説明

アンテナ装置及びRFIDタグ

【課題】アンテナ装置に適する同相反射構造として、製造工程が簡単で良好な特性を有するシート状構造体及びアンテナ装置を提供すること。
【解決手段】シート状構造体1は、単位構造5をX方向及びY方向に繰り返し並べてなる周期構造を有するものであり、単位構造5は、グランド層10と、トップ層30と、トップ層30とグランド層10の間に満たされた誘電体層40と、誘電体層内にフローティング状態で保持された所定数の容量導体部51からなる浮遊キャパシタ層50とから構成されている。即ち、図示されたシート状構造体1は、浮遊キャパシタ層付マッシュルーム構造のシート状構造体からトップ層30とグランド層10とを接続していたビアを省略してなる構造を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高い表面インピーダンスを有するシート状構造体とそれを利用したアンテナ装置及びRFID(Radio
Frequency Identification)タグに関する。
【背景技術】
【0002】
近年の機器の小型化により、例えば、グランドプレーン等の金属面とアンテナとの距離が短くなってきており、それによるアンテナ特性の劣化が懸念されている。また、RFIDタグを金属面に貼付すると、RFIDタグに含まれるアンテナの特性が著しく劣化し、RFIDタグが適切に機能しなくなることも知られている。これらの問題は、いずれも金属面の表面インピーダンスが低いことに起因している。金属面の低い表面インピーダンスが、入射電界と180度位相の異なる反射電界を生成し、逆相の反射波を生じさせる。
それにより、金属近傍では合成電界が小さくなり、金属近傍アンテナ、タグの性能が著しく劣化する。逆に、表面インピーダンスの高いものをアンテナ近傍に配置することができれば、その高い表面インピーダンスによりインピーダンス面に入射した電磁波が同相反射され、アンテナ性能を向上させることが知られている。
【0003】
高いインピーダンスを有するシート状構造体としては、従来、ビアを有する所謂マッシュルーム状導体を備えるものが知られている(例えば、特許文献1参照)。しかし、特許文献1に記載のシート状構造体においては、ビアを形成する工程が含まれるため製造工程自体が複雑になる。そこで、電気的回路は変えないようにビアに相当する部位をパターンに埋め込むことで製造工程の簡略化を図ろうとする技術(例えば、特許文献2参照)も提案されている。
【0004】
【特許文献1】米国特許第6,538,621号公報
【特許文献2】特開2006−245984号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、同相反射板を用いたアンテナ装置に適する構造として、製造工程が簡単で良好な特性を有するシート状構造体及びアンテナ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
従来のマッシュルーム構造、又は浮遊キャパシタ付のマッシュルーム構造において、トップ層とグランド層とを接続しているビアは、電気的にはインダクタンス成分を構成するものであり理論上必須と考えられていたことから、従来、例えば特許文献2に示されるようにビアに対応するインダクタンス成分を組み込んだ導電体パターンを形成することに注力していた。
【0007】
しかしながら、本発明の発明者らは、検証の結果、少なくともアンテナ装置の基板として使用する場合には、マッシュルーム構造又は浮遊キャパシタ付のマッシュルーム構造から単純にビアを省略し簡略化された構造でもアンテナ性能の向上に十分寄与することを見出した。それは、ビア以外の部分を電流が流れることにより当該部分が、インダクタンスとして機能していることによる。
【0008】
本発明は、かかる知見に基づいてなされたものであり、具体的には、以下に掲げる手段を提供する。
【0009】
即ち、本発明によれば、第1のアンテナ装置として、シート状構造体と、アンテナ導体パターンを有するアンテナ層と、前記シート状構造体上に形成され前記アンテナ層を支持するための誘電体からなるアンテナ支持層とを備えたアンテナ装置であって、前記シート状構造体は、単位構造を所定方向に繰り返し並べてなる周期構造を有しており、前記単位構造は、導体からなるグランド層と、前記グランド層と離間して配置された導体からなるトップ層と、前記トップ層と前記グランド層の間に満たされた誘電体層と、前記誘電体層内にフローティング状態で保持された所定数の容量導体部からなる浮遊キャパシタ層を備えており、前記グランド層と前記トップ層とは、前記誘電体層により絶縁されているアンテナ装置が得られる。
【0010】
更に、本発明によれば、第2のアンテナ装置として、第1のアンテナ装置において、前記グランド層と前記トップ層の間には、導電体による接続手段が設けられていないアンテナ装置が得られる。
【0011】
更に、本発明によれば、第3のアンテナ装置として、第1又は第2のアンテナ装置において、前記所定数は2であり、前記単位構造は、前記シート状構造体の主面と直交する方向から見た場合に、矩形形状を有しており、2つの前記容量導体部は、前記所定方向において互いに離間するように配置されており、前記単位構造の辺であって前記所定方向と交差する辺に接するようにして配置されていることにより、前記所定方向において隣接する単位構造の容量導体部と夫々接続されているアンテナ装置が得られる。
【0012】
更に、本発明によれば、第4のアンテナ装置として、第3のアンテナ装置において、前記グランド層は、ベタパターンからなり、前記単位構造は、前記直交する方向から見た場合に一辺が第1所定長である第1正方形形状を有しており、前記容量導体部は、夫々、前記第1正方形の面積の半分よりも小さい面積を有する第2方形形状を有しており、当該2つの第2方形形状は、夫々の第2方形の一つの辺が前記第1正方形の各辺上に位置するよう配置されていることにより、前記所定方向において隣接する単位構造内の容量導体部と夫々接続されているアンテナ装置が得られる。
【0013】
更に、本発明によれば、第5のアンテナ装置として、第1又は、第2のアンテナ装置において、前記所定数は4であり、前記単位構造は、前記シート状構造体の主面と直交する方向から見た場合に、矩形形状を有しており、4つの前記容量導体部は、前記所定方向において互いに離間するようにして配置されており、前記単位構造の少なくともいずれかの辺と接するように配置されていることにより、前記所定方向において隣接する単位構造内の容量導体部と夫々接続されているアンテナ装置が得られる。
【0014】
更に、本発明によれば、第6のアンテナ装置として、第5のアンテナ装置において、前記グランド層は、ベタパターンからなり、前記単位構造は、前記直交する方向から見た場合に一辺が第1所定長である第1正方形形状を有しており、前記容量導体部は、前記方向から見た場合に夫々、前記第1所定長よりも短い第2所定長の底辺を有する二等辺三角形形状又は台形形状を有しており、当該4つの二等辺三角形又は台形は、その頂点又は上底を前記第1正方形の中心点に向けるように配置されており、底辺を前記第1正方形の各辺上に配置することにより、前記所定方向において隣接する単位構造内の容量導体部と夫々接続されているアンテナ装置が得られる。
【0015】
更に、本発明によれば、第7のアンテナ装置として、第1乃至第6のいずれかのアンテナ装置において、前記単位構造は、該単位構造の対角線のいずれかに対して非線対称な構造を有しているアンテナ装置が得られる。
【0016】
更に、本発明によれば、第8のアンテナ装置として、第1、第3又は第5のアンテナ装置において、前記シート状構造体は、前記アンテナ層の所定方向の電界に対してのみ同相反射を生じるものであるアンテナ装置が得られる。
【0017】
更に、本発明によれば、第9のアンテナ装置として、第1乃至第8のいずれかの前記容量導体部には、該容量導体部の一辺から内面に向かって延びるようにスリットが形成されているアンテナ装置が得られる。
【0018】
更に、本発明によれば、第10のアンテナ装置として、第9のアンテナ装置において前記スリットは夫々、直線状、曲線状またはこれらの組み合わせからなる形状を有するアンテナ装置が得られる。
【0019】
更に、本発明によれば、第11のアンテナ装置として、第1乃至第10のいずれかのアンテナ装置において、前記誘電体層は、LTCC(Low Temperature Co-fired Ceramics)などのセラミックス、FR−4(Flame retardant-4)などのガラスエポキシ系基板材、テフロン(登録商標)系基板材、BT(Bismaleimide Triazine)レジン系基板材、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)系熱可塑性樹脂フィルム、若しくは、PET(Polyethylene terephthalate)若しくはPET−G(Polyethylene
terephthalate Glycol)などの樹脂、リネンなどの繊維又はそれらの複合体からなるアンテナ装置が得られる。
【0020】
更に、本発明によれば、第12のアンテナ装置として、第1乃至第10のいずれかのアンテナ装置において、前記アンテナ支持層は、発泡ポリエチレン、アクリルフォーム若しくはウレタンなどの発泡材、テフロン(登録商標)やPET(Polyethylene terephthalate)若しくはPET−G(Polyethylene
terephthalate Glycol)などの樹脂、リネンなどの繊維又はそれらの組み合わせのいずれかからなるアンテナ装置が得られる。
【0021】
更に、本発明によれば、第13のアンテナ装置として、第1乃至第10のいずれかのアンテナ装置において前記グランド層を省略してなるアンテナ装置が得られる。
【0022】
更に、本発明によれば、第14のアンテナ装置として、第1乃至第13のいずれかのアンテナ装置において、前記アンテナ層を省略してなるシートが得られる。
【0023】
更に、本発明によれば、第1乃至第13のいずれかのアンテナ装置と、前記アンテナ支持層上において前記アンテナ導体パターンに接続されたICを備え、前記シート状構造体をタグ基体の一部としてなるRFID(Radio Frequency Identification)タグが得られる。
【0024】
このような構造のRFIDタグは、同相反射構造を下に敷いているので、金属に直接貼っても、良好な通信性能が得られる。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、ビアを削除することで、同相反射板を有するアンテナ装置の製造を容易にすることができ、かつ、金属上でも良好なアンテナ性能を得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
(第1の実施形態)
以下、図面を参照しつつ本発明の実施の形態について詳細に説明する。図1及び図2に示されるように、本発明の第1の実施の形態によるアンテナ装置を適用したRFIDタグは、シート状構造体1と、シート状構造体1に形成されたアンテナ支持層2と、アンテナ支持層2の上面において所定のアンテナ導体パターン3aを有するアンテナ素子3と、アンテナ導体パターン3aに接続されたIC4を有する。このシート状構造体例は2次元的に単位構造が配置されているが、単位構造が1次元的に一列に配置されていてもよい。
【0027】
図2から理解されるように、本発明の実施の形態によるRFIDタグにおけるアンテナ素子3は、IC4を中心とし、シート状構造体1の長手方向に対称に延びるアンテナ導体パターン3aからなるダイポールアンテナである。本実施の形態におけるアンテナ素子3には、対称に延びるアンテナ導体パターン3aを接続する梁部導体3bがインピーダンスマッチング用として更に設けられている。なお、図1及び図2において、実際の誘電体材料としては比較的透明なもの(少なくとも内部を透視しうるもの)を用いる場合もあるが、簡略化するため、透過しないものとして描いてある。
【0028】
アンテナ支持層2の材料としては、PET(Polyethylene terephthalate)、PET−G(Polyethylene terephthalate glycol)、テフロン(登録商標)など一般的な樹脂やプラスチックなどの誘電体が使用できるが、できるだけ誘電率の低い樹脂や、空気分を含む発泡材、スポンジ、ウレタン、発泡ポリエチレン、アクリルフォーム、あるいはリネンなどの繊維が好ましい。特にプラスチックについては、さらに詳しくは、塩化ビニール、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリカーボネイト、ポリスチレン、ABS樹脂などの熱可塑性プラスチックでも、メラミン樹脂、ポリウレタン、フェノール樹脂、不飽和ポリエステル樹脂などの熱硬化性プラスチックでも良い。空気層や空孔は空気中に電界を集中させ、材料内の電界を下げるので、損失の低減に有効である。低い誘電率はまた、アンテナとシート状構造体との相関を低減し、アンテナ特性の劣化を軽減するので、空気層や空孔を含む材料は特に有効である。更に、アンテナ支持層2の材料をシート状構造体1の誘電体層40(後述)と同じ材料のもので構成することとしてもよい。これにより、シート状構造体1、アンテナ支持層2、アンテナ素子3を一体的に形成でき、アンテナ装置を低コストで製造することができる。
【0029】
本実施の形態によるシート状構造体1は、概略、図3に示されるような単位構造を図4に示されるように繰り返し並べてなる周期構造により特定の周波数帯域に対する表面インピーダンスを高め、それにより当該特定の周波数帯域に属する周波数を有する入射波を同相反射するものである。
【0030】
詳しくは、本実施の形態によるシート状構造体1は、図3乃至図5から理解されるように、ベタ導体パターンを有するグランド層10と、グランド層10と離間して配置されたトップ層30と、トップ層30とグランド層10の間に満たされた誘電体層40と、誘電体層40と、容量増加のために誘電体層40内にフローティング状態で保持された複数の容量導体部51からなる浮遊キャパシタ層50とを備えている。なお、図3及び図4においては、構成要素の関係を明確にするため、誘電体層40が省略されている。
【0031】
本実施の形態における誘電体層40の材質としては、FR−4などの基板材でも良いが、誘電損失(tanδ)の小さいものが望ましく、LTCCなどのセラミック、PET,PET−G、テフロン(登録商標)などの一般的な樹脂やプラスチック、BTレジンなどの低損失基板材料や、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)系熱可塑性樹脂フィルムなどを用いることが好ましい。また、リネンなどの繊維でも良い。プラスチックについては、さらに詳しくは、塩化ビニール、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリカーボネイト、ポリスチレン、ABS樹脂などの熱可塑性プラスチックでも、メラミン樹脂、ポリウレタン、フェノール樹脂、不飽和ポリエステル樹脂などの熱硬化性プラスチックでも良い。
【0032】
本実施の形態によるシート状構造体1にはトップ層とグランド層を接続するビアがない。即ち、本実施の形態によるシート状構造体は、特許文献1に示されるようなマッシュルーム構造に対して浮遊キャパシタ層を設けてなる構造においてトップ層とグランド層とを接続していたビアを省略してなる構造を備えている。そのため、高周波域においては、図6に示されるように、トップ層30と浮遊キャパシタ層50との間で閉回路ができ、隣接するトップ層同士の隙間から見たシート状構造体1のインピーダンスが等価的にLC並列共振状態になる場合に、高表面インピーダンスが得られ、同相反射が観測される。このため、本実施の形態によるシート状構造体1では、表面高インピーダンスによる同相反射特性を得るためには、必ずしもグランドを必要としない。従って、シート状構造体1の用途によっては、グランドを省いても良い。例えば、コーナリフレクタアンテナでは、通常、アンテナと金属反射板との間の距離を波長の1/4ほど取るが、同相反射板を使用すれば、同相反射板をアンテナ近傍に配置できる。その場合、周囲に金属がなければ、特にグランドを付ける必要はない。一方、シート状構造体1の近傍に金属がある場合、その金属の影響を受けにくくしたいときには、グランド層を取り付ければよい。
【0033】
詳しくは、図7に示されるように、本実施の形態による単位構造5及びトップ層30は、Z方向から見た場合に正方形の外形を有している。また、図8に示されるように、本実施の形態における浮遊キャパシタ層50は、台形形状を有する4つの容量導体部51からなっている。容量導体部51の夫々は、台形形状の下底部分を単位構造5の各辺上に配置させる一方で上底を単位構造5の中心に向けるように配置されている。これにより、隣接する単位構造間における容量導体部51は夫々接続されている。また、本発明はこれに限られず、様々な形状のトップ層10及び浮遊キャパシタ層50を用いることが可能である。例えば、本実施の形態におけるシート状構造体1の容量導体部51は、同相反射周波数を調整するために、面積調整用に切り落とし部52が形成され、台形形状になっている。しかし、別の方法で容量導体部51の面積を調整しても良く、例えば容量導体部51を完全な三角形形状として、相似三角形を使用して容量導体部51の面積を調整してもよい。
【0034】
(第2の実施形態)
次に、本発明による第2の実施の形態を詳細に説明する。図9及び図10に示されるように、本実施の形態におけるトップ層5aは、第1の実施の形態におけるトップ層5と同様であるが、容量導体部51aの形状は、第1の実施の形態のものとは異なっている。より詳しくは、容量導体部51aの夫々には、容量導体部50aの一辺から内面に向かって伸びるようにスリット52aが設けられている。これにより、インダクタンスを増大させ、同相反射周波数を下げることで単位構造を小型化することができる。
【0035】
(第3の実施形態)
図11に示されるように、本実施の形態において、X方向において対向するように配置された1組の容量導体部51bは、底辺に対する高さHaを有している。一方、Y方向において対向するように配置された容量導体部51bは、底辺に対する高さHbを有している。本実施の形態において、高さHaは高さHbよりも大きい(Ha>Hb)。4つの容量導体部51bは、単位構造5bの中心を通りX方向に延びる直線及びY方向に延びる直線の夫々に対しては線対称形状となっているが、単位構造5bの対角線に対しては非対称形状になっている。従って、単位構造5bは、単位構造5bの対角線に対しては非線対称な構造を有することとなっている。
【0036】
少数の単位構造では、電界方向の単位構造数によって、同相反射周波数が変わる。これは、外部境界の影響によると考えられる。しかし、本実施の形態のシート状構造体1bのように、シート状構造体1bにおいて、X方向及びY方向における単位構造5bの数が違う場合であっても、上述のように単位構造を対角線に対して非対称にして、特に、キャパシタンスcをX方向、Y方向について別個に独立して調整することにより、夫々の方向の同相反射周波数を同じにすることができる。これは、例えば、同相反射周波数が950MHzでカードサイズ程度の周期構造シートを作る場合などに有効である。直交する2方向のセル数が異なり、且つ少数の場合であっても、両方向の同相反射周波数を同じにすることができる。これにより、図12に示されるような折り曲げアンテナ3のような非直線状のアンテナを用いた場合にもアンテナ全体に亘って同相反射効果を得ることができ、直交する2方向の偏波成分に対して、同相反射効果を得ることができる。
【0037】
(第4の実施形態)
図13及び図14に示されるように、本実施の形態における単位構造5cはz軸方向から見た場合に長方形の外形を有している。トップ層30c及び浮遊キャパシタ層50cは夫々単位構造の対角線に対して非線対称な構造となり、単位構造は5cは、単位構造5cの対角線に対しては非線対称な構造を有することとなっている。これにより、X方向、Y方向について別個に独立して調整することにより、夫々の方向の同相反射周波数を同じにすることができる。
【0038】
本実施の形態によれば、特に、キャパシタンスcをX方向、Y方向について別個に独立して調整することにより、夫々の方向の同相反射周波数を同じにすることができる。本実施の形態におけるシート状構造体1cは、例えば、カードサイズなど長方形の周期構造シートに対応させるために有効である。
【0039】
(第5の実施形態)
図15に示されるように、本実施の形態におけるシート状構造体は、X方向に隣接するトップ層30d同士の間隔Hc及びY方向に隣接するトップ層30d同士の間隔Hdが異なる。X方向、Y方向でトップ層30d同士の間隔を変えることにより、夫々の方向におけるキャパシタンスcを別個に独立して変えることができる。それにより、各方向で独立に同相反射周波数を調整し、同じ周波数にすることができる。本実施の形態における単位構造5dの外形はz軸方向から見た場合に正方形であるが、トップ層30dは長方形である。このため、単位構造5dは、単位構造5dの対角線に対しては非線対称な構造を有することとなる。
【0040】
これにより、シート状構造体1dにおいて、X方向、Y方向における単位構造5dの数が違う場合であっても、特に、キャパシタンスcをX方向、Y方向について別個に独立して調整し、夫々の方向の同相反射周波数を同じにすることができる。
【0041】
なお、上述した第3乃至第5の実施の形態においては、1)浮遊キャパシタ層の形状を単位構造の対角線に対して非線対称となるように構成する、2)単位構造の外形自体を長方形にする、及び3)X方向及びY方向における隣接トップ層同士の間隔を夫々変更することの3つの手法により、単位構造が2本の対角線の少なくともいずれかの対角線に対して非線対称な構造を有することとなるようにしていたが、4)トップ層の形状及び/又は配置を単位構造の2本の対角線のうち少なくともいずれかの対角線に対して非線対称となるように構成する、若しくは5)浮遊キャパシタ層の配置を単位構造の2本の対角線のうち少なくともいずれかの対角線に対して非線対称となるように構成することにより、単位構造がその対角線に対して非線対称な構造を有することとなるようにしてもよく、又は、1)〜5)の想定しうる組み合わせ等により、単位構造が2本の対角線の少なくもいずれかの対角線に対して非線対称な構造を有することとなるようにしてもよい。
【0042】
更に、上述した第2の実施の形態と同様に、容量導体部の夫々に対して容量導体部の一辺から内面に向かって伸びるようにスリットを設けることとしてもよい。これにより、インダクタンスを増大させ、同相反射周波数を下げることで単位構造を小型化することができる。
【0043】
(第6の実施形態)
上述した第1乃至第5の実施の形態では、シート状構造体1乃至1dの面に対して直交する2方向(X方向及びY方向)において図6の閉回路を形成するようにシート状構造体1乃至1dを構成していた。一方、本実施の形態のシート状構造体1eにおいては、図16乃至図18に示されるように、容量導体部51eが、単位構造5eの縁のうち、アンテナ3の長軸(X軸)に平行な縁とは接することなく、アンテナの短軸(Y軸)に平行な縁とは接するようにして配置されている。これにより、容量導体部51eは、アンテナ3の長軸方向(X軸方向)に隣接する単位構造間において接続されていることになる。これにより、シート状構造体1eにおいては、アンテナ3の長軸方向にのみ閉回路が形成されている。即ち、アンテナ3の長軸方向の電界に対してのみ、シート状構造体1eの表面インピーダンスが大きくなり、同相反射が得られる。なお、図16においては、簡略化のためアンテナ支持層2は省略されている。
【0044】
このような一方向性構造にすることにより、浮遊キャパシタ層50eの面積を大きくとることが可能となるため、トップ層30eと浮遊キャパシタ層50eとの間の容量を大きくすることができ、結果として単位構造を小さくでき、シート状構造体1eを小型化できる。
【0045】
(本発明の第7の実施形態)
更に続いて、図19及び図20に示されるように、本実施の形態によるシート状構造体1fは、第6の実施例と同様に一方向性構造としているが、第2の実施の形態と同様のスリット52fを容量導体部51fに入れている。これにより、浮遊キャパシタ層50fのインダクタンスを増大させることができ、一方向性のシート状構造体をさらに小型化できる。
【0046】
なお、同相反射特性を検証するための計算例を以下に示す。本検証においては、単位セル24mm×24mm×1mm、トップ層−浮遊キャパシタ層間0.1mm、浮遊キャパシタ層−グランド間0.9mmの構造を用い、誘電体には誘電率3.4の誘電体を使用した。本検証により、無限周期境界条件での計算で、入射波に対する反射波の位相変化量を求めた。なお、金属板への入射波の場合は、位相変化量は180度である。図21に示されるように、950MHz付近で同相反射が得られることがわかる。
【0047】
以上説明したように、本発明によれば、浮遊キャパシタ付のマッシュルーム構造におけるビアを導体パターンに組み込まなくとも実用上十分なアンテナ特性を得ることができることが判明したことから、特許文献2のように導体パターンを複雑にする必要はなく、従って、上述した実施の形態のように、浮遊キャパシタ付のマッシュルーム構造からビアを単純に省略しただけの簡略化された構成とすることができる。
【0048】
なお、上述した実施の形態においては、グランド層を有するアンテナ装置を説明したが、グランド層を省略し、誘電体層の上面及び下面にトップ層及び所定数の容量導体部からなるキャパシタ層を形成することとしてもよい。この場合、トップ層とキャパシタ層とは、誘電体層により絶縁されている。即ち、トップ層とキャパシタ層の間には、ビア等の導電体による接続手段が設けられていない。このようにグランド層を省略した場合であっても、上述した実施の形態に基づき、様々な変形を加えることが可能である。
【0049】
即ち、上述したグランド層なしの構造において、所定数を2とし、単位構造は、シート状構造体の主面と直交する方向から見た場合に、矩形形状を有しており、2つの容量導体部は、所定方向において互いに離間するように配置されており、単位構造の辺であって所定方向と交差する辺に接するようにして配置されていることにより、所定方向において隣接する単位構造の容量導体部と夫々接続されている構成としてもよい。この場合、更に、グランド層は、ベタパターンからなり、単位構造は、直交する方向から見た場合に一辺が第1所定長である第1正方形形状を有しており、容量導体部は、夫々、第1正方形の面積の半分よりも小さい面積を有する第2方形形状を有しており、2つの第2方形形状は、夫々の第2方形の一つの辺が第1正方形の対応する辺上に位置するよう配置されていることにより、所定方向において隣接する単位構造内の容量導体部と夫々接続されている構成としてもよい。
【0050】
また、上述したグランド層なしの構造において、所定数を4とし、単位構造は、シート状構造体の主面と直交する方向から見た場合に、矩形形状を有しており、4つの容量導体部は、所定方向において互いに離間するようにして配置されており、単位構造の少なくともいずれかの辺と接するように配置されていることにより、所定方向において隣接する単位構造内の容量導体部と夫々接続されている構成としてもよい。この場合、更に、グランド層は、ベタパターンからなり、単位構造は、シート状構造体の主面と直交する方向から見た場合に一辺が第1所定長である第1正方形形状を有しており、容量導体部は、前記方向から見た場合に夫々、第1所定長よりも短い第2所定長の底辺を有する二等辺三角形形状又は台形形状を有しており、当該4つの二等辺三角形又は台形は、その頂点又は上底を第1正方形の中心点に向けるように配置されており、底辺を第1正方形の各辺上に配置することにより、所定方向において隣接する単位構造内の容量導体部と夫々接続されている構成としてもよい。
【0051】
更に、上述したグランド層なしの構造において、単位構造は、該単位構造の対角線のいずれかに対して非線対称な構造を有している構成としてもよいし、シート状構造体は、アンテナ層の所定方向の電界に対してのみ同相反射を生じる構成としてもよい。また、容量導体部には、該容量導体部の一辺から内面に向かって延びるようにスリットが形成されている構成としてもよいし、スリットは夫々、直線状、曲線状またはこれらの組み合わせからなる形状を有する構成としてもよい。
【0052】
また、上述したグランド層なしの構造において、誘電体層は、LTCC(Low Temperature
Co-fired Ceramics)などのセラミックス、FR−4(Flame retardant-4)などのガラスエポキシ系基板材、テフロン(登録商標)系基板材、BT(Bismaleimide Triazine)レジン系基板材、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)系熱可塑性樹脂フィルム、若しくは、PET(Polyethylene terephthalate)若しくはPET−G(Polyethylene
terephthalate Glycol)などの樹脂、リネンなどの繊維又はそれらの複合体からなる構成としてもよいし、アンテナ支持層は、発泡ポリエチレン、アクリルフォーム若しくはウレタンなどの発泡材、テフロン(登録商標)やPET(Polyethylene terephthalate)若しくはPET−G(Polyethylene
terephthalate Glycol)などの樹脂、リネンなどの繊維又はそれらの組み合わせのいずれかからなる構成としてもよい。
【0053】
加えて、上述したグランド層なしのアンテナ装置を用いてRFIDタグを構成することとしてもよい。この場合も、ICがアンテナ支持層上においてアンテナ導体パターンに接続されており、シート状構造体がタグ基体の一部として用いられている。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】本発明の第1の実施の形態によるシート状構造体をRFIDタグに適用した例を示す図である。
【図2】図1に示されるRFIDタグの上面図である。
【図3】本発明の第1の実施の形態によるシート状構造体の単位構造を概略的に示す斜視図である。
【図4】本発明の第1の実施の形態によるシート状構造体の構造を概略的に示す斜視図である。
【図5】本発明の第1の実施の形態によるシート状構造体の断面図である。
【図6】図5の断面図において破線で囲まれた部分の等価回路図を示す図である。
【図7】本発明の第1の実施の形態によるシート状構造体のトップ層を示す図である。
【図8】本発明の第1の実施の形態によるシート状構造体の浮遊キャパシタ層を示す図である。
【図9】本発明の第2の実施の形態によるシート状構造体の単位構造を示す図である。
【図10】本発明の第2の実施の形態によるシート状構造体の浮遊キャパシタ層を示す図である。
【図11】本発明の第3の実施の形態によるシート状構造体の浮遊キャパシタ層を示す図である。
【図12】折り曲げアンテナの上面図である。
【図13】本発明の第4の実施の形態によるシート状構造体のトップ層を示す図である。
【図14】本発明の第4の実施の形態によるシート状構造体の浮遊キャパシタ層を示す図である。
【図15】本発明の第5の実施の形態によるシート状構造体のトップ層を示す図である。
【図16】本発明の第6の実施の形態によるシート状構造体のトップ層を示す図である。
【図17】本発明の第6の実施の形態によるシート状構造体の単位構造を示す図である。
【図18】本発明の第6の実施の形態によるシート状構造体の浮遊キャパシタ層を示す図である。
【図19】本発明の第7の実施の形態によるシート状構造体の単位構造を示す図である。
【図20】本発明の第7の実施の形態によるシート状構造体の浮遊キャパシタ層を示す図である。
【図21】入射波に対する反射波の位相変化量を示したグラフである。
【符号の説明】
【0055】
1、1a、1b、1c、1d、1e、1f シート状構造体
2 アンテナ支持層
3 アンテナ素子
3a アンテナ導体パターン
3b 梁部導体
4 IC
5、5a、5b、5c、5d、5e、5f 単位構造
10、10a、10e、10f グランド層
30、30a、30c、30d、30e、30f トップ層
40、40a、40c、40d、40e 誘電体層
50、50a、50b、50c、50e、50f 浮遊キャパシタ層
51、51a、51b、51c、51e、51f 容量導体部
52 切り落とし部
52a、52f スリット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シート状構造体と、アンテナ導体パターンを有するアンテナ層と、前記シート状構造体上に形成され前記アンテナ層を支持するための誘電体からなるアンテナ支持層とを備えたアンテナ装置であって、
前記シート状構造体は、単位構造を所定方向に繰り返し並べてなる周期構造を有しており、
前記単位構造は、導体からなるグランド層と、前記グランド層と離間して配置された導体からなるトップ層と、前記トップ層と前記グランド層の間に満たされた誘電体層と、前記誘電体層内にフローティング状態で保持された所定数の容量導体部からなる浮遊キャパシタ層を備えており、
前記グランド層と前記トップ層とは、前記誘電体層により絶縁されているアンテナ装置。
【請求項2】
前記グランド層と前記トップ層の間には、導電体による接続手段が設けられていない、請求項1に記載のアンテナ装置。
【請求項3】
前記所定数は2であり、
前記単位構造は、前記シート状構造体の主面と直交する方向から見た場合に、矩形形状を有しており、
2つの前記容量導体部は、前記所定方向において互いに離間するように配置されており、
前記単位構造の辺であって前記所定方向と交差する辺に接するようにして配置されていることにより、前記所定方向において隣接する単位構造の容量導体部と夫々接続されている
請求項1又は請求項2に記載のアンテナ装置。
【請求項4】
前記グランド層は、ベタパターンからなり、
前記単位構造は、前記直交する方向から見た場合に一辺が第1所定長である第1正方形形状を有しており、
前記容量導体部は、夫々、前記第1正方形の面積の半分よりも小さい面積を有する第2方形形状を有しており、
当該2つの第2方形形状は、夫々の第2方形の一つの辺が前記第1正方形の対応する辺上に位置するよう配置されていることにより、前記所定方向において隣接する単位構造内の容量導体部と夫々接続されている
請求項3に記載のアンテナ装置。
【請求項5】
前記所定数は4であり、
前記単位構造は、前記シート状構造体の主面と直交する方向から見た場合に、矩形形状を有しており、
4つの前記容量導体部は、前記所定方向において互いに離間するようにして配置されており、前記単位構造の少なくともいずれかの辺と接するように配置されていることにより、前記所定方向において隣接する単位構造内の容量導体部と夫々接続されている
請求項1又は請求項2に記載のアンテナ装置。
【請求項6】
前記グランド層は、ベタパターンからなり、
前記単位構造は、前記直交する方向から見た場合に一辺が第1所定長である第1正方形形状を有しており、
前記容量導体部は、前記方向から見た場合に夫々、前記第1所定長よりも短い第2所定長の底辺を有する二等辺三角形形状又は台形形状を有しており、
当該4つの二等辺三角形又は台形は、その頂点又は上底を前記第1正方形の中心点に向けるように配置されており、底辺を前記第1正方形の各辺上に配置することにより、前記所定方向において隣接する単位構造内の容量導体部と夫々接続されている
請求項5に記載のアンテナ装置。
【請求項7】
前記単位構造は、該単位構造の対角線のいずれかに対して非線対称な構造を有している、
請求項1乃至請求項6のいずれかに記載のアンテナ装置。
【請求項8】
前記シート状構造体は、前記アンテナ層の所定方向の電界に対してのみ同相反射を生じるものである
請求項1、請求項3又は請求項5に記載のアンテナ装置。
【請求項9】
前記容量導体部には、該容量導体部の一辺から内面に向かって延びるようにスリットが形成されている、請求項1乃至請求項8のいずれかに記載のアンテナ装置。
【請求項10】
前記スリットは夫々、直線状、曲線状またはこれらの組み合わせからなる形状を有する、請求項9に記載のアンテナ装置。
【請求項11】
前記誘電体層は、LTCC(Low Temperature Co-fired Ceramics)などのセラミックス、FR−4(Flame Retardant-4)などのガラスエポキシ系基板材、テフロン(登録商標)系基板材、BT(Bismaleimide Triazine)レジン系基板材、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)系熱可塑性樹脂フィルム、若しくは、PET(Polyethylene terephthalate)若しくはPET−G(Polyethylene
terephthalate Glycol)などの樹脂、リネンなどの繊維又はそれらの複合体からなる
請求項1乃至請求項10のいずれかに記載のアンテナ装置。
【請求項12】
前記アンテナ支持層は、発泡ポリエチレン、アクリルフォーム若しくはウレタンなどの発泡材、テフロン(登録商標)やPET(Polyethylene terephthalate)若しくはPET−G(Polyethylene
terephthalate Glycol)などの樹脂、リネンなどの繊維又はそれらの組み合わせのいずれかからなる
請求項1乃至請求項11のいずれかに記載のアンテナ装置。
【請求項13】
シート状構造体と、アンテナ導体パターンを有するアンテナ層と、前記シート状構造体上に形成され前記アンテナ層を支持するための誘電体からなるアンテナ支持層とを備えたアンテナ装置であって、
前記シート状構造体は、単位構造を所定方向に繰り返し並べてなる周期構造を有しており、
前記単位構造は、誘電体層と、該誘電体層上面に形成された導体からなるトップ層と、該誘電体層の下面に形成された所定数の容量導体部からなるキャパシタ層とを備えており、
前記トップ層と前記キャパシタ層とは、前記誘電体層により絶縁されている
アンテナ装置。
【請求項14】
請求項1乃至請求項13のいずれかに記載のアンテナ装置において、前記アンテナ層を省略してなるシート。
【請求項15】
請求項1乃至請求項13のいずれかに記載のアンテナ装置と、前記アンテナ支持層上において前記アンテナ導体パターンに接続されたICを備え、前記シート状構造体をタグ基体の一部としてなるRFID(Radio Frequency Identification)タグ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【公開番号】特開2009−218971(P2009−218971A)
【公開日】平成21年9月24日(2009.9.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−61927(P2008−61927)
【出願日】平成20年3月11日(2008.3.11)
【出願人】(000134257)NECトーキン株式会社 (1,832)
【Fターム(参考)】