説明

アンテナ装置

【課題】サイズが小さくてもダイバーシチ効果を得ることができるアンテナ装置を提供する。
【解決手段】アンテナ装置が、第1方向に向けられた複数のアンテナ素子11を一列に配置するアレーアンテナ10と、第2方向に向けられた複数のアンテナ素子21をアンテナ素子11と一列になるようそれぞれ交互に配置するアレーアンテナ20と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、MIMO伝送に係るアンテナ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
次世代の移動通信方式として注目されているLTE(Long Term Evolution)では、スループットを向上させるため、MIMO(Multiple Input Multiple Output)伝送技術が採用されている。
【0003】
図9は、MIMO伝送を行う従来のアンテナの構成を示す図である。図9(A)に示す4ブランチのアレーアンテナは、複数の垂直偏波素子71「V」をアレー状に備える。アレーアンテナ70は、互いに5λ〜10λ(λは、使用周波数での波長)離して配置される。このように配置されたアレーアンテナは、互いを離すことにより相関係数が低減されるため、空間ダイバーシチ効果を得ることができる。
【0004】
また、図9(B)に示す2ブランチのアレーアンテナは、複数のV(垂直)/H(水平)偏波共用素子81(または±45度偏波共用素子)「V/H」をアレー状に備える。アレーアンテナ80は、互いに5λ〜10λ離して配置される。このように配置されたアレーアンテナは、空間ダイバーシチ効果及び偏波ダイバーシチ効果を得ることができる。しかし、これらのアンテナは互いに離して配置されるため、アレーアンテナのサイズは大きかった。
【0005】
上記以外にも、2本のアンテナによって水平面内の異なる方向に指向性を持たせる、指向性ダイバーシチ(角度ダイバーシチ)と呼ばれるダイバーシチ効果がある。
【0006】
図10は、偏波ダイバーシチ効果及び指向性ダイバーシチ効果を得る従来のアレーアンテナの構成を示す図である。図10に示すアレーアンテナは、2本のアンテナとしてアレーアンテナ1及び2を備える。また、アレーアンテナ1は主反射板8に偏波共用素子5をアレー状に備え、同様にアレーアンテナ2は主反射板9に偏波共用素子4をアレー状に備える。
【0007】
従来のアレーアンテナは、図10に示すように、アレーアンテナ1の水平面内放射方向6と、アレーアンテナ2の水平面内放射方向7とが水平面の異なる方向となるように2本のアンテナが配置されるため、レドーム(アンテナカバー)3が太いアンテナであった。
【0008】
また、特許文献1に開示されたアレーアンテナは、ダイバーシチ効果を得るために、2本のアンテナをレドームに配置するため、レドームが太いアンテナであった(特許文献1参照)。また、特許文献2に開示されたアレーアンテナは、アンテナを互いに離して配置するため、サイズが大きいアンテナであった(特許文献2参照)。
【0009】
また、特許文献3に開示されたアレーアンテナは、2本又は3本のアンテナが必要であるため、サイズが大きいアンテナであった(特許文献3参照)。また、特許文献4に開示されたセクタアンテナは、6セクタが1本にまとめられているためレドームが細いアンテナであるが、その代わりにアンテナが従来比で3倍程度長く、さらに垂直面内指向性のサイドローブ(不要輻射)が上昇してしまうアンテナであった(特許文献4参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特許第3239043号公報
【特許文献2】特開平9−246860号公報
【特許文献3】特開平8−32347号公報
【特許文献4】特許第3456507号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
アンテナの設置場所等の条件を緩和するため、また設置コストを低減するため、アンテナはサイズが小さいことが望ましい。しかしながら、従来のアレーアンテナ及びセクタアンテナは、前述したようにサイズが大きく、これらの要求を充分には満たしていなかった。
【0012】
本発明は、前記の諸点に鑑みてなされたものであり、サイズが小さくてもダイバーシチ効果を得ることができるアンテナ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、第1方向に向けられた複数の第1アンテナ素子を一列に配置する第1アレーアンテナと、第2方向に向けられた複数の第2アンテナ素子を前記第1アンテナ素子と一列になるようそれぞれ交互に配置する第2アレーアンテナと、を備えることを特徴とするアンテナ装置である。
【0014】
また本発明は、前記第1アレーアンテナと前記第2アレーアンテナとで区切られる領域に、電波の放射方向を調整する反射器を備えることを特徴とするアンテナ装置である。
【0015】
また本発明は、前記第1方向と前記第2方向との成す角度が可変であることを特徴とするアンテナ装置である。
【0016】
また本発明は、前記アンテナ素子が、V/H偏波共用素子又は±45度偏波共用素子であることを特徴とするアンテナ装置である。
【0017】
また本発明は、前記第1のアレーアンテナがV/H偏波共用素子を備え、前記第2のアレーアンテナが±45度偏波共用素子を備えることを特徴とするアンテナ装置である。
【0018】
また本発明は、前記第2アンテナ素子が前記第1アレーアンテナの切り欠き部分に合わせて配置され、前記第1アンテナ素子が前記第2アレーアンテナの切り欠き部分に合わせて配置されることを特徴とするアンテナ装置である。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、アンテナ装置が、複数の第1アンテナ素子を一列に配置する第1アレーアンテナと、それぞれの第1アンテナ素子の間に第2アンテナ素子を配置する第2アレーアンテナを備える。これにより、アンテナ装置は、サイズが小さくてもダイバーシチ効果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の第1の実施形態におけるアンテナ装置の構成を示す図である。
【図2】本発明の第1の実施形態におけるアンテナ装置の構成を示す図である。
【図3】本発明の第1の実施形態におけるアンテナ装置が受信する電波のパスの例を示す図である。
【図4】本発明の第1の実施形態における反射器の有無による垂直偏波の水平面内指向性の例を示す図である。
【図5】本発明の第1の実施形態におけるアンテナ装置の設計パラメータ例を説明する図である。
【図6】本発明の第1の実施形態におけるアンテナ装置の設計パラメータ例を示す表である。
【図7】本発明の第2の実施形態におけるアンテナ装置の構成を示す図である。
【図8】本発明の第2の実施形態におけるアンテナ装置の構成を示す図である。
【図9】MIMO伝送を行う従来のアンテナ装置の構成を示す図である。
【図10】偏波ダイバーシチ効果及び指向性ダイバーシチ効果を得る従来のアレーアンテナの構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
[第1の実施形態]
本発明の第1の実施形態について図面を参照して詳細に説明する。図1は、本発明の第1の実施形態におけるアンテナ装置の構成を示す図である。アンテナ装置(4ブランチMIMOアンテナ)は、アレーアンテナ10と、アレーアンテナ20と、反射器30を備える。
【0022】
アレーアンテナ10は、主反射板13に水平面内の同一方向に向けられた複数のアンテナ素子11を垂直方向一列に配置して構成される。ここで、各アンテナ素子11は、アレーアンテナ20のアンテナ素子21とは異なる水平面内方向に向けられ、各切り欠き部分22の高さに合わせてアレーアンテナ10に配置される。またアレーアンテナ10は、主反射板13のアンテナ素子11の無い領域に設けられた複数の切り欠き部分12によって、櫛歯形状をしている。
【0023】
アレーアンテナ20は、主反射板23の水平面内の同一方向に向けられた複数のアンテナ素子21を垂直方向に一列に配置して構成される。ここで、各アンテナ素子21は、アレーアンテナ10のアンテナ素子11とは異なる水平面内方向に向けられ、各切り欠き部分12の高さに合わせてアレーアンテナ20に配置される。またアレーアンテナ20は、主反射板13の切り欠き部分12とは互い違いの高さに設けられた主反射板23の切り欠き部分22によって、櫛歯形状をしている。
【0024】
アンテナ素子11及び21は、V(垂直)/H(水平)偏波共用素子又は±45度偏波共用素子のいずれでもよく、混在していてもよい。例えば、アンテナ素子11はV/H偏波共用素子、アンテナ素子21は±45度偏波共用素子であってもよく、またその逆であってもよい。
【0025】
反射器30は、例えば円柱形状であり、レドーム40内に立てて配置される。反射器30は、送受信する電波を反射することで、水平面内の放射方向を調整する。なお、反射器30は、円柱形状に限らなくてもよい。水平面内指向性に対する反射器30の効果例については、図4に後述する。
【0026】
アンテナ装置は、図1の右図に示すように、主反射板13及び主反射板23の切り欠き部分が互いに組み合わされることにより、アンテナ素子11及び21が一列となるようそれぞれ交互に配置され、レドーム(アンテナカバー)40が細いアンテナとなる。図2は、本発明の第1の実施形態におけるアンテナ装置の構成を示す図である。図2には、アンテナ装置の正面図、右側面図、左側面図、及び上面図が示されている。ここで、アレーアンテナ10及び20が水平面内に成す角度は、90度に限らなくてもよい。なお、アンテナ装置は可変機構(不図示)を備えることで、アレーアンテナ10及び20の成す角度を可変できるようにしてもよい。
【0027】
図3は、本発明の第1の実施形態におけるアンテナ装置が受信する電波のパスの例を示す図である。ここで、端末局100から直接届く電波のパス(伝送路)300と、反射体200(例えば、ビル壁面など)に反射されて届く電波のパス400があるものとする。このような場合、パス300と400の独立性は高くなるが、アレーアンテナ10とアレーアンテナ20の分離度が低い(レベル差が低い)ため、アンテナ装置は高い指向性ダイバーシチ効果を得ることができない。
【0028】
図4は、本発明の第1の実施形態における反射器の有無による垂直偏波の水平面内指向性の例を示す図である。反射器30が配置されない場合(左図)と、アンテナ素子11及び21が水平面内に成す角度(60度)を二等分する位置に反射器30が配置された場合(右図)との垂直偏波の水平面内指向性を比較する。ここで、横軸は水平面内の角度(アジマス)を示し、縦軸は利得(レベル)を示す。
【0029】
反射器30が配置されない場合(左図)、アレーアンテナ10及び20のレベル差は小さくなる。これは、指向性のオーバーラップが多く、独立したパスを互いに分離することができないためである。この場合、アンテナ装置は高い指向性ダイバーシチ効果を得ることができない。一方、反射器30が配置された場合(右図)、アレーアンテナ10及び20のレベル差は大きくなる。これは、反射器30が電波を反射することで、指向性のオーバーラップが少なく、独立したパスを互いに分離することができるためである。この場合、アンテナ装置は、異なるパスの電波(信号)を分離することが容易となるので、高い指向性ダイバーシチ効果を得ることができる。
【0030】
なお、水平偏波の水平面内指向性については、アンテナ素子にダイポールアンテナを用いれば、反射器を設けなくてもダイポールアンテナの8の字指向性によって、高い指向性ダイバーシチ効果を得ることができる。
【0031】
次に、アンテナ装置の設計パラメータ例を示す。図5は、本発明の第1の実施形態におけるアンテナ装置の設計パラメータ例を説明する図である。図5は、アンテナ装置を上から垂直に見下ろすように描かれている。主反射板510は、長さ「Ref_W」の反射板であり、電波を反射する。ここで、主反射板510の中心を原点として、主反射板510の長手方向にY軸、幅方向にX軸を設ける。なお、主反射板520は、主反射板510と原点で交差するように配置されてもよい。
【0032】
ダイポールアンテナ512は、垂直偏波ダイポール(アンテナ素子)であり、図1のアンテナ素子11及び21に対応する。ダイポールアンテナ512は、X軸に対して対称に配置され、主反射板510からX軸方向に「V_dipole_X」だけ離れ、互いにY軸方向に「V_dipole_Y」だけ離れた位置に配置されるものとする。
【0033】
反射器530は、直径「Wire1_D」の円柱であり、電波を反射する。反射器530は、原点からX軸方向に距離「Wire1_X」、Y軸方向に距離「Wire1_Y」だけ離れた位置に配置されるものとする。
【0034】
図6は、本発明の第1の実施形態におけるアンテナ装置の設計パラメータ例を示す表である。「Ref_W=0.36λ」、「V_dipole_X=0.17λ」、「V_dipole_Y=0.29λ」とした場合の、反射器の設計パラメータ(位置及び直径)例を表に示す。ここで「λ」は中心周波数の波長である。なお、図6に示した設計パラメータは一例であって、これらの値に限られなくてもよい。上記はアンテナ素子としてダイポールアンテナを例として述べたものであるが、パッチアンテナ素子を用いても同様である。
【0035】
以上のようにすれば、アンテナ装置は、サイズが小さくてもダイバーシチ効果を得ることができるので、アンテナの設置場所等の条件が緩和され、またその設置コストが低減される。
【0036】
[第2の実施形態]
本発明の第2の実施形態について図面を参照して詳細に説明する。図7及び図8は、本発明の第2の実施形態におけるアンテナ装置の構成を示す図である。アンテナ装置(4ブランチMIMOアンテナ)は、アレーアンテナ50と、アレーアンテナ60と、反射器30を備える。以下、第1の実施形態のアンテナ装置との相違点についてのみ説明する。
【0037】
アレーアンテナ50及び60は、それぞれ第1の実施形態のアレーアンテナ10及び20に対応する。第2の実施形態のアンテナ装置は、主反射板53及び63に切り欠き部分が無いことのみが、第1の実施形態と異なる。主反射板53及び63に切り欠き部分が無いため、第2の実施形態のアンテナ装置は、垂直面内指向性への影響を第1の実施形態よりも小さくすることができる。
【0038】
以上のようにすれば、アンテナ装置は、サイズが小さくてもダイバーシチ効果を得ることができる。これにより、アンテナの設置場所等の条件が緩和され、またその設置コストが低減される。
【0039】
以上、この発明の実施形態について図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計等も含まれる。
【0040】
また、本発明に記載の第1アンテナ素子は、アンテナ素子11と、アンテナ素子21と、ダイポールアンテナ512に対応し、第1アレーアンテナは、アレーアンテナ10と、アレーアンテナ50と、アレーアンテナ20と、アレーアンテナ60と、主反射板13と、主反射板23と、主反射板53と、主反射板63と、主反射板510と、主反射板520とに対応し、第2アンテナ素子は、アンテナ素子21と、アンテナ素子11と、ダイポールアンテナ512に対応し、第2アレーアンテナは、アレーアンテナ20と、アレーアンテナ60と、アレーアンテナ10と、アレーアンテナ50と、主反射板13と、主反射板23と、主反射板53と、主反射板63と、主反射板520と、主反射板510に対応し、反射器は、反射器30と、反射器530に対応する。
【符号の説明】
【0041】
1…アレーアンテナ 2…アレーアンテナ 3…レドーム 4…アンテナ素子 5…アンテナ素子 6…アレーアンテナ1の水平面内放射方向 7…アレーアンテナ2の水平面内放射方向 8…主反射板 9…主反射板 10…アレーアンテナ 11…アンテナ素子 12…切り欠き部分 13…主反射板 20…アレーアンテナ 21…アンテナ素子 22…切り欠き部分 23…主反射板 30…反射器 40…レドーム 50…アレーアンテナ 53…主反射板 63…主反射板 60…アレーアンテナ 100…端末局 200…反射体 300…パス 400…パス 510…主反射板 512…ダイポールアンテナ 520…主反射板 530…反射器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1方向に向けられた複数の第1アンテナ素子を一列に配置する第1アレーアンテナと、
第2方向に向けられた複数の第2アンテナ素子を前記第1アンテナ素子と一列になるようそれぞれ交互に配置する第2アレーアンテナと、
を備えることを特徴とするアンテナ装置。
【請求項2】
前記第1アレーアンテナと前記第2アレーアンテナとで区切られる領域に、電波の放射方向を調整する反射器
を備えることを特徴とする請求項1に記載のアンテナ装置。
【請求項3】
前記第1方向と前記第2方向との成す角度が可変であることを特徴とする請求項1から請求項2のいずれか1つに記載のアンテナ装置。
【請求項4】
前記アンテナ素子は、V/H偏波共用素子又は±45度偏波共用素子であることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1つに記載のアンテナ装置。
【請求項5】
前記第1のアレーアンテナはV/H偏波共用素子を備え、前記第2のアレーアンテナは±45度偏波共用素子を備えることを特徴とする請求項4に記載のアンテナ装置。
【請求項6】
前記第2アンテナ素子は前記第1アレーアンテナの切り欠き部分に合わせて配置され、前記第1アンテナ素子は前記第2アレーアンテナの切り欠き部分に合わせて配置されることを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか1つに記載のアンテナ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−10081(P2011−10081A)
【公開日】平成23年1月13日(2011.1.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−152155(P2009−152155)
【出願日】平成21年6月26日(2009.6.26)
【出願人】(000208891)KDDI株式会社 (2,700)
【Fターム(参考)】