説明

アンテナ

【課題】高いQにより電力伝送効率が向上するアンテナを提供する。
【解決手段】本発明のアンテナは、第1面311と、前第1面311の裏面である第2面312とを有する基材310と、前記基材310上の前記第1面311形成されると共に、第1面第1端部331と第1面第2端部332の2つの端部を有する第1面導電部330と、前記基材310上の前記第2面312に形成されると共に、第2面第1端部351と第2面第2端部352の2つの端部を有し、前記第1面311から前記第2面312に透過的にみたとき、前記第1面導電部330と重なる第2面導電部350と、前記第1面311と前記第2面312との間を貫通して前記第1面第1端部331と前記第2面第1端部351とを導通する第1スルーホール導通部341と、前記第1面311と前記第2面312との間を貫通して前記第1面第2端部332と前記第2面第2端部352とを導通する第2スルーホール導通部342と、を有することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁気共鳴方式のワイヤレス電力伝送システムに用いられ、電力の受電又は送電を行うアンテナに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電源コードなどを用いることなく、ワイヤレスで電力(電気エネルギー)を伝送する技術の開発が盛んとなっている。ワイヤレスで電力を伝送する方式の中でも、特に注目されている技術として、磁気共鳴方式と呼ばれるものがある。この磁気共鳴方式は2007年にマサチューセッツ工科大学の研究グループが提案したものであり、これに関連する技術は、例えば、特許文献1(特表2009−501510号公報)に開示されている。
【0003】
磁気共鳴方式のワイヤレス電力伝送システムは、送電側アンテナの共振周波数と、受電側アンテナの共振周波数とを同一とすることで、送電側アンテナから受電側アンテナに対し、効率的にエネルギー伝達を行うものであり、電力伝送距離を数十cm〜数mとすることが可能であることが大きな特徴の一つである。
【0004】
上記のような磁気共鳴方式のワイヤレス電力伝送システムに用いるアンテナの具体的な構成についてもこれまでいくつか提案がされてきた。例えば、特許文献2(特開2010−73976号公報)には、ワイヤレスで給電回路から受電回路へ電力を送信するワイヤレス電力伝送装置の、前記給電回路及び受電回路にそれぞれ設けられる通信コイルの構造において、比誘電率が1よりも大きい材質のプリント基板と、前記プリント基板の第1の層に設けられ、少なくとも1ループをなす導電パターンで形成された一次コイルと、前記プリント基板の第2の層に設けられ、渦巻き形状をなす導電パターンで形成された共鳴コイルと、を備えることを特徴とするワイヤレス電力伝送装置の通信コイル構造が開示されている。
【特許文献1】特表2009−501510号公報
【特許文献2】特開2010−73976号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来の電力伝送システムで用いられている電力伝送用のアンテナにおいては、電力伝送にとって重要なパラメーターであるQ(Qaulity Factor)の値が必ずしも高くなく、電力伝送効率が低下する、という問題があった。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記問題を解決するために、請求項1に係る発明は、第1面と、前記第1面の裏面である第2面とを有する基材と、前記基材上の前記第1面に形成されると共に、第1面第1端
部と第1面第2端部の2つの端部を有する第1面導電部と、前記基材上の前記第2面に形成されると共に、第2面第1端部と第2面第2端部の2つの端部を有し、前記第1面から前記第2面に透過的にみたとき、前記第1面導電部と重なる第2面導電部と、前記第1面と前記第2面との間を貫通して前記第1面第1端部と前記第2面第1端部とを導通する第1スルーホール導通部と、前記第1面と前記第2面との間を貫通して前記第1面第2端部と前記第2面第2端部とを導通する第2スルーホール導通部と、を有することを特徴とするアンテナである。
【0007】
また、請求項2に係る発明は、第1端部と第2端部とを有する導電部が基材を介して積
層されるようにして複数設けられ、前記導電部における前記第1端部同士は前記基材を貫通するスルーホール導通部により互いに導通され、前記導電部における前記第2端部同士は前記基材を貫通するスルーホール導通部により互いに導通され、積層方向から透過的にみたとき、複数の前記導電部は全て重なるように構成されることを特徴とするアンテナである。
【発明の効果】
【0008】
本発明に係るアンテナは、第1面導電部と、これに重なるように形成される第2面導電部と、を両端部においてスルーホールで導通接続した構成であり、このような構成の本発明に係るアンテナによれば、インダクタンスを大幅に低下させることなく、抵抗値を下げてQ(Qaulity Factor)を向上させるので、アンテナ間の伝送効率が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の実施形態に係るアンテナが用いられる電力伝送システムのブロック図である。
【図2】電力伝送システムのインバーター部を示す図である。
【図3】本発明の第1実施形態に係る受電アンテナ201の分解斜視図である。
【図4】本発明の第1実施形態に係る受電アンテナ201による電力伝送の様子を示す断面の模式図である。
【図5】アンテナの位置ずれに伴う伝送効率の変化を示す図である。
【図6】本発明の第2実施形態に係る受電アンテナ201の分解斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態を図面を参照しつつ説明する。図1は本発明の実施形態に係るアンテナが用いられる電力伝送システムのブロック図である。なお、本発明に係るアンテナは、電力伝送システムを構成する受電側のアンテナと送電側のアンテナのいずれにも適用可能であるが、以下の実施形態においては受電側のアンテナに本発明のアンテナを適用した例につき説明する。
【0011】
本発明のアンテナが用いられる電力伝送システムとしては、例えば、電気自動車(EV)やハイブリッド電気自動車(HEV)などの車両への充電のためのシステムが想定されている。電力伝送システムは、上記のような車両に対して電力を非接触で伝送するため、当該車両を停車させることが可能な停車スペースに設けられる。車両充電用のスペースである当該停車スペースには、送電アンテナ105などが地中部に埋設されるような構成となっている。車両のユーザーはこの電力伝送システムが設けられている停車スペースに車両を停車させて、車両に搭載されている受電アンテナ201と、前記送電アンテナ105とを対向させることによって電力伝送システムからの電力を受電する。車両を停車スペースに停車させる際には、車両搭載の受電アンテナ201が、送電アンテナ105に対して伝送効率が良い位置関係となるようにする。
【0012】
電力伝送システムでは、電力伝送システム100側の送電アンテナ105から、受電側システム200側の受電アンテナ201へ効率的に電力を伝送する際、送電アンテナ105の共振周波数と、受電アンテナ201の共振周波数とを同一とすることで、送電側アンテナから受電側アンテナに対し、効率的にエネルギー伝達を行うようにする。
【0013】
送電側システム100におけるAC/DC変換部101は、入力される商用電源を一定の直流に変換するコンバータである。このAC/DC変換部101からの出力は高電圧発生部102において、所定の電圧に昇圧されたりする。この高電圧発生部102で生成される電圧の設定は主制御部110から制御可能となっている。
【0014】
インバーター部103は、高電圧発生部102から供給される高電圧から所定の交流電圧を生成して、整合器104に入力する。図2は電力伝送システムのインバーター部を示す図である。インバーター部103は、例えば図2に示すように、フルブリッジ方式で接続されたQA乃至QDからなる4つの電界効果トランジスタ(FET)によって構成されている。
【0015】
本実施形態においては、直列接続されたスイッチング素子QAとスイッチング素子QBの間の接続部T1と、直列接続されたスイッチング素子QCとスイッチング素子QDとの間の接続部T2との間に整合器104が接続される構成となっており、スイッチング素子QA
とスイッチング素子QDがオンのとき、スイッチング素子QBとスイッチング素子QCがオ
フとされ、スイッチング素子QBとスイッチング素子QCがオンのとき、スイッチング素子QAとスイッチング素子QDがオフとされることで、接続部T1と接続部T2との間に矩形波の交流電圧を発生させる。なお、本実施形態においては、各スイッチング素子のスイッチングによって生成される矩形波の周波数の範囲は数100kHz〜数1000kHz程度である。
【0016】
上記のようなインバーター部103を構成するスイッチング素子QA乃至QDに対する駆動信号は主制御部110から入力されるようになっている。また、インバーター部103を駆動させるための周波数は主制御部110から制御することができるようになっている。
【0017】
整合器104は、所定の回路定数を有する受動素子から構成され、インバーター部103からの出力が入力される。そして、整合器104からの出力は送電アンテナ105に供給される。整合器104を構成する受動素子の回路定数は、主制御部110からの指令に基づいて調整することができるようになっている。主制御部110は、送電アンテナ105と受電アンテナ201とが共振するように整合器104に対する指令を行う。
【0018】
送電アンテナ105は、インダクタンス成分を有するコイルから構成されており、対向するようにして配置される車両搭載の受電アンテナ201と共鳴することで、送電アンテナ105から出力される電気エネルギーを受電アンテナ201に送ることができるようになっている。
【0019】
電力伝送システム100の主制御部110はCPUとCPU上で動作するプログラムを保持するROMとCPUのワークエリアであるRAMなどからなる汎用の情報処理部である。この主制御部110は、図示されている主制御部110と接続される各構成と協働するように動作する。
【0020】
また、通信部120は車両側の通信部220と無線通信を行い、車両との間でデータの送受を可能にする構成である。通信部120によって受信したデータは主制御部110に転送され、また、主制御部110は所定情報を通信部120を介して車両側に送信することができるようになっている。
【0021】
次に、車両側に設けられている構成について説明する。車両の受電側のシステムにおいて、受電アンテナ201は、送電アンテナ105と共鳴することによって、送電アンテナ105から出力される電気エネルギーを受電するものである。このような受電アンテナ201は、車両の底面部に取り付けられるようになっている。
【0022】
受電アンテナ201で受電された交流電力は、整流部202において整流され、整流された電力は充電制御部203を通してバッテリー204に蓄電されるようになっている。
充電制御部203は主制御部210からの指令に基づいてバッテリー205の蓄電を制御する。また、充電制御部203はバッテリー204の残量管理なども行い得るように構成される。
【0023】
主制御部210はCPUとCPU上で動作するプログラムを保持するROMとCPUのワークエリアであるRAMなどからなる汎用の情報処理部である。この主制御部210は、図示されている主制御部210と接続される各構成と協働するように動作する。
【0024】
インターフェイス部230は、車両の運転席部に設けられ、ユーザー(運転者)に対し所定の情報などを提供したり、或いは、ユーザーからの操作・入力を受け付けたりするものであり、表示装置、ボタン類、タッチパネル、スピーカーなどで構成されるものである。ユーザーによる所定の操作が実行されると、インターフェイス部230から操作データとして主制御部210に送られ処理される。また、ユーザーに所定の情報を提供する際には、主制御部210からインターフェイス部230に対して、所定情報を表示するための表示指示データが送信される。
【0025】
また、車両側の通信部220は送電側の通信部120と無線通信を行い、送電側のシステムとの間でデータの送受を可能にする構成である。通信部220によって受信したデータは主制御部210に転送され、また、主制御部210は所定情報を通信部220を介して送電システム側に送信することができるようになっている。
【0026】
電力伝送システムで、電力を受電しようとするユーザーは、上記のような送電側のシステムが設けられている停車スペースに車両を停車させ、インターフェイス部230から充電を実行する旨の入力を行う。これを受けた主制御部210は、充電制御部203からのバッテリー205の残量を取得し、バッテリー205の充電に必要な電力量を算出する。算出された電力量と送電を依頼する旨の情報は、車両側の通信部220から送電側のシステムの通信部120に送信される。これを受信した送電側システムの主制御部110は高電圧発生部102、インバーター部103、整合器104を制御することで、車両側に電力を伝送するようになっている。
【0027】
次に、以上のように構成される電力伝送システム100で用いるアンテナの具体的な構成について説明する。以下、受電アンテナ201に本発明の構成を採用した例について説明するが、本発明のアンテナは送電アンテナ105に対しても適用し得るものである。
【0028】
図3(A)は本発明の第1実施形態に係る受電アンテナ201の分解斜視図であり、図3(B)はコイル体300を形成する基材310の厚さ方向を誇張的に表現した図である。また、図4は本発明の第1実施形態に係る受電アンテナ201による電力伝送の様子を示す断面の模式図である。なお、以下の実施形態では、コイル体270として矩形平板状のものを例に説明するが、本発明のアンテナはこのようなこのような形状のコイルに限定されるものではない。例えば、コイル体270として円形平板状のものなども利用し得る。
【0029】
このようなコイル体270は、受電アンテナ201における磁気共鳴アンテナ部として機能する。この「磁気共鳴アンテナ部」は、コイル体270のインダクタンス成分のみならず、その浮游容量に基づくキャパシタンス成分、或いは意図的に追加したコンデンサに基づくキャパシタンス成分をも含むものである。
【0030】
樹脂ケース260は、受電アンテナ201のインダクタンス成分を有するコイル体270を収容するために用いられるものである。この樹脂ケース260は、例えばポリカーボネートなどの樹脂により構成される開口を有する箱体の形状をなしている。
【0031】
樹脂ケース260の矩形状の底板部261の各辺からは側板部262が、前記底板部261に対して垂直方向に延在するようにして設けられている。そして、樹脂ケース260の上方においては、側板部262に囲まれるような上方開口部263が構成されている。樹脂ケース260を車両本体部に取り付けるためには、従来周知の任意の方法を用いることができる。なお、上方開口部263の周囲には、車両本体部への取り付け性を向上するために、フランジ部材などを設けるようにしても良い。
【0032】
コイル体300は、ガラスエポキシ製の矩形平板状の基材310と、この表面側と裏面側に形成されている導電部により構成されている。より具体的には、基材310は主面として第1面311と、この第1面311と表裏の関係にある第2面312とを有しており、これら第1面311と第2面312の双方に渦巻き状の導電部が形成されることで、受電アンテナ201にインダクタンス成分が付与される。
【0033】
基材310上の第1面311には渦巻き状の第1面導電部330が形成されており、第1面導電部330の内周側には第1面第1端部331が、また、外周側には第1面第2端部332がそれぞれ設けられている。
【0034】
同様に、基材310上の第2面312には渦巻き状の第2面導電部350が形成されており、第2面導電部350の内周側には第2面第1端部351が、また外周側には第2面第2端部352がそれぞれ設けられている。
【0035】
ここで、第1面導電部330と第2面導電部350とは、第1面311から第2面312に透過的にみたとき、ちょうど重なるように構成されている。このように構成することで、第1面311側の第1面導電部330に基づくインダクタンス成分と、第2面312側の第2面導電部350に基づくインダクタンス成分との相互インダクタンスを調整・設計することが容易となる。
【0036】
基材310中においては、第1面311と第2面312との間を貫通する第1スルーホール導通部341が、第1面第1端部331と第2面第1端部351とを導通するようになっている。また、第1面311と第2面312との間を貫通第2スルーホール導通部342が、第1面第2端部332と第2面第2端部352とを導通するようになっている。
【0037】
上記のような渦巻き状をなす第1面導電部330の内周側の第1面第1端部331、及び外周側の第1面第2端部332には不図示の導電線路が電気接続される。これにより、受電アンテナ201によって受電した電力を整流部202へと導けるようになっている。このようなコイル体300は樹脂ケース260の矩形状の底板部261上に載置され、適当な固着手段によって底板部261上に固着される。
【0038】
以上のような本発明に係るアンテナは、インダクタンス成分として、第1面311の第1面導電部330に基づくもの、及び、第2面312の第2面導電部350に基づくもの、及び第1面導電部330と、これに重なるように形成される第2面導電部350とによって相互に形成される相互インダクタンスに基づくもの、を有することとなり、インダクタンスを大幅に低下させることがなく、さらに、第1面導電部330と第2面導電部350とは並列接続の関係になるので、アンテナにおける電路の抵抗が減少する。以上によれば、Q(Qaulity Factor)を向上させることが可能となるので、アンテナ間の伝送効率が向上する。
【0039】
磁性シールド280は、中抜き部285を有する平板状の磁性部材である。この磁性シールド280を構成するためには、フェライトなどの磁性材料を用いることができる。磁
性シールド280は、樹脂ケース260に対して適当な手段により固着されることで、コイル体300の上方にある程度の空間を空けて配されるようになっている。このようなレイアウトにより、送電アンテナ105側で発生する磁力線は、磁性シールド280を透過する率が高くなり、送電アンテナ105から受電アンテナ201への電力伝送において、車両本体部を構成する金属物による磁力線への影響が軽微となる。
【0040】
本発明に係るアンテナにおいては、コイル体270の上方に配される平板状の磁性シールド280には、中抜き部285を設けることが好ましい。磁性シールド280に中抜き部285を設けることにより、磁性シールド280自体の損失が低減され、磁性シールド280のシールド効果を最大限に引き出すことが可能となる。また、中抜き部285を有する磁性シールド280においては、部材面積が少なくてすみ、アンテナのコスト低減が可能となる。なお、中抜き部285の広さは、磁性シールド280自体とコイル体270の導電部272とが積層方向からみて重畳しなくならない程度の広さに留めることが好ましい。
【0041】
図5はアンテナの位置ずれに伴う伝送効率の変化を示す図である。図5において、「本発明」では、送電アンテナ105及び受電アンテナ201のいずれに本発明に係るアンテナが用いられているのに対して、「比較例」では、送電アンテナ105及び受電アンテナ201に、第1面のみ(片面のみ)に導電部が設けられたアンテナが用いられている。
【0042】
図5(A)は、送電アンテナ105及び受電アンテナ201が所定対向位置から、受電アンテナ201(又は送電アンテナ105)がこれを含む水平面内における長辺方向にずれたときの効率の変化を示す図であり、また、図5(B)は、送電アンテナ105及び受電アンテナ201が所定対向位置から、受電アンテナ201(又は送電アンテナ105)がこれを含む水平面内における短辺方向にずれたときの効率の変化を示す図である。なお、長辺、短辺については図3(B)に示すように、矩形状の基材310の辺の長短に基づいて決めております。また、図5はVNA(Vector Network Analyzer)による測定結果に基づくものである。
【0043】
図5(A)、(B)に示されるように、いずれの位置関係においても、本発明に係るアンテナを用いて電力伝送を実行した方が、比較例に係るアンテナを用いて電力伝送を実行した場合より伝送効率が向上することがわかる。
【0044】
表1に、本発明に係るアンテナと、比較例に係るアンテナとの特性の特性表を示す。表中、上段側はアンテナ単体の特性を示しており、下段側は電力伝送時の特性を示している。
【0045】
【表1】

また、表中のαと効率ηとの間には、下式(1)の関係がある。
【0046】
【数1】

ここでαは、送電アンテナ、受電アンテナのQ値を各々Q1、Q2とすると、α=k2
*Q1*Q2であり送電アンテナ、受電アンテナがほぼ同一特性を有する時、即ち、Q1≒Q2=Qと見なせる場合、α=(kQ)2と定義される。
【0047】
本発明に係るアンテナにおいては、Rの減少によりアンテナ単体特性Qの向上が図れることがわかる。また、本発明に係るアンテナにおいては、基材310の表裏に設けた第1面導電部330によるインダクタンスと、第2面導電部350によるインダクタンスとが結合したインダクタンス(相互インダクタンス)の向上によりアンテナ全体のインダクタンスの低下は2uH(全体インダクタンスの1.5%程度)に抑えられる。以上から、本発明に係るアンテナは、アンテナ性能(効率)としての優位性があることがわかる。
【0048】
以上、本発明に係るアンテナは、第1面導電部330と、これに重なるように形成される第2面導電部350とを両端部においてスルーホールで導通接続した構成であり、このような構成の本発明に係るアンテナによれば、インダクタンスを大幅に低下させることなく、抵抗値を下げてQ(Qaulity Factor)を向上させるので、アンテナ間の伝送効率が向上する。
【0049】
次に、本発明の第2実施形態について説明する。第1実施形態においては、コイル体300における導電部は基材310の表裏に設けられる構成となっていたが、第2実施形態においては、コイル体300の導電部が基材310の中間層にも設けられている点で相違している。以下、この相違点であるコイル体300の構成について説明する。
【0050】
図3(A)は本発明の第2実施形態に係る受電アンテナ201の分解斜視図であり、図3(B)はコイル体300を形成する基材310の厚さ方向を誇張的に表現した図である。
【0051】
コイル体300は、ガラスエポキシ製の矩形平板状の基材310と、この表面側と裏面側と中間層に形成されている導電部により構成されている。より具体的には、基材310は主面として第1面311と、この第1面311と表裏の関係にある第2面312と、これら第1面311と第2面312と間の中間層313を有しており、これら第1面311と第2面312と中間層313に渦巻き状の導電部が形成されることで、受電アンテナ201にインダクタンス成分が付与される。
【0052】
基材310上の第1面311には渦巻き状の第1面導電部330が形成されており、第1面導電部330の内周側には第1面第1端部331が、また、外周側には第1面第2端部332がそれぞれ設けられている。
【0053】
同様に、基材310上の中間層313には渦巻き状の中間層導電部360が形成されており、中間層導電部360の内周側には中間層第1端部361が、また、外周側には中間層第2端部362がそれぞれ設けられている。
【0054】
同様に、基材310上の第2面312には渦巻き状の第2面導電部350が形成されており、第2面導電部350の内周側には第2面第1端部351が、また外周側には第2面第2端部352がそれぞれ設けられている。
【0055】
ここで、第1面導電部330と中間層導電部360と第2面導電部350とは、第1面311から第2面312に透過的にみたとき、ちょうど重なるように構成されている。このように構成することで、第1面311側の第1面導電部330に基づくインダクタンス成分と、中間層313の中間層導電部360に基づくインダクタンス成分と、第2面312側の第2面導電部350に基づくインダクタンス成分と、の相互インダクタンスを調整・設計することが容易となる。
【0056】
基材310中においては、第1面311と中間層313との間を貫通する第1スルーホール導通部341が、第1面第1端部331と中間層第1端部361とを導通するようになっている。また、第1面311と中間層313との間を貫通第2スルーホール導通部342が、第1面第2端部332と中間層第2端部362とを導通するようになっている。
【0057】
また、中間層313と第2面312との間を貫通する第3スルーホール導通部343が、中間層第1端部361と第2面第1端部351とを導通するようになっている。また、中間層313と第2面312との間を貫通する第4スルーホール導通部344が、中間層第2端部362と第2面第2端部352とを導通するようになっている。
【0058】
以上のような構成のコイル体300を有する第2実施形態においても、先の実施形態と同様の効果を享受することができる。なお、第2実施形態においては、導電部が第1面311、中間層313、第2面312の3層に形成されて、それぞれの導電部の端部同士が基材を貫通するスルーホール導通部で導通される構成であったが、中間層を2層以上設けて、導電部を設ける層を4層以上とすることも可能である。
【0059】
尚、本実施例においては、基材310にガラスエポキシ樹脂を用いた例について記述したが、より放熱効果の高いセラミック基材を用いても良く、更にはアルミなど金属基材に絶縁膜を施した基材を用いても良い。また、もちろんフレキシブルプリント基板などを用いた物であっても良い。
【0060】
以上、本発明に係るアンテナは、第1面導電部と、これに重なるように形成される第2面導電部と、を両端部においてスルーホールで導通接続した構成であり、このような構成の本発明に係るアンテナによれば、インダクタンスを大幅に低下させることなく、抵抗値を下げてQ(Qaulity Factor)を向上させるので、アンテナ間の伝送効率が向上する。
【符号の説明】
【0061】
100・・・電力伝送システム
101・・・AC/DC変換部
102・・・高電圧発生部
103・・・インバーター部
104・・・整合器
105・・・送電アンテナ
110・・・主制御部
120・・・通信部
201・・・受電アンテナ
202・・・整流部
203・・・充電制御部
204・・・バッテリー
210・・・主制御部
220・・・通信部
230・・・インターフェイス部
260・・・樹脂ケース
261・・・底板部
262・・・側板部
263・・・上方開口部
280・・・磁性シールド
281・・・シールド保持板
282・・・磁性シールド分割片
285・・・中抜き部
300・・・コイル体
310・・・基材
311・・・第1面
312・・・第2面
313・・・中間層
330・・・第1面導電部
331・・・第1面第1端部
332・・・第1面第2端部
341・・・第1スルーホール導通部
342・・・第2スルーホール導通部
343・・・第3スルーホール導通部
344・・・第4スルーホール導通部
350・・・第2面導電部
351・・・第2面第1端部
352・・・第2面第2端部
360・・・中間層導電部
361・・・中間層第1端部
362・・・中間層第2端部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1面と、前記第1面の裏面である第2面とを有する基材と、
前記基材上の前記第1面に形成されると共に、第1面第1端部と第1面第2端部の2つの
端部を有する第1面導電部と、
前記基材上の前記第2面に形成されると共に、第2面第1端部と第2面第2端部の2つの端部を有し、前記第1面から前記第2面に透過的にみたとき、前記第1面導電部と重なる第2面導電部と、
前記第1面と前記第2面との間を貫通して前記第1面第1端部と前記第2面第1端部とを導通する第1スルーホール導通部と、
前記第1面と前記第2面との間を貫通して前記第1面第2端部と前記第2面第2端部とを導通する第2スルーホール導通部と、を有することを特徴とするアンテナ。
【請求項2】
第1端部と第2端部とを有する導電部が基材を介して積層されるようにして複数設けられ、
前記導電部における前記第1端部同士は前記基材を貫通するスルーホール導通部により互いに導通され、
前記導電部における前記第2端部同士は前記基材を貫通するスルーホール導通部により互いに導通され、
積層方向から透過的にみたとき、複数の前記導電部は全て重なるように構成されることを特徴とするアンテナ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−178960(P2012−178960A)
【公開日】平成24年9月13日(2012.9.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−41947(P2011−41947)
【出願日】平成23年2月28日(2011.2.28)
【出願人】(591261509)株式会社エクォス・リサーチ (1,360)
【Fターム(参考)】