニル、又はピラジニル基であってよい。好ましい例としては、フリル、チエニル、ピロリル、及びピリジル基が挙げられる。
【0037】
置換基R、R、R、R、R、R、又はRがハロアルキル基である場合、前記ハロアルキル基は、少なくとも1つのハロゲン原子で置換された、以上で定義したアルキル基であり、それぞれ同一であっても異なるものであってもよい。それぞれが、例えば、トリフルオロメチル、トリクロロメチル、ジフルオロメチル、ジクロロメチル、ジブロモメチル、フルオロメチル、2,2,2−トリクロロエチル、2,2,2−トリフルオロエチル、2−ブロモエチル、2−クロロエチル、2−フルオロエチル、又は2,2−ジブロモエチル基であってよい。好ましい例としては、トリフルオロメチル、ジフルオロメチル、ジクロロメチル、2−フルオロエチル、及び2,2,2−トリフルオロエチル基が挙げられる。
【0038】
置換基R、R、R、R、R、R、又はRがアルコキシ基である場合、前記アルコキシ基は、酸素原子に結合した、以上で定義したアルキル基であり、それぞれ同一であっても異なるものであってもよい。それぞれが、例えば、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、イソプロポキシ、又はブトキシ基など、1〜4個の炭素原子を有するアルコキシ基であってよい。好ましい例としては、メトキシ及びエトキシ基が挙げられる。
【0039】
置換基R、R、R、R、R、R、又はRがハロアルコキシ基である場合、前記ハロアルコキシ基は、少なくとも1つのハロゲン原子で置換された、以上で定義したアルコキシ基であり、それぞれ同一であっても異なるものであってもよい。それぞれが、例えば、トリフルオロメトキシ、トリクロロメトキシ、ジフルオロメトキシ、ジクロロメトキシ、ジブロモメトキシ、フルオロメトキシ、2,2,2−トリクロロエトキシ、2,2,2−トリフルオロエトキシ、2−ブロモエトキシ、2−クロロエトキシ、2−フルオロエトキシ、又は2,2−ジブロモエトキシ基であってよい。好ましい例としては、トリフルオロメトキシ、トリクロロメトキシ、及び2,2,2−トリフルオロエトキシ基が挙げられる。
【0040】
置換基R、R、R、R、R、R、又はRがアリールオキシ基である場合、前記アリールオキシ基は、酸素原子に結合した、以上で定義したアリール基であり、それぞれ同一であっても異なるものであってもよい。それぞれが、例えば、フェノキシ、ナフチルオキシ、フェナントリルオキシ、又はアントラセニルオキシ基であってよい。
【0041】
置換基R、R、R、R、R、R、又はRがアルコキシアルキル基である場合、前記アルコキシアルキル基は、以上で定義した少なくとも1つのアルコキシ基で置換された、以上で定義したアルキル基であり、それぞれ同一であっても異なるものであってもよい。それぞれが、例えば、メトキシメトキシ又は1−メトキシエトキシ基であってよい。
【0042】
置換基R、R、R、R、R、R、又はRがアルキルカルボニル基である場合、前記アルキルカルボニル基は、水素原子若しくは以上で定義したアルキル基で置換されたカルボニル基であり、それぞれ同一であっても異なるものであってもよい。それぞれが、例えば、ホルミル、アセチル、プロピオニル、ブチリル、イソブチリル、ペンタノイル、ピバロイル、バレリル、イソバレリル、オクタノイル、ノナノイル、デカノイル、3−メチルノナノイル、8−メチルノナノイル、3−エチルオクタノイル、3,7−ジメチルオクタノイル、ウンデカノイル、ドデカノイル、トリデカノイル、テトラデカノイル、ペンタデカノイル、ヘキサデカノイル、1−メチルペンタデカノイル、14−メチル−ペンタデカノイル、13,13−ジメチルテトラデカノイル、ヘプタデカノイル、15−メチルヘキサデカノイル、オクタデカノイル、1−メチルヘプタデカノイル、ノナデカノイル、エイコサノイル、又はヘンエイコサノイル基であってよい。好ましい例としては、ホルミル、アセチル、プロピオニル、ピバロイル、及びバレリル基が挙げられる。
【0043】
置換基R、R、R、R、R、R、又はRがアルコキシカルボニル基である場合、前記アルコキシカルボニル基は、以上で定義したアルコキシ基で置換されたカルボニル基であり、それぞれ同一であっても異なるものであってもよい。それぞれが、例えば、メトキシカルボニル、エトキシカルボニル、プロポキシカルボニル、ブトキシカルボニル、s−ブトキシカルボニル、t−ブトキシカルボニル、又はイソブトキシカルボニル基であってよい。好ましい例としては、メトキシカルボニル及びエトキシカルボニル基が挙げられる。
【0044】
置換基R、R、R、R、R、R、又はRがアラルキル基である場合、前記アラルキル基は、以上で定義した少なくとも1つのアリール基によって置換された、以上で定義したアルキル基であり、それぞれ同一であっても異なるものであってもよい。それぞれが、例えば、ベンジル、インデニルメチル、フェナントリルメチル、アントリルメチル、α−ナフチルメチル、β−ナフチルメチル、ジフェニルメチル、トリフェニル−メチル、α−ナフチルジフェニルメチル、9−アントリルメチル、ピペロニル、1−フェネチル、2−フェネチル、1−ナフチルエチル、2−ナフチルエチル、1−フェニルプロピル、2−フェニルプロピル、3−フェニルプロピル、1−ナフチルプロピル、2−ナフチルプロピル、3−ナフチルプロピル、1−フェニルブチル、2−フェニルブチル、3−フェニルブチル、4−フェニルブチル、1−ナフチルブチル、2−ナフチルブチル、3−ナフチルブチル、4−ナフチルブチル、1−フェニルペンチル、2−フェニルペンチル、3−フェニルペンチル、4−フェニルペンチル、5−フェニルペンチル、1−ナフチルペンチル、2−ナフチルペンチル、3−ナフチルペンチル、4−ナフチルペンチル、5−ナフチルペンチル、1−フェニルヘキシル、2−フェニルヘキシル、3−フェニルヘキシル、4−フェニルヘキシル、5−フェニルヘキシル、6−フェニルヘキシル、1−ナフチルヘキシル、2−ナフチルヘキシル、3−ナフチルヘキシル、4−ナフチルヘキシル、5−ナフチルヘキシル、又は6−ナフチルヘキシル基であってよい。好ましい例としては、ベンジル、インデニルメチル、及びα−ナフチルメチル基が挙げられる。
【0045】
式(IV)の化合物と式R−Lの化合物との反応に干渉しない限り、いずれの置換基R、R、R、R、R、R、又はRを使用してもよい。特定の置換基があまり好適でない場合があることが理解されよう。具体的には、水素原子αを置換基Rへと移動させる塩基の存在下で反応が行われるので、置換基R、R、R、R、R、及びRが、塩基の存在下でアニオンを形成できないものであること、特に、ヒドロキシル基、カルボキシル基、又はアルキルカルボニル基ではないことが好ましい。ただし、アニオンを形成するために多当量の塩基が使用される場合に塩基とともにアニオンを形成でき、且つ水素原子αを置換基Rへと移動できる置換基を有する出発物質を用いて、本発明による反応を実施することが可能である。
【0046】
脱離基Lは、パラジウムによる挿入反応を起こすことが可能ないずれかの基である。そのような基の典型的な例としては、D・A・カルキン(D. A. Culkin)及びJ・F・ハートウィグ(J. F. Hartwig)、化学研究報告(Accounts of Chemical Research)(2003)、36(4)、234−245;J・F・ハートウィグ(J. F. Hartwig)他、ジャーナル・オブ・アメリカン・ケミカル・ソサエティ(J. Am. Chem. Soc.)2002、124、12557−12565;J・F・ハートウィグ(J. F. Hartwig)及びD・A・カルキン(D. A. Culkin)、ジャーナル・オブ・アメリカン・ケミカル・ソサエティ(J. Am. Chem. Soc.)2002、124、9330−9331;並びにW・A・モラディ(W. A. Moradi)及びS・L・ブッフバルト(S. L. Buchwald)、ジャーナル・オブ・アメリカン・ケミカル・ソサエティ(J. Am. Chem. Soc.)2001、123、7996−8002に開示されているものが挙げられる。好ましい例としては、塩素、臭素、及びヨウ素原子などのハロゲン原子;C1〜6アルキルスルホネート(例えば、メチルスルホネート)及び任意で置換されたアリールスルホネート(例えば、p−トルエンスルホネート)などのスルホネート;並びに、C−Mg、C−Li、及びC−Siなどの炭素金属結合を含む化合物が挙げられる。特に好ましいのは、臭素及びヨウ素である。
【0047】
その環上に脱離基を有する式(I)のジアリール化若しくはジヘテロアリール化化合物を形成することが望ましい場合(例えば、2,7−ジブロモ置換ジアリールフルオレン)、本発明の反応が脱プロトン化されたベンジル炭素原子と式R−Pd−Lのパラジウム挿入された基との間の反応を伴うので、一般に、初めに式(IV)の化合物をアリール化し、次いで、得られる式(I)の化合物を、所望の位置で所望の脱離基(例えば、ジアリールフルオレンの2−位及び7−位でブロモ基)を取り込むように、好適な誘導体化剤と反応させることが好ましい。パラジウムカップリング工程の間、式(IV)の出発物質上に臭素原子などの脱離基が存在しないことによって、前記脱離基の置換部位における望ましくないカップリング反応の可能性が回避される。
【0048】
ただし、本発明者らが特定の条件下では所望の位置で選択的に反応させることが可能であることを見出したので、式(IV)の出発物質からハロゲン原子などの脱離基を排除することは、不可欠ではない。ゆえに、例えば、初めにフルオレンを臭素化し、次いで、例えば以下の条件を用い、ヨウ化アリールのより高い反応度に基づいてヨウ化フェニルを使用してアリール化することが可能である:
【化16】

【0049】
本発明の反応に干渉せず、且つ反応物を少なくともある程度溶解させるのであれば、いずれの溶媒を使用してもよい。塩基の存在下で反応が実施されるので、使用される溶媒は、理想的には、非プロトン性であるべきであり(例えば、アルコールでも水でもない)、塩基の存在下で安定であるべきである(例えば、エステルではない)。好ましい非プロトン性溶媒は、極性であっても無極性であってもよい。特に好ましい溶媒の例としては、キシレンやトルエンなどのアルキル化ベンゼン、並びに、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、テトラヒドロフラン、及びジオキサンなどのエーテルが挙げられる。これらのうち、トルエンが特に好ましい。
【0050】
水素原子αを置換基Rへと移動させるために本発明の反応で使用される塩基は、前記脱プロトン化を達成するのに十分に強い任意のものである。好ましくは、塩基は、使用される溶媒に少なくともいくらか溶解するものとすべきである。これは、THFやジオキサンなどの極性溶媒中の、炭酸カリウム及び炭酸セシウムなどの無機塩とすることができる。好ましい塩基は、有機溶媒への溶解を促進する基を有するもの、例えば、ナトリウムメトキシド、カリウムメトキシド、ナトリウムエトキシド、カリウムエトキシド、ナトリウムt−ブトキシド、及びカリウムt−ブトキシドなどのアルカリ金属アルコキシド、並びに、水酸化テトラメチルアンモニウム及び水酸化テトラエチルアンモニウムなどの水酸化テトラアルキルアンモニウムである。これらのうち、カリウムエトキシド及びカリウムt−ブトキシドがより好ましく、カリウムt−ブトキシドが最も好ましい。使用される塩基の量は、反応物の性質によって、特に、本発明の反応がモノアリール化(したがって、単一の脱プロトン化反応)だけを伴うか、それともジアリール化(したがって、2つの脱プロトン化反応)を伴うかによって異なる。典型的には、式(IV)の出発化合物の量に比べて1〜10モル当量の塩基が使用され、より好ましくは2〜5モル当量が使用され、最も好ましくは2〜4モル当量が使用される。
【0051】
m=0である式(I)の化合物は、非結合「フルオレン型」化合物である。
【0052】
m=1であり、Xが単結合であり、2つの基Rが一緒になって式(II)の基を表しておらず、且つ2つの基Rが一緒になって式(III)の基を表していない式(I)の化合物は、フルオレン誘導体である。
【0053】
m=1であり、Xが単結合であり、且つ隣接した2つの基Rが一緒になって式(II)の基となり、その際Yが単結合である式(I)の化合物は、インデノフルオレン(indenofluorene)誘導体である。
【0054】
m=1であり、XがOであり、2つの基Rが一緒になって式(II)の基を表しておらず、且つ2つの基Rが一緒になって式(III)の基を表していない式(I)の化合物は、キサンテン誘導体である。
【0055】
m=1であり、XがSであり、2つの基Rが一緒になって式(II)の基を表しておらず、且つ2つの基Rが一緒になって式(III)の基を表していない式(I)の化合物は、チオキサンテン誘導体である。
【0056】
本発明は、以下の非限定的な実施例を参照することによってさらに理解することができる。
【実施例1】
【0057】
2,7−ジブロモ−9,9−ジフェニルフルオレンの合成
【化17】

工程1:9,9−ジフェニルフルオレンの合成
【0058】
1.1 原材料
【表1】

【0059】
1.2 装置構成
オーバーヘッド撹拌機、還流冷却器、内部温度計、及び窒素注入口を備えた、5Lの3口丸底フラスコ。
【0060】
1.3 実験手順
・フルオレン(100g)を3.5Lのトルエンに溶解させ、次いで反応槽を窒素で洗い流した。
・ヨードベンゼン(168mL)を加え、混合物を10分間撹拌した。
・これが終わったら、配位子であるトリシクロヘキシルホスフィン(1.68g)と触媒であるPd(OAc)(1.35g)とを加え、その後カリウムtert−ブトキシド(202.5g)を加えた。反応混合物は、暗橙色/赤色に変わった。
・次いで、得られた混合物を加熱した(油浴温度130℃)。内部温度が約100〜105℃に達したときに、発熱が観察され、溶液が還流を停止するまで熱源を取り除いた。次いで、混合物を加熱して一晩還流させた(油浴温度130℃)。
・室温まで冷却した後、反応物を2Lの水に慎重に注ぎ入れることによって急冷し、得られた混合物を0.5時間撹拌した。
・相を分離させ、水相を500mLトルエンでさらに2回抽出した。
・複合有機相をシリカのプラグ(φ30cm、高さ100cm)に通して濾過し、トルエンで溶出させた。
・濾液を蒸発させて茶黄色の固体を得て、それを1Lメタノール中で約3時間にわたって微粉化し、濾過した。こうして得られる少し黄色がかった固体を、高真空下で40℃で乾燥させた。
・174.1g(90.9%)の目標生成物9,9−ジフェニルフルオレン(DPF)を得た。
【0061】
1.4 分析仕様
生成物は、HPLCによれば純度97.16%であった。これは、次の工程で使用するのに十分な純度である。
【0062】
1.5 特性評価
H−NMR:H NMR(CDCl)δ7.57(2H、d、J=7.6);7.41(2H、d、J=7.6);7.36(2H、dd、J=7.6);7.27(2H、dd、J=7.6)7.17−7.21(10H、m)。
13C NMR(CDCl)δ151.46、146.21、140.44、128.45、128.41、127.95、127.71、126.87、126.49、120.40、65.95。
【0063】
工程2:2,7−ジブロモ−9,9−ジフェニルフルオレンの合成
【0064】
1.6 原材料
【表2】

【0065】
1.7 装置構成
反応槽:
オーバーヘッド撹拌機、均圧滴下漏斗、及びアルコール温度計を備えた、2Lの3口丸底フラスコ。
【0066】
1.8 実験手順
・工程1で得られた9,9−ジフェニルフルオレン(31.5g)をジクロロメタン(800mL)に溶解させた。これに、炭酸ナトリウム溶液(水500mL中に5.25g)を加え、氷浴を使用して反応混合物を0〜5℃に冷却した。
・5℃未満の温度を維持しながら、反応混合物にヨウ素(0.6g)を加え、続いて滴下漏斗によって臭素(12mL)を滴下添加した(添加時間約30分)。添加が完了したら、氷浴を除去し、室温に温めながら反応混合物を一晩撹拌しておいた。
・これが終わったら、反応混合物を再び冷却し、さらに12mLの臭素を滴下漏斗に加えた。反応混合への添加は、温度を5℃未満に維持して実施した(添加時間約30分)。添加が完了したら、氷浴を除去し、室温に温めながら反応混合物を一晩撹拌しておいた。
・これが終わったら、反応混合物を分離漏斗に移し、相を分離させ、水相をジクロロメタン(300mL)で2回抽出した。有機相を水酸化ナトリウム(10%水溶液、500mL)で洗浄し、次いでMgSOで乾燥させた。
・蒸発させた結果、黄色がかった固体が得られ、これをアセトニトリル(220mL)/トルエン(320mL)から2回再結晶させた。
・31.4gの表題化合物2,7−ジブロモ−9,9−ジフェニルフルオレン(65%)を、無色の固体として得た。
【0067】
1.9 分析仕様
最終生成物は、HPLCによれば純度99.68%であり、ポリマー合成に使用することができる。
【0068】
1.10 特性評価
H−NMR(400MHz):H NMR(CDCl)δ7.59(2H、d、J=8.0)、7.50(2H、s)、7.48(2H、d、J=8.8)、7.25−7.27(6H、m)、7.14−7.16(4H、m);13C NMR(CDCl)δ153.24、144.67、138.34、131.21、129.69、128.9、128.22、127.43、122.10、121.81、65.91。
【図面の簡単な説明】
【0069】
【図1】OLEDデバイスの一例の垂直断面図である。
【図1b】OLEDデバイスの一例の垂直断面図である。
【符号の説明】
【0070】
100 OLEDデバイス
102 基材
104 アノード層
106 正孔輸送層
108 電界発光層
110 カソード層
111 金属缶
112 バンク
113 UV(紫外線)硬化エポキシ糊
118 バッテリ
150 パッシブマトリクス式OLEDディスプレイデバイス
152 画素、電界発光画素
154 導電ライン
158 アノードライン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I)の化合物の合成プロセスであって:
【化1】

式中、
m=0若しくは1であり、
n及びpは、同一若しくは異なるものであり、それぞれ0若しくは1〜4の整数であり、
Xは、単結合、O、S、若しくはNHであり、
は、水素原子、以下で定義されるアルキル基、以下で定義されるアルケニル基、以下で定義されるアルキニル基、以下で定義されるアリール基、及び以下で定義されるヘテロアリール基から成る群から選択され、
は、以下で定義されるアリール基及び以下で定義されるヘテロアリール基から成る群から選択され、
各R及びRは、同一若しくは異なるものであり、以下で定義されるアルキル基、以下で定義されるアルケニル基、以下で定義されるアルキニル基、以下で定義されるハロアルキル基、シアノ基、ニトロ基、ハロゲン原子、ヒドロキシル基、カルボキシ基、以下で定義されるアルコキシカルボニル基、以下で定義されるアルキルカルボニル基、以下で定義されるアルコキシ基、以下で定義されるハロアルコキシ基、以下で定義されるアルコキシアルキル基、以下で定義されるアリール基、以下で定義されるヘテロアリール基、以下で定義されるアリールオキシ基、及び以下で定義されるアラルキル基から成る群から選択され、又は、
隣接炭素原子上の2つのR基が一緒になって式(II)の基を表しており:
【化2】

式中、
qは、0若しくは1〜4の整数であり、
Yは、単結合、CH、O、S、若しくはNHであり、
は、以下で定義されるアルキル基、以下で定義されるアルケニル基、以下で定義されるアルキニル基、以下で定義されるアリール基、及び以下で定義されるヘテロアリール基から成る群から選択され、
各Rは、同一若しくは異なるものであり、以下で定義されるアルキル基、以下で定義されるアルケニル基、以下で定義されるアルキニル基、以下で定義されるハロアルキル基、シアノ基、ニトロ基、ハロゲン原子、ヒドロキシル基、カルボキシ基、以下で定義されるアルコキシカルボニル基、以下で定義されるアルキルカルボニル基、以下で定義されるアルコキシ基、以下で定義されるハロアルコキシ基、以下で定義されるアルコキシアルキル基、以下で定義されるアリール基、以下で定義されるヘテロアリール基、以下で定義されるアリールオキシ基、及び以下で定義されるアラルキル基から成る群から選択され、且つ/又は、
隣接炭素原子上の2つのR基が一緒になって式(III)の基を表しており:
【化3】

式中、
rは、0若しくは1〜4の整数であり、
Zは、単結合、CH、O、S、若しくはNHであり、
は、以下で定義されるアルキル基、以下で定義されるアルケニル基、以下で定義されるアルキニル基、以下で定義されるアリール基、及び以下で定義されるヘテロアリール基から成る群から選択され、
各Rは、同一若しくは異なるものであり、以下で定義されるアルキル基、以下で定義されるアルケニル基、以下で定義されるアルキニル基、以下で定義されるハロアルキル基、シアノ基、ニトロ基、ハロゲン原子、ヒドロキシル基、カルボキシ基、以下で定義されるアルコキシカルボニル基、以下で定義されるアルキルカルボニル基、以下で定義されるアルコキシ基、以下で定義されるハロアルコキシ基、以下で定義されるアルコキシアルキル基、以下で定義されるアリール基、以下で定義されるヘテロアリール基、以下で定義されるアリールオキシ基、及び以下で定義されるアラルキル基から成る群から選択され、
前記アルキル基は、1〜20個の炭素原子を有する直鎖若しくは分枝状アルキル基であり、
前記アルケニル基は、2〜20個の炭素原子を有する直鎖若しくは分枝状アルケニル基であり、
前記アルキニル基は、2〜20個の炭素原子を有する直鎖若しくは分枝状アルキニル基であり、
前記アリール基は、1つ若しくは複数の環内に6〜14個の炭素原子を有する芳香族炭化水素基であり、任意で、シアノ基、ニトロ基、ハロゲン原子、ヒドロキシル基、カルボキシ基、以下で定義されるアルコキシカルボニル基、以下で定義されるアルキルカルボニル基、アミノ基、以下で定義されるアルコキシ基、以上で定義したアルキル基、以下で定義されるハロアルキル基、以下で定義されるアルコキシアルキル基、アリール基、以下で定義されるアリールオキシ基、及び以下で定義されるアラルキル基から成る群から選択される少なくとも1つの置換基で置換されていてもよく、
前記ヘテロアリール基は、硫黄原子、酸素原子、及び窒素原子から成る群から選択される1〜3個のヘテロ原子を含有する5〜7員環の芳香族複素環基であり、前記基は、任意で、シアノ基、ニトロ基、ハロゲン原子、ヒドロキシル基、カルボキシ基、以下で定義されるアルコキシカルボニル基、以下で定義されるアルキルカルボニル基、アミノ基、以下で定義されるアルコキシ基、以上で定義したアルキル基、以下で定義されるハロアルキル基、以下で定義されるアルコキシアルキル基、以上で定義したアリール基、以下で定義されるアリールオキシ基、及び以下で定義されるアラルキル基から成る群から選択される少なくとも1つの置換基で置換されており、
前記ハロアルキル基は、少なくとも1つのハロゲン原子で置換された、以上で定義したアルキル基であり、
前記アルコキシ基は、酸素原子に結合した、以上で定義したアルキル基であり、
前記ハロアルコキシ基は、少なくとも1つのハロゲン原子で置換された、以上で定義したアルコキシ基であり、
前記アリールオキシ基は、酸素原子に結合した、以上で定義したアリール基であり、
前記アルコキシアルキル基は、以上で定義した少なくとも1つのアルコキシ基で置換された、以上で定義したアルキル基であり、
前記アルキルカルボニル基は、水素原子若しくは以上で定義したアルキル基で置換されたカルボニル基であり、
前記アルコキシカルボニル基は、以上で定義したアルコキシ基で置換されたカルボニル基であり、
前記アラルキル基は、以上で定義した少なくとも1つのアリール基によって置換された、以上で定義したアルキル基であり、
前記プロセスは、式(IV)の化合物:
【化4】

(式中、R、R、R、X、m、n、及びpは、以上で定義したとおり)と、式R−Lの化合物(式中、Rは以上で定義したとおり、Lは脱離基)とを、パラジウム触媒及び塩基の存在下で反応させる工程を含むプロセス。
【請求項2】
式(I)の前記化合物は、請求項1に記載の前記プロセスによる合成の後で、式(I)のさらなる化合物を生成するために誘導体化される、請求項1に記載のプロセス。
【請求項3】
前記パラジウム触媒は、アリールカルボカチオンによる酸性水素の置換を伴う反応に適したパラジウム触媒である、請求項1又は2に記載のプロセス。
【請求項4】
前記パラジウム触媒は、Pd(0)又はPd(II)の形態である、請求項1〜3のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項5】
前記パラジウム触媒は、酢酸パラジウム(II)又はビス(ジベンゼニリデンアセトン)パラジウム(0)(Pddba)である、請求項1〜3のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項6】
前記パラジウム触媒は、ホスフィン配位子を含む、請求項1〜5のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項7】
前記ホスフィンは、
(i)前記パラジウム触媒とホスフィンとを混合することによって、又は
(ii)パラジウム錯体の配位子としてホスフィン基を含めることによって導入される、請求項6に記載のプロセス。
【請求項8】
前記ホスフィンは、前記パラジウム触媒と、トリアルキルホスフィン(各アルキル基は、同一若しくは異なるものであり、請求項1で定義したとおり)、トリシクロアルキルホスフィン(各シクロアルキル基は、同一若しくは異なるものであり、3〜7個の炭素原子を有する)、並びにトリアリールホスフィン(各アリール基は、同一若しくは異なるものであり、1つ若しくは複数の環内に6〜14個の炭素原子を有する芳香族炭化水素基であり、任意で、シアノ基、ニトロ基、ハロゲン原子、ヒドロキシル基、カルボキシ基、請求項1で定義したアルコキシカルボニル基、請求項1で定義したアルキルカルボニル基、請求項1で定義した1つ若しくは2つのアルキル基によって任意で置換されたアミノ基、請求項1で定義したアルコキシ基、請求項1で定義したアルキル基、請求項1で定義したハロアルキル基、請求項1で定義したアルコキシアルキル基、アリール基、請求項1で定義したアリールオキシ基、及び請求項1で定義したアラルキル基から成る群から選択される少なくとも1つの置換基で置換されていてもよい)から選択されるホスフィンとを混合することによって導入される、請求項6に記載のプロセス。
【請求項9】
前記ホスフィンは、前記パラジウム触媒と、トリフェニルホスフィン、トリ(t−ブチル)ホスフィン、トリシクロヘキシルホスフィン、
【化5】

から選択されるホスフィンとを混合することによって導入される、請求項6に記載のプロセス。
【請求項10】
前記ホスフィンは、前記パラジウム触媒の配位子として含まれており、前記パラジウム触媒は、PdCl(PPh又はテトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)から選択される、請求項6に記載のプロセス。
【請求項11】
前記パラジウム触媒は、パラジウム(0)又はパラジウム(II)触媒と、トリシクロヘキシルホスフィン、トリフェニルホスフィン、及びトリブチルホスフィンから成る群から選択されるホスフィン、又はホスフィン含有パラジウム触媒PdCl(PPhとの混合物を含む、請求項6に記載のプロセス。
【請求項12】
前記パラジウム触媒は、ビス(ジベンゼニリデンアセトン)パラジウム(0)又は酢酸パラジウム(II)とトリシクロヘキシルホスフィンとの混合物を含む、請求項6に記載のプロセス。
【請求項13】
前記混合物中のパラジウムとホスフィン化合物とのモル比は、10:1〜1:10の範囲である、請求項7〜9、11、及び12のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項14】
前記混合物中のパラジウムとホスフィン化合物とのモル比は、2:1〜1:2の範囲である、請求項7〜9、11、及び12のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項15】
前記混合物中のパラジウムとホスフィン化合物とのモル比は、1:1である、請求項7〜9、11、及び12のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項16】
使用されるパラジウム触媒のモル当量数は、式(IV)の出発化合物の量に比べて、0.1〜10%である、請求項1〜15のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項17】
使用されるパラジウム触媒のモル当量数は、式(IV)の出発化合物の量に比べて、0.5〜2%である、請求項1〜15のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項18】
使用されるパラジウム触媒のモル当量数は、式(IV)の出発化合物の量に比べて、0.5〜1%である、請求項1〜15のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項19】
式(IV)の化合物中の置換基Rは、水素原子であり、以下のように式(Ib)の化合物を生成するために、式(IV)の化合物の量に比べて2モル当量以上の式R−Lの化合物が使用される、請求項1〜18のいずれか一項に記載のプロセス。
【化6】

【請求項20】
前記置換基R、R、R、R、R、R、又はRがアルキル基であるときには、それらの置換基は、メチル、エチル、イソプロピル、及びt−ブチル基から選択される、請求項1〜19のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項21】
前記置換基R、R、R、R、R、R、又はRがアルケニル基であるときには、それらの置換基は、ビニル又は2−プロペニルである、請求項1〜19のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項22】
前記置換基R、R、R、R、R、R、又はRがアルキニル基であるときには、それらの置換基は、エチニル又は2−プロピニルである、請求項1〜19のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項23】
前記置換基R、R、R、R、R、R、R、又はRがアリール基であるときには、それらの置換基は、フェニル又はナフチルである、請求項1〜19のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項24】
前記置換基R、R、R、R、R、R、R、又はRがヘテロアリール基であるときには、それらの置換基は、フリル、チエニル、ピロリル、及びピリジル基から選択される、請求項1〜19のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項25】
前記置換基R、R、R、R、R、R、又はRがハロアルキル基であるときには、それらの置換基は、トリフルオロメチル、ジフルオロメチル、ジクロロメチル、2−フルオロエチル、及び2,2,2−トリフルオロエチル基から選択される、請求項1〜19のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項26】
前記置換基R、R、R、R、R、R、又はRがアルコキシ基であるときには、それらの置換基は、メトキシ又はエトキシである、請求項1〜19のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項27】
前記置換基R、R、R、R、R、R、又はRがハロアルコキシ基であるときには、それらの置換基は、トリフルオロメトキシ、トリクロロメトキシ、及び2,2,2−トリフルオロエトキシ基から選択される、請求項1〜19のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項28】
前記置換基R、R、R、R、R、R、又はRがアリールオキシ基であるときには、それらの置換基は、フェノキシ、ナフチルオキシ、フェナントリルオキシ、及びアントラセニルオキシ基から選択される、請求項1〜19のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項29】
前記置換基R、R、R、R、R、R、又はRがアルコキシアルキル基であるときには、それらの置換基は、メトキシメトキシ又は1−メトキシエトキシである、請求項1〜19のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項30】
前記置換基R、R、R、R、R、R、又はRがアルキルカルボニル基であるときには、それらの置換基は、ホルミル、アセチル、プロピオニル、ピバロイル、及びバレリル基から選択される、請求項1〜19のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項31】
前記置換基R、R、R、R、R、R、又はRがアルコキシカルボニル基であるときには、それらの置換基は、メトキシカルボニル又はエトキシカルボニルである、請求項1〜19のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項32】
前記置換基R、R、R、R、R、R、又はRがアラルキル基であるときには、それらの置換基は、ベンジル、インデニルメチル、及びα−ナフチルメチル基から選択される、請求項1〜19のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項33】
前記脱離基Lは、ハロゲン原子、C1〜6アルキルスルホネート、任意で置換されたアリールスルホネート、及び炭素金属結合を含む化合物から選択される、請求項1〜32のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項34】
前記脱離基Lは、臭素又はヨウ素である、請求項1〜32のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項35】
前記塩基は、無機塩基、アルカリ金属アルコキシド、及び水酸化テトラアルキルアンモニウムから選択される、請求項1〜34のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項36】
前記塩基は、カリウムエトキシド及びカリウムt−ブトキシドから選択される、、請求項1〜34のいずれか一項に記載のプロセス。

【図1】
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【図1b】
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【公表番号】特表2008−525412(P2008−525412A)
【公表日】平成20年7月17日(2008.7.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−547657(P2007−547657)
【出願日】平成17年12月22日(2005.12.22)
【国際出願番号】PCT/GB2005/005032
【国際公開番号】WO2006/067483
【国際公開日】平成18年6月29日(2006.6.29)
【出願人】(503419985)シーディーティー オックスフォード リミテッド (21)
【Fターム(参考)】