説明

アレルギー抑制組成物

【課題】 より安全でより効力の強いアレルギー疾患抑制作用を持った物質を提供して、アレルギー疾患を安全にかつより効果的に予防し、かつ治療することを目的とした。
【解決手段】 食品としての摂食経験があるレバンを、特に納豆菌が生産するレバンを、有効成分とし、IgE産生やIL−4産生を抑制し、Th2細胞への分化を抑制しているIL−12の産生を促進してアレルギーを抑制することができる組成物を提供する。本アレルギー抑制組成物には、アレルギーを予防、軽減、又は治療することのできる医薬品や飲食品も包含される。また、1日当りのレバンの有効な経口摂取量は、50mg〜1000mg程度、より好ましくは120mg〜600mg程度である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アレルギー抑制作用を有する安全性が高く、効果の強い物質として、レバン、特に納豆菌が生産するレバンを有効成分とするアレルギー抑制組成物を提供して、アレルギーの予防・治療を可能にすることに関する。
【背景技術】
【0002】
アレルギー疾患は、気管支喘息、アトピー性皮膚炎、アレルギー性鼻炎などに代表される免疫不全症であり、近年増加が叫ばれている花粉症は、アレルギー性鼻炎の一つである。
【0003】
免疫細胞にはT細胞とB細胞があり、抗体をつくるのはB細胞である。一方、抗体産生を制御しているのはヘルパーT細胞(Th細胞)である。そしてTh細胞で生産されるインターフェロン(IFN)やインターロイキン(IL)などのサイトカインが両者の間にシグナルを伝達する役目を担っている。
【0004】
さらに、Th細胞は産生するサイトカインの種類によってTh1細胞とTh2細胞に大別され、花粉症や青魚アレルギー等のいわゆるアレルギーにはIL−4などを産生するTh2細胞が関与していることが分かっている。
【0005】
すなわち、アレルゲンによってTh2細胞が活性化されると、Th2細胞はIL−4やIL−13を遊離してB細胞からのイムノグロブリンE(IgE)の産生を促進し、同時にIL−3、IL−5などの作用により、好酸球、好塩基球などのメディエーターの分化増殖や生存延長に働くとされている(例えば、非特許文献1参照)。
【0006】
さらに、Th2細胞への分化は、IL−2によって促進され、逆にIL−12によって抑制されることが知られている。
【0007】
従って、IgEやIL−4の産生を抑制する効果や、Th2細胞への分化を抑制するIL−12の産生を促進する効果を、調べることによってアレルギー抑制効果を確認することが可能である。
【0008】
これまでのアレルギー治療薬は、メディエーター遊離抑制薬、ヒスタミンH1拮抗薬、トロンボキサン阻害薬、ロイコトリエン拮抗薬、Th2サイトカイン阻害薬などに大別されているが、その殆どがTh2細胞への分化が起きた以降の症状に対処するような対症療法的なものであり、Th2細胞への分化自体を抑えるなどの免疫療法的な基本的な治療薬は殆どなかった。また、これらのアレルギー治療薬は副作用の激しいものが多く、効果発現までに、ある程度長時間を要するものが殆どであった(例えば、非特許文献1参照)。
【0009】
これらに鑑み、微生物を利用するアレルギー抑制に関する研究も行われるようになり、例えば、大豆、小麦、柑橘類、果実等を糸状菌や納豆菌の酵素で処理した発酵物を主体とする抗アレルギー活性物質(例えば、特許文献1参照)や、納豆菌、Bacillus属細菌、乳酸菌等の細胞壁を溶解して得られる免疫調節活性を有する菌体分解物(例えば、特許文献2参照)などが知られていたが、これらの事例では、アレルギー抑制効果を示す活性の本体物質を特定できておらず、本体物質は明らかにされていない。
【0010】
これに対して本発明は、レバンにすぐれたアレルギー抑制作用があることをはじめて見出したものであるが、レバンは納豆菌生産物の一つであり納豆中にも含有されていることが知られているものの(例えば、非特許文献2参照)、レバンの生理機能としては抗腫瘍活性などが知られているにすぎず(例えば、非特許文献3参照)、特にレバンのアレルギー抑制効果については全く知られていなかった。ましてや、その投与方法、投与量などは全く知られていなかった。
【非特許文献1】「アステマ(ASTHMA)」、13巻、1号、p.15−19、2000年
【非特許文献2】「福岡女子大学家政学部紀要」、16巻、p.1−5、1984年
【非特許文献3】「インターナショナル・ジャーナル・オブ・バイオロジカル・マクロモレキュールズ(International Journal of Biological Macromolecules)」、27巻、p.245−247、2000年
【特許文献1】特開2003−327540号公報
【特許文献2】特開2000−4830号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明者らは、より安全でより効力の強いアレルギー疾患抑制作用を持った物質を提供して、アレルギー疾患を安全にかつより効果的に予防し、かつ治療することを目的とした。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は上記目的を達成するためになされたものであって、本発明者らは、従来のアレルギー治療薬は対症療法的なものが多く、基本的な治療薬は殆どなかったことに鑑み、Th2細胞への分化を押さえてアレルギー反応を基本から治療することができるより効力が強く、且つ安全性の高いアレルギー予防・治療組成物を開発するという新しい技術課題を設定した。
【0013】
上記技術課題を解決するため、本発明者らは、各方面から検討の結果、安全性の面から微生物に着目し、その中でも食品として長い間利用されてきた納豆菌及び納豆菌利用食品のひとつである納豆に着目した。
【0014】
このようにして、本発明者らは、より安全性が高いと考えられる食品素材、食品関連微生物について広く検索した結果、食品としての摂食経験がある納豆菌が生産するレバンに、強いIgE産生やIL−4産生を抑制する効果や、Th2細胞への分化を抑制しているIL−12の産生を促進する効果を見出し、本発明を完成することができた。
【0015】
すなわち、本発明は、レバンを有効成分とするアレルギー抑制組成物に関するものであって、次に示されるものである。
(1) レバンを有効成分とするアレルギー抑制組成物。
(2) レバンが納豆菌によって製造されたものであること、を特徴とするアレルギー抑制組成物。
(3) 納豆に食塩水を加えて攪拌し、得られた懸濁液の上清にエタノール又はエタノール水を加え、得られた析出物について、水による溶解、エタノール又はエタノール水による析出の各処理を繰り返し、最終析出物の溶解液を水に対して透析した後に乾燥する工程からなる方法で調製されたレバンを有効成分とすることを特徴とするアレルギー抑制組成物の製造方法。
(4) 上記(3)における(A)原料である納豆、(B)最終生産物であるレバン、及び(C)納豆からレバンの製造に至る工程で生成する少なくともひとつの生成物から選ばれる少なくともひとつを有効成分としてなること、を特徴とするレバンを有効成分とするアレルギー抑制組成物。
(5) レバンを有効成分とするアレルギー抑制剤。
(6) レバンを有効成分とするアレルギー抑制活性を有する飲食品。
(7) 飲食品が納豆であること、を特徴とする上記(6)に記載の飲食品。
(8) 一日あたり50mg〜1000mgのレバンを経口摂取することを特徴とするアレルギー抑制方法。
(9) 一日あたり120〜600mgのレバンを経口摂取することを特徴とするアレルギー抑制方法。
(10) 納豆を摂取することによりレバンを経口摂取することを特徴とする上記(8)又は(9)に記載のアレルギー抑制方法。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、安全性の高いレバンを有効成分とするアレルギー抑制組成物を提供することが可能となる。
【0017】
本発明に係るアレルギー抑制組成物には、アレルギーの予防及び/又は治療を含め、アレルギーを軽減及び/又は抑制する医薬品及び飲食品(栄養食品、特定保健用食品、機能性食品も包含される)が広く包含されるので、本発明は、レバンを有効成分とするアレルギー抑制剤及びアレルギー抑制活性を有する飲食品を提供することができる。また、本発明は、レバンを有効成分として含有するIL−12産生誘導組成物、IL−4産生抑制組成物、IgE産生抑制組成物の少なくともひとつを提供することもできる。なお、これらの組成物には医薬及び飲食品も包含される。
【0018】
本発明において有効成分として用いるレバンとしては、精製されたレバンのほか、レバン含有物も使用することができる。レバン含有物としては、レバンを含有するものであればすべてのものが使用可能であるが、例えば納豆を原料としてレバンを分離採取する各工程で生成する生成物をレバン含有物として使用することができ、納豆もレバン含有物に包含される。したがって、納豆も本発明に係るアレルギー抑制組成物として使用することができ、特に予防を目的としたアレルギー抑制食品として有用である。
【0019】
また、本発明によれば、レバンを経口摂取することによるアレルギー抑制方法が提供され、更なる研究の結果、そのためのレバンの経口摂取量の特定にも成功した。そのうえ、レバンとしてレバン含有物である納豆も利用可能であり、本発明は、納豆を例えば機能性食品として経口摂取することによるアレルギー抑制方法も提供するものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明では、植物や微生物が生産するレバンが用いられる。
レバンは、果糖(フルクトース)がβ−2,6結合したD−フルクトースからなる多糖類であり、フルクタンの一種である。
【0021】
植物においては、レバンは単子葉植物、特にイネ科の葉や茎に見出され、分子量は構成糖であるフルクトース残基25〜50程度であり、還元末端にはグルコースが結合している。
【0022】
微生物では、各種細菌、例えば、納豆菌を含むバシラス・サチリス(Bacillus subtilis)、バシラス・メガテリウム(Bacillus megaterium IFO 3003)などのバシラス属細菌、酢酸菌(Gluconacetobacter xylinumなど)、乳酸菌(Streptococcus salivarius IFO 3350、Leuconostoc属など)などの食品製造に用いられる細菌など、多くの細菌が、レバンを生産することが知られており、これは、蔗糖−6−フルクトシル転移酵素の作用により、蔗糖を直接のフルクトース供与体として2→6結合でフルクトースポリマーを合成する能力を有しているからであり、従って、納豆中には納豆菌が生産するレバンが含有されている。
【0023】
レバン生産菌としては、上記のように納豆菌が例示される。納豆菌は、枯草菌バシルス・サチリス(Bacillus subtilis)に分類されているが、粘質物(糸引物質)などの納豆としての特徴をつくり出すことができ、納豆発酵での主体をなす細菌であって、また生育にビオチンを要求することなどの特性を有していることなどから、バシルス・ナットウ(Bacillus natto)として分類されたり、枯草菌の変種としてBacillus subtilis var. nattoあるいはBacillus subtilis (natto)などと枯草菌と区別して分類する場合もある。納豆菌としては、Bacillus natto IFO 3009株、Bacillus subtilis IFO 3335株、同IFO 3336株、同IFO 13169株などがあるほか、各種の納豆菌が広く使用できる。
【0024】
具体的には、市販納豆から分離したO−2株や該株の形質転換効率向上性変異株であるr22株(例えば、特開2000−224982号公報参照)が挙げられ、また市販の納豆種菌である高橋菌(T3株、東京農業大学菌株保存室)や宮城野菌(宮城野納豆製作所)など各種の納豆菌が適宜使用可能である。
【0025】
本発明では、レバンであれば、特に生産起源は問わず、全てのレバンが利用可能であるが、中でも、納豆中に生産されるものは、食品としての摂食経験があり安全性が確認されていることから、より好ましい。
【0026】
これらのレバンを使用する場合、摂取量は、年齢、症状程度などで異なるが、特に限定されない。しかしながら、通常は50mg〜1000mg/1日程度を摂取するのが好ましく、さらに好ましくは120〜600mg/1日程度を摂取するのがよい。そして、本発明においてはレバンにかえて納豆を使用することも可能であり、その場合、納豆に含まれるレバンの量を考慮して納豆の摂取量を規定すればよい。通常、納豆におけるレバンの含有量は約3mg/g納豆であるから、1日当り1パック(40g/パック)の納豆を食すると、レバン120mg摂取することになる。また、所望する場合、レバンと納豆を併用することも可能である。
【0027】
なお、長期間に亘って保健上ないし予防や健康維持の目的で摂取する場合には、上記範囲よりも少量摂取してもさしつかえない。また、本有効成分は、安全性については、格別の問題はないので、上記範囲よりも多量に摂取することも可能である。現に、マウスを用いた10日間の急性毒性試験の結果、1000mg/Kgの経口投与でも死亡例は認められなかった。
【0028】
本組成物を飲食品として使用する場合には、本有効成分をそのまま使用したり、他の飲食品ないし飲食品成分と併用したりして、適宜常法にしたがって使用することができる。
【0029】
本有効成分を用いる本発明に係る組成物は、固体状(粉末、粒状、顆粒状その他)、ペースト状、液状ないし懸濁液状のいずれでもよいが、甘味料、酸味料、ビタミン剤その他ドリンク剤製造に常用される各種成分を用いて、健康ドリンクに製剤化したり、あるいは常法にしたがってサプリメントの剤型に製剤化してもよい。
【0030】
なお、本発明に係る組成物として納豆を用いる場合には、納豆はレバンを1g納豆当り3mg程度含んでいることから、1パック当り40g入りの納豆を用いる場合は、1日1パックの納豆を食すれば充分な量のレバンを摂食することが可能となる。
【0031】
さらに、本有効成分の効能を食品に表示する場合は、例えば、花粉症、気管支喘息、アレルギー性鼻炎、アレルギー性結膜炎、アレルギー性胃腸炎、アトピー性皮膚炎、接触性皮膚炎、ジンマシン、薬物アレルギーなどに有効である旨の表示を付すことなどが可能である。
【0032】
したがって、本発明は、レバンを有効成分として含有し、例えば上記したような花粉症、気管支喘息、アレルギー性鼻炎等のアレルギーの予防、症状の緩和、治療の少なくともひとつの作用を有するものであることを特徴とし、アレルギー抑制のために用いられるものである旨の表示を付した納豆を新たに提供するものであり、本発明に係る納豆は既知の納豆と充分に区別することができる。また、本発明は、レバン及び/又はその含有物(例えば納豆)の経口摂取量を特定するのに成功したものであり、それに基づいてアレルギーを抑制する方法も提供するものであるが、これは機能性食品等の使用方法ないし利用の1態様をなすものである。
【0033】
本発明を医薬品として使用する場合には、粉末状のままで摂取しても、あるいは水に溶解して水溶液等として摂取してもよい。摂取方法も、経口投与、直腸投与、静脈注射、点滴等の一般的な投与経路を経て投与できる。
【0034】
経口投与の場合には、組成物自体を投与する以外に、医薬上許される担体、賦形剤、希釈剤と共に混合し、散剤、顆粒剤、錠剤、カプセル剤、トローチ剤等として用いても良い。但し固体散剤や錠剤では吸収に時間を要することがあるため、組成物自体の経口投与が望ましい。この場合には、適切な添加剤、例えば塩化ナトリウムのような塩類、pH調節剤、キレート剤と共に前述した溶液として投与しても良い。注射剤として使用する場合には、適切な緩衝剤や等張剤等を添加し、滅菌蒸留水に溶解したものを用いれば良い。
【実施例】
【0035】
以下、本発明について実施例をあげて具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0036】
実施例1(納豆からのレバンの精製方法)
市販の納豆1kgに対して5%食塩水を2L加え、攪拌棒で懸濁した。遠心分離(7000rpm、20分間)した上清を回収し、99.5%エタノールを4Lを加え、生じた析出物をガラス棒で巻き取り回収した。30%エタノールで3回洗浄した後、脱イオン水1Lに溶解し、5%セタブロン(セチルトリメチルアンモニウムブロミド)を新たな析出が起こらなくなるまで添加した。遠心分離(7000rpm、20分間)の上清を透析チューブに入れ2日間流水透析した後、3倍容の99.5%エタノールを添加し、生じた析出物をガラス棒で回収した。この溶解液を脱イオン水に対して透析した後、凍結乾燥しレバン粉末0.5gを得た。
【0037】
実施例2(IL−12の産生誘導活性の測定)
マウスマクロファージ由来J744.1細胞を5%牛胎仔血清を含むRPMI−1640培地(ニッスイ製薬社製)に5×105細胞/mlの濃度になるように調製し、300μlずつマイクロプレートに分注した。ここに納豆菌より精製したレバン、試薬のレバン(Serratia levanicum由来:和光純薬社製)10〜100μg/ml溶液を30μl添加し、5%CO2条件下、37℃で8時間培養した。培養終了後、各々の細胞の遠心上清のIL−12量を酵素免疫測定法キット(genzyme、TENHNE社製)で測定した。
【0038】
コントロールとして50mMリン酸バッファー:pH7.4(以下、PBS)、及び0.02M NaCl溶液を用い、また、陽性のコントロールとしてLPS(大腸菌O55由来リポ多糖 シグマ社製)1μg/ml溶液を使用し、これらを30μl添加した。以上の結果を図1に示した。
【0039】
図1(図中、レバンの棒グラフは、いずれも、左側がレバン10μg/ml、右側が100μg/mlを示す。)の結果から、いずれのレバンも濃度依存的にIL−12の産生量を高めることが認められたことから、レバンにはマクロファージからのIL−12産生を誘導する活性があることが確認できた。
【0040】
実施例3(IL−4及びIgEの産生抑制効果)
3週齢のBALB/cマウスに、0.5mg/mlのオボアルブミン(OVA)を100μl腹腔内投与して感作させた。最初の腹腔内投与日を0日として、実施例で調製した納豆レバンを1mgずつ、−1日目(すなわち、投与1日前)、4日目、9日目、14日目に経口投与した。コントロールとしてPBSを投与した。
【0041】
アルブミンによる感作は12日目にも同様に実施し、合計2回実施した。29日目にマウスを屠殺し、脾臓細胞のIL−4産生能およびOVA特異的血清IgE量を測定した。
【0042】
IL−4産生能の測定は、各試験群のマウスを屠殺後直ちに脾臓より脾臓細胞懸濁液を作製し、0.16M塩化アンモニウム処理をして赤血球を除去し、5%牛胎仔血清、2mMグルタミン、0.05mM2−メルカプトエタノール、100u/mlペニシリン、100μg/mlストレプトマイシンを含むRPMI−1640培地(ニッスイ製薬社製)に5×105細胞/mlの濃度になるように懸濁した。
【0043】
これをマイクロプレートに分注し、各ウェルに100μgのOVAを添加し、5%CO2条件下、37℃で40時間培養した。培養液の上清のIL−4量を酵素免疫測定法キット(genzyme Diagnostic社製)で測定した。以上の結果を図2に示した。
【0044】
またOVA特異的血清IgE量は、酵素免疫法(ELISA法)によって測定した。すなわち、マイクロプレートに0.1mg/mlのOVA溶液(50mM炭酸バッファー:pH9.6に溶解)を300μlずつ分注し、4℃で一晩放置して固定化させた。引き続きウェルを0.1%Tween20を含む10mMのPBS(以下、PBS−0.1%Tween)で洗浄後に、1.5%ゼラチン溶液(50mM炭酸バッファー:pH9.6に溶解)を添加し30分間室温で放置した。
【0045】
その後、PBS−0.1%Tweenで洗浄した後、3%ポリエチレングリコール6000を含むPBS−0.1%Tweenにて適宜希釈した血清試料を添加し、室温にて20分間放置した。各ウェルをPBSで洗浄後、ペルオキシダーゼ結合抗IgE抗体(Nordic社製)を添加し、更に2時間室温放置した。
【0046】
その後、各ウェルをPBSで洗浄し、発色液(40mg%o−フェニレンジアミン、12%過酸化水素を含む200mMクエン酸−リン酸バッファー:pH5.0)を添加して1時間室温放置した後、2N硫酸を添加して反応を停止させ、492nmの吸光度を測定した。以上の結果を図3に示した。
【0047】
図2の結果からレバンによりIL−4の産生が抑制されることが確認され、また、図3の結果から、血清IgE量を低下させる効果が確認されたことから、生体内においてもレバンはアレルギーの発症を抑制する効果があることが確認できた。
【0048】
実施例4(納豆の効果)
市販納豆(50g納豆/1パック、ミツカン社製)に、実施例1で調製したレバンを添加し、納豆1g当りレバンを3mg(3mgレバン納豆)、6mg(6mgレバン納豆)、15mg(15mgレバン納豆)含有する納豆を調製した。一方、大豆を納豆用煮豆調製法に準じて蒸煮し、蒸煮大豆を調製した。
【0049】
これらの納豆及び蒸煮大豆を凍結乾燥した後、各々を3重量%ずつ基本飼料(CRF−1、オリエンタル酵母社製)に対して添加し、蒸煮大豆飼料、3mgレバン納豆飼料、6mgレバン納豆飼料、15mgレバン納豆飼料を調製した。
【0050】
続いて、3週齢のBALB/cマウスを6匹ずつ4群に分け、各群のマウスに実施例3と同様にOVAで感作させた。
【0051】
なお、感作の2週間前から上記の各飼料を4群のマウスに与え、自由摂取させ、蒸煮大豆飼料群、3mgレバン納豆飼料群、6mgレバン納豆飼料群、15mgレバン納豆飼料群とした。
【0052】
このような飼育を行う間に、一匹のマウスは各飼料を1日当り平均0.7g摂食しており、従って、3mgレバン納豆飼料群では60ng/1日のレバンを摂食したことになる。また、6mgレバン納豆飼料群では120ng/1日のレバンを、さらに15mgレバン納豆飼料群では300ng/1日のレバンを摂食したことになる。
【0053】
飼育29日目にマウスを屠殺し、脾臓細胞のIL−4産生量及びOVA特異的血清IgE量を、実施例3と同様にして測定した。
【0054】
各群のIL−4産生量を図4に示したが、3mgレバン納豆飼料群において、レバンはIL−4の産生能を抑制することが確認でき、さらに容量依存的にIL−4産生能を抑えることが確認できた。このことから、レバンはマウスでのアレルギー反応を容量依存的に抑制することが確認された。
【0055】
また、各群のOVA特異的IgE産生量の測定結果を表1に示した。なお、蒸煮大豆飼料群のIgE産生量に対して、各レバン納豆飼料群のIgE産生量をt−テスト法(Student t−test)(例えば、「統計のサイエンス(Stat. Sci.)」、6巻、p.100−116、1995年参照)で統計処理して、p値を算出した。なお、p値が0.05未満の場合に有意差有りと判定できる。
【0056】
【表1】

【0057】
表1に示したように、レバンはIgEの産生能も容量依存的に抑えることが確認され、レバンはマウスでのアレルギー反応を容量依存的に抑制することが確認できた。
【0058】
以上のマウスでの結果に基づき、マウスの平均体重30gに対してヒトの平均体重を60Kgとして、ヒトでの効果領域を体重換算すると、3mgレバン納豆飼料群では120mg/1日のレバンを、また、6mgレバン納豆飼料群では240mg/1日のレバンを、さらに、15mgレバン納豆飼料群では600mg/1日のレバンを摂食したことになる。
【0059】
従って、ヒトにおけるレバンの経口摂取における効果領域は、120mg/1日〜600mg/1日であることが確認できた。
【0060】
さらに、最少のレバン含量である3mgレバン納豆飼料群(ヒトで120mg/1日摂取に相当)でも充分な効果が得られていることなどから、ヒトでの効果領域は50mg/1日〜1000mg/1日程度であると認められた。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【図1】各種起源のレバンのIL−12(インターロイキン−12)の産生誘導活性を示した図である。
【図2】レバンのIL−4産生抑制活性を示す図である。
【図3】レバンのIgE産生抑制活性を示す図である。
【図4】レバン含有納豆のIL−4産生抑制活性を示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
レバンを有効成分とするアレルギー抑制組成物。
【請求項2】
レバンが納豆菌によって製造されたものであること、を特徴とするアレルギー抑制組成物。
【請求項3】
納豆に食塩水を加えて攪拌し、得られた懸濁液の上清にエタノール又はエタノール水を加え、得られた析出物について、水による溶解、エタノール又はエタノール水による析出の各処理を繰り返し、最終析出物の溶解液を水に対して透析した後に乾燥する工程からなる方法で調製されたレバンを有効成分とすることを特徴とするアレルギー抑制組成物の製造方法。
【請求項4】
請求項3における(A)原料である納豆、(B)最終生産物であるレバン、及び(C)納豆からレバンの製造に至る工程で生成する少なくともひとつの生成物から選ばれる少なくともひとつを有効成分としてなること、を特徴とするレバンを有効成分とするアレルギー抑制組成物。
【請求項5】
レバンを有効成分とするアレルギー抑制剤。
【請求項6】
レバンを有効成分とするアレルギー抑制活性を有する飲食品。
【請求項7】
飲食品が納豆であること、を特徴とする請求項6に記載の飲食品。
【請求項8】
一日あたり50mg〜1000mgのレバンを経口摂取することを特徴とするアレルギー抑制方法。
【請求項9】
一日あたり120mg〜600mgのレバンを経口摂取することを特徴とするアレルギー抑制方法。
【請求項10】
納豆を摂食することによりレバンを経口摂取することを特徴とする請求項8又は9に記載のアレルギー抑制方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−1922(P2006−1922A)
【公開日】平成18年1月5日(2006.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−76013(P2005−76013)
【出願日】平成17年3月16日(2005.3.16)
【出願人】(398065531)株式会社ミツカングループ本社 (157)
【Fターム(参考)】