説明

アルツハイマー病の治療用ベータセクレターゼ阻害剤として有用なフェニルカルボキサミド化合物

本発明はアルツハイマー病等のβセクレターゼ酵素が関与する疾患の治療に有用なβセクレターゼ酵素阻害剤であるフェニルカルボキサミド化合物に関する。本発明はこれらの化合物を含有する医薬組成物と、βセクレターゼ酵素が関与する前記疾患の治療におけるこれらの化合物及び組成物の使用にも関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
アルツハイマー病はアミロイドが細胞外プラーク及び細胞内神経原線維変化として脳に異常沈着することを特徴とする。アミロイド蓄積速度は形成速度、凝集速度及び脳からの排出速度の総計である。アミロイドプラークの主成分は4kDアミロイド蛋白質(βA4、別称Aβ、β蛋白質及びβAP)であり、ずっと大きな寸法の前駆体蛋白質の蛋白分解物であることが一般に認められている。アミロイド前駆体蛋白質(APP又はAβPP)は大きな細胞外ドメインと、膜貫通領域と、短い細胞質テールからなる受容体様構造をもつ。AβドメインはAPPの細胞外ドメインと膜貫通ドメインの両者の一部を占めるので、Aβドメインの遊離はそのNH末端とCOOH末端を生成するために2つの別個の蛋白分解イベントが存在することを意味する。APPを膜から遊離し、APPの可溶性COOH切断形(APP)を生成する分泌メカニズムは少なくとも2種類ある。APPとそのフラグメントを膜から遊離するプロテアーゼは「セクレターゼ」と呼ばれる。殆どのAPPはAβ蛋白質の内部で切断してα−APPを遊離し、無傷のAβを遊離させない推定αセクレターゼにより遊離される。一部のAPPはAPPのNH末端付近で切断して完全Aβドメインを含むCOOH末端フラグメント(CTF)を生成するβセクレターゼ(「βセクレターゼ」)により遊離される。
【0002】
こうして、βセクレターゼないしβアミロイド前駆体蛋白分解酵素(「BACE」)の活性はアルツハイマー病の特徴であるAPPの異常切断、Aβ生成、及びβアミロイドプラークの脳内蓄積を引き起こす(R.N.Rosenberg,Arch.Neurol.,vol.59,Sep 2002,pp.1367−1368;H.Fukumotoら,Arch.Neurol.,vol.59,Sep 2002,pp.1381−1389;J.T.Huseら,J.Biol.Chem.,vol 277,No.18,2002年5月3日発行,pp.16278−16284;K.C.Chen and W.J.Howe,Biochem.Biophys.Res.Comm,vol.292,pp 702−708,2002参照)。従って、βセクレターゼないしBACEを阻害することができる治療剤はアルツハイマー病の治療に有用であると思われる。
【0003】
本発明の化合物はβセクレターゼないしBACEの活性を阻害し、従って不溶性Aβの形成を防ぎ、Aβ生成を阻止することによりアルツハイマー病を治療するために有用である。
【0004】
(発明の概要)
本発明はアルツハイマー病等のβセクレターゼ酵素が関与する疾患の治療に有用なβセクレターゼ酵素阻害剤であるフェニルカルボキサミド化合物に関する。本発明はこれらの化合物を含有する医薬組成物と、βセクレターゼ酵素が関与する前記疾患の治療におけるこれらの化合物及び組成物の使用にも関する。
【0005】
(発明の詳細な説明)
本発明は式I:
【0006】
【化5】

{式中、R
【0007】
【化6】

[式中、R1a及びR1b
(a)水素、
(b)ハロゲン、
(c)フェニル、
(d)−CN、
(e)−C(=O)−R1c(式中、R1cは水素又はC1−10アルキルである)、
(f)C3−12シクロアルキル、及び
(g)−X−R1dから構成される群から選択され、
上記式中、Xは
(i)−O−、
(ii)−C(=O)−、
(iii)−S−、
(iv)−S(=O)−、及び
(v)−S(=O)−から構成される群から選択され、
1d
(i)−C1−6アルキル、
(ii)−C1−3アルコキシ、
(iii)C3−8シクロアルキル、及び
(iv)フェニルから構成される群から選択されるか;
あるいは、R1aとR1bは一緒になって−O−CHCH−O−又は−CH=CH−CH=CH−を形成する]から構成される群から選択されるか;
又はR
(2)−C(=O)NR1e1f
(3)−OSO1g、及び
(4)−N(R1g)SO1hから構成される群から選択され;
上記式中、R1e、R1f、R1g及びR1h
(a)−C1−6アルキル、
(b)−C2−6アルケニル、
(c)−C2−6アルキニル、
(d)−C0−6アルキル−C3−12シクロアルキル、
(e)−C1−6アルキル−ジ(C3−12シクロアルキル)、
(f)−C0−6アルキル−アリール、
(g)−C0−6アルケニル−アリール、
(h)−C0−6アルキル−ジ(アリール)、及び
(i)−C0−6アルキル−ヘテロアリールから構成される群から独立して選択され;
前記ヘテロアリールはピラジニル、ピラゾリル、ピリダジニル、ピリジル、ピリミジニル、ピロリル、テトラゾリル、フラニル、イミダゾリル、トリアジニル、ピラニル、チアゾリル、チエニル、チオフェニル、トリアゾリル、オキサゾリル、イソオキサゾリル、チアゾリル、オキサジアゾリル、インドリル、キノリニル、イソキノリニル、ベンゾイミダゾリル及びベンゾオキサゾリルから構成される群から選択され、
前記アリールはフェニル及びナフチルから構成される群から選択され、
前記アルキル、アルケニル、シクロアルキル、アリール及びヘテロアリールは置換されていないか又は1個以上の
(i)ハロ、
(ii)−OH、
(iii)=O、
(iv)−CN、
(v)−CF
(vi)−OCF
(vii)−C1−6アルキル、
(viii)−C1−3アルコキシ、
(ix)C3−12シクロアルキル、
(x)フェニル、
(xi)−N、又は
(xii)−X−Rで置換されているか、
あるいはR1eとR1fはそれらが結合している窒素原子と一緒になって5〜7員複素環を結合し、

(1)水素、及び
(2)−C1−6アルキルから構成される群から選択され、
3a、R3b及びR3c
(1)水素、
(2)ハロ、
(3)−OH、
(4)−CN、
(5)−CF
(6)−OCF
(7)−C1−6アルキル、
(8)−C1−3アルコキシ、
(9)−C3−12シクロアルキル、及び
(10)−NHC(=O)CHNR1a1bから構成される群から独立して選択される}の医薬的に許容可能なその塩、並びにその個々のエナンチオマー及びジアステレオマーに関する。
【0008】
所定態様において、本発明はRが−C1−6アルキル、好ましくはメチルである式(I)の化合物に関する。
【0009】
所定態様において、本発明はR6aとR6cが水素であり、R6bが水素とハロゲン(好ましくはフルオロ)から構成される群から選択される式(I)の化合物に関する。
【0010】
所定態様において、本発明はRが置換されていないか又はシアノで置換されたアリール(好ましくはフェニル)である式(I)の化合物に関する。他の態様では、本発明はR
(1)−C(=O)NR1e1f
(2)−OSO1g、及び
(3)−N(R1g)SO1hから構成される群から選択される式(I)の化合物に関する。
【0011】
例えば、所定態様において、本発明はRが−C(=O)NR1e1f、及びR1e1fであり、R1e及びR1fが好ましくは
(a)−C1−6アルキル、
(b)−C2−6アルケニル、
(c)−C2−6アルキニル、及び
(d)−C0−6アルキル−C3−12シクロアルキルから構成される群から各々選択される式(I)の化合物に関する。
【0012】
他の態様において、Rは−OSO1gであり、R1gは好ましくは−C0−6アルキル−アリール(例えばベンジル)であり、前記アリール基は置換されていないか又は1個以上のハロ(好ましくはフルオロ)、−CN、−CF、−C1−6アルキル、C3−12シクロアルキル及びフェニルで置換されている。
【0013】
単独又は別の置換基の一部として本明細書で使用する「アルキル」なる用語は指定炭素原子数の飽和直鎖又は分岐鎖炭化水素基を意味する(例えばC1−10アルキルとは炭素原子数1〜10のアルキル基を意味する)。好ましいアルキル基は炭素原子数1〜6のC1−6アルキル基である。アルキル基の例としてはメチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、tert−ブチル、ペンチル、ヘキシル等が挙げられる。
【0014】
単独又は別の置換基の一部として本明細書で使用する「アルコキシ」なる用語は指定炭素原子数の−O−アルキル基(式中、アルキルは上記に定義した通りである)を意味する(例えばC1−6アルコキシとは炭素原子数1〜6のアルコキシ基を意味する)。好ましいアルコキシ基の例としてはメトキシ、エトキシ、プロポキシ、ブトキシ、sec−ブトキシ及びペントキシが挙げられる。特に好ましいアルコキシ基はC1−3アルコキシである。
【0015】
単独又は別の置換基の一部として本明細書で使用する「アルケニル」なる用語は単一炭素−炭素二重結合をもつ指定炭素原子数の直鎖又は分岐鎖炭化水素基を意味する(例えばC2−10アルケニルとは炭素原子数2〜10のアルケニル基を意味する)。本発明で使用するのに好ましいアルケニル基は炭素原子数2〜6のC2−6アルケニル基である。アルケニル基の例としてはエテニルとプロペニルが挙げられる。
【0016】
単独又は別の置換基の一部として本明細書で使用する「アルキニル」なる用語は単一炭素−炭素三重結合をもつ指定炭素原子数の直鎖又は分岐鎖炭化水素基を意味する(例えばC2−10アルキニルとは炭素原子数2〜10のアルキニル基を意味する)。本発明で使用するのに好ましいアルキニル基は炭素原子数2〜6のC2−6アルキニル基である。アルキニル基の例としてはエチニルとプロピニルが挙げられる。
【0017】
単独又は別の置換基の一部として本明細書で使用する「シクロアルキル」なる用語は指定炭素原子数の飽和単環、多環又は架橋環状炭化水素基を意味する(例えばC3−12シクロアルキルとは炭素原子数3〜12のシクロアルキル基を意味する)。単環式シクロアルキル基の例としてはシクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル等のC3−8シクロアルキル基が挙げられる。架橋シクロアルキル基の例としてはアダマンチルとノルボルニルが挙げられる。
【0018】
単独又は別の置換基の一部として本明細書で使用する「アリール」なる用語は指定炭素原子数の芳香族又は環状基を意味する(例えばC6−10アリールとは炭素原子数6〜10のアリール基を意味する)。本発明で使用するのに好ましいアリール基としてはフェニルとナフチルが挙げられる。
【0019】
「ハロ」又は「ハロゲン」なる用語はフルオロ、クロロ、ブロモ及びヨードを意味する。
【0020】
単独又は別の置換基の一部として本明細書で使用する「ヘテロアリール」なる用語は少なくとも1個のヘテロ原子(O、N又はS)をもつ芳香族環状基を意味する。本発明で使用するヘテロアリール基の例としてはフリル、ピラニル、ベンゾフラニル、イソベンゾフラニル、クロメニル、チエニル、ベンゾチオフェニル、ピロリル、ピラゾリル、イミダゾリル、ピリジル、ピラジニル、ピリミジニル、ピリダジニル、インドリル、インダゾリル、ベンゾイミダゾリル、キノリル及びイソキノリルが挙げられる。本明細書に定義するヘテロアリール基が置換されている場合には、置換基はヘテロアリール基の環炭素原子に結合していてもよいし、置換が可能な原子価をもつ環ヘテロ原子(即ち、窒素、酸素又は硫黄)に結合していてもよい。置換基は環炭素原子に結合していることが好ましい。
【0021】
本発明の化合物は少なくとも1個の不斉中心をもつ場合がある。分子上の各種置換基の種類に応じて2個以上の不斉中心が存在する場合もある。不斉中心をもつ化合物はエナンチオマー(光学異性体)、ジアステレオマー(立体異性体)又はその両者を形成し、混合物及び純化合物又は部分精製化合物としての可能な全エナンチオマー及びジアステレオマーを本発明の範囲に含むものとする。本発明はこれらの化合物のこのような全異性形を含むものとする。
【0022】
エナンチオマーもしくはジアステレオマーの含有率の高い化合物の個々の合成、又はそのクロマトグラフィー分離は本明細書に開示する方法を適切に変更することにより当分野で公知の通りに実施することができる。その絶対立体化学は公知絶対配置の不斉中心を含む試薬で必要に応じて誘導体化した結晶生成物又は結晶中間体のX線結晶解析により決定することができる。
【0023】
所望により、個々のエナンチオマーを単離するように化合物のラセミ混合物を分離してもよい。分離は化合物のラセミ混合物を純エナンチオマー化合物とカップリングしてジアステレオマー混合物を形成した後に分別結晶法やクロマトグラフィー等の標準方法により個々のジアステレオマーを分離する等の当分野で周知の方法により実施することができる。カップリング反応は多くの場合には純エナンチオマー酸又は塩基を使用する塩形成である。その後、付加キラル残基の開裂によりジアステレオマー誘導体を純エナンチオマーに変換することができる。キラル固定相を使用するクロマトグラフィー法により化合物のラセミ混合物を直接分離することもでき、このような方法は当分野で周知である。
【0024】
あるいは、当分野で周知の方法により公知配置の光学的に純粋な出発材料又は試薬を使用して立体選択的合成により化合物の任意エナンチオマーを得ることもできる。
【0025】
本発明の化合物は下記一般手順と特定実施例に従って製造することができる。
【0026】
本発明の化合物は下記一般手順に従って製造することができる。
【0027】
【化7】

【0028】
ビフェニルから誘導される各種BACE阻害剤は上記スキーム1に要約する方法に従って製造することができる。出発レソルシノール誘導体1をアセトン中、炭酸カリウム等の酸スカベンジャーの存在下で臭化ベンジルと反応させることによりそのモノベンジルエーテルとして保護すると、2を形成することができる。中間体2を水酸化ナトリウム等の強塩基の作用により検出し、得られた酸をアミドカップリング剤(例えばBOP試薬)とトリアルキルアミンを使用して適切に置換されたアミン対応部分とカップリングすると、3を形成することができる。トリフリック酸無水物と第3級アミン(例えばヒューニッヒ塩基)を使用して対応するトリフリック酸エステルに変換することによりフェノールヒドロキシル基をカップリングのために活性化すると、4が得られる。水素雰囲気下にパラジウム触媒を使用してベンジルエーテル保護基を除去すると、5が得られ、脱プロトン化に適した塩基(例えば水素化ナトリウム)の存在下に2−ハロ酢酸エステル(例えば2−ブロモ酢酸ベンジル)でアルキル化することができる。得られたフェノキシ酢酸エステルを標準水素化条件下で脱保護すると、6が得られる。トリアルキルアミン及びアミドカップリング剤(例えばBOP試薬)と反応させることによりカルボン酸6をモノ−Boc保護1,5−ペンタンジアミン試薬とカップリングすると、7を形成することができる。このトリフラートをこのような鈴木カップリング反応のための標準プロトコールにより各種ボロン酸とカップリングすると、最後から二番目の中間体が得られ、TFA等の強酸で脱保護すると、目的化合物9が得られる。
【0029】
【化8】

【0030】
イソフタルアミドから誘導される阻害剤は上記スキーム2に記載の化学反応に従うことにより合成することができる。5−ヒドロキシイソフタル酸ジメチル10をDMF中、脱プロトン化に適した塩基(例えば水素化ナトリウム)の存在下に2−ハロ酢酸エステル(例えばα−ブロモ酢酸tert−ブチル)でアルキル化すると、11を形成することができる。ジクロロメタン中、トリフルオロ酢酸等の強酸を使用することにより11のカルボキシル基を脱保護することができる。得られたカルボン酸をトリアルキルアミン及びアミドカップリング剤(例えばBOP試薬)と反応させることによりモノ−Boc保護1,5−ペンタンジアミン試薬とカップリングすると、13を形成することができる。どちらのエステルも水酸化ナトリウム等の強塩基を使用して鹸化することができる。得られた二酸をアミドカップリング剤(例えばBOP試薬)とトリアルキルアミンを使用して適切に置換されたアミンと順次カップリングすると、最後から二番目の中間体が得られ、TFA等の強酸で脱保護すると、目的化合物15が得られる。
【0031】
【化9】

【0032】
各種スルホニル化阻害剤は上記スキーム3に要約する方法に従って製造することができる。出発レソルシノール誘導体1をTHF中、脱プロトン化に適した塩基(例えば水素化ナトリウム)の存在下に2−ハロ酢酸エステル(例えばα−ブロモ酢酸tert−ブチル)でモノアルキル化すると、16を形成することができる。ジクロロメタン中、トリフルオロ酢酸等の強酸の作用により、16のカルボキシル官能基を脱保護することができる。得られたカルボン酸を次にトリアルキルアミン及びアミドカップリング剤(例えばBOP試薬)と反応させることによりモノ−Boc保護1,5−ペンタンジアミン試薬とカップリングすると、17を形成することができる。水酸化ナトリウム等の強塩基を使用してメチルエステル官能基を鹸化することができる。得られた安息香酸をアミドカップリング剤(例えばBOP試薬)とトリアルキルアミンを使用して適切に置換されたアミン対応部分とカップリングすると、18を形成することができる。
【0033】
次に適切に置換された塩化スルホニルと炭酸カリウム等の酸スカベンジャーに暴露することにより18のフェノールヒドロキシル基をスルホニル化して19を形成した後、ジクロロメタン中、HClガス又はTFA等の強酸を使用して脱保護すると、最終目的物20が得られる。
【0034】
「実質的に純粋」なる用語は当分野で公知の分析技術によりアッセイした場合に単離物が少なくとも90%純粋、好ましくは95%純粋、より好ましくは99%純粋であることを意味する。
【0035】
「医薬的に許容可能な塩」なる用語は無機又は有機塩基と無機又は有機酸を含む医薬的に許容可能な非毒性塩基又は酸から製造される塩を意味する。本発明の化合物は化合物の遊離塩基形態に存在する酸官能基の数に応じてモノ、ジ又はトリス塩とすることができる。無機塩基から誘導される遊離塩基及び塩としてはアルミニウム、アンモニウム、カルシウム、銅、三価鉄、二価鉄、リチウム、マグネシウム、三価マンガン、二価マンガン、カリウム、ナトリウム、亜鉛等が挙げられる。アンモニウム、カルシウム、マグネシウム、カリウム及びナトリウム塩が特に好ましい。固体形態の塩は2種以上の結晶構造で存在してもよいし、水和物形態でもよい。医薬的に許容可能な非毒性有機塩基から誘導される塩としては第一、第二、及び第三アミン、置換アミン(天然置換アミンを含む)、環状アミン、並びに塩基性イオン交換樹脂(例えばアルギニン、ベタイン、カフェイン、コリン、N,N’−ジベンジルエチレンジアミン、ジエチルアミン、2−ジエチルアミノエタノール、2−ジメチルアミノエタノール、エタノールアミン、エチレンジアミン、N−エチルモルホリン、N−エチルピペリジン、グルカミン、グルコサミン、ヒスチジン、ヒドラバミン、イソプロピルアミン、リジン、メチルグルカミン、モルホリン、ピペラジン、ピペリジン、ポリアミン樹脂、プロカイン、プリン、テオブロミン、トリエチルアミン、トリメチルアミン、トリプロピルアミン、トロメタミン等)の塩が挙げられる。本発明の化合物が塩基性である場合には、無機酸や有機酸等の医薬的に許容可能な非毒性酸から塩を製造することができる。このような酸としては酢酸、トリフルオロ酢酸、ベンゼンスルホン酸、安息香酸、樟脳スルホン酸、クエン酸、エタンスルホン酸、フマル酸、グルコン酸、グルタミン酸、臭化水素酸、塩酸、イセチオン酸、乳酸、マレイン酸、リンゴ酸、マンデル酸、メタンスルホン酸、粘液酸、硝酸、パモ酸、パントテン酸、リン酸、琥珀酸、硫酸、酒石酸、p−トルエンスルホン酸等が挙げられる。クエン酸、臭化水素酸、塩酸、トリフルオロ酢酸、マレイン酸、リン酸、硫酸、フマル酸、及び酒石酸が特に好ましい。
【0036】
本発明はβセクレターゼ酵素活性ないしβアミロイド前駆体蛋白質分解酵素(「BACE」)活性の阻害を必要とする哺乳動物等の患者又は対象における前記活性の阻害剤としての本発明の化合物の使用に関し、有効量の本発明の化合物を投与することを含む。「βセクレターゼ酵素」、「βアミロイド前駆体蛋白質分解酵素」、及び「BACE」なる用語は本明細書では同義に使用する。ヒト以外にも多様な他の哺乳動物を本発明の方法により治療することができる。
【0037】
本発明は更にヒト及び動物におけるβセクレターゼ酵素活性の阻害用医薬又は組成物の製造方法として、本発明の化合物を医薬キャリヤー又は希釈剤と配合する段階を含む方法に関する。
【0038】
本発明の化合物はアルツハイマー病の治療、改善、防止又は危険低減に有用である。例えば、前記化合物はアルツハイマー型痴呆の予防と、アルツハイマー型初期、中期又は後期痴呆の治療に有用であると思われる。前記化合物はアミロイド前駆体蛋白質(別称APP)の異常切断により媒介される疾患、及びβセクレターゼの阻害により治療又は予防することができる他の病態の治療、改善、防止又は危険低減にも有用であると思われる。このような病態としては軽度認知傷害、トリソミー21(ダウン症候群)、脳アミロイド血管症、変性痴呆、オランダ型遺伝性アミロイド性脳卒中(HCHWA−D)、クロイツェルフェルト・ヤコブ病、プリオン疾患、筋萎縮性測索硬化症、進行性核上麻痺、頭部外傷、卒中、ダウン症候群、膵炎、封入体筋炎、他の末梢アミロイド症、糖尿病及びアテローム性動脈硬化症が挙げられる。
【0039】
本発明の化合物を投与する対象又は患者は一般にβセクレターゼ酵素活性の阻害が所望される男性又は女性であるが、βセクレターゼ酵素活性の阻害又は上記疾患の治療が所望される他の哺乳動物(例えばイヌ、ネコ、マウス、ラット、ウシ、ウマ、ヒツジ、ウサギ、サル、チンパンジー又は他のサル類もしくは霊長類)でもよい。
【0040】
本発明の化合物は薬剤を併用したほうが単剤よりも安全又は有効である場合には、本発明の化合物が有用である疾患又は病態の治療に1種以上の他の薬剤と併用することができる。更に、本発明の化合物は本発明の化合物の副作用又は毒性を治療、予防、防止、改善、又は危険低減する1種以上の他の薬剤と併用することもできる。このような他の薬剤はこのような用途に通常使用されている経路と量で本発明の化合物と同時又は順次投与することができる。従って、本発明の医薬組成物としては、本発明の化合物以外に1種以上の他の活性成分を含有するものが挙げられる。併用剤は単位剤形併用製剤の一部として投与してもよいし、1種以上の付加薬剤を治療レジメンの一部として別個の剤形で投与するキット又は治療プロトコールとして投与してもよい。
【0041】
単位用量又はキット形態の本発明の化合物と他の薬剤の併用剤の例としては例えば他のβセクレターゼ阻害剤又はγセクレターゼ阻害剤;成長ホルモン分泌促進剤;HMG−CoAレダクターゼ阻害剤;NSAID(例えばイブプロフェン);ビタミンE;抗アミロイド抗体;CB−1受容体アンタゴニスト又はCB−1受容体逆アゴニスト;抗生物質(例えばドキシサイクリン及びリファムピン);N−メチル−D−アスパラギン酸(NMDA)受容体アンタゴニスト(例えばメマンチン);コリンエステラーゼ阻害剤(例えばガランタミン、リバスチグミン、ドネペジル及びタクリン)等のアルツハイマー治療薬;あるいは本発明の化合物の効力、安全性、利便性を増すか又は望ましくない副作用もしくは毒性を低減する受容体又は酵素に作用する他の薬剤との併用剤が挙げられる。上記併用剤は例証に過ぎず、限定的ではない。
【0042】
本明細書において使用する「組成物」なる用語は所定量又は比率の特定成分を含有する製剤と、特定量の特定成分の併用により直接又は間接的に得られる任意製剤を意味する。医薬組成物に関してこの用語は1種以上の活性成分と場合により不活性成分を含むキャリヤーを含有する製剤と、成分の任意2種以上の配合、錯化もしくは凝集、成分の1種以上の解離、又は成分の1種以上の他の型の反応もしくは相互作用により直接又は間接的に得られる任意製剤を含むものとする。一般に、医薬組成物は活性成分を液体キャリヤー又は微粉状固体キャリヤー又は両者と均質混和した後に必要に応じて生成物を所望製剤に成形することにより製造される。医薬組成物には、疾患の進行又は病態に所望効果を与えるために十分な量の目的活性化合物が含有される。従って、本発明の医薬組成物は本発明の化合物と医薬的に許容可能なキャリヤーを混合することにより製造される任意組成物を含む。
【0043】
経口用医薬組成物は医薬組成物の製造に当分野で公知の任意方法により製造することができ、このような組成物は医薬的にエレガントで口当たりのよい製剤にするために甘味剤、香味剤、着色剤及び防腐剤から構成される群から選択される1種以上の添加剤を添加することができる。タブレットはタブレットの製造に適した医薬的に許容可能な非毒性賦形剤との混合物として活性成分を含有することができる。これらの賦形剤としては例えば不活性希釈剤(例えば炭酸カルシウム、炭酸ナトリウム、ラクトース、リン酸カルシウム又はリン酸ナトリウム);顆粒化剤及び崩壊剤(例えばコーンスターチ又はアルギン酸);結合剤(例えば澱粉、ゼラチン又はアラビアガム)及び滑沢剤(例えばステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸又はタルク)が挙げられる。タブレットはコーティングしなくてもよいし、胃腸管での崩壊と吸収を遅らせることにより長時間持続作用を提供するように公知技術によりコーティングしてもよい。
【0044】
経口用組成物は活性成分を不活性固体希釈剤(例えば炭酸カルシウム、リン酸カルシウム又はカオリン)と混合したハードゼラチンカプセルの形態でもよいし、活性成分を水又は油性媒体(例えば落花生油、流動パラフィン、又はオリーブ油)と混合したソフトゼラチンカプセルの形態でもよい。
【0045】
他の医薬組成物としては、水性懸濁液の製造に適した賦形剤との混合物として活性材料を含有する水性懸濁液が挙げられる。更に、植物油(例えば落花生油、オリーブ油、ゴマ油又はココナツ油)又は鉱油(例えば流動パラフィン)に活性成分を懸濁することにより油性懸濁液を製剤化することもできる。本発明の医薬組成物は水中油エマルションの形態でもよく、更に甘味剤や香味剤等の賦形剤を添加してもよい。
【0046】
医薬組成物は公知技術に従って製剤化することが可能な注射用滅菌水性又は油性懸濁液の形態でもよいし、薬剤の直腸投与用座剤形態で投与することもできる。
【0047】
本発明の化合物は当業者に公知の吸入装置を使用して吸入投与してもよいし、経皮パッチにより投与してもよい。
【0048】
「医薬的に許容可能」とはキャリヤー、希釈剤又は賦形剤が製剤の他の成分と適合可能でなければならず且つそのレシピエントに有害であってはならないことを意味する。
【0049】
化合物「の投与」及び「を投与する」なる用語は治療に有用な形態と治療に有用な量で個体の体内に導入可能な形態で治療を必要とする個体に本発明の化合物を提供することを意味し、限定されないが、経口剤形(例えばタブレット、カプセル、シロップ、懸濁液等);注射剤形(例えばIV、IM、又はIP等);経皮剤形(例えばクリーム、ゼリー、散剤、又はパッチ);バッカル剤形;吸入用散剤、スプレー、懸濁液等;及び直腸座剤が挙げられる。
【0050】
「有効量」又は「治療有効量」なる用語は研究者、獣医、医師又は他の臨床技術者により求められる組織、系、動物又はヒトの生物学的又は医学的応答を誘発する該当化合物の量を意味する。本明細書で使用する「治療」なる用語は特に該当疾患又は疾病の症状を示す患者における上記病態の治療を意味する。
【0051】
本明細書で使用する「治療」又は「治療する」なる用語は本発明の化合物の任意投与を意味し、(1)疾患の症状又は症候をもつか又は示す動物において疾患を抑制する(即ち症状及び/又は症候の更なる進行を抑える)か、あるいは(2)疾患の症状又は症候をもつか又は示す動物において疾患を改善する(即ち症状及び/又は症候を逆行させる)ことを含む。「防止」なる用語は防止する病態を予防、治療、根絶、改善又は他の方法でその重篤度を低減することを含む。
【0052】
本発明の化合物を含有する組成物は単位剤形の形態とすると簡便であり、製薬分野で周知の任意方法により製造することができる。「単位剤形」なる用語は患者又は薬剤を患者に投与する者が全用量を収容した単一容器又はパッケージを開封することができ、2個以上の容器又はパッケージからの成分を混合する必要がないように、全活性成分及び不活性成分を適切なシステムに一体にした単一用量を意味する。単位剤形の典型例は経口投与用タブレットもしくはカプセル、注射用単一用量バイアル、又は直腸投与用座剤である。単位剤形の前記具体例は限定的ではなく、単位剤形の典型例を表すものに過ぎない。
【0053】
本発明の化合物を含有する組成物はキット形態とし、活性成分又は不活性成分、キャリヤー、希釈剤等の2種以上の成分に加え、患者又は薬剤を患者に投与する者が実際の剤形を調製するための説明書を添付すると簡便である。このようなキットは必要な全材料及び成分をキットに梱包してもよいし、材料又は成分を使用又は調製するための説明書は患者又は薬剤を患者に投与する者が別に入手するようにしてもよい。
【0054】
アルツハイマー病又は本発明の化合物の適応症である他の疾患を治療、改善、防止、又は危険低減する場合には、1日用量約0.1mg〜約100mg/kg動物体重の本発明の化合物を好ましくは1日1回又は1日2〜6回に分けるか又は持続放出形態で投与すると一般に満足な結果が得られる。合計1日用量は約1.0mg〜約2000mg、好ましくは約0.1mg〜約20mg/kg体重である。体重70kgの成人の場合、合計1日用量は一般に約7mg〜約1,400mgとなる。最適治療応答が得られるようにこの投与レジメンを調節することができる。1日1〜4回、好ましくは1日1回又は2回のレジメンで化合物を投与することができる。
【0055】
本発明の化合物又は医薬的に許容可能なその塩の特定投与用量としては1mg、5mg、10mg、30mg、80mg、100mg、150mg、300mg及び500mgが挙げられる。本発明の医薬組成物は活性成分約0.5mg〜1000mg;より好ましくは活性成分約0.5mg〜500mg;又は活性成分0.5mg〜250mg;又は活性成分1mg〜100mgを含有する製剤として提供することができる。治療に有用な特定医薬組成物は活性成分約1mg、5mg、10mg、30mg、80mg、100mg、150mg、300mg及び500mgを含有することができる。
【0056】
しかし、当然のことながら、任意特定患者の特定用量レベル及び投与頻度は変えることができ、使用する特定化合物の活性、この化合物の代謝安定性と作用期間、年齢、体重、一般健康状態、性別、食事、投与方法及び時間、排泄速度、薬剤併用、特定病態の重篤度、並びに宿主が受けている治療等の種々の因子によって異なる。
【0057】
βセクレターゼ酵素活性阻害剤としての本発明の化合物の有用性は当分野で公知の方法により立証することができる。酵素阻害は次のように測定する。
【0058】
FRETアッセイ:BACE1により分解され、TAMRAから蛍光を放出する基質([TAMRA−5−CO−EEISEVNLDAEF−NHQSY]QFRET)と共に均質終点蛍光共鳴エネルギー移動(FRET)アッセイを使用する。基質のKmは基質の溶解限度により測定できない。典型的反応は約30nM酵素、1.25μM基質、及び緩衝液(50mM NaOAc,pH4.5,0.1mg/ml BSA,0.2%CHAPS,15mM EDTA及び1mMデフェロキサミン)で総反応容量100μLとする。反応は30分間進行させ、96ウェルプレートLJL Analyst ADで励起波長530nmと発光波長580nmを使用してTAMRAフラグメント遊離を測定する。これらの条件下で、基質の10%未満がBACE1によりプロセシングされる。これらの試験で使用する酵素はバキュロウイルス発現システムで産生された可溶性(膜貫通ドメインと細胞質延長部を除く)ヒト蛋白質とする。化合物の阻害能を測定するために、阻害剤のDMSO溶液(1mM、100μM、10μM、1μMの4種の阻害剤濃度を調製)を反応混合物に加える(最終DMSO濃度は0.8%とする)。全実験は上記標準条件を使用して室温で実施する。化合物のIC50を測定するために、競合式V0/Vi=1+[I]/[IC50]を使用して化合物の阻害能を予測する。解離定数の再現誤差は一般に2倍未満である。
【0059】
HPLCアッセイ:BACE1により分解され、クマリンと結合したN末端フラグメントを遊離する基質(クマリン−CO−REVNFEVEFR)と共に均質終点HPLCアッセイを使用する。基質のKmは100μMを上回り、基質の溶解限度により測定できない。典型的反応は約2nM酵素、1.0μM基質、及び緩衝液(50mM NaOAc,pH4.5,0.1mg/ml BSA,0.2%CHAPS,15mM EDTA及び1mMデフェロキサミン)で総反応容量100μLとする。反応は30分間進行させ、1M Tris−HCl(pH8.0)25μLを加えることにより反応を停止する。得られた反応混合物をHPLCにロードし、5分間直線勾配を使用して生成物を基質から分離する。これらの条件下で、基質の10%未満がBACE1によりプロセシングされる。これらの試験で使用する酵素はバキュロウイルス発現システムで産生された可溶性(膜貫通ドメインと細胞質延長部を除く)ヒト蛋白質とする。化合物の阻害能を測定するために、阻害剤のDMSO溶液(FRETにより予測された阻害能に応じた濃度範囲で12種の阻害剤濃度を調製)を反応混合物に加える(最終DMSO濃度は10%とする)。全実験は上記標準反応条件を使用して室温で実施する。化合物のIC50を測定するために、4パラメーター式を曲線フィットに使用する。解離定数の再現誤差は一般に2倍未満である。
【0060】
特に、下記実施例の化合物は上記アッセイでβセクレターゼ酵素を阻害する活性をもち、一般にIC50は約1nM〜100μMであった。このような結果は本発明の化合物がβセクレターゼ酵素活性の阻害剤として使用するのに固有活性をもつことを示している。
【0061】
本明細書では本発明の化合物の数種の製造方法をスキーム及び実施例に例証する。出発材料は当分野で公知の手順又は本明細書に例証する手順により製造する。下記実施例は本発明を更に十分に理解できるようにすることを目的とする。これらの実施例は例証に過ぎず、本発明を限定するものではない。
【実施例】
【0062】
フェニルメタンスルホン酸3−{2−[(5−アミノペンチル)アミノ]−2−オキソエトキシ}−5−({[(1R)−1−(4−フルオロフェニル)エチル]アミノ}カルボニル)フェニル
ステップA:3−(2−tert−ブトキシ−2−オキソエトキシ)−5−ヒドロキシ安息香酸メチル
【0063】
【化10】

【0064】
THF100mL中に3,5−ジヒドロキシ安息香酸メチル(Aldrich)3.36g(20.0mmol)を含有する0℃溶液に4.4g(20.0mmol)の15−クラウン−5と次いでNaH(95%)480mg(20.0mmol)を加えた。溶液を30分間撹拌した後にブロモ酢酸tert−ブチル3.0mL(20.0mmol)を加えた。反応混合物を周囲温度までゆっくりと昇温させた後、エーテル(100mL)で希釈し、飽和NHCl(50mL)でクエンチした。有機相を分離し、水(25mL)と次いでブライン(25mL)で洗浄した。有機溶液をMgSOで乾燥し、濃縮し、クロマトグラフィー(2:3EtOAc/ヘキサン)に付すと、所望モノ−アルキル化フェノールが得られた。H NMR(CDCl)δ7.17(s,1H),7.08(s,1H),6.66(t,J=2.4Hz,1H),6.04(s,1H),4.54(s,2H),3.88(s,3H),1.55(s,9H)。13C NMR(CDCl)δ168.3,166.9,159.1,157.2,132.2,110.5,107.9,107.0,83.1,65.9,52.5,28.2。HRMS(M+Naの計算値)=305.0995。実測値=305.0992。
【0065】
ステップB:(3−ヒドロキシ−5−(メトキシカルボニル)フェノキシ)酢酸
【0066】
【化11】

【0067】
ジクロロメタン20mL中にステップAからのエステル1.90g(6.73mmol)を含有する0℃溶液にTFA10mLを加えた。得られた溶液を室温で2時間撹拌した後に溶媒を減圧除去すると、所望カルボン酸が白色固体として得られた。H NMR(CDOD)δ7.06(s,1H),7.03(s,1H),6.60(t,J=2.3Hz,1H),6.04(s,1H),4.87(bs,2H),3.86(s,3H)。13C NMR(CDOD)δ171.1,167.0,159.3,158.7,132.0,109.6,106.7,106.1,64.8,51.4。HRMS(M+Naの計算値)=249.0369。実測値=249.0356。
【0068】
ステップC:3−[2−({5−[(tert−ブトキシカルボニル)アミノ]ペンチル}アミノ)−2−オキシエトキシ]−5−ヒドロキシ安息香酸メチル
【0069】
【化12】

【0070】
ジクロロメタン20mL中にステップBからの酸650mg(2.87mmol)を含有する溶液にN−Boc−1,5−ペンタンジアミン581mg(2.87mmol)と、BOP試薬1.27g(2.87mmol)と、ヒューニッヒ塩基1.5mL(8.61mmol)を加えた。得られた溶液を室温で1時間撹拌した後に水(5mL)でクエンチした。有機相をブライン(10mL)で洗浄し、MgSOで乾燥し、濃縮し、クロマトグラフィー(4:1EtOAc/ヘキサン)に付すと、所望アミドが得られた。H NMR(CDCl)δ7.23(s,1H),7.14(s,1H),6.67(s,1H),6.56(bt,IH),4.72(bs,1H),4.52(s,2H),3.89(s,3H),3.35(q,J=6.3Hz,2H),3.06(q,J=6.6Hz,2H),1.5(m,4H),1.45(s,9H),1.22(m,2H)。13C NMR(CDCl)δ168.5,166.8,158.4,158.3,132.6,111.0,108.2,106.7,67.7,52.5,40.6,38.9,29.9,29.2,28.6,24.0。HRMS(計算値)=411.2126。実測値=411.2125。
【0071】
ステップD:[5−({[3−({[(1R)−1−(4−フルオロフェニル)エチル]アミノ}カルボニル)−5−ヒドロキシフェノキシ]アセチル}アミノ)ペンチル]カルバミン酸tert−ブチル
【0072】
【化13】

【0073】
メタノール10mLとTHF10mL中にステップCからのエステル920mg(2.03mmol)を含有する溶液に1N NaOH3.0mL(3.0mmol)を加えた。反応混合物を50℃に5時間加熱し、0℃まで冷却し、1N HClで中和した。溶媒を蒸発させ、残渣をトルエンと共沸させた。粗安息香酸をジクロロメタン20mLに溶かし、(R)−(+)−4−フルオロ−α−メチルベンジルアミン(Lancaster Synthesis)278mg(2.00mmol)、BOP試薬884mg(2.00mmol)及びヒューニッヒ塩基0.70mL(4.0mmoL)で処理した。得られた溶液を室温で30分間撹拌した後に水(5mL)でクエンチした。有機相をブライン(10mL)で洗浄し、MgSOで乾燥し、濃縮し、クロマトグラフィー(9:1EtOAc/ヘキサン)に付すと、所望アミドが得られた。H NMR(CDOD)δ7.40(dd,J=2.0,7.4Hz,2H),7.05(t,J=8.8Hz,2H),6.91(d,J=2.0Hz,1H),6.89(t,J=2.2Hz,1H),5.21(q,J=7.0Hz,1H),4.49(s,2H),3.25(t,J=7.0Hz,2H),2.98(t,J=7.0Hz,2H),1.58(d,J=7.0Hz,3H),1.57−1.46(m,4H),1.45(s,9H),1.25(m,2H)。13C NMR(CDOD)δ169.5,168.0,163.2,160.8,159.0,158.8,140.1,136.9,127.9,127.8,114.9,114.7,108.0,105.0,104.7,78.6,67.1,48.8,40.0,38.8,29.3,28.9,27.5,23.8,20.9。HRMS(計算値)=518.2661。実測値=518.2677。
【0074】
ステップE:フェニルメタンスルホン酸3−{2−[(5−アミノペンチル)アミノ]−2−オキソエトキシ}−5−({[(1R)−1−(4−フルオロフェニル)エチル]アミノ}カルボニル)フェニル:
【0075】
【化14】

【0076】
ステップDからのフェノール150mg(0.290mmol)のアセトン(15mL)溶液に塩化ベンジルスルホニル55mg(0.29mmol)とKCO60mg(0.44mmol)を加えた。得られた混合物を55℃に17時間加熱した後に冷却し、溶媒を減圧除去した。残渣にエーテル50mLを加え、水(3×10mL)と次いでブライン(10mL)で洗浄した。有機相をMgSOで乾燥し、濃縮すると、粗スルホン酸エステルが得られ、すぐにCHCl 10mLに再溶解し、TFA2mLで処理した。反応混合物を周囲温度で3時間撹拌し、濃縮し、残渣を逆相クロマトグラフィーに付すと、所望化合物がモノTFA塩として得られた。H NMR(CDOD)δ7.51(m,2H),7.42(m,6H),7.28(t,J=1.5Hz,1H),7.07(t,J=8.8Hz,2H),6.95(t,J=2.2Hz,1H),5.19(q,J=7.0Hz,1H),4.78(s,2H),4.55(s,2H),3.31(m,4H),2.86(t,7.6Hz,2H),1.57(m,2H),1.51(d,J=7.0Hz,3H),1.31(m,2H)。13C NMR(CDOD)δ169.1,166.2,160.9,158.8,150.2,137.3,131.0,129.0,128.6,127.97,127.94,127.8,115.0,114.8,114.1,112.4,112.1,67.3,56.4,49.1,39.3,38.4,28.7,26.9,23.3,20.8。HRMS(計算値)=572.2225.実測値=572.2212.
本明細書全体を通して以下の略語を使用する。
Me:メチル
Bn:ベンジル
Ac:アセチル
THF:テトラヒドロフラン
DMSO:ジメチルスルホキシド
EDTA:エチレンジアミン四酢酸
Boc:tert−ブチルオキシカルボニル
BOP:ヘキサフルオロリン酸ベンゾトリアゾール−1−イルオキシ−トリス(ジメチルアミノ)ホスホニウム
CHAPS:3−[(3−コラミドプロピル)ジメチルアンモニオ]−2−ヒドロキシ−1−プロパンスルホネート
DIPEA:ジイソプロピルエチルアミン
DCM:ジクロロメタン
BSA:ウシ血清アルブミン
Tf:トリフルオロメチルスルホニル
TFA:トリフルオロ酢酸
rt:室温
HPLC:高性能液体クロマトグラフィー。
【0077】
適当な出発材料と試薬を使用して上記実施例の化合物と同様に以下の化合物を製造した。
【0078】
【化15】

【0079】
以上、所定特定態様に関して本発明を記載及び例証したが、当業者に自明の通り、発明の精神と範囲から逸脱せずに手順とプロトコールの種々の応用、変更、変形、置換、削除及び追加が可能である。従って、本発明は特許請求の範囲により定義され、特許請求の範囲は妥当な範囲で広義に解釈すべきである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式I:
【化1】

{式中、R
(1)
【化2】

[式中、R1a及びR1b
(a)水素、
(b)ハロゲン、
(c)フェニル、
(d)−CN、
(e)−C(=O)−R1c(式中、R1cは水素又はC1−10アルキルである)、
(f)C3−12シクロアルキル、及び
(g)−X−R1dから構成される群から選択され、
上記式中、Xは
(i)−O−、
(ii)−C(=O)−、
(iii)−S−、
(iv)−S(=O)−、及び
(v)−S(=O)−から構成される群から選択され、
1d
(i)−C1−6アルキル、
(ii)−C1−3アルコキシ、
(iii)C3−12シクロアルキル、及び
(iv)フェニルから構成される群から選択されるか;
あるいは、R1aとR1bは一緒になって−O−CHCH−O−又は−CH=CH−CH=CH−を形成する]から構成される群から選択されるか;
又はR
(2)−C(=O)NR1e1f
(3)−OSO1g、及び
(4)−N(R1g)SO1hから構成される群から選択され;
上記式中、R1e、R1f、R1g及びR1h
(a)−C1−6アルキル、
(b)−C2−6アルケニル、
(c)−C2−6アルキニル、
(d)−C0−6アルキル−C3−12シクロアルキル、
(e)−C1−6アルキル−ジ(C3−12シクロアルキル)、
(f)−C0−6アルキル−アリール、
(g)−C0−6アルケニル−アリール、
(h)−C0−6アルキル−ジ(アリール)、及び
(i)−C0−6アルキル−ヘテロアリールから構成される群から独立して選択され;
前記ヘテロアリールはピラジニル、ピラゾリル、ピリダジニル、ピリジル、ピリミジニル、ピロリル、テトラゾリル、フラニル、イミダゾリル、トリアジニル、ピラニル、チアゾリル、チエニル、チオフェニル、トリアゾリル、オキサゾリル、イソオキサゾリル、チアゾリル、オキサジアゾリル、インドリル、キノリニル、イソキノリニル、ベンゾイミダゾリル及びベンゾオキサゾリルから構成される群から選択され、
前記アリールはフェニル及びナフチルから構成される群から選択され、
前記アルキル、アルケニル、シクロアルキル、アリール及びヘテロアリールは置換されていないか又は1個以上の
(i)ハロ、
(ii)−OH、
(iii)=O、
(iv)−CN、
(v)−CF
(vi)−OCF
(vii)−C1−6アルキル、
(viii)−C1−3アルコキシ、
(ix)C3−12シクロアルキル、
(x)フェニル、
(xi)−N、又は
(xii)−X−R1dで置換されているか、
あるいはR1eとR1fはそれらが結合している窒素原子と一緒になって5〜7員複素環を形成し、

(1)水素、及び
(2)−C1−6アルキルから構成される群から選択され、
3a、R3b及びR3c
(1)水素、
(2)ハロ、
(3)−OH、
(4)−CN、
(5)−CF
(6)−OCF
(7)−C1−6アルキル、
(8)−C1−3アルコキシ、
(9)−C3−12シクロアルキル、及び
(10)−NHC(=O)CHNR1a1bから構成される群から独立して選択される}の医薬的に許容可能なその塩、並びにその個々のエナンチオマー及びジアステレオマー。
【請求項2】
が−C1−6アルキルである請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
がメチルである請求項2に記載の化合物。
【請求項4】
6aとR6cが水素であり、R6bが水素とハロゲンから構成される群から選択される請求項1から3のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項5】
6bがハロゲンである請求項4に記載の化合物。
【請求項6】
6bがフルオロである請求項5に記載の化合物。
【請求項7】
がアリールである請求項1から6のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項8】
が置換されていないか又はシアノで置換されたフェニルである請求項7に記載の化合物。
【請求項9】

(1)−C(=O)NR1e1f
(2)−OSO1g、及び
(3)−N(R1g)SO1hから構成される群から選択される請求項1から6のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項10】
が−OSO1gである請求項9に記載の化合物。
【請求項11】
1gがフェニルである請求項10に記載の化合物。
【請求項12】
下式:
【化3】

から構成される群から選択される化合物及び医薬的に許容可能なその塩。
【請求項13】
下式:
【化4】

である請求項12に記載の化合物又は医薬的に許容可能なその塩。
【請求項14】
治療有効量の請求項1に記載の化合物又は医薬的に許容可能なその塩と医薬的に許容可能なキャリヤーを含有する医薬組成物。
【請求項15】
施療を要する哺乳動物におけるβセクレターゼ活性の阻害方法であって、治療有効量の請求項1に記載の化合物又は医薬的に許容可能なその塩を前記哺乳動物に投与することを含む前記方法。
【請求項16】
施療を要する患者におけるアルツハイマー病の治療方法であって、治療有効量の請求項1に記載の化合物又は医薬的に許容可能なその塩を前記患者に投与することを含む前記方法。
【請求項17】
施療を要する患者におけるアルツハイマー病の改善又は抑制方法であって、治療有効量の請求項1に記載の化合物又は医薬的に許容可能なその塩を前記患者に投与することを含む前記方法。

【公表番号】特表2007−537257(P2007−537257A)
【公表日】平成19年12月20日(2007.12.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−513231(P2007−513231)
【出願日】平成17年5月9日(2005.5.9)
【国際出願番号】PCT/US2005/015949
【国際公開番号】WO2005/113484
【国際公開日】平成17年12月1日(2005.12.1)
【出願人】(390023526)メルク エンド カムパニー インコーポレーテッド (924)
【氏名又は名称原語表記】MERCK & COMPANY INCOPORATED
【Fターム(参考)】