説明

イオン液体触媒によるエチレングリコールの製造方法

本発明は、(a)水の存在下で、ヒドロキシ機能化イオン液体とアルカリ塩からなるイオン液体複合触媒を用い、エチレンオキサイドと二酸化炭素との反応を触媒して、エチレンカーボネートとエチレングリコールとを生成するカルボニル化工程;(b)工程(a)で得られたエチレンカーボネート及びイオン液体複合触媒を含有する反応溶液と、水とを反応させて、エチレングリコールを生成する加水分解工程;及び(c)工程(b)で得られたエチレングリコールと触媒を含有する水溶液を脱水し、エチレングリコールを精製する純化工程の三つの工程を含む、エチレンオキサイドによるエチレングリコールの新型製造方法を提供する。本発明によれば、触媒は、高い活性、適用性、良い安定性を有し、且つ反応条件が温和で、エチレンオキサイドの転化率が高く、エチレングリコールの選択性が高く、工程フローが簡単などの利点を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エチレングリコールの製造方法に関し、具体的には、イオン液体触媒を用いてエチレンオキサイドからエチレングリコールを製造する新型方法に関する。
【背景技術】
【0002】
エチレングリコール(EG)は、重要の工業用基礎原料として、ポリエステル繊維、凍結防止剤、不飽和ポリエステル樹脂、ノニオン界面活性剤、アミノエタノール、爆薬などの製品の製造に用いられる。EGは、一般的に、エチレンオキサイド(EO)の直接水和工程(図面1)によって製造されるが、該工程には、水比が高く(HO:EOが22:1で、高い)、エネルギー消費が大きく、エチレングリコール選択性が悪い(<89%)などの問題が存在している。
【0003】
【化1】

【0004】
最近、触媒水和法(WO9931033A1)、エチレンカーボネート法をはじめとして、新型のEG製造技術が次々に開発されて来た。直接水和法に比べると、触媒水和法において水比が3−10、エチレングリコール選択性が<96%である。触媒水和法には、水和過程において触媒の活性と安定性が十分ではない欠点が存在している。エチレンカーボネートを介してエチレングリコールを製造する方法(反応式2)では、EOとCOを原料として、カルボニル化反応を経てエチレンカーボネート(EC)を合成した後、ECを加水分解してEGを得る。該方法は、直接水和法と触媒水和法に比べて、反応条件が温和で、水比が低く(HO:EO=1.5:1〜1.1:1)、EG選択性が高く(>99%)、エネルギー消費が小さい等の優勢を有する。DOW、Texaco、Halcon−SD、日本触媒、日本三菱等の国際著名会社は、既に関連研究を展開した。該方法は、エチレングリコールの発展方向を代表している。
【0005】
【化2】

【0006】
エチレンオキサイドが易燃性、易爆発性、毒性を有するので、エチレンオキサイドを高効率に転化してエチレンカーボネートを製造する反応がエチレンカーボネート法の肝心な反応になる。現在、エチレンカーボネートの製造に用いられる触媒として、均一系触媒と不均一系触媒との二つの類が報告された。その中で、均一系触媒として、アルカリ土類金属のハロゲン化物(US 2667497,CN1926125A)、遷移金属錯体又は四座配位Schiff塩基金属錯体(CN1416952,CN1415416)、有機アルカリ(DMF,DBAPなど)(J. Org.Chem. 2003, 68, 1559)、有機錫、ゲルマニウム又はテルリウム化合物(JP57−183784)、第四級アンモニウム塩(テトラブチルアンモニウムブロミド、テトラブチルアンモニウムクロリド又はテトラブチルアンモニウムヨージド等)(US 2773070)、イミダゾリウム塩(1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムブロミド、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムブロミド等)(CN200310121060.0)、ホスホニウム塩(テトラブチルホスホニウムヨージド、トリフェニルメチルホスホニウムヨージド、トリフェニルベンジルホスホニウムクロリド等)(CN1308046A,CN1161320A,JP58−126884,JP200143563A)などのイオン液体が挙げられ、不均一系触媒として、固体アルカリ(MgO−Al)(J. Am. Chem. Soc. 2001,121,11498,CN101265253)、分子篩(J. Phys. Chem. B 2005, 109, 2315-2320)、交換基として第四級アンモニウム塩を含有するアニオン交換樹脂(JP3−120270)、タングステン酸化物又はモリブデン酸化物によるヘテロポリ酸及びその塩(JP7−206847)などが挙げられる。
【0007】
エチレンカーボネートの加水分解触媒として、酸性イミダリウム塩([bmim]HSO,[bmim]HPO等)(CN1978415A)、担持された塩基性イミダゾリウム塩(PS−[bmim]OH,PS−[bmim]HCO等)(CN101456792,J. Mol. Catal. A: Chem. 2008, 279(2): 230-234)などの均一系触媒が報告された。
【0008】
これらの触媒系には、触媒活性が低く、安定性が悪く、反応条件が厳しく、毒性が強い有機溶剤を用い、且つ触媒のコストが高いなどの問題がある程度存在しているので、安価、高効率、成分が簡単で、環境にやさしいエステル化触媒の開発が期待されている。一方、従来のエチレンカーボネート法では、二段反応の触媒が相容れないので、通常、エチレンカーボネートのカルボニル化触媒とエチレンカーボネートの加水分解触媒とを別々に使用する。該従来の技術によれば、触媒分離の複雑化を招来し、相応の分離工程を繁雑にし、エネルギー消費を増加させ、且つ製品であるエチレングリコールの品質にある程度の影響を及ぼす。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上記の問題に鑑みて、本発明の目的は、カルボニル化反応と加水分解反応に同時に適用できる複合触媒を用いて、エチレングリコールを製造する方法を提供することで、エチレンカーボネートとエチレングリコールを高効率に触媒合成しエネルギー節約できる工程を実現することである。
【0010】
上記の目的を達成するために、本発明は、(a)含水の条件で、ヒドロキシ機能化イオン液体とアルカリ金属塩からなるイオン液体複合触媒の存在下、エチレンオキサイドと二酸化炭素とを反応させて、エチレンカーボネート含有溶液を形成するカルボニル化反応工程;(b)工程(a)で得られたエチレンカーボネート及びイオン液体複合触媒を含有する反応溶液と、水とを反応させて、エチレングリコール含有水溶液を生成する加水分解工程;及び(c)工程(b)で得られたエチレングリコール含有水溶液を脱水して、エチレングリコールを収集する純化工程の三つの工程を含む、ことを特徴するイオン液体触媒によるエチレングリコールの製造方法を提供する。
【0011】
本発明によれば、イオン液体複合触媒を用いて、高効率で、温和で、また、高い選択性で、エチレングリコールを製造することができる。
【0012】
本発明の反応の一般式は、下記の通りである。
【0013】
【化3】

【0014】
本発明で用いられるイオン液体複合触媒は、ヒドロキシ機能化イオン液体とアルカリ塩とを複合してなる。ヒドロキシ機能化イオン液体とは、イオン液体カチオン(N、Pなど)の上にヒドロキシアルキルを有するイオン液体であり、ヒドロキシと正電荷を帯びる原子との結合基の役割を担当するアルキレン基は、2−10個の炭素原子を含んでもよい。ヒドロキシ機能化イオン液体は、ヒドロキシアルキルを有する第四級アンモニウム系イオン液体、及びヒドロキシアルキルを有するホスホニウム系イオン液体を含み、その代表的な構造式は、下記の通りである。
【0015】
【化4】

【0016】
式中、R、R、R、Rは、水素、又は炭素数1−20のアルカン、アルケン、シクロアルカン、アレーン、ハロゲン化アルカン、ヘテロシクロアルカンから選ばれる一種の置換基であり、Xは、Cl、Br、Iから選ばれるヒドロキシイオン液体のアニオンの一種であり、n=1−9である。
【0017】
本発明において、アルカンは、C−C14のアルカンを含み、好ましくは、C−C10のアルカンである。アルケンの代表的な実例として、アリル基が挙げられ、シクロアルカンの代表的な実例として、シクロヘキシル基が挙げられる。アレーンには、フェニル基、ベンジル基、トリル基などが含まれる。ハロゲン化アルカンには、ハロゲン化C−Cアルカンなどが含まれる。ヘテロシクロアルカンには、イミダゾール、ピロール、フラン、チオフェン等が含まれる。
【0018】
以下に、イオン液体構造の例を挙げて本発明を説明するが、本発明は下記例に限らず、本発明の趣旨を超えない変更例も本発明の技術的範囲に含まれる。
【0019】
上記の要件を満たすヒドロキシイオン液体イミダゾリウム系(1)として、1−ヒドロキシエチル−3−メチルイミダゾリウムブロミド、1−ヒドロキシプロピル−3−メチルイミダゾリウムブロミド、1−ヒドロキシブチル−3−メチルイミダゾリウムブロミド、1−ヒドロキシヘキシル−3−メチルイミダゾリウムブロミド、1−ヒドロキシヘプチル−3−メチルイミダゾリウムブロミド、1−ヒドロキシデシル−3−メチルイミダゾリウムブロミド、1−ヒドロキシエチル−3−ブロムエタンイミダゾリウムブロミド、臭化1−ヒドロキシエチル−3−(1−ヒドロキシエチル−3−エチルイミダゾリウムブロミド)イミダゾール、1−ヒドロキシブチル−3−ベンジルイミダゾリウムブロミド、1−ヒドロキシエチル−3−メチルイミダゾリウムヨージド、1−ヒドロキシプロピル−3−メチルイミダゾリウムヨージド、1−ヒドロキシブチル−3−メチルイミダゾリウムヨージド、1−ヒドロキシヘキシル−3−メチルイミダゾリウムヨージド、1−ヒドロキシヘプチル−3−メチルイミダゾリウムヨージド、1−ヒドロキシデシル−3−メチルイミダゾリウムヨージド、1−ヒドロキシブチル−3−メチルイミダゾリウムクロリド、1−ヒドロキシヘキシル−3−メチルイミダゾリウムクロリド、1−ヒドロキシオクチル−3−メチルイミダゾリウムクロリド、1−ヒドロキシノニル−3−メチルイミダゾリウムクロリド等が用いられる。
【0020】
ピリジン(2)として、臭化N−ヒドロキシプロピルピリジン、臭化N−ヒドロキシオクチル−4−メチルピリジン、臭化N−ヒドロキシオクチル−3−メチルピリジン、臭化N−ヒドロキシデシル−3−メチルピリジン、ヨウ化N−ヒドロキシエチルピリジン、ヨウ化N−ヒドロキシプロピルピリジン、ヨウ化N−ヒドロキシエチル−4−メチルピリジン、塩素化N−ヒドロキシエチルピリジン、塩素化N−ヒドロキシオクチル−4−メチルピリジン、塩素化N−ヒドロキシオクチル−3−メチルピリジン、塩素化N−ヒドロキシエチル−2−クロロ−5−クロロメチルピリジン等が用いられる。
【0021】
第四級アンモニウム系(3)として、1−ヒドロキシエチル−トリブチルアンモニウムブロミド、1−ヒドロキシプロピル−トリブチルアンモニウムブロミド、1−ヒドロキシエチル−トリエチルアンモニウムブロミド、1−ヒドロキシプロピル−トリエチルアンモニウムブロミド、1−ヒドロキシエチル−トリヘキシルアンモニウムブロミド、1−ヒドロキシヘキシル−トリヘキシルアンモニウムブロミド、1−ヒドロキシヘプチル−トリヘプチルアンモニウムブロミド、1−ヒドロキシデシル−トリデシルアンモニウムブロミド、1−ヒドロキシエチル−トリブチルアンモニウムヨージド、1−ヒドロキシプロピル−トリブチルアンモニウムヨージド、1−ヒドロキシエチル−トリエチルアンモニウムヨージド、1−ヒドロキシプロピル−トリエチルアンモニウムヨージド、1−ヒドロキシエチル−トリヘキシルアンモニウムヨージド、1−ヒドロキシヘキシル−トリベンジルアンモニウムヨージド、1−ヒドロキシヘキシル−トリヘキシルアンモニウムヨージド、1−ヒドロキシヘプチル−トリヘプチルアンモニウムヨージド、1−ヒドロキシデシル−トリデシルアンモニウムヨージド、1−ヒドロキシエチル−トリブチルアンモニウムクロリド、1−ヒドロキシプロピル−トリブチルアンモニウムクロリド、1−ヒドロキシエチル−トリエチルアンモニウムクロリド、1−ヒドロキシプロピル−トリエチルアンモニウムクロリド、1−ヒドロキシエチル−トリヘキシルアンモニウムクロリド、1−ヒドロキシヘキシル−トリヘキシルアンモニウムクロリド、1−ヒドロキシヘプチル−トリヘプチルアンモニウムクロリド、1−ヒドロキシデシル−トリデシルアンモニウムクロリド等が用いられる。
【0022】
第四級ホスホニウム系(4)として、1−ヒドロキシエチル−トリフェニルホスホニウムブロミド、1−ヒドロキシプロピル−トリフェニルホスホニウムブロミド、1−ヒドロキシデシル−トリブチルホスホニウムブロミド、1−ヒドロキシエチル−トリピロリルホスホニウムブロミド、1−ヒドロキシエチル−トリシクロヘキシルホスホニウムブロミド、1−ヒドロキシプロピル−トリ(2−フリル)ホスホニウムブロミド、1−ヒドロキシプロピル−トリ(2−チエニル)ホスホニウムブロミド、1−ヒドロキシプロピル−トリ(2−トリル)ホスホニウムブロミド、1−ヒドロキシエチル−トリフェニルホスホニウムヨージド、1−ヒドロキシエチル−トリフェニルホスホニウムヨージド、1−ヒドロキシエチル−トリシクロヘキシルホスホニウムヨージド、1−ヒドロキシエチル−トリピロリルホスホニウムヨージド、1−ヒドロキシデシル−トリフェニルホスホニウムヨージド、1−ヒドロキシエチル−トリフェニルホスホニウムクロリド、1−ヒドロキシエチル−トリピロリルホスホニウムクロリド、1−ヒドロキシエチル−トリシクロヘキシルホスホニウムクロリド、1−ヒドロキシエチル−テトラデシルホスホニウムクロリド、1−ヒドロキシデシル−トリブチルホスホニウムクロリド等が用いられる。
【0023】
ピペリジン系(5)として、臭化N−メチル−N−ヒドロキシエチルピペリジン、臭化N−メチル−N−ヒドロキシヘキシルピペリジン、臭化N−エチル−N−ヒドロキシヘプチルピペリジン、臭化N−プロピル−N−ヒドロキシオクチルピペリジン、臭化N−アリル−N−ヒドロキシエチルピペリジン、臭化N−メチル−N−ヒドロキシデシルピペリジン、ヨウ化N−メチル−N−ヒドロキシエチルピペリジン、ヨウ化N−メチル−N−ヒドロキシヘキシルピペリジン、ヨウ化N−エチル−N−ヒドロキシヘプチルピペリジン、ヨウ化N−プロピル−N−ヒドロキシオクチルピペリジン、ヨウ化N−アリル−N−ヒドロキシエチルピペリジン、ヨウ化N−メチル−N−ヒドロキシデシルピペリジン、塩素化N−メチル−N−ヒドロキシエチルピペリジン、塩素化N−メチル−N−ヒドロキシヘキシルピペリジン、塩素化N−エチル−N−ヒドロキシヘプチルピペリジン、塩素化N−プロピル−N−ヒドロキシオクチルピペリジン、塩素化N−アリル−N−ヒドロキシエチルピペリジン、塩素化N−メチル−N−ヒドロキシデシルピペリジン等が用いられる。
【0024】
ベンゾイミダゾール系(6)として、1−ヒドロキシエチル−3−メチルベンゾイミダゾリウムブロミド、1−ヒドロキシプロピル−3−エチルベンゾイミダゾリウムブロミド、1−ヒドロキシブチル−3−ブチルベンゾイミダゾリウムブロミド、1−ヒドロキシヘキシル−3−エチルベンゾイミダゾリウムブロミド、1−ヒドロキシヘプチル−3−エチルベンゾイミダゾリウムブロミド、1−ヒドロキシデシル−3−メチルベンゾイミダゾリウムブロミド、1−ヒドロキシエチル−3−ブロムエタンベンゾイミダゾリウムブロミド、1−ヒドロキシブチル−3−ベンジルベンゾイミダゾリウムブロミド;1−ヒドロキシエチル−3−メチルベンゾイミダゾリウムヨージド、1−ヒドロキシプロピル−3−エチルベンゾイミダゾリウムヨージド、1−ヒドロキシブチル−3−メチルベンゾイミダゾリウムヨージド、1−ヒドロキシヘキシル−3−メチルベンゾイミダゾリウムヨージド、1−ヒドロキシヘプチル−3−メチルベンゾイミダゾリウムヨージド、1−ヒドロキシデシル−3−メチルベンゾイミダゾリウムヨージド;1−ヒドロキシエチル−3−メチルベンゾイミダゾリウムクロリド、1−ヒドロキシブチル−3−メチルベンゾイミダゾリウムクロリド、1−ヒドロキシヘキシル−3−エチルベンゾイミダゾリウムクロリド、1−ヒドロキシオクチル−3−メチルベンゾイミダゾリウムクロリド、1−ヒドロキシノニル−3−メチルベンゾイミダゾリウムクロリド等が用いられる。
【0025】
ピロリドン系(7)として、臭化N−メチル−ヒドロキシエチルピロリドン、臭化N−メチル−ヒドロキシヘプチルピロリドン、臭化N−エチル−ヒドロキシデシルピロリドン;ヨウ化N−メチル−ヒドロキシエチルピロリドン、ヨウ化N−メチル−ヒドロキシヘプチルピロリドン、ヨウ化N−エチル−ヒドロキシデシルピロリドン;塩素化N−メチル−ヒドロキシエチルピロリドン、塩素化N−メチル−ヒドロキシヘプチルピロリドン、塩素化N−エチル−ヒドロキシデシルピロリドン等が用いられる。
【0026】
N−メチルピロール系(8)として、臭化N−メチル−N−ヒドロキシエチルピロール、臭化N−メチル−N−ヒドロキシヘプチルピロール、臭化N−メチル−N−ヒドロキシデシルピロール;ヨウ化N−メチル−N−ヒドロキシエチルピロール、ヨウ化N−メチル−N−ヒドロキシヘプチルピロール、ヨウ化N−メチル−N−ヒドロキシデシルピロール;塩素化N−メチル−N−ヒドロキシエチルピロール、塩素化N−メチル−N−ヒドロキシヘプチルピロール、塩素化N−メチル−N−ヒドロキシデシルピロール等が用いられる。
【0027】
2−メチルピロリン系(9)として、臭化N−ヒドロキシエチル−2−メチルピロリン、臭化N−ヒドロキシブチル−2−メチルピロリン、臭化N−ヒドロキシヘプチル−2−メチルピロリン、臭化N−ヒドロキシデシル−2−メチルピロリン;ヨウ化N−ヒドロキシエチル−2−メチルピロリン、ヨウ化N−ヒドロキシブチル−2−メチルピロリン、ヨウ化N−ヒドロキシヘキシル−2−メチルピロリン、ヨウ化N−ヒドロキシヘプチル−2−メチルピロリン、ヨウ化N−ヒドロキシデシル−2−メチルピロリン、塩素化N−ヒドロキシエチル−2−メチルピロリン、塩素化N−ヒドロキシヘキシル−2−メチルピロリン、塩素化N−ヒドロキシヘプチル−2−メチルピロリン、塩素化N−ヒドロキシデシル−2−メチルピロリン等が用いられる。
【0028】
モルホリン(10)系として、臭化N−ヒドロキシエチルモルホリン、臭化N−ヒドロキシブチルモルホリン、臭化N−ヒドロキシヘプチルモルホリン、臭化N−ヒドロキシデシルモルホリン;ヨウ化N−ヒドロキシエチルモルホリン、ヨウ化N−ヒドロキシブチルモルホリン、ヨウ化N−ヒドロキシヘキシルモルホリン、ヨウ化N−ヒドロキシヘプチルモルホリン、ヨウ化N−ヒドロキシデシルモルホリン;塩素化N−ヒドロキシエチルモルホリン、塩素化N−ヒドロキシヘキシルモルホリン、塩素化N−ヒドロキシオクチルモルホリン、塩素化N−ヒドロキシヘプチルモルホリン、塩素化N−ヒドロキシデシルモルホリン等が用いられる。
【0029】
オキサゾール(11)として、臭化N−ヒドロキシエチルオキサゾール、臭化N−ヒドロキシプロピルオキサゾール、臭化N−ヒドロキシヘキシルオキサゾール、臭化N−ヒドロキシデシルオキサゾール;ヨウ化N−ヒドロキシエチルオキサゾール、ヨウ化N−ヒドロキシブチルオキサゾール、ヨウ化N−ヒドロキシヘプチルオキサゾール、ヨウ化N−ヒドロキシオクチルオキサゾール、ヨウ化N−ヒドロキシデシルオキサゾール;塩素化N−ヒドロキシエチルオキサゾール、塩素化N−ヒドロキシヘキシルオキサゾール、塩素化N−ヒドロキシオクチルオキサゾール、塩素化N−ヒドロキシヘプチルオキサゾール、塩素化N−ヒドロキシデシルオキサゾール等が用いられる。
【0030】
イソキノリン(12)として、臭化1−ヒドロキシエチルイソキノリン、臭化1−ヒドロキシプロピルイソキノリン、臭化1−ヒドロキシブチルイソキノリン、臭化1−ヒドロキシヘキシルイソキノリン、臭化1−ヒドロキシヘプチルイソキノリン、臭化1−ヒドロキシデシルイソキノリン、ヨウ化1−ヒドロキシエチルイソキノリン、ヨウ化1−ヒドロキシプロピルイソキノリン、ヨウ化1−ヒドロキシブチルイソキノリン、ヨウ化1−ヒドロキシヘキシルイソキノリン、ヨウ化1−ヒドロキシヘプチルイソキノリン、ヨウ化1−ヒドロキシデシルイソキノリン、塩素化1−ヒドロキシエチルイソキノリン、塩素化1−ヒドロキシプロピルイソキノリン、塩素化1−ヒドロキシブチルイソキノリン、塩素化1−ヒドロキシヘキシルイソキノリン、塩素化1−ヒドロキシヘプチルイソキノリン、塩素化1−ヒドロキシデシルイソキノリン等が用いられる。
【0031】
一方、ヒドロキシ機能化イオン液体と複合するアルカリ金属塩は、アルカリ金属Li、Na、Kのアルコキシド、水酸化物、ハロゲン化物、リン酸塩、炭酸塩、硫酸塩、炭酸水素塩、リン酸水素塩からなる群より選択されるものである。
【0032】
カルボニル化反応と加水分解反応との二つの反応における複合触媒の触媒活性と反応生成物の選択性に対する影響を考慮して、本発明のイオン液体複合触媒において、金属塩とヒドロキシ機能化イオン液体の質量比は、1:1−1:20であり、好ましくは1:2−1:10である。上記の複合配合比を用いることにより、カルボニル化反応と加水分解反応との両方の反応においてイオン液体複合触媒は優れた触媒活性を示し、反応選択性が良く、且つ反応の間で触媒の分離及び処置をする必要はない。
【0033】
本発明における反応条件は、更に、以下の特徴を有する。
【0034】
(1)反応は、含水条件で行う。カルボニル化反応において、体系の含水量は、初期反応溶液質量の0.1−50.0%を占め、好ましくは2.0−50.0%を占める。水の加入は、カルボニル化反応におけるエチレンオキサイドの転化率の向上に寄与する。また、水量の向上に伴い、カルボニル化反応により生成されるエチレングリコール量も相応的に増加する。カルボニル化反応系の水は、工業含水エチレンオキサイドに由来したものでも良く、又は複合触媒溶液に由来したものでも良い。
【0035】
(2)複合触媒は、溶液の形で用いられる。複合触媒溶液は、ヒドロキシ機能化イオン液体とアルカリ金属塩のみから構成されても良く、更に溶媒を含んでも良い。複合触媒溶液に用いられる溶媒は、特に、限定されないが、複合触媒の溶解性、反応に及ぼす影響、及びコストなどの観点から、エチレングリコール、水又はそれらの組み合わせであることが好ましい。エチレングリコール溶媒を用いる場合、初期反応溶液総質量に対するエチレングリコールの含量は0.4−50.0%である。エチレングリコールは、ヒドロキシの相乗効果により、カルボニル化反応に対するイオン液体の触媒作用を促進することができ、カルボニル化反応の選択性に著しい影響を与えるが、エチレンオキサイドと反応して、副産物であるジエチレングリコールDEGを一定量生成するので、エチレングリコールの添加量を制御する必要がある。
【0036】
(3)他の反応の条件の特徴としては、工程(a)において、エチレンオキサイドと二酸化炭素との反応モル比が1:1−1:10であり、触媒用量がエチレンオキサイドモル数の10.0mol%未満であり、反応圧力が0.5−5MPa、反応温度が50−180℃であり、反応時間が0.1〜5hであり;工程(b)において、エチレンカーボネートと1−5倍モル当量の水とを混合し、必要な反応圧力が0.3−1.5MPa、反応温度が80−180℃、反応時間が0.5−4hであり;純化工程(c)において、まず、脱水塔を経て、脱水温度100−190℃、圧力1−20kPaで、エチレングリコール含有水溶液中の水を除去し;その後、精製塔に送入して、精製温度100−190℃、圧力1−20kPaでエチレングリコールの精製を行う。
【0037】
本発明のエチレングリコールの製造方法において、ヒドロキシ機能化イオン液体とアルカリ金属塩との相容性が良く、これらから成る複合触媒は、高い触媒活性、優れる安定性、温和な反応条件、環境にやさしい等の利点を有する。また、各段階の反応の間で触媒の分離を行う必要がないので、工程を極めて簡素化して、コストを低下させる。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】図1は、本発明の工程フローを示す省略図である。
【発明を実施するための形態】
【0039】
以下に、実施例を挙げて本発明を説明するが、本発明は下記実施例に限らず、本発明の趣旨を超えない変更例も本発明の技術的範囲に含まれる。
【0040】
実施例1
カルボニル化工程(a):
三つの反応物である含水エチレンオキサイド、二酸化炭素、及び触媒溶液を、質量流量比3:1:6で、それぞれ、貯蔵タンク(1)−(3)から配管101、102、103を経て、気泡塔反応器(4)へ流入させた。その中で、エチレンオキサイドの含水質量%は、約7%で、二酸化炭素の純度は、99%であった。触媒溶液は、約5:1の質量配合比のエチレングリコールと複合イオン液体触媒からなり、触媒は、6:1の質量配合比の1−ヒドロキシエチル−3−メチルイミダゾリウムブロミドと炭酸カリウムからなる。反応温度は、温度調節装置で125℃に制御され、反応圧力は、背圧弁で2.5MPaに制御される。1.0h反応後、液相生成物は、配管104を経てエチレンカーボネート貯蔵タンク(5)に流入し、気相生成物は、配管105を経て気液分離器(6)に流入して、未反応の二酸化炭素を分離した後、配管108を経てエチレンカーボネート貯蔵タンクに流入する。サンプリングして、液相の組成を分析したところ、エチレンオキサイドの転化率は100%に近く、溶液中のエチレンオキサイドの含有量は、クロマトグラフィーの検出限界(10ppm以下)より低く、エチレンカーボネートの選択性は90%で、エチレングリコールの選択性は10%であった。重質成分であるジエチレングリコールとトリエチレングリコールは検出されなかった。工程(a)で得られた溶液は、すぐ後で、カーボネートの加水分解工程に流入する。
【0041】
加水分解工程(b):工程(a)で得られたエチレンカーボネートとエチレングリコールとを含有する溶液は、配管109を経て、貯蔵タンク(7)からの水と混合した後、配管111を経て加水分解管式反応器(8)に流入する。水とエチレンカーボネートとのモル配合比は、1.5:1であり、反応温度は、140℃に制御され、反応圧力は、背圧弁で0.4MPaに制御される。1.0h反応後、液相生成物は、配管112を経てエチレングリコール貯蔵タンク(10)に流入し、気相生成物は、配管113を経て気液分離器(9)に流入して、二酸化炭素を分離した後、配管115を経て貯蔵タンク(10)へ流入する。得られた反応液の所定量をサンプリングして、ガスクロマトグラフィーで分析したところ、エチレンカーボネートの転化率は100%、エチレングリコール選択性は100%であった。(b)工程から得られた溶液は、すぐ後で、エチレングリコール純化工程に送入される。
【0042】
純化工程(c):エチレングリコール含有水溶液は、脱水塔(11)を経て、脱水温度150℃、圧力10kPaで水が除去された後、配管118を経て精製塔(12)に送入され、精製温度160℃、圧力10kPaで、エチレングリコールの精製が行われて、純度99.8%以上のエチレングリコール製品が得られる。該エチレングリコール製品は、塔頂から配管119を経てエチレングリコール貯蔵タンクに流入し、塔底に余るエチレングリコールは触媒と分離されて配管120を経て循環に流入する。
【0043】
実施例2
カルボニル化工程(a)は、気泡塔反応器で行われる。三つの反応物は、それぞれ、純エチレンオキサイド、触媒溶液及び二酸化炭素であり、質量流量比が2:1:4(質量比)である。その中で用いるエチレンオキサイドの純度が99%、二酸化炭素の純度が99%である。触媒溶液は、水、エチレングリコール及び複合イオン液体触媒からなり、質量配合比が約1:4:1であり、触媒は、1−ヒドロキシエチル−3−ブチルアンモニウムブロミドとリン酸カリウムからなり、質量配合比が4:1である。温度調節装置で反応温度を徐々に130℃に上昇させ、背圧弁で反応圧力を2.0MPaに制御して、1.0h反応後、サンプリングして、クロマトグラフィーで分析したところ、サンプルには、主に、エチレングリコール、エチレンカーボネート及び少量の水が含有されており、測定されたエチレンオキサイドの転化率は100%に近く、溶液中のエチレンオキサイドの含有量は、クロマトグラフィーの検出限界(10ppm以下)より低く、エチレンカーボネートの選択性は88%で、エチレングリコールの選択性は12%であり、ジエチレングリコールとトリエチレングリコールなどの重質成分はわずか少量であった。
【0044】
加水分解工程(b):反応温度を150℃に制御し、反応圧力を0.6MPaに制御した以外には、実施例1と同じ方法で操作した。ガスクロマトグラフィーで反応生成物を分析したところ、エチレンカーボネートの転化率は100%、エチレングリコール選択性は100%であった。
【0045】
純化工程(c):脱水温度を140℃、脱水圧力を10kPa、精製温度を160℃、精製圧力を10kPaにして、純度99.8%以上のエチレングリコール製品を得た。塔底に余るエチレングリコールと触媒は分離されて次回の循環反応に用いられる。
【0046】
実施例3
カルボニル化工程(a):気泡塔反応器で行われる。三つの反応物は、それぞれ、含水エチレンオキサイド、触媒溶液及び二酸化炭素であり、仕込み比が、質量比で3:0.5:9である。その中で用いるエチレンオキサイドの含水量が9%、二酸化炭素の純度が99%である。触媒溶液は、エチレングリコール及び複合イオン液体触媒からなり、両者の用量が約4:1であり、触媒は、1−ヒドロキシエチル−3−フェニルホスホニウムクロリドとヨウ化カリウムとからなり、配合比が3:1である。反応条件を、温度140℃、圧力3.5MPa、反応時間2.5hにコントロールする。反応後、エチレンオキサイドの転化率を測定したところ、100%に近く、エチレンカーボネートの選択性が68%、エチレングリコールの選択性が32%であった。反応液に含有された二酸化炭素を気液分離し、得られた溶液を加水分解工程に送入する。
【0047】
工程(b)と工程(c)については、実施例1の工程(b)と工程(c)と同じ方法で操作した。
【0048】
実施例4
反応物及び工程(c)は、実施例1と同じであり、相違点は以下の通りである。
(1)ヒドロキシイオン液体触媒は、1−ヒドロキシプロピル−3−エチルイミダゾリニウムブロミドであり、対応する金属塩はリン酸水素二カリウムであり、質量配合比は2:1である。
(2)工程(a)において、反応温度は、温度調節装置で110℃に制御され、反応圧力は、3.0MPaに制御された。1.0h反応後、エチレンオキサイドの転化率が99.8%、エチレンカーボネートの選択性が60.5%、エチレングリコールの選択性が39.4%、他の副産物が0.1%であった。
(3)工程(b)において、エチレンカーボネートと水とのモル配合比を1:2にし、、反応塔底温度を130℃に制御し、反応圧力を0.5MPaに制御して、1.0h反応した後、液体組成を計算したところ、エチレンカーボネートの転化率が100%、エチレングリコールの選択性が100%であった。
【0049】
実施例5
反応物は、実施例1と同じであり、相違点は以下の通りである。
(1)ヒドロキシイオン液体触媒は、1−ヒドロキシプロピル−ピリジニウムヨージドで、対応する金属塩は炭酸水素ナトリウムであり、質量配合比は8:1である。
(2)工程(a)において、反応温度を温度調節装置で100℃に制御し、反応圧力を2.0MPaに制御して、1.5h反応後、測定されたエチレンオキサイドの転化率が99.9%、エチレンカーボネートの選択性が81.5%、エチレングリコールの選択性が18.5%であった。
(3)工程(b)において、エチレンカーボネートと水とのモル配合比を1:3にし、反応塔底温度を120℃に制御し、反応圧力を0.5MPaに制御して、2.0h反応した後、液体組成を計算したところ、エチレンカーボネートの転化率が100%、エチレングリコールの選択性が100%であった。
(4)工程(c)において、脱水温度を160℃、脱水圧力を15kPa、精製温度を170℃、精製圧力を10kPaにして、純度99.8%以上のエチレングリコール製品を得た。
【0050】
実施例6
触媒を1−ヒドロキシエチル−3−メチルイミダゾリウムブロミドとナトリウムメチレートとからなるものにし、質量配合比を7:1にした以外には、実施例1と同じ方法で操作したところ、工程(a)におけるエチレンオキサイドの転化率が99.9%、製品におけるエチレンカーボネートの選択性が85%、エチレングリコールの選択性が15%であった。工程(b)と工程(c)については、実施例1の工程(b)と工程(c)と同じ方法で操作した。
【0051】
実施例7
実施例1中の触媒を3回循環させて使用したところ、工程(a)においてエチレンオキサイドの転化率が100%に近く、エチレンカーボネートの選択性が89%、エチレングリコールの選択性が11%、重質成分であるジエチレングリコールとトリエチレングリコールは検出されなかった。
【0052】
工程(b)においてエチレンカーボネートの転化率が100%、エチレングリコールの選択性が100%であった。
【0053】
工程(c)において、純度99.8%以上のエチレングリコール製品が得られた。
【0054】
実施例8
実施例1中のイオン液体複合触媒を1−ヒドロキシエチル−3−メチルイミダゾリウムブロミドと炭酸カリウムに変更し、実施例1の反応条件と同じにした。測定されたエチレンオキサイドの転化率はただ92%、エチレンカーボネートの選択性は85%、エチレングリコールの選択性は15%であり、重質成分であるジエチレングリコールとトリエチレングリコールは検出されなかった。工程(b)において、反応時間を1.5hにした以外には、実施例1と同じ方法で操作した。工程(c)においては、実施例1と同じ方法で操作した。
【0055】
実施例9
触媒を1−ヒドロキシへプチル−3−メチルイミダゾリウムブロミドとナトリウムメチレートとからなるものにし、質量配合比を7:1にする以外には、実施例1と同じ方法で操作した。測定された工程(a)におけるエチレンオキサイドの転化率が99%、製品におけるエチレンカーボネートの選択性が88%、エチレングリコールの選択性が12%であった。工程(b)と工程(c)においては、実施例1と同じに操作した。
【0056】
実施例10
触媒を臭化N−ヒドロキシオクチル−4−メチルピリジンとリン酸カリウムとからなるものにし、質量配合比を10:1にした以外には、実施例1と同じ方法で操作した。測定された工程(a)におけるエチレンオキサイドの転化率が99.8%、製品におけるエチレンカーボネートの選択性が90%、エチレングリコールの選択性が10%であった。工程(b)と工程(c)においては、実施例1と同じ方法で操作した。
【0057】
実施例11
実施例1中の複合触媒をヨウ化N−プロピル−N-ヒドロキシオクチルピペリジンと炭酸カリウムに変更し、質量比を10:1にした以外には、他の反応条件は実施例1と同じにした。測定されたエチレンオキサイドの転化率が99.9%、エチレンカーボネートの選択性が94%、エチレングリコールの選択性が6%であった。
【0058】
工程(b)においてエチレンカーボネートの転化率が100%、エチレングリコールの選択性が100%であった。
【0059】
工程(c)において、純度99.8%以上のエチレングリコール製品が得られた。
【0060】
実施例12
実施例1中の複合触媒を1−ヒドロキシエチル−3−メチルベンゾイミダゾリウムクロリドと炭酸カリウムに変更し、質量比を8:1にした以外には、他の反応条件は実施例1と同じにした。測定されたエチレンオキサイドの転化率が99.9%、エチレンカーボネートの選択性が92%、エチレングリコールの選択性が8%であった。
【0061】
工程(b)においてエチレンカーボネートの転化率が100%、エチレングリコールの選択性が100%であった。
【0062】
工程(c)において、純度99.8%以上のエチレングリコール製品が得られた。
【0063】
実施例13
エチレンオキサイド含水量を10%にし、複合触媒をヨウ化N−メチル−ヒドロキシヘプチルピロリドン、リン酸カリウム、及び硫酸カリウムからなるものにし、質量比を6:0.5:0.5、カルボニル化反応温度を130℃、反応時間を50minにした以外には、他の反応条件は実施例1と同じにした。測定されたエチレンオキサイドの転化率が99.8%、エチレンカーボネートの選択性が88%、エチレングリコールの選択性が12%であった。
【0064】
工程(b)においてエチレンカーボネートの転化率が100%、エチレングリコールの選択性が100%であった。
【0065】
工程(c)において、純度99.8%以上のエチレングリコール製品が得られた。
【0066】
実施例14
エチレンオキサイド含水量を10%にし、複合触媒を臭化N−メチル−N−ヒドロキシエチルピロールとリン酸カリウムからなるものに変更し、質量比を7:1にした以外には、他の反応条件は実施例1と同じにした。測定されたエチレンオキサイドの転化率が99.8%、エチレンカーボネートの選択性が90%、エチレングリコールの選択性が10%であった。
【0067】
工程(b)においてエチレンカーボネートの転化率が100%、エチレングリコールの選択性が100%であった。
【0068】
工程(c)において、純度99.8%以上のエチレングリコール製品が得られた。
【0069】
実施例15
複合触媒をヨウ化N−ヒドロキシヘプチル−2−メチルピロリンとヨウ化カリウムからなるものに変更し、質量比を4:1にした以外には、他の反応条件は実施例1と同じにした。測定されたエチレンオキサイドの転化率が99.8%、エチレンカーボネートの選択性が96%、エチレングリコールの選択性が4%であった。
【0070】
工程(b)において加水分解反応時間を2.5hにしたところ、エチレンカーボネートの転化率が100%、エチレングリコールの選択性が100%であった。
【0071】
工程(c)において、純度99.8%以上のエチレングリコール製品が得られた。
【0072】
実施例16
複合触媒を塩素化N−ヒドロキシオクチルモルホリンと塩化カリウムとからなるものに変更し、質量比を6:1にした以外には、他の反応条件は実施例1と同じにした。測定されたエチレンオキサイドの転化率が99.7%、エチレンカーボネートの選択性が96%、エチレングリコールの選択性が4%であった。
【0073】
工程(b)において加水分解反応時間を3hに、反応温度を150℃に、反応圧力を0.5MPaにした。エチレンカーボネートの転化率が100%、エチレングリコールの選択性が100%であった。
【0074】
工程(c)において、純度99.8%以上のエチレングリコール製品が得られた。
【0075】
実施例17
複合触媒をヨウ化N−ヒドロキシデシルオキサゾールと臭化カリウムからなるものに変更し、質量比を5:1に、反応時間を1.5hにした以外には、他の反応条件は実施例1と同じにした。測定されたエチレンオキサイドの転化率が99.9%、エチレンカーボネートの選択性が95%、エチレングリコールの選択性が5%であった。
【0076】
工程(b)において加水分解反応時間を2hに、反応温度を150℃に、反応圧力を0.5MPaにした。エチレンカーボネートの転化率が100%、エチレングリコールの選択性が100%であった。
【0077】
工程(c)において、純度99.8%以上のエチレングリコール製品が得られた。
【0078】
実施例18
複合触媒を臭化1−ヒドロキシヘプチルイソキノリンと炭酸カリウムからなるものに変更し、質量比を3:1にした以外には、他の反応条件は実施例1と同じにした。測定されたエチレンオキサイドの転化率が99.8%、エチレンカーボネートの選択性が86%、エチレングリコールの選択性が14%であった。
【0079】
工程(b)において、エチレンカーボネートの転化率が100%、エチレングリコールの選択性が100%であった。
【0080】
工程(c)において、純度99.8%以上のエチレングリコール製品が得られた。
【0081】
実施例19
複合触媒をトリフェニルエチルホスホニウムクロリドとヨウ化カリウムからものに変更した以外には、実施例3と同じにして操作した。反応後測定されたエチレンオキサイドの転化率が91%、エチレンカーボネートの選択性が67%、エチレングリコールの選択性が31%、副産物であるジエチレングリコールが2%であった。反応液に含まれる二酸化炭素を気液分離した後、得られた溶液は加水分解工程に送入された。
【0082】
加水分解工程(b)において、反応時間を2hにした以外には、実施例3と同じに操作した。(c)において、実施例3と同じに操作した。
【0083】
実施例20
実施例1に比べて、相違点は以下の通りである。
【0084】
ヒドロキシ化工程(a)において、触媒溶液をエチレングリコールと1−ヒドロキシエチル−3−メチルイミダゾリニウムブロミドからなるものに変更し、質量配合比を5:1にした以外には、実施例1と同じにした。サンプリングして、液相組成を分析したところ、エチレンオキサイドの転化率が100%に近く、エチレンカーボネートの選択性が93%、エチレングリコールの選択性が7%であり、重質成分であるジエチレングリコールとトリエチレングリコールが検出されなかった。工程(a)で得られた溶液は、すぐ後、炭酸エステルの加水分解工程に送入される。
【0085】
加水分解工程(b)において、工程(a)で得られたエチレンカーボネート、エチレングリコール、及びヒドロキシイオン液体触媒を含有する溶液を加水分解した以外には、実施例1と同じにした。測定されたエチレンカーボネートの選択性がただ45%、エチレングリコールの選択性が100%であった。(b)で得られた溶液はすぐ後でエチレングリコール純化工程に送入された。
【0086】
純化工程(c)は、実施例1の工程(c)と異なって、純化用溶液に未反応のエチレンカーボネートが含有されており、精製後に、純度99%のエチレングリコール製品が得られた。塔底液の成分は、エチレングリコール、エチレンカーボネート及び触媒であった。
【0087】
実施例21
実施例1に比べて、相違点は以下の通りである。
【0088】
ヒドロキシ化工程(a)において、触媒溶液をエチレングリコールと炭酸カリウムからなるものに変更し、質量配合比を35:1にした以外には、実施例1と同じにした。サンプリングして、液相組成を分析したところ、エチレンオキサイドの転化率がただ10%、エチレンカーボネートの選択性が3%、エチレングリコールの選択性が89%であり、ジエチレングリコールが7%、トリエチレングリコールが1%であった。工程(a)における未反応のエチレンオキサイドを分離した後、得られた溶液をすぐ後カーボネート加水分解工程に送入した。
【0089】
加水分解工程(b)において、工程(a)で得られたエチレンカーボネート、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール及び炭酸カリウムを含有する溶液を加水分解したところ、測定されたエチレンカーボネートの選択性が100%、エチレングリコールの選択性が100%であった。(b)で得られた溶液はすぐ後でエチレングリコール純化工程に送入された。
【0090】
純化工程(c)は、実施例1と同じにした。
【0091】
上記の結果から、本発明のイオン液体複合触媒を用いた実施例1−7,9−18において、複合触媒は、カルボニル化反応と加水分解反応との両方の反応で高い触媒活性と良好な選択性を有していることが分かる。ヒドロキシ機能化イオン液体は、ヒドロキシ基を含まない通常のイオン液体に比べて、明らかに優れた反応性能を有する(実施例1と8、実施例3と19を比較する)ので、産業応用が見込まれる触媒になる。イオン液体触媒のみを用いた実施例20とアルカリ塩触媒のみを用いた実施例21において、エチレンカーボネート加水分解工程(実施例20)又はカルボニル化工程(実施例21)中の触媒の活性は、イオン液体複合触媒に比べて明らかに低い。
【0092】
以上をまとめていうと、本発明のエチレングリコールの製造方法において、ヒドロキシ機能化イオン液体と金属塩との相容性が良く、両者から成る複合触媒は、高い触媒活性を有し、エチレンカーボネートの合成反応及びエチレンカーボネートの加水分解によりエチレングリコールの製造する反応工程を有効に触媒し、優れた安定性、温和な反応条件、環境にやさしい等の利点を有する。また、各段階の反応の間で触媒の分離を行う必要がないので、工程を極大に簡素化させ、コストを低下させる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)含水の条件で、ヒドロキシ機能化イオン液体とアルカリ塩からなるイオン液体複合触媒を用い、エチレンオキサイドと二酸化炭素との反応を触媒して、エチレンカーボネートとエチレングリコールとを生成する、下記反応式で表されるカルボニル化工程;
【化5】


(b)工程(a)で得られたエチレンカーボネート及びイオン液体複合触媒を含有する反応溶液と、水とを反応させて、エチレングリコールを生成する、下記反応式で表される加水分解工程;及び
【化6】


(c)工程(b)で得られたエチレングリコールと触媒を含有する水溶液を脱水し、エチレングリコールを精製する純化工程
の三つの工程を含み、
前記ヒドロキシ機能化イオン液体は、イオン液体のカチオンにヒドロキシアルキル基を有するイオン液体である;
ことを特徴する、イオン液体触媒によるエチレングリコールの製造方法。
【請求項2】
前記ヒドロキシ機能化イオン液体が、ヒドロキシアルキル基を有する第四級アンモニウム系イオン液体又はヒドロキシアルキルを有するホスホニウム系イオン液体であることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記ヒドロキシ機能化イオン液体において、ヒドロキシと正電荷を帯びる原子との結合基の役割を担当するアルキレン基が、2−10個の炭素原子を含むことを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記ヒドロキシ機能化イオン液体が、下記の構造式中のいずれかの一つで表されるイオン液体であり、
【化7】


式中、R、R、R、Rは、それぞれ水素、又は炭素数1−20のアルカン、アルケン、シクロアルカン、アレーン、ハロゲン化アルカン、ヘテロシクロアルカンから選ばれた一種の置換基であり、Xは、Cl、Br、Iから選ばれた一種のヒドロキシイオン液体のアニオンであり、n=1−9であることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
アルカリ金属塩が、アルカリ金属Li、Na、Kのアルコキシド、水酸化物、ハロゲン化物、リン酸塩、炭酸塩、硫酸塩、炭酸水素塩、リン酸水素塩からなる群より選択されるものであることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
アルカリ金属塩とヒドロキシ機能化イオン液体の質量比が、1:1−1:20であることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
アルカリ金属塩とヒドロキシ機能化イオン液体の質量比が、1:2−1:10であることを特徴とする、請求項5に記載の方法。
【請求項8】
触媒用量がエチレンオキサイドのモル数の10.0mol%未満であることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
体系の含水量が、初期反応溶液質量の0.1−50.0%を占めることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
初期反応体系において、反応液質量の0−50.0%のエチレングリコールを含有することを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
工程(a)において、エチレンオキサイドと二酸化炭素との反応モル比が1:1−1:10であることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
工程(a)において、反応圧力が0.5−5MPa、反応温度が50−180℃、反応時間が0.1−5hであることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
工程(b)において、エチレンカーボネートと1−5倍モル当量の水とを混合して、加水分解反応を行うことを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
工程(b)において、反応圧力が0.3−1.5MPa、反応温度が80−180℃、反応時間が0.5−4hであることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
純化工程(c)において、エチレングリコール含有水溶液が、まず、脱水塔を経て脱水温度100−190℃、圧力1−20kPaで水が除去され、その後、精製塔に送入されて、精製温度100−190℃、圧力1−20kPaでエチレングリコールの精製が行われることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項16】
工程(a)で得られたエチレンカーボネートとイオン液体複合触媒とを含有する反応液が、気液分離された後、加水分解工程(b)によって加水分解されることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項17】
純化工程(c)の後に、触媒を工程(a)に戻して工程(a)で再使用する工程(d)をさらに含むことを特徴とする、請求項1に記載の方法。

【図1】
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【公表番号】特表2013−515749(P2013−515749A)
【公表日】平成25年5月9日(2013.5.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−546306(P2012−546306)
【出願日】平成22年6月7日(2010.6.7)
【国際出願番号】PCT/CN2010/000800
【国際公開番号】WO2011/153656
【国際公開日】平成23年12月15日(2011.12.15)
【出願人】(509031567)中国科学院過程工程研究所 (2)
【Fターム(参考)】