説明

アレーアンテナ装置及びレーダ装置

【課題】可視領域の広域化を図りつつ、アンテナ素子の素子間隔を広くすることのできるアレーアンテナ装置及びこのアレーアンテナ装置を用いてターゲットを検知するレーダ装置を提供する。
【解決手段】当該レーダ装置1にて使用される電波の波長をλとした場合に、送信アンテナ素子14a〜14eの素子間隔Dtを波長λの「0.9倍」に設定し、受信アンテナ素子15a〜15cの素子間隔Drを波長λの「1.5倍」に設定することで、送信アンテナ素子14a〜14eの素子間隔Dt及び受信アンテナ素子15a〜15cの素子間隔Drには「素子間隔Dr=素子間隔Dt×1.5」との関係を設定した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、グレーティングローブを抑圧可能なアレーアンテナ装置及びこのアレーアンテナ装置を用いてメインローブの走査範囲内に位置するターゲットを検知するレーダ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種のアレーアンテナ装置及びレーダ装置としては、例えば特許文献1に記載の技術が知られている。この特許文献1に記載の技術では、レーダ装置は、複数のアンテナ素子により構成した送信アレーアンテナと、この送信アレーアンテナに接続した送信処理部と、複数のアンテナ素子により構成した受信アレーアンテナと、この受信アレーアンテナに接続した受信処理部とを有して構成されるアレーアンテナ装置を備える。そして、このレーダ装置は、被グレーティング抑圧側である送信アレーアンテナのグレーティングローブの方位とグレーティング抑圧側である受信アレーアンテナのヌル点の方位とが一致する送受合成指向性をもって、メインローブの走査範囲内に位置するターゲットを検知する。なお、送受合成指向性とは、被グレーティング抑圧側の指向性及びグレーティング抑圧側の指向性が合成された指向性である。被グレーティングローブ抑圧側のグレーティングローブの方位とグレーティングローブ抑圧側のヌル点の方位とが一致する送受合成指向性となることから、被グレーティング抑圧側のグレーティングローブの方位における感度を抑制しつつ、メインローブの走査範囲内に位置するターゲットを検知することができるようになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第4147447号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、被グレーティング抑圧側は、単一のグレーティングローブのみを有するのではなく、複数のグレーティングローブを有しており、グレーティング抑圧側も、メインローブだけでなく、複数のグレーティングローブを有している。また、被グレーティング抑圧側のローブ間も、グレーティング抑圧側のローブ間も、それぞれ、同一の方位間隔である。なお、これら複数のグレーティングローブを、メインローブの方位から近い順に、1次のグレーティングローブ、2次のグレーティングローブ、・・・、N次のグレーティングローブとし、第1グレーティングローブ、第2グレーティングローブ、・・・、第Nグレーティングローブとも記載する。
【0005】
上記特許文献1に記載の技術では、被グレーティング抑圧側の第1グレーティングローブの方位は、グレーティング抑圧側のメインローブと第1グレーティングローブとの間にあるヌル点の方位と一致する。そのため、送受合成指向性において、被グレーティング抑圧側の第1グレーティングローブの方位の感度を抑制することが可能である。
【0006】
しかしながら、上記特許文献1に明文にて記載されていないが、グレーティング抑圧側のローブ間の方位間隔は被グレーティング抑圧側のローブ間の方位間隔の「2倍」である(特許文献1の図2参照)。そのため、上記特許文献1に記載の技術では、被グレーティング抑圧側の第2グレーティングローブの方位は、グレーティング抑圧側の第1グレーティングローブの方位と一致し、送受合成指向性において、被グレーティング抑圧側の第2グレーティングローブの方位の感度を抑制することができなくなってしまう。したがって、被グレーティング抑圧側の第2グレーティングローブの方位が可視領域に含まれると、ターゲットの誤検知を招くことが懸念される。
【0007】
こうした懸念を払拭するには、被グレーティング抑圧側の第2グレーティングローブの方位とグレーティング抑圧側の第1グレーティングローブの方位とが可視領域内で一致しないように、アンテナ素子の素子間隔を狭く設定することが考えられる。具体的には、可視領域を例えば「±90度」とすると、この可視領域内で互いのグレーティングローブの方位が一致しないようにするには、グレーティング抑圧側のアンテナ素子の素子間隔を、使用電波の波長λの「2分の1」以下に設定すればよい。
【0008】
しかしながら、グレーティング抑圧側のアンテナ素子の素子間隔をこのような狭い間隔に設定することは物理的に困難であり、その結果、グレーティングが発生しないように可視領域自体を狭くせざるを得なくなる。可視領域自体を狭くすると、ターゲットの検知範囲が狭くなってしまう。このように、上記特許文献1に記載の技術には、依然として、改善の余地が残されている。
【0009】
本発明は、上記実情に鑑みてなされたものであって、その目的は、可視領域の広域化を図りつつ、アンテナ素子の素子間隔を広くすることのできるアレーアンテナ装置及びこのアレーアンテナ装置を用いてターゲットを検知するレーダ装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
こうした目的を達成するため、請求項1に記載の発明では、アレーアンテナ装置は、送信アレーアンテナ及び受信アレーアンテナのうち、一方のグレーティングローブの方位と他方のヌル点の方位またはサイドローブの一部とが一致し、且つ、他方のグレーティングローブの方位と一方のヌル点の方位またはサイドローブの一部とが一致する送受合成指向性を有する構成とした。
【0011】
アレーアンテナ装置としての上記構成によれば、送信アレーアンテナのグレーティングローブは、受信アレーアンテナのヌル点またはサイドローブによって抑圧されるようになり、同様に、受信アレーアンテナのグレーティングローブは、送信アレーアンテナのヌル点またはサイドローブによって抑圧されるようになる。
【0012】
詳しくは後述するが、このことは、送信アレーアンテナ及び受信アレーアンテナのうち、一方のアレーアンテナの第2グレーティングローブの方位と他方のアレーアンテナの第1グレーティングローブの方位とが一致しないことを意味しており、被グレーティング抑圧側の第2グレーティングローブの方位とグレーティング抑圧側の第1グレーティングローブの方位とが一致する上記従来技術とは異なる。
【0013】
そしてこの差異により、上記構成による送受合成指向性は、上記従来技術と比較して、グレーティングが発生する方位がメインローブの方位からより離れるようになり、可視領域内でグレーティングが発生し難くなる。したがって、上記構成によれば、アンテナ素子の素子間隔を狭くすることなく可視領域の広域化を図ることができるようになる。
【0014】
請求項2に記載の発明によれば、「Dt<Dr<Dt×2」に設定されていることから、詳しくは後述するが、一方の第1グレーティングローブの方位は他方の第1グレーティングローブ及び第2グレーティングローブの方位間となる。ここで、他方のアレーアンテナは、第1グレーティングローブ及び第2グレーティングローブの方位間に、複数のサイドローブ及び複数のヌル点を有している。そのため、一方の第1グレーティングローブは、他方のヌル点またはサイドローブによって抑圧されるようになる。同様に、一方のアレーアンテナは、メインローブと第1グレーティングローブの方位間に、複数のサイドローブ及び複数のヌル点を有している。そのため、他方の第1グレーティングローブは、一方のヌル点またはサイドローブによって抑圧されるようになる。さらに同様に、一方のアレーアンテナは、第1グレーティングローブを基準としてメインローブから離れる方位にも、複数のサイドローブ及び複数のヌル点を有している。そのため、他方の第2グレーティングローブは、一方のヌル点またはサイドローブによって抑圧されるようになる。
【0015】
また、請求項2に記載の発明によれば、「Dt<λ/sinθ」に設定されていることから、詳しくは後述するが、走査範囲を「±θ」とした場合にも、この可視領域内にグレーティングを発生させないようにすることができるようになる。
【0016】
請求項3に記載の発明によれば、走査範囲を「±90度」とした場合に、素子間隔Dt及び素子間隔Drは、「Dr=Dt×1.5」、且つ、「Dt<λ」に設定されていることから、詳しくは後述するが、一方の第1グレーティングローブの方位は、他方の第1グレーティングローブの方位と第2グレーティングローブの方位との中央の方位に一致することになる。ここで、他方のアレーアンテナは、第1グレーティングローブ及び第2グレーティングローブの方位間に複数のサイドローブを有しており、これら複数のサイドローブのうち最もピークの低いサイドローブを上記中央の方位に有している。そのため、一方の第1グレーティングローブは、他方の最もピークの低いサイドローブによって抑圧されるようになる。したがって、上記請求項3の発明によれば、抑圧量を最大にすることができるようになる。
【0017】
なお、請求項1〜3のいずれかに記載の構成において、請求項4に記載の発明のように、前記受信アレーアンテナの少なくとも一部の素子の位相を制御するための移相器をさらに備え、前記受信側指向性制御部は、前記移相器を用いて前記受信アレーアンテナの指向性を制御するとよい。
【0018】
あるいは、 請求項1〜3のいずれかに記載の構成において、請求項5に記載の発明のように、前記受信アレーアンテナの少なくとも一部の素子の位相を制御するための切替スイッチをさらに備え、前記受信側指向性制御部は、前記切替スイッチを用いて前記受信アレーアンテナの指向性を制御するとよい。
【0019】
一方、上記目的を達成するため、請求項6に記載の発明では、上記請求項1〜5のいずれか一項に記載のアレーアンテナ装置と、送信アレーアンテナから送信された電波が対象物によって反射され、受信アレーアンテナによって受信された受信信号に基づいて、対象物を検知する対象物検知部とを備えることとした。これにより、レーダ装置は、アレーアンテナ装置を用いて、対象物(ターゲット)を検知することができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明に係るアレーアンテナ装置を含むレーダ装置の一実施の形態について、その全体構成を示すブロック図である。
【図2】アレーファクタAF(u)の一例を示す図である。
【図3】メインローブの方位を「45度」とした場合におけるアレーファクタAF(θ)の一例を示す図である。
【図4】グレーティングローブの発生原理の説明において、送信アレーアンテナATの指向性の一例及び受信アレーアンテナARの指向性の一例をそれぞれ示す図である。
【図5】グレーティングローブの抑圧手法の説明において、送信アレーアンテナATの指向性及び受信アレーアンテナARの指向性を合成した送受合成指向性の一例を示す図である。
【図6】本実施の形態において、送信アレーアンテナ14の指向性の一例及び受信アレーアンテナ15の指向性の一例を破線及び実線にてそれぞれ示す図である。
【図7】本実施の形態において、送信アレーアンテナ14の指向性及び受信アレーアンテナ15の指向性が合成された送受合成指向性の一例を示す図である。
【図8】本実施の形態の変形例について、その全体構成を示すブロック図である。
【図9】本実施の形態の他の変形例について、その全体構成を示すブロック図である。
【図10】本実施の形態のその他の変形例について、その全体構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明に係るアレーアンテナ装置を含むレーダ装置の一実施の形態について、図1〜図7を参照して説明する。図1は、本実施の形態のアレーアンテナ装置を含むレーダ装置1について、その全体構成を示すブロック図である。はじめに、この図1を参照して、レーダ装置1の構成及び機能について説明する。
【0022】
図1に示されるように、レーダ装置1は、マイクロコンピュータ(以下、マイコンと記載)10と、発振器11と、電力分配器12と、送信側移相器13と、送信アレーアンテナ14と、受信アレーアンテナ15と、受信側移相器16と、混合器(ミキサ)17と、A/D変換器18とを備えて構成されている。
【0023】
発振器11の前段にはマイコン10が接続されており、発振器11の後段には電力分配器12が接続されている。発振器11は、マイコン10によって指定される周波数帯(例えばミリ波帯)で発振するとともに三角波状に変化する高周波信号を生成し、その生成した高周波信号を電力分配器12に出力する。
【0024】
電力分配器12の後段には、送信側移相器13を介して送信アレーアンテナ14が接続されている。また、電力分配器12には混合器17が接続されている。電力分配器12は、発振器11から入力された高周波信号を送信信号S及びローカル信号Lに電力分配し、その送信信号Sを送信側移相器13を介して送信アレーアンテナ14に出力するとともに、そのローカル信号Lを混合器17に出力する。
【0025】
送信側移相器13は、送信アレーアンテナ14と電力分配器12との間に介在しているとともにマイコン10に接続されている。ここで、送信アレーアンテナ14は、図示しない平面上(アンテナ面上)に一定間隔にて配列された複数(例えば「5個」)の送信アンテナ素子14a〜14eを有して構成されている。送信側移相器13は、マイコン10の指示に従って、電力分配器12から送信アンテナ素子14a〜14eに入力される送信信号Sの位相量をそれぞれ設定する。
【0026】
送信アレーアンテナ14は、電力分配器12から送信側移相器13を介して入力される送信信号S(電気信号)を送信ビーム(電波)として、各送信アンテナ素子14a〜14eから外部に向けて放射する。この送信ビームの方位は、各送信アンテナ素子14a〜14eに入力される送信信号Sの位相量によって決定される。なお、この送信ビームの方位は送信アレーアンテナ14のアンテナ面を基準としており、詳しくは、アンテナ面に垂直な方位を「0度」とし、平行な方位を「±90度」としている。送信アレーアンテナ14は、送信アンテナ素子14a〜14e毎に送信信号の位相が制御されることにより、所望の方位範囲に送信ビームを放射することができる。すなわち、送信アレーアンテナ14はその指向性が可変である。
【0027】
一方、受信アレーアンテナ15は、図示しない平面上に一定間隔にて配列された複数(例えば「3個」)の受信アンテナ素子15a〜15cを有して構成されており、これら受信アンテナ素子15a〜15cは、受信側移相器16を介して混合器17に接続されている。ここで、上記送信アレーアンテナ14から放射された送信ビーム(電波)がターゲットによって反射されると、受信アレーアンテナ15の各受信アンテナ素子15a〜15cはその反射ビーム(電波)を受信し、その受信した反射ビームを受信信号(電気信号)Rとして受信側移相器16に出力する。受信側移相器16は、マイコン10の指示に従って、受信アンテナ素子15a〜15cから入力された受信信号Rの位相量を設定した上で混合器17へ出力する。
【0028】
混合器17は、その前段に接続された受信側移相器16から受信信号Rが入力され、その後段にはA/D変換器18を介してマイコン10が接続されている。また、混合器17は、受信側移相器16から入力された受信信号Rと電力分配器12から入力されたローカル信号Lとを混合(同期検波)することでベースバンド信号を取り出し、その取り出したベースバンド信号をA/D変換器18によってデジタル信号に変換した上で、マイコン10に出力する。
【0029】
受信アレーアンテナ15への上記反射ビームの入射方位は、各受信アンテナ素子15a〜15cから出力される受信信号Rの位相量(差)によって決定される。なお、この反射ビームの入射方位は受信アレーアンテナ15のアンテナ面を基準としており、詳しくは、アンテナ面に垂直な入射方向を「0度」とし、平行な入射方向を「±90度」としている。受信アレーアンテナ15は、受信アンテナ素子15a〜15c毎に受信信号Rの位相が制御されることにより、所望の方位範囲から反射ビームを受信することができる。
【0030】
マイコン10は、CPU、ROM、RAM、バックアップRAM、I/O等(いずれも図示せず)よりなるマイクロコンピュータを主体として構成されるとともに、A/D変換器18を介して混合器17から取り込んだベースバンド信号を高速フーリエ変換(FFT)処理を実行するための演算処理装置(例えば、DSP(Digital SignalProcessor))を備え、ROMに記憶された各種制御プログラムを実行することで各種の処理を実行するものである。
【0031】
マイコン10は、まず、「−90度」から「+90度」までのターゲットの検知範囲内でメインローブの放射角度を走査しつつ、送信アレーアンテナ14から送信波を放射する(したがって、ターゲットの検知範囲が特許請求の範囲に記載の走査範囲に相当する)。この検知範囲内にターゲットが位置すると、送信アレーアンテナ14から放射された送信波が反射され、その反射波が受信アレーアンテナ15にて受信される。マイコン10は、受信アレーアンテナ15にて受信した受信信号Rの強度が判定閾値以上であるか否かを判定し、その強度が判定閾値以上である旨判定した場合、受信信号Rの位相差を用いてターゲットの方位を検知する。このように、レーダ装置1は、いわゆる電子スキャン方式を採用している。なお、このマイコン10が特許請求の範囲に記載の対象物検知部に相当する。また、本実施の形態では、送信アレーアンテナ14のアンテナ面と受信アレーアンテナ15のアンテナ面は平行とされており、ターゲットの検知範囲を「−90度」から「+90度」までとしている。
【0032】
以下、グレーティングローブの発生原理について説明する。アレーアンテナの伝達関数であるアレーファクタAFは、各波源の振幅An、アンテナ素子の素子間隔d、メインローブの方位θ、及びアンテナ素子数Nを用いて、下式(1)にて表される。
【0033】
【数1】

なお、アレーアンテナは、メインローブ、グレーティングローブ、サイドローブ、ヌル点等を周期的に有する。このうち、グレーティングローブとは、メインローブとほぼ同じピークを有するローブであり、サイドローブとは、メインローブ及びグレーティングローブと比較して低いピークを有するローブである。これら各ローブは、アンテナ素子の素子間隔によって定まる一定の幅を有しており、本実施の形態では、ピークを含みそのピークから例えば「10dB」低い方位範囲をメインローブとし、ピークを含みそのピークから例えば「10dB」低い方位範囲をグレーティングローブとし、ピークを含みそのピークから例えば「5dB」低い方位範囲をサイドローブとする。ただし、「10dB」や「5dB」等に限らず、各ローブが互いに重なり合わず識別可能な方位範囲とすればよい。また、ヌル点とは、ゲインの急激な落ち込みが生じる方位であり、ローブ間に生じる。
【0034】
ここで、下式(2)に示す新たな変数uを定義する。また、説明の簡略化のため、Anを「1」とすると、上式(1)は下式(3)として表される。
【0035】
【数2】

図2に、素子間隔dを例えば波長λと同一に設定するとともにアンテナ素子の素子数Nを「5」に設定した場合のアレーファクタAF(u)を示す。
【0036】
この図2に示されるように、アレーファクタAF(u)は、メインローブML、第1グレーティングローブGL1、及び第2グレーティングローブGL2を周期「2π」にて有する。また、上式(3)には指数関数が用いられている。したがって、図2及び上式(3)から、アレーファクタAF(u)は変数uに対して周期「2π」の関数となっていることが分かる。
【0037】
また、メインローブMLの方位θを「π/4(=45度)」とした場合を考える。このとき、変数uの取り得る範囲は下式(4)にて表される。このような変数uの範囲を可視領域という。また、この可視領域は、図2中に矢印にて示す範囲である。
【0038】
【数3】

上式(2)から、変数uの取り得る範囲(すなわち可視領域)は素子間隔dが大きいほど広くなることが分かる。一方、グレーティングローブの方位θGLは、上式(2)の右辺が「±2πm(m=1,2,3,・・・)」となる方位であり、下式(5)が成立する方位である。従って、素子間隔dが大きいほどグレーティングローブが可視領域に入り易くなることが分かる。なお、下式(6)は、下式(5)を方位θについて解いた式である。ちなみに、メインローブの方位θMLは、「m=0」とした下式(5)が成立する方位である。
【0039】
【数4】

図3に、図2の横軸を方位θに変えたアレーファクタAF(θ)を示す。なお、図3では、メインローブの方位θを「π/4(=45度)」に設定している。
【0040】
この図3に示されるように、アレーファクタAF(θ)は、メインローブMLの方位θMLを「45度」としたとき、第1グレーティングローブを方位θGL1(=「−17度」)に有する。
【0041】
以下、可視領域内においてグレーティングが発生することを抑制する抑制方法について、送信アレーアンテナをAT及び受信アレーアンテナをARとして説明する。
【0042】
まず、特許文献1に記載の従来技術に相当する技術として、送信アレーアンテナATのローブ間の方位間隔を受信アレーアンテナARのローブ間の方位間隔の2倍とする場合について説明する。
【0043】
具合的には、送信アレーアンテナAT及び受信アレーアンテナARにて使用される電波の波長をλとした場合に、例えば、送信アレーアンテナATを構成する送信アンテナ素子の素子間隔Dtを「波長λの2倍と同一」に設定し、且つ、受信アレーアンテナARを構成する受信アンテナ素子の素子間隔Drを「波長λと同一」に設定したとする。換言すれば、送信アンテナ素子の素子間隔Dt及び受信アンテナ素子の素子間隔Drに「Dt=Dr×2.0」との関係を設定したとする。
【0044】
このように設定すると、送信アレーアンテナATのメインローブT:MLを「方位θ=45度(=ASIN(1/√2))」に有するとした場合、上式(6)から、第1グレーティングローブT:GL1を「方位θTGL1=12度(=ASIN(−1/4+1/√2))」に有し、第2グレーティングローブT:GL2を「方位θTGL2=−17度(=ASIN(−1+1/√2))」に有することになる。また、受信アレーアンテナARのメインローブR:MLを「方位θ=45度(=ASIN(1/√2))」に有するとした場合、上式(6)から、第1グレーティングローブR:GL1を「方位θRGL1=−17度(=ASIN(−1+1/√2))」に有することになる。したがって、送信アンテナ素子の素子間隔Dt及び受信アンテナ素子の素子間隔Drに「Dt=Dr×2.0」との関係を設定することで、受信アレーアンテナARのローブ間の方位間隔は、確かに、送信アレーアンテナATのローブ間の方位間隔の「2倍」となることが分かる。なお、「ASIN」は正弦関数の逆関数を示す。
【0045】
この従来技術に相当する技術では、「−17度」において、送信アレーアンテナATの第2グレーティングローブの方位θTGL2が、受信アレーアンテナARの第1グレーティングローブθRGL1と一致するため、可視領域(−90度〜90度)においてグレーティングが発生する。すなわち、送受合成指向性において、送信アレーアンテナATの第2グレーティングローブの方位θTGL2の感度を抑圧することができなくなり、ターゲットの誤検知を招いてしまう。
【0046】
そこで、本抑制方法では、送信アレーアンテナATのローブ間の方位間隔を受信アレーアンテナARのローブ間の方位間隔の2倍とならないように設定する。
【0047】
具体的には、送信アレーアンテナAT及び受信アレーアンテナARにて使用される電波の波長をλとした場合に、例えば、送信アレーアンテナATを構成する送信アンテナ素子の素子間隔Dtを「波長λと同一」に設定し、受信アレーアンテナARを構成する受信アンテナ素子の素子間隔Drを「波長λの1.5倍と同一」に設定する。換言すれば、送信アンテナ素子の素子間隔Dt及び受信アンテナ素子の素子間隔Drに「Dr=Dt×1.5」との関係を設定したとする。
【0048】
このように設定すると、送信アレーアンテナATのメインローブT:MLを「方位θ=45度(=ASIN(1/√2))」に有する場合、上式(6)から、第1グレーティングローブT:GL1を「方位θTGL1=−17度(=ASIN(−1+1/√2))」に有することになる。また、受信アレーアンテナARのメインローブR:MLを「方位θ=45度(=ASIN(1/√2))」に有する場合、上式(6)から、第1グレーティングローブR:GL1を「方位θRGL1=2度(=ASIN(−2/3+1/√2))」、第2グレーティングローブR:GL2を「方位θRGL2=−39度(=ASIN(−4/3+1/√2))」に有することになる。ちなみに、図4は、送信アレーアンテナATの指向性及び受信アレーアンテナARの指向性を破線及び実線にてそれぞれ示したものである。
【0049】
したがって、送信アンテナ素子の素子間隔Dt及び受信アンテナ素子の素子間隔Drに「Dt=Dr×1.5」との関係を設定することで、送信アレーアンテナATのローブ間の方位間隔は、確かに、受信アレーアンテナARのローブ間の方位間隔の「1.5倍」となる。さらに、送信アレーアンテナATの第1グレーティングローブT:GL1の方位θTGL1は、受信アレーアンテナARの第1グレーティングローブR:GL1の方位θRGL1の方位と第2グレーティングローブR:GL2の方位θRGL2の方位との中央の方位に一致することが分かる。
【0050】
また、図4に実線にて示されるように、受信アレーアンテナARは、第1グレーティングローブR:GL1及び第2グレーティングローブR:GL2の方位間に「3つ」のサイドローブ及び「4つ」のヌル点を有している。受信アレーアンテナARは、これら「3つ」のサイドローブのうち最もピークの低いサイドローブを上記中央の方位に有している。そのため、送信アレーアンテナATの第1グレーティングローブT:GL1は、受信アレーアンテナARの最もピークの低いサイドローブによって抑圧されるようになる。したがって、送信アンテナ素子の素子間隔Dt及び受信アンテナ素子の素子間隔Drに「Dt=Dr×1.5」との関係を設定することで、送信アレーアンテナATの第1グレーティングローブの抑圧量を最大にすることができるようになる。
【0051】
また、図4に破線にて示されるように、送信アレーアンテナATは、メインローブT:ML及び第1グレーティングローブT:GL1の方位間に「3つ」のサイドローブ及び「4つ」のヌル点を有している。そのため、受信アレーアンテナARの第1グレーティングローブR:GL1は、送信アレーアンテナATのサイドローブ及びヌル点によって抑圧されるようになる。
【0052】
同様に、送信アレーアンテナATは、第1グレーティングローブT:GL1の方位を基準として、メインローブT:MLから離れる方位にも、「3つ」のサイドローブ及び「3つ」のヌル点を有している。そのため、受信アレーアンテナARの第2グレーティングローブR:GL2は、送信アレーアンテナATのサイドローブ及びヌル点によって抑圧されるようになる。
【0053】
したがって、送信アンテナ素子の素子間隔Dt及び受信アンテナ素子の素子間隔Drに「Dt=Dr×1.5」との関係を設定することで、送信アレーアンテナATの第1グレーティングローブT:GL1の抑圧量を最大にすることができるようになる。また、送信アレーアンテナATのメインローブT:ML及び第1グレーティングローブT:GL1間にあるサイドローブ及びヌル点によって、受信アレーアンテナARの第1グレーティングローブR:GL1を抑圧することができるようになる。またさらに、送信アレーアンテナATの第1グレーティングローブT:GL1を基準としてメインローブT:MLから離れる方位にあるサイドローブ及びヌル点によって、受信アレーアンテナARの第2グレーティングローブR:GL2を抑圧することができるようになる。
【0054】
なお、図5に、送信アレーアンテナATの指向性及び受信アレーアンテナARの指向性が合成された送受合成指向性を示す。この図5に示されるように、送受合成指向性は、送信アレーアンテナATの第1グレーティングローブT:GL1の方位θTGL1と受信アレーアンテナARのヌル点の方位またはサイドローブの方位とが一致し、且つ、受信アレーアンテナARの第1グレーティングローブR:GL1の方位θRGL1及び第2グレーティングローブR:GL2の方位θRGL2と送信アレーアンテナATのヌル点の方位またはサイドローブの方位とが一致する送受合成指向性となっている。
【0055】
換言すれば、送信アレーアンテナATの第1グレーティングローブT:GL1は、受信アレーアンテナARのヌル点またはサイドローブによって「10dB」程度抑圧されており、同様に、受信アレーアンテナARの第1グレーティングローブR:GL1及び第2グレーティングローブR:GL2は、送信アレーアンテナATのヌル点またはサイドローブによって「10dB」程度抑圧されている。
【0056】
ただし、送信アレーアンテナATの素子間隔Dt及び受信アレーアンテナARの素子間隔Drを上述のように「Dr=Dt×1.5」に設定すると、受信アレーアンテナARの図示しない第3グレーティングローブR:GL3の方位と送信アレーアンテナ14の図示しない第2グレーティングローブT:GL2の方位とが一致する。そのため、送受合成指向性においてグレーティングローブが発生する。
【0057】
このグレーティングローブの発生した方位が可視領域内に入ると、ターゲットを誤検知してしまう恐れがある。可視領域内にグレーティングローブが生じることを回避するには、送信アレーアンテナATの素子間隔Dtを、送信アレーアンテナ14の第2グレーティングローブT:GL2が可視領域に入らない間隔とする必要がある。具体的には、下式(7)を満足するように、送信アレーアンテナATの素子間隔Dtを設定する必要がある。ちなみに、上式(7)は、上式(2)及び上式(5)において、メインローブの方位を可視領域の一方の端の方位、すなわち「方位θ=90度」とし、送信アレーアンテナ14の第2グレーティングローブT:GL2が可視領域の他方の端に生じる条件、すなわち、「m=2」、「方位θ=−90度」を代入することで得られる。
【0058】
【数5】

上式(7)から、送信アレーアンテナATの素子間隔Dtを「Dt<λ」と設定すれば、可視領域内でグレーティングが発生することを回避することができるようになる。
【0059】
なお、送信アンテナ素子の素子間隔Dt及び受信アンテナ素子の素子間隔Drには「Dr=Dt×1.5」との関係があるため、送信アレーアンテナATの第1グレーティングローブT:GL1が受信アレーアンテナARのサイドローブによって抑圧される抑圧量は最大である。
【0060】
しかしながら、「Dr=Dt×1.5」との関係に限らず、「Dt<Dr<Dt×2」の関係を設定してもよい。これによっても、素子間隔Dtに設定された送信アレーアンテナATの第1グレーティングローブT:GL1の方位は、素子間隔Drに設定された受信アレーアンテナARの第1グレーティングローブR:GL1及び第2グレーティングローブR:GL2の方位間となるため、送信アレーアンテナATの第1グレーティングローブT:GL1を、受信アレーアンテナARのヌル点またはサイドローブによって抑圧することができる。
【0061】
以上説明したグレーティングローブの抑圧手法を踏まえ、図6及び図7を参照して、本実施の形態についてさらに説明する。なお、図6は、送信アレーアンテナ14の指向性及び受信アレーアンテナ15の指向性を実線及び破線にてそれぞれ示す図であり、図7は、これら送信アレーアンテナ14の指向性及び受信アレーアンテナ15の指向性が合成された送受合成指向性を示す図である。
【0062】
本実施の形態では、送信アンテナ素子14a〜14eの素子間隔Dt及び受信アンテナ素子15a〜15cの素子間隔Drには「素子間隔Dr=素子間隔Dt×1.5」との関係を設定した。
【0063】
これにより、図6に示されるように、送信アレーアンテナ14の第1グレーティングローブT:GL1の方位θTGL1は、受信アレーアンテナ15の第1グレーティングローブR:GL1の方位θRGL1及び第2グレーティングローブR:GL2の方位θRGL2との間の方位となる。
【0064】
すなわち、送信アレーアンテナ14の第1グレーティングローブT:GL1の方位θTGL1と受信アレーアンテナARのヌル点の方位またはサイドローブの方位とが一致し、且つ、受信アレーアンテナ15の第1グレーティングローブR:GL1の方位θRGL1及び第2グレーティングローブR:GL2の方位θRGL2と送信アレーアンテナATのヌル点の方位またはサイドローブの方位とが一致するようになる。
【0065】
そして、送受合成指向性では、図7に示されるように、送信アレーアンテナ14の第1グレーティングローブT:GL1が受信アレーアンテナARのヌル点またはサイドローブによって「10dB」程度抑圧され、同様に、受信アレーアンテナ15の第1グレーティングローブR:GL1及び第2グレーティングローブR:GL2は、送信アレーアンテナ14のヌル点またはサイドローブによって「10dB」程度抑圧されるようになる。
【0066】
また、本実施の形態では、当該レーダ装置1にて使用される電波の波長をλとした場合に、送信アンテナ素子14a〜14eの素子間隔Dtを波長λの「0.9倍」に設定し、受信アンテナ素子15a〜15cの素子間隔Drを波長λの「1.35倍」に設定した。これにより、上述した「素子間隔Dt<波長λ」を満足するため、可視領域(±90度)内でグレーティングが発生することが回避されるようになる。
【0067】
なお、背景技術の欄に記載した特許文献1に記載の技術では、グレーティングが可視領域(±90度)内で発生しないようにするには、素子間隔Dtを波長λの「2分の1」以下に設定しなければならなかったが、本実施の形態では、素子間隔Dtが波長λより小さければ、素子間隔Dtを2分の1よりも広く設定することができるので、送信アレーアンテナ15をより容易に構成することができるようになる。
【0068】
ちなみに、レーダ装置1の送信側移相器13及び受信側移相器16が特許請求の範囲に記載の送信側指向性制御部及び受信側指向性制御部にそれぞれ相当する。
【0069】
なお、本発明に係るレーダ装置1は、上記実施の形態にて例示した構成に限定されるものではなく、発明の趣旨を逸脱しない範囲において、種々に変形して実施することが可能である。すなわち、上記実施の形態を適宜変更した例えば次の形態として実施することもできる。
【0070】
上記実施の形態では、送信アレーアンテナ14は、「5個」の送信アンテナ素子14a〜14eを有して構成されていたが、送信アンテナ素子の数はこれに限らない。送信アンテナ素子の数については、必要に応じて増減してよい。同様に、上記実施の形態では、受信アレーアンテナ15は、「3個」の受信アンテナ素子15a〜15cを有して構成されていたが、受信アンテナ素子の数はこれに限らない。受信アンテナ素子の数については、必要に応じて増減してよい。
【0071】
上記実施の形態では、送信側移相器13は、送信アンテナ素子14a〜14eに入力される複数の送信信号Sの位相量をそれぞれ設定することで送信アレーアンテナ14の指向性を設定していたが、送信アレーアンテナ14を構成する複数の送信アンテナ素子14a〜14eすべての位相量を設定しなくてもよい。例えば、図1に対応する図として図8に示すレーダ装置1aのように、送信アンテナ素子14a〜14eのうち、送信アンテナ素子14aの位相量を基準として、他の送信アンテナ素子14b〜14eの位相量を設定してもよい。ちなみに、この場合、送信アンテナ素子14aの位相を制御する必要がないことから、送信側移相器13aは送信アンテナ素子14aに対し移相器を有していない。このように、複数の送信アンテナ素子14a〜14eの少なくとも一部の素子の位相を制御することでも、送信アレーアンテナ14の指向性を制御することはできる。
【0072】
上記実施の形態では、受信側移相器16は、受信アンテナ素子15a〜15cに入力される複数の受信信号Rの位相量をそれぞれ設定することで受信アレーアンテナ15の指向性を設定していたが、受信アレーアンテナ15を構成する複数の受信アンテナ素子15a〜15cすべての位相量を設定しなくてもよい。例えば、図1に対応する図として図8に示すレーダ装置1aのように、受信アンテナ素子15a〜15cのうち、受信アンテナ素子15aの位相量を基準として、他の受信アンテナ素子15b及び15cの位相量を設定してもよい。ちなみに、この場合、受信アンテナ素子15aの位相を制御する必要がないことから、受信側移相器16aは受信アンテナ素子15aに対し移相器を有していない。このように、複数の受信アンテナ素子15a〜15cの少なくとも一部の素子の位相を制御することでも、受信アレーアンテナ15の指向性を制御することはできる。
【0073】
また、受信アレーアンテナ15の指向性を制御するにあたり、受信側移相器16aを用いることにも限らない。他に例えば、図1及び図8に対応する図として、図9に示すレーダ装置1bのように、受信アレーアンテナ15の指向性を制御するにあたり、切替スイッチ16bを用いて周知のDBF(Digital BeamForming)等のデジタル処理を行ってもよい。これによっても、受信アレーアンテナ15の指向性を制御することができる。
【0074】
さらに、送信アレーアンテナ14の指向性を制御するにあたり、送信側移相器13aを用いることにも限らない。他に例えば、図1、図8、及び図9に対応する図として、図10に示すレーダ装置1cのように、送信アレーアンテナ14の指向性を制御するにあたり、周知のバトラーマトリクス等の位相回路網131及び切替スイッチ132を用いてもよい。詳しくは、送信アレーアンテナ14が5種類の指向性を有するように位相回路網131を構成し、その5種類の指向性を切替スイッチ132にて切り替える。さらに、受信アレーアンテナ15が送信アレーアンテナ14の5種類の指向性に対応する指向性を有するように、切替スイッチ16bを構成してもよい。これによっても、送信アレーアンテナ14の指向性を制御することができる。
【0075】
上記実施の形態では、送信アレーアンテナ14は、複数の送信アンテナ素子が平面上に配列された平面アンテナとして構成されていたが、これに限らない。送信アレーアンテナ14は、アレーアンテナであればよく、複数の送信アンテナ素子が平面上に配列されていなくてもよい。同様に、上記実施の形態では、受信アレーアンテナ15は、複数の受信アンテナ素子が平面上に配列された平面アンテナとして構成されていたが、これに限らない。受信アレーアンテナ15は、アレーアンテナであればよく、複数の受信アンテナ素子が平面上に配列されていなくてもよい。
【0076】
上記実施の形態では、送信アンテナ素子14a〜14eの素子間隔Dt及び受信アンテナ素子15a〜15cの素子間隔Drには「素子間隔Dr=素子間隔Dt×1.5」との関係を設定したが、これに限らず、「素子間隔Dt<素子間隔Dr<素子間隔Dt×2」との関係が設定されていればよい。
【0077】
上実施の形態では、当該レーダ装置1にて使用される電波の波長をλとした場合に、送信アンテナ素子14a〜14eの素子間隔Dtが波長λの「0.9倍」に設定されていたが、これに限らず、素子間隔Dtを波長λの「0.99倍」や「0.5倍」に設定してもよい。要は、「素子間隔Dt<波長λ」に設定されていればよい。
【0078】
上記実施の形態では、送信アレーアンテナ14及び受信アレーアンテナ15の走査範囲を「±90度」と設定していたため、「素子間隔Dt<波長λ」に設定されていたが、走査範囲を「±90度」に設定しなくてもよい。送信アレーアンテナ14及び受信アレーアンテナ15の走査範囲を「±θ」とした場合、「素子間隔Dt<波長λ/sinθ」に設定すればよい。
【0079】
上記実施の形態では、便宜上、送信アレーアンテナ14から放射されるメインローブの方位を「45度」に固定して説明したが、「−90度」から「90度」まで、送信アレーアンテナ14のメインローブを走査することは可能であり、送信アレーアンテナ14のメインローブの方位に、受信アレーアンテナ15のヌル点及びサイドローブの方位を追従させることが可能である。
【符号の説明】
【0080】
1…レーダ装置、10…マイクロコンピュータ(対象物検知部)、11…発振器、12…電力分配器、13、13a…送信側移相器(送信側指向性制御部、指向性制御部)、14…送信アレーアンテナ、14a〜14e…送信アンテナ素子、15…受信アレーアンテナ、15a〜15c…受信アンテナ素子、16、16a…受信側移相器(受信側指向性制御部、指向性制御部)、16b…切替スイッチ、17…混合器、18…A/D変換器、131…移相回路網、132…切替スイッチ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の送信アンテナ素子からなる送信アレーアンテナと、
これら複数の送信アンテナ素子の少なくとも一部の素子の位相を制御することにより、前記送信アレーアンテナの指向性を制御する送信側指向性制御部と、
複数の受信アンテナ素子からなる受信アレーアンテナと、
これら複数の受信アンテナ素子の少なくとも一部の素子の位相を制御することにより、前記受信アレーアンテナの指向性を制御する受信側指向性制御部とを備えるアレーアンテナ装置であって、
前記送信アレーアンテナ及び前記受信アレーアンテナのうち、一方のグレーティングローブの方位と他方のヌル点の方位またはサイドローブの一部とが一致し、且つ、他方のグレーティングローブの方位と一方のヌル点の方位またはサイドローブの一部とが一致する送受合成指向性を有し、この送受合成指向性にて走査範囲を走査することを特徴とするアレーアンテナ装置。
【請求項2】
請求項1に記載のアレーアンテナ装置において、
前記複数の送信アンテナ素子及び前記複数の受信アンテナ素子のうち、一方の素子間隔Dt及び他方の素子間隔Drは、当該アレーアンテナ装置にて使用する電波の波長をλとし、前記送信アレーアンテナ及び前記受信アレーアンテナの前記走査範囲を「±θ」とした場合に、「Dt<Dr<Dt×2」、且つ、「Dt<λ/sinθ」に設定されていることを特徴とするアレーアンテナ装置。
【請求項3】
請求項2に記載のアレーアンテナ装置において、
前記走査範囲を「±90度」とした場合に、前記素子間隔Dt及び前記素子間隔Drは、「Dr=Dt×1.5」、且つ、「Dt<λ」に設定されていることを特徴とするアレーアンテナ装置。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか一項に記載のアレーアンテナ装置において、
前記受信アレーアンテナの少なくとも一部の素子の位相を制御するための移相器をさらに備え、
前記受信側指向性制御部は、前記移相器を用いて前記受信アレーアンテナの指向性を制御することを特徴とするアレーアンテナ装置。
【請求項5】
請求項1〜3のいずれか一項に記載のアレーアンテナ装置において、
前記受信アレーアンテナの少なくとも一部の素子の位相を制御するための切替スイッチをさらに備え、
前記受信側指向性制御部は、前記切替スイッチを用いて前記受信アレーアンテナの指向性を制御することを特徴とするアレーアンテナ装置。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか一項に記載のアレーアンテナ装置と、
前記送信アレーアンテナから送信された電波が対象物によって反射され、前記受信アレーアンテナによって受信された受信信号に基づいて、対象物を検知する対象物検知部とを備えることを特徴とするレーダ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−64584(P2011−64584A)
【公開日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−215751(P2009−215751)
【出願日】平成21年9月17日(2009.9.17)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】