説明

アルミニウム箔の接合方法

【課題】アルミニウム箔の接合方法を提供する。
【解決手段】複数枚のアルミニウム箔1a,1a…を積層して超音波ヘッドH,Hにより超音波を当てて、アルミニウム箔1a,1a…の酸化被膜を破壊して仮付けする超音波仮付工程と、一対の電極にて、超音波仮付工程にて形成された仮付部3を挟圧しつつ、電極に通電して積層したアルミニウム箔1a,1a…を溶着する抵抗溶接工程と、を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、積層したアルミニウム箔を直接に溶着する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、コンデンサや電池の電極に用いられるアルミニウムは、その容量を増やすために複数のシート体(箔)を積層させるにあたり、アルミニウム箔の酸化被膜が絶縁層となり、電流が流れにくく、相互に溶着するのが困難とされていた。また、電流が溶着予定位置を外れて流れ易く、爆飛が発生する虞や、溶着部にずれを生ずる虞があった。
【0003】
そこで、積層したアルミニウム箔に予め局部的に突起形成加工して、アルミ箔表面の酸化被膜を薄くしまたは亀裂を生じさせ、各アルミ箔どうしを導通させた状態で、電極を突起部を中心とする溶着部に押圧しつつ、電極に通電して抵抗溶接する方法を本出願人は提案している(特許文献1参照)。
また、高電圧(1500V程度)を印加して酸化被膜を局部的に破り、各アルミ箔どうしを導通させた状態で、電極を溶着部に押圧しつつ、電極に通電して抵抗溶接する方法についても本出願人は提案した(特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−326622号公報
【特許文献2】特開2004−130331号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1記載の方法では、多数枚積層したアルミニウム箔に突起形成加工を行なうことは至難であり、導通性にバラツキを生じ、溶着部に熱を集中できず抵抗溶接の信頼性に欠ける。また、品質上の問題が生じ易いという欠点があった。
また、特許文献2記載の方法では、高電圧用設備が必須の構成となるため、装置全体が比較的大掛かりなものとなる欠点があった。
【0006】
そこで、本発明は、能率的に、かつ、安定して高品質に、多数枚の積層したアルミニウム箔を直接的に接合する方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
そこで、本発明に係るアルミニウム箔の接合方法は、複数枚のアルミニウム箔を積層して超音波ヘッドにより超音波を当てて、上記アルミニウム箔の酸化被膜を破壊して仮付けする超音波仮付工程と、一対の電極にて、上記超音波仮付工程にて形成された仮付部を挟圧しつつ、上記電極に通電して積層した上記アルミニウム箔を溶着する抵抗溶接工程と、を備えた方法である。
【0008】
また、上記超音波ヘッドによって仮付けされた上記仮付部の面積が、上記電極によって溶着される溶着部の面積よりも、大きくなるように設定した方法である。
【発明の効果】
【0009】
本発明のアルミニウム箔の接合方法によれば、爆飛等の問題を生じることなく、常に安定した溶接強度でアルミニウム箔を抵抗溶接できて、優れた品質の製品が容易に、かつ、能率的に得られる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の超音波仮付工程の実施の一形態を示した要部拡大概略図である。
【図2】本発明の抵抗溶接工程の実施の一形態を示した要部拡大概略図である。
【図3】アルミニウム箔の積層状態を示した要部拡大説明図である。
【図4】超音波仮付工程での作用説明図である。
【図5】抵抗溶接工程での作用説明図である。
【図6】仮付部と溶着部を示した要部拡大説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、実施の形態を示す図面に基づいて本発明を詳説する。
まず、図3に示すように、アルミニウム箔1a,1a…を積層する。図3では、簡略化して10枚のアルミニウム箔1a,1a…を積層したものを図示したが、実際には、10枚〜100枚程度のアルミニウム箔1a,1a…を積層させる。各アルミニウム箔1aは、酸化被膜2aを被覆形成しており、積層したアルミニウム箔1a,1a…間には、酸化被膜2a,2a…が絶縁層として介在している。
【0012】
アルミニウム箔1aは、厚さ寸法tを10μm〜50μmに設定している。厚さ寸法tが、t<10μmの場合、コンデンサや電池電極として強度上及び製作上問題がある。また、厚さ寸法tが、50μm<tの場合、所定の容量のコンデンサ等を製造する際に必要なアルミニウムの量が多くなり、無駄が生じる。
【0013】
次に、図1に示すように、円柱形状の一対の超音波ヘッドH,H間に、積層したアルミニウム箔1a,1a…と端子用のアルミ製ベース板Bを挟んで押圧する。
図4に示すように、アルミニウム箔1a,1a…と酸化被膜2a,2a…とは、超音波ヘッドH,Hから発せられた超音波振動に同調して振動する。酸化被膜2a,2a…は、振動の初期段階で亀裂を生じ切断して破壊される。アルミニウム箔1a,1a…は、振動によるエネルギーで互いに溶着し、破壊された酸化被膜2a,2a…の間隙を埋める。このようにして、対面する超音波ヘッドH,Hの間に仮付部3を形成し、互いに絶縁状態にあったアルミニウム箔1a,1a…を導通状態として、仮付けを行なう。この工程を、超音波仮付工程と呼ぶ。
【0014】
その後、図1の超音波ヘッドH,Hから仮付け状態となったアルミニウム箔1a,1a…を取り出して、超音波ヘッドH,Hより細径に設定した円柱形状の一対の電極E,E間に、設置して、仮付部3を形成したアルミニウム箔1a,1a…とベース板Bを図2に示すように挟圧する。
図5に示すように、電極E,Eは、仮付部3の領域内を挟圧しつつ、通電してアルミニウム箔1a,1a…の抵抗溶接を行なう。このようにして、電極E,Eの間にナゲットN(合金属)を作ってアルミニウム箔1a,1a…を一体状に溶着し、溶着部4を形成する。この工程を、抵抗溶接工程と呼ぶ。
この抵抗溶接工程によって、積層したアルミニウム箔1a,1a…とアルミ製端子用ベース板Bとを溶接する。
【0015】
図6に示すように、超音波仮付工程で形成された仮付部3の面積Sを、抵抗溶接工程で溶着される溶着部4の面積Sよりも、大きくなるように設定している。言い換えれば、電極Eの当接面の大きさより仮付部3の面積Sを広く形成してあるため、電極Eは仮付部3の範囲を外すことなく当接し、確実に溶着部4を溶着する。なお、ここでは、超音波ヘッドHが当接したアルミニウム箔1a表面の平面広さを仮付部3の面積Sとし、電極Eが当接したアルミニウム箔1a表面の平面広さを溶着部4の面積Sとしている。
【0016】
なお、本発明は、設計変更可能であって、例えば、仮付部3及び溶着部4の形状は円形に限定されるものではなく、超音波ヘッドH及び電極Eの形状に従って一文字状や多角形状としてもよい。
【0017】
以上のように、本発明は、複数枚のアルミニウム箔1a,1a…を積層して超音波ヘッドH,Hにより超音波を当てて、アルミニウム箔1a,1a…の酸化被膜2a,2a…を破壊して仮付けする超音波仮付工程と、一対の電極E,Eにて、超音波仮付工程にて形成された仮付部3を挟圧しつつ、電極E,Eに通電して積層したアルミニウム箔1a,1a…を溶着する抵抗溶接工程と、を備えているので、積層したアルミニウム箔1a,1a…を抵抗溶接にて接合することができる。特に、比較的簡単な設備で、多数枚積層したアルミニウム箔1a,1a…を常に安定した溶接強度で抵抗溶接できて、信頼性の高い優れた品質の製品が容易に、かつ、能率的に得られる。このように、容易かつ迅速に安定した接合を実現できる。
【0018】
また、超音波ヘッドHによって仮付けされた仮付部3の面積Sが、電極Eによって溶着される溶着部4の面積Sよりも、大きくなるように設定したので、抵抗溶接工程にて、超音波仮付工程にて形成された仮付部3の範囲内に電極Eを当接させて抵抗溶接を行なう際に、狙いを付け易い。よって、確実に抵抗発熱を集中させることができ、美しい溶着部4を形成できる。
【符号の説明】
【0019】
1a アルミニウム箔
2a 酸化被膜
3 仮付部
4 溶着部
H 超音波ヘッド
E 電極
仮付部の面積
溶着部の面積


【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数枚のアルミニウム箔(1a)(1a)…を積層して超音波ヘッド(H)(H)により超音波を当てて、上記アルミニウム箔(1a)(1a)…の酸化被膜(2a)(2a)…を破壊して仮付けする超音波仮付工程と、
一対の電極(E)(E)にて、上記超音波仮付工程にて形成された仮付部(3)を挟圧しつつ、上記電極(E)(E)に通電して積層した上記アルミニウム箔(1a)(1a)…を溶着する抵抗溶接工程と、を備えたことを特徴とするアルミニウム箔の接合方法。
【請求項2】
上記超音波ヘッド(H)によって仮付けされた上記仮付部(3)の面積(S)が、上記電極(E)によって溶着される溶着部(4)の面積(S)よりも、大きくなるように設定した請求項1記載のアルミニウム箔の接合方法。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−184260(P2010−184260A)
【公開日】平成22年8月26日(2010.8.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−29675(P2009−29675)
【出願日】平成21年2月12日(2009.2.12)
【出願人】(596008817)ナグシステム株式会社 (8)
【Fターム(参考)】