説明

アルミニウム構成部分を有する伝熱系の洗浄のための方法および組成

制御雰囲気鑞付けアルミニウム熱交換器を含む自動車冷却系の急速洗浄および保護のための方法および処理システムを開示する。該方法および処理システムは、任意にコンディショニング(不動態化)段階を含みうる。該処理システムは3つの異なる部分からなりうる。それは、(1)洗浄剤または洗浄液、(2)コンディショナーまたはコンディショナー溶液、および(3)相溶性CABアルミニウム保護熱媒液である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、制御雰囲気鑞付けアルミニウム熱交換器を含む自動車冷却系の急速洗浄および保護のための方法および処理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
ラジエータ、ヒーターコア、蒸発器、コンデンサ等の自動車の熱交換器は、車両の軽量化のために主にアルミニウム合金からなる。これらの熱交換器はチューブおよびフィン型でありうるものであり、フィンは波形であるとともに空気の流れの方向に対し直角な溝を有する。
【0003】
従来、自動車のフィン付きチューブ熱交換器の大量生産のために、機械的拡張技術が用いられている。現在、熱交換器は主に鑞付けで形成され、個々の構成部分は鑞付け合金によって永続的に結合される。
【0004】
1980年代初期より、ある鑞付け技法が制御雰囲気鑞付け(CAB)として、自動車工業において鑞付けアルミニウム熱交換器の生産に用いるためにだんだん普及している。CABは、改善された歩留り、低い炉メンテナンス要求、鑞付け工程の高度な強壮さ,および用いる装備の低い資本経費により、以前の鑞付け方法、すなわち真空炉鑞付けより好まれている。
【0005】
CAB工程を用いて熱交換器を製造する場合、しばしばアルミニウム鑞付け充填合金(例えばAA 4345またはAA 4043)が、コアアルミニウム合金シート(または鑞付けシート)の少なくとも1つの側において、あらかじめクラッディングされるかあるいは覆われる。あるいは、クラッディングされていないチューブに、あらかじめの鑞付けアーク噴霧Zn被覆がなされる(例えばワイヤーアーク噴霧工程によって)ことによって、耐食性が向上する。フィンおよびチューブのアルミニウムコア合金は、典型的にはAA 3003または様々な"長寿命合金"、または典型的にはCu、Mg、Mn、Ti、Zn、Cu、CrおよびZrから選択される元素を少量加えた改良されたAA 3003合金である。
【0006】
CAB工程において、あらかじめ組み立てられた構成部分に融剤が添加され結合される。およそ560〜575℃での鑞付けにおいて、融剤は融解しはじめ、融解した融剤は、アルミニウム合金表面に自然に形成される酸化アルミニウム層と反応し溶解するとともに置換し、鑞付け充填合金を使用可能な状態にする。575〜590℃において鑞付け充填合金は融解しはじめ、結合部へと流れて鑞付けされる。冷却工程の間、充填金属は凝固し、鑞付け結合を形成する。表面の融剤も凝固し、融剤残余として表面に残る。
【0007】
融剤のさらなる機能は、鑞付けの際の酸化アルミニウム層の再構成の防止、鑞付け充填合金の流動の増加、および母材の湿潤性の増加である。融剤は典型的には、アルカリ金属フルオロアルミン酸塩と、本質的にはKAlF、KAlFおよびKAlFの混合物である一般的配合のK1−3AlF4−6・xHOとの混合物である。フルオリドを用いた融剤は、アルミニウムおよびその合金に対し不活性または非腐食性であるとともに鑞付け後に水不溶性であると考えられているため、クロリドを用いた融剤よりもアルミニウムまたはアルミニウム合金の鑞付けに好まれている。推奨される融剤被覆重量(炉鑞付けのために3〜5g/m)を用いる場合、CAB工程によって1〜2μmの厚さの緊密に付着した非腐食性残余が生成されると言われている。よって、融剤残余を鑞付けの後で除去しないことが必要だと信じられている。
【0008】
CABは、融剤の報告された非腐食性、その組み立ての許容範囲、および柔軟な制御のために、アルミニウム熱交換器の結合のための最も低コストな方法のひとつである。これは自動車及びその他の産業において熱交換器の製造のために現在広く用いられている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
我々の近年の研究によって、カリウムフルオロアルミン酸塩融剤からの残基は商用熱媒液に可溶であるとともに、フルオリドおよびアルミニウムイオンを浸出するであろうことが示されている。これらのイオンはエンジン冷却系の金属の腐食を増すとともに/あるいは系の熱媒液の防食および伝熱性能を低下させうる。熱媒液へ放出されるフルオリドおよびアルミニウムイオンの量は、熱媒液の化学的組成、融剤添加の量、用いる融剤の組成、鑞付け工程に含まれるその他の変量、暴露時間、および冷却系の動作条件および設計属性に依存する。冷却系の腐食の拡大および伝熱性能の低下は、暴露時間の増加につれて増加する傾向がある。
【0010】
イオンの浸出およびそれに続く腐食の問題は、新しい車両と使用された車両の両方に影響する。最近取り付けられた、あるいは取り付けられようとしているCABアルミニウム構成部分を有する車両においては、浸出および腐食の防止が望まれる。既に浸出および腐食が起こっている使用された車両においては、腐食生成物の除去およびさらなる腐食からの防護が望まれる。腐食生成物の存在は伝熱性能を低下させうる。
【0011】
よって、腐食生成物の洗浄および除去または形成防止、熱媒液の流動および伝熱性能の維持または復元、腐食損傷の防止あるいはさらなる腐食損傷の防止または最小化、および動作の間の伝熱性能および制御雰囲気鑞付けアルミニウム構成部分を含む車両冷却系の寿命の維持のための、組成および方法が必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0012】
前記の要求は、制御雰囲気鑞付けアルミニウム熱交換器を有する自動車冷却系の迅速な洗浄および防護のための方法および処理システムによって対処される。この方法および処理システムには、コンディショニング(不動態化)手順が任意に含まれうる。処理システムは3つの異なる部分、(1)洗浄剤または洗浄溶液、(2)コンディショナーまたはコンディショナー溶液、(3)相溶性CABアルミニウム防護熱媒液からなりうる。これらの3つの構成部分は組み合わせで、または個別に用いることができることは明確に予想される。
【0013】
CABによって作られるアルミニウム構成部分を、伝熱系での熱媒液との接触に先立って洗浄することで、融剤からの望まれないイオンの浸出およびそれに続く腐食を減少できることが発見されている。腐食生成物は伝熱性能を減少させうる。熱媒液の寿命を向上させるためには、新たな熱媒液の追加より前および/または伝熱系の新たな部分の洗浄および取り付けの後に、伝熱系を不動態化することも望ましい。不動態化によって伝熱系の構成部分の表面上に防護皮膜が生成され、これによって構成部分が腐食から防護される。
【0014】
CABアルミニウム構成部分からなる、伝熱系から腐食生成物を除去するための方法および組成も、ここで開示される。熱媒液の寿命を向上させるためには、伝熱系の洗浄の後の新たな熱媒液の追加よりも前に伝熱系を不動態化することも望ましい。
【0015】
洗浄剤は、25℃において5.0以下のpKaを有する有機酸、およびアゾール化合物からなる。有機酸のpKaは25℃において4.5以下、より明確には4.0以下、より明確には3.5以下、より明確には3.0以下、より明確には2.5以下、より明確には2.0以下でありうる。有機酸は脂肪族または芳香族有機酸でありうる。含まれる炭素、水素および酸素原子の他に、有機酸分子には0〜4の硫黄原子、0〜4の窒素原子および/または0〜4のリン原子も含まれうる。有機酸は1つまたはそれ以上のカルボン酸基からなりうる。洗浄剤を水と混合して水性洗浄液を形成するので、有機酸の選択においては水性系での溶解度が考慮される。有機酸は、典型的には分または時間の時間尺度であって通例24時間未満の時間どおりに洗浄を完了できる量で洗浄液内に存するのに充分な水性洗浄液への溶解度を有する必要がある。
【0016】
有機酸の選択においては、洗浄性能および腐食の可能性がさらに考慮される。いくつかの実施形態においては、洗浄を短時間(高効率)とする有機酸の選択が望ましい。しかし、洗浄の効率は低い腐食可能性とつりあわせる必要がある。
【0017】
有機酸には、タウリンまたは2−アミノエタンスルホン酸、システイン酸、ジヒドロキシ酒石酸、アスパラギン酸、1,1−シクロプロパンジカルボン酸、ピクリン酸、ピコリン酸、アコニット酸、カルボキシグルタミン酸、ジヒドロキサム酸、2,4,6−トリヒドロキシ安息香酸、8−キノリンカルボン酸、シュウ酸、マレイン酸、およびこれらの酸の2つ以上の組み合わせが含まれる。前記の有機酸の無水物もまた含まれる。有機酸と有機無水物との組み合わせを用いうることも考慮される。洗浄剤において用いるのに最も好ましい有機酸はシュウ酸である。シュウ酸とマレイン酸(または無水マレイン酸)の混合物も洗浄剤において用いうる。
【0018】
洗浄剤は25℃において5.0以下のpKaを有する有機酸の組み合わせからなりうる。有機酸の組み合わせのpKaは25℃において4.5以下、より明確には4.0以下、より明確には3.5以下、より明確には3.0以下、より明確には2.5以下、より明確には2.0以下でありうる。
【0019】
洗浄剤はその総重量に対し0.1〜99重量パーセントの有機酸からなりうる。この範囲内で、洗浄剤はその総重量に対し0.5〜97重量パーセント、より明確には1〜95重量パーセント、より明確には2〜90重量パーセントの有機酸からなりうる。
【0020】
洗浄剤は単一のアゾール化合物またはアゾール化合物の組み合わせからなりうる。アゾール化合物は官能基としての五員環または六員環の複素環からなり、複素環には少なくとも1つの窒素原子が含まれる。典型的なアゾール化合物には、ベンゾトリアゾール(BZT)、トリルトリアゾール、メチルベンゾトリアゾール(例えば4−メチルベンゾトリアゾールおよび5−メチルベンゾトリアゾール)、ブチルベンゾトリアゾール、その他のアルキルベンゾトリアゾール(例えば2〜20の炭素原子を含むアルキル基)、メルカプトベンゾチアゾール、チアゾール、その他の置換チアゾール、イミダゾール、ベンゾイミダゾール、その他の置換イミダゾール、インダゾール、置換インダゾール、テトラゾール、置換テトラゾール、およびこれらの混合物が含まれる。
【0021】
洗浄剤はその総重量に対し0.001〜10重量パーセントのアゾール化合物からなりうる。この範囲内で、洗浄剤はその総重量に対し0.01〜7重量パーセント、より明確には0.02〜6重量パーセント、より明確には0.05〜5重量パーセントの有機酸からなりうる。
【0022】
洗浄剤はさらに、エチレングリコール、プロピレングリコールまたはその混合物等のグリコールからなりうる。
【0023】
洗浄剤はその総重量に対し0〜約15重量パーセントのグリコールからなりうる。
【0024】
洗浄剤はさらに溶媒としての水からなりうる。水は、結晶形態および非晶質形態の両方の水を含む原料の使用のために洗浄剤中に存しうる。
【0025】
洗浄剤はさらに、マックスヒッブ(Maxhib)AA−0223、マックスヒッブPT−10Tまたはこれらの組み合わせ等の有機リン酸エステルからなりうる。
【0026】
洗浄剤はその総重量に対し0〜約10重量パーセントの有機リン酸エステルからなりうる。
【0027】
洗浄剤はさらに追加の腐食抑制剤からなりうる。典型的な追加の腐食抑制剤には、アセチレンアルコール、アミド、アルデヒド、イミダゾリン、可溶ヨウ素化合物、ピリジン、およびアミンが含まれる。
【0028】
洗浄剤はその総重量に対し0〜10重量パーセントの追加の腐食抑制剤からなりうる。
【0029】
洗浄剤はさらに、ポリアクリル酸、ポリマレイン酸またはその組み合わせ等のアクリル酸またはマレイン酸重合体からなりうる。アクリル酸およびマレイン酸の共重合体、およびスルホン酸基を有する三元重合体もまた含まれる。典型的な物質にはアキューマー(Acumer)2000およびアキューマー3100が含まれる。
【0030】
洗浄剤はさらに、エチレンオキシド重合体または共重合体、ポリプロピレンオキシド重合体または共重合体、C〜C20エトキシル化アルコールまたはこれらの組み合わせ等の界面活性剤からなりうる。典型的な界面活性剤には、プルロニック(Pluronic)L−61、PM5150、タージトール(Tergitol)15−2−9(CAS#24938−91−8)、タージトール24−L−60(CAS#68439−50−9)およびネオドール(Neodol)25−9(CAS#68002−97−1)が含まれる。
【0031】
洗浄剤はさらに、非イオン性着色剤等の着色剤からなりうる。典型的な着色剤は、ミリケンケミカル(Milliken Chemicals)社の商標名リキティント(Liquitint)によって入手できる。
【0032】
洗浄剤はさらに、スケール抑制剤、消泡剤、殺生剤、重合体分散剤、アタクレーや大豆粉等の漏出防止剤のうちの1つ以上からなりうる。
【0033】
洗浄剤は固体または液体でありうる。
【0034】
洗浄剤を水と混合して洗浄液が形成される。水は脱イオンまたは浄化した水道水でもよい。洗浄液を消費者に提供してもよいし、洗浄剤を洗浄液の作成説明書とともに消費者に提供してもよい。洗浄剤を消費者に水で希釈される液体濃縮物とすることも考慮される。
【0035】
典型的な洗浄液の組成は、水、0.1〜99重量パーセント(wt%)のシュウ酸、0.001〜4wt%のアゾール化合物、0〜10体積パーセントのエチレングリコール、0〜20wt%のマレイン酸または無水マレイン酸、0〜20wt%の有機リン酸エステル、0〜20wt%の25℃において5.0未満のpKaを有する有機酸(シュウ酸およびマレイン酸を除く)、および0〜5wt%のアクリル酸またはマレイン酸重合体からなる。
【0036】
洗浄液は5.0以下、より明確には4.5以下、より明確には3.5以下、より明確には2.5以下、より明確には2.0以下、より明確には1.8以下、より明確には1.5以下のpHを有しうる。洗浄液のpHは室温(20〜25℃)において定量される。
【0037】
典型的には伝熱系に存する熱媒液は洗浄の前に排出される。洗浄液の伝熱系への添加および排出の前に、伝熱系に水を流してもよい。いくつかの伝熱系では、有意な量の既に循環された液を排出および保留することが難しい。伝熱系は洗浄液で満たされる。エンジンを始動しある時間運転する。該時間は数分から数時間でありうる。洗浄液は再循環させることができる。洗浄液は、内部ポンプ(すなわち、車両エンジン内の水ポンプ)および/または1つ以上の外部ポンプによって再循環させることができる。あるいは、洗浄液は重力で系に供給してもよい。そのうえ、洗浄液の再循環にバグフィルタ等のフィルタを用いてもよい。フィルタは再循環ループの側流または系におけるある位置に取り付け可能であり、これによって洗浄工程の間に系の主部での洗浄液の循環を止めることなく容易に除去または交換することが可能である。フィルタは開口部を有するか、または孔径10ミクロン〜200ミクロンでありうる。洗浄の完了後に、エンジンを停止し洗浄液を系から排出するとともに系に水を流す。
【0038】
典型的な洗浄手順では、外部ポンプおよび大気圧に解放された液溜めを用いる。外部ポンプおよび液溜めは、液を自動車冷却系に循環させるのに用いられる。伝熱系に熱媒液を流し、水で満たす。サーモスタットを取り外し変更したサーモスタットを取り付けることで、サーモスタット"開"状態をシミュレートする。前記手順はヒーターコアを経由する逆流を用い、流れがヒーターコアを経由することを確実とする。系内で生成されるガスは系を通じて浄化され、液溜めへ排出される。外部ポンプは液溜めから洗浄液を引き出し、ヒーターコア入口ホースからヒーターコアを経てヒーターコア出口へと送り、エンジンのヒーターコア出口ニップル内へと送る。排出ホースはエンジンのヒーターコア入口ニップルから液溜めへと接続される。任意のフィルタを、洗浄された廃石を捕集するバケット内への排出ホースに用いてもよい。車両のエンジンを洗浄液の加熱に用いるが、洗浄液が沸点より下に留まる間のみ作動させるものとする。系は冷却することが可能であり、エンジンを任意に再始動し洗浄液を再加熱することができるが、洗浄液の温度が沸点より下に留まる間のみ作動させるものとする。液溜め内の洗浄液を加熱および冷却サイクルに入れ替えることができる。加熱サイクルの間に追加の洗浄液を加えることで、洗浄液の温度を沸点より下に保つことができる。冷却工程および再加熱工程は系が洗浄されたと考えられるまで繰り返すことができる。系の清浄度は洗浄液の外観から評価することができる。洗浄液の循環の後で、伝熱系に水を流す。
【0039】
洗浄液での洗浄の後で伝熱系を不動態化するためにコンディショナーを用いることができる。コンディショナーは、水、0.5〜80重量パーセントのピロリン酸四カリウム等の水溶性ピロリン酸塩、0.05〜5重量パーセントの1つ以上のアゾール化合物、0〜10重量パーセントのリン酸ナトリウムやリン酸カリウム等のアルカリ金属リン酸塩、0〜5重量パーセントのポリリン酸ナトリウム等のアルカリ金属ポリリン酸塩、および腐食抑制剤、スケール抑制剤、着色剤、界面活性剤、消泡剤、漏出防止剤(すなわちアタクレーや大豆粉等)等の任意の成分からなりうる。この段落での分量はコンディショナーの総重量に基づく。
【0040】
コンディショナー溶液のpHは室温(15〜25℃)において7.5以上、より明確には8.0以上、より明確には8.5〜11でありうる。
【0041】
コンディショナー溶液は、洗浄液と同じまたは類似の方法で伝熱系に導入される。洗浄液と同様、コンディショナー溶液はその沸点より低い温度で循環されるべきである。コンディショナー溶液の温度は環境温度と80℃との間でありうる。
【0042】
任意のコンディショナーを伝熱系から除去および流出させた後で、熱媒液を加える。
【0043】
熱媒液は、脂肪族カルボン酸またはその塩および/または芳香族カルボン酸からなるグリコール基材熱媒液でありうる。熱媒液はさらに、アゾール、リン酸塩、またはこれらの組み合わせからなりうる。加えて、熱媒液にはまた、水、1つ以上のグリコール基材凍結点抑制剤、および熱媒液のpHを7.5〜9.0に調整する任意のpH調整剤が含まれる。
【0044】
車両冷却系の再充填熱媒液として用いられる典型的な熱媒液は、熱媒液の総重量に対し10%〜99%の凍結点抑制剤、脱イオン水、および腐食抑制剤パッケージからなる。
【0045】
用いるのに適した凍結点抑制剤には、一価または多価アルコールやその混合物等のアルコールまたはアルコール混合物が含まれる。アルコールは、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、フルフロール、フルフリルアルコール、テトラヒドロフルフリルアルコール、エトキシ化フルフリルアルコール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ブチレングリコール、グリセロール、グリセロール1,2−ジメチルエーテル、グリセロール1,3−ジメチルエーテル、グリセロールのモノエチルエーテル、ソルビトール、1,2,6−ヘキサントリオール、トリメチルプロパン、メトキシエタノール等のアルカノールアルコキシレート、およびこれらの混合物から選択される。アルコールは熱媒液中にその総重量に対し約10%〜約99.9%の組成で存する。この範囲内で、アルコールは重量で30〜99.5%、より明確には重量で40%〜99%でありうる。
【0046】
用いるのに適した水は、脱イオン水または脱鉱水を含む。水は熱媒液中にその総重量に対し約0.1%〜約90%、より明確には重量で0.5%〜70%、より明確には重量で1%〜60%の量で存する。
【0047】
腐食抑制剤パッケージは、一または二塩基性の脂肪族(C〜C15)カルボン酸、その塩、またはこれらの組み合わせからなりうる。典型的な一または二塩基性の脂肪族カルボン酸には、2−エチルヘキサン酸、ネオデカン酸およびセバシン酸が含まれる。
【0048】
腐食抑制剤パッケージは、リン酸、ナトリウムまたはカリウムオルトリン酸塩、ナトリウムまたはカリウムピロリン酸塩、ナトリウムまたはカリウムポリリン酸塩またはヘキサメタリン酸塩等の無機性リン酸塩からなりうる。熱媒液中のリン酸塩濃度は熱媒液の総重量に対し重量で0.002%〜5%、より明確には重量で0.01%〜1%でありうる。
【0049】
腐食抑制剤パッケージは、硝酸マグネシウムや硫酸マグネシウム等の水溶性マグネシウム化合物からなりうる。配合内のマグネシウム濃度は0.5〜100ppm Mgでありうる。
【0050】
腐食抑制剤パッケージには、(1)アゾール化合物または他の銅合金腐食抑制剤、(2)ブリコー(Bricorr)288等のホスホノカルボン酸混合物、(3)PSO等のホスフィノカルボン酸、のうち少なくとも1つの成分が含まれうる。
【0051】
銅および銅合金の腐食抑制剤もまた含まれうる。適当な銅および銅合金には、活性官能基としての五員環または六員環の複素環を含む化合物が含まれ、複素環は少なくとも1つの窒素原子からなるものであり、例えばアゾール化合物である。特に、ベンゾトリアゾール、トリルトリアゾール、メチルベンゾトリアゾール(例えば4−メチルベンゾトリアゾールおよび5−メチルベンゾトリアゾール)、ブチルベンゾトリアゾール、その他のアルキルベンゾトリアゾール(例えば2〜20の炭素原子からなるアルキル基)、メルカプトベンゾチアゾール、チアゾールおよび他の置換チアゾール、イミダゾール、ベンゾイミダゾール、他の置換イミダゾール、インダゾールおよび他の置換インダゾール、テトラゾールおよび他の置換テトラゾール、およびこれらの混合物を、CuおよびCu合金腐食抑制剤として用いることができる。銅および銅合金腐食抑制剤は、熱媒液の総重量に対し重量で0.01%〜4%の配合で存しうる。
【0052】
熱媒液はさらに、着色剤、前記されていない他の腐食抑制剤、分散剤、消泡剤、スケール抑制剤、界面活性剤、着色剤、アンチスケーラント、湿潤剤、殺生剤等の、他の熱媒液添加剤からなりうる。
【0053】
任意の腐食抑制剤には、例えばポリアクリル酸またはポリアクリレート等のポリカルボキシレートや、アクリレート/アクリルアミド共重合体、ポリメタクリレート、ポリマレイン酸または無水マレイン酸重合体、マレイン酸重合体、その共重合体および三元重合体、およびポリアクリルアミド、アクリルアミド共重合体および三元重合体を含む改質アクリルアミド重合体等のアクリレート重合体、共重合体、三元重合体、四元重合体等の、1つ以上の水溶性重合体(分子量200〜200000ドルトン)が含まれる。一般に、用いるのに適した水溶性重合体には、(1)C〜C16モノエチレン不飽和のモノカルボン酸またはジカルボン酸を含む少なくとも1つの単量体単位、または(2)アミド、ニトリル、カルボン酸エステル、酸ハロゲン化物(例えば塩化物)、酸無水物およびこれらの組み合わせ等の、C〜C16モノエチレン不飽和のモノカルボン酸またはジカルボン酸誘導体を含む少なくとも1つの単量体単位、を有する単独重合体、共重合体、三元重合体および重合体が含まれる。本発明において水溶性重合体を作るために用いるのに適したモノカルボン酸の例には、アクリル酸、メタクリル酸、エタクリル酸、ビニル酢酸、アリル酢酸、およびクロトン酸が含まれる。用いるのに適したモノカルボン酸エステルの例には、アクリル酸ブチル、n−アクリル酸ヘキシル、t−ブチルアミノエチルメタクリル酸、ジエチルアミノエチルアクリレート、ヒドロキシエチルメタクリレート、ヒドロキシプロピルアクリレート、ヒドロキシプロピルメタクリレート、ジエチルアミノエチルメタクリレート、ジメチルアミノエチルメタクリレート、ジエチルアミノエチルアクリレート、メチルアクリレート、メチルメタクリレート、第三ブチルアクリレート、およびビニルアセテートが含まれる。用いるのに適したジカルボン酸の例には、マレイン酸、イタコン酸、フマル酸、シトラコン酸、メサコン酸、およびメチレンマロン酸が含まれる。用いるのに適したアミドの例には、アクリルアミド(または2−プロペンアミド)、メタクリルアミド、エチルアクリルアミド、プロピルアクリルアミド、第三ブチルメタクリルアミド、第三オクチルアクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド(またはN,N−ジメチル−2−プロペンアミド)、ジメチルアミノプロピルメタクリルアミド、シクロヘキシルアクリルアミド、ベンジルメタクリルアミド、ビニルアセトアミド、スルホメチルアクリルアミド、スルホエチルアクリルアミド、2−ヒドロキシ−3−スルホプロピルアクリルアミド、スルホフェニルアクリルアミド、N−ビニルホルムアミド、N−ビニルアセトアミド、2−ヒドロキシ−3−スルホプロピルアクリルアミド、N−ビニルピロリドン(環状アミド)、カルボキシメチルアクリルアミドが含まれる。用いるのに適した無水物の例には、無水マレイン酸(または2,5−フランジオン)、および無水コハク酸が含まれる。用いるのに適したニトリルの例には、アクリロニトリル、およびメタクリロニトリルが含まれる。用いるのに適した酸ハロゲン化物の例には、アクリルアミドプロピルトリメチルアンモニウムクロリド、ジアリルジメチルアンモニウムクロリド、およびメタクリルアミドプロピルトリメチルアンモニウムクロリドが含まれる。加えて、以下の単量体の少なくとも1つの単量体単位を含む水溶性重合物を本発明に用いても良い。用いるのに適した追加の単量体は、以下から選ばれる。それは、アリルヒドロキシプロピルスルホン酸塩、AMPSまたは2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、ポリエチレングリコールモノメタクリレート、ビニルスルホン酸、スチレンスルホン酸、アクリルアミドメチルプロパンスルホン酸、メタリルスルホン酸、アリルオキシベンゼンスルホン酸、1,2−ジヒドロキシ−3−ブテン、アリルアルコール、アリルホスホン酸、エチレングリコールジアクリレート、アスパラギン酸、ヒドロキサム酸、2−エチル−オキサゾリン、アジピン酸、ジエチレントリアミン、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、アンモニア、エチレンジアミン、ジメチルアミン、ジアリルフタレート、3−アリルオキシ−2−ヒドロキシプロパンスルホン酸、ポリエチレングリコールモノメタクリレート、スチレンスルホン酸ナトリウム、以下の化式1に示す構造を持つアルコキシ化アリルアルコールスルホン酸塩である。
【0054】
【化1】

【0055】
は1〜約10の炭素原子を有するヒドロキシル置換アルキルまたはアルキレン基、または1〜約10の炭素原子を有する非置換アルキルまたはアルキレン基、または(CH−CH−O)、[CH−CH(CH)−O]またはこれらの混合物であって"n"は約1〜約50の整数であるものとし、RはHまたは低アルキル(C−C)基とし、Xは存する場合はSO、PO、PO、COOから選択されるアニオン基とし、Yは存する場合はHまたは水素分子または水溶性カチオンまたはアニオン基と平衡するカチオンとし、aは0または1とする。熱媒液中の水溶性重合体の量は、重量で約0.005%〜10%の範囲内でありうる。水溶性重合体はまた、米国特許第5,338,477号に記載のポリエーテルポリアミノメチレンホスホン酸塩またはホスフィノポリアクリル酸であってもよい。
【0056】
任意の腐食抑制剤には、1つ以上の脂肪族トリカルボン酸(例えばクエン酸)、または1,2,3,4−アルカンテトラカルボン酸や好ましくは1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸といった脂肪族テトラカルボン酸が含まれうる。脂肪族テトラカルボン酸の水溶性塩、エステルまたは無水物もまた用いることができる。濃度範囲は熱媒液の重量に対し約0.001%〜5%でありうる。
【0057】
任意の腐食抑制剤には、C〜C22脂肪族または芳香族モノカルボン酸またはジカルボン酸、モリブデン酸塩、銅および銅合金腐食抑制剤、トリアゾール、チアゾールまたは他のアゾール化合物、硝酸塩、亜硝酸塩、ホスホン酸塩、2−ホスホノブタン−1,2,4−トリカルボン酸、アミン塩、ほう酸塩のうち少なくとも1つが含まれうる。
【0058】
任意の腐食抑制剤には、カルシウム、ストロンチウムおよび/または亜鉛塩、またはこれらの組み合わせのうち少なくとも1つの金属イオン(例えば水溶性塩の形態で)が含まれうる。水溶性金属イオン濃度は、熱媒液中で0.1mg/lから約100mg/lの範囲内であるべきである。
【0059】
いくつかの実施形態において、熱媒液はケイ酸塩を含まないことが考慮される。
【0060】
いくつかの非イオン性界面活性剤もまた、腐食抑制剤として含まれうる。用いるのに適した非イオン性界面活性剤には、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリアルキレングリコール、ポリアルキレングリコールエステル、エチレンオキシド(EO)およびプロピレンオキシド(PO)の共重合体、ソルビタン脂肪酸エステルのポリオキシアルキレン誘導体、およびこれらの混合物といった脂肪酸エステルが含まれる。非イオン性界面活性剤の平均分子量は約55〜約300000、より好ましくは約110〜約10000でありうる。適当なソルビタン脂肪酸エステルには、ソルビタンモノラウレート(例えばスパン(Span)20、アルラセル(Arlacel)20,S−MAZ 20M1)、ソルビタンモノパルミテート(例えばスパン40またはアルラセル40)、ソルビタンモノステアレート(例えばスパン60、アルラセル60またはS−MAZ 60K)、ソルビタンモノオレエート(例えばスパン80またはアルラセル80)、ソルビタンモノセスキオレエート(例えばスパン83またはアルラセル83)、ソルビタントリオレエート(例えばスパン85またはアルラセル85)、ソルビタントリステアレート(例えばS−MAZ 65K)、ソルビタンモノトーレート(例えばS−MAZ 90)が含まれる。適当なポリアルキレングリコールには、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコールおよびこれらの混合物が含まれる。用いるのに適したポリエチレングリコールの例には、ダウ・ケミカル・カンパニー社のカーボワックス(CARBOWAX)ポリエチレングリコールおよびメトキシポリエチレングリコール(例えばカーボワックスPEG200、300、400、600、900、1000、1450、3350、4000、8000等)またはBASF社のプルラコール(PLURACOL)ポリエチレングリコール(例えばプルラコールE200、300、400、600、1000、2000、3350、4000、6000、8000等)が含まれる。適当なポリアルキレングリコールには、BASF社のMAPEGポリエチレングリコールエステル(例えばMAPEG 200MLまたはPEG 200モノラウレート、MAPEG 400 DOまたはPEG 400ジオレエート、MAPEG 400 MOまたはPEG 400モノオレエート、MAPEG 600 DOまたはPEG 600ジオレエート等)等の様々な脂肪酸のモノエステルおよびジエステルが含まれる。適当なエチレンオキシド(EO)およびプロピレンオキシド(PO)の共重合体には、BASF社の様々なプルロニックおよびプルロニックRブロック共重合体界面活性剤、ダウ・ケミカル社のダウファクス(DOWFAX)非イオン性界面活性剤、ユーコン(UCON)液およびシンアロック(SYNALOX)潤滑剤が含まれる。適当なソルビタン脂肪酸エステルのポリオキシアルキレン誘導体には、ポリオキシエチレン20ソルビタンモノラウレート(例えばツウィーン(TWEEN)20またはT−MAZ20で販売される製品)、ポリオキシエチレン4ソルビタンモノラウレート(例えばツウィーン21)、ポリオキシエチレン20ソルビタンモノパルミテート(例えばツウィーン40)、ポリオキシエチレン20ソルビタンモノステアレート(例えばツウィーン60またはT−MAZ 60K)、ポリオキシエチレン20ソルビタンモノオレエート(例えばツウィーン80またはT−MAZ 80)、ポリオキシエチレン20トリステアレート(例えばツウィーン65またはT−MAZ 65K)、ポリオキシエチレン5ソルビタンモノオレエート(例えばツウィーン81またはT−MAZ 81)、ポリオキシエチレン20ソルビタントリオレエート(例えばツウィーン85またはT−MAZ 85K)等が含まれる。
【0061】
加えて、熱媒液中の腐食抑制剤にはまた、以下の化合物のうち1つ以上が含まれてもよい。それは、タル油脂肪酸から誘導されるシクロヘキセノイックカルボン酸塩化合物のアミン塩、および、モノ、ジ、トリエタノールアミン、モルホリン、ベンジルアミン、シクロヘキシルアミン、ジシクロヘキシルアミン、ヘキシルアミン、AMP(または2−アミノ−2−メチル−1−プロパノールまたはイソブタノールアミン)、DEAE(またはジエチルエタノールアミン)、DEHA(またはジエチルヒドロキシルアミン)、DMAE(または2−ジメチルアミノエタノール)、DMAP(またはジメチルアミノ−2−プロパノール)、MOPA(または3−メトキシプロピルアミン)等のアミン化合物である。
【0062】
いくつかのポリジメチルシロキサンエマルジョン基材の消泡剤を本発明に用いることができる。それにはニューハンプシャー州ボスコーエンLLCのパフォーマンス・ケミカル社のPC−5450NF、ロードアイランド州ウーンソケットのCNCインターナショナル社のCNC消泡剤XD−55NFおよびXD−56が含まれる。本発明に用いるのに適した他の消泡剤には、BASF社のプルロニック(Pluronic)L−61等のエチレンオキシド(EO)およびプロピレンオキシド(PO)の共重合体が含まれる。
【0063】
概して、任意の消泡剤は、例えばOSIスペシャリティー社、ダウ・コーニング社または他の供給業者から入手できるSAG10または類似の製品等のシリコン、エチレンオキシド−プロピレンオキシド(EO−PO)ブロック共重合体、プロピレンオキシド−エチレンオキシド−プロピレンオキシド(PO−EP−PO)ブロック共重合体、(例えばプルロニックL61、プルロニックL81または他のプルロニックおよびプルロニックC製品)、例えばPPG2000(すなわち平均分子量2000のポリプロピレンオキシド)等のポリ(エチレンオキシド)またはポリ(プロピレンオキシド)、疎水性アモルファスシリカ、ポリジオルガノシロキサン基材製品(例えばポリジメチルシロキサン(PDMS)を含む製品)、脂肪酸または脂肪酸エステル(例えばステアリン酸等)、脂肪アルコール、アルコキシ化アルコール、ポリグリコール、ポリエーテルポリオールアセテート、ポリエーテルエトキシレートソルビトールヘキサオレエート、ポリ(エチレンオキシド−プロピレンオキシド)モノアリルエーテルアセテート、ろう、ナフサ、灯油、芳香油、および前記消泡剤の1つ以上からなる組み合わせ、からなりうる。
【0064】
典型的な熱媒液は米国特許公報2010−0116473 Alおよび2007−0075120−A1において開示され、それらの全体を参照によってここに取り入れる。
【0065】
前記の方法および組成は以下の限定しない実施例によってさらに詳述される。
【図面の簡単な説明】
【0066】
【図1】図1は実施例7で得られたデータを示す図である。
【図2】図2は実施例7で得られたデータを示す図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0067】
以下の実施例において、記載の組成の平衡は脱イオン水である。
【実施例1】
【0068】
アルミニウムCAB構成部分を有する伝熱系からのエンジンブロック沈積物を、市販の伝熱系洗浄剤に暴露した。洗浄液を、沈積物と接する前および後にICPで試験した。この実施例は比較実施例である。結果を表1に示す。
【0069】
【表1】

【0070】
実施例1によって、クエン酸を有する商用洗浄剤は問題への取り組みに不適であることが示される。
【実施例2】
【0071】
アルミニウムCAB構成部分を有する自動車伝熱系からの腐食生成物で閉塞されたアルミニウム熱交換チューブ(タイプ#1)(取り付け前に洗浄していない)を、評価のために表2に示す様々な洗浄液に暴露した。閉塞されたチューブへの暴露の前および後に、洗浄液を誘導結合プラズマ質量分析法(ICP)で解析した。いくつかのチューブは試験の前に一方の側を切断し、洗浄液をピペット滴下により開放されたチューブ内面へと添加した。いくつかのチューブは切開しなかった。開放していないチューブは、チューブの一方の端部(つまり入口端部)への洗浄液のゆるやかな添加によって洗浄した。洗浄液はチューブのもう一方の端部(つまり出口端部)から流出した。洗浄の前および後に、"開放された"チューブの外観を視覚的に評価した。閉じたチューブは洗浄後に開放して検査した。洗浄液を約90℃に加熱し、熱いまま表2および表3に示すようにチューブに添加した。
【0072】
【表2】

【0073】
【表3】

【0074】
実施例2Aによって、有機リン酸塩洗浄液ではチューブ表面の沈積物を除去できないことが示される。それ以外の実施例によって、5未満のpKaを有する有機酸からなる洗浄液で沈積物が除去されることが示される。
【実施例3】
【0075】
アルミニウムCAB構成部分を有する自動車伝熱系からの腐食で閉塞されたアルミニウム熱交換チューブ(タイプ#2)(取り付け前に洗浄していない)を、評価のために表4に示す様々な洗浄液に暴露した。閉塞されたチューブへの暴露の前および後に、洗浄液を誘導結合プラズマ質量分析法(ICP)で解析した。洗浄の前および後に、チューブの外観を視覚的に評価した。洗浄液を約90℃に加熱し、熱いままチューブに添加した。個々の試験で表に列記される試料の温度は、洗浄液がチューブ表面と接触した後の熱交換チューブの冷却効果のため90℃未満である。
【0076】
【表4】

【実施例4】
【0077】
CABで作られたアルミニウム構成部分からなる自動車伝熱系を有する車両で使用されたラジエータからの沈積物(取り付け前に洗浄していない)を、様々な洗浄液に暴露した。暴露の前および後に、洗浄液をICPで試験した。洗浄液の測定された温度を、温度を測定された資料について表5に示す。結果を表6および表7に示す。
【0078】
【表5】

【0079】
【表6】

【0080】
【表7】

【実施例5】
【0081】
アルミニウムCAB構成部分有する自動車伝熱系からの沈積物を、ここで述べる様々な洗浄液に暴露した。沈積物との接触の前および後に、洗浄液をICPで試験した。結果を表8に示す。
【0082】
【表8】

【実施例6】
【0083】
コアー・インスツルメンツ・ナノコアー多電極センサー(CMS)アナライザーおよびコアー・ビジュアル・ソフトウェア バージョン2.2.3を用いて、試験溶液中の鋳造アルミニウムの局所的腐食率を定量した。この研究において、コアー・インスツルメンツ社から供給される25電極センサーアレイプローブを用いた。プローブの個々の電極は、1mmの暴露表面積を有するアルミニウム合金角形ワイヤからなる。エポキシに密封し均等に1.2×1.2格子アレイに配置した25個のワイヤ電極を電気的に接続した。連結多電極プローブで、約1.4cmの暴露表面積を有する従来の一体形電極表面の腐食状態をシミュレートした。プローブの個々の独立した電極からの結合電流を測定するとともに測定データの統計的解析を行うことで、局所的腐食率がプローブから時間の関数として得られた。この研究において、データのセット毎に30秒のサンプリングレートを用いた。
【0084】
500mlの試験溶液を保持するパイレックスガラスビーカーを試験セルとして用いた。連結多電極アレイセンサープローブ、ルギンプローブに配置され連結多電極センサープローブに近接した開口部を有するAg/AgCl(3M KCl)参照電極、および2つの温度センサープローブ(すなわち、ステンレス鋼シースを有する熱連結および抵抗温度検出器)がテフロンセルカバーに取り付けられるとともに、ビーカー内の溶液に浸される。テフロンカバーは、実験中の溶液のロスを最小化するとともにセル内の試験プローブの位置を固定するために用いた。マイクロプロセッサー制御ホットプレートを、試験中に溶液を所望の温度に加熱するために用いた。テフロン被覆磁気攪拌棒を、試験中に溶液をかき混ぜるために用いた。溶液は試験の間大気に暴露した。個々の溶液においてアルミニウム合金の腐食率を評価した。実験の詳細および結果は図1および2に示される。
【0085】
ここで開示した全ての範囲は包括的であるとともに併用可能である。本発明は好ましい実施形態に関して述べられているが、本発明の趣旨から外れなければ様々な変更を加えたり同等物で要素を置換したりしてもよいことは、当業者には理解できるであろう。加えて、本発明の趣旨から外れなければ、特定の状況または材料を本発明に適合させるための多くの改良を行ってもよい。よって、本発明は本発明の実施のために考慮された最良の形態として開示された特定の実施形態に限定されるものではなく、本発明は添付の請求項の趣旨に含まれる全ての実施形態を含むであろう。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
25℃において5.0以下のpKaを有するアゾール化合物および有機酸を含む洗浄剤からなる、伝熱系の処理システム。
【請求項2】
前記有機酸はシュウ酸からなるものとする、請求項1に記載の処理システム。
【請求項3】
有機リン酸エステルをさらに含む、請求項1または2に記載の処理システム。
【請求項4】
前記洗浄剤を水と混合して洗浄液を形成する、前記請求項のいずれかに記載の処理システム。
【請求項5】
前記洗浄液は2.0以下のpHを有するものとする、請求項4に記載の処理システム。
【請求項6】
前記洗浄剤とは別のコンディショナーをさらに含む、前記請求項のいずれかに記載の処理システム。
【請求項7】
前記コンディショナーはピロリン酸塩、アゾールおよびアルカリ金属リン酸塩からなるものとする、請求項6に記載の処理システム。
【請求項8】
補充用熱媒液をさらに含む、前記請求項のいずれかに記載の処理システム。
【請求項9】
前記補充用熱媒液はケイ酸塩を含まないものとする、請求項8に記載の処理システム。
【請求項10】
前記洗浄剤は固体であるものとする、前記請求項のいずれかに記載の処理システム。
【請求項11】
25℃において5.0以下のpKaを有するアゾール化合物および有機酸からなる洗浄剤、および
ピロリン酸塩、アゾールおよびアルカリ金属リン酸塩からなる、洗浄剤とは別のコンディショナーからなり、
洗浄剤は水で希釈した際に室温で2.0以下のpHを有するとともに、コンディショナーは水で希釈した際に室温で7.5以上のpHを有するものとする、伝熱系の処理システム。
【請求項12】
伝熱系からの熱媒液の排出、および25℃において5.0以下のpKaを有するアゾール化合物および有機酸からなる洗浄液での伝熱系の充填、
伝熱系中での洗浄液の循環、
伝熱系からの洗浄液の排出、およびピロリン酸塩、アゾールおよびアルカリ金属リン酸塩からなるコンディショナー溶液での伝熱系の充填、および
伝熱系中でのコンディショナー溶液の循環からなり、
伝熱系は制御雰囲気鑞付け構成部分からなるものとする、伝熱系の洗浄方法。
【請求項13】
前記洗浄液は2.0以下のpHを有するものとする、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記コンディショナー溶液は室温で7.5以上のpHを有するものとする、請求項12または13に記載の方法。
【請求項15】
伝熱系からのコンディショナー溶液の排出、およびケイ酸塩を含まない熱媒液での伝熱系の充填をさらに含む、請求項12、13または14のいずれかに記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2012−532245(P2012−532245A)
【公表日】平成24年12月13日(2012.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−519666(P2012−519666)
【出願日】平成22年7月6日(2010.7.6)
【国際出願番号】PCT/US2010/041059
【国際公開番号】WO2011/005755
【国際公開日】平成23年1月13日(2011.1.13)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.パイレックス
2.テフロン
【出願人】(500057423)プレストーン プロダクツ コーポレイション (1)
【Fターム(参考)】