説明

アルミニウム表面を洗浄するためのアルカリ洗浄剤

【課題】アルカリ液中において腐食感受性である金属の洗浄に対して、特に、アルミニウムもしくはその合金のような軟質金属、または亜鉛めっき鋼のようなガルバナイズドスチールの洗浄に対して好適で、また追加の機械的処理を必要とせずに到達することが困難な内側の表面の洗浄を可能にするアルカリ洗浄組成物を提供する。
【解決手段】アルカリ液中において腐食感受性である表面を洗浄するための組成物であって少なくとも1種のアルカリ源、元素周期表の第2または第3の主族の元素から選択される少なくとも1種のカチオンを含む少なくとも1種の無機塩を含み、これにより組成物がいずれのトリアゾールおよび/またはいずれのアルカリ金属ホウ酸塩も含まない組成物、該組成物を含む水性濃厚物、該組成物または該水性濃厚物を含む使用溶液、ならびに、上記の水性濃厚物または任意の上記の使用溶液を用いて、アルカリ液中において腐食感受性である表面を洗浄する方法である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アルカリ液中において腐食感受性である表面を洗浄するための組成物に関し、該組成物を含む水性濃厚物、この組成物または該水性濃厚物を含む使用溶液およびこのような表面を洗浄するための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
完全にまたは部分的に種々の種類の金属で形成された物品、そして特に完全にまたは部分的に金属で形成された表面を有する物品は、我々の日常生活において重要な役割を果たす。一般的に、例えば家の中または窓枠、家具、ランプ等の生活用装飾品のような家庭内で、例えばスポーツ設備によるかまたは自転車、オートバイ、ボートおよび車のようなあらゆる種類の移動手段と接する我々の自由時間で、また製造機械または加工機械、洗浄機械等のあらゆる種類の機械のような工業分野で、担体のような構成材料の形態でまたはその一部として、あらゆる種類の輸送手段で、例えば医療器具といった極めて特殊な領域で、そしてもっと多く、我々はこのような物品に1日に何度も接する。
【0003】
しかし、これらは一般的に使い捨ての物品ではなく比較的長い寿命の物品で使用されるため、これらの物品がどこでまたは何の目的で使用されるかということと無関係に、これらを時々洗浄する必要がある。さらに、このような物品の表面から除去しなければならない汚れの種類は極めて様々である場合がある。該汚れとしては、あらゆる種類の天然または合成の脂肪、グリースまたは油、たんぱく質、顔料ならびに他のタイプの有機堆積物および無機堆積物も挙げることができる。
【0004】
残念ながら、金属で形成された部品を少なくとも含む多くの物体は、例えば洗浄のためにアルカリ液に接触する際に、そして特に、優れた洗浄特性を有する強アルカリ液に接触する際に腐食感受性である。アルカリ液中での腐食この傾向は、特に、アルミニウム、亜鉛、スズ、鉛およびカドミウム等の軟質金属に対して、さらにその合金および亜鉛めっき鋼等のガルバナイズドスチールに対して当てはまる。
【0005】
従来、この問題は、一方ではアルカリ液中で腐食感受性であるこのような表面を洗浄するために有機洗浄溶媒を使用することによって回避された。典型的な溶媒は炭化水素溶媒またはハロゲン化炭化水素溶媒を含んでいた。しかしこれらの溶媒は、通常採用されていた非ハロゲン化炭化水素は一般的に可燃性で、高い揮発性を有し、そして継続的な使用のために再利用する能力が不確かで、一方ハロゲン化炭化水素はしばしば有毒で、環境に対して悪影響を有し、そしてその廃棄物処理が比較的高価であるため、多くの場合もはや望ましくない。
【0006】
従って、腐食防止剤として機能できるが洗浄性能またはアルカリ洗浄組成物の安定性に悪影響を与えない物質を見出すために従来多くの試みがなされた。20世紀中盤以降にも、アルカリ金属シリケートのようなシリケートを腐食防止剤として使用することが知られている。これらの化合物は、特にアルミニウム、アルミニウム合金および亜鉛めっき鋼で形成された表面に対して比較的有効であるためにいまだ使用されている。
【0007】
例えば米国特許第5,862,345は、有機堆積物を食品加工工業で使用されるもの等の物品から除去するための方法を記載する。この方法によれば、少なくとも過酸素化合物、メタシリケート、キレートおよびビルダーを含む洗浄溶液が表面に適用される。この溶液を用いた洗浄は、40℃未満の低温でも進行させることができる場合がある。
【0008】
しかし、このようなシリケート組成物を上記の金属表面の洗浄のために使用することには、例えば不十分なリンスによって組成物が該金属表面上に残留し、該金属表面上の粘性のシリケート層の原因になるという不都合がある。このようなシリケート層は、視覚的および衛生的な理由で望ましくない。しかし、これらのシリケート層を除去することは一般的に極めて困難であり、フッ化水素溶液等の高い毒性を有し作業が困難な化学物質の使用が必要な場合がある。洗浄溶液を極めて速く乾燥させる温かい表面の上に上記の溶液が適用される場合、または、例えば機械の内装表面のような、到達が困難でこれにより洗浄工程後に完全にリンスされない表面の洗浄のために洗浄溶液が使用される場合には、類似のシリケート層もまた生じる場合がある。
【0009】
GB541,803は、使用されるシリケートおよびその洗浄溶液中の濃度の選択によっては、特にアルミニウムまたはスズの表面がシリケートの存在に関わらず洗浄溶液によって星状に光ったりまたは攻撃される場合がある旨を記載する。この文献によれば、上記の課題は可溶性の無機水銀塩をさらに添加することで解決される。しかし、該洗浄溶液中に水銀化合物を使用することの不都合は別として、洗浄溶液は、上記のような粘性の表面層を形成する可能性があるシリケートを依然として含む。
【0010】
シリケート物質の使用を完全に回避するために、米国特許第5,736,495は、アルカリ金属塩および界面活性剤に加えて、トリアゾール化合物およびアルカリ金属ホウ酸塩の組み合わせを防食剤として含む金属洗浄剤組成物を開示する。このような金属洗浄組成物の使用は、スチール表面および真鍮表面に関して例示されている。
【0011】
後者の文献は、アルカリ金属のリン酸塩、ホウ酸塩、モリブデン酸塩、ヒ酸塩、亜ヒ酸塩、硝酸塩、亜硝酸塩、亜クロム酸塩等の無機化合物、ならびにメルカプトベンゾチアゾール、ベンゾトリアゾール、ピペラジン、エチレンジアミン4酢酸、およびリン酸またはホウ酸とアルカノールアミンとの反応生成物等の種々の有機化合物を含む種々の他の公知の腐食防止剤が存在する旨記載する。しかし、この文献に記載されるように、全ての金属または金属合金、特に軟質金属に対する防止剤または防止剤の組み合わせが提供されていないため、さらなる腐食防止剤を提供することがなお要求される。
【0012】
有機化合物および有機金属化合物もまた、かなり以前から腐食防止剤として使用されてきた。ピリジン、ジエチルチオ尿素、トルイジンの誘導体またはこれらの混合物は、通常採用されるこのような腐食防止剤の例である。さらに、トリブチルスズおよびトリブチルスズナフサネートが、船舶塗料に使用されており、バリウム、カルシウムまたはマグネシウムのスルホネート、フェノラートおよびサリチレートが油添加剤に添加された。しかし、環境上の理由およびこれらの有毒性によりこのような化合物は現在ではもはや望ましくない。
【0013】
さらに、上述の金属表面を洗浄するための組成物を開発する際には、さらに典型的に比較的到達し易い外側の表面を考慮しなければならず、到達するのがしばしば困難な内側の表面の洗浄に対する要求もまた存在する。特に、内側の表面が関係する場合、洗浄は、表面の追加の機械的処理を必要とすることなく行わなければならない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
従って、本発明に内在する課題は、アルカリ液中において腐食感受性である金属の洗浄に対して、特に、アルミニウムもしくはその合金のような軟質金属、または亜鉛めっき鋼のようなガルバナイズドスチールの洗浄に対して好適で、また追加の機械的処理を必要とせずに到達することが困難な内側の表面の洗浄を可能にするアルカリ洗浄組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記の課題は、アルカリ液中において腐食感受性である表面を洗浄するための組成物であって、少なくとも1種のアルカリ源、および元素周期表の第2または第3の主族の元素から選択される少なくとも1種のカチオンを含む少なくとも1種の無機塩を含むことによって、該組成物がいずれのトリアゾールおよび/またはいずれのアルカリ金属ホウ酸塩も含まない、組成物により解決される。
【0016】
上記の組成物は、好ましくはその水溶液の形態で、洗浄されることが予定される表面に対して適用される。上記の組成物の水溶液はまた、他の金属で形成された表面の上に適用されることができるが、本発明の洗浄組成物を、アルミニウム、亜鉛、スズ、鉛、カドミウム、これらの合金、または亜鉛めっき鋼等のこれらの金属のいずれかでめっきされた金属のような軟質金属で形成された表面の洗浄に使用することが特に好ましい。アルミニウム、アルミニウム合金または亜鉛めっき鋼で形成された表面を洗浄するために該組成物を使用することがより好ましい。
【0017】
少なくとも1種の無機塩は、元素周期表の第2または第3の主族の元素から選択される少なくとも1種のカチオンを含む。対応する元素は、少なくとも部分的に金属特性を有すべきである。このことは、アルミニウムカチオンおよびゲルマニウムイオンが本発明において好ましいカチオンである一方、ホウ素カチオンを含む化合物の使用は好ましくないことを意味する。ガリウム、インジウムおよびタリウムのカチオンもまた、本発明に係る塩において一般的に使用できるが、カチオンが、Mg2+,Ca2+,Sr2+,Ba2+,Al3+またはこれらの混合物からなる群から選択されることが好ましい。Ca2+は最も好ましいカチオンとして示される。
【発明を実施するための形態】
【0018】
好ましい態様において、本発明に係る塩において上記のカチオンの対イオンを形成するアニオンは、ハロゲン化物、特に塩化物、臭化物またはヨウ化物、スルフェートおよびカーボネートを含む群から選択される。複塩すなわち単一のストイキオメトリ比を有し同時に結晶化する2以上の異なる塩で形成された塩の使用もまた可能である。このような複塩における対応するアニオンは、CaMg(CO32でのような同じものまたはアパタイト(Ca5(PO43F)でのような異なるものであることができる。しかし、複塩は用いないことが好ましい。
【0019】
元素周期表の第2または第3の主族の上述の元素の酸化物もまた本発明の組成物中に含まれることができるが、特にMgO,CaOまたはAl23のような酸化物はこれに含まれない。
【0020】
本発明に係る組成物に対して一般的な適切な塩は、易溶性塩に限定されない。炭酸カルシウム、炭酸マグネシウムまたは硫酸カルシウム等の難溶性塩の使用もまた可能である。
とはいえ、本発明に係る組成物において、易溶性で洗浄処理中の沈殿のリスクが低減された塩は好ましい。
【0021】
特に有利な態様において、1種または2種以上の塩は、組成物中に、組成物全体を基にした総量で、0.01から20wt%、好ましくは0.05から15wt%、およびより好ましくは0.1から3.5wt%含まれる。
【0022】
本発明の組成物において使用するために好適なアルカリ源は、典型的には金属表面上に堆積した汚れを除去させる水溶液中でアルカリ性を与えることが可能なアルカリ金属塩である。洗浄されることが予定される少なくとも1種の表面またはその一部を含む物品の採用にもよるが、種々の種類の汚れがその上に堆積する場合がある。このような汚れの例としては、あらゆるタイプの天然または合成の脂肪、グリース、ワックスまたは油、たんぱく質、炭水化物、燃焼させた炭素、および、食品加工機械または家庭内で形成されるもの等の炭化した有機物、顔料および色素、ミネラル、人間および動物の排泄物および他のタイプの有機物およびさらに無機物の堆積物ならびにこれらの混合物が挙げられる。本発明に係る組成物のアルカリ性は、その水溶液がそれぞれの汚れの主要部分を除去できるために十分に高くするのが良い。
【0023】
本発明の組成物に対して好適なアルカリ源としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、カリウムおよびナトリウムの炭酸塩およびこれらの水和物、ナトリウムおよびカリウムの重炭酸塩、オルトリン酸三ナトリウム、オルトリン酸三カリウム、ナトリウムまたはカリウムのピロリン酸塩、トリポリリン酸塩およびヘキサメタリン酸塩、アルカリ金属の酢酸塩、クエン酸塩、酒石酸塩、コハク酸塩、ホスホン酸塩、水酸化カルシウムまたは水酸化バリウム等のアルカリ土類水酸化物、等のアルカリ金属のオルトリン酸塩または錯リン酸塩、またはこれらの混合物が挙げられる。しかし、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムまたはこれらの混合物を用いることが好ましい。好ましくは、これらの化合物はこれらの固体形状で用いられる。
【0024】
殆どの場合、特にナトリウムまたはカリウムの水酸化物がアルカリ源として機能する場合、アルカリ源が、組成物中に、組成物全体を基にした総量で1から40wt%、好ましくは2から30wt%、およびより好ましくは5から25wt%含まれれば十分であろう。
【0025】
許容できまたはさらに優れた洗浄性能を得るために、組成物から得られる水溶液は、pH値(1%,20℃,脱塩水)が9から13、好ましくは10から12、より好ましくは11超であるのが良い。
【0026】
金属表面、特にアルミニウム、アルミニウム合金または亜鉛めっき鋼の、このような組成物から得られる高いpH値を示す水溶液を用いた洗浄によって、典型的には腐食作用および最終的には金属表面の分解がもたらされる。しかし驚くべきことに、元素周期表の第2または第3の主族の元素から選択される1種または2種以上のカチオンを含む上述の塩の存在下で、このような腐食作用および金属表面の分解が観察されなかったことが見出された。従って、これらの無機塩が水性アルカリ組成物中の前述の金属表面に対して腐食防止剤として機能することが推測できる。
【0027】
さらに、格別驚くべきことに、前述の無機塩を本発明に係る組成物の水溶液中で使用する場合、アルカリ金属シリケートまたはケイ素を基にした任意の他の化合物の使用がもはや不要である。従って、本発明に係る組成物は、好ましくは、ケイ素を含む任意の化合物またはケイ素元素を含まない。
【0028】
さらに、以上で説明した無機塩の存在により、このような条件下で腐食感受性である金属表面の洗浄を目的とするアルカリ溶液中で、1種または2種以上の有機金属化合物を腐食防止剤として使用することもまた不要である。その結果、好ましい態様において、本発明に係る組成物は、いずれの有機金属化合物も含まない。ここで「有機金属化合物」は、直接の金属−炭素結合を有する元素有機化合物を意味することが意図される。有機酸の金属塩、アルコラート、クラウン化合物および他の包接化合物、ならびにキレートおよび金属アセチルアセトナートは、有機金属化合物としては考えず、一方、シリコーン、有機リン酸化合物、有機ヒ素化合物および有機ホウ素化合物は、本発明の意味での有機金属化合物を示す。
【0029】
本発明の組成物はまた、金属イオン封鎖剤、界面活性剤、殺菌剤、漂白剤、酸化剤、ビルダー、可溶化剤、溶媒またはこれらの混合物のような、典型的にアルカリ洗浄組成物中で使用される他の成分を含む。これらの化合物のうちあるものはまた様々な機能を有する。例えば、活性塩素を生成する次亜塩素酸塩等の酸化剤はまた、これらの洗浄促進特性の他に殺菌特性を示す。このような場合、本発明に係る組成物中に含まれることができる特定の物質の総量は、その種々の特性に対応する単独の成分の量の加算から得られる和を表すことができる。例えば、組成物中の酸化剤の量が、組成物全体を基にして40wt%を越えないように意図される場合、酸化剤に加えてさらに殺菌剤が存在しても良い場合には、次亜塩素酸塩の量はこれに関わらず40wt%を超える。
【0030】
本発明に係る組成物は、1種または2種以上の酸化剤を含むことが好ましい。好適な酸化剤は、石灰の塩化物、次亜塩素酸カルシウム、次亜塩素酸ナトリウムおよび次亜塩素酸カリウムで例示される次亜塩素酸等の活性塩素を生成する1種または2種以上の化合物として表すことができる。しかし、好ましくはナトリウム、リチウム、カルシウムもしくはカリウム等の金属を有する過ホウ酸塩または過炭酸塩等の過酸素化合物、または過酸化水素は酸化剤としてさらに好適である場合がある。しかし好ましくは、本発明の組成物は、いずれのアルカリ金属の過ホウ酸塩も含まない。特に好ましい態様では、本発明の組成物は、次亜塩素酸ナトリウム、次亜塩素酸カリウムまたはこれらの混合物を含み、他の漂白剤または酸化剤を含まない。
【0031】
1種または2種以上の酸化剤は、本発明に係る組成物中に、組成物全体を基にした総量で、30から80wt%、好ましくは35から70wt%、およびより好ましくは40から65wt%含まれるのが良い。
【0032】
驚くべきことに、本発明に係る組成物の水溶液中に用いられるカチオンは、組成物中にまた存在しても良い次亜塩素酸塩の何らの分解の原因にもならない。しかし、該組成物で形成される水溶液の安定性および前述の塩の該アルカリ溶液中での安定性は、1種または2種以上の金属イオン封鎖剤を組成物にさらに添加することによって改善できる。これは、カチオンとしてのカルシウムおよびマグネシウムに対して特に当てはまり、これらのカチオンがアルカリ溶液中で水不溶性の水酸化物を形成することによる。適切な金属イオン封鎖剤としては、エチレンジアミン4酢酸、ニトリロ3酢酸、リン酸塩、特に3リン酸5ナトリウム等のポリリン酸塩、ポリヒドロキシカルボン酸、クエン酸塩、特にクエン酸アルカリ、ジメルカプロール、トリエタノールアミン、クラウン化合物またはホスホノアルカンポリカルボン酸を例示できる。アルカリ条件下の水溶液中で、前述の酸は、通常その塩の形態、好ましくはそのナトリウム塩またはカリウム塩の形態で存在する可能性がある。しかし、本発明に係る組成物を製造する際には、該酸を対応する塩と同様に使用できる。
【0033】
ホスホノアルカンポリカルボン酸は、好ましくは、3から6の炭素原子と2から5のカルボン酸部位とを有する直鎖の炭化水素骨格を含む。特に好ましいホスホノアルカンポリカルボン酸としては、2−ホスホノブタン−1,2,4−3酢酸が示される。これらの化合物は、腐食防止剤塩を含むカルシウムまたはマグネシウムとの組み合わせにおいて特に有利である。
【0034】
1種または2種以上の金属イオン封鎖剤は、十分な金属イオン封鎖性能を得るために、組成物中に、組成物全体を基にした総量で2から35wt%、好ましくは5から25wt%、およびより好ましくは9から20wt%含まれるのが良い。
【0035】
ある場合において、本発明に係る組成物から形成された水溶液の改善された洗浄性能は、1種または2種以上の界面活性剤がさらに組成物に添加される場合に実現できる。しかし、界面活性剤が使用される場合、組成物から得られる溶液の強アルカリ条件下でこれらが機能していることを担保しなければならない。全種類の、すなわちアニオン性、カチオン性、ノニオン性および両性の界面活性剤を適用できるが、本発明での使用に対して特に適切な界面活性剤としては、アニオン性および/またはノニオン性の界面活性剤が示される。
【0036】
好適なアニオン性界面活性剤としては、アルキルアレーンスルホネート、特にアルキルベンゼンスルホネートおよびアルキルナフタレンスルホネート、アルキルスルホネート、好ましくは、12から18の炭素原子をアルキル部位中に含むもの、α−オレフィンスルホネート、好ましくは12から17の炭素原子をオレフィン部位中に含むもの、またはアルキルスルフェート、好ましくは11から17の炭素原子をアルキル部位中に有するもの、またはこれらの混合物が例示される。通常、上記の化合物は、それらのアルカリ塩の形態、特にそれらのナトリウム塩の形態で使用される。特に有利なアニオン性界面活性剤としては、ラウリル硫酸ナトリウムが示される。アニオン性界面活性剤は、洗浄性能、また組成物の安定性を改善できる。
【0037】
アルコキシル化、特にエトキシ化および/またはプロポキシ化された脂肪族アルコールまたは脂肪族アミンのような他の公知のノニオン性界面活性剤であって、またアルキル末端、例えばブチル末端であっても良いもの、は本発明に係る組成物中で好適であるが、式
【0038】
【化1】

【0039】
(式中、R1からR3は独立に、1から20の炭素原子を有する脂肪族または環状の炭化水素残基を表し、ここで、R1からR3の少なくとも1つ、および好ましくは1つのみ、は炭素原子が11以上である炭化水素残基を有する)に対応するアミンオキサイドを用いることがさらに好ましい。幾つかのアミンオキサイドの混合物を使用することもまた可能である。好ましいアミンオキサイドとしては、ヤシアルキルジメチルアミンオキサイドまたはラウリルジメチルアミンオキサイドが示される。
【0040】
本発明の組成物中に使用できるさらなるノニオン性界面活性剤としては、アルキルポリグルコシドが示される。アルキルポリグルコシドのアルキル基は、一般的に、天然脂肪または油または石油化学的に製造されたアルコールに由来する。糖部位は、典型的には、5から6の炭素原子を有する還元糖に由来する。
【0041】
本発明に係る組成物中に使用するカチオン性界面活性剤としては、4級アンモニウム塩を例示できる。これらとしては、好ましくは、トリアルカノールアミン、特にトリエタノールアミンを脂肪酸でエステル化すること、および続いて適切なアルキル化試薬で4級化することに由来する飽和または不飽和の化合物が示される。好適な脂肪酸は、12から18の炭素原子を有する、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、オレイン酸またはステアリン酸等である。特に、ヤシ油、パームカーネル油、菜種油またはタロー油に由来する酸混合物のような技術的プロセスにおいて得られる脂肪酸の混合物を用いることは好ましい。
【0042】
特に好ましい態様では、1種または2種以上の界面活性剤は、組成物中に、組成物全体を基にした総量で1から30wt%、好ましくは2から20wt%、およびより好ましくは4から15wt%含まれる。
【0043】
汚れの種類および洗浄されることが予定される金属表面の形態および場所にもよるが、上記の記載を考慮すると、発泡洗浄剤または非発泡洗浄剤(ここで非発泡は全ての種類の界面活性剤を完全に省略するか、低発泡界面活性剤を使用することにより実現できる)のいずれかを使用することが可能である。
【0044】
上記の組成物から均一な溶液を得るために、1種または2種以上の可溶化剤をさらに添加することも有用である場合がある。特に、これらは1種または2種以上の界面活性剤等の有機成分の水溶液中での分散を容易にする。好適な可溶化剤としては、キシレン、トルエン、エチルベンゾエート、イソプロピルベンゼン、ナフタレンまたはアルキルナフタレンのスルホン酸塩でナトリウム、カリウム、アンモニウムおよびアルカノールアンモニウム塩、アルコキシル化アルキルフェノールのリン酸エステル、アルコキシル化アルコールのリン酸エステル、ならびにアルキルサルコシネートのナトリウム塩、カリウム塩およびアンモニウム塩、ならびにこれらの混合物が例示される。
【0045】
好ましい態様では、1種または2種以上の可溶化剤は、組成物中に総量で1から35wt%、好ましくは5から25wt%、およびより好ましくは9から20wt%含まれる。
【0046】
本発明に係る組成物は、殺菌剤、ビルダー物質、溶媒および漂白剤を含む群から選択されるもののような、洗浄組成物において一般的に用いられる1種または2種以上の他の化合物をさらに含んでも良い。このような化合物は、好ましくは、本発明に係る組成物中に、総量で0から20wt%、好ましくは2から15wt%、より好ましくは10wt%未満含まれる。
【0047】
典型的には、酸化剤に関して上記で例示される化合物は漂白剤としても機能する。しかし、これは上記していない化合物を漂白剤として使用することを排除するものではない。
【0048】
好適なビルダーとしては、炭酸ナトリウム、セスキ炭酸ナトリウム、硫酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、3リン酸5ナトリウムのようなリン酸塩、ニトリロ3酢酸またはその塩の各々、クエン酸またはその塩の各々、これらの混合物が例示される。
【0049】
また、適切な殺菌剤は、本発明に係る組成物に使用するための酸化剤に関して前述したものであり、ホルムアルデヒド、グリオキサルもしくはグルタルアルデヒド、フェノール誘導体およびアルコールまたはこれらの混合物等のアルデヒドが示される。
【0050】
好ましい態様では、本発明に係る組成物は、粉末または固体ブロックの形態で存在する。上記の洗浄用の粉末または固体ブロックの製造は、当該技術の記載にて説明した手順に従って進行する。例えば、該粉末は、上記組成物の水性スラリーを製造し、高圧下で乾燥塔の上端のノズルを経てスプレーして中空球粉末を形成することによって得ることができる。
【0051】
組成物は、好ましくはカートリッジ内に配置されているアルカリ源をまず溶融し、そして組成物の他の成分を溶融物に添加することによって固体ブロックに形成することができる。他の成分は、始めにアニオン性界面活性剤およびノニオン性界面活性剤、次に、単一種または複数種の金属イオン封鎖剤、単一種または複数種の酸化剤、単一種または複数種の可溶化剤を連続的に添加した後、成分が取り込まれるまで該成分を維持することが好ましい。
【0052】
前述したように、本発明に係る組成物は、洗浄すべき溶液に対し、その水溶液の形態で適用される。該水溶液は、使用前に直接形成でき、または事前に形成できる。該溶液が使用前に直接形成される場合、好ましくは、上記の粉末または固体ブロックの形態の組成物を所望量分散させ、次いで所望量の水に溶解させて既定濃度の使用溶液を得ることができる。しかし、固体ブロックの形態で組成物を用いる場合、該固体ブロックを所定量の水でリンスして既定濃度の使用溶液を得ることによって使用溶液を得ることも可能である。
【0053】
さらに水性洗浄溶液は、使用前に直接でなく形成した後、必要になるまで貯蔵することもできる。従って、本発明のさらなる対象としては、以上で述べた組成物と自由水とを含む水性濃厚物が示される。ここで自由水は純水を意味する。1種または2種以上の化合物が固体の形態では用いられないがこれらの水溶液の形態で用いられる場合、組成物の単独の成分を溶解させるために添加される純水以外に追加の水が含まれても良い。例えば、アルカリ源または界面活性剤は、本発明に係る水溶液を製造する際に水中に溶解されて採用されても良い。しかし、組成物が粉末または固体ブロックの形態で存在する場合には、好ましくは単独の成分はこれらの水溶液の形態では用いられず、一方、本発明に係る水溶液を調製するためには、これらの化合物を水溶液として使用することが水性洗浄濃厚物の製造を容易にする。
【0054】
好ましくは、水は脱塩されており、濃厚物中に、30から90wt%、より好ましくは35から88wt%、および最も好ましくは40から85wt%の量で含まれる。
【0055】
前述の水性濃厚物は、好ましくは、上記の洗浄組成物を、水性濃厚物全体を基にして30から95wt%、好ましくは35から90wt%、およびより好ましくは40から85wt%の量で含む。
【0056】
さらに、本発明に係る水性濃厚物は、1種または2種以上の塩を、濃厚物全体を基にした総量で0.01から10wt%、好ましくは0.05から5wt%、およびより好ましくは0.1から3.5wt%含む。
【0057】
好ましい態様では、アルカリ源は、水性濃厚物中に、濃厚物全体を基にした総量で1.5から20wt%、好ましくは2から10wt%、およびより好ましくは3から5wt%含まれる。濃厚物は、9から13、好ましくは10から12、より好ましくは11超のpH値(1%,20℃)を有することが特に好ましい。
【0058】
さらに、1種または2種以上の金属イオン封鎖剤が、水性濃厚物中に、濃厚物全体を基にした総量で1から10wt%、好ましくは2から8wt%、およびより好ましくは3から5wt%含まれる。
【0059】
本発明に係る水性濃厚物は、好ましくは、1種または2種以上の界面活性剤を、濃厚物全体を基にした総量で1から15wt%、好ましくは2から10wt%、およびより好ましくは2.3から6wt%含む。
【0060】
さらに、1種または2種以上の酸化剤が、濃厚物中に、濃厚物全体を基にした総量で10から40wt%、好ましくは15から30wt%、およびより好ましくは20から28wt%含まれる。過炭酸塩および過ホウ酸塩はアルカリ溶液中で安定でないため、水性濃厚物は好ましくはこれらの化合物をいずれも含まない。
【0061】
水性濃厚物は、1価または多価のアルコールまたはグリコールエーテルから、特に、エタノール、n−プロパノールまたはi−プロパノール、ブタノール、グリコール、プロパンジオール、ブタンジオール、グリセロール、ジグリコール、 プロピルジグリコール、ブチルジグリコール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテルまたはプロピレングリコールモノプロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、メトキシトリグリコール、エトキシトリグリコール、ブトキシトリグリコール、1−ブトキシエトキシ−2−プロパノール、3−メチル−3−メトキシブタノール、プロピレングリコール−モノ−t−ブチルエーテルおよびこれらの混合物から選択される1種または2種以上の溶媒をさらに含んでも良い。
【0062】
最適な洗浄結果を得るために、本発明に係る水性洗浄濃厚物は、均一溶液であるのが良い。従って、本発明に係る濃厚物は、まず腐食防止剤塩を水中に溶解させ、その後これに他の成分を添加することによって製造することが好ましい。これらの添加順序は特に限定されないが、まず1種または2種以上のアルカリ源を添加し、続いてアニオン性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤、金属イオン封鎖剤、酸化剤、可溶化剤を添加し、その後成分が取り込まれるまで該成分を維持することが有利である。最初に腐食防止剤塩を溶解させず、濃厚物の製造の最後にこれを添加することも可能である。腐食防止剤塩が難溶性である場合、まず例えば酸中に溶解させ、中和して、次いで他の含有物と混合することができる。
【0063】
前述の水性濃厚物は以上で説明した金属表面の洗浄のため等に使用でき、または、好ましくは水もしくは任意の前述の溶媒もしくはこれらの混合物でさらに希釈しても良い。好ましい態様では、濃厚物は、水で希釈されて、本発明に係る濃厚物を、使用溶液全体を基にして0.1から10wt%、好ましくは0.5から8wt%、より好ましくは1から5wt%の量で含む水性使用溶液となる。
【0064】
従って、本発明のさらなる対象は、アルカリ液中において腐食感受性である表面の洗浄のための、本発明に係る水性濃厚物を、使用溶液全体を基にして0.1から10wt%、好ましくは0.5から8wt%、より好ましくは1から5wt%の量で含む水性使用溶液である。
【0065】
前述のように、使用溶液は、洗浄組成物自体から直接、または粉末もしくは固体ブロックの形態で得ることもできる。従って、本発明のさらなる対象は、アルカリ液中において腐食感受性である表面の洗浄のための水性使用溶液であって、粉末状または固体ブロック状の、以上で規定した組成物を、使用溶液全体を基にして0.05から8wt%、好ましくは0.1から5wt%、より好ましくは0.3から3wt%の量で含むものに関する。
【0066】
本発明の他の対象は、本発明に係る前述の水性濃厚物または任意の前述の使用溶液を用いた、アルカリ液中において腐食感受性である表面を洗浄する方法である。
【0067】
水性洗浄濃厚物または使用溶液の使用は、アルカリ液中において腐食感受性である金属に対するものに限定されないが、本発明の水性洗浄濃厚物または腐食が生じない使用溶液と同様に、このような感受性の金属表面に対するその使用は1つの主要な利点である。特に、本発明に係る水性洗浄濃厚物または使用溶液は、アルミニウム、スズ、亜鉛、鉛もしくはカドミウム、これらの合金、または他の金属もしくはガルバナイズドスチール、特にこれらの金属のいずれかでめっきされたスチール等の合金のような軟質金属の表面を洗浄するために適用するのに適切である。最も好ましい金属表面は、アルミニウム、アルミニウム合金または亜鉛めっき鋼で形成されている。アルミニウム合金のための主要な合金の添加としては、好ましくは、銅、マグネシウム、ケイ素、マンガンおよび亜鉛が示される。
【0068】
本発明の方法に係る好ましい態様では、洗浄されることが予定される表面を、まず本発明に係る水性洗浄濃厚物または使用溶液と接触させる。その後、任意に、接触した表面をリンスおよび/または乾燥する。水性洗浄濃厚物または使用溶液と金属表面との接触は、金属表面を水性洗浄濃厚物または使用溶液に浸けるか、または水性洗浄濃厚物もしくは使用溶液を、例えばスプレーしまたは注ぐことにより表面上に与える等の当該分野で公知の一般的な方法によって得ることができる。
【0069】
十分な洗浄結果を得るための接触時間は、数秒から数時間の範囲とすることができる。
好ましくは、30秒から2時間、より好ましくは1分から30分の範囲である。接触時間は、全体の接触時間で1度の接触を与えるか、または、所定のより短くされた時間で接触時間が各々のより短くされた接触時間の和に相当する時間、金属表面を水性洗浄濃厚物または使用溶液に連続的に接触させることにより実現できる。
【0070】
洗浄結果は、全接触時間を通じて、または全接触時間のうち所定の間、水性洗浄濃厚物または使用溶液を激しく攪拌することによって改善できる。水性洗浄濃厚物または使用溶液の温度を例えば20から90℃、好ましくは40から60℃に上げることが有用になり得る場合がある。
【0071】
本発明の方法は、例えば物品の金属で形成された外側表面、その内側表面または外側表面および内側表面の両方の洗浄に関する。対応する表面への到達が困難であることに関係し、外側表面に対する洗浄方法は内側表面に対する洗浄方法とは大抵異なると考えられる。典型的には、外側表面を洗浄するために、物品はそのまま留まり、洗浄溶液は洗浄されることが予定される表面の上に適用される。例えば物品または機械の内側表面を洗浄する場合、表面に洗浄溶液他が到達しない可能性があるため、洗浄されることが予定される表面を含む物品または機械の関係する部分を分解することが必要である場合がある。この手順は、しばしば分解洗浄(COP)という。このような手順は、好ましくは、環境温度(典型的には室温)で実施される。しかし、60℃まで温度を上げることが適切である可能性がある場合もある。
【0072】
しかし、到達が困難な物品または機械の内側表面を洗浄するさらなる方法としては、循環により洗浄されることが予定される表面が水性洗浄濃厚物または使用溶液と接触する条件で、物品または機械を経て水性洗浄濃厚物または使用溶液を循環させる方法がある。この手順はしばしば定置洗浄(CIP)という。このような手順は、好ましくは、前述の温度範囲で実施される。洗浄の両方の方法(COPおよびCIP)は、本発明に係る水性洗浄濃厚物または使用溶液を使用する場合に可能である。
【0073】
本発明に係る洗浄方法は、手動または自動で進行させることができる。洗浄が自動で進行する場合には工程が完全にまたは部分的に自動であることができる。
【0074】
本発明に係る方法は、施設および家庭のための洗浄目的に適用できる。
【0075】
本発明に係る方法によって洗浄されることができる表面の例としては、窓枠、外面や、食器洗い機、洗浄乾燥機の後ろに歩道を含む洗浄乾燥機または乗用洗浄乾燥機のような特定の金属表面を含む(自動)洗浄機、包装機械、製造機械、または食品および飲料の加工機械のような全ての種類の工業分野における加工機械等の機械、美容ケア化合物、医薬品または民需品の製造および包装に用いられる機械、医療分野の器具および設備、タンク、パイプ装置、充填機や、ポット、(フライ)パン、装飾品、家具またはそれらの部品、枠および全ての種類の車、トラック、船、ボート、自転車またはオートバイのような乗り物関連の表面等の家庭内で見出せる金属表面が示される。
【0076】
本発明を以下の例によりさらに説明する。全ての量の記載は、特記しない限りwt%を意味する。
【0077】

表1は、本発明に係る水性濃厚物(No.1から20)の例、および、本発明に係るいずれの腐食防止剤塩も含まない比較例(21から26)を表す。全ての組成物は、まず腐食防止剤塩を所定量の水に溶解させ、そして残りの含有物を表中のこれらの記載順に添加することによって得た。均一な溶液が得られるまで混合物を攪拌した。
【0078】
【表1】

【0079】
【表2】

【0080】
表1において、例1から7および比較例1は、活性塩素も与えるアルカリ発泡洗浄剤を表す。このような洗浄剤はまた手動洗浄に使用できる。該洗浄剤中の活性塩素は、洗浄促進特性の他に殺菌特性を示す。
【0081】
例8から10および比較例2は、活性塩素も与えるアルカリ非発泡洗浄剤を表す。活性塩素への耐性がある非発泡界面活性剤をさらに添加することが可能である。該洗浄剤中の活性塩素は、洗浄促進特性の他に殺菌特性を示す。
【0082】
例11から13および比較例3は、活性塩素を与えないアルカリ発泡洗浄剤を表す。このような洗浄剤はまた手動洗浄に使用できる。
【0083】
例14から16および比較例4は、活性塩素を与えない非発泡洗浄剤を表す。非発泡界面活性剤をさらに添加することも可能である。
【0084】
例17から20ならびに比較例5および6は、選択した腐食防止剤塩とタイプが異なる活性塩素を与えるアルカリ発泡洗浄剤を表す。これらの洗浄剤はまた手動洗浄に使用できる。
【0085】
表2は、表1に係る組成物を用いた物質親和性の結果を示す。比較例5および6による組成物のみ、これらが安定でなかったために試験できなかった。親和性試験は温度20℃で行った。各々サイズ5×10cmのアルミニウムおよびガルバナイズド(Zn)スチール試験板を計量した後、5%の単一組成物を含む水溶液に1時間完全に浸した。この時間の後、試験板を溶液から取り出して再び計量して、質量損失を評価した。比較の目的で、比較例1を、例17から20の結果を示すときに繰り返す。
【0086】
【表3】

【0087】
表2に示されるデータから、洗浄組成物に起因する腐食作用による質量損失は、本出願に係る腐食防止剤塩の量の増加に伴って低減することが明らかになる。最良の結果は、CaCl2を腐食防止剤塩として用いて得られた。
【0088】
洗浄特性は、選択した幾つかの組成物で試験した。洗浄特性は、各々1gのタローで汚したサイズ5×10cmのアルミニウム(99.8)板を用いて評価した。試験板を、2wt%の対応する組成物を脱塩水中に含む洗浄溶液中に毎分10回浸した。試験は、溶液温度38℃で行った。結果を表3に示す。
【0089】
【表4】

【0090】
表3中のデータは、本発明に係る洗浄組成物は、殆どの場合で、水のみからなる溶液と比べて極めて良好なアルミニウム板上の洗浄特性を示すことを示す。
〔1〕
アルカリ液中において腐食感受性である表面を洗浄するための組成物であって、少なくとも1種のアルカリ源、および元素周期表の第2または第3の主族の元素から選択される少なくとも1種のカチオンを含む少なくとも1種の無機塩を含むことによって、該組成物が、いずれのトリアゾールおよび/またはいずれのアルカリ金属ホウ酸塩も含まない、組成物。
〔2〕
該カチオンが、Mg2+,Ca2+,Sr2+,Ba2+,Al3+またはこれらの混合物からなる群から選択されることを特徴とする、〔1〕に記載の組成物。
〔3〕
該カチオンに対するアニオン対イオンが、ハロゲン化物、特に塩化物、臭化物またはヨウ化物、スルフェートおよびカーボネートを含む群から選択されることを特徴とする、〔1〕または〔2〕に記載の組成物。
〔4〕
1種または2種以上の塩が、組成物中に、組成物全体を基にした総量で0.01から20wt%、好ましくは0.05から15wt%、およびより好ましくは0.1から10wt%含まれることを特徴とする、〔1〕〜〔3〕のいずれかに記載の組成物。
〔5〕
該アルカリ源が、組成物中に、組成物全体を基にした総量で1から40wt%、好ましくは2から30wt%、およびより好ましくは5から25wt%含まれることを特徴とする、〔1〕〜〔4〕のいずれかに記載の組成物。
〔6〕
ケイ素を含むいずれの化合物も含まないことを特徴とする、〔1〕〜〔5〕のいずれかに記載の組成物。
〔7〕
いずれの有機金属化合物も含まないことを特徴とする、〔1〕〜〔6〕のいずれかに記載の組成物。
〔8〕
1種または2種以上の金属イオン封鎖剤をさらに含むことを特徴とする、〔1〕〜〔7〕のいずれかに記載の組成物。
〔9〕
該1種または2種以上の金属イオン封鎖剤が、組成物中に、組成物全体を基にした総量で2から35wt%、好ましくは5から25wt%、およびより好ましくは9から20wt%含まれることを特徴とする、〔8〕に記載の組成物。
〔10〕
該金属イオン封鎖剤が、ホスホノアルカンポリカルボン酸またはその塩、好ましくはそのナトリウム塩またはカリウム塩であることを特徴とする、〔8〕または〔9〕に記載の組成物。
〔11〕
該組成物が1種または2種以上の界面活性剤をさらに含むことを特徴とする、〔1〕〜〔10〕のいずれかに記載の組成物。
〔12〕
該1種または2種以上の界面活性剤が、アニオン性界面活性剤および/またはノニオン性界面活性剤から選択されることを特徴とする、〔11〕に記載の組成物。
〔13〕
該1種または2種以上の界面活性剤が、組成物中に、組成物全体を基にした総量で1から30wt%、好ましくは2から20wt%、およびより好ましくは4から15wt%含まれることを特徴とする、〔11〕または〔12〕に記載の組成物。
〔14〕
1種または2種以上の酸化剤をさらに含むことを特徴とする、〔1〕〜〔13〕のいずれかに記載の組成物。
〔15〕
該酸化剤が1種または2種以上の塩素源を含むことを特徴とする、〔14〕に記載の組成物。
〔16〕
該1種または2種以上の酸化剤が、組成物中に、組成物全体を基にした総量で30から80wt%、好ましくは35から70wt%、およびより好ましくは40から65wt%含まれることを特徴とする、〔14〕または〔15〕に記載の組成物。
〔17〕
1種または2種以上の可溶化剤をさらに含むことを特徴とする、〔1〕〜〔16〕のいずれかに記載の組成物。
〔18〕
該1種または2種以上の可溶化剤が、組成物中に、組成物全体を基にした総量で1から35wt%、好ましくは5から25wt%、およびより好ましくは9から20wt%含まれることを特徴とする、〔17〕に記載の組成物。
〔19〕
該組成物が、殺菌剤、ビルダー物質、溶媒および漂白剤を含む群から選択される1種または2種以上の化合物をさらに含むことを特徴とする、〔1〕〜〔18〕のいずれかに記載の組成物。
〔20〕
粉末または固体ブロックの形態で存在することを特徴とする、〔1〕〜〔19〕のいずれかに記載の組成物。
〔21〕
〔1〕〜〔19〕のいずれかに記載の組成物と自由水とを含む、水性濃厚物。
〔22〕
水性濃厚物全体を基にして、30から95wt%、好ましくは35から90wt%、およびより好ましくは40から85wt%の量で組成物を含むことを特徴とする、〔21〕に記載の水性濃厚物。
〔23〕
水が、組成物中に、水性濃厚物全体を基にして30から90wt%、好ましくは35から88wt%、より好ましくは40から85wt%の量で存在することを特徴とする、〔21〕または〔22〕に記載の水性濃厚物。
〔24〕
1種または2種以上の塩が、濃厚物中に、濃厚物全体を基にした総量で0.01から10wt%、好ましくは0.05から5wt%、およびより好ましくは0.1から3.5wt%含まれることを特徴とする、〔21〕〜〔23〕のいずれかに記載の水性濃厚物。
〔25〕
アルカリ源が、濃厚物中に、濃厚物全体を基にした総量で1.5から20wt%、好ましくは2から10wt%、およびより好ましくは3から5wt%含まれることを特徴とする、〔21〕〜〔24〕のいずれかに記載の水性濃厚物。
〔26〕
該濃厚物が、9から13の範囲内、好ましくは10から12の範囲内、より好ましくは11超のpH値(1%,20℃)を有することを特徴とする、〔21〕〜〔25〕のいずれかに記載の水性濃厚物。
〔27〕
1種または2種以上の金属イオン封鎖剤が、濃厚物中に、濃厚物全体を基にした総量で1から10wt%、好ましくは2から8wt%、およびより好ましくは3から5wt%含まれることを特徴とする、〔21〕〜〔26〕のいずれかに記載の水性濃厚物。
〔28〕
1種または2種以上の界面活性剤が、濃厚物中に、濃厚物全体を基にした総量で1から15wt%、好ましくは2から10wt%、およびより好ましくは2.3から6wt%含まれることを特徴とする、〔21〕〜〔27〕のいずれかに記載の水性濃厚物。
〔29〕
1種または2種以上の酸化剤が、濃厚物中に、濃厚物全体を基にした総量で10から40wt%、好ましくは15から30wt%、およびより好ましくは20から28wt%含まれることを特徴とする、〔21〕〜〔28〕のいずれかに記載の水性濃厚物。
〔30〕
アルカリ液中において腐食感受性である表面を洗浄するための水性使用溶液であって、〔1〕〜〔20〕のいずれかに記載の組成物を、使用溶液全体を基にして、0.05から8wt%、好ましくは0.1から5wt%、より好ましくは0.3から3wt%の量で含む水性使用溶液。
〔31〕
アルカリ液中において腐食感受性である表面を洗浄するための水性使用溶液であって、〔21〕〜〔29〕のいずれかに記載の水性濃厚物を、使用溶液全体を基にして、0.1から10wt%、好ましくは0.5から8wt%、より好ましくは1から5wt%の量で含む水性使用溶液。
〔32〕
〔21〕〜〔29〕のいずれかに記載の水性濃厚物または〔30〕もしくは〔31〕に記載の使用溶液を用いて、アルカリ液中において腐食感受性である表面を洗浄する方法。
〔33〕
洗浄表面が、アルミニウム、アルミニウム合金およびガルバナイズドスチールを含む群から選択される物質で形成されていることを特徴とする、〔32〕に記載の方法。
〔34〕
洗浄されることが予定される表面を、水性濃厚物または任意の使用溶液と接触させた後、任意選択的にリンスおよび/または乾燥することを特徴とする、〔32〕または〔33〕に記載の方法。
〔35〕
金属で形成された外側表面および/または金属で形成された内側表面を洗浄するために使用されることを特徴とする、〔32〕〜〔34〕のいずれかに記載の方法。
〔36〕
定置洗浄(CIP)または分解洗浄(COP)のために使用されることを特徴とする、〔32〕〜〔35〕のいずれかに記載の方法。
〔37〕
洗浄が手動または自動で進行し、該自動の洗浄が完全にまたは部分的に自動であることができることを特徴とする、〔32〕〜〔36〕のいずれかに記載の方法。
〔38〕
水性濃厚物または任意の使用溶液が、施設および/または家庭での洗浄のために使用されることを特徴とする、〔32〕〜〔37〕のいずれかに記載の方法。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルカリ液中において腐食感受性である表面を洗浄するための組成物を含む水性洗浄溶液であって、該組成物が、少なくとも1種のアルカリ源、およびMg2+,Ca2+,Sr2+,Ba2+,Al3+またはこれらの混合物からなる群から選択される少なくとも1種のカチオンと、該カチオンに対するアニオン対イオンであって、ハロゲン化物、スルフェートを含む群から選択されるものとを含む少なくとも1種の無機塩を含み、該組成物がさらにアニオン性界面活性剤またはアミンオキサイドを含み、該組成物が、2から35wt%のホスホノアルカンポリカルボン酸またはその塩を金属イオン封鎖剤としてさらに含むことによって、該組成物がいずれのトリアゾールおよび/またはいずれのアルカリ金属ホウ酸塩も含まない、水性洗浄溶液
【請求項2】
1種または2種以上の塩が、組成物中に、組成物全体を基にした総量で0.01から20wt%含まれることを特徴とする、請求項1に記載の水性洗浄溶液
【請求項3】
該アルカリ源が、組成物中に、組成物全体を基にした総量で1から40wt%含まれることを特徴とする、請求項1または2に記載の水性洗浄溶液
【請求項4】
該組成物が、ケイ素を含むいずれの化合物も含まないことを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1項に記載の水性洗浄溶液
【請求項5】
該組成物が、いずれの有機金属化合物も含まないことを特徴とする、請求項1〜4のいずれか1項に記載の水性洗浄溶液
【請求項6】
アニオン性界面活性剤がラウリル硫酸ナトリウムであることを特徴とする、請求項1〜5のいずれか1項に記載の水性洗浄溶液
【請求項7】
アミンオキサイドがヤシアルキルジメチルアミンオキサイドまたはラウリルジメチルアミンオキサイドであることを特徴とする、請求項1〜5のいずれか1項に記載の水性洗浄溶液
【請求項8】
水性濃厚物全体を基にして30から95wt%の量で該組成物を含有する水性濃厚物であることを特徴とする、請求項1〜7のいずれか1項に記載の水性洗浄溶液。
【請求項9】
水性使用溶液全体を基にして0.05から8wt%の量で該組成物を含有する水性使用溶液であることを特徴とする、請求項1〜7のいずれか1項に記載の水性洗浄溶液

【公開番号】特開2012−107255(P2012−107255A)
【公開日】平成24年6月7日(2012.6.7)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2012−36237(P2012−36237)
【出願日】平成24年2月22日(2012.2.22)
【分割の表示】特願2008−513940(P2008−513940)の分割
【原出願日】平成17年6月1日(2005.6.1)
【出願人】(500320453)イーコラブ インコーポレイティド (120)
【Fターム(参考)】