説明

アルカリ電池

【課題】 高容量で、強負荷放電特性、特にハイレートパルス放電特性に優れたアルカリ電池を提供する。
【解決手段】 正極、負極、前記正極と前記負極との間に配置されたセパレータ、および電解液を含むアルカリ電池であって、正極は、正極活物質および導電剤を含み、正極活物質は、電位の高い二酸化マンガンAと、前記二酸化マンガンAの電位よりも電位の低い二酸化マンガンBとを含み、二酸化マンガンAの電位は、400mV(vs.Hg/HgO)以上であり、二酸化マンガンBの電位は、400mV(vs.Hg/HgO)以下である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、強負荷放電特性、特にハイレートパルス放電特性に優れるアルカリ電池に関する。
【背景技術】
【0002】
近年の電子機器は高容量化が進み、電池に対する負荷が増大し続けている。なかでも、デジタルカメラ等のように一度に大きな電力を必要とする機器においては、強負荷放電特性、特にデジタルカメラをシミュレートした放電モードであるハイレートパルス放電特性に優れた電池が求められている。
【0003】
このため、従来、高電位化することで放電中の維持電圧を上げ、また強負荷放電特性、特にハイレートパルス放電特性に優れた電池を提供するために、pH14における電位が280〜400mV(vs.Hg/HgO)であるマンガン酸化物を正極活物質に用いることが提案されている(特許文献1参照)。
【0004】
また、アルカリ電池の初期放電特性や保存後の容量維持率を向上させるために、正極活物質として、λ型の二酸化マンガンとγ型の二酸化マンガンとを用いることが提案されている(特許文献2参照)。
【特許文献1】特開2004−137129号公報
【特許文献2】米国特許出願公開第2004/0058242号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1のような電位の高い二酸化マンガンを用いる電池は、高活性化状態にあり、高活性化状態にある物質は、化学的に不安定である。このため、このような電位の高い二酸化マンガンは、放電開始後、化学的に安定な状態になろうとするため、電位が急激に低下する。よって、このような二酸化マンガンは、電池電圧を一定に維持することができない。
電位の低い二酸化マンガンを用いる電池では、放電中の電池電圧の低下は、それほど著しくなく、比較的一定の電池電圧を保つことができる。しかし、電位の低い二酸化マンガンにおいては、元々の維持電圧が低いために、十分な持続時間を維持することができない。
【0006】
上記特許文献2においては、上記λ型の二酸化マンガンは、合成条件のわずかな違いによって、その物性が変化してしまう。このため、アルカリ電池の正極活物質として、λ型の二酸化マンガンとγ型の二酸化マンガンとの両方を用いたとしても、所望の効果を得られない場合がある。
【0007】
つまり、従来の正極活物質では、特にハイレートパルス放電等において、高電圧を長時間維持することや高容量化を達成することができない。
【0008】
そこで、本発明は、高容量で、強負荷放電特性、特にハイレートパルス放電特性に優れたアルカリ電池を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明のアルカリ電池は、正極、負極、正極と負極との間に配置されたセパレータ、および電解液を含む。正極は、正極活物質および導電剤を含み、正極活物質は、電位の高い二酸化マンガンAと、前記二酸化マンガンAの電位よりも電位の低い二酸化マンガンBとを含む。二酸化マンガンAの電位は、400mV(vs.Hg/HgO)以上であり、二酸化マンガンBの電位は、400mV(vs.Hg/HgO)以下である。
【0010】
上記アルカリ電池において、正極における、二酸化マンガンAと二酸化マンガンBとの混合比(重量比)は、1:99〜50:50であることが好ましい。
【0011】
上記アルカリ電池において、二酸化マンガンAと二酸化マンガンBとの混合比は、3:97〜40:60であることがさらに好ましい。
【0012】
上記アルカリ電池において、二酸化マンガンAと二酸化マンガンBとの混合比は、5:95〜30:70であることが特に好ましい。
【0013】
上記アルカリ電池において、二酸化マンガンAは、450mV〜600mV(vs.Hg/HgO)の電位を有することが好ましい。
【0014】
上記アルカリ電池において、導電剤は黒鉛粒子であり、黒鉛粒子の量が、正極の2〜10重量%であることが好ましい。
【0015】
上記アルカリ電池において、二酸化マンガンAの平均粒径は、20〜70μmであることが好ましい。
【発明の効果】
【0016】
本発明により、高容量で、強負荷放電特性、特にハイレートパルス放電特性に優れたアルカリ電池を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
本発明の一実施形態にかかるアルカリ電池を、図1に示す。
図1のアルカリ電池は、正極合剤2、ゲル状負極3、正極合剤2とゲル状負極3の間に配置されたセパレータ4、電解液(図示せず)、ならびにこれらを収容する電池ケース1を有する。
電池ケース1は、正極端子を兼ね、底部中央に凹部を有する有底円筒形をしている。電池ケース1の内側には、中空円筒状の正極合剤2が、電池ケース1と接するように配置される。
正極合剤2の内側には、セパレータ4を介して、ゲル状負極3が配置されている。また、ゲル状負極3と電池ケース1とは、底部セパレータ9によって絶縁されている。
ゲル状負極3には、負極集電体6が差し込まれている。負極集電体6は、ガスケット5および負極端子を兼ねる底板7と一体化されている。電池ケース1の開口部は、電池ケース1の開口端部を、ガスケット5を介して、底板7の周縁部にかしめつけることにより封口されている。また、正極ケース1の外表面は、外装ラベル8で被覆されている。
【0018】
本発明において、正極は、正極活物質と導電剤とを含む。正極活物質は、電位の高い二酸化マンガンAと二酸化マンガンAよりも電位の低い二酸化マンガンBとを含む。ここで、電位の高い二酸化マンガンAの電位は、40wt%KOH水溶液中で、400mV(vs.Hg/HgO)以上であり、電位の低い二酸化マンガンBの電位は400mV(vs.Hg/HgO)以下である。
【0019】
二酸化マンガンAのみの場合、放電が進行すると、二酸化マンガンAの表面で還元反応が進んで、二酸化マンガンAの表面が急激に不働態化し、電池の内部抵抗が増加する。一方、二酸化マンガンAに、二酸化マンガンBが混合されると、放電開始直後に、二酸化マンガンAが先行的に放電を開始し、二酸化マンガンAの放電の途中またはその放電の終了する前に、電位の低い二酸化マンガンBが放電を開始する。二酸化マンガンBが放電を開始したとき、二酸化マンガンAの不働態化はあまり進行しておらず、さらに二酸化マンガンBが放電を開始しているため、二酸化マンガンAの表面の不導態化が急激に進行することがない。このため、電池の内部抵抗の増加を抑制することが可能となる。これにより、二酸化マンガンの反応効率を向上させることが可能となるため、電圧が高い状態で放電を長時間維持することが可能となる。よって、二酸化マンガンAと二酸化マンガンBとを用いることにより、強負荷放電特性、特にハイレートパルス放電特性を向上させることが可能となる。
【0020】
電位の高い二酸化マンガンAと電位の低い二酸化マンガンBとの混合割合に関し、両者の合計に占める二酸化マンガンAの割合が、1重量%〜50重量%であることが好ましく、3重量%〜40重量%であることがさらに好ましく、5重量%〜30重量%であることが特に好ましい。二酸化マンガンAの割合が1重量%よりも少なくなると、放電開始後、早期のうちに、二酸化マンガンAの放電が終了し、内部抵抗が増加する場合がある。二酸化マンガンAの割合が50重量%より多くなると、ハイレートパルス放電特性が低下する場合がある。
【0021】
電位の高い二酸化マンガンAの電位は、450〜650mV(vs.Hg/HgO)であることが好ましい。二酸化マンガンAの電位が650mVより大きい場合には、放電直後の電圧低下が大きく、二酸化マンガンBが早期に放電を開始してしまい、放電の持続時間が短くなることがある。二酸化マンガンAの電位が400mVより小さい場合には、二酸化マンガンAと二酸化マンガンBとの電位の差が小さくなり、本発明の効果が得られないことがある。
【0022】
電位の低い二酸化マンガンBの電位は、200mV〜400mV(vs.Hg/HgO)であることが好ましい。二酸化マンガンBの電位が400mVより大きくなると、二酸化マンガンAと二酸化マンガンBとの電位の差が小さくなり、本発明の効果が得られないことがある。その電位が200mVより小さくなると、二酸化マンガンBの放電中の維持電圧が低くなり、放電の十分な持続時間が得られないことがある。
なお、二酸化マンガンBの電位は400mV(vs.Hg/HgO)未満であってもよい。
【0023】
電位の高い二酸化マンガンAと、電位の低い二酸化マンガンBとの電位の差は、250mV〜300mVであることが好ましい。電位の差が300mVより大きくなると、二酸化マンガンAの自己放電が進行しやすくなり、電圧低下が大きくなることがある。電位の差が250mVより小さくなると、その電位の差が小さいほど、二酸化マンガンBが早期に放電を開始するため、放電の持続時間が短くなることがある。
【0024】
また、電位の高い二酸化マンガンAおよび電位の低い二酸化マンガンBの平均粒径は、20〜70μmであることが一般的である。
【0025】
上記二酸化マンガンの電位は、例えば、以下のようにして測定することができる。
(1)遠沈管に、2gの二酸化マンガン試料と20mlの40重量%KOH水溶液とを入れ、これらを混合し、こののち、20℃で24時間放置する。
(2)放置した後、その遠沈管を、遠心分離機にかけ、二酸化マンガン試料を、遠沈管の底部に沈殿させる。
(3)40重量%KOH水溶液が入った状態で、その遠沈管の底部に沈殿した二酸化マンガン試料に、デジタルボルトメータのプラス側に接続された白金電極を接触させる。Hg/HgO参照電極を、デジタルボルトメータのマイナス側に接続する。このようにして、二酸化マンガンの電位(vs.Hg/HgO)を測定することができる。
なお、上記以外の方法を用いて、二酸化マンガンの電位を測定してもよい。
【0026】
上記正極に含まれる導電剤は、正極の2重量%〜10重量%を占めることが好ましい。導電剤の量が10重量%より多くなると、活物質量が低下してしまうことがある。導電剤の量が2重量%より少なくなると、二酸化マンガンの導電性を確保できなくなることがある。
上記導電剤としては、天然黒鉛、人工黒鉛、膨張黒鉛等の黒鉛等が挙げられる。なお、上記黒鉛の平均粒径は、5〜30μmであることが好ましい。
【0027】
上記電解液は、正極とセパレータとを湿潤させるために用いられる。この電解液としては、当該分野で公知のものを用いることができる。一例として、水酸化カリウムを40重量%含む水溶液が挙げられる。
【0028】
また、上記負極としては、当該分野で公知のものを用いることができる。例えば、このような負極としては、ゲル化剤であるポリアクリル酸ソーダ、アルカリ電解液、および負極活物質である亜鉛粉末からなるもの等が挙げられる。なお、ゲル状負極に用いられるアルカリ電解液は、上記電解液と同様でも異なってもよい。
【0029】
セパレータとしては、当該分野で一般的な材料からなるものを用いることができる。例えば、セパレータとして、ポリビニルアルコール繊維とレーヨン繊維を主体として混抄した不織布等を用いることができる。
【0030】
次に、上記電位の高い二酸化マンガンAおよび電位の低い二酸化マンガンBの作製方法について、説明する。
まず、電位の低い二酸化マンガンBの作製方法について説明する。
二酸化マンガンBは、例えば、電解により作製することができる。まず、天然二酸化マンガンを、一酸化炭素雰囲気中で燃焼させて還元し、酸化マンガンとする。この得られた酸化マンガンを、所定の濃度の硫酸溶液に溶解し、その酸化マンガンを溶解した硫酸溶液を電解すると、陽極に二酸化マンガンが析出する。このようにして、電位の低い二酸化マンガンを作製することができる。二酸化マンガンBの電位は、電解時の電流密度、電解時間等を調節することにより、調節することができる。なお、電解のときに用いる陽極としては、チタンからなるもの等を用いることができ、陰極としては、カーボンからなるもの等を用いることができる。
【0031】
電位の高い二酸化マンガンAは、例えば、電解により上記二酸化マンガンBを作製するときと同様の方法を用い、その電解時の電流密度を増加させることにより、作製することができる。
または、電解により作製した上記二酸化マンガンBを、水酸化リチウム(LiOH)と混合し、その後、加熱し、燃焼させて、マンガン酸リチウムを得る。得られたマンガン酸リチウムを、所定の濃度の硫酸溶液に浸して、所定の時間処理することにより、二酸化マンガンAを得ることができる。このとき、その二酸化マンガンAの電位は、硫酸溶液の濃度、その硫酸溶液での処理時間等を調節することにより、調節することができる。
または、公知の合成方法を用いて、二酸化マンガンを合成するときに、過硫酸塩を作用させることにより、二酸化マンガンAを作製することもできる。
【0032】
以下、本発明を、実施例に基づいて説明する。
【実施例1】
【0033】
(アルカリ電池の作製)
(a)正極合剤の作製
本実施例においては、電位の高い二酸化マンガンAとして、電位が530mV(vs.Hg/HgO)の二酸化マンガンを用い、電位の低い二酸化マンガンBとして、電位が260mV(vs.Hg/HgO)の二酸化マンガンを用いた。
上記電位の高い二酸化マンガンAと電位の低い二酸化マンガンBとを、表1に示されるような混合比で混合し、二酸化マンガン混合物1〜10を得た。各二酸化マンガン混合物と、導電剤である天然黒鉛とを、10:1の割合(重量比)で混合し、混合物1〜10を得た。
【0034】
混合物1〜10の各々を、所定量ずつ秤量し、それを金型に入れ、約3.6×10kN/mの圧力で、加圧した。これにより、それぞれ、正極合剤1〜10を作製した。
【0035】
(b)負極の作製
ゲル化剤であるポリアクリル酸ソーダ、アルカリ電解液および負極活物質である亜鉛粉末を、重量比で、2.5:100:200の割合で混合して、ゲル状負極を作製した。アルカリ電解液としては、40重量%の水酸化カリウム水溶液を用いた。
【0036】
(c)アルカリ電池の組立
上記のようにして得られた正極合剤およびゲル状負極を用いて、図1に示されるような単3サイズのアルカリ電池を作製した。
この正極ケース1の内部に、上記のようにして得られた正極合剤1を複数個挿入し、その後、この正極合剤1を再度加圧することにより、正極ケースの内面に密着させた。
次に、正極合剤1の内側に、セパレータおよび底部セパレータを挿入した。この後、電池ケース内に電解液(40重量%の水酸化カリウム水溶液)を注液して、セパレータと正極合剤を湿潤させた。
電解液の注液後、セパレータの内側に、上記ゲル状負極を充填した。この後、封口体および底板が一体化された負極集電体を、ゲル状負極に挿入した。正極ケース1の開口端部を、ガスケットを介して、底板にかしめつけて、正極ケースの開口部を封口した。最後に、正極ケースの外表面を外装ラベルで被覆して、電池を完成させた。得られた電池を、電池1とした。
同様にして、正極合剤2〜10を用い、電池2〜10を作製した。ここで、電池1および電池10は、比較電池である。
【0037】
(評価)
上記のようにして得られた電池1〜10を用い、ハイレートパルス放電試験を行った。この試験においては、図2に示されるように、1500mWで2秒間放電し、その直後、680mVで28秒間放電することを1サイクルとして、1時間に上記サイクルを10サイクル繰り返し、電池電圧が所定のカット電圧(1.05V)に減少するまでのサイクル数を求めた。なお、実際の測定においては、1時間の最初の5分間で、上記サイクルを連続して10回繰り返し、残りの55分間は、休止状態とした。
【0038】
図3に、電池4のサイクル数に対する電池電圧の変化を示すグラフを、図4に、比較電池1のサイクル数に対する電池電圧の変化を示すグラフを、図5に、比較電池10のサイクル数に対する電池電圧の変化のグラフを示す。
これらのグラフから、電池4の電池電圧は、比較電池1の電池電圧よりも高くなっていることがわかる。
比較電池1では、80サイクル目に、電池電圧がカット電圧まで低下するのに対し、電池4の電圧は、117サイクル目で、カット電圧にまで低下した。
比較電池10は、電池4と比較して、45サイクル目にという短いサイクル数で、電池電圧がカット電圧にまで低下した。また、終止後、最初のサイクルでは、電池電圧が高いのに対し、それ以降、パルス放電を繰り返すと、電池4の場合の電池電圧よりも低くなっていた。
【0039】
他の電池についての結果を、表1に示す。表1においては、各電池の電圧がカット電圧まで低下するときのサイクル数を、比較電池1での電圧がカット電圧まで低下するときのサイクル数を100としたときの値として表している。
【0040】
【表1】

【0041】
表1に示されるように、電位の高い二酸化マンガンAと電位の低い二酸化マンガンBとの合計に占める電位の高い二酸化マンガンAの割合が、1〜50重量%であることにより、ハイレートパルス放電特性に優れていた。
以上の結果から、本発明により、ハイレートパルス放電に優れ、かつハイレートパルス放電において、サイクル寿命が長い、つまり、容量が高いアルカリ電池を提供できることがわかる。また、二酸化マンガンAの割合は、1〜50重量%であることが好ましい。
【実施例2】
【0042】
表2に示されるように、電位の低い二酸化マンガンBの電位を一定とし、電位の高い二酸化マンガンAの電位を変化させたアルカリ電池11〜17、および電位の高い二酸化マンガンAの電位を一定とし、電位の低い二酸化マンガンBの電位を変化させたアルカリ電池18〜21を、実施例1と同様にして作製した。本実施例において、電位の高い二酸化マンガンAと電位の低い二酸化マンガンBとの混合比(重量比)は、2:8とした。
【0043】
これらの電池を用い、実施例1と同様にして、ハイレートパルス放電試験を行った。
【0044】
得られた結果を、表2に示す。表2においては、上記表1の同様に、各電池の電圧がカット電圧まで低下するときのサイクル数を、比較電池1での電圧がカット電圧まで低下するときのサイクル数を100としたときの値として表している。
【0045】
【表2】

【0046】
表2から、電位の高い二酸化マンガンAの電位は、450〜650mV(vs.Hg/HgO)であることが好ましく、電位の低い二酸化マンガンBの電位は、200〜400mV(vs.Hg/HgO)であることが好ましいことがわかる。
【実施例3】
【0047】
本実施理例では、実施例1で作製した、比較電池1、電池5、電池7、電池9および比較電池10を用い、定電力連続放電試験を行った。本試験において、環境温度を20℃とし、電力を1000mWの一定とし、カット電圧を0.9Vとして、電池の電圧が0.9Vになるまでの時間(持続時間)を測定した。得られた結果を、表3に示す。なお、表3において、各電池の持続時間は、比較電池1の持続時間を100としたときの値として表している。
【0048】
【表3】

【0049】
表3に示されるように、電池5および電池7は、従来のアルカリ電池(比較電池1)と同程度の連続放電特性を有する。つまり、本発明により、連続放電特性を維持したまま、ハイレートパルス放電特性を向上させることができる。
【産業上の利用可能性】
【0050】
本発明のアルカリ電池は、例えば、デジタルカメラのような一度に大きな電力を必要とする電子機器用の電源として用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】本発明の一実施形態にかかるアルカリ電池を概略的に示す縦断面図である。
【図2】実施例1のハイレートパルス放電試験を行うときの1サイクルの放電様式を説明するための模式図である。
【図3】実施例1で作製した電池4のサイクル数に対する電池電圧の変化を示すグラフである。
【図4】実施例1で作製した比較電池1のサイクル数に対する電池電圧の変化を示すグラフである。
【図5】実施例1で作製した比較電池10のサイクル数に対する電池電圧の変化を示すグラフである。
【符号の説明】
【0052】
1 電池ケース
2 正極合剤
3 ゲル状負極
4 セパレータ
5 ガスケット
6 負極集電体
7 底板
8 外装ラベル
9 底部セパレータ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
正極、負極、前記正極と前記負極との間に配置されたセパレータ、および電解液を含むアルカリ電池であって、
前記正極は、正極活物質および導電剤を含み、
前記正極活物質は、電位の高い二酸化マンガンAと、前記二酸化マンガンAの電位よりも電位の低い二酸化マンガンBとを含み、
前記二酸化マンガンAの電位は、400mV(vs.Hg/HgO)以上であり、前記二酸化マンガンBの電位は、400mV(vs.Hg/HgO)以下であるアルカリ電池。
【請求項2】
前記正極における、前記二酸化マンガンAと前記二酸化マンガンBとの混合比(重量比)が、1:99〜50:50である請求項1記載のアルカリ電池。
【請求項3】
前記混合比が、3:97〜40:60である請求項2記載のアルカリ電池。
【請求項4】
前記混合比が、5:95〜30:70である請求項3記載のアルカリ電池。
【請求項5】
前記二酸化マンガンAが、450mV〜650mV(vs.Hg/HgO)の電位を有する請求項1記載のアルカリ電池。
【請求項6】
前記導電剤が、黒鉛粒子であり、前記黒鉛粒子の量が、前記正極の2〜10重量%である請求項1〜5のいずれかに記載のアルカリ電池。
【請求項7】
前記二酸化マンガンAの平均粒径が、20〜70μmである請求項1〜5のいずれかに記載のアルカリ電池。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2007−26979(P2007−26979A)
【公開日】平成19年2月1日(2007.2.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−209657(P2005−209657)
【出願日】平成17年7月20日(2005.7.20)
【出願人】(000005821)松下電器産業株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】