説明

アントラピリドン色素およびそれらの製法および用途

【課題】セルロース含有材料および織物材料の染色および印刷、特にインクジェット印刷用の印刷用液に使用されるアントラピリドン色素の提供。
【解決手段】2位にβ−ケトエステルを有するチオフェン誘導体と式(V)化合物とを反応させてアントラピリドン骨格を有する化合物を製造し、置換基Yをスルホン酸を有しても良いアニリン誘導体と反応させることで得られる特定のアントラピリドン色素。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規なアントラピリドン色素、それらの塩、それらの製法および染色および印刷におけるそれらの用途に関する。それは、また特にインクジェット印刷用の水性印刷用液に関する、これらの色素を含む液体色素製品に関する。
【背景技術】
【0002】
インクジェット印刷は、多くの領域で、像再生の古典的な方法を置き換えるかまたは補足してきた。インクジェット印刷は、驚くほどの成熟度に到達しているが、さらなる改善が、特にグラフィックおよび写真の領域で、なお必要とされている。最近のインクジェットプリンターは、これらの領域で、広い範囲の印刷用シート例えばポリマーに基づく印刷用シートまた速乾性のナノ多孔性印刷用シート上に最適な印刷をもたらすことが望まれている。これらの領域では、光および酸化力のある気体(オゾン、NO)に対する安定性のみならず、印刷される像の大量のカラースペース(色再現域(gamut))が、必須である。これは、これらの印刷用シートへ適合した印刷用液類(そのなかに含まれた、それぞれの色素)の細かく調整されたシステムを使用することによってのみ、達成できる。
【0003】
インクジェット印刷のために印刷用液で使用される市販のマゼンタ色素のほとんどは、ポリマーに基づく印刷用シートおよびナノ多孔性の印刷用シートに組み合わされたすべての必要な要求を満たすことがない。現在使用されているマゼンタ色素は、すべての必要な性質例えば好適な色相、非常に高い光輝(彩度)、良好な安定性、オゾン劣化に対する良好な抵抗性、印刷用シートの表面上の色素凝集(「退色(bronzing)」)、優れた拡散堅牢度並びにほぼ水性の印刷用液中の優れた溶解性および低粘度を必ずしも有しない。
【0004】
極めて多くの種々のマゼンタ色素が、インクジェット印刷用の色素として既に提案されてきたが、どんなものも、すべての必要な要件を必ずしも満たしていない。
式(1)
【0005】
【化1】

のマゼンタ色素(例25)、および式(2)
【0006】
【化2】

のマゼンタ色素(例27)は、特許文献1に記載されている。
【0007】
これらのアントラピリドン色素は、現在のマゼンタ色素の代表例であるが、それらがインクジェット印刷用の印刷用液の処方(どんなタイプの印刷用シート、例えば無処理紙またはコート紙、コーティングまたは未コーティングの合成材料あるいは不透明または透明な合成材料上に、純粋なそして可能な限り青みを帯びた色相(bの高い値を有するLの値)を有するマゼンタ像または色をもたらさねばならない)で使用される場合、必ずしもすべての必要な要求を満足させるものではない。それらは、また水性の印刷用液中で粘度の増加をもたらしてはならない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】WO98/11167
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
このような印刷用液で使用される色素は、本質的に水性の印刷用液に高い溶解度を有する必要があり、それらは、印刷用シート中に浸透しなければならず、そして印刷用シートの表面上に色素の凝集(「退色」)を示してはならない。それらは、高い光学密度、良好な水堅牢度、良好な光安定性および良好な貯蔵安定性(たとえ不利な条件下でも)を有する印刷された像をもたらす必要がある。それらは、たとえ印刷用液が不利な条件下で長期間貯蔵されたときでも、印刷用液中で安定であることを求められる。
【0010】
種々のタイプの組成物が印刷用液として提案されてきた。典型的な印刷用液は、1つ以上の色素または顔料、水、有機共溶媒および他の成分を含む。
印刷用液は、以下の基準を満足させねばならない。(1)印刷用液は任意のタイプの印刷用シート上に優れた品質の像をあたえる。(2)印刷用液は良好な水堅牢度を示す像をあたえる。(3)印刷用液は良好な光安定性を示す像をあたえる。(4)印刷用液は優れた摩擦抵抗性の像をあたえる。(5)印刷用液は、高温多湿の条件下で優れた貯蔵安定性を示す像をあたえる。(6)印刷用液は、たとえ印刷が長期間中断されている間、インクジェットプリンターのジェットノズルにキャップがされていないときでも、それらのノズルを詰まらすことがない。(7)印刷用液は、その品質を損なうことなく長期間貯蔵できる。(8)印刷用液の物理的性質例えば粘度、伝導性および表面張力は、目的とする用途に十分に適した規定された範囲にすべて入る。(9)印刷用液は、毒性、引火性がなく、安全である。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の目的は、可能な限り青みを帯びた色相を有する純粋なマゼンタ色を有すると同時に優れた光安定性およびオゾンによる劣化に対する優れた抵抗性を有する新規な十分に水溶性のアントラピリドン色素を提供することである。それらは、特に例えばEP186785に記載されたような緑がかったシアン色素、および例えばEP0755984に記載されたようなシトロン・黄色素とともに、それらが最大の色の表現を与えるインクジェット印刷において、良好な性質のすべてを示す像または色をもたらす。
【0012】
本発明のさらなる目的は、液体色素製品の提供、特に任意のタイプの印刷用シート例えば無処理紙またはコート紙、コーティングまたは未コーティングの合成材料または不透明または透明の合成材料の上で、スペクトルが変化しない色相を示すインクジェット印刷用の印刷用液の提供である。
本発明の他の目的は、上記の要件のすべてを満足する印刷用液の提供である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明は、一般式(III)
【化3】

【0014】
(式中、Xは水素、塩素、臭素あるいはそれぞれ1−8炭素原子を有する未分枝または分枝のアルキル基を示し、Rは水素あるいはそれぞれ1−8炭素原子を有する未分枝または分枝のアルキル基を示し、Rは水素、SOM、塩素、臭素、12以内の炭素原子を有する未置換または置換のアルコキシ基(ただし、置換基はCOOM、OH,OCH、ハロゲン、COOCHおよびCOOCHCHからなる群から選ばれる)あるいは置換芳香族アリールオキシ基(ただし、置換基はCOOM、SOM、OCH、ハロゲン、COOCHおよびCOOCHCHからなる群から選ばれる)を示し、RおよびRは独立して水素、フッ素、塩素、臭素、NH、それぞれ1−6炭素原子を有するアルキル基またはアルコキシ基、それぞれ12以内の炭素原子を有する未置換脂肪族アミド基またはスルホンアミド基、それぞれ20以内の炭素原子を有する未置換または置換の芳香族アミド基またはスルホンアミド基(ただし、置換基はCOOM、SOM、OCH、CH、CHCH、Cl、Br、COOCHおよびCOOCHCHからなる群から選ばれる)を示し、nは0,1または2を示し、そしてMは水素、金属カチオン、またはアンモニウムカチオンを示して所望によりそれぞれ1−18炭素原子を有する1つ以上のアルキル基または置換アルキル基またはヒドロキシアルコキシアルキル基により置換されていてもよい)
の新規なアントラピリドン色素に関する。
【0015】
好ましいのは、R、R、Mおよびnが前記同様であり、Xが水素、塩素または臭素を示し、Rが水素またはCHを示し、そしてRが水素、SOMまたはフェノキシ基を示すアントラピリドン色素である。
【0016】
特に好ましいのは、X、R、Rおよびnが前記同様であり、R、Rが独立して水素フッ素、塩素、臭素、NH、それぞれ1−4炭素原子を有するアルキル基またはアルコキシ基、それぞれ12以内に炭素原子を有する未置換アミド基またはスルホンアミド基を示し、そしてMが水素、アルカリ金属カチオン(Li、NaまたはK)、アルカリ土類金属カチオン(MgまたはCa)またはアンモニウムカチオンを示して任意に1−4炭素原子を有する1つ以上のアルキル基または1−6炭素原子を有するOHにより置換されたアルキル基により置換されていてもよいアントラピリドン色素である。
一般式(III)の製造された色素は、水溶液中(またはNMP/HO1:1の溶液中)のそれらの吸収最大の位置とともに表1にリストされる。
【0017】
【表1】

【0018】
一般式(III)の化合物は、遊離の酸の形、またはその無機または有機の塩の形である。好ましくは、それらは、それらのアルカリまたはアンモニウムの塩の形であり、アンモニウムカチオンは置換されていてもよい。このような置換アンモニウムカチオンの例は、2−ヒドロキシエチルアンモニウム、ビス−(2−ヒドロキシエチル)アンモニウム、トリス−(2−ヒドロキシエチル)アンモニウム、ビス−(2−ヒドロキシエチル)メチルアンモニウム、トリス−[2−(2−メトキシエトキシ)−エチル]アンモニウム、8−ヒドロキシ−3,6−ジオキサオクチルアンモニウムおよびテトラアルキルアンモニウム例えばテトラメチルアンモニウムまたはテトラブチルアンモニウムである。
【0019】
本発明は、一般式(III)の単一のアントラピリドン色素ばかりでなく、これらの化合物の混合物にも関する。
本発明は、また本発明による一般式(III)の色素の製法にも関し、一般式(IV)
【0020】
【化4】

(式中、Xは前記同様である)
のβ−ケトエステルを、式(V)
【0021】
【化5】

(式中、RおよびRは前記同様であり、Yは塩素、臭素または他の脱離基を示す)
の化合物と式(VI)
【0022】
【化6】

のアントラピリドンが形成される条件下で反応させ、それを次に一般式(VII)
【0023】
【化7】

(式中、R、Rおよびnは前記同様である)
のアニリンと、本発明の一般式(III)のアントラピリドン色素が形成される条件下で反応させる。
【0024】
追加のスルホ基は、スルホン化反応により一般式(III)のアントラピリドン色素のアニリン部分中に導入でき、特にnが0に等しい場合には1つまたは2つのスルホ基が導入でき、またはnが1に等しいときには1つのスルホ基が導入できる。
【0025】
本発明による一般式(III)のアントラピリドン色素は、セルロース含有材料、紙、木綿、ビスコース、皮革および羊毛を染色するのに使用されて、良好な水堅牢度および高い安定性を有する染めた材料を得る。
【0026】
直接染料で染めるための繊維産業および製紙産業で周知のすべての方法が使用でき、特にサイズされたまたはサイズされていない紙のバルクまたは表面の処理に使用される。色素は、また薄い染料液からの吸尽プロセスにより、または連続プロセスで、木綿、ビスコースおよび麻のヤーンおよび布の染色に使用できる。
【0027】
本発明は、さらに液体色素製品に関し、それは、一般式(III)の少なくとも1つのアントラピリドン色素を含む。これらの液体色素製品の用途は、紙の染色に特に好ましい。このような安定な液体好ましくは水性の濃縮された色素製品は、好ましくは好適な溶媒に溶解することにより、当業者に周知の方法を用いて得ることができる。色素の中間的な単離なしに、例えば反応溶液の透析濾過の脱塩工程後、色素合成それ自体の途中でこのような安定な水性の濃縮された製品を製造できることは、特に有利である。
【0028】
一般式(III)のアントラピリドン色素またはそれらの混合物は、インクジェット印刷用の印刷用液の製造のための優れた色素である。
本発明による一般式(III)のアントラピリドン色素は、他のマゼンタ色素、特にWO96/24636、EP1160291、EP1219682およびEP1403328に記載された色素とともに適切に組み合わされる。
【0029】
インクジェット印刷用のインクセットでは、本発明による一般式(III)のアントラピリドン色素は、例えばEP0755984およびEP1882723に記載されたような黄色色素、および例えばEP1867685に記載されたようなシアン色素とともに、最適なカラースペースを形成する。その上、印刷用液中で使用される三元色素は、光およびオゾンによる劣化に対して同様な抵抗性を有する。
【0030】
典型的な印刷用液は、液状の水性の媒体中の本発明による1つ以上のアントラピリドン色素を含む。印刷用液は、印刷用液の全重量に基づいて、0.5−20重量%、好ましくは0.5−8重量%のこれらのアントラピリドン色素を含む。液体媒体は、好ましくは水、または水と水混和性の有機溶媒の混合物である。好適な溶媒は、例えばUS4626284、US4703113およびUS4963189、並びにGB2289473、EP0425150およびEP0597672に記載されている。
本発明は、本発明の化合物の範囲を決して制限することなく、以下の実施例によりさらに詳細に説明される。
【実施例1】
【0031】
MがKである表1のアントラピリドン色素No.10は以下の方法で製造された。
(式(VIII)の臭素化アントラピリドン化合物の製造)
75.5g(0.25モル)の1−アミノ−4−ブロモアントラキノン(Sigma−Aldrich GmbH、Buchs、スイスから入手)、59.5g(0.3モル)のエチル−3−オキソ−3−(チオフェン−2−イル)プロパネート(Bosche Scientific LLC、New Brunswick、米国から入手)、3.9g(0.04モル)の酢酸カリウムおよび125mLの1,2−ジクロロベンゼンを140℃の温度で22時間窒素雰囲気中で攪拌し、約12mLのエタノールを留去した。次に、得られた分散物を室温に冷やし、生成物を吸引により回収し、エタノールで十分に洗い、乾燥した。67.6gの式(VIII)の生成物をこの方法で得た。
【0032】
【化8】

(色素No.10の製造)
【0033】
4.8g(15mモル)の湿ったアニリン−2,5−ジスルホン酸(80%)(Bayer AG.Leverkusen、ドイツ)、3.7g(20mモル)のトリブチルアミンおよび20mLのN−メチルピロリドンをガラスフィルターポンプ真空の下で加熱し、約2−3mLのN−メチルピロリドンおよび水を留去した。
【0034】
4.4g(10mモル)の式(VIII)のブロモアントラピリドン、1.9g(10mモル)のトリブチルアミンおよび0.2gの酢酸銅(II)を混合物に加え、混合物の攪拌を150℃の温度で48時間続けた。その後、混合物を50℃の温度に冷却し、そして濾過した。式(10)の色素は、2.5gの酢酸カリウムおよびエタノールの添加により沈殿し、そして吸引により回収した。粗色素を80℃の温度で30mLの水に懸濁し、不溶の部分を吸引して回収し、濾液中の色素を酢酸カリウムの添加により塩析した。1.2gの色素No.10をこの方法で得た。
【0035】
(印刷用液の製造の例)
本発明は、それが印刷用液に関する場合、本発明による表1の色素および現在の技術レベルを示す色素を使用して、以下の実施例によって説明される。それぞれの色素について、100gの印刷用液は、必要量(2−6g)の色素、エチレングリコール(6g)、プロピレン−1,2−グリコール(3g)、Olin(商標)10Gの水溶液(50%)(Arch Chemicals Inc.Norwalk、米国から入手)(0.2g)、Surfinol(商標)465(Air Products and Chemicals Inc.Allentown、米国から入手)(0.3g)および殺生物剤(Mergal(商標)K10N、Riedel−de−Haen、Seellze、ドイツから入手)(0.1g)を、水とともに約1時間50℃の温度で攪拌することにより製造した。溶解性の理由から、20gの1−メチル−2−ピロリドンは、現在の技術レベルを示す色素について添加されねばならない。得られた溶液を20℃の温度に冷やし、pHの値を7.5に調節し、溶液を孔径0.5μmのMillipore(商標)フィルターに通した。色素の量は、印刷像の光学密度がすべての色素で同じになるように調節された。
【0036】
(印刷用液の適用の例)
印刷用液を次に以下の印刷用シート上にインクジェットプリンターCanon PIXMA IP 4300により印刷した。
(1)ILFORD OMNIJET Instant Dry Glossy Phto RC Paper ON3GP8(ナノ多孔性印刷用シート)および(2)ILFORD Galerie Classic Glossy Paper IGCGP9(ポリマーに基づく印刷用シート)。
【0037】
(テスト)
1.(色素溶解性)
色素溶解性は、7のpHの値で緩衝された水溶液中、可視のスペクトル域で分光光度計により測定された。色素の飽和水溶液を50℃の温度でつくった。これらの溶液は、次に室温に冷却されそして吸収最大での吸収が0.8−1.5になるやり方で、24時間の待ち時間後測定のために希釈された。この希釈ファクターは、色素の溶解度の計算を可能にする。
【0038】
2.(色座標)
印刷されたサンプルの色座標Lは、分光光度計Gretag SPM 100(Gretag AG.Regensdorf、スイスから入手)により測定された。
【0039】
(結果)
本発明によるアントラピリドン色素(12)および現在の技術レベルを示す式(1)の色素の測定された溶解度を表2にリストする。
【0040】
【表2】

【0041】
表2の結果の比較は、本発明によるアントラピリドン色素(12)が、現在の技術レベルを示す式(1)の色素よりも遙かに高い水溶解度を有することを明確に示す。
本発明によるアントラピリドン色素(12)および現在の技術レベルを示す式(1)の色素のL(光源D65)の測定値は、表3にリストされる。
【0042】
【表3】

【0043】
表3の結果は、本発明によるアントラピリドン色素(12)が、現在の技術レベルを示す式(1)の色素よりも青みを帯びた色相を有することを明確に示す。
ナノ多孔性の印刷用シート上で、本発明によるアントラピリドン色素(12)は、現在の技術レベルを示す式(1)のアントラピリドン色素よりも、かなり鮮やかである。
ポリマーに基づく印刷用シート上で、本発明によるアントラピリドン色素(12)は、現在の技術レベルを示す式(1)のアントラピリドン色素と、ほぼ同様な鮮やかさを有する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(III)
【化1】

(式中Xは水素、塩素、臭素あるいはそれぞれ1−8炭素原子を有する未分枝または分枝のアルキル基を示し、Rは水素あるいはそれぞれ1−8炭素原子を有する未分枝または分枝のアルキル基を示し、Rは水素、SOM、塩素、臭素、12以内の炭素原子を有する未置換または置換のアルコキシ基(ただし、置換基はCOOM、OH,OCH、ハロゲン、COOCHおよびCOOCHCHからなる群から選ばれる)あるいは置換芳香族アリールオキシ基(ただし、置換基はCOOM、SOM、OCH、ハロゲン、COOCHおよびCOOCHCHからなる群から選ばれる)を示し、RおよびRは独立して水素、フッ素、塩素、臭素、NH、それぞれ1−6炭素原子を有するアルキル基またはアルコキシ基、それぞれ12以内の炭素原子を有する未置換脂肪族アミド基またはスルホンアミド基、あるいはそれぞれ20以内の炭素原子を有する未置換または置換の芳香族アミド基またはスルホンアミド基(ただし、置換基はCOOM、SOM、OCH、CH、CHCH、Cl、Br、COOCHおよびCOOCHCHからなる群から選ばれる)を示し、nは0,1または2を示し、Mは水素、金属カチオン、またはアンモニウムカチオンを示して所望によりそれぞれ1−18炭素原子を有する1つ以上のアルキル基または置換アルキル基またはヒドロキシアルコキシアルキル基により置換されていてもよい)
を特徴とするアントラピリドン色素。
【請求項2】
、R、Mおよびnは請求項1で規定された通りであり、Xは水素、塩素または臭素を示し、Rは水素またはCHを示し、Rは水素、SOMまたはフェノキシ基を示す請求項1のアントラピリドン色素。
【請求項3】
nは請求項1で規定された通りであり、X、RおよびRは請求項2に規定された通りであり、R、Rは独立して水素、フッ素、塩素、臭素、NH、それぞれ1−4炭素原子を有するアルキル基またはアルコキシ基、それぞれ12以内に炭素原子を有する未置換アミド基または未置換スルホンアミド基を示し、Mは水素、アルカリ金属カチオン(Li、NaまたはK)、アルカリ土類金属カチオン(MgまたはCa)またはアンモニウムカチオンを示して任意に1−4炭素原子を有する1つ以上のアルキル基または1−6炭素原子を有するOHにより置換されたアルキル基により置換されていてもよい請求項1または2のアントラピリドン色素。
【請求項4】
一般式(IV)
【化2】

(式中、Xは請求項1で規定した通りである)
のβ−ケトエステルを、式(V)
【化3】

(式中、RおよびRは請求項1で規定した通りであり、Yは塩素、臭素または他の脱離基を示す)
の化合物と式(VI)
【化4】

のアントラピリドンが形成される条件下で反応させ、それを次に一般式(VII)
【化5】

(式中、R、Rおよびnは請求項1で規定した通りである)
のアニリンと、一般式(III)のアントラピリドン色素が形成される条件下で反応させることを特徴とする請求項1のアントラピリドン色素の製造方法。
【請求項5】
追加のスルホ基が、スルホン化反応により一般式(III)のアントラピリドン色素のアニリン部分中に導入でき、その場合nが0に等しい場合には1つまたは2つのスルホ基が導入でき、またはnが1に等しい場合には1つのスルホ基が導入できることを特徴とする請求項1のアントラピリドン色素の製造方法。
【請求項6】
請求項1−3の何れか1つの項のアントラピリドン色素を適用することにより、印刷用シートの上にテキストおよび像を印刷し、あるいは天然または合成の繊維材料、ナノ多孔性の材料、皮革またはアルミニウムを染色または印刷することを特徴とする印刷または染色方法。
【請求項7】
請求項1−3の何れか1つの項の少なくとも1つのアントラピリドン色素を含むことを特徴とする液体色素製品。
【請求項8】
1つ以上の他のマゼンタ色素をさらに含む請求項7の液体色素製品。
【請求項9】
請求項1−3の何れか1つの項の少なくとも1つのアントラピリドン色素を含むことを特徴とするインクジェット印刷用の印刷用液。
【請求項10】
1つ以上の他のマゼンタ色素をさらに含む請求項9のインクジェット印刷用の印刷用液。

【公開番号】特開2010−77433(P2010−77433A)
【公開日】平成22年4月8日(2010.4.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−215317(P2009−215317)
【出願日】平成21年9月17日(2009.9.17)
【出願人】(599085415)イルフォード イメージング スウィツアランド ゲーエムベーハー (13)
【Fターム(参考)】