説明

イオンセンサ付ガスケット

【課題】絶縁性が長く持続され且つセンサとしての信頼性が高いイオンセンサ付ガスケットを提供する。
【解決手段】エンジン1のシリンダヘッド3とシリンダブロック2との間に挟装されるイオンセンサ付ガスケット6であって、シリンダボア2aに対応するボア開口部6aを備え、中間の導電性金属層61と、その両面の絶縁層62と、更にその外側の金属保護層63とが一体とされた積層シート体60からなり、上記導電性金属層61の上記ボア開口部6a側周縁部は、エンジン1の燃焼室4内に臨むイオン電流検知電極61aとされ、一方導電性金属層61のエンジン1外側部側は、一部がエンジン外側部より延出するイオン電流導出電極61bとされていることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エンジンのシリンダヘッドとシリンダブロックとの間をガスシールするために挟装されるガスケットであって、更に詳しくはエンジンの燃焼室内の燃焼状態を検出するイオンセンサ機能をも備えたシリンダヘッドガスケットに関する。
【背景技術】
【0002】
自動車用エンジン等の燃焼室内における火炎伝播状況を直接検出するために、シリンダヘッドとシリンダブロックとの間をガスシールするために挟装されるガスケットの厚み内に、線状若しくはプローブ状の検知体を絶縁し、内蔵させたものが開発されている(特許文献1参照)。このようなイオンセンサ付ガスケットは、シリンダヘッドとシリンダブロックとの間に挟装されて、本来のガスケットとしてのシール機能を奏すると共に、検知体の先端電極部を燃焼室内に臨ませ、その先端電極部と、接地電極としてのシリンダヘッド或いはシリンダブロック等との間に電位をかけて、先端電極部に火炎が到達した瞬間の電流変化を計測することにより燃焼室の燃焼状態を検出する機能も備えたものである。
【0003】
しかし、上記特許文献1に開示されたシリンダヘッドガスケットにおいては、シリンダヘッドとシリンダグロックとの面圧を高めんとすると、その締結圧により検知体の近傍部にクラック等が発生し易く、これを防止するため検知体を細くすると、先端部が火炎によって溶融したり、熱面着火(プリイグニッション)現象を起こしたりすることがあった。本出願人は、このような問題点を解消する為、特許文献2において、金属薄板の両面に充填材を含むゴム系バインダーで構成される絶縁シートを被着一体としたシリンダヘドガスケットを提案している。
【特許文献1】特開昭63−66431号公報
【特許文献2】特開2003−184605号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献2に開示されたイオンセンサ付きのシリンダヘッドガスケットは、シリンダヘッドとシリンダブロックとの締結時におけるクラックの発生が防止され、イオンセンサとしての信頼性が高く評価されるに至っている。しかし、シリンダブロック或いはシリンダヘッドに形成された水や油等の冷却媒体の流通孔部においては、上記絶縁シートがこれら冷却媒体に接することになる為、使用を重ねると絶縁シートのミクロポア(ピンホール等)に冷却媒体が浸入し、絶縁性が低下することが知見されるようになった。絶縁シートを絶縁性の樹脂フィルムで構成しても、樹脂フィルムに不可避なピンホールの為に同様の現象が生じることも知見された。
【0005】
本発明は、上記のような実情に鑑みなされたもので、絶縁性が長く持続され且つセンサとしての信頼性が高いイオンセンサ付ガスケットを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1の発明に係るイオンセンサ付ガスケットは、エンジンのシリンダヘッドとシリンダブロックとの間に挟装されるイオンセンサ付ガスケットであって、シリンダボアに対応するボア開口部を備え、中間の導電性金属層と、その両面の絶縁層と、更にその外側の金属保護層とが一体とされた積層シート体からなり、上記導電性金属層の上記ボア開口部側周縁部は、エンジンの燃焼室内に臨むイオン電流検知電極とされ、一方導電性金属層のエンジン外側部側は、一部がエンジン外側部より延出するイオン電流導出電極とされていることを特徴とする。
【0007】
上記ボア開口部の周りには、請求項2の発明のように、ビード部が形成されていることが望ましい。また、上記絶縁層は、絶縁性樹脂のフィルム層や絶縁性のゴム層からなるものが望ましく、特に、請求項3の発明のように、ポリイミド樹脂のフィルム層からなるものが望ましく採用される。絶縁性のゴム層の場合は、ゴム材にアルミナやシリカ等の白色充填材を混練してシート状若しくはフィルム状にしたものが採用される。更に、請求項4の発明のように、上記金属保護層の外面に、ゴムコーティング層を形成することもできる。
【0008】
請求項5の発明に係るイオンセンサ付ガスケットは、シリンダヘッドとシリンダブロックとを締結させる為のボルト孔に対応する開口部及び冷却媒体流通用孔に対応する開口部を備え、これら開口部周辺部分の上下絶縁層が上記導電性金属層を介することなく直接積層一体とされ、該開口部の内周縁部に導電性金属層が露出しないようになされていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
請求項1の発明に係るイオンセンサ付ガスケットは、イオンセンサの主体となる導電性金属層を介在させた積層シート体で構成されるから、面圧を高める為に、シリンダヘッド及びシリンダブロックを強く締結しても、応力の集中がなくクラックの発生が生じる懸念がない。また、絶縁層は、金属保護層により覆われているから、前記冷却媒体の流通孔部においてもこれら冷却媒体に直接接することがなく、金属保護層により絶縁層のミクロポア内への冷却媒体の浸入が阻止され、導電性金属層の絶縁が確実になされる。
【0010】
そして、請求項2の発明のように、ボア開口部の周りに、ビード部が形成されている場合、上記締結時の圧縮変形に伴うビード部の復元弾力によりシリンダヘッド及びシリンダブロック間の面圧が高くなり、燃焼室のガスシールが的確になされる。また、請求項3の発明のように、絶縁層をポリイミド樹脂のフィルム層で構成すれば、その優れた絶縁性、耐熱性、靭性及び弾性等により、導電性金属層のイオンセンサとしての機能が遺憾なく発揮されると共にガスケットとしての適性も向上する。更に、請求項4の発明のように、上記金属保護層の外面に、ゴムコーティング層を形成すれば、その弾性によりシール性が一層向上する。
【0011】
請求項5の発明のように、ボルト孔に対応する開口部及び冷却媒体流通用孔に対応する開口部を備える場合、これら開口部周辺部分の上下絶縁層が上記導電性金属層を介することなく直接積層一体とされ、該開口部の内周縁部に導電性金属層が露出しないようになされていると、導電性金属層がボルトや冷却媒体に接触することがないから、この部分からの電気的漏洩がなく、イオンセンサとしての信頼性が維持される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下に本発明の最良の実施の形態について、図面に基づいて説明する。図1は本発明のイオンセンサ付ガスケットを用いて組立てられたエンジンの要部を示す縦断面図、図2は図1におけるW部の拡大図、図3は同X部の拡大図、図4は本発明のイオンセンサ付ガスケットの作成要領を示す図であり(a)は分解斜視図、(b)は得られたイオンセンサ付ガスケットの部分切欠斜視図、図5(a)は図4(b)のY−Y線拡大断面図、図5(b)はその変形例を示す同様図、図6は図4(b)のZ−Z線拡大断面図、図7は別実施例の図4と同様図である。
【実施例1】
【0013】
図1〜図3において、1はエンジンであり、シリンダブロック2の上にイオンセンサ付ガスケット(シリンダヘッドガスケット)6を配し、これを挟装するようにシリンダヘッド3を載置してボルト(不図示)により締付け組立てられる。5はシリンダブロック2のシリンダボア2a内を上下往復動するピストンであり、このピストン5の上端とシリンダヘッド3の下面とで形成される空間が燃焼室4である。2b、2cはシリンダブロック2に掘設形成された冷却媒体流通孔であり、シリンダブロック2の上端面で開口している。この冷却媒体流通孔2b、2cには、水、不凍液、油等が供給され流通される。
【0014】
3a、3bは、シリンダヘッド3に形成された冷却媒体流通孔であり、このうち冷却媒体流通孔3bは、シリンダブロック2の冷却媒体流通孔2cと連通するものであることを示している。このように、シリンダブロック及びシリンダヘッド間で冷却媒体流通孔が互いに連通する場合(X部)と、互いに独立している場合(W部)とがあるが、図1では便宜上両者の例を併記している。シリンダブロック及びシリンダヘッド間で冷却媒体流通孔が互いに連通している場合は、冷却媒体がシリンダブロック及びシリンダヘッド間で流通しながら循環する。
【0015】
シリンダブロック2とシリンダヘッド3との対向面には、イオンセンサ付ガスケット6が挟装され、これにより燃焼室4内の燃焼ガスが外部に漏出しないよう完全にシールされる。イオンセンサ付ガスケット6は、中間の導電性金属層61と、その両面の絶縁層62、62と、更にその外側の金属保護層63、63とが一体とされた積層シート体60よりなる。
【0016】
この積層シート体60における、シリンボア2aに対応する部位にはボア開口部6aが、後記するボルト孔に対応する部位にはボルト用開口部6b(図4参照)が、また、上記シリンダブロック2の冷却媒体流通孔2cとシリンダヘド3の冷却媒体流通孔3bとが連通する部位には両冷却媒体流通孔2c及び冷却媒体流通孔3b間で冷却媒体が流通し得るよう冷却媒体用開口部6cが、夫々形成されている。これらボルト用開口部6b及び冷却媒体用開口部6cでは、その上下絶縁層62、62が上記導電性金属層61を介することなく直接積層一体とされ、該開口部6b、6cの内周縁部に導電性金属層61が露出しないようになされている(図3及び図6参照)。
【0017】
更に、上記ボア開口部6aの周りには山形に曲成されたビード部6dが、ボルト用開口部6bや冷却媒体用開口部6cの周り(図3及び図6参照)或いは冷却媒体流通孔2bの上端開口部を塞ぐ部位の周辺(図2参照)にはハーフビード6eが形成され、積層シート体60は、後記するように導電性金属層61に電気的結線がなされてイオンセンサ付ガスケット(シリンダヘッドガスケット)6とされる。
【0018】
上記導電性金属層61のボア開口部6a側周縁部には、エンジン1の燃焼室4内に臨むイオン電流検知電極61aが形成され、一方導電性金属層61のエンジン1の外側部側には、一部がエンジン外側部より延出するイオン電流導出電極61bが形成されている。導電性金属層61は、アルミニウムや銅等の導電性金属薄板(フィルム)からなり、その厚みは、イオン電流検知電極61a側が50〜500μm、望ましくは100〜200μmであり、イオン電流導出電極61b側は1〜1000μmが適正とされる。因みに、燃焼室4内に臨むイオン電流検知電極61a側は高熱に晒され、溶損の恐れがある為、ある程度の厚みが必要とされる。イオン電流検知電極61a側からイオン電流導出電極61b側にかけて均一厚みであってよく、この場合の厚みは100〜500μmが適性とされる。このように、全体厚みを比較的大きくしておけば、イオンセンサ機能に加えて、好適なガスケット機能上の弾性、面圧が得られる。
【0019】
絶縁層62は、ポリイミド樹脂、ポリスチレン樹脂、アクリル樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、フッ素樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂等の合成樹脂フィルムからなるが、優れた絶縁性、耐熱性、靭性及び弾性等の観点から、ポリイミド樹脂フィルムが最も望ましく採用される。その厚みは、5〜30μmである。金属保護層63は、SUS304やSUS301のように耐水性があり且つばね性のある薄い金属板若しくはアルミニウム、銅、軟鋼等の薄板或いはコーティング膜からなり、その厚みは10〜1000μm、現実には100〜500μmが採用される。特に、後者の軟らかい金属薄板或いはコーティング膜の場合、エンジン1の締付・組立時に、容易に変形を起こし、相手面と馴染んでシール性を高める効果と、上記冷却媒体のガスケット内への浸透防止効果が向上する。
【0020】
上記シリンダヘッドガスケット6は、エンジン1の組立の際、シリンダブロック2とシリンダヘッド3との間に介装され、図1〜3に示すように、ボルト(不図示)を介した締結によりシリンダブロック2とシリンダヘッド3との間に挟圧一体とされる。そして、上記イオン電流導出電極61bには、電源7、アンプ8及び信号処理部9が接続される。また、シリンダブロック2及びシリンダヘッド3は、接地2d、3cされるが、この接地はどちらか一方でも良い。
【0021】
斯くして、シリンダブロック2とシリンダヘッド3との間にシリンダヘッドガスケット6が挟圧された状態においては、ビード部6dあるいはハーフビード部6eが圧縮され、その復元弾力によりシリンダブロック2とシリンダヘッド3との間の面圧が高く維持され、燃焼室4のガスシール或いは冷却媒体の漏出防止が確実になされる。また、シリンダブロック2における冷却媒体流通用孔2bの上端開口部は完全に閉塞されると共に冷却媒体流通用孔2bを流通する冷却媒体が金属保護層63によって遮断され、絶縁層62に直接接することがないから、絶縁層62のミクロポア(ピンホール等)に冷却媒体が浸入し、絶縁性が低下するようなことがない。更に、ボルト用開口部6b及び冷却媒体用開口部6cの内周縁部には、導電性金属層61が露出しないようになされているから、導電性金属層61が冷却媒体やボルトに接することがなく、この部分での電気的絶縁も確実になされる。
【0022】
そして、上記電源7をして、イオン電流導出電極61bと接地電極としてのシリンダブロック2及びシリンダヘッド3との間に、例えば90Vの電位をかけると、燃焼室4内に臨設された上記イオン電流検知電極61aに火炎が到達した瞬間にイオン状態の火炎帯を通じてイオン電流が流れて閉回路が形成されるので、閉回路に設けた検出抵抗Rを流れる電流値変化をアンプ8により増幅し信号処理部9で処理することによって、燃焼室4内の燃焼状態が検出される。従って、本発明のイオンセンサ付ガスケット6においては、導電性金属層61が、ガスケットの芯材として機能すると共に、燃焼室4内の火炎の状態を検出するイオンセンサとしても機能する。
【0023】
次に、図4、図5及び図6を参照して上記のようなイオンセンサ付ガスケット6の作成要領の1例を説明する。図4は複数気筒のエンジンのシリンダブロックとシリンダヘッドとを一括してガスシールするガスケットであることを示す。図4(a)において、前記ボア開口部6aに対応する大孔63aと、前記ボルト用開口部6bに対応する小孔63bとを打抜き形成した前記金属保護層63用の薄い金属板630上に、同様に大孔62a及び小孔62bを打抜き形成した前記絶縁層62用の樹脂フィルム620を接着一体とする。この樹脂フィルム620の上に、周方向に等間隔の4片の舌片状イオン電流検知電極61aが形成されるよう内抜き形成された大孔61cと、前記ボルト用開口部6bに対応し且つ上記金属板630の小孔63b及び樹脂フィルム620の小孔62bより大きく切欠かれたボルト用切欠部61dとを備えた前記導電性金属層61用の金属フィルム610を接着一体とする。
【0024】
更に、図では省略したが、この金属フィルム610の上に、上記と同様の樹脂フィルム620及び金属板630をこの順序で接着一体とし、積層シート体60となし、ボア開口部6a周り及びボルト用開口部6b周りにビード部6d及びハーフビード部6e(図6参照)をプレス加工により形成し、図4(b)のイオンセンサ付ガスケット6を得る。上記金属板630と樹脂フィルム620との一体化においては、上記のように双方を所定のパターン形状に打抜いた後に両者を接着一体とする以外に、金属板630と樹脂フィルム620とを接着一体とした後に所定のパターン形状に打抜く方法、或いは所定のパターン形状に打抜いた金属板630を樹脂液に浸漬する方法等が採用可能である。
【0025】
また、金属フィルム610の一体化としては、上記の方法に限らず、例えば、樹脂フィルム620の全面に金属フィルム610を接着一体とし、エッチングにより所定パターンに形成する方法か、或いは樹脂フィルム620上をマスキングしてメッキ加工する方法か、更には、導電性金属粉末を含む溶液によりスクリーン印刷する方法等が採用可能である。図4のイオンセンサ付ガスケット6は、図2に示すような冷却媒体流通用孔2bを閉塞するガスケットの例を示すものであるが、図3に示すような冷却媒体用開口部6cを備えたものであっても良いことは言うまでもない。また、導電性金属層61が複数気筒のエンジンに共役する例を示しているが、各気筒毎に分断し、各燃焼室の燃焼状態の情報を個別に取り出すようにした多チャンネル方式とすることも可能である。
【0026】
図5(a)は、図4(b)のY−Y線断面図であり、図5(b)はその変形例を示すものであるが、図5(a)の例は、導電性金属層61の厚みが均一であることを示し、一方、図5(b)の例は、導電性金属層61の厚みが、イオン電流検知電極61a側が厚く、イオン電流導出電極61b側が薄くされていることを示している。前者の場合、導電性金属層61の厚みを比較的厚くし、金属保護層63を10〜200μmの前記軟質金属薄膜或いはコーティング層とすることが望ましい。また、後者のように、イオン電流検知電極61a側が厚く、イオン電流導出電極61b側が薄くされていると、イオンセンサ付ガスケット6の全体厚みが薄いにも拘わらず燃焼室4に臨むイオン電流検知電極61aの熱による溶損がなく、加えてビード部6dを含むボア周りの厚みがその周辺より厚くなるから、前記ボルトによるシリンダブロック及びシリンダヘッドの締結の際、この部分の面圧が高くなり、燃焼室のガスシールがより確実になされる。
【0027】
図6は、図4(a)のZ−Z線断面図であるが、更に金属保護層63、63の外側に薄いゴムコーティング層64、64が形成された例として示すものである。このゴムコーティング層64、64を形成する例として、便宜上、図6に示しているが、図5(a)(b)の例にも適用され得るものである。ゴムコーティング層64は、ビード部6d及びハーフビード部6eをプレス加工により形成した後、ゴム材を塗布して、加熱処理することにより形成される。このゴムコーティング層64を積層することにより、イオンセンサ付ガスケット6に弾性が付与され、シール性が更に向上する。
【実施例2】
【0028】
図7は別実施例の図4と同様図であり、前記の多チャンネル方式のイオンセンサ付ガスケット6の1例を示すものである。即ち、上記同様大孔62a及び小孔62bを含む所定のパターン形状に打抜き形成した前記絶縁層62用の樹脂フィルム620を準備する。この樹脂フィルム620の各大孔62a毎に、該大孔62aの内周縁部から外側部に至る導電性金属層用の略T字状に形成された金属薄板片610’を接着一体とし、この樹脂フィルム620を上記と同様に所定パターンンに形成された金属板630上に接着一体とする。この上に、図では省略したが樹脂フィルム620及び金属板630をこの順序で接着一体とし、積層シート体60となし、ボア開口部6a周り及びボルト用開口部6b周りにビード部6d及びハーフビード部6e(図6参照)をプレス加工により形成し、図7(b)のイオンセンサ付ガスケット6を得る。
【0029】
これら各層の積層一体化にも、前記した他の方法が採用可能であることは言うまでもない。このように、多チャンネル方式によれば、各燃焼室毎の燃焼状態の情報を個別に得ることができ、この個別の燃焼状態の情報に基づき、エンジンの多様な運転制御を実施することができる。また、全体厚みを薄くすることができ、低コスト化、コンパクト化も図ることができる。尚、前記実施例と共通する部分には同一の符号を付し、その説明を割愛する。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明のイオンセンサ付ガスケットを用いて組立てられたエンジンの要部を示す縦断面図である。
【図2】図1におけるW部の拡大図である。
【図3】同X部の拡大図である。
【図4】本発明のイオンセンサ付ガスケットの作成要領を示す図であり、(a)は分解斜視図、(b)は得られたイオンセンサ付ガスケットの部分切欠斜視図である。
【図5】(a)は図4(b)のY−Y線拡大断面図、(b)はその変形例を示す同様図である。
【図6】図4(b)のZ−Z線拡大断面図である。
【図7】別実施例の図4と同様図である。
【符号の説明】
【0031】
1 エンジン
2 シリンダブロック
2a シリンダボア
2b 冷却媒体流通用孔
2c 冷却媒体流通用孔
3 シリンダヘッド
3a 冷却媒体流通用孔
3b 冷却媒体流通用孔
4 燃焼室
6 イオンセンサ付ガスケット
6a ボア開口部
6b 開口部
6c 開口部
6d ビード部
60 積層シート体
61 導電性金属層
61a イオン電流検知電極
61b イオン電流導出電極
62 絶縁層
63 金属保護層
64 ゴムコーティング層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンのシリンダヘッドとシリンダブロックとの間に挟装されるイオンセンサ付ガスケットであって、
シリンダボアに対応するボア開口部を備え、中間の導電性金属層と、その両面の絶縁層と、更にその外側の金属保護層とが一体とされた積層シート体からなり、上記導電性金属層の上記ボア開口部側周縁部は、エンジンの燃焼室内に臨むイオン電流検知電極とされ、一方導電性金属層のエンジン外側部側は、一部がエンジン外側部より延出するイオン電流導出電極とされていることを特徴とするイオンセンサ付ガスケット。
【請求項2】
請求項1に記載のイオンセンサ付ガスケットにおいて、
上記ボア開口部の周りにビード部が形成されていることを特徴とするイオンセンサ付ガスケット。
【請求項3】
請求項1または2に記載のイオンセンサ付ガスケットにおいて、
上記絶縁層が、ポリイミド樹脂のフィルム層からなることを特徴とするイオンセンサ付ガスケット。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれかに記載のイオンセンサ付ガスケットにおいて、
上記金属保護層の外面に、更にゴムコーティング層が形成されていることを特徴とするイオンセンサ付ガスケット。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれかに記載のイオンセンサ付ガスケットにおいて、
シリンダヘッドとシリンダブロックとを締結させる為のボルト孔に対応する開口部及び冷却媒体流通用孔に対応する開口部を備え、これら開口部周辺部分の上下絶縁層が上記導電性金属層を介することなく直接積層一体とされ、上記開口部の内周縁部に導電性金属層が露出しないようになされていることを特徴とするイオンセンサ付ガスケット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2006−105085(P2006−105085A)
【公開日】平成18年4月20日(2006.4.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−295885(P2004−295885)
【出願日】平成16年10月8日(2004.10.8)
【出願人】(000225359)内山工業株式会社 (204)
【出願人】(504147243)国立大学法人 岡山大学 (444)
【Fターム(参考)】