説明

イソキノリノンカリウムチャネル阻害剤

本発明は、心臓不整脈などを治療するカリウムチャネル阻害剤として有用な構造(I)を有する化合物に関する。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、概して、カリウムチャネル阻害剤として有用な化合物に関する。このクラスの化合物は、心臓不整脈などを治療及び予防するためのKv1.5拮抗物質として、また、免疫抑制、自己免疫疾患などの治療のためのKv1.3阻害剤として有用となり得る。
【背景技術】
【0002】
電位開口型カリウムチャネル(Kv)は、4個のαサブユニットで構成された多量体膜タンパク質であり、補助的なβサブユニットを伴うことが多い。Kvチャネルは、一般に、静止膜電位で閉じているが、膜脱分極によって開く。Kvチャネルは、活動電位の再分極に関与し、したがって神経及び筋線維の電気的興奮性関与する。カリウムチャネルのKv1クラスは、Kv1.1、Kv1.3、Kv1.5など少なくとも7個のファミリーメンバーからなる。機能的電位開口型Kチャネルは、同一のサブユニットで構成されるホモオリゴマー又は異なるサブユニット組成のヘテロオリゴマーとして存在することができる。この現象がカリウムチャネルの多様性の原因と考えられる。しかし、自然のKチャネルのサブユニット構成及び個々のチャネルが果たす生理的役割は明らかになっていない場合がほとんどである。
【0003】
Kv1.3電位開口型カリウムチャネルは、ニューロン、血球、破骨細胞及びTリンパ球中にある。Kv1.3阻害による膜脱分極は、T細胞増殖を防止する有効な方法であることが判明しており、したがって多数の自己免疫症状に応用されてきた。ヒトTリンパ球の原形質膜におけるKチャネルの阻害は、T細胞活性化に重要であることが見出された細胞内Ca++ホメオスタシスを調節することによって、免疫抑制応答を誘導する役割を果たすとみなされている。Kv1.3チャネルの遮断は、免疫抑制応答を誘導する新規機序として提案されている(Chandy等、J. Exp. Med. 160:369、1984;Decoursey等、Nature、307:465、1984)。しかし、これらの初期の研究に使用されたKチャネル遮断薬は非選択的であった。その後の研究において、T細胞中のKv1.3のみを遮断するMargatoxinは、インビトロとインビボの両方のモデルにおいて免疫抑制活性を示すことが判明した。(Lin等、J. Exp. Med、177:637、1993)。しかし、この化合物の治療上の有用性は、その強力な毒性のために限られている。最近、上述の薬物の魅力的な代替となり得る化合物クラスが報告された(米国特許第5,670,504号、同5,631,282号、同5,696,156号、同5,679,705号及び同5,696,156号)。これらの化合物は、以前の薬物の活性/毒性問題のいくつかに対処するものの、分子量が大きい傾向にあり、天然物の合成操作によって一般に製造され、その単離は厄介であり労働集約的である。
【0004】
心房細動(AF)は、臨床実務において最も一般的な持続性心臓不整脈であり、人口の高齢化に伴って罹患率が増加する可能性がある。控えめに推定しても、AFは、2百万人を超える米国人が罹患しており、循環器病の全入院患者の5%を超え、発作のリスクが3から5倍になる(Kannel等、Am. J. Cardiol.、82:2N−9N、1998)。AFは致命的であることは稀であるが、心臓機能を損ない、うっ血性心不全、血栓塞栓症又は心室細動の発生などの合併症をもたらす恐れがある。
【0005】
リエントリー性興奮(リエントリー)は、ヒトにおいて上室性不整脈を生じる顕著な機序であることが示された(Nattel,S.、Nature、415:219−226、2002)。リエントリー性興奮には、共存しAFを持続させる複数のリエントリー回路の惹起及び維持を可能にする遅い伝導速度と十分に短い不応期との極めて重要なバランスが必要である。活動電位持続時間(APD)の延長によって心筋の不応性が増大すると、興奮回帰性不整脈が防止され、および/又は停止する。活動電位持続時間は、再分極カリウム電流IKr、IKs及びIKur並びに一過性外向き電流Itoの寄与によって決まる。したがって、これらの電流のいずれか1つの遮断薬は、APDを延長し、抗不整脈効果をもたらすと予想される。
【0006】
現在利用可能な抗不整脈剤は、心室及び心房/上室性不整脈の治療用に開発された。悪性心室性不整脈は、即座に生命にかかわり、救急治療を要する。心室性不整脈の薬物療法としては、クラスIa(例えば、プロカインアミド、キニジン)、クラスIc(例えば、フレカイニド、プロパフェノン)、クラスIII(アミオダロン)薬剤などが挙げられ、これらは催不整脈作用のかなりのリスクを招く。これらのクラスI及びIII薬物は、AFを洞リズムに変換し、AFの再発を防止することが判明したが(Mounsey,JP、DiMarco,JP、Circulation、102:2665−2670)、場合によっては致死的な心室性催不整脈作用の容認できないリスクを招き、したがって死亡率を増加させる恐れがある(Pratt,CM、Moye,LA、Am J. Cardiol.、65:20B−29B、1990;Waldo等、Lancet、348:7−12、1996;Torp−Pedersen等、Expert Opin. Invest. Drugs、9:2695−2704、2000)。これらの観察は、心房性不整脈治療用のより安全でより効果的な薬物を開発する明確で満たされていない医学的必要性を示している。
【0007】
クラスIII抗不整脈剤は、心臓の伝導又は収縮機能を大きく抑圧することなくAPDを選択的に延長させる。心房細動における臨床用に承認されている唯一の選択的クラスIII薬物はドフェチリドである。これは、ヒトの心房と心室の両方において見られるIの急速活性化成分であるIKrを遮断することによってその抗不整脈効果を媒介する(Mounsey,JP、DiMarco,JP、Circulation、102:2665−2670)。IKr遮断薬は、伝導自体に影響を及ぼさずに心房と心室の両方におけるAPD及び不応状態を延長し、理論的には、AFのような不整脈の治療に潜在的に有用な薬剤である(Torp−Pedersen等、Expert Opin. Invest. Drugs、9:2695−2704、2000)。しかし、これらの薬剤は、低心拍数において催不整脈作用のリスクを高める重大な障害がある。例えば、これらの化合物を利用すると多形性心室頻度が観測される(Roden,D.M.”Current Status of Class III Antiarrhythmic Drug Therapy”、Am J. Cardiol.、72:44B−49B、1993)。低心拍数におけるこの悪化された作用は「逆頻度依存性」と称し、頻度非依存又は順頻度依存作用と対照的である(Hondeghem,L.M. ”Development of Class III Antiarrhythmic Agents”. J. Cardiovasc. Cardiol.、20(Suppl.2):S17−S22)。アミオダロンは、興味深いクラスIII特性を有することが示されたが(Singh B.N.、Vaughan Williams E.M. ”A Third Class Of Anti−Arrhythmic Action: Effects On Atrial And Ventricular Intracellular Potentials And Other Pharmacological Actions On Cardiac Muscle, of MJ 1999 and AH 3747” Br. J. Pharmacol.、39:675−689、1970;Singh B.N.、Vaughan Williams E.M、 ”The Effect Of Amiodarone, A New Anti−Anginal Drug, On Cardiac Muscle”、Br. J. Pharmacol.、39:657−667、1970)、これは選択的クラスIII薬剤ではない。というのは、これは複数のイオンチャネルを生じるからである。さらに、その使用はその副作用プロファイルのために厳しく制限されている(Nademanee,K. ”The Amiodarone Odyssey”. J. Am. Coll. Cardiol.、20:1063−1065、1992;Fuster等、Circulation、104:2118−2150、2001;Bril,A. Curr. Opin. Pharmacol. 2:154−159、2002)。したがって、アミオダロンなどの現在利用可能な薬剤及びクラスIII薬物は、場合によっては致死的な心室性催不整脈作用の発生を含めてかなりの有害作用リスクがある。
【0008】
超急速遅延整流性K電流IKurは、ヒトの心房において特異的に観測され、心室では観測されない。ヒト心房におけるIKurの分子相関物(molecular correlate)は、Kv1.5と称するカリウムチャネルである。Kv1.5 mRNA(Bertaso、Sharpe、Hendry及びJames、Basic Res. Cardiol.、97:424−433、2002)及びタンパク質(Mays、Foose、Philipson及びTamkun、J. Clin. Invest.、96:282−292、1995)は、ヒトの心房組織において検出された。無傷のヒト心房筋細胞においては、持続性外向き電流Isus又はIsoとしても知られる超急速活性化遅延整流性K電流(IKur)が確認された。この電流は、ヒトKチャネルクローン(hKv1.5、HK2)[Wang、Fermini及びNattel、Circ. Res.、73:1061−1076、1993;Fedida等、Circ. Res. 73:210−216、1993;Snyders、Tamkun及びBennett、J. Gen. Physiol.、101:513−543、1993]及びラットの脳由来の類似のクローン(Swanson等、Neuron、4:929−939、1990)によって発現されるものと同一の諸特性及び動力学を有する。また、IKurは、活性化が速く、不活性化が遅いために、ヒトの心房における再分極に大きく寄与すると考えられる。その結果、Kv1.5を遮断する化合物である特異的IKur遮断薬は、現行のクラスIII薬物による治療中に観察される催不整脈性後脱分極及び後天性QT延長症候群を引き起こす心室性再分極を遅延させることなく、ヒト心房における再分極を遅延させて不応状態を延長させることによって他の化合物の欠点を克服する。これらの諸特性を示すKv1.5遮断薬はすでに記述されている(Peukert等、J. Med. Chem.、46:486−498、2003;Knobloch等、Naunyn−Schmedieberg’s Arch. Pharmacol. 366:482−287、2002;Merck & Co.,Inc. 国際公開第0224655号、2002)。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明において記載される化合物は、Kv1.5拮抗物質の新規構造クラスである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、一般構造式Iのカリウムチャネル阻害剤に関する。
【0011】
【化5】

【0012】
本発明の化合物は心臓不整脈などの治療及び予防に有用である。式Iの化合物と薬剤担体とを含む薬剤も本発明の範囲内である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明は、式Iの化合物或いは薬剤として許容される塩、結晶形又は水和物である。
【0014】
【化6】

式中、Aは
a) アリール環(任意の安定なアリール環原子は、独立に、非置換であり、或いは
1) ハロゲン、
2) NO
3) CN、
4) CR46=C(R4748
5) C≡CR46
6) (CROR46
7) (CRN(R4647)、
8) (CRC(O)R46
9) (CRC(O)OR46
10) (CR46
11) (CRS(O)0−261
12) (CRS(O)0−2N(R4647)、
13) OS(O)0−261
14) N(R46)C(O)R47
15) N(R46)S(O)0−261
16) (CRN(R46)R61
17) (CRN(R46)R61OR47
18) (CRN(R46)(CRC(O)N(R4748)、
19) N(R46)(CR61
20) N(R46)(CRN(R4748)、
21) (CRC(O)N(R4748)、又は
22) オキソ
で置換されている。)、或いは
b) N、O又はSからなる群から選択される1、2、3又は4個のヘテロ原子環原子を有する5員環不飽和単環式環、
N、O及びSからなる群から選択される1、2、3又は4個のヘテロ原子環原子を有する6員環不飽和単環式環、及び
N、O又はSからなる群から選択される1、2、3又は4個のヘテロ原子環原子を有する9又は10員環不飽和二環式環
からなる群から選択されるヘテロアリール環(任意の安定なSヘテロアリール環原子は、非置換であり或いはオキソで一置換又は二置換されており、任意の安定なC又はNヘテロアリール環原子は、独立に、非置換であり、或いは
1) ハロゲン、
2) NO
3) CN、
4) CR46=C(R4748
5) C≡CR46
6) (CROR46
7) (CRN(R4647)、
8) (CRC(O)R46
9) (CRC(O)OR46
10) (CR46
11) (CRS(O)0−261
12) (CRS(O)0−2N(R4647)、
13) OS(O)0−261
14) N(R46)C(O)R47
15) N(R46)S(O)0−261
16) (CRN(R46)R61
17) (CRN(R46)R61OR47
18) (CRN(R46)(CRC(O)N(R4748)、
19) N(R46)(CR61
20) N(R46)(CRN(R4748)、
21) (CRC(O)N(R4748)、又は
22) オキソ
で置換されている。)
であり、
は、
1) 水素、
2) (CR40
3) (CROR40
4) (CRN(R4041)、
5) (CRN(R40)C(O)OR41
6) (CRN(R40)(CRN(R41)C(O)R49
7) C3−8シクロアルキル、
8) (CRC(O)OR40
9) (CRN(R40)(CR1−341
10) (CRS(O)0−2
11) (CRS(O)0−2N(R4041)、
12) (CRN(R40)ROR41
13) (CRN(R40)(CR0−6C(O)N(R4142
からなる群から選択され、
は−CH22であり、
、R、R及びR10は、
1) 水素、
2) ハロゲン、
3) NO
4) CN、
5) CR43=C(R4445)、
6) C=CR43
7) (CROR43
8) (CRN(R4344)、
9) (CRC(O)R43
10) (CRC(O)OR43
11) (CR43
12) (CRS(O)0−260
13) (CRS(O)0−2N(R4344)、
14) OS(O)0−260
15) N(R43)C(O)R44
16) N(R43)S(O)0−260
17) (CRN(R43)R60
18) (CRN(R43)R60OR44
19) (CRN(R43)(CRC(O)N(R4445)、
20) N(R43)(CR60
21) N(R43)(CRN(R4445)、及び
22) (CRC(O)N(R4344
から独立に選択され、
或いは、R及びRは独立に上で定義されたとおりであり、RとR10は、それらが結合している原子と一緒に環
【0015】
【化7】

(式中、RはC1−6アルキルである。)
を形成し、
、R、R、R、R、R、R、R、R、R、R及びRは、
1) 水素、
2) C−Cアルキル、
3) ハロゲン、
4) アリール、
5) R80
6) C−C10シクロアルキル、及び
7) OR
(前記アルキル、アリール及びシクロアルキルは非置換であり、Rで一置換されており、R及びR15で二置換されており、R、R15及びR16で三置換されており、又はR、R15、R16及びR17で四置換されている。)
からなる群から独立に選択され、
、R40、R41、R42、R43、R44、R45、R46、R47、R48、R49、R51、R52、R53及びR54は、
1) 水素、
2) C−Cアルキル、
3) C−C10シクロアルキル、
4) アリール、
5) R81
6) CF
7) C−Cアルケニル、及び
8) C−Cアルキニル
(前記アルキル、アリール及びシクロアルキルは非置換であり、R18で一置換され、R18及びR19で二置換され、R18、R19及びR20で三置換され、又はR18、R19、R20及びR21で四置換されている。)
からなる群から独立に選択され、
、R60、R61、R62及びR63は、
1) C−Cアルキル、
2) アリール、
3) R83、及び
4) C−C10シクロアルキル
(前記アルキル、アリール及びシクロアルキルは非置換であり、R26で一置換され、R26及びR27で二置換され、R26、R27及びR28で三置換され、又はR26、R27、R28及びR29で四置換されている。)
からなる群から独立に選択され、
、R15、R16、R17、R18、R19、R20、R21、R26、R27、R28及びR29は、
1) C−Cアルキル、
2) ハロゲン、
3) OR51
4) CF
5) アリール、
6) C−C10シクロアルキル、
7) R84
8) S(O)0−2N(R5152)、
9) C(O)OR51
10) C(O)R51
11) CN、
12) C(O)N(R5152)、
13) N(R51)C(O)R52
14) S(O)0−263
15) NO、及び
16) N(R5152
からなる群から独立に選択され、
22は、
1) OR53
2) SR53
3) S(O)0−2(R5354)、及び
4) S(O)0−262
からなる群から選択され、
80、R81、R83及びR84は、N、O及びSからなる群から選択される1、2又は3個のヘテロ原子環原子を有する3から6員環不飽和又は飽和単環式環並びにN、O又はSからなる群から選択される1、2、3又は4個のヘテロ原子環原子を有する9又は10員環不飽和又は飽和二環式環からなる非置換又は置換複素環の群から独立に選択され、
n、p、q、r及びsは独立に0、1、2、3、4、5又は6である。
【0016】
本発明の一化合物クラス又は薬剤として許容されるその塩において、
Aは、上記非置換又は置換フェニルから選択されるアリール環、或いはピリジン、ピリミジン、ピラジン、ピリダジン、インドール、ピロロピリジン、ベンズイミダゾール、ベンゾキサゾール、ベンゾチアゾール及びベンズオキサジアゾールからなる群から選択される上記非置換又は置換ヘテロアリール環であり、
、R、R及びR10は、
1) 水素、
2) ハロゲン、
3) OR43、及び
4) (CR43
からなる群から独立に選択され、
或いは、R及びRは独立に上で定義されたとおりであり、RとR10は、それらが結合している原子と一緒に環
【0017】
【化8】

(式中、RはC1−6アルキルである。)
を形成し、
は、
1) 水素、
2) (CR1−240
3) (CR1−2OR40
4) (CR1−2N(R4041)、
5) (CR1−2N(R40)C(O)OR41
6) (CR1−2N(R40)(CRN(R41)C(O)R49
7) (CR1−2C(O)OR40
8) (CR1−2N(R40)(CR1−341、及び
9) シクロプロピル
からなる群から選択される。
【0018】
前記化合物クラスの一サブクラス又は薬剤として許容されるその塩においては、R、R、R及びR10は、水素及び(CROR43からなる群から独立に選択される。
【0019】
前記化合物サブクラスの一グループ又は薬剤として許容されるその塩においては、Rは(CR40である。
【0020】
前記化合物グループの一サブグループ又は薬剤として許容されるその塩においては、Aは非置換アリール環である。
【0021】
前記化合物サブグループの一ファミリー又は薬剤として許容されるその塩においては、
は、−CHOCH、−CHOCHCF、−CHO(CHNH、−CHOH、−CHO(CHSOCH、−CHOC(CH、−CHOCHCH(OH)CHN(CH、−CHO(CHOCH、−CHO(CHO(CHOCH、−CHS(CHOH、−CHS(CHN(CH、−CHS(O)(CHOH、−CHSO(CHOH、
【0022】
【化9】

からなる群から選択される。
【0023】
好ましい実施態様は、
6−メトキシ−3−(メトキシメチル)−2−メチル−4−フェニルイソキノリン−1(2H)−オン、
6−メトキシ−2−メチル−4−フェニル−3−[(2,2,2−トリフルオロエトキシ)メチル]イソキノリン−1(2H)−オン、
(±)−6−メトキシ−2−メチル−4−フェニル−3−[(テトラヒドロフラン−3−イルオキシ)メチル]イソキノリン−1(2H)−オン、
2−{2−[(6−メトキシ−2−メチル−1−オキソ−4−フェニル−1,2−ジヒドロイソキノリン−3−イル)メトキシ]エチル}−1H−イソインドール−1,3(2H)−ジオン、
6−メトキシ−2−メチル−3−[(2−モルホリン−4−イルエトキシ)メチル]−4−フェニルイソキノリン−1(2H)−オン、
(±)−6−メトキシ−2−メチル−3−{[(1−メチルピペリジン−3−イル)オキシ]メチル}−4−フェニルイソキノリン−1(2H)−オン、
3−[(2−アミノエトキシ)メチル]−6−メトキシ−2−メチル−4−フェニルイソキノリン−1(2H)−オン、
6−メトキシ−2−メチル−4−フェニル−3−[(ピリジン−4−イルメトキシ)メチル]イソキノリン−1(2H)−オン、
6−メトキシ−2−メチル−3−{[2−(メチルスルホニル)エトキシ]メチル}−4−フェニルイソキノリン−1(2H)−オン、
3−(ヒドロキシメチル)−6−メトキシ−2−メチル−4−フェニルイソキノリン−1(2H)−オン、
6−メトキシ−3−{[(6−メトキシ−2−メチル−1−オキソ−4−フェニル−1,2−ジヒドロイソキノリン−3−イル)メトキシ]メチル}−2−メチル−4−フェニルイソキノリン−1(2H)−オン、
6−メトキシ−2−メチル−3−{[(1−オキシドピリジン−3−イル)オキシ]メチル}−4−フェニルイソキノリン−1(2H)−オン、
(±)−6−メトキシ−2−メチル−3−[(オキシラン−2−イルメトキシ)メチル]−4−フェニルイソキノリン−1(2H)−オン、
3−(tert−ブトキシメチル)−6−メトキシ−2−メチル−4−フェニルイソキノリン−1(2H)−オン、
(±)−3−[(2−ヒドロキシ−3−ピペリジン−1−イルプロポキシ)メチル]−6−メトキシ−2−メチル−4−フェニルイソキノリン−1(2H)−オン、
(±)−3−[(2−ヒドロキシ−3−モルホリン−4−イルプロポキシ)メチル]−6−メトキシ−2−メチル−4−フェニルイソキノリン−1(2H)−オン、
(±)−3−{[3−(ジメチルアミノ)−2−ヒドロキシプロポキシ]メチル}−6−メトキシ−2−メチル−4−フェニルイソキノリン−1(2H)−オン、
6−メトキシ−3−[(2−メトキシエトキシ)メチル]−2−メチル−4−フェニルイソキノリン−1(2H)−オン、
6−メトキシ−3−{[2−(2−メトキシエトキシ)エトキシ]メチル}−2−メチル−4−フェニルイソキノリン−1(2H)−オン、
3−{[(2−ヒドロキシエチル)チオ]メチル}−6−メトキシ−2−メチル−4−フェニルイソキノリン−1(2H)−オン、
3−{[(2−(ジメチルアミノ)エチル)チオ]メチル}−6−メトキシ−2−メチル−4−フェニルイソキノリン−1(2H)−オン、
(±)−3−{[(2−ヒドロキシエチル)スルフィニル]メチル}−6−メトキシ−2−メチル−4−フェニルイソキノリン−1(2H)−オン、及び
3−{[(2−ヒドロキシエチル)スルホニル]メチル}−6−メトキシ−2−メチル−4−フェニルイソキノリン−1(2H)−オン
からなる群から選択される化合物又は薬剤として許容されるその塩である。
【0024】
上記化合物は、下記Kv1.5アッセイの1つ以上において活性である。
【0025】
本発明の別の実施態様は、式Iの化合物のK1.5の阻害に有効な量を投与することを含む、哺乳動物における症状の治療又は予防がK1.5阻害によって実施又は促進される、治療又は予防方法である。
【0026】
好ましい実施態様は、式Iの化合物の治療有効量を投与することを含む、哺乳動物における心臓不整脈、例えば、心房細動、心房粗動、心房性不整脈及び上室性頻拍を治療又は予防する方法である。
【0027】
別の好ましい実施態様は、発作などの血栓塞栓性事象を予防する方法である。
【0028】
別の好ましい実施態様は、うっ血性心不全を予防する方法である。
【0029】
別の好ましい実施態様は、AIDSなどの免疫抑制又は免疫抑制を含めた障害、癌、老年痴呆、(創傷治癒、手術及び発作を含めた)外傷 慢性細菌感染、ある種の中枢神経系障害、及び器官又は組織の移植による抵抗、骨髄移植によって引き起こされる移植片対宿主病を含めた症状を治療又は予防する方法である。本発明の化合物を免疫抑制化合物と一緒に投与することによって免疫抑制を治療又は予防する方法は、この実施態様に含まれる。
【0030】
別の好ましい実施態様は、悪性度のより低い神経こう腫及びより高い神経こう腫、好ましくは悪性度のより高い神経こう腫を含めて、神経こう腫を治療又は予防する方法である。
【0031】
別の好ましい実施態様は、本発明の化合物を用いて患者を治療することを含む、患者と体格及び年齢特性が類似した個体に対して正常とみなせるリズムに相当するリズムを誘導する、心房細動患者における正常洞調律の状態を誘導する方法である。
【0032】
別の好ましい実施態様は、請求項1に記載の化合物と併せて、抗頻脈装置(例えば、除細動器又はペースメーカー)を用いて患者を治療することを含む、患者の頻脈(すなわち、速い心拍数、例えば、100回/分)を治療する方法である。
【0033】
本発明は、薬剤として許容される担体と式Iの化合物又は薬剤として許容されるその結晶形又は水和物とを含む薬剤も包含する。好ましい実施態様は、第2の薬剤をさらに含む式Iの化合物の薬剤組成物である。
【0034】
本発明の化合物は不斉中心又は対称軸を有することができ、本発明はその光学異性体及び混合物のすべてを含む。特に示さない限り、一方の異性体についての表記は両方の異性体に適用される。
【0035】
また、炭素−炭素二重結合を有する化合物は、Z型でもE型でも存在することができ、本化合物のすべての異性体が本発明に含まれる。
【0036】
特段の記載がある場合を除いて、本明細書では、「アルキル」は、全異性体を含めて、指定数の炭素原子を有する分岐鎖と直鎖の両方の飽和脂肪族炭化水素基を含むものとする。本明細書を通して、アルキル基の一般に使用される略語が使用される。例えば、メチルは「Me」又はCHと表すことができ、エチルは「Et」又はCHCHと表すことができ、プロピルは「Pr」又はCHCHCHと表すことができ、ブチルは「Bu」又はCHCHCHCHと表すことができる。例えば、「C1−6アルキル」(又は「C−Cアルキル」)は、全異性体を含めて、指定数の炭素原子を有する直鎖又は分岐鎖アルキル基を意味する。C1−6アルキルは、ヘキシルアルキル及びペンチルアルキル異性体のすべて、n−、イソ−、sec−及びt−ブチル、n−及びイソプロピル、エチル並びにメチルを含む。「C1−4アルキル」は、n−、イソ−、sec−及びt−ブチル、n−及びイソプロピル、エチル並びにメチルを意味する。「アルコキシ」という用語は、酸素架橋を介して結合する示された数の炭素原子の線状又は分枝アルキル基を表す。
【0037】
「アルケニル」という用語は、二重結合によって連結された少なくとも2個の炭素原子を含む、分岐鎖と直鎖の両方の不飽和炭化水素基を含む。アルケンのエチレンは、例えば、「CHCH」又は「HC=CH」と表される。例えば、「C2−5アルケニル」(又は「C−Cアルケニル」)は、2個から5個の炭素原子を有する直鎖又は分岐鎖アルケニル基を意味し、ペンテニル異性体のすべて、並びに1−ブテニル、2−ブテニル、3−ブテニル、1−プロペニル、2−プロペニル及びエテニル(又はエチレニル)を含む。「C2−3アルケニル」などの類似の用語も類似した意味を有する。
【0038】
「アルキニル」という用語は、三重結合によって連結された少なくとも2個の炭素原子を含む、分岐鎖と直鎖の両方の不飽和炭化水素基を含む。アルキンのアセチレンは、例えば、「CHCH」又は「HC≡CH」と表される。例えば、「C2−5アルキニル」(又は「C−Cアルキニル」)は、2個から5個の炭素原子を有する直鎖又は分岐鎖アルキニル基を意味し、ペンチニル異性体のすべて、並びに1−ブチニル、2−ブチニル、3−ブチニル、1−プロピニル、2−プロピニル及びエチニル(又はアセチレニル)を含む。「C2−3アルキニル」などの類似の用語も類似した意味を有する。
【0039】
他に断らない限り、アルキル、アルケニル及びアルキニル基は、非置換であり、又は各炭素原子上の1個から3個の置換基で、ハロ、C−C20アルキル、CF、NH、N(C−Cアルキル)、NO、オキソ、CN、N、−OH、−O(C−Cアルキル)、C−C10シクロアルキル、C−Cアルケニル、C−Cアルキニル、(C−Cアルキル)S(O)0−2、−(C−Cアルキル)S(O)0−2(C−Cアルキル)−、(C−Cアルキル)C(O)NH−、HN−C(NH)−、−O(C−Cアルキル)CF、(C−Cアルキル)C(O)−、(C−Cアルキル)OC(O)−、(C−Cアルキル)O(C−Cアルキル)−、(C−Cアルキル)C(O)1−2(C−Cアルキル)−、(C−Cアルキル)OC(O)NH−、アリール、アラルキル、複素環、ヘテロシクリルアルキル、ハロ−アリール、ハロ−アラルキル、ハロ−複素環、ハロ−ヘテロシクリルアルキル、シアノ−アリール、シアノ−アラルキル、シアノ−複素環及びシアノ−ヘテロシクリルアルキルで置換されている。
【0040】
「−C0−6アルキル−」などの表現に使用される「C」という用語は、直接的な共有結合を意味する。同様に、基中のある数の原子の存在を規定する整数が0であるときには、それに隣接する原子が結合によって直接的に連結されていることを意味する。
例えば、構造
【0041】
【化10】

(wは0、1又は2に等しい整数である)においては、wが0である構造は
【0042】
【化11】

である。
【0043】
「C3−8シクロアルキル」(又は「C−Cシクロアルキル」)という用語は、合計3個から8個の炭素原子を有するアルカン環(すなわち、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル又はシクロオクチル)を意味する。「C3−7シクロアルキル」、「C3−6シクロアルキル」、「C5−7シクロアルキル」などという用語は類似の意味を有する。
【0044】
「ハロゲン」(又は「ハロ」)という用語は、フッ素、塩素、臭素及びヨウ素(或いはフルオロ(F)、クロロ(Cl)、ブロモ(Br)及びヨード(I)とも呼ばれる)を指す。
【0045】
「C1−6ハロアルキル」(或いは、「C−Cハロアルキル」又は「ハロゲン化C−Cアルキル」と呼ばれることもある)という用語は、1個以上のハロゲン置換基を有する上記CからC線状又は分枝アルキル基を意味する。「C1−4ハロアルキル」という用語は類似の意味を有する。「C1−6フルオロアルキル」という用語は、ハロゲン置換基がフルオロに限定される以外は類似した意味を有する。適切なフルオロアルキルとしては、一連の(CH0−4CF(すなわち、トリフルオロメチル、2,2,2−トリフルオロエチル、3,3,3−トリフルオロ−n−プロピルなど)などが挙げられる。
【0046】
本明細書では、別段の記載がない限り、「炭素環」(及び「炭素環式」、「カルボシクリル」などのその変形)という用語は、(i)CからC単環式、飽和又は不飽和環、或いは(ii)CからC12二環式飽和又は不飽和環構造を指す。(ii)の各環は他方の環と独立であり又は縮合しており、各環は飽和又は不飽和である。炭素環は、分子の残部の任意の炭素原子に結合して、安定な化合物を生成することができる。縮合二環式炭素環は、炭素環の一サブセットである。すなわち、「縮合二環式炭素環」という用語は、一般に、各環が飽和又は不飽和であり2個の隣接炭素原子が環構造中の環の各々によって共有されるCからC10二環式環構造を指す。一方の環が飽和であり他方の環が飽和である縮合二環式炭素環は飽和二環式環構造である。一方の環がベンゼンであり他方の環が飽和である縮合二環式炭素環は不飽和二環式環構造である。一方の環がベンゼンであり他方の環が不飽和である縮合二環式炭素環は不飽和環構造である。飽和炭素環は、シクロアルキル環、例えば、シクロプロピル、シクロブチルなどとも称する。他に断らない限り、炭素環は、非置換であり、或いはC1−6アルキル、C1−6アルケニル、C1−6アルキニル、アリール、ハロゲン、NH又はOHで置換されている。縮合二環式不飽和炭素環の一サブセットは、一方の環がベンゼン環であり他方の環が飽和又は不飽和であり、安定な化合物を生成する任意の炭素原子を介して結合している二環式炭素環である。このサブセットの代表例としては以下のものが挙げられる。
【0047】
【化12】

【0048】
「アリール」という用語は、芳香族単環及び多環炭素環構造を指す。多環構造中の個々の炭素環は縮合しており、又は単結合によって互いに結合している。適切なアリール基としては、フェニル、ナフチル、ビフェニレニルなどが挙げられる。
【0049】
「複素環」(及び「複素環式」又は「ヘテロシクリル」などのその変形)という用語は、概して、(i)安定な4から8員環飽和又は不飽和単環式環、或いは(ii)安定な7から12員環二環式環構造を指す。(ii)の各環はそれ以外の環と独立であり又は縮合しており、各環は飽和又は不飽和である。単環式環又は二環式環構造は、N、O及びSから選択される1個以上のヘテロ原子(例えば、1個から6個のヘテロ原子又は1個から4個のヘテロ原子)と残りの炭素原子とを含む(単環式環は一般に少なくとも1個の炭素原子を含み、環構造は一般に少なくとも2個の炭素原子を含む)。窒素及び硫黄ヘテロ原子の任意の1個以上は場合によっては酸化されていてもよく、窒素ヘテロ原子の任意の1個以上は場合によっては第四級であってもよい。複素環は、結合によって安定な構造が生成されることを前提に、任意のヘテロ原子又は炭素原子において結合することができる。複素環が置換基を有するときには、その置換基は、安定な化学構造が生成されることを前提に、ヘテロ原子でも炭素原子でも環中の任意の原子に結合することができることを理解されたい。
【0050】
本明細書では、「置換C−C10シクロアルキル」、「置換アリール」及び「置換複素環」という用語は、化合物の残部に対する結合点に加えて1個から3個の置換基を含む環式基を含むものとする。置換基は、これらだけに限定されないが、ハロ、C−C20アルキル、CF、NH、N(C−Cアルキル)、NO、オキソ、CN、N、−OH、−O(C−Cアルキル)、C−C10シクロアルキル、C−Cアルケニル、C−Cアルキニル、(C−Cアルキル)S(O)0−2−、(C−Cアルキル)S(O)0−2(C−Cアルキル)−、(C−Cアルキル)C(O)NH−、HN−C(NH)−、−O(C−Cアルキル)CF、(C−Cアルキル)C(O)−、(C−Cアルキル)OC(O)−、(C−Cアルキル)O(C−Cアルキル)−、(C−Cアルキル)C(O)1−2(C−Cアルキル)−、(C−Cアルキル)OC(O)NH−、アリール、アラルキル、ヘテロアリール、ヘテロシクリルアルキル、ハロ−アリール、ハロ−アラルキル、ハロ−複素環、ハロ−ヘテロシクリルアルキル、シアノ−アリール、シアノ−アラルキル、シアノ−複素環及びシアノ−ヘテロシクリルアルキルを含む群から選択されることが好ましい。
【0051】
飽和複素環式は複素環の一サブセットを形成する。すなわち、「飽和複素環式」という用語は、一般に、(単環でも多環式でも)環構造全体が飽和である上記複素環を指す。「飽和複素環」という用語は、炭素原子とN、O及びSから選択される1個以上のヘテロ原子とからなる4から8員環飽和単環式環又は安定な7から12員環二環式環構造を指す。代表例としては、ピペリジニル、ピペラジニル、アゼパニル、ピロリジニル、ピラゾリジニル、イミダゾリジニル、オキサゾリジニル、イソキサゾリジニル、モルホリニル、チオモルホリニル、チアゾリジニル、イソチアゾリジニル及びテトラヒドロフリル(又はテトラヒドロフラニル)が挙げられる。
【0052】
複素環式芳香族は、複素環の別のサブセットを形成する。すなわち、「複素環式芳香族」(又は「ヘテロアリール」)という用語は、一般に、(単環でも多環式でも)環構造全体が芳香族環構造である上記複素環を指す。「芳香族複素環」という用語は、炭素原子とN、O及びSから選択される1個以上のヘテロ原子とからなる5又は6員環単環式芳香環或いは7から12員環二環式環を指す。芳香族複素環の代表例としては、ピリジル、ピロリル、ピラジニル、ピリミジニル、ピリダジニル、チエニル(又はチオフェニル)、チアゾリル、フラニル、イミダゾリル、ピラゾリル、トリアゾリル、テトラゾリル、オキサゾリル、イソキサゾリル、オキサジアゾリル、チアゾリル、イソチアゾリル、チアジアゾリルが挙げられる。
【0053】
二環式複素環の代表例としては、ベンゾトリアゾリル、インドリル、イソインドリル、インダゾリル、インドリニル、イソインドリニル、キノキサリニル、キナゾリニル、シンノリニル、クロマニル、イソクロマニル、テトラヒドロキノリニル、キノリニル、テトラヒドロイソキノリニル、イソキノリニル、2,3−ジヒドロベンゾフラニル、2,3−ジヒドロベンゾ−1,4−ジオキシニル(すなわち、
【0054】
【化13】

)、イミダゾ(2,1−b)(1,3)チアゾール、(すなわち、
【0055】
【化14】

)及びベンゾ−1,3−ジオキソリル(すなわち、
【0056】
【化15】

)が挙げられる。本明細書におけるある状況においては、
【0057】
【化16】

は、2個の隣接炭素原子に結合したメチレンジオキシを置換基として有するフェニルと別称される。
【0058】
特段の記載がない限り、「不飽和」環は部分不飽和環又は完全不飽和環である。例えば、「不飽和単環式C炭素環」は、シクロヘキセン、シクロヘキサジエン及びベンゼンを指す。
【0059】
特段の記載がない限り、本明細書に引用されるすべての範囲は両端を含むものである。例えば、「1個から4個のヘテロ原子」を含むと記述される複素環は、複素環が1、2、3又は4個のヘテロ原子を含むことができることを意味する。
【0060】
任意の可変要素が、本発明の化合物を描き記述する任意の構成要素又は任意の式において2回以上現れるときには、各出現のその定義は、他のすべての出現におけるその定義とは無関係である。また、置換基及び/又は可変要素の組み合わせは、かかる組み合わせによって安定な化合物が生成する場合にのみ許容される。
【0061】
(例えば、「1個以上の置換基で場合によっては置換されていてもよいアリール...」のように)「置換」という用語は、指定された置換基による一置換及び多置換を、かかる単一及び(同じ部位における多置換を含めて)複数の置換が化学的に許容される程度に含む。
【0062】
ピリジルN−酸化物部分を有する本発明の化合物においては、ピリジルN−酸化物部分は、
【0063】
【化17】

などの従来の表現を用いて構造的に描かれる。これらは、同じ意味を有する。
【0064】
用語が繰り返され、可変の定義を含む用語、例えば、rが整数2であり、Rが定義済みの変数であり、Rが定義済みの可変要素である(CRでは、Rの値はそれが出現するごとに異なることができ、Rの値はそれが出現するごとに異なることができる。例えば、R及びRが、メチル、エチル、プロピル及びブチルからなる群から独立に選択される場合、(CRは、
【0065】
【化18】

とすることができる。
【0066】
薬剤として許容される塩としては、金属(無機)塩と有機塩の両方が挙げられる。その一覧はRemington’s Pharmaceutical Sciences、17th Edition、pg.1418(1985)にある。適切な塩の形が、物理的及び化学的安定性、流動性、吸湿性(hydro−scopicity)並びに溶解性に基づいて選択されることは当業者に周知である。当業者には理解されるように、薬剤として許容される塩としては、塩酸塩、硫酸塩、リン酸塩、二リン酸塩、臭化水素酸塩、硝酸塩などの無機酸の塩、又はリンゴ酸塩、マレイン酸塩、フマル酸塩、酒石酸塩、コハク酸塩、クエン酸塩、酢酸塩、乳酸塩、メタンスルホン酸塩、p−トルエンスルホン酸塩又はパルモアート(palmoate)、サリチル酸塩、ステアリン酸塩などの有機酸の塩などが挙げられるが、これらだけに限定されない。同様に薬剤として許容される陽イオンとしては、ナトリウム、カリウム、カルシウム、アルミニウム、リチウム、アンモニウム(特に、第二級アミンとのアンモニウム塩)などが挙げられるが、これらだけに限定されない。上記理由のため、本発明の好ましい塩としては、カリウム、ナトリウム、カルシウム、アンモニウム塩などが挙げられる。式Iの化合物の結晶形、水和物及び溶媒和化合物も本発明の範囲内に含まれる。
【0067】
本発明の化合物を調製する方法を以下のスキームに示す。ここで、可変要素R、R、R53及びR62は上で定義したとおりであり、可変要素Rは、Aが置換アリール環であるときに、可能な置換基として上記置換基の群から選択される置換基である。他の合成プロトコルは、当業者には容易に明らかになるはずである。
スキーム1
【0068】
【化19】


【0069】
以下の実施例は、式Iの化合物の調製を説明するものであって、添付された特許請求の範囲に記載された本発明を限定するものと解釈すべきではない。
【実施例1】
【0070】
6−メトキシ−3−(メトキシメチル)−2−メチル−4−フェニルイソキノリン−1(2H)−オン
【0071】
【化20】

【0072】
段階A:3−(ブロモメチル)−6−メトキシ−2−メチル−4−フェニルイソキノリン−1(2H)−オン
標記化合物は、国際公開第02/24655号に報告された合成手順を用いて調製された。
【0073】
段階B:6−メトキシ−3−(メトキシメチル)−2−メチル−4−フェニルイソキノリン−1(2H)−オン
メタノール(0.057mL、1.40mmol)の2mLジメチルホルムアミド溶液に水素化ナトリウム(45mg、60%鉱物油分散、1.11mmol)を添加した。10分後、3−(ブロモメチル)−6−メトキシ−2−メチル−4−フェニルイソキノリン−1(2H)−オンを添加した(100mg、0.279mmol)。30分後、反応混合物を0℃に冷却し、飽和NaHCO溶液1mLでクエンチした。その混合物をEtOAcと飽和NaHCO溶液に分配し、有機層を塩水で洗浄し、NaSOを用いて脱水し、ろ過し、減圧濃縮した。その粗製残渣をフラッシュクロマトグラフィーにかけSiO(50%EtOAc/へキサン)に通して精製して白色固体の標記生成物を得た。H−NMR(500MHz、CDCl) δ 8.43(d、J=9.0Hz、1H)、7.44−7.50(m、3H)、7.29−7.31(m、2H)、6.91(dd、J=9.0、2.5Hz、1H)、6.42(d、J=2.5Hz、1H)、4.18(s、2H)、3.75、(s、3H)、3.69(s、3H)、3.24(s、3H) ppm. ESI+ MS:310.23[M+H]
【実施例2】
【0074】
6−メトキシ−2−メチル−4−フェニル−3−[(2,2,2−トリフルオロエトキシ)メチル]イソキノリン−1(2H)−オン
【0075】
【化21】

【0076】
実施例1の段階Bに記載の手順に従って、メタノールを2,2,2−トリフルオロエタノールで置換して標記化合物を得た。生成物のプロトンNMRは標記化合物と一致した。HRMS(ES) C2018NO(M+H)に対して計算される正確な質量:378.1312。実測値378.1316。
【実施例3】
【0077】
(±)−6−メトキシ−2−メチル−4−フェニル−3−[(テトラヒドロフラン−3−イルオキシ)メチル]イソキノリン−1(2H)−オン
【0078】
【化22】

【0079】
実施例1の段階Bに記載の手順に従って、メタノールを(±)−3−ヒドロキシテトラヒドロフランで置換して標記化合物を得た。生成物のプロトンNMRは標記化合物と一致した。HRMS(ES) C2224NO(M+H)に対して計算される正確な質量:366.1699。実測値366.1719。
【実施例4】
【0080】
2−{2−[(6−メトキシ−2−メチル−1−オキソ−4−フェニル−1,2−ジヒドロイソキノリン−3−イル)メトキシ]エチル}−1H−イソインドール−1,3(2H)−ジオン
【0081】
【化23】

【0082】
実施例1の段階Bに記載の手順に従って、メタノールをN−(2−ヒドロキシエチル)フタルイミドで置換して標記化合物を得た。生成物のプロトンNMRは標記化合物と一致した。HRMS(ES) C2824(M+H)に対して計算される正確な質量:469.1758。実測値469.1753。
【実施例5】
【0083】
6−メトキシ−2−メチル−3−[(2−モルホリン−4−イルエトキシ)メチル]−4−フェニルイソキノリン−1(2H)−オン塩酸塩
【0084】
【化24】

【0085】
実施例1の段階Bに記載の手順に従って、メタノールをN−(2−ヒドロキシエチル)モルホリンで置換して標記化合物を得た。生成物をジクロロメタンにとり、過剰のエーテルHClで処理し、減圧濃縮してオフホワイト泡状のHCl塩を得た。H−NMR(500MHz、CDCl) δ 8.44(d、J=9.0Hz、1H)、7.46−7.53(m、3H)、7.26(br d、J=8Hz、2H)、7.08(dd、J=8、8,2.5Hz、1H)、6.38(d、J=2.5Hz、1H)、4.34(s、2H)、4.25(br t、J=12Hz、2H)、3.90−3.97(m、4H)、3.73、(s、3H)、3.69(s、3H)、3.42(m、2H)、3.13(m、2H)、2.93(m、2H) ppm. HRMS(ES) C2428Na(M+Na)に対して計算される正確な質量:431.1941。実測値431.1934。
【実施例6】
【0086】
(±)−6−メトキシ−2−メチル−3−{[(1−メチルピペリジン−3−イル)オキシ]メチル}−4−フェニルイソキノリン−1(2H)−オン塩酸塩
【0087】
【化25】

【0088】
実施例1の段階Bに記載の手順に従って、メタノールを(±)−N−メチル−3−ヒドロキシピペリジンで置換して標記化合物を得た。生成物をジクロロメタンにとり、過剰のエーテルHClで処理し、減圧濃縮してオフホワイト泡状のHCl塩を得た。生成物のプロトンNMRは標記化合物と一致した。HRMS(ES) C2428(M+H)に対して計算される正確な質量:415.1992。実測値415.1980。
【実施例7】
【0089】
3−[(2−アミノエトキシ)メチル]−6−メトキシ−2−メチル−4−フェニルイソキノリン−1(2H)−オン塩酸塩
【0090】
【化26】

【0091】
2−{2−[(6−メトキシ−2−メチル−1−オキソ−4−フェニル−1,2−ジヒドロイソキノリン−3−イル)メトキシ]エチル}−1H−イソインドール−1,3(2H)−ジオン(47mg、0.10mmol)の5mLエタノール溶液にヒドラジン(0.472mL、15.0mmol)を添加した。その溶液を60℃で45分間撹拌した。その混合物を室温に冷却後、EtOAcと飽和NaHCO溶液に分配し、有機層を飽和NaHCO溶液及び塩水で洗浄し、NaSOを用いて脱水し、ろ過し、減圧濃縮した。得られた生成物をジクロロメタンにとり、過剰のエーテルHClで処理し、減圧濃縮して淡黄色泡状のHCl塩を得た。生成物のプロトンNMRは標記化合物と一致した。HRMS(ES) C2022(M+H)に対して計算される正確な質量:339.1703。実測値339.1707。
【実施例8】
【0092】
6−メトキシ−2−メチル−4−フェニル−3−[(ピリジン−4−イルメトキシ)メチル]イソキノリン−1(2H)−オン塩酸塩
【0093】
【化27】

【0094】
実施例1の段階Bに記載の手順に従って、メタノールを4−(ヒドロキシメチル)ピリジンで置換して標記化合物を得た。生成物をジクロロメタンにとり、過剰のエーテルHClで処理し、減圧濃縮して白色泡状のHCl塩を得た。H−NMR(500MHz、CDCl) δ 8.67(br d、J=7.8Hz、2H)、8.45(d、J=9.0Hz、1H)、7.75(br d、J=5.9Hz、2H)、7.46−7.49(m、3H)、7.26−7.29(m、2H)、7.10(dd、J=9.1、2.5Hz、1H)、6.40(d、J=2.5Hz、1H)、4.65(s、2H)、4.52(s、2H)、3.80、(s、3H)、3.70(s、3H)、ppm. HRMS(ES) C2423(M+H)に対して計算される正確な質量:387.1703。実測値387.1699。
【実施例9】
【0095】
6−メトキシ−2−メチル−3−{[2−(メチルスルホニル)エトキシ]メチル}−4−フェニルイソキノリン−1(2H)−オン
【0096】
【化28】

【0097】
実施例1の段階Bに記載の手順に従って、メタノールを(2−ヒドロキシエチル)メチルスルホンで置換して標記化合物を得た。HRMS(ES) C2124NOS(M+H)に対して計算される正確な質量:402.1370。実測値402.1371。
【実施例10】
【0098】
3−(ヒドロキシメチル)−6−メトキシ−2−メチル−4−フェニルイソキノリン−1(2H)−オン
【0099】
【化29】

【0100】
標記生成物は実施例9に記載の反応物から単離された。HRMS(ES) C1817NO(M+H)に対して計算される正確な質量:295.1208。実測値295.1204。
【実施例11】
【0101】
6−メトキシ−3−{[(6−メトキシ−2−メチル−1−オキソ−4−フェニル−1,2−ジヒドロイソキノリン−3−イル)メトキシ]メチル}−2−メチル−4−フェニルイソキノリン−1(2H)−オン
【0102】
【化30】

【0103】
標記生成物は実施例9に記載の反応物から単離された。HRMS(ES) C3633(M+H)に対して計算される正確な質量:573.2384。実測値573.2377。
【実施例12】
【0104】
6−メトキシ−2−メチル−3−{[(1−オキシドピリジン−3−イル)オキシ]メチル}−4−フェニルイソキノリン−1(2H)−オン
【0105】
【化31】

【0106】
実施例1の段階Bに記載の手順に従って、メタノールを3−ヒドロキシピリジン−N−酸化物で置換して標記化合物を得た。生成物のプロトンNMRは標記化合物と一致した。HRMS(ES) C2321(M+H)に対して計算される正確な質量:389.1496。実測値389.1495。
【実施例13】
【0107】
(±)−6−メトキシ−2−メチル−3−[(オキシラン−2−イルメトキシ)メチル]−4−フェニルイソキノリン−1(2H)−オン、
【0108】
【化32】

【0109】
実施例1の段階Bに記載の手順に従って、メタノールを(±)−グリシドールで置換して標記化合物を得た。生成物のプロトンNMRは標記化合物と一致した。HRMS(ES) C2121NO(M+H)に対して計算される正確な質量:352.1544。実測値352.1548。
【実施例14】
【0110】
3−(tert−ブトキシメチル)−6−メトキシ−2−メチル−4−フェニルイソキノリン−1(2H)−オン
【0111】
【化33】

【0112】
実施例1の段階Bに記載の手順に従って、メタノールを2−メチル−2−プロパノールで置換して標記化合物を得た。HRMS(ES) C2225NO(M+H)に対して計算される正確な質量:352.1907。実測値352.1873。
【実施例15】
【0113】
(±)−3−[(2−ヒドロキシ−3−ピペリジン−1−イルプロポキシ)メチル]−6−メトキシ−2−メチル−4−フェニルイソキノリン−1(2H)−オン塩酸塩
【0114】
【化34】

【0115】
(±)−6−メトキシ−2−メチル−3−[(オキシラン−2−イルメトキシ)メチル]−4−フェニルイソキノリン−1(2H)−オン(48.0mg、0.137mmol)の2mLイソプロパノール溶液にピペリジン(0.041mL、0.41mmol)を添加した。その溶液を60℃で4時間撹拌した。その混合物を室温に冷却後、EtOAcと飽和NaHCO溶液に分配し、有機層を塩水で洗浄し、NaSOを用いて脱水し、ろ過し、減圧濃縮した。得られた生成物をジクロロメタンにとり、過剰のエーテルHClで処理し、減圧濃縮して白色固体のHCl塩を得た。H−NMR(500MHz、CDCl3) δ 8.42(d、J=8.8Hz、1H)、7.45−7.49(m、3H)、7.27−7.31(m、2H)、7.05(dd、J=8.8、2.4Hz、1H)、6.41(d、J=2.4Hz、1H)、4.33(d、J=12.2Hz、1H)、4.32(d、J=12.2Hz、1H)、3.81(m、1H)、3.77、(s、3H)、3.68(s、3H)、3.32(m、2H)、2.58(m、2H)、2.30−2.37(m、4H)、1.56−1.61(4H)、1.45(m、2H) ppm. HRMS(ES) C2632(M+H)に対して計算される正確な質量:437.2435。実測値437.2449。
【実施例16】
【0116】
(±)−3−[(2−ヒドロキシ−3−モルホリン−4−イルプロポキシ)メチル]−6−メトキシ−2−メチル−4−フェニルイソキノリン−1(2H)−オン塩酸塩
【0117】
【化35】

【0118】
実施例15に記載の手順に従って、ピペリジンをモルホリンで置換して標記化合物を得た。生成物のプロトンNMRは標記化合物と一致した。HRMS(ES) C2530(M+H)に対して計算される正確な質量:439.2228。実測値439.2237。
【実施例17】
【0119】
(±)−3−{[3−(ジメチルアミノ)−2−ヒドロキシプロポキシ]メチル}−6−メトキシ−2−メチル−4−フェニルイソキノリン−1(2H)−オン塩酸塩
【0120】
【化36】

【0121】
実施例15に記載の手順に従って、ピペリジンをジメチルアミン塩酸塩(5当量)とトリエチルアミン(5当量)で置換し、フラッシュクロマトグラフィーにかけSiO(5%MeOH/CHCl)に通して精製して標記化合物を得た。HRMS(ES) C2328(M+H)に対して計算される正確な質量:397.2122。実測値397.2097。
【実施例18】
【0122】
6−メトキシ−3−[(2−メトキシエトキシ)メチル]−2−メチル−4−フェニルイソキノリン−1(2H)−オン
【0123】
【化37】

【0124】
実施例1の段階Bに記載の手順に従って、メタノールを2−メトキシエタノールで置換して標記化合物を得た。生成物のプロトンNMRは標記化合物と一致した。HRMS(ES) C2123NO(M+H)に対して計算される正確な質量:354.1700。実測値354.1711。
【実施例19】
【0125】
6−メトキシ−3−{[2−(2−メトキシエトキシ)エトキシ]メチル}−2−メチル−4−フェニルイソキノリン−1(2H)−オン
【0126】
【化38】

【0127】
実施例1の段階Bに記載の手順に従って、メタノールを2−[2−メトキシ)エトキシ]エタノールで置換して標記化合物を得た。生成物のプロトンNMRは標記化合物と一致した。HRMS(ES) C2327NO(M+H)に対して計算される正確な質量:398.1962。実測値398.1976。
【実施例20】
【0128】
3−{[(2−ヒドロキシエチル)チオ]メチル}−6−メトキシ−2−メチル−4−フェニルイソキノリン−1(2H)−オン
【0129】
【化39】

【0130】
3−(ブロモメチル)−6−メトキシ−2−メチル−4−フェニルイソキノリン−1(2H)−オン(125mg、0.349mmol)の5mLジメチルホルムアミド溶液に2−ヒドロキシエタンチオール(0.027mL、0.38mmol)及び炭酸セシウム(227mg、0.698mmol)を添加した。1時間後、反応混合物をEtOAcと水に分配し、有機層を塩水で洗浄し、NaSOを用いて脱水し、ろ過し、減圧濃縮した。その粗製残渣をEtOAc/へキサンから再結晶させて精製して標記生成物を得た。H−NMR(500MHz、CDCl) δ 8.41(d、J=9.0Hz、1H)、7.45−7.54(m、3H)、7.34−7.36(m、2H)、7.04(dd、J=9.0、2.5Hz、1H)、6.35(d、J=2.5Hz、1H)、3.83、(s、3H)、3.68(s、3H)、3.63(s、2H)、3.41(m、2H)、2.58(t、J=5.6Hz、2H) ppm. ESI+ MS:356.14[M+H]
【実施例21】
【0131】
3−{[(2−(ジメチルアミノ)エチル)チオ]メチル}−6−メトキシ−2−メチル−4−フェニルイソキノリン−1(2H)−オントリフルオロアセタート
【0132】
【化40】

【0133】
実施例20に記載の手順に従って、2−ヒドロキシエタンチオールを2−(ジメチルアミノ)エタンチオールで置換し、分取逆相HPLCによって精製して白色固体の標記化合物を得た。生成物のプロトンNMRは標記化合物と一致した。ESI+ MS:383.17[M+H]
【実施例22】
【0134】
(±)−3−{[(2−ヒドロキシエチル)スルフィニル]メチル}−6−メトキシ−2−メチル−4−フェニルイソキノリン−1(2H)−オン
【0135】
【化41】

【0136】
3−{[(2−ヒドロキシエチル)チオ]メチル}−6−メトキシ−2−メチル−4−フェニルイソキノリン−1(2H)−オン(31mg、0.087mmol)の2mLジクロロメタン溶液にメタ−クロロ過安息香酸(16mg、0.091mmol)を0℃で添加した。15分後、反応混合物をEtOAcと2M Na溶液に分配し、有機層を飽和NaHCO溶液及び塩水で洗浄し、NaSOを用いて脱水し、ろ過し、減圧濃縮した。その粗製残渣を分取逆相HPLCによって精製して標記生成物を得た。H−NMR(500MHz、CDCl) δ 8.43(d、J=9.0Hz、1H)、7.44−7.55(m、3H)、7.33(br d、J=8Hz、2H)、7.06(dd、J=8.8、2.4Hz、1H)、6.33(d、J=2.4Hz、1H)、4.28(d、J=13.9Hz、1H)、3.98(d、J=13.9Hz、1H)、3.96−4.04(m、2H)、3.84、(s、3H)、3.68(s、3H)、2.85(m、1H)、2.70(m、1H)、ppm. ESI+ MS:372.19[M+H]
【実施例23】
【0137】
3−{[(2−ヒドロキシエチル)スルホニル]メチル}−6−メトキシ−2−メチル−4−フェニルイソキノリン−1(2H)−オン
【0138】
【化42】

【0139】
実施例22に記載の手順に従って、メタ−クロロ過安息香酸3.2当量を用い、反応物を3時間撹拌し、フラッシュクロマトグラフィー(50から100%EtOAc/へキサン)によって精製して白色固体の標記化合物を得た。生成物のプロトンNMRは標記化合物と一致した。ESI+ MS:388.1[M+H]
【0140】
下記方法を用いて、本発明の代表的化合物が評価され、Kv1.5アッセイにおいて活性を示すことが見出された。これによって、Kv1.5阻害剤及び抗不整脈薬としての本発明の化合物の有用性が実証され確認された。このタイプの化合物は、順方向の速度依存性を示し、脱分極又は心拍数が速いほど外向きK電流をより大きく又は優先的に遮断することができる。かかる化合物は、以下に示す電気生理学的研究において特定することができた。例えば、周波数1Hz及び3Hzで送達された一連の脱分極中に、3Hzで10秒間に観測される遮断量が1Hzにおけるそれよりも大きい場合に、その遮断は「速度依存性」である。Kv1.5遮断薬は使用依存性を示すこともあり、外向きK電流の遮断は使用と共に、又は心臓細胞の脱分極を繰り返すうちに増加する。遮断の使用依存性は、所与の速度又は周波数の一連又は一続きのパルス又は脱分極における連続的な各脱分極と共により大きくなる。例えば、周波数1Hzにおける一連の10回の脱分極中に、10回目のパルスの遮断量がその一連のパルスよりも大きい場合にはその遮断は「使用依存性」である。Kv1.5遮断薬は、使用依存性と速度依存性の両方を示すこともある。
【0141】
Kv1.5遮断薬は、ヒト、ラット、マウス、イヌ、サル、フェレット、ウサギ、モルモット又はヤギを含めて、ただしこれらだけに限定されないさまざまな種からの心筋細胞又は他の組織を用いた自然のIKurの電気生理学的研究によって特定することもできる。自然の組織において、Kv1.5は、ホモオリゴマー又はヘテロオリゴマーとして他のKvファミリーメンバーと一緒に存在することができ、又はβ−サブユニットとの複合体として存在することができる。本発明の化合物は、Kv1.5ホモ又はヘテロオリゴマー或いはβ−サブユニットとの複合体のKv1.5を遮断することができる。
【0142】
Kv1.5アッセイ
ハイスループットKv1.5平面パッチクランプアッセイは、系統的な一次スクリーニングである。このアッセイは、活性を確認し、Kv1.5カリウムチャネルに特異的な影響を及ぼす薬剤の効力の機能的な程度を与える。Kiss等(Assay and Drug Dev. Tech.、1(1−2):127−135、2003)及びSchroeder等(J. of Biomol. Screen.、8(1);50−64、2003)は、Kv1.5及び他の電位開口型イオンチャネルにこの装置を使用することを記載している。
【0143】
ヒトの心臓からクローン化され、ヒトKv1.5カリウムチャネルアルファサブユニットを安定に発現するチャイニーズハムスター卵巣細胞(CHO)は、10%FBS、100U/mlペニシリン、100μg/mlストレプトマイシン、1000μg/ml G−418硫酸塩が補充されたHam’s F12培地中で90から100%コンフルエントまで増殖される。細胞はVerseneで処理され継代培養されて、次いでリン酸緩衝食塩水(PBS)中に懸濁され、遠心分離される。細胞ペレットはPBSに再懸濁され、生成した懸濁液はIonWorks(商標)HT装置の細胞貯蔵器に入れられる。
【0144】
電気生理学的記録は、グルコン酸K 100、KCl 40、MgCl 3.2、EGTA 3、N−2−ヒドロキシルエチルピペラジン−N−2−エタンスルホン酸(HEPES)5(mM)を含み、pH7.3に調節された細胞内液を用いて実施される。アンホテリシン(Sigma)は、30mg/ml原液として調製され、0.1mg/mlの内部緩衝溶液の最終作用濃度に希釈される。外部溶液はダルベッコPBS(Invitrogen)であり、CaCl 0.90、KCl 2.67、KPO 1.47、MgCl 0.50、NaCl 138、NaPO 8.10(mM)を含み、pH7.4である。すべての化合物は10mM DMSO原液溶液として調製される。化合物は外部緩衝剤で希釈され、次いで実験中に薬物プレートからPatchplateに移される(最終DMSO濃度<0.66%vol.)。
【0145】
Kv1.5イオン電流は室温で記録される。膜電流は増幅(RMS約10pA)され、10kHzでサンプリングされる。漏洩の減算は、試験パルス前に160ms過分極(10mV)前パルス200msを印加して漏洩コンダクタンスを測定することによってすべての実験で実施された。パッチクランプ刺激プロトコルは以下のとおりである。
【0146】
1. Patchplateウェルに外部緩衝剤3.5μLを充填する。
2. 平面マイクロピペットホール抵抗(Rp)は、10mV、160msの電位差を各穴に印加することによって測定される(ホール試験)。
3. 細胞をピペットによりPatchplateに移し、各Patchplateウェルの底に1から2μmの穴を有する高抵抗シールを形成する。シール試験スキャンは、シールを形成した細胞を有するPatchplateウェルの個数を測定するために実施される。
4. 細胞への導通を確保するために、アンホテリシンを含む細胞内液をPatchplateの底部側に4分間循環させる。
5. 化合物添加前試験パルスをPatchplateの各ウェルに印加する。プロトコル:細胞は、膜保持電位−80mVで15秒間電位固定される。続いて、5Hz連続刺激(stimulus train)(+40mVへの27回の150ms脱分極)がかけられる。+40mVへの段階的な膜電位によって、外向き(正)のイオン電流が誘起される。
6. 化合物をPatchplateの各ウェルに添加する化合物を5分間インキュベートする。
7. 化合物添加後試験パルスプロトコルを適用する。プロトコル:細胞は、膜保持電位−80mVで15秒間電位固定される。続いて、5Hz連続刺激(+40mVへの27回の150ms脱分極)がかけられる。
【0147】
データ分析はオフラインで実施される。薬物添加前と薬物添加後の一対比較法を使用して各化合物の阻害効果が求められる。(連続した5Hzにおける)+40mVへの27回目の脱分極中のピーク制御電流の%阻害を拮抗物質濃度の関数としてプロットする。電流を50%阻害するのに必要な薬物濃度(IC50)は、濃度応答データにヒルの式をあてはめて求められる:制御%=100×(1+([薬物]/IC50−1
【0148】
各細胞に対して、4つの算術量が得られる。
【0149】
1) シール抵抗
2) ベースライン計量値(+40mVへの1回目の脱分極前の−70mVにおける5から45msの平均電流)
3) 電流ランナップ計量値(+40mVへの1回目の脱分極中の化合物前(pre−compound)平均電流振幅 − +40mVへの27回目の脱分極中の化合物前平均電流振幅)
4) ピーク電流(連続した5Hz中の+40mVへの27回目の脱分極中の最大電流振幅)。
【0150】
すべての計量値は、化合物添加前及び化合物添加後の追跡中に得られる。以下の場合、細胞はさらなる分析から除外される。
【0151】
1) シール抵抗が<50MΩである。
2) 化合物前中のベースライン計量値が>±100pAである。
3) 電流ランナップ計量値が>−0.2nAである。
4) 先読み(pre−read)ピーク計量値が<400pAである。
【0152】
上記化合物は、上記ハイスループットKv1.5平面パッチクランプアッセイにおいて33μM以下の濃度で≧20%阻害を示す。
【0153】
原子吸光分析プロトコル:
このアッセイは、フレーム原子吸光分析(FAAS)を用いてRb流出によって測定して、CHO細胞中で異種的に発現されるヒトKv1.5 K+チャネルを特異的に遮断する薬剤を特定する。イオンチャネル活性を測定するためにFAASを適用することはTerstappen等、Anal. Biochem.、272:149−155、1999から応用された。
【0154】
ヒトKv1.5を発現するCHO細胞は、上述したように培養され、次いでトリプシン−EDTAを用いて収集され、培地で洗浄される。
【0155】
1. 40,000細胞/ウェルを96ウェル細胞培養プレート(アッセイプレート)に蒔き、細胞を37℃で48時間増殖させる。
2. 培地を除去し、Rb Load Buffer(Aurora Biomed、Vancouver、BC)200μLを5%CO下37℃で3時間添加する。
3. 細胞をハンクス液(HBSS)200μLで5回洗浄し、続いて試験化合物又は0.5%DMSOを含むHBSS 100μLを添加する。
4. 10分後、140mM KClを含むHEPES緩衝食塩水100μLを添加し、プレートを静かに振とうしながら室温で5分間インキュベートする。
5. その直後、上清150μlを新しい96ウェルプレートに移し、残留上清を吸引する。
6. Cell Lysis Buffer(Aurora Biomed、Vancouver、BC)120μlをアッセイプレートに添加し、分析前に10分間振とうする。
7. ICR−8000自動AAS装置(Aurora Biomed、Vancouver、BC)を用いて上清(SUP)及び溶解物(LYS)の試料中のRb含量を測定する。
%FLUX=100%*(SUP/(LYS+SUP))。%INH=100%*(1−(A−B)/(C−B))。式中、Aは試験化合物の存在下での%FLUXであり、Bは10mM塩化(6−メトキシ−2−メチル−1−オキソ−4−フェニル−1,2−ジヒドロイソキノリン−3−イル)−N,N−ジメチルメタンアミニウムの存在下での%FLUXであり、Cは0.25%DMSOの存在下での%FLUXである。
【0156】
上記化合物は、上記AASアッセイにおいて25μM以下の濃度で≧25%阻害を示す。
【0157】
本発明の化合物は、活性成分化合物を温血動物の体内の作用部位と接触させる任意の手段によって、本発明に従って苦痛、疾患及び疾病の治療又は予防のために投与することができる。例えば、投与は、経口、(経皮を含めた)局所、眼球、頬、鼻腔内、吸入、腟内、直腸、大槽内及び非経口とすることができる。本明細書では「非経口」という用語は、皮下、静脈内、筋肉内、関節内注射又は注入、胸骨内及び腹腔内を含む投与形式を指す。
【0158】
本化合物は、個々の治療薬として又は治療薬と併用して、薬剤と組み合わせた使用に利用可能な従来の任意の手段によって投与することができる。本化合物は、単独で投与することができるが、一般には、選択された投与経路及び標準の製薬実務に基づいて選択される薬剤担体と一緒に投与される。
【0159】
本開示では、温血動物は、ホメオスタシス機構を有する動物界の1メンバーであり、哺乳動物及びトリを含む。
【0160】
投与量は、レシピエントの年齢、健康状態及び体重、疾患の程度、もしあれば併用治療の種類、治療頻度並びに所望の効果の性質によって決まる。通常、活性成分化合物の1日用量は約1から500ミリグラム/日である。通常、1つ以上の適用例において10から100ミリグラム/日が、所望の結果を得るのに有効である。これらの投与量は、上記苦痛、疾患及び疾病、例えば、心房細動、心房粗動、心房性不整脈、上室性頻拍などの心臓不整脈、発作、うっ血性心不全などの血栓塞栓性事象及び免疫抑制の治療及び予防に対する有効量である。
【0161】
活性成分は、カプセル剤、錠剤、トローチ剤、糖衣錠剤、顆粒剤、散剤などの固体剤形、又はエリキシル剤、シロップ剤、エマルジョン剤、分散液剤、懸濁液剤などの液体剤形として経口投与することができる。活性成分は、分散液剤、懸濁液剤、溶液剤などの無菌液体剤形として非経口投与することもできる。局所投与用軟膏剤、クリーム剤、滴薬、経皮貼付又は散剤として、眼球投与用点眼剤又は懸濁液形成物、すなわち、目薬として、吸入又は鼻腔内投与用エアゾール噴霧剤又は粉体組成物として、或いは直腸又は膣投与用クリーム剤、軟膏剤、噴霧剤又は坐剤としてやはり活性成分を投与するのに使用することができる他の投与剤形。
【0162】
ゼラチンカプセル剤は、活性成分とラクトース、デンプン、セルロース誘導体、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸などの粉末担体とを含む。類似の希釈剤を使用して圧縮錠剤を製造することができる。錠剤とカプセル剤のどちらも、数時間にわたって薬物を連続放出する徐放性製品として製造することができる。圧縮錠剤は、糖又は膜で被覆して不快な食味を遮断し、錠剤を雰囲気から保護することができ、或いは消化管において選択的に崩壊するように腸溶コーティングすることができる。
【0163】
経口投与用液体剤形は、患者の許容性を高めるために着色剤及び香味料を含むことができる。
【0164】
一般に、水、適切なオイル、食塩水、デキストロース(グルコース)水溶液並びに関係する糖液及びプロピレングリコール、ポリエチレングリコールなどのグリコールは、非経口溶液用の適切な担体である。非経口投与用溶液は、好ましくは、活性成分の水溶性塩、適切な安定剤及び必要に応じて緩衝物質を含む。亜硫酸水素ナトリウム、亜硫酸ナトリウム、アスコルビン酸などの抗酸化剤は、単体でも組み合わせても適切な安定剤である。クエン酸及びその塩並びにナトリウムEDTAも使用することができる。また、非経口溶液は、塩化ベンザルコニウム、メチル又はプロピルパラベン、クロロブタノールなどの防腐剤を含むことができる。
【0165】
適切な薬剤担体は、この分野の標準参考書であるRemington’s Pharmaceutical Sciences、A. Osolに記載されている。
【0166】
吸入投与の場合、本発明の化合物は、加圧包装又はネブライザーからのエアゾール噴霧剤として好都合には送達することができる。本化合物は、処方することができる散剤として送達することもできる。粉体組成物は、吹き込み粉体吸入装置を用いて吸入することができる。好ましい吸入用送達システムは、式Iの化合物のフルオロ炭素、炭化水素などの適切な噴霧剤の懸濁液又は溶液として処方することができる定量吸入(MDI)エアゾール剤である。
【0167】
眼球投与の場合、点眼薬は、適切な眼用ビヒクル中の式Iの化合物の適切な重量パーセント溶液又は懸濁液を用いて処方することができる。その結果、化合物は、眼球表面と十分な長時間接触し続け、化合物が眼の角膜及び内部領域に浸透することができる。
【0168】
本発明の化合物の投与に有用な薬剤剤形としては、硬カプセル及び軟カプセル、錠剤、非経口注射剤、経口懸濁液剤などが挙げられるが、これらだけに限定されない。
【0169】
標準ツーピース硬カプセルの各々に活性成分粉末100ミリグラム、ラクトース150ミリグラム、セルロース50ミリグラム及びステアリン酸マグネシウム6ミリグラムを充填することによって多数の単位カプセル剤が調製される。
【0170】
大豆油、綿実油、オリーブ油などの可消化オイル中の活性成分の混合物を調製し、容積式ポンプによってゼラチンに注入して活性成分100ミリグラムを含む軟カプセルが形成される。カプセル剤は洗浄され乾燥される。
【0171】
単位用量が活性成分100ミリグラム、コロイド状二酸化ケイ素0.2ミリグラム、ステアリン酸マグネシウム5ミリグラム、微結晶セルロース275ミリグラム、デンプン11ミリグラム及びラクトース98.8ミリグラムになるように多数の錠剤が従来の手順によって調製される。嗜好性を高め又は吸収を遅延させるために適切なコーティングを施すことができる。
【0172】
注射投与に適切な非経口組成物は、活性成分1.5重量%をプロピレングリコール10体積%中で撹拌することによって調製されるこの溶液は注射用水で増量され(volume)、殺菌される。
【0173】
経口投与用水性懸濁液は、各5ミリリットルが、微粉化された活性成分100ミリグラム、カルボキシメチルセルロースナトリウム100ミリグラム、安息香酸ナトリウム5ミリグラム、ソルビトール溶液、U.S.P. 1.0グラム及びバニリン0.025ミリリットルを含むように調製される。
【0174】
同じ剤形は、一般に、本発明の化合物が段階的に又は別の治療薬と組み合わせて投与されるときに使用することができる。各薬物を物理的に組み合わせて投与するときには、組み合わせる薬物の混和性に応じて剤形及び投与経路を選択すべきである。したがって、同時投与という用語は、2種類の薬剤の同時又は逐次投与、或いは2種類の活性成分の一定用量の組み合わせとしての投与を含むと理解される。
【0175】
本発明の化合物は、単独の活性成分として、或いはキニジン、プロパフェノン、アンバシリド、アミオダロン、フレカイニド、ソタロール、ブレチリウム、ドフェチリド、アルモカラント、ベプリジル、クロフィリウムなどのKv1.5遮断活性を有する他の抗不整脈剤、クロトリマゾール、ケトコナゾール、ブピバカイン、エリスロマイシン、ベラパミル、ニフェジピン、ザテブラジン、ビスインドリルマレイミドなどのKv1.5遮断活性を有する他の化合物、又はベナゼプリル、カプトプリル、エナラプリル、フォシノプリル、リシノプリル、モエキシプリル、ペリンドプリルエルブミン、キナプリル、ラミプリル、トランドラプリルなどのACE阻害薬、カンデサルタン、エプロサルタン、イルベサルタン、ロサルタン、オルメサルタン、テルミサルタン、バルサルタンなどのアンジオテンシンII拮抗物質、ジゴキシンなどの強心配糖体、L型カルシウムチャネル遮断薬、T型カルシウムチャネル遮断薬、選択的及び非選択的ベータ遮断薬、免疫抑制化合物、エンドセリン拮抗物質、トロンビン阻害剤、アスピリン、ナプロキセンなどのアスピリン以外の非選択的NSAID、ワルファリン、第Xa因子阻害剤、低分子量ヘパリン、非分画ヘパリン、クロピドグレル、チクロピジン、チロフィバンなどのIIb/IIIa受容体拮抗物質、5HT受容体拮抗物質、インテグリン受容体拮抗物質、トロンボキサン受容体拮抗物質、TAFI阻害剤、P2T受容体拮抗物質など、ただしこれらだけに限定されない他の心血管作動薬を含めた第2の活性成分と組み合わせて投与することができる。本発明の化合物は、単独の活性成分として、或いはペースメーカー又は除細動装置と組み合わせて投与することもできる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
構造
【化1】

の化合物又は薬剤として許容される塩、結晶形若しくは水和物。(式中、
Aは、
a) アリール環(任意の安定なアリール環原子は、独立に、非置換であり、又は
1) ハロゲン、
2) NO
3) CN、
4) CR46=C(R4748
5) C≡CR46
6) (CROR46
7) (CRN(R4647)、
8) (CRC(O)R46
9) (CRC(O)OR46
10) (CR46
11) (CRS(O)0−261
12) (CRS(O)0−2N(R4647)、
13) OS(O)0−261
14) N(R46)C(O)R47
15) N(R46)S(O)0−261
16) (CRN(R46)R61
17) (CRN(R46)R61OR47
18) (CRN(R46)(CRC(O)N(R4748)、
19) N(R46)(CR61
20) N(R46)(CRN(R4748)、
21) (CRC(O)N(R4748)、若しくは
22) オキソ
で置換されている。)、又は
b) N、O若しくはSからなる群から選択される1、2、3若しくは4個のヘテロ原子環原子を有する5員環不飽和単環式環、
N、O及びSからなる群から選択される1、2、3若しくは4個のヘテロ原子環原子を有する6員環不飽和単環式環、及び
N、O若しくはSからなる群から選択される1、2、3若しくは4個のヘテロ原子環原子を有する9若しくは10員環不飽和二環式環
からなる群から選択されるヘテロアリール環(任意の安定なSヘテロアリール環原子は、非置換であり又はオキソで一置換若しくは二置換されており、任意の安定なC又はNヘテロアリール環原子は、独立に、非置換であり、又は
1) ハロゲン、
2) NO
3) CN、
4) CR46=C(R4748
5) C≡CR46
6) (CROR46
7) (CRN(R4647)、
8) (CRC(O)R46
9) (CRC(O)OR46
10) (CR46
11) (CRS(O)0−261
12) (CRS(O)0−2N(R4647)、
13) OS(O)0−261
14) N(R46)C(O)R47
15) N(R46)S(O)0−261
16) (CRN(R46)R61
17) (CRN(R46)R61OR47
18) (CRN(R46)(CRC(O)N(R4748)、
19) N(R46)(CR61
20) N(R46)(CRN(R4748)、
21) (CRC(O)N(R4748)、若しくは
22) オキソ
で置換されている。)
であり、
は、
1) 水素、
2) (CR40
3) (CROR40
4) (CRN(R4041)、
5) (CRN(R40)C(O)OR41
6) (CRN(R40)(CRN(R41)C(O)R49
7) C3−8シクロアルキル、
8) (CRC(O)OR40
9) (CRN(R40)(CR1−341
10) (CRS(O)0−2
11) (CRS(O)0−2N(R4041)、
12) (CRN(R40)ROR41
13) (CRN(R40)(CR0−6C(O)N(R4142
からなる群から選択され、
は−CH22であり、
、R、R及びR10は、
1) 水素、
2) ハロゲン、
3) NO
4) CN、
5) CR43=C(R4445)、
6) C=CR43
7) (CROR43
8) (CRN(R4344)、
9) (CRC(O)R43
10) (CRC(O)OR43
11) (CR43
12) (CRS(O)0−260
13) (CRS(O)0−2N(R4344)、
14) OS(O)0−260
15) N(R43)C(O)R44
16) N(R43)S(O)0−260
17) (CRN(R43)R60
18) (CRN(R43)R60OR44
19) (CRN(R43)(CRC(O)N(R4445)、
20) N(R43)(CR60
21) N(R43)(CRN(R4445)、及び
22) (CRC(O)N(R4344
から独立に選択され、
或いは、R及びRは独立に上で定義されたとおりであり、RとR10は、それらが結合している原子と一緒に環
【化2】

(式中、RはC1−6アルキルである。)
を形成し、
、R、R、R、R、R、R、R、R、R、R及びRは、
1) 水素、
2) C−Cアルキル、
3) ハロゲン、
4) アリール、
5) R80
6) C−C10シクロアルキル、及び
7) OR
(前記アルキル、アリール及びシクロアルキルは非置換であり、Rで一置換されており、R及びR15で二置換されており、R、R15及びR16で三置換されており、又はR、R15、R16及びR17で四置換されている。)
からなる群から独立に選択され、
、R40、R41、R42、R43、R44、R45、R46、R47、R48、R49、R51、R52、R53及びR54は、
1) 水素、
2) C−Cアルキル、
3) C−C10シクロアルキル、
4) アリール、
5) R81
6) CF
7) C−Cアルケニル、及び
8) C−Cアルキニル
(前記アルキル、アリール及びシクロアルキルは非置換であり、R18で一置換され、R18及びR19で二置換され、R18、R19及びR20で三置換され、又はR18、R19、R20及びR21で四置換されている。)
からなる群から独立に選択され、
、R60、R61、R62及びR63は、
1) C−Cアルキル、
2) アリール、
3) R83、及び
4) C−C10シクロアルキル
(前記アルキル、アリール及びシクロアルキルは非置換であり、R26で一置換され、R26及びR27で二置換され、R26、R27及びR28で三置換され、又はR26、R27、R28及びR29で四置換されている。)
からなる群から独立に選択され、
、R15、R16、R17、R18、R19、R20、R21、R26、R27、R28及びR29は、
1) C−Cアルキル、
2) ハロゲン、
3) OR51
4) CF
5) アリール、
6) C−C10シクロアルキル、
7) R84
8) S(O)0−2N(R5152)、
9) C(O)OR51
10) C(O)R51
11) CN、
12) C(O)N(R5152)、
13) N(R51)C(O)R52
14) S(O)0−263
15) NO、及び
16) N(R5152
からなる群から独立に選択され、
22は、
1) OR53
2) SR53
3) S(O)0−2(R5354)、及び
4) S(O)0−262
からなる群から選択され、
80、R81、R83及びR84は、N、O及びSからなる群から選択される1、2又は3個のヘテロ原子環原子を有する3から6員環不飽和又は飽和単環式環並びにN、O又はSからなる群から選択される1、2、3又は4個のヘテロ原子環原子を有する9又は10員環不飽和又は飽和二環式環からなる非置換又は置換複素環の群から独立に選択され、
n、p、q、r及びsは独立に0、1、2、3、4、5又は6である。)
【請求項2】
Aが、請求項1に記載の非置換又は置換フェニルから選択されるアリール環、或いはピリジン、ピリミジン、ピラジン、ピリダジン、インドール、ピロロピリジン、ベンズイミダゾール、ベンゾキサゾール、ベンゾチアゾール及びベンズオキサジアゾールからなる群から選択される請求項1に記載の非置換又は置換ヘテロアリール環であり、
、R、R及びR10が、
1) 水素、
2) ハロゲン、
3) OR43、及び
4) (CR43
からなる群から独立に選択され、
或いは、R及びRが独立に上で定義されたとおりであり、RとR10が、それらが結合している原子と一緒に環
【化3】

(式中、RはC1−6アルキルである。)
を形成し、
が、
1) 水素、
2) (CR1−240
3) (CR1−2OR40
4) (CR1−2N(R4041)、
5) (CR1−2N(R40)C(O)OR41
6) (CR1−2N(R40)(CRN(R41)C(O)R49
7) (CR1−2C(O)OR40
8) (CR1−2N(R40)(CR1−341、及び
9) シクロプロピル
からなる群から選択される、請求項1に記載の化合物又は薬剤として許容されるその塩。
【請求項3】
、R、R及びR10が水素及び(CROR43からなる群から独立に選択される、請求項2に記載の化合物又は薬剤として許容されるその塩。
【請求項4】
が(CR40である、請求項3に記載の化合物又は薬剤として許容されるその塩。
【請求項5】
Aが非置換アリール環である、請求項4に記載の化合物又は薬剤として許容されるその塩。
【請求項6】
が−CHOCH、−CHOCHCF、−CHO(CHNH、−CHOH、−CHO(CHSOCH、−CHOC(CH、−CHOCHCH(OH)CHN(CH、−CHO(CHOCH、−CHO(CHO(CHOCH、−CHS(CHOH、−CHS(CHN(CH、−CHS(O)(CHOH、−CHSO(CHOH、
【化4】

からなる群から選択される、請求項5に記載の化合物又は薬剤として許容されるその塩。
【請求項7】
6−メトキシ−3−(メトキシメチル)−2−メチル−4−フェニルイソキノリン−1(2H)−オン、
6−メトキシ−2−メチル−4−フェニル−3−[(2,2,2−トリフルオロエトキシ)メチル]イソキノリン−1(2H)−オン、
(±)−6−メトキシ−2−メチル−4−フェニル−3−[(テトラヒドロフラン−3−イルオキシ)メチル]イソキノリン−1(2H)−オン、
2−{2−[(6−メトキシ−2−メチル−1−オキソ−4−フェニル−1,2−ジヒドロイソキノリン−3−イル)メトキシ]エチル}−1H−イソインドール−1,3(2H)−ジオン、
6−メトキシ−2−メチル−3−[(2−モルホリン−4−イルエトキシ)メチル]−4−フェニルイソキノリン−1(2H)−オン、
(±)−6−メトキシ−2−メチル−3−{[(1−メチルピペリジン−3−イル)オキシ]メチル}−4−フェニルイソキノリン−1(2H)−オン、
3−[(2−アミノエトキシ)メチル]−6−メトキシ−2−メチル−4−フェニルイソキノリン−1(2H)−オン、
6−メトキシ−2−メチル−4−フェニル−3−[(ピリジン−4−イルメトキシ)メチル]イソキノリン−1(2H)−オン、
6−メトキシ−2−メチル−3−{[2−(メチルスルホニル)エトキシ]メチル}−4−フェニルイソキノリン−1(2H)−オン、
3−(ヒドロキシメチル)−6−メトキシ−2−メチル−4−フェニルイソキノリン−1(2H)−オン、
6−メトキシ−3−{[(6−メトキシ−2−メチル−1−オキソ−4−フェニル−1,2−ジヒドロイソキノリン−3−イル)メトキシ]メチル}−2−メチル−4−フェニルイソキノリン−1(2H)−オン、
6−メトキシ−2−メチル−3−{[(1−オキシドピリジン−3−イル)オキシ]メチル}−4−フェニルイソキノリン−1(2H)−オン、
(±)−6−メトキシ−2−メチル−3−[(オキシラン−2−イルメトキシ)メチル]−4−フェニルイソキノリン−1(2H)−オン、
3−(tert−ブトキシメチル)−6−メトキシ−2−メチル−4−フェニルイソキノリン−1(2H)−オン、
(±)−3−[(2−ヒドロキシ−3−ピペリジン−1−イルプロポキシ)メチル]−6−メトキシ−2−メチル−4−フェニルイソキノリン−1(2H)−オン、
(±)−3−[(2−ヒドロキシ−3−モルホリン−4−イルプロポキシ)メチル]−6−メトキシ−2−メチル−4−フェニルイソキノリン−1(2H)−オン、
(±)−3−{[3−(ジメチルアミノ)−2−ヒドロキシプロポキシ]メチル}−6−メトキシ−2−メチル−4−フェニルイソキノリン−1(2H)−オン、
6−メトキシ−3−[(2−メトキシエトキシ)メチル]−2−メチル−4−フェニルイソキノリン−1(2H)−オン、
6−メトキシ−3−{[2−(2−メトキシエトキシ)エトキシ]メチル}−2−メチル−4−フェニルイソキノリン−1(2H)−オン、
3−{[(2−ヒドロキシエチル)チオ]メチル}−6−メトキシ−2−メチル−4−フェニルイソキノリン−1(2H)−オン、
3−{[(2−(ジメチルアミノ)エチル)チオ]メチル}−6−メトキシ−2−メチル−4−フェニルイソキノリン−1(2H)−オン、
(±)−3−{[(2−ヒドロキシエチル)スルフィニル]メチル}−6−メトキシ−2−メチル−4−フェニルイソキノリン−1(2H)−オン、及び
3−{[(2−ヒドロキシエチル)スルホニル]メチル}−6−メトキシ−2−メチル−4−フェニルイソキノリン−1(2H)−オン
からなる群から選択される、請求項6に記載の化合物又は薬剤として許容されるその塩。
【請求項8】
1.5の阻害に有効な量の請求項1に記載の化合物を投与することを含む、K1.5阻害によって実施又は促進される、哺乳動物における症状を治療する方法。
【請求項9】
前記症状が心臓不整脈である、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記心臓不整脈が心房細動である、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記心臓不整脈が心房粗動、心房性不整脈及び上室性頻拍からなる群から選択される、請求項9に記載の方法。
【請求項12】
1.5の阻害に有効な量の請求項1に記載の化合物を投与することを含む、K1.5阻害によって実施又は促進される、哺乳動物における症状を予防する方法。
【請求項13】
前記症状が心臓不整脈である、請求項11に記載の方法。
【請求項14】
前記心臓不整脈が心房細動である、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記心臓不整脈が心房粗動、心房性不整脈及び上室性頻拍からなる群から選択される、請求項13に記載の方法。
【請求項16】
前記症状が血栓塞栓性事象である、請求項11に記載の方法。
【請求項17】
前記血栓塞栓性事象が発作である、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記症状がうっ血性心不全である、請求項11に記載の方法。
【請求項19】
薬剤として許容される担体と請求項1に記載の化合物或いは薬剤として許容されるその結晶形又は水和物とを含む薬剤。
【請求項20】
請求項1に記載の化合物と薬剤として許容される担体とを組み合わせることによって調製される薬剤組成物。
【請求項21】
Kv1.5遮断活性を有する抗不整脈剤、ACE阻害薬、アンジオテンシンII拮抗物質、強心配糖体、L型カルシウムチャネル遮断薬、T型カルシウムチャネル遮断薬、選択的及び非選択的ベータ遮断薬、エンドセリン拮抗物質、トロンビン阻害剤、アスピリン、非選択的NSAID、ワルファリン、第Xa因子阻害剤、低分子量ヘパリン、非分画ヘパリン、クロピドグレル、チクロピジン、IIb/IIIa受容体拮抗物質、5HT受容体拮抗物質、インテグリン受容体拮抗物質、トロンボキサン受容体拮抗物質、TAFI阻害剤並びにP2T受容体拮抗物質からなる化合物クラスの1つから選択される化合物と一緒に請求項1に記載の化合物を投与することを含む、心臓不整脈を治療する方法。
【請求項22】
請求項1に記載の化合物を用いて心房細動患者を治療することを含む、前記患者において正常洞調律の状態を誘発する方法。
【請求項23】
請求項1に記載の化合物と併せて抗頻脈装置を用いて患者を治療することを含む、前記患者における頻脈を治療する方法。

【公表番号】特表2007−506740(P2007−506740A)
【公表日】平成19年3月22日(2007.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−528069(P2006−528069)
【出願日】平成16年9月17日(2004.9.17)
【国際出願番号】PCT/US2004/030470
【国際公開番号】WO2005/046578
【国際公開日】平成17年5月26日(2005.5.26)
【出願人】(390023526)メルク エンド カムパニー インコーポレーテッド (924)
【氏名又は名称原語表記】MERCK & COMPANY INCOPORATED
【Fターム(参考)】