説明

アンテナ測定用プローブ及びこれを用いた測定方法

【課題】アンテナ測定用プローブ自体に通電することによって外部導体の周囲に電界が生じる。この電界の影響によってアンテナ装置の反射特性が変化するため、より高い精度でアンテナ装置の反射特性を測定することが困難であった。
【解決手段】外部導体の外周面に接続され、内部導体の一軸方向に垂直な方向にそれぞれ延設された第1の突出部及び第2の突出部を具備し、第1の突出部の長さが第2の突出部の長さよりも大きいアンテナ測定用プローブとする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、誘電体アンテナに代表されるアンテナ装置の反射特性を測定するために用いられるアンテナ測定用プローブである。
【背景技術】
【0002】
回路基板のインピーダンス又はアンテナ装置の反射特性を測定するため、特許文献1に記載されているような測定用同軸型プローブが用いられている。特許文献1に記載の測定用同軸型プローブでは、プランジャの先端を測定端子に当接させるとともに、突起部をアース端子に当接させることにより、回路基板のインピーダンス又はアンテナ装置の反射特性を測定することが可能となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001−4659号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、アンテナ装置の反射特性を測定するため、特許文献1に記載の測定用同軸型プローブを用いた場合、電界強度の強いアンテナの放射導体の近傍にプローブを配置させる必要があるため、アンテナの放射導体から同軸プローブの外部導体などの金属部分との間に、双方を結ぶ電気力線で表現されるような不要な電界が生じる。この電界の影響により、アンテナ装置の反射特性が変化する。近年、より高い精度でアンテナ装置の反射特性を測定することが求められており、この電界の影響が無視できないものとなっている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明のアンテナ測定用プローブは、円筒状の誘電体と、該誘電体の内側に位置して、前記誘電体の軸方向の一方の端部にシグナルピンが接続される内部導体と、該誘電体の外周面上に配設された円筒状の外部導体と、を備えている。さらに、前記外部導体の外周面に接続され、この外周面から外方に向かってそれぞれ突出した第1の突出部及び第2の突出部を具備し、前記第1の突出部の長さが前記第2の突出部の長さよりも大きいことを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明のアンテナ測定用プローブによれば、外部導体の外周面に接続され、この外周面から外方に向かってそれぞれ突出した第1の突出部及び第2の突出部を具備していることにより、アンテナ装置の反射特性を測定する際、アンテナ装置の放射導体とプローブの外部導体などの金属部分との間に、双方を結ぶ電気力線で表現されるような不要な電界が生じた場合であっても、プローブの外部導体の一方の端部及び突出部の先端を節とする電界の共振が生じ、不要な電界による影響を緩和することができる。
【0007】
さらに、本発明のアンテナ測定用プローブによれば、第1の突出部の長さが第2の突出部の長さよりも大きいため、第1の突出部の長さに対応した波長の共振と、第2の突出部の長さに対応した波長の共振とが生じる。そのため、これら2つの共振による2つの共振周波数に応じた周波数帯域で、外部導体の周囲に生じた電界を弱めることができる。これにより、アンテナ装置の反射特性への影響を小さくすることができるので、より高い精度でアンテナ装置の反射特性を測定することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の第1の実施形態にかかるアンテナ測定用プローブであって、内部導体の一軸方向に平行な断面における断面図である。
【図2】本発明の第1の実施形態にかかるアンテナ測定用プローブであって、内部導体の一軸方向に垂直な断面における断面図である。
【図3】本発明の第1の実施形態にかかるアンテナ測定用プローブをアンテナ装置に当接させた状態を示す断面図である。
【図4】本発明の第2の実施形態にかかるアンテナ測定用プローブであって、内部導体の一軸方向に平行な断面における断面図である。
【図5】本発明の第3の実施形態にかかるアンテナ測定用プローブであって、内部導体の一軸方向に平行な断面における断面図である。
【図6】本発明の第4の実施形態にかかるアンテナ測定用プローブであって、内部導体の一軸方向に垂直な断面における断面図である。
【図7】本発明の第5の実施形態にかかるアンテナ測定用プローブであって、内部導体の一軸方向に垂直な断面における断面図である。
【図8】図1に示すアンテナ測定用プローブを用いて得られた誘電体アンテナの反射特性を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明のアンテナ測定用プローブについて図面を用いて詳細に説明する。
【0010】
図1,2に示すように、本発明の第1の実施形態にかかるアンテナ測定用プローブ1は、円筒状の誘電体7と、誘電体7の内側に位置して、誘電体7の軸方向の一方の端部にシグナルピン5が接続される内部導体3と、誘電体7の外周面上に配設された円筒状の外部導体9と、を備えている。
【0011】
シグナルピン5の先端及び外部導体9をアンテナ装置の被測定導体に当接させることにより、アンテナ装置の反射特性を測定することができる。具体的には、例えば、図3に示すように、アンテナ装置として誘電体アンテナ11を用いた場合であって、誘電体アンテナ11が、誘電体基板13と、誘電体基板13の主面上に配設された放射導体15と、誘電体基板13の主面上に配設され、放射導体15と電気的に絶縁されるとともに基準電位に接続された基準導体17と、を備えている場合に、シグナルピン5を放射導体15に当接させるとともに、外部導体9を基準導体17に当接させることにより、誘電体アンテナ11の反射特性を測定することができる。なお、ここでは、放射導体15及び基準導体17が被測定導体に対応している。
【0012】
さらに、本実施形態にかかるアンテナ測定用プローブ1は、外部導体9の外周面に接続され、この外周面から外方に向かってそれぞれ突出した第1の突出部19及び第2の突出部21を具備している。そのため、誘電体アンテナ11の反射特性を測定する際、誘電体アンテナ11の放射導体15とアンテナ測定用プローブ1の外部導体9との間に、双方を結ぶ電気力線で表現される不要な電界が生じた場合でも、この不要な電界による影響を緩和することができる。これは、アンテナ測定用プローブ1の外部導体9の一方の端部及び突出部の先端を節とする電界の共振が生じるからである。
【0013】
そして、第1の突出部19の長さL1が第2の突出部21の長さL2よりも大きい。そのため、外部導体9の一方の端部から第1の突出部19との接続部分までの長さH1と第1の突出部19の長さL1との合計に対応した波長の共振と、外部導体9の一方の端部から第2の突出部21との接続部分までの長さH2と第2の突出部21の長さL2との合計に対応した波長の共振とが生じるので、これら2つの共振による2つの共振周波数に応じた周波数帯域で、外部導体9の周囲に生じた電界を弱めることができる。これにより、アンテナ装置の反射特性への影響を小さくすることができるので、より高い精度でアンテナ装置の反射特性を測定することが可能となる。
【0014】
本実施形態にかかるアンテナ測定用プローブ1は、一軸方向に延設された内部導体3を備えている。この内部導体3を介して、同軸ケーブル(非図示)やそれに接続されたネットワークアナライザなどの測定装置(非図示)からシグナルピン5へ通電することができる。内部導体3としては、電気伝導性の良好な部材を用いることが好ましい。具体的には、Cu,Cr,Mo,Mn,Ni,Ag,Au,Pt及びこれらの合金を用いることが好ましい。
【0015】
また、本実施形態にかかるアンテナ測定用プローブ1は、内部導体3の一方の端部に接続されたシグナルピン5を備えている。このシグナルピン5及び外部導体9をアンテナ装置の被測定導体に当接させるとともに通電することにより、アンテナ装置の反射特性を測定することができる。シグナルピン5としては、内部導体3と同様に、電気伝導性の良好な部材を用いることが好ましい。具体的には、Cu,Cr,Mo,Mn,Ni,Ag,Au,Pt及びこれらの合金を用いることが好ましい。
【0016】
また、本実施形態にかかるアンテナ測定用プローブ1は、内部導体3を被覆する円筒状の誘電体7を備えている。このような誘電体7を備えていることにより、内部導体3と外部導体9との間の電気絶縁性を良好に保つことができる。そのため、誘電体7は、内部導体3と外部導体9との間の電気絶縁性を確保することができる程度の厚みを有していることが好ましい。
【0017】
誘電体7としては、例えば、セラミック材料のような無機材料及び樹脂材料を用いることができる。具体的には、セラミック材料としては、例えば、アルミナセラミックス、ムライトセラミックス及びガラスセラミックスを用いることができる。また、樹脂材料としては、例えば、四フッ化エチレン―エチレン樹脂(ポリテトラフルオロエチレン;PTFE)、四フッ化エチレン―エチレン共重合樹脂(テトラフルオロエチレン―エチレン共重合樹脂;ETFE)及び四フッ化エチレン―パーフルオロアルコキシエチレン共重合樹脂(テトラフルオロエチレン―パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合樹脂;PFA)のようなフッ素樹脂、ガラスエポキシ樹脂並びにポリイミドを用いることができる。
【0018】
また、本実施形態にかかるアンテナ測定用プローブ1は、誘電体7の少なくとも一部を被覆する円筒状の外部導体9を備えている。外部導体9および内部導体3は、同軸ケーブル(非図示)を介して、ネットワークアナライザのような測定機器(非図示)に接続されている。外部導体9及びシグナルピン5をアンテナ装置の被測定導体に当接させることにより、アンテナ装置の反射特性を測定することができる。
【0019】
また、内部導体3の一軸方向におけるシグナルピン5の端部の高さ位置と外部導体9の一方の端部の高さ位置が等しいことが好ましい。言い換えれば、内部導体3の一軸方向と、シグナルピン5の端部及び外部導体9の一方の端部を含む平面との成す角が垂直であることが好ましい。アンテナ装置の被測定導体にシグナルピン5及び外部導体9を当接させた場合に、アンテナ装置の被測定導体の主面と内部導体3の一軸方向とを垂直とすることができるからである。これにより、外部導体9とアンテナ装置の放射導体との間に不要な電界が生じにくくなるので、アンテナ装置の反射特性に関する測定の精度をより高めることができる。
【0020】
外部導体9としては、内部導体3と同様に、電気伝導性の良好な部材を用いることが好ましい。具体的には、Cu,Cr,Mo,Mn,Ni,Ag,Au,Pt及びこれらの合金を用いることが好ましい。
【0021】
また、本実施形態おける外部導体9の一方の端部には、グランドピン9aが形成されている。このグランドピン9a及びシグナルピン5をアンテナ装置の被測定導体に当接させることにより、アンテナ装置の反射特性を測定することができる。このようなグランドピン9aを有している場合には、外部導体9の一方の端部における端面全体ではなく、一部分のみを被測定導体に対して点状に当接させることができる。そのため、被測定導体の所望の部分のみに外部導体9を当接させることができるので、アンテナ装置の反射特性に関する測定の精度を容易に高めることができる。なお、本実施形態における外部導体9は、グランドピン9aを1つ有しているが、これに限られるものではない。例えば、外部導体9が複数のグランドピン9aを有していても良い。
【0022】
また、本実施形態にかかるアンテナ測定用プローブ1は、外部導体9の外周面上に配設されたホルダ23を備えている。このようなホルダ23を外部導体9の外周面上に適宜配設することにより、素手でアンテナ測定用プローブ1を持つことができるので、アンテナ測定用プローブ1の取り扱いが容易となる。ホルダ23としては、電気絶縁性の良好な部材を用いることが好ましい。具体的には、誘電体7と同様に、セラミック材料のような無機材料及び樹脂材料を用いることが好ましい。
【0023】
さらに、本実施形態にかかるアンテナ測定用プローブ1は、外部導体9の外周面に接続され、内部導体3の一軸方向に垂直な方向にそれぞれ延設された第1の突出部19及び第2の突出部21を具備している。このような第1の突出部19及び第2の突出部21を具備していることにより、外部導体9の一方の端部と第1の突出部19の先端とを節とする共振(以下、第1の共振ともいう)、及び、外部導体9の一方の端部と第2の突出部21の先端とを節とする共振(以下、第2の共振ともいう)を生じさせることができる。そして、これらの共振により、アンテナ装置の放射導体と外部導体9との間に、双方を結ぶ電気力線で表現される不要な電界を緩和することが出来る。
【0024】
そして、本実施形態においては、第1の突出部19の長さL1が第2の突出部21の長さL2よりも大きい。そのため、第1の共振における共振波の半波長にあたる長さ(L1+H2)/2が第2の共振における共振波の半波長にあたる長さ(L2+H2)/2よりも長くなる。言い換えれば、第1の共振における共振周波数が、第2の共振における共振周波数よりも小さくなる。このように第1の共振による共振周波数と第2の共振による共振周波数とが異なるため、これら2つの共振による2つの共振周波数に応じた周波数帯域で、外部導体9の周囲に生じた電界を弱めることができる。これにより、アンテナ装置の反射特性への影響を小さくすることができるので、より高い精度でアンテナ装置の反射特性を測定することが可能となる。
【0025】
特に、第1の共振における共振周波数が、アンテナ装置の共振周波数以下、若しくは、第2の共振における共振周波数がアンテナ装置の共振周波数以上となるように、第1の突出部19及び第2の突出部21が形成されていることが好ましい。
【0026】
外部導体9の周囲に生じた電界の周波数成分のうち、アンテナ装置の共振周波数に対応する周波数成分が、アンテナ装置の反射特性に大きく影響する。しかしながら、第1の突出部19及び第2の突出部21が上記の長さであることにより、外部導体9の周囲に生じた電界の周波数成分のうち、アンテナ装置の共振周波数に対応する周波数成分を小さくすることができる。そのため、アンテナ装置の反射特性への影響を効率良く小さくすることができるからである。
【0027】
特に、第1の共振又は第2の共振における共振周波数のいずれかがアンテナ装置の共振周波数と一致するように、第1の突出部19及び第2の突出部21が形成されていることがより好ましい。第1の共振及び第2の共振により、外部導体9の周囲に生じた電界の周波数成分のうち、これらの共振における共振周波数に対応する周波数成分が最も抑制されるからである。これにより、アンテナ装置の反射特性を測定する際に生じるアンテナ装置とアンテナ測定用プローブ1との間の不要な電界成分をさらに抑制することが可能となる。
【0028】
また、図2に示すように、内部導体3の一軸方向に平行な方向から平面視した場合に、第1の突出部19の外部導体9との接続部分及び第2の突出部21の外部導体9との接続部分が、内部導体3を中心として点対称となる位置に配設されていることが好ましい。これにより、第1の突出部19及び第2の突出部21に起因して生じる電界の共振が、互いの突出部に干渉する影響を小さくすることができる。そのため、外部導体9の周囲に生じた電界を、第1の共振及び第2の共振により効率良く弱めることができる。
【0029】
次に、本発明の第2の実施形態にかかるアンテナ測定用プローブ1について説明する。
【0030】
図4に示すように、本実施形態にかかるアンテナ測定用プローブ1は、円筒状の誘電体7と、誘電体7の内側に位置して、誘電体7の軸方向の一方の端部にシグナルピン5が接続される内部導体3と、誘電体7の外周面上に配設された円筒状の外部導体9と、を備えている。
【0031】
さらに、本実施形態にかかるアンテナ測定用プローブ1は、外部導体9の外周面に接続され、この外周面から外方に向かってそれぞれ突出した第1の突出部19及び第2の突出部21を具備している。これにより、外部導体9の一方の端部及び各々の突出部の先端を節とする共振を生じさせることができる。そして、外部導体9の一方の端部から第1の突出部19との接続部分までの長さH1が、外部導体9の一方の端部から第2の突出部21との接続部分までの長さH2よりも大きい。
【0032】
このため、外部導体9の一方の端部から第1の突出部19の先端までの長さであるL1+H1に対応した波長の共振と、外部導体9の一方の端部から第2の突出部21の先端までの長さであるL2+H2に対応した波長の共振とが生じる。これにより、第1の実施形態にかかるアンテナ測定用プローブ1と同様に、これら2つの共振による2つの共振周波数に応じた周波数帯域で、外部導体9の周囲に生じた電界を弱めることができる。結果として、アンテナ装置の反射特性への影響を小さくすることができるので、より高い精度でアンテナ装置の反射特性を測定することが可能となる。なお、ここで、第1の突出部19の長さをL1、第2の突出部の長さをL2としている。
【0033】
特に、本実施形態にかかるアンテナ測定用プローブ1のように、第1の突出部19の長さL1が第2の突出部21の長さL2よりも大きいことが好ましい。これにより、外部導体9の一方の端部から第1の突出部19の先端までの長さL1+H1を外部導体9の一方の端部から第2の突出部21の先端までの長さL2+H2よりも、より確実に大きくすることができる。そのため、これら2つの共振による2つの共振周波数で挟まれた周波数帯域を広くすることができるので、広範囲の共振周波数を有するアンテナ装置に汎用的に用いることができる。
【0034】
次に、本発明の第3の実施形態にかかるアンテナ測定用プローブ1について説明する。
【0035】
図5に示すように、本実施形態にかかるアンテナ測定用プローブ1は、第2の実施形態にかかるアンテナ測定用プローブ1と比較して、外部導体9の一方の端部から第1の突出部19との接続部分までの長さH1と、第1の突出部19の長さL1が略同一である。さらに、外部導体9の一方の端部から第2の突出部21との接続部分までの長さH2と、第2の突出部21の長さL2が略同一である。
【0036】
このように、本実施形態にかかるアンテナ測定用プローブ1では、L1、L2、H1及びH2が、L1=H1、L2=H2となっている。これにより、外部導体9の一方の端部及び第1の突出部19の先端を節とする共振、並びに、外部導体9の一方の端部及び第2の突出部21の先端を節とする共振において、外部導体9と第1の突出部19、及び、外部導体9と第2の突出部21との接続部分がそれぞれ電界の腹となる。そのため、これらの共振を安定したものとすることができる。結果として、より高い精度でアンテナ装置の反射特性を測定することが可能となる。
【0037】
次に、本発明の第4の実施形態にかかるアンテナ測定用プローブ1について説明する。
【0038】
図6に示すように、本実施形態にかかるアンテナ測定用プローブ1は、第1の実施形態にかかるアンテナ測定用プローブ1と比較して、外部導体9の外周面に接続され、内部導体3の一軸方向に垂直な方向にそれぞれ延設された第3の突出部25を更に具備し、第3の突出部25の長さL3が第2の突出部21の長さL2よりも小さい。
【0039】
このような第1の突出部19、第2の突出部21及び第3の突出部25を有していることにより、より広範囲の周波数帯域で外部導体9の周囲に生じた電界を弱めることが可能となる。また、これらの突出部の端部及び外部導体9の一方の端部を節とする各共振のうち、第1の突出部19に起因する共振に関する相対的に最も小さい共振周波数と第3の突出部25に起因する共振に関する相対的に最も大きい共振周波数との間に、第2の突出部21に起因する共振に関する共振周波数が存在している。そのため、これらの共振に関する周波数帯域全体で外部導体9の周囲に生じた電界を大きく弱めることが可能となる。
【0040】
次に、本発明の第5の実施形態にかかるアンテナ測定用プローブ1について説明する。
【0041】
上記の各実施形態において、第1の突出部19及び第2の突出部21は、内部導体3の一軸方向に垂直な方向にそれぞれ延設された棒状の形状であるが、第1の突出部19及び第2の突出部21としては、これに限られるものではない。図7に示すように、本実施形態にかかるアンテナ測定用プローブ1は、外部導体9から離隔するに従って幅の大きくなる扇形の第1の突出部19及び第2の突出部21を具備している。
【0042】
本実施形態のように、扇形状の第1の突出部19及び第2の突出部21を具備している場合には、棒状の突出部を具備している場合と比較して、アンテナ測定用プローブ1をアンテナ装置に当接する際に、アンテナ装置の偏波面に合わせることが容易となり、より精度のよい反射特性の測定が可能となる。
【0043】
次に、上記の実施形態にかかるアンテナ測定用プローブ1を用いてアンテナ装置の反射特性を測定する測定方法について説明する。
【0044】
まず、アンテナ装置にアンテナ測定用プローブ1を相対的に近づける。なお、アンテナ装置とアンテナ測定用プローブ1は、相対的に近づけば良く、例えば、アンテナ装置をアンテナ測定用プローブ1に近づけても良い。
【0045】
次いで、シグナルピン5の先端及び外部導体9をアンテナ装置の被測定導体に当接させる。このとき、上記の実施形態のように外部導体9の一方の端部にグランドピン9aが形成されている場合には、シグナルピン5の先端及びグランドピン9aの先端を被測定導体に当接させればよい。
【0046】
その後、アンテナ装置からアンテナ測定用プローブ1を相対的に遠ざける。このとき、アンテナ装置にアンテナ測定用プローブ1を相対的に近づける工程と同様に、アンテナ装置からアンテナ測定用プローブ1が相対的に遠ざかれば良く、例えば、アンテナ装置をアンテナ測定用プローブ1から遠ざけても良い。
【実施例】
【0047】
アンテナ測定用プローブ1を以下のようにして電磁界シミュレーションにて特性評価を実施した。
【0048】
内部導体3は、直径が80μm、長さが約150mmの棒状で、素材は完全導体とした。さらに、この内部導体3の一方の端部に、同じ完全導体で、長さが1mmである円錐柱状のシグナルピン5を接続した。また、直径約1.5mmとなる誘電体7により内部導体3を被覆した。誘電体7には、インピーダンスが50Ωとなるように、誘電率13を設定した。さらに、厚みが80μmである外部導体9により誘電体7を被覆した。外部導体9も完全導体とした。外部導体9の一方の端部には端面の直径が80μmであって、長さが1mmである円柱状のグランドピン9aが1つ形成されている。また、グランドピン9a並びに第1の突出部19及び第2の突出部21が露出するように外部導体9をホルダ23により被覆した。
【0049】
以上のようにして、試料番号1のアンテナ測定用プローブのシミュレーションモデルを作成した。そのため、試料番号1のアンテナ測定用プローブは第1の突出部19及び第2の突出部21を有していない。更に、第1の突出部19及び第2の突出部21を有し、図1に示す実施形態のアンテナ測定用プローブ1として試料番号2のアンテナ測定用プローブのシミュレーションモデルを作成した。試料番号2のアンテナ測定用プローブは、試料番号1のアンテナ測定用プローブにおいて、第1の突出部19及び第2の突出部21を更に具備している構成とした。
【0050】
第1の突出部19及び第2の突出部21はグランドピン9aの端部から80mmとなる位置(H1=H2=80mm)であって、内部導体3の一軸方向に平行な方向から平面視した場合に、内部導体3を中心として互いに点対称となるように外部導体9の外周面に接続した。第1の突出部19の長さL1は80mmとした。また、第2の突出部21の長さL2は40mmとした。なお、第1の突出部19及び第2の突出部21の素材についても完全導体とした。
【0051】
試料番号1及び2のアンテナ測定用プローブ1のシミュレーションモデルを用いてアンテナ装置の反射特性を電磁界シミュレーションにより計算した。アンテナ装置としては、誘電体基板13と、誘電体基板13の主面上に配設された放射導体15と、誘電体基板13の主面上に配設され、放射導体15と電気的に絶縁されるとともに基準電位に接続された基準導体17と、を備えている誘電体アンテナ11を用いた。誘電体基板13としては、30mm角、厚みが約2mmの直方体である、誘電率が約9のものを用いた。基準導体17としては、1mm角となるように誘電体基板13の主面上に配設された完全導体を用いた。また、基準導体17を囲うように0.5mmの間隔を空けて誘電体基板13の主面全体に放射導体15を配設した。放射導体15の素材についても完全導体とした。
【0052】
上記の誘電体アンテナ11を用いて、グランドピン9aが基準導体17に当接するとともに、シグナルピン5が放射導体15に当接するようにした。この状態での誘電体アンテナ11の反射特性を、電磁界シミュレーションを用いて評価した。
【0053】
図8に、スミスチャート図を用いて上記電磁界シミュレーションの結果を示す。なお、スミスチャートにおいては、その中心がアンテナ装置に接続されるICチップや測定機器、また測定機器との接続に使用する同軸ケーブルやプローブとのインピーダンス整合が取れた状態を示す。そのため、アンテナは、所望の周波数においてこの中心付近を通過するように設計される。
【0054】
図8(a)において、実線は、互いに長さの異なる第1の突出部19及び第2の突出部21を具備していない試料番号1のアンテナ測定用プローブを用いた場合の反射特性であり、破線はアンテナ測定用プローブがアンテナ装置の上面に存在しない場合、すなわち実使用条件に則した理想的な状態での反射特性である。図8(a)に示すように、試料番号1の測定用同軸型プローブでは、この測定用同軸型プローブの周囲に電界が生じた電界の影響により、アンテナ装置の反射特性が大きく変化している。そのため、破線で示す本来測定されるべき反射特性から大きくずれたものとなっている。
【0055】
一方、図8(b)に示すように、試料番号2の測定用同軸型プローブでは、外部導体9の一方の端部と、第1の突出部19及び第2の突出部21を節とする電界の共振によって、外部導体9の周囲に生じた電界が弱められている。結果として、アンテナ装置の反射特性への影響を小さくなっていることがわかる。このように、試料番号2のアンテナ測定用プローブを用いることによって、より高い精度でアンテナ装置の反射特性を測定できる。なお、図8(b)において、実線は、互いに長さの異なる第1の突出部19及び第2の突出部21を具備している試料番号2のアンテナ測定用プローブ1を用いた場合の反射特性であり、破線は図8(a)と同じくアンテナ測定用プローブがアンテナ装置の上面に存在しない理想的な状態での反射特性である。
【0056】
以上、本発明のアンテナ測定用プローブについて、種々の実施形態及び実施例を用いて説明したが、本発明は、上記の実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内で種々の変更を行うことは何ら差し支えない。
【符号の説明】
【0057】
1・・・アンテナ測定用プローブ
3・・・内部導体
5・・・シグナルピン
7・・・誘電体
9・・・外部導体
9a・・・グランドピン
11・・・誘電体アンテナ
13・・・誘電体基板
15・・・放射導体
17・・・基準導体
19・・・第1の突出部
21・・・第2の突出部
23・・・ホルダ
25・・・第3の突出部


【特許請求の範囲】
【請求項1】
円筒状の誘電体と、
該誘電体の内側に位置して、前記誘電体の軸方向の一方の端部にシグナルピンが接続される内部導体と、
該誘電体の外周面上に配設された円筒状の外部導体と、を備えたアンテナ測定用プローブであって、
前記外部導体の外周面に接続され、この外周面から外方に向かってそれぞれ突出した第1の突出部及び第2の突出部を具備し、前記第1の突出部の長さが前記第2の突出部の長さよりも大きいことを特徴とするアンテナ測定用プローブ。
【請求項2】
円筒状の誘電体と、
該誘電体の内側に位置して、前記誘電体の軸方向の一方の端部にシグナルピンが接続される内部導体と、
該誘電体の外周面上に配設された円筒状の外部導体と、を備えたアンテナ測定用プローブであって、
前記外部導体の外周面に接続され、この外周面から外方に向かってそれぞれ突出した第1の突出部及び第2の突出部を具備し、前記外部導体の一方の端部から前記第1の突出部との接続部分までの長さが、前記外部導体の一方の端部から前記第2の突出部との接続部分までの長さよりも大きいことを特徴とするアンテナ測定用プローブ。
【請求項3】
前記第1の突出部の長さが前記第2の突出部の長さよりも大きいことを特徴とする請求項2に記載のアンテナ測定用プローブ。
【請求項4】
前記外部導体の一方の端部から前記第1の突出部との接続部分までの長さと、前記第1の突出部の長さが略同一であり、且つ、前記外部導体の一方の端部から前記第2の突出部との接続部分までの長さと、前記第2の突出部の長さが略同一であることを特徴とする請求項3に記載のアンテナ測定用プローブ。
【請求項5】
前記内部導体の一軸方向に平行な方向から平面視した場合に、前記第1の突出部の前記外部導体との接続部分及び前記第2の突出部の前記外部導体との接続部分が、前記内部導体を中心として点対称となる位置に配設されていることを特徴とする請求項1に記載のアンテナ測定用プローブ。
【請求項6】
前記外部導体の外周面に接続され、前記内部導体の一軸方向に垂直な方向にそれぞれ延設された第3の突出部を更に具備し、前記第3の突出部の長さが前記第2の突出部の長さよりも小さいことを特徴とする請求項1に記載のアンテナ測定用プローブ。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれかに記載のアンテナ測定用プローブを用いてアンテナ装置の反射特性を測定する測定方法であって、
前記アンテナ装置に前記アンテナ測定用プローブを相対的に近づける工程と、
前記シグナルピンの先端及び前記外部導体を前記アンテナ装置の被測定導体に当接させる工程と、
前記アンテナ装置から前記アンテナ測定用プローブを相対的に遠ざける工程と、
を具備することを特徴とする測定方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−175378(P2010−175378A)
【公開日】平成22年8月12日(2010.8.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−18117(P2009−18117)
【出願日】平成21年1月29日(2009.1.29)
【出願人】(000006633)京セラ株式会社 (13,660)
【Fターム(参考)】