説明

アルコキシマグネシウムの合成方法、オレフィン類重合用固体触媒成分および触媒

【課題】生成ポリマーの立体規則性や重合活性等の性能を低下させることなく高嵩密度で低微粉の重合体を製造するに適した固体触媒成分を得ることのできるアルコキシマグネシウムの調製方法、該アルコキシマグネシウムを用いたオレフィン類重合用固体触媒成分および触媒を提供する。
【解決手段】金属マグネシウムとアルコールをハロゲン含有化合物の存在下で撹拌しながら反応させて固体状のアルコキシマグネシウムを生成させる際、反応途中で反応温度が高くなる温度条件に変更する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アルコキシマグネシウムの合成方法、特にはオレフィン類重合用固体触媒成分の担体原料に適したアルコキシマグネシウムの合成方法、および該アルコキシマグネシウムを用いたオレフィン類重合用固体触媒成分並びに触媒に関するものである。
【背景技術】
【0002】
チーグラー・ナッタ触媒として知られる高活性型オレフィン類重合用固体触媒成分の主な製造方法は、振動ボールミル等の機械的粉砕やアルコール等を使用した溶解再析出によって活性化した塩化マグネシウム担体表面に、チタン化合物を担持させることによって固体触媒成分を得る方法、アルコキシマグネシウムを四塩化チタン等塩化物によってハロゲン化し、次いでチタン化合物を担持させ固体触媒成分を得る方法等が知られている。
【0003】
これらの触媒を使用して生成した重合体の粒子特性は、担体の性状に大きく影響されるため、重合体の用途に応じたアルコキシマグネシウムを製造する技術はきわめて重要である。具体的には、高活性で生産性向上のために嵩密度が高く、微粉粒子の少ない担体が必要とされている。現在、アルコキシマグネシウムの製造方法としては以下の方法が知られている。
【0004】
例えば、特許文献1(特開平3−74341号公報)には、ヨウ素または塩化マグネシウムの存在下、金属マグネシウムとアルコールをアルコール還流温度で断続的もしくは連続的に添加して反応させる方法が開示されている。また、特許文献2(特開平4−130107号公報)には、金属マグネシウム、アルコールおよびマグネシウム1モルに対して0.0001グラム原子以上のハロゲン量を含有する塩化マグネシウムまたはヨウ化マグネシウムを反応させる方法が開示されている。特許文献3(特開2001−233878号公報)には、金属マグネシウム、アルコールおよびマグネシウム1モルに対して0.0005グラム原子以上の量のヨウ素を飽和炭化水素化合物の存在下で反応させる方法が開示されている。また、特許文献4(特開2001−233879号公報)では、金属マグネシウム、アルコールおよびマグネシウム1モルに対して0.0001グラム原子以上の量のハロゲン原子を含むハロゲンおよび/ハロゲン含有化合物を30〜60℃で反応させる方法が開示されている。
【特許文献1】特開平3−74341号公報
【特許文献2】特開平4−130107号公報
【特許文献3】特開2001−233878号公報
【特許文献4】特開2001−233879号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
近年、ポリオレフィンの生産では生産性の向上を目指しており、ポリオレフィンパウダーの嵩密度の向上と低微粉化は最重要の課題となっている。これを解決する手段として、生産に使用する固体触媒成分のこれまで以上の嵩密度の向上と低微粉化が求められている。しかしながら、上記従来技術では係る課題である十分に高い嵩密度や低微粉化は実現できていない。
【0006】
したがって、本発明の目的は、かかる従来技術に残された問題点を解決し、立体規則性や重合活性等の性能を低下させることなく高嵩密度で低微粉の重合体を製造するに適した固体触媒成分を得ることのできるアルコキシマグネシウムの合成方法、該アルコキシマグネシウムを用いたオレフィン類重合用固体触媒成分および触媒を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
かかる実情において、本発明者は、上記従来技術に残された課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、アルコキシマグネシウム調製過程の途中で反応温度を低温から高温へ変更して合成したアルコキシマグネシウムを固体触媒成分の担体に用いることによって、立体規則性や重合活性等の性能を低下させることなく、高嵩密度で低微粉の重合体を製造することができることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち、本発明は、金属マグネシウムとアルコールを、ハロゲンまたはハロゲン含有化合物の存在下で反応させる際に、反応温度を下記(I)及び(II);
(I)前記反応中、金属マグネシウムの反応率が20%以上となる段階において、前記反応温度を下記低温条件から下記高温条件に変更する;
28℃ ≦T(低温条件)≦ 67℃、
58℃ ≦T(高温条件)≦ 上記アルコールの還流温度
(II)T+5<T
(式中、T、Tは反応温度(℃)を示す。)の条件で行なうことを特徴とするアルコキシマグネシウム合成方法を提供するものである。
【0009】
また、本発明は、前記記載の合成方法で得られたアルコキシマグネシウム(a)とハロゲン含有チタン化合物(b)とを接触させて得られることを特徴とするオレフィン類重合用固体触媒成分を提供するものである。
【0010】
また、本発明は、(A)前記オレフィン類重合用固体触媒成分、および
(B)下記一般式(1);RAlQ3−p (1)
(式中、Rは炭素数1〜4のアルキル基を示し、Qは水素原子あるいはハロゲン原子を示し、pは0<p≦3の実数である。)で表される有機アルミニウム化合物によって形成されることを特徴とするオレフィン類重合用触媒を提供するものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明の合成方法によれば、簡易な方法でオレフィン類重合用固体触媒成分として有用なアルコキシマグネシウムを製造することができる。また、該アルコキシマグネシウムをオレフィン類重合用固体触媒成分の一成分として用いれば、立体規則性や重合活性等の性能を低下させることなく高嵩密度、低微粉で粒度分布が良好なオレフィン重合体が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
(アルコキシマグネシウムの合成方法の説明)
本発明の合成方法において、金属マグネシウムの形状としては、特に限定されず、任意の形状の金属マグネシウムを用いることができ、例えば顆粒状、リボン状、粉末状等の金属マグネシウムを用いる。この中でも、粉末状の金属マグネシウムが好ましく、平均粒径は好ましくは1〜1000μm、さらに好ましくは10〜500μmである。また、金属マグネシウムの表面状態も特に限定されないが、表面に酸化マグネシウム等の被膜が生成されているものは好ましくないので、あらかじめ除去しておくことが望ましい。
【0013】
本発明の合成方法において、アルコールとしては、特に限定されず、下記一般式(2);ROH (2)
(式中、Rは炭素数1〜12の直鎖状又は分岐鎖状アルキル基である。) で表されるアルコールが挙げられ、好ましくは炭素数1〜6の低級アルコールが挙げられ、具体的にはメタノール、エタノール、プロパノール、ブタノールを用いることが好ましい。特にエタノールを用いることによってエトキシマグネシウムが形成され、触媒性能の発現を著しく向上させるアルコキシマグネシウムが得られる。アルコールの純度及び含水量も限定されないが、水分が少ないほど好ましく、具体的には脱水アルコール、水分量が200ppm以下の脱水アルコールが望ましい。
【0014】
本発明の合成方法において、ハロゲンの種類については特に限定されないが、塩素、臭素またはヨウ素、特にヨウ素が望ましい。またはハロゲン含有化合物の種類についても限定はなくハロゲン原子をその化学式中に含む化合物であれば使用できる。ハロゲン化合物として具体的には、四塩化チタン、三塩化チタン、塩化マグネシウム、ヨウ化マグネシウム等のハロゲン化金属、二塩化エトキシチタン、一塩化エトキシマグネシウム、一ヨウ化エトキシマグネシウム等のハロゲン化アルコキシ金属等を使用できる。これらの中では特に四塩化チタン、二塩化エトキシチタンが好ましい。
【0015】
該ハロゲンまたはハロゲン含有化合物としては、その状態、形状、粒度等は特に限定されず、任意のものでよく、例えば、エタノールなどのアルコール系溶媒の溶液として用いることもできる。また、他の1種または2種以上のハロゲン含有化合物と混合して使用してもよい。
【0016】
金属マグネシウムとアルコールとの反応は、水素ガスの発生が認められなくなるまでの本反応工程と、水素ガスの発生が停止した後、反応温度を概ね維持したまま行う熟成工程とからなる。熟成工程は省略することができる。本反応工程は、公知の方法と同様に実施することができる。即ち、水素ガスの発生が認められなくなるまで通常、10分〜30時間反応させてアルコキシマグネシウムを得る方法が挙げられる。反応は例えば、窒素ガス、アルゴンガスなどの不活性ガスの雰囲気下で行なうことが好ましい。
【0017】
本発明の合成方法において、反応温度を下記(I)及び(II);
(I)前記反応中、金属マグネシウムの反応率が20%以上となる段階において、前記反応温度を下記低温条件から下記高温条件に変更する;
28℃ ≦T(低温条件)≦ 67℃、
58℃ ≦T(高温条件)≦ 上記アルコールの還流下の温度
(II)T+5<T
(式中、T、Tは反応温度(℃)を示す。)の条件で行なう。
【0018】
反応の初期の段階における低温条件は、28℃ ≦T(低温条件)≦ 67℃である。反応温度Tが28℃未満の場合は反応がほとんど進まないため、未反応の金属マグネシウムが大量に残留し、不定形のアルコキシマグネシウムを形成する。反応温度Tが67℃を超える温度で反応を行わせた場合は、本発明が目的とする効果は顕著には得られない。
【0019】
金属マグネシウムの反応率が20%以上に進んだ段階においては反応温度を高温条件に変更する。高温条件は、58℃ ≦T(高温条件)≦ 上記アルコールの還流下の温度である。反応温度Tが58℃未満の温度のまま反応を行わせると、粒度分布が広がり微粉が多く発生する。アルコールの還流温度はアルコールの沸点である。
【0020】
低温条件と高温条件の範囲内でどの条件を選択するかは、目標とするアルコキシマグネシウムの粒径と嵩密度によって異なるが、T+5<T、特にT+10<Tとなるように選択する。反応初期の段階(核形成段階)に低温条件で反応させることにより、緻密な核が形成されアルコキシマグネシウムの嵩密度を向上させる。また、反応後半の段階(粒子成長段階)に高い温度で反応させることにより、エトキシマグネシウム結晶同士の付着力が増加し微粉を発生させることなく粒子が形成される。
【0021】
また、低温条件から高温条件への移行は金属マグネシウムの反応率が20%以上に達していれば、目標とするアルコキシマグネシウムの粒径と嵩密度によってどのタイミングで移行してもよい。すなわち、低温条件から高温条件への移行は反応の熟成工程に入ってからでもよい。金属マグネシウムの反応率が20%未満の段階で温度を変化させた場合は嵩密度が低下する。高温条件は少なくとも20分行なうことが好ましい。ここで、本発明における反応率とは、バッチ反応における反応に供する金属マグネシウム全量に対し、アルコールと反応した金属マグネシウムの比率である。すなわち、金属マグネシウムとアルコールを一括で接触し反応させる場合は、投入した金属マグネシウムの純粋な反応率であり、金属マグネシウムとアルコールを連続的あるいは分割して投入し反応させる場合の反応率とは、金属マグネシウムの最終的な投入量に対する金属マグネシウムの反応割合であり、金属マグネシウムを全量投入した後でなくとも投入途中のある時点で、金属マグネシウムの最終投入量の20%以上が反応していてもよい。上述したように、金属マグネシウムとアルコールの反応においては、反応初期においてアルコキシマグネシウムの核となる粒子が形成され、この核を中心として最終的なアルコキシマグネシウム粒子が形成される。この核から最終粒子の形成は、反応系において最初から全量の金属マグネシウムが存在していても、反応の途中で金属マグネシウムを追加投入しても同じ現象である。従って、本発明では、反応初期である反応率が20%に至る段階まで特定の低温領域で反応し緻密なアルコキシマグネシウム核を形成させ、その後高温で反応させることによって、微粉が少なく粒度分布が狭く、かつ嵩比重の大きいアルコキシマグネシウム粒子を形成させることができる。金属マグネシウムの反応率は水素ガス発生量を積算することによって正確に測定することができる。
【0022】
上記の反応は飽和炭化水素化合物、芳香族炭化水素化合物等の存在下で行ってもよい。飽和炭化水素化合物としては、炭素数7〜15で使用するアルコールよりも沸点の高い直鎖状飽和炭化水素化合物、分岐状飽和炭化水素化合物、脂環式飽和炭化水素化合物が挙げられる。具体的には、ヘプタン、デカン、シクロヘキサン、イソオクタン等が挙げられるが、特に限定されず任意のものでよい。また、芳香族炭化水素化合物としてはトルエン、キシレン、エチルベンゼン等が挙げられるが、これも特に限定されるものではない。
【0023】
金属マグネシウム、アルコール、ハロゲン含有化合物の投入については、最初から各々全量投入する方法でもよく、また、それぞれを何回かに分割して投入して反応させてもよい。特に好ましい形態は、アルコールを最初から全量投入しておき適量のハロゲン含有化合物を添加し、これに金属マグネシウムとハロゲン含有化合物を数回に分割あるいは連続で投入する方法が好ましい。この方法の場合、嵩密度が高く低微粉のアルコキシマグネシウムが形成されると同時に水素ガスの一時的な大量発生を防ぐこともでき、安全面からも非常に望ましい。また、反応槽も小型化することが可能となる。さらには、水素ガスの一時的な大量発生により引き起こされるアルコールやハロゲン化合物の飛沫同伴を防ぐことも可能となる。
【0024】
以上のようにして得られるアルコキシマグネシウムは、次の固体触媒成分(A)の調製に用いるため、乾燥させるか、あるいはアルコールを不活性炭化水素化合物で洗浄して除去して用いることができる。
【0025】
上記のようにして得られたアルコキシマグネシウムは球状であり、粒径分布がシャープである。更に粒子一つ一つの球形度のばらつきが小さい。具体的に、本発明のアルコキシマグネシウムの平均粒径は1〜200μm、好ましくは5〜100μm、特に好ましくは10〜70μmである。また担体粒子はジエトキシマグネシウム粉末が好ましい。
【0026】
アルコキシマグネシウムの粒度分布は、次式;
SPAN=(D90−D10)/D50
で表わされる粒径分布指数SPANが4以下、好ましくは2以下、特に好ましくは1.0以下である。このSPAN値は、粒径分布の広がり度合いを示すもので、この値が小さいほど粒径分布がシャープであり、粒径がそろっていることを表わしている。
【0027】
上記式中、D90は炭化水素化合物中に懸濁した状態においてレーザー回折式粒度分布測定装置で測定して求められるマグネシウム化合物の粒径分布における累積体積分率が90%に対応する粒子径を示し、D10は累積体積分率が10%に対応する粒子径を示し、D50は50%に対応する粒子径を示す。
【0028】
得られるアルコキシマグネシウムは、D50の1/4以下の粒径を微粉と定義し、微粉の占める割合が粉末中、1.0wt%以下、好ましくは0.8wt%以下が好ましい。微粉の占める割合は、レーザー回折式粒度分布測定装置で測定して得られる。
【0029】
得られるアルコキシマグネシウムの嵩密度(嵩比重)は、0.200〜0.350、好適には0.280〜0.330である。嵩比重はJIS K6721に準拠して測定すればよい。
【0030】
得られるアルコキシマグネシウムは球状で、粒度分布がシャープで、微粉が少なく、且つ嵩密度が高いため、これを用いて調製された触媒下、オレフィン類を重合すれば、立体規則性や重合活性等の性能を低下させることなく高嵩密度で低微粉の重合体を製造することができる。
【0031】
(オレフィン類重合用固体触媒成分の製造方法)
本発明の製造方法において、オレフィン類重合用固体触媒成分は、上記合成方法で得られたアルコキシマグネシウム(a)(以下、単に「成分(a)」ということがある。)とハロゲン含有化合物(b)と、必要に応じて電子供与性化合物(c)を接触して得られる。
【0032】
本発明における成分(A)の調製に用いられるハロゲン含有チタン化合物(b)(以下「成分(b)」ということがある。)は、チタンハライドもしくはアルコキシチタンハライド群から選択される化合物の1種あるいは2種以上である。具体的には、チタンハライドとしてチタンテトラクロライド、チタンテトラブロマイド、チタンテトラアイオダイド等のチタンテトラハライド、アルコキシチタンハライドとしてメトキシチタントリクロライド、エトキシチタントリクロライド、プロポキシチタントリクロライド、n−ブトキシチタントリクロライド、ジメトキシチタンジクロライド、ジエトキシチタンジクロライド、ジプロポキシチタンジクロライド、ジ−n−ブトキシチタンジクロライド、トリメトキシチタンクロライド、トリエトキシチタンクロライド、トリプロポキシチタンクロライド、トリ−n−ブトキシチタンクロライド等が例示される。このうち、チタンテトラハライドが好ましく、特に好ましくはチタンテトラクロライドである。これらのチタン化合物は単独あるいは2種以上併用することもできる。
【0033】
本発明における固体触媒成分(A)の調製に用いられる電子供与性化合物(以下、単に成分(c)ということがある。)は、酸素原子あるいは窒素原子を含有する有機化合物であり、例えばアルコール類、フェノール類、エーテル類、エステル類、ケトン類、酸ハライド類、アルデヒド類、アミン類、アミド類、ニトリル類、イソシアネート類、Si−O−C結合を含む有機ケイ素化合物等が挙げられる。
【0034】
具体的には、メタノール、エタノール、n−プロパノール、2−エチルヘキサノール等のアルコール類、フェノール、クレゾール等のフェノール類、メチルエーテル、エチルエーテル、プロピルエーテル、ブチルエーテル、アミルエーテル、ジフェニルエーテル、9,9−ビス(メトキシメチル)フルオレン、2−イソプロピル−2−イソペンチル−1,3―ジメトキシプロパン等のエーテル類、ギ酸メチル、酢酸エチル、酢酸ビニル、酢酸プロピル、酢酸オクチル、酢酸シクロヘキシル、プロピオン酸エチル、酪酸エチル、安息香酸メチル、安息香酸エチル、安息香酸プロピル、安息香酸ブチル、安息香酸オクチル、安息香酸シクロヘキシル、安息香酸フェニル、p−トルイル酸メチル、p−トルイル酸エチル、アニス酸メチル、アニス酸エチル等のモノカルボン酸エステル類、マロン酸ジエチル、マロン酸ジプロピル、マロン酸ジブチル、マロン酸ジイソブチル、マロン酸ジペンチル、マロン酸ジネオペンチル、イソプロピルブロモマロン酸ジエチル、ブチルブロモマロン酸ジエチル、イソブチルブロモマロン酸ジエチル、ジイソプロピルマロン酸ジエチル、ジブチルマロン酸ジエチル、ジイソブチルマロン酸ジエチル、ジイソペンチルマロン酸ジエチル、イソプロピルイソブチルマロン酸ジエチル、イソプロピルイソペンチルマロン酸ジメチル、(3−クロロ−n−プロピル)マロン酸ジエチル、ビス(3−ブロモ−n−プロピル)マロン酸ジエチル、マレイン酸ジエチル、マレイン酸ジブチル、アジピン酸ジメチル、アジピン酸ジエチル、アジピン酸ジプロピル、アジピン酸ジブチル、アジピン酸ジイソデシル、アジピン酸ジオクチル、コハク酸ジエステル、フタル酸ジエステル、フタル酸ジエステル誘導体、1−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸ジネオペンチル等のジカルボン酸エステル類、アセトン、メチルエチルケトン、メチルブチルケトン、アセトフェノン、ベンゾフェノン等のケトン類、フタル酸ジクロライド、テレフタル酸ジクロライド等の酸ハライド類、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド、オクチルアルデヒド、ベンズアルデヒド等のアルデヒド類、メチルアミン、エチルアミン、トリブチルアミン、ピペリジン、アニリン、ピリジン等のアミン類、オレイン酸アミド、ステアリン酸アミド等のアミド類、アセトニトリル、ベンゾニトリル、トルニトリル等のニトリル類、イソシアン酸メチル、イソシアン酸エチル等のイソシアネート類、フェニルアルコキシシラン、アルキルアルコキシシラン、フェニルアルキルアルコキシシラン、シクロアルキルアルコキシシラン、シクロアルキルアルキルアルコキシシラン等のSi−O−C結合を含む有機ケイ素化合物を挙げることができる。
【0035】
上記の電子供与性化合物のうち、エステル類、とりわけ芳香族ジカルボン酸ジエステルが好ましく用いられ、特にフタル酸ジエステルおよびフタル酸ジエステル誘導体が好適である。これらのフタル酸ジエステルの具体例としては、フタル酸ジメチル、フタル酸ジエチル、フタル酸ジ−n−プロピル、フタル酸ジ−iso−プロピル、フタル酸ジ−n−ブチル、フタル酸ジ−iso−ブチル、フタル酸エチルメチル、フタル酸メチル(iso−プロピル)、フタル酸エチル(n−プロピル)、フタル酸エチル(n−ブチル)、フタル酸エチル(iso−ブチル)、フタル酸ジ−n−ペンチル、フタル酸ジ−iso−ペンチル、フタル酸ジ−neo−ペンチル、フタル酸ジヘキシル、フタル酸ジ−n−ヘプチル、フタル酸ジ−n−オクチル、フタル酸ビス(2,2−ジメチルヘキシル)、フタル酸ビス(2−エチルヘキシル)、フタル酸ジ−n−ノニル、フタル酸ジ−iso−デシル、フタル酸ビス(2,2−ジメチルヘプチル)、フタル酸n−ブチル(iso−ヘキシル)、フタル酸n−ブチル(2−エチルヘキシル)、フタル酸n−ペンチルヘキシル、フタル酸n−ペンチル(iso−ヘキシル)、フタル酸iso−ペンチル(ヘプチル)、フタル酸n−ペンチル(2−エチルヘキシル)、フタル酸n−ペンチル(iso−ノニル)、フタル酸iso−ペンチル(n−デシル)、フタル酸n−ペンチルウンデシル、フタル酸iso−ペンチル(iso−ヘキシル)、フタル酸n−ヘキシル(2,2−ジメチルヘキシル)、フタル酸n−ヘキシル(2−エチルヘキシル)、フタル酸n−ヘキシル(iso−ノニル)、フタル酸n−ヘキシル(n−デシル)、フタル酸n−ヘプチル(2−エチルヘキシル)、フタル酸n−ヘプチル(iso−ノニル)、フタル酸n−ヘプチル(neo−デシル)、フタル酸2−エチルヘキシル(iso−ノニル)が例示され、これらのフタル酸ジエステルは1種あるいは2種以上が使用される。
【0036】
またフタル酸ジエステル誘導体としては、上記のフタル酸ジエステルの2つのアルコキシカルボニル基が結合するベンゼン環の1または2個の水素原子が、炭素数1〜5のアルキル基、又は、塩素原子、臭素原子及びフッ素原子などのハロゲン原子に置換されたものが挙げられる。該フタル酸ジエステル誘導体を電子供与性化合物として用いて調製した固体触媒成分により、より一層対水素活性あるいは水素レスポンスを向上させることができ、重合時に添加する水素が同量あるいは少量でもポリマーのメルトフローレイトを向上することができる。具体的には、4−メチルフタル酸ジネオペンチル、4−エチルフタル酸ジネオペンチル、4,5−ジメチルフタル酸ジネオペンチル、4,5−ジエチルフタル酸ジネオペンチル、4−クロロフタル酸ジエチル、4−クロロフタル酸ジ−n−ブチル、4−クロロフタル酸ジネオペンチル、4−クロロフタル酸ジ−iso−ブチル、4−クロロフタル酸ジ−iso−ヘキシル、4−クロロフタル酸ジ−iso−オクチル、4−ブロモフタル酸ジエチル、4−ブロモフタル酸ジ−n−ブチル、4−ブロモフタル酸ジネオペンチル、4−ブロモフタル酸ジ−iso−ブチル、4−ブロモフタル酸ジ−iso−ヘキシル、4−ブロモフタル酸ジ−iso−オクチル、4,5−ジクロロフタル酸ジエチル、4,5−ジクロロフタル酸ジ−n−ブチル、4,5−ジクロロフタル酸ジ−iso−ヘキシル、4,5−ジクロロフタル酸ジ−iso−オクチルが挙げられ、このうち、4−ブロモフタル酸ジネオペンチル、4−ブロモフタル酸ジ−n−ブチルおよび4−ブロモフタル酸ジ−iso−ブチルが好ましい。
【0037】
なお、上記のエステル類は、2種以上組み合わせて用いることも好ましく、その際用いられるエステルのアルキル基の炭素数合計が他のエステルのそれと比べ、その差が4以上になるように該エステル類を組み合わせることが望ましい。
【0038】
発明においては、上記成分(a)、(b)及び(c)を、炭化水素化合物(d)(以下単に「成分(d)」ということがある。)の存在下で接触させることによって成分(A)を調製する方法が調製方法の好ましい態様であるが、この成分(d)としては具体的にはn−ヘプタン、n−ヘキサン、シクロヘキサン、トルエン、キシレン、エチルベンゼンなどの沸点が50〜150℃の炭化水素化合物が好ましく用いられる。また、これらは単独で用いても、2種以上混合して使用してもよい。
【0039】
本発明における固体触媒成分の特に好ましい調製方法としては、成分(a)と成分(c)と沸点50〜150℃の炭化水素化合物(d)とから懸濁液を形成し、成分(b)と成分(d)とから形成した混合溶液を該懸濁液に接触させ、その後反応させることによる調製方法を挙げることができる。
【0040】
本発明の固体触媒成分(A)の調製においては、上記成分の他、更に、ポリシロキサン(以下単に「成分(e)」ということがある。)を使用することができる。ポリシロキサンを用いることにより生成ポリマーの立体規則性あるいは結晶性を向上させることができ、さらには生成ポリマーの微粉を低減することが可能となる。ポリシロキサンは、主鎖にシロキサン結合(−Si−O−結合)を有する重合体であるが、シリコーンオイルとも総称され、25℃における粘度が0.02〜100cm/s(2〜10000センチストークス)、より好ましくは0.03〜5cm/s(3〜500センチストークス)を有する、常温で液状あるいは粘稠状の鎖状、部分水素化、環状あるいは変性ポリシロキサンである。
【0041】
鎖状ポリシロキサンとしては、ジメチルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサンが、部分水素化ポリシロキサンとしては、水素化率10〜80%のメチルハイドロジェンポリシロキサンが、環状ポリシロキサンとしては、ヘキサメチルシクロトリシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、2,4,6−トリメチルシクロトリシロキサン、2,4,6,8−テトラメチルシクロテトラシロキサンが、また変性ポリシロキサンとしては、高級脂肪酸基置換ジメチルシロキサン、エポキシ基置換ジメチルシロキサン、ポリオキシアルキレン基置換ジメチルシロキサンが例示される。これらの中で、デカメチルシクロペンタシロキサン、及びジメチルポリシロキサンが好ましく、デカメチルシクロペンタシロキサンが特に好ましい。
【0042】
本発明の好ましい固体触媒成分の調製方法としては、成分(a)を成分(d)に懸濁させ、次いで成分(b)を接触させた後に成分(c)及び成分(d)を接触させ、反応させることにより固体触媒成分を調製する方法、あるいは、成分(a)を成分(d)に懸濁させ、次いで成分(c)を接触させた後に成分(b)を接触させ、反応させることにより固体触媒成分を調製する方法を挙げることができる。またこのように調製した固体触媒成分に再度または複数回成分(b)、または成分(b)および成分(c)を接触させることによって、最終的な固体触媒成分の性能を向上させることができる。この際、芳香族炭化水素化合物(d)の存在下に行うことが望ましい。
【0043】
成分(e)を含む本発明の好ましい固体触媒成分の調製方法としては、成分(a)を成分(d)に懸濁させ、次いで成分(b)を接触させた後に成分(c)、成分(d)および成分(e)を接触させ、反応させることにより固体触媒成分を調製する方法、あるいは、成分(a)を成分(d)に懸濁させ、次いで成分(c)を接触させた後に成分(b)を接触させ、さらに成分(e)を接触させ、反応させることにより固体触媒成分を調製する方法を挙げることができる。またこのように調製した固体触媒成分に再度または複数回成分(b)、または成分(b)、成分(c)および成分(e)を接触させることによって、最終的な固体触媒成分の性能を向上させることができる。この際、芳香族炭化水素化合物(d)の存在下に行うことが望ましい。
【0044】
各成分の接触は、不活性ガス雰囲気下、水分等を除去した状況下で、撹拌機を具備した容器中で、撹拌しながら行われる。接触温度は、各成分の接触時の温度であり、反応させる温度と同じ温度でも異なる温度でもよい。接触温度は、単に接触させて撹拌混合する場合や、分散あるいは懸濁させて変性処理する場合には、室温付近の比較的低温域であっても差し支えないが、接触後に反応させて生成物を得る場合には、40〜130℃の温度域が好ましい。反応時の温度が40℃未満の場合は充分に反応が進行せず、結果として調製された固体成分の性能が不充分となり、130℃を超えると使用した溶媒の蒸発が顕著になるなどして、反応の制御が困難になる。なお、反応時間は1分以上、好ましくは10分以上、より好ましくは30分以上である。
【0045】
固体触媒成分(A)を調製する際の各成分の使用量比は、調製法により異なるため一概には規定できないが、例えばアルコキシマグネシウム(a)1モル当たり、ハロゲン含有チタン化合物(b)が0.5〜100モル、好ましくは0.5〜50モル、より好ましくは1〜10モルであり、電子供与性化合物(c)が0.01〜10モル、好ましくは0.01〜1モル、より好ましくは0.02〜0.6モルであり、炭化水素化合物(d)が0.001〜500モル、好ましくは0.001〜100モル、より好ましくは0.005〜10モルである。ポリシロキサン(e)を使用する場合は、0.01〜100g、好ましくは0.05〜80g、より好ましくは1〜50gである。
【0046】
また本発明における固体触媒成分(A)または(A)中のチタン、マグネシウム、ハロゲン原子、電子供与性化合物の含有量は特に規定されないが、好ましくは、チタンが0.1〜20重量%、好ましくは1.0〜10重量%、マグネシウムが10〜25重量%、より好ましくは15〜25重量%、特に好ましくは20〜25重量%、ハロゲン原子が20〜75重量%、より好ましくは30〜75重量%、特に好ましくは40〜75重量%、更に好ましくは45〜75重量%、また電子供与性化合物を使用するときには合計0.5〜30重量%、より好ましくは合計1〜25重量%、特に好ましくは合計2〜20重量%である。
【0047】
(オレフィン類重合用触媒の説明)
本発明のオレフィン類重合用触媒は、前記したオレフィン類重合用固体触媒成分(A)、前記一般式(1)で表される有機アルミニウム化合物(B)、および必要に応じて外部電子供与性化合物(C)を含有する。
【0048】
本発明のオレフィン類重合用触媒を形成する際に用いられる有機アルミニウム化合物(B)(以下単に「成分(B)」ということがある。)としては、上記一般式(1)で表される化合物であれば、特に制限されないが、Rとしては、エチル基、イソブチル基が好ましく、Qとしては、水素原子、塩素原子、臭素原子が好ましく、pは2又は3が好ましく、3が特に好ましい。このような有機アルミニウム化合物(B)の具体例としては、トリエチルアルミニウム、ジエチルアルミニウムクロライド、トリイソブチルアルミニウム、ジエチルアルミニウムブロマイド、ジエチルアルミニウムハイドライドが挙げられ、1種あるいは2種以上が使用できる。好ましくは、トリエチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウムである。
【0049】
本発明のオレフィン類重合用触媒を形成する際に用いられる外部電子供与性化合物(C)(以下、「成分(C)」ということがある。)としては前記した固体触媒成分の調製に用いることのできる電子供与性化合物と同じものが用いられるが、その中でもエーテル類、エステル類又は有機ケイ素化合物が好ましい。エーテル類の中、1,3ジエーテルが好ましく、特に9,9−ビス(メトキシメチル)フルオレン、2−イソプロピル−2−イソペンチル−1,3―ジメトキシプロパンが好ましい。また、エステル類の中、安息香酸メチル、安息香酸エチルが好ましい。
【0050】
上記の有機ケイ素化合物としては、下記一般式(3)
Si(NR(OR4−(q+r) (3)
(式中、qは0、1〜4の整数、rは0、1〜4の整数、但し、q+rは0〜4の整数、R、R又はRは水素原子、炭素数1〜12の直鎖または分岐状アルキル基、置換又は未置換のシクロアルキル基、フェニル基、ビニル基、アリル基、アラルキル基のいずれかで、ヘテロ原子を含有してもよく、同一または異なっていてもよい。Rは炭素数1〜4のアルキル基、シクロアルキル基、フェニル基、ビニル基、アリル基、アラルキル基を示し、ヘテロ原子を含有してもよく、同一または異なってもよく、RとRは結合して環状を形成してもよい。)で表される化合物が挙げられる。
【0051】
一般式(3)中、Rは炭素数1〜10の直鎖又は分岐状のアルキル基、炭素数5〜8のシクロアルキル基が好ましく、特に炭素数1〜8の直鎖又は分岐状のアルキル基、炭素数5〜8のシクロアルキル基が好ましい。また、R又はRは炭素数1〜10の直鎖又は分岐状のアルキル基、炭素数5〜8のシクロアルキル基が好ましく、特に炭素数1〜8の直鎖又は分岐状のアルキル基、炭素数5〜8のシクロアルキル基が好ましい。また、RとRが結合して環状を形成する(NR)はパーヒドロキノリノ基、パーヒドロイソキノリノ基が好ましい。また、Rは炭素数1〜6の直鎖又は分岐状のアルキル基が好ましく、特に炭素数1〜4の直鎖又は分岐状のアルキル基が好ましい。
【0052】
このような有機ケイ素化合物としては、フェニルアルコキシシラン、アルキルアルコキシシラン、フェニルアルキルアルコキシシラン、シクロアルキルアルコキシシラン、シクロアルキルアルキルアルコキシシラン、(アルキルアミノ)アルコキシシラン、アルキル(アルキルアミノ)アルコキシシラン、アルキル(アルキルアミノ)シラン、アルキルアミノシラン等を挙げることができる。
【0053】
式中、rが0の有機ケイ素化合物を具体的に例示すると、トリメチルメトキシシラン、トリメチルエトキシシラン、トリ−n−プロピルメトキシシラン、トリ−n−プロピルエトキシシラン、トリ−n−ブチルメトキシシラン、トリ−iso−ブチルメトキシシラン、トリ−t−ブチルメトキシシラン、トリ−n−ブチルエトキシシラン、トリシクロヘキシルメトキシシラン、トリシクロヘキシルエトキシシラン、シクロヘキシルジメチルメトキシシラン、シクロヘキシルジエチルメトキシシラン、シクロヘキシルジエチルエトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ジ−n−プロピルジメトキシシラン、ジ−iso−プロピルジメトキシシラン、ジ−n−プロピルジエトキシシラン、ジ−iso−プロピルジエトキシシラン、ジ−n−ブチルジメトキシシラン、ジ−iso−ブチルジメトキシシラン、ジ−t−ブチルジメトキシシラン、ジ−n−ブチルジエトキシシラン、n−ブチルメチルジメトキシシラン、ビス(2 −エチルヘキシル)ジメトキシシラン、ビス(2 −エチルヘキシル)ジエトキシシラン、ジシクロペンチルジメトキシシラン、ジシクロペンチルジエトキシシラン、ジシクロヘキシルジメトキシシラン、ジシクロヘキシルジエトキシシラン、ビス(3 −メチルシクロヘキシル)ジメトキシシラン、ビス(4 −メチルシクロヘキシル)ジメトキシシラン、ビス(3,5 −ジメチルシクロヘキシル)ジメトキシシラン、シクロヘキシルシクロペンチルジメトキシシラン、シクロヘキシルシクロペンチルジエトキシシラン、シクロヘキシルシクロペンチルジプロポキシシラン、3 −メチルシクロヘキシルシクロペンチルジメトキシシラン、4 −メチルシクロヘキシルシクロペンチルジメトキシシラン、3,5 −ジメチルシクロヘキシルシクロペンチルジメトキシシラン、3 −メチルシクロヘキシルシクロヘキシルジメトキシシラン、4 −メチルシクロヘキシルシクロヘキシルジメトキシシラン、3,5 −ジメチルシクロヘキシルシクロヘキシルジメトキシシラン、シクロペンチルメチルジメトキシシラン、シクロペンチルメチルジエトキシシラン、シクロペンチルエチルジエトキシシラン、シクロペンチル(iso−プロピル)ジメトキシシラン、シクロペンチル(iso−ブチル)ジメトキシシラン、シクロヘキシルメチルジメトキシシラン、シクロヘキシルメチルジエトキシシラン、シクロヘキシルエチルジメトキシシラン、シクロヘキシルエチルジエトキシシラン、シクロヘキシル(n−プロピル)ジメトキシシラン、シクロヘキシル(iso−プロピル)ジメトキシシラン、シクロヘキシル(n−プロピル)ジエトキシシラン、シクロヘキシル(iso−ブチル)ジメトキシシラン、シクロヘキシル(n−ブチル)ジエトキシシラン、シクロヘキシル(n−ペンチル)ジメトキシシラン、シクロヘキシル(n−ペンチル)ジエトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン、フェニルメチルジメトキシシラン、フェニルメチルジエトキシシラン、フェニルエチルジメトキシシラン、フェニルエチルジエトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、n−プロピルトリメトキシシラン、iso−プロピルトリメトキシシラン、n−プロピルトリエトキシシラン、iso−プロピルトリエトキシシラン、n−ブチルトリメトキシシラン、iso−ブチルトリメトキシシラン、t−ブチルトリメトキシシラン、n−ブチルトリエトキシシラン、2-エチルヘキシルトリメトキシシラン、2-エチルヘキシルトリエトキシシラン、シクロペンチルトリメトキシシラン、シクロペンチルトリエトキシシラン、シクロヘキシルトリメトキシシラン、シクロヘキシルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラプロポキシシラン、テトラブトキシシランが挙げられる。
【0054】
上記の中でも、ジ−n−プロピルジメトキシシラン、ジ−iso−プロピルジメトキシシラン、ジ−n−ブチルジメトキシシラン、ジ−iso−ブチルジメトキシシラン、ジ−t−ブチルジメトキシシラン、ジ−n−ブチルジエトキシシラン、t−ブチルトリメトキシシラン、ジシクロヘキシルジメトキシシラン、ジシクロヘキシルジエトキシシラン、シクロヘキシルメチルジメトキシシラン、シクロヘキシルメチルジエトキシシラン、シクロヘキシルエチルジメトキシシラン、シクロヘキシルエチルジエトキシシラン、ジシクロペンチルジメトキシシラン、ジシクロペンチルジエトキシシラン、シクロペンチルメチルジメトキシシラン、シクロペンチルメチルジエトキシシラン、シクロペンチルエチルジエトキシシラン、シクロヘキシルシクロペンチルジメトキシシラン、シクロヘキシルシクロペンチルジエトキシシラン、3−メチルシクロヘキシルシクロペンチルジメトキシシラン、4−メチルシクロヘキシルシクロペンチルジメトキシシラン、3,5−ジメチルシクロヘキシルシクロペンチルジメトキシシランが好ましい。
【0055】
式中、rが1〜4の有機ケイ素化合物としては、(アルキルアミノ)トリアルキルシラン、(アルキルアミノ)ジアルキルシクロアルキルシラン、(アルキルアミノ)アルキルジシクロアルキルシラン、(アルキルアミノ)トリシクロアルキルシラン、(アルキルアミノ)(ジアルキルアミノ)ジアルキルシラン、(アルキルアミノ)(ジアルキルアミノ)ジシクロアルキルシラン、ビス(アルキルアミノ)ジアルキルシラン、ビス(アルキルアミノ)アルキルシクロアルキルシラン、ビス(アルキルアミノ)ジシクロアルキルシラン、ビス(アルキルアミノ)(ジアルキルアミノ)アルキルシラン、ビス(アルキルアミノ)(ジアルキルアミノ)シクロアルキルシラン、ジ(アルキルアミノ)ジアルキルシラン、ジ(アルキルアミノ)アルキルシクロアルキルシラン、ジ(アルキルアミノ)ジシクロアルキルシラン、ジ(シクロアルキルアミノ)ジアルキルシラン、ジ(シクロアルキルアミノ)アルキルシクロアルキルシラン、ジ(シクロアルキルアミノ)ジシクロアルキルシラン、トリス(アルキルアミノ)アルキルシラン、トリス(アルキルアミノ)シクロアルキルシラン、トリ(アルキルアミノ)アルキルシラン、トリ(アルキルアミノ)シクロアルキルシラン、トリ(シクロアルキルアミノ)アルキルシラン、トリ(シクロアルキルアミノ)シクロアルキルシラン、テトラキス(アルキルアミノ)シラン、トリス(アルキルアミノ)ジアルキルアミノシラン、トリス(シクロアルキルアミノ)ジアルキルアミノシラン、ビス(ジアルキルアミノ)ビス(アルキルアミノ)シラン、ジアルキルアミノトリス(アルキルアミノ)シラン、ビス(パ−ヒドロイソキノリノ)ビス(アルキルアミノ)シラン、ビス(パーヒドロキノリノ)ビス(アルキルアミノ)シラン、ビス(シクロアルキルアミノ)ビス(アルキルアミノ)シラン、テトラ(アルキルアミノ)シラン、トリ(アルキルアミノ)ジアルキルアミノシラン、トリ(シクロアルキルアミノ)ジアルキルアミノシラン、ジ(ジアルキルアミノ)ジ(アルキルアミノ)シラン、ジアルキルアミノトリ(アルキルアミノ)シラン、ジ(アルキル置換パ−ヒドロイソキノリノ)ジ(アルキルアミノ)シラン、ジ(アルキル置換パーヒドロキノリノ)ジ(アルキルアミノ)シラン、ジ(シクロアルキルアミノ)ジ(アルキルアミノ)シラン、アルキル(ジアルキルアミノ)(アルキルアミノ)アルコキシシラン、シクロアルキル(ジアルキルアミノ)(アルキルアミノ)アルコキシシラン、ビニル(ジアルキルアミノ)(アルキルアミノ)アルコキシシラン、アリル(ジアルキルアミノ)(アルキルアミノ)アルコキシシラン、アラルキル(ジアルキルアミノ)(アルキルアミノ)アルコキシシラン、ジアルキル(アルキルアミノ)アルコキシシラン等を挙げることができる。
【0056】
該有機ケイ素化合物(C)は1種あるいは2種以上組み合わせて用いることができる。また、これらの外部電子供与性化合物は、1種あるいは2種以上組み合わせて用いることができる。
【0057】
(オレフィン重合体の製造方法)
本発明のオレフィン重合体の製造方法は、上記オレフィン類重合用触媒の存在下にオレフィン類の重合もしくは共重合を行なう。オレフィン類としては、エチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、4−メチル−1−ペンテン、ビニルシクロヘキサン、1−ヘキセン、3−メチル−ブテン−1等が挙げられ、これらのオレフィン類は1種あるいは2種以上併用して共重合体として使用することも可能である。例えばエチレンとプロピレン、1−ブテンおよび1−ヘキセンの共重合、プロピレンとエチレン、ブテン−1および1−ヘキセンとの共重合が挙げられる。
【0058】
各成分の使用量比は、本発明の効果に影響を及ぼすことのない限り任意であり、特に限定されるものではないが、通常有機アルミニウム化合物(B)は固体触媒成分(A)中のチタン原子1モル当たり、1〜2000モル、好ましくは50〜1000モルの範囲で用いられる。有機ケイ素化合物(C)は、(B)成分1モル当たり、0.002〜10モル、好ましくは0.01〜2モル、特に好ましくは0.01〜0.5モルの範囲で用いられる。
【0059】
各成分の接触順序は任意であるが、例えば有機アルミニウム化合物(B)を装入し、次いで外部電子供与性化合物(C)を接触させ、更にオレフィン類重合用固体触媒成分(A)を接触させる方法が挙げられる。
【0060】
本発明における重合方法は、有機溶媒の存在下でも不存在下でも行なうことができ、またプロピレン等のオレフィン単量体は、気体および液体のいずれの状態でも用いることができる。重合温度は200℃以下、好ましくは100℃以下であり、重合圧力は10MPa以下、好ましくは5MPa以下である。また、連続重合法、バッチ式重合法のいずれでも可能である。更に重合反応を1段で行なってもよいし、2段以上で行なってもよい。
【0061】
更に、本発明においてオレフィン類重合用固体触媒成分(A)、成分(B)、および成分(C)を含有する触媒を用いてオレフィンを重合するにあたり(本重合ともいう。)、触媒活性、立体規則性および生成する重合体の粒子性状等を一層改善させるために、本重合に先立ち予備重合を行なうことが望ましい。予備重合の際には、本重合と同様のオレフィン類あるいはスチレン等のモノマーを用いることができる。
【0062】
予備重合を行なうに際して、各成分およびモノマーの接触順序は任意であるが、好ましくは、不活性ガス雰囲気あるいはオレフィンガス雰囲気に設定した予備重合系内にまず成分(B)を装入し、次いでオレフィン類重合用固体触媒成分(A)を接触させた後、プロピレン等のオレフィンおよび/または1種あるいは2種以上の他のオレフィン類を接触させる。成分(C)を組み合わせて予備重合を行なう場合は、不活性ガス雰囲気あるいはオレフィンガス雰囲気に設定した予備重合系内にまず成分(B)を装入し、次いで成分(C)を接触させ、更にオレフィン類重合用固体触媒成分(A)を接触させた後、プロピレン等のオレフィンおよび/または1種あるいはその他の2種以上のオレフィン類を接触させる方法が望ましい。
【0063】
次に、実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明するが、これらは単に例示であって、本発明を制限するものではない。
【実施例1】
【0064】
〔アルコキシマグネシウムの調製〕
窒素ガスで充分置換され、攪拌器、還流冷却器および積算型流量計(AS社製 M−1SLPM)を具備した容量1リッターの円筒形フラスコに粒径24〜210μm、平均粒径88μmの金属マグネシウム粉末5gと脱水した水分含有量96ppmのエタノール100mlを装入し懸濁液を形成した。次いで、ヨウ素0.5gを加えて懸濁液を攪拌しながら55℃(T)に昇温した。その後、エタノール35mlに懸濁させた金属マグネシウム5gを15分間隔で4回添加した。4回目の金属マグネシウム添加時(反応率80%)に温度を還流下(T)まで昇温させた。なお、エタノールの還流下の温度(T)は約77℃である。添加終了後、攪拌しながら水素発生が停止するまで2時間保持した。反応終了後、室温まで冷却した後、真空乾燥して約105gの球状のジエトキシマグネシウムを得た。なお、この反応においては熟成工程は行わなかった。
【0065】
乾燥後のジエトキシマグネシウムについて、粒度分布、粒子形状、微粉の量及び嵩比重を下記の測定方法により求めた。その結果を表1に示した。なお、得られたジエトキシマグネシウムの形状は球形で表面は微細な一次結晶が樹枝状につながった形態をしていた。
【0066】
(粒度分布)
レーザー回折式粒度分布測定装置(MT3000日機装(株)製)を用いて、D50、D10、D90を測定しSPANを計算した。また、同時に全粒子中の微粉の占める割合を求め、表1では微粉割合として示した。
【0067】
(粒子形状)
走査型電子顕微鏡(JSM−5310LV 日本電子(株)製)にて加速電圧5kV、300倍、1000倍、5000倍で観察した。
(嵩比重)
JIS K6721に従って測定した。
【0068】
比較例1
4回目の金属マグネシウム添加時(反応率80%)に温度の変更を行なわず、55℃のままにした以外は、実施例1と同様に行い、約97gの球状のジエトキシマグネシウムを調製した。すなわち、比較例1は、反応当初から水素の発生が停止するまでの間、低温条件下で反応を行ったものである。なお、反応中の温度は54〜58℃の範囲にあった。その結果を表1に示す。
【0069】
比較例2
窒素ガスで充分置換され、攪拌器、還流冷却器を具備した容量1リッターの円筒形フラスコに粒径24〜210μm、平均粒径88μmの金属マグネシウム粉末5gと脱水した水分含有量96ppmのエタノール100gを装入し懸濁液を形成した。次いで、ヨウ素0.5gを加えて攪拌しながら昇温して、エタノールの還流下にした。その後、エタノール25gに懸濁させた金属マグネシウム2.5gを5分間隔で8回添加した。添加終了後、10時間還流を続けた。反応中の温度は75〜78℃の範囲にあった。反応終了後、室温まで冷却した後、真空乾燥して約76gの球状のジエトキシマグネシウムを得た。結果を表1に示す。
【0070】
比較例3
窒素ガスで充分置換され、攪拌器、還流冷却器および積算型流量計(東京計装社製 TF−600)を具備した容量20リッターのステンレス製反応槽に粒径24〜210μm、平均粒径88μmの金属マグネシウム粉末160g、と脱水した水分含有率62ppmのエタノール2430gを装入し懸濁液を形成した。次いで、ヨウ素16gを加えて攪拌しながら昇温し、エタノールの還流下にした。水素発生が停止するまで3時間加熱を行った。反応中の温度は75 〜78℃の範囲にあった。反応終了後、室温まで冷却した後、真空乾燥して約520gの球状のジエトキシマグネシウムを得た。結果を表1に示す。
【0071】
比較例4
窒素ガスで充分置換され、攪拌器、還流冷却器を具備した容量1リッターの円筒形フラスコに粒径24〜210μm、平均粒径88μmの金属マグネシウム粉末8gと脱水した水分含有量58ppmのエタノール155ml、n−ヘプタン31mlを装入し懸濁液を形成した。次いで、ヨウ素0.8gを加えて懸濁液を攪拌しながら昇温して、エタノールの還流下にした。その後、攪拌を維持しながら水素発生停止まで3時間還流を続けた。反応中の温度は75〜78℃の範囲にあった。反応終了後、さらにn−ヘプタン124mlを添加し室温まで冷却した。真空乾燥して約22gの球状のジエトキシマグネシウムを得た。結果を表1に示す。
【0072】
比較例5
窒素ガスで充分置換され、攪拌器、還流冷却器を具備した容量1リッターの円筒形フラスコに粒径24〜210μm、平均粒径88μmの金属マグネシウム粉末8gと脱水した水分含有量96ppmのエタノール122gを装入し懸濁液を形成した。次いで、ヨウ素0.8gを加えて懸濁液を攪拌しながら昇温して、40℃にした。水素発生停止まで温度を40℃に維持しながら7時間反応を続けた。反応終了後、室温まで冷却したのち真空乾燥して約25gのジエトキシマグネシウムを得た。形状は不定形であった。結果を表1に示す。
【実施例2】
【0073】
窒素ガスで充分置換され、攪拌器、還流冷却器および積算型流量計(AS社製 M−1SLPM)を具備した容量1リッターの円筒形フラスコに粒径24〜210μm、平均粒径88μmの金属マグネシウム粉末3gと脱水した水分含有量58ppmのエタノール100mlを装入し懸濁液を形成した。次いで、ヨウ素0.5gを加えて攪拌しながら30℃(T)に昇温した。その後、エタノール20mlに懸濁させた金属マグネシウム3gを15分間隔で9回添加した。3回目の金属マグネシウム添加時(反応率30%)に反応槽内の温度を60℃(T)に昇温した。添加終了後、攪拌しながら水素発生が停止するまで1時間保持した。反応終了後、室温まで冷却した後、真空乾燥して約117gの球状のジエトキシマグネシウムを得た。なお、この反応においては熟成工程は行わなかった。その結果を表1に示す。
【0074】
比較例6
初期の反応温度(T)30℃に代えて、25℃とした以外は、実施例2と同様に行った。すなわち、比較例6は低温条件の下限値より温度が低いものである。その結果を表1に示す。
【0075】
比較例7
加熱条件変更後の反応温度(T)60℃に代えて、50℃とした以外は、実施例2と同様に行った。すなわち、比較例7は高温条件の下限値より温度が低いものである。その結果を表1に示す。粒度分布がWピークとなったため嵩密度は測定しなかった。
【実施例3】
【0076】
窒素ガスで充分置換され、攪拌器、還流冷却器および積算型流量計(東京計装社製 TF−600)を具備した容量20リッターのステンレス製反応槽に粒径24〜210μm、平均粒径88μmの金属マグネシウム粉末50g、と脱水した水分含有率141ppmのエタノール3リットルを装入し懸濁液を形成した。次いで、ヨウ素15gを加えて攪拌しながら昇温し65℃(T)にした。その後、金属マグネシウム50gをエタノール0.6リットル中に挿入した懸濁液を15分間隔で9回添加した。5回目の金属マグネシウム添加後(反応率50%)に反応槽内の温度をエタノール還流温度(T)まで昇温した。金属マグネシウムの添加終了後、攪拌しながら水素発生が停止するまで2時間保持した。反応終了後、室温まで冷却した後、真空乾燥して約1.9kgの球状のジエトキシマグネシウムを得た。なお、この反応においては熟成工程は行わなかった。その結果を表1に示す。
【0077】
比較例8
初期の反応温度(T)65℃に代えて、70℃とした以外は、実施例3と同様に行った。すなわち、比較例8は低温条件の上限値より温度が高いものである。その結果を表1に示す。
【実施例4】
【0078】
窒素ガスで充分置換され、攪拌器、還流冷却器および積算型流量計(AS社製 M−1SLPM)を具備した容量1リッターの円筒形フラスコに粒径24〜210μm、平均粒径88μmの金属マグネシウム粉末3gと脱水した水分含有量96ppmのエタノール100mlを装入し懸濁液を形成した。次いで、ヨウ素0.5gを加えて攪拌しながら昇温して55℃(T)にした。その後、エタノール20mlに懸濁させた金属マグネシウム3gを15分間隔で9回添加した。2回目の金属マグネシウム添加時(反応率20%)に反応槽内の温度を70℃(T)に昇温した。添加終了後、攪拌しながら水素発生が停止するまで1時間保持した。反応終了後、室温まで冷却した後、真空乾燥して約108gの球状のジエトキシマグネシウムを得た。なお、この反応においては熟成工程は行わなかった。その結果を表1に示す。
【0079】
比較例9
反応温度の変更を1回目の金属マグネシウム添加時(反応率10%)に行った以外は実施例4と同様に行った。その結果を表1に示す。
【実施例5】
【0080】
窒素ガスで充分置換され、攪拌器、還流冷却器および積算型流量計(AS社製 M−1SLPM)を具備した容量1リッターの円筒形フラスコに粒径24〜210μm、平均粒径88μmの金属マグネシウム粉末15gと脱水した水分含有量96ppmのエタノール300mlを装入し懸濁液を形成した。次いで、ヨウ素0.5gを加えて攪拌しながら昇温して60℃(T)にした。その後、ガス流量計で積算ガス発生量が6.2リッター(反応率90%)の段階で反応槽内の温度をエタノールの還流温度(T)まで上昇させた。温度変更後、水素発生が停止するまで1時間保持した。反応終了後、室温まで冷却した後、真空乾燥して約97gの球状のジエトキシマグネシウムを得た。なお、この反応においては熟成工程は行わなかった。その結果を表1に示す。
【実施例6】
【0081】
窒素ガスで充分置換され、攪拌器、還流冷却器および積算型流量計(AS社製 M−1SLPM)を具備した容量1リッターの円筒形フラスコに粒径24〜210μm、平均粒径88μmの金属マグネシウム粉末5gと脱水した水分含有量58ppmのエタノール100mlを装入し懸濁液を形成した。次いで、ヨウ素0.5gを加えて懸濁液を攪拌しながら昇温し60℃(T)にした。その後、エタノール35mlに懸濁させた金属マグネシウム5gを15分間隔で4回添加した。添加終了後、攪拌しながら水素発生が停止するまで1時間保持した後に反応槽内の温度をエタノールの還流温度(T)まで昇温し撹拌しながらさらに1時間還流状態を維持した(熟成工程)。処理終了後、室温まで冷却した後、真空乾燥して約96gの球状のジエトキシマグネシウムを得た。その結果を表1に示す。
【実施例7】
【0082】
触媒としてヨウ素0.5gに代えて、TiCl0.075gとした以外は、実施例1と同様に行った。その結果を表1に示す。
【0083】
【表1】

【実施例8】
【0084】
〔固体触媒成分(A)の調製〕
窒素ガスで充分に置換され、撹拌機を具備した容量500mlの丸底フラスコに実施例1で生成したジエトキシマグネシウム10g、フタル酸ジ−n−ブチル3.2gをおよびトルエン80mlを装入して懸濁状態とした。次いで該懸濁溶液に四塩化チタン20mlを加えて昇温し90℃とした。その後90℃の温度を保持した状態で、2時間撹拌しながら反応させた。反応終了後、90℃のトルエン90mlで4回洗浄し、新たに四塩化チタン20mlおよびトルエン40mlを加え、110℃に昇温し、2時間撹拌しながら反応させた。反応終了後、40℃のn−ヘプタン70mlで7回洗浄して、固体触媒成分を得た。なお、この固体触媒成分中の固液を分離して、固体分中のチタン含有率を測定したところ、3.1重量%であった。
【0085】
〔重合触媒の形成および重合〕
窒素ガスで完全に置換された内容積2.0リットルの撹拌機付オートクレーブに、トリエチルアルミニウム1.32mmol、シクロヘキシルメチルジメトキシシラン0.13mmolおよび前記固体触媒成分をチタン原子として0.0026mmol装入し、重合用触媒を形成した。その後、水素ガス2.0リットル、液化プロピレン1.4リットルを装入し、20℃で5分間予備重合を行なった後に昇温し、70℃で1時間重合反応を行った。このときの固体触媒成分1g当たりの重合活性、生成重合体中の沸騰n−ヘプタン不溶分の割合(HI)、生成重合体(a)のメルトインデックスの値(MI)、生成重合体中の微粉(105μm以下)、粒度分布[(D90−D10)/D50]、嵩比重(BD)を表2に示した。
【0086】
なお、ここで使用した固体触媒成分当たりの重合活性は下式により算出した。
重合活性=生成重合体(g)/固体触媒成分(g)
また、生成重合体中の沸騰n−ヘプタン不溶分の割合(HI)は、この生成重合体を沸騰n−ヘプタンで6時間抽出したときのn−ヘプタンに不溶解の重合体の割合(重量%)とした。さらに、生成重合体(a)のメルトインデックスの値(MI)は、ASTM D 1238、 JIS K 7210に準じて測定した。重合体の嵩比重(BD)はJIS K6721に従って測定した。
【0087】
比較例10
比較例1得られたアルコキシマグネシウムを用いた以外は実施例8と同様に固体触媒成分および触媒を調製し重合を行なった。得られた結果を表2に示した。
【0088】
実施例9〜14、比較例11〜18
〔固体触媒成分(A)の調製〕
実施例2〜7および比較例1〜9で生成したジエトキシマグネシウムを各々使用した以外は実施例8と同様の処理をおこない固体触媒成分を得た。すなわち、実施例2のジエトキシマグネシウムを使用したものが実施例9であり、実施例3のものが実施例10、実施例4のものが実施例11である。以下同様である。また、比較例2のジエトキシマグネシウムを使用したものが比較例11であり、比較例3のものが比較例12、比較例4のものが比較例13である。以下同様である。
〔重合触媒の形成および重合〕
実施例8と同様の方法により重合を行い生成重合体を得た。活性、HI、MI、粒度分布、微粉量、BDを表2に示す。
【0089】
【表2】

【図面の簡単な説明】
【0090】
【図1】本発明の重合触媒を調製する工程を示すフローチャート図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属マグネシウムとアルコールを、ハロゲンまたはハロゲン含有化合物の存在下で反応させる際に、反応温度を下記(I)及び(II);
(I)前記反応中、金属マグネシウムの反応率が20%以上となる段階において、前記反応温度を下記低温条件から下記高温条件に変更する;
28℃ ≦T(低温条件)≦ 67℃、
58℃ ≦T(高温条件)≦ 上記アルコールの還流温度
(II)T+5<T
(式中、T、Tは反応温度(℃)を示す。)の条件で行なうことを特徴とするアルコキシマグネシウム合成方法。
【請求項2】
金属マグネシウム1molに対して、ハロゲンまたはハロゲン化合物0.0003mol以上を存在させることを特徴とする請求項1に記載のアルコキシマグネシウムの合成方法。
【請求項3】
前記ハロゲンがヨウ素であることを特徴とする請求項1に記載のアルコキシマグネシウムの合成方法。
【請求項4】
前記ハロゲン化合物がチタン塩素化物であることを特徴とする請求項1に記載のアルコキシマグネシウムの合成方法。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の合成方法で得られたアルコキシマグネシウム(a)とハロゲン含有チタン化合物(b)とを接触させて得られることを特徴とするオレフィン類重合用固体触媒成分。
【請求項6】
(A)請求項5のオレフィン類重合用固体触媒成分、および
(B)下記一般式(1);RAlQ3−p (1)
(式中、Rは炭素数1〜4のアルキル基を示し、Qは水素原子あるいはハロゲン原子を示し、pは0<p≦3の実数である。)で表される有機アルミニウム化合物によって形成されることを特徴とするオレフィン類重合用触媒。

【図1】
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【公開番号】特開2010−30925(P2010−30925A)
【公開日】平成22年2月12日(2010.2.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−193094(P2008−193094)
【出願日】平成20年7月28日(2008.7.28)
【出願人】(390007227)東邦チタニウム株式会社 (191)
【Fターム(参考)】