説明

アンサマイシン含有組成物

油層にアンサマイシン及び2重量%未満のオレイン酸を含み、アンサマイシンはゲルダナマイシン、17−アミノゲルダナマイシン、17−アリアラミノ−17−デメトキシ−ゲルダナマイシン、下記構造を有する化合物(563)、化合物(237)、又は前述のアンサマイシンの任意の塩である、水相及び油相を含む医薬組成物を提供する。


化合物563 化合物237

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願)
本発明は、2005年12月1日付け米国仮出願第60/742093号の優先権を主張し、これは参照により全体(図面を含む)を本願明細書に取り入れるものとする。本願明細書はまた米国出願明細第2005/0176695号、第20060014730号、第2006/0067953号及び第2006/0148776号、並びに国際特許出願第2003/026571号、2003/086381号及び2004/082676号にも関連し、これらの全ては参照により全体を本願明細書に取り入れるものとする。
【0002】
(技術分野)
本発明は、一般に、医薬組成物及びその調製方法及び使用方法に関する。具体的には、本発明は、アンサマイシンを含有する組成物に関する(例えば、17−アリルアミノ−17−デメトキシ−ゲルダナマイシン(17−AAG))。
【背景技術】
【0003】
17−アリルアミノ−ゲルダナマイシン(17−AAG)は、ゲルダナマイシン(GDM)の合成類似化合物である。両分子とも、アンサマイシン類として知られる抗生物質分子の広い分類に属する。GDMは、最初に微生物のStreptomyces hygroscopicusから分離され、当初は、特定のキナーゼ類の強力阻害剤として同定され、後に、キナーゼ分解を刺激することにより、具体的には、熱ショックタンパク90(HSP90)等の「分子シャペロン」を標的にすることによって作用することが示された。その後、種々の他のアンサマイシンが、多かれ少なかれ、こうした活性を実証し、17−AAGが、なかでも最も見込みがあり、現在、集中的な臨床研究のテーマが、国立がん研究所(NCI)によって行われている(非特許文献1−2)。
【0004】
HSP90は、シグナル伝達、細胞周期調節、及び転写制御に関与する主要タンパク等の広範囲なタンパクのフォールディング、活性化、及び構築に関与する遍在性のシャペロンタンパクである。研究者は、HSP90シャペロンタンパクが、例えば、Raf−1、EGFR、v−Src族キナーゼ、Cdk4、及びErbB−2のようなステロイドホルモン受容体やプロテインキナーゼのような重要なシグナルタンパクと関連することを報告している(非特許文献3−5)。さらに、HSP70、p60/Hop/Stil、Hip、Bagl、HSP40/Hdj2/Hsjl、イムノフィリン、p23、及びp50等、特定のコシャペロンがその機能においてHSP90を補助し得ることを示唆する研究がある(非特許文献6)。
【0005】
アンサマイシン抗生物質、例えば、ハービマイシンA(HA)、GDM、及び17−AAGは、HSP90のN末端ATP結合ポケットの堅固な結合にり抗がん性効果を引き起こすと考えられている(非特許文献7)。このポケットは高度に保存され、DNAギラーゼのATP結合部位に弱い相同性を有する(非特許文献7及び8)。さらに、ATPとADPは、両方とも、低い親和性でこのポケットを結合し、弱いATPase活性を有することが示されている(非特許文献9−10)。インビトロ及びインビボの研究において、アンサマイシン及び他のHSP90阻害剤がこのN末端ポケットを占有することで、HSP90機能が変化し、タンパクフォールディングを阻害することが実証された。高濃度においては、アンサマイシン及び他のHSP90阻害剤は、HSP90に対するタンパク基質の結合を妨げることが示されている(非特許文献11−13)。また、アンサマイシンは、シャペロン随伴のタンパク性基質のATP依存性遊離を阻害することが実証されている(非特許文献14−15)。どちらの場合も、基質はプロテアソームにおけるユビキチン依存性プロセスによって分解される(非特許文献14及び16−17)。
【0006】
この基質の不安定化は、腫瘍と非形質転換細胞で同様に生じ、信号伝達制御因子のサブセット、例えば、Raf(非特許文献18−19)、核内ステロイド受容体(非特許文献20−21)、v−src(非特許文献22)及び特定の膜貫通チロシンキナーゼ(非特許文献23)の、例えばEGF受容体(EGFR)とHer2/Neu(非特許文献24−27)、CDK4、及び変異体p53(非特許文献28)で特に有効であることが示されている。これらのタンパクのアンサマイシン誘発損失は、特定の制御経路の選択的破壊をもたらし、細胞周期の特有の段階における成長抑止(非特許文献29)、アポトーシス、及び/又はこのように処理された細胞の分化(非特許文献30)に帰結する。
【0007】
制がんと抗腫瘍の活性に加え、HSP90阻害剤は、消炎剤、抗感染症剤、自己免疫の治療剤、脳卒中、虚血、多発性硬化症、心疾患、の治療剤、及び中枢神経系関連疾患の治療剤、並びに神経再生の促進に有用な薬剤等の様々な他の用途に関係している(特許文献1−4)。上記と若干重複し、限定されるものではないが、強皮症、多発性筋炎、全身性ループス、関節リウマチ、肝硬変、ケロイド形成、間質性腎炎、及び肺線維症等の線維系疾患もまたHSP90阻害剤で治療されうるとの報告が文献にある(特許文献5)。さらにまた、HSP90調節、調節剤及びこれらの使用は、特許協力条約公開(PCT)/US03/04283、PCT/US02/35938、PCT/US02/16287、PCT/US02/06518、PCT/US98/09805、PCT/US00/09512、PCT/US01/09512、PCT/US0l/23640、PCT/US01/46303、PCT/US01/46304、PCT/US02/06518、PCT/US02/29715、PCT/US02/35069、PCT/US02/35938、PCT/US02/39993、米国出願公開60/293、246、60/371、668、60/335、391、60/128、593、60/337、919、60/340、762、60/359、484及び60/331、893に報告がある。
【特許文献1】WO02/09696
【特許文献2】WO99/51223
【特許文献3】米国特許第6210974号
【特許文献4】米国特許第6174875号
【特許文献5】WO02/02123
【非特許文献1】Federal Register、66巻、129号、35443−35444ページ
【非特許文献2】Erlichmanら、Proc.AACR(2001)、42、要約4474
【非特許文献3】Buchner、J.TIBS、1999年、24巻、136−141ページ
【非特許文献4】L.Stepanovaら、Genes Dev.、1996年、10巻、1491−502ページ
【非特許文献5】K.Daiら、J.Biol.Chem.、1996年、271巻、22030−4ページ
【非特許文献6】Caplan、A.Trends in Cell Biol.、1999年、9巻、262−68ページ
【非特許文献7】C.Stebbinsら、1997年、Cell、89巻、239−250ページ
【非特許文献8】J.P.Grenertら、1997年、J.Biol.Chem.、272巻、23843−50ページ
【非特許文献9】C.Proromouら、1997年、Cell、90巻、65−75ページ
【非特許文献10】B.Panaretouら、1998年、EMBO J、17巻、4829−36年
【非特許文献11】T.H.Scheibelら、1999年、Proc.Natl.Acad.Sci.USA96、1297−302ページ
【非特許文献12】T.W.Schulteら、1995年、J.Biol.Chem.、270巻、24585−8ページ
【非特許文献13】L.Whitesellら、1994年、Proc.Natl.Acad.Sci.USA91、8324−8328ページ
【非特許文献14】C.L.Schneiderら、1996年、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 93、14536−41ページ
【非特許文献15】Sepp−Lorenzinoら、1995年、J.Biol.Chem.、270巻、16580−16587ページ
【非特許文献16】L.Sepp−Lorenzinoら、1995年、J.Biol.Chem.、270巻、16580−16587ページ
【非特許文献17】L.Whitesellら、1994年、Proc.Natl.Acad.Sci.USA,91、8324−8328ページ
【非特許文献18】T.W.Schulteら、1997年、Biochem.Biophys.Res.Commun.、239巻、655−9ページ
【非特許文献19】T.W.Schulteら、1995年、J.Biol.Chem.、270巻、24585−8ページ
【非特許文献20】B.Segnitz及びU.Gehring、1997年、J.Biol.Chem.、272巻、18694−18701ページ
【非特許文献21】D.F.Smithら、1995年、Mol.Cell.Biol.、15巻、6804−12ページ
【非特許文献22】L.Whitesellら、1994年、Proc.Natl.Acad.Sci.USA91、8324−8328ページ
【非特許文献23】L.Sepp−Lorenzinoら、1995年、J.Biol.Chem.、270巻、16580−16587ページ
【非特許文献24】F.Hartmannら、1997年、Int.J.Cancer、70巻、221−9ページ
【非特許文献25】P.Millerら、1994年、Cancer Res.、54巻、2724−2730ページ
【非特許文献26】E.G.Mimnaughら、1996年、J.Biol.Chem.、271巻、22796−801ページ
【非特許文献27】R.Schnurら、1995年、J.Med.Chera.、38巻、3806−3812ページ
【非特許文献28】Erlichmanら,Proc.AACR(2001)、42、要約4474
【非特許文献29】R.C.Muise−Heimericksら、1998年、J.Biol.Chem.、273巻、29864−72ページ
【非特許文献30】A.Vasilevskayaら、1999年、Cancer Res.、59巻、3935−40ページ
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
アンサマイシンの水溶性は乏しく、現在のところ、アンサマイシン含有医薬組成物、とりわけ静脈注射処方を調製することは困難である。これまでに、有機賦形剤(例えば、DMSO又はヒマシ油の誘導体、クレモフォール)、脂質小胞、及び水中油型エマルジョンを使用する試みがなされてきたが、今のところ、これらは、複雑な処理工程、きつい又は臨床的に受け入れられない溶媒を必要としており、及び/又は処方の不安定に帰着している。一般的には、S.Vemuri及びC.T.Rhodes、”Preparation and characterization of liposomes as therapeutic delivery systems:a review”、Pharmaceutica Acta Helvetiae、70巻、95−111ページ、1995年を、また、WO00/37050として2000年6月29日付け公開のPCT/US99/30631を参照されたい。DMSOは、その肝毒性と心臓毒性に加え、患者に投与されると、有害事象(吐き気、嘔吐、悪臭)を生じさせることが知られており、一方、クレモフォールは、患者に、過敏症反応やアナフィラキシーを引き起こしやすく、抗ヒスタミン剤やステロイドでの前治療を必要とすることが多い。
【0009】
本出願人の米国特許出願20060014730、2006/0067953、及び2006/0148776は、アンサマイシンを溶解するためのDMSO又はクレモフォールを必要としないエマルジョン形態のアンサマイシン組成物の調製方法を教示している。しかしながら、これらのエマルジョンは、長期使用のために冷凍又は凍結乾燥の状態で保管されなければならず、このため、臨床治療場所で投与する際に、不便又は困難を生じさせる(例えば、解凍又は再水和と適切な濃度への調節を必要とする)。製造、搬送、及び臨床治療場所での投与のための調製の際に、組成物のハンドリングにおける容易性を増大させるために、冷凍状態又は室温で高められた安定性を示すアンサマイシン組成物に対するニーズが存在する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、油層にアンサマイシン及び2重量%未満のオレイン酸を含み、アンサマイシンはゲルダナマイシン、17−アミノゲルダナマイシン、17−アリアラミノ−17−デメトキシ−ゲルダナマイシン、下記構造を有する化合物563、化合物237、又は前述のアンサマイシンの任意の塩である、水相及び油相を含む医薬組成物を提供する。
【化1】

化合物563 化合物237
【0011】
一実施形態において、アンサマイシンの最終濃度は約0.5と4mg/mLの間の範囲である。
【0012】
別の実施形態において、組成物中のオレイン酸の量は医薬組成物の約1重量%以下である。
【0013】
また別の実施形態において、組成物中の前記オレイン酸の量は医薬組成物の約0.5と0.05重量%の間である。
【0014】
さらなる実施形態において、医薬組成物はさらに中鎖トリグリセリドを含んでなる。さらに別の実施形態において、中鎖トリグリセリドの量は医薬組成物の約15重量%以下である。
【0015】
さらに別の実施形態において、医薬組成物はさらに長鎖トリグリセリドを含んでなる。さらに別の実施形態において、長鎖トリグリセリドの量は医薬組成物の約7重量%以下である。
【0016】
別の実施形態において、医薬組成物はさらに乳化剤を含んでなる。
【0017】
さらなる実施形態において、本発明は油相が医薬組成物の約5から30%である医薬組成物を提供する。
【0018】
さらなる実施形態において、本発明は、アンサマイシンの最終濃度が約1から3mg/mLの範囲であり;組成物中オレイン酸の量が約0.5から0.05重量%の間であり;中鎖トリグリセリドの量が約7から13重量%の間であり;長鎖トリグリセリドの量が約2から5重量%の間の範囲であり;レシチン量が医薬組成物の約5から8重量%の間の範囲である、医薬組成物を提供する。
【0019】
本発明のさらなる実施形態は、平均液滴直径が約500nm未満の;平均液滴直径が約150nm未満の;又は平均液滴直径が約80nm未満の、組成物を提供する。
【0020】
さらに別の実施形態において、医薬組成物のpHは約5から8の範囲である。
【0021】
本発明のまた別の実施形態は、油相にさらに17−アリアラミノ−17−デメトキシ−ゲルダナマイシン及び2重量%未満のオレイン酸を含み、前記医薬組成物は約5から8のpH範囲及び約0℃から10℃の間の範囲の温度に対して約18ヶ月安定である、水相及び油相を含んでなる医薬組成物を提供する。
【0022】
また別の実施形態は、本発明に従った医薬組成物の有効量を個体に投与することを含んでなる、HSP−90媒介障害を有する個体を治療する方法を提供する。HSP−90媒介疾病は、炎症性疾患、感染症、自己免疫不全、脳梗塞、虚血、心疾患、神経疾患、繊維遺伝子障害、増殖性障害、腫瘍、白血病、新生物、がん、悪性腫瘍、代謝病及び難病からなる群から選ばれる1つでもよい。
【0023】
また別の実施形態において、本発明は、さらに、細胞毒剤、抗血管新生薬及び抗悪性腫瘍薬からなる群から選ばれる少なくとも1の治療薬を投与することを含んでなる方法を提供する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
用語「蒸発」及び「凍結乾燥」は必ずしも溶媒及び溶液の100%除去を意味せず、より低い除去率であってもよい(例えば約95%以上)。
【0025】
用語「水和」又は「再水和」は、例えば水又はハンクス溶液、リンゲル液、又は生理食塩水等の生理的に互換性のあるバッファ等の水溶液を添加することを意味する。
【0026】
用語「約」は、記述から20%の変動を包含することを意味する。用語「〜の間」又は「約〜の間」と組み合わせて用いるときの用語「含む」は、記述された範囲の両端を含むことを意味する。
【0027】
本願明細書に使用の用語「安定」は、本発明の組成物の性質を指す。冷蔵温度(例えば0−10℃又は2−8℃)及び室温における高い安定性(オレイン酸の無い同様の組成物と比較して)は本発明の組成物の特徴である。典型的には、室温下及び約5−8(例えば5.5−7)のpH値において、このようなオレイン酸含有組成物は、少なくとも3ヶ月間、平均液滴直径が100nmを超えて増加せず;冷蔵温度(例えば0−10℃又は2−8℃)及び約5−8(例えば5.5−7)のpH値において、このようなオレイン酸含有組成物は、少なくとも12ヶ月間、平均液滴直径が50nm(又は35nmすら)を超えて増加しない。さらに、本発明の組成物中に17−AAGが存在する場合は、17−AAGの2つの主要な分解生成物であるRS−A及び17−AGは、12ヶ月間、それぞれ約2.5(例えば1)重量%及び7.5(例えば5)重量%以下であることが見出された。
【0028】
「油」は脂肪酸及び同一物を含有するグリセリド、例えば当業に公知のモノ−、ジ−及びトリグリセリドを含む。本発明に用いる脂肪酸及びグリセリドは飽和及び/又は不飽和、天然及び/又は合成、荷電した又は電気的中性でありうる。「合成」は、当業に公知の用語として全体合成でもよく、半合成でもよい。油は、その成分において及び/又は起源において、均一でも不均一でもよい。
【0029】
用語「短」「中」「長」は、炭素鎖(例えば脂肪酸又はトリグリセリド)の記載に用いるときに、それぞれ8未満の直鎖炭素原子、8から12の直鎖炭素原子、及び12を超える直鎖炭素原子を指す。
【0030】
「生理学的に許容できるキャリア」は、生体への顕著な刺激を生じず、投与された化合物の生理活性及び特性を抑制しない、担体又は希釈剤を指す。
【0031】
「賦形剤」は、化合物の投与をさらに容易にするために医薬組成物に添加される物質を指す。賦形剤の例には、炭酸カルシウム、リン酸カルシウム、種々の等及びでんぷんの様式、セルロース及びセルロース誘導体、ゼラチン、植物油及びポリエチレングリコールが挙げられるが、これらに限定しない。これらは、例えばショ糖は、上述の生理学的に許容できるキャリアでもありうる。さらに賦形剤の定義の範囲にはバルク剤が入る。「バルク剤」は一般的に処方のための機械的支持を提供する。こうした剤の例は糖である。本願明細書に用いる糖には、単糖、二糖、オリゴ糖及び多糖が挙げられるが、これらに限定しない。具体的な例には、果糖、ショ糖、マンノース、トレハロース、ソルボース、キシロース、マルトース、乳糖、ショ糖、デキストロース及びデキストランが挙げられるが、これらに限定しない。糖には、マンニトール、ソルビトール、イノシトール、ズルシトール、キシリトール、及びアラビトール等の、糖アルコールも挙げられる。本発明の範囲に従って、糖混合物も用いられうる。種々のバルク剤、例えばグリセロール、糖、糖アルコール、及び単糖、二糖は、上述のような等張剤の機能も示しうる。バルク剤は薬物に対して化学的に無反応であり、使用条件下において有害な副作用が全くないか又は極めて限られていることが好適である。バルク剤キャリアに加えて、バルク剤の目的になりうる又はならない他のキャリアには、例えば、当業に公知で即時入手可能なアジュバント及び希釈剤が挙げられる。
【0032】
「有効量」は、治療及び/又は予防の有効性を提供しうる量を意味する。勿論、治療及び/又は予防の有効性を獲得するために本発明に従って投与される化合物の特定の量は、例えば投与経路、治療される症状、及び治療される個体等を含む、症例を取り巻く特定の環境により決定するであろう。排除速度、半減期及び最大耐用量(MTD、Maximum Tolerated Dose)等の要因もさらに決定されねばならないが、当業者であれば標準手順を用いてこれらを決定しうる。
【0033】
(本発明の組成物の構成成分)
(アンサマイシン)
用語「アンサマイシン」は、長鎖架橋されたベンゾキノン、ベンゾヒドロキノン、ナフトキノン又はナフトヒドロキノン部分を含んでなる「アンサ」構造を特徴とする化合物の広義の用語である。ナフトキノン又はナフトヒドロキノン系化合物の例としては、臨床的に重要な薬剤であるリファンピシン及びリファマイシンがそれぞれ挙げられる。ベンゾキノン系化合物の例としては、ゲルダナマイシン(合成誘導体である17−AAG及び17−N,N−ジメチルアミノ−アチルアミノ−17−デメトキシゲルダナマイシン(DMAG)を含む)、ジヒドロゲルダナマイシン及びヘルバマイシンが挙げられる。ベンゾヒドロキノン系の例には、マクベシンが挙げられる。本発明に係るアンサマイシン及びベンゾキノン。本発明に係るアンサマイシン及びベンゾキノンは、合成、天然生成、又は両者の組み合わせ、すなわち「半合成」でもよく、2量体及びコンジュゲート変異体及びプロドラッグ形態でもよい。本発明の方法において有用なベンゾキノンアンサマイシン及びその調製方法の例には、米国特許第3595955号(ゲルダナマイシンの調製を記載)、米国特許第4261989号、第5387584号及び第5932566号が挙げられるが、これらに限定しない。ゲルダナマイシンは、CN Bioscience(Merck KGaA提携、ドイツ、Darmstadt、本社米国カリフォルニア州サンディエゴ)、カタログ番号345805等、市販入手可能なものもある。ゲルダナマイシン誘導体である4,5−ジヒドロゲルダナマイシン及びそのStreptornyces hygroscopicus(ATCC 55256)培地由来ヒドロキノンの生化学的精製は、1993年6月22日付け、Cullenらを発明者として列記するPfizer Inc.による国際特許出願第PCT/US92/10189号、公開WO93/14215に記載があり、ゲルダナマイシンの触媒的水素添加による4,5−ジヒドロゲルダナマイシン合成の代替方法も公知である。例えば、”Progress in the Chemistry of Organic Natural Products”、 Chemistry of the Ansanzycin Antibiotics、33巻、278号、1976年も参照されたい。本発明の種々の実施形態に関連して用いうる他のアンサマイシンは、上述の背景技術の部に列挙の文献に記載がある。本発明との比較において、アンサマイシン(例えば、17−AAG)の最終濃度は典型的には約0.5−4mg/mL(例えば、1−3mg/mL又は2mg/mL)である。
【0034】
(長鎖トリグリセリド)
「長鎖トリグリセリド」とは、直鎖炭素原子の長さが12を超える脂肪酸を有する化合物である。一般にはこの由来は、例えば大豆油又は大豆オイル等の植物油であり、典型的には55−60%リノール酸(9,12−オクダデカジエン酸)、22%オレイン酸(シス−9−オクタデセン酸)及び少量のパルミチン酸及びステアリン酸を含有する。本発明の組成物中に存在する長鎖トリグリセリドの量は、典型的には、組成物重量を基準として約7重量%以下(例えば約2−5重量%)である。
【0035】
(中鎖トリグリセリド)
本願明細書に用いる「中鎖トリグリセリド」とは、長さが8−12の直鎖炭素原子、より好適には長さが8−10の直鎖炭素原子の範囲の脂肪酸を有するトリグリセリド組成物である。本発明の種々の実施形態は、Miglyo(登録商標)(Condea Vista Co.、Cranford、米国ニュージャージー州)の使用を含んでなる。Miglyo(登録商標)は、およそ50−65%のカプリル酸(炭素8個)及び30−45%のカプリン酸(炭素10個)を含有する。カプロン酸(炭素6個)も最大で約2%まで存在し、ラウリン酸(炭素12個)も同様である。さらに微量(最大1%)のミリスチン酸(炭素14個)が存在する。本発明の組成物中に用いうる他の中鎖脂肪酸には、Miglyo(登録商標)810、818、829及び840、並びに他の周知の中鎖トリグリセリドが挙げられる。Miglyo812Nは、European Pharmacopeia誌に中鎖トリグリセリドとして、British Pharmacopeia誌に分画ココナツオイルとして、及びJapanese Pharmacopeia誌にカプリル酸/カプリン酸トリグリセリドとしての論文がある。他の中鎖トリグリセリド源にはココナツオイル、パームカーネルオイル及びバターが挙げられる。本発明の組成物中に存在する典型的な中鎖トリグリセリドの量は、組成物重量を基準として約3−10重量%(例えば約5−8重量%)である。
【0036】
出願済み米国出願公開第US2006/0148997号に記載のように、Miglyo(登録商標)812Nは迅速投与されるとオクタノエートの代謝放出により鎮静作用を生じうる。17−AAGエマルジョン(Miglyo(登録商標)812Nオイル)をラット静脈注入中において、注入速度が1.1グラム全脂質/kg/時間を超えると鎮静作用が観測された。関連する米国出願公開第2006/0148766号の図1を参照されたい。鎮静作用は、犬においても17−AAGエマルジョン処方の注入速度が1.13グラム全脂質/kg/時間を超えると見られた。これを防止するために、インビボにおいてMiglyo812Nと競合させ、静脈注入中に生じるオクタノエート脂肪酸を減少させるために、上述のように長鎖トリグリセリド(大豆油等)が添加された。大豆油/Miglyo812N CD237エマルジョンでは、ラットへの注入速度が約40グラム全脂質/kg/時間において急性の鎮静作用は見られなかった。従って、大豆油とMiglyo812Nの組み合わせは、鎮静作用に関してCF237エマルジョン処方の耐用性を大きく改善する。同様に、サルにおいて、12mL処方/kg/時間の静脈注入として、CF237エマルジョン処方の6回分投与には鎮静作用が見られず、静脈の炎症は観測されなかった。
【0037】
(短鎖トリグリセリド)
「短鎖トリグリセリド」は、長さが8未満の直鎖炭素原子の脂肪酸を有する化合物である。これは本発明の組成物中に適宜存在しうる。
【0038】
(乳化剤)
「乳化剤」は「界面活性剤」の同義語であり、レシチン等のリン脂質を含んでなるがこれに限らない。「レシチン」は、リン酸のコリンエステルに結合したステアリン酸、パルミチン酸及びオレイン酸の、天然生成ジグリセリドの混合物である。界面活性剤又は乳化剤の用語は、ホスファチジルコリンも含んでなり、個々の化合物は公知である。本発明に用いる乳化剤の例は、Phospholipon 90G(PL90G、American Lecithin Company、Oxford、米国コネチカット州)等の大豆レシチン、及びLipoid S−100(Lipoid KG、Ludwigshafen、ドイツ)等の大豆ホスファチジルコリンである。Phospholipon 90Gは、これまで、Intralipid(登録商標)に約1.2%濃度、Doxil(登録商標)(ドキソルビシン)に約1%、Ambisone(登録商標)(アンフォテリシンB)に約2%、及びPropofol(登録商標)に約1.2%等、非経口栄養製品中に用いられてきた。後者については、米国特許第6140374号を参照されたい。界面活性剤/乳化剤量は、典型的には、本発明の組成物中に組成物重量を基準として約3−10重量%(例えば約5−8重量%)存在する。
【0039】
アニオン性界面活性剤の例には、ラウリル硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸トリエタノールアミン、ポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸トリエタノールアミン、ココイルサルコシンナトリウム、N−ココイルメチルタウシンナトリウム、ポリオキシエチレン(ココナツ)アルキルエーテル硫酸ナトリウム、ジエーテルヘキシルスルホコハク酸ナトリウム、a−オレフィンスルホン酸ナトリウム、ラウリルリン酸ナトリウム、ポリオキシエチレンラウリルエーテルリン酸ナトリウム、パーフロロアルキルカルボキシレート塩(UNIDINE DS−101及び102の商品名でダイキン工業社が生産)が挙げられる。
【0040】
カチオン性界面活性剤の例には、塩化ジアルキル(C12−C22)ジメチルアンモニウム、塩化アルキル(ココナツ)ジメチルベンジルアンモニウム、オクタデシルアミン酢酸塩、テトラデシルアミン酢酸塩、獣脂アルキルプロピレンジアミン酢酸塩、塩化オクタデシルトリメチルアンモニウム、塩化アルキル(獣脂)トリメチルアンモニウム、塩化ドデシルトリメチルアンモニウム、塩化アルキル(ココナツ)トリメチルアンモニウム、塩化ヘキサデシルトリメチルアンモニウム、塩化ビフェニルトリメチルアンモニウム、アルキル(獣脂)−イミダゾリン四級塩、塩化テトラデシルメチルベンジルアンモニウム、塩化オクタデシルジメチルベンジルアンモニウム、塩化ジオレイルジメチルアンモニウム、塩化ポリオキシエチレンドデシルモノメチルアンモニウム、塩化ポリオキシエチレンアルキル(C12−C22)ベンジルアンモニウム、塩化ポリオキシエチレンラウリルモノメチルアンモニウム、1−ヒドロキシエチル−2−アルキル(獣脂)−イミダゾリン四級塩、疎水基としてシロキサン基を有するシリコン陽イオン界面活性剤、疎水基としてフロロアルキル基を有するフッ素含有陽イオン界面活性剤(UNIDINE DS−202の商品名でダイキン工業社が生産)が挙げられる。
【0041】
非イオン性界面活性剤の例には、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレントリデシルエーテル、ポリオキシエチレンセチルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンセチルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンモノラウラート、ポリオキシエチレンモノステアラート、ポリオキシエチレンモノオレアート、ソルビタンモノラウラート、ソルビタンモノステアラート、ソルビタンモノパルミタート、ソルビタンモノステアラート、ソルビタンモノオレアート、ソルビタンセスキオレアート、ソルビタントリオレアート、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウラート、ポリオキシエチレンソルビタンモノパルミタート、ポリオキシエチレンソルビタンモノステアラート、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレアート、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロックポリマー、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ポリエーテル修飾シリコンオイル(SH3746、SH3748、SH3749及びSH3771の商品名で、東レ・ダウコーニングシリコーン社が生産)、パーフロロアルキルエチレンオキシド付加物(TJNIDINE DS−401及びDS−403の商品名でダイキン工業社が生産)、フロロアルキルエチレンオキシド付加物(UNIDINE DS−406の商品名でダイキン工業社が生産)及びパーフロロアルキルオリゴマー(UNIDINE DS−451の商品名でダイキン工業社が生産)が挙げられる。
【0042】
(オレイン酸)
オレイン酸は、イオン化可能な、乳化特性を有する一不飽和オメガ9脂肪酸である。これは種々の動物及び植物油(オリーブ油等)に見られうる。本発明の組成物中に存在するオレイン酸の量は1重量%以下(例えば約0.5−0.05重量%又は約0.2重量%)である。オレイン酸の解離定数は約5であるため、組成物のpHは、液滴直径安定化におけるオレイン酸の有効性に影響するであろう。
【0043】
液滴直径安定化の改善のため、他の2次的な界面活性剤(例えば、ジミリスチルホスファチジルグリセロール(DMPG)、Solutol HS15、及びTween80)を冷蔵温度において試験したことに注目すべきである。Solutol HS15及びTween8は液滴直径安定化を改善せず、DMPGは注射器への吸引が困難な粘稠エマルジョンを生じる一方、オレイン酸は粘性等の他の特性に影響を与えずに安定化の改善を示すことが見出された。
【0044】
(ショ糖)
ショ糖は、本発明においてバルク剤として用いられる。ショ糖は、活性成分を含む油性液滴の分散状態を固い結晶中に生成することにより、処方の安定性を大いに強化しうると考えられる。ポリビニルピロリドン(PVP)はショ糖に置き換えて用いられうる。本発明の組成物中に存在するバルク剤(ショ糖等)の量は約12重量%以下(例えば約7−8重量%)である。
【0045】
(その他)
酸化による劣化又は脂質の過酸化を防止又は最小化するために、α−トコフェロールやブチル化ヒドロキシトルエン等の酸化防止剤及びエデト酸等の保存料を、酸素の遮断(例えば、窒素やアルゴン等の不活性ガスを存在させる処方、及び/又は遮光容器の使用)に加えて、又は代替として、含めてもよい。
【0046】
さらにアンサマイシンの溶解度を増すために、薬理学的に許容できる共溶媒を組成物に加えてもよい。当業公知の多くの好適な共溶媒を用いてよい。溶媒の例には、グリセロール、ラブラフィル(labrafil、アプリコットカーネルオイルPEG−6エステル)、ラブラソル(labrasol、PEG−8カプリル酸/カプリン酸グリセリド)、ポリエチレングリコール400、Tween 80、Solutol HS15、炭酸プロピレン、Transcutol HP(エトキシジグリコール)及びグリコフロールを含んでなるが限定しない。
【0047】
(本発明の組成物の調製)
一般的に、本発明の組成物の調製方法の第1ステップはアンサマイシンの溶解である。下記の図6に示すように、組成物の油相中にアンサマイシンを溶解しやすくするために、エタノールを用いうる。まず、超音波処理又は熱を用いてエタノール中にアンサマイシンを溶解し、続いて油相成分(例えば、長鎖/中鎖トリグリセリド、オレイン酸、及び乳化剤)を組成物に添加することが、最も一般的である。全ての構成成分を混合し溶解するために、しばしば撹拌及び超音波処理が必要である。次いでエタノールを蒸発除去した後、水相を加える。
【0048】
あるいは、本発明の組成物は,直接(エタノールを用いずに)、アンサマイシンを油相に溶解し、水相と混合することにより調製されうる。2相は分離調製され、次いで組み合わされる。第1エマルジョン中の2相の比は、約4:1(水相:油相)(すなわち、約20%の油を含む水性エマルジョン)でありうる。4:1と異なる比率が用いられうることにも注意すべきである。第1エマルジョンは、次いで液滴直径を縮小するために微小流動化(例えば、平均液滴直径80nmまで)され、滅菌フィルタ処理され、無菌条件下で最終閉鎖容器に充填される。図5に、17−AAG含有組成物(100kgバッチ中)を調製するための一般的なプロセスフローを示す。
【0049】
アンサマイシンの油相への溶解をしやすくするために、穏やかな加温(例えば約40−60℃)が用いられる。昇温は、アンサマイシンの融点(これは個々に幾分変化する)に基づいて調節すべきであることに注意されたい。例えば、17−AAGの低融点形態(エタノールよりもプロパノールから再結晶して調製された17−AAG)は、室温でも油相に溶解しうる。
【0050】
17−AAGは高温に長時間さらされると急速に分解することに注意されたい。加温した油相に17−AAGを溶解するときには注意(温度制御の用意等)が必要である。
【0051】
本発明の組成に用いるための小数のバッファ系(クエン酸、リン酸及びL−ヒスチジン)を評価したが、これらの系では組成物に高い粘性及び/又は低い安定性を生じた。従って、本発明の組成物はバッファなしで用いられる。無バッファの状態では、pHは冷蔵温度で徐々に低下し、約pH6で安定化する。本発明の組成物の調製において、サイズ縮小に先立ち(サイズ縮小後のCNF1010のpH調製はエマルジョンが分離するため)、エマルジョンのpHを約7.5に(NaOH等で)調節した。サイズ縮小の間、pHは0.5−1.5単位で低下した。
【0052】
次いで、生成組成物を乳化、均一化、微小流動化(後述を参照)し、所望の平均液滴直径を得た。次いで、組成物が薬理学的使用に適切であることを確認するために滅菌処理した。
【0053】
(乳化及び微小流動化)
油相及び水相を含んでなるエマルジョンは、治療活性成分のキャリアとして、又は非経口栄養源として、当業に広く知られている。エマルジョンは、油を含む水の形態としても、水を含む油の形態としても存在しうる。本発明の場合のように、治療成分が特に油相に溶けやすい場合は、油を含む水の様式が好適な実施形態である。単純なエマルジョンは熱力学的に不安定な系であり、これから油相及び水相が分離する(油滴の合一)。エマルジョンに乳化剤を取り入れることにより、合一過程はごくわずかなレベルまで決定的に減少する。
【0054】
乳化は、機械的混合、ボルテックス、及び超音波処理等の種々の公知の技法により影響されうる。超音波処理は、容器型又はペン先型の機器により使用の影響がありうる。
【0055】
微小流動化装置は市販入手可能(例えば、HOS型微小流動化装置、Microfluidics Corp、Newton、米国マサチューセッツ州、詳細は例えば米国特許第4533254号に記載)であり、圧力補助により狭い開口部(オリフィス)を横切る通路を利用し、エマルジョン中の液滴直径を縮小する。市販入手可能なポリカーボネート膜を通過させる圧力補助押し出しも用いられうる。本発明の組成物は、分散液の粒子径を約5μmから0.1−0.5μm又はこれ以下(平均粒子径)に縮小するために、高圧(110−131MPa(16000−19000ポンド毎平方インチ))で微小流動化されてもよい。
【0056】
(滅菌)
滅菌は、0.45ミクロンフィルタ等のより大きな径を通じ、及び次いで0.2ミクロンフィルタ(例えば滅菌0.2ミクロンSartorius Sartobran P capsuleフィルタ(500cm))等のより小さな径を通じる前濾過を含む濾過により達成されうる。フィルタ材は酢酸セルロースでありうる(Sartorius−Sartobran(登録商標)、Sartorius AG、Goettingen、ドイツ)。
【0057】
(本発明の組成物の特性分析及び使用)
(化学的物理的安定性の特性分析及び影響評価)
エマルジョンからの抽出後に、リン脂質及び劣化生成物を計測しうる。次いで脂質混合物は2次元薄層クロマトグラフィ(TLC)システム又は高速液体クロマトグラフィ(HPLC)システムで分離しうる。TLCにおいては、単一成分に対応するスポットを取り出し、リンを分析しうる。例えば、825nmに現れる青色の強度を水に対して測定する分光光度計を用いる手順により、試料中の全てのリンを定量的に計測しうる。HPLCにおいては、ホスファチジルコリン(PC)及びホスファチジルグリセロール(PG)を絶対精度及び相対精度をもって定量的に分離しうる。脂質は203−205nmの範囲に検出されうる。不飽和脂肪酸(オレイン酸等)は高い吸光度を示す一方、飽和脂肪酸は200nmのUV分光領域に低い吸光度を示す。
【0058】
エマルジョンの外観、平均液滴直径、及び粒径分布は、観測及び維持すべき(物理的安定性を決定する)重要なパラメータでありうる。これらのパラメータを評価するための方法は数多い。例えば、動的光散乱及び電子分光の2つは、用いうる技法である。例えば、Szoka及びPapahadjopoulos、Annu.Rev.Biophys.Bioeng.、9巻、467−508ページ、1980年を参照されたい。特に、形態学的特徴分析は、凍結破断電子顕微鏡法の使用に付随しうる。微弱光顕微鏡も用いうる。
【0059】
エマルジョン液滴直径分布は、例えば、Horiba Limited(Ann Arbor、米国ミシガン州)製CAPA−500、Coulterカウンター(Beckman Coulter Inc.、Brea、米国カリフォルニア州)、又はZetasizer(Malvern Instruments、Southborough、米国マサチューセッツ州)等の粒径分布分析装置を用いて計測しうる。
【0060】
加えて、組成物、とりわけ17−AAG等の活性成分であるアンサマイシンの化学的安定性は、組成物/エマルジョンの抽出後HPLCにより評価されうる。劣化生成物から治療学的に活性のアンサマイシンを分離しうる、特定のアッセイ手順が開発されうる。劣化の程度は、治療学的に活性のアンサマイシンに付随するHPLCピーク中の信号減衰から、及び又は劣化生成物(例えば、17−AAGにおける17−AG又はRS−A)に付随するHPLCピーク中の信号増加のいずれかにより、評価されうる。アンサマイシンは、エマルジョン組成物の他の成分に比べて、345nmの吸収極大から容易かつ極めて特異的に検出される。
【0061】
(処方及び投薬様式)
本発明の種々の態様及び実施形態において静脈投与が好適であるが、当業者であればこの手法を変更し、又は直ちに、経口、非経口、エアロゾル、皮下、筋肉内、腹腔内、直腸内、膣内、腫瘍内、又は腫瘍周囲等の他の投与様式に適応させうることを考慮するであろう。
【0062】
本発明の組成物は、上述のように、例えばボーラス注射又は連続注入等、注射による即効性又はほぼ即効性の非経口投与によく適している。後述の投与方法においては、患者内の濃度を一定に維持するために、連続静脈注入輸送器具を用いてもよい。このような器具の例には、Deltec CADD−PLUS(登録商標)5400型静脈ポンプがある。注射用組成物は、アンプル又は複数回投与容器等の投与単位形態で、エデト酸等の保存料を添加して提示されてもよい。上述のように、本発明の組成物は、アンプル又は他の遮光又は無酸素のパッケージ内等の、不活性の環境に貯蔵されうる。
【0063】
薬理学的に許容できる組成物は、活性化合物を薬理学的に用いうる調製への処理を容易にする賦形剤及び補助剤を含んでなる、1以上の生理学的に許容できるキャリアを用いて、通常の方法で処方されうる。適切な処方は、選択される投与経路に依存する。いくつかの賦形剤及び処方中へのその使用は、すでに記載した。PCT/US99/3063 1、Remmington、”Pharmaceutical Sciences”、Meade Publishing Co.、Easton、米国フィラデルフィア州(最新版)、並びに、Goodman及びGilman、”The Pharmaceutical Basis of Therapeutics”、Pergamon Press、New York,米国ニューヨーク州(最新版)等に記載された他のものも、当業に公知である。
【0064】
(投与量範囲)
進行固形腫瘍を有する成人患者における17−AAGの薬理学的研究フェーズ1から、3週間ごとに5日間、1日1時間注入投与するときの最大耐用量(MTD)は40mg/mと決定した。
【0065】
(非特許文献)
Wilsonら、Am.Soc.Clin.Oncol.、要約、”Phase I Pharmacologic Study of 17−(Allylamino)−17−Denzethoxygeldanamycin(AAG) in Adult Patients with Advanced Solid Tumors”、2001年。
この研究において、終末半減期、クリアランス及び定常状態ボリュームの±標準偏差の値は2.5±0.5時間、41.0±13.5L、及び86.6±34.6L/mと決定した。血漿Cmaxレベルは、40及び56mg/mにおいて1860±660nM及び3170±1310nMと決定した。これらの値をガイドラインとして用い、本発明の処方のための有用な非経口投与量の範囲は、有効成分の約0.40mg/mから225mg/mの間を含むと予想した。mg/mからmg薬剤/kg体重への変換には定法が存在する。
【0066】
(HSP90媒介疾病の治療)
いくつかの実施形態において、好適な治療効果は、乳がん等の細胞増殖性障害の特徴である細胞の成長をある程度に抑制することである。治療効果は、一般的には細胞成長又は細胞質量の大きさよりも、1以上の症候をある程度軽減することであるが、これに限定しない。治療効果は、例えば、1)細胞数の減少;2)細胞サイズの縮小;3)がん転移の場合等、周辺臓器への細胞浸潤の抑制(ある程度の速度低下、好適には停止);3)腫瘍転移の抑制(ある程度の速度低下、好適には停止);4)ある程度の細胞成長の抑制;及び/又は、5)これら障害に伴う1以上の症候の軽減、を含みうる。
【0067】
ある実施形態において、本発明の組成物はHSP−90依存/媒介性疾病の治療又は予防に用いられる。ある実施形態において、組成物は医薬製造に用いられる。他の実施形態において、組成物は、HSP−90依存の疾病及び症状の治療及び/又は予防処置のための医薬製造に用いられる。このような疾病及び症状の例には、炎症性疾患、感染症、自己免疫不全、脳梗塞、虚血、心疾患、神経疾患、繊維遺伝子障害、増殖性障害、腫瘍、白血病、慢性リンパ性白血病、後天性免疫不全症候群、新生物、がん、悪性腫瘍、代謝病及び難病が挙げられる。繊維遺伝子障害は、強皮症、多発性筋炎、全身性ループス(全身性エリテマトーデス)、リウマチ様関節炎、肝硬変、ケロイド形成、間質性腎炎及び肺線維症を含んでなるが限定しない。
【0068】
本願発明の組成物は、治療する症状に対して特定の有効性を選択する他の公知の治療薬剤又は方法と組み合わせて用いてもよい。例えば、本願の組成物は公知の抗がん剤及び細胞毒性薬剤又は他の治療方法(放射線等)との組み合わせに有用でありうる。さらに、本願の方法及び組成物は、細胞増殖をイニシエートする核シグナルに細胞表面成長因子を連結する情報伝達経路部分への他の抑制剤との組み合わせにも有用でありうる。
【0069】
本発明の方法は、VEGF受容体を標的とするリボザイム及びアンチセンスを含むVEGF受容体阻害剤、アンジオスタチン及びエンドスタチンを含んでなるが限定しない、血管形成を抑制することにより腫瘍細胞の成長及び侵襲性を抑制する他の薬剤とも共用しうる。
【0070】
本発明の方法と組み合わせて用いうる抗新生物薬剤の例には、一般的かつ適切なものとして、アルキル化剤、代謝拮抗物質、エピドフィロトキシン(epidophyllotoxins)、抗悪性腫瘍酵素、トポイソメラーゼ阻害剤、プロカルバジン、ミトキサントロン、白金配位化合物、生体応答調節剤及び成長阻害物質、ホルモン/抗ホルモン治療薬及び造血性成長因子が挙げられる。抗悪性腫瘍薬系の例には、アントラサイクリン、ビンカ薬物、マイトマイシン、ブレオマイシン、細胞毒ヌクレオチド、エポシロン、ディスコデルモライド、プテリジン、ジイネン及びポドフィロトキシンが挙げられる。これらの系に属する特に有用なメンバーには、例えば、カルミノマイシン、ダウノルビシン、アミノプテリン、メトトレキセート、メトプテリン、ジクロロメトトレキセート、マイトマイシンC、ポルフィロマイシン、5−フルオロウラシル、6−メルカプトプリン、ゲムシタビン、シトシンアラビノシド、エトポシド、リン酸エトポシド又はテニポシド等のポドフィロトキシン又はポドフィロトキシン誘導体、メルファラン、ビンブラスチン、ビンクリスチン、ロイロシジン、ビンデシン、ロイロシン、パクリタキセル等が挙げられる。他の有用な抗悪性腫瘍薬には、エストラムスチン、カルボプラチン、シクロホスファミド、ブレオマイシン、ゲムシタビン、イフォサミド、メルファラン、ヘキサメチルメラミン、チオテパ、シタラビン、イダトレキサート、トリメトレキサート、ダカルバジン、L−アスパラギナーゼ、カンプトセシン、CPT−11、トポテカン、ara−C、イカルタミド、フルタミド、ロイプロリド、ピリドベンゾインドール誘導体、インターフェロン及びインターロイキンが挙げられる。
【0071】
(本発明の組成物の利点)
オレイン酸を含まないアンサマイシン含有組成物(例えば、出願中の米国出願明細第2006/0014730号及び第2006/0148776号に記載のもの)は、物品の物理的安定性を保つために凍結保存(約−20℃)又は凍結乾燥しなければならない。凍結状態であっても、オレイン酸を含まないアンサマイシン含有組成物の安定性はロットごとに変化する場合があった。安定性のデータに基づくならば、2年間安定なロット(C04H044)もあれば、わずか6ヶ月安定なロットも(ロットC05E011及びC05F022等)あった。図1を参照されたい。図1の6個の組成物は、全て組成は同一(下記の表1を参照)であり、オレイン酸を含まない。これらの組成物は、実施例5の記載と同様の方法で調製した。
表1 図1に示す組成物の組成
【0072】
【表1】

【0073】
他方、CNF1010含有オレイン酸の液滴直径安定性は、−20℃で保存すると安定ではなく(図2参照)、オレイン酸を含まない組成物に見られるロットごとの変化を伴った。オレイン酸含有組成物の3ロットは、全て下記の表2に記載の組成物を含み、実施例5に記載の方法を用いて調製した。
【0074】
オレイン酸のない組成物の有効期間は冷蔵保存では許容できず、室温では限られる(1週間未満)ため、1ヶ月以上の安定期間を維持するためには凍結保存(又は凍結乾燥)が必要である。これと比べて、オレイン酸を有する組成物は冷蔵温度及び室温できわめて長期間(冷蔵状態での有効期間は1−2年、室温での安定性維持は1ヶ月以上)保存可能である。図3に、室温におけるオレイン酸含有及び非含有組成物の液滴直径安定性を示す。さらに、オレイン酸含有組成物はロット間の変化がより小さかった。図4及び図5に、冷蔵温度におけるオレイン酸含有及び非含有組成物の液滴直径安定性におけるオレイン酸の効果を示す。
【0075】
アンサマイシンは、油/水エマルジョン中では化学的に安定でない場合があり、17−AAGは温度依存して未確認分解生成物RS−A、及び同様に活性代謝物である17−アミノゲルダナマイイシン(17−AG)に分解する。本発明の組成物において、17−AGは1年に約1.7%の速度で生成し、RS−Aは1年に約0.6%生成する。これらのRS−A及び17−AGの生成速度から、現状の仕様(RS−A及び17−AGのそれぞれが2.5%及び7.5%以下)に従って、本発明の組成物は2年以内の冷蔵保存が許容されると予想する。
【0076】
以下の実施例は例示のためのみであり、本発明を限定することを意図しない。
【実施例】
【0077】
(実施例1:17−AAG代替物1の調製)
乾燥2Lフラスコに1.45L乾燥THF中45.0g(80.4mmol)ゲルダナマイシンを入れ、50mL乾燥THF中36.0mL(470mmol)アリルアミンを30分間にわたって滴下して加えた。反応混合物を室温、窒素下で4時間撹拌し、TLC分析で反応終了を確認した[(GDM:鮮黄色:Rf=0.40;(5%MeOH−95%CHCl3);17−AAG:紫色:Rf=0.42(5%MeOH−95%CHCl3)]。溶媒をロータリーエバポレータで除去し、粗成物を25℃のHO:EtOH(90:10)420mLでスラリー化し、ろ過し、45℃で8時間乾燥し、40.9g(66.4mmol)の17紫色結晶を得た(収率82.6%、254nmモニターのHPLCにより98%超の純度)。示差走査熱量測定(DSC)測定によるMP206〜212℃。H−NMR及びHPLCは、所望の生成物と一致した。
【0078】
(実施例2:低融点形態17−AAGの調製)
代替の精製方法として、実施例1の粗製17−AAGを80℃で2−プロピルアルコール(イソプロパノール)800mLに溶解後、室温まで冷却した。ろ過後、45℃で8時間乾燥し、17−AAGの紫色結晶44.6g(72.36mmol)を得た(収率90%、254nmモニターのHPLCにより99%超の純度)。示差走査熱量測定(DSC)によるMP147〜175℃。H−NMR及びHPLCは、所望の生成物と一致した。
【0079】
(実施例3:低融点形態17−AAG代替物1の調製)
代替の精製方法として、実施例2の17−AAG生成物を25℃のHO:EtOH(90:10)400mLでスラリー化し、ろ過し、45℃で8時間乾燥し、17−AAGの紫色結晶42.4g(68.6mmol)を得た(収率95%、254nmモニターのHPLCにより99%超の純度)。MP147〜175℃、H−NMR及びHPLCは、所望の生成物と一致した。
【0080】
(実施例4:17−AAG以外の同様な処方のアンサマイシンについての他のアンサマイシンの調製)
基本的に任意のアンサマイシンを17−AAGと置き換え、上記の実施例に記載したように処方しうる。種々のこうしたアンサマイシンの調製は、PCT/US03/04283に詳述している。これらの2つの調製を以下に記載する。
【0081】
(化合物563:17−(ベンゾイル)−アミノゲルダナマイシン)
EtOAc中の17−アミノゲルダナマイシン(1mmol)の溶液を室温にてNaSO(0.1M、300ml)で処理した。2時間後、水層をEtOAcで2回抽出し、混合有機層をNaSOの上で乾燥し、減圧濃縮し、黄色固体として18,21−ジヒドロ−17−アミノゲルダナマイシンを得た。この後者を無水THFに溶かし、カニューレを通して塩化ベンゾイル(1.1mmol)とMS4A.ANG.(1.2g)の混合物に移した。2時間後、EtN(i−Pr)(2.5mmol)を反応混合物にさらに添加した。終夜撹拌の後、反応混合物をろ過し、減圧濃縮した。次いで、水を残留物に添加し、これをEtOAcで3回抽出し、混合有機層をNaSOで乾燥し、減圧濃縮して粗成物を得て、これをフラッシュクロマトグラフィーで精製し、17−(ベンゾイル)−アミノゲルダナマイシンを得た。CHCl:EtOAc:MeOH、80:15:5においてRf=50。Mp=218〜220℃、H−NMR(CDC1)0.94(t,6H),1.70(ブロードs,2H),1.79(ブロードs,4H),2.03(s,3H),2.56(dd,1H),2.64(dd,1H),2.76−2.79(m,1H),3.33(brs,7H),3.44−3.46(m,1H),4.325(d,1H),5.16(s,1H),5.77(d,1H),5.91(t,1H),6.57(t,1H),6.94(d,1H),7.48(s,1H),7.52(t,2H),7.62(t,1H),7.91(d,2H),8.47(s,1H),8.77(s,1H)
【0082】
(化合物237:二量体)
3,3’−ジアミノ−ジプロピルアミン(1.32g、9.1mmol)を、火炎乾燥フラスコ中、ゲルダナマイシン(10g、17.83mmol)のDMSO(200ml)溶液にN下において滴下して加え、室温で撹拌した。12時間後、反応混合物を水で希釈した。生成した沈殿をろ過し、粗成物を得た。粗成物をシリカクロマトグラフィーによってクロマトグラフィーに供し(5%のCHOH/CHCl)、紫色固体として所望の二量体を利用可能にした。フラッシュクロマトグラフィー(シリカゲル)の後、純粋な紫色生成物が得られた。収率93%、融点165℃、H−NMR(CDC1)0.97(d,J=6.6Hz,6H,2CH3),1.0(d,J=6.6Hz,6H,2CH3),1.72(m,4H,2CH2),1.78(m,4H,2CH2),1.80(s,6H,2CH3),1.85(m,2H,2CH),2.0(s,6H,2CH3),2.4(dd,J=11Hz,2H,2CH),2.67(d,J=15 Hz,2H,2CH),2.63(t,J=10Hz,2H,2CH),2.78(t,J=6.5Hz,4H,2CH2),3.26(s,6H,2OCH3),3.38(s,6H,20CH3),3.40(m,2H,2CH),3.60(m,4H,2CH2),3.75(m,2H,2CH),4.60(d,J=10Hz,2H,2CH),4.65(Bs,2H,20H),4.80(Bs,4H,2NH2),5.19(s,2H,2CH),5.83(t,J=15Hz,2H,2CH.dbd.),5.89(d,J=10Hz,2H,2CH.dbd.),6.58(t,J=15Hz,2H2CH.dbd.),6.94(d,J=10Hz,2H,2CH.dbd.),7.17(m,2H,2NH),7.24(s,2H,2CH.dbd.),9.20(s,2H,2NH);MS(m/z)1189(M+H)。
【0083】
対応するHCl塩は以下の方法によって調製した。EtOH中のHCl溶液(5ml、0.123N)を室温でTHF(15ml)とEtOH(50ml)中の化合物#237(上記のように調製した1グラム)の溶液に添加した。反応混合物を10分間撹拌した。沈殿した塩をろ過し、多量のEtOHで洗浄し、真空中で乾燥した。
【0084】
(実施例5:オレイン酸を用いた17−AAG組成物の調製)
この方法は、実施例1〜4で調製した任意のアンサマイシンについて用いうる。下記の記載は、100kgバッチの17−AAG組成物の典型的な調製を示す。
【0085】
(油相(バッチ要求の2%過剰で調製))
Miglyol812N(9894g)、大豆油(3366kg)、及びオレイン酸(204g)を25L316Lのステンレス鋼タンク中で、シルバーソン高せん断ミキサーを用い、約5分間混合した。Phospholipon90G(PL90G;6732)を、混合中のオイルにゆっくり添加した。PL90Gが溶け、澄んだ粘性のある黄色溶液が生成するまで混合を続けた。17−AAGは純度に対して重量調節し、製造中の分解を補うために3%過剰(217.3g)を含めた。油相に17−AAGを添加し、17−AAGが溶解するまで(約1時間)、シルバーソン高せん断ミキサーを用いて混合した。次いで、1.0/0.5μmの混合セルロースエステルのフィルタ膜を含む5インチのカプセルフィルタを通して、17−AAG油相を40℃でろ過し、乳化プロセスの妨げになる粒子を除去した。17−AAG油相の組成は、1.06%の17−AAG、1.00%のオレイン酸、16.49%の大豆油、32.98%のPL90G、及び48.47%のMiglyol812Nである。
【0086】
(水相)
水相は油相と別に調製した。注射用蒸留水(71.5kg)を150Lのタンクに加えた。タンクに搭載したオーバーヘッドミキサーを用い、ボルテックス撹拌に対してショ糖(7500g)、続いてEDTA(5.0g)を加えた。全てのショ糖とEDTAが溶解するまで、水相を混合した。水相組成(重量%)は、ショ糖 9.38%、EDTA 0.0063%、及び水90.62%であった。
【0087】
(一次エマルジョン)
水相タンクをインラインの高せん断ミキサーに接続し、混合を開始した。17−AAG含有の油相を、混合中の水相にペリスタポンプで移し、一次エマルジョンを作成した。添加には約30分間を要し、17−AAG含有の油相を移した後、混合をさらに10分間にわたって継続した。
【0088】
インラインミキサーで混合しながら、0.1N NaOHを用いて一次エマルジョンのpHを約5.0から約7.5±0.3に調節した。注射用蒸留水を適量添加し、100kgとした。
【0089】
(微小流動化(サイズ縮小))
一次エマルジョンを15℃未満に冷やした後、別の150Lタンクへ、単一の別経路を用いて微小流動化した。微小流動化は、エマルジョンの平均液滴直径が80nm以下になるまで継続した。微小流動化の際、生成物の温度を15℃未満に維持した。次いで、微小流動化したエマルジョンを、混合セルロースエステルのフィルタ膜を含む1.0/0.2μmのカプセルフィルタを通してろ過した。
【0090】
(ろ過と充填)
次いで、直列に配置したカプセルの前置フィルタ(1.0/0.2μmのMCEフィルタ膜)と2つの無菌化グレードのデュラポアカプセルフィルタ(ポリフッ化ビニリデンのフィルタ膜)を通して、エマルジョンを無菌充填領域の中に無菌ろ過し、生成物を20mLのタイプ1透明ガラスビンの中に充填し(20mL)、次いでブロモブチルゴムのストッパーとアルミニウムのフリップオフのシールでシールした。
【0091】
表2 実施例5の組成物
【表2】

本発明の組成物は、関連出願に記載の方法を用いて調製することも可能であった。以下の実施例は、US2006/0014730とUS2006/0148776の実施例4が、本発明の組成物を生成するためにどのようにして修正可能であったかを例証する。
【0092】
(実施例6:オレイン酸を有する17−AAG組成物の別の調製法)
17−AAG(又は上記実施例1〜4に記載の任意のアンサマイシン)を5Lのポリプロピレンビーカーに秤量した。リン脂質に対する17−AAG重量の約50倍量のエタノールを添加し、溶解が完了するまで混合した。次いで、17−AAGをエタノール/リン脂質の溶液に添加し、溶解が完了するまで混合した。次いで、Miglyol812N、大豆油、及びオレイン酸を、溶液に添加した。固体の溶解を助長するため、超音波槽及び/又は約45℃までの加熱を使用してもよい。所望の溶解を確実にするため、光学顕微鏡を使用して溶液をチェックしてもよい。
【0093】
激しい撹拌と組み合わせて、液体表面の上に乾燥空気又は窒素ガスの流れを強制的に通し、エタノール含有率が、例えば、その最初の存在の50重量%未満(例えば、5〜10%未満)に低下するまで、エタノールを蒸発させた。17−AAGの完全な溶解を確認するには、偏光フィルタを備えた光学顕微鏡下で溶液をチェックしうる(結晶、沈殿とも無いこと)。
【0094】
EDTA(2ナトリウム、2水和物、USP)、ショ糖、及び注射用蒸留水(共に水相)を5Lのポリプロピレンビーカー中に秤量し、固体が溶解するまで撹拌した。次いで、水相を油相に添加し、エマルジョンヘッドを備えた高速の乳化機/ホモジナイザーを使用し、表面に付着したオイルが「はぎ取られる」まで、5000rpmで徹底的な混合を行った。次いで、2〜5分間せん断速度を10000rpmまで高め、均一な一次エマルジョンを生成させた。平均液滴直径を測定するにはレーザー光散乱(LLS)を使用してもよく、例えば、光学顕微鏡下で溶液をさらにチェックし、結晶と固体の相対的な存在又は不在を判断してもよい。
【0095】
エマルジョンのpHは、0.2N NaOHを用いて6.0±0.2に調節した。次いで、平均液滴直径が190nm以下になるまで、75ミクロンのエマルジョン相互作用チャンバー(F20Y)を備え、約758kPa(110psi)の静水圧で作動する(414〜655kPa(60〜95psi)の動作圧)HOS型ミクロフルイダイザー(Microfluidics社、ニュートン、マサチューセッツ州、米国)に、一次エマルジョンを6〜8回通過させた。進捗を評価するため、個々の通過の後にLLSを使用してもよい。光学顕微鏡下で偏光を使用し、結晶の存在について溶液をさらにチェックしてもよい。
【0096】
次いで、層流フード中、エマルジョンを0.45ミクロンのゲルマンミニカプセルフィルタ(Pall社、イーストヒルズ、ニューヨーク州、米国)を通過させた後、無菌0.2ミクロンSartorius Sartobran Pカプセルフィルタ(500cm)(Sartorius AG、Goettingen、ドイツ)を通過させた。414kPa(60psi)以下の圧力で、スムースで連続的な流れを維持した。次いで、ろ液を収集し、少量をレーザー光散乱(LLS)及び/又は高性能液体クロマトグラフィー(HPLC)でのテスト用に取り分けた。
【0097】
(生物学的実施例)
(実施例7:処方A(オレイン酸なし)と処方B(オレイン酸あり)の静脈内投与後のラットにおける比較の薬物動態(17−AAG))
(概要)
処方A及び処方Bの静脈内(i.v.)投与の後、17−(アリルアミノ)−17−デメトキシゲルダナマイシン(17−AAG)とその活性代謝生成物(17−AG)の薬物動態(PK)をラットにおいて評価した。処方Aは、17−AAGの水中油型(培地と長鎖トリグリセリドと大豆レシチン)のエマルジョン処方である。処方Bは、オレイン酸の付加的成分を0.2重量%の最終濃度で含む以外は、処方Aと同じ組成を有する。
【0098】
頸静脈カテーテル処置のメスのスプラーグドーリーラット7匹に、10mg/kgの投与量で尾静脈を通し、処方A(n=3)又は処方B(n=4)の単一の2分間の静脈内注入を受けさせた。各動物は、投薬前及び投薬後の10回の間隔で、カテーテルから採血した。標準化LC/MS/MS法を用い、17−AAGと17−AGの血清濃度を測定した。個々の動物の時間に対する17−AAGと17−AGの濃度の曲線を、非区画法を用いて解析した。
【0099】
処方Aと処方Bの投与後の17−AAGと17−AGについての平均PKパラメーターは、有意には相違しなかった。
【0100】
代謝産物の17−AGは、17−AAGのCYP3A4仲介の酸化生成物であり、このため、血漿中への出現は、エマルジョン液滴からの17−AAGの放出とそれに続く遊離17−AAGの肝細胞への拡散に依存する。2つの処方の投与後、同一の17−AGのTmax及び類似の17−AGのAUC及び時間に対する濃度プロファイルが観測されたため、17−AAG放出の速度と範囲及び以降の肝臓分布が処方中のオレイン酸の包含によっては変化しないことが示唆された。
【0101】
要約すれば、下記に提示するデータは、処方B(本発明の1つの実施形態による)におけるオレイン酸の存在が、ラットに静脈内投与した後の処方Aで観察されるものから、17−AAGとその活性代謝産物17−AGのPKを変化させないことを示唆した。
(略語)
i.v. 静脈内
max 最大血清濃度
maxmaxの時間
Cltot 全クリアランス
処方A 17−AAGの培地と長鎖トリグリセリドと大豆レシチン)の水中処方
処方B 17−AAGの培地と長鎖トリグリセリド、大豆レシチンとオレイン酸0.2重量%の水中処方
PK 薬物動態
17−AAG 17−(アリルアミノ)−17−デメトキシゲルダナマイシン
17−AG 17−(アミノ)−17−デメトキシゲルダナマイシン
AUC(0−tlast) ゼロから最終測定可能濃度の時間までの血漿濃度の時間曲線下の領域
dss 分布の定常状態の体積
【0102】
処方Aは、17−AAGの水中油型(培地と長鎖トリグリセリドと大豆レシチン)のエマルジョン処方である。処方Bは、オレイン酸の付加的成分を0.2重量%の最終濃度で含む以外は、処方Aと同じ組成を有する。本研究の目的は、処方Aと処方Bをラットに静脈内投与した後の17−AAGとその活性代謝産物17−AGのPKを比較することであった。
【0103】
(材料と方法)
処方Aは、製造後に−20℃で冷凍し、インビボ研究の前夜に、4℃にて終夜で解凍し、使用の約2時間前に室温に移動した。処方Bは、製造後に4℃にて保管し、使用の約2時間前に室温に移動した。17−AAGの濃度とエマルジョンの液滴直径は、下記のように、製造時に各被験物質について測定した。
【0104】
(17−AAG濃度と液滴直径についての用量サンプルの分析)
17−AAG濃度を測定するため、Agilent1100シリーズのバイナリポンプ、Agilent1100シリーズのオートサンプラー、Agilent1100シリーズのMWVUV検出器、及びZorbax300SB−C18,3.5μm粒径カラム(4.6mm×150mm)からなるHPLCシステムで、標準化された方法論を実施した。吸光度は332nmでモニターした。注入体積は50μLであり、移動相の流速は1.0mL/分であった。480mL20mMのトリス−HLC(pH7.0)と520mLのアセトニトリルを組み合わせることによって、均一濃度の移動相を調製した。各被験物質のサンプルを、HPLC分析の前に、メタノールで20倍に希釈した。
【0105】
平均のエマルジョン液滴直径は、Microflex ver.10.1.1ソフトウエア(Microtrac)を備えたNanotrac150(Microtrac)を使用し、レーザー光散乱分光法(LLS)によって測定した。バッチサンプルは、分析前に、脱イオン水で100倍に希釈した。
【0106】
(試験システム)
使用した頸静脈カテーテル処置のメスのスプラーグドーリーラットは、Charles River Laboratories Inc.(ポーテージ、ミシガン州)から入手した。投薬後の体重は(02/25/05)、268.5グラムから283.6グラムの範囲であり、処方Aと処方Bを投薬したラットは、それぞれ平均で270.5グラムと274.9グラムであった。
【0107】
(実験的設計)
7匹の頸静脈カテーテル処置のメスのスプラーグドーリーラットが、10mg/kgの投与量(60mg/m)で尾静脈を通し、処方A(n=3)又は処方B(n=4)の単一の2分間の静脈内注入を受けた。投薬の前に、動物を約5分間にわたって加温パッド(約40℃)の上に置き、血管拡張を促進した。次いで、加温パッド(40℃)の上でラットを手で拘束し(Rodent Restraint Cone、Fisher Scientific)、Terumo Surflo(登録商標)翼付き注入セット(27G×1/2”)を使用し、尾静脈中に被験物質を制御された2分間注入として投与した(Harvard Apparatus22型注入ポンプ)。投与した用量体積(処方Aと処方Bをそれぞれ4.55mL/kgと5.26mL/kg)は、投薬日に測定した体重と製造時に測定した処方の17−AAG濃度に基づいた。血液サンプル(約250μL)は、投薬前とそれから投薬より1、5、10、15、及び15分間、並びに、1、2、3、4、及び6時間の後に、頸動脈のカテーテルから収集した。カテーテルは、各血液サンプルの直後に生理食塩水の注入(約250μL)で洗い流した。血液は、ポリプロピレンの微小遠心管に移し、室温で約10分間にわたって凝固させ、その後、遠心分離まで氷上に保持した。血液を10000Gで10分間にわたって遠心分離し、血清を透明な微小遠心管に移し、分析まで−20℃で保管した。
【0108】
(LC/MS/MSによる17−AAGと17−AGの濃度測定)
標準化されたLC/MS/MSアッセイを用い、17−AAGと17−AGの濃度を測定した。このアッセイは、LCQ Decaイオントラップ質量分析計と一体になったThermo Finnigan LC Surveyor高性能液体クロマトグラム(HPLC)で行った(グラジエントポンプ、溶媒脱気器、PDA検出器、カラムヒーター、及び自動サンプラーからなる)。分析物は、Phenomenex Synergi RP−MAX C12,4μm粒径カラム(75mm×2.0mm)でクロマトグラフィーに供した。傾斜法を、水からなる移動相A(1.0%の酢酸)とともに使用した。移動相Bは、アセトニトリルからなった(1.0%の酢酸)。50%A/50%Bでの平衡の後、移動相の混合物を5分間にわたって2%A/98%Bに換え、15分間の合計実行時間とした。流速は0.4mL/分で、カラムは30℃に維持した。両分析物の吸光度を335nmでモニターした。
【0109】
17−AAGと17−AGの原液をメタノールで連続的に希釈し、0.3〜30μg/mLの棘波的な標準溶液を得た。17−AAGと17−AGの較正基準を、メタノールに溶かした17−AAGと17−AGの溶液をラット血清の中にスパイクすることによって調製した(BioChemed Pharmacologicals)。
【0110】
アセトニトリル中のタンパクの沈殿とそれに続く遠心分離及び有機層の蒸発により、分析用の較正基準とサンプルを調製した。陰イオンモードにおいてエレクトロスプレーイオン化を用い、質量分析(HPLC/MS−SRM)と一体になった高性能液体クロマトグラフィーにより、移動相もどりの抽出物を分析した。二通りの17−AAGについての6点の標準曲線(50〜5000ng/mL)と17−AGについての5点の標準曲線(50〜3000ng/mL)、及び三通りの4つの品質管理基準を、定量のために使用した。
【0111】
この方法の定量下限は、両方の分析物について50ng/mLであった。個々の17−AAGと17−AGの濃度データは、アペンディクスAにある。代表的な標準曲線とクロマトグラムがアペンディクスBに示されている。
【0112】
(薬物動態解析)
個々の動物の時間に対する17−AAGの濃度データは、コンパートメント法を用いて解析した(WinNonlin、バージョン4.1)。最終半減期(t1/2)、0から無限までの時間に対する濃度の曲線下の領域(AUC0−∞)、全クリアランス(Cltot)、及び分布の定常状態の体積(Vdss)を求めた。17−AGについて、時間に対する濃度のデータのプロフィルは、非区画法を用いて解析し(WinNonlin、バージョン4.1)、t1/2と、0から最後の測定可能濃度までの曲線の下の領域(AUCtlast)を推定した。報告した17−AAGと17−AGのCmaxとTmaxの値は観測値である。処方Aと処方BについてのPKパラメータ値は、等分散を仮定するスチューデントt検定を用いて比較した(Microsoft Excel2000、バージョン9.0.6926SP−3)。
【0113】
(結果)
本研究に使用した処方Aと処方Bの17−AAG濃度は、それぞれ2.25mg/mLと1.90mg/mLであった。平均のエマルジョン液滴直径は、処方Aと処方Bについて、それぞれ105nmと60nmであった。
【0114】
表四に、個々のラットの17−AAG及び17−AGの血清濃度のデータを示す。
【0115】
表3:17−AAGの薬物動態パラメータの概要
【表3】

【0116】
表4:17−AGの薬物動態パラメータの概要
【表4】

注入開始から測定
NA=該当なし
【0117】
17−AAG(表3)と17−AG(表4)の平均PKパラメータの推定値は、処方Aと処方Bの投与の後、有意には相違しなかった。表5〜7に、個々のラットのPKパラメータを示す。両処方の投与後、活性代謝産物17−AGのTmaxは注入の1分後に生じ、母体のAUCに対する代謝産物の比は、有意には相違しなかった。
【0118】
代謝産物17−AGは、17−AAGのCYP3A4仲介酸化の生成物であり(Conforma Therapeuticsテクニカルレポート00−1010−PC/PK−TR−006−A)、このため、血漿中への出現は、エマルジョン滴からの17−AAGの放出とそれに続く遊離17−AAGの肝細胞中の拡散に依存する。同一の17−AGのTmaxと類似の17−AGのAUCの観察、及び2つの処方の投与後の時間に対する濃度のプロフィルは、17−AAG放出と次の肝臓分配の速度と範囲が、処方にオレイン酸を含めることによっては、変化しないことを示唆する。
【0119】
要するに、これらのデータは、処方B中のオレイン酸の存在が、ラットに対する静脈内投与後に処方Aについて観察されるものから、17−AAGとその活性代謝産物17−AGのPKを変化させないことを示す。
【0120】
表5 17−AAG血清濃度のデータ(血清中ng/mL)
【0121】
【表5】

ND=検出せず
【0122】
表6 17−AG血清濃度のデータ(血清中ng/mL)
【表6】

ND=検出せず
【0123】
表7
【表7】

【0124】
本願で引用した文献はいずれも、本発明が属する分野における技術レベルを示すものであり、これらの全体は参照により本願明細書に取り入れられる。しかしながら、いずれも先行技術であると認められるものではない。他の実施形態は添付の特許請求の範囲内にある。
【図面の簡単な説明】
【0125】
【図1】凍結状態(−20℃)貯蔵のオレイン酸無含有の6組成物(C04H044、C05E011、C05F022、C05L043、C05L047及びC06A007)の物理的安定性(平均液滴直径)を示す図である。
【図2】凍結状態(−20℃)貯蔵のオレイン酸0.2%含有の3組成物(N191−021、N191−058及びN191−150)の物理的安定性(平均液滴直径)を示す図である。
【図3】室温下オレイン酸含有及び無含有の組成物の物理的安定性(平均液滴直径)を示す図である。N191−021、N191−058及びN191−150の3つはオレイン酸含有組成物ロットであり、一方E05 A002はオレイン酸を含まない。
【図4】冷蔵温度(5℃)におけるオレイン酸無含有の6組成物(C04H044、C05E011、C05F022、C05L043、C05L047及びC06A007)の物理的安定性(平均液滴直径)を示す図である。
【図5】冷蔵温度(5℃)におけるオレイン酸0.2%含有の3組成物(N191−021、N191−058及びN191−150)の物理的安定性(平均液滴直径)を示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水相及び油相を含んでなる医薬組成物であって、前記油相はアンサマイシン及び2重量%未満のオレイン酸を含み、アンサマイシンはゲルダナマイシン、17−アミノゲルダナマイシン、17−アリアラミノ−17−デメトキシ−ゲルダナマイシン、下記構造を有する化合物563又は化合物237、又はこれらの任意のアンサマイシンの塩である、医薬組成物:
【化1】

化合物563 化合物237。
【請求項2】
前記アンサマイシンは17−アリアラミノ−17−デメトキシ−ゲルダナマイシンである、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項3】
前記アンサマイシンの最終濃度は約0.5から4mg/mLの範囲である、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項4】
前記アンサマイシンの最終濃度は約1から3mg/mLの範囲である、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項5】
前記アンサマイシンの最終濃度は約2mg/mLである、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項6】
前記組成物中の前記オレイン酸の量は前記医薬組成物の約1重量%以下である、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項7】
前記組成物中の前記オレイン酸の量は前記医薬組成物の約0.5から0.05重量%の範囲である、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項8】
前記組成物中の前記オレイン酸の量は前記医薬組成物の約0.2重量%である、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項9】
さらに中鎖トリグリセリドを含んでなる、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項10】
前記中鎖トリグリセリドの量は前記医薬組成物の約15重量%以下である、請求項9に記載の医薬組成物。
【請求項11】
前記中鎖トリグリセリドの量は前記医薬組成物の約7から13重量%の範囲である、請求項9に記載の医薬組成物。
【請求項12】
さらに長鎖トリグリセリドを含んでなる、請求項9に記載の医薬組成物。
【請求項13】
前記長鎖トリグリセリドの量は前記医薬組成物の約7重量%以下である、請求項12に記載の医薬組成物。
【請求項14】
前記長鎖トリグリセリドの量は前記医薬組成物の約2から5重量%の範囲である、請求項12に記載の医薬組成物。
【請求項15】
さらに乳化剤を含んでなる、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項16】
前記乳化剤はレシチンである、請求項15に記載の医薬組成物。
【請求項17】
前記乳化剤は大豆レシチンである、請求項16に記載の医薬組成物。
【請求項18】
前記レシチンの量は前記医薬組成物の約3から10重量%の範囲である、請求項15に記載の医薬組成物。
【請求項19】
前記レシチンの量は前記医薬組成物の約5から8重量%の範囲である、請求項15に記載の医薬組成物。
【請求項20】
前記油相は前記医薬組成物の約5から30重量%である、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項21】
前記オレイン酸の量は前記医薬組成物の約0.5から0.05重量%の間である、請求項2に記載の医薬組成物。
【請求項22】
前記アンサマイシンは17−アリアラミノ−17デメトキシ−ゲルダナマイシンであり、前記組成物中のオレイン酸の量は前記医薬組成物の約0.2重量%である、請求項5に記載の医薬組成物。
【請求項23】
前記アンサマイシンの最終濃度は約1から3mg/mLの範囲であり、前記医薬組成物に対して、前記組成物中のオレイン酸の量は約0.5から0.05重量%の間であり、前記中鎖トリグリセリドの量は約7から13重量%の範囲であり、前記長鎖トリグリセリドの量は約2から5重量%の範囲であり、レシチン量は約5から8重量%の範囲である、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項24】
前記アンサマイシンの最終濃度は約2mg/mLであり、前記医薬組成物に対して、前記組成物中オレイン酸の量は約0.2重量%あり、前記中鎖トリグリセリドの量は約7から13重量%の範囲であり、前記長鎖トリグリセリドの量は約2から5重量%の範囲であり、レシチン量は約5から8重量%の範囲であり、前記アンサマイシンは17−アリアラミノ−17−デメトキシ−ゲルダナマイシンである、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項25】
平均液滴直径は約500nm未満である、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項26】
平均液滴直径は約150nm未満である、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項27】
平均液滴直径は約80nm未満である、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項28】
平均液滴直径は約80nm未満である、請求項23に記載の医薬組成物。
【請求項29】
平均液滴直径は約80nm未満である、請求項24に記載の医薬組成物。
【請求項30】
前記医薬組成物のpHは約5から8の範囲である、請求項23に記載の医薬組成物。
【請求項31】
前記医薬組成物のpHは約5から8の範囲である、請求項24に記載の医薬組成物。
【請求項32】
水相及び油相を含んでなる医薬組成物であって、前記油相はさらに17−アリアラミノ−17−デメトキシ−ゲルダナマイシン及び2重量%未満のオレイン酸を含み、前記医薬組成物は約5から8のpH範囲及び約0℃から10℃の温度範囲において少なくとも18ヶ月安定である、医薬組成物。
【請求項33】
前記pH範囲は約5.5から7.5であり、前記温度範囲は約2℃から8℃である、請求項31に記載の医薬組成物。
【請求項34】
前記組成物の平均液滴直径は室温において100nmを超えて増加せず、少なくとも3ヶ月間、pHは5から8の範囲である、請求項31に記載の医薬組成物。
【請求項35】
前記組成物の平均液滴直径は室温において50nmを超えて増加せず、少なくとも3ヶ月間、pHは5.5から7の範囲である、請求項31に記載の医薬組成物。
【請求項36】
前記組成物の平均液滴直径は約0から10℃の範囲の温度において100nmを超えて増加せず、少なくとも12ヶ月間、pHは5から8の範囲である、請求項31に記載の医薬組成物。
【請求項37】
前記組成物の平均液滴直径は約2から8℃の範囲の温度において35nmを超えて増加せず、少なくとも12ヶ月間、pHは5.5から7の範囲である、請求項31に記載の医薬組成物。
【請求項38】
HSP−90媒介障害を有する個体を治療する方法であって、請求項1の医薬組成物の有効量を前記個体に投与することを含んでなる、方法。
【請求項39】
HSP−90媒介障害を有する個体を治療する方法であって、請求項23の医薬組成物の有効量を前記個体に投与することを含んでなる、方法。
【請求項40】
HSP−90媒介障害を有する個体を治療する方法であって、請求項24の医薬組成物の有効量を前記個体に投与することを含んでなる、方法。
【請求項41】
前記HSP−90媒介障害は、炎症性疾患、感染症、自己免疫不全、脳梗塞、虚血、心疾患、神経疾患、繊維遺伝子障害、増殖性障害、腫瘍、白血病、新生物、がん、悪性腫瘍、代謝病及び難病からなる群から選択される、請求項38に記載の方法。
【請求項42】
前記HSP−90媒介障害は、炎症性疾患、感染症、自己免疫不全、脳梗塞、虚血、心疾患、神経疾患、繊維遺伝子障害、増殖性障害、腫瘍、白血病、新生物、がん、悪性腫瘍、代謝病及び難病からなる群から選択される、請求項39に記載の方法。
【請求項43】
前記HSP−90媒介障害は、炎症性疾患、感染症、自己免疫不全、脳梗塞、虚血、心疾患、神経疾患、繊維遺伝子障害、増殖性障害、腫瘍、白血病、新生物、がん、悪性腫瘍、代謝病及び難病からなる群から選択される、請求項40に記載の方法。
【請求項44】
前記HSP−90媒介障害は、炎症性疾患、感染症、自己免疫不全、脳梗塞、虚血、心疾患、神経疾患、繊維遺伝子障害、増殖性障害、腫瘍、白血病、新生物、がん、悪性腫瘍、代謝病及び難病からなる群から選択される、請求項43に記載の方法。
【請求項45】
さらに細胞毒剤、抗血管新生薬及び抗悪性腫瘍薬からなる群から選ばれる少なくとも1の治療薬を投与することを含んでなる、請求項38に記載の方法。
【請求項46】
さらに細胞毒剤、抗血管新生薬及び抗悪性腫瘍薬からなる群から選ばれる少なくとも1の治療薬を投与することを含んでなる、請求項39に記載の方法。
【請求項47】
さらに細胞毒剤、抗血管新生薬及び抗悪性腫瘍薬からなる群から選ばれる少なくとも1の治療薬を投与することを含んでなる、請求項40に記載の方法。
【請求項48】
少なくとも1の抗悪性腫瘍薬は、アルキル化剤、代謝拮抗物質、エピドフィロトキシン、抗悪性腫瘍酵素、トポイソメラーゼ阻害剤、プロカルバジン、ミトキサントロン、白金配位化合物、免疫増強剤及び成長阻害物質、ホルモン/抗ホルモン治療薬及び造血性成長因子からなる群から選ばれる、請求項47に記載の方法。
【請求項49】
医薬品製造における、請求項1から31のいずれかに記載の組成物の使用。
【請求項50】
HSP−90媒介疾病及び症状の治療及び予防処置のための医薬品製造における、請求項1から31のいずれかに記載の組成物の使用。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公表番号】特表2009−518302(P2009−518302A)
【公表日】平成21年5月7日(2009.5.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−543503(P2008−543503)
【出願日】平成18年11月30日(2006.11.30)
【国際出願番号】PCT/US2006/046069
【国際公開番号】WO2007/064926
【国際公開日】平成19年6月7日(2007.6.7)
【出願人】(504172359)コンフォーマ・セラピューティクス・コーポレイション (7)
【氏名又は名称原語表記】CONFORMA THERAPEUTICS CORPORATION
【Fターム(参考)】