説明

アンテナ装置

【課題】携帯電話等に実装可能なサイズのアンテナ装置を得ることができ、かつ近接通信に適した通信距離を確保できるアンテナ装置を提供する。
【解決手段】磁性シート上に形成したコイル部12と、インダクター16と第1のコンデンサ14とコイル部12とを直列に接続した送信回路と、コイル部12と第1のコンデンサ14と抵抗部17と第2のコンデンサ18とを直列に接続した受信回路とを備え、コイル部12は1ターンで構成され、コイル部12のサイズと抵抗器17は所定の関係からなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、携帯電話等の小型の通信装置に実装されるアンテナ装置に関し、とりわけ、NFC(Near Field Communication)機能を有する携帯電話等の通信装置に適応されるアンテナ装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、近接通信を行うシステムとしては、例えば、ICカードシステムが広く知られている。ICカードシステムにおいては、リーダ/ライタが電磁波を発生することにより、いわゆるRFフィールド(磁界)を形成する。そして、リーダ/ライタに、ICカードが近づくと、ICカードは電磁誘導によって電源の供給を受けるとともに、リーダ/ライタとの間でデータ伝送を行う。
【0003】
かかるICカードシステムに代表される近接通信を行うための通信プロトコルとしては、例えばNFCがある。近年、携帯電話にこのNFCによる通信プロトコルに従って近接通信を実行させ、携帯電話等の通信装置にカード機能を持たせるようにしている。さらに、対象物に取り付けられているタグ内の情報をNFC通信プロトコルを利用して携帯電話で読み取ることも提案されている(リーダ機能)。NFCに従う通信プロトコルを実行するためのアンテナ装置の一例は特許文献1に開示されている。
【特許文献1】特開2008−48376号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
携帯電話にアンテナ装置を実装する場合、携帯電話のサイズに合わせてアンテナ装置も小さなものでなければならない。携帯電話に実装するのに適したアンテナ装置としてチップアンテナが考えられる。しかしながら、チップアンテナを用いた場合、サイズに関するメリットはあるものの、所定の通信距離を確保することが困難になる。実験によるとチップアンテナを用いて近接通信を行った場合、約5mmの距離までしか安定した通信を実行することができなかった。この距離で携帯電話を利用して近接通信を行うとなると、携帯電話の筐体の厚み等により実際には通信を行うことができない。仮に、極度に薄い筐体を用いた場合でも、ほとんど携帯電話と対象物(リーダ/ライタ及びタグ)とを接触させなければならず、ユーザにとって使い勝手がよくないシステムとなっていた。
【0005】
NFCを実行するためのアンテナ装置としては、ある程度の距離(一般に約30mm)間において近接通信が行えることが望ましい。本発明はこの課題に鑑みて為されたものであり、所定の通信距離(30mm)以上の近接通信を行うことができ、かつサイズも携帯電話への実装に適したサイズのアンテナ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記目的を達成するために磁性シート上に形成したコイル部と、インダクターと第1のコンデンサと前記コイル部とを直列に接続した送信回路と、前記コイル部と前記第1のコンデンサと抵抗部と第2のコンデンサとを直列に接続した受信回路とを備え、前記コイル部は1ターンで構成され、前記コイルのサイズ(縦と横の寸法の積)と前記抵抗器を所定の関係からなるようにしたものである。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、携帯電話に実装可能なサイズのアンテナ装置を得ることができ、かつ近接通信に適した通信距離を確保できるアンテナ装置を得ることができる。さらに、小さなサイズを実現したことによって生じる以下の問題に対応できる。すなわち、アンテナ送信時において、アンテナの出力を高めるためにアンテナのQ値を高くする必要から1ターンのコイルをもちいた。しかしこれでは、アンテナ受信時におけるアンテナの誘起電圧が低くなり受信信号が得られなくなる。しかしながら、1ターンコイルのインピーダンスに合わせて受信回路の抵抗値をインピーダンス変換器により調整することで、この問題を解決することができ、小型で通信特性に優れたアンテナ装置を供給することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、本発明の実施例1について図面を用いて説明する。
【0009】
図1は、本発明の実施例におけるアンテナ装置を示す構成図である。
【0010】
1は、1ターンのループ形状をしているアンテナ1である。2はアンテナの下に設けられ、アンテナ周辺の金属の影響を低減するための磁性シート2である。なお、本実施例ではアンテナ装置の小型化を実現すべく、磁性シート2の三辺の好ましいサイズを図1に表示している。このサイズは、携帯電話等の小型の通信端末に備え付けるには適したサイズである。なお、このサイズでは複数ターンのアンテナを構成するとなると、アンテナの開口面積を十分に確保することができず、要求される通信距離を得ることが困難である。以下に、図1を用いてアンテナ装置を構成する各部の詳細について説明する。
【0011】
まず、アンテナ1について説明する。
【0012】
アンテナ1は、1ターンのループアンテナで形成される。アンテナ1の構造としては、中央に開口部を備えた形状であればよく、その形状は円形または略矩形または多角形のいずれであってもよい。このような構造とすることで、十分な磁界を得て、誘導電力の発生と相互インダクタンスによる無線通信媒体と無線通信媒体処理装置との通信を可能とするものである。
【0013】
さらに、アンテナ1の材質としては、金、銀、銅、アルミ、ニッケル等の導電性の金属製線材、金属製板材、金属製箔材、または金属製筒材等から適宜選択することができ、金属線、金属箔、導電性ペースト、めっき転写、スパッタ、蒸着、もしくは、スクリーン印刷により形成することができる。
【0014】
次に、磁性シート2について説明する。
【0015】
磁性シート2は、フェライトやパーマロイ、センダスト、珪素合板等の金属材料で構成される。磁性材としては、軟磁性フェライトが好ましく、フェライト粉体を乾式プレス成形し、焼成することにより焼成体、高密度のフェライト焼成体とすることができ、軟磁性フェライトの密度が3.5g/cm3以上であることが好ましい。更に軟磁性フェライトの磁性体の大きさが、結晶粒界以上であることが好ましい。また磁性シート2は、0.05mm〜3mm程度で形成されるシート状(あるいは板状、膜状、層状)のものである。
【0016】
軟磁性フェライトとしては、Ni−ZnO3、ZnO、NiO、CuO、または、Fe23、ZnO、MnO、CuOからなっていてもよい。更にアモルファス合金、パーマロイ、電磁鋼、珪素鉄、Fe−Al合金、センダスト合金のいずれかの磁性体の単層であってもよく、フェライト、アモルファス箔、パーマロイ、電磁鋼、センダストの積層体であってもよく、また、様々な磁性体を組み合わせた積層体であってもよい。磁性材を積層する際には、樹脂、紫外線硬化型樹脂、可視光硬化型樹脂、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、耐熱性樹脂、合成ゴム、両面テープ、粘着層、またはフィルムの少なくとも1つの手段により、磁性材が接着され積層構造となる。
【0017】
更に本発明の磁性シート2は、フェライト、アモルファス合金、パーマロイ、電磁鋼、珪素鉄、Fe−Al合金、センダスト合金の単体、または積層体を樹脂、紫外線硬化型樹脂、可視光硬化型樹脂、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、耐熱性樹脂、合成ゴム、両面テープ、粘着層、またはフィルムの少なくとも1つの手段によりコーティングをおこなったものでもよい。
【0018】
また、フェライト、アモルファス箔、パーマロイ、電磁鋼、センダスト単体および積層体が、磁性体固片の集合体であってもよく、整合配置することにより、磁性シート2総厚に対して磁性体を効率よく形成できる。
【0019】
更に、全ての磁性体固片がその上下面を略同一面となるように配置することで、磁性シート2に要求される厚み寸法や、機械的強度、その他の物理的性能の範囲において磁性体の最大限の体積を利用することができ、高い磁気性能を得ることができる。
【0020】
本発明の磁性シート2は、単層、多層構造、または固片からなり、樹脂、紫外線硬化型樹脂、可視光硬化型樹脂、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、耐熱性樹脂、合成ゴム、両面テープ、粘着層、またはフィルムの少なくとも1つの手段によりコーティングを行うことで、柔軟性が高くて耐久性に優れる上、表面抵抗が高く、表面にアンテナ印刷やめっきなどによる回路形成を行うことが容易である。
【0021】
本実施例において磁性シート2は、Ni−Zn系フェライトまたは、Mn−Zn系フェライト材を800℃〜1000℃で焼成したもので、焼成した磁性シート2を保護テープ、両面テープ等の保護部材によりコーティングし、ローラー等で磁性シート2を粉砕することで柔軟性を有した磁性シート2を作製する。
【0022】
また、保護部材によりコーティングされた磁性シート2は、非常に優れた柔軟性を有しているので、パンチング等により、容易に打ち抜き成形加工ができるので、複雑な形状の加工も低コストで、しかも大量に成形できるという特徴も有する。
【0023】
更に、磁性シート2の形状としては、略三角柱、略四角柱、略円柱、略球等の形状で構成されていてもよい。
【0024】
本発明の磁性シート2は、両面テープまたは微粘着テープ等に固定されローラーにて粉砕されることにより、磁性シート2に柔軟性を与えることができる。また、ローラーにて粉砕されることで磁性シート2の加工性がよくなり、加工時の負荷も少なくなるので、製品の低コスト化も実現できる。更に、磁性シート2がローラーにより粉砕されることで、磁性シート2に隙間ができ、磁性シート2の上に樹脂を印刷した際に、樹脂が磁性シート2に滲みこみ、樹脂がバインダーの役割を果たし磁性シート2に更に柔軟性をもたせることが可能となる。
【0025】
また、本発明の磁性シート2は、磁性材にスリットを設けることにより、磁性シート2を容易に分割することができ、柔軟性及び加工性に優れた磁性シート2を実現できる。
【0026】
今回の発明では磁性シートをもちいたが、アンテナ装置の周辺に金属体等がなければ樹脂、紫外線硬化型樹脂、可視光硬化型樹脂、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、耐熱性樹脂、合成ゴム、両面テープ、粘着層でもかまわない。
【0027】
次に、図2について説明する。
【0028】
図2は、本発明のアンテナ1の概略構成図であり、1ターンのコイルを形成している。アンテナ1の寸法サイズは、SIMカードのサイズを基準になされていて、アンテナ1の幅は、アンテナ1の通信特性とアンテナ1のQ値による電磁界シミュレーションの最適値から3mmとなった。
【0029】
本実施例における図1、図5、図6、図7では、アンテナ装置に背面金属を設けていないが、アンテナ装置が周囲の環境により共振周波数が変化しないようにする目的から、アンテナ装置の背面に金属を設ける構成にしてもよい。その時の背面金属の材料としては一般的に銅箔が用いられるが、金、銀、銅、アルミ、ニッケル等の導電性の金属製線材、金属製板材、金属製箔材、または金属製筒材等から適宜選択することができ、金属板、金属線、金属箔、導電性ペースト、めっき転写、スパッタ、蒸着、もしくは、スクリーン印刷により形成することができる。
【0030】
また、アンテナ装置における端子は、アンテナ装置の上面、側面もしくは裏面のいずれの面に設置されていてもよく、アンテナ装置を組み込む機器の設置状態に応じて端子位置を変更することができる。また、図5、図6、図7に示されているようなスイッチング回路24、34、43によるアンテナ1との接続でもよいし、さらにはコネクター等によるアンテナ1との接続でも問題ない。
【0031】
図1で示した好適なサイズを用いた磁性シート2を用いるために本実施例のアンテナ1の寸法サイズを図2に表示している。これらのサイズを用いたアンテナ1及び磁性シート2を用いることにより携帯電話等の小型の通信端末に簡単に備え付けることができる。
【0032】
次に、図3について説明する。
【0033】
図3は、本発明のアンテナ装置に適用された送・受信回路図であり、図3に示されているようにICチップ11・アンテナ12・コンデンサー13、14、15、18・インダクター16・抵抗17からなる。
【0034】
この回路は、送信時にはICチップ11から出た送信信号が、矢印19のようにローパスフィルターや整合用コンデンサー14を通過してアンテナ12に達し、アンテナ12に磁界を生じさせて通信が行なわれる。一方、受信時にはアンテナコイルを通過する磁界により誘起電圧が生じ、矢印20のように受信回路の抵抗17・コンデンサー18を通過してICチップ11に受信信号が伝達される。
【0035】
本発明では、アンテナ装置のリーダ/ライタモード時の電力伝達を最大にするためにアンテナ12のQ値を高くする必要から、1ターンのコイルをアンテナ12として用いている。なお、リーダ/ライタモードとは、アンテナ装置がリーダ/ライタとして機能することであり、相手側であるタグ(ICカード)にむけて信号を送信し、タグからの情報を受信する通信モードのことである。従来のアンテナ装置のように3ターンから4ターンのループアンテナを形成するアンテナ12では、SIMサイズ(40×20mm)のように小型化すると、アンテナ12の開口面積を十分に確保できず、また、アンテナ12のターン数が増えることで、アンテナ12のインピーダンスが増加する。その結果、アンテナ12のQ値が低下し、ICチップ11からの信号が十分にアンテナ12に伝達することが出来ず、通信特性が30mm以下になってしまっていた。
【0036】
本発明では、上記問題を解決するためにアンテナ12を1ターンのコイルにし、アンテナのQ値および回路定数のQ値を高めることで、ICチップ11からの信号をアンテナ12に最大限に伝達し、SIMサイズのアンテナ装置においても通信特性が30mm以上確保することが可能となった。
【0037】
一方、アンテナ12を1ターンにすることで、アンテナ装置のタグモードにおける誘起電圧が低下する問題が生じる。ここで、タグモードとは、アンテナ装置がタグ(ICカード)として機能することであり、相手側である外部のリーダ/ライタ装置から信号を受信し、アンテナ装置内部の情報を送信する通信モードのことである。
【0038】
アンテナ12における誘起電圧は、Em=E0×Q×μe×(2π×N×A/λ) Em:誘起電圧、E0:電界強度 Q:アンテナ性能 μe:実効透磁率 N:ターン数 A:アンテナ面積 λ:波長 で表され、図4に示されているようにアンテナコイルのターン数Nが減ることで、誘起電圧が減少することが分かる。したがって、アンテナ装置のアンテナ12を1ターンにした場合、アンテナ装置のタグモードにおける誘起電圧が低下してしまい、十分な受信信号が得られなくなり、通信できなくなってしまう。
【0039】
そこで本発明では、図4に示されているようにアンテナコイルのターン数の低下にともないインピーダンス変換器をもちいて抵抗値17の値を低下させることで、十分な受信信号をICチップ11に伝達させ、受信させるものである。図4から明らかなように、好適な誘起電圧(200mV)を確保するためには抵抗17の抵抗値を約0.54kΩする必要がある。
【0040】
コイル1ターンのアンテナ装置において、アンテナ1のサイズと受信回路の抵抗値とには以下の関係が存在する。
【0041】
S=√(R×W)/(H×Q×μe×2πf)
S:コイル部の縦と横の寸法の積 R:抵抗値 W:ICチップ受信時の駆動電力
H:磁界強度 Q:アンテナ性能 μe:実効透磁率 f:周波数
このときのコイルサイズSは、アンテナ装置の縦と横の寸法の積であり、本発明においては、図2に示されているように、アンテナ装置の縦寸法38mmと横寸法18mmの積
になる。
【0042】
上記のように抵抗値17を低下させるインピーダンス変換器を用いる方法の他に、トランスにより受信回路の電圧を昇圧させる方法や、コンパレータにて受信回路の電流を検知し、バラクターダイオードにて電流量を変える方法で受信感度と高めさせる手段等がある。
【0043】
これらの手段をもちいることで、従来なら複数ターンが必要であったアンテナ12が、1ターンのアンテナ12でリーダ/ライタモード・タグモードにおいて30mm以上の通信特性を得ることが可能となった。
【0044】
次に、図5について説明する。
【0045】
図5は、本発明の別の実施例におけるアンテナ装置の上面図である。図5において、リーダ/ライタモード時のアンテナ21とタグモード時のアンテナ22が同一平面上に構成されており、アンテナ21、22の下には磁性シート23が形成されている。
【0046】
この磁性シート23は、アンテナ周辺に金属体がない場合は樹脂層であってもかまわない。
【0047】
また、アンテナ21、22にはスイッチング回路24が接続されており、リーダ/ライタモード時およびタグモード時において端子の切り替えをおこなう。25と28はアンテナ装置がリーダ/ライタモード時の端子であり、それぞれアンテナ21に接続されており、同様に26と27はアンテナ装置がタグモード時の端子であり、それぞれアンテナ22に接続されている。
【0048】
リーダ/ライタモード時には、1ターンのアンテナ21をもちいることでアンテナ21のQ値を低下させて、ICチップからの伝送信号を最大限に伝達させてやる。一方、受信時にはスイッチング回路にてアンテナを複数ターンのアンテナ22にすることで、受信時の誘起電圧を上げてやり、アンテナ22からの受信信号をICチップ11に伝達してやる。なお、これらのモード時の切り替えにおいては、モードを検出しスイッチング回路24にて自動的に行うようにしてもよいし、利用者が手動にて切り替えを行ってもよい。
【0049】
リーダ/ライタモード時のアンテナ21が外側でタグモード時のアンテナ22が内側であるのは、リーダ/ライタモードのアンテナ21は、無給電のタグのICチップを駆動させる必要があることから、すこしでも大きなアンテナ21が好ましく、一方、タグモードのアンテナは、電力を供給された相手側のリーダ/ライタから信号が送られてくることから、リーダ/ライタモード時のアンテナ21より大きくなくてもよいからである。
【0050】
図5のようにアンテナ21、22を配置することで、アンテナ装置の厚みを薄くすることができ、また、受信回路にインピーダンス変換器等を配置する必要がなくなる。このように、アンテナに接続された回路を工夫することなく、アンテナ自体と回路への接続を工夫することにより、アンテナのサイズを大きくすることなく、上記2つのモードに対応できるアンテナ装置を提供することができる。
【0051】
次に、図6について説明する。
【0052】
図6は、リーダ/ライタモード時のアンテナ31とタグモード時のアンテナ32が上下に構成されており、リーダ/ライタモード時のアンテナ31とタグモード時のアンテナ32との間には、絶縁層39が形成されている。これらのアンテナ31、32の下には磁性シート33が形成されているが、アンテナ周辺に金属体がない場合は樹脂層であってもかまわない。また、アンテナ31、32にはスイッチング回路34が接続されており、リーダ/ライタモード時およびタグモード時において端子の切り替えをおこなう。
【0053】
リーダ/ライタモード時には、1ターンのアンテナ31をもちいることでアンテナ31のQ値を低下させて、ICチップ11からの伝送信号を最大限に伝達させてやる。一方、受信時には複数ターンのコイルのアンテナ32をもちいることで、受信時の誘起電圧を上げてやり、アンテナ32からの受信信号をICチップ11に伝達してやる。
【0054】
リーダ/ライタモード時のアンテナ31が上側でタグモード時のアンテナ32が下側であるのは、リーダ/ライタモード時のアンテナ31は、無給電のタグのICチップを駆動させる必要があることから、すこしでもアンテナ31がタグに近い方が好ましく、一方、タグモード時のアンテナ32は、電力を供給された相手側のリーダ/ライタから信号が送られてくることから、リーダ/ライタモード時のアンテナ31より近くなくてもよいからである。
【0055】
図6のようにアンテナ31、32を配置することで、アンテナ31、32の端子位置を自由にアンテナ装置に配置することが可能となる。また、タグモード時のアンテナ32の大きさを図5のアンテナ22よりも大きくすることができ、またタグモード時のアンテナ32のターン数を自由に増やすことが可能となる。
【0056】
次に、図7について説明する。
【0057】
図7は、同一平面上に形成された1本のアンテナ40において、アンテナ40の所々に設置された接続端子41からアンテナ信号を送・受信することにより、アンテナ40が1ターンのコイルにも複数ターンのコイルにも自由に変化することのできるアンテナ装置である。これらのアンテナ40の下には磁性シート42が形成されているが、アンテナ周辺に金属体がない場合は樹脂層であってもかまわない。また、アンテナ40にはスイッチング回路43が接続されており、リーダ/ライタモード時およびタグモード時において端子の切り替えをおこなう。
【0058】
リーダ/ライタモード時には、端子44と端子45をもちいて、1ターンのアンテナ40にすることでアンテナ40のQ値を低下させて、ICチップ11からの伝送信号を最大限に伝達させてやる。一方、受信時には端子44と端子46をもちいて、複数ターンのコイルのアンテナ40にすることで、受信時の誘起電圧を上げてやり、アンテナ40からの受信信号をICチップ11に伝達してやる。
【0059】
図7のようにアンテナ40を形成することで、同一平面上にリーダ/ライタモードおよびタグモードの機能をもったアンテナを容易に作製することが可能であり、薄くて低コストのアンテナ装置を提供することができる。
【0060】
上記のように本発明によるアンテナ1、21、22、31、32、40を設定することで、小型で低コストのアンテナ装置を作製することができ、しかもアンテナ装置の通信距離を30mm以上確保することが可能となる。
【産業上の利用可能性】
【0061】
本発明のアンテナ装置は、商品棚などに収納される非接触ICカードやICタグなどの無線通信媒体に電力と送信データを供給し、無線通信媒体から受信データを負荷変動により取得する無線通信媒体処理装置であって、特に自動で商品管理、書籍管理等が可能となる収納棚、展示棚以外の医薬品管理、危険物管理、貴重品管理システム等々などの、通信範囲を拡大させることが必要な用途にも適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0062】
【図1】本発明の実施例におけるアンテナ装置を示す構成図
【図2】本発明の実施例におけるアンテナの概略構成図
【図3】本発明の実施例におけるアンテナ装置の回路図
【図4】本発明の実施例におけるターン数と誘起電圧の関係図
【図5】本発明の別の実施例におけるアンテナ装置の上面図
【図6】本発明の別の実施例における上下に2つのアンテナを用いた場合の構成図
【図7】本発明の別の実施例におけるアンテナを用いた場合の構成図
【符号の説明】
【0063】
1 アンテナ
2 磁性シート
11 ICチップ
12 アンテナ
13 共振用コンデンサー
14 整合用コンデンサー
15 フィルター用コンデンサー
16 インダクター
17 抵抗
18 コンデンサー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁性シート上に形成したコイル部と、インダクターと第1のコンデンサと前記コイル部とを直列に接続した送信回路と、前記コイル部と前記第1のコンデンサと抵抗部と第2のコンデンサとを直列に接続した受信回路とを備え、前記コイル部は1ターンで構成され、前記コイルのサイズと前記抵抗器は以下の関係からなることを特徴とするアンテナ装置。
S=√(R×W)/(H×Q×μe×2πf)
S:コイル部の縦と横の寸法の積 R:抵抗値 W:ICチップ受信時の駆動電力
H:磁界強度 Q:アンテナ性能 μe:実効透磁率 f:周波数
【請求項2】
磁性シート上に形成された1ターンからなる第1のコイルと、前記磁性シート上の前記第1のコイルのほぼ同一平面上に形成された1ターンからなる第2のコイルと、前記第1のコイルの一方の端部に接続された第1の接続端子と、前記第2のコイルの一方の端部に接続された第2の接続端子と、前記第2のコイルの他方の端部に接続されるとともに前記第1のコイルの他方の端部に選択的に接続される第3の接続端子と、前記第1の他方の端部に選択的に接続される第4の接続端子とを備えたことを特徴とするアンテナ装置。
【請求項3】
リーダ/ライタモード時で使用するための前記第1のコイルをタグモード時で使用する前記第2のコイルよりも外側に配置することを特徴とする請求項2記載のアンテナ装置。
【請求項4】
リーダ/ライタモード時において、前記第1のコイルの他方の端部を前記第4の接続端子に接続し、タグモード時において、前記第1のコイルの他方の端部を前記第3の接続端子に接続するように切り替える切り替え部を備えたことを特徴とする請求項2記載のアンテナ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−147623(P2010−147623A)
【公開日】平成22年7月1日(2010.7.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−320450(P2008−320450)
【出願日】平成20年12月17日(2008.12.17)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】