説明

アレイ製造方法

【課題】 スポットパターンの設定及びスポット作業の監視を容易に行うことができるアレイ製造方法を提供すること。
【解決手段】 スポッターを用いてマイクロタイタープレートのウェルの試料を基板上にスポットしてアレイを製造する方法であって、ウェルを表す第1の図形を配列したウエル位置指定画像及びスポット位置を表す第2の図形を配列したスポット位置指定画像を表示する第1ステップと、ウエル位置指定画像の第1の図形が指定された場合、該第1の図形を表す第1の指標を決定する第2ステップと、スポット位置指定画像の第2の図形が指定された場合、該第2の図形に重ねて第1の指標を表す文字を表示する第3ステップと、指定された第1の指標及び第2の図形を表す第2の指標を対応付けて記録する第4ステップと、記録された第1及び第2の指標に対応する座標をパラメータとして、スポッターの制御プログラムを生成する第5ステップとを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アレイのスポットパターンを容易に作成でき、スポット作業の経過を容易に監視できるアレイ製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
DNAマイクロアレイをはじめとするアレイ技術は、さまざまな生体内現象の解析に用いられてきた。一般的に、アレイは、平面基板上に複数種類の核酸、ペプチド、抗体、蛋白質、糖、低分子化合物などが固定されたものである。固定された分子と、測定対象となるサンプル内の分子との相互作用を解析することによって、さまざまな有用な大量の情報を得ることができる。近年では、アレイのスポット数が増加し、集積度が高くなる一方であり、人間の手作業によって平面基板上へのスポット作業を行ってアレイを製造することは非常に困難である。
【0003】
このようなアレイ技術を可能としたのが、微小液滴をアレイ状に配列させることのできる装置である(例えば、特許文献1参照)。この装置は、一般にスポッターあるいはアレイヤーと呼ばれており、マイクロタイタープレートに用意した分子の溶液をピンやヘッドで採取し、スポットによって溶液の微小液滴を基板上に整列させる装置である。微小液滴の量は通常0.1〜100nlの範囲で選択される。ピンはX−Y−Zの3軸に沿って移動可能なアームに設置されており、これによって、種々のアレイを製造することができる。
【0004】
スポットの際に、同じサンプルが異なる複数の位置にスポットされることがあり、そのスポットのパターンを生成できる装置もある(特許文献2参照)。
【0005】
また、図8は、NssEditorMini(ニチリョー社製)を用いてスポッターを制御し、スポット位置へのスポットを実施する場合の操作画面の一例を示す図である。図8から分かるように、一つの制御コマンドに対して一行を入力する形式となっている。制御コマンド自体は、スポットピンを所定の3次元位置に移動させるPOINT、及びスポットピンを洗浄するSEQUENCEの2種類と少ない。しかし、マイクロタイタープレートの各ウエルからの試料の採取と、基板上へのスポットとに関して、それぞれ3次元座標(X,Y,Z)を数値で入力して指定する必要がある。尚、図8の各行には、ウエルからの試料の採取又はスポットの場合、ウエル又はスポット位置を示す指標がコメントとして付されている。また、ウエルの試料の採取の制御コマンド、及びスポットの制御コマンドの次の行のコマンドは、スポットピンを上昇させるコマンドであり、「Z軸上昇」のコメントが付されている。
【特許文献1】特許第3272365号明細書
【特許文献2】特開平2001−21558号広報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、従来のスポッター(あるいはアレイヤー)のスポットパターンを指定したプログラムの作成は非常に難解であり、かつ煩雑であった。
【0007】
例えば、図8に示した操作画面を用いてスポッターに96点をスポットさせるには、ウエル位置及びスポット位置に関して、少なくとも192点の座標を個別に入力する必要がある。また、一連のスポット作業中にスポットするサンプルが変更される場合には、スポットピンの洗浄が必要であり、そのための制御コマンドも入力する必要がある。このように、スポッターのプログラミングは難解かつ煩雑である。
【0008】
従って、最初から独自なスポットパターンをプログラミングしてアレイを製造することは避けられる傾向にあり、すでに入力されているスポットパターンを使用する、若しくはその一部を変更して新たなスポットパターンをプログラムすることが一般的であった。
【0009】
本発明はスポットパターンを容易に作成でき、スポット作業の経過を容易に監視することができるアレイ製造方法に関する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは鋭意検討した結果、以下に示す手段により、上記課題を解決できることを見出した。
【0011】
即ち、本発明に係るアレイ製造方法(1)は、制御プログラムによって制御されるスポッターを用いて、マイクロタイタープレートのウェルから採取した試料を、基板上に設定されたスポット位置にスポットしてアレイを製造する方法であって、前記ウェルを表す第1の図形を複数配列したウエル位置指定画像、及び前記スポット位置を表す第2の図形を複数配列したスポット位置指定画像を、表示部に表示する第1ステップと、操作部を介して、前記ウエル位置指定画像の中から1つの前記第1の図形が指定された場合、該第1の図形を表す第1の指標を決定する第2ステップと、前記操作部を介して、前記スポット位置指定画像の中から1つの前記第2の図形が指定された場合、該第2の図形に重ねて前記第1の指標を表す文字を表示する第3ステップと、前記第2ステップにおいて指定された前記第1の指標、及び前記第3ステップにおいて指定された前記第2の図形を表す第2の指標を対応付けて記録する第4ステップと、記録された前記第1の指標及び前記第2の指標に対応する3次元座標をパラメータとして使用して、前記スポッターの制御プログラムを生成する第5ステップとを含むことを特徴としている。
【0012】
また、本発明に係るアレイ製造方法(2)は、上記のアレイ製造方法(1)において、前記第5ステップが、前記第2〜第4ステップが複数回繰り返された後、対応させて記録された複数の前記第1の指標及び前記第2の指標の各々に対応する前記3次元座標をパラメータとして使用して、前記スポッターの制御プログラムを生成するステップであることを特徴としている。
【0013】
また、本発明に係るアレイ製造方法(3)は、上記のアレイ製造方法(1)又は(2)において、前記第5ステップが、前記第2ステップで決定された同じ前記第1の指標に対応付けて記録された前記第2の指標に対応する前記3次元座標をパラメータとする制御コマンドを、相互に近傍に配置する第6ステップと、前記スポッターの試料を採取するスポットピンを洗浄する制御コマンドを、前記第6ステップにおいて相互に近傍に配置された前記制御コマンドに後続させて追加する第7ステップとを含むことを特徴としている。
また、本発明に係るアレイ製造方法(4)は、上記のアレイ製造方法(1)〜(3)の何れかにおいて、前記第2ステップにおいて指定された前記第1の指標、及び前記第3ステップにおいて指定された前記第2の図形を表す前記第2の指標を対応付けて、前記表示部に表示する第8ステップをさらに含むことを特徴としている。
【0014】
また、本発明に係るアレイ製造方法(5)は、上記のアレイ製造方法(4)において、前記第1の指標に対応する3次元座標をパラメータとする制御コマンドが実行された後、前記第1の指標に対応する前記ウエル位置指定画像上の前記第1の図形の属性を変化させる第9ステップと、前記第2の指標に対応する3次元座標をパラメータとする制御コマンドが実行された後、前記第2の指標に対応する前記スポット位置指定画像上の前記第2の図形に重ねて表示されている前記ウエル位置指標を表す文字の属性を変化させる第10ステップと、前記第8ステップにおいて対応付けて表示された前記第1の指標及び前記第2の指標を、制御コマンドの実行に応じて表示属性を変化させて表示する第11ステップとをさらに含むことを特徴としている。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、自由に、さまざまなパターンのアレイを容易に製造することができ、応用性の高い実験が可能となる。また、同じ試料を異なるスポット位置にスポットするスポットパターンも容易に設定することができるので、スポット位置によるデータのばらつきを解析することも可能となる。
【0016】
また、スポット作業の経過を容易に監視できるので、アレイの製造が簡便となる。
【0017】
本発明によって製造されたアレイを使用することによって、さまざまな生体の分子機構を明らかにする研究に資すると期待される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明に係る実施の形態を添付した図面に基づいて説明する。
【0019】
図1は本発明の実施の形態に係るアレイ製造方法で使用される装置の概略構成を示すブロック図である。本装置は、スポッター1と、スポッター1を制御する制御装置2とを備えている。制御装置2は、制御装置2全体を制御するCPU21と、メモリ22と、記録部23と、操作部28の操作部インターフェース(以下、操作部I/Fと記す)24と、表示部29に応じたビデオ信号を出力するビデオ部25と、スポッター1との通信インターフェース(以下、通信I/Fと記す)26と、各部の間でデータを交換するためのデータバス27とを備えている。図1には、スポッター1に搭載される、試料を搭載するマイクロタイタープレート3と、スポット対処となる基板4とが示されている。
【0020】
図2は、基板4の一例を示す図であり、アレイのスポット位置が複数の小円で表示されている。この基板は、例えば、ガラス表面に厚さ3nmのクロムと厚さ45nmの金とを蒸着して形成されている。スポット位置の数は96(縦方向に8、横方向に12)である。
【0021】
スポッター1は、制御装置2で生成されるスポットパターンに従って、基板4上に試料の液滴をアレイ状に配列させてスポットする機構を有している。スポッター1のスポッティング機構として、ピンを用いた接触式、ヘッドを用いたインクジェット方式などが挙げられるが、ピンを用いた接触式が安価であるため好ましい。
【0022】
試料の分子の種類は特に限定されるものではなく、核酸、ペプチド、抗体、蛋白質、糖、低分子化合物などが挙げられる。
【0023】
アレイは制御装置2によってスポッター1が制御されて製造されるため、アレイが形成される領域は平面部分を含んでいることが好ましく、上記のように平面基板上に形成されることがさらに好ましい。基板となる物質の材料は特に限定されるものではなく、ガラス、金属、ダイアモンド、有機化合物、高分子化合物、シリコンウェハー、雲母などが挙げられる。
【0024】
スポッター1内に設置されるマイクロタイタープレート3は、例えばプラスチックで構成されており、複数のウェル(穴)を有している。ウェルの中にはスポットされる試料溶液が含まれているが、すべてのウェルに試料溶液が存在する必要はなく、一つ以上のウェルに試料溶液が存在していればよい。
【0025】
マイクロタイタープレート3は、サンプルを保持できる複数の穴(ウエル)が設けられたプレート状の物であれば、任意の数のウエルを有していても良く、その配置も限定されるものではない。しかし、入手が容易な点で、6(2×3)、12(3×4)、24(4×6)、48(6×8)、96(8×12)、384(16×24)、1536(32×48)ウエルのプレートであることが好ましく、SBS規格に準拠しているものであることが好ましい。特には、SBS規格に準拠した、96(8×12)または384(16×24)ウエルのマイクロタイタープレートであることが好ましい。これらのものは、多くのサンプルを保持できることも利点である。また、複数種のマイクロタイタープレートが切り替え可能であることも好ましく、この場合には表示される画像(後述参照)も使用するマイクロタイタープレートの種類により切り替えられるようにしておけばよい。
【0026】
詳細は後述するが、スポットパターンの設定においては、表示部29に、マイクロタイタープレート3のウェル配列を示す画像と、基板4上のスポット位置配列を示す画像が表示される。スポットパターンの作成は、スポッター1の制御装置2の表示部29上のマイクロタイタープレート3のウェル配列を示す画像上のウェルを選択した後、引き続き基板4上のスポット位置配列を示す画像上のスポット位置を選択することによって行われる。これらの画像は、ウェル配列及びスポット位置配列が判別できればよく、正確である必要はない。
【0027】
これらの操作により、制御装置2によって、ウェル及びその中の試料をスポットする位置の関係の情報が認識され、この情報及び既に登録されているマイクロタイタープレート3のウェル及び基板4上の各々のスポット位置の3次元座標データを基に、スポッター1の動きが自動的にプログラムされる。
【0028】
スポット位置は、基板4上で境界線などによって明確に区画されていなくてもよく、基板4上の任意の場所に設定され得る。アレイ上のスポット位置の数は96の整数倍であることが好ましい。前述のように96ウェルまたは384ウェルのプレートを用いることが好ましいため、スポットの数も、ウェルの数に対応できる96の整数倍が好適である。
【0029】
ただし、本発明の方法において、スポットされる位置の数は、それほど多いものではなく、表示部29への表示の制限を考えれば、1536以下であるのが好ましいが、これに限定されない。従って、DNAマイクロアレイよりは、集積度の低いアレイに本発明は好適である。例えば、表面プラズモン共鳴イメージング法に用いられるアレイには極めて適している。
【0030】
以下に、スポットパターンを設定する方法に関して説明する。図3は、制御装置2の表示部29に表示された画像を使用して、スポットパターンを設定する処理を示すフローチャートである。図4は、表示部29に表示されたスポットパターン設定画面の一例を示す図である。
【0031】
図4において、右下の領域には、マイクロタイタープレート3のウエルの位置を示すウエル位置指定画像が表示され、右上の領域には、基板4の表面上のスポット位置を示すスポット位置指定画像が表示され、左の領域には、指定されたウエル位置及びスポット位置をそれぞれ表すウエル位置指標及びスポット位置指標を対応させて表示する指標表示画像が表示されている。指標表示画像の左端は行番号であり、その右隣の列にウエル位置指標が表示され、さらにその右隣の列にスポット位置指標が表示される。図4は、ウエル位置指定画像及びスポット位置指定画像が、それぞれ四角形及び円形が縦に8個、横に12個並んだ配列(合計96個)から構成されている場合を示している。右下の96個の円形で構成されているウエル位置指定画像は、96ウェルのマイクロタイタープレートに対応しており、右上の96個の四角形で構成されているスポット位置指定画像は、基板4上の96点のスポット位置の配列を示している。また、各画像には、四角形、円形の位置を指定するために、左右にA〜Hの記号が表示され、上下に1〜12の数字が表示されており、これらの記号及び数字を指標として、各々の四角形、円形が指定される。
【0032】
図4に示したスポットパターン設定画面は、CPU21が、記録部23に予め記録されている描画データ(画像データ、CGデータなど)を読み出し、メモリ22上で処理を行い、ビデオ部25のビデオメモリ(図示せず)に伝送し、ビデオ部25が表示部29に応じたビデオ信号に変換して出力することによって、表示部29に表示される。以下の説明において、表示部29に表示されたスポットパターン設定画面の変化は、同様に、CPU21によって、描画データが変更されることによって実現される。また、一例として、操作部28がコンピュータ用のマウスであるとして説明する。また、以下の説明において、特に断らない限り、CPU21が行う処理として記載し、CPU21はメモリ22、記録部23を制御して、適宜データの記録、データの読み出しを行いながら、処理を行うこととする。
【0033】
ステップS1において、マウスの所定のボタンが押下(以下、クリックと記す)されたか否かを判断し、クリックされたと判断した場合、ステップS2に移行する。
【0034】
ステップS2において、表示部29に表示されたスポットパターン設定画面上でクリックされた点の位置座標を検出する。座標の検出方法は、周知の方法を使用すればよい。所定の座標原点を基準とし、検出された座標を(x,y)とする。以下では、画面の左上を原点とし、右方向をX軸の正方向、下方向をY軸の正方向とし、原点の位置は本処理中変更されない。
【0035】
ステップS3において、検出された座標(x,y)が、図4に示したウエル位置指定画像内にあるか否かを判断する。ウエル位置指定画像内にあると判断すればステップS4に移行し、ウエル位置指定画像内にないと判断すればステップS1に戻る。例えば、ウエル位置指定画像の左上の座標(xw1,yw1)及び右下の座標(xw2,yw2)を予め指定しておき、検出座標(x,y)が、(xw1,yw1)及び(xw2,yw2)で決定される長方形領域内にあるか否か、即ち、xw1<x<xw2、及びyw1<y<yw2であるか否かを判断する。xw1<x<xw2、及びyw1<y<yw2である場合、ステップS4に移行し、そうでない場合、ステップS1に戻る。
【0036】
ステップS4において、検出座標(x,y)が、ウエル位置指定画像内のどの円形(ウエルを表す)に対応するかを決定し、その結果を記録し、対応するウエル位置指標を指標表示画像の空白セルに表示する。例えば、ウエル位置指定画像の各円形に対応させて、(xw1,yw1)及び(xw2,yw2)で決定される長方形領域内を、縦方向に8等分し、横方向に12等分して合計96個の小四角形領域に分割し、それぞれの左上座標(xmn,ymn)及び右下座標(xm+1,n+1,ym+1,n+1)と、ウエル位置指標mnとを対応付けて、記録部23に記録しておく(ここで、m=A〜H、n=1〜12であり、m+1は記号mの次の記号を表す)。そして、ステップS3と同様に、ステップS2で検出された座標(x,y)が(xmn,ymn)及び(xm+1,n+1,ym+1,n+1)で決定される長方形領域内にあるか否かを判断する。座標(x,y)が位置する小四角形が決定すれば、対応するウエル位置指標mnが決まるので、そのウエル位置指標mnを、記録部23の所定領域に記録し、画面上の指標表示画像の対応する列の空白セルに表示する。例えば、空白セルの内、行番号が最も小さいセルに表示する。このとき、クリックされた円形領域を明確に示すために、ウエル位置指定画像上で、指定された円形の属性(色、輝度、形状など)を変化させる。以上で、試料を採取するウエルの位置が1つ指定されたことになる。ここで、クリックされたウエルを特定するための小図形は、四角形に限定されず、中心の座標及び半径で決まる円形としてもよい。また、隣接する小図形の間に不感領域(クリックされても応答しない領域)を設けてもよい。
【0037】
ステップS5において、ステップS1と同様に、マウスがクリックされたか否かを判断し、クリックされたと判断した場合、ステップS6に移行し、ステップS2と同様にクリックされた点の位置座標(x,y)を検出する。
【0038】
ステップS7において、ステップS6で検出された座標(x,y)が、図4に示したスポット位置指定画像内にあるか否かを判断する。スポット位置指定画像内にあると判断すれば、ステップS8に移行し、スポット位置指定画像内に無いと判断すれば、ステップS5に戻る。ステップS7の判断処理は、ステップS3と同様であるので省略する。
【0039】
ステップS8において、検出された座標(x,y)が、スポット位置指定画像内のどの四角形(スポット位置を示す)に対応するかを決定し、対応するスポット位置指標をセル領域の空白セルに入力する。ここでの処理は、ステップS4での処理と同様に行うことができるので説明を省略する。ただし、ステップS4とは異なり、決定したスポット位置指標ij(i=A〜H、j=1〜12)を、ステップS4において決定されたウエル位置指標mnと対応させて記録部23に記録し、画面上の指標表示画像において、ステップS4において決定されたウエル位置指標mnが表示されている同じ行に表示する。また、画面上で、決定したスポット位置指標ijに対応する四角形の中に、ステップS4で決定されたウエル位置指標mnを表示する。以上で、ステップS4で指定されたマイクロタイタープレート3のウエルから採取される試料を、基板4上にスポットする位置が指定されたことになる。
【0040】
ステップS9において、終了の指示があったか否かを判断し、終了の指示があるまでステップS1〜S8の処理を繰り返す。終了の指示は、例えば、図4に示した表示画面の停止ボタンをクリックすることで行われる。
【0041】
ステップS9において、終了の指示があったと判断した場合、ステップS10に移行し、記録部23に、指定された順に対応させて記録されたウエル位置指標mn及びスポット位置指標ijを、対応関係を保持したまま、ウエル位置指標mnの順に並べ替える。これによって、同じウエル位置指標が連続した状態で記録部23に記録される。画面上では、指標表示画像において、同じウエル位置指標が連続して表示される。この並べ替えは、後述するように、一連のスポット作業中にスポットする試料が変更される場合に行わなければならないスポットピンの洗浄回数を最小にするためである。
【0042】
図5は、ステップS1〜S8の処理が13回行われ、ステップS10の処理によって、ウエル位置指標及びスポット位置指標が並べ替えられた後のスポットパターン設定画面を示す図である。図5では、ウエル位置指定画像において、ステップS4の処理で決定された円形(ウエル)には斜線が表示されている。また、スポット位置指定画像において、ステップS8の処理で決定された四角形(スポット位置)には、対応するウエル位置指標A1〜A4、及びC5が表示されている。また、指標表示画像には、決定されたウエル位置指標及びスポット位置指標が、ウエル位置指標が連続するように並べ替えられて表示されている。
【0043】
次に、ステップS11において、ステップS10で決定されたウエル位置指標mn及びスポット位置指標ijを用いて、ウエル位置指標mnの順に制御コマンドを並べて、スポッター1の制御プログラムを生成する。例えば、各ウエル位置指標mnに対応させて、実際のマイクロタイタープレート3のウエルの位置座標、及びスポット位置指標ijに対応させて、実際の基板4のセット位置に応じたスポット位置座標を予め設定しておき、各指標に対応するこれらの座標を制御コマンドのパラメータとして用いれば、図8に示したような制御プログラムを生成することができる。このとき、ウエル位置指標mn又はスポット位置指標ijの情報を、例えばコメントとして追加する。また、ウエル位置指標mnが変化する場合には、対応する制御コマンド行の後続の行に、スポットピンの洗浄コマンドを追加する。このように、ステップS10において、ウエル位置指標mnを連続させることによって、スポットピンの洗浄コマンドを追加する回数を最小にすることができる。
【0044】
スポット作業で、CPU21が、通信I/F26を介して、以上で生成された制御プログラムから適宜制御コマンドをスポッター1に送信して、スポッター1にスポット作業を行わせてもよく、生成された制御プログラムを一度にスポッター1に送信し、スポッター1が制御プログラムを解釈しながらスポット作業を行ってもよい。
【0045】
このとき、スポット作業の進行状況を把握できるように、スポットパターン設定画面を変化させる。図6は、スポット作業の進行状況をスポットパターン設定画面に表示する処理を示すフローチャートである。この処理に関して、以下に具体的に説明する。図3と同様に、断らない限りCPU21が行う処理として記載する。
【0046】
ステップS20において、繰り返し処理のカウンタkに初期値として“1”をセットし、ステップS21において、指標表示画像のk番目の行に関して、セルの枠を太くする、文字表示を反転させるなど、行の表示属性を変化させる。
【0047】
ステップS22において、ステップS21において表示属性を変化させた行に対応する制御コマンドを実行する。即ち、記録部23から対応する複数の制御コマンドの最初の制御コマンド及びパラメータを読み出し、通信I/F26を介してスポッター1に送信する。これを受信したスポッター1は対応する動作を行う。この複数の制御コマンドは、例えば図8に示した制御プログラムの場合、ウエル位置及びスポット位置の各々に関して、スポットピンを所定の3次元座標に移動させる制御コマンド、及びスポットピンを上昇させる制御コマンドである。
【0048】
ステップS23において、ステップS22で実行した制御コマンドがスポットピンの上昇であるか否かを判断する。図8の例では、コメントが「Z軸上昇」であるか否かを判断し、そうであれば、ステップS24に移行し、そうでなければステップS28に移行する。
【0049】
ステップS24において、1つ前の制御コマンドがウエルの試料の採取であるか否かを判断する。図8の例では、コメント中にウエル位置指標があるか否かを判断し、あればステップS25に移行し、なければステップS26に移行する。
【0050】
ステップS25において、ステップS24で判断した制御コマンドに対応するウエル位置指標を取得し、それに対応する画面上の円形(ウエル)を決定し、描画データのうち、その円形の属性(例えば色)を指定するパラメータに、初期値と異なる所定の値を設定する。これによって、例えば、ウエル位置指定画像の対応する円形の色が指定の色に変化する。
【0051】
ステップS26において、1つ前の制御コマンドがスポッティングであるか否かを判断する。図8の例では、スポット位置指標であることを表す「96穴プレート位置」の文字が、コメント中に含まれているか否かを判断し、含まれていればステップS27に移行し、含まれていなければステップS28に移行する。
【0052】
ステップS27において、ステップS26で判断した制御コマンドに対応するスポット位置指標を取得し、それに対応する画面上の四角形(スポット位置)を決定し、描画データのうち、その四角形の中に表示されている文字の属性(例えば色)を指定するパラメータに、初期値と異なる所定の値を設定する。これによって、表示画面において、例えばスポット位置指定画像の対応する四角形の中の文字の色が変化する。
【0053】
ステップS28において、ステップS21で表示属性を変化させた行に対応する制御コマンドを全て実行したか否かを判断し、全て実行するまで、ステップS22〜S27を繰り返す。
【0054】
ステップS29において、指標表示画像に表示された全ての行に関する制御コマンドを実行したか否かを判断し、全てを実行するまで、ステップS21〜S28の処理を繰り返す。繰り返す場合、ステップS30において、カウンタkを1だけ増加させ、指標表示画像の属性を変化させた行の属性を解除して元の表示に戻した後に、ステップS21に戻る。
【0055】
図7は、スポット作業の進行途中のスポットパターン設定画面の一例を示す図である。図7では、A1〜D12の合計48の円形(ウエル)が指定されており、各々を2回使用して合計96の四角形(スポット位置)が指定されている。さらに、これらの指定されたスポット位置指標が、対応する同じウエル位置指標毎に近傍に配置されて指標表示画像に表示されている。図7では、指標表示画像の4行目までスポット作業が進行した状態を示している。即ち、ウエル位置指標A1に対応するウエルから試料を採取する制御コマンドが実行されたことによって、ウエル位置指定画像のウエル位置指標A1に対応する円形の色が変化している。また、ウエル位置指標A1に対応するウエルから採取された試料を、スポット位置指標A1及びA2に対応する基板上の位置にスポットする制御コマンドが実行されたことによって、スポット位置指定画像の左上の2つの四角形(スポット位置指標A1、A2に対応)内のウエル位置指標を示す文字の色が変化(図7では文字色の変化を白抜き太字で示す)している。同様に、ウエル位置指定画像のウエル位置指標A2に対応する円形の色、及びスポット位置指定画像の中央付近の2つの四角形(スポット位置指標A7、A8に対応)の文字の色が変化している。ここで、使用される色は特に限定されるものではないが、明確に区別できる色(例えば黄と黒、赤と青など補色の関係にある色)であればさらに好ましい。
【0056】
以上、本発明の実施の形態に関して具体的に説明したが、本発明は上記した実施の形態に限定されるものではなく、図3及び5に示したフローチャートは適宜変更することが可能である。
【0057】
例えば、以上では、ウエル位置及びスポット位置の指定が全て終った後にウエル位置指標に基づいて、記録したデータの順序を入れ替える場合を説明したが、これに限定されず、ウエル位置及びスポット位置を指定する毎に、ウエル位置指標が連続するように追加して記録し、且つ指標表示画像に表示するようにしてもよい。
【0058】
また、ウェル位置及びスポット位置の指定に使用する操作手段はマウスに限定されず、ポインティングパッド、ポインティングスティック等のポインティングデバイスを用いることができる。これらのポインターを移動させ、クリック操作やエンターキーにより指定を確定させたり、表示部にタッチパネルを備えて、ウェル位置及びスポット位置を直接触れる操作により選択するようにしてもよい。
【0059】
また、ウエル位置及びスポット位置の指定方法としては、単にクリックやエンターキー操作のみによって、一度ウェルを選択した後にスポット位置を選択する方法、コピー及び貼り付けと呼ばれる操作で行う方法(例えば、ウエル位置指定画像の上でコピーによりウェルを指定し、貼り付けによりスポット位置を指定する場合、貼り付けを繰り返すことにより、1回のウェル選択で複数のスポット位置を指定することができる)、ドラッグアンドドロップと呼ばれる操作(ドラッグによりウェルを選択し、ドロップによりスポット位置を選択する)など、種々の方法で行うことができる。
【0060】
また、画面上での操作に対してウエル位置指標及びスポット位置指標を求める方法、さらに、指定されたウエル位置指標及びスポット位置指標の情報を使用して、制御対象のスポッターに応じた制御プログラムを生成する方法は、種々の周知の方法を使用すればよい。
【0061】
また、スポッター1の制御装置2は、市販のパーソナルコンピュータであってもよく、デスクトップ型、ラップトップ型など形態は特に限定されない。また、オペレーティングシステム(OS)も、特に限定されない。また、スポットパターン設定画面の生成、及びそれを使用してスポットパターンの指定を受け付けるソフトウェアのプログラム言語も、種々のプログラム言語を使用することができ、特に限定されない。
【図面の簡単な説明】
【0062】
【図1】本発明の実施の形態に係るアレイ製造方法で使用される装置の概略構成を示すブロック図である。
【図2】基板上のスポット位置の一例を示す図である。
【図3】スポットパターンを設定する処理を示すフローチャートである。
【図4】スポットパターン設定画面の一例を示す図である。
【図5】スポットパターンの設定途中のスポットパターン設定画面の一例を示す図である。
【図6】スポット作業の進行状況をスポットパターン設定画面に表示する処理を示すフローチャートである。
【図7】スポット作業中のスポットパターン設定画面の一例を示す図である。
【図8】従来のスポッターの操作画面の一例を示す図である。
【符号の説明】
【0063】
1 スポッター
2 制御装置
3 マイクロタイタープレート
4 基板
21 CPU
22 メモリ
23 記録部
24 操作部インターフェース
25 ビデオ部
26 通信インターフェース
27 データバス
28 操作部
29 表示部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
制御プログラムによって制御されるスポッターを用いて、マイクロタイタープレートのウェルから採取した試料を、基板上に設定されたスポット位置にスポットしてアレイを製造する方法であって、
前記ウェルを表す第1の図形を複数配列したウエル位置指定画像、及び前記スポット位置を表す第2の図形を複数配列したスポット位置指定画像を、表示部に表示する第1ステップと、
操作部を介して、前記ウエル位置指定画像の中から1つの前記第1の図形が指定された場合、該第1の図形を表す第1の指標を決定する第2ステップと、
前記操作部を介して、前記スポット位置指定画像の中から1つの前記第2の図形が指定された場合、該第2の図形に重ねて前記第1の指標を表す文字を表示する第3ステップと、
前記第2ステップにおいて指定された前記第1の指標、及び前記第3ステップにおいて指定された前記第2の図形を表す第2の指標を対応付けて記録する第4ステップと、
記録された前記第1の指標及び前記第2の指標に対応する3次元座標をパラメータとして使用して、前記スポッターの制御プログラムを生成する第5ステップとを含むことを特徴とするアレイ製造方法。
【請求項2】
前記第5ステップが、前記第2〜第4ステップが複数回繰り返された後、対応させて記録された複数の前記第1の指標及び前記第2の指標の各々に対応する前記3次元座標をパラメータとして使用して、前記スポッターの制御プログラムを生成するステップであることを特徴とする請求項1に記載のアレイ製造方法。
【請求項3】
前記第5ステップが、
前記第2ステップで決定された同じ前記第1の指標に対応付けて記録された前記第2の指標に対応する前記3次元座標をパラメータとする制御コマンドを、相互に近傍に配置する第6ステップと、
前記スポッターの試料を採取するスポットピンを洗浄する制御コマンドを、前記第6ステップにおいて相互に近傍に配置された前記制御コマンドに後続させて追加する第7ステップとを含むことを特徴とする請求項1又は2に記載のアレイ製造方法。
【請求項4】
前記第2ステップにおいて指定された前記第1の指標、及び前記第3ステップにおいて指定された前記第2の図形を表す前記第2の指標を対応付けて、前記表示部に表示する第8ステップをさらに含むことを特徴とする請求項1〜3の何れかの項に記載のアレイ製造方法。
【請求項5】
前記第1の指標に対応する3次元座標をパラメータとする制御コマンドが実行された後、前記第1の指標に対応する前記ウエル位置指定画像上の前記第1の図形の属性を変化させる第9ステップと、
前記第2の指標に対応する3次元座標をパラメータとする制御コマンドが実行された後、前記第2の指標に対応する前記スポット位置指定画像上の前記第2の図形に重ねて表示されている前記ウエル位置指標を表す文字の属性を変化させる第10ステップと、
前記第8ステップにおいて対応付けて表示された前記第1の指標及び前記第2の指標を、制御コマンドの実行に応じて表示属性を変化させて表示する第11ステップとをさらに含むことを特徴とする請求項4に記載のアレイ製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2006−71571(P2006−71571A)
【公開日】平成18年3月16日(2006.3.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−258060(P2004−258060)
【出願日】平成16年9月6日(2004.9.6)
【出願人】(000003160)東洋紡績株式会社 (3,622)
【Fターム(参考)】