説明

アンテナ装置およびレーダ装置

【課題】小型で軽量な長尺状アンテナを実現する。
【解決手段】長尺形状の二次元スロットアンテナ20の短辺方向に沿った放射面と反対側の背面には、モード変換用導波管30が設置される。モード変換用導波管30は、二次元スロットアンテナ20の背面との間に形成された給電用スロット301により結合し、二次元スロットアンテナ20へ送信電力を給電する。モード変換用導波管30には第1導波管40が当接して配置されており、モード変換用導波管30と第1導波管40は導波管結合部材34を介して結合している。第1導波管20は前記長尺の方向に沿って延びる形状からなる。さらに、長尺方向に沿って見て、二次元スロットアンテナ20が略中心となり、二次元スロットアンテナ20の長辺の長さに略等しい直径の略円形断面からなるレドーム10が設置される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電波を送受波するアンテナ装置、特に長尺な形状からなり、当該長尺形状の軸を含む平面上で回転しながら電波を送受波するアンテナ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、レーダ装置は、放射用電力の供給を受けて所定周波数の電波を放射(送信)するとともに、当該送信波の反射波等の外部からの電波を受波するアンテナを備えている。アンテナは通常外部に設置されている。このため、外部環境からアンテナを保護するため、特に、船舶上に搭載される舶用レーダ装置のアンテナは厳しい外部環境に曝されるので、アンテナを覆うレドームを設ける必要が有る。
【0003】
特許文献1には、アンテナと該アンテナを覆うレドームの構造が記載されている。特許文献1のアンテナ装置のレドームは、長尺状の略直方体形状からなる。レドーム内には、長尺状の導波管アンテナと、該導波管アンテナの放射面側に設置されたホーンとが配置されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−110201号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に示すような従来のアンテナ装置では、所望の垂直指向性を得るために、ホーンの放射方向に向く長さが、放射電波の波長をλとした場合の3λ程度もしくはそれ以上必要となる。一方、ホーンは垂直方向にも或程度広がるものの、放射方向ほどの開口長を必要としない。したがって、長尺方向に直交する水平方向である奥行きが長いのに対して、垂直方向の高さは奥行き程長くない。
【0006】
このため、従来のアンテナ装置のレドームは、長尺状でありながら、導波管アンテナの大きさと比較して大幅に大きく、且つ高さが低くて奥行きが長い扁平した形状となってしまう。また、レドームを含むアンテナ装置の重さも重くなってしまう。
【0007】
この発明の目的は、小型且つ軽量な長尺状のアンテナ装置を実現することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明は、アンテナ装置に関する。アンテナ装置は、導波管アンテナ、ビーム形成用二次元開口スロット、給電導波手段、レドームを備える。導波管アンテナは、長尺状で該長尺方向に延びる一壁面を放射面として該放射面に略直交する方向に電波を放射する。ビーム形成用二次元開口スロットは、平板状からなり、導波管アンテナの放射面側に設置されている。給電導波手段は、導波管アンテナの放射面と反対側の背面に配置され、導波管アンテナに給電する。レドームは、放射面の長尺方向に直交する方向の長さに略等しく且つ導波管アンテナが略中心に配置された状態で内包される長さの直径からなる略円形の断面を有する円筒形からなる。
【0009】
この構成では、二次元開口スロットを備え、ホーンを設置しないことで、導波管アンテナの放射面に直交する方向の長さが短くなる。さらに、給電導波手段を導波管アンテナの背面側に設置し、当該背面から導波管アンテナに給電することで、給電導波手段から導波管アンテナへの給電路を導波管アンテナの放射面に平行な端部に設置するよりも、放射面に平行な方向の長さが短くなる。
【0010】
したがって、導波管アンテナの放射面の長尺方向に直交する方向の長さに略等しい直径を有する略円形の側断面からなるレドームを用いて、当該略円形のほぼ中心に導波管アンテナを配置すれば、当該レドーム内に、導波管アンテナ、二次元スロットアレイ、給電導波手段が収納される。
【0011】
ここで、導波管アンテナは、放射面(背面)に直交する方向の長さ(奥行き)が、放射面に平行で長尺方向に直交する方向の長さ(高さ)よりも短いので、給電導波手段を背面に設置しても、レドームの大きさに殆ど影響を与えることなく、給電導波手段も側断面が円形のレドーム内へ収納できる。
【0012】
このように、本願構成を用いれば、導波管アンテナの側断面の大きさに等しい程度の直径からなる円形断面のレドームが実現され、小型、軽量化される。
【0013】
また、この発明のアンテナ装置では、導波管アンテナ、二次元開口スロット、給電導波手段、およびこれらを内包するレドームからなる一体構造体を、長尺方向が回転面内となるように回動させる回動手段を、備える。
【0014】
この構成では、回動手段を備えることで、放射面を回転させながら電波を放射することができる。これにより、放射面を鉛直方向にすることで、水平方向の全方位へ電波を放射できる。そして、上述のように、アンテナ装置の一体構造体が小型軽量化されたことで、従来よりも低いトルクで安定した回転を得られる。
【0015】
また、この発明のアンテナ装置では、レドームにおける放射面側の側断面が略半円形の放射面側レドームは、外壁と内壁を備える。外壁は、側断面が略半円形からなる。内壁は、該外壁の内側で外壁とアンテナとの間に設置され、外壁に略沿う形状で形成されている。略半円形の円周上の両端付近の外壁と内壁との間隔は、略半円形の円周上の略中点の外壁と内壁との間隔よりも広く形成されている。
【0016】
また、この発明のアンテナ装置では、外壁と前記内壁との間隔は、二つの壁における中点から両端部へ向かう所定位置までは一定であり、当該所定範囲よりも端部に近づくにしたがって、順次広くなる。
【0017】
また、この発明のアンテナ装置では、レドームの内壁は、所定位置まで形成されている外壁との間隔が一定な第1内壁と、所定位置を一端として、略中点から略半円形の中心に向かう方向に平行な断面を有する第2内壁と、を備える。
【0018】
これらの構成では、アンテナ装置を構成するレドームの具体的構造を示している。レドームをこのような構成にすることで、長尺方向に直交する方向の指向性、例えば長尺方向が水平方向に設定されれば、垂直指向性が向上する。これにより、二次元開口スロットのみでなく、レドームによっても指向性が改善され、小型であっても従来よりも特性が劣化することを防止できる。
【0019】
また、この発明のアンテナ装置では、給電導波手段は、外部から入力される所定モードの電波を伝送する第1の給電導波管と、該第1の給電導波管からの所定モードの電波を導波管アンテナ用の放射用モードにモード変換するモード変換用導波管と、からなる。モード変換用導波管は、導波管アンテナの背面で、該導波管アンテナと給電用開口スロットにより結合する。
【0020】
また、この発明のアンテナ装置では、モード変換用導波管は、第1の給電導波管に結合する結合用共振部と、給電用開口スロットを介して導波管アンテナに結合する給電用共振部とを備える。給電用共振部内には、結合用共振部との整合を行う整合部を備えている。
【0021】
これらの構成では、給電導波手段の具体的構成を示している。給電導波手段をこのような構造にすることで、給電導波手段を導波管アンテナの背面側に省スペースで配置することができる。
【0022】
また、この発明はレーダ装置に関するものであり、当該レーダ装置は、アンテナ装置を備えるとともに、記アンテナ装置に給電する放射電波を発生する電波発生装置を備える。アンテナ装置は、導波管アンテナの放射面が水平方向に直交し、且つ導波管アンテナの長尺方向が水平面上で回転するように回動可能に設置されている。
【0023】
この構成では、アンテナ装置を備えたレーダ装置の構成を示している。このような小型軽量化されたアンテナ装置を用い、回転がより安定化すれば、電波放射特性が向上し、レーダとしての物標探知特性も向上することができる。
【発明の効果】
【0024】
この発明によれば、従来構造と同等以上の特性を有する小型且つ軽量な長尺状のアンテナ装置を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の実施形態に係るアンテナ装置1の側面断面図である。
【図2】本発明の実施形態に係るアンテナ装置1のレドーム10,10Rを透視した正面図および背面図である。
【図3】本発明の実施形態に係るアンテナ装置1のレドーム10,10Rを除いた背面側からの斜視図、および電界分布状態を示す図である。
【図4】風向に応じたトルクの変化を示す図である。
【図5】本実施形態の正面側レドーム10Fの構成と従来構成との垂直指向性を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
本発明の第1の実施形態に係るアンテナ装置について図を参照して説明する。尚、以下では、当該アンテナ装置から電波を放射する場合を例に説明するが、外部からの電波を受波することも当然に可能である。
【0027】
本実施形態のアンテナ装置1は、舶用のレーダ装置に用いられるものであり、図示しないマグネトロン等の送信電波発生装置で生成された所定周波数の送信波が給電される。そして、本実施形態のアンテナ装置1は、レーダ装置を備える船舶の甲板上や操舵室上に設置される。
【0028】
図1は本実施形態のアンテナ装置1の側面断面図である。図2(A)は本実施形態のアンテナ装置1のレドーム10を透視した正面図であり、図2(B)はアンテナ装置1のレドーム10を透視した背面図である。図3(A)本発明の実施形態に係るアンテナ装置1のレドーム10を除いた背面側からの斜視図および電界分布状態を示す図であり、図3(B)はスロット導波管アンテナ20の電界分布を示す図である。
【0029】
アンテナ装置1は、長尺状の二次元スロットアンテナ20、モード変換導波管30、第1導波管40、同軸線路50、ロータリージョイント60を備える。二次元スロットアンテナ20、モード変換導波管30、第1導波管40と、同軸線路50の一部は、側断面が円形のレドーム10内に配置されている。
【0030】
二次元スロットアンテナ20は、長尺の外形形状を有する矩形体からなり、二次元スロット形成部材と、導波管アンテナとからなる。導波管アンテナは長尺形状の矩形筒体からなる主導波管と放射用導波管とからなる。主導波管は、長軸方向に見て長辺となる一対の壁と、これに直交する短辺となる一対の壁によって形成されている。放射用導波管は、長辺となる壁の内の一方の壁面に形成されている。放射用導波管は、軸方向が主導波管の軸方向と略直交するように形成されており、主導波管と放射用導波管とは空洞部が連通することで電磁界結合している。
【0031】
導波管アンテナの放射用導波管の開口面には、二次元スロット形成部材が設置されている。二次元スロット部材には、図2に示すように、長尺方向および当該長尺方向に直交する上述の主導波管の長辺方向に沿って、開口スロットが二次元配列されている。なお、図2では、長尺方向の両端の開口スロットのみを示しているが、これらの開口スロット間にも、所定の配置パターンで複数の開口スロットが二次元配列されている。開口スロットの配列パターンは、図2に示すような三列に限るものではなく、アンテナ装置として所望される垂直指向性、すなわち主導波管の長辺方向に沿った指向性に基づいて決定されている。この開口スロットが二次元配列された面が、二次元スロットアンテナ20の放射面21となり、当該放射面21に直交し放射面21から離間する方向が放射方向となる。
【0032】
二次元スロットアンテナ20の放射面と反対側の背面には、モード変換用導波管30が設置されている。モード変換用導波管30は、内部空間が連通する結合用共振器31と給電用共振器32とが一体形成されたT字型の導波管からなる。モード変換用導波管30は、対向するT字型壁の一方の壁が主導波管の背面に当接するように配置されている。この当接面には、所定間隔で給電用スロット301が形成されている。これら給電用スロット301により、モード変換用導波管30の給電用共振器32と、二次元スロットアンテナ20の主導波管とが電磁界結合する。モード変換用導波管30の高さ、すなわちT字型の壁面間の距離は、二次元スロットアンテナ20の主導波管の短辺の長さと略同じに設定されている。また、モード変換用導波管30の給電用共振器32内には、整合用凸部302が形成されている。
【0033】
モード変換用導波管30の二次元スロットアンテナ20と反対側の面には、第1導波管40が設置されている。第1導波管40は、一方端がモード変換用導波管30の結合用共振器31に当接し、他方端が二次元スロットアンテナ20の長尺方向の中間点を超えて所定長さまで延びる長尺状の矩形筒形状からなる。第1導波管40は、主導波管およびモード変換用導波管30の短辺方向が長辺方向となるように設置されている。
【0034】
モード変換用導波管30の結合用共振器31と第1導波管40との当接位置には、導波管結合部材34が設置されている。導波管結合部材34は、側面視した形状がL字型の導体板からなり、モード変換用導波管30の壁および第1導波管40の壁に対して図示しない絶縁体により絶縁されている。これにより、結合用共振器31と第1導波管40とを電磁界的に接続する同軸線路が形成され、この同軸線路により、結合用共振器31と第1導波管40との間で電磁波が伝搬される。
【0035】
第1導波管40のモード変換用導波管30側と反対側の端部付近には、第1導波管40と直交する方向に延びる、すなわち上述の長辺方向に延びる形状の給電用導波管50が接続されている。このように、第1導波管40と給電用導波管50とにより、伝搬方向が90°でベントするL字形状の導波管が構成される。これにより、二次元スロットアンテナ20の長尺方向に沿った伝搬を、長辺方向に沿った伝搬へ変換することができる。もちろん、逆に、長辺方向に沿った伝搬を長尺方向に沿った伝搬へ変換することもできる。
【0036】
給電用導波管50の外周側には絶縁性保持部材が備えられている。絶縁性保持部材は、上述のアンテナ装置1を構成する各要素とレドーム10とからなる一体構造体を、二次元スロットアンテナ20の放射方向が略水平方向になるように設置することが可能な構造で形成されている。
【0037】
給電用導波管50の軸方向の所定位置には、ロータリージョイント60が設置されている。このロータリージョイント60により、一体構造体が水平面上で回転するように設置することができる。
【0038】
このような構成では、図示しないマグネトロン等の送信電波発生装置から所定周波数の送信電力が給電されると、当該送信電力は給電用導波管50によって長辺方向に沿って伝搬し、第1導波管40へ送信電力が伝搬される。第1導波管40は、長尺方向および放射方向に直交する方向を電界方向とするTE01モードで励振して、送信電力を伝搬する。
【0039】
導波管結合部材34は、第1導波管40内を伝搬された送信電力を一端同軸モードに変換し、モード変換用導波管30の結合用共振器31に伝搬する。結合用共振器31は、導波管結合部材34により伝搬された送信電力によってTE01モードで励振する。この際、結合用共振器31は、放射方向に平行な方向を電界方向とするTE01モードで励振する。これにより、二次元スロットアンテナ20の主導波管と同じ向きの電磁界からなる送信電力を形成できる。
【0040】
給電用導波管32は、結合用共振器31に対して4倍の長さを有し、結合用共振器31に電磁界結合して、TE04モードを励振する。したがって、結合用共振器31がTE01で励振することにより、給電共振器32がTE04モードで励振する。これにより、二次元スロットアンテナ20の主導波管と同じモードで同じ向きの電磁界からなる送信電力を形成できる。この際、整合用凸部302の形状を適宜設定することにより、低損失且つ強度分布の安定したモード変換を行うことができる。
【0041】
給電用共振器32で励振されたTE04モードの送信電力は、給電用スロット301を介して二次元スロットアンテナ20の主導波管へ給電される。この際、給電用スロット301が、TE04モードの各電界強度の山毎に設けられているおり、主導波管の背面側から給電されるので、主導波管では、給電用共振器32と同様のTE04モードで励振する。
【0042】
二次元スロットアンテナ20では、主導波管内をTE04モードで送信電力が伝搬され、各放射用導波管から送信電波が放射される。この際、放射用スロット201が上述のように所定の配列パターンで形成されているので、各放射用導波管からの放射された送信電波が位相合成され、所望の垂直指向性が実現される。
【0043】
以上のように、本実施形態の構成を用いることで、二次元スロットアンテナ20に給電する各導波管や同軸線路等の導波路を、二次元スロットアンテナ20の背面側にのみ配置して、二次元スロットアンテナ20へ確実且つ安定して給電することができる。すなわち、二次元スロットアンテナ20の長尺方向および長辺方向に対しては、二次元スロットアンテナ20が最も大きい形状となる。一方、二次元スロットアンテナ20の短辺方向は、二次元スロットアンテナ20自体が、長辺方向に比較して形状的に小さいため、他の導波路を配置しても、長辺方向の長さよりも短くすることができる。
【0044】
これにより、次に示すような側断面形状が略円形のレドーム10を用いることができる。レドーム10は、正面側レドーム10Fと背面側レドーム10Rとからなり、側面視すなわち長尺方向に沿って見て、断面が円形状となる円筒形からなる。二次元スロットアンテナ20は、側面視した状態で、レドーム10の中心位置に配置されている。これにより、レドーム10の側断面形状の直径は、二次元スロットアンテナ20の長辺の長さに略等しく且つ当該二次元スロットアンテナ20を内包する長さにすることができる。
【0045】
具体的には、送信波の波長λの3倍から4倍程度、大きくとも5倍以下の直径からなるレドームを実現できる。なお、従来のホーンを用いた構造では、高さ方向は本願と同程度になるものの、水平方向は波長の7倍から8倍以上の長さが必要になる。
【0046】
この結果、従来よりも、小型且つ軽量のアンテナ装置1を実現できる。
【0047】
また、このような断面形状が略円形で小型且つ軽量のアンテナ装置1とすることで、当該アンテナ装置1を回動させるモータのトルクを低減することができ、モータの負荷低減、省電力化および長寿命化が可能になる。図4は風向に応じたトルクの変化を示す図である。図4に示すように、本実施形態の構成を用いれば、風向に関係なく安定したトルクで回転させ続けることができる。
【0048】
また、回転が従来よりも安定化するので、全方位に対してより安定して均一な電波放射が可能になる。この結果、当該電波の反射信号による物標探知も安定する。
【0049】
さらに、本実施形態のレドーム10は、正面側レドーム10Fを次に示すような構造とすることで、さらに垂直指向性を向上させることができる。
【0050】
正面側レドーム10Fは、外壁11と内壁12とを備える。外壁11と内壁12とは、同一の誘電体材料により形成されている。
【0051】
外壁11は、正面側レドーム10Fの外壁面を構成するものであり、所定の厚みで側断面が上述の直径に基づく半径Rからなる半円形状に形成されている。
【0052】
内壁12は、外壁11と同様の所定厚みからなり、第1内壁211と第2内壁212とからなる。
【0053】
第1内壁211は、側面視して(図1参照)、外壁11の円周上の中点Pcから両端Peに向かう所定距離の位置までの範囲で、外壁11と一定の間隔dcをおいて設置されている。すなわち、第1内壁211は、側断面形状が外壁11よりも短い半径の円弧状に形成されている。
【0054】
なお、この間隔dcは、外壁11と内壁12との間に設置された誘電体13における放射電波の波長λgの約1/4に設定されている。これにより、当該範囲では、外壁11および内壁12のそれぞれによる反射電波が打ち消しあい、低損失な放射が可能になる。
【0055】
第2内壁212は、上述の円周上の所定位置に対応する第1内壁211の端部を一方端として、外壁11の中点Pcと当該外壁11の中心Poとを結ぶ方向に沿って、前記中点Pcから中心Poに向かって所定距離で延びる平板状からなる。
【0056】
このような構造とすることで、円周上の所定位置と端部Peとの間の範囲では、所定位置から端部Peに向かって、外壁11と内壁12(第2内壁212)との間の間隔が徐々に広くなる。そして、端部Pe付近では、外壁11との内壁12との間隔deは、中点付近での間隔dcよりも広くなる。
【0057】
なお、内壁12の端部、すなわち第2内壁212における第1内壁211との接合端と反対側の端部は、接合用壁222により外壁11に接合している。これにより、内壁211が外壁11に対して固定される。より具体的に、接合壁222は、第2内壁212や、外壁11の中点Pcと中心Poとを結ぶ方向に対して直交する形状の平板からなる。
【0058】
外壁11と内壁12との間には、所定誘電率を有する誘電体13が設置されている。このような誘電体13を設置することで、外壁11と内壁12との間隔をより安定して確実に保持することができる。
【0059】
このような構成において、二次元スロットアンテナ20から正面側レドーム10Fの中点Pcに向かう方向を放射方向として電波が放射される。
【0060】
正面側レドーム10Fは、上述のように、円周上の中点Pcから端部Peに向かう所定範囲で、外壁11と内壁12との間隔が放射電波の略λg/4であるので、当該範囲では低損失な電波放射が行われる(作用A)。一方、円周上の所定位置から端部Peまでの範囲では、外壁11との内壁12(第2内壁212)の間隔が略λg/4よりも広くなることで、端部付近では誘電体がレドームの中央側に寄って配置されることになる。ここで、誘電体にはエッジ効果すなわち電界を集中する効果がある。したがって、このようなレドームの中央側に誘電体が寄る形状となることで、レドームの中央の空間領域に電界が集中する(作用B)。
【0061】
このような二つの作用(作用A,作用B)により、放射電力を殆ど低下させることなく、実質的に開口面積を狭くして放射指向性を広くすることができる。なお、ここで言う放射指向性とは、正面側レドーム10F、二次元スロットアンテナ20の高さ方向に沿った指向性(垂直指向性)を示している。
【0062】
図5は、本実施形態の正面側レドーム10Fの構成と従来構成との垂直指向性を示す図である。図5におけるRoll角が垂直角に相当し、Roll角=0°とは、正面側レドーム10Fの中心Poと中点Pcとを結ぶ方向を示す。また、図4の従来構造とは、外壁と内壁との間隔が全体で一定のものを示している。
【0063】
図5に示すように、本実施形態の正面側レドーム10Fの構成を用いることで、垂直指向性が広くなる。より具体的には、−3dBを確保できる角度範囲が、従来構造1,2では約20°(約−10°から約+10°)であるのに対して、本実施形態の構成では、約24°〜26°(約−12°もしくは−13°から約+12°もしくは+13°)まで、広がる。
【0064】
これにより、当該構造の正面側レドーム10Fを備えるアンテナ装置1が搭載された船舶等の移動体が揺動しても、従来よりも確実に目的領域へ電波を放射することができる。この結果、レーダ装置であれば、より確実な物標探知が可能になる。
【0065】
なお、上述のレドーム構造では、所定位置まで外壁11と内壁12は一定の間隔で、所定位置から端部Peまでは徐々に間隔が増加する構成を示したが、外壁11の中心Pcよりも端部Pe付近の外壁11と内壁12との間隔が広くなるような構成であれば、他の構成を用いてもよい。例えば、内壁だけを楕円形にしたり、中心Pcから所定位置までと、所定位置から端部までをそれぞれ曲率半径の異なる個別の楕円で形成してもよい。
【0066】
以上のように、本実施形態の構成を用いることで、小型且つ軽量化されながらも、従来構成よりも放射特性の優れるアンテナ装置を実現することができる。
【符号の説明】
【0067】
1−アンテナ装置、10−レドーム、10F−正面側レドーム、10R−背面側レドーム、11−外壁、12−内壁、13−誘電体、20−二次元スロットアンテナ、201−放射用スロット、30−モード変換用導波管、301−給電用スロット、302−整合用凸部、31−結合用共振部、32−給電用共振部、34−導波管結合部材、40−第1導波管、50−給電用導波管、60−ロータリージョイント

【特許請求の範囲】
【請求項1】
長尺状で且つ長尺方向に延びる一壁面を放射面として該放射面に略直交する方向に電波を放射する導波管アンテナと、
前記導波管アンテナの放射面側に設置された平板状のビーム形成用二次元開口スロットと、
前記導波管アンテナの前記放射面と反対側の背面に配置され、前記導波管アンテナに給電する給電導波手段と、
前記放射面の長尺方向に直交する方向の長さに略等しく且つ前記導波管アンテナが略中心に配置された状態で内包される長さの直径からなる略円形の断面を有する円筒形のレドームと、を備えるアンテナ装置。
【請求項2】
請求項1に記載のアンテナ装置であって、
前記導波管アンテナ、前記二次元開口スロット、前記給電導波手段、およびこれらを内包する前記レドームからなる一体構造体を、長尺方向が回転面内となるように回動させる回動手段を、備えるアンテナ装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載のアンテナ装置であって、
前記レドームにおける放射面側の側断面が略半円形の放射面側レドームは、
側断面が略半円形の外壁と、
該外壁の内側で前記外壁と前記アンテナとの間に設置され、前記外壁に略沿う形状で形成された内壁と、を備え、
前記略半円形の円周上の両端付近の前記外壁と前記内壁との間隔が、前記略半円形の円周上の略中点の前記外壁と前記内壁との間隔よりも広い、アンテナ装置。
【請求項4】
請求項3に記載のアンテナ装置であって、
前記外壁と前記内壁との間隔は、二つの壁における前記中点から両端部へ向かう所定位置までは一定であり、当該所定範囲よりも前記端部に近づくにしたがって、順次広くなる、アンテナ装置。
【請求項5】
請求項4に記載のアンテナ装置であって、
前記レドームの内壁は、
前記所定位置まで形成されている前記外壁との間隔が一定な第1内壁と、
前記所定位置を一端として、前記略中点から前記略半円形の中心に向かう方向に平行な断面を有する第2内壁と、を備えるアンテナ装置。
【請求項6】
請求項1乃至請求項5のいずれかに記載のアンテナ装置であって、
前記給電導波手段は、
外部から入力される所定モードの電波を伝送する第1の給電導波管と、
該第1の給電導波管からの所定モードの電波を、前記導波管アンテナ用の放射用モードにモード変換するモード変換導波管と、からなり、
前記モード変換導波管は、前記導波管アンテナの前記背面で、該導波管アンテナと給電用開口スロットにより結合する、アンテナ装置。
【請求項7】
請求項6に記載のアンテナ装置であって、
前記モード変換用導波管は、
前記第1の給電導波管に結合する結合用共振部と、前記給電用開口スロットを介して前記導波管アンテナに結合する給電用共振部とを備え、
前記給電用共振部内には、前記結合用共振部との整合を行う整合部を備えている、アンテナ装置。
【請求項8】
請求項1乃至請求項6のいずれかに記載のアンテナ装置を備えるとともに、
前記アンテナ装置に給電する放射電波を発生する電波発生装置とを備え、
前記アンテナ装置は、
前記導波管アンテナの放射面が水平方向に直交し、且つ前記導波管アンテナの長尺方向が水平面上で回転するように設置されている、レーダ装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図3】
image rotate


【公開番号】特開2011−223343(P2011−223343A)
【公開日】平成23年11月4日(2011.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−90773(P2010−90773)
【出願日】平成22年4月9日(2010.4.9)
【出願人】(000166247)古野電気株式会社 (441)
【Fターム(参考)】